一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」や
「本ブログ独自の写真用語」を解説するシリーズ記事。
![c0032138_18112775.jpg]()
今回は前記事に引き続き「画質や絵作り」のサブカテゴリーの
Part 2から始めるが、記事後半からは別のカテゴリーとなる。
なお、本シリーズ記事は「用語辞典」という触れ込みではあるが、
アイウエオ順やアルファベット順に用語が並んでいる訳ではなく、
殆どランダムである。その理由は一部の内容については、まず
事前に他の項目を理解または参照しないと、次に進めないからだ。
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<画質・絵作り> Part 2
★スイートスポット
やや特殊性のある一般用語。
この用語もややこしい。
本来の意味は、テニスラケットやゴルフクラブ等において、
そこに球を当てると良く飛ぶ、という意味で広まった用語だ。
写真においては、ティルトレンズ(光軸を意図的に傾けて
ピント面の角度を変える)の使用法から一部のユーザー間で
広まった用語だ。
![c0032138_18112756.jpg]()
ティルトレンズは、または「アオリレンズ」と呼ばれ、
銀塩の中大判フィルムを使う蛇腹カメラ等では、被写界深度が
浅くなる為、集合写真や商品写真を撮る際、被写体全体に
ピントが合い難い。
こういう場合に、蛇腹等を用いて、ピント面を僅かに傾かせ、
集合写真の人物の多くに、または傾いた商品の全体にピント
を当てる機材・技法が主な用途であった。
しかし、ティルトレンズを業務用途以外のアート的表現に
用いる事が1990年代~2000年代にかけ流行し、そこでは
業務用途とは全く逆に、画面内のごく一部にだけピントを
合わせて、他は全部ボカしてしまう撮影技法(逆アオリ)が
主となった。
こうして撮った写真は、「ミニチュア風」「ジオラマ風」
に見えるとして評判になり、その技法専門のアーティストも
現れ、一般ユーザーにおいても、高価な業務用ティルト
レンズの他、比較的安価なLENSBABY等のティルトレンズが
普及していった。
![c0032138_18112767.jpg]()
アート系用途においては、ピントを合わせる(ピントが合って
いる)部分を画面内で(構図的、作画意図的に)決定する
必要がある、その部分の事を「スイートスポット」と呼ぶ
ようになった訳だ。
![c0032138_18112700.jpg]()
その後、この用語は、こうしたやや特殊な撮影分野において
一般的に広まり定着した次第だ。
![c0032138_18112638.jpg]()
注意点であるが、「アオリ(煽り)」とは、ティルトと
シフトの(操作の)総称である。しかし両者の光学的原理
や効能は、ずいぶんと異なるので、どちらも「アオリ」と
言うのは極めて不自然だ。あくまで昔の時代の用語である。
現代では、少なくともティルトとシフトは明確に区別する。
この手の機能を持つ一眼レフ用交換レンズでは、絶対に
「アオリレンズ」等と曖昧な書き方はしない。
さらに、昔からティルトは上下方向のみの操作を指し、
左右方向はスィングと呼ばれる事もあるのだが、これらは、
大判カメラで三脚を立てて、カメラを絶対に横位置でしか
撮らなかった古い時代の用語だ。
現代では、デジタル一眼レフ等を手持ちで縦位置に構えた
状態でもティルト・シフト等の操作は可能な為、あまり
操作方向で細かく用語を分類しても無意味である。
もう、時代が違うのだから、いつまでも古い用語や定義に
拘っていてはならないと思う。
★収差
一般用語に近い専門用語。
![c0032138_18112626.jpg]()
この項目について詳しく説明するといくら文字数があっても
足りない、1つは収差には様々な種類があり、もう1つは個々の
収差の原因や改善手法等の技術的内容は、極めて専門的であり、
一般ユーザーが知るべきレベルを遥かに超えているからだ。
理解も困難であり、理工系大卒を超える数学的・工学的な
知識が必要とされ、世の中のほんの一部の人しか理解出来ない。
それに、私も光学設計の専門書等を色々と読んで一応勉強はして
いるが、レンズ設計者でも無いかぎり、専門技術的なノウハウ
を持てる筈もなく、結局、他のところにある情報をそのまま
転載するだけのような形になってしまう。
本ブログには「できるだけ1次情報を発信する」という命題が
あり、つまり、自身が経験的に知った情報やノウハウを主体に
して書いていきたい訳であり、他に書いてある情報をそのまま
横流しするだけのようなスタンスを取る事はまず無いのだ。
それに、そもそも、ちゃんと「収差」について、簡便かつ
正確に書いてある資料など、まず皆無である。
「収差」の件に限らず、様々な技術や理論を、難解な書き方で
しか説明出来ない、という状態は、特に「研究者」や「専門家」
等において極めて多いが、決して褒められた話では無い。
![c0032138_18120550.jpg]()
で、収差とは、ごく簡単に言えばレンズの欠点である。
だが、ちょっとその事を知っているからと言って、
初級中級層が「このレンズは色収差が大きくていかん」と
いった、にわか仕込みの知識だけで語れるような簡単な
技術分野では決して無いのだ。
それにオールドレンズを使う際ならいざ知らず、現代の新鋭
単焦点レンズなどは、ほとんどの収差は実用上では全く気に
ならないレベルに収まっている。
あるいは、仮に収差が気になるレンズがあったとしても、
その収差を回避しながら使ったり、逆用してしまうのが
上級者的な発想である。
つまり他で述べた「カメラの(色味等の)欠点を回避できない
のは利用者自身の責任」の話と同様、レンズの欠点は利用者側で
回避するなり利用するなり選択する必要がある、と言う事だ。
さて、これだけではあまりに概念的な話ばかりなので、
いちおう、レンズの実用上においても必ず知っておかなければ
ならない著名な収差について、1つだけ述べておく。
・球面収差
レンズを通った(点)光源は、本来1つの点(焦点)に
収束するべきである。その焦点の位置にフィルムや
センサーがあれば、それで明瞭な像が得られるからだ。
しかし、レンズには球面収差があり、これにより光源からの
光は同じ距離の焦点には収束せず、前後にバラついてしまう。
レンズ設計上、これはできるだけ補正するのが良いが、逆に
意図的に多くの球面収差を発生させる事で、焦点がぼやけた
映像効果が得られる「ソフト(軟焦点)レンズ」となる。
![c0032138_18120581.jpg]()
球面収差は絞り込む事で減少するので、ソフトレンズを
使う際のソフト量は、絞り値で調整する事が可能だ。
なお、1950年代位の古い写真用レンズでは、一般レンズ
であっても絞りが開放近くでは、球面収差による軟焦点化や
背景ボケの劣化が酷くなるものがある。そうであれば、
むしろそれを逆用し、個性的な描写を楽しむのも良い。
(例:キルフィット テレキラー 150mm/F3.5
下写真、ハイコスパ第19回記事等で紹介)
![c0032138_18120569.jpg]()
それから、安価なズームレンズ等によくある「歪曲収差」に
関しては、その概念の理解が誰にでも容易であり、また、
四角い被写体等を撮影する等で、誰にでも評価が簡単に出来る
為、この検証だけを行って「このレンズは収差が少ない」等の
単純すぎる評価を行っているケースを、一般ユーザーから
専門的評価者にいたるまで、実に良く見かける。
しかし、前述のように「収差」には様々な種類があって、
その全てを光学設計の専門家以外の、一般層のレベルで理解や
解析をする事は非常に困難だ。
設計側でも、他の収差の補正を主眼とする為に「歪曲収差」が
やむなく残った、というレンズ設計コンセプトかもしれない。
(なお、歪曲収差は、カメラ内機能やPCでの編集で補正が可能で
ある為、諸収差の中では、重要度があまり高く無いと思う)
よって「歪曲収差」のみに神経質になる必要は全く無い事を
ここで述べておく。(現に、CCTV用/マシンビジョン用レンズ
では製品検査等を主眼とする為、「歪曲収差」のみ良く補正
されているが、「像面湾曲」が酷く、平面撮影でかつ中央部しか
使えない場合もある。そうした単用途のレンズは一般的な写真
撮影には適さないケースが多々ある)
それと「歪曲収差」と同様に「周辺光量落ち(周辺減光)」
も、ユーザーレベルでわかりやすい為、同様にレンズの欠陥と
評価されてしまうケースがある。が、これも特に目くじらを
立てて気にする必要は無いのではなかろうか?
むしろ写真表現として好まれる要素すらある。
![c0032138_18112094.jpg]()
(上写真は、「歪曲収差」と「周辺減光」が出ている例)
いずれにしても「収差」の理解については、非常に高度かつ
専門的な知識や、その補正の為の設計ノウハウ等が必要だ。
レンズ設計者等では無い一般層が安直に収差について語って
