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レンズ・マニアックス(8)

新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ紹介記事では
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回も引き続き未紹介レンズを4本取りあげる。

なお、旧記事「ミラーレス・マニアックス」シリーズ及び、
「ハイ・コスパレンズ・マニアックス」の補足編としての
立場もある本シリーズ記事だが、ハイコスパシリーズでは
「広角、標準、望遠」等のカテゴリー別にレンズを分類して
紹介する趣旨であったが、本シリーズにおいては、そうした
カテゴリー分けは行っておらず、ランダムな紹介順だ。

そうした分類については別シリーズ「特殊レンズ・スーパー
マニアックス」を2019年からスタートしている、
そちらではカテゴリー分けでの紹介を基本としている。
なお、本シリーズでは、レンズのコスパを意識するよりも
未紹介レンズを解説する趣旨の方が強い。

では、まずは今回最初のレンズ
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レンズは、TAMRON 100-400mm/f4.5-6.3 Di VC USD
(Model A035)(中古購入価格 62,000円)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)

2017年発売の、フルサイズ対応軽量型AF超望遠ズーム。
本シリーズ第5回記事で紹介した、
「SIGMA Contemporary 100-400mm/f5-6.3 DG OS HSM」
の完全な「対抗馬」である。両者、ほぼ同じスペックであり
見かけも殆ど変わらないが、本TAMRON版が、ほんの僅か軽い。

さて、400mmクラスの超望遠ズームは、APS-C機で換算600mm
級の画角となり、スポーツ撮影等に適した画角となる。
私の場合は、特にドラゴンボートやペーロン競技の撮影に
おいて必須のレンズだ。
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雨天や酷暑等を含む過酷な撮影環境では、超望遠ズームは
ほとんど消耗品である。メーカー純正品の超望遠ズームは高価
すぎてこうした使用法に適さないので、旧来からサードパーティ
製の様々な超望遠ズームを使ってきたのだが・・

近年、SIGMAとTAMRONは望遠端焦点距離を伸ばすコンセプトで
製品の改良を続けてきた為、両社の新型ズームでは、望遠端が
500mm、さらには600mmと伸びていった。
結果的に大きく重くなってハンドリング性能が低下していた。
500mm級はまだしも、600mm級は重量面からも、もう購入する
事が出来なくなってしまっていたのだ。
特にボート競技では、丸一日の手持ち撮影だ、1.5kgを超える
重量級レンズは、まず使用できない。

「手持ち可能な、軽量な400mm級の超望遠ズームの新発売を
熱望している」と過去記事で何度か書いた事もあったが、
2017年になって、まずSIGMAから、次いでTAMRONから、
ほぼ同一の性能の400mm級軽量超望遠ズームが、次々と発売
された。これは嬉しい傾向であった。

本レンズとSIGMA版との差異は微妙だ、どちらも1100g台と軽く
どちらも良く写る。両者手ブレ補正も良く効き、何も不満は無い。
価格(定価)は、SIGMAの方が僅かに高価だが、中古になると
大差は無く、ほぼ同等だ。

ただし、中古相場は旧来の400mmまたは500mm級の超望遠
ズームの、2~5万円というレベルからは若干高価になっている。
まあ、まだ発売から日が浅い状態での購入という点もあるが、
手ブレ補正や超音波モーターの内蔵で「高付加価値化」して
定価も若干高くなってしまっている事も理由だ。

それから、発売マウントが制限され、本レンズの場合は、
ニコン(F)、キヤノン(EF)の2種類しか無い(注:SIGMA
C100-400mmは、ニコン、キヤノンとシグマSAマウントのみ)

SONYやPENTAX用が無いのは、それらのカメラのはボディ内
手ブレ補正が入っているので、レンズ本来で「手ブレ補正内蔵」
の付加価値を謳えないから発売しないのだろうか? あるいは
一眼レフや交換レンズ市場が縮退している2010年代後半では、
もう多種のマウントを作るのは割が合わない(在庫が残ったり
生産計画を立て辛い)からだろうか・・?
超望遠ズームに限らず多くのレンズメーカー製のレンズが同様に
「マウントの種類縮小」の方向に向かっている事は、残念な話だ。
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余談はさておき、TAMRONとSIGMAの両100-400mmの話に戻るが、
両者は、とてもよく写る高性能レンズである。
細かい差異としてはワイド(100mm)端の開放F値が僅かに異なる。
(SIGMA版F5、TAAMON版F4.5)

