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【玄人専科】匠の写真用語辞典(6)~画像編 Part 2

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一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」や
「本ブログ独自の写真用語」を解説するシリーズ記事。
c0032138_18112775.jpg
今回は前記事に引き続き「画質や絵作り」のサブカテゴリーの
Part 2から始めるが、記事後半からは別のカテゴリーとなる。

なお、本シリーズ記事は「用語辞典」という触れ込みではあるが、
アイウエオ順やアルファベット順に用語が並んでいる訳ではなく、
殆どランダムである。その理由は一部の内容については、まず
事前に他の項目を理解または参照しないと、次に進めないからだ。

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<画質・絵作り> Part 2

★スイートスポット
 やや特殊性のある一般用語。

 この用語もややこしい。
 本来の意味は、テニスラケットやゴルフクラブ等において、
 そこに球を当てると良く飛ぶ、という意味で広まった用語だ。

 写真においては、ティルトレンズ(光軸を意図的に傾けて
 ピント面の角度を変える)の使用法から一部のユーザー間で
 広まった用語だ。
c0032138_18112756.jpg
 ティルトレンズは、または「アオリレンズ」と呼ばれ、
 銀塩の中大判フィルムを使う蛇腹カメラ等では、被写界深度が
 浅くなる為、集合写真や商品写真を撮る際、被写体全体に
 ピントが合い難い。
 こういう場合に、蛇腹等を用いて、ピント面を僅かに傾かせ、
 集合写真の人物の多くに、または傾いた商品の全体にピント
 を当てる機材・技法が主な用途であった。

 しかし、ティルトレンズを業務用途以外のアート的表現に
 用いる事が1990年代~2000年代にかけ流行し、そこでは
 業務用途とは全く逆に、画面内のごく一部にだけピントを
 合わせて、他は全部ボカしてしまう撮影技法(逆アオリ)が
 主となった。
 こうして撮った写真は、「ミニチュア風」「ジオラマ風」
 に見えるとして評判になり、その技法専門のアーティストも
 現れ、一般ユーザーにおいても、高価な業務用ティルト
 レンズの他、比較的安価なLENSBABY等のティルトレンズが
 普及していった。
c0032138_18112767.jpg
 アート系用途においては、ピントを合わせる(ピントが合って
 いる)部分を画面内で(構図的、作画意図的に)決定する
 必要がある、その部分の事を「スイートスポット」と呼ぶ
 ようになった訳だ。
c0032138_18112700.jpg
 その後、この用語は、こうしたやや特殊な撮影分野において
 一般的に広まり定着した次第だ。
c0032138_18112638.jpg
 注意点であるが、「アオリ(煽り)」とは、ティルトと
 シフトの(操作の)総称である。しかし両者の光学的原理
 や効能は、ずいぶんと異なるので、どちらも「アオリ」と
 言うのは極めて不自然だ。あくまで昔の時代の用語である。

 現代では、少なくともティルトとシフトは明確に区別する。
 この手の機能を持つ一眼レフ用交換レンズでは、絶対に
「アオリレンズ」等と曖昧な書き方はしない。
 さらに、昔からティルトは上下方向のみの操作を指し、
 左右方向はスィングと呼ばれる事もあるのだが、これらは、
 大判カメラで三脚を立てて、カメラを絶対に横位置でしか
 撮らなかった古い時代の用語だ。
 現代では、デジタル一眼レフ等を手持ちで縦位置に構えた
 状態でもティルト・シフト等の操作は可能な為、あまり
 操作方向で細かく用語を分類しても無意味である。
 もう、時代が違うのだから、いつまでも古い用語や定義に
 拘っていてはならないと思う。

★収差
 一般用語に近い専門用語。
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 この項目について詳しく説明するといくら文字数があっても
 足りない、1つは収差には様々な種類があり、もう1つは個々の
 収差の原因や改善手法等の技術的内容は、極めて専門的であり、
 一般ユーザーが知るべきレベルを遥かに超えているからだ。

