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【玄人専科】匠の写真用語辞典(12)~MF技法・MF関連 Part2

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一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」や
「本ブログ独自の写真用語や概念」を解説するシリーズ記事。

今回第12回記事では「ノウハウ編」でのサブカテゴリーの
「MF技法・MF関連」(Part2)とする。
この項目では、ビギナー層が苦手とするマニュアルフォーカス
(手動ピント合わせ)撮影のノウハウに係わる用語や概念を
説明しよう。
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<MF技法・MF関連>Part 2

★構えながら設定を行う
 独自概念。

 前記事、MF技法・MF関連 Part 1のラストで、MF(AFも)
 撮影では「カメラの構え」が重要である、と述べた。

 その事に関連して、もう1つ重要なポイントであるが、
 ファインダーやEVFを一旦覗いた状態では、もうカメラの構えは
 崩す(解く)事は一切したくない。

 せっかくピント合わせや構図調整をした後なのに、また構えを
 解いて、何らかのカメラ設定操作をしなければならないのでは、
 効率が悪くてやっていられない訳だ。
 下手をすれば野鳥や昆虫やネコなどの被写体では、モタモタ
 している間に逃げてしまい、撮影機会を逃してしまうし、
 業務撮影では、必要なシーンを撮れなければ致命的問題だ。
c0032138_12311683.jpg
 この対策あるいは注意点としては5点ある、ただしこれらは
 MF操作に限らず、デジタル撮影全般において言える事である。

1)ファインダーやEVF内を覗きながら変更できない設定操作は
  できるだけカメラを構える前に済ませておく事。
c0032138_12311617.jpg
  例えばAFレンズであれば、一眼レフでもミラーレス機でも
  絞り値操作、露出補正操作はダイヤル等でファインダーや
  EVFを覗きながらでも可能である。
  ところが、ドライブモード(連写やブラケット等)や
  ホワイトバランス設定などは、一眼レフのファインダー内
  だけでは操作できない場合が殆どだ。
  これらの「構えながらでは操作不能な設定要素」は撮影前に
  被写体条件に合わせて予め設定しておく事が必須だ。
c0032138_12311640.jpg
  具体的には、飛んでいる鳥を見つけた、そうなればドライブ
  モードは連写が望ましい、でも急には単写からその設定には
  変更できない、こういう場合は、そういう可能性があるという
  事で予め連写モードにしておく。もし単写のままでそういう
  条件に出くわしたら、もう潔く諦めるか、単写で一発必中を
  狙うしか無い訳だ。

  余談だが、連写速度をダイヤルで随時変更可能なカメラが
  実用上では望ましいが、残念ながら現代で、そういう機能を
  持つデジタル機は存在していないと思う。
 (注:PENTAX KP等では、その設定は可能だが、3段階のみで
  かつ連写中ではダイヤルを廻しても連写速度は変更されない)

 2)ミラーレス機や一眼レフのライブビュー時に、タッチパネル
  上にあるソフトウェア的な操作(子)は一切使用しない事。
c0032138_12313774.jpg
  上記の飛ぶ鳥ので例を上げれば、ここではより大きく写す為、
  デジタルズーム機能を使いたいとする。
  なお、被写体の大きさだけならばトリミング編集で代用できるが、
  飛ぶ鳥は青空等を背景としている為、アンダー露出になりやすい。
  適正な明るさにしたい場合は、できるだけカメラ露出計パターン
  での有効範囲内で主要被写体である鳥の面積を大きくした方が、
  希望する露出値を得やすい訳だ。(注:カメラ側のデジタル拡大
  機能の実現方式によっては、露出値が変動しない場合も多い)
  まあ、それもまた編集での輝度補正でなんとかなるとは言えるし
  また当然手ブレもしやすくなるし、被写体を捉えるフレーミング
  も困難になるのだが、そのあたりは「トレードオフ」
 (何かの意図を狙えば、何かが犠牲になる)の関係であり、
  どうバランスを考えるかは、状況やユーザー次第である。

