本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回は「HOLGA LENS」(ホルガ レンズ)を4本取りあげる。
これらは勿論、全て「トイレンズ」であるので写りは悪い。
その「Lo-Fi感」を、意識およびコントロールする事が、
「トイレンズ」のデジタルにおける利用法の骨子となる。
なお、本シリーズ記事は上級層または上級マニア向けの内容で
あり、ビギナー等向けの平易な解説とはしていないので念の為。
また、上級者ですら「トイカメラのエフェクトと何処か違う?」
という疑問を持つかも知れないが、そこは追々解説して行こう。
![c0032138_16155118.jpg]()
まず最初は、HOLGA LENS 60mm/f8 HL-O
(新古品購入価格 1,000円)
今回紹介のHOLGAレンズ群は、いずれも2010年代前半の
発売と思われる。本レンズに関しては、旧マウントである
4/3(フォーサーズ)用の在庫品をアウトレットで購入した
ので非常に安価ではあったが、現代において、これを使う
システムの構成が少々難しい。
4/3→Eマウント・アダプター(電子接点は不要)を用いれば
α7系等のSONY機でも使用できるが、今回は、オリジナルの
フォーサーズ機であるOLYMPUS E-410を使用してみよう。
なお、4/3機は基本的には4:3アスペクト(縦横比)であるが
元々のHOLGA 120は、中判(120、ブローニー)フィルムを
使用し1対1比率(=スクエア・フォーマット)である為、この
システムでの実写例は正方形にトリミングした状態で掲載する。
この状態での換算画角は、かなりの望遠(約140mm相当)となり、
HOLGA 120での画角の約4.3倍だが、余り気にしないようにする。
加えて、意図的にブラす等の「Lo-Fi撮影技法」も使ってみる。
![c0032138_16155142.jpg]()
まず最初に「トイカメラ」の歴史から述べよう。
・・と言うか、本記事では、「トイカメラ」や「トイレンズ」
の変遷の歴史を紹介する事を主体とし、個々のHOLGAレンズの
描写力などについての説明は最小限とする。
元々、トイレンズに関しては、その写りを真面目にあれこれと
評価する方が的外れであり、そういう視点で製品を語るような
類のジャンルでは無い訳だ。
それに、今回紹介する4本のHOLGAレンズは、どれも皆、同じ
ようなもの(描写傾向)である、個別に差異や詳細をあれこれと
分析するようなものでも無いし、そもそも4本も所有している
方がおかしい(汗) どれか1本だけ持っていれば十分なのだ。
(注:とは言う物の、本記事においては、レンズ毎に撮影技法や
カメラ設定等は大きく変えている)
![c0032138_16155107.jpg]()
さて、HOLGA(120)やLOMO(ロモ)(LC-A)は、代表的な
「トイカメラ」である。
ただ、最初から「トイカメラ」と言う呼び名があった訳では
ないと思う。
元々は、非常に安価な銀塩写真機として海外で発売されていて
HOLGAは中国製で、LOMOは(旧)ソ連製(注:後年においては
販売元はオーストリアのLomography社となっている)
いずれも1980年代前半からの発売(製造)開始だ。
他にも銀塩トイカメラは、海鴎やVIVITAR、ハリネズミ(製品名)
等、色々とあるのだが、それらの話は今回は割愛する。
で、老舗と言えるHOLGAやLOMOも、当初は日本で全く知られて
いなかった。と言うか、恐らく最初は輸入されてもいなかった
かも知れない。
なにせ、1980年代では国産カメラは銀塩コンパクト機に
関しては、ほぼ全てがAF化され、ズームレンズも搭載されて、
「誰にでも簡単に高画質の写真が撮れる」といった、撮影の
利便性を高める方向に、市場の意識は全て向いていたのだ。
ここに、ピントも絞りもシャッタ-速度も、全て固定で何も調整
が出来ないという、玩具のようなカメラに興味を持つ人は殆ど
居なかったのだろう。だから販売もされていなかったと言う事だ。
(まあ、当初、共産圏だけの市場流通であった理由もある)
私が最初にトイカメラを目にしたのは1990年代の後半頃で
あった。当時、オーストリアからの職業留学中の若い男性と
知り合い、彼がソ連製の「LOMO LC-A」を持って来ていたのだ。
ロシアに比較的近いオーストリア(注:彼は自国の事を
「ウーストリッヒ」と呼んでいた。公用語はドイツ語)
ではあるが・・
実は、LOMOは、一般的には「旧ソ連製」と言われているのだが、
その販売元である「ロモグラーフィシェ株式会社」
(通称:Lomography/ロモグラフィー)は、「オーストリア」
に本社を置いている企業なのだ。(注:1994年以降の話)
旧ソ連のサンクトペテルブルクにLOMOの関連工場があった、
とも言われているし、あるいは古くからカメラを製造している
ZENIT(注:KMZ(クラスノゴルスク機械工場)の事、こちらは
モスクワ近郊にある工場で、ZENITやZORKIといったカメラや
ZENITARレンズで、マニアには著名)に依頼して、光学系等を
製造したという情報もあるが、昔の「東側」での話なので
詳細は不明である。(注:こく近年のLOMO製の高性能レンズ
も、ZENIT社でレンズを製造している模様だ。後日紹介予定)
まあともかく、オーストリア人の彼が、当時「LOMO LC-A」
を入手するのは、さほど難しい事ではなかったであろう。
(注:オーストラリアでのカメラ関連の歴史については、
「フォクトレンダー」とか「ペッツヴァール」とかが
絡んできて、とても興味深いものがある。しかし、この話は
とても長くなるので、いずれ機会があれば詳しく紹介する)
・・で、彼は「このカメラは、安かったので故郷で買ったが
写りがとても悪い。日本に居る間に高性能な日本製カメラを
買いたいのだが、相談に乗ってくれ」との事であった。
まあ彼は独語と英語は話せるが、日本語がペラペラでは無い
ので、中古カメラ店舗等での交渉や購入は難しい訳だ。
結局彼は、私の紹介でEOS 5 QD(1992年)とズームレンズを
中古で買うと、「LOMO LC-Aは、もういらない」と言い出した。
私は「せっかく故郷で買った物なのだから、持っておきなよ」
・・と言いつつも、どんなに写りが悪いのか? もしかすると
彼はまあ、写真はビギナーなので、カメラの使い方が悪くて
写りが悪いのかも知れない、という風にも思って興味が沸いた。
そこで彼が使わなくなった「LOMO LC-A」を、しばらく借りて
写して見ることにしたのが・・
これがともかく難しい、撮り手がコントロールできる設定
要素は何も無く、カメラまかせとなるが、例えば露出自体が
AEと言うものの非常に不安定である。これの原理を理解しつつ
晴天時に感度高目のフィルムで絞り込ませるようにして遠距離
を撮るなどを行えば、まあ普通に撮れるが、それでも周辺光量
落ちが大きい。(注:「口径食」であれば絞り込むと周辺減光
は解消される筈だが、それ以外の「コサイン四乗則」なども
原因として影響しているのかも知れない・・詳細判断不能)
曇天や暗所、中近距離撮影等では、写りが安定せず、露出の
バラツキ、構図のズレ、ピンボケ、手ブレ、カラーバランスの
乱れ、などの要因が複合的に発生し、どのように撮れたかは
現像してみるまでわからない。
1~2ヶ月の間借りていて、最終的に思った事は、「ともかく
言う事を聞かない、実に”アンコントローラブル”なカメラ
(=自分が思うように撮れない)である」という事だった。
匠「なるほど、所有者の彼が「写りが悪い」と言ったのは
こういう事だったのか・・」と、納得した。
で、この頃、1990年代末頃あたりから、LOMOやHOLGA製品の
輸入販売が始まっていた模様なのだが、一般的なカメラ専門店
等では入手しずらく、仮に売っていたとしても、前述のLC-Aの
評価経験からすれば、個人的に欲しいとは思えなかったであろう。
その後しばらく「トイカメラ」の事は忘れていた。
2000年代前半、デジタル時代に入ると、ともかく最初期の
デジタル一眼レフは高価だ、本体だけでも最低でも10万円から
普通は20万円以上、ともなると、「写真を始めたい」と思う
初級層では簡単にその金額を初期投資する事はできない。
で、真面目に写真をやりたい人達(ここでは便宜上「写真学生」
と呼ぶ、概ね、写真を「アート表現」として見なしている)は
簡単には買えない高額デジタル機材には目を向けず、国内流通
が活発化してきた「トイカメラ」に興味を持つようになった。
(注:海外で「ロモグラフィー宣言」の思想が広まっていた
事も影響しているであろう)
この頃から、「トイカメラ」という名称が一般的に定着した。
また当時は「女子カメラ」のブームである。女性向けのカメラ
専門誌がいくつも発刊され、「自分らしさを写真で表現する」
といった、新しい写真の用途(コンセプト)が広まっていた。
(注:それまでの写真の目的は、一般にはハレの日(冠婚葬祭や
旅行、イベント等)の記録用途であり。また、愛好家は風景や
珍しい現象や事象を、高画質な機材で綺麗に撮る事であった)
それまでの写真の目的がHi-Fi(ハイファイ、高忠実性)であれば、
写真学生のアート表現や、女子カメラの自己表現には、高忠実性
でなければならない理由は無い。(Lo-Fiでも良い)
むしろ、高性能で高価な機材を安易に買ってHi-Fi写真を撮る
事を目指すという「ブルジョワ思想」に反発する心理からも、
まったく新しい「アート的」な写真を、こうしたトイカメラに
よる「偶然性」で得る事が大流行したのだ。
この流行は、国内メディアの後押しもあった事であろう。
女性向け雑誌等にはHOLGAやLOMOによる作品が大量に載せられ、
これらトイカメラを買う事がアート系では必須のような風潮
まで現れ、本来、これらトイカメラの価格は数千円であったのが
数万円で売買されている、という不条理な状況まで見かけた。
(これでは、トイカメラを買う方が「ブルジョア」だ・・汗)
だが、2000年代後半となると、このトイカメラブームは
急激に沈静化してしまう。
その理由は私の分析では3つあり、1つはデジタル一眼レフが
低価格化し、誰にでも購入できる価格帯となった事だ。
これで、これまで高額機材を「買えないから」と反発していた
初級層も、それらを入手する事で、不満を言わなくなった。
(それまでは、「ガンデジ」「コンデジ」等と、卑屈な心理の
用語が流行していたが、この頃から、それも言われなくなった。
なお、現代でも「コンデジ」の呼称は一部に残っているが、
その用語は非推奨だ。このデジタル初期に、デジタル一眼レフが
高価すぎて買えなかった層による、複雑な心理の用語だからだ)
また、これに関連し、携帯カメラやスマホ等の簡便な撮影機材
が普及した事で、ユーザー層はそうした「機材」そのものに
興味を持ち、アート性や表現という要素が減っていった。
もう1つは、BLOG等のSNSが発達した事だ。
ネット上では銀塩の作品発表は、デジタル化処理が煩雑(又は
ビギナー層ではできない)な状況であり、それが出来たとしても、
SNS等では閲覧者層は比較的固定的なので、ファン層に対しての
作風の安定性を求める事は、アンコントローラブル(制御不能)
なトイカメラでは不可能だ。
つまり、この前の作品は皆、イイネと喜んでくれたのに、今日の
日記の写真はイマイチだと、毎回評価が、ばらついてしまう。
それ以前の完全な銀塩時代は、作品の発表の場は、展示会とか
コンテストであったので、そこでは一発勝負で作風をチョイス
する事が出来た訳だが、継続性のあるSNSでは、いつも同じ作風
を保つ事が必須で、それがトイカメラでは困難であった訳だ。
最後の理由として、2000年代後半ではAPS(IX240)や110判等の
特殊なフィルムは入手も現像も困難となり、HOLGA等が使用する
120(ブローニー)判も、高価で現像困難。そして35mm判も
既に「ゼロ円プリント」は無くなり、銀塩写真はコスト高と
なった。そういった状況では、銀塩トイカメラは、ほとんど
絶滅直前となってしまった。
まあこれは世の中の風潮であるからやむを得ない。他でもこの頃、
銀塩DPE店も、その多くが廃業に追い込まれた訳だし、著名な
カメラメーカーですら、いくつかがデジタル化への事業構造の
変革に耐え切れず、カメラ事業から撤退してしまっているのだ。
(注:Lomography社は、2013年頃から「高付加価値戦略」で
特殊レンズをクラウドファウンディングで開発・販売し、何とか
生きながらえているが、旧来のLOMO製品と比べ、価格は10倍
程度も高価となってしまっている。→後日詳細説明予定)
![c0032138_16155163.jpg]()
で、この頃から、銀塩トイカメラに変わって出てきたのが
1つは、「トイデジ」(デジタル・トイカメラ)であり、
もう1つが、「トイレンズ」である。
「トイデジ」に関しては個人的には殆ど持っていない。
銀塩トイカメラは安価であった事が特徴であり、デジタルの
それは一応デジタル機器であるから、この2000年代後半の
当時であれば、どうしても数万円という価格となってしまう。
後年のそれは、数千円という価格帯の物も出てはきたが、
当時では「コスパが悪すぎる」という判断になった訳だ。
「トイレンズ」に関しては、安価であって、概ね1本あたり
3000円~8000円程度で購入が可能であった。
これらは、デジタル一眼レフや、後年にはミラーレス機用の
マウントで発売され、それらの機種で簡単に「トイカメラ」
と同様の写りを得る事ができる。
それもそのはず、これらの「トイレンズ」は、HOLGAや
LOMOのレンズを、そのまま単体で発売、あるいは自社や
他社において、トイカメラのレンズ構成を大幅に参考に
して設計・製造されたものであるからだ。
今回紹介のHOLGAレンズもそうである。
ここで紹介しているフォーサーズ機用HOLGA (HL-O)は
120判フィルム使用のHOLGA 120シリーズ用のレンズを
ほぼ、そのまま単体発売したものだ。
ただしイメージサークルが大きい中判用レンズなので焦点距離
が長すぎる事と、そのままでは周辺減光が出ない。(周辺減光
に関しては、BC機構(後述)で、これに対応している)
焦点距離が長すぎる事については、次いで2010年代前半に
発売されたミラーレス機用のHOLGA LENSでは、25mmの
焦点距離となっている。
----
では、ここからは次のHOLGAシステムである。
![c0032138_16160422.jpg]()
HOLGA LENS 25mm/f8 HL(W)-SN
(新品購入価格 3,000円)
カメラは、SONY NEX-3(EマウントAPS-C機)を使用する。
型番の(W)は、白塗装であり、ミラーレス機版から始まった。
また、このシステムでは3:2アスペクトでの写真を掲載する。
「Lo-Fi撮影技法」もやめて、本来のレンズ描写力を確認して
みよう、周辺光量落ちは顕著だが、意外に普通に写る。
さて、デジタル機用の「トイレンズ」は、沢山ありそうで、
実の所、あまり多くの種類がある訳では無い、
私が所有している範囲で言えば、HOLGA,LOMO,LENSBABY,
LOREO,PENTAX,GIZMONなどである。
勿論、これ以外にも色々あるのだろうが、入手または情報収集が
困難だし、そこまでして集めたいと思うような類の物でも無い。
なお、近年に急速に普及している、中国製等の安価な単焦点
レンズ(例:YONGNUO、七工匠、MEIKE、KAMLAN等)は、
いずれもトイレンズでは無く、本格的な高性能レンズである。
(これらは順次別記事で紹介予定)
![c0032138_16160421.jpg]()
さて、HOLGA LENSがオリジナルの60mmから、25mmの
焦点距離となった事で、μ4/3機では50mmの標準画角、
そしてミラーレスAPS-C機では、約37mmの準標準画角と
なった事で若干使いやすくなった。
オリジナルの銀塩HOLGA 120系は、縦横比が異なるので、
単純には「何mm相当である」とは言い難いが、だいたいだが
フルサイズ換算で32mm相当と、広角気味の画角となる。
よって、トイカメラの撮影技法的にも(中遠距離被写体を
狙う意味でも)広角的な撮り方が多いので、この25mmレンズは、
少しは、そうしたニーズに応えられる。
なお、α7系等、フルサイズEマウント機を用いても無意味だ、
その状態では、周辺減光の範囲が広がるだけであって、画面の
真ん中にちょこんと丸く写るだけで、画角自体は広角にならない。
ただ、この場合、α7系に備わるデジタルズーム機能を用いて
任意比率のトリミング操作を行いながら撮るような事ができる、
つまり、周辺減光の度合いを撮影前(時)に微調整できる。
(参考:アスペクト比には注意する必要がある)
ちなみに、今回使用のNEX-3(2010年)の場合は、デジタル
ズーム機能を備えるものの「SONY純正(または完全互換)の
Eマウント単焦点レンズでないとデジタルズームが効かない」
という「排他的仕様」となっているが、後年のNEX-7(2012年)
以降では、その制限は撤廃されていて、本レンズでもデジタル
ズームが効く。
また後期NEX以降ではエフェクト機能も搭載されている為、
Eマウント機では後期(2012年頃)のNEXが、本HOLGA 25mm
レンズの母艦としては適正であろう。
(注:2013年からのαシリーズ(5000系/6000系)では、
安価なトイレンズの母艦とするには、本体とレンズの
価格比率が、ややアンバランスとなる。→オフサイド状態。
ただ、最初期のα5000/6000系は近年では相場が下落して
来ているので、これらが次期トイレンズ母艦となるだろう)
それと、HOLGAレンズは、絞り制御が無く、F8固定であり、
加えて、BC機構がある為、実効F値はF10~F11相当となる。
これはかなり暗いので、日中の明所以外においては、
ISO感度を適宜高める等をしないと手ブレしてしまうであろう。
(注:Lo-Fi技法的な観点からは、手ブレしても問題は無い)
![c0032138_16160412.jpg]()
なお、オリジナルのHOLGA等のトイカメラにもフラッシュが
内蔵されていない機種が多く、フラッシュを焚いてブレを
防ごうとするのは、ちょっとトイカメラ技法としては邪道っぽい
ところがある。すなわち、多少ブレたりピンボケになった方が、
アンコントローラブルな表現を得るためには重要であって、
誰も、こうしたトイカメラやトイレンズで綺麗なHi-Fi写真を
撮ろうとは思っていない訳だ。そういう類の写真を撮りたかったら
一眼レフでもミラーレス機でも、他にHi-Fiカメラやレンズは
いくらでも存在する。トイカメラやトイレンズは、それっぽい
Lo-Fi写真を撮らないと使う意味が無い訳だ。
ただ、銀塩トイカメラでは、カメラの性能的な限界、あるいは
撮影者のスキル(撮影技能)不足から、意図せずLo-Fi写真が
撮れてしまっていたのだが、デジタル機でトイレンズを使う
上では、基本的なカメラ性能は何も不足している事は無い。
その為、デジタルカメラを正しく使ってしまうと、トイレンズ
でもHi-Fi写真が撮れてしまうのだ。
これは少々困ったものである、つまりLo-Fi写真を撮りたくて
トイレンズを買ったのに、Hi-Fi写真が撮れてしまったら、
機材購入コンセプトが矛盾してしまう。
そこで、ここからは上級者向けの話になるが、もともとの
トイカメラにあった「アンコントローラブル」な要素を、
現代のデジタル機において、ぎりぎりの状態で、それを意図的に
作り出す技法が存在する。
たとえば、手ブレするかしないか、ぎりぎりのカメラ設定に
あえてしておき、偶然手ブレしたら、それでよし、という感じだ。