いる状況は、どうにも「にわか仕込み」に見えて格好悪い。
★絞り込み回折現象
やや専門的な一般用語。
他の呼び名としては「小絞りボケ」とも。
まずこれは、デジタルカメラで良く起こる現象であり、
絞りを絞り込んでいくと、ある程度までは、収差が減り、
被写界深度も深くなり、よりシャープな画像が得られるのだが
あまりに絞り込み過ぎると(それはレンズ毎やカメラとの
組み合わせによっても限界値は変わる)、光が回折して
しっかり解像せず、むしろボケた印象の画像になる現象だ。
![c0032138_18120532.jpg]()
画素ピッチが狭いカメラ(=小さいセンサーで画素数が多い
コンパクト機等)ではさらに起こりやすいと言われている。
銀塩時代においては、アナログなので画素ピッチという
概念は無いが、それでも被写界深度を計算する際での
「許容錯乱円」(35mm判フィルムで、約30μm)が、だいたい
それに相当すると思って良いだろう。
(注:デジタル一眼レフやミラーレス機では、だいたい
数μmが画素ピッチとなる→第2回記事参照)
で、これが大きい場合は、絞りこみ回折現象は出にくい
と言われている。
つまり銀塩時代は、大きく絞り込んでも、シャープな
映像になるだけで、絞りこみ回折現象は殆ど起こらなかった。
余談だが、1930年代にアンセル・アダムス等の写真家により
結成された「f/64」という写真家グループがあった。
これは大判カメラを使って、その最小絞り値のF64まで
絞り込む事で、シャープな写真を撮ろうとした事が由来に
なっていると聞く。
つまり、そこまで絞っても回折現象はなんら問題が無かった
という事だ。
なお、大判カメラなので、35mm判フィルムよりもずっと
面積が大きく、よって、被写界深度確保の意味でも、より
絞り込む必要があった為も理由だ。
一般の35mm判一眼レフ又はデジタル機用の交換レンズには、
そこまでの小絞り値はまずなく、最大でもF32程度までだ。
さらに余談だが、現代、f.64という商品名(シリーズ名)の
カメラバッグが発売されているが、これは上記のf/64写真家
グループがその商品名の由来だ、と商品広告で読んだ事がある。
さらなる余談、f/64グループの時代(または地域差による)は、
絞り値の表記は、小文字のf(主に焦点距離を表す)と
スラッシュを組み合わて書く方法も一般的であったと思われる。
本来の光学用語では、fは焦点距離でFが絞り値を表す。
f/の表記は、焦点距離を瞳径(口径)で割る(つまり口径比
であり、それがF値である)という意味からだと思われる。
そもそも口径比にはドイツ式やらアメリカ式やらの表記法があり
様々な表記法があるが故に、現代でも絞り値をfと小文字で表す
メーカーもある。(その場合は「f/」と書く事が多い)
いずれにしても曖昧なので、F=1:2.8のような記法もある。
写真業界では、残念ながら、このあたりが統一されていない。
私は、本ブログの記事では、正しい光学用語では無いとしても
便宜上小文字のfで絞り値を表すように記載するケースが殆どだ。
ただし、f2.8のようにスラッシュ無しで記載するか、または
焦点距離と開放F値を、50mm/f1.4のように省略して記す。
しかし、本シリーズ「用語辞典」記事では、用語を好き勝手に
書くわけにもいかず、本ブログでの記載コンセプトを外して
絞り値を、本来の光学用語での大文字の「F」で表記している。
さて、余談が長くなった、「絞りこみ回折現象」の件だが、
明確な理由や状況証拠があるならば、レンズ側で何らかの
技術的な対策をして、その問題を回避しても当然な筈である。
私はずっとそう思っていたのだが、最近になって、その改善
が困難である理由がわかってきた。
まず、普通、レンズの光学設計は「幾何光学理論」に
基づいて行われる。手計算でもそうだがPCによる(自動)光学
設計でもそれがベースとなっている模様だ。
ところが、回折現象のような微細な光の挙動を知るには
一般的な「幾何光学理論」では無理で、電磁波の振る舞いを
調べるような「波動光学理論」という計算が必要な模様なのだ。
で、この計算は、幾何光学理論の計算よりずっとずっと複雑で
コンピューターを使ったとしても、幾何光学の場合の何千倍も
何万倍(!)も時間がかかってしまう模様なのだ。
ただでさえ計算時間がかかる光学設計だ、それではやってられない
(シミュレーション不可能という事だ)スーパーコンピューター
用のプログラムを書いて、それで計算させないと無理であろう。
で、数万円程度の価格のレンズを開発する上で、一々そんな
大規模な計算をやって手間隙をかけて設計する訳にはいかない。
つまり、理論的には回折現象は回避可能かも知れないが、
実際には計算コスト(=それが開発コストにも繋がる)が
大きすぎて対処不能、という状況な模様なのだ。
そして、実のところ「絞りこみ回折現象」は、私の場合は
殆ど(全く)気にしない。あまりそんなにレンズを絞り込んで
撮る撮影スタイルでは無い事と、それから他の重要な事は、
画素ピッチがあまりに小さいカメラは使っていない事。これは
高価な上に高画素の必要度が少なく、コスパが悪いからだ。
という事で個人的には、この絞りこみ回折現象は無視している。
もしそれが明確に出る事がわかるようなシチュエーションが
あれば、次回からはそれを回避するような撮り方をすれば良い、
ただそれだけである。
つまり、レンズの弱点がわかるスキル(眼力や経験や知識)を
持つ中級者以上であれば、それを回避または逆用してしまう
事が上級者レベルに求められる技能だ、という訳だ。
それと、評価側で前述の「歪曲収差」や「小絞りボケ」等、
比較的簡単に出来る内容の評価だけを行って、レンズ全体の
性能を語るスタンスは”フェアでは無い”とも思っている。
★ぐるぐるボケ
やや特殊用語。
まずは写真を見てもらった方がわかりやすいであろう。
![c0032138_18122266.jpg]()
19世紀(1800年代)のスロバキアの学者「ペッツヴァール」は
今から170年以上も前の1840年代に三代目フォクトレンダー氏
(注:祖父が1756年にオーストリアにて「フォクトレンダー」社
を設立=世界最古の光学機器メーカー、後にドイツに移転。
ちなみに、1756年はモーツァルトの生誕年と同じ年であり、
マリー・アントワネット誕生の翌年だ(オスカルもだ・笑)
現代の日本のコシナ社は、1999年にその商標権を取得し、
フォクトレンダーのブランド名で高性能レンズを発売している)
・・と共に、当時としては極めて明るい開放F3.7の、
2群4枚型レンズを発明した。
このレンズは、その後「ペッツヴァール(型)レンズ」と
呼ばれた。口径比が明るく、製造も容易である事から
非常に長期に渡って多数の類似レンズが製造・販売された。
得に、このレンズは画面中心部が非常にシャープに写るので、
天体望遠鏡の分野ではスタンダードな設計技法となる。
(星や惑星を観察するには、中央部のみシャープならば良いし
背景ボケ質は全く関係が無い)
現代の望遠鏡や、安価なカメラ用望遠レンズでは、依然この
レンズ構成の物も多い。
弱点は、上に上げたような「ぐるぐるボケ」である。
像面湾曲(収差)および非点収差の関連で、背景のボケが
ぐるぐるに渦巻いて見える現象だ。
ただ、このボケ質は「欠点である」とも言い切れず、レンズ
中央部のシャープさとあいまって、得に人物撮影に好まれた
模様で、19世紀末から第二次大戦前(20世紀前半)位までは
定番であった模様だ(この時期20世紀前半では、テッサー型や
プラナー型のレンズ構成が普及しつつある時代だ)
(ちなみにもしかすると、昔のレンズには、こういう特性が
あった故に「日の丸構図」(必ず中央に主要被写体を置く事)
が推奨されたのかも知れない)
今から60年程前の20世紀中頃の国内外のオールドレンズでは
「ペッツバール型」では無くても、このぐるぐるボケが発生する
ものが多かったが、現代のレンズでは、像面湾曲等の収差は
良く補正されていて、まず発生しない。
1977年には、ミノルタより「MD VFC Rokkor 24mm/F2.8」
という、意図的に像面湾曲をコントロールできる唯一(?)の
レンズが発売されていた。中古市場で一度だけ見かけたが
超レアレンズで、かなり高価であったので購入していない、
これの写りがわかれば面白かったのだが・・
![c0032138_18122255.jpg]()
2010年代後半になって、KENKO LENSBABYより今回使用レンズの
TWIST 60mm/F2.5や「Burnside 35」が発売。他社においても、
「LOMO ペッツバールレンズ」等の「ぐるぐるボケ」の発生を
特徴としたレンズ群が、いくつか発売されている。
これらのレンズは、性能やレンズ構成からは、やや高価なので
コスパは悪いが、この特徴的な描写は、かなりユニークかつ
マニアックで面白い。
今後、流行の可能性もあるかも知れない。
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さて、記事の途中だが、ここからカテゴリーを変える。
