連載中の「レンズ・マニアックス」シリーズの補足編。
過去の各種マニアックス系のシリーズ記事において、
「これは使いこなしが非常に難しい」と思われたレンズを
ワースト・ランキング形式で紹介する記事の後編。
今回の後編では、4位~1位のレンズを紹介しよう。
勿論順位が上の方が高難易度である。
これは描写力などの性能とは無関係のランキングであり、
使いこなしが難しいという意味においては、上位になれば
なる程、あまり初級中級者層には推奨できないレンズとなる。
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まずは最初のレンズ
第4位:Carl Zeiss Planar T* 85mm/f1.4 ZF(コシナ版)
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ミラーレス・マニアックス第43回記事等で紹介の、
2006年発売の大口径MF中望遠レンズ(以下、ZF85/1.4)
カメラはNIKON D300(APS-C機)を使用する。
本ZF85/1.4は1975年~2000年代初頭に販売されていた
京セラ・コンタックス プラナー T* 85mm/f1.4のリメイク版
であり、2000年代中頃に独カール・ツァイス社と提携した
日本のコシナ社製造である。
旧来のレンズは、1975年のCONTAX RTSと同時期に発売
されていたので、RTS Planar(85/1.4)と呼ばれる事がある。
(以下、旧レンズをRTS P85/1.4と省略する)
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本ZF85/1.4は2006年の発売当初に購入した初期型であり
現在では、クラッシック・シリーズとしてZF2版となっている。
ZF版との違いは、ニコンマウントでのCPU内蔵レンズとなった
事で、ニコン(デジタル)一眼の普及機でも使用可能であり、
また、ニコン高級機ではレンズ情報手動設定の入力を行わなく
ても良くなっている。
今回利用のD300は一応高級機であるから、この初期型のZF版
でも使用可能であるが、レンズ情報の手動入力が必要だ。
なお、その入力を省略すると、絞り値の表示が実際の絞り値と
異なってしまうのだが、実はその状態でも撮影は可能である。
単に数字が違うので気持ちが悪かったり、EXIF情報を見ても
正しい絞り値が書かれていないだけである。
(注:焦点距離入力を省略すると、マルチパターン露出値
決定のアルゴリズムや、フラッシュ使用時の露出決定の
精度に悪影響が出る可能性はある。また、ニコン一眼レフ
では手ブレ補正は内蔵されていないので、そこは関係無いが、
動画撮影時の画像処理型の手ブレ補正には影響が出るかも
しれない(→未検証)いずれにしても、面倒がらずに、
真面目にレンズ情報入力は、しておく事が望ましい)
なお、マウントアダプターで使用する際には、ZFとZF2の差は
無く、どちらでも実絞り測光で他のカメラで使用可能だ。
なお、日中の輝度でも絞りを開放からフルレンジで使用できる
ようにする為(シャッター速度オーバー対策)、今回はND8
というキツ目の減光フィルターを装着している。
この為、光学ファインダーの像はNDフィルター無しの時に
比べ8分の1の光量しかない。ニコン機では開放測光で行けるが
他社一眼レフにアダプターで装着時は、絞り込むとさらに暗く
なるので、そのような使用法の場合、あまり絞り込まない事が
望ましい。(またはNDフィルターを外して用い、結果として
シャッター速度オーバー等に留意しながら使用する)
それと「レンズ情報手動設定」とNDフィルター併用は原理的
に露出に矛盾が出そうな気も若干するかも知れないが、まあ、
開放測光であるから、ちゃんと動作する。
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さて、前置きが長くなったが、本ZF85/1.4の使いこなしの
難しさの理由は何点かある。
まず1点目、被写界深度が浅く、ピント合わせが難しい事だ。
ただし、この件は本ZF85/1.4に限らず全ての85mm/f1.4
レンズで同様である。実際の所は、この手の被写界深度が浅い
レンズは一眼レフで使うよりも高精度のピーキング機能と
優秀な拡大操作系、そして高精細なEVFを持つミラーレス機
(例、LUMIX G系,SONY NEX/α等)で使う方がピント合わせは
若干容易となる、
今回使用のD300の光学ファインダーは、さほど優秀では無い
のでピント合わせが厳しいが、EOS機のように電子接点の無い
レンズを装着するとフォーカスエイドが効かない、といった
事は無く、一応それが効く(ただし、かなりシビアに反応し、
かつ、MFなのに測距点変更の操作が必要な為、面倒だ)
まあ、例によってピント歩留まり(成功率)が極めて悪くなる
状態であり、これが使いこなしの難しさの1点目となる。
そして2点目だが、旧来のRTS P85/1.4から「プラナーボケ」
と呼ばれていたボケ質破綻が、本レンズでも同様に発生する。
プラナーボケは、RTS Planar 100mm/f2(ミラーレス第32回、
第61回,ハイコスパ第13回)や CONTAX N Planar 85mm/f1.4
(ミラーレス第13回,名玉編第3回)では、発生しにくいので、
「プラナー」全てを悪者にしてしまう、この名称はどうかと
思うが、まあでも、かなり深刻な問題である。
RTS P85/1.4は、高い描写力と優れたボケ質で、銀塩時代
には「神格化」されていたレンズである。
しかしながら、銀塩一眼のファインダーでは基本的にボケ質は
わからない。私も多数のRTS系CONTAX銀塩一眼を使用していたが、
平均的にCOTAX機のスクリーンは性能が低い事もあいまって、
ボケ質やボケ量どころか、ピントの山すら掴み難かった。
(注:勿論、開放測光であるが故の問題点も大きい。だが、
一々プレビュー操作はやってられないし、やったとしても
映像が暗くなるので、ボケ量やボケ質は良くわからない)
なのでまあ、撮影した後、現像・プリントしてみて、ボケ質の
破綻が出ている事に気がつき、驚くとともにがっかりするのだ。
その「ボケ質破綻」の頻度はかなり高く、銀塩時代の機材環境
では、それを回避する術は無いので、RTS P85/1.4は極めて
歩留まりが悪いレンズとして有名(悪名)になってしまった。
(私の経験上では、その成功率は36枚撮りフィルム1本中で
1枚あれば良い程度、つまり3%以下程度しか上手く撮れない)
ただ、ボケ質そしてピントが決まった時の描写力は非常に高い、
銀塩時代のRTS P85/1.4の作例・作品等は、膨大な数の試行
錯誤(失敗)の中から選んだ1枚が載せられていたのだと
想像出来る。
なのでまあ、ユーザーはそうした「凄い写真」を見せられて
RTS P85/1.4を、過剰な期待を持って購入するのだが、実際に
使ってみて驚くわけだ、ピントは合わないし、ボケは汚い、
「いったいこのレンズは何だ? 良いという評判は嘘か?」
となってしまった。
RTS P85/1.4が独国製造版と国内製造版の2種類が併売されて
いた事から、初級マニアの間では以下のような情報まで流れた
「写りが悪いのは安い日本製だからだ、高いドイツ製を買えば、
ちゃんと良く写るぞ!」
この、根も葉もない噂を信じて、日本版を売って、より高価な
独国版に買い換える可哀想なユーザーまで出てきた。
しかし製造国が違ったとしても、どちらも中身は同じレンズだ。
(まあ、同じ部品を使っている事であろう)
両者、同様の欠点を持ち、結局、膨大なムダ打ちの中から
選別しない限り、上手くキマった写真など撮れる筈が無いのだ。
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1990年代でのRTS P85/1.4の定価は10万円程と、神格化された
レンズにしてはさほど高価では無いが、これはAF化に失敗した
CONTAXが、旧来のMFレンズを、あまり値上げが出来なかった
事で相対的に安くなったのであり、それ以前1970~1980年代
の10万円は、やはり高価なレンズであろう。
したがって当時、RTS P85/1.4を購入できた人は、富裕層で
あると言える。そして、そうした層は収集がメインで、あまり
写真の枚数を撮らない事が一般的だ、だからRTS P85/1.4で
膨大な数を撮って、その中から選ぶ等の対策はできない。
じゃあ、何故、周囲の人が、そのように(沢山撮れと)教え
なかったかと言えば、RTS P85/1.4がそこまで難しいレンズだ
という事は、巷には情報として殆ど流れていなかったのだ。
「失敗したのは自分が下手だから」という事で、膨大なムダ
打ち失敗写真は、すべて隠し通して、まともに撮れた写真しか
周囲に見せなかったのではなかろうか?
それから、RTS P85/1.4では「焦点移動」が発生する。
(開放で測光・測距した場合、撮影時に絞り込むとピント
位置がずれる)
これも銀塩時代のピンボケの理由の1つであったかも知れない。
なお、ミラーレス機で絞込み(実絞り)測光で使うならば
原理的に焦点移動は発生しない。
本ZF85/1.4だが、RTS P85/1.4よりも外装の仕上に高級感が
あり、ピントリングの感触も良い(ただし、かなり重い)
そしてニコンとEOS(EF)マウント版がある。定価は135,000円と、
RTS版の時代から、さほど値上がりはしていなかった。
しかし、中身がRTS版と同等である為、使いこなしが難しい
レンズである事は間違いない、あくまで上級者向けだ。
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さて、次のレンズ
第3位:Lens Baby 3G
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ミラーレス第11回,第14回,第40回,ハイコスパ第7回記事で
紹介の、2000年代のMFティルト型トイレンズ
カメラはトイレンズ母艦のSONY NEX-3(APS-C機)を
使用する。
本レンズの難しさは、その操作性である。
ティルトレンズであるから、レンズを任意の方向に 任意の
角度で傾けなくては面白味が無い。
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本レンズは、3G(第三世代)という古いタイプであり、後継機
では傾けた状態で固定できるのだが、本レンズ3Gでは、傾けた
後にロックをして、それからピントを微調整する必要がある。
この操作が面倒なので、傾きをロックしない方法を編み出した。
指の形で傾きを作りつつ、同時に蛇腹のバネでピントを合わせ、
シャッターボタンに指を伸ばして撮影する、という方法だ。
(まあ、後継機MUSEでは、そういう技法で撮るのだが・・)
この撮影技法を実現する為のボディ形状が、NEX-3であれば
適正なのだ。
・・とは言え、ロックをしないで撮るのは、すごく難しい。
力も要るし、角度を保持する為の指使いは極めて複雑だ。
私はギターとキーボードを演奏するのだが、そのように楽器
演奏の(あるいはTVゲームの)練習経験が無いと、個々の指を
個別に複雑に動かす事は困難かも知れない。
「使い難いのだったら新型のコンポーザー等を買えば良い」
と思うかもしれない、だが、残念ながら新型は高価で、かつ
中古もあまり出回っていなかった。本3G型は、中古で1万円を
切る価格であったから購入したのであって、そうでないと、
コスパが悪いので購入対象外なのだ。
さすがに、ティルトレンズ系に3万も4万円もの予算は出せない
現代ではティルト式マウントアダプターも存在するので、その
効果だけを得たいならば、アダプターでも十分なのだ。
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さて、本LENSBABY 3Gであるが、絞り値で効果が若干変化する
のだが、絞り環が無い。それを変えたい場合は、ディスク状
の絞り部品がレンズ前部に磁力で付いているので、それを
専用器具で外して、他の絞り部品に入れ替える必要がある。
これは極めて煩雑な操作であり、実際の撮影中に、作画意図に
応じて絞り部品を交換する、という事はまず出来ないであろう。
この為、屋外であればその日の天候に合わせ「今日は曇りだから
F5.6あたりをつけていくか」、など、まるで露出計が無い銀塩
時代のカメラ(およそ50年程前)のような撮影技法になって
しまう。その頃には、ネガフィルムの箱の裏に、たとえば
「晴天の場合、カメラの絞りをF11にします」などと書かれて
いた。ネガフィルムの広いラティチュードがあれば、だいたい
アバウトな露出値で撮る事が出来ていたのだ。
なお、このような半世紀前の時代の記憶からか?また、それが
次の世代にまで伝わっているのか?いまだ、シニア層か、それに
近い年代のカメラマンの中で現代のデジタル一眼を使っていても
「今日は、絞りはいくつくらいにするのが良いですか?」と
聞いて来る人が多数居て驚く事がある。
勿論、レンズの絞り値は、自分が撮影したいと思う被写界深度
の意図に応じて、さらに撮影距離やレンズ焦点距離を加味して、
1枚1枚の撮影に対して個々に決定するものだ。
丸一日同じ絞り値で通すようなものでは決して無い。
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さらに余談だが、先年、観光地で高級カメラと高級レンズに
PL(偏光)フィルターを装着してるシニア層と話をした。
「PLフィルターの常用」は、20~30年前の、銀塩時代に
流行した機材利用法であり、現代ではあまり推奨はできない。
まあつまり、昔の撮影技法を現代でも守っている人だ。
彼は、撮影時に、そのPLフィルターを廻さずに、すなわち
「偏光効果を被写体に応じて調整せず」に使っていたので、
試しに「PLフィルターって、いつも廻して使ってますか?」
と尋ねてみたところ、そのシニア氏いわく、
「ああ、今朝調整したので、ずっとそのままです・・」
という答えだった。
勿論、とんでもない誤解の使用法であり、これはつまり、
「PLフィルターは、1枚1枚の写真の撮影時に毎回調整が必要
である」という点を根本的に理解していない。
「現代では推奨できない」と前述した理由の中の1つに、
この事があり、つまり、銀塩時代に「PLを付けると良い」
といった、その事柄だけが後年にまで引き継がれてしまい、
その際に「PLフィルターの正しい使い方」までを含めての
推奨または指導があったのならば良いが、それがなされず、
下手をすれば、このシニア氏のように、PL(偏光)効果の
意味や効能、用法を全く理解せずに使っている人達が大半
であるという状況だからだ。この場合、PLフィルターを
装着する事で、レンズに入る光量は、最大1/4にまで減少
してしまう、この意味がわからない初級中級層では、手ブレ
を誘発したり、AUTO ISO設定での感度上昇によるノイズの
増加などの弊害が出てしまう。
正しく使用するならば、PLフィルターは勿論効能があるが、
意味もわからず装着しているだけでは、弱点しか得られない。
絞り値の件やPLフィルターの話に限らず、様々なカメラ設定
は、1枚撮る毎に自身の意図に応じて変更をする必要がある。
それに加えて、写真の原理を何も理解しないで、周囲に
言われたままの状況で撮っている事は、さらに好ましく無い。
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さて、余談が長くなったが、本レンズ LENS BABY 3Gは、
その操作性が極めて難しいレンズである。
そしてティルトの原理や効果もわかっていないビギナーの場合、
ただなんとなく「ミニチュア風の写真が撮れた」と喜んでいる
だけの人も、かなり多いかも知れない。
勿論そのように偶然性で使うレンズではなく、ちゃんと効果が
出る方法を良く考えて用いるのが本来だ。
まあでも、ティルトの原理自体はそう難しいものでは無い、
レンズの光軸を傾けた方向に対し、レンズの面と平行な面に
ピントが合う、だから例えば左右に位置する被写体の場合は
レンズを左右に傾けて、その片方でピントを合わせれば
逆側の被写体はボケる事になる。以下、様々に光軸を傾けても
同様な原理であるし、逆向きに傾ければ距離差がある被写体に
同時にピントが合う(注:こちらが本来のティルト効果だ)
しかし、適切な角度で傾けるのは、本レンズの構造では
なかなか難しい、指の形でその度合いを測らなければならない