(当然ながら内蔵手ブレ補正機能は使わない)
あるいは、デジタル機の自動露出(AE)をあえてキャンセルし、
銀塩HOLGAのような、固定シャッター速度、固定絞り値で、
ISO感度もあえて銀塩同様として、ちょっと暗所での被写体が
偶然露出が合ったり、微妙に露出が外れてしまったりと、
そういう偶然性を楽しみながら、自分が思いもしなかった
写真を撮る事である。
ただ、これは全てのカメラ原理に精通している上級者向けの
手法である。ぎりぎりのレベルで破綻するかしないかを見極め
ながら撮影するなどの超高度な技法は、これまでトイカメラを
志向してた初級中級層には、とても困難であると思う。
もう1つの方法は、デジタル機側の設定は、デタラメでも
良いから、膨大な数の撮影をこなし、その中から偶然的に
撮影者自身の好み、又は「意図する表現」に合致したものを
探すかだ。
この時の撮影枚数だが、数千~数万枚が妥当であろう。
ただ、これも初級中級者には困難な話だ、近年のデジタル機は
連写性能が優れているので、撮影枚数をかせぐ事は可能だが、
連写で同じ写真ばかり撮っても意味が無い、必要なのは撮影
条件を色々と変えた単写での沢山の写真なのだ。
だから数万枚とかの撮影は、数年をかけても容易では無い。
![c0032138_16160407.jpg]()
で、そもそもトイカメラでの作品は、できるだけ日常的な物を
撮る事がセオリーである。この理由だが、前述の高価な高性能
機材を使った「ブルジョア思想」においては、非日常の世界を
Hi-Fi写真として残す事が主眼であった訳で、その手の作品は
滅多に無い綺麗な風景や事象等が、作品の主流だった訳だ。
トイカメラでは、あえて「ブルジョア思想」に反発する訳だから、
そうした「お金や時間をかけないと出くわす事が出来ない被写体」
などは、最初から被写体としての対象外なのだ。
(参考:Lomography社Webの「10 Golden Rule」)
ところが、日常的な被写体を探す事は大変難しい。
これは現代でもそうなのだが、「何を撮ったら良いかわからない」
という初級中級層の持っている課題にも直結してしまい、
すなわち珍しいものや綺麗なものばかりを探してしまったら、
丸一日カメラを持って歩いていても、「ほんの数枚から数十枚
しか撮れない」という状態になってしまう。
まあ、結局、撮るものが無いから、「SNS映え」等と言われる
場所やモノにビギナー層が群がってしまう訳だ。(でも、それは
撮影者自身の手柄では無いので、本来は「作品」には成り得ない)
で、トイレンズで大量に日常を撮る方式ならば、1日の撮影で
必要な枚数は、最低ラインでも500枚くらいだと思う。
「日常の中から、1日に500枚もの被写体が見えるかどうか?」
ここが初級中級層にとって、大きなネックとなる。
まあ、まず無理だと思って良いと思う、「感覚」や経験値が
そこまで追いついていない。よって、大量に撮った中から、
好みの写真を探すという手法は、これもかなり実現が困難だ。
自身でカメラ側を破綻直前に制御するのは高度すぎて無理、
沢山撮ってその中から選ぶのも感覚的に困難・・
では、トイレンズを活用するにはどうしたら良いのか?
これについては、現代においては他の有効な解決手法があり、
それは、「エフェクト機能の併用」だ。
----
ここでレンズとカメラを交換しよう。
![c0032138_16161332.jpg]()
HOLGA LENS 10mm/f8 HL-PQ
(新品購入価格 3,000円)
カメラは、PENTAX Q(1/2.3型センサー機)を使用する。
PENTAX Q用のHOLGA LENSは10mmの焦点距離で発売されている、
Qシステムでの換算画角は機種によって異なり、
PENTAX Q/Q10(1/2.3型)の場合は、55mm相当
PENTAX Q7/Q-S1(1/1.7型)の場合は、46mm相当となる。
いずれも「標準画角」であり、他のHOLGA LENSとは、また
違った雰囲気(画角感覚)で被写体を探す事となる。
なお、センサーサイズが大きい Q7/Q-S1の方が、HOLGA LENS
の周辺減光の度合いが当然大きい、ここは、好みや作画等の
目的に応じて、使用カメラを選択するのが良いであろう。
(今回は、周辺減光が控え目なQを使用する)
![c0032138_16161366.jpg]()
で、PENTAX Qシステムには、優秀なエフェクト機能と
優秀なエフェクト操作系が備わっている。
ここでエフェクトを用いる意義だが、これはもう「ぎりぎりに
アンコントローラブルな状況を得る」という目的だ。
すなわち、ノーマルな撮影に対して、エフェクトをかけた
撮影では、どのように写るかを事前に想像する事は難しい、
まあ、PENTAX Qシステムでは、エフェクトをかけた画像が
撮影前にモニターに写るため、全く想像不可では無いのだが、
それでも、色々なエフェクトを切り替えて撮る事で多少の
偶然性は得られる。
![c0032138_16161381.jpg]()
余談だが、「エフェクトにトイカメラのモードがあるから
トイレンズは不要だよ」と考える初級中級層も居ると思う。
トイカメラのモードに限らず、現代においては撮影後に編集
できる項目は非常に多い。PCでのレタッチに限らず、例えば
スマホでも撮影後に被写界深度を調整できるものすらある。
しかし、いずれの場合でも「撮影時に効果が得られる」事と
「撮影後に編集する」というのは、まるで意味が異なるのだ。
何故ならば、撮影時には、被写体に臨んで「考える事」や
「感じる事」が沢山あるからだ。その気持ち、意図、表現・・
を写真に込めたい為に、トイレンズはもとより、特殊レンズや
被写界深度の浅い大口径レンズ等を使う訳であり、それらの
効果をその場で調整して、その表現を込めたショットを撮る。
これは事後の編集では得られない感覚だ。まあ、事後編集では
色々と効果の度合いを変更できる利点はあるが、それすらも
上級者では撮影時にブラケット機能や手動ブラケットで、候補
となるべき複数の意図を込めた写真群を撮る事も簡単に出来る。
(それと、場合により撮影者以外ですら編集者になりえるのだが、
その状況は、ますます写真の「作品」としての本質(本来の意味)
とは異なってしまうだろう。それが許されるのは「映像記録」と
「映像表現」とを分業した業務用途(広告やファッション等)の
場合等である)
まあつまり、「撮影前でも撮影後でも一緒」と考えてしまう
ようでは、写真の本質について、残念ながら理解していない、
という事となる。「出来る」という事柄においては、事前でも
事後でも一緒であっても、「そうしたい」と思う「気持ち」は
事前と事後では、まるっきり異なってしまう訳だ。まあここは
人間であれば当たり前の感覚的な話である。
カメラを作る側でも「技術」の観点ばかりに注目してしまうと、
こういう人間の「気持ち」や「感覚」を見失った機器(カメラ)
仕様にしてしまう事すら、残念ながら、いくらでも事例がある。
カメラは、自身(人間)の感覚・感性を表現する道具であるから、
そこでは人間性を意識した仕様とする事が、本筋であり本質だ。
銀塩時代には、そういうコンセプトで設計されたカメラも多かった
ように思えるが、近年においては「技術優先」および、そうした
感覚面を語るのは「現代的では無い」と思われる風潮があるのか?
そうした設計思想のカメラは限りなく減ってしまっている。
まあ、かろうじて無い訳でも無い、それはカメラのカタログを
店頭から貰ってきて、そのカタログの「作り」を良く読み込むと
それが見えてくる場合もある。
ただ、注意しなくてはならない事は、いくらカタログや設計思想
がそう見えていても、実際のカメラにおいて、そのコンセプトが
全然実現されていないカメラもあるという事だ(汗)
このあたりはとても難しい話ではあるが、そこはカメラの仕様を
通じて設計思想そのものまで(つまり、エンジニアの考えまで)
読み取ろうとする事が、現代のユーザー側に必要な眼力となって
来ている。その「設計思想」が見えていないと、結果的に、自身が
望むコンセプトのカメラを買えなかったり、最悪は、箸にも棒にも
かからない面白味の無いカメラであったり、商売優先のあまり
非常に排他的思想が強い、底意地の悪いカメラを掴まされたり
する羽目に陥ってしまう。
----
余談はここまでで、本題に戻ろう。
Qシステムにおける、解像度やピーキング精度が貧弱な
背面モニターにおいては、ピントの山をちゃんと捉える事は
できない為、多くの場合、ピンボケとなる。
また、Qシステムでは、この手のレンズを装着すると内部の
電子シャッター利用に切り替わる。この電子シャッターは
動体撮影で「ローリングシャッター歪み」が出るタイプで
あるから、ほんの僅かな手ブレや被写体ブレに応じて、
写る被写体が「変形してしまう」のだ。
これらの事は、Hi-Fi撮影においては、カメラの弱点(欠点)
ではあるが、Lo-Fi撮影では、逆に大きな武器(長所)となる。
つまり、カメラの性能が貧弱な為に、思いもよらない写真が
撮れる、という意味では、これは銀塩トイカメラと全く同じ
「アンコントローラブル」な特性になるからだ。
![c0032138_16161334.jpg]()
なお、PENTAX Qシステムでは、こうした社外製トイレンズの
使用のみならず、PENTAX純正でも、4本のトイレンズ
(03魚眼、04広角、05望遠、07収差レンズ)が発売されている。
(全て過去記事で紹介済み)
これらトイレンズ群を有効に活用する事が、Qシステムにおける
主眼であり、ある意味、Qシステムの存在意義にも繋がると思う。
なお、注意点だが、Qシステムには「トイカメラ」のエフェクト
(デジタルフィルター)が存在している、「なのでトイレンズは
不要」と考える初級層も居るかも知れないが、まずエフェクトと
実際のトイレンズは大きく描写特性が異なる事があり、それより
なにより「エフェクトのトイカメラは、コントローラブル」で
ある事がポイントだ。
Lo-Fi描写(技法)は、「アンコントローラブル(制御不能)」
である点と、切っても切れない関係性がある、制御された
エフェクトでは作風に偶然性を得る事ができない訳だ。
で、トイレンズの母艦としてPENTAX Qシリーズは適切であるが、
2014年以降の新型機が無く、現代においては、ほぼ終焉して
いるシリーズであるし、中古流通もだいぶ減ってきている。
入手しておくならばギリギリ今のうちだ。
----
さて、次はラストのHOLGAシステム。
![c0032138_16162496.jpg]()
HOLGA LENS 60mm/f8 HL-C(BC)
(新古品購入価格 1,000円)
EF(EOS)マウント版のレンズであるので、
カメラは、CANON EOS 7D(APS-C型センサー機)を使用する。
このシステムでの撮影技法だが、「ピントも露出も、ちゃんと
は合わせない」と言うやり方をしてみよう。
これは、銀塩HOLGAにある「Lo-Fi」志向を実現する為だ、
ピントも露出も合わせないのだが、完全なデタラメでは無く、
あえてギリギリで破綻するかしないか、というレベルとする。
(=アンコントーラブル技法を実践する)
![c0032138_16162410.jpg]()
さて、本レンズは当初、2000年代末頃にHOLGA 120シリーズ
用の搭載レンズを単体化したトイレンズとして発売されたが、
前述のとおり、元々イメージサークルが中判機用なので、
周辺減光の効果が得られず、利用者層から不満の声が出ていた。
これを改良する為、レンコン状に穴の開いた特殊な絞り部品が
内蔵され、これにより周辺減光が起きる為、これを
「ブラック・コーナー・エフェクト」(BC機構)とし、
2011年頃の新(再)発売となった。
(注:「レンコン絞り」は、旧来はソフト(軟焦点)効果を
得る目的であったと思うが、どこをどうやったのか? BC機構
では、これを軟焦点効果よりも周辺減光発生に応用している)
これが搭載されているレンズ型番には「BC」が記されるように
なったが、これ以降の時代のHOLGAレンズは、BC型番では
なくても周辺減光は発生する。
なお、前述のPENTAX Q用(HL-PQ)では、BC機構が入っている
ようには外からは見えないが、周辺減光はちゃんと起こる。
で、本レンズ「初期BC型」は流通数も多かったからか
当初の定価(3,000円)よりも値引いたアウトレット商品が
後年(2010年代後半)では、良く見られるようになった、
その為、本レンズも約1,000円という安価な価格で新古品
購入が出来ている。
なお、本レンズは、本記事冒頭で紹介した、HL-O(4/3用)と
同一スペックであるが、マウントやセンサーサイズが違う為、
周辺減光の出方もずいぶんと異なる。
基本的にBC機構はピント位置の設定によっては、周辺減光が
綺麗に円形にならず、デコボコに見える場合が良く発生するが
4/3用ではそれが顕著、EOS用では、さほどそれが起こらない。
ただ、このあたりはレンズやBC機構の製造における個体差で
ある可能性も高く、逆に、そうした「アバウトな商品」である
事もまた、アンコントローラブルな要素を助長する意味があり
その点では、こうした個体差は歓迎だ。
EOSのフルサイズ機では、60mmの画角で使い易いのだが
周辺減光が出過ぎる事もあり、今回は、APS-C機である
EOS 7Dで使用している訳だ。
(注:EOSフルサイズ機では「クロップ撮影が出来ない」
という弱点がある。ニコン等との「差別化」かもしれないが
弱点での差別化は、単なる「意地」であり仕様的に無意味だ。
クロップ機能は露出分布や測距点分布が変化するので、撮影
技法に応用可能であり、「トリミング」と等価では決して無い)
![c0032138_16162432.jpg]()
なお、EOS 7DのスクリーンのMF性能は、初の透過型電子
スクリーンであるが故に非常に低い、ただ、その弱点もまた
「あえてピントを厳密に合わせない」というトイレンズの
Lo-FI技法においては欠点にはならず、むしろ長所となる。
(それよりも、F11相当でファインダーが暗い事が問題だ)
EOS 7Dにはエフェクト機能が搭載されていないので、そういう
点においては「アンコントローラブルな表現力」は少ないが、
キヤノンユーザーであれば、より後年の、エフェクトの入った
普及EOS機に装着するか、ミラーレス機のEOS Mシリ-ズ用の
HOLGA LENSも発売されているので、それを使っても良いと思う。
ミラーレス機では、暗いトイレンズでもモニターやEVFが暗く
ならずに撮影できる。又は普及EOS機でライブビュー撮影として
も良い。(ただし、ライブビューエフェクト撮影は、EOS各機
では出来ず、必ず「後掛け」となるので、そこは弱点だ)
なお、高級EOS機をトイレンズ母艦とするのは、カメラ価格と
性能が突出する「オフサイド」状態なので好ましく無い。
本記事では、EOS 7Dを使用しているが、この機体は旧機種で、
現代の中古相場は、普及機(キスデジ等)よりも安価なのだ。
あと、各社カメラのエフェクト機能のうち、「トイカメラ」
をトイレンズと重複して選ぶ事は、あまり効果的では無い。
基本的に「トイカメラ」の画像処理効果は、周辺減光とカラー
バランスの乱れの効果を得る訳だが、HOLGA LENSの場合は、
元々トイレンズなので、その処理を使わずとも周辺減光や収差
発生が得られる。重複して掛けるメリットもあるが、それは
ケースバイケースであろう。
ちなみに収差については、元々の銀塩HOLGAでは、写りの悪い
(収差の大きい)プラスチックレンズ型と、写りが若干良い
ガラスレンズ型が併売されていた、まあLo-Fi志向ならば
プラスチックレンズ型の方が人気ではあったと思う。
エフェクトの件だが、例えばPENTAX機にある「クロスプロセス」
のようなエフェクトは効果的であろう。
PENTAXのそれは、撮影のたびに毎回カラーバランス(色味)が
異なり、ある程度の偶然性(アンコントローラブル)を
得る事ができる。
まあ、デジタル一眼レフの高級機では、後年の機体であっても
(例:EOS 7D MarkⅡ,2014年)エフェクトが搭載されていない
ので、本来であればトイレンズの母艦には適さない。
加えて、本体とレンズの価格比を、「あまり本体側を高価に
しえはならない」という持論(オフサイドの法則)にも、
ひっかかる為、できるだけ低価格機でトイレンズを使うのが
基本であると言える。(注:私の場合、近年においては、
EOS 8000Dを、その目的のトイレンズ母艦としている)
つまり高級機はHi-Fi写真を撮るのに使えば良いわけであり、
Lo-Fi写真を撮る上では、むしろ、できるだけ低性能なカメラを
使いたい。けれども現代のデジタル機は、どんなに安価なカメラ
であっても、Hi-Fi写真が撮れてしまう高性能機である為、
そうした条件をなかなか満たさない訳だ。
だから、逆に言えば、デジタル機でLo-Fi写真を撮る事は
極めて高度な技能や技法や知識を必要とされる為、なかなか
こうしたトイレンズが、現代の初級中級層には受け入れられない
し、その技法や使いこなしのノウハウも、市場全般において
ずっと未発達のままだ。
それに高級機を志向するユーザー層は「Hi-Fi写真こそが王道
であり、Lo-Fi写真は邪道」という意識が非常に強い。
もしそれを認めてしまったら、自身がこれまで投資してきた
高級機材を購入した資金や、練習や修練で磨いてきた撮影
技術がすべて無意味になってしまうからだ、だから自分を否定
しない為にも、頑固なまでにLo-Fi写真を認める事は無い。
けど、たとえばスマホのカメラでアプリにより様々な画像加工を
楽しむ一般層においては、Lo-Fi写真に何の違和感も持たない、
そうした映像コミュニケーションにおいては、目立つ写真や
言いたい事がはっきりしている写真の方が好ましいからだ。
![c0032138_16162408.jpg]()
まあ、「写真とは真を写すと書く」のような思想を信じて
疑わない一部の層は、写真は非日常を忠実に記録するもので
あって、そこに「表現」がある事は理解しずらい(出来ない)
ただ、同じその撮影者であっても、自慢の高性能一眼レフを
離れてスマホをいじくれば、加工写真を面白がって使う訳だ。
要は、発想の柔軟性である、「こうでなければならない」という
思い込みは、仮にそれが正しい事であったとしても、どうしても
発想の幅を狭めてしまう。
私としては、むしろHi-Fi写真を強く志向する層であればある程、
こうした「トイレンズ」や「Lo-Fi」写真を一度は体験して
もらいたいと思っている。
ただ、実際の所、これを使いこなすのは、そう簡単な話では無い。
高性能なデジタル機で「意図的に破綻寸前の状況を作り出す」
というのは、Hi-Fi写真を撮るよりも数段高度な技術である。
その「奥行き」が理解できなければ、「写りが悪い、面白く無い」
で終わってしまう事も確かであろう。
まあ、なかなか難しい撮影分野であり、その筆頭格の
トイレンズが、今回紹介の「HOLGA LENS」であるのかも知れない
訳だ。
----
さて、今回の記事「HOLGA LENS特集」は、このあたり迄で、
次回記事に続く・・
紹介している。
今回は「HOLGA LENS」(ホルガ レンズ)を4本取りあげる。
これらは勿論、全て「トイレンズ」であるので写りは悪い。
その「Lo-Fi感」を、意識およびコントロールする事が、
「トイレンズ」のデジタルにおける利用法の骨子となる。
なお、本シリーズ記事は上級層または上級マニア向けの内容で
あり、ビギナー等向けの平易な解説とはしていないので念の為。
また、上級者ですら「トイカメラのエフェクトと何処か違う?」
という疑問を持つかも知れないが、そこは追々解説して行こう。