<画像編集> Part 1
★画像処理と画像編集
一般用語だが、本ブログ独自の定義とする。
世間ではこの両者を混同している場合が非常に多い。
私はC言語等を用いてPC上での画像処理プログラムを組む事が
出来るのだが、例えば、以前WEBデザイン会社の社長さんと
技術的な打ち合わせをしていた際、何か複雑な画像の加工が
多数必要となって、少々困っているとの事で、
「では、画像処理を行ったらいかがですか?」と提案したところ、
「う~ん、ウチの女性スタッフでもPhotoShop位ならば使えます」
と、ちぐはぐな答えが返って来て話が通じなかった事があった。
本ブログでは、これらを明確に定義しよう。
・画像処理
PC等の計算機を用いて、入力した画像に演算(計算)処理を
掛け、異なる(用途の)画像として出力する事。
学術、工業、医療、AI等の分野での、画像解析や分析、
品質判定、病理診断、行動(動作)自動制御等の目的に
用いられる非常に専門的な(計算)処理である。
一般的には、人手(ひとで)が加わる事は無く、計算機で
自動的に処理されるものを指す、と定義する。
また、画像処理の演算の方法論(手順)を、アルゴリズム
と呼ぶ場合も多々ある。
カメラにおいては、オートホワイトバランス、コントラスト
補正、収差補正、ピーキング処理、エフェクト処理などが
これに相当するが、もう少し広く見れば、画面の輝度分布を
判断し、適切な露出値を算出する手段等も画像処理の一種だ。
・画像編集
PC等の計算機、またはカメラ本体を用い、撮影した画像に
なんらかの加工処理の「作業」を施して出力する事。
こちらは上記画像処理とは異なり、一般に人手が介在する。
一般にはPC上で「レタッチソフト」等を用いて行われる
編集作業とする。
具体的には、輝度補正、傾き補正、トリミング、色調整、
RAW現像、画像切り抜き、画像縮小、画像修正、画像合成等、
多数の「作業」がある。
カメラ内部においても若干の画像編集が可能な機種もあり、
トリミング、色抽出、フィルター効果、歪み補正、リサイズ
(縮小)、デジタルズーム等の機能が、これに当たるであろう。
![c0032138_18122212.jpg]()
まあつまり、「画像処理」というのは確かに全般的に意味が
通じる用語ではあるのだが、本ブログでは、人手を介さない
「自動」で行うものが「画像処理」であり。
人手を介する「作業」が「画像編集」であると定義する。
★解像度
一般用語だが、様々な分野で使われ、少々ややこしい。
ここでは一般的には「画素数」と呼ばれている物に限定するが、
それ以外にも正誤交えて色々と使われる(例:レンズの解像度
ここは誤解しやすいので、「解像力」の方が適正か?)
で、まず、「画素数」にはいくつか定義があって、以下となる
・総画素数=カメラの撮像センサーの持つ全体の画素数
・有効画素数=総画素数から、センサーの端などで使えない
部分を除いた画素数。
・記録(撮影)画素数=画像サイズ(解像度)を変えて撮影
した際など、実際に記録される画素数。
で、これらは全て1次元の値だ。
対して「解像度」は、少し定義が曖昧だ。
ここでは、一般的な画像に係わる解像度を取り上げる。
「画像解像度」(または画像サイズ)に関しては、
2次元の値になって、3000x2000、6000x4000等となる。
これの単位は通常はPixel(ピクセル)である。
デジタルカメラ初期の時代では「dot(ドット)」と呼ばれる
事も良くあったが、それは元々は印刷分野の単位で、現在は
その単位はプリンター等の分野にのみ限定されるだろう。
(印刷又はDTP(デスクトップ・パブリッシクング)分野では、
dotは「点」でゼロ次元、lineは「線」で1次元という定義だ)
で、画素数は、画像解像度(サイズ)の縦横の値を掛ければ
(乗算すれば)簡単に出てくる。
6000pixel x 4000pixelならば、2400万画素となる。
もうひとつ、「解像度」の用語は1次元の値の場合もあり、
PCのディスプレイ(モニター)等では「72dpi」等の
「解像度」があると言う。こちらは画像解像度とは
ちょと意味が違い、まずdpiとはドット・パー・インチ
(注:近年では、ppi=ピクセル・パー・インチも使われる)
の事で、「1インチ(2.54cm)あたりに、いくつのドット
を分解して見れるか?または存在するか?」と言う意味だ。
同様に lpi(1インチあたりのライン(線)数)も、
プリンターやスキャナー分野で良く使われる用語(単位)だ。
これらもまた、印刷やDTP分野と密接に関連し、PCモニター
等と、ほぼ同じ意味の定義である。
ただし、印刷やDTPの世界では、PCモニター等よりも、
要求される解像度が高い(350dpiや600dpiとか)
★必要解像度
やや一般的な用語。
これは、PC等のモニターで画像(写真)を見る場合、
または写真を印刷(プリント)して見る場合に、
どれくらいの「画像解像度」が必要なのか?という話だ。
まずPC等の場合は、モニターのサイズ(何インチとか)で
色々面倒な計算が必要そうに思われるだろうが、実は
比較的簡単で、PC(モニター)の設定で「画面解像度」という
ものがあると思うが、まずは、それを参照すれば良い。
近年のPCは画面解像度も上がり、縦横比も色々あるので
ややこしいので、少し前のWindows XPの時代での一般的な
解像度、1024pixel x 768 pixel (XGA)を例にあげておく。
まあ、近年のPCではもう少し画面解像度が高いが、何倍も
変わるものでは無い。
もう1つ、一般的なTV放送(ハイビジョンTV)の例だが、
これは1920x1080(pix)となる。
これらのモニターの画面画素数は、高々75万~200万画素であり、
一般的なデジタルカメラの最小記録画素数(数百万画素)で
撮影しても、それより遥かに小さい。
なので、PC上で表示する上では、デジカメの画素数は全然
余裕である。
対して、印刷の場合は、一般的にもっと大きな画像解像度が
必要となる。これは印刷サイズとdpiとの関係式で決まる。
dpiと画像解像度の変換(=必要解像度の算出)は、さほど
難しくは無く、例えば
「A4用紙に印刷するには、何万画素の写真が必要か?」
という計算においては・・
まずA4用紙の縦横のサイズは 21.0×29.7cmである。
これをインチに直すと、約8.27×約11.69インチとなる。
で、実はA4サイズ用紙の縦横比はカメラでの縦横比と
異なるので、ここからはA4の横サイズに合わせて考える。
すると「11.69インチ」が注目する数字だ。
さらには、そこにどれくらいの(印刷)解像度で印刷するか
を決めなければならない、一般的な高画質印刷では、
これは 350dpiとなるので、これで計算しよう。
後は簡単だ、11.69に350を掛ければ良い、
これは約4000pixelとなる。
それがカメラ側で必要な画像解像度の横幅ピクセル数だ。
ここから計算を簡略化する為、マイクロフォーサーズ機で
撮影した場合としよう。μ4/3機の写真の一般的な縦横比は
4対3である。だから横が4000pixならば縦は3000pix
つまり記録画素数が、4000x3000で1200万画素あれば良い。
一般的ユーザーの写真印刷の用途においては、最大でも
A3(420x297mm)あるいは、ワイド四つ切り(366×254mm)
用紙位迄であろう。
これらを350dpiで印刷する場合、概算だが2400万画素あれば
十分である。
なお、350dpiと言うのは実際の印刷では用途によっては
ややオーバースペック気味だ。
「175~350dpiの範囲が適切」と書かれている文献も見かける、
そうであれば上記の必要画素数は、もう少し減らす事も出来る。
![c0032138_18122226.jpg]()
本来、撮影する際には写真の用途およびその必要画素数を意識し、
無駄にならない記録画素数で撮影するのが望ましいのだが、
初級中級層では、必要画素数がわからない、いや、場合により
デジタル画像の基本原理がわかっていない為、常にカメラの
最大の記録画素数で撮影してしまう。
これでは、メモリーカードの容量限界 カメラの連写速度低下、
連写後のカードへの書き込みの遅さ、連続連写可能枚数の低下、
撮影後のPCやHDD等への転送速度の遅さや、それらの容量の増加
(例:バックアップ用のHDDがすぐいっぱいになる等)
画像編集(レタッチ)時の処理の重さ、WORD等の文書ファイル
に画像を貼り付けた際のファイル容量の極端な増加(=重い)
ネットワークを用いたWEB,SNS,クラウド等への画像転送の遅さ、
など、あらゆる面で冗長で、無駄が出てきてしまう。
写真を PC(SNS)で使う限定や、WORD等で使う業務レポート用
であればカメラの最低記録画素数(数百万画素)で撮れば十分だ。
(これらの用途では、さらに画像縮小して使う事も普通だ)
----
さて、今回の記事はこのあたりまでで、
次回は、「画像編集Part 2」から続けよう。
「本ブログ独自の写真用語」を解説するシリーズ記事。

