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【玄人専科】匠の写真用語辞典(14)~撮影技法・特殊技法 Part 2

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一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」や
「本ブログ独自の写真用語や概念」を解説するシリーズ記事。

今回第14回記事は「ノウハウ編」でのサブカテゴリーの
「撮影技法・特殊技法」の「Part2」とする。
c0032138_16363166.jpg
<撮影技法・特殊技法>Part 2

★デジタル拡大機能
 一般用語+独自概念。

 まずデジタル拡大機能とは、画像処理的手法を用いて、レンズの
 画角(焦点距離)を仮想的に伸ばす(拡大する)機能と定義する。
(注:ピント確認やMFの為に、EVFやライブビューでの表示画像を
 拡大するケースは除く。その事は「拡大表示」と呼んでいる)

 これはメーカーにより色々な処理方式や呼び名がある機能だが、
 本ブログでは
 ・デジタルズーム(画角を連続的に変化させる事が出来る)
 ・デジタルテレコン(画角を1.4倍、2倍等、予め
  決められたステップで段階的に変化させる事ができる)
 の2種類に統一して、かつ区別している。

 近年の多くのミラーレス機には、デジタル拡大機能が入って
 いるが、一眼レフであっても例えばSONY αフタケタ機には
 デジタルテレコン機能が搭載されているし、NIKON機での
 撮像範囲設定(FX→DXまたはDX→1.3倍モード。いわゆる
 クロップ機能)も、原理的には類似であると言える。
c0032138_16363145.jpg
 一般初級中級層には、これらの機能は、以下の3つの理由で
 嫌われている。
 1)画質が悪くなる
 2)画素数が減る
 3)トリミング編集と等価な為、使う意味が無い

 これらは確かに半分はその通りだ、だが、短所ばかりという
 訳では無い、デジタル拡大機能を、より深堀りするには、
 まず、その原理と効能を良く理解する必要があるだろう。

 デジタル拡大には概ね以下の4つの方式がある。
 A)単純拡大
 →画像処理(スプライン関数、バイキュービック法、
  ランチョス法など)により単純に画像を拡大する。
  2~3倍程度迄ならば画質の劣化はあまり目立たない。
 (注:ここでの「倍数」は、撮像素子の対角線長の変化だが
  簡便には、レンズ焦点距離の変化と見なしても良い、
  例:100mm画角→200mm画角になれば2倍)

 B)超解像拡大
 →画像処理手法の一種であり、画像の一部の特徴を解析
  しながら、どのように補間するか(拡大したピクセル
  の隙間をどれくらいの色にするか)を決めていく手法。
  概ね上記単純拡大よりも高画質で拡大でき、4~6倍
  程度までは画質劣化は目立たない。

  このやり方(アルゴリズム)は各社様々だが、大別して
 「1枚超解像」と「複数超解像」があり、前者は主に
  デジカメや画像編集での静止画処理に用いられている。
  後者は複数のフレーム(コマ)が必要な為に、従来は
  ビデオデッキ等での動画処理(NTSC→ハイビジョン)等に
  使われていたが、近年ではデジカメでも連写を行ってそこから
  合成する「連写超解像」や、内蔵手ブレ補正と同様に撮像
  センサーを微細に動かしながら連写を行い、それらを合成して
  解像感を高める方式(例:PENTAX リアルレゾリューション)も
  存在する(注:これを拡大処理とするか否か、は別の要素だ)

  なお、この手法が高画質かどうかは、被写体の状況や、それ
  に求める要素によりけりであり、常に期待するような高画質
  な拡大処理が得られる訳でも無い。
 (参考:下写真は、超解像拡大で輪郭線が固くなった例)
c0032138_16363033.jpg
C)画素補完型拡大
 →撮像センサーの記録画素数を、拡大と同時に低める事で
  画質が劣化しないデジタルズーム(テレコン)が実現する。
  例えば最大1600万画素のデジカメでは、800万画素に
  落とすと1.4倍(=√2倍)、400万画素に落とせば
  2倍の拡大率が得られる(その途中の画素数も原理的には
  可能である)