(新古品購入価格 1,000円)
今回紹介のHOLGAレンズ群は、いずれも2010年代前半の
発売と思われる。本レンズに関しては、旧マウントである
4/3(フォーサーズ)用の在庫品をアウトレットで購入した
ので非常に安価ではあったが、現代において、これを使う
システムの構成が少々難しい。
4/3→Eマウント・アダプター(電子接点は不要)を用いれば
α7系等のSONY機でも使用できるが、今回は、オリジナルの
フォーサーズ機であるOLYMPUS E-410を使用してみよう。
なお、4/3機は基本的には4:3アスペクト(縦横比)であるが
元々のHOLGA 120は、中判(120、ブローニー)フィルムを
使用し1対1比率(=スクエア・フォーマット)である為、この
システムでの実写例は正方形にトリミングした状態で掲載する。
この状態での換算画角は、かなりの望遠(約140mm相当)となり、
HOLGA 120での画角の約4.3倍だが、余り気にしないようにする。
加えて、意図的にブラす等の「Lo-Fi撮影技法」も使ってみる。

・・と言うか、本記事では、「トイカメラ」や「トイレンズ」
の変遷の歴史を紹介する事を主体とし、個々のHOLGAレンズの
描写力などについての説明は最小限とする。
元々、トイレンズに関しては、その写りを真面目にあれこれと
評価する方が的外れであり、そういう視点で製品を語るような
類のジャンルでは無い訳だ。
それに、今回紹介する4本のHOLGAレンズは、どれも皆、同じ
ようなもの(描写傾向)である、個別に差異や詳細をあれこれと
分析するようなものでも無いし、そもそも4本も所有している
方がおかしい(汗) どれか1本だけ持っていれば十分なのだ。
(注:とは言う物の、本記事においては、レンズ毎に撮影技法や
カメラ設定等は大きく変えている)