 理解も困難であり、理工系大卒を超える数学的・工学的な
 知識が必要とされ、世の中のほんの一部の人しか理解出来ない。

 それに、私も光学設計の専門書等を色々と読んで一応勉強はして
 いるが、レンズ設計者でも無いかぎり、専門技術的なノウハウ
 を持てる筈もなく、結局、他のところにある情報をそのまま
 転載するだけのような形になってしまう。

 本ブログには「できるだけ1次情報を発信する」という命題が
 あり、つまり、自身が経験的に知った情報やノウハウを主体に
 して書いていきたい訳であり、他に書いてある情報をそのまま
 横流しするだけのようなスタンスを取る事はまず無いのだ。

 それに、そもそも、ちゃんと「収差」について、簡便かつ
 正確に書いてある資料など、まず皆無である。
「収差」の件に限らず、様々な技術や理論を、難解な書き方で
 しか説明出来ない、という状態は、特に「研究者」や「専門家」
 等において極めて多いが、決して褒められた話では無い。
c0032138_18120550.jpg
 で、収差とは、ごく簡単に言えばレンズの欠点である。
 だが、ちょっとその事を知っているからと言って、
 初級中級層が「このレンズは色収差が大きくていかん」と
 いった、にわか仕込みの知識だけで語れるような簡単な
 技術分野では決して無いのだ。

 それにオールドレンズを使う際ならいざ知らず、現代の新鋭
 単焦点レンズなどは、ほとんどの収差は実用上では全く気に
 ならないレベルに収まっている。

 あるいは、仮に収差が気になるレンズがあったとしても、
 その収差を回避しながら使ったり、逆用してしまうのが
 上級者的な発想である。

 つまり他で述べた「カメラの(色味等の)欠点を回避できない
 のは利用者自身の責任」の話と同様、レンズの欠点は利用者側で
 回避するなり利用するなり選択する必要がある、と言う事だ。

 さて、これだけではあまりに概念的な話ばかりなので、
 いちおう、レンズの実用上においても必ず知っておかなければ
 ならない著名な収差について、1つだけ述べておく。

・球面収差
  レンズを通った(点)光源は、本来1つの点(焦点)に
  収束するべきである。その焦点の位置にフィルムや
  センサーがあれば、それで明瞭な像が得られるからだ。

  しかし、レンズには球面収差があり、これにより光源からの
  光は同じ距離の焦点には収束せず、前後にバラついてしまう。
  レンズ設計上、これはできるだけ補正するのが良いが、逆に
  意図的に多くの球面収差を発生させる事で、焦点がぼやけた
  映像効果が得られる「ソフト(軟焦点)レンズ」となる。
c0032138_18120581.jpg
  球面収差は絞り込む事で減少するので、ソフトレンズを
  使う際のソフト量は、絞り値で調整する事が可能だ。
 
  なお、1950年代位の古い写真用レンズでは、一般レンズ
  であっても絞りが開放近くでは、球面収差による軟焦点化や
  背景ボケの劣化が酷くなるものがある。そうであれば、
  むしろそれを逆用し、個性的な描写を楽しむのも良い。
 (例:キルフィット テレキラー 150mm/F3.5
  下写真、ハイコスパ第19回記事等で紹介)
c0032138_18120569.jpg
 それから、安価なズームレンズ等によくある「歪曲収差」に
 関しては、その概念の理解が誰にでも容易であり、また、
 四角い被写体等を撮影する等で、誰にでも評価が簡単に出来る
 為、この検証だけを行って「このレンズは収差が少ない」等の
 単純すぎる評価を行っているケースを、一般ユーザーから
 専門的評価者にいたるまで、実に良く見かける。

 しかし、前述のように「収差」には様々な種類があって、
 その全てを光学設計の専門家以外の、一般層のレベルで理解や
 解析をする事は非常に困難だ。
 設計側でも、他の収差の補正を主眼とする為に「歪曲収差」が
 やむなく残った、というレンズ設計コンセプトかもしれない。
(なお、歪曲収差は、カメラ内機能やPCでの編集で補正が可能で
 ある為、諸収差の中では、重要度があまり高く無いと思う)