  で、そのデジタルズーム操作をやりたい場合、その機能は
  滅多に使わないからといって、背面モニターのタッチパネル上
  のソフトウェア・Fn(ファンクション)キー等にアサインして
  あったら、もうお手上げである。
  飛ぶ鳥を追うカメラの構えを解いてタッチパネル操作をして
  いたら、鳥は、どこかに飛んでいって終わりだ。
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 「鳥の撮影くらい、逃しても別に問題無いだろう」と思うのは
  ちょっと違う。趣味撮影ならば、まあ良いのだが、依頼又は 
  業務撮影で、例えばスポーツイベントであったとする、
  これの屋外撮影中に例えば急激に天候や日照が変化して
  ISO感度を高めないと所定のシャッター速度が得られず
  動く被写体(アスリートや車両等、何でも)がブレてしまう
  ケースもある。この際、撮影中でもISO感度を高めたい場合も
  多々存在するのだ。
  これ以外に屋内撮影でもステージ系でのライブや舞台などで
  照明の明るさやその色味が大きく変化した場合で、撮影中に
  ISO感度やホワイトバランスを変えたいケースは多くある。

  こうした場合、ファインダーやEVFを覗きながら これらの
  設定ができないと、お話にならない訳だ。

 3)EVF(や情報表示型光学ファインダー)内での操作を
  メインとし、これが使いやすいようにカメラの操作系を
  カスタマイズしておく事。
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  EVF搭載の殆どのミラーレス機、および一部のデジタル一眼
  レフ(例:近年のCANON EOS機での情報表示型光学ファインダー
  や近年のSONYのαフタケタ一眼レフでのEVF型ファイダー等)
  では、多くのカメラ設定をEVFやファインダーを覗きながらの
  設定操作が可能である。

  この機能は実用撮影上極めて有益であり、一度この便利さを
  味わってしまうと、旧来の光学ファインダー+各部操作子に
  よる操作系は「撮影効率が悪すぎてやっていられない」と思う
  ようになるであろう。

  だが、この新規操作系は、デフォルト(工場出荷時)のまま
  では使い難い場合が多い。そのユーザーの撮影目的に合わせて
  良く使う機能を使い易い位置にアサインしておく必要がある。
  SONY機(一眼レフ/ミラーレス)やPANASONIC機(ミラーレス)
  等では、FnやQ.Menuで、この「覗きながら操作」の、設定項目
  や表示順などを事細かに変更(カスタマイズ)が可能である。
  これを自身の目的に使い易く設定しておくと、極めて快適で
  効率的な操作系が実現できる。
 
  しかし注意点としては、「いつ、どの機能設定が自分にとって
  必要か」は、初級中級層では良くわかっておらず、したがって
  これのカスタマイズもまず出来ない。それとカスタマイズ設定
  は結構煩雑なので、面倒でやらない(または出来ない)中級層
  ユーザーも多いであろう。
  さらに上級層で、これらのカスタマイズの必要性が理解できて
  実際にそうしていたとしても、今度は、被写体や撮影の条件に
  おいて、単一のカスタマイズ内容では足りない場合も出て来る、
  このメニューカスタマイズは、多くのカメラではユーザー設定
  に覚えこませる事は出来ず、そこが不満となる。

  また、メニューカスタマイズが出来る機種は少なく、多くは
  完全固定か、又はモニター上でのコンパネあるいはユーザー
  メニューが若干カスタマイズが可能な程度である。
  これに優れた機種と、劣っている機種の差異は明確であり、
 「操作系」の概念がまだメーカーのカメラ設計側においても
  十分に浸透していない事も、現代のカメラの課題の1つだ。
 (同様に、ユーザー側も理解していないから、メーカー側へ
  市場ニーズとしての意見のフィードバックが出来ない)
 
