さて、新シリーズ記事の開始である。
本シリーズは、従前の「ミラーレス・マニアックス」や
「ハイ・コスパレンズ・マニアックス」の続編的な繋がりの
位置付けで、マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事だ。
新規購入等の理由で、過去記事では未紹介のレンズを主に
取り上げる。
なお、このシリーズではカテゴリー分類は行っていないし、
あまり「コスパ」の良し悪しにも拘らず、若干高目の価格で
入手したレンズも順次紹介して行く事とする。
また、レンズを使用するカメラ(母艦)は、デジタル一眼レフ、
およびミラーレス機を使用する。できるだけカメラの方が
高価になりすぎないようにするが(持論のオフサイドの法則)
他シリーズ記事よりも、若干だが、その条件は緩和する。
まずは、最初のシステム(レンズ)
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レンズは、NIKON AF-S DX NIKKOR 35mm/f1.8G
(中古購入価格 18,000円)
カメラは、NIKON D70 (APS-C機)
2009年発売のDXフォーマット専用AF準広角(標準画角)
レンズ。(以下、DX35/1.8)
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本レンズは「DX」、つまりAPS-C一眼レフ専用レンズであり、
ニコンのフルサイズ機で使用時は自動的にDX(APS-C)サイズ
にクロップされる(ように設定できる)
フルサイズ(FX)用のレンズでは、2014年に発売の、極めて
類似した型番のAF-S NIKKOR 35mm/f1.8G ED がある。
型番が似ているので購入時は間違えないようにする必要がある。
まあフルサイズ用は、大きく、5割増しも重く、価格も高価で
あるので、間違わないとは思うが・・
APS-C機専用レンズやミラーレスのμ4/3機専用レンズは
フルサイズ用レンズに比べ何故小さくできるか?と言えば
その小さいセンサーに対応する光の範囲、つまり「イメージ
サークル」が小さくても良いからだ。
だが、レンズというものは、一般的にその中央部の画像は
高画質であるが、レンズ周辺に行くに従い、様々な収差が出て
解像力が低下したり、周辺光量が減少したりする。
だから本来は、レンズの対応センサーサイズギリギリで
使うよりも、より大きなイメージサークル対応のレンズを
用いた方が画面全域の描写力的には優れる。
つまり、APS-C機でフルサイズ用レンズを使った方が
レンズ中央部の収差が少ない「美味しい部位」を使える
ので有利な訳だ。
APS-C機用レンズをAPS-C機で使うとか、フルサイズ対応
レンズ(銀塩時代のレンズを含む)をフルサイズ機で使う
とかは、結構厳しい状態と言える。
で、本DX35/1.8であるが、APS-C機用レンズなので
今回使用のNIKON D70等では、フルサイズ換算画角は、
52.5mmとなり、標準レンズ相当だ。
しかし現代ではマウントアダプターでセンサーサイズの
異なるボディにも装着可能だ。
例えば本レンズをμ4/3機に装着時の画角は70mm相当の
中望遠、PENTAX Qシステムでは160mm相当以上の望遠
画角となる。
したがって、レンズの焦点距離を見ただけで「広角」とか
「標準」とかは一概には言えない。
この問題は根が深いが、本ブログにおいては、レンズ自体
の実焦点距離を元にカテゴリー分けをする場合が多い
(GXRやQシステム等の例外もある)
ちなみにレンズの被写界深度を計算する際も、装着できる
センサーサイズは、まちまちなので、便宜上、フルサイズ
換算(銀塩35mm判フィルム相当)で計算する場合が多い。
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本レンズDX35/1.8は、DXフォーマットのニコン純正単焦点
レンズとしては、魚眼レンズを除き、本レンズが初の発売
だったと思う。
しかし、例えば今回使用機のD70の発売年(2004年)が、
ニコンデジタル一眼が一般ユーザーに普及した元年だとすれば、
それ以降5年間も、DX専用の単焦点レンズが発売されなかった
のは少々不思議な状況だ。
また、ニコンのFX(フルサイズ)機は、D3(2007年)や、
D700(2008年)等が本レンズの前に、既に発売されて
いたので、「何を今更?」と余計に不思議に思えた。
まあ、考えられる理由としたらSONYのDTレンズの関連記事
で良く述べている「エントリーレンズ」のコンセプトを
ニコンも本レンズから始めた、という事であろう。
(同年にDX85/3.5マイクロも発売された)
この前年(2008年末)には、史上初のミラーレス機
Panasonic DMC-G1(ミラーレス・クラッシックス
第1回記事等)が発売されているので、一眼レフ市場が
喰われる事を嫌っての措置だった可能性もある。
本レンズは発売時定価35,000円程の「エントリーレンズ」
ではあるが、安っぽい作りではなく、超音波モーターを
内蔵していて、AFとMFをシームレスに切り替え可能という
贅沢な仕様だ。
ただ、その仕様の為、無限回転式のピントリングであり、
距離指標も勿論無い事から、MF操作性はかなり悪い。
また、無限回転式とは言え、ヘリゴイドの動きに限界があり、
そこから先はピントリングが空回りをする感触があって、
あまり好ましくない(距離指標があればこの仕様でも良い)
絞り環もG型なので当然存在せず、ニコンデジタル一眼レフ
以外での使用は少々厳しい状況だ。
しかし、試しに、Gタイプ対応のマウントアダプターを
用いて、ミラーレス機で使用してみると、絞りの開閉は
問題なく可能。及び、MFも操作感・操作性は悪い物の、
なんとか動作可能であった。
他社の一部のエントリーレンズでは、アダプターで使用すると
MFまで全く動かなくなってしまう残念な仕様のものもあり、
それらに比べると、かろうじて他社機で使えるだけ、だいぶ
マシな(汎用性を残した)仕様である。
本DX35/1.8だが、6群8枚構成、最短撮影距離は30cmだ。
類似スペックの他社エントリー SONY DT35/1.8
(ミラーレス第60回、名玉編第2回、ハイコスパ第10回)
の最短撮影距離23cmと比べると、少々長目に感じる。
まあ、上位レンズAF-S 35/1.8G EDが最短25cmと、かなり
優秀なので、それとの差別化もあったかも知れない。
(安いレンズの方が優秀というのは市場戦略的に好ましく無い。
ニコンはカメラでもレンズでも、ラインナップの差別化要素が
非常に強い(強すぎる)メーカーである)
で、特に、距離指標無し、無限回転式ピントリングでの
MF操作性の悪さは勿論、AFであっても最短が何処にあるかが
掴めず、ぎりぎりの近接撮影は出来ない、と思った方が
良いので、この点はかなり不満だ。
ちなみに、SONY DT35/1.8は距離指標のある有限回転式
ピントリングなので、MFで容易に近接撮影が可能だ。
超音波等の各種モーター搭載で、AF/MFのシームレスな
切り替えを実現する為に、この頃の(2010年前後)時代から、
無限回転式ピントリングが増えてきた。他にもミラーレス機