 よって「歪曲収差」のみに神経質になる必要は全く無い事を
 ここで述べておく。(現に、CCTV用/マシンビジョン用レンズ
 では製品検査等を主眼とする為、「歪曲収差」のみ良く補正
 されているが、「像面湾曲」が酷く、平面撮影でかつ中央部しか
 使えない場合もある。そうした単用途のレンズは一般的な写真
 撮影には適さないケースが多々ある)

 それと「歪曲収差」と同様に「周辺光量落ち(周辺減光)」
 も、ユーザーレベルでわかりやすい為、同様にレンズの欠陥と
 評価されてしまうケースがある。が、これも特に目くじらを
 立てて気にする必要は無いのではなかろうか?
 むしろ写真表現として好まれる要素すらある。
c0032138_18112094.jpg
(上写真は、「歪曲収差」と「周辺減光」が出ている例)

 いずれにしても「収差」の理解については、非常に高度かつ
 専門的な知識や、その補正の為の設計ノウハウ等が必要だ。
 レンズ設計者等では無い一般層が安直に収差について語って
 いる状況は、どうにも「にわか仕込み」に見えて格好悪い。

★絞り込み回折現象
 やや専門的な一般用語。
 他の呼び名としては「小絞りボケ」とも。

 まずこれは、デジタルカメラで良く起こる現象であり、
 絞りを絞り込んでいくと、ある程度までは、収差が減り、
 被写界深度も深くなり、よりシャープな画像が得られるのだが
 あまりに絞り込み過ぎると(それはレンズ毎やカメラとの
 組み合わせによっても限界値は変わる)、光が回折して
 しっかり解像せず、むしろボケた印象の画像になる現象だ。
c0032138_18120532.jpg
 画素ピッチが狭いカメラ(=小さいセンサーで画素数が多い
 コンパクト機等)ではさらに起こりやすいと言われている。

 銀塩時代においては、アナログなので画素ピッチという
 概念は無いが、それでも被写界深度を計算する際での
「許容錯乱円」(35mm判フィルムで、約30μm)が、だいたい
 それに相当すると思って良いだろう。
(注:デジタル一眼レフやミラーレス機では、だいたい
 数μmが画素ピッチとなる→第2回記事参照)
 で、これが大きい場合は、絞りこみ回折現象は出にくい
 と言われている。

 つまり銀塩時代は、大きく絞り込んでも、シャープな
 映像になるだけで、絞りこみ回折現象は殆ど起こらなかった。

 余談だが、1930年代にアンセル・アダムス等の写真家により
 結成された「f/64」という写真家グループがあった。
 これは大判カメラを使って、その最小絞り値のF64まで
 絞り込む事で、シャープな写真を撮ろうとした事が由来に
 なっていると聞く。
 つまり、そこまで絞っても回折現象はなんら問題が無かった
 という事だ。
 なお、大判カメラなので、35mm判フィルムよりもずっと
 面積が大きく、よって、被写界深度確保の意味でも、より
 絞り込む必要があった為も理由だ。
 一般の35mm判一眼レフ又はデジタル機用の交換レンズには、
 そこまでの小絞り値はまずなく、最大でもF32程度までだ。

 さらに余談だが、現代、f.64という商品名(シリーズ名)の
 カメラバッグが発売されているが、これは上記のf/64写真家
 グループがその商品名の由来だ、と商品広告で読んだ事がある。

 さらなる余談、f/64グループの時代(または地域差による)は、
 絞り値の表記は、小文字のf(主に焦点距離を表す)と
 スラッシュを組み合わて書く方法も一般的であったと思われる。
 本来の光学用語では、fは焦点距離でFが絞り値を表す。
 f/の表記は、焦点距離を瞳径(口径)で割る(つまり口径比
 であり、それがF値である)という意味からだと思われる。