からだ。本レンズも、中上級者向けとしておこう。
ちなみに、同様の構造のLENS BABY MUSE(レンズマニアックス
第1回記事)も所有している。
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こちらはプラスチックレンズ仕様で、3Gよりもピントの山が
掴み難く、さらに高難易度のレンズだ。
(注:MUSEは、オプティック(光学系)が交換可能である)
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さて、次のレンズ
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第2位:Voigtlander NOKTON 42.5mm/f0.95
(読み:フォクトレンダー ノクトン
注:独語綴り上の変母音は省略)
ミラーレス第14回,第41回,名玉編第4回,ハイコスパ第16回
記事で紹介の、2010年代のμ4/3専用超大口径MF中望遠レンズ。
カメラは、本レンズの専用母艦としているPANASONIC LUMIX
DMC-G5(μ4/3機)を使用する。
本レンズの難しさは、まず、開放F0.95の超大口径レンズで
ある事に加え、異常にまで寄れる23cmの最短撮影距離であり、
両者を組み合わせる事で、超極端に浅い被写界深度となる事だ。
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前編記事で第8位となったSAMYANG 85mm/f1.4が、その最短
撮影距離での開放絞りの際、その被写界深度は約11mmとなった。
これでも十分すぎるほど浅く「まずピントが合わない」と
述べたのだが、本レンズで、開放&最短撮影距離という
条件では、その被写界深度は、なんと 1.6mmでしかない。
(注:いずれも許容錯乱円径は0.03mmで計算)
驚くべき事に、被写界深度が浅いと言っていたSAMYANGよりも
本レンズが6倍も被写界深度が浅い。
まあでも、デジタルでは許容錯乱円の定義が曖昧である事で
被写界深度の計算方法は、他のやり方も有りえる。
例えば、オリンパス社のWEBでは、μ4/3用レンズにおける
許容錯乱円径を銀塩35mm判フィルムの0.03mm(1/30mm)
に対し、半分の0.016mm(1/60mm)で計算している。
そして、本ノクトン42.5/0.95は、μ4/3専用である為、
SAMYANG 85/1.4をフルサイズ機で使った場合においては、
センサーサイズが大きい方が被写界深度尾が浅くなるという
点で、若干両者の差は縮まると思う。上記のオリンパス社の
計算例のように、許容錯乱円の値を変えれば、計算上そうなる
のだが、前述の通り、デジタルの許容錯乱円の定義は少々曖昧
であり、他にもピクセルピッチ等の別の数値を使う事もある。
なのでセンサーサイズの差と計算方式により答えが違ってくる
のではあるが、SAMYANG 85/1.4をフルサイズで使ったとしても、
NOKTONとの6倍の差が僅差にまで詰まる事は無いであろう。
それから、絞り開放&最短撮影距離という極端な状況で
被写界深度を計算して比べるのも、ちょっと無理がある。
実際には、そういう状況で撮影する方が稀であるからだ。
そして、実使用においては、勿論様々な使い方がある為、
計算はそう単純では無い。
まあでも、撮影状況を仮に想定して計算してみよう。
SAMYANG 85/1.4はポートレート用レンズと仮定し、
APS-Cデジタル一眼で3mの距離から写すと、その画角における
対角線距離は約1mとなる(人物の半身が撮れる撮影範囲)
ここで絞り開放F1.4の場合、その被写界深度は10cm強となる。
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NOKTON 42.5/0.95 は、準マクロレンズと目的を仮定して、
μ4/3機で80cmの距離から撮影すると、その画角における
対角線距離は約40cmとなる、これは大きめの花や、数輪の花、
小物等を撮影するのに適正な撮影範囲であろう。
ここで絞りを開放から1段程度絞り、SAMYANGと同様のF1.4
とする、この場合の被写界深度は約3cmだ。
(いずれも許容錯乱円は0.03mmで計算)
すなわち、各レンズの実用的な使用法を考慮した場合、
やはりNOKTONの方が被写界深度が浅い事になる。
・・とは言え、他の様々な撮影条件でも、常にNOKTONの方が
SAMYANG 85/1.4よりも被写界深度が浅い訳でもない。
焦点距離の差が2倍ある為、撮影条件によってはSAMYANGの
方が被写界深度が浅くなる事も勿論ある。
で、撮影距離を短く取るケースと、絞りを開放F0.95近くに
する事の両者を掛け合わせると、本レンズの被写界深度の
浅さは、手に負えなくなってくる。
前述のように、極薄の被写界深度1.6mmともなると、手持ち
での撮影は、その微妙に変化する撮影距離(被写体ブレと
撮影者の前後方向への手ブレ)により、ピントが合うのは
奇跡的だ、仮に、いくら高性能な手ブレ補正があっても
上下左右や回転方向の平面にしか効かず、撮影距離の前後
方向に効く手ブレ補正は存在しない。
(一部のカメラにはフォーカス・ブラケット機能が存在するが、
純正AFレンズ専用であり、勿論MFのNOKTONでは無効だ)
結局、微妙に変化する撮影距離の中で連写して、たまたま
ピントが合ったものを選別するしか方法が無い。
(=MFブラケット技法)
あるいは、かなり(F5.6程度)まで絞り込むか? だが、
F5.6でも最短撮影距離での被写界深度は約1cmしか無い。
本レンズの購入当初は、その驚異的な近接撮影能力と
超大口径を生かして、近距離での撮影が特徴を強調できると
思っていたのだが、近距離では、どうしても被写界深度が
浅くなりすぎ、ピント合わせが困難だ。そして「ピントが
厳しいから」と、絞り込み過ぎると、超大口径レンズによる
独特な描写も得られなくなってしまう。
なので最近では、本レンズが中距離での撮影においても、
被写界深度を浅くする事が出来ることから、そのような
撮り方をするのも1つの方法かとも思うようになった。
(=新しい「用途開発」を行っている)
今回の記事でも、そうした中距離撮影に特化している。
![c0032138_12251011.jpg]()
浅い被写界深度の話が長くなったが、この特性から、
被写体選びもかなり難しい、撮影距離が微妙に異なる密集した
被写体(例、桜の花など)では、構図上の主体が何処にあるか
わからず、文字通り焦点のぼやけた写真となるのだ。
そしてもう1点、本レンズは開放近くの近接撮影で球面収差や
ハロ等が多く発生し、ソフトレンズのような軟調の写りに
なってしまう、その度合いは大きく、梅の花などの白い
小さい被写体では、輪郭がわからなくなる程の甘さとなる。
絞り値を適切な値(F2.5~F4程度)まで、やや絞り込むと
これは回避できるのだが、絞ると、超大口径独特の描写が
失われるので、撮影条件(撮影距離、被写体種類、背景距離等)
に応じ、両者のバランスを取るピンポイントで、F2.5とかの
特定の値を探し出す必要がある。
なお、絞り環は、通常1/2段刻みであるが、絞り環を180度廻す
と、動画撮影用のクリック・ストップが無い(音がしない)
絞りとなり、この場合、無段階に連続して絞り値が調整できる。
いずれにしても、ランキングもこの位置(2位)ともなると、
かなりの高難易度レンズだ、上級者でも難儀すると思われるし
専門評価者や職業写真家層であっても、この手の超大口径
MFレンズでの撮影の経験値を持っている訳でも無いだろう。
勿論、初級中級者の手に負えるレベルのものでは無い。
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次はラストのレンズ、こちらが最難関レンズだ。
第1位:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー マクロアポランター
注:原語綴りにおける変母音の記載は省略している)
![c0032138_12252296.jpg]()
ミラーレス・マニアックス第23回、補足編第6回記事で紹介の、
2001年発売のMF望遠マクロレンズ
本レンズは、当時のフォクトレンダーSL系レンズの中では
珍しいEF(EOS)マウント版だ。
カメラは、ファインダー性能が極めて低いCANON EOS7Dを
試験的に使用してみよう。
奇しくも1位,2位とフォクトレンダーのワンツーフィニッシュ
となった、まあ、コシナ製のレンズは、どれもマニア向け
なので、こういう事もあるだろう。
![c0032138_12252256.jpg]()
さて、一口に「使いこなしが難しい」と言っても、そこには
様々な理由がある。
ここまでランキングにあげてきたレンズを、その理由で
4種類に区分してみよう。
1)レンズとカメラを合わせたシステムとしての性能上の限界
8位 EOS 7D+SAMYANG 85mm/f1.4
番外 PENTAX Q7+Space 7.5mm/f1.4
2)レンズの特徴的な仕様を原因とする使い難さ
7位 TAMRON SP500mm/f8
6位 KENKO MC 85mm/f2.5 Soft
2位 Voigtlander NOKTON 42.5mm/f0.95
3)レンズの性能上の課題を回避して使う事が難しいケース
4位 Carl Zeiss Planar 85mm/f1.4
4)レンズそのものの操作性の弱点から来る使い難さ
5位 CONTAX Makro-Planar 100mm/f2.8
3位 LENS BABY 3G
![c0032138_12252262.jpg]()
さて本マクロアポランター125/2.5SL(以下MAP125/2.5)は、
上記区分の、どのケースに当てはまるのであろうか?
実は、3)の性能、以外の全てに該当してしまうのだ。
まず、1)のシステムの問題点だが、カメラはMF性能に劣る
EOS 7Dだ、今回も全くピントが合わない。
「限界性能」のテスト目的としても、これでは酷すぎるので、
早々にEOS 7Dの利用は諦め、ボディを望遠母艦のLUMIX DMC-G6
(μ4/3機)に変更しよう。
![c0032138_12253696.jpg]()
そうしても、次いで、2)仕様上の課題が出てくる。
かなり大きく重い(770g)のレンズであり、ハンドリングが悪い。
EOS 7D(APS-C機)での換算画角は200mmとなり、μ4/3のDMC-G6
では、250mm相当と、かなり長目の画角だ。
そこで最短撮影距離38cmの等倍マクロの状態では、画角が
狭すぎてブレが非常に大きくなりすぎる。
ちなみに、撮影範囲だが、μ4/3機で撮影距離38cmの場合、
約5.2cmx約3.9cmの狭い範囲しか写らない。
(APS-C機では、約7cmx5cmという感じだ)
仮に、この撮影範囲を約2000万画素相当で撮影した場合、
計算を簡略化して、5200x4000ピクセルとするが、これは
1cmあたり1000画素であるから、被写体ブレまたは手ブレが
ほんの1mm発生しただけで、100画素もずれてしまう(!)
ブレの原因の1つとしては重たい(重たく感じる)レンズで
ある事も大きく影響している。一眼レフとの組み合わせでは
総重量は1.5kgを越え、手持ち近接撮影は極めて厳しく
かと言って、グリップしずらい小型ミラーレス機では、
総重量こそ軽くなっても、レンズを支えきれない。
今回は軽量かつグリップのしっかりしたDMC-G6を用いて
いるが、それでも厳しい状況だ。
「じゃあ三脚を立てて撮れば良いじゃあないか」
と思うかも知れないが、それは大きな勘違いだ。
最短38cm、絞り開放での被写界深度だが、何と1.3mmだ(!)
これは、上記の超大口径レンズNOKTON 42.5mm/f0.95
の最短での被写界深度約1.6mmより、さらに浅い驚愕の数値だ。
このような状況で、たとえ三脚を立てても、屋外被写体で
あれば全滅だ、風やその他の要因がある中で、1.3mm以下の
範囲で微動だにしない被写体があるだろうか?
「屋内被写体ならば大丈夫」とか屁理屈を言うなかれ、
そんな浅い被写界深度で撮るべき商品写真や小物撮影等は無い。
ともかく、ブレが非常に大きく影響し、加えてピント合わせが
極めて困難な事が、2)の仕様上の問題点となる。
![c0032138_12253664.jpg]()
これまでの問題点を、超絶的な技巧で回避できたとしても、
次いで「4)レンズそのものの操作性の弱点」が襲い掛かる
本レンズは、第5位の Makro-Planar T* 100mm/f2.8
と同様に、MFのピントリング回転角が極めて大きい。
無限遠から最短撮影距離までの、左手の持ち替え回数は、
Makro-Planarと同じ、平均14回だ。
当然、撮影中、左手、右手の両方に極めて大きな負担がかかる、
これでは、ものの10分で、使うのが嫌になって来る事であろう。
以前のミラーレス記事でも書いたが、このレンズを使うのは
「何かの修行か?」と思われる程の苦労を伴う。
描写力はそこそこ高いのであるが、使っていて楽しく無い事は
勿論であり、好き好んで本レンズを使うべきでは無いであろう。
(=「エンジョイ度」の得点が低いレンズと評価される)
初級中級者には推奨しない事は勿論、上級者や上級マニアに
対しても薦める事はしたくない、どうみても「苦行」でしか
無いからだ・・
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幸い(?)本レンズMAP125/2.5は、現代ではレアものである、
2000年代初頭の発売時の定価が10万円弱と高価であった事と、
マニアックなスペックから、販売本数はかなり限られていたと
思われる。
ごく稀にネット等で中古が出てくると、レアな為、プレミアム
価格となる場合もあるし、「投機対象」となっている様相も
あるのだが、本レンズを高価な価格で入手する事は疑問だ、
何も、好き好んで「修行」をする必要は無い。
![c0032138_12253632.jpg]()
まあ、最難関の「使いこなしが難しい」レンズである事は
間違い無い。
なお、参考の為。2018年末に発売された、本MAP125/2.5
の17年ぶりの正当後継機種とも言える「マクロ アポランター
110m/F2.5」は、やはり難しいMFレンズではあるが、本レンズ
程の酷い使い難さは無い。左手の持ち替え回数も8~9回で
済む。SONY FEマウント仕様である為、ピーキングも効くし、
α7系のⅡ型機以降であれば、内蔵手ブレ補正機能も使用
可能である。描写力に関しても僅かに新型MAP110/2,5が
優れるであろう。新型は新品で14万円前後と高価なレンズ
ではあるが、本MAP125/2.5を不条理なプレミアム相場で
買うよりも安価であり、新型MAP110/2.5が圧倒的に
お勧めだ。(後日、別記事で紹介予定)
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さて、前編後編に分けて、ランキング形式で紹介した
「使いこなしが難しいレンズ特集」は、これにて終了だ。
ランクインしたレンズは全てMFレンズであるが、これはまあ
たまたま、である。MFレンズがAFレンズよりも使いこなしが
難しいと言う訳では無い事は、マニア層や上級層であれば
誰でもわかっている事だ。
最後に念の為、前編・後編であげたレンズ群は、あくまで
「使いこなしが難しい」というだけであり、悪いレンズとか
性能が低いレンズでは決して無い。
これらのレンズは、高性能あるいは個性的な描写表現力を
持つ為、むしろ「使いたいレンズ」であるのだ。
「使いたいけど、使うのが難しい」そういうレンズが今回の
記事で紹介したレンズ群である。
過去の各種マニアックス系のシリーズ記事において、
「これは使いこなしが非常に難しい」と思われたレンズを
ワースト・ランキング形式で紹介する記事の後編。
今回の後編では、4位~1位のレンズを紹介しよう。
勿論順位が上の方が高難易度である。
これは描写力などの性能とは無関係のランキングであり、
使いこなしが難しいという意味においては、上位になれば
なる程、あまり初級中級者層には推奨できないレンズとなる。
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まずは最初のレンズ
第4位:Carl Zeiss Planar T* 85mm/f1.4 ZF(コシナ版)

