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ミラーレス・クラッシックス(15)FUJIFILM X-T1

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本シリーズは、所有しているミラーレス機の本体の詳細を
世代別に紹介して行く記事だ。

今回はミラーレス第三世代=発展期(注:世代の定義は第一回
記事参照)のFUJIFILM X-T1(2014年)を紹介しよう。
c0032138_17050318.jpg
レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 56mm/f1.2R APD
(中古購入価格 112,000円)
(ミラーレス・マニアックス第17回、第30回、名玉編第3回
ハイコスパ第21回、アポダイゼーション・グランドスラム等
で紹介)を使用する。

以降、本システムで撮影した写真を交えながら記事を進める。
c0032138_17050332.jpg
本機はノーマルなX-T1(黒塗装)ではなく、グラファイト・
シルバー・エディションという特別塗装を施したバージョンで、
ノーマル版のX-T1から9ヶ月後の2014年11月に発売された
モデルである。

ノーマルのX-T1との違いは、塗装の他、ストラップ等の付属品が
高級なバージョンになっている事くらいだ。発売時には、最新の
ファームウェアを搭載していた事でノーマル機との差別化を
図ったのだが、そのファームアップはノーマル機でも行う事が
出来たし、その後のさらなるファームアップで両者同等となり、
現時点での実質的な両者の差異は、外観くらいでしか無い。
c0032138_17050340.jpg
本機の購入目的だが、本シリーズ第6回記事で紹介した
FUJIFILM X-E1が、FUJI最初のミラーレス機であった事等を
理由として完成度が低く、実使用上に多大な問題があり、
何らかの後継機でそれを代替する必要があった為だ。

なお、X-E1については持論の減価償却のルール(この時代の
安価なミラーレス機では1枚2円の法則)をクリアしていた。
ちなみに旧機種は、私の場合処分する事はなく、予備機として
使用を続ける事としている。

そのX-E1の問題点だが、AF/MF性能と操作系が大きな2つの
課題であった。
本機X-T1購入時に、それらをチェックしたのだが、まず、
AF性能は、像面位相差AFを新たに搭載した事で、完璧とは
言えないまでも、X-E1から改善が図られている。
c0032138_17045465.jpg
元々のX-E1の購入目的は史上初のAFアポダイゼーションレンズ
であるXF 56mm/f1.2APD(2014年、本記事で使用)を使う
という、ただその1点であったのだが、レンズ側のAF性能にも
課題が多い同レンズを、本機X-T1の新型AFでカバーできるか
どうか?については購入前には調べようがなかった。
まあ、その点は本記事で検証していく事としよう。
c0032138_17052140.jpg
操作系については残念ながら旧機種からの大きな改善点は無い。
依然使い難さが残っている。この点に関してはFUJIFILM社自身に
さほどカメラ開発のノウハウが蓄積されていないであろう事が
原因と思われる(FUJIのカメラ開発の歴史については第6回
記事を参照)

本機X-T1の操作系が不十分である事は購入前から覚悟の上だが、
その代わりX-T1には多数のアナログダイヤルが搭載されている。
これらによる「操作性」については、悪く無いだろう事が予想
できた。

なお、「操作系」と「操作性」を区別している事は、本ブログの
過去の様々な記事でも書いてきた通りだ。
「操作系」は、デジタル写真を撮る上で、必要となる様々な
カメラ設定が効率的に(無駄が無く、素早く)出来るかどうかの
要素であり、これが優秀なカメラは、他社機を含めて見渡しても、
さほど多くは無い。
c0032138_17041148.jpg
さて、本機X-T1の最大の特徴だが、
3つのアナログダイヤルと、2つのアナログレバー(これらは
有限回転式)と、2つのデジタルダイヤル(無限回転式)による
アナログライク(似ている)な「操作性」のコンセプトだ。

アナログダイヤルとデジタルダイヤルの長所短所については、
本シリーズ第6回のX-E1の記事、および「匠の写真用語辞典
第4回記事」でも詳しく書いてあるので今回は省略するが、
すなわち、どちらも一長一短あって、どの設定操作に
それらを割り振るかで全体の操作系設計の優劣が出てくる。
c0032138_17043814.jpg
本機X-T1での、それぞれのダイヤルの用途をあげていこう。

