Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

銀塩一眼レフ・クラッシックス(24)CONTAX N1

所有している銀塩一眼レフの名機を紹介するシリーズ記事。
今回からは第四世代(趣味の時代、世代定義は第1回記事参照)
が始まる。この時代は概ね2000~2004年迄であると思って
いただければ良い。勿論2004年位からはデジタル一眼レフが
普及し、銀塩一眼レフの時代は終焉を迎えてしまっている。

さて、本記事ではCONTAX N1(2000年)を紹介する。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09544327.jpg
装着レンズは、CONTAX N Planar T* 85mm/f1.4
(2002年 ミラーレス・マニアックス第13回,名玉編第3回)

例によって本シリーズでは紹介銀塩機でのフィルム撮影は
行わずに、デジタルの実写シミュレーター機を使用する。
なお、この時代では、フィルムのDPE画質は非常に良く
なってきている。自動現像機の普及の理由もあるだろうが、
フィルム自体の技術的進歩が大きく、この直後の時代の
初期デジタル機よりもフィルムの方がずっと画質は良かった。

本シリーズ記事では、時代背景に合わせてシミュレーター機の
画質を様々な設定で下げて撮影・掲載していたが、そろそろ
この時代では、そうした配慮も不要であろう。
今回はシミュレーターとして、μ4/3機PANASONIC DMC-G6を
用いる。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09541362.jpg
画角が狭くなるが、OONTAX Nマウントのアダプターは希少
であり、μ4/3用のものをかろうじて保有しているのみだ。

CONTAX Nマウントは電子接点式なので、現在、マウント
アダプターの入手は困難である。

使用アダプターはKIPON社製の機械式絞り羽根内蔵方式の物
である。他社でも絞り羽根内蔵式アダプターは存在する。
他には、一時期Nマウント電子アダプターが発売されていたが、
現在では見当たらない。
(なお、μ4/3アダプターはEマウントに”アダプター重ね”
で変換可能だ。その方式では、フルサイズ機α7系等でも
利用できる可能性があるのだが、私の所有している両者の
アダプターは微妙な工作仕様の違いで嵌らず、それが出来ない)

さて、以降はシミュレーターでの撮影写真と、本機N1の機能
紹介写真を交えて記事を進める。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09541375.jpg
さて、本シリーズでのCONTAXのカメラとしては、第20回記事の
CONTAX AX(1996年)以来、そしてCONTAXのAF機もそれ以来だ。

CONTAX AXは、従来のY/C(RTS)マウントのMFレンズを全て
AFレンズに変えてしまうという極めてユニークなコンセプトの
カメラであり、そのギミック(手品のような仕掛け、からくり)
の実現の為に、「化物」のような機構のカメラとなった事は、
当該第20回記事で紹介した通りだ。

AXは非常にマニアックなカメラであるが、一般層からは敬遠され
商業的には成功したと言えない。そして、やむなく京セラCONTAX
はY/Cマウントを捨てて、AFの新マウント「Nシステム」の開発に
着手した。

ミノルタα-7000(1985年)の「αショック」から実に十余年が
経過していて、他社から、かなりビハインドの状況である。
勿論それは、京セラCONTAXの技術力の不足の問題では無い、
AXの記事でも書いた通り、とてつもない技術力が結集されて
そのカメラは開発された、ある意味、普通のAF機よりはるかに
高度な技術内容であり、完成した事自体が奇跡的であった。

CONTAXのAF化が遅れたのは、商業的、販売戦略的、市場の状況、
ユーザーニーズ等、様々な要因が複雑に絡みあって、そうなった
訳である。技術的側面からは、やろうと思えば、もっと早くに
出来たのが、むしろ市場(ユーザー)側がそれを拒んだ要素も
無いとも言い切れない。そのあたりの事情は、AXの記事に書いて
あるので詳細は割愛するが、ともかく、この時代から栄光の
「CONTAX」は、破滅への階段を歩んでしまう事になる。 