 4)アナログ操作子は、基本的に使えないと思っておく事。

  NIKON Df,FUJIFILM X-T1系等に搭載されている、アナログ
  操作子(露出補正、シャッターダイヤル、ISO感度ダイヤル
  ドライブモード変更レバー、露出モード変更ダイヤル等)
  は、格好良いし、設定が一目瞭然であるし、一見廻しやすく、
  使いやすそうに感じる。
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  まあ確かに長所は多いのだが、反面、デジタル撮影における
  短所も沢山ある。
  これは他記事でも色々述べている事なので簡単に説明するが、
  課題は概ね以下の3点だ。

  ・本体側のデジタルダイヤルで操作を行うとアナログ操作子と
   数値が矛盾する(例:専用露出補正操作子は+1にしたのに
   本体側ダイヤルで-1の露出補正を行う)・・ので、通常は
   常にアナログ操作子側でしか設定操作が行えない。
  (注:一部の機種のアナログ操作子では、±0位置やC位置で
   電子ダイヤルからの制御が可能となる場合がある→後述)

  ・アナログ操作子の配置によっては、カメラを構えながら
  (ファインダーやEVFを覗きながら)の変更操作がやり難い。

  ・アナログ操作子にロック機構が付いている場合が多く、
   いちいちこのロックを外すのは、カメラを構えながらでは
   非常に困難か、不可能である場合が多々ある。

  よって、効率的な撮影技法や設定操作を必要とする撮影ジャンル
  においては、格好良いアナログ操作子は、その弱点がモロに
  出てきてしまう為、実用上では効率的に使用する事が出来ない。

  まあ、趣味撮影で、かつ、いくら設定に時間をかけても逃げない
  固定の被写体(ネイチャー等)の専用のカメラとなるであろう。
 (これらの機種の特徴を「じっくり撮るのに適する」と評する
  レビューを見た事がある、言い得て妙だ。つまり「素早い操作
  に全く向いていない」という弱点を直接書いていない訳だ。
  今時のレビュー等では、メーカー側が不利になる事を書かない
 (書いてはいけない)という風潮があり、全く参考にならない)
  
  なお、SONYミラーレス機α7/9シリーズ系等に搭載されている
  アナログ露出補正ダイヤルは、それが±0位置にある場合は
  本体側デジタルダイヤルでも露出補正操作が可能となる優れた
  操作系仕様だ(FUJI X-Pro2等の露出補正のC位置も同様)
  そうやってアナログタイヤルの矛盾を解消している訳だ。

  また、FUJIFILM X-T2以降の各アナログ操作子やOLYMPUS OM-D
  シリーズの露出モード変更アナログダイヤルでは、ロック機構が
  ワンプッシュの操作でON/OFFをトグル選択できる機械式機構
  となっていて、これもまた好ましい仕様だ。
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 「常にロック機構がある事をユーザーに強要する」という仕様の
  NIKON Df等に比べると、これらは一日の長があると言える。

5)重要な静止画撮影でライブビュー機能は使わない事。
 
  ライブビュー時は、その多くがコントラストAFである。
  位相差AFに比べ、AF精度も速度も落ちるこの機能を使う事は
  カメラの長所を消してしまいかねない。特にCANON EOS 7D系や
  NIKON D500等のAF性能に優れたカメラで、静止画撮影時に
  ライブビュー撮影を行う事は無意味であると言え、これらの
  機種はカメラを構えながらのAF(静止画)撮影が基本だ。

 (注1:後述の、完全暗所、ピンホール、赤外線、エフェクト
  等の特殊撮影の場合を除く)

 (注2:近年では、これらの機種を使ってライブビュー静止画
  撮影をするビギナー層が目立つ。全く意味の無い撮り方であり、
  それがわかっていない点からも超ビギナーである事が明白だ。
  また、超ビギナー層が実用上必要とするカメラでは無い事も
  気になる点だ、何故こういう業務用機体を欲しがるのだろう?)