「トイカメラ」である。
ただ、最初から「トイカメラ」と言う呼び名があった訳では
ないと思う。
元々は、非常に安価な銀塩写真機として海外で発売されていて
HOLGAは中国製で、LOMOは(旧)ソ連製(注:後年においては
販売元はオーストリアのLomography社となっている)
いずれも1980年代前半からの発売(製造)開始だ。
他にも銀塩トイカメラは、海鴎やVIVITAR、ハリネズミ(製品名)
等、色々とあるのだが、それらの話は今回は割愛する。
で、老舗と言えるHOLGAやLOMOも、当初は日本で全く知られて
いなかった。と言うか、恐らく最初は輸入されてもいなかった
かも知れない。
なにせ、1980年代では国産カメラは銀塩コンパクト機に
関しては、ほぼ全てがAF化され、ズームレンズも搭載されて、
「誰にでも簡単に高画質の写真が撮れる」といった、撮影の
利便性を高める方向に、市場の意識は全て向いていたのだ。
ここに、ピントも絞りもシャッタ-速度も、全て固定で何も調整
が出来ないという、玩具のようなカメラに興味を持つ人は殆ど
居なかったのだろう。だから販売もされていなかったと言う事だ。
(まあ、当初、共産圏だけの市場流通であった理由もある)
私が最初にトイカメラを目にしたのは1990年代の後半頃で
あった。当時、オーストリアからの職業留学中の若い男性と
知り合い、彼がソ連製の「LOMO LC-A」を持って来ていたのだ。
ロシアに比較的近いオーストリア(注:彼は自国の事を
「ウーストリッヒ」と呼んでいた。公用語はドイツ語)
ではあるが・・
実は、LOMOは、一般的には「旧ソ連製」と言われているのだが、
その販売元である「ロモグラーフィシェ株式会社」
(通称:Lomography/ロモグラフィー)は、「オーストリア」
に本社を置いている企業なのだ。(注:1994年以降の話)
旧ソ連のサンクトペテルブルクにLOMOの関連工場があった、
とも言われているし、あるいは古くからカメラを製造している
ZENIT(注:KMZ(クラスノゴルスク機械工場)の事、こちらは
モスクワ近郊にある工場で、ZENITやZORKIといったカメラや
ZENITARレンズで、マニアには著名)に依頼して、光学系等を
製造したという情報もあるが、昔の「東側」での話なので
詳細は不明である。(注:こく近年のLOMO製の高性能レンズ
も、ZENIT社でレンズを製造している模様だ。後日紹介予定)
まあともかく、オーストリア人の彼が、当時「LOMO LC-A」
を入手するのは、さほど難しい事ではなかったであろう。
(注:オーストラリアでのカメラ関連の歴史については、
「フォクトレンダー」とか「ペッツヴァール」とかが
絡んできて、とても興味深いものがある。しかし、この話は
とても長くなるので、いずれ機会があれば詳しく紹介する)
・・で、彼は「このカメラは、安かったので故郷で買ったが
写りがとても悪い。日本に居る間に高性能な日本製カメラを
買いたいのだが、相談に乗ってくれ」との事であった。
まあ彼は独語と英語は話せるが、日本語がペラペラでは無い
ので、中古カメラ店舗等での交渉や購入は難しい訳だ。
結局彼は、私の紹介でEOS 5 QD(1992年)とズームレンズを
中古で買うと、「LOMO LC-Aは、もういらない」と言い出した。
私は「せっかく故郷で買った物なのだから、持っておきなよ」
・・と言いつつも、どんなに写りが悪いのか? もしかすると
彼はまあ、写真はビギナーなので、カメラの使い方が悪くて
写りが悪いのかも知れない、という風にも思って興味が沸いた。
そこで彼が使わなくなった「LOMO LC-A」を、しばらく借りて
写して見ることにしたのが・・
これがともかく難しい、撮り手がコントロールできる設定
要素は何も無く、カメラまかせとなるが、例えば露出自体が
AEと言うものの非常に不安定である。これの原理を理解しつつ
晴天時に感度高目のフィルムで絞り込ませるようにして遠距離
を撮るなどを行えば、まあ普通に撮れるが、それでも周辺光量
落ちが大きい。(注:「口径食」であれば絞り込むと周辺減光
は解消される筈だが、それ以外の「コサイン四乗則」なども
原因として影響しているのかも知れない・・詳細判断不能)
曇天や暗所、中近距離撮影等では、写りが安定せず、露出の
バラツキ、構図のズレ、ピンボケ、手ブレ、カラーバランスの
乱れ、などの要因が複合的に発生し、どのように撮れたかは
現像してみるまでわからない。
1~2ヶ月の間借りていて、最終的に思った事は、「ともかく
言う事を聞かない、実に”アンコントローラブル”なカメラ
(=自分が思うように撮れない)である」という事だった。
匠「なるほど、所有者の彼が「写りが悪い」と言ったのは
こういう事だったのか・・」と、納得した。
で、この頃、1990年代末頃あたりから、LOMOやHOLGA製品の
輸入販売が始まっていた模様なのだが、一般的なカメラ専門店
等では入手しずらく、仮に売っていたとしても、前述のLC-Aの
評価経験からすれば、個人的に欲しいとは思えなかったであろう。
その後しばらく「トイカメラ」の事は忘れていた。
2000年代前半、デジタル時代に入ると、ともかく最初期の
デジタル一眼レフは高価だ、本体だけでも最低でも10万円から
普通は20万円以上、ともなると、「写真を始めたい」と思う
初級層では簡単にその金額を初期投資する事はできない。
で、真面目に写真をやりたい人達(ここでは便宜上「写真学生」
と呼ぶ、概ね、写真を「アート表現」として見なしている)は
簡単には買えない高額デジタル機材には目を向けず、国内流通
が活発化してきた「トイカメラ」に興味を持つようになった。
(注:海外で「ロモグラフィー宣言」の思想が広まっていた
事も影響しているであろう)
この頃から、「トイカメラ」という名称が一般的に定着した。
また当時は「女子カメラ」のブームである。女性向けのカメラ
専門誌がいくつも発刊され、「自分らしさを写真で表現する」
といった、新しい写真の用途(コンセプト)が広まっていた。
(注:それまでの写真の目的は、一般にはハレの日(冠婚葬祭や
旅行、イベント等)の記録用途であり。また、愛好家は風景や
珍しい現象や事象を、高画質な機材で綺麗に撮る事であった)
それまでの写真の目的がHi-Fi(ハイファイ、高忠実性)であれば、
写真学生のアート表現や、女子カメラの自己表現には、高忠実性
でなければならない理由は無い。(Lo-Fiでも良い)
むしろ、高性能で高価な機材を安易に買ってHi-Fi写真を撮る
事を目指すという「ブルジョワ思想」に反発する心理からも、
まったく新しい「アート的」な写真を、こうしたトイカメラに
よる「偶然性」で得る事が大流行したのだ。
この流行は、国内メディアの後押しもあった事であろう。
女性向け雑誌等にはHOLGAやLOMOによる作品が大量に載せられ、
これらトイカメラを買う事がアート系では必須のような風潮
まで現れ、本来、これらトイカメラの価格は数千円であったのが
数万円で売買されている、という不条理な状況まで見かけた。
(これでは、トイカメラを買う方が「ブルジョア」だ・・汗)
だが、2000年代後半となると、このトイカメラブームは
急激に沈静化してしまう。
その理由は私の分析では3つあり、1つはデジタル一眼レフが
低価格化し、誰にでも購入できる価格帯となった事だ。
これで、これまで高額機材を「買えないから」と反発していた
初級層も、それらを入手する事で、不満を言わなくなった。
(それまでは、「ガンデジ」「コンデジ」等と、卑屈な心理の
用語が流行していたが、この頃から、それも言われなくなった。
なお、現代でも「コンデジ」の呼称は一部に残っているが、
その用語は非推奨だ。このデジタル初期に、デジタル一眼レフが
高価すぎて買えなかった層による、複雑な心理の用語だからだ)
また、これに関連し、携帯カメラやスマホ等の簡便な撮影機材
が普及した事で、ユーザー層はそうした「機材」そのものに
興味を持ち、アート性や表現という要素が減っていった。
もう1つは、BLOG等のSNSが発達した事だ。
ネット上では銀塩の作品発表は、デジタル化処理が煩雑(又は
ビギナー層ではできない)な状況であり、それが出来たとしても、
SNS等では閲覧者層は比較的固定的なので、ファン層に対しての
作風の安定性を求める事は、アンコントローラブル(制御不能)
なトイカメラでは不可能だ。
つまり、この前の作品は皆、イイネと喜んでくれたのに、今日の
日記の写真はイマイチだと、毎回評価が、ばらついてしまう。
それ以前の完全な銀塩時代は、作品の発表の場は、展示会とか
コンテストであったので、そこでは一発勝負で作風をチョイス
する事が出来た訳だが、継続性のあるSNSでは、いつも同じ作風
を保つ事が必須で、それがトイカメラでは困難であった訳だ。
最後の理由として、2000年代後半ではAPS(IX240)や110判等の
特殊なフィルムは入手も現像も困難となり、HOLGA等が使用する
120(ブローニー)判も、高価で現像困難。そして35mm判も
既に「ゼロ円プリント」は無くなり、銀塩写真はコスト高と
なった。そういった状況では、銀塩トイカメラは、ほとんど
絶滅直前となってしまった。
まあこれは世の中の風潮であるからやむを得ない。他でもこの頃、
銀塩DPE店も、その多くが廃業に追い込まれた訳だし、著名な
カメラメーカーですら、いくつかがデジタル化への事業構造の
変革に耐え切れず、カメラ事業から撤退してしまっているのだ。
(注:Lomography社は、2013年頃から「高付加価値戦略」で
特殊レンズをクラウドファウンディングで開発・販売し、何とか
生きながらえているが、旧来のLOMO製品と比べ、価格は10倍
程度も高価となってしまっている。→後日詳細説明予定)