カメラ史上、最も悲運なシステム、その主役が本機CONTAX N1
と、NP85mm/f1.4レンズである・・・
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09544315.jpg
さてここで、CONTAX AX以降、本機CONTAX N1までの京セラ
および周辺を取り巻くカメラの歴史を振り返ってみよう、わずか
数年の期間だが、カメラ界、そして京セラとしては激変期だ。


<1996年>
CONTAX AX(本シリーズ第20回記事) 唯一のABFシステム機
CONTAX G2 AFレンジファインダー機、人気機種

NIKON F5 (本シリーズ第19回記事) ニコン二代目のAF旗艦
MINOLTA TC-1 銀塩AF高級コンパクト、超小型

OLYMPUS C-400L/800L オリンパス初の実用デジタルコンパクト機
CASIO QV-10A 既に人気機種であった「QV-10」の改良機

<1997年>
CONTAX Tix 史上唯一のAPSフィルム対応高級コンパクト機
(ハイコスパレンズ・マニアックス第20回記事等で紹介)
CONTAX TVsⅡ 35mm判高級コンパクト TVs(1993年)の後継機

MINOLTA Dimage V ミノルタ初のデジタル・コンパクト機

<1998年>
CONTAX ARIA 初級機、Y/Cマウント最終機種(限定版あり)

MINOLTA α-9 旗艦機(本シリーズ第23回記事)
FIJIFILM FinePix F700 FUJI初のデジタルコンパクト、高画質

<1999年>
CONTAX 645 中判AF一眼レフ、Nシステムとはアダプターで互換

COSINA BESSA-L フォクトレンダーブランド初の銀塩MFレンジ機
NIKON D1 最上位機、NIKON初の実用的デジタル一眼レフ 65万円

<2000年>
CONTAX N1 高級機(本機)Nマウント採用AF機
CONTAX NX 初級機 Nマウント採用AF機

MINOLTA α-7 高級機 銀塩AF一眼最強の操作系を誇る傑作機
CANON EOS 7 中級機 銀塩EOSの中で最高の実用性を持つ名機
CANON EOS D30 中級機 EOS初の普及版デジタル一眼レフ
(上記3機種は、いずれも後日紹介予定)

<2001年>
CONTAX T3 CONTAX最後の銀塩AF高級コンパクト機

EOS-1D    最上位機 実用的(業務用)デジタル一眼レフ
NIKON D1X/D1H 最上位機 D1の派生改良版

<2002年>
CONTAX N Digital CONTAX初のデジタル一眼、フルサイズ機、
高価で絵作りに問題が有り、商業的に失敗

EOS-1Ds 最上位機、EOS初のフルサイズ・デジタル一眼 95万円
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09541367.jpg
ここまで歴史を述べてきたが、この時代は、第一次中古カメラ
ブーム末期である事、そしてデジタル一眼レフの黎明期である。
市場(ユーザー)の注目は、全てそれらの方向に向いていて、
いまさらCONTAXのMF一眼レフが売れる状況では無い。

CONTAXから見れば、デジタルカメラは後発であり、Y/Cマウント
の一眼レフのAF化は遅れに遅れ、やるべき事が山積みだ。

幸い、AFレンジ機のG1/G2が快調、そして高級AFコンパクトの
Tシリーズも好調だ、この余裕がある内に、AF化とデジタル化を
両方同時に進めた「Nシステム」を完成させなくてはならない。

同時に、旧来のY/Cマウントレンズも長年MFのままで止まって
いた為、相対的に他社新鋭レンズよりも割安になってきている
(AXの記事参照)これでは付加価値が少ない(=儲けが少ない)
ので、できればレンズもAF化とともに大きくリニューアルしたい。

デジタル化はノウハウが少ないだろうが、CASIO,OLYMPUS,
FUJI,MINOLTA等がデジタル・コンパクト機を出して好調だ、
(有力なデジタル・コンパクト機OEMメーカーも存在していた)
ニコン、キヤノンも一眼レフのデジタル化を成功させている。
なんとしても、ここへの市場参入を果たさないとならない。