ただ、この手の開放F値変動型(超望遠)ズームの場合、
その差は全く問題にならない。

何故ならば、被写界深度の設定が作画上の意味があまり無い
スポーツ撮影等においては、この手のレンズでは、絞り値を
テレ(400mm)側の暗い方の開放F値にセットしておくのが
セオリーだからだ。

そうしておくと、ズーミングの変化でも絞り値が一定となり、
シャッター速度も、ほぼ変化しない。これは手ブレの対策も
あるが、主に動体撮影での動感表現を一定にキープする目的だ。

さらなる課題だが、開放F値変動ズームでワイド端からテレ端に
ズーミングすると、当然、ワイド側でセットした開放F値より
も暗くなる、ここで再度ワイド側にズーミングを戻した際、
多くのカメラでは、F値はテレ端の暗いまま保持されてしまい
ワイド側の(小さい)開放F値には戻らない。
(注:カメラの機種によってはワイド側の開放F値に復帰する
ものもある)

だから、いっその事、ワイド端での開放F値を犠牲にし
テレ端の暗い開放F値に最初からセットしておく訳だ。
これらのレンズの場合は、その値は、F6.3ではあるが、
そうしておけば、ズーミングでF値が変化する心配は不要だ。
被写界深度がもう少し欲しい場合、またはMTF特性の若干の
向上を狙って、さらに絞り値を上げて、F7.1やF8に固定して
おいても勿論良い。

それと、AUTO-ISOの切り替わり速度が変更可能な機体の場合、
低速限界を1/500秒とか、それ以上(速い)に設定しておく。
この事で、手ブレを防ぐ他、動感表現を一定化する。
(つまり、シャッター優先AEに切り替える必然性を減らす
事ができる。そのモードは、色々と使い難い点もあるのだ)

また、超望遠レンズの手持ち撮影の場合は、ボディを含めた
重心位置を十分に意識して構え方も慎重にしなければならない。
得にこれらのレンズはズーミングで全長が変化する為、重心
バランスが変わるので、その点は十分に注意する必要がある。

いずれにしても、この手の開放F値の暗い超望遠ズームは、
手ブレ対策の意味からも、殆ど絞り込まずに使うのが基本だ。
勿論、近年のレンズには優秀な手ブレ補正機能が内蔵されては
いるが、より手ブレし難い様々な撮影技法を併用する事で、
さらに手ブレの限界値を上げられる。だから、カタログスペック
上の「何段まで手ブレ補正効果あり」といった数値にはあまり
重要な意味は無く、概ね撮影者のスキルに依存するという事だ。

ただ両者の操作性には僅かな差があり、SIGMA版はレンズの
先端部を持って、直進ズーム的に引き出して使う荒技が使える
(注、メーカー推奨だ)が、TAMRON版は、その使い方は推奨
されておらず、自己責任でそれをやってみても、ちょっと
動作が重い。(すなわち、素早いズーミング操作が出来ない)

結局、TAMRON版はズームリング主体でズーミングをするのだが、
レンズ根元にあるズームリングは、重量級レンズとボディとの
総合重心位置では無い為、操作性バランスが悪化する。

なお、これをちょうど重心位置とするには、軽量級ボディの
使用が望ましい。今回使用のD500は、同等の高速連写性能を
持つCANON EOS 7D系より僅かに軽いが、これくらいの差では
抜本的な改善にはならない。さらに軽量で高速連写が可能な
D7500あたりとの組み合わせがベターなように思えるが、
たったそれだけの理由で、まだ中古も高価な新型機の購入は
無理なので、当面はD500との組み合わせで使う事にしよう。