 (注3:近年では、ライブビュー時にも像面位相差AF系の
  新技術が動作する機種もある。ただ、仮にそうであっても
  その技術は通常AF時に、より効果的であるので、ライブビュー
  時の性能低下との差は、なかなか縮まらない)

 (注4:近年ではNIKON D500等においては、HD動画撮影時
  に画像処理で手ブレ補正を行う「電子手ブレ補正」の機能
  を持つ機種も存在する。ただ、これもあくまで動画撮影時
  の話であり、静止画撮影では無効であるし、ライブビュー
  かどうかも無関係だ)

  またEVF機では、高精細のものならば236万~369万ドットも
  ある事が普通だが、ライブビュー用の背面モニターの解像度は
  92万~104万ドット程度しかなく、ピント確認やボケ量・ボケ
  質の確認はやり難い。

  高性能AF機ではなかったとしても、光学ファインダーや
  EVFを覗きながらの撮影は基本である。

  ライブビューを使うのは、どうしてもそれが必要なケース
  のみであり、具体的には
  ・極端なローアングル、ハイアングル、またはレベル(位置)
   での撮影。
  ・上記と同様の極端なアングルでの三脚撮影(商品撮影等)
  ・被写体の状況を目視で見ながら行う、三脚(又はジンバル、
   又は電子手ブレ補正機能等)を用いた「動画撮影」等。
  ・エフェクトをかけて効果をプレビューしながら撮る場合。
  ・ピンホールレンズや、完全な暗所や、赤外線撮影等で、
   光学ファインダーでは暗すぎて被写体が見えない時。
  ・自撮り(セルフィー)や、自撮りを含む集合写真。
  ・小物撮影等で、被写体の配置を色々変えながら撮る場合。
  ・他者への撮影指導等の際に画面を見ながら説明する。
  あたりであろう。

  ただし、これらを実現するには、上下ティルト式や固定の
  モニターでは無理で、自在可変(バリアングル)式の
  モニターが必要なケースもある。カメラ側のモニター仕様
  は、この点で要注意だ。

 色々と説明が長くなったが、これらの状況から、カメラを
 構えながら(ファインダーやEVFを覗きながら)カメラの各種
 設定を行う事は基本中の基本である。

 これがやりにくいカメラは、その時点で「使い難いカメラで
 ある」と言っても過言では無い。
 ただ、使い難いカメラ=ダメなカメラ、という訳でも無く、
 例えば、私の撮影目的としての1つで、「トイレンズ母艦」に
 用いるようなミラーレス機ではEVFを搭載している必要も無く、
 他には、例えばSNS投稿にハマっている若い女性などでは、
「セルフィー(自撮り)専用機」としてのカメラの用途も
 あるだろうから、そういう目的においては、ファインダーや
 EVFを真面目に覗く必要すら無いし、そこでカメラ設定の多彩さや
 迅速さが要求される訳でも無いし、むしろファインダーやEVF
 内での設定操作よりも、モニター面でのタッチパネル操作が
 やり易くなるだろう。

 結局、あくまでユーザーの目的次第であるし、それに応じて
 複数のカメラを持つ事も、それはそれで十分に意味がある事だ。

★構える前にカメラ設定を行う
 独自概念。
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 前記事で「カメラを構える前に手指の感触でMFピント合わせを
 だいたい済ませておく」という技法の概念を説明したが、
 ここでは、さらにそれに加えて、絞り値や露出補正操作を含めた
 各種カメラ設定をカメラを、「構える前に行っておくべきだ」
 という趣旨を説明する。

 前項目のように「カメラを構えながら」各種のカメラ設定操作
 を行う事が望ましいが、絞り値や露出補正操作以外の設定は
 カメラの仕様によっては困難であるし、そもそもMFレンズでは
 絞り環がレンズ側にある為、カメラを構えながらの絞り設定が
 困難である。(マウントアダプター使用時は特にだ)