本当に様々な命題が山積されていて、とんでも無い時期だ。
京セラのリソース(人、物、金、時間)を総てつぎ込んでも
Nシステムを成功させ、他社からの遅れを取り戻し、再び栄光の
「CONTAX」の名を世に知らしめなければならない・・
これは相当にプレッシャーのかかる開発テーマであろう。

もし、タイムマシンで時間が戻り、この時期の京セラにおいて
技術者の募集があったとしても、本音で言えば応募したく無い
どう見ても大変そうだからだ・・(汗)

恐らくは寝る暇も無いくらいの状況で、Nシステム(N1,NX)の
開発、Nデジタル(デジタル一眼レフ)、645(中判)開発
N用レンズ開発(35mm判、645判)が、同時に進行していた
のであろう。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09541224.jpg
さて、ここで、いつものように本機CONTAX N1の仕様について
述べておきたいのだが、機能が多く、全てを書いていくと
文字数を大幅に消費してしまう。そもそも、この第四世代の
カメラは数値性能はさほど重要では無い。
あくまで「趣味の時代」なのだ。よって、本機CONTAX N1に
ついては、特徴的な仕様のみ、あげていく事にしよう。

CONATX N1(2000年)

最高シャッター速度:1/8000秒
操作子:アナログダイヤル、アナログレバー式
シャッターダイヤル:有り(4秒~1/8000秒)
フラッシュ:非内蔵、
ファインダー:倍率0.73倍 視野率95%
使用可能レンズ:コンタックスNマウント
AF測距点数:5点(測距点選択専用操作子有り)
AFブラケット:有り(フォーカスABC機能)、3コマ連続
露出補正ダイヤル:1/3段、1/2段反転切り替え型
連写速度:(C)連続時 秒3.5コマ
電源:リチウム電池 2CR5 1個使用
本体重量:795g(電池除く)
発売時定価:180,000円(税抜き)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09544382.jpg
まあ、この時代はフルスペックである。他社AF一眼レフに比べ、
特に見劣りする部分も無く、仕様的に良くまとめられている。
数字だけ見れば、これで売れない要素は無いのだが、
あいにく時代は、数字を重視する様相では無くなっていた・・
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09541300.jpg
それから、今回使用レンズの N Planar 85mm/f1.4は、
極めて描写力の高いレンズである。

本レンズの購入動機であるが、2001年頃に、発売前の
CONTAX N Digitalに、これも発売前のNP85/1.4を装着して
撮った写真が、カメラ関連業界等にリークされた事があった。
それを見た際、これまでのデジタルカメラでは考えられなかった
フルサイズ機+85mm/f1.4の圧倒的なボケ量、加えてボケ質も
極めて綺麗であり、私も「これは凄い!」と思った訳だ。

しかし、N Digitalの写真の発色は、くすんでいて、眠たい
(コントラストが低い)「まだ調整中だから」と、関係者は
語っていたようにも記憶しているが、個人的には「発売直前に
この状態では・・恐らく調整は無理だろうなあ」と思った。

そして、後年に N Planar 85/1.4を無事入手できたのだが、
このレンズは高描写力の反面、非常に高価であり、大きく重い。
重さは、恐らくは85mm/f1.4中では当時最重量級であり
800gオーバーだ(ただし後年には、カール・ツァイスや
SIGMAから、より重い85/1.4が発売されている)
フィルター径はφ82mmもあって、保護フィルターを買うだけで
余計な費用がかかってしまった。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09542734.jpg
さて、ここから、京セラの悲運の歴史の始まりである。
CONTAX Nシステム(本機N1)は、2000年に市場に注目されて
デビューした、いわゆる「鳴り物入り」という状況である。

しかし、交換レンズは3本くらいしかない。どれも大きく重く
高価であり、ズームレンズばかりで、Y/Cマウントにおいて
人気があった大口径単焦点の「プラナー」等は1本も無い。