 そもそも口径比にはドイツ式やらアメリカ式やらの表記法があり
 様々な表記法があるが故に、現代でも絞り値をfと小文字で表す
 メーカーもある。(その場合は「f/」と書く事が多い)
 いずれにしても曖昧なので、F=1:2.8のような記法もある。
 写真業界では、残念ながら、このあたりが統一されていない。

 私は、本ブログの記事では、正しい光学用語では無いとしても
 便宜上小文字のfで絞り値を表すように記載するケースが殆どだ。
 ただし、f2.8のようにスラッシュ無しで記載するか、または
 焦点距離と開放F値を、50mm/f1.4のように省略して記す。

 しかし、本シリーズ「用語辞典」記事では、用語を好き勝手に
 書くわけにもいかず、本ブログでの記載コンセプトを外して
 絞り値を、本来の光学用語での大文字の「F」で表記している。

 さて、余談が長くなった、「絞りこみ回折現象」の件だが、
 明確な理由や状況証拠があるならば、レンズ側で何らかの
 技術的な対策をして、その問題を回避しても当然な筈である。
 私はずっとそう思っていたのだが、最近になって、その改善
 が困難である理由がわかってきた。

 まず、普通、レンズの光学設計は「幾何光学理論」に
 基づいて行われる。手計算でもそうだがPCによる(自動)光学
 設計でもそれがベースとなっている模様だ。

 ところが、回折現象のような微細な光の挙動を知るには
 一般的な「幾何光学理論」では無理で、電磁波の振る舞いを
 調べるような「波動光学理論」という計算が必要な模様なのだ。

 で、この計算は、幾何光学理論の計算よりずっとずっと複雑で
 コンピューターを使ったとしても、幾何光学の場合の何千倍も
 何万倍(!)も時間がかかってしまう模様なのだ。
 ただでさえ計算時間がかかる光学設計だ、それではやってられない
(シミュレーション不可能という事だ)スーパーコンピューター
 用のプログラムを書いて、それで計算させないと無理であろう。
 
 で、数万円程度の価格のレンズを開発する上で、一々そんな
 大規模な計算をやって手間隙をかけて設計する訳にはいかない。
 つまり、理論的には回折現象は回避可能かも知れないが、
 実際には計算コスト(=それが開発コストにも繋がる)が
 大きすぎて対処不能、という状況な模様なのだ。

 そして、実のところ「絞りこみ回折現象」は、私の場合は
 殆ど(全く)気にしない。あまりそんなにレンズを絞り込んで
 撮る撮影スタイルでは無い事と、それから他の重要な事は、
 画素ピッチがあまりに小さいカメラは使っていない事。これは
 高価な上に高画素の必要度が少なく、コスパが悪いからだ。
 
 という事で個人的には、この絞りこみ回折現象は無視している。
 もしそれが明確に出る事がわかるようなシチュエーションが
 あれば、次回からはそれを回避するような撮り方をすれば良い、
 ただそれだけである。

 つまり、レンズの弱点がわかるスキル(眼力や経験や知識)を
 持つ中級者以上であれば、それを回避または逆用してしまう
 事が上級者レベルに求められる技能だ、という訳だ。

 それと、評価側で前述の「歪曲収差」や「小絞りボケ」等、
 比較的簡単に出来る内容の評価だけを行って、レンズ全体の
 性能を語るスタンスは”フェアでは無い”とも思っている。

★ぐるぐるボケ
 やや特殊用語。

 まずは写真を見てもらった方がわかりやすいであろう。
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 19世紀(1800年代)のスロバキアの学者「ペッツヴァール」は
 今から170年以上も前の1840年代に三代目フォクトレンダー氏
(注:祖父が1756年にオーストリアにて「フォクトレンダー」社
 を設立=世界最古の光学機器メーカー、後にドイツに移転。
 ちなみに、1756年はモーツァルトの生誕年と同じ年であり、
 マリー・アントワネット誕生の翌年だ(オスカルもだ・笑)
 現代の日本のコシナ社は、1999年にその商標権を取得し、
 フォクトレンダーのブランド名で高性能レンズを発売している)