Part 2から始めるが、記事後半からは別のカテゴリーとなる。
なお、本シリーズ記事は「用語辞典」という触れ込みではあるが、
アイウエオ順やアルファベット順に用語が並んでいる訳ではなく、
殆どランダムである。その理由は一部の内容については、まず
事前に他の項目を理解または参照しないと、次に進めないからだ。
----
<画質・絵作り> Part 2
★スイートスポット
やや特殊性のある一般用語。
この用語もややこしい。
本来の意味は、テニスラケットやゴルフクラブ等において、
そこに球を当てると良く飛ぶ、という意味で広まった用語だ。
写真においては、ティルトレンズ(光軸を意図的に傾けて
ピント面の角度を変える)の使用法から一部のユーザー間で
広まった用語だ。

銀塩の中大判フィルムを使う蛇腹カメラ等では、被写界深度が
浅くなる為、集合写真や商品写真を撮る際、被写体全体に
ピントが合い難い。
こういう場合に、蛇腹等を用いて、ピント面を僅かに傾かせ、
集合写真の人物の多くに、または傾いた商品の全体にピント
を当てる機材・技法が主な用途であった。
しかし、ティルトレンズを業務用途以外のアート的表現に
用いる事が1990年代~2000年代にかけ流行し、そこでは
業務用途とは全く逆に、画面内のごく一部にだけピントを
合わせて、他は全部ボカしてしまう撮影技法(逆アオリ)が
主となった。
こうして撮った写真は、「ミニチュア風」「ジオラマ風」
に見えるとして評判になり、その技法専門のアーティストも
現れ、一般ユーザーにおいても、高価な業務用ティルト
レンズの他、比較的安価なLENSBABY等のティルトレンズが
普及していった。