2006年発売の大口径MF中望遠レンズ(以下、ZF85/1.4)
カメラはNIKON D300(APS-C機)を使用する。
本ZF85/1.4は1975年~2000年代初頭に販売されていた
京セラ・コンタックス プラナー T* 85mm/f1.4のリメイク版
であり、2000年代中頃に独カール・ツァイス社と提携した
日本のコシナ社製造である。
旧来のレンズは、1975年のCONTAX RTSと同時期に発売
されていたので、RTS Planar(85/1.4)と呼ばれる事がある。
(以下、旧レンズをRTS P85/1.4と省略する)

現在では、クラッシック・シリーズとしてZF2版となっている。
ZF版との違いは、ニコンマウントでのCPU内蔵レンズとなった
事で、ニコン(デジタル)一眼の普及機でも使用可能であり、
また、ニコン高級機ではレンズ情報手動設定の入力を行わなく
ても良くなっている。
今回利用のD300は一応高級機であるから、この初期型のZF版
でも使用可能であるが、レンズ情報の手動入力が必要だ。
なお、その入力を省略すると、絞り値の表示が実際の絞り値と
異なってしまうのだが、実はその状態でも撮影は可能である。
単に数字が違うので気持ちが悪かったり、EXIF情報を見ても
正しい絞り値が書かれていないだけである。
(注:焦点距離入力を省略すると、マルチパターン露出値
決定のアルゴリズムや、フラッシュ使用時の露出決定の
精度に悪影響が出る可能性はある。また、ニコン一眼レフ
では手ブレ補正は内蔵されていないので、そこは関係無いが、
動画撮影時の画像処理型の手ブレ補正には影響が出るかも
しれない(→未検証)いずれにしても、面倒がらずに、
真面目にレンズ情報入力は、しておく事が望ましい)
なお、マウントアダプターで使用する際には、ZFとZF2の差は
無く、どちらでも実絞り測光で他のカメラで使用可能だ。
なお、日中の輝度でも絞りを開放からフルレンジで使用できる
ようにする為(シャッター速度オーバー対策)、今回はND8
というキツ目の減光フィルターを装着している。
この為、光学ファインダーの像はNDフィルター無しの時に
比べ8分の1の光量しかない。ニコン機では開放測光で行けるが
他社一眼レフにアダプターで装着時は、絞り込むとさらに暗く
なるので、そのような使用法の場合、あまり絞り込まない事が
望ましい。(またはNDフィルターを外して用い、結果として
シャッター速度オーバー等に留意しながら使用する)
それと「レンズ情報手動設定」とNDフィルター併用は原理的
に露出に矛盾が出そうな気も若干するかも知れないが、まあ、
開放測光であるから、ちゃんと動作する。