  画質が劣化しないのが最大の特徴だが、記録画素数が
  減る事と引き換えだ。趣味撮影などでSNS等掲載用の
  写真を撮ったりL判程度にプリントするならば、400万画素
  もあれば十分過ぎる程であるので、そういう用途であれば
  実用的な機能だ。

  画素数が減る事については各社で2種類の方式があり、
  ・記録画素数を最初から低めておかないと、この機能が
   利用できない(例:パナソニック)
  ・この機能を使うと記録画素数が自動的に減る(例:SONY)
  があるので、自身の使っているカメラの仕様を理解しておく
  必要がある。
c0032138_16363099.jpg
 D)センサーサイズの変更
 →例えばフルサイズ機をAPS-Cモードで使うと 約1.5倍の
  画角が得られる、あるいはAPS-C機でさらにセンサーサイズ
  を(例えば μ4/3相当)に小さくして使うと、2倍程度の
  画角が得られる。

  NIKON機では高級デジタル一眼レフにこの機能が入っていて
  これを「クロップ」(切り取る)機能と呼んでいる。
  また、SONYフルサイズミラーレス機(例:α7)でも
  フルサイズ→APS-Cモードに(任意に)変更が出来る。

  上記C)の画素補間方式と原理的には極めて類似しているが
  こちらの方式では、測距点や露出計算の分布パターンが
  変化するので、それがメリットとなるケースも多々ある。
  ただし、手ブレが起こりやすくなる弱点と、重要なのは、
  センサーサイズが小さくなった分、勿論だが記録画素数が
  減ってしまう。
  勿論ここはユーザーの用途によりけりであり、減った
  画素数でも写真を利用する解像度を満たしていれば、何ら
  問題は無い。

  ただ、ニコン機でもD4やDfでは記録画素数が最大でも  
  1600万画素しか無い為、例えば趣味撮影で画像サイズを
  FXのS(約400万画素)や、M(約900万画素)で使っていて
  遠方の野鳥を見かけた際等で、クロップしてDXモードに
  設定変更すると画素数が大幅に減り、Sでは160万画素
  Mでは、380万画素にまで減る。
  160万画素はさすがに小さいので、本来であればクロップ   
  時には、同時に記録画素数を上げる(つまり上記Cの
  画素補完方式とほぼ等価)ような仕様にして貰いたい。

  まあ、NIKON機は全体に操作系仕様が練れていない(他社
  よりもかなり遅れている)ので、こういう細かい配慮を
  期待するのは難しいが、操作系仕様を良く考察してあって
  その(インターフェース設計)専門部署まであるという噂の
  SONYであっても、α7等では同様にAPS-Cモードでは単純に
  画素数が減ってしまう。(この為、最初からαのAPS-C機
  を使った方が簡便だし画素数的に有利になる場合もある)

 さて、デジタル拡大の原理を理解したところで、概ね画素数の
 減少や画質の劣化の問題は、用途や設定で回避可能だと言う
 事が、わかったと思う。
 以下は、さらに高度なデジタル拡大機能の応用についてだ。

 これらの機能のメリットは概ね3つある。
 1)デジタル拡大で測光パターンが変化する仕様の場合、
  その操作においては、主要被写体の面積比率が、より
  増える為、露出補正操作の必要性が減る。
 (例:晴天時に遠距離の水面上にあるボートは、通常は
  周囲の明るさに露出が合い、真っ黒に写るが、望遠に
  すればする程、画面内のボートの面積比率が増えて適正な
  明るさに近くなっていく、下写真2枚参照)
c0032138_16364418.jpg
 (注:この利点は、カメラ毎の画像拡大の方式によっては
  得られない場合がある。例えば画面全体からの露出決定後に
  デジタル拡大処理を行う場合は無効だが、センサーサイズを
  小さくするクロップ仕様であれば有効である等)
c0032138_16364489.jpg
 2)被写界深度を維持したまま構図を変更できる(注:望遠
  側のみ)あるいは撮影距離を変えながらデジタルズームを
  併用して、絞り値に頼らずに被写界深度が変更できる。