「これでは、N1を買うわけには行かないな・・」と、私は
購入を保留、周囲の上級マニア達も皆、同じ選択であった。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09542795.jpg
2001年に、Nプラナー50/1.4が発売、しかし、これは、
旧来のY/CマウントのP50/1.4とレンズ構成や最短撮影距離等
のスペックが同じであり、マニアの間では「従来のプラナー
50mmにAFの側(がわ)を被せただけ、だから大きくなった」
とう噂が、まことしやかに流れ、これも皆、買い控えた。
(注:実際には、デジタル化を見据えたテレセントリック
特性の変更等で、後玉を見ればRTS版とは大きく違う)

この年、ようやく「マクロゾナー100mm/f2.8」が発売される、
しかし、マニアの間では「なんで、マクロプラナーではなく
マクロゾナーなの? プラナーのボケは柔らかいけど、
ゾナーは固いよ、しかも大きく重い、これもいらないな」
という噂話が流れ、ここでもマニア達は購入を保留。

2002年、今回使用のN Planar 85mm/f1.4がやっと発売。
ただ、いくら優れたレンズだと予想されるとは言え、これを
単体で買う訳には行かない、Nシステム以外では使用不可だ。

同2002年にNデジタルが発売、しかし80万円という高価な
定価に皆尻込み。それでも、金満家のマニア等の数名が
買った模様であったが、「写してみたら色が悪かった」という
レポートが口コミでマニアの間に急速に流れる。

その後、2003年頃には、Nデジタルをメーカーが回収して、
調整(恐らくは部品やソフトウェアのアップデート)が
行われた模様だったが、「大きな改善は無かった」という噂も
流れていた。もうこれで残念ながら、Nデジタルは終わりだ・・

2003年から2004年にかけ、銀塩Nシステムは、カメラ店でも
持て余す状態になった、すでに他社からもデジタル一眼レフの
発売が始まり、マニア層は、どうせお金を使うならば、
EOS-1DやNIKON D2Hに興味の対象が行ってしまっている。

また、このころ、魅力的なMF銀塩カメラも色々と発売された
例えば、NIKON S3/SPの限定復刻版とか、コシナより
フォクトレンダーBESSAシリーズ(レンジ機)、各種の銀塩
高級コンパクトも中古が良く流通し、銀塩MF一眼レフの
新製品も数機種発売された。
こんな状況では、マニアは誰もCONTAX Nシステムには興味を
示さなかったのだ。

なお、マニア層の話ばかりになっているが、一般層への機材の
普及は、マニア層の言動や評価が元になっている要素も大きい
訳だ。決して無視する事は出来ない。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09544253.jpg
2003年末頃、在庫を完全に持て余したカメラ店から
「匠さん、N1を買ってもらえないかな? 新品在庫だけど、
 安くしておくよ」という申し出があった。

私は「NP85/1.4 それとNP50/1.4のセットなら買いますよ」
と言って値段の交渉を開始、トータルではかなりの金額には
なったか、それでも定価の4割引~半額位であっただろうか・・

まあ新レンズ購入はやむを得ない、Nシステムには従来の
Y/C(RTS)マウントレンズは装着不能であったし、そもそも、
レンズが欲しくてボディを買うのだ、優秀なレンズがあれば、
新規マウントを増やしてもかまわない。
(逆に言えば、魅力的なレンズの無いマウント機は買わない)

でも、周囲には殆どNシステムを購入したマニアは居なかった。
まあ、Nシステムに関する情報やら噂やらに関しては、周囲の
ごく限られた範囲でのサンプリング、と言えるかも知れないが
私の周囲は皆、上級マニアばかりであったので、彼らの動向を
見れば、だいたい世間全体の状況も推察できたのだ。

それに当時は、インターネットは既にあったが、そこでの
情報伝達よりも、中古カメラ屋などでの情報が遥かに速い、
なにせ、マニア達は毎日のように、複数のカメラ屋を廻って
そこで他の多くの上級マニア達と交流しながら、様々な
情報交換を行っていたのだ。
「匠がN1を買った」という話も流れていたであろう。
けど、誰も追従しなかった。「なんて物好きな・・」等と
言われていたかも知れない(汗)

