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デジタル一眼レフ・クラッシックス(17)「NIKON Df」

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今回は2013年発売のフルサイズ機NIKON Dfを取り上げる。
レンズはTAMRON SP85mm/f1.8 Di VC USD (Model F016)
(他記事では未紹介)を使用する。

このシステムで撮影した写真を交えながら、Nikon Dfの特徴に
ついて紹介していこう。

まず最初に述べておかなければならない事がある。
本記事での本機Dfの評価は相当に厳しい状態になるという点だ。
「ニコン党」にとっては信じられない内容であろうが、これは
あくまで事実である、他社機と比べれば容易に実感できる事だ。

俗っぽい例を挙げれば「美人だから、と付き合ってみたら、
相当な悪女だった!」と言う事である(汗)
まあ、「美人」つまり、美しく格好良いカメラである事は、
本機Dfの最大の特徴ではある。
c0032138_20211457.jpg
さて、カメラの利用方法に関してはユーザー毎で様々であろう。
様々というのは、1つは使用レンズや主要被写体が何であるか?
又、撮影技法はどのようにするのか?

そして2つ目に重要な事は、利用者の撮影スキルである。
単純に言えば、初級者なのか上級者なのか?と言う事だ。

さらには3つ目として、その撮影は「業務用途」の撮影なのか 
あるいは完全なる「趣味の撮影」か?
まあ、そういった諸々の状況があるという事だ。
c0032138_20211463.jpg
それらの条件においても、カメラの評価は異なってくる、
しかし「人それぞれだから何とも言えない」と結論を濁す
論理は成り立たない筈だ、「絶対的価値観」は必ず存在する。
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まず、私の場合の本機Dfの用途を述べておく。

最大の目的は、銀塩名機のNIKON F4の代替である。
F4は旗艦機としては、あまり銀塩カメラらしく無いデザインで
好き嫌いがあるのと、AF性能が貧弱な故に不人気のカメラだった。
だが、私は高く評価するカメラである。
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F4の最大の魅力はMFレンズを使う際に最高性能を発揮できる点だ、
MFレンズであってもマルチパターン測光が使用可能で、勿論、
シャッター速度1/8000秒や高速連写性能はそのまま活用できる。
さらには、非Aiレンズもプレビューボタンを押す絞り込み測光で
絞り優先でもM露出でも使用可能だ。
ニコンにしては比較的優秀なスクリーンでピント合わせも容易で、
DXコード対応のネガフィルムを用いて絞り優先で撮れば、
露出補正、手動感度調整、シャッターダイヤルの全てに
「ロック機構」があると言う「重欠点」を、ほぼ回避できる。

つまり「F4の代替」というのは、高いレンズ汎用性を持ち、
MF中心での「趣味の撮影」において高性能が得られるカメラ
と言う事だ。

最も楽しみであった点は、本機Dfでの「非Aiレンズの使用」だ。

しかし、その点についてはミラーレス機でニコンFマウント用の
アダプターを使えば、別に苦労せずとも撮影が可能だ。
だがまあ、銀塩一眼のニコン機を彷彿させるデザインとアナログ
ライクな操作性を持つカメラを使った方がマニアックであろう。

非Aiレンズが使用できるNIKON機は、1988年のF4以来、
Dfは実に25年ぶりの登場なのだ。

さて、到着したNIKON Dfに早速非Aiレンズを装着してみよう。
c0032138_20202217.jpg
NIKON F4の場合は露出計連動レバーを倒す際にロックピンが
存在していたが、Dfではロックピンが省略してある。

「よしよし、良い傾向だ、何せニコンの旗艦機級には
 F3の時代以降、ずっと過剰なまでの”安全機構”が存在し、
 それは”重欠点”そのものであったからな・・」

しかしロック機構が無いのは、そこだけであって、露出補正や
シャッターダイヤルの一部の値、そして露出モード変更には、
銀塩旗艦機以来、あいかわらずの余計なロック機構が存在
している。

そしてISO感度ダイヤルにもロックがある、これは困ったものだ!
c0032138_20202251.jpg
そう、「ISO常時変更可能」というのも、本機Dfに求めた条件で
あったのだ。それが可能なデジタルカメラは数える程しか無い。

NIKON Df,RICOH GXR,SONY NEX-7系/α7系,FUJIFILM X-T1系
PENTAXのハイパー操作系搭載機のSVモード時(例:K10D,K-5)
PENTAXで機能ダイヤルを持つ機種(例:KP)
アサイナブルダイヤルにISO感度を割りふれるコンパクト機 
(例:FUJIFILM XQ1)

他にも若干あったかとは思うが、私は上記にあげた機種群を全て
所有している。と言うかISO感度が常時直接変更できる機種という
点が、私のカメラ購入の際の重要な条件となっているからだ。

で、この機種群の中で「一々ロックを解除しないとISO感度が
変更できない」という不親切な仕様のカメラは、FUJI X-T1と、
本機NIKON Dfだけという残念な状況だ。

このISOダイヤルロックは「ファインダーを覗きながら」では、
左手だけの操作では、まず外れない。
慣れれば左手だけで廻せるかも知れないが、それではまるで
「靴に足を合わせろ!」的な発想で、使い易いとは言い難い。

そして本機DfにはISOダイヤル上にAUTO位置が無く、別メニュー
となっている。これは操作系上の矛盾であるが、これはつまり
M露出モード時にISO感度が追従する機能を目指したNIKON機と
PENTAX機における課題だ(本来、M露出の時だけそうすれば良い、
近年のSONY機では、M露出時のみ、その機能が働く)