いる)部分を画面内で(構図的、作画意図的に)決定する
必要がある、その部分の事を「スイートスポット」と呼ぶ
ようになった訳だ。

一般的に広まり定着した次第だ。

シフトの(操作の)総称である。しかし両者の光学的原理
や効能は、ずいぶんと異なるので、どちらも「アオリ」と
言うのは極めて不自然だ。あくまで昔の時代の用語である。
現代では、少なくともティルトとシフトは明確に区別する。
この手の機能を持つ一眼レフ用交換レンズでは、絶対に
「アオリレンズ」等と曖昧な書き方はしない。
さらに、昔からティルトは上下方向のみの操作を指し、
左右方向はスィングと呼ばれる事もあるのだが、これらは、
大判カメラで三脚を立てて、カメラを絶対に横位置でしか
撮らなかった古い時代の用語だ。
現代では、デジタル一眼レフ等を手持ちで縦位置に構えた
状態でもティルト・シフト等の操作は可能な為、あまり
操作方向で細かく用語を分類しても無意味である。
もう、時代が違うのだから、いつまでも古い用語や定義に
拘っていてはならないと思う。
★収差
一般用語に近い専門用語。

足りない、1つは収差には様々な種類があり、もう1つは個々の
収差の原因や改善手法等の技術的内容は、極めて専門的であり、
一般ユーザーが知るべきレベルを遥かに超えているからだ。
理解も困難であり、理工系大卒を超える数学的・工学的な
知識が必要とされ、世の中のほんの一部の人しか理解出来ない。
それに、私も光学設計の専門書等を色々と読んで一応勉強はして
いるが、レンズ設計者でも無いかぎり、専門技術的なノウハウ
を持てる筈もなく、結局、他のところにある情報をそのまま
転載するだけのような形になってしまう。
本ブログには「できるだけ1次情報を発信する」という命題が
あり、つまり、自身が経験的に知った情報やノウハウを主体に
して書いていきたい訳であり、他に書いてある情報をそのまま
横流しするだけのようなスタンスを取る事はまず無いのだ。
それに、そもそも、ちゃんと「収差」について、簡便かつ
正確に書いてある資料など、まず皆無である。
「収差」の件に限らず、様々な技術や理論を、難解な書き方で
しか説明出来ない、という状態は、特に「研究者」や「専門家」
等において極めて多いが、決して褒められた話では無い。

だが、ちょっとその事を知っているからと言って、
初級中級層が「このレンズは色収差が大きくていかん」と
いった、にわか仕込みの知識だけで語れるような簡単な
技術分野では決して無いのだ。
それにオールドレンズを使う際ならいざ知らず、現代の新鋭
単焦点レンズなどは、ほとんどの収差は実用上では全く気に
ならないレベルに収まっている。
あるいは、仮に収差が気になるレンズがあったとしても、
その収差を回避しながら使ったり、逆用してしまうのが
上級者的な発想である。
つまり他で述べた「カメラの(色味等の)欠点を回避できない
のは利用者自身の責任」の話と同様、レンズの欠点は利用者側で
回避するなり利用するなり選択する必要がある、と言う事だ。
さて、これだけではあまりに概念的な話ばかりなので、
いちおう、レンズの実用上においても必ず知っておかなければ
ならない著名な収差について、1つだけ述べておく。
・球面収差
レンズを通った(点)光源は、本来1つの点(焦点)に
収束するべきである。その焦点の位置にフィルムや
センサーがあれば、それで明瞭な像が得られるからだ。
しかし、レンズには球面収差があり、これにより光源からの
光は同じ距離の焦点には収束せず、前後にバラついてしまう。
レンズ設計上、これはできるだけ補正するのが良いが、逆に
意図的に多くの球面収差を発生させる事で、焦点がぼやけた
映像効果が得られる「ソフト(軟焦点)レンズ」となる。

