過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介の
マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
では、まずは今回最初のレンズ
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レンズは、CANON EF 40mm/f2.8 STM
(中古購入価格 11,000円)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2012年発売の、フルサイズ対応エントリー単焦点標準レンズ。
STM型番は「ステッピングモーター内蔵」という意味だ、
USM(超音波モーター)の簡略版という事であろう。
まあ製品ラインナップのコンセプト上、小型軽量、ローコスト
と言う方向性で、こういう異なる種類のモーターを並存させる
事は、SONYやTAMRON等でも前例がある(SSMとSAM等)
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最初にSTM型の弱点をあげておくが、モーター駆動にカメラ
側からの電源供給が必須だ。まあ、そこまでは他の様々な
モーターと一緒なのだが、STMの場合は電源未供給状態では
MF(マニュアルフォーカス)が動作しない。
これでは(一般的な)マウントアダプターを介して、他社の
カメラに装着しても、MFが動かず使用できないと言う事になる。
(注:電子アダプターを用いればSTM型でも使用可能な製品も
ある模様であるが、一般に高価であり、それらを使うならば、
EOS機にそのまま装着した方が、ずっと簡便であろう)
なお、STM型に限らず、旧来のUSM型モーター搭載レンズの
一部にも、電源未供給ではMFが効かないケースがある。
(例:EF85/1.2L USM、ミラーレス・マニアックス第61回
記事参照)
で、実はこういう排他的仕様のコンセプト(自社製品だけで
システムを構成しないとまともに動かない=汎用性に欠ける)
の製品は個人的には賛同できず、好きでは無い。
すなわち、カメラ市場は、ただでさえメーカー間の仕様統一が
できず、他の市場分野に対して、あるいは現在の世情に対して、
大きく遅れている。例えば、過去の他の市場分野をあげても、
ビデテープ(VHSとβ)や、DVDの様々な形式等でユーザー
利便性を妨げた例はいくつもあるが、メモリーカードの
ように主流な方式(例:SDカード)に、だんたんと統一されて
いくべきだ。(=デファクト・スタンダード化)さも無いと、
「ユーザー利便性」を損ねてしまい、市場そのものの発展を
妨げてしまうからだ。
だから、STMレンズは軽量で良さそうなものがいくつかある
事は知ってはいたが、こういう考え方から、ずっと購入を
保留していた。(不便だから買わない、というのがユーザーが
出来る唯一の対抗手段だ。仕様上の弱点が市場に受け入れられ
なければ、メーカー側も仕様を改善せざるを得なくなる)
では何故、本EF40/2.8STMを購入したのか?という理由だが、
これも個人的なコンセプトだが、その歴史的価値の高さと
コスパが、購入を躊躇する理由よりも上回ったからだ。
まずコスパの件だが、現代の各カメラメーカーは何処も
「エントリーレンズ」をラインナップしている。これらは
ほぼ全て性能的には満足いくレベルでありながら、価格が
安いのでコスパが極めて良く、様々な製品を愛用している。
まあ「CANON製品もいつまでも無視する訳にはいかないだろう」
という考えだ。
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そして「歴史的価値」であるが、本EF40/2.8STMは、まあ
言ってみれば「パンケーキ型(薄型)」レンズである。
ところが実はCANONは銀塩MF/AF時代、そしてデジタル時代
を通じ、パンケーキ型の交換レンズを発売していなかった。
歴史を振り返っても1970~1980年代に各社より薄型MF
レンズが発売されたが、AF化が困難でほぼ絶滅してしまった。
なので、1990年代後半には、一大「パンケーキブーム」が訪れ、
当時のAF単焦点には無かった薄型レンズを、マニアや投機層が
こぞって買い求めたのであった。
パンケーキブームは2000年代初頭にデジタル化とともに終息し
それ以降、各社でもAF・デジタル版のパンケーキがちらほらと
出現した事から、目新しいものでも無くなった訳だ。
しかし、CANONは銀塩・デジタル時代を通じて薄型レンズを
発売していなかった、この理由は不明であるが、恐らくは
メーカーとしての製品企画ポリシーがあったのだろう。
(例えば、1970年代のFDレンズにおいては、両優先AE
(マルチモードAE)を搭載している先進性(初の両優先機CANON
A-1より早い時代に、それを見越して装備していた)があったが、
パンケーキ型の小型レンズでは、その実現が難しかったからか?)
ところが、2010年代に入ってから、やっと本EF40/2.8を始め、
いくつかのパンケーキと呼べるレンズがCANONから発売され
始めた。(他には、APS-C機専用EF-S24mm/f2.8 STMや、
ミラーレス機用EF-M22mm/f2 STMがあるが、フルサイズ用は
本レンズのみだ)
よって、長いCANONの歴史を見ても本EF40/2.8は、ほとんど
初めてに近いパンケーキ(薄)型レンズだと思われる。
この「歴史的価値」は高く、MFが効かないという弱点(又は
気に入らない製品コンセプト)を上回って、「所有に値する」
と思った訳だ。
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さて、という事で、本EF40/2.8の仕様だが、厚さは22.8mm
重量130gと小型軽量である。今回使用のEOS 6Dはデジタル
一眼レフのフルサイズ機では最軽量である為、(トイレンズ
装着時やミラーレス機を除き)一眼フルサイズシステムでは
最軽量の部類のシステムとなる。
最短撮影距離が30cmと短い。銀塩時代のパンケーキの多くは
焦点距離40~50mm程度の標準レンズで、最短が60cm程度と
長目のものが多く、実用上の不満があったが、それが解消
されている。
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写りは可も無く不可も無し。まあ、各社エントリーレンズの
特徴であり、あまりに「安かろう悪かろう」という製品は
存在しない。そんなものを作って売ったら、「お試し版」
としての意味が無いからだ。安価でも、ある程度の高性能を
維持した製品を作る事で、エントリーレンズを買った初級層
に対して、交換レンズの高性能や楽しさをアピールして、
その後の高価な自社交換レンズの販売に繋げるという戦略だ。
最短撮影距離の短さは、他社エントリーレンズでも、CANONの
近年のレンズでも良くある特徴だが、こういう傾向は嬉しい、
ボケ量のコントロールや構図の自由度が格段に高まるからだ。
(逆に言えば、最短撮影距離の長いレンズは実用に適さない)
まあ、総合的には、「EOS機で使う限定」であれば、購入に
値するレンズであろう・・
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では、次のレンズ
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レンズは、smc PENTAX-F 80-200mm/f4.7-5.6
(ジャンク購入価格 1,500円)
カメラは、PENTAX K10D (APS-C機)
1990年頃の発売と思われる一般的廉価仕様のAF望遠ズーム。
この手のオーソドックスなAF望遠ズームは現代の中古市場
では不人気であり、程度の良いレンズでもジャンク品扱いに
なってしまう事もある。本レンズは近年の購入で、ジャンク
価格ながらも、特に動作や程度には問題は無かった。
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F型番なのでPENTAX初期のAFレンズ(KAFマウント)である。
これは勿論近代のPENTAX製デジタル一眼レフにも装着して
使用できるのだが、30年も前のレンズ故に、何かと問題が
発生する場合に備え、安全を期し、様々な古いプロトコル
(KAF2等)の互換性の高いPENTAX K10D(2006)を母機として
使用する。
ちなみに、こうした安全対策は「マニア道」としては
結構重要な事であり、理想的には、レンズを使用する母艦は、
全く同じ時代のカメラを使用するのが望ましい。
さも無いと、様々な性能改善や、それに伴う仕様変更により
例え同じマウントであって装着できたとしても、レンズが
上手く動作しなかったり、露出が狂ったり、最悪はカメラが
故障してしまうリスクもある。
できれば同じ時代のPENTAX銀塩AF機を使うのがベストだが
その時代のカメラは所有していたとしても、さすがにもう
フィルムを入れて撮る気にはならない。
今回はできるだけ古い時代のデジタル一眼レフで代用するが、
もしここで何か不調、あるいは不審な動作が見られたら、
その時は同時代の銀塩AF機(例:Z-1やMZ-3等)に装着して
みて、その動作が正常であるかどうかを確認する事も可能だ。
本レンズではあまり問題になりそうな点は無いが、特に
KAF2プロトコルのパワーズームレンズ等では危険性が高い。
そのあたりは、本シリーズ第8回(2つ前の記事)の
smc PENTAX-FA 100-300mm/f4.5-5.6あたりが良い例だ。
そのパワーズームは古いプロトコルな為、近年のPENTAX
デジタル一眼レフでは動作しない。本機K10Dの場合ならば
汎用性が高く、パワーズームが動作するのだが(確認済み)、
不意の動作不良等が発生するリスクも高いジャンク品で
あったので、その記事では、あえてパワーズームを受け付け
無い仕様のPENTAX最初期のデジタル一眼レフ *istDs
に装着して試写を行った.
つまり、プロトコルが全く対応していなければ誤作動は
起こらないので安全、と言う訳だ。しかし本レンズでは、
KAFとKAF2の2つの世代にまたがるレンズであるので、
プロトコルが中途半端な恐れがある。よって、安全の為、
懐の深い(=プロトコル互換性が高い)K10Dを使用して
いる訳だ。
・・という事で、様々な時代のレンズを使うマニアの場合
には、様々な時代のカメラを所有しておいて、安全を確保
あるいは確認しながらでないと、レンズのせいでカメラを
壊してしまうリスクがある等、「危ない綱渡り」となる。
勿論、こうした事は、ハードウェア等全般の原理理解や
知識も高度なレベルで必要とされるし、各時代の機体を所有
していてそれらを使える環境も必要な為、あまり初級中級層
とか初級マニア層等での、ジャンク買いは推奨できない。
