
風速15mを越す超強風により、ドラゴンボートのレースができなく
なってしまった今年の御前崎市長杯(静岡県御前崎市、6月28日)
しかし、大会運営スタッフの見事な措置として、
レースを模した「大ジャンケン大会」で、予選から決勝までの
長時間の戦いを行い、(用意してあった)賞品を分け合うこととなり、
それはそれで非常に盛り上がり、多くの地元選手達は、それなりに
満足して会場を後にしていった。

御前崎市長をはじめ、大会の来賓の方々、そして”ゆるキャラ”や、
御前崎市キャンペーンレディも、帰途につく。
大会賞品はジャンケンにより公平に分配されているので、むしろ、
実力では勝てそうもなかったチームにとっては、結果オーライで
あったかも知れない。

こちらは3位の賞品の、地元特産「ハイナンメロン」、高級品として
知られ、かなり高価である、(値段を聞くと、驚くかもしれない)
ちなみに、2位、1位の賞品は、それぞれ冷凍カツオ、夢咲牛(肉)
とのことだ。
まあ、賞品が結構良いことで知られる静岡県の大会であるから、
見事賞品をゲットしたチームは、実際ラッキーであったと思う。

けどまあ、遠方(東京や横浜など)から参加の選手など、ちょっと物足りない、
という声も当然あった。
そこで、あくまで自己責任で「体験乗船会」を実施することとなった。
勿論、これにはいくつもの条件がある。
*乗るのはベテラン選手のみであること
*ライフジャケット着用は必須(これは今日に限らず、いつでも必須だが)
そして泳げること。
*風がやんでいるタイミングを狙うこと
*体験乗船は最大15分間のみ
*艇は、重たく沈没しにくい旧艇(重量約600kg)を使用すること
*艇の前後左右の重量バランスに配慮すること
*救助艇を用意し、かつ複数の海上保安庁現役職員が状況を見守る事
ちなみに、ドラゴンボートの大会で、風が問題になるのは2点、
1)スタートポイントに艇が揃わないこと
2)高波により浸水して艇がそのまま沈没してしまうリスクがある
このうち、1)は、レースではないので問題ない、
2)は、沈没しにくい艇を用い、かつ短時間の乗船とし、加えて
乗員もスタッフもベテラン選手達または海の専門家で、風や波が読め、
トラブル時の対応にも慣れている人達であること、こういった条件が
揃って初めて、この条件下での体験乗船が可能になるので、このような
ケースで、他の大会で簡単には体験乗船を行うなどはしない方が良い。

皮肉なことに、風はだんだん弱まってきた、現在の時刻は午前10時、
朝方7時ごろのように、15mもの風ではない、たまに10m近くの
強風が瞬間的に吹く場合があるが、平均的には、3~5m程度であった、
これだったら、大会も出来たのでは? などと欲が出てしまうが、
まあ、慎重であるに越したことは無いであろう。

そして、依然、夏には見えにくいといわれる「富士山」もはっきりと
見えている、ちょうど大型タンカーが入港したところなので、上の
写真のような珍しいカットとなった。

さて、順次体験乗船がスタートしている。
天候(風)は、今は大丈夫そうだが、急変する可能性もある、
なるべく短時間で体験会を廻し、かつ、状況の変化には留意しなくては
ならない、しかし、まあ、地元の海上保安庁をはじめ、港湾関連施設、
漁業、マリンスポーツ、など、多くの「海の専門家」たちがスタッフや
選手として居るので、あまり心配する必要は無いかも知れない。
私も、これまでコンパクトカメラのみを持って撮影していたのだが、
ここでカメラバッグから望遠レンズをつけた一眼レフを取り出し、
遅ればせながらの、本格的撮影の開始だ・・