用の普及AFレンズでは、殆ど全てがそうなってしまったのは、
MFを軽視しているようで、極めて好ましくない。
まるで約30年前の1980年代後半、各社の急速なAF転換により
MFを軽んじて、ピントリングを狭くしたり、ピントリングの
手動MF操作を出来なくしてしまった事を思い出す。
それらの措置が市場に受け入れなかった事は当然である。
(以降、各社はピントリングを広く改良し、
”パワーフォーカス機構”は絶滅してしまった)
MFがきちんとできないレンズは写真撮影的にはNGであろう。
ましてや本レンズは、35mmの焦点距離としては口径が大きい
方である開放F1.8だ。この特徴を活用しようとすれば、
背景を適宜取り込みながら近接してボケを生かした撮り方を
するのがノーマルな考え方なのだが、最短の仕様と、MFの
操作性の悪さで、レンズの長所を活用する撮り方ができない。
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さて、本レンズDX35/1.8 のその他の特徴であるが、
ボケ質は、ややクセがあり、あまり好みの感じでは無い。
まあ、シャープネス主体という、旧来からのニコンレンズ
の設計コンセプトを踏襲しているのであろう。
重量は200gと、まずまず軽量だ。ただ、ライバルのSONY
DT35/1.8が170gなので、それよりは重い。
逆光耐性はそこそこ強い、フードが付属しているが、
あえて使わなくても殆ど問題は無いであろう。
フィルター径はφ52mm、これは、MF時代からのニコンの
伝統の標準的サイズであり、小型レンズに関しては、
およそ50年~60年も前から、殆どが同一サイズであるので、
設計規格の標準化が良く出来ていると思われ、好ましい。
ミラーレス・マニアックス記事で良く書いた、オリンパス
OMシステムの様々な標準化思想の一環で、ほとんどの
OM用レンズをφ49mmとφ55mmで統一設計した程では
無いが、ニコンも、まずまず標準化の思想が強い。
他社製品では、レンズ毎にフィルター径がバラバラで、
これはユーザー側からすると、特殊フィルターの使いまわし
などが極めてやりにくい。
本レンズは、ミラーレス・マニアックス名玉編第4回で
「未所有レンズだが、ランキング入り可能性がある」と
紹介した。
結局、記事掲載後の2017年頃の購入になったのだが、
確かに悪い性能のレンズではなく、コスパについても、
定価や中古の相場が割高なニコンレンズにしては、まあ
良い方だとは思う。
が、MF操作性の弱点が大きく、残念ながら名玉ランキング
入りレンズには成り得ないと思う。
なお、フルサイズ機の普及により、この手のAPS-C機専用
レンズは将来的に相場の下落が大きくなる可能性がある、
そうなってくれば勿論コスパは良くなる。
本レンズよりも性能的に遥かに上回るSONY DT35/1.8が、
1万円を切る安価な中古相場である事からすると、本レンズ
も本来ならば、そのあたりの価格が価値からすると適正だ。
そうならないで高価なのは、ニコンというブランドであり、
あまり納得の行く話では無い。
まあ、1万円台前半程度迄で買えるのであれば、コスパが良い
レンズと見なす事はできるであろう。税込み18000円の購入
価格だと、ちょっと高く思う。ちなみに私が購入後、相場が
高騰して2万円台前半にもなってしまっていたが、さらにその後
2018年頃からは(フルサイズ機ユーザーの比率が増えたからか?)
相場は急落傾向で、1万円台前半と買い頃だ。
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さて、次のシステム、
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レンズは、LENSBABY MUSE + Plastic Optic 50mm/f2
(新品購入価格 6,000円)
カメラは、OLYMPUS E-410 (4/3機)
ミラーレス・マニアックス記事では未紹介の
2009年発売のMFティルト型トイレンズ(以下MUSE)
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類似のティルトレンズとして、LENSBABY 3G(以下3G)
(ミラーレス第11回,第14回,第40回,ハイコスパ第7回)
を紹介している、それは、本レンズより2~3年早い
2006年末頃の発売であるが、そのレンズにあった蛇腹の
周辺のガイドレールが、本MUSEには無い。
この為、操作性が劣るように思うかも知れないが、実際の
ところ、3Gのガイドレール方式は操作性が煩雑すぎて
使い難く、むしろガイドレールを用いないで、手の形のみ
で撮影する技法の方が簡便であった。
MUSEでもその技法で撮影が可能である。
あと、3GとMUSEの大きな違いは、MUSEでは、
「オプティック(光学)レンズユニット」が交換式となり
同一焦点距離ながら、4種類のユニットが発売された。
具体的には、ダブルグラス、シングルグラス、プラスチック、
ゾーンプレート(&ピンホール)の4種であり、それぞれ
描写の「ユルさ」が異なっている。
今回使用の「プラスチック」は、LOMO および HOLGAの
プラスチック(トイ)レンズを参考に設計されたユニット
であり、かなりユルい感じの、トイレンズ風の写りを
得る事ができる。
なお、現代でも、これらの一部のユニットや、他の様々な
効果を持つユニットが販売されているが、MUSE対応ではなく、
新型の「コンポーザーPRO」対応になっている。
また、3Gでの定価約4万円から、代理店変更等により、
MUSEは各ユニットで概ね1万円台と安価になっている。
今回のMUSE(プラスチック)は、2016年頃の購入だが、
既に生産中止になっていて、かつフォーサーズマウント
での在庫処分品であったので、新品で約6000円と安価に
入手する事ができた。
フォーサーズマウントは既に終焉していて、レンズの
継続使用は難しいのであるが、まだ同マウントの一眼レフは
私は使用しているし、いざとなればμ4/3等へのマウント
変換アダプターがあるので、特に問題は無い。
(注:トイレンズ以外の、電子接点つきの4/3レンズは、
簡易マウントアダプターでは、絞りもピントも動かずに
使用できず、電子アダプターを使う必要がある)
さて、旧来の記事で紹介していた3Gは、本MUSEと同じ
50mm/f2なのだが、3Gはダブルグラス型の固定光学系で
すなわち、最もユルさが無い(はっきり写る)仕様だ。
本MUSE(プラスチック)は、そのユルい写りが特徴と
言えるであろう、つまりトイレンズ相当である。
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しかし、この仕様はマニアックだ。
かつて、レンズ販売において同一焦点距離で開放F値の差で
ラインナップを構成した事なら、いくらでも前例があるが、
画質の差でラインナップを組んだ例は、本LENSBABY が
史上初だったかも知れない。
絞りだが、3Gとまったく同様の「マグネット絞り」を
レンズ外部から交換するタイプだ。
3Gでは、F5.6の絞りを標準的に使用しているが、