 ・・と共に、当時としては極めて明るい開放F3.7の、
 2群4枚型レンズを発明した。


 このレンズは、その後「ペッツヴァール(型)レンズ」と
 呼ばれた。口径比が明るく、製造も容易である事から
 非常に長期に渡って多数の類似レンズが製造・販売された。

 得に、このレンズは画面中心部が非常にシャープに写るので、
 天体望遠鏡の分野ではスタンダードな設計技法となる。
(星や惑星を観察するには、中央部のみシャープならば良いし
 背景ボケ質は全く関係が無い)
 現代の望遠鏡や、安価なカメラ用望遠レンズでは、依然この
 レンズ構成の物も多い。

 弱点は、上に上げたような「ぐるぐるボケ」である。
 像面湾曲(収差)および非点収差の関連で、背景のボケが
 ぐるぐるに渦巻いて見える現象だ。

 ただ、このボケ質は「欠点である」とも言い切れず、レンズ
 中央部のシャープさとあいまって、得に人物撮影に好まれた
 模様で、19世紀末から第二次大戦前(20世紀前半)位までは
 定番であった模様だ(この時期20世紀前半では、テッサー型や
 プラナー型のレンズ構成が普及しつつある時代だ)
(ちなみにもしかすると、昔のレンズには、こういう特性が
 あった故に「日の丸構図」(必ず中央に主要被写体を置く事)
 が推奨されたのかも知れない)

 今から60年程前の20世紀中頃の国内外のオールドレンズでは
「ペッツバール型」では無くても、このぐるぐるボケが発生する
 ものが多かったが、現代のレンズでは、像面湾曲等の収差は
 良く補正されていて、まず発生しない。

 1977年には、ミノルタより「MD VFC Rokkor 24mm/F2.8」
 という、意図的に像面湾曲をコントロールできる唯一(?)の
 レンズが発売されていた。中古市場で一度だけ見かけたが
 超レアレンズで、かなり高価であったので購入していない、
 これの写りがわかれば面白かったのだが・・
c0032138_18122255.jpg
 2010年代後半になって、KENKO LENSBABYより今回使用レンズの
 TWIST 60mm/F2.5や「Burnside 35」が発売。他社においても、
「LOMO ペッツバールレンズ」等の「ぐるぐるボケ」の発生を
 特徴としたレンズ群が、いくつか発売されている。
 これらのレンズは、性能やレンズ構成からは、やや高価なので
 コスパは悪いが、この特徴的な描写は、かなりユニークかつ
 マニアックで面白い。
 今後、流行の可能性もあるかも知れない。

----
さて、記事の途中だが、ここからカテゴリーを変える。

<画像編集> Part 1

★画像処理と画像編集
 一般用語だが、本ブログ独自の定義とする。
 
 世間ではこの両者を混同している場合が非常に多い。
 私はC言語等を用いてPC上での画像処理プログラムを組む事が
 出来るのだが、例えば、以前WEBデザイン会社の社長さんと
 技術的な打ち合わせをしていた際、何か複雑な画像の加工が
 多数必要となって、少々困っているとの事で、
「では、画像処理を行ったらいかがですか?」と提案したところ、
「う~ん、ウチの女性スタッフでもPhotoShop位ならば使えます」
 と、ちぐはぐな答えが返って来て話が通じなかった事があった。

 本ブログでは、これらを明確に定義しよう。

 ・画像処理
  PC等の計算機を用いて、入力した画像に演算(計算)処理を
  掛け、異なる(用途の)画像として出力する事。

  学術、工業、医療、AI等の分野での、画像解析や分析、
  品質判定、病理診断、行動(動作)自動制御等の目的に
  用いられる非常に専門的な(計算)処理である。

  一般的には、人手(ひとで)が加わる事は無く、計算機で
  自動的に処理されるものを指す、と定義する。
  また、画像処理の演算の方法論(手順)を、アルゴリズム
  と呼ぶ場合も多々ある。