難しさの理由は何点かある。
まず1点目、被写界深度が浅く、ピント合わせが難しい事だ。
ただし、この件は本ZF85/1.4に限らず全ての85mm/f1.4
レンズで同様である。実際の所は、この手の被写界深度が浅い
レンズは一眼レフで使うよりも高精度のピーキング機能と
優秀な拡大操作系、そして高精細なEVFを持つミラーレス機
(例、LUMIX G系,SONY NEX/α等)で使う方がピント合わせは
若干容易となる、
今回使用のD300の光学ファインダーは、さほど優秀では無い
のでピント合わせが厳しいが、EOS機のように電子接点の無い
レンズを装着するとフォーカスエイドが効かない、といった
事は無く、一応それが効く(ただし、かなりシビアに反応し、
かつ、MFなのに測距点変更の操作が必要な為、面倒だ)
まあ、例によってピント歩留まり(成功率)が極めて悪くなる
状態であり、これが使いこなしの難しさの1点目となる。
そして2点目だが、旧来のRTS P85/1.4から「プラナーボケ」
と呼ばれていたボケ質破綻が、本レンズでも同様に発生する。
プラナーボケは、RTS Planar 100mm/f2(ミラーレス第32回、
第61回,ハイコスパ第13回)や CONTAX N Planar 85mm/f1.4
(ミラーレス第13回,名玉編第3回)では、発生しにくいので、
「プラナー」全てを悪者にしてしまう、この名称はどうかと
思うが、まあでも、かなり深刻な問題である。
RTS P85/1.4は、高い描写力と優れたボケ質で、銀塩時代
には「神格化」されていたレンズである。
しかしながら、銀塩一眼のファインダーでは基本的にボケ質は
わからない。私も多数のRTS系CONTAX銀塩一眼を使用していたが、
平均的にCOTAX機のスクリーンは性能が低い事もあいまって、
ボケ質やボケ量どころか、ピントの山すら掴み難かった。
(注:勿論、開放測光であるが故の問題点も大きい。だが、
一々プレビュー操作はやってられないし、やったとしても
映像が暗くなるので、ボケ量やボケ質は良くわからない)
なのでまあ、撮影した後、現像・プリントしてみて、ボケ質の
破綻が出ている事に気がつき、驚くとともにがっかりするのだ。
その「ボケ質破綻」の頻度はかなり高く、銀塩時代の機材環境
では、それを回避する術は無いので、RTS P85/1.4は極めて
歩留まりが悪いレンズとして有名(悪名)になってしまった。
(私の経験上では、その成功率は36枚撮りフィルム1本中で
1枚あれば良い程度、つまり3%以下程度しか上手く撮れない)
ただ、ボケ質そしてピントが決まった時の描写力は非常に高い、
銀塩時代のRTS P85/1.4の作例・作品等は、膨大な数の試行
錯誤(失敗)の中から選んだ1枚が載せられていたのだと
想像出来る。
なのでまあ、ユーザーはそうした「凄い写真」を見せられて
RTS P85/1.4を、過剰な期待を持って購入するのだが、実際に
使ってみて驚くわけだ、ピントは合わないし、ボケは汚い、
「いったいこのレンズは何だ? 良いという評判は嘘か?」
となってしまった。
RTS P85/1.4が独国製造版と国内製造版の2種類が併売されて
いた事から、初級マニアの間では以下のような情報まで流れた
「写りが悪いのは安い日本製だからだ、高いドイツ製を買えば、
ちゃんと良く写るぞ!」
この、根も葉もない噂を信じて、日本版を売って、より高価な
独国版に買い換える可哀想なユーザーまで出てきた。
しかし製造国が違ったとしても、どちらも中身は同じレンズだ。
(まあ、同じ部品を使っている事であろう)
両者、同様の欠点を持ち、結局、膨大なムダ打ちの中から
選別しない限り、上手くキマった写真など撮れる筈が無いのだ。