 そこで、事前に撮りたい被写界深度等を意識しつつピント合わせ
 と連続(並行)して絞り値等も設定をしながらカメラを構える
 事が望ましい。(注;ピントリングの回転角の大きすぎる
 レンズの場合は、この操作に時間がかかる。その場合は、さらに
 事前に、ある程度撮影距離を想定してピント位置を決めておく。
 カメラを下げて運んでいる際は、手指は空いている筈なので
 歩きながらでも被写体を探しつつ、常時ピントリングを被写体
 候補に向けて廻し続けるような習慣をつけておくのも良い)
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 ただ、これについては、事前に様々なカメラ設定を行うのは
 どう撮りたいのかがはっきりしていないと難しいので、
 あくまで上級者向けの技法としておこう。
 これ以上の詳しい説明は、際限なく文字数が必要となるので
 今回は割愛しておく。

 それと、なぜこういう操作が必要なのか?は、当然ながら迅速な
 撮影が必要だからであり、まあ、その必要性が無いユーザーには
 概念の理解も困難ではあろう。ただ、何度か、撮影前にカメラ
 設定でモタモタして撮影機会を逃した経験を持つユーザーならば、
 迅速な撮影が、いかに重要なのかも理解が容易な筈だ。
(だから、操作系が劣悪なカメラは、実際にそのカメラで撮影を
 行いながらは設計開発されていない事が明白で、残念な話だ)

★視度補正
 一般用語。

 初級層が「MF操作がやりにくい、ピントがわからない」と言って
 いる原因の1つとして、カメラのファインダー等の「視度補正」
 を行っていない場合が多々ある。

 これは、自身の視度(注:”視力”では無い。”視度”とは
 簡単に言えば近視や遠視のようなものだ)に合わせて設定する
 必要があり、ファインダー周辺にある視度補正ダイヤルやレバー
 を動かして、ファインダー内の数字やアイコン等が最もはっきり
 見える状態にする。これが未調整だと、MFがやり難いのは当然で
 あるいは絞り値ヤシャッター速度の表示も見え難いので、
 それらの数値を、あまり真剣に意識する事も減り、初級層での
 露出概念の理解等を妨げる原因ともなって来る。
(注:カメラの視度補正は光学ファインダーまたはEVFの場合は
 必要だが、背面モニター等のディスプレイ装置の場合は不要だ)
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 なお、同一ユーザーでも条件によって(例えば徹夜明けなど)
 視度が変化する場合もあるので、必要に応じて撮影中でも
 補正値を変える。
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 ちなみに双眼鏡等では左右の目の視度が異なると、像が見え難く
 なる為、左右の差を調整する為にも視度補正が必要となる。
(余談だが、アニメや映画等で双眼鏡の視野が∞形状になるのは
 誤りだ、ちゃんと調整した双眼鏡の視野は○形状に見える)

★MF用スクリーン
 一般用語。

 AF時代(1990年前後)からの銀塩一眼レフやデジタル一眼レフは
 MF時代(1980年代迄)の銀塩一眼レフに比べ、ファインダーや
 スクリーンのMF性能が劣っている事が普通だ。
 
 何故そうなってしまったかは、様々な他記事で説明しているので
 割愛するが、この問題の対策の為、現代のデジタル一眼レフに
 おいても、一部の機種ではMFでのピント合わせがやりやすい
 タイプのスクリーンに交換(換装)する事ができる。
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 例えば、CANON EOS 6D系では「スーパープレシジョンマット
 Eg-S」というスクリーンにユーザーが自身で交換可能だ。
 このスクリーンは若干暗くなるが、標準版スクリーンに比べて
 MFでのピント合わせが若干容易だ。

 暗くなるという点では、開放F2.8未満のレンズが推奨であるし
 より明るいレンズでもNDフィルター装着時はやはり暗くなるし
 もしアダプターを使って他社レンズ等を、絞り込み(実絞り)
 測光で使った場合でも勿論暗くなる。ただまあ、条件が合えば
 そこそこ効果的であるので、MF中心とする機体で、かつ交換が
 可能であれば、MF用スクリーンへの換装も十分に有りだ。