本MUSEでは、ユル目の描写を強調する為にも若干
明るめの絞りを中心にした方が楽しいかも知れない。
この絞り交換操作は屋外で都度行うのは面倒である為、
一般的には撮影前に、ある程度決め打ちで交換しておく。
なお、開放のF2とかにしてしまうと、極めてユルい写りが
得られる半面、今度は日中ではシャッター速度オーバー
になってしまう恐れがあるが、本MUSEでは、φ37mmの
フィルター枠が存在するので、ステップアップリングを
介して一般的な小口径ND(減光)フィルターを装着可だ。
ちなみに、3Gもφ37mmのフィルターが装着可能であるが
ピント微調整機能があり、ステップアップリングを使うと
微調整ヘリコイドが当たって動かなくなる、そのため
正規の37mm径フィルターしか使用できない。
ところが、φ37mmの写真用レンズは数が少なく、
例えば、OLYMPUS M.Zuiko(45mm/f1.8等)の、珍しい
小型レンズだけだ、よって写真用フィルターでここまで
径が小さいものが売られている状況もあまり目にせず、
あっても保護フィルター程度だ。
ND(減光)フィルター等は、取り寄せとか、受注生産とか、
ビデオカメラ用などの付属品から探す等の処置が必要だ。
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さて、本MUSEであるが、選択したオプティックの特性も含め
基本的にはトイレンズの類であろう。
あくまで遊びの用途にしか使えない。
それから、極めて操作が難しいレンズであり、かつティルト
の原理を理解していないと使いこなせないレンズである。
ただし、マニアック度やエンジョイ度は高いレンズで
あるので、8000円程度以下で入手できるのであれば、
コスパは良いと言えるであろう。
ともかく難しいレンズなので、マニア向けとしておこう。
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さて、次のシステム
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レンズは、TAMRON SP AF 200-500mm/f5-6.3 LD
(A08)(中古購入価格 33,000円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
2004年発売のAF超望遠ズームレンズ。
ミラーレス・マニアックス第65回記事で紹介のレンズと
同型だが、本レンズはマウント違いである。
前レンズはα用マウントで中古49,800円の購入価格で
あったが、本レンズはニコンマウントで中古33,000円と、
相場がかなり安価になってからの購入だ。
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当該記事では「本レンズの適正相場は、3万円台前半まで」
と書いたのだが、先年、その価格帯のものが出てきたので、
株取引で言うところの「ナンピン買い」を行った次第だ。
ちなみに「ナンピン買い」とは、保有株価が下がった際に、
その株を買い増しして、平均取得単価を下げる事だ。
株取引のみならず、スーパーでの食品安売りの際等でも
日常的に行っている事ではあるが、カメラやレンズで、
それをする人は珍しいかも知れない・・汗
つまり、これで2本のレンズの平均購入価格が約4万円強と
なった事になり、「前に、レンズを高く買ってしまった」
という問題点が概ね解消できている。
本レンズはドラゴンボート競技撮影用だが、過酷な環境での
撮影なので、故障対応を含め予備レンズが必要な状況だ。
異マウントで、より安価な中古が出たら、それも買い増し
して、さらに平均購入価格を下げるかも知れない。
例えば次にもう1度2万円台で買えば、本レンズの適正価値
=3万円台前半 に平均取得価格が到達する。
まあでも、旧型のTAMRON AF200-400mm/f5.6 (75D)
(ミラーレス第71回、ハイコスパ第23回)も、依然2本
健在だ、あまり超望遠ズームを増やしてもしかたがない。
ただ、近年では超望遠ズームはテレ端が600mmばかりと
なってしまい、ハンドリングが悪かった状況で、注目すべき
は、2017年にSIGMAおよびTAMRONより発売された軽量の
100-400mmだ(両者は後日紹介予定)
なお、本ブログでは、ごく当たり前の話であるが、
これらの超望遠ズームの使用環境は100%手持ち撮影であり、
三脚は一切使用しない。
従って600mmクラスでは、長時間の手持ち撮影が困難な為、
購入もしていない。
まあつまり「重すぎて持っていられないレンズは買わない」
という単純な話である。
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さて、本レンズの特徴であるが、望遠端500mmのAF超望遠
ズームとしては、最軽量の1200g台である事だ。
実重量は約1290gだが、三脚座を外せるのでもう少し軽く
なる、これは三脚座が外せない望遠端400mmの前モデル
75D(1210g)よりも、むしろ軽量かも知れない。
レンズの太さは細い、前モデル75Dはズーム全域でF5.6
という大きな長所があったが、本A08は望遠端でF6.3まで
低下する。
大きな口径比を持たさずに軽量化したのかも知れないが、
前玉のみ肥大化し、フィルターサイズは、75Dのφ77mm
に対し、φ86mmと大きい。
これくらいのフィルター径となると、保護用フィルターに
してもかなり高価であり、あまり好ましくない。
ちなみに保護用フィルターを使用する場合のコストの
持論は、「レンズ購入価格の5%まで」である。
これ以上高価な比率となると保護という意味的には過剰だ。
33000円の本レンズの場合、適正価格は1650円となるが、
残念ながらφ86mmフィルターは、中古でも、この値段で
購入するのは困難であり、最低でも2000円台になってしまう。
なお、後継機A011のフィルター径は、さらに大きなφ95mm
となる。もし保護フィルターの中古が見つからない場合、
ぞの新品価格は8000円~15000円もする。
これでは、同レンズを仮に7万円で中古購入したとしても、
保護フィルターの価格がレンズ代の15~20%にも達する。
ちょっとそれでは過剰なので、保護フィルター無しで使う
という選択肢もあるかもしれないが、レンズをかなり丁寧
に扱わないとならないので、撮影状況によっては困難だ。
つまり、最初から保護フィルター購入代を、中古購入価格に
追加で予定しておかなくてはならない。
あるいは、各口径の保護フィルターを最低1枚つづだけ
保有して、レンズを使うたびに付け替えて持ち出すか・・
しかし、それもかなり面倒な話だ。
フィルターの余談ばかりになったが、まあ重要な事である、
皆、保護フィルターのコストは、あまり意識していない
かも知れないが、レンズ本体の値段と同様に購入予算への
影響が大きいのだ。
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では、本レンズの性能であるが、まあ、描写力的には何も
不満は無い。旧モデル75Dも総合的には悪くなかったが、