使う際のソフト量は、絞り値で調整する事が可能だ。
なお、1950年代位の古い写真用レンズでは、一般レンズ
であっても絞りが開放近くでは、球面収差による軟焦点化や
背景ボケの劣化が酷くなるものがある。そうであれば、
むしろそれを逆用し、個性的な描写を楽しむのも良い。
(例:キルフィット テレキラー 150mm/F3.5
下写真、ハイコスパ第19回記事等で紹介)

関しては、その概念の理解が誰にでも容易であり、また、
四角い被写体等を撮影する等で、誰にでも評価が簡単に出来る
為、この検証だけを行って「このレンズは収差が少ない」等の
単純すぎる評価を行っているケースを、一般ユーザーから
専門的評価者にいたるまで、実に良く見かける。
しかし、前述のように「収差」には様々な種類があって、
その全てを光学設計の専門家以外の、一般層のレベルで理解や
解析をする事は非常に困難だ。
設計側でも、他の収差の補正を主眼とする為に「歪曲収差」が
やむなく残った、というレンズ設計コンセプトかもしれない。
(なお、歪曲収差は、カメラ内機能やPCでの編集で補正が可能で
ある為、諸収差の中では、重要度があまり高く無いと思う)
よって「歪曲収差」のみに神経質になる必要は全く無い事を
ここで述べておく。(現に、CCTV用/マシンビジョン用レンズ
では製品検査等を主眼とする為、「歪曲収差」のみ良く補正
されているが、「像面湾曲」が酷く、平面撮影でかつ中央部しか
使えない場合もある。そうした単用途のレンズは一般的な写真
撮影には適さないケースが多々ある)
それと「歪曲収差」と同様に「周辺光量落ち(周辺減光)」
も、ユーザーレベルでわかりやすい為、同様にレンズの欠陥と
評価されてしまうケースがある。が、これも特に目くじらを
立てて気にする必要は無いのではなかろうか?
むしろ写真表現として好まれる要素すらある。

いずれにしても「収差」の理解については、非常に高度かつ
専門的な知識や、その補正の為の設計ノウハウ等が必要だ。
レンズ設計者等では無い一般層が安直に収差について語って
いる状況は、どうにも「にわか仕込み」に見えて格好悪い。
★絞り込み回折現象
やや専門的な一般用語。
他の呼び名としては「小絞りボケ」とも。
まずこれは、デジタルカメラで良く起こる現象であり、
絞りを絞り込んでいくと、ある程度までは、収差が減り、
被写界深度も深くなり、よりシャープな画像が得られるのだが
あまりに絞り込み過ぎると(それはレンズ毎やカメラとの
組み合わせによっても限界値は変わる)、光が回折して
しっかり解像せず、むしろボケた印象の画像になる現象だ。

コンパクト機等)ではさらに起こりやすいと言われている。
銀塩時代においては、アナログなので画素ピッチという
概念は無いが、それでも被写界深度を計算する際での
「許容錯乱円」(35mm判フィルムで、約30μm)が、だいたい
それに相当すると思って良いだろう。
(注:デジタル一眼レフやミラーレス機では、だいたい
数μmが画素ピッチとなる→第2回記事参照)
で、これが大きい場合は、絞りこみ回折現象は出にくい
と言われている。
つまり銀塩時代は、大きく絞り込んでも、シャープな
映像になるだけで、絞りこみ回折現象は殆ど起こらなかった。
余談だが、1930年代にアンセル・アダムス等の写真家により
結成された「f/64」という写真家グループがあった。
これは大判カメラを使って、その最小絞り値のF64まで
絞り込む事で、シャープな写真を撮ろうとした事が由来に
なっていると聞く。
つまり、そこまで絞っても回折現象はなんら問題が無かった
という事だ。
なお、大判カメラなので、35mm判フィルムよりもずっと
面積が大きく、よって、被写界深度確保の意味でも、より
絞り込む必要があった為も理由だ。
一般の35mm判一眼レフ又はデジタル機用の交換レンズには、
そこまでの小絞り値はまずなく、最大でもF32程度までだ。
さらに余談だが、現代、f.64という商品名(シリーズ名)の
カメラバッグが発売されているが、これは上記のf/64写真家
グループがその商品名の由来だ、と商品広告で読んだ事がある。
さらなる余談、f/64グループの時代(または地域差による)は、
絞り値の表記は、小文字のf(主に焦点距離を表す)と
スラッシュを組み合わて書く方法も一般的であったと思われる。
本来の光学用語では、fは焦点距離でFが絞り値を表す。
f/の表記は、焦点距離を瞳径(口径)で割る(つまり口径比
であり、それがF値である)という意味からだと思われる。
そもそも口径比にはドイツ式やらアメリカ式やらの表記法があり
様々な表記法があるが故に、現代でも絞り値をfと小文字で表す
メーカーもある。(その場合は「f/」と書く事が多い)
いずれにしても曖昧なので、F=1:2.8のような記法もある。
写真業界では、残念ながら、このあたりが統一されていない。
私は、本ブログの記事では、正しい光学用語では無いとしても
便宜上小文字のfで絞り値を表すように記載するケースが殆どだ。
ただし、f2.8のようにスラッシュ無しで記載するか、または
焦点距離と開放F値を、50mm/f1.4のように省略して記す。
しかし、本シリーズ「用語辞典」記事では、用語を好き勝手に
書くわけにもいかず、本ブログでの記載コンセプトを外して
絞り値を、本来の光学用語での大文字の「F」で表記している。
さて、余談が長くなった、「絞りこみ回折現象」の件だが、
明確な理由や状況証拠があるならば、レンズ側で何らかの
技術的な対策をして、その問題を回避しても当然な筈である。
私はずっとそう思っていたのだが、最近になって、その改善
が困難である理由がわかってきた。
まず、普通、レンズの光学設計は「幾何光学理論」に
基づいて行われる。手計算でもそうだがPCによる(自動)光学
設計でもそれがベースとなっている模様だ。
ところが、回折現象のような微細な光の挙動を知るには
一般的な「幾何光学理論」では無理で、電磁波の振る舞いを
調べるような「波動光学理論」という計算が必要な模様なのだ。
で、この計算は、幾何光学理論の計算よりずっとずっと複雑で
コンピューターを使ったとしても、幾何光学の場合の何千倍も
何万倍(!)も時間がかかってしまう模様なのだ。
ただでさえ計算時間がかかる光学設計だ、それではやってられない
(シミュレーション不可能という事だ)スーパーコンピューター
用のプログラムを書いて、それで計算させないと無理であろう。
で、数万円程度の価格のレンズを開発する上で、一々そんな
大規模な計算をやって手間隙をかけて設計する訳にはいかない。
つまり、理論的には回折現象は回避可能かも知れないが、
実際には計算コスト(=それが開発コストにも繋がる)が
大きすぎて対処不能、という状況な模様なのだ。
そして、実のところ「絞りこみ回折現象」は、私の場合は
殆ど(全く)気にしない。あまりそんなにレンズを絞り込んで
撮る撮影スタイルでは無い事と、それから他の重要な事は、
画素ピッチがあまりに小さいカメラは使っていない事。これは
高価な上に高画素の必要度が少なく、コスパが悪いからだ。
という事で個人的には、この絞りこみ回折現象は無視している。
もしそれが明確に出る事がわかるようなシチュエーションが
あれば、次回からはそれを回避するような撮り方をすれば良い、
ただそれだけである。
つまり、レンズの弱点がわかるスキル(眼力や経験や知識)を
持つ中級者以上であれば、それを回避または逆用してしまう
事が上級者レベルに求められる技能だ、という訳だ。
それと、評価側で前述の「歪曲収差」や「小絞りボケ」等、
比較的簡単に出来る内容の評価だけを行って、レンズ全体の
性能を語るスタンスは”フェアでは無い”とも思っている。
★ぐるぐるボケ
やや特殊用語。
まずは写真を見てもらった方がわかりやすいであろう。