![c0032138_08500684.jpg]()
さて、肝心の本レンズF80-200mmの性能であるが、
まあ普通の望遠ズームだ。準オールド級の時代のズームで
あるので極端に性能が劣る訳でも無いし、逆に特筆する
べき性能も無い。
この手の(準)オールドズームの場合、普通に逆光を避け、
かつボケ質が破綻しにくい状況を作り出す(ボケ質破綻回避の
手法は様々な記事で色々と説明して来てはいるが、その究極の
対策は、あえて背景ボケを生じ無いように平面描写被写体に
特化してしまう事だ)
それから、周辺収差もあるだろうから、APS-C機やμ4/3を
使って画面周辺をカットしてしまうのも対策の1つだ。
オールドや準オールドのレンズは、そうやって様々に
工夫して撮れば、別に悪い写りになる事もなく、ちゃんと
普通に良く写る。
![c0032138_08500690.jpg]()
勿論、レンズ側のみならず、古い(デジタル)カメラだって、
高感度を使わないような状況で撮るとか、画像処理エンジンの
未成熟な性能限界を避ける為に、できるだけ低コントラスト
状態で(曇りや雨天等)撮る、かつ、その状況では発色も
あまりシビアに要求されないだろうから、そうした条件範囲
の中では、古いデジタル機の性能的弱点を回避可能となる。
ちなみに、オールドシステムの場合は、AFレンズであっても
MFで撮るのが基本だ。そうすれば、レンズ側、カメラ側の
いずれのAF方式・速度・精度あるいは測距点数、動体追従
等のAF性能的な未成熟も、全く気にする必要が無くなる。
すなわち、オールドレンズ&オールドカメラによるシステム
を使っても、性能的な不満は何ら問題にならないという事だ。
近年の高性能なレンズやカメラの性能に「受動的に頼って」
写真を撮ろうとする初級中級層には、このあたりは是非
理解してもらいたい重要なポイントである。
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では、次のレンズ
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レンズは、TAMRON 18-270mm/f3.5-6.3 DiⅡ VC PZD
(Model B008)(中古購入価格 17,000円)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)
2010年発売の、ズーム比15を誇るAPS-C機専用小型軽量
高倍率ズームレンズ。
ほぼ同スペックの前モデルとして、B003(2008年)
そして後継モデルにB008TS(2016年)がある。
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PZDとは「ピエゾ・ドライブ」という意味であり、
「ピエゾ素子」とは「圧電素子」である。圧電素子は様々な
工業分野で使われており、様々な材料が用いられるが、
1)力を加えると電気が出る(電圧に変換される)
2)電圧をかけると変形する(音を出す事も出来る)
の大きく2つの性質を持つ。
前者は、ギター用のピエゾ・ピックアップが有名であろう。
(生ギターを電気ギターにする事ができる)
後者の性質は小型スピーカー(イヤホン含む)などでも
使われるのだが、本レンズの場合は電圧をかけて変形した
素子を回転する力に変えてAFを駆動する。つまりモーター
替わりであるが、小型化とか、コストダウン、静音化等の
メリットがあると想像される(参考:近年のSONYのDDSSM
モーターも圧電素子に超音波を加えての変形を、回転力に
変換するという、PZDと類似の技術原理を用いている)
AFの速度・精度は、まあ普通である。TAMRONでは、この素子
を使った場合「回転が止まるのが速い」と言っていて、
これはつまり、速く廻しても大丈夫だ、と言う意味であろう。
レンズの性能だが、描写力はまあ普通だ。あまりにズーム比
が大きいレンズだと、特定の焦点域(例:望遠側等)で収差
等による解像力低下等、様々な課題が出るリスクがある。
事実、本レンズでも望遠端が弱い(解像感の低下が起こる)のと
広角端では歪曲収差が出るのだが、それらに気をつけて、中間
焦点距離を主体とする通常撮影であれば、あまり気になる程の
弱点では無い。
![c0032138_08504440.jpg]()
問題点としては、NIKON D500との組み合わせではAEが
合わず、2/3段~1段程度アンダー露出になる欠点がある。
これは、他のニコン機、例えばD300との組み合わせでは
発生せず、Dfの場合は僅かに(1/3段~1/2段)その傾向が
ある、まあDfはフルサイズ機であり、クロップモードで
使った場合なので、露出計の輝度分布が変わっている事も
あるかもしれない。すなわち、本レンズの発売時以降
(2010年以降)のニコン機では露出アンダーになる恐れが
ある。(参考:D500の場合、x1.3倍にクロップすると、
Dfと同様の1/2段程度のアンダー露出状態に変化する)
この原因は不明だが、レンズ側のプロトコルの問題か、
又はボディ側露出決定プログラムの課題だと推測される。
例えばだが、ニコン純正レンズ等が装着された場合、ボディ
は当然それを認識し、正しい露出値が得られるが、そうで
無い他社製レンズ等ではプログラムにIF文の分岐があり、
そちらの露出決定式が誤っている(バグ)か、又は意図的に
適当な計算式が入っている(排他的仕様)かも知れない。
仮に計算式が誤っていたとしても、ニコンでは発見しにくい
だろう。他社のレンズを全て装着してテストしている訳は
無いからだ。(極端に言えば、エンジニアがわざとそういう
排他的仕様の意地悪なコーディングを行っても、メーカーと
して発見しずらい状況にある)
逆に、TAMRONでは当然すぐ発見できるだろうが、レンズ発売後
の新ボディとの相性についてはわからない。だからまあ、次の
製品で対策を行う事になるだろう。(注:レンズ側の
ファームウェア・アップデートは、まだ本レンズの時代では
一般的な措置では無かった)
事実、近年のTAMRONレンズはNIKON機に装着しても露出が
狂う事は無い、何らかの対策が施されているのであろう。
結局、製品の時期的な組み合わせのタイミングが合わないと
こうなってしまう事がある。なお、過去の様々な時代では、
NIKON機とTAMRONレンズの間で、こういう事は発生しなかった。
それと、この時期のNIKON機の露出に係わる新機能と言えば、
「ビネットコントロール」(周辺光量落ち又は口径食の補正)
がある。これが入っている機種との組み合わせで、この問題が
発生するようにも思えるが、多くのカメラで試した訳でも無く、
詳しくは不明だ。
なお、露出が狂っていても、一定の(オフセット)値なので、
露出補正をかければ問題は解決するので、致命的では無い。
余談だが、野鳥等を撮っているシニア・アマチュア層の間で
「TRAMRONのレンズは暗く写る」という悪評判が流れ、買い控え
があるらしい。それの原因と対策は本記事で述べた通りだ。
カメラとレンズにより、たまたまその組み合わせに当たったと
しても、なんとでも回避できるし、それくらいで大騒ぎせずに、
露出補正くらいの簡単な操作はしたらどうか?と思う。
(ちなみに、もしカメラ側で意図的に「排他的仕様」の処置が
行われた場合、市場側に、こういう悪評判を流す事が可能
となる、という情報戦略になる。これはフェア(公正)では
無いので、あまり褒められた話では無い。それから、カメラ
やレンズ機材には殆ど全て「問題点」が存在するが、それを
回避出来ない利用者側のスキルにも大きな課題がある)
![c0032138_08504452.jpg]()
露出の問題を除いて、本レンズには特に弱点は見られない、
まあ、18mmや270mmといった端っこの焦点距離を「行ったり
来たり」するような撮影スタイルをすると収差が目立つので
端っこを使わず、中間焦点距離域に特化するのが注意点だ。
総括として、高ズーム比、手ブレ補正、ユニークなAF駆動方式、
小型軽量、とスペック的にも問題無く、しかも中古も安価だ。
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では、今回ラストのレンズ
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2.0
(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター)
(注:例によって独語綴り上の変母音は省略している)
(新品購入価格 122,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
2017年に発売された、フルサイズ対応大口径MF準中望遠
マクロレンズ(以下、MAP65/2)
65mmとは実に中途半端な画角だ。旧来、ニコン等の60mmの
マクロであれば、本ブログにおいては「標準マクロ」と
カテゴライズする事もあったのだが、65mmとなると、
標準とも中望遠とも、どちらとも言えない。
でもまあ、そのあたりは「定義」の問題だけなので、
どうでも良い事だが・・
![c0032138_08505303.jpg]()
本レンズは、SONY E(FE)マウント用でしか発売
されていない。
コシナ・フォクトレンダーでは2000年代初期は各種MF
マウント等に向けてレンズをラインナップをした事も
あったのだが、だんだんと様相が変わってきていて、
2010年代でのNOKTON(ノクトン)F0.95シリーズは
μ4/3専用。また2010年代のSLシリーズ(一眼レフ用
交換レンズ)では、もうNIKON Fマウント(CPU内蔵)
しか作っていないし、2010年代後半からの、このマクロ
アポランター65mm/f2やワイドヘリアー系(10mm/f5.6,
12mm/f5.6.15mm/f4)等は、Eマウントのみで、他の
マウント版の商品は発売されていない。が、近い将来
には、他社フルサイズ・ミラーレス機マウント(Z,R,L等)
用のレンズが発売される可能性はあるだろう。
SLシリーズ(一眼用)レンズであれば、NIKON FやM42等の
マウントでのフルサイズ対応レンズは、アダプター互換性
が高く、様々なマウントのカメラにでも装着可能であるが、
Eマウントに固定されてしまうと、実の所、他マウントの
カメラで使うのは殆ど不可能だ。
その点が不満ではあるが、まあ、このEマウント版レンズは
電子接点に対応しているので、EXIFが記録でき、MF時に
距離指標がEVF内に表示されたり、α7Ⅱ以降やα9シリーズ
カメラでの内蔵手ブレ補正に対応している等のメリットは
出てくる。
![c0032138_08505314.jpg]()
さて、フォクトレンダーのマクロレンズ、すなわち
「マクロ・アポランター」は、2000年代前半の
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5SL