★拡大アイピース
 一般用語。

 MF向け対策としては、スクリーン交換以外でも、ファインダーに
 装着し、像を1.1~1.3倍程度に拡大するアイピースが各社から
 主にデジタル一眼レフ用として発売されている。
 たとえばNIKON DK-17Mや、PENTAX O-ME53などがある。
c0032138_12322268.jpg
 ただし、機種によっては装着できないケースもあるし、
 また、これらを装着するとファインダー視野の一部がケラれて
 しまう(周辺まで全て見通せない)場合も有りうる。
 それから、装着時は「視度補正」も普通はやりなおしだ。

 あと、機種によっては、このアクセサリーは脱落しやすく、
 一般に高価(3000~5000円程度)であるので、無くさない
 ように注意が必要だ。

 良くこれらの得失を理解した上で、こうしたアクセサリーを
 用いるのが良いであろう。
 なお、各社微妙に製品名が異なるので、購入時や導入検討時には
 そこも注意事項としておく。それと新型機に買い換えた場合でも
 このアクセサリーは共用できる可能性も高い事も述べておく。

★シームレスMF
 一般用語。

 AFからシームレス(継ぎ目無し)にMFに移行可能となる
 レンズ(または稀にカメラ側の機能)の事。
 超音波モーター(例:CANONのUSM)等を搭載した一眼レフ用
 交換レンズの多くは、この仕様となっている。
c0032138_12322212.jpg
 そして、近年のミラーレス機用の純正AFレンズは、殆どが
 この機能を搭載している。
 またMINOLTA→SONY系の一眼レフのDMF(ダイレクト・マニュアル
 フォーカス)機能は、カメラ側でこれを実現している。

 これらの機能は、あればあったに越した事は無いのだが、もし
 これを搭載する為にピントリングが無限回転式になった場合
 それによるMF時の弊害も多々出てくる事は前述の通りだ。
(注:無限回転式+距離指標型の高級レンズも稀に存在し、
 その場合、あまりMF性能への影響は出にくいが、それは半押し
 ロック中の話で、指を離して再度シャッターを半押しすると
 AFにまた戻ってしまい、結局使いにくかったりする。
 で、それを嫌ってAF始動を別ボタンにアサインすると、毎回の
 撮影時の操作性が大幅に悪化するし、ピントのシビアな大口径
 などのレンズでは、その操作系の利用は基本的に無理がある)

「AFで合い難いから途中からMFに変える」という製品設計の発想では
 無く、「この被写体はAFでは合わないだろうから、最初からMFで
 撮影する」という思考パターンが本来望ましいが、市場のニーズ
 や設計思想は、残念ながら、そうでは無い模様だ・・
 私にとっては、このシームレスMF機能は微妙な使いにくさを
 感じる場合が多い。

 なおDMF機能であればレンズ仕様との矛盾が出ず、どんなレンズ
 でもそれが可能なので、一見してずっと使いやすそうなのだが、
 このDMFは一度AFでピントが合わないとMFに移行できない。
 よって、AFが合い難い被写体では、いつまでもMFに移れずに
 余計に手間となってしまう弱点を持っている。
(ただし、AFが合い易い場所を見つけて、あえてそこでAFを
 会わせてDMFでMF移行させる、つまり「MF切り替え操作の
 手間を省く」と言うDMF上級技法が存在する)
c0032138_12322136.jpg
 まあ結局、シームレス機能に拘らず、AFが合わない可能性がある
 ならば最初からMFにしてしまえ、というのが私の持論である。