アナログダイヤル1:ISO感度

ISO感度が常時直接変更できる機能を持つデジタルカメラは
極めて少ない、例えばNIKON Df、RICOH GXR、SONY NEX/α
PENTAX KP等、および、コントロールリング等にISO変更を
アサイン可能なFUJIFILM XQ1等のコンパクト機であるが、
いずれにしても数える程しかない。
そういう点では、本機X-T1(X-T2以降も)は希少なカメラだ。

ただし問題がある。ISO6400の上は、HI1,HI2となって
いるのだが、ここにはISO12800,25600,51200の3つの内
いずれか2つしかアサインできない。
ISOいくつをアサインしたかは、いちいち覚えておけない。
(その操作をすれば、モニターに表示は出る)
まあ、HI3を儲けたら済んだ話なのであるが、使用部品
の接点数が足りなかったのであろう。(X-T2/X-T3では、
さらに設定可能感度が1つ減った)
 
ただまあ、旧機種X-E1ではISO変更ボタンが無い(忘れた?)
という、非常にお粗末な仕様であったので、それに比べたら
進歩している。

ISOをアナログダイヤルに常設した事で、メニューからの
ISO変更は、両者に矛盾が生じる為できない。
しかし、軍艦部(カメラ上部の事)の左側にあるダイヤルは、
左手でも右手でも廻し難いという課題があり、頻繁にISO感度
を変えながら撮影する、というスタイルには適さない。

なお、この「頻繁に変更できない」が、アナログ操作子の
弱点であり、フィルム時代は、こういうダイヤル操作子でも
まあよかったのだが(のんびり撮っても良い)現代の撮影
技法には適していない点もある(スピーディで無い)

また、このダイヤルにはロック機構があって廻し難い事は
大きな欠点である(注:X-T2以降では、このロック機構の
ON/OFFが切り替えられるようになった、これは良い改良点だ)
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アナログダイヤル2:シャッター速度(A位置付き)

シャッター速度を手動で設定する、という撮影スタイルは
被写体状況が極めて限られている為、あまり用途の無い
ダイヤルである。
絞り環が有るRレンズで、A位置を持ち、レンズ側のA位置と
組み合わせて使う事で「PSAMダイヤル」を廃する事ができる
という点は長所であるが、本機が最初という訳ではなく、
古くはMINOLTA XD(1977)やMAMIYA ZE-X(1981),
PENTAX MZ-5/3シリーズ(1995~1997)や、本機以前の
FUJIのミラーレス機でも採用されていた。

なお、シャッター速度を任意に変更してしまった際に
AUTO ISOでの感度が、設定した絞り値とシャッター速度に
できるだけ追従してくれるように動いたら、このダイヤルには
少し意味が出てくるのであるが、FUJIFILMの機体に、その機能
は無く、NIKONやPENTAX,SONY等の一部のメーカーのカメラのみ
でしかISO追従は実現されていない。

それと、1段刻みは精度不足であり、NIKON Df(2013)のように
デジタルダイヤルで1/3段の微調整を行える機能は無い。

c0032138_17041180.jpg
レンズ側アナログダイヤル:絞り環(A位置付き)

ボディ側の機能では無いのだが、Xマウント用高級レンズには
絞り環が存在している物が殆どなので(注:R型番のもの)
上記シャッターダイヤルとの組み合わせでアナログライクな
露出操作性が実現する。

ただし、レンズ側の絞り値の変化ステップは、装着レンズの
仕様に依存する。高級レンズは恐らく殆どが1/3段ステップに
なっていると思われ、本記事で使用のXF56/1.2R APDも1/3段だ。

しかし、レンズ側絞り値が1/3段刻みで変化したとしても
例えば上記シャッター速度ダイヤルは1段刻みでしか変化しない、
また、AUTO ISOあるいは手動ISOも1段刻みなので、レンズ側で
細かく調整した場合において、M露出モードでは、ぴったりの
適正露出値が得られ無い場合が多々ある。