1つは、「トイデジ」(デジタル・トイカメラ)であり、
もう1つが、「トイレンズ」である。
「トイデジ」に関しては個人的には殆ど持っていない。
銀塩トイカメラは安価であった事が特徴であり、デジタルの
それは一応デジタル機器であるから、この2000年代後半の
当時であれば、どうしても数万円という価格となってしまう。
後年のそれは、数千円という価格帯の物も出てはきたが、
当時では「コスパが悪すぎる」という判断になった訳だ。
「トイレンズ」に関しては、安価であって、概ね1本あたり
3000円~8000円程度で購入が可能であった。
これらは、デジタル一眼レフや、後年にはミラーレス機用の
マウントで発売され、それらの機種で簡単に「トイカメラ」
と同様の写りを得る事ができる。
それもそのはず、これらの「トイレンズ」は、HOLGAや
LOMOのレンズを、そのまま単体で発売、あるいは自社や
他社において、トイカメラのレンズ構成を大幅に参考に
して設計・製造されたものであるからだ。
今回紹介のHOLGAレンズもそうである。
ここで紹介しているフォーサーズ機用HOLGA (HL-O)は
120判フィルム使用のHOLGA 120シリーズ用のレンズを
ほぼ、そのまま単体発売したものだ。
ただしイメージサークルが大きい中判用レンズなので焦点距離
が長すぎる事と、そのままでは周辺減光が出ない。(周辺減光
に関しては、BC機構(後述)で、これに対応している)
焦点距離が長すぎる事については、次いで2010年代前半に
発売されたミラーレス機用のHOLGA LENSでは、25mmの
焦点距離となっている。
----
では、ここからは次のHOLGAシステムである。