  カメラにおいては、オートホワイトバランス、コントラスト
  補正、収差補正、ピーキング処理、エフェクト処理などが
  これに相当するが、もう少し広く見れば、画面の輝度分布を
  判断し、適切な露出値を算出する手段等も画像処理の一種だ。

 ・画像編集
  PC等の計算機、またはカメラ本体を用い、撮影した画像に
  なんらかの加工処理の「作業」を施して出力する事。
    
  こちらは上記画像処理とは異なり、一般に人手が介在する。
  一般にはPC上で「レタッチソフト」等を用いて行われる
  編集作業とする。
  具体的には、輝度補正、傾き補正、トリミング、色調整、
  RAW現像、画像切り抜き、画像縮小、画像修正、画像合成等、
  多数の「作業」がある。

  カメラ内部においても若干の画像編集が可能な機種もあり、
  トリミング、色抽出、フィルター効果、歪み補正、リサイズ
 (縮小)、デジタルズーム等の機能が、これに当たるであろう。
c0032138_18122212.jpg
 まあつまり、「画像処理」というのは確かに全般的に意味が
 通じる用語ではあるのだが、本ブログでは、人手を介さない
「自動」で行うものが「画像処理」であり。
 人手を介する「作業」が「画像編集」であると定義する。 

★解像度
 一般用語だが、様々な分野で使われ、少々ややこしい。

 ここでは一般的には「画素数」と呼ばれている物に限定するが、
 それ以外にも正誤交えて色々と使われる(例:レンズの解像度
 ここは誤解しやすいので、「解像力」の方が適正か?)

 で、まず、「画素数」にはいくつか定義があって、以下となる
 ・総画素数=カメラの撮像センサーの持つ全体の画素数
 ・有効画素数=総画素数から、センサーの端などで使えない
        部分を除いた画素数。
 ・記録(撮影)画素数=画像サイズ(解像度)を変えて撮影
        した際など、実際に記録される画素数。

 で、これらは全て1次元の値だ。 
 
 対して「解像度」は、少し定義が曖昧だ。
 ここでは、一般的な画像に係わる解像度を取り上げる。
「画像解像度」(または画像サイズ)に関しては、
 2次元の値になって、3000x2000、6000x4000等となる。
 これの単位は通常はPixel(ピクセル)である。

 デジタルカメラ初期の時代では「dot(ドット)」と呼ばれる
 事も良くあったが、それは元々は印刷分野の単位で、現在は
 その単位はプリンター等の分野にのみ限定されるだろう。
(印刷又はDTP(デスクトップ・パブリッシクング)分野では、
 dotは「点」でゼロ次元、lineは「線」で1次元という定義だ)

 で、画素数は、画像解像度(サイズ)の縦横の値を掛ければ
(乗算すれば)簡単に出てくる。
 6000pixel x 4000pixelならば、2400万画素となる。

 もうひとつ、「解像度」の用語は1次元の値の場合もあり、
 PCのディスプレイ(モニター)等では「72dpi」等の
「解像度」があると言う。こちらは画像解像度とは
 ちょと意味が違い、まずdpiとはドット・パー・インチ
(注:近年では、ppi=ピクセル・パー・インチも使われる)
 の事で、「1インチ(2.54cm)あたりに、いくつのドット
 を分解して見れるか?または存在するか?」と言う意味だ。
 同様に lpi(1インチあたりのライン(線)数)も、
 プリンターやスキャナー分野で良く使われる用語(単位)だ。
 これらもまた、印刷やDTP分野と密接に関連し、PCモニター
 等と、ほぼ同じ意味の定義である。
 ただし、印刷やDTPの世界では、PCモニター等よりも、
 要求される解像度が高い(350dpiや600dpiとか)

★必要解像度
 やや一般的な用語。

 これは、PC等のモニターで画像(写真)を見る場合、
 または写真を印刷(プリント)して見る場合に、
 どれくらいの「画像解像度」が必要なのか?という話だ。

 まずPC等の場合は、モニターのサイズ(何インチとか)で
 色々面倒な計算が必要そうに思われるだろうが、実は
 比較的簡単で、PC(モニター)の設定で「画面解像度」という
 ものがあると思うが、まずは、それを参照すれば良い。