これもアナログ操作子(操作性)の弱点であると言える。
すなわち、あまり精密な設定が出来ないのだ。
(注:NIKON Dfでは、シャッターダイヤルは1段刻みだが
後部電子ダイヤルで1/3段ステップの微調整が出来る)
c0032138_17052228.jpg
アナログダイヤル3:露出補正

ここも1/3段ステップ固定である、X-E1の記事でも書いたが、
不用意に動いてしまう事が良くあるので、モニター/EVFの
露出補正インジケーターには常に注意を払う必要がある。
なお、1/2段ステップに変更する事はできない。
(ミノルタα-7,KONICA MINOLTA α-7 Digital,CONTAX N1
の3機種のみ1/2段、1/3段切り替え式のアナログダイヤルが
付いていた)
 
アナログダイヤルでの切り替えステップ精度不足を補う為か、
本機X-T1では、多彩なブラケットモードが搭載されている。
例えば、露出(AE)ブラケットは1/3.2/3,1段刻みが出来る。

その他、ISOブラケット、フィルムシミュレーションブラケット、
ホワイトバランスブラケットも可能だが、同時にはどれか1つ
しか選択できない。

また、露出補正ダイヤルは、露出(AE)ブラケットにアドオン
される、例えば、露出補正+2として、±1段のブラケットを
行うと、+1,+2,+3の3枚の写真が連続して撮れる。
(注:連写モードにする必要は無く、1回のレリーズ操作で
3枚の写真が連続して撮れる、この仕様は良し悪しがある)

しかし、露出補正+ブラケットが、どの値に効いているかは
わからない。他社機では、露出補正インジケーター上に
ブラケットで設定された複数の露出値が表示される場合が
多いのに、本機は、そのあたりに対する操作系配慮が無い。  
c0032138_17043827.jpg
アナログレバー1:ドライブモード

連写、ブラケット、アドバンスドフィルター(エフェクト)
パノラマ、を切り替える事ができる。
ただ、これらのモードのアイコンはモニター内では小さくて
見え難く、アナログレバーを意図せず動かしてしまった際に、
分かり難い。

それから「連写+エフェクト」が出来ない、というのは、
このレバーで、それを変更する理由になっていると思うのだが、
そもそも連写でエフェクトが使えないという制限が問題だ。

本機にはデジタルズーム機能はない(注:それもまた問題だ)が
それ(超解像)があるFUJIのコンパクト機のX-S1やXQ1では
連写モードとすると、デジタルズームが効かなくなり、
何故それが出来ないのか?が疑問であると同時に、カメラ操作中に
機能が働かない原因がわからず、慌ててしまう場合もある。

これらは連写モード時でも、エフェクトや超解像が効くように
改善すれば良いだけの話ではなかろうか?
そうすれば、ドライブモードレバー上にアドバンスドフィルター
機能がある、という「操作系上の欠点」も改善できる。

エフェクトは掛けたい時にすぐ掛けられる状態になっている
必要がある、これはまあ、旧機種X-E1ではエフェクト機能が
無く、それ以降に搭載された新機能であるので、そのあたりの
必然性が設計側でも良く分かっていないのだと思われる。

要は、操作系の設計とは、設計者が写真を撮る事に精通して
いない限り、使い易い設計は出来ないのだ。機能を、ただ
「追加しました」では不十分である事が殆どだ。 
c0032138_17043837.jpg
アナログレバー2:測光モード

この機能も上記ドライブモードと同様に、設定を変えた際での
アイコンが小さく見え難い。変えたつもりが無くても、不用意に
動かしてしまう事もある訳だ。
 
なお、例えばメニューからでも、これらの機能を変更できる
ようにしたとする、この場合、アナログレバーの設定と
メニューからの操作に矛盾が生じるので、そういうメニューを
追加することが出来ず、必ずレバーやダイヤルで操作しなければ
ならない、時にそれは、カメラの構えを解く必要があり不合理だ。
これがアナログ操作子の弱点となる。