本レンズは、軽量超望遠ズームとして、業務用途以外の屋外
一般撮影にも十分に使える、特に、動物園、野鳥、鉄道や
運動会等のスポーツイベントの撮影に向く。又、航空機撮影
の分野でも、この焦点距離域は定番な模様である。
いずれにしても動体撮影用途が多いので、三脚は全く不要だ。
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ただし最短撮影距離は1.5m(SIGMA版は1.6m)と若干長目
なので、マクロ用途を含むフィールド撮影には適さないかも
知れない。最大撮影倍率は1/3.6倍程度となる、これは
APS-C機では換算0.4倍程度となり、NIKON D500ではさらに
1.3倍クロップ機能が使えるので、最大で1/2倍を超える
撮影倍率となり、スペック上ではマクロ的用途にも使えるが、
WDが長いので撮影アングル(角度)やレベル(高さ)の
自由度が無く、使用できる条件は限られるであろう。

なお、単に望遠画角が欲しいだけであれば、デジタル拡大機能
との組み合わせが自在なミラーレス機で、本レンズ以外の適当
な望遠レンズを使うか、あるいはロングズーム・コンパクト機
でも近年のものは、1000mm位の望遠画角を持つものは珍しく
無いので、それらが簡便かつ軽量で有利だ。

現に、生態観察等のフィールド(屋外)撮影の専門家分野では、
いまや殆ど全ての研究員は、ロングズーム機を使っている模様だ。
まあ、植物や昆虫のマクロから遠距離の野鳥迄、多くの被写体を
カバーする必要がある分野なので、機材の選択はそうなる訳だ。
(私も自然観察会に何度か参加した事があるが、そんな感じだ。
研究員は皆ロングズーム機であり。大げさな望遠レンズを持って
くるのは、参加者のビギナー層だけであり、何も撮れずに
困ってしまっている。なお、私は、そうした場合には最短撮影
距離の短い大口径単焦点(中)望遠レンズをデジタル拡大機能
を持つカメラに付けて持って行く事としている→これが最強)

一眼レフは、現代では「望遠に強いカメラだ」とは言い切れない
訳だ。(ただし、速写性やAF性能では、まだまだ一眼が有利だ
だからスポーツ分野等の撮影では一眼レフと超望遠が主体となる)

野鳥等の撮影分野では、アマチュア層は依然一眼と超望遠レンズ
を使うのだが、その重量から手持ち待機が出来ず、三脚を使う。
だがそれではハンドリング性能が低下し、不意に現れた被写体に
対応できない。よって、それはあくまで趣味撮影のスタイルでしか
なく、前述のように研究員等の専門家層は、ロングズーム機を
用いる合理的な機材選択と撮影スタイルに既に変化している。

加えて、野鳥の出現ポイント等で三脚を並べるアマチュア層は、
殆ど撮影もせず待機しているだけで、高価な機材自慢の話などを
ずっとしているだけのケースもよく見かけ、実際に彼らから話を
聞いた事も何度もあるが、常に、だいたいそんな感じだ。
写真という趣味は、機材自慢では無い事は言うまでも無い、
「いったい何をやっているんだろう?」とも思ってしまう。

最後に1つ注意点、本レンズはニコンマウント版でも「電磁絞り」
対応レンズなので
・D3/D300の時代(2007年)より古いニコン機では動作しない。
・一般的なマウントアダプターで、他社機に装着できない。
という問題がある。
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総括だが、本レンズは、かなり高性能であり、価格もそう
高くはない。
一眼レフで超望遠域を使ってみたいユーザー層にはオススメだ。
私は発売後すぐに購入してしまって、やや高価であったが、
一般ユーザーの場合、出来れば何年か待って中古相場が下がって
から入手した方がベターであろう。そして、この手のレンズは
屋外等でガンガンに酷使すると、どうせすぐにボロボロになる、
中古の程度に拘ってピカピカの物を高く買っても意味が無いのだ。

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では、次のレンズ
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レンズは、MINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm/f1.4(前期型)
(中古購入価格 1,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