  この結果、作画的な構図自由度が格段に上がったり、
  またはミラーレンズ等で絞りが無いレンズでも被写界深度が
  変えられる(注:これは凄い利点である)
  そして、さらに高度な使い方としては、前記事で説明した
 「ボケ質破綻の回避技法」として非常に有益である。

 3)業務撮影等で大量の画像を編集しなくてはならない場合
  デジタルズームで予め構図を決めて撮影すれば、後での
  トリミング編集の手間が大幅に減る(=編集コストが下がる
  何千枚もの写真を何日もかけて編集していたら赤字だ・汗)

 4)撮影時にこれら拡大処理を行う事で、「どう撮りたいか」
  が十分に意識できる。事後のトリミング編集では、その意図
  を忘れてしまっている事もある。(又は撮影者以外の人が
  写真編集作業を行う事も、業務上では有り得るであろう)

 これらのデジタル拡大のメリットは頭の中で考えているだけ
(例:デジタル拡大はトリミングと等価だ、という誤解)では
 まずわからず、実際にこの機能を多用していないと見え難い
 利点だ。

 それから、デジタル拡大には、一般には見え難いデメリットも
 いくつか存在する。


 A)内蔵手ブレ補正機能が使い難い場合がある
  オールドレンズ等の焦点距離情報が得られないレンズを、
  内蔵手ブレ補正の焦点距離手動設定が可能なミラーレス機や
  一眼レフで使った場合、各種デジタル拡大機能を用いると
  見かけ上の焦点距離が変化してしまい、手ブレ補正が効かなく
  なる場合がある(注:これは機種毎の拡大仕様によりけりだ)

  また、当然の事だが、画角が狭くなると手ブレしやすくなる。
  この為、1000mmを超える超々望遠域の換算拡大画角ともなると、
  内蔵手ブレ機能は、ほとんどまともに動作しない。
 (そして、1500mmを超えると、手持ち撮影は、ほぼ不可能だ)

  なお、オールドの単焦点ではなく、(光学)ズームレンズを
  使った時点でも、同様の理由でアウトであり、デジタル拡大
  機能を使う使わないに限らず、内蔵手ブレ補正を利用する事は
  困難である。(注:これは、どの機種でも同じだ)
 
 B)最短撮影距離までは短縮できない
  オールドレンズやレンジファインダー機用レンズでは
  最短撮影距離が長いものが多く、特に広角レンズでは
  最短が長いと、構図上、あるいは撮影アングル・レベルの
  制限が大きく、やっていられない。
  デジタル拡大機能で、見かけ上の被写体の大きさは大きく
  できるが、最短撮影距離は変化しない為、被写体に寄る
  事が出来ず、物理的な構図制限はそのまま残る。

 C)望遠効果が出ない
  デジタル拡大機能を用いても光学的な望遠効果が得られない。
 「望遠効果」とは、以下のような要素を含む。
  ・レンズの焦点距離が長くなる事での被写界深度の減少。
  ・遠近感(パースペクティブ)の圧縮効果。
  ・被写体に対する背景の取り込み範囲の減少(背景の整理)
  ただし背景の整理は、上手くデジタル拡大機能を用いる事で
  ある程度、望遠レンズの代用とする事は出来るであろう。  

 さて、上記の様々な原理を良く理解すれば、どのような撮影
 シーンにおいてデジタル拡大機能が有効かは、上級者レベルに
 おいては応用が可能であろう。

 ただ、結構高度なデジタル/光学知識を要求される内容で
 あるから、初級中級層は理解や応用は困難であると思う。
 であれば、冒頭に述べたような、初級中級層が持っている
 デジタルズームの疑問点(画質が落ちる、画素数が減る等)
 の回避は、これらの原理をきちんと理解していない場合は、
 残念ながら無理だと思う。