(新品購入価格 3,000円)
カメラは、SONY NEX-3(EマウントAPS-C機)を使用する。
型番の(W)は、白塗装であり、ミラーレス機版から始まった。
また、このシステムでは3:2アスペクトでの写真を掲載する。
「Lo-Fi撮影技法」もやめて、本来のレンズ描写力を確認して
みよう、周辺光量落ちは顕著だが、意外に普通に写る。
さて、デジタル機用の「トイレンズ」は、沢山ありそうで、
実の所、あまり多くの種類がある訳では無い、
私が所有している範囲で言えば、HOLGA,LOMO,LENSBABY,
LOREO,PENTAX,GIZMONなどである。
勿論、これ以外にも色々あるのだろうが、入手または情報収集が
困難だし、そこまでして集めたいと思うような類の物でも無い。
なお、近年に急速に普及している、中国製等の安価な単焦点
レンズ(例:YONGNUO、七工匠、MEIKE、KAMLAN等)は、
いずれもトイレンズでは無く、本格的な高性能レンズである。
(これらは順次別記事で紹介予定)

焦点距離となった事で、μ4/3機では50mmの標準画角、
そしてミラーレスAPS-C機では、約37mmの準標準画角と
なった事で若干使いやすくなった。
オリジナルの銀塩HOLGA 120系は、縦横比が異なるので、
単純には「何mm相当である」とは言い難いが、だいたいだが
フルサイズ換算で32mm相当と、広角気味の画角となる。
よって、トイカメラの撮影技法的にも(中遠距離被写体を
狙う意味でも)広角的な撮り方が多いので、この25mmレンズは、
少しは、そうしたニーズに応えられる。
なお、α7系等、フルサイズEマウント機を用いても無意味だ、
その状態では、周辺減光の範囲が広がるだけであって、画面の
真ん中にちょこんと丸く写るだけで、画角自体は広角にならない。
ただ、この場合、α7系に備わるデジタルズーム機能を用いて
任意比率のトリミング操作を行いながら撮るような事ができる、
つまり、周辺減光の度合いを撮影前(時)に微調整できる。
(参考:アスペクト比には注意する必要がある)
ちなみに、今回使用のNEX-3(2010年)の場合は、デジタル
ズーム機能を備えるものの「SONY純正(または完全互換)の
Eマウント単焦点レンズでないとデジタルズームが効かない」
という「排他的仕様」となっているが、後年のNEX-7(2012年)
以降では、その制限は撤廃されていて、本レンズでもデジタル
ズームが効く。
また後期NEX以降ではエフェクト機能も搭載されている為、
Eマウント機では後期(2012年頃)のNEXが、本HOLGA 25mm
レンズの母艦としては適正であろう。
(注:2013年からのαシリーズ(5000系/6000系)では、
安価なトイレンズの母艦とするには、本体とレンズの
価格比率が、ややアンバランスとなる。→オフサイド状態。
ただ、最初期のα5000/6000系は近年では相場が下落して
来ているので、これらが次期トイレンズ母艦となるだろう)
それと、HOLGAレンズは、絞り制御が無く、F8固定であり、
加えて、BC機構がある為、実効F値はF10~F11相当となる。
これはかなり暗いので、日中の明所以外においては、
ISO感度を適宜高める等をしないと手ブレしてしまうであろう。
(注:Lo-Fi技法的な観点からは、手ブレしても問題は無い)