さて、N1、そしてNP85/1.4が手元に揃い、しばらくして
中古流通網からNP50/1.4も入ってきた、これで全部だ、
広角が無いが、そもそもNシステムには広角単焦点レンズが
存在していない(汗)

まあでも、さすがにNP85/1.4の描写力は凄い。この頃私は
全一眼マウントの85mm/f1.4級を所有して撮り比べていたが
それらの中でも、かなりの上位で、1,2を争うという感じだ。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09542796.jpg
しばらくは「なかなか凄いな」と、Nシステムを機嫌よく
使っていたが、時代はすでにデジタルだ。フィルム代や現像代
がかからないというメリットは捨てがたく、よほど重要な用途
(美女を撮るとか・・笑)が無い限り、Nプラナーの出番も、
どんどんと減っていく。

2004年には、CONTAX最後のデジタルコンパクト、U4Rとi4R
が発売、内i4Rは女性へのプレゼント用に購入したが、
借りて撮ってみると、なかなか良く写るカメラであった。

(後年に自分用に欲しくなり、長く探したが、中古は見つからず。
さらに後年、2018年頃に中古専門店で新品在庫を見かけたが、
結構高額なプレミアム価格だったのと、当時のデジカメは
バッテリーの持ちが最悪だった事を思い出し、購入を見送った)

さて、そうこうしているうちに「京セラCONTAXがカメラ事業
から撤退」というニュースが飛び込んできた。2005年の事だ。

「ああ、やはりな・・」というのは、最初の感想である。
N1は悪いカメラでは無く、性能が問題だった訳では無い、
時代が既に変わり、ユーザーのニーズも、もう別の方向を
向いていた訳だ。マニア層ですらも、周囲の誰もが買わない
カメラだ、商業的には大失敗であった事であろう。加えて
Nデジタルが失敗して開発費が無駄になった事も致命的だ。

こうして、CONTAX最後の悲運の名機N1と悲運の銘レンズの
Nプラナーの2本だけが、私の手元に残った・・

Nシステムは他社のデジタル一眼レフとの互換性が全く無い、
Nデジタルを買えば動くが、あれだけ評判が悪かったカメラで
あるから、後年、少々安価になったとは言え購入の選択肢は無い。

以降約10年、Nシステムはずっと防湿庫の中に眠り続けたが
2010年代半ばになって、ようやくNマウント用のアダプターを
入手、ミラーレス機でNレンズは無事復活を遂げた訳だ。

ミラーレス機でのNプラナーの使用は、重量バランス等の面で
決して使い易いものでは無いし、機械絞り内蔵のアダプターは
本来の絞りの設計要素とは異なる「視野絞り」の構造なので
ボケ質破綻回避が出来ず、基本的には使用は困難ではあるが
それでも、なんとかすれば、使えないという訳では無い。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09544384.jpg
さて、ここで本機CONTAX N1の長所だが、

まず「操作系」に優れている事だ。
この時代(2000年頃)の銀塩AF一眼レフには、操作系が良い
機種がいくつか出てきている、この後、本シリーズでは
何台かのこの時代のAF一眼レフを紹介するが、いずれも同様だ。
・・と言うか、「操作系に優れるカメラしか、手元には
残していない」、が正しいと思う。
他の銀塩末期のAF一眼レフは、すべて「もう使わないだろう」
と処分してしまっていたのだ。

「操作系」とは、本ブログではおなじみの概念であるが、
一般的に言う「操作性」とは勿論異なる。

しかし、本機N1の場合、アナログ(専用)レバー方式であるから、
どちらかと言えば、撮影操作を有機的に連携させる意味の
「操作系」よりも「操作性」の概念が、より主になるかもしれない。

ここを詳しく書いていくと、際限なく記事文字数が増えてしまう、
で、今更本機を入手するユーザーも居ないと思うので、そのあたり
の詳細については思い切って割愛しよう。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09545357.jpg
本機CONTAX N1の特徴的な機能だが、まずフォーカスABC
(自動ピントずらしブラケット)機能がある。
これは、ピント距離を自動で変えながら3枚連写する機能だ。