レンズにしてはさほど高価では無いが、これはAF化に失敗した
CONTAXが、旧来のMFレンズを、あまり値上げが出来なかった
事で相対的に安くなったのであり、それ以前1970~1980年代
の10万円は、やはり高価なレンズであろう。
したがって当時、RTS P85/1.4を購入できた人は、富裕層で
あると言える。そして、そうした層は収集がメインで、あまり
写真の枚数を撮らない事が一般的だ、だからRTS P85/1.4で
膨大な数を撮って、その中から選ぶ等の対策はできない。
じゃあ、何故、周囲の人が、そのように(沢山撮れと)教え
なかったかと言えば、RTS P85/1.4がそこまで難しいレンズだ
という事は、巷には情報として殆ど流れていなかったのだ。
「失敗したのは自分が下手だから」という事で、膨大なムダ
打ち失敗写真は、すべて隠し通して、まともに撮れた写真しか
周囲に見せなかったのではなかろうか?
それから、RTS P85/1.4では「焦点移動」が発生する。
(開放で測光・測距した場合、撮影時に絞り込むとピント
位置がずれる)
これも銀塩時代のピンボケの理由の1つであったかも知れない。
なお、ミラーレス機で絞込み(実絞り)測光で使うならば
原理的に焦点移動は発生しない。
本ZF85/1.4だが、RTS P85/1.4よりも外装の仕上に高級感が
あり、ピントリングの感触も良い(ただし、かなり重い)
そしてニコンとEOS(EF)マウント版がある。定価は135,000円と、
RTS版の時代から、さほど値上がりはしていなかった。
しかし、中身がRTS版と同等である為、使いこなしが難しい
レンズである事は間違いない、あくまで上級者向けだ。
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さて、次のレンズ
第3位:Lens Baby 3G