遠距離で解像感が不足気味になる弱点があり、F8程度に
少し絞って使うが、それだと当然シャッター速度低下が
厳しいので、中距離や被写体の解像感が少なくても問題が
ない場合は絞りを開けるなどの頻繁な操作が必要であった。
本レンズA08では、あまりそのあたりに配慮しなくても、
そこそこの解像感が得られている。
「超音波モーターが入っていないのでAFが遅い」という
向きもあるかも知れないが、超望遠の遠距離被写体では、
多くの場合MFで無限遠近辺のピント微調整だけで事足りる。
むしろAFが動いてしまうと、無限遠に復帰するまでのタイム
ロスがあるので、無限遠限定ではMFの方が速く撮影が可能だ。
ただし、本レンズA08は、ズームリングとピントリングが
独立回転式なので、MF操作性は非常に悪い。
旧モデル75Dは直進ズーム方式であったので、レンズ前方の
ピントリングを持ちながらレンズを引き出すという、荒技が
使える、この構造であればズーミングとMFを同時に行えるのだ。
ただし、超望遠での直進ズームはレンズ全長の変化と共に
重量バランスもかなり変化するので、それを保って撮影する
技法は上級者向けだ。
本レンズの場合、MF操作性の弱点があるので、MFばかりにも
頼らず、AFで無限遠に仮ロックしておくという使用法も
適正であろう。
なお、超望遠で中距離被写体を多用するケース、例えば
動物園や野鳥、スポーツ競技撮影等の場合は、AFが速い事は
確かにメリットであるが、それでもAFだけで事足りるという
ケースも多くない、そうした場合は、状況に応じてMFとAFの
使い分けが必須となる。
手ブレ補正機能は無いが、十分なシャッター速度が得られて
いれば超望遠レンズでも、あまり問題にはならない。
特に夏の日中屋外等の高輝度環境では、手ブレ補正は不要だ。
また、近年の高級機では、AUTO-ISO時の低速限界設定の
手動調整が可能な機種も多く、これを被写体状況に応じて
適宜高めておけば、手ブレ補正の代用に十分になり得る。
いずれにしても、レンズに弱点があっても、何らかの
回避技法が必ず存在する、レンズやカメラの性能だけに
受動的に頼っているような撮影技法では、基本的にはNG
なのだ。
そして、本レンズは、ニコンFマウントでも、かろうじて
絞り環が存在していた時代のレンズであるので、
アダプター等で他社機に装着して使う事は容易だ。
が、上記MF操作性の弱点があるので、あまりその使い方は
推奨できない。
まあでも、基本的に描写力に優れる良いレンズだ、価格が
3万円前後であれば、コスパは良いと見なす事ができる。
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次は、今回ラストのシステム
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レンズは、LAOWA 105mm/f2[T3.2] Bokeh Dreamer
(新品購入価格 90,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックスでは未紹介だったが、
以前に特集記事を書いた事がある。
2016年発売の中国製MF単焦点中望遠レンズである。
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本レンズの特徴は「アポダイゼーション光学エレメント」
を搭載した希少なレンズであるということだが、その
意味については、当該LAOWA105特集記事をはじめ、
ミラーレス・マニアックス第17回「特集 STF vs APD」や、
匠の写真用語辞典第3回記事、あるいは、かなり昔の
STFレンズ関連記事でも詳しく書いてあるので、今回は
その詳細は割愛する。(近々、また特集記事を掲載予定)
長所は勿論、その「ボケ質」である。
MINOLTA(SONY) STF135/2.8が唯一のアポダイゼーションで
あった1998~2014年までは、それを「史上最強のボケ味」
と称するメディアもあったが、現在では各社から類似仕様の
レンズが4本も出ている。
「じゃあどれが史上最強なのか?」というのは無意味な
質問だ、各々のアポダイゼーション・レンズは仕様も用途も
まるで異なる、必要ならば、それぞれの目的に応じて
複数の「最強レンズ」を買うしか無いではないか・・
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弱点は、ズバリ値段の高さだ。
いくらなんでも「ガラスと金属の塊が10万円もするのか?」
という疑問が残る。
同じ中国製の似たような仕様の中一光学Creator 85mm/f2
(ハイコスパ第23回記事)であれば、新品で約2万円だ。
つまり、本レンズの「付加価値」であれば、値段が高くでも
売れる訳だ。現代においては、価格は、そういう風に決まる。
開発費を企画(販売)本数で割って、それが償却可能で
あれば、その高付加価値レンズの開発にゴーサインがかかる。
これは市場を見た「マーケットイン」型の製品企画であり、
20世紀の工業製品においては、それは「プロダクトアウト」型
であって、そこでの「定価は原価の何倍」のような値付けの
公式は、もはや現代では成り立たないのである。
ところが、ここが皆、理解できていない。ユーザー層は皆、
ユ「高い商品は、高級な部品を使っていて、高性能だから
高価なのでしょう?」との大誤解を常に持っている。
いつまでも、この現代の「市場の仕組み」が理解できないで
いると、ユーザーが損をする(無駄に高い商品を買う)事に
なるので、ここは全ユーザーが絶対に理解しなくてはならない。
まあしかし、実のところ、4本のアポダイゼーション・レンズ
の中では本レンズが最も安価だ、他はいずれも20万円前後
もする。
高額な開発費と少ない販売本数が非常にアンバランスなのだ。
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他の弱点は、寄れない所か・・
105mmレンズで最短90cmは、さほど悪いスペックでは無いが、
ボケの綺麗さを活かして、マクロレンズ的な用途を狙うと
すると、もう少し寄れて欲しい。まあでも、そのあたりは、
今回利用のNEX-7のようなミラーレス機を使えば、デジタル
拡大機能が使え、心理的不満は若干緩和する。
また、特集記事では書かなかったが、アポダイゼーション系
レンズは、一度使うと「やみつき」になりやすい点がある。
描写力が極めて高いので、レンズの性能に頼りたくなって
しまうのだ。
ただ、ほとんどの状況でボケが綺麗な点は良い事なのだが、
ボケ質破綻回避などを行う必要が殆ど無いので、ある意味
テクニカルな要素が少ない、なので、綺麗な写真が撮れても
「レンズに撮らされているように思える」という、微妙な
弱点が存在する。つまり、段々と楽しめなくなってくる。
なので、正直言えば、アポダイゼーション・レンズは
「常用する」という感覚にはあまりなれないのだ。
大きく重いレンズばかりなので、「面倒なのでSTF(APD)は
今日はやめておくか」と、趣味撮影の場合は、そんな気持ち
になりやすい。
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マニアック度は最強レベルであるが、コスト高を考えると、