 が、せっかく高いお金を払って買ったカメラについている
 機能だ、よく内容を勉強して理解したり、「先入観念」で
 毛嫌いせずに色々と使ってみて、その効能を自分なりに把握
 して応用していかなくてはならない、そういう努力をする事が
 ビギナー層には最も必要な事だと思う。

---
さて、「ノウハウ編」と言いながらも、ここまで概念的な部分
の解説が多くなってきてしまった(汗)
少しづつ、具体的な撮影技法等に説明の方向を変えて行こう。

★ピンホール露出計算
 独自概念。

 ガラズのレンズが何も入っていない、ただの「穴」つまり
「ピンホール」で写真が撮れる事は、カメラの原理を習った
 人の間では良く知られている。
 勿論、通常のレンズよりも、ぼやけた写りにはなるが、
 独特のノスタルジックな描写は銀塩時代からファンも多い。
(注;画像周辺が暗くなる=周辺減光、は、ピンホールの
 原理上では起こらない、それはまた別の理由だ→後日解説)
c0032138_16364485.jpg
 ピンホールは、ごく稀に市販もされているが、カメラのボディ
 キャップにドリルで穴を開け、そこに、ごく小さい穴を針で
 開けた黒い紙や布を貼り付ければ簡単に出来てしまうので、
 自作する事が普通であった(以下写真)
c0032138_16364491.jpg
 が、ピンホールを使った際の露出計算の方法は簡単では無い、
 銀塩時代の一般的な一眼レフでは、(LXやOM-2Nを除き)
 露出計の連動範囲外であるし、外部露出計を使ったとしても、
 どのように計ったら良いかが不明で、なかなか困難であった。
 ネガフィルムの場合には、完全なカンで「この明るさだったら
 4秒くらいかな?」と、ある意味”適当”に撮っていたのだ。

 ここでは外部露出計を用いる独自の計算方法を紹介する。

 まず自作品ではピンホールのF値(口径比)が不明だと思うが、
「装着するカメラのフランジバック長÷ピンホール穴径」
 という式で求まる。
 一般的な一眼レフのフランジバックは、概ね45mm前後だ、
 ピンホールの穴径は自作の場合、0.15mm~0.25mmであり、
 まあ平均を取って0.2mmとしよう。
(注:穴径が正確に測れなければ、だいたいの値でも良い。
 または、他のレンズや露出計を用い、それとの比較から
 穴径あるいは開放F値を推測する方法もある)
 ちなみに、KENKOから発売されている市販ピンホールも
 穴径が0.2mmだ。
c0032138_16370193.jpg
 なお、穴径が小さいとシャープに写るが、F値が暗いので
 必要な露光時間(シャッター速度)が長くなる。

 具体的には、ピンホールの開放F値=45mm÷0.2mm=F225
 これが代表的なF値であるが、どんなピンホールでも、だいたい、
 F180~F300の間に収まるであろう(注1:一眼レフ使用の場合。
 注2:適正な穴径を求める公式があるが、今回は割愛する)

 ここで以降の計算を簡略化する為、F256のピンホールを想定する。
 で、このF256は一般的なレンズのF値より、どれくらい暗いのか?
 それがわかれば、ピンホールのシャッター速度が計算できる。

 ここでも計算を簡略化する為、ピンホールより約1000倍、
 すなわち10段(2の10乗=1024)明るいF値を求める。
 これは、F値256を2で割る事を5回繰り返せば良く、結果は
 F8となった。 これがF256より10段明るいF値だ。

 もし、自分のピンホールが若干明るい(穴径がやや大きいか、
 又はフランジバックがやや短い)ならば、F180程度となり、
 この場合、10段明るいF値はF5.6となる。
(ここは自身が使うシステムにおいて計算する必要がある)
c0032138_16370171.jpg
 さて、10段=2^10=1024であるから、今計算したF8なり
 F5.6なりのF値の場合の露出値は、同一ISO感度であれば、
 ピンホールよりも1024倍速いシャッター速度が得られる。