今から170年以上も前の1840年代に三代目フォクトレンダー氏
(注:祖父が1756年にオーストリアにて「フォクトレンダー」社
を設立=世界最古の光学機器メーカー、後にドイツに移転。
ちなみに、1756年はモーツァルトの生誕年と同じ年であり、
マリー・アントワネット誕生の翌年だ(オスカルもだ・笑)
現代の日本のコシナ社は、1999年にその商標権を取得し、
フォクトレンダーのブランド名で高性能レンズを発売している)
・・と共に、当時としては極めて明るい開放F3.7の、
2群4枚型レンズを発明した。
このレンズは、その後「ペッツヴァール(型)レンズ」と
呼ばれた。口径比が明るく、製造も容易である事から
非常に長期に渡って多数の類似レンズが製造・販売された。
得に、このレンズは画面中心部が非常にシャープに写るので、
天体望遠鏡の分野ではスタンダードな設計技法となる。
(星や惑星を観察するには、中央部のみシャープならば良いし
背景ボケ質は全く関係が無い)
現代の望遠鏡や、安価なカメラ用望遠レンズでは、依然この
レンズ構成の物も多い。
弱点は、上に上げたような「ぐるぐるボケ」である。
像面湾曲(収差)および非点収差の関連で、背景のボケが
ぐるぐるに渦巻いて見える現象だ。
ただ、このボケ質は「欠点である」とも言い切れず、レンズ
中央部のシャープさとあいまって、得に人物撮影に好まれた
模様で、19世紀末から第二次大戦前(20世紀前半)位までは
定番であった模様だ(この時期20世紀前半では、テッサー型や
プラナー型のレンズ構成が普及しつつある時代だ)
(ちなみにもしかすると、昔のレンズには、こういう特性が
あった故に「日の丸構図」(必ず中央に主要被写体を置く事)
が推奨されたのかも知れない)
今から60年程前の20世紀中頃の国内外のオールドレンズでは
「ペッツバール型」では無くても、このぐるぐるボケが発生する
ものが多かったが、現代のレンズでは、像面湾曲等の収差は
良く補正されていて、まず発生しない。
1977年には、ミノルタより「MD VFC Rokkor 24mm/F2.8」
という、意図的に像面湾曲をコントロールできる唯一(?)の
レンズが発売されていた。中古市場で一度だけ見かけたが
超レアレンズで、かなり高価であったので購入していない、
これの写りがわかれば面白かったのだが・・

TWIST 60mm/F2.5や「Burnside 35」が発売。他社においても、
「LOMO ペッツバールレンズ」等の「ぐるぐるボケ」の発生を
特徴としたレンズ群が、いくつか発売されている。
これらのレンズは、性能やレンズ構成からは、やや高価なので
コスパは悪いが、この特徴的な描写は、かなりユニークかつ
マニアックで面白い。
今後、流行の可能性もあるかも知れない。
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さて、記事の途中だが、ここからカテゴリーを変える。
<画像編集> Part 1
★画像処理と画像編集
一般用語だが、本ブログ独自の定義とする。
世間ではこの両者を混同している場合が非常に多い。
私はC言語等を用いてPC上での画像処理プログラムを組む事が
出来るのだが、例えば、以前WEBデザイン会社の社長さんと
技術的な打ち合わせをしていた際、何か複雑な画像の加工が
多数必要となって、少々困っているとの事で、
「では、画像処理を行ったらいかがですか?」と提案したところ、
「う~ん、ウチの女性スタッフでもPhotoShop位ならば使えます」
と、ちぐはぐな答えが返って来て話が通じなかった事があった。
本ブログでは、これらを明確に定義しよう。
・画像処理
PC等の計算機を用いて、入力した画像に演算(計算)処理を
掛け、異なる(用途の)画像として出力する事。
学術、工業、医療、AI等の分野での、画像解析や分析、
品質判定、病理診断、行動(動作)自動制御等の目的に
用いられる非常に専門的な(計算)処理である。
一般的には、人手(ひとで)が加わる事は無く、計算機で
自動的に処理されるものを指す、と定義する。
また、画像処理の演算の方法論(手順)を、アルゴリズム
と呼ぶ場合も多々ある。
カメラにおいては、オートホワイトバランス、コントラスト
補正、収差補正、ピーキング処理、エフェクト処理などが
これに相当するが、もう少し広く見れば、画面の輝度分布を
判断し、適切な露出値を算出する手段等も画像処理の一種だ。
・画像編集
PC等の計算機、またはカメラ本体を用い、撮影した画像に
なんらかの加工処理の「作業」を施して出力する事。
こちらは上記画像処理とは異なり、一般に人手が介在する。
一般にはPC上で「レタッチソフト」等を用いて行われる
編集作業とする。
具体的には、輝度補正、傾き補正、トリミング、色調整、
RAW現像、画像切り抜き、画像縮小、画像修正、画像合成等、
多数の「作業」がある。
カメラ内部においても若干の画像編集が可能な機種もあり、
トリミング、色抽出、フィルター効果、歪み補正、リサイズ
(縮小)、デジタルズーム等の機能が、これに当たるであろう。