なお、音響や電子楽器の世界では、アナログのレバー(操作子)
の設定を記憶できる機能が求められた1980~1990年代には、
記憶した設定値と現在のレバー等の値が異なる場合、モーター
動力を用いて、自動的に記憶値までレバーを動かす装置が
作られた事がある(デジタルミキサーでのモーターフェーダー等)
 
カメラでも、設定値をメニューから変えたり記憶値を呼び出した
際に、アナログ・ダイヤルやレバーがその値まで自動的に動いて
くれれば面白いが、まあ、カメラのような小型機械ではそうした
大がかりな仕掛けを入れる事は無理であろう。

なお、その後の電子楽器では有限回転式アナログダイヤル等の
値と、記憶値を呼び出した状態との指標の差異の矛盾を容認し、
再度そのアナログダイヤル等に触れた場合のみ、新規の設定値と
する方式が考え出された、これは合理的な操作系である。
電源OFF時や再度起動した際に若干の矛盾も出てはくるが、
楽器では音色等のプリセット群で、そこを解決している。

ここはカメラでも検討の余地がある操作系思想だ。

電子楽器はカメラよりも15年も早くデジタル化されている。
他の市場分野での優れた発想は大いに参考にするべきであろう。

写真機材において、「前機種を改良する事」しか考えていない
という企画開発スタイルは、あまり褒められたものでは無い。
近年のカメラが皆、そうなってしまったのは残念な限りだ。
新しい発想を入れて行かない限り、良い製品は出来ないのだ。
c0032138_17052187.jpg
デジタルダイヤル1:絞り値設定(前)

これは無限回転式のダイヤルだ、前後2つあるが、絞り値と
シャッター速度にしかアサインできない物足りない仕様だ。
(注:R型番では無い、絞り環の無い普及レンズへの対応の
意味があるのだろうが、そう固定するのは良く無いと思う)

これらのデジタルダイヤルを、例えばホワイトバランスや
連写速度設定(注:後者を実用化した機種は存在していない)
等の任意の機能にアサインできたならば、相当に使い易い
カメラとなっていたはずなのに、残念な仕様である。
 
絞りとシャッター速度はそれぞれレンズと本体に専用の操作子
があるため、前後ダイヤルは基本的には全く用途が無いのだが、
絞りとシャッターの両者をA位置としたプログラム露出モード時
においてのみ、これら前後ダイヤルでプログラムシフト操作が
可能になる、これはPENTAXにおける「ハイパープログラム」と
類似の操作系となるので、まあマニアックではあるが、実際
にはプログラムシフトは、1ダイヤルだけで実現できる機能で
ある為、2つのダイヤルをこの目的に使うのは勿体無い。
(注:R型番で無いFUJIのレンズでは、絞り環を備えていない為
その際は、このダイヤルを使用する意味が出てくる)

加えて、プログラムシフト動作時は、誤操作防止の意味からか、
最初のダイヤル回転では、すぐにそれは動作せず、2~3回
廻して、初めてプログラムシフトが効くようになる。
これは少々不要な「安全対策」であり、即時動いた方が良い
であろう(しかし、ロック機構があるよりだいぶマシだ)

まあ、X-T1の用途やユーザー層を考えると、絞り環のある
R型レンズでは、前後ダイヤルで絞りやシャッター速度を
調整する事はまず無いであろう。
c0032138_17052172.jpg
デジタルダイヤル2:シャッター速度設定(後)

これも上記前ダイヤルと同じで、殆ど用途が無い。
ただ、「Qメニュー」という一種のコントロールパネル機能を
表示して、設定値の一覧表をGUI的に操作する際には、設定
項目の上下移動を(2次元操作子とも言える)十字キーで変更し、
設定値の変更を、後ダイヤル(注:前ダイヤルでも可能)で
操作する。

慣れれば右手親指で十字キーを操作し、右手中指で前ダイヤル
を操作して設定変更するのが最も効率的だが、カメラをホールド
するのが難しく、少々やりにくい。

なお、絞り環つきRレンズを主体とした使用法においては、
この目的のみに前後ダイヤルを使うのは、少々馬鹿馬鹿しい。
操作系的に言えば(ボタンを押す手数は増えるが)十字キー
中央のOK(MENU)ボタンを押してから設定値を変更する方が、
パソコン等におけるマウス等を用いた一般的GUI操作系と概念が
共通化出来てわかりやすいと思う。