 近年のPCは画面解像度も上がり、縦横比も色々あるので
 ややこしいので、少し前のWindows XPの時代での一般的な
 解像度、1024pixel x 768 pixel (XGA)を例にあげておく。
 まあ、近年のPCではもう少し画面解像度が高いが、何倍も
 変わるものでは無い。

 もう1つ、一般的なTV放送(ハイビジョンTV)の例だが、
 これは1920x1080(pix)となる。
 
 これらのモニターの画面画素数は、高々75万~200万画素であり、
 一般的なデジタルカメラの最小記録画素数(数百万画素)で
 撮影しても、それより遥かに小さい。
 なので、PC上で表示する上では、デジカメの画素数は全然
 余裕である。

 対して、印刷の場合は、一般的にもっと大きな画像解像度が
 必要となる。これは印刷サイズとdpiとの関係式で決まる。

 dpiと画像解像度の変換(=必要解像度の算出)は、さほど
 難しくは無く、例えば
「A4用紙に印刷するには、何万画素の写真が必要か?」
 という計算においては・・

 まずA4用紙の縦横のサイズは 21.0×29.7cmである。
 これをインチに直すと、約8.27×約11.69インチとなる。

 で、実はA4サイズ用紙の縦横比はカメラでの縦横比と
 異なるので、ここからはA4の横サイズに合わせて考える。
 すると「11.69インチ」が注目する数字だ。

 さらには、そこにどれくらいの(印刷)解像度で印刷するか
 を決めなければならない、一般的な高画質印刷では、
 これは 350dpiとなるので、これで計算しよう。
 後は簡単だ、11.69に350を掛ければ良い、
 これは約4000pixelとなる。
 それがカメラ側で必要な画像解像度の横幅ピクセル数だ。

 ここから計算を簡略化する為、マイクロフォーサーズ機で
 撮影した場合としよう。μ4/3機の写真の一般的な縦横比は
 4対3である。だから横が4000pixならば縦は3000pix
つまり記録画素数が、4000x3000で1200万画素あれば良い。
 
 一般的ユーザーの写真印刷の用途においては、最大でも
 A3(420x297mm)あるいは、ワイド四つ切り(366×254mm)
 用紙位迄であろう。
 これらを350dpiで印刷する場合、概算だが2400万画素あれば
 十分である。

 なお、350dpiと言うのは実際の印刷では用途によっては
 ややオーバースペック気味だ。
「175~350dpiの範囲が適切」と書かれている文献も見かける、
 そうであれば上記の必要画素数は、もう少し減らす事も出来る。
c0032138_18122226.jpg
 本来、撮影する際には写真の用途およびその必要画素数を意識し、
 無駄にならない記録画素数で撮影するのが望ましいのだが、
 初級中級層では、必要画素数がわからない、いや、場合により
 デジタル画像の基本原理がわかっていない為、常にカメラの
 最大の記録画素数で撮影してしまう。

 これでは、メモリーカードの容量限界 カメラの連写速度低下、
 連写後のカードへの書き込みの遅さ、連続連写可能枚数の低下、
 撮影後のPCやHDD等への転送速度の遅さや、それらの容量の増加
(例:バックアップ用のHDDがすぐいっぱいになる等)
 画像編集(レタッチ)時の処理の重さ、WORD等の文書ファイル
 に画像を貼り付けた際のファイル容量の極端な増加(=重い)
 ネットワークを用いたWEB,SNS,クラウド等への画像転送の遅さ、
 など、あらゆる面で冗長で、無駄が出てきてしまう。

 写真を PC(SNS)で使う限定や、WORD等で使う業務レポート用
 であればカメラの最低記録画素数(数百万画素)で撮れば十分だ。
(これらの用途では、さらに画像縮小して使う事も普通だ)

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さて、今回の記事はこのあたりまでで、
次回は、「画像編集Part 2」から続けよう。


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