主力レンズのNプラナー85mm/f1.4の被写界深度を考慮すると
AFでピントが合う保証が無い為、NP85/1.4の発売前に、予め
備えてあった機能であろう、まあ最初期のNシステムレンズは
開放F値が暗く被写界深度が深い物が多かったので、この機能は
不要だったかも知れず、あくまでNP85/1.4専用の機能だ。

で、メーカーがそう認識していた位、NP85mm/f1.4のAFピント
合わせは精度が出ない。これはCONTAXに限らず他社システムの
85mm/f1.4級でも同様だ、撮影条件にもよるが、歩留まり
(成功率)は、およそ10%程度であろう、つまり10枚中9枚の
写真はピント精度の問題で失敗するという事だ。

「この機能を使うと、フィルムが3倍消費される」と言って
嫌ったマニアだか評論家が居た模様だが、普通に撮ったら、
それ以上にフィルムが無駄になる(汗)
このあたりは実際に使ってみないと、決してわからない事だ。
頭の中だけで考えて評価している事は、まるっきり的外れだ。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09545309.jpg
それから、1/2段、1/3段切り替え式アナログ露出補正ダイヤル
も面白い。銀塩一眼レフではα-7と本機N1の、たった2機種に
しか搭載されなかった機能だ。
それと、MINOLTA XD-s(1978)を彷彿させる「グリーン・
グリーン・システム」が何故かあるのが面白い。
他は、AF測距点をダイレクトに変更できる専用二次元操作子が
特徴となっている。

それと、やはり本機N1の場合には、優秀なNプラナーとの
組み合わせで使う事が最大の特徴であろう。
CONTAXのカメラのシステムを語る上で、ツァイス(国産だが)
レンズの性能抜きには何も始まらない

なお、NP85/1.4はRTS P85/1.4に比べボケ質破綻が出にくい
とか、近接補正のフォーカスシステムで、描写力が優れ、
焦点移動が出にくい等の大改良点がある。まあ、およそ25年
ぶりの新設計なので、高性能化は当然なのだろうが・・
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09542825.jpg
さて、本機N1の弱点であるが、

実のところ、ほとんど無い。

AFが遅いとか、色々言われてはいたが、そもそもF1.4の
大口径のプラナー系を使う上では、AFでは精度が出ないので
そこはあまり重要では無い。
本機のスクリーンでのMFのピントの山は掴みやすいので、
MFで使う事で対策としては十分だ。

F1.4大口径以外のNシステムレンズについては知らない、
所有していないし、そもそも、そういう普通のレンズを
使うならば、Nシステムでなくても、AF精度が高かったり
利用目的に合う他社母艦を選択すればよい。
システム構築は、あくまで最大のパフォーマンスが得られる
ように考えるべきであろう。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09545476.jpg
なお、ファインダーだが、視野の下の方にプリズムの映像が
反射して映ってしまう、これは中級機迄の一眼レフでは、まれに
ある事なのだが、しっかり反射をしないように作りこんでいる
高級機も多く、本機は設計に配慮が無いみたいで格好悪い。
(15年前のCONTAX 159MM(1985)でも同様な欠点があった)

それから、シャッター音に高周波帯域のノイズ音が混じる。
これは、以前のCONTAX AX(1996)でも気になったのだが、
現代での話なので「経年劣化が問題?」と見なして、あえて、
弱点とはしなかった。本機N1でも同様のシャッター音の傾向
があり、そういう部品品質なのか、又は本機も「経年劣化」が
酷いのかも知れない。仮に後者であれば、シャッター機構の
耐久性が低いと言えるかも知れない。例えばMF銀塩機の
メカシャッター等では、製造から40年以上たっても、
気持ち良く切れるのだ・・
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09545335.jpg
後は、システムが高価すぎた事が課題だ。これはある意味では、
CONTAX Nシステムの市場への普及を妨げた原因でもあった事
だろうが、Nシステムや関連機器(645やデジタル)のトータルの
開発費を償却しようとしたら、必然的に高価な定価をつけざるを
得ない、さもなければ、何の為に必死になって同時に様々な
大規模な開発を行ったのか、意味が無くなってしまう。