通じる用語ではあるのだが、本ブログでは、人手を介さない
「自動」で行うものが「画像処理」であり。
人手を介する「作業」が「画像編集」であると定義する。
★解像度
一般用語だが、様々な分野で使われ、少々ややこしい。
ここでは一般的には「画素数」と呼ばれている物に限定するが、
それ以外にも正誤交えて色々と使われる(例:レンズの解像度
ここは誤解しやすいので、「解像力」の方が適正か?)
で、まず、「画素数」にはいくつか定義があって、以下となる
・総画素数=カメラの撮像センサーの持つ全体の画素数
・有効画素数=総画素数から、センサーの端などで使えない
部分を除いた画素数。
・記録(撮影)画素数=画像サイズ(解像度)を変えて撮影
した際など、実際に記録される画素数。
で、これらは全て1次元の値だ。
対して「解像度」は、少し定義が曖昧だ。
ここでは、一般的な画像に係わる解像度を取り上げる。
「画像解像度」(または画像サイズ)に関しては、
2次元の値になって、3000x2000、6000x4000等となる。
これの単位は通常はPixel(ピクセル)である。
デジタルカメラ初期の時代では「dot(ドット)」と呼ばれる
事も良くあったが、それは元々は印刷分野の単位で、現在は
その単位はプリンター等の分野にのみ限定されるだろう。
(印刷又はDTP(デスクトップ・パブリッシクング)分野では、
dotは「点」でゼロ次元、lineは「線」で1次元という定義だ)
で、画素数は、画像解像度(サイズ)の縦横の値を掛ければ
(乗算すれば)簡単に出てくる。
6000pixel x 4000pixelならば、2400万画素となる。
もうひとつ、「解像度」の用語は1次元の値の場合もあり、
PCのディスプレイ(モニター)等では「72dpi」等の
「解像度」があると言う。こちらは画像解像度とは
ちょと意味が違い、まずdpiとはドット・パー・インチ
(注:近年では、ppi=ピクセル・パー・インチも使われる)
の事で、「1インチ(2.54cm)あたりに、いくつのドット
を分解して見れるか?または存在するか?」と言う意味だ。
同様に lpi(1インチあたりのライン(線)数)も、
プリンターやスキャナー分野で良く使われる用語(単位)だ。
これらもまた、印刷やDTP分野と密接に関連し、PCモニター
等と、ほぼ同じ意味の定義である。
ただし、印刷やDTPの世界では、PCモニター等よりも、
要求される解像度が高い(350dpiや600dpiとか)
★必要解像度
やや一般的な用語。
これは、PC等のモニターで画像(写真)を見る場合、
または写真を印刷(プリント)して見る場合に、
どれくらいの「画像解像度」が必要なのか?という話だ。
まずPC等の場合は、モニターのサイズ(何インチとか)で
色々面倒な計算が必要そうに思われるだろうが、実は
比較的簡単で、PC(モニター)の設定で「画面解像度」という
ものがあると思うが、まずは、それを参照すれば良い。
近年のPCは画面解像度も上がり、縦横比も色々あるので
ややこしいので、少し前のWindows XPの時代での一般的な
解像度、1024pixel x 768 pixel (XGA)を例にあげておく。
まあ、近年のPCではもう少し画面解像度が高いが、何倍も
変わるものでは無い。
もう1つ、一般的なTV放送(ハイビジョンTV)の例だが、
これは1920x1080(pix)となる。
これらのモニターの画面画素数は、高々75万~200万画素であり、
一般的なデジタルカメラの最小記録画素数(数百万画素)で
撮影しても、それより遥かに小さい。
なので、PC上で表示する上では、デジカメの画素数は全然
余裕である。
対して、印刷の場合は、一般的にもっと大きな画像解像度が
必要となる。これは印刷サイズとdpiとの関係式で決まる。
dpiと画像解像度の変換(=必要解像度の算出)は、さほど
難しくは無く、例えば
「A4用紙に印刷するには、何万画素の写真が必要か?」
という計算においては・・
まずA4用紙の縦横のサイズは 21.0×29.7cmである。
これをインチに直すと、約8.27×約11.69インチとなる。
で、実はA4サイズ用紙の縦横比はカメラでの縦横比と
異なるので、ここからはA4の横サイズに合わせて考える。
すると「11.69インチ」が注目する数字だ。
さらには、そこにどれくらいの(印刷)解像度で印刷するか
を決めなければならない、一般的な高画質印刷では、
これは 350dpiとなるので、これで計算しよう。
後は簡単だ、11.69に350を掛ければ良い、
これは約4000pixelとなる。
それがカメラ側で必要な画像解像度の横幅ピクセル数だ。
ここから計算を簡略化する為、マイクロフォーサーズ機で
撮影した場合としよう。μ4/3機の写真の一般的な縦横比は
4対3である。だから横が4000pixならば縦は3000pix
つまり記録画素数が、4000x3000で1200万画素あれば良い。
一般的ユーザーの写真印刷の用途においては、最大でも
A3(420x297mm)あるいは、ワイド四つ切り(366×254mm)
用紙位迄であろう。
これらを350dpiで印刷する場合、概算だが2400万画素あれば
十分である。
なお、350dpiと言うのは実際の印刷では用途によっては
ややオーバースペック気味だ。
「175~350dpiの範囲が適切」と書かれている文献も見かける、
そうであれば上記の必要画素数は、もう少し減らす事も出来る。

無駄にならない記録画素数で撮影するのが望ましいのだが、
初級中級層では、必要画素数がわからない、いや、場合により
デジタル画像の基本原理がわかっていない為、常にカメラの
最大の記録画素数で撮影してしまう。
これでは、メモリーカードの容量限界 カメラの連写速度低下、
連写後のカードへの書き込みの遅さ、連続連写可能枚数の低下、
撮影後のPCやHDD等への転送速度の遅さや、それらの容量の増加
(例:バックアップ用のHDDがすぐいっぱいになる等)
画像編集(レタッチ)時の処理の重さ、WORD等の文書ファイル
に画像を貼り付けた際のファイル容量の極端な増加(=重い)
ネットワークを用いたWEB,SNS,クラウド等への画像転送の遅さ、
など、あらゆる面で冗長で、無駄が出てきてしまう。
写真を PC(SNS)で使う限定や、WORD等で使う業務レポート用
であればカメラの最低記録画素数(数百万画素)で撮れば十分だ。
(これらの用途では、さらに画像縮小して使う事も普通だ)
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さて、今回の記事はこのあたりまでで、
次回は、「画像編集Part 2」から続けよう。