内蔵されていない機種が多く、フラッシュを焚いてブレを
防ごうとするのは、ちょっとトイカメラ技法としては邪道っぽい
ところがある。すなわち、多少ブレたりピンボケになった方が、
アンコントローラブルな表現を得るためには重要であって、
誰も、こうしたトイカメラやトイレンズで綺麗なHi-Fi写真を
撮ろうとは思っていない訳だ。そういう類の写真を撮りたかったら
一眼レフでもミラーレス機でも、他にHi-Fiカメラやレンズは
いくらでも存在する。トイカメラやトイレンズは、それっぽい
Lo-Fi写真を撮らないと使う意味が無い訳だ。
ただ、銀塩トイカメラでは、カメラの性能的な限界、あるいは
撮影者のスキル(撮影技能)不足から、意図せずLo-Fi写真が
撮れてしまっていたのだが、デジタル機でトイレンズを使う
上では、基本的なカメラ性能は何も不足している事は無い。
その為、デジタルカメラを正しく使ってしまうと、トイレンズ
でもHi-Fi写真が撮れてしまうのだ。
これは少々困ったものである、つまりLo-Fi写真を撮りたくて
トイレンズを買ったのに、Hi-Fi写真が撮れてしまったら、
機材購入コンセプトが矛盾してしまう。
そこで、ここからは上級者向けの話になるが、もともとの
トイカメラにあった「アンコントローラブル」な要素を、
現代のデジタル機において、ぎりぎりの状態で、それを意図的に
作り出す技法が存在する。
たとえば、手ブレするかしないか、ぎりぎりのカメラ設定に
あえてしておき、偶然手ブレしたら、それでよし、という感じだ。
(当然ながら内蔵手ブレ補正機能は使わない)
あるいは、デジタル機の自動露出(AE)をあえてキャンセルし、
銀塩HOLGAのような、固定シャッター速度、固定絞り値で、
ISO感度もあえて銀塩同様として、ちょっと暗所での被写体が
偶然露出が合ったり、微妙に露出が外れてしまったりと、
そういう偶然性を楽しみながら、自分が思いもしなかった
写真を撮る事である。
ただ、これは全てのカメラ原理に精通している上級者向けの
手法である。ぎりぎりのレベルで破綻するかしないかを見極め
ながら撮影するなどの超高度な技法は、これまでトイカメラを
志向してた初級中級層には、とても困難であると思う。
もう1つの方法は、デジタル機側の設定は、デタラメでも
良いから、膨大な数の撮影をこなし、その中から偶然的に
撮影者自身の好み、又は「意図する表現」に合致したものを
探すかだ。
この時の撮影枚数だが、数千~数万枚が妥当であろう。
ただ、これも初級中級者には困難な話だ、近年のデジタル機は
連写性能が優れているので、撮影枚数をかせぐ事は可能だが、
連写で同じ写真ばかり撮っても意味が無い、必要なのは撮影
条件を色々と変えた単写での沢山の写真なのだ。
だから数万枚とかの撮影は、数年をかけても容易では無い。

撮る事がセオリーである。この理由だが、前述の高価な高性能
機材を使った「ブルジョア思想」においては、非日常の世界を
Hi-Fi写真として残す事が主眼であった訳で、その手の作品は
滅多に無い綺麗な風景や事象等が、作品の主流だった訳だ。
トイカメラでは、あえて「ブルジョア思想」に反発する訳だから、
そうした「お金や時間をかけないと出くわす事が出来ない被写体」
などは、最初から被写体としての対象外なのだ。
(参考:Lomography社Webの「10 Golden Rule」)
ところが、日常的な被写体を探す事は大変難しい。
これは現代でもそうなのだが、「何を撮ったら良いかわからない」
という初級中級層の持っている課題にも直結してしまい、
すなわち珍しいものや綺麗なものばかりを探してしまったら、
丸一日カメラを持って歩いていても、「ほんの数枚から数十枚
しか撮れない」という状態になってしまう。
まあ、結局、撮るものが無いから、「SNS映え」等と言われる
場所やモノにビギナー層が群がってしまう訳だ。(でも、それは
撮影者自身の手柄では無いので、本来は「作品」には成り得ない)
で、トイレンズで大量に日常を撮る方式ならば、1日の撮影で
必要な枚数は、最低ラインでも500枚くらいだと思う。
「日常の中から、1日に500枚もの被写体が見えるかどうか?」
ここが初級中級層にとって、大きなネックとなる。
まあ、まず無理だと思って良いと思う、「感覚」や経験値が
そこまで追いついていない。よって、大量に撮った中から、
好みの写真を探すという手法は、これもかなり実現が困難だ。
自身でカメラ側を破綻直前に制御するのは高度すぎて無理、
沢山撮ってその中から選ぶのも感覚的に困難・・
では、トイレンズを活用するにはどうしたら良いのか?
これについては、現代においては他の有効な解決手法があり、
それは、「エフェクト機能の併用」だ。
----
ここでレンズとカメラを交換しよう。

(新品購入価格 3,000円)
カメラは、PENTAX Q(1/2.3型センサー機)を使用する。
PENTAX Q用のHOLGA LENSは10mmの焦点距離で発売されている、
Qシステムでの換算画角は機種によって異なり、
PENTAX Q/Q10(1/2.3型)の場合は、55mm相当
PENTAX Q7/Q-S1(1/1.7型)の場合は、46mm相当となる。
いずれも「標準画角」であり、他のHOLGA LENSとは、また
違った雰囲気(画角感覚)で被写体を探す事となる。
なお、センサーサイズが大きい Q7/Q-S1の方が、HOLGA LENS
の周辺減光の度合いが当然大きい、ここは、好みや作画等の
目的に応じて、使用カメラを選択するのが良いであろう。
(今回は、周辺減光が控え目なQを使用する)

優秀なエフェクト操作系が備わっている。
ここでエフェクトを用いる意義だが、これはもう「ぎりぎりに
アンコントローラブルな状況を得る」という目的だ。
すなわち、ノーマルな撮影に対して、エフェクトをかけた
撮影では、どのように写るかを事前に想像する事は難しい、
まあ、PENTAX Qシステムでは、エフェクトをかけた画像が
撮影前にモニターに写るため、全く想像不可では無いのだが、
それでも、色々なエフェクトを切り替えて撮る事で多少の
偶然性は得られる。

トイレンズは不要だよ」と考える初級中級層も居ると思う。
トイカメラのモードに限らず、現代においては撮影後に編集
できる項目は非常に多い。PCでのレタッチに限らず、例えば
スマホでも撮影後に被写界深度を調整できるものすらある。
しかし、いずれの場合でも「撮影時に効果が得られる」事と
「撮影後に編集する」というのは、まるで意味が異なるのだ。
何故ならば、撮影時には、被写体に臨んで「考える事」や
「感じる事」が沢山あるからだ。その気持ち、意図、表現・・
を写真に込めたい為に、トイレンズはもとより、特殊レンズや
被写界深度の浅い大口径レンズ等を使う訳であり、それらの
効果をその場で調整して、その表現を込めたショットを撮る。
これは事後の編集では得られない感覚だ。まあ、事後編集では
色々と効果の度合いを変更できる利点はあるが、それすらも
上級者では撮影時にブラケット機能や手動ブラケットで、候補
となるべき複数の意図を込めた写真群を撮る事も簡単に出来る。
(それと、場合により撮影者以外ですら編集者になりえるのだが、
その状況は、ますます写真の「作品」としての本質(本来の意味)
とは異なってしまうだろう。それが許されるのは「映像記録」と
「映像表現」とを分業した業務用途(広告やファッション等)の
場合等である)
まあつまり、「撮影前でも撮影後でも一緒」と考えてしまう
ようでは、写真の本質について、残念ながら理解していない、
という事となる。「出来る」という事柄においては、事前でも
事後でも一緒であっても、「そうしたい」と思う「気持ち」は
事前と事後では、まるっきり異なってしまう訳だ。まあここは
人間であれば当たり前の感覚的な話である。
カメラを作る側でも「技術」の観点ばかりに注目してしまうと、
こういう人間の「気持ち」や「感覚」を見失った機器(カメラ)
仕様にしてしまう事すら、残念ながら、いくらでも事例がある。
カメラは、自身(人間)の感覚・感性を表現する道具であるから、
そこでは人間性を意識した仕様とする事が、本筋であり本質だ。
銀塩時代には、そういうコンセプトで設計されたカメラも多かった
ように思えるが、近年においては「技術優先」および、そうした
感覚面を語るのは「現代的では無い」と思われる風潮があるのか?
そうした設計思想のカメラは限りなく減ってしまっている。
まあ、かろうじて無い訳でも無い、それはカメラのカタログを
店頭から貰ってきて、そのカタログの「作り」を良く読み込むと
それが見えてくる場合もある。
ただ、注意しなくてはならない事は、いくらカタログや設計思想
がそう見えていても、実際のカメラにおいて、そのコンセプトが
全然実現されていないカメラもあるという事だ(汗)
このあたりはとても難しい話ではあるが、そこはカメラの仕様を
通じて設計思想そのものまで(つまり、エンジニアの考えまで)
読み取ろうとする事が、現代のユーザー側に必要な眼力となって
来ている。その「設計思想」が見えていないと、結果的に、自身が
望むコンセプトのカメラを買えなかったり、最悪は、箸にも棒にも
かからない面白味の無いカメラであったり、商売優先のあまり
非常に排他的思想が強い、底意地の悪いカメラを掴まされたり
する羽目に陥ってしまう。
----
余談はここまでで、本題に戻ろう。
Qシステムにおける、解像度やピーキング精度が貧弱な
背面モニターにおいては、ピントの山をちゃんと捉える事は
できない為、多くの場合、ピンボケとなる。
また、Qシステムでは、この手のレンズを装着すると内部の
電子シャッター利用に切り替わる。この電子シャッターは
動体撮影で「ローリングシャッター歪み」が出るタイプで
あるから、ほんの僅かな手ブレや被写体ブレに応じて、
写る被写体が「変形してしまう」のだ。
これらの事は、Hi-Fi撮影においては、カメラの弱点(欠点)
ではあるが、Lo-Fi撮影では、逆に大きな武器(長所)となる。
つまり、カメラの性能が貧弱な為に、思いもよらない写真が
撮れる、という意味では、これは銀塩トイカメラと全く同じ
「アンコントローラブル」な特性になるからだ。