(ミラーレス第23回,ミラーレス補足編第6回等で紹介)の
MF望遠マクロレンズから、実に16年ぶりの登場となる。
そのMAP125/2.5SLは、1:1(等倍)マクロのMFレンズで
各種マウントで発売され、SL系レンズは旧来ではMFマウント
専用であったのが、MAP125/2.5のみ、EOS(EF)とα(A)の
AF一眼用マウント版が存在していた(つまり、電子接点があり
絞り環が無く、カメラ本体側ダイヤルから絞りを制御する)
ただ、極めて使いこなしが困難なレンズであり、恐らくは
全レンズの中でトップ(ワースト)クラスであろう。
最大の課題はピントリングの回転角が極めて大きい事で、
最短撮影距離(38cm)から、無限遠まで移行するには、
私の指では、14回前後のピントリングの持ち替えが必要な
状態だ。重量級の大型レンズであるので、この持ち替えは
極めて大きな手指への負担(疲労)となる。
おまけに最短撮影距離で絞り開放での被写界深度は、
およそ1.3mm(!)しか無く、ピントも殆ど合わないのだ。
さて、MAP125/2.5SLの話は深追いするのはやめておこう、
非常にレアなレンズであり、現代において入手する事は
かなり困難であるからだ、今更何を書いても始まらない。
(注1:近日中に、このレンズの関連記事を掲載予定だ。
注2:いまだにMAP125/2.5SLを探しているマニアも居て、
珍しいそれを高価なプレミア価格で取引する場合もあると聞く。
が、コシナ製品はマニア向けで、生産数が少なく、普通は
再生産も行わない。よって、欲しいと思ったら、流通している
期間に入手しておく必要がある。後年になって「あのレンズが
欲しかった」等と言っても、もう手遅れだ。”マニア道”的に
言えば、それは「目利きが甘かった」という事で自己責任だ)
![c0032138_08505341.jpg]()
本MAP65/2だが、1/2倍マクロである、最短撮影距離は31cmだ。
ピントリングの持ち替えは、最短から無限遠までは、およそ
5回程度で済む、ここはMAP125/2.5SLよりも、ずっと快適な
操作性となった。
ただし、スペックから想像するよりも重量級の大型レンズ
である。重量は625g、フィルター径はφ67mmもある。
私も最初に手にした時は驚いてしまった。
なにせ想像していたのは、TAMRON SP60mm/f2(G005)
(ミラーレス第75回、ハイコスパ第14回等)クラスの
サイズ感であったのだ。
そのレンズであれば、重量は約350g、フィルター径も
φ55mmに収まる。ちなみにレンズ構成も、SP60/2より
本MAP65/2の方がずっと少ない枚数であるにもかかわらずだ。
まあ、SP60/2はAPS-C機専用で、本MAP65/2はフルサイズ
対応なので、そこの差が大きい事であろう。
イメージサークルや周辺画質確保の意味で、やはりフルサイズ
対応レンズは、大きく重くなってしまう。そこは弱点である
とも言え、必ずしもフルサイズ・システムが様々な面で優れて
いる訳では無いのだ。
重たい事により、小型軽量のα7(シリーズ)との組み合わせ
では若干のアンバランスを感じる。
つまり、MFレンズの場合はボディを含めた重心位置が丁度
ピントリングの位置に来ないと、ピント操作のたびに
カメラの持ち替えが発生して、やってられなくなるのだ。
だが、本MAP65/2の場合は、そのあたりにも配慮している
のか? 約2cm幅と細目のローレット(凹凸加工の事)
ながら、丁度そこが重心バランス位置となる。ただし、
重心をしっかり確保する為には、カメラ底部を手のひらに
乗せたホールデイングのスタイルとならざるを得ないので、
若干だが、他の一般的なレンズと比べてバランスは悪い。
また、この時、絞り環が(昔のオリンパスOM用のレンズの
ように)レンズ最先端部にあるので、カメラを持ち替えず
には絞りの設定操作が困難だ。
どうせEマウント専用レンズを作るならば、思い切って
絞り環を廃するか、またはA位置を儲け、カメラ本体側の
ダイヤルから絞り値を制御できるようにしても良かった
のではなかろうか?
まあ、すなわち、指動線への配慮があまり無いレンズだ。
(注:別記事で説明するが、α7以外のSONY製Eマウント
カメラとで、バランスが若干ましになる場合がある)
![c0032138_08510461.jpg]()
さて、肝心の描写力であるが、近代レンズの例に漏れず
解像感がかなり強い、この特徴があまりに強すぎると、
被写体の種類、あるいは希望する作画において制限が出て
きてしまう場合がある。
特にマクロレンズの場合は、花などの撮影においては
あまり解像感を強めず、柔らかい描写特性を希望する場合も
多々あると思うので、そのあたりの高解像力は、長所ではなく
むしろ欠点にも成り得てしまうのだ。
具体的には前述のTAMRON SP60/2(G005)とか、SONY E30/3.5
(ミラーレス第72回記事等)等は、マクロとして解像感が
強すぎる印象がある。特にE30/3.5は、私に言わせれば
「輪郭強調を掛けたような、カリッカリの描写」であり
花の撮影等には向かないレンズだと評価している。
まあ本MAP65/2で、少しでも解像感を弱めたいと思う
場合は、あえて絞り開放とし、わずかながら収差等を
発生させて「甘い描写」にしてしまう解決法もあるとは思う。
ただ、1/2倍マクロとは言え、フルサイズ対応、かつ大口径
なので、近接領域の撮影では被写界深度は結構浅い。
(計算例として撮影距離60cm、F2で、被写界深度は約1cm)
よって、MFでのピント合わせは慎重に行う必要がある。
なお、この時、α7等の本体側で「MFアシスト」機能を
ONにしておくと、電子接点レンズ故に、おせっかいな事に
ピントリングを廻すと自動拡大表示されてしまう。
勿論その拡大表示は画面中央がデフォルト位置だ、
花などの近接撮影では、必ずしも画面中央部でピントを
合わせる事は無いので、拡大枠の移動操作、および拡大解除
の操作が必須となり、操作性(すなわち指の移動、手数)が
悪化してしまう。(注:これはEVFを覗きながらの状態だと
手探りとなる為、極めてやりにくい)
だから、本レンズMAP65/2を使用する際には「MFアシスト」
をOFFにし、SONYミラーレス機全般の優秀なピーキング機能を
ONとし、ピーキングに頼ってピントを合わせて撮影する方が
むしろ操作の手数的には、ずっと効率的だ。
なお、被写界深度が極めて浅くなる最短撮影距離近辺では
さしもの優秀なピーキング機能でも、被写体の輪郭状況
(輝度勾配分布)によっては精度が怪しくなる。よって
その場合はさらに手動拡大機能を併用するなどの必要性が
出てくるであろう。あるいは、ピーキング強度(レベル)を
高(良く出る)ではなく、あえて弱めて(中、弱)として
輝度勾配検出の閾値を上げ、滅多にピーキングが反応しない、
ようにしておくと、若干ピント精度が上がる可能性もある。
この「強度変更」を、Fnキーなどに予め割り振っておくと、
EVFを覗きながらでも操作が可能で、効率的だ。
なお、ピーキングのこうした使い方は、本レンズに限らず
被写界深度の浅い、他のマクロレンズ、超大口径レンズや、
大口径(中)望遠レンズであっても有効であるが、
原理的にかなり高度で、画像処理(解析)の知識も必要な
手法なので、上級者以上(専門家)向けとしておく。
![c0032138_08510460.jpg]()
余談が長くなったが、本MAP65/2の性能総括であるが、
解像感が高く、ボケ質は良く、ボケ質破綻も出にくい、
さらに、コントラスト特性に優れ、深みのある描写傾向だ。
(「昔のツァイスっぽい」と評する事も出来る)
逆光耐性も高く、レンズの質感やピントリングの感触も高い。
まあ、性能的には不満は無いが、「大きく重く高価である」
という「三重苦」のレンズである事も確かだ。
それに、高い解像力は、それが強すぎる場合、被写体をかなり
選ぶ(制限する)事となり、マクロレンズとしては、少々
弱点になる可能性もある。
また、高価でマニアックなレンズであり、今後の中古流通も
殆ど期待できない。
これらの様々な状況から、上級者あるいは上級マニア向け
のレンズである、と評価しておく。
なお、前述のコシナ製品の流通量の少なさの問題がある。
コシナ製に限らず、生産完了となった後年になって
レアなレンズを所有しているマニア層や投機層等では
「このレンズは非常に良い」と過剰な評価をする場合が多い。
そのあたりには十分に注意しておく必要がある。さも無いと、
評判に踊らされて、レアなレンズを高額な中古相場で買う事と
なり、実際に手にしてみると、色々と課題があるレンズだった
という場合も多々あるからだ。
(高値で売却する為に、その手の情報を流す人も居ると聞く)
あくまで発売期間に十分に性能を見極め、その絶対的価値を
自身で評価し、購入に値するかを決めなければならない。
また、本レンズには、後年(2018年末)に発売された、
姉妹レンズである、MAP110/2.5が存在している。
そちらも入手済みであり、後日紹介予定だが、個人的には
110mmの方が総合的に好みのレンズだ。
ただし、両レンズともかなり高価であり、コスパは悪い。
いずれにしても、近年の国産新鋭レンズは、殆ど全てが
高付加価値型商品(=高性能化して値上げする)となって、
コスパが悪くなりすぎている状態だ。
これでは売れるべきものも売れまい。
まあ、その隙をついて、2017~2018年位から、中国製等
の新鋭海外製レンズが急速に国内市場に参入してきている。
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それらの新鋭レンズ群の一部は、およそ50年程前の名レンズ
の設計をそのままに、1/2~2/3程度にスケールダウンした、
APS-C型ミラーレス機用の広角レンズである事が、購入後の
検証でわかってきた。
昔の名レンズのミニチュア版であるから、新規開発等の
費用が大幅に削減され、量産効果も出て、とても安価だ。
これらを、薬品に例えて「ジェネリック・レンズ」と
私は呼んでいる。追々本シリーズ記事等で、それらを
紹介していくが、安価に「オールド名レンズ」を買って
いるのと同等であり、写りに不満がある訳でも無い。
(注:とは言え、半世紀も前の設計のオールドMFレンズ
故に、様々な弱点はある。それらを回避しながら使うには
高度な技能が必要であり、初級中級層では困難だと思う。
「レンズの言うがまま」に撮っていたら、「やはり安物だ、
写りが悪い!」という評価で終わってしまう事だろう)
まあ、現代の製品の「コスパ」については、色々と考え
させられる状況になっている・・
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さて、今回の記事は、このあたり迄とする。
次回は、趣向を変えた補足編とする予定だ。
マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
では、まずは今回最初のレンズ