さて、こちらの写真を見るとわかるのだが、会場、すなわち、御前崎港
貯木場の西側岸壁に、防波壁が設置されはじめている、
御前崎市は静岡県の最南端、遠州灘の突端であり、「東海地震」などが
起こった場合、津波被害が予想される、そうした予防措置であると思うが
この防波壁は、今後、工事が進むと、ドラゴンボート大会の実施が
難しくなってしまう、恐らく、来年の大会の時点では防波壁が会場全体を
取り巻くことになるであろう。そうなると、大会会場は近くのマリーナ、
あるいは漁協、海保、の各埠頭を利用する事になるかも知れないが、
あいにく、それらは直線のコースが取りづらい(他の船舶の出入りに影響
があるため、長い距離の航路をドラゴンで占有することができない)
なので、1つは、会場を変更すると同時に漁協等が休みの土曜に大会日程
を変えるか、あるいは、Uターンなどのコース設定を行うか、という話となる。
実は、もう1つの静岡の大会、10月の体育の日の連休の日曜に行われる
清水港「ツナカップ」大会でも、同様に、観光船の航路と干渉するという事で
昨年度の大会では、Uターン戦が真剣に検討されていた。
しかし、昨年のツナカップは、巨大台風の接近により、これまた中止になって
しまったのだ。ただ、実は、そのツナカップ当日は、台風の影響は少なく、
実際には大会は出来る天候であったのだが、清水港に、非常に多くの船舶が
避泊(ひはく=避難して停泊すること)していたので、Uターンどころか、
まったくドラゴンが走れる場所がなくなってしまっていたのであった(汗)
静岡の大会が2大会連続中止になったことで、実行委員長は、
「お祓いに行かないといけないかなぁ?」と真剣に言っていたのだが、まあ、
いずれもスタッフを原因とする不運ではなさそうなので、お祓いしても意味が
無いのかも知れない・・・
さて、で「Uターン」であるが、引き続き検討中だ、ただ、ドラゴン艇は、
構造上ターンは向かず(各地のペーロン艇はターンに向いている)難しい、
あるいは、舵の負担による破損などのリスクが伴う。
昨年のツナカップの前に、静岡県協会のスタッフによる、Uターンテストが
入念に何度か行われていた模様だが、
「ベテランチームならば可、ただし、ビギナーは難しいかも知れない」との話だ。

なので「たとえばビギナーチームは100mの超短距離戦なんかどうだろう?」
と、私も静岡協会スタッフから相談を受けたのだが、まあ、それでも良いとは
思うが、それだと、スタートでほぼ勝負が決まってしまうという欠点もある。
観客目線からも選手においても、15分のサイクルで、約30秒間のレース
では、少々物足りないであろう、そこで、私も、ちょっと考えて・・
匠「カーブなんかどうです?」
協「カーブ? まあ、Uターンの採用は考えていますが・・」
匠「いや、Uターンではなくカーブです、L型や弓形に曲がります、
ブイをそのように配置して、それらの外を通るようにして・・
これだと、Uターンほど難しくない、膨らまない、舵の(機構的)負担が
少ない、などのメリットがあり、ビギナーチームでも可能だと思います」
協「なるほど! それは検討してみる価値はありそうですね」
匠「はい、コースを弓形にすることで漁協あるいは海保の港では入港船舶を
避け200mのコースを取れるはずですよ、目測ではいけそうですが、
満ち干や、他船舶の侵入航路もあるので、是非、実際の海図を見て、
ご検討してみてください」
という提案をしておいた。後は彼らは海のプロだ、なんとでもするであろう。

まあ、それが実現すれば、勿論ドラゴン界初だ、ドラゴンボートの公式ルール
では、あくまで「直線」ということになっているが、それでは大会が成り立たない
のであれば、やむを得ない。
「直線」にこだわらず、ローカルルールとして、そうした事を行えば、逆に大会の
特徴にもなる、すなわち、コーナリング勝負となるので、むしろ、カーレース的な
「ライン取り」の要素も出てくるから、とても面白いと思うのだが・・
場合により、”溝落し”ならぬ、”ブイひっかけ”等の裏ワザも出てくるかも?笑
まあ、”ブイひっかけ”は、昨年の「相生ペーロン競漕」の決勝で「磯風漕友会」
が見せた技だが、まあ、「磯風」は狙ってそうしたわけではなく、むしろターンの
ライン取りのミスの模様だったが(汗)、そして”ブイひっかけ”は、高速で
ターンできるわけではなく、むしろ遅くなっているようにも見えたが・・(汗)
(その後の直線での挽回に必死だった・・まあ、結果、磯風は優勝したのだが)