 カメラにおける表示シャッター速度の500とか1000の数字は
 分母の数字であるから、ピンホールの露出値は、外部露出計
 または他のカメラにおいて、絞りをF8(又はF5.6等)にセット
 した時に得られる表示速度に対して、1024倍遅い、この答えは、
「1/(表示シャッター速度)x 1024倍」となり、
 この式を変形して
「約1000÷露出計表示シャッター速度」がピンホールにおける
 シャッター速度の計算式だ。

 この式であれば(外部)露出計が250(分の1秒)を示したら、
 1000÷250=4秒、のように暗算でピンホール露出値が得られる。
 以下同様、125ならば8秒、500ならば2秒、と簡単である。
(注:外部露出計の感度設定をピンホール・システムと同じに
 する事、またF8で測定するかF5.6等でするかは穴径次第だ)
c0032138_16370125.jpg
 この計算式は、私が銀塩時代に考え出したものであるが、
 かなり便利であり、ピンホール撮影の際には重宝した。
(注:上写真では、フォクトレンダーVCメーターを露出計に使用、
 なお、便宜上、室内での計測でスローシャッターとなっている)

 なお、銀塩のフィルムはISO感度が100~400位であった為、
 どうしても数秒という露出時間が必要で、この長さだと
 三脚を使うか、又はカメラをどこかに置いて撮る必要があった。

 しかし、現代のデジタルカメラにおいては超高感度が使える。
 例えばISO51200であれば、ISO100のフィルムの512倍の
 速さのシャッター速度が得られる。
 銀塩ピンホ-ルでISO100で4秒の条件であれば、その512倍の
 シャッター速度は1/125秒である、この速さであれば、
 手持ち撮影が可能となる。
 概ね屋外の明所であれば、最大ISO25600以上の感度がある
 デジタルカメラならば、ピンホールの手持ち撮影が可能だ。
(注:内蔵手ブレ補正機能があれば、さらに条件が緩和する)
c0032138_16370183.jpg
 ただし、一眼レフの光学ファインダーでは、F180~F256
 ともなると、真っ暗で構図確認が出来ない。
 これは撮影不可能なので、ライブビューモードに切り替えるが
 初級一眼レフでは、ゲイン(光の増幅の度合い、これは最高
 ISO感度にも関連する)が足りず、モニターがかなり暗くなる。
(注:最高ISO感度が概ね25600又は51200以上の機種ならば、
 ライブビューでも明るい画像が得られる。ただし初期設定の
 ままではそこまで上がらない機種も多く、拡張設定が必須だ)

 他に、一眼レフの内蔵フラッシュを上げて、その枠を後ろから
 覗き、簡易ファインダー代わりとして使う裏技が存在する。

 まあ、面倒なので、ここはミラーレス機の方が良いであろう。
 ミラーレス機であれば、ピンホールでもEVFやモニター画面に
 構図が見える場合が多い(注:これもカメラ最大感度に依存
 するが、一眼レフより後発であるミラーレス機は高感度を
 搭載している場合が多い。ただし、ここも拡張が必須だ)

 それから、ピンホールの装着方法を上手く工夫すれば、
 ミラーレス機のフランジバック長は一眼レフよりずっと短く、
 概ね半分以下なので、さらに見かけ上のF値が1段~1.5段程
 明るく、計算上ではF64~F128程度になる。
(注:アダプターを使って、一眼レフと同じフランジバック長に
 したら意味が無い、できればミラーレス機に直結したいのだ)
 F値が明るくなると、同一感度ならば、その分速いシャッター
 速度が得られるので、手持ち撮影が、もっとやりやすくなる。
 内蔵手ブレ補正機能の入っているミラーレス機ならば完璧だ。