トータルでは決してコスパが良いというレンズにはならない。
この手のレンズを購入しようとする場合は、その辺りを
色々と良く考えて決断する必要があると思う。
まあでも、どうしても欲しいのであれば金額の多寡はあまり
関係無い、「唯一のもの」という仕様は、マニアにとっては
最大の付加価値(製品の魅力)なのだ。
---
さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回も未紹介のレンズを掲載予定である。
本シリーズは、従前の「ミラーレス・マニアックス」や
「ハイ・コスパレンズ・マニアックス」の続編的な繋がりの
位置付けで、マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事だ。
新規購入等の理由で、過去記事では未紹介のレンズを主に
取り上げる。
なお、このシリーズではカテゴリー分類は行っていないし、
あまり「コスパ」の良し悪しにも拘らず、若干高目の価格で
入手したレンズも順次紹介して行く事とする。
また、レンズを使用するカメラ(母艦)は、デジタル一眼レフ、
およびミラーレス機を使用する。できるだけカメラの方が
高価になりすぎないようにするが(持論のオフサイドの法則)
他シリーズ記事よりも、若干だが、その条件は緩和する。
まずは、最初のシステム(レンズ)
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(中古購入価格 18,000円)
カメラは、NIKON D70 (APS-C機)
2009年発売のDXフォーマット専用AF準広角(標準画角)
レンズ。(以下、DX35/1.8)
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ニコンのフルサイズ機で使用時は自動的にDX(APS-C)サイズ
にクロップされる(ように設定できる)
フルサイズ(FX)用のレンズでは、2014年に発売の、極めて
類似した型番のAF-S NIKKOR 35mm/f1.8G ED がある。
型番が似ているので購入時は間違えないようにする必要がある。
まあフルサイズ用は、大きく、5割増しも重く、価格も高価で
あるので、間違わないとは思うが・・
APS-C機専用レンズやミラーレスのμ4/3機専用レンズは
フルサイズ用レンズに比べ何故小さくできるか?と言えば
その小さいセンサーに対応する光の範囲、つまり「イメージ
サークル」が小さくても良いからだ。
だが、レンズというものは、一般的にその中央部の画像は
高画質であるが、レンズ周辺に行くに従い、様々な収差が出て
解像力が低下したり、周辺光量が減少したりする。
だから本来は、レンズの対応センサーサイズギリギリで
使うよりも、より大きなイメージサークル対応のレンズを
用いた方が画面全域の描写力的には優れる。
つまり、APS-C機でフルサイズ用レンズを使った方が
レンズ中央部の収差が少ない「美味しい部位」を使える
ので有利な訳だ。
APS-C機用レンズをAPS-C機で使うとか、フルサイズ対応
レンズ(銀塩時代のレンズを含む)をフルサイズ機で使う
とかは、結構厳しい状態と言える。
で、本DX35/1.8であるが、APS-C機用レンズなので
今回使用のNIKON D70等では、フルサイズ換算画角は、
52.5mmとなり、標準レンズ相当だ。
しかし現代ではマウントアダプターでセンサーサイズの
異なるボディにも装着可能だ。
例えば本レンズをμ4/3機に装着時の画角は70mm相当の
中望遠、PENTAX Qシステムでは160mm相当以上の望遠
画角となる。
したがって、レンズの焦点距離を見ただけで「広角」とか
「標準」とかは一概には言えない。
この問題は根が深いが、本ブログにおいては、レンズ自体
の実焦点距離を元にカテゴリー分けをする場合が多い
(GXRやQシステム等の例外もある)
ちなみにレンズの被写界深度を計算する際も、装着できる
センサーサイズは、まちまちなので、便宜上、フルサイズ
換算(銀塩35mm判フィルム相当)で計算する場合が多い。
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レンズとしては、魚眼レンズを除き、本レンズが初の発売
だったと思う。
しかし、例えば今回使用機のD70の発売年(2004年)が、
ニコンデジタル一眼が一般ユーザーに普及した元年だとすれば、
それ以降5年間も、DX専用の単焦点レンズが発売されなかった
のは少々不思議な状況だ。
また、ニコンのFX(フルサイズ)機は、D3(2007年)や、
D700(2008年)等が本レンズの前に、既に発売されて
いたので、「何を今更?」と余計に不思議に思えた。
まあ、考えられる理由としたらSONYのDTレンズの関連記事
で良く述べている「エントリーレンズ」のコンセプトを
ニコンも本レンズから始めた、という事であろう。
(同年にDX85/3.5マイクロも発売された)
この前年(2008年末)には、史上初のミラーレス機
Panasonic DMC-G1(ミラーレス・クラッシックス
第1回記事等)が発売されているので、一眼レフ市場が
喰われる事を嫌っての措置だった可能性もある。
本レンズは発売時定価35,000円程の「エントリーレンズ」
ではあるが、安っぽい作りではなく、超音波モーターを
内蔵していて、AFとMFをシームレスに切り替え可能という
贅沢な仕様だ。
ただ、その仕様の為、無限回転式のピントリングであり、
距離指標も勿論無い事から、MF操作性はかなり悪い。
また、無限回転式とは言え、ヘリゴイドの動きに限界があり、
そこから先はピントリングが空回りをする感触があって、
あまり好ましくない(距離指標があればこの仕様でも良い)
絞り環もG型なので当然存在せず、ニコンデジタル一眼レフ
以外での使用は少々厳しい状況だ。
しかし、試しに、Gタイプ対応のマウントアダプターを
用いて、ミラーレス機で使用してみると、絞りの開閉は
問題なく可能。及び、MFも操作感・操作性は悪い物の、
なんとか動作可能であった。
他社の一部のエントリーレンズでは、アダプターで使用すると
MFまで全く動かなくなってしまう残念な仕様のものもあり、
それらに比べると、かろうじて他社機で使えるだけ、だいぶ
マシな(汎用性を残した)仕様である。
本DX35/1.8だが、6群8枚構成、最短撮影距離は30cmだ。
類似スペックの他社エントリー SONY DT35/1.8
(ミラーレス第60回、名玉編第2回、ハイコスパ第10回)
の最短撮影距離23cmと比べると、少々長目に感じる。
まあ、上位レンズAF-S 35/1.8G EDが最短25cmと、かなり
優秀なので、それとの差別化もあったかも知れない。
(安いレンズの方が優秀というのは市場戦略的に好ましく無い。
ニコンはカメラでもレンズでも、ラインナップの差別化要素が
非常に強い(強すぎる)メーカーである)
で、特に、距離指標無し、無限回転式ピントリングでの
MF操作性の悪さは勿論、AFであっても最短が何処にあるかが
掴めず、ぎりぎりの近接撮影は出来ない、と思った方が