★高速連写中MF(連写MFブラケット)
 独自用語。

 一眼レフでは構造上、ミラーが動いて視界を遮るので、
 MF操作はミラーが動いていない状態で行うのが基本だ。

 一眼レフの中でも毎秒8コマ以上の撮影が可能な高速連写機に
 おいては、連写中にミラーによるブラックアウトが多々発生
 するのでうっとうしい。しかし、高速連写機の中には、この
 ブラックアウト時間をかなり短くした仕様(性能)の機種も
 一部存在している。
c0032138_12322266.jpg
 具体的にはNIKON D2H(2003)、CANON EOS 7D MarkⅡ(2014)
 NIKON D500(2016)等がそれであり、これらの高速連写機は
 ミラーのブラックアウト時間が短く、連写中でも被写体を
 比較的長い時間視認する事が可能だ。

 AFレンズで、これらの高速連写機を使う場合、7D MarkⅡや
 D500はAF性能に優れ、コンディニュアス系のAFモードで動体
 被写体追従が行われるのだが、レンズ側に超音波モーター等が
 入っていないと、フォーカス優先モード等では、そこで連写が
 もたついてしまう場合もある。

 そして、AFレンズをMFモードで、またはMFレンズを使う事は
 本来これらの高速連写機の特性からは望ましくは無いのだが、
 そういう状況であった場合(趣味の撮影で、MFレンズを使う際や
 AFレンズでもAFでは絶対に合わない高速で動く小さい被写体等)
 実は、これらの機種であれば、高速連写中にもMFによるピント
 合わせが、かろうじて出来てしまうのだ。
(注:EOS 7D MarkⅡは標準スクリーンの性能ては、やや厳しい)
c0032138_12323572.jpg
 特に飛ぶ鳥の撮影などで、連写が必須だが被写体が高速でかつ
 撮影距離が大きく変動する場合など、いくら優秀なAFでも
 外してしまう場合が多々あるのだが、いっそMFにしてしまい、
 高速連写をしながらマニュアルでピントを合わせ続けるという
 裏技が存在する。これだと飛ぶ鳥が樹木の裏側を飛んでいて
 一瞬AFが迷うといった状況も回避でき、指定した距離での
 ピント位置がキープでき、使い方によってはなかなか有益な
 撮影技法なのだ。

 なお、一眼レフでは無くミラーレス機であれば、近年の物は
 一眼レフと同等か、それ以上の高速連写が可能な機種も多く、
 かつミラーアップも無く、どうせAF性能も一眼レフに比べ、
 あまり高く無いし、さらにMFアシスト機能でピーキング等が
 常時表示されるので、高速連写中のMFはさらに容易になる。
(注:ミラーレス機でも機械式シャッターではブラックアウト
 する場合もあるし、電子シャッターですら起こりうる。又、
 カメラ設定で起こる場合もある、ここは条件が複雑怪奇だ)

 一眼レフでは裏技的な技法であるが、高速連写ミラーレス機で
 あれば、今後ごく当たり前の撮影技法となってくるかも知れない。
(注:ミラーレス機でのピント精度を高める為もある。こちらの
 用法は「連写MFブラケット」として、後日解説予定)
c0032138_12323552.jpg
 なお、MF望遠レンズをセンサーサイズの小さいミラーレス機で
 使う場合にはさらに有効な技法となり、これであれば野鳥撮影に
 おいては一眼レフよりも 画角面やピント合わせ面で、かなり
 優位性が高くなる。
 また自然観察撮影等で、空を飛ぶ小さい昆虫でも、マクロ+
 常時ピーキングで、連写中のMFが出来るケースもある。

 いずれにしても練習しておいて損は無いMF技法である。

★空中ピント
 やや独自用語。

 レンズには「被写界深度」というものがある事は、一般的に
 良く知られている。これを計算するには、いくつかの
 パラメーター(レンズ焦点距離、絞り値や撮影距離等)を
 計算式に入力すれば求まるのであるが、その公式には
「前方被写界深度」と「後方被写界深度」があるのは、一度でも
 その計算を行った事がある人は知っているであろう。