いわくつきのレンズで、今回が2度目の購入だ。

まず出自であるが、MINOLOTAの1960年代前半のSRシリーズ
銀塩一眼レフ用のキットレンズであり、発売後およそ
60年近くも経っている、やや古めのオールドレンズだ。
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SRシリーズ(現在未所有)は、そこそこのヒットカメラであった
為か、このレンズもまた、中古市場で比較的良く見かけた。
ただ、MC型(開放測光、絞り優先AE対応)になる前の古いレンズ
であり「絞り込み測光」で使用するしかなく、銀塩時代には
MINOLTA Xシリーズの後期MF一眼レフ等で実用レンズとするのは
厳しく、ずっと購入を躊躇っていた。

2010年頃、銀塩ビジネス縮退に係わる「大放出時代」に、
私はこのレンズを1000円の格安相場で見つけ、「ミラーレス
機であれば快適に使えるかも?」と、購入したのだが・・
購入時に絞りは動作していたものの、すぐに動かなくなり、
開放でしか撮れなくなってしまった。まあ要は古いレンズなので
絞り羽根の油分が固化し「絞りの粘り」が発生していたのだ。
安価なレンズであるので修理する気にもなれず、カメラ好きの
友人に「絞り開放でしか撮れないけど・・」と無償で譲渡して
しまった。

2018年、地方DPE店のジャンクコーナーで、再び本レンズを
見つけた、やはり絞りが粘っている「半故障品」で、価格は
これも1000円と安価だ。
「さて・・どうしたものかな?」と迷ったが、故障を甘んじて
再度購入する事とした。

実際の使用においては、絞りは動作する事はするのだが、
粘りが酷く、絞り環を操作するたびに、背面の絞りレバー又は
レンズ横側にある「プレビューレバー」を、ガチャガチャと
何度か操作して、絞り羽根に力(衝撃)を加えないと、所定の
絞り位置にならない。

これは面倒な操作であるし、カメラを構えながらでは
絞り羽根の動きは見えないので、絞り羽根が正しい位置まで
動いたどうかは、シャッター速度の変化でしか見えてこない。
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まあ、という事で、今回の実写では、絞り値はいい加減だ、
殆どがF2前後の絞り開放近くで半固定の状態となっている。

こうした「半故障レンズ」ではあるが、絞りが上手く活用できない
他は撮影には支障は無い(まあ、それイコール「支障がある」
とは言えるが・・)

スペックだが、PF銘の通り5群6枚の変形ダブルガウス構成、
これはオーソドックスだが、もう少し後の時代(1970~1980年代)
に入らないと、まだこの型式での設計の完成度は高いとは言い難い。
が、ミノルタは頑張った方であり、二層コーティング技術を
他社に先駆け、いち早く採用している。
(他社、例えばPENTAX SMC多層コーテイングは1970年代からだ。
なお、ミノルタは当時、若干の他社との性能優位性があった為、
一部のマニア層では「ロッコールは良く写る」と言われていた)

このコーティングにより、レンズは若干緑色がかって見える。
なお、緑に見えるから緑に写るとか、他のレンズ、例えば
ニコンの単層コーティングが黄色に見えるから黄色く写るという
訳では無い(多くの初級マニアは、そう誤解している)

描写力だが、大きく2つの課題がある、まずは絞り開放近くでは
解像力がかなり低く「アマアマ」の描写になる事だ。場合により
ミラーレス機のピーキング機能すらも殆ど効かない。
(注:ピーキング機能は、輪郭部の輝度差を検出する「微分型の
フィルター」なので、レンズ側の解像力が甘い場合には、上手く
動作しない事もある。
その輝度差検出の閾値(どれだけ差があれば表示するか?)は、
通常の一般的なレンズ性能に合わせて決められている訳だ。
なお、一部のミラーレス機では、ピーキングレベル、つまり
輝度差の閾値を調整可能なものもあるが、可変範囲はさほど
大きく無い、この手の、収差が大きいオールドレンズでは、
それを調整しても輪郭検出が困難な場合がある)