前後ダイヤルの用途が殆ど無いので、このような仕様となって
いるのかも知れないが、使いやすさを優先するべきである事は
言うまでもなく、使い道の無いダイヤルは無い方がマシだと思う。
(この思想から、本機の後続使用機をX-T2系とする事はやめて、
ダイヤルが減ったX-T10としている。後日紹介予定)

例えば、本機X-T1の連写は速いので、このダイヤルで連写中の
連写速度設定が可能であれば、かなり使い易いだろうが、
残念ながらそういう操作が可能な機種は存在しない模様だ。
c0032138_17043871.jpg
・・と言う事で、本機のアナログ操作性は事前に思っていた
程に使い易いものでは無いが、これに加えて十字キーの上下
左右の全てをFn(ファンクション)にアサインできるという
機能が付いた。

これは、旧機種X-E1の際に、それが出来ない為、さんざん
「使い難い」と各記事に書いたのであるが、やっと改善された
事になる。ただし他社機のように何処のFnに何の機能をアサイン
したかの一覧を表示する機能は無いので、「押してみるまで
何が入っていたか思い出せない」という、不十分な仕様だ。

他、アナログ操作系(操作子)との矛盾が出るため、これらの
Fnに設定するべき機能はあまり無く、せっかく、合計7つもの
Fnが出来たのにもかかわわず、有効な操作系にカスタマイズ
する事ができない。

つまりは「なんだか良くわからない使い難いカメラ」にしか
ならない訳であり、操作系の設計コンセプトが練れていない
事が、ここでもまた問題となっている。
c0032138_17053703.jpg
それと、メニューだが、相変わらず旧機種同様にメニュー位置
メモリーすらなく、どういう設計方針なのか理解に苦しむ。

ちなみに、撮影メニューと設定メニューは縦にカスケードに
並んでいるが、設定メニューに送るには、毎回、撮影メニューを
全て経由しなくてはならない。ここの操作系は好ましく無い。
(注1:逆廻りは可能だが、煩雑である事は変わらない。
 注2:X-T2以降では、階層構造メニューになっている。)

という事で、本機X-T1や、そのアナログライクな外観や仕様から
類推できる程には使い易いカメラではなく、あくまで銀塩一眼
レフ的な機構のみが操作性コンセプトの長所であり、それすらも
また、現代的なデジタル撮影のスタイルに必要な操作系要素と
イコールでは無いので、使い難さを感じてしまう。

ただまあ、ここからは個人的な見解だが・・
「アナログ操作系は、格好良い」という点は言えるかも知れない。
実際に使い易いか否かは別として、沢山のダイヤルが並んでいて
各種の設定が一目瞭然、おまけに、電源を切っている時にすら
その設定を変更する事ができるので、電源ONで、すぐに所望する
絞り値や露出補正値の設定が出来ている点は好ましい。

だが、暗所等においては、手探りだけでダイヤル等の設定は
出来ないので、その場合は電源をONしてからモニター上等で
設定値を確認する必要はあるが・・
c0032138_17053713.jpg
X-T1の長所だが、ファインダー周りは旧機種よりだいぶ改善
されている、倍率は高く、ピーキング機能の精度もだいぶ向上
している(ただし大口径レンズでは厳しい)
期待した「デジタル・スプリット・イメージ」は、思ったよりも
精度が出ておらず、しかもピーキングと2者択一であったので、
ピーキングを常用する事とした。
まあでも、MF全般の性能が高くなったのは確かだと思う。

他には、問題であったマクロ手動切り替えだが、ファームウェア
のVer 3あたりから、やっとオートマクロ機能が搭載された。
ただ、期待していた割には、精度があまり高くなく、相変わらず
近接撮影でAF精度がかなり落ち込んでしまう。