(中古購入価格 11,000円)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2012年発売の、フルサイズ対応エントリー単焦点標準レンズ。
STM型番は「ステッピングモーター内蔵」という意味だ、
USM(超音波モーター)の簡略版という事であろう。
まあ製品ラインナップのコンセプト上、小型軽量、ローコスト
と言う方向性で、こういう異なる種類のモーターを並存させる
事は、SONYやTAMRON等でも前例がある(SSMとSAM等)

側からの電源供給が必須だ。まあ、そこまでは他の様々な
モーターと一緒なのだが、STMの場合は電源未供給状態では
MF(マニュアルフォーカス)が動作しない。
これでは(一般的な)マウントアダプターを介して、他社の
カメラに装着しても、MFが動かず使用できないと言う事になる。
(注:電子アダプターを用いればSTM型でも使用可能な製品も
ある模様であるが、一般に高価であり、それらを使うならば、
EOS機にそのまま装着した方が、ずっと簡便であろう)
なお、STM型に限らず、旧来のUSM型モーター搭載レンズの
一部にも、電源未供給ではMFが効かないケースがある。
(例:EF85/1.2L USM、ミラーレス・マニアックス第61回
記事参照)
で、実はこういう排他的仕様のコンセプト(自社製品だけで
システムを構成しないとまともに動かない=汎用性に欠ける)
の製品は個人的には賛同できず、好きでは無い。
すなわち、カメラ市場は、ただでさえメーカー間の仕様統一が
できず、他の市場分野に対して、あるいは現在の世情に対して、
大きく遅れている。例えば、過去の他の市場分野をあげても、
ビデテープ(VHSとβ)や、DVDの様々な形式等でユーザー
利便性を妨げた例はいくつもあるが、メモリーカードの
ように主流な方式(例:SDカード)に、だんたんと統一されて
いくべきだ。(=デファクト・スタンダード化)さも無いと、
「ユーザー利便性」を損ねてしまい、市場そのものの発展を
妨げてしまうからだ。
だから、STMレンズは軽量で良さそうなものがいくつかある
事は知ってはいたが、こういう考え方から、ずっと購入を
保留していた。(不便だから買わない、というのがユーザーが
出来る唯一の対抗手段だ。仕様上の弱点が市場に受け入れられ
なければ、メーカー側も仕様を改善せざるを得なくなる)
では何故、本EF40/2.8STMを購入したのか?という理由だが、
これも個人的なコンセプトだが、その歴史的価値の高さと
コスパが、購入を躊躇する理由よりも上回ったからだ。
まずコスパの件だが、現代の各カメラメーカーは何処も
「エントリーレンズ」をラインナップしている。これらは
ほぼ全て性能的には満足いくレベルでありながら、価格が
安いのでコスパが極めて良く、様々な製品を愛用している。
まあ「CANON製品もいつまでも無視する訳にはいかないだろう」
という考えだ。