紹介の、2000年代のMFティルト型トイレンズ
カメラはトイレンズ母艦のSONY NEX-3(APS-C機)を
使用する。
本レンズの難しさは、その操作性である。
ティルトレンズであるから、レンズを任意の方向に 任意の
角度で傾けなくては面白味が無い。

では傾けた状態で固定できるのだが、本レンズ3Gでは、傾けた
後にロックをして、それからピントを微調整する必要がある。
この操作が面倒なので、傾きをロックしない方法を編み出した。
指の形で傾きを作りつつ、同時に蛇腹のバネでピントを合わせ、
シャッターボタンに指を伸ばして撮影する、という方法だ。
(まあ、後継機MUSEでは、そういう技法で撮るのだが・・)
この撮影技法を実現する為のボディ形状が、NEX-3であれば
適正なのだ。
・・とは言え、ロックをしないで撮るのは、すごく難しい。
力も要るし、角度を保持する為の指使いは極めて複雑だ。
私はギターとキーボードを演奏するのだが、そのように楽器
演奏の(あるいはTVゲームの)練習経験が無いと、個々の指を
個別に複雑に動かす事は困難かも知れない。
「使い難いのだったら新型のコンポーザー等を買えば良い」
と思うかもしれない、だが、残念ながら新型は高価で、かつ
中古もあまり出回っていなかった。本3G型は、中古で1万円を
切る価格であったから購入したのであって、そうでないと、
コスパが悪いので購入対象外なのだ。
さすがに、ティルトレンズ系に3万も4万円もの予算は出せない
現代ではティルト式マウントアダプターも存在するので、その
効果だけを得たいならば、アダプターでも十分なのだ。

のだが、絞り環が無い。それを変えたい場合は、ディスク状
の絞り部品がレンズ前部に磁力で付いているので、それを
専用器具で外して、他の絞り部品に入れ替える必要がある。
これは極めて煩雑な操作であり、実際の撮影中に、作画意図に
応じて絞り部品を交換する、という事はまず出来ないであろう。
この為、屋外であればその日の天候に合わせ「今日は曇りだから
F5.6あたりをつけていくか」、など、まるで露出計が無い銀塩
時代のカメラ(およそ50年程前)のような撮影技法になって
しまう。その頃には、ネガフィルムの箱の裏に、たとえば
「晴天の場合、カメラの絞りをF11にします」などと書かれて
いた。ネガフィルムの広いラティチュードがあれば、だいたい
アバウトな露出値で撮る事が出来ていたのだ。
なお、このような半世紀前の時代の記憶からか?また、それが
次の世代にまで伝わっているのか?いまだ、シニア層か、それに
近い年代のカメラマンの中で現代のデジタル一眼を使っていても
「今日は、絞りはいくつくらいにするのが良いですか?」と
聞いて来る人が多数居て驚く事がある。
勿論、レンズの絞り値は、自分が撮影したいと思う被写界深度
の意図に応じて、さらに撮影距離やレンズ焦点距離を加味して、
1枚1枚の撮影に対して個々に決定するものだ。
丸一日同じ絞り値で通すようなものでは決して無い。
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さらに余談だが、先年、観光地で高級カメラと高級レンズに
PL(偏光)フィルターを装着してるシニア層と話をした。
「PLフィルターの常用」は、20~30年前の、銀塩時代に
流行した機材利用法であり、現代ではあまり推奨はできない。
まあつまり、昔の撮影技法を現代でも守っている人だ。
彼は、撮影時に、そのPLフィルターを廻さずに、すなわち
「偏光効果を被写体に応じて調整せず」に使っていたので、
試しに「PLフィルターって、いつも廻して使ってますか?」
と尋ねてみたところ、そのシニア氏いわく、
「ああ、今朝調整したので、ずっとそのままです・・」
という答えだった。
勿論、とんでもない誤解の使用法であり、これはつまり、
「PLフィルターは、1枚1枚の写真の撮影時に毎回調整が必要
である」という点を根本的に理解していない。
「現代では推奨できない」と前述した理由の中の1つに、
この事があり、つまり、銀塩時代に「PLを付けると良い」
といった、その事柄だけが後年にまで引き継がれてしまい、
その際に「PLフィルターの正しい使い方」までを含めての
推奨または指導があったのならば良いが、それがなされず、
下手をすれば、このシニア氏のように、PL(偏光)効果の
意味や効能、用法を全く理解せずに使っている人達が大半
であるという状況だからだ。この場合、PLフィルターを
装着する事で、レンズに入る光量は、最大1/4にまで減少
してしまう、この意味がわからない初級中級層では、手ブレ
を誘発したり、AUTO ISO設定での感度上昇によるノイズの
増加などの弊害が出てしまう。
正しく使用するならば、PLフィルターは勿論効能があるが、
意味もわからず装着しているだけでは、弱点しか得られない。
絞り値の件やPLフィルターの話に限らず、様々なカメラ設定
は、1枚撮る毎に自身の意図に応じて変更をする必要がある。
それに加えて、写真の原理を何も理解しないで、周囲に
言われたままの状況で撮っている事は、さらに好ましく無い。