さて、望遠レンズで思い出したのだが、ドラゴンボートの撮影は、会場によるが
基本的に、フィルム換算で600mm以上の望遠レンズが必須だ。
それを実現する機材だが、概ね3通りある。
1)APS-Cサイズ以下のデジタル一眼+400mm級レンズ
2)ロングズーム機(高倍率・高機能コンパクト機)の使用
3)コンパクトデジカメによる、超解像系ズーム機能の使用
ここで1)は最も適切だが、機材が、大きく、かつ重くなる、
物理的に持ち運べるレンズ焦点距離が400mmないし500mm程度なので、
フルサイズ機は不可、APS-Cか、フォーサーズ系となる。
フォーサーズやマイクロフォーサーズ系は適切なレンズが探しにくいかも
しれない、いちおう300mmあればきりぎりセーフ(換算2倍のため)だが、
機種が限られ、価格も中古を含め高価なので、過酷で機材損耗の大きい
ドラゴン撮影には、やや向かない。
そして2)のロングズーム機だが、まず手動ズームに限る、その理由は
電動ズームだと電源OFFで広角側にリセットされるからだ。
(長時間の撮影になるドラゴンでは、バッテリーをこまめに節約しないと
1日持たせることができないし・・)
また、電動ズームはロングズームの場合、細かい画角の設定がやりにくい。
手動ズーム機の場合、600mm,700mm,1000mmmくらいのものが
市販されているが、センサーサイズを小さくして望遠域を稼ぐタイプのものは
不可、それならば画像編集でトリミングするのと変わらなくなってしまう。
唯一存在しているのが、2/3インチで600mmの FUJI X-S1であるが、すでに
現行機ではない。そして、私が所有しているFUJI S200EXRと望遠焦点距離
以外の仕様は大差ない。で、基本的に、このタイプのカメラは、電源ON時の
起動の遅さ、そして、望遠側の画質やピント精度に問題が残る。
さらに3)の超解像ズーム機だが、まあまあ使える可能性はある。
今回の大会にも FUJI XQ1 を持ち込んでいる。これは、本大会には、
FUJIFILUMのチーム、すなわちチャンピオンカップの「漕げルンです」と
チャンレジの「勝てルンです」が参加しているので、FUJI のカメラを持ってきて
いるという意味もあるのだが、まあ、それだけの理由でカメラを選んでいる訳
ではない。
XQ1は、光学ズームとしてテレ端100mmの望遠を搭載しているが、連続の
超解像ズームが使えるのが特徴だ、
すなわち、類似の超解像機能を持つ、XF1やX-S1などでは、超解像は、
1.4倍、2倍の不連続である、ところがXQ1では、連続的に使えるので
光学ズームがいっぱいになった後でも、引き続き超解像(デジタル)ズーム
域にシームレスに突入させることができる、こうした仕様を持つコンパクト機は
少なくは無いが、基本、画素補間の要素も入っているので、最大画素では
使えない。(まあ、最大画素で写真を撮ることはまず無いのだが)
しかし、超解像ズーム機は、超解像域でのズーミング動作が遅い事、
電源OFFで広角側にリセットされること、超解像域でモニター画像が非常に
荒れること、また、望遠域でピントが合いにくいこと、起動の遅さ、など、
様々な課題は残る。

ということで、実のところ、ドラゴンボート撮影に適した望遠機材というのは
なかなか見当たらない。新製品だからといって、様々な課題が解決されている
わけではなく、また、高価な新品は、水、潮、風、雨、砂、熱など、過酷なドラゴン
ボート撮影で潰してしまうのは惜しい。基本、中古や旧製品を使いつぶすこと
となるであろう。現代のデジカメの中古相場からすれば、高くても3万円程度の
予算の範囲で探すこととなるが、なかなか適切な機材が無いのが現状だ。

さて、体験乗船の方だが、漕ぎたかった選手達も、ひととおり漕ぎ終えた
模様で、そろそろ撤収の準備ということだ。
ただ、会場は午後5時まで抑えており、その間の会場警備(車止めを外して
あるが、心無い人達が、釣りなどの目的で車を乗り付けてくるのを阻止する)
などで、スタッフは夕方まで残るという。
また、手配したお弁当もそろそろ届く時間であるが、購入したお弁当を放棄して
帰宅したチームもいくつもある模様で、余った弁当の処理にも困ってしまいそうだ。
まあ、大会が中止になるということは、それで終わり、という訳ではなく、様々な
後始末も必要になるという事だ。

テントなど大型機材は分解して業者が既にトラックで撤収済み、また、コースに
設置したブイも水上バイクで回収済みだ、パドルやライフジャケット等の備品も
撤収OK,あと残るは、海上の仮設桟橋撤去と、ドラゴン艇の回航だ。
桟橋撤去は翌日業者さんが行う模様なので、今日の段階では、ドラゴン艇を
回航させればそれでOK。
ドラゴン艇は、この貯木場の隣港の御前崎マリーナに保管している模様なので
水上バイクで曳航、または、手漕ぎで回航させる。依然風が強いので注意が
必要だが、残ったスタッフは海の専門家ばかりなので、まあ大丈夫だろう。

ということで、レースこそやらなかったが、第8回静岡ドラゴンボート御前崎
市長杯は、無事終了。
まあ、ハプニングやアクシデントがつきものの屋外イベントだ、
ポイントは、そうした不測の事態が起こった際に、いかに収拾するか、
そこにつきると思う、そういう意味では、今回の収め方は良かったと思う。
また来年、ということで選手やスタッフ達に挨拶をして帰途についた。
けどまあ、静岡のドラゴンボート大会は、もう1つ、10月に行われる
清水港まぐろ祭り「ツナカップ大会」がある、今年の実施は10月11日(日)
に予定されている、ツナカップ大会は人気の大会なので、締め切りが速い、
しかも、応募チーム多数の場合は抽選になるという。
関西のチームからも「ツナカップに出場したい」という話は良く聞いている、
が、例年、「もう締め切っちゃいました」でなかなか参加できないとの事、
今年、出場したいチームは、静岡ドラゴンボート協会のHPなどで、
情報をこまめにチェックしておくのが良いと思う。
次回大会記事(日本選手権)に続く。