言ってみれば「パンケーキ型(薄型)」レンズである。
ところが実はCANONは銀塩MF/AF時代、そしてデジタル時代
を通じ、パンケーキ型の交換レンズを発売していなかった。
歴史を振り返っても1970~1980年代に各社より薄型MF
レンズが発売されたが、AF化が困難でほぼ絶滅してしまった。
なので、1990年代後半には、一大「パンケーキブーム」が訪れ、
当時のAF単焦点には無かった薄型レンズを、マニアや投機層が
こぞって買い求めたのであった。
パンケーキブームは2000年代初頭にデジタル化とともに終息し
それ以降、各社でもAF・デジタル版のパンケーキがちらほらと
出現した事から、目新しいものでも無くなった訳だ。
しかし、CANONは銀塩・デジタル時代を通じて薄型レンズを
発売していなかった、この理由は不明であるが、恐らくは
メーカーとしての製品企画ポリシーがあったのだろう。
(例えば、1970年代のFDレンズにおいては、両優先AE
(マルチモードAE)を搭載している先進性(初の両優先機CANON
A-1より早い時代に、それを見越して装備していた)があったが、
パンケーキ型の小型レンズでは、その実現が難しかったからか?)
ところが、2010年代に入ってから、やっと本EF40/2.8を始め、
いくつかのパンケーキと呼べるレンズがCANONから発売され
始めた。(他には、APS-C機専用EF-S24mm/f2.8 STMや、
ミラーレス機用EF-M22mm/f2 STMがあるが、フルサイズ用は
本レンズのみだ)
よって、長いCANONの歴史を見ても本EF40/2.8は、ほとんど
初めてに近いパンケーキ(薄)型レンズだと思われる。
この「歴史的価値」は高く、MFが効かないという弱点(又は
気に入らない製品コンセプト)を上回って、「所有に値する」
と思った訳だ。
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さて、という事で、本EF40/2.8の仕様だが、厚さは22.8mm
重量130gと小型軽量である。今回使用のEOS 6Dはデジタル
一眼レフのフルサイズ機では最軽量である為、(トイレンズ
装着時やミラーレス機を除き)一眼フルサイズシステムでは
最軽量の部類のシステムとなる。
最短撮影距離が30cmと短い。銀塩時代のパンケーキの多くは
焦点距離40~50mm程度の標準レンズで、最短が60cm程度と
長目のものが多く、実用上の不満があったが、それが解消
されている。