良いので、この点はかなり不満だ。
ちなみに、SONY DT35/1.8は距離指標のある有限回転式
ピントリングなので、MFで容易に近接撮影が可能だ。
超音波等の各種モーター搭載で、AF/MFのシームレスな
切り替えを実現する為に、この頃の(2010年前後)時代から、
無限回転式ピントリングが増えてきた。他にもミラーレス機
用の普及AFレンズでは、殆ど全てがそうなってしまったのは、
MFを軽視しているようで、極めて好ましくない。
まるで約30年前の1980年代後半、各社の急速なAF転換により
MFを軽んじて、ピントリングを狭くしたり、ピントリングの
手動MF操作を出来なくしてしまった事を思い出す。
それらの措置が市場に受け入れなかった事は当然である。
(以降、各社はピントリングを広く改良し、
”パワーフォーカス機構”は絶滅してしまった)
MFがきちんとできないレンズは写真撮影的にはNGであろう。
ましてや本レンズは、35mmの焦点距離としては口径が大きい
方である開放F1.8だ。この特徴を活用しようとすれば、
背景を適宜取り込みながら近接してボケを生かした撮り方を
するのがノーマルな考え方なのだが、最短の仕様と、MFの
操作性の悪さで、レンズの長所を活用する撮り方ができない。
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ボケ質は、ややクセがあり、あまり好みの感じでは無い。
まあ、シャープネス主体という、旧来からのニコンレンズ
の設計コンセプトを踏襲しているのであろう。
重量は200gと、まずまず軽量だ。ただ、ライバルのSONY
DT35/1.8が170gなので、それよりは重い。
逆光耐性はそこそこ強い、フードが付属しているが、
あえて使わなくても殆ど問題は無いであろう。
フィルター径はφ52mm、これは、MF時代からのニコンの
伝統の標準的サイズであり、小型レンズに関しては、
およそ50年~60年も前から、殆どが同一サイズであるので、
設計規格の標準化が良く出来ていると思われ、好ましい。
ミラーレス・マニアックス記事で良く書いた、オリンパス
OMシステムの様々な標準化思想の一環で、ほとんどの
OM用レンズをφ49mmとφ55mmで統一設計した程では
無いが、ニコンも、まずまず標準化の思想が強い。
他社製品では、レンズ毎にフィルター径がバラバラで、
これはユーザー側からすると、特殊フィルターの使いまわし
などが極めてやりにくい。
本レンズは、ミラーレス・マニアックス名玉編第4回で
「未所有レンズだが、ランキング入り可能性がある」と
紹介した。
結局、記事掲載後の2017年頃の購入になったのだが、
確かに悪い性能のレンズではなく、コスパについても、
定価や中古の相場が割高なニコンレンズにしては、まあ
良い方だとは思う。
が、MF操作性の弱点が大きく、残念ながら名玉ランキング
入りレンズには成り得ないと思う。
なお、フルサイズ機の普及により、この手のAPS-C機専用
レンズは将来的に相場の下落が大きくなる可能性がある、
そうなってくれば勿論コスパは良くなる。
本レンズよりも性能的に遥かに上回るSONY DT35/1.8が、
1万円を切る安価な中古相場である事からすると、本レンズ
も本来ならば、そのあたりの価格が価値からすると適正だ。
そうならないで高価なのは、ニコンというブランドであり、
あまり納得の行く話では無い。
まあ、1万円台前半程度迄で買えるのであれば、コスパが良い
レンズと見なす事はできるであろう。税込み18000円の購入
価格だと、ちょっと高く思う。ちなみに私が購入後、相場が
高騰して2万円台前半にもなってしまっていたが、さらにその後
2018年頃からは(フルサイズ機ユーザーの比率が増えたからか?)
相場は急落傾向で、1万円台前半と買い頃だ。
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さて、次のシステム、
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(新品購入価格 6,000円)
カメラは、OLYMPUS E-410 (4/3機)
ミラーレス・マニアックス記事では未紹介の
2009年発売のMFティルト型トイレンズ(以下MUSE)
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(ミラーレス第11回,第14回,第40回,ハイコスパ第7回)
を紹介している、それは、本レンズより2~3年早い
2006年末頃の発売であるが、そのレンズにあった蛇腹の
周辺のガイドレールが、本MUSEには無い。
この為、操作性が劣るように思うかも知れないが、実際の
ところ、3Gのガイドレール方式は操作性が煩雑すぎて
使い難く、むしろガイドレールを用いないで、手の形のみ
で撮影する技法の方が簡便であった。
MUSEでもその技法で撮影が可能である。
あと、3GとMUSEの大きな違いは、MUSEでは、
「オプティック(光学)レンズユニット」が交換式となり
同一焦点距離ながら、4種類のユニットが発売された。
具体的には、ダブルグラス、シングルグラス、プラスチック、
ゾーンプレート(&ピンホール)の4種であり、それぞれ
描写の「ユルさ」が異なっている。
今回使用の「プラスチック」は、LOMO および HOLGAの
プラスチック(トイ)レンズを参考に設計されたユニット
であり、かなりユルい感じの、トイレンズ風の写りを
得る事ができる。
なお、現代でも、これらの一部のユニットや、他の様々な
効果を持つユニットが販売されているが、MUSE対応ではなく、
新型の「コンポーザーPRO」対応になっている。
また、3Gでの定価約4万円から、代理店変更等により、
MUSEは各ユニットで概ね1万円台と安価になっている。
今回のMUSE(プラスチック)は、2016年頃の購入だが、
既に生産中止になっていて、かつフォーサーズマウント
での在庫処分品であったので、新品で約6000円と安価に
入手する事ができた。
フォーサーズマウントは既に終焉していて、レンズの
継続使用は難しいのであるが、まだ同マウントの一眼レフは
私は使用しているし、いざとなればμ4/3等へのマウント
変換アダプターがあるので、特に問題は無い。
(注:トイレンズ以外の、電子接点つきの4/3レンズは、
簡易マウントアダプターでは、絞りもピントも動かずに
使用できず、電子アダプターを使う必要がある)
さて、旧来の記事で紹介していた3Gは、本MUSEと同じ
50mm/f2なのだが、3Gはダブルグラス型の固定光学系で
すなわち、最もユルさが無い(はっきり写る)仕様だ。
本MUSE(プラスチック)は、そのユルい写りが特徴と
言えるであろう、つまりトイレンズ相当である。
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かつて、レンズ販売において同一焦点距離で開放F値の差で
ラインナップを構成した事なら、いくらでも前例があるが、
画質の差でラインナップを組んだ例は、本LENSBABY が
史上初だったかも知れない。
絞りだが、3Gとまったく同様の「マグネット絞り」を
レンズ外部から交換するタイプだ。