その操作性が極めて難しいレンズである。
そしてティルトの原理や効果もわかっていないビギナーの場合、
ただなんとなく「ミニチュア風の写真が撮れた」と喜んでいる
だけの人も、かなり多いかも知れない。
勿論そのように偶然性で使うレンズではなく、ちゃんと効果が
出る方法を良く考えて用いるのが本来だ。
まあでも、ティルトの原理自体はそう難しいものでは無い、
レンズの光軸を傾けた方向に対し、レンズの面と平行な面に
ピントが合う、だから例えば左右に位置する被写体の場合は
レンズを左右に傾けて、その片方でピントを合わせれば
逆側の被写体はボケる事になる。以下、様々に光軸を傾けても
同様な原理であるし、逆向きに傾ければ距離差がある被写体に
同時にピントが合う(注:こちらが本来のティルト効果だ)
しかし、適切な角度で傾けるのは、本レンズの構造では
なかなか難しい、指の形でその度合いを測らなければならない
からだ。本レンズも、中上級者向けとしておこう。
ちなみに、同様の構造のLENS BABY MUSE(レンズマニアックス
第1回記事)も所有している。

掴み難く、さらに高難易度のレンズだ。
(注:MUSEは、オプティック(光学系)が交換可能である)
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さて、次のレンズ

(読み:フォクトレンダー ノクトン
注:独語綴り上の変母音は省略)
ミラーレス第14回,第41回,名玉編第4回,ハイコスパ第16回
記事で紹介の、2010年代のμ4/3専用超大口径MF中望遠レンズ。
カメラは、本レンズの専用母艦としているPANASONIC LUMIX
DMC-G5(μ4/3機)を使用する。
本レンズの難しさは、まず、開放F0.95の超大口径レンズで
ある事に加え、異常にまで寄れる23cmの最短撮影距離であり、
両者を組み合わせる事で、超極端に浅い被写界深度となる事だ。

撮影距離での開放絞りの際、その被写界深度は約11mmとなった。
これでも十分すぎるほど浅く「まずピントが合わない」と
述べたのだが、本レンズで、開放&最短撮影距離という
条件では、その被写界深度は、なんと 1.6mmでしかない。
(注:いずれも許容錯乱円径は0.03mmで計算)
驚くべき事に、被写界深度が浅いと言っていたSAMYANGよりも
本レンズが6倍も被写界深度が浅い。
まあでも、デジタルでは許容錯乱円の定義が曖昧である事で
被写界深度の計算方法は、他のやり方も有りえる。
例えば、オリンパス社のWEBでは、μ4/3用レンズにおける
許容錯乱円径を銀塩35mm判フィルムの0.03mm(1/30mm)
に対し、半分の0.016mm(1/60mm)で計算している。
そして、本ノクトン42.5/0.95は、μ4/3専用である為、
SAMYANG 85/1.4をフルサイズ機で使った場合においては、
センサーサイズが大きい方が被写界深度尾が浅くなるという
点で、若干両者の差は縮まると思う。上記のオリンパス社の
計算例のように、許容錯乱円の値を変えれば、計算上そうなる
のだが、前述の通り、デジタルの許容錯乱円の定義は少々曖昧
であり、他にもピクセルピッチ等の別の数値を使う事もある。
なのでセンサーサイズの差と計算方式により答えが違ってくる
のではあるが、SAMYANG 85/1.4をフルサイズで使ったとしても、
NOKTONとの6倍の差が僅差にまで詰まる事は無いであろう。
それから、絞り開放&最短撮影距離という極端な状況で
被写界深度を計算して比べるのも、ちょっと無理がある。
実際には、そういう状況で撮影する方が稀であるからだ。
そして、実使用においては、勿論様々な使い方がある為、
計算はそう単純では無い。
まあでも、撮影状況を仮に想定して計算してみよう。
SAMYANG 85/1.4はポートレート用レンズと仮定し、
APS-Cデジタル一眼で3mの距離から写すと、その画角における
対角線距離は約1mとなる(人物の半身が撮れる撮影範囲)
ここで絞り開放F1.4の場合、その被写界深度は10cm強となる。

μ4/3機で80cmの距離から撮影すると、その画角における
対角線距離は約40cmとなる、これは大きめの花や、数輪の花、
小物等を撮影するのに適正な撮影範囲であろう。
ここで絞りを開放から1段程度絞り、SAMYANGと同様のF1.4
とする、この場合の被写界深度は約3cmだ。
(いずれも許容錯乱円は0.03mmで計算)
すなわち、各レンズの実用的な使用法を考慮した場合、
やはりNOKTONの方が被写界深度が浅い事になる。
・・とは言え、他の様々な撮影条件でも、常にNOKTONの方が
SAMYANG 85/1.4よりも被写界深度が浅い訳でもない。
焦点距離の差が2倍ある為、撮影条件によってはSAMYANGの
方が被写界深度が浅くなる事も勿論ある。
で、撮影距離を短く取るケースと、絞りを開放F0.95近くに
する事の両者を掛け合わせると、本レンズの被写界深度の
浅さは、手に負えなくなってくる。
前述のように、極薄の被写界深度1.6mmともなると、手持ち
での撮影は、その微妙に変化する撮影距離(被写体ブレと
撮影者の前後方向への手ブレ)により、ピントが合うのは
奇跡的だ、仮に、いくら高性能な手ブレ補正があっても
上下左右や回転方向の平面にしか効かず、撮影距離の前後
方向に効く手ブレ補正は存在しない。
(一部のカメラにはフォーカス・ブラケット機能が存在するが、
純正AFレンズ専用であり、勿論MFのNOKTONでは無効だ)
結局、微妙に変化する撮影距離の中で連写して、たまたま
ピントが合ったものを選別するしか方法が無い。
(=MFブラケット技法)
あるいは、かなり(F5.6程度)まで絞り込むか? だが、
F5.6でも最短撮影距離での被写界深度は約1cmしか無い。
本レンズの購入当初は、その驚異的な近接撮影能力と
超大口径を生かして、近距離での撮影が特徴を強調できると
思っていたのだが、近距離では、どうしても被写界深度が
浅くなりすぎ、ピント合わせが困難だ。そして「ピントが
厳しいから」と、絞り込み過ぎると、超大口径レンズによる
独特な描写も得られなくなってしまう。
なので最近では、本レンズが中距離での撮影においても、
被写界深度を浅くする事が出来ることから、そのような
撮り方をするのも1つの方法かとも思うようになった。
(=新しい「用途開発」を行っている)
今回の記事でも、そうした中距離撮影に特化している。

被写体選びもかなり難しい、撮影距離が微妙に異なる密集した
被写体(例、桜の花など)では、構図上の主体が何処にあるか
わからず、文字通り焦点のぼやけた写真となるのだ。
そしてもう1点、本レンズは開放近くの近接撮影で球面収差や
ハロ等が多く発生し、ソフトレンズのような軟調の写りに
なってしまう、その度合いは大きく、梅の花などの白い
小さい被写体では、輪郭がわからなくなる程の甘さとなる。
絞り値を適切な値(F2.5~F4程度)まで、やや絞り込むと
これは回避できるのだが、絞ると、超大口径独特の描写が
失われるので、撮影条件(撮影距離、被写体種類、背景距離等)
に応じ、両者のバランスを取るピンポイントで、F2.5とかの
特定の値を探し出す必要がある。
なお、絞り環は、通常1/2段刻みであるが、絞り環を180度廻す
と、動画撮影用のクリック・ストップが無い(音がしない)
絞りとなり、この場合、無段階に連続して絞り値が調整できる。
いずれにしても、ランキングもこの位置(2位)ともなると、
かなりの高難易度レンズだ、上級者でも難儀すると思われるし
専門評価者や職業写真家層であっても、この手の超大口径
MFレンズでの撮影の経験値を持っている訳でも無いだろう。
勿論、初級中級者の手に負えるレベルのものでは無い。
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次はラストのレンズ、こちらが最難関レンズだ。
第1位:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー マクロアポランター
注:原語綴りにおける変母音の記載は省略している)