 で、この後方被写界深度は前方のそれよりも長い、つまり
 ピントを合わせようとする撮影距離に対して、後方(遠い)
 部分は、よくピントが合い、前方(手前)は、あまり被写界
 深度が稼げないのだ。

 ここまで踏まえた状態で、たとえば距離の異なる2つの被写体が
 存在していたとする、これが人物であって、その両者にピントを 
 同時に当てたい(両者を被写界深度内に収めたい)とする。
 これの計算は難しい、暗算で被写界深度が計算できる程には
 簡単な公式では無いのだ。

 例えば、CANON 一眼レフでは銀塩時代のEOSには「DEPモード」
(被写界深度優先露出モード)があり、距離の異なる2点に
 順次AFでピントを合わせると、両者が被写界深度内に収まる
 絞り値に自動で設定されていた。
 デジタル時代のEOSでは、これは「A-DEPモード」と変化して、
 複数のAF測距離点で計測した異なる距離が全て被写界深度内に
 収まるような絞り値を提示してくれる。

 他社機にはこれに類似している機能が搭載されているような
 記憶は無いが、いずれにしても初級者向けの機能では無く
 被写界深度の意味が良くわかっている中級者以上向けの機能だ。
(しかし、全測距点を被写界深度内に収めたい、というのも
 限られた作画意図であろう、だから上級者は使わないと思う。
 また、ごく一部の機種には「絞りブラケット」(被写界深度
 ブラケット)という機能が搭載されているので、それを使う
 上級者は居るだろう)

 では、MFでこれを行おうとすると、どうやったら良いのか?
 まずはMFレンズ等での被写界深度目盛りを参照して絞り値に
 応じた概算被写界深度とその距離がわかるので、それを参考
 にするのが簡便である。

 ただ、前述の前方被写界深度と後方被写界深度の差異が実際
 にはある為、レンズの被写界深度指標はあくまで参考値で
 あって、厳密な絞り値設定を行う際に若干の無駄(マージン)
 が存在している。
 また、近い方の被写体にピントを合わせたら、後方被写界深度
 のみで遠い被写体をカバーするので、前方被写界深度が完全に
 無駄になる。

 そこで、「空中ピント」の技法である・・
 これはまず、前方と後方の被写界深度を意識して、2つの
 異なる被写体距離に対して、前方側に2/3の距離の点
(両者の距離差を1対2で内分する点)を仮に設定する。

 次いで、その設定距離と等距離にあると思われる仮の被写体
 を探し、その距離にMFでピント合わせを行う。
 そして、そのMF距離を維持したまま、レンズの絞りを絞って
 被写界深度目盛りの距離指標が近い方の被写体と遠い方の
 被写体をだいたいカバーする程度の絞り値とする。
 最後に、そのMFピント位置と絞り値を変えないように
 カメラを構え、構図を調整して、後はシャッターを切る。
(注:AEロックは掛けてはならない)

 これで、何も無い空間にピントを合わせて、2つ(以上)の
 異なる距離の被写体に同時にピントを合わせる「空中ピント」
 技法の完成だ。あまり一般的では無い用語または技法では
 あるが、上級者クラスではこれを実践している事も良くあると
 思う。
c0032138_12323591.jpg
 なお、複数距離の静止被写体以外の場合でも、例えば空中を
 飛ぶ小さい昆虫等で、予め被写界深度を想定した「撮影ゾーン」
 を想定しておき、その範囲に昆虫等が入ったら撮影をするという
 方法も、空中ピント技法の一種と言えるかも知れない。

 まあ、上級者向けのMF技法であるが、被写界深度の意味を知る
(勉強する)上でも有益な技法なので、中級者レベルでもトライ
 してみると良いであろう。
 MF撮影の楽しさと奥深さがわかってくると思う。

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さて、今回の「MF技法・MF関連Part 2」は、このあたりまでで、
次回は引き続き「ノウハウ編」の用語解説を行う。


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