けど、それにしても高すぎたかも知れない。
この時代が、まだ銀塩AF一眼レフが主力の時代であれば
これでも行けたのかも知れないが、前述のように、この時代の
ユーザーは、より古い銀塩カメラや、新しいデジタルカメラに
興味の対象が移ってしまっていた。

京セラがカメラ事業から撤退した事で、修理等のアフター
サポートの不安が出た事も、事後の時代のマニアの間で
さらにNシステムの買い控えが進む原因となった。

後年、2000年代後半には、事実上CONTAXは忘れ去られた
ブランドとなっていた。
あれだけ人気のあった RTSプラナー85mm/f1.4の中古相場も
3万円台まで落ち、レンジ機Gシステムの優秀な交換レンズ群も
1万円そこそこの捨て値となっていた。

CONTAX人気が再燃したのは、2010年代のミラーレス時代に
なってからである、これらの古いCONTAX RTSマウントや
Gレンズが、ミラーレス機で容易に使えるようになり、
西独時代、東西分断、商標訴訟、経営破綻とブランド移譲、
そしてヤシカ、京セラ、さらに事業撤退と続く、CONTAXの
波乱万丈の歴史を全く知らない新規ユーザー層(初級マニア)が
「CONTAXのレンズって、凄い性能なのだろう?」とか言って、
それらを購入し始めた。結果、中古相場はどんどんと上昇し、
現在では、それらの本来の性能からは納得できない所まで
コスパが悪化してしまっている。

まあ、そういう意味では「CONTAX」の悲運は、今なお継続中、
という事であろう・・

ちなみに、国産COTNAXの歴史は、本シリーズ記事での関連部分
を読んでいただければ、だいたい理解できると思う。決して
順風満帆では無いし、ブランドが神格化されるべき要素も無い、
ただ単に「銀塩一眼レフ」という1つの時代を30年間、ひたすら
駆け抜けたメーカーのブランド名がCONTAXであり、旧来(戦前)
から引き継いだ「高級ブランド」という一般大衆的イメージに、
翻弄されてしまった、メーカーや技術者の悲運の歴史なのだ。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09545302.jpg
さて、最後に本機CONTAX N1の総合評価をしてみよう。
評価項目は10項目だ(項目の意味は本シリーズ第1回記事参照)

----
CONTAX N1(2000年) 

【基本・付加性能】★★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【ファインダー 】★★★
【感触性能全般 】★★★
【質感・高級感 】★★★☆
【マニアック度 】★★★★★
【エンジョイ度 】★★★
【購入時コスパ 】★☆ (中古購入価格:100,000円)
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値  】★★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.4点

なかなかの好評価、「名機」と言えるかも知れない。

コスパ以外には特に目立った弱点は無い。
操作系が良く、極めてマニアックで、かつ歴史的価値が高い
カメラだ。

しかし、現代においては、システムとして成り立たせる為の
十分な中古流通量が無い。無理をして高価に入手する必要性
も無いし、専用レンズも種類が少なく、実用的な価値が少ない。

今回紹介したN Planar 85mm/f1.4は、特に使いこなしが困難な
レンズであり、もしブランドの魔力に負けて「ツァイス」に拘る
ならば、近年ではそれらが色々と沢山、デジタル一眼レフの
マウント用で新発売されているから、今更、わざわざ古い時代の
Nプラナーを購入する必要は無い。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_09542736.jpg
Nシステムは、あくまで上級マニア向けであり、CONTAXの歴史の
最後を飾る、記念碑的な意味で後世に残すべきものであろう。
新規の初級マニア等が安易に手を出して良い代物では無いと思う。
「ノスタルジーとレクイエム」、それがCONTAX N1の真実だ。

次回記事では、引き続き第四世代の銀塩カメラを紹介する。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>