特徴であり、あまりに「安かろう悪かろう」という製品は
存在しない。そんなものを作って売ったら、「お試し版」
としての意味が無いからだ。安価でも、ある程度の高性能を
維持した製品を作る事で、エントリーレンズを買った初級層
に対して、交換レンズの高性能や楽しさをアピールして、
その後の高価な自社交換レンズの販売に繋げるという戦略だ。
最短撮影距離の短さは、他社エントリーレンズでも、CANONの
近年のレンズでも良くある特徴だが、こういう傾向は嬉しい、
ボケ量のコントロールや構図の自由度が格段に高まるからだ。
(逆に言えば、最短撮影距離の長いレンズは実用に適さない)
まあ、総合的には、「EOS機で使う限定」であれば、購入に
値するレンズであろう・・
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では、次のレンズ

(ジャンク購入価格 1,500円)
カメラは、PENTAX K10D (APS-C機)
1990年頃の発売と思われる一般的廉価仕様のAF望遠ズーム。
この手のオーソドックスなAF望遠ズームは現代の中古市場
では不人気であり、程度の良いレンズでもジャンク品扱いに
なってしまう事もある。本レンズは近年の購入で、ジャンク
価格ながらも、特に動作や程度には問題は無かった。

これは勿論近代のPENTAX製デジタル一眼レフにも装着して
使用できるのだが、30年も前のレンズ故に、何かと問題が
発生する場合に備え、安全を期し、様々な古いプロトコル
(KAF2等)の互換性の高いPENTAX K10D(2006)を母機として
使用する。
ちなみに、こうした安全対策は「マニア道」としては
結構重要な事であり、理想的には、レンズを使用する母艦は、
全く同じ時代のカメラを使用するのが望ましい。
さも無いと、様々な性能改善や、それに伴う仕様変更により
例え同じマウントであって装着できたとしても、レンズが
上手く動作しなかったり、露出が狂ったり、最悪はカメラが
故障してしまうリスクもある。
できれば同じ時代のPENTAX銀塩AF機を使うのがベストだが
その時代のカメラは所有していたとしても、さすがにもう
フィルムを入れて撮る気にはならない。
今回はできるだけ古い時代のデジタル一眼レフで代用するが、
もしここで何か不調、あるいは不審な動作が見られたら、
その時は同時代の銀塩AF機(例:Z-1やMZ-3等)に装着して
みて、その動作が正常であるかどうかを確認する事も可能だ。
本レンズではあまり問題になりそうな点は無いが、特に
KAF2プロトコルのパワーズームレンズ等では危険性が高い。
そのあたりは、本シリーズ第8回(2つ前の記事)の
smc PENTAX-FA 100-300mm/f4.5-5.6あたりが良い例だ。
そのパワーズームは古いプロトコルな為、近年のPENTAX
デジタル一眼レフでは動作しない。本機K10Dの場合ならば
汎用性が高く、パワーズームが動作するのだが(確認済み)、
不意の動作不良等が発生するリスクも高いジャンク品で
あったので、その記事では、あえてパワーズームを受け付け
無い仕様のPENTAX最初期のデジタル一眼レフ *istDs
に装着して試写を行った.
つまり、プロトコルが全く対応していなければ誤作動は
起こらないので安全、と言う訳だ。しかし本レンズでは、
KAFとKAF2の2つの世代にまたがるレンズであるので、
プロトコルが中途半端な恐れがある。よって、安全の為、
懐の深い(=プロトコル互換性が高い)K10Dを使用して
いる訳だ。
・・という事で、様々な時代のレンズを使うマニアの場合
には、様々な時代のカメラを所有しておいて、安全を確保
あるいは確認しながらでないと、レンズのせいでカメラを
壊してしまうリスクがある等、「危ない綱渡り」となる。
勿論、こうした事は、ハードウェア等全般の原理理解や
知識も高度なレベルで必要とされるし、各時代の機体を所有
していてそれらを使える環境も必要な為、あまり初級中級層
とか初級マニア層等での、ジャンク買いは推奨できない。

まあ普通の望遠ズームだ。準オールド級の時代のズームで
あるので極端に性能が劣る訳でも無いし、逆に特筆する
べき性能も無い。
この手の(準)オールドズームの場合、普通に逆光を避け、
かつボケ質が破綻しにくい状況を作り出す(ボケ質破綻回避の
手法は様々な記事で色々と説明して来てはいるが、その究極の
対策は、あえて背景ボケを生じ無いように平面描写被写体に
特化してしまう事だ)
それから、周辺収差もあるだろうから、APS-C機やμ4/3を
使って画面周辺をカットしてしまうのも対策の1つだ。
オールドや準オールドのレンズは、そうやって様々に
工夫して撮れば、別に悪い写りになる事もなく、ちゃんと
普通に良く写る。

高感度を使わないような状況で撮るとか、画像処理エンジンの
未成熟な性能限界を避ける為に、できるだけ低コントラスト
状態で(曇りや雨天等)撮る、かつ、その状況では発色も
あまりシビアに要求されないだろうから、そうした条件範囲
の中では、古いデジタル機の性能的弱点を回避可能となる。
ちなみに、オールドシステムの場合は、AFレンズであっても
MFで撮るのが基本だ。そうすれば、レンズ側、カメラ側の
いずれのAF方式・速度・精度あるいは測距点数、動体追従
等のAF性能的な未成熟も、全く気にする必要が無くなる。
すなわち、オールドレンズ&オールドカメラによるシステム
を使っても、性能的な不満は何ら問題にならないという事だ。
近年の高性能なレンズやカメラの性能に「受動的に頼って」
写真を撮ろうとする初級中級層には、このあたりは是非
理解してもらいたい重要なポイントである。
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では、次のレンズ

(Model B008)(中古購入価格 17,000円)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)
2010年発売の、ズーム比15を誇るAPS-C機専用小型軽量
高倍率ズームレンズ。
ほぼ同スペックの前モデルとして、B003(2008年)
そして後継モデルにB008TS(2016年)がある。

「ピエゾ素子」とは「圧電素子」である。圧電素子は様々な
工業分野で使われており、様々な材料が用いられるが、
1)力を加えると電気が出る(電圧に変換される)
2)電圧をかけると変形する(音を出す事も出来る)
の大きく2つの性質を持つ。
前者は、ギター用のピエゾ・ピックアップが有名であろう。
(生ギターを電気ギターにする事ができる)
後者の性質は小型スピーカー(イヤホン含む)などでも
使われるのだが、本レンズの場合は電圧をかけて変形した
素子を回転する力に変えてAFを駆動する。つまりモーター
替わりであるが、小型化とか、コストダウン、静音化等の
メリットがあると想像される(参考:近年のSONYのDDSSM
モーターも圧電素子に超音波を加えての変形を、回転力に
変換するという、PZDと類似の技術原理を用いている)
AFの速度・精度は、まあ普通である。TAMRONでは、この素子
を使った場合「回転が止まるのが速い」と言っていて、
これはつまり、速く廻しても大丈夫だ、と言う意味であろう。
レンズの性能だが、描写力はまあ普通だ。あまりにズーム比
が大きいレンズだと、特定の焦点域(例:望遠側等)で収差
等による解像力低下等、様々な課題が出るリスクがある。
事実、本レンズでも望遠端が弱い(解像感の低下が起こる)のと
広角端では歪曲収差が出るのだが、それらに気をつけて、中間
焦点距離を主体とする通常撮影であれば、あまり気になる程の
弱点では無い。