つまりピント距離が分からない状態では、距離エンコード表を
近接用の物に差し替える事は出来ず、技術的に若干矛盾がある
状態だ。(そもそも、レンズ側の距離エンコード・テーブルを
遠近で二重化している事が仕様設計上の大きな課題だ。
結局のところ、AFシステム設計のノウハウ不足を感じる)

X-E1との組み合わせては壊滅的な低性能しか得られなかった
今回使用のXF56/1.2APDレンズとの組み合わせは、像面位相差
AF機能の新搭載によりX-E1よりはだいぶ改善されたものの、
依然一眼レフ等に比べて、AF速度、精度の低さを感じてしまう。

ただまあ、MF性能すら壊滅的であったX-E1とは異なり、
本機X-T1ではMF性能が若干改善されているので、AFが合わない
際にもMFで対応する事は、まあ可能となった。
c0032138_17053711.jpg
なお、MFレンズ使用時は、MFモードに切り替えないと
ピーキングが出ず、シャッター半押しでピーキングが停止する。
AFレンズでは、A&MFモードで、半押し状態でピントリングを
廻すとMFとなり、その際にはピーキングが出るが、今度は
シャッター半押しを解除するとピーキングが消えてしまう。
また、アドバンスドフィルター使用時はピーキングが出ない。

これらの動作は、ちょっとややこしく、ピーキングが常時出て
いても良かったように思う。また旧機種X-E1とも微妙に動作が
異なり、仕様の決め方に一貫性が無い。

これは、改善をしたことで、そうなったのか、それとも機種毎に
個別に仕様を決めていて、偶然そうなったのか良くわからない。

私は、FUJIFILMのカメラは銀塩時代から多数使ってはいるが、
機種毎の仕様のばらつきが大きく、操作系などは勿論のこと、
例えばバッテリー1つとっても機種毎にバラバラで互換性が無く
メーカーとしてのトータルの設計思想が殆ど感じられず、あまり
好ましく無いと常々思っていた。その原因は殆どの機種が自社製造
ではなく、他社OEM開発な事も影響していると思われ、設計思想の
一貫性や開発ノウハウの蓄積が難しい状況であるのだろう。

あまりに酷いと思えば、「購入しない」という選択肢も勿論ある
・・というか、それがユーザー側からできる唯一の対抗手段だ。

近年のカメラ市場の低迷から、市場の崩壊を防ぐ必要があり、
新製品については、どのメディアも褒める傾向が強く、メディア
からの情報は一切参考に出来ない状況なので、ユーザー側で
その新製品の真の実力を見抜く事は極めて難しいのであるが、
ビギナー層はともかく、マニアや上級層であれば、質の悪い
カメラを自力で見抜く能力は必要だと思う。

が、カメラの短所ばかりを責めていても、撮影が楽しく無くなって
しまう、どのカメラにも必ず長所があり、それをちゃんと把握して
活かして使うこともまた、ユーザー側に必要とされる能力だし
「それがユーザーの責務だ」とも言えるであろう。
c0032138_17053794.jpg
さて、本機X-T1の最大の長所は、その「絵作り」だ。

近年のFUJIFILM社のカメラは、2010年代のXシリーズとなって
から、コンパクト機もミラーレス機も、概ね絵作りが良い。
発色がよく、ローパスレス化で解像感も高い、ただし、被写体に
よっては色が濃すぎると感じたり、輪郭強調されたような画に
なったり、明暗差が薄っぺらく感じたり、モアレが発生して
しまう場合もある。

ただまあ、そのあたりは優秀なフィルムシミュレーション機能や
又は本機から搭載されたアドバンスドフィルター(エフェクト)
機能等を状況に応じて組み合わせ、気になる点を個々に回避する
事は可能だ。
c0032138_17041181.jpg
仕様的な完成度は高いとは言えないが、基本性能が低いという
訳では無い、簡単にあげてみよう。