もう1つは、逆光耐性が極めて低く、ちょっとした逆光で
ゴーストが発生する。しかし、この欠点を上手く逆用すると、
「虹」のような映像を出す事が可能だ。
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これは実際に虹が出ている訳ではなく、レンズの欠点により
勝手に発生する架空の虹だ。
この「虹写真」は、なかなか面白いのだが、逆光ならば常に出る
という訳でもない、うまく光線状況を考えながら撮る必要がある
だろう。なお、この「虹」は、ミラーレス機のEVFで確認できる
ので撮影前にどのように出現させるかの微調整が可能である。

総括だが、古過ぎて実用範囲外のレンズである。ただし「描写の
甘さ」や「虹の出現」という弱点を逆用して活用できるスキルが
利用者側にあるならば、「写真表現的」な側面からは、なかなか
面白い(楽しい)レンズだと言えよう。
1000~2000円のジャンク価格であれば、間違いなく「買い」だ。

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では、次のレンズだが、こちらもジャンクだ。
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レンズは、smc PENTAX-FA 100-300mm/f4.5-5.6
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、PENTAX *istDs (APS-C機)

1990年代前半頃の、オーソドックスな仕様の、廉価版と
思われるAF望遠ズーム。
本レンズの詳しい出自は現在殆ど資料が無く、今となっては
良くわからない。
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このような銀塩時代のMF/AF望遠廉価版ズームは、現代の中古
市場では不人気であり、本レンズは2010年代にジャンクとして
2000円で購入した物だ。
価格が極めて安価だが、程度はさほど悪いとは言えず、勿論
完動品であった。あくまで不人気が故の格安相場であろう。

「パワーズーム機構」が付いているのだが、今回使用の
PENTAX最初期のデジタル一眼レフ、*istDs(2004年)では、
その機能は動作しない(注1:AFはちゃんと動く。
注2:パワーズームを効かせたく無いから、あえて古い
時代の*istDsを使用している)

試しに、もう少し後の時代のPENTAX K10D(2006年)に
装着すると、無事パワーズームが動作した。
K10Dは、この古い時代(1990年代)のパワーズーム機構での
「KAF2型接点」に対応している仕様なのだ。
(なお、旧来のパワーズーム用の古いKAF2規格を、この時代
からの超音波モーター内蔵レンズ用の接点に転用した、と聞く)

それから、さらに新しい時代のPENTAX KP(2017年)では、
一応AF等はちゃんと動くのだが、レンズ装着後の電源ON時、
モーター動作の様な高周波の機械音が僅かに聞こえた。

ちょっと相性的に危なっかしいので、それ以上の検証は中止だ。
新鋭の一眼レフを、ジャンクレンズの使用で壊してしまったら
勿体無い。壊れても惜しくない *istDsに装着して撮影しよう。

ちなみに、パワーズームというのは、ズームリングをちょっと
指で廻すだけで、ズーミングを行ったり、あるいは特殊な機能
(例、露光間ズームや予め設定した焦点距離に自動で動く等)
が搭載されているのだが、いったい誰がそんな機能を欲しがる
のであろうか? このレンズが発売されたバブル期(1990年頃)
での、銀塩一眼PENTAX Zシリーズならではの、バブリーで過剰、
かつ迷走したスペックと言える。
(銀塩一眼第17回、PENTAX Z-1記事参照)

ズーミングは手で廻した方が、はるかに素早くかつ正確だ。
わざわざ撮影のパフォーマンスを落とす自動化など、技術的な
意義も価値も殆ど無い。

結局FAレンズでのパワーズーム機構は、その後、廃れてしまった
模様だ。まあ、この時代のバブル期では、PENTAXに限らず、
MINOLTAでもα-xiシリーズで過剰な自動化機能を推進していた。

世の中のバブル崩壊と共に、ユーザーニーズも大きく変化し、
それらのバブリーな自動化機能は絶滅してしまったのだ。
このあたりの話は、書き出すと長くなるので、また銀塩一眼
クラッシックス・シリーズの、その時代の記事に譲ろう。
(銀塩一眼第23回MINOLTA α-9記事(予定)等を参照)
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さて、他には、これと言う特徴の無い望遠ズームレンズだ。
焦点域も一般的、開放F値はやや暗いが、このクラスでは
それでも一般的。最短撮影距離は全域1.5mと、300mm望遠域
では不満は無いが、100mm域では、やや不足気味だ。