2001年発売のMF望遠マクロレンズ
本レンズは、当時のフォクトレンダーSL系レンズの中では
珍しいEF(EOS)マウント版だ。
カメラは、ファインダー性能が極めて低いCANON EOS7Dを
試験的に使用してみよう。
奇しくも1位,2位とフォクトレンダーのワンツーフィニッシュ
となった、まあ、コシナ製のレンズは、どれもマニア向け
なので、こういう事もあるだろう。

様々な理由がある。
ここまでランキングにあげてきたレンズを、その理由で
4種類に区分してみよう。
1)レンズとカメラを合わせたシステムとしての性能上の限界
8位 EOS 7D+SAMYANG 85mm/f1.4
番外 PENTAX Q7+Space 7.5mm/f1.4
2)レンズの特徴的な仕様を原因とする使い難さ
7位 TAMRON SP500mm/f8
6位 KENKO MC 85mm/f2.5 Soft
2位 Voigtlander NOKTON 42.5mm/f0.95
3)レンズの性能上の課題を回避して使う事が難しいケース
4位 Carl Zeiss Planar 85mm/f1.4
4)レンズそのものの操作性の弱点から来る使い難さ
5位 CONTAX Makro-Planar 100mm/f2.8
3位 LENS BABY 3G

上記区分の、どのケースに当てはまるのであろうか?
実は、3)の性能、以外の全てに該当してしまうのだ。
まず、1)のシステムの問題点だが、カメラはMF性能に劣る
EOS 7Dだ、今回も全くピントが合わない。
「限界性能」のテスト目的としても、これでは酷すぎるので、
早々にEOS 7Dの利用は諦め、ボディを望遠母艦のLUMIX DMC-G6
(μ4/3機)に変更しよう。

かなり大きく重い(770g)のレンズであり、ハンドリングが悪い。
EOS 7D(APS-C機)での換算画角は200mmとなり、μ4/3のDMC-G6
では、250mm相当と、かなり長目の画角だ。
そこで最短撮影距離38cmの等倍マクロの状態では、画角が
狭すぎてブレが非常に大きくなりすぎる。
ちなみに、撮影範囲だが、μ4/3機で撮影距離38cmの場合、
約5.2cmx約3.9cmの狭い範囲しか写らない。
(APS-C機では、約7cmx5cmという感じだ)
仮に、この撮影範囲を約2000万画素相当で撮影した場合、
計算を簡略化して、5200x4000ピクセルとするが、これは
1cmあたり1000画素であるから、被写体ブレまたは手ブレが
ほんの1mm発生しただけで、100画素もずれてしまう(!)
ブレの原因の1つとしては重たい(重たく感じる)レンズで
ある事も大きく影響している。一眼レフとの組み合わせでは
総重量は1.5kgを越え、手持ち近接撮影は極めて厳しく
かと言って、グリップしずらい小型ミラーレス機では、
総重量こそ軽くなっても、レンズを支えきれない。
今回は軽量かつグリップのしっかりしたDMC-G6を用いて
いるが、それでも厳しい状況だ。
「じゃあ三脚を立てて撮れば良いじゃあないか」
と思うかも知れないが、それは大きな勘違いだ。
最短38cm、絞り開放での被写界深度だが、何と1.3mmだ(!)
これは、上記の超大口径レンズNOKTON 42.5mm/f0.95
の最短での被写界深度約1.6mmより、さらに浅い驚愕の数値だ。
このような状況で、たとえ三脚を立てても、屋外被写体で
あれば全滅だ、風やその他の要因がある中で、1.3mm以下の
範囲で微動だにしない被写体があるだろうか?
「屋内被写体ならば大丈夫」とか屁理屈を言うなかれ、
そんな浅い被写界深度で撮るべき商品写真や小物撮影等は無い。
ともかく、ブレが非常に大きく影響し、加えてピント合わせが
極めて困難な事が、2)の仕様上の問題点となる。

次いで「4)レンズそのものの操作性の弱点」が襲い掛かる
本レンズは、第5位の Makro-Planar T* 100mm/f2.8
と同様に、MFのピントリング回転角が極めて大きい。
無限遠から最短撮影距離までの、左手の持ち替え回数は、
Makro-Planarと同じ、平均14回だ。
当然、撮影中、左手、右手の両方に極めて大きな負担がかかる、
これでは、ものの10分で、使うのが嫌になって来る事であろう。
以前のミラーレス記事でも書いたが、このレンズを使うのは
「何かの修行か?」と思われる程の苦労を伴う。
描写力はそこそこ高いのであるが、使っていて楽しく無い事は
勿論であり、好き好んで本レンズを使うべきでは無いであろう。
(=「エンジョイ度」の得点が低いレンズと評価される)
初級中級者には推奨しない事は勿論、上級者や上級マニアに
対しても薦める事はしたくない、どうみても「苦行」でしか
無いからだ・・

2000年代初頭の発売時の定価が10万円弱と高価であった事と、
マニアックなスペックから、販売本数はかなり限られていたと
思われる。
ごく稀にネット等で中古が出てくると、レアな為、プレミアム
価格となる場合もあるし、「投機対象」となっている様相も
あるのだが、本レンズを高価な価格で入手する事は疑問だ、
何も、好き好んで「修行」をする必要は無い。

間違い無い。
なお、参考の為。2018年末に発売された、本MAP125/2.5
の17年ぶりの正当後継機種とも言える「マクロ アポランター
110m/F2.5」は、やはり難しいMFレンズではあるが、本レンズ
程の酷い使い難さは無い。左手の持ち替え回数も8~9回で
済む。SONY FEマウント仕様である為、ピーキングも効くし、
α7系のⅡ型機以降であれば、内蔵手ブレ補正機能も使用
可能である。描写力に関しても僅かに新型MAP110/2,5が
優れるであろう。新型は新品で14万円前後と高価なレンズ
ではあるが、本MAP125/2.5を不条理なプレミアム相場で
買うよりも安価であり、新型MAP110/2.5が圧倒的に
お勧めだ。(後日、別記事で紹介予定)
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さて、前編後編に分けて、ランキング形式で紹介した
「使いこなしが難しいレンズ特集」は、これにて終了だ。
ランクインしたレンズは全てMFレンズであるが、これはまあ
たまたま、である。MFレンズがAFレンズよりも使いこなしが
難しいと言う訳では無い事は、マニア層や上級層であれば
誰でもわかっている事だ。
最後に念の為、前編・後編であげたレンズ群は、あくまで
「使いこなしが難しい」というだけであり、悪いレンズとか
性能が低いレンズでは決して無い。
これらのレンズは、高性能あるいは個性的な描写表現力を
持つ為、むしろ「使いたいレンズ」であるのだ。
「使いたいけど、使うのが難しい」そういうレンズが今回の
記事で紹介したレンズ群である。