APS-C型CMOSセンサー、1630万画素
ローパスレス(X-TRANSⅡ)像面位相差AF
ISO感度100~51200(拡張時)
最高シャッター速度1/4000秒(電子シャッター可)
高速連写秒8枚、低速3枚(変更不可)、
高速連写時最大連続撮影47枚(画質、メモリーカードに依存)
AFフレーム49点
EVFは倍率0,77倍、236万ドット
モニターは104万ドット(上下チルトのみ)
フィルムシミュレーション有り、
アドバンスドフィルター(エフェクト)搭載、
ぐるっとパノラマモード
本体重量390g

まあ、全般的に可も無く不可も無い標準的な性能だ、
できれば1/8000秒シャッターを搭載して欲しかったが、
いざとなれば、電子シャッターが1/32000秒まで動作する。
電子シャッターには被写体制限も多いが、F1.2級の大口径
レンズを使っても、シャッター速度オーバーにはならない。
(高速シャッター時に、自動で電子シャッターに切り替わる
機能も入っている)

操作系全般は、あまり褒められた状態では無いが、致命的な
欠点とは言えず、アナログ操作性の分かり易さがむしろ長所に
なりうるであろう。
c0032138_17043821.jpg
他の弱点は価格が高い事か。性能的な面からは、たとえば
本シリーズ第8回記事のNEX-7と同等とみなすこともできるのだが、
その機種であれば3万円を切る中古価格で購入する事ができる。
X-T1購入時はノーマル機であっても5万円前後からの中古相場で
あったので、これが3万円程度まで落ちれば適正価格であろう。
なお、グラファイト仕様機は発売時定価で2万6000円のアップ
中古市場においては、ノーマル機より、およそ1万円高だ。
(注:これらは本機購入時点での2016年頃の話。
現在では中古相場が下落し、買い易い価格帯となっている)

それと、デジタル拡大系機能が一切無い点は大いに不満だ。

その他、内蔵フラッシュが無い(外付けフラッシュ付属)事も
問題点としてあげておく。

また、カメラ本体のみならず、FUJIFILM社の交換レンズ群は
高性能なものは、どれも高価すぎて、コスパが悪く感じる。
高価で数が売れずに、レンズ1本あたりの開発・製造の費用の
償却が大きくなれば、ますます高価となり、悪循環だ。
多数のレンズ群を使用したシステム上でのラインナップが
極めて組み難い事も、FUJIFILM Xシステムの弱点であろう。
c0032138_17053763.jpg
さて、最後にFUJI X-T1の総合評価を行ってみよう。、
評価項目は10項目である(第一回記事参照)

【基本・付加性能】★★★☆
【描写力・表現力】★★★★
【操作性・操作系】★★★
【アダプター適性】★★
【マニアック度 】★★★★
【エンジョイ度 】★★★☆
【購入時コスパ 】★☆ (中古購入価格:68,000円)
【完成度(当時)】★★☆
【仕様老朽化寿命】★★★☆
【歴史的価値  】★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.9点

評価点は、ほぼ平均値。

見た目あるいはカタログ的な仕様は悪くないのだが、実際に
使うと様々な小さい欠点が目立つカメラだ。

価格の高さから上級者・マニア向けの製品ラインナップの位置
付けだが、正直、この全体仕様であれば、上級者やマニアでは
物足りなく感じる事であろう。

全体に趣味性が強い仕様で、瞬発的な性能に欠ける事、加えて
現代的なスピーディな設定による撮影スタイルにも不適切であり、
高級機でありながら、業務用途等に用いるには苦しい。
実際には、銀塩時代からの操作性等との違和感を感じずに使える
中級クラスの、シニアやベテラン層向けのカメラであると思う。

中古相場の高さは、少々問題なので、もし購入するとしても
さらに年月が過ぎて十分に安価になってからがお勧めだ。
(注:前述のように、現在では結構相場が下がって買い頃だ)

幸いにして後継機X-T2においても、シャッター速度1/8000秒
自在アングルモニター、ダイヤルロック機構のON/OFF可能
メニュー階層構造、あたり以外の大きな改良点は見られず、
そういう点においては、長く使える(=仕様老朽化寿命が
優れている)カメラだと思う。

---
さて、本記事はこのあたりまでで。
次回記事では、引き続き第三世代の機体を紹介する。


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