使用のみならず、PENTAX純正でも、4本のトイレンズ
(03魚眼、04広角、05望遠、07収差レンズ)が発売されている。
(全て過去記事で紹介済み)
これらトイレンズ群を有効に活用する事が、Qシステムにおける
主眼であり、ある意味、Qシステムの存在意義にも繋がると思う。
なお、注意点だが、Qシステムには「トイカメラ」のエフェクト
(デジタルフィルター)が存在している、「なのでトイレンズは
不要」と考える初級層も居るかも知れないが、まずエフェクトと
実際のトイレンズは大きく描写特性が異なる事があり、それより
なにより「エフェクトのトイカメラは、コントローラブル」で
ある事がポイントだ。
Lo-Fi描写(技法)は、「アンコントローラブル(制御不能)」
である点と、切っても切れない関係性がある、制御された
エフェクトでは作風に偶然性を得る事ができない訳だ。
で、トイレンズの母艦としてPENTAX Qシリーズは適切であるが、
2014年以降の新型機が無く、現代においては、ほぼ終焉して
いるシリーズであるし、中古流通もだいぶ減ってきている。
入手しておくならばギリギリ今のうちだ。
----
さて、次はラストのHOLGAシステム。

(新古品購入価格 1,000円)
EF(EOS)マウント版のレンズであるので、
カメラは、CANON EOS 7D(APS-C型センサー機)を使用する。
このシステムでの撮影技法だが、「ピントも露出も、ちゃんと
は合わせない」と言うやり方をしてみよう。
これは、銀塩HOLGAにある「Lo-Fi」志向を実現する為だ、
ピントも露出も合わせないのだが、完全なデタラメでは無く、
あえてギリギリで破綻するかしないか、というレベルとする。
(=アンコントーラブル技法を実践する)

用の搭載レンズを単体化したトイレンズとして発売されたが、
前述のとおり、元々イメージサークルが中判機用なので、
周辺減光の効果が得られず、利用者層から不満の声が出ていた。
これを改良する為、レンコン状に穴の開いた特殊な絞り部品が
内蔵され、これにより周辺減光が起きる為、これを
「ブラック・コーナー・エフェクト」(BC機構)とし、
2011年頃の新(再)発売となった。
(注:「レンコン絞り」は、旧来はソフト(軟焦点)効果を
得る目的であったと思うが、どこをどうやったのか? BC機構
では、これを軟焦点効果よりも周辺減光発生に応用している)
これが搭載されているレンズ型番には「BC」が記されるように
なったが、これ以降の時代のHOLGAレンズは、BC型番では
なくても周辺減光は発生する。
なお、前述のPENTAX Q用(HL-PQ)では、BC機構が入っている
ようには外からは見えないが、周辺減光はちゃんと起こる。
で、本レンズ「初期BC型」は流通数も多かったからか
当初の定価(3,000円)よりも値引いたアウトレット商品が
後年(2010年代後半)では、良く見られるようになった、
その為、本レンズも約1,000円という安価な価格で新古品
購入が出来ている。
なお、本レンズは、本記事冒頭で紹介した、HL-O(4/3用)と
同一スペックであるが、マウントやセンサーサイズが違う為、
周辺減光の出方もずいぶんと異なる。
基本的にBC機構はピント位置の設定によっては、周辺減光が
綺麗に円形にならず、デコボコに見える場合が良く発生するが
4/3用ではそれが顕著、EOS用では、さほどそれが起こらない。
ただ、このあたりはレンズやBC機構の製造における個体差で
ある可能性も高く、逆に、そうした「アバウトな商品」である
事もまた、アンコントローラブルな要素を助長する意味があり
その点では、こうした個体差は歓迎だ。
EOSのフルサイズ機では、60mmの画角で使い易いのだが
周辺減光が出過ぎる事もあり、今回は、APS-C機である
EOS 7Dで使用している訳だ。
(注:EOSフルサイズ機では「クロップ撮影が出来ない」
という弱点がある。ニコン等との「差別化」かもしれないが
弱点での差別化は、単なる「意地」であり仕様的に無意味だ。
クロップ機能は露出分布や測距点分布が変化するので、撮影
技法に応用可能であり、「トリミング」と等価では決して無い)

スクリーンであるが故に非常に低い、ただ、その弱点もまた
「あえてピントを厳密に合わせない」というトイレンズの
Lo-FI技法においては欠点にはならず、むしろ長所となる。
(それよりも、F11相当でファインダーが暗い事が問題だ)
EOS 7Dにはエフェクト機能が搭載されていないので、そういう
点においては「アンコントローラブルな表現力」は少ないが、
キヤノンユーザーであれば、より後年の、エフェクトの入った
普及EOS機に装着するか、ミラーレス機のEOS Mシリ-ズ用の
HOLGA LENSも発売されているので、それを使っても良いと思う。
ミラーレス機では、暗いトイレンズでもモニターやEVFが暗く
ならずに撮影できる。又は普及EOS機でライブビュー撮影として
も良い。(ただし、ライブビューエフェクト撮影は、EOS各機
では出来ず、必ず「後掛け」となるので、そこは弱点だ)
なお、高級EOS機をトイレンズ母艦とするのは、カメラ価格と
性能が突出する「オフサイド」状態なので好ましく無い。
本記事では、EOS 7Dを使用しているが、この機体は旧機種で、
現代の中古相場は、普及機(キスデジ等)よりも安価なのだ。
あと、各社カメラのエフェクト機能のうち、「トイカメラ」
をトイレンズと重複して選ぶ事は、あまり効果的では無い。
基本的に「トイカメラ」の画像処理効果は、周辺減光とカラー
バランスの乱れの効果を得る訳だが、HOLGA LENSの場合は、
元々トイレンズなので、その処理を使わずとも周辺減光や収差
発生が得られる。重複して掛けるメリットもあるが、それは
ケースバイケースであろう。
ちなみに収差については、元々の銀塩HOLGAでは、写りの悪い
(収差の大きい)プラスチックレンズ型と、写りが若干良い
ガラスレンズ型が併売されていた、まあLo-Fi志向ならば
プラスチックレンズ型の方が人気ではあったと思う。
エフェクトの件だが、例えばPENTAX機にある「クロスプロセス」
のようなエフェクトは効果的であろう。
PENTAXのそれは、撮影のたびに毎回カラーバランス(色味)が
異なり、ある程度の偶然性(アンコントローラブル)を
得る事ができる。
まあ、デジタル一眼レフの高級機では、後年の機体であっても
(例:EOS 7D MarkⅡ,2014年)エフェクトが搭載されていない
ので、本来であればトイレンズの母艦には適さない。
加えて、本体とレンズの価格比を、「あまり本体側を高価に
しえはならない」という持論(オフサイドの法則)にも、
ひっかかる為、できるだけ低価格機でトイレンズを使うのが
基本であると言える。(注:私の場合、近年においては、
EOS 8000Dを、その目的のトイレンズ母艦としている)
つまり高級機はHi-Fi写真を撮るのに使えば良いわけであり、
Lo-Fi写真を撮る上では、むしろ、できるだけ低性能なカメラを
使いたい。けれども現代のデジタル機は、どんなに安価なカメラ
であっても、Hi-Fi写真が撮れてしまう高性能機である為、
そうした条件をなかなか満たさない訳だ。
だから、逆に言えば、デジタル機でLo-Fi写真を撮る事は
極めて高度な技能や技法や知識を必要とされる為、なかなか
こうしたトイレンズが、現代の初級中級層には受け入れられない
し、その技法や使いこなしのノウハウも、市場全般において
ずっと未発達のままだ。
それに高級機を志向するユーザー層は「Hi-Fi写真こそが王道
であり、Lo-Fi写真は邪道」という意識が非常に強い。
もしそれを認めてしまったら、自身がこれまで投資してきた
高級機材を購入した資金や、練習や修練で磨いてきた撮影
技術がすべて無意味になってしまうからだ、だから自分を否定
しない為にも、頑固なまでにLo-Fi写真を認める事は無い。
けど、たとえばスマホのカメラでアプリにより様々な画像加工を
楽しむ一般層においては、Lo-Fi写真に何の違和感も持たない、
そうした映像コミュニケーションにおいては、目立つ写真や
言いたい事がはっきりしている写真の方が好ましいからだ。

疑わない一部の層は、写真は非日常を忠実に記録するもので
あって、そこに「表現」がある事は理解しずらい(出来ない)
ただ、同じその撮影者であっても、自慢の高性能一眼レフを
離れてスマホをいじくれば、加工写真を面白がって使う訳だ。
要は、発想の柔軟性である、「こうでなければならない」という
思い込みは、仮にそれが正しい事であったとしても、どうしても
発想の幅を狭めてしまう。
私としては、むしろHi-Fi写真を強く志向する層であればある程、
こうした「トイレンズ」や「Lo-Fi」写真を一度は体験して
もらいたいと思っている。
ただ、実際の所、これを使いこなすのは、そう簡単な話では無い。
高性能なデジタル機で「意図的に破綻寸前の状況を作り出す」
というのは、Hi-Fi写真を撮るよりも数段高度な技術である。
その「奥行き」が理解できなければ、「写りが悪い、面白く無い」
で終わってしまう事も確かであろう。
まあ、なかなか難しい撮影分野であり、その筆頭格の
トイレンズが、今回紹介の「HOLGA LENS」であるのかも知れない
訳だ。
----
さて、今回の記事「HOLGA LENS特集」は、このあたり迄で、
次回記事に続く・・