3Gでは、F5.6の絞りを標準的に使用しているが、
本MUSEでは、ユル目の描写を強調する為にも若干
明るめの絞りを中心にした方が楽しいかも知れない。
この絞り交換操作は屋外で都度行うのは面倒である為、
一般的には撮影前に、ある程度決め打ちで交換しておく。
なお、開放のF2とかにしてしまうと、極めてユルい写りが
得られる半面、今度は日中ではシャッター速度オーバー
になってしまう恐れがあるが、本MUSEでは、φ37mmの
フィルター枠が存在するので、ステップアップリングを
介して一般的な小口径ND(減光)フィルターを装着可だ。
ちなみに、3Gもφ37mmのフィルターが装着可能であるが
ピント微調整機能があり、ステップアップリングを使うと
微調整ヘリコイドが当たって動かなくなる、そのため
正規の37mm径フィルターしか使用できない。
ところが、φ37mmの写真用レンズは数が少なく、
例えば、OLYMPUS M.Zuiko(45mm/f1.8等)の、珍しい
小型レンズだけだ、よって写真用フィルターでここまで
径が小さいものが売られている状況もあまり目にせず、
あっても保護フィルター程度だ。
ND(減光)フィルター等は、取り寄せとか、受注生産とか、
ビデオカメラ用などの付属品から探す等の処置が必要だ。
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基本的にはトイレンズの類であろう。
あくまで遊びの用途にしか使えない。
それから、極めて操作が難しいレンズであり、かつティルト
の原理を理解していないと使いこなせないレンズである。
ただし、マニアック度やエンジョイ度は高いレンズで
あるので、8000円程度以下で入手できるのであれば、
コスパは良いと言えるであろう。
ともかく難しいレンズなので、マニア向けとしておこう。
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さて、次のシステム
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(A08)(中古購入価格 33,000円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
2004年発売のAF超望遠ズームレンズ。
ミラーレス・マニアックス第65回記事で紹介のレンズと
同型だが、本レンズはマウント違いである。
前レンズはα用マウントで中古49,800円の購入価格で
あったが、本レンズはニコンマウントで中古33,000円と、
相場がかなり安価になってからの購入だ。
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と書いたのだが、先年、その価格帯のものが出てきたので、
株取引で言うところの「ナンピン買い」を行った次第だ。
ちなみに「ナンピン買い」とは、保有株価が下がった際に、
その株を買い増しして、平均取得単価を下げる事だ。
株取引のみならず、スーパーでの食品安売りの際等でも
日常的に行っている事ではあるが、カメラやレンズで、
それをする人は珍しいかも知れない・・汗
つまり、これで2本のレンズの平均購入価格が約4万円強と
なった事になり、「前に、レンズを高く買ってしまった」
という問題点が概ね解消できている。
本レンズはドラゴンボート競技撮影用だが、過酷な環境での
撮影なので、故障対応を含め予備レンズが必要な状況だ。
異マウントで、より安価な中古が出たら、それも買い増し
して、さらに平均購入価格を下げるかも知れない。
例えば次にもう1度2万円台で買えば、本レンズの適正価値
=3万円台前半 に平均取得価格が到達する。
まあでも、旧型のTAMRON AF200-400mm/f5.6 (75D)
(ミラーレス第71回、ハイコスパ第23回)も、依然2本
健在だ、あまり超望遠ズームを増やしてもしかたがない。
ただ、近年では超望遠ズームはテレ端が600mmばかりと
なってしまい、ハンドリングが悪かった状況で、注目すべき
は、2017年にSIGMAおよびTAMRONより発売された軽量の
100-400mmだ(両者は後日紹介予定)
なお、本ブログでは、ごく当たり前の話であるが、
これらの超望遠ズームの使用環境は100%手持ち撮影であり、
三脚は一切使用しない。
従って600mmクラスでは、長時間の手持ち撮影が困難な為、
購入もしていない。
まあつまり「重すぎて持っていられないレンズは買わない」
という単純な話である。
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ズームとしては、最軽量の1200g台である事だ。
実重量は約1290gだが、三脚座を外せるのでもう少し軽く
なる、これは三脚座が外せない望遠端400mmの前モデル
75D(1210g)よりも、むしろ軽量かも知れない。
レンズの太さは細い、前モデル75Dはズーム全域でF5.6
という大きな長所があったが、本A08は望遠端でF6.3まで
低下する。
大きな口径比を持たさずに軽量化したのかも知れないが、
前玉のみ肥大化し、フィルターサイズは、75Dのφ77mm
に対し、φ86mmと大きい。
これくらいのフィルター径となると、保護用フィルターに
してもかなり高価であり、あまり好ましくない。
ちなみに保護用フィルターを使用する場合のコストの
持論は、「レンズ購入価格の5%まで」である。
これ以上高価な比率となると保護という意味的には過剰だ。
33000円の本レンズの場合、適正価格は1650円となるが、
残念ながらφ86mmフィルターは、中古でも、この値段で
購入するのは困難であり、最低でも2000円台になってしまう。
なお、後継機A011のフィルター径は、さらに大きなφ95mm
となる。もし保護フィルターの中古が見つからない場合、
ぞの新品価格は8000円~15000円もする。
これでは、同レンズを仮に7万円で中古購入したとしても、
保護フィルターの価格がレンズ代の15~20%にも達する。
ちょっとそれでは過剰なので、保護フィルター無しで使う
という選択肢もあるかもしれないが、レンズをかなり丁寧
に扱わないとならないので、撮影状況によっては困難だ。
つまり、最初から保護フィルター購入代を、中古購入価格に
追加で予定しておかなくてはならない。
あるいは、各口径の保護フィルターを最低1枚つづだけ
保有して、レンズを使うたびに付け替えて持ち出すか・・
しかし、それもかなり面倒な話だ。
フィルターの余談ばかりになったが、まあ重要な事である、
皆、保護フィルターのコストは、あまり意識していない
かも知れないが、レンズ本体の値段と同様に購入予算への
影響が大きいのだ。
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不満は無い。旧モデル75Dも総合的には悪くなかったが、
遠距離で解像感が不足気味になる弱点があり、F8程度に
少し絞って使うが、それだと当然シャッター速度低下が
厳しいので、中距離や被写体の解像感が少なくても問題が
ない場合は絞りを開けるなどの頻繁な操作が必要であった。
本レンズA08では、あまりそのあたりに配慮しなくても、