 まあつまり、ミラーレス機とピンホールの相性は悪く無い訳だ。
c0032138_16371946.jpg
★プリセット絞り
 一般用語、マニア用語。

 多くのロシアンレンズや、国内外のオールドレンズの一部には、
 近代での一般的な絞り環では無く、二重構造に見える絞り環が
 ついているレンズが存在する。

 この場合、片側が実際の絞り値であり、もう1つは、
 開放と設定した絞り値を切り替える方式となっている場合が
 殆どだ。こうしたレンズの構造を「プリセット絞り」と呼ぶ。
c0032138_18315597.jpg
 何故こんな面倒な事になっているのか?は、昔(1950~1960
 年代)の開放測光では無い一眼レフ(絞り込み測光/実絞り測光)
 では、絞り環を絞ると光学ファインダーが暗くなり、ピント
 合わせが困難になったからだ。

 手順として、まず、プリセットを開けて、絞り開放でピントを
 合わせ、次いでプリセットを閉じて、露出を手動で会わせて
 やっとシャッターを切れる・・ という面倒な方法であった。

 だが、これらの「プリセット絞り」レンズをミラーレス機に
 マウントアダプターを介して装着し、ピント合わせをEVFや
 背面モニターで行う場合、絞り込んでも見える映像が暗くなる
 訳では無いので、「プリセット」は閉じたままでも問題は無い。
 
 で、ここまでが、まあマニア等の間では一般的に知られている
 内容ではあるが、ここからさらに、もう少し工夫してみよう。
 以下は、独自の技法だ。

「プリセット絞り」は、絞り開放と設定した絞り値を瞬時に
 切り替える事がえきる機構である。であれば、これを作画意図
 に活かすならば、例えば開放F2と、絞り込んだF11等の値を
 一瞬で切り替えて連続撮影ができるので、F2で背景をボカした
 写真と、F11等でパンフォーカスとした写真を、連続して
 簡単に撮影が出来る。これはなかなか便利な機能となる。
(注1:プリセット環の動作が劣化していて多少スカスカの
 方がむしろ好ましい。
 注2:この操作では露出値が大きく変わるので、露出原理を
 良く理解した上で、AUTO-ISO設定等を最適化しておく)

 なお「今時の普通の一眼レフでもダイヤルを廻して出来るよ」
 どは言うなかれ。
 ただ単に「出来るか出来ないか」と「効率的か否か?」は、
 まるっきり意味が異なるのだ。
(注:本件に限らず何でもそうだ。例えば、メニューの奥底にある
 特殊な機能等は、事実上では「使えない」と等価だ) 

 もう1つのプリセット絞りの用法だが、最大限に絞り込んで
 おけば、OPEN/CLOSE環で絞りを連続的に無段階に変更できる
 ものも多い、微妙な絞り調整(ボケ質破綻回避等)において
 非常に役に立つ機構(技法)だ。

 さて、今時の一眼レフは、ほぼ全てがカメラ本体側のデジタル
(電子)ダイヤルでの絞り値の操作となっている。
 そして、中上級者であれば、絞り値のステップ設定は、殆どが
 1/3段モードにしているであろう。

 この状態で、F2からF11まで設定を変えるのは、ダイヤルを廻す
 回数が多い(15段階もある)ので、結構な手間だ。
 普通は面倒なので、こういう事はやらない事であろう、さらに
 言えば、面倒なので、あまり大きく絞り値を変えて撮ってみよう
 とも思わなくなる。だから、自分が設定した絞り値から微調整
 する位となってしまう(=絞り値の変更操作に無頓着になる)

 背景ボカし(F2)と、パンフォーカス(F11等)では写真の雰囲気や
 写真が主張したい部分(特定の被写体か、構図全体なのか?)も
 全く異なるのだが、現代のカメラシステムでは、下手をすれば、
 そういう発想も持ちにくくなってしまう恐れもある訳だ。
(特に初級層は、絞りを色々と設定して撮ろうとは思わない。 
 被写界深度が変わる事は知っていても、開放F値が暗い標準
 ズーム等では、殆どその効果が得られない事も原因としてある)