合わず、2/3段~1段程度アンダー露出になる欠点がある。
これは、他のニコン機、例えばD300との組み合わせでは
発生せず、Dfの場合は僅かに(1/3段~1/2段)その傾向が
ある、まあDfはフルサイズ機であり、クロップモードで
使った場合なので、露出計の輝度分布が変わっている事も
あるかもしれない。すなわち、本レンズの発売時以降
(2010年以降)のニコン機では露出アンダーになる恐れが
ある。(参考:D500の場合、x1.3倍にクロップすると、
Dfと同様の1/2段程度のアンダー露出状態に変化する)
この原因は不明だが、レンズ側のプロトコルの問題か、
又はボディ側露出決定プログラムの課題だと推測される。
例えばだが、ニコン純正レンズ等が装着された場合、ボディ
は当然それを認識し、正しい露出値が得られるが、そうで
無い他社製レンズ等ではプログラムにIF文の分岐があり、
そちらの露出決定式が誤っている(バグ)か、又は意図的に
適当な計算式が入っている(排他的仕様)かも知れない。
仮に計算式が誤っていたとしても、ニコンでは発見しにくい
だろう。他社のレンズを全て装着してテストしている訳は
無いからだ。(極端に言えば、エンジニアがわざとそういう
排他的仕様の意地悪なコーディングを行っても、メーカーと
して発見しずらい状況にある)
逆に、TAMRONでは当然すぐ発見できるだろうが、レンズ発売後
の新ボディとの相性についてはわからない。だからまあ、次の
製品で対策を行う事になるだろう。(注:レンズ側の
ファームウェア・アップデートは、まだ本レンズの時代では
一般的な措置では無かった)
事実、近年のTAMRONレンズはNIKON機に装着しても露出が
狂う事は無い、何らかの対策が施されているのであろう。
結局、製品の時期的な組み合わせのタイミングが合わないと
こうなってしまう事がある。なお、過去の様々な時代では、
NIKON機とTAMRONレンズの間で、こういう事は発生しなかった。
それと、この時期のNIKON機の露出に係わる新機能と言えば、
「ビネットコントロール」(周辺光量落ち又は口径食の補正)
がある。これが入っている機種との組み合わせで、この問題が
発生するようにも思えるが、多くのカメラで試した訳でも無く、
詳しくは不明だ。
なお、露出が狂っていても、一定の(オフセット)値なので、
露出補正をかければ問題は解決するので、致命的では無い。
余談だが、野鳥等を撮っているシニア・アマチュア層の間で
「TRAMRONのレンズは暗く写る」という悪評判が流れ、買い控え
があるらしい。それの原因と対策は本記事で述べた通りだ。
カメラとレンズにより、たまたまその組み合わせに当たったと
しても、なんとでも回避できるし、それくらいで大騒ぎせずに、
露出補正くらいの簡単な操作はしたらどうか?と思う。
(ちなみに、もしカメラ側で意図的に「排他的仕様」の処置が
行われた場合、市場側に、こういう悪評判を流す事が可能
となる、という情報戦略になる。これはフェア(公正)では
無いので、あまり褒められた話では無い。それから、カメラ
やレンズ機材には殆ど全て「問題点」が存在するが、それを
回避出来ない利用者側のスキルにも大きな課題がある)

まあ、18mmや270mmといった端っこの焦点距離を「行ったり
来たり」するような撮影スタイルをすると収差が目立つので
端っこを使わず、中間焦点距離域に特化するのが注意点だ。
総括として、高ズーム比、手ブレ補正、ユニークなAF駆動方式、
小型軽量、とスペック的にも問題無く、しかも中古も安価だ。
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では、今回ラストのレンズ

(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター)
(注:例によって独語綴り上の変母音は省略している)
(新品購入価格 122,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
2017年に発売された、フルサイズ対応大口径MF準中望遠
マクロレンズ(以下、MAP65/2)
65mmとは実に中途半端な画角だ。旧来、ニコン等の60mmの
マクロであれば、本ブログにおいては「標準マクロ」と
カテゴライズする事もあったのだが、65mmとなると、
標準とも中望遠とも、どちらとも言えない。
でもまあ、そのあたりは「定義」の問題だけなので、
どうでも良い事だが・・

されていない。
コシナ・フォクトレンダーでは2000年代初期は各種MF
マウント等に向けてレンズをラインナップをした事も
あったのだが、だんだんと様相が変わってきていて、
2010年代でのNOKTON(ノクトン)F0.95シリーズは
μ4/3専用。また2010年代のSLシリーズ(一眼レフ用
交換レンズ)では、もうNIKON Fマウント(CPU内蔵)
しか作っていないし、2010年代後半からの、このマクロ
アポランター65mm/f2やワイドヘリアー系(10mm/f5.6,
12mm/f5.6.15mm/f4)等は、Eマウントのみで、他の
マウント版の商品は発売されていない。が、近い将来
には、他社フルサイズ・ミラーレス機マウント(Z,R,L等)
用のレンズが発売される可能性はあるだろう。
SLシリーズ(一眼用)レンズであれば、NIKON FやM42等の
マウントでのフルサイズ対応レンズは、アダプター互換性
が高く、様々なマウントのカメラにでも装着可能であるが、
Eマウントに固定されてしまうと、実の所、他マウントの
カメラで使うのは殆ど不可能だ。
その点が不満ではあるが、まあ、このEマウント版レンズは
電子接点に対応しているので、EXIFが記録でき、MF時に
距離指標がEVF内に表示されたり、α7Ⅱ以降やα9シリーズ
カメラでの内蔵手ブレ補正に対応している等のメリットは
出てくる。

「マクロ・アポランター」は、2000年代前半の
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5SL
(ミラーレス第23回,ミラーレス補足編第6回等で紹介)の
MF望遠マクロレンズから、実に16年ぶりの登場となる。
そのMAP125/2.5SLは、1:1(等倍)マクロのMFレンズで
各種マウントで発売され、SL系レンズは旧来ではMFマウント
専用であったのが、MAP125/2.5のみ、EOS(EF)とα(A)の
AF一眼用マウント版が存在していた(つまり、電子接点があり
絞り環が無く、カメラ本体側ダイヤルから絞りを制御する)
ただ、極めて使いこなしが困難なレンズであり、恐らくは
全レンズの中でトップ(ワースト)クラスであろう。
最大の課題はピントリングの回転角が極めて大きい事で、
最短撮影距離(38cm)から、無限遠まで移行するには、
私の指では、14回前後のピントリングの持ち替えが必要な
状態だ。重量級の大型レンズであるので、この持ち替えは
極めて大きな手指への負担(疲労)となる。
おまけに最短撮影距離で絞り開放での被写界深度は、
およそ1.3mm(!)しか無く、ピントも殆ど合わないのだ。
さて、MAP125/2.5SLの話は深追いするのはやめておこう、
非常にレアなレンズであり、現代において入手する事は
かなり困難であるからだ、今更何を書いても始まらない。
(注1:近日中に、このレンズの関連記事を掲載予定だ。
注2:いまだにMAP125/2.5SLを探しているマニアも居て、
珍しいそれを高価なプレミア価格で取引する場合もあると聞く。
が、コシナ製品はマニア向けで、生産数が少なく、普通は
再生産も行わない。よって、欲しいと思ったら、流通している
期間に入手しておく必要がある。後年になって「あのレンズが
欲しかった」等と言っても、もう手遅れだ。”マニア道”的に
言えば、それは「目利きが甘かった」という事で自己責任だ)