そこそこの解像感が得られている。
「超音波モーターが入っていないのでAFが遅い」という
向きもあるかも知れないが、超望遠の遠距離被写体では、
多くの場合MFで無限遠近辺のピント微調整だけで事足りる。
むしろAFが動いてしまうと、無限遠に復帰するまでのタイム
ロスがあるので、無限遠限定ではMFの方が速く撮影が可能だ。
ただし、本レンズA08は、ズームリングとピントリングが
独立回転式なので、MF操作性は非常に悪い。
旧モデル75Dは直進ズーム方式であったので、レンズ前方の
ピントリングを持ちながらレンズを引き出すという、荒技が
使える、この構造であればズーミングとMFを同時に行えるのだ。
ただし、超望遠での直進ズームはレンズ全長の変化と共に
重量バランスもかなり変化するので、それを保って撮影する
技法は上級者向けだ。
本レンズの場合、MF操作性の弱点があるので、MFばかりにも
頼らず、AFで無限遠に仮ロックしておくという使用法も
適正であろう。
なお、超望遠で中距離被写体を多用するケース、例えば
動物園や野鳥、スポーツ競技撮影等の場合は、AFが速い事は
確かにメリットであるが、それでもAFだけで事足りるという
ケースも多くない、そうした場合は、状況に応じてMFとAFの
使い分けが必須となる。
手ブレ補正機能は無いが、十分なシャッター速度が得られて
いれば超望遠レンズでも、あまり問題にはならない。
特に夏の日中屋外等の高輝度環境では、手ブレ補正は不要だ。
また、近年の高級機では、AUTO-ISO時の低速限界設定の
手動調整が可能な機種も多く、これを被写体状況に応じて
適宜高めておけば、手ブレ補正の代用に十分になり得る。
いずれにしても、レンズに弱点があっても、何らかの
回避技法が必ず存在する、レンズやカメラの性能だけに
受動的に頼っているような撮影技法では、基本的にはNG
なのだ。
そして、本レンズは、ニコンFマウントでも、かろうじて
絞り環が存在していた時代のレンズであるので、
アダプター等で他社機に装着して使う事は容易だ。
が、上記MF操作性の弱点があるので、あまりその使い方は
推奨できない。
まあでも、基本的に描写力に優れる良いレンズだ、価格が
3万円前後であれば、コスパは良いと見なす事ができる。
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次は、今回ラストのシステム
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(新品購入価格 90,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックスでは未紹介だったが、
以前に特集記事を書いた事がある。
2016年発売の中国製MF単焦点中望遠レンズである。
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を搭載した希少なレンズであるということだが、その
意味については、当該LAOWA105特集記事をはじめ、
ミラーレス・マニアックス第17回「特集 STF vs APD」や、
匠の写真用語辞典第3回記事、あるいは、かなり昔の
STFレンズ関連記事でも詳しく書いてあるので、今回は
その詳細は割愛する。(近々、また特集記事を掲載予定)
長所は勿論、その「ボケ質」である。
MINOLTA(SONY) STF135/2.8が唯一のアポダイゼーションで
あった1998~2014年までは、それを「史上最強のボケ味」
と称するメディアもあったが、現在では各社から類似仕様の
レンズが4本も出ている。
「じゃあどれが史上最強なのか?」というのは無意味な
質問だ、各々のアポダイゼーション・レンズは仕様も用途も
まるで異なる、必要ならば、それぞれの目的に応じて
複数の「最強レンズ」を買うしか無いではないか・・
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いくらなんでも「ガラスと金属の塊が10万円もするのか?」
という疑問が残る。
同じ中国製の似たような仕様の中一光学Creator 85mm/f2
(ハイコスパ第23回記事)であれば、新品で約2万円だ。
つまり、本レンズの「付加価値」であれば、値段が高くでも
売れる訳だ。現代においては、価格は、そういう風に決まる。
開発費を企画(販売)本数で割って、それが償却可能で
あれば、その高付加価値レンズの開発にゴーサインがかかる。
これは市場を見た「マーケットイン」型の製品企画であり、
20世紀の工業製品においては、それは「プロダクトアウト」型
であって、そこでの「定価は原価の何倍」のような値付けの
公式は、もはや現代では成り立たないのである。
ところが、ここが皆、理解できていない。ユーザー層は皆、
ユ「高い商品は、高級な部品を使っていて、高性能だから
高価なのでしょう?」との大誤解を常に持っている。
いつまでも、この現代の「市場の仕組み」が理解できないで
いると、ユーザーが損をする(無駄に高い商品を買う)事に
なるので、ここは全ユーザーが絶対に理解しなくてはならない。
まあしかし、実のところ、4本のアポダイゼーション・レンズ
の中では本レンズが最も安価だ、他はいずれも20万円前後
もする。
高額な開発費と少ない販売本数が非常にアンバランスなのだ。
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105mmレンズで最短90cmは、さほど悪いスペックでは無いが、
ボケの綺麗さを活かして、マクロレンズ的な用途を狙うと
すると、もう少し寄れて欲しい。まあでも、そのあたりは、
今回利用のNEX-7のようなミラーレス機を使えば、デジタル
拡大機能が使え、心理的不満は若干緩和する。
また、特集記事では書かなかったが、アポダイゼーション系
レンズは、一度使うと「やみつき」になりやすい点がある。
描写力が極めて高いので、レンズの性能に頼りたくなって
しまうのだ。
ただ、ほとんどの状況でボケが綺麗な点は良い事なのだが、
ボケ質破綻回避などを行う必要が殆ど無いので、ある意味
テクニカルな要素が少ない、なので、綺麗な写真が撮れても
「レンズに撮らされているように思える」という、微妙な
弱点が存在する。つまり、段々と楽しめなくなってくる。
なので、正直言えば、アポダイゼーション・レンズは
「常用する」という感覚にはあまりなれないのだ。
大きく重いレンズばかりなので、「面倒なのでSTF(APD)は
今日はやめておくか」と、趣味撮影の場合は、そんな気持ち
になりやすい。
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トータルでは決してコスパが良いというレンズにはならない。
この手のレンズを購入しようとする場合は、その辺りを
色々と良く考えて決断する必要があると思う。
まあでも、どうしても欲しいのであれば金額の多寡はあまり
関係無い、「唯一のもの」という仕様は、マニアにとっては
最大の付加価値(製品の魅力)なのだ。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回も未紹介のレンズを掲載予定である。