 まあ、中級マニア等であれば、プリセット絞りの古いレンズを
 使って、この技法を試し、大きく(作画)意図の異なる写真を
 撮ってみるのも新鮮な発見があって良いだろうと思う。
 ただ単に、珍しいレンズのボケ質やら解像力の良し悪し等を、
 あれこれと語るだけがマニアの方向性では無いと思うからだ。

★魚眼構図制御
 やや独自概念に近い一般用語。
c0032138_16371951.jpg
 対角線魚眼レンズを用いて撮影すると、画面が歪んで写る。
 このデフォルメ効果は、初級層においては最初に使った時には、
 実物と写真が大きく異なって見える事からインパクトが大きい
 のだが、しばらく魚眼レンズを使っていると、「なんだか
 構図的にまとまりが無い」とか「自分が思ったようには撮れない」
 という風になって、飽きてしまう(使いこなせない)事が多い。

 魚眼レンズは(トイレンズ系や近年の中国製魚眼レンズを除き)
 高価であるので、せっかく買ったのに使わないのでは勿体無い。

 ここでは対角線魚眼レンズの構図上のポイントを上げておこう。

「対角線魚眼では、画面中点から放射状に伸びる直線は曲がらない」
 が最も覚えておくべきポイントである。
c0032138_16371958.jpg
 だから。海や湖の水平線、ビル等建造物の直線部分を、この
 中央点からの放射直線上に構図的に配置すれば、少なくとも
 その部分は歪まないように写せる訳だ。
「構図的にまとまりが無い」という課題は、画面のどの部分も
 歪んでしまって、何がなんだかわからない、という状態にも
 相当すると思う。
 
 ・・とまあ、これは単純な話なのだが、ところがこれを実際に
 やってみようとすると意外にも非常に難しい。
 カメラを少しでも傾けてしまうと、被写体の放射直線部が
 すぐに曲がってしまう(下写真)
c0032138_16371906.jpg
 三脚で水準器を使ってもあまり効果は無い、ここで「傾く」と
 言うのは3次元的にあらゆる方向に(ローイング、ヨーイング、
 ピッチングも)影響がある、水準器(アナログ、デジタル)では
 1~2次元なので、これでは足り無いし、そもそも水準器では
 計れない方向がある(例:カメラを水平には構えているが、
 例えば右側が、より前に出ていて、被写体に平行では無い。
 あるいはカメラは水平だが、レベル(高さ、位置)が異なる為、
 被写体の直線部が、構図上の放射直線と合っていない)

 ・・そこで、三脚や水準器には頼らずに、EVFやモニター画面を
 見ながら魚眼レンズで直線を出すようにする方が良い。
 これはかなり大変だが、初級中級層にとって良い構図の練習と
 なる、三分割だとかS字などの「教科書的」な構図の練習を
 しても殆ど意味が無いが、この「カメラの持ち方、角度、
 レベル等を微妙に調整する」と言う作業は、通常レンズと通常
 被写体では、あまり差異が出ない状況が、魚眼レンズでは
「直線が歪む」という事から顕著に差がわかる訳だ。
 まあつまり、カメラのトレーニングには最適だという事だ。

 なお、この話は前記事の「初級者中級者の三脚不要論」にも
 微妙に関連がある。
 三脚を使っていて1~2次元の水準器で「水平が取れていれば
 安心」という訳では決して無いので、むしろそれに頼ってしまうと
 三脚と水準器では調整できない方向(例:ヨーイング=捩れ方向)
 やレベル(高さ)の変化に対する理解が遅れてしまうのだ。
 なので「被写体が曲がって写っているよ、もっとしっかり三脚を
 立てないとダメだな」など、実際の原理とは異なる方向に意識が
 行ってしまう。これは当然ながら大きな間違いだ。

---
さて、今回の「撮影技法・特殊技法Part 2」は、このあたりまでで、
次回は引き続き同サブカテゴリーPart3の用語解説を行う。


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