ピントリングの持ち替えは、最短から無限遠までは、およそ
5回程度で済む、ここはMAP125/2.5SLよりも、ずっと快適な
操作性となった。
ただし、スペックから想像するよりも重量級の大型レンズ
である。重量は625g、フィルター径はφ67mmもある。
私も最初に手にした時は驚いてしまった。
なにせ想像していたのは、TAMRON SP60mm/f2(G005)
(ミラーレス第75回、ハイコスパ第14回等)クラスの
サイズ感であったのだ。
そのレンズであれば、重量は約350g、フィルター径も
φ55mmに収まる。ちなみにレンズ構成も、SP60/2より
本MAP65/2の方がずっと少ない枚数であるにもかかわらずだ。
まあ、SP60/2はAPS-C機専用で、本MAP65/2はフルサイズ
対応なので、そこの差が大きい事であろう。
イメージサークルや周辺画質確保の意味で、やはりフルサイズ
対応レンズは、大きく重くなってしまう。そこは弱点である
とも言え、必ずしもフルサイズ・システムが様々な面で優れて
いる訳では無いのだ。
重たい事により、小型軽量のα7(シリーズ)との組み合わせ
では若干のアンバランスを感じる。
つまり、MFレンズの場合はボディを含めた重心位置が丁度
ピントリングの位置に来ないと、ピント操作のたびに
カメラの持ち替えが発生して、やってられなくなるのだ。
だが、本MAP65/2の場合は、そのあたりにも配慮している
のか? 約2cm幅と細目のローレット(凹凸加工の事)
ながら、丁度そこが重心バランス位置となる。ただし、
重心をしっかり確保する為には、カメラ底部を手のひらに
乗せたホールデイングのスタイルとならざるを得ないので、
若干だが、他の一般的なレンズと比べてバランスは悪い。
また、この時、絞り環が(昔のオリンパスOM用のレンズの
ように)レンズ最先端部にあるので、カメラを持ち替えず
には絞りの設定操作が困難だ。
どうせEマウント専用レンズを作るならば、思い切って
絞り環を廃するか、またはA位置を儲け、カメラ本体側の
ダイヤルから絞り値を制御できるようにしても良かった
のではなかろうか?
まあ、すなわち、指動線への配慮があまり無いレンズだ。
(注:別記事で説明するが、α7以外のSONY製Eマウント
カメラとで、バランスが若干ましになる場合がある)

解像感がかなり強い、この特徴があまりに強すぎると、
被写体の種類、あるいは希望する作画において制限が出て
きてしまう場合がある。
特にマクロレンズの場合は、花などの撮影においては
あまり解像感を強めず、柔らかい描写特性を希望する場合も
多々あると思うので、そのあたりの高解像力は、長所ではなく
むしろ欠点にも成り得てしまうのだ。
具体的には前述のTAMRON SP60/2(G005)とか、SONY E30/3.5
(ミラーレス第72回記事等)等は、マクロとして解像感が
強すぎる印象がある。特にE30/3.5は、私に言わせれば
「輪郭強調を掛けたような、カリッカリの描写」であり
花の撮影等には向かないレンズだと評価している。
まあ本MAP65/2で、少しでも解像感を弱めたいと思う
場合は、あえて絞り開放とし、わずかながら収差等を
発生させて「甘い描写」にしてしまう解決法もあるとは思う。
ただ、1/2倍マクロとは言え、フルサイズ対応、かつ大口径
なので、近接領域の撮影では被写界深度は結構浅い。
(計算例として撮影距離60cm、F2で、被写界深度は約1cm)
よって、MFでのピント合わせは慎重に行う必要がある。
なお、この時、α7等の本体側で「MFアシスト」機能を
ONにしておくと、電子接点レンズ故に、おせっかいな事に
ピントリングを廻すと自動拡大表示されてしまう。
勿論その拡大表示は画面中央がデフォルト位置だ、
花などの近接撮影では、必ずしも画面中央部でピントを
合わせる事は無いので、拡大枠の移動操作、および拡大解除
の操作が必須となり、操作性(すなわち指の移動、手数)が
悪化してしまう。(注:これはEVFを覗きながらの状態だと
手探りとなる為、極めてやりにくい)
だから、本レンズMAP65/2を使用する際には「MFアシスト」
をOFFにし、SONYミラーレス機全般の優秀なピーキング機能を
ONとし、ピーキングに頼ってピントを合わせて撮影する方が
むしろ操作の手数的には、ずっと効率的だ。
なお、被写界深度が極めて浅くなる最短撮影距離近辺では
さしもの優秀なピーキング機能でも、被写体の輪郭状況
(輝度勾配分布)によっては精度が怪しくなる。よって
その場合はさらに手動拡大機能を併用するなどの必要性が
出てくるであろう。あるいは、ピーキング強度(レベル)を
高(良く出る)ではなく、あえて弱めて(中、弱)として
輝度勾配検出の閾値を上げ、滅多にピーキングが反応しない、
ようにしておくと、若干ピント精度が上がる可能性もある。
この「強度変更」を、Fnキーなどに予め割り振っておくと、
EVFを覗きながらでも操作が可能で、効率的だ。
なお、ピーキングのこうした使い方は、本レンズに限らず
被写界深度の浅い、他のマクロレンズ、超大口径レンズや、
大口径(中)望遠レンズであっても有効であるが、
原理的にかなり高度で、画像処理(解析)の知識も必要な
手法なので、上級者以上(専門家)向けとしておく。

解像感が高く、ボケ質は良く、ボケ質破綻も出にくい、
さらに、コントラスト特性に優れ、深みのある描写傾向だ。
(「昔のツァイスっぽい」と評する事も出来る)
逆光耐性も高く、レンズの質感やピントリングの感触も高い。
まあ、性能的には不満は無いが、「大きく重く高価である」
という「三重苦」のレンズである事も確かだ。
それに、高い解像力は、それが強すぎる場合、被写体をかなり
選ぶ(制限する)事となり、マクロレンズとしては、少々
弱点になる可能性もある。
また、高価でマニアックなレンズであり、今後の中古流通も
殆ど期待できない。
これらの様々な状況から、上級者あるいは上級マニア向け
のレンズである、と評価しておく。
なお、前述のコシナ製品の流通量の少なさの問題がある。
コシナ製に限らず、生産完了となった後年になって
レアなレンズを所有しているマニア層や投機層等では
「このレンズは非常に良い」と過剰な評価をする場合が多い。
そのあたりには十分に注意しておく必要がある。さも無いと、
評判に踊らされて、レアなレンズを高額な中古相場で買う事と
なり、実際に手にしてみると、色々と課題があるレンズだった
という場合も多々あるからだ。
(高値で売却する為に、その手の情報を流す人も居ると聞く)
あくまで発売期間に十分に性能を見極め、その絶対的価値を
自身で評価し、購入に値するかを決めなければならない。
また、本レンズには、後年(2018年末)に発売された、
姉妹レンズである、MAP110/2.5が存在している。
そちらも入手済みであり、後日紹介予定だが、個人的には
110mmの方が総合的に好みのレンズだ。
ただし、両レンズともかなり高価であり、コスパは悪い。
いずれにしても、近年の国産新鋭レンズは、殆ど全てが
高付加価値型商品(=高性能化して値上げする)となって、
コスパが悪くなりすぎている状態だ。
これでは売れるべきものも売れまい。
まあ、その隙をついて、2017~2018年位から、中国製等
の新鋭海外製レンズが急速に国内市場に参入してきている。

の設計をそのままに、1/2~2/3程度にスケールダウンした、
APS-C型ミラーレス機用の広角レンズである事が、購入後の
検証でわかってきた。
昔の名レンズのミニチュア版であるから、新規開発等の
費用が大幅に削減され、量産効果も出て、とても安価だ。
これらを、薬品に例えて「ジェネリック・レンズ」と
私は呼んでいる。追々本シリーズ記事等で、それらを
紹介していくが、安価に「オールド名レンズ」を買って
いるのと同等であり、写りに不満がある訳でも無い。
(注:とは言え、半世紀も前の設計のオールドMFレンズ
故に、様々な弱点はある。それらを回避しながら使うには
高度な技能が必要であり、初級中級層では困難だと思う。
「レンズの言うがまま」に撮っていたら、「やはり安物だ、
写りが悪い!」という評価で終わってしまう事だろう)
まあ、現代の製品の「コスパ」については、色々と考え
させられる状況になっている・・
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さて、今回の記事は、このあたり迄とする。
次回は、趣向を変えた補足編とする予定だ。