描写力は、やや解像度不足な印象、逆光性能は低く、
コントラストは低目でフレアっぽい、ボケ質はやや汚い。

まあでも、いずれも重欠点というレベルでは無く、欠点を
意識して回避しながらであれば、なんとか使えるであろう。
まあ、なんと言ってもコスパが極めて良い。何十万円という
高価な新鋭望遠ズームでなくても、本レンズのような物を
必要とする撮影シーンもある筈だ(たとえば、豪雨等の
非常に過酷な撮影環境で、レンズが故障するリスクが高い
場合等だ)2000円であれば仮に壊しても惜しくない。

ちなみに、(交換)レンズの「減価償却のルール」は特に
設けてはいないが、もしそれを一眼レフでの持論と同様に
「1枚3円の法則」を適用するならば、2000円のレンズでは
700枚も撮影すれば、元が取れている計算となる。
レンズの試写では、1日でこれ位(何百枚か以上)の
枚数は撮るので、もう十分だ。
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まあしかし、交換レンズは、そう簡単には故障しない、
かなり酷使しても、何十年かは平気で持つであろう。
私が使用している最も古いレンズは、だいたい1960年代頃の
ものがあるが、製造後半世紀(50年)を超えてまで、いまだ
問題なく動作しているレンズも沢山ある。

総論だが、本FA100-300/4.5-5.6は、今更、指名買いをする
類のレンズでは決して無いが、まあ参考まで。

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では、今回ラストのレンズ
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レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格 75,000円)
カメラは、NIKONN Df (フルサイズ機)

2016年に発売された、中国製の特殊レンズ。
「特殊」と言っても色々意味があるが、本レンズの
スペックは以下の通りだ。

*超広角15mm (フルサイズ対応)
*開放F値F4、無段階絞り
*マニュアルフォーカス
*最短撮影距離12cm、等倍マクロ
最短WD(ワーキング・ディスタンス) 4.7mm
*上下6mmのシフト機構内蔵

すなわち、かつて無かった超広角の等倍マクロレンズであり、
おまけに、シフト機能(機構)まで付いている。

シフト機能とは、レンズの光軸を平行移動する事で、
遠近感(パースペクティブ)をコントロールできる機構で、
例えば、高層ビル等を広角レンズで撮ると上すぼまりになる
のを、シフトで補正できる訳だ(逆に強調も可能)
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従前の記事では、PCニッコール35mm/f2.8(ミラーレス・
マニアックス第37回、第52回)がある、また、トイレンズでは
あるがLoreo PC Lens In A Cap 35mm/f11(ミラーレス・
マニアックス第73回)を紹介した。

なお、シフトとティルトの意味と効果の違いは、それらの記事
でも解説しているので、今回は割愛する。

で、一般にシフト機構(ティルトでも)は、どの角度にでも
レンズを平行移動(または傾ける)できるような構造が必要だ、
だからレンズは回転する事が普通になっている。
だが、本レンズの場合はレンズは回転せず、上下方向にのみ
±6mmの範囲で移動できる構造だ。

シフト操作は、レンズのマウント部にある銀色のレバーを
倒すと、レンズの移動ロックが解除される、そこから手で
レンズを上方向または下方向に動かせば良い。

通常位置にレンズがある場合は、クリック・ストップがある
ので感触でわかるであろう、しかし、正直言えば、やりにくい
シフト操作だ。

それと、この仕様では、よほど特殊な撮影技法を除き、カメラ
を横位置(水平位置)とした構図でしか撮る事ができない。

で、一般には、ビル等の撮影では、構図上、上方向のすぼまり
(遠近感)を無くす効果を得たいので、レンズは下方向に
のみ動かす事になるだろう。
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だが、逆に上方向に動かすと、ビル等では上方向への遠近感を
強調する効果が得られる(1つ上の写真)

それから、制限事項だが、フルサイズ機で本レンズをシフトして
使用すると、「ケラれ」が酷く実用に適さない。概ねAPS-C機
専用の機能だ。


今回使用のNIKON Dfは、フルサイズ機ではあるが、DX(APS-C)
のモードに容易に切り替える事ができる。
つまり、通常では、15mm/f4の超広角、または超広角マクロ
としてフルサイズで使い、シフト機能を使いたい場合は、
DXモードに切り替え、約22mm相当の画角のシフトレンズと
して使用できる訳だ。
または、ケラれを覚悟でフルサイズのままシフトし、
撮影後、必要な画角範囲でトリミング編集しても十分だ。
(注:上写真はフルサイズでシフトしてケラれが構図内にまで
入って暗くなった例。なかなか使いこなしの難しいレンズだ)

本レンズのメーカーによる推奨使用環境はAPS-C機ではあるが
フルサイズ機で使った方が、多数の作画バリエーションを
持たせる事ができるので楽しいと思う。

なお、逆の原理により、旧来の銀塩用シフトレンズを
APS-C機で使うと、シフト効果がはっきり出ない。

本ブログでは、2000年代位から、前述のPCニッコール35/2.8
を用いてシフトレンズの動作原理を解説する記事を書いていた
のだが、当時のデジタル一眼レフは、ほとんどがAPS-C機だった
ので、シフト効果がはっきり出ず、説明になっていなかった
事もあった(汗)
これは、前述のミラーレス・マニアックス記事でも同様で、
そこで使用している母艦はAPS-C機であった。

今回記事では、シフト効果がちゃんと出せる環境となっている。

それと、横位置構図でしかシフト機能が使えない件だが、
まあ、無理やり縦位置構図でシフト効果を出す事も出来ない
訳では無い、しかし、そういう必要性のある横方向遠近感を
補正すべき被写体は稀であり、作画がかなり難しい。
そういう撮り方は、特殊な撮影とみなした方が良いであろう。
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他の注意点だが、等倍マクロ撮影時には、WDが僅かに4.7mmと
極めて近接した撮影となる、この時、付属のフードをつけた
ままでは、そこまでの近接撮影が出来ない。
そして、15mmの超広角である為、φ77mm保護フィルターも
場合によってはケラれて使えない。つまり、近接撮影でレンズ
を被写体衝突から保護する手段が殆ど無い為、使用時には
極めて慎重に扱う必要がある。(この課題に対応する為、
後日、φ77mmの薄枠保護フィルターを購入して装着した)

もう1つ、NIKON Dfは、ニコンFマウント系レンズの互換性が
極めて高いデジタル一眼レフではあるが、このような非Ai型
のレンズでも、とりあえず撮影は可能だ。ただ、レンズ側と
本体側で設定した絞り値とを正しく関連付けなくてはならず、
面倒な「二重の絞り操作」を強いられる。
加えてシフト機能を使うと、絞り値と実際の光量の間に関連性
が無くなってしまうので、露出補正またはボディ側絞り値の
変更操作で、正しい露出と思えるように調整する必要がある。

露出補正はDfでは、ロック機構があって、お話にならない劣悪
な操作性なので、絞り値での微調整が良いであろう、ただし
これはカンも経験も必要な、やや高度な撮影技法だ、決して
ビギナー向けレンズでは無い事は重要な点として述べておく。

本レンズは特殊な仕様で高価な上、実用上の用途も少ないと
思われ、結果的に、購入者も恐らく少ないであろうから、
中古市場には殆ど出回らない。
一般的な撮影では、全く使い道が無いであろうから、必要性
の高いレンズでは決して無い。そして使いこなしも、相当に
難しいレンズである。
だが、この特殊仕様は、マニアック度は極めて高い。
まあ、上級マニア専用レンズと言っておくのが良いであろう。

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さて、今回の第8回記事は、このあたり迄とする。
次回記事は、ジャンクレンズを中心とする予定。


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