ただ、本機では「感度自動制御」をONしておけば、ダイヤルで
ISO感度を変えても、その値を基準として高感度方向に自動で
ISOが上がるので、重欠点では無い。
c0032138_20211483.jpg
・・余談が長くなってきた、「非Aiレンズ」の話に戻る。

NIKON Dfに「非Aiレンズ」を装着する、まず絞り値が表示されない。

まあこれは銀塩F4でも同様だ、光学絞り値表示窓があっても、
非Aiレンズでは、それに対応する絞り値が書かれていない。
でも、光学絞り窓はともかく、Dfのファインダー内LCDにも
絞り値が表示されない・・

この場合NIKONデジタル一眼高級機では「レンズ情報手動設定」
を行う、これによりファインダー内に開放絞り値が表示される。

次いでレンズの絞り環を廻す、でも、ファインダー内絞り値表示は
開放のままだ。まあここもやむを得ない、Aiレンズだったらこれで
露出計連動を行えるが、このレンズは「非Ai」だ。

が、この状態でもDfではレンズ側の絞りは開放のままだ。

F4の場合、この状態からは「プレビュー(絞り込み)」ボタンを
押す。ただし、押しにくい位置にあり、しかも重い!
c0032138_20202258.jpg
F4では非AiでもA露出モード又はM露出モードで撮影が可能だが、
M露出の場合は「プレビューボタンを押しながらシャッターダイヤル
が廻せない」という劣悪な操作性だ。なので現実的にはA露出しか
使用できないが、一々プレビューを押すのはかなり面倒だ。

NIKON Dfではどうか?その点改良されているのだろうか?
Dfの場合「プレビュー(絞り込み)」ボタンは電子的なスイッチ
となっているのでF4より遥かに軽い。しかし、あいかわらず
カメラ前面にあるので、右手のグリップホールデイングに力が
入らないが、まあやむを得ない、なにせNIKON機の操作子の配置
設計は他社機より軽く15年は遅れているのだ。
これ位では驚くには至らない・・
c0032138_20202257.jpg
プレビューしながら、絞り開放と最小絞りで撮ってみる、
しかし、なんと絞り込んだ写真の方は真っ黒である。
つまり「絞り込み測光」になっておらず、いったいどうやったら
露出値が正しく反映されるのかわからない(汗)

試しに「ライブビューモード」に切り替えて使ってみる。これは
絞り込み測光だ。これだと絞り値に応じて正しい露出値となる。

しかしライブビューのみでは使い勝手が悪い、ライブビューでは
カメラを正しく構える事が出来ないのと、AFでもMFでもピントが
合わないのと、Dfの背面モニターが固定式で動かないので、
お話にならないのだ。

ちなみにMFでのライブビュー時にピントを確認しようとし、
拡大ボタンを押すと便利なのだが、なんと拡大解除ボタンが
存在しないし、シャッター半押しでの拡大解除も出来ない。
ここは、劣悪な操作系で「重欠点」である。

だが、本当にライブビューでしか露出が合わないのだろうか?

慌てて取扱説明書を読んでみる、すると、そこでわかったのは
なんと、レンズ側の絞り環を設定したら、「その絞り値と同じ
数値になるまで、絞り制御用デジタルダイヤルを廻せ」と
書いてあるのだ!

この「二重操作」は、極めてやり難く無駄な操作系だ。
まるで1973年のKONICA AutoReflex T3と同様な操作性である。
そのカメラも露出計で読み取った絞り値と同じ値にまで絞り環を
手動で廻す必要があったのだ。(銀塩一眼第3回記事)

「なんだいこりゃ、40年も昔のカメラと同じレベルか・・?」
と悪態をつきながら、電子ダイヤルで絞り値を設定しようとしたら、
この電子ダイヤルは、露出ステップが「常に1/3段刻み」であった。

つまり、非Aiのレンズ側の絞り幅は、通常1段刻みだ、
レンズ絞り値がファインダー内で一切確認できないのであれば、
手指の感触で、何段絞りを変えたか類推するしかない。

で、左手で絞り値を2段変えたら、右手でダイヤルを2段変えれば
この40年前と同等の酷い二重操作性でも、かろうじて使えない
訳では無い。だが、ダイヤル側が1/3段ステップではダメだ。
片方を1段変えたら、もう1方が3回の操作になる、これではまるで
ワルツのリズムとなり、感覚的なタイミング同期が得られない。

ダイヤルの絞り値変更幅を1/3段→1段にすれば使えるか?と思い
メニューを全部確認する、しかしその設定が、何と存在しない!
説明書を読んでも、それが出来るとは書かれていない。

「もしかしてファームアップがあったか?」と思って調べたら、
発売後既に4年も経っているのに殆どファームアップが無い!
(注:2018年2月に4年ぶりのファームアップがあったが、
特定レンズとの不具合解消だけで、機能面の向上は皆無だ)

「ああ、もうわかった、こういうカメラなのね・・(怒)」
瞬時に全てを察した、このカメラはニコンで設計したのでは無い
という話は予め聞いていた。しかし、この酷い操作系設計や
様々な操作系上の矛盾、そしてロック機構による使い難さや、
ファームアップが殆ど無いなど、これらを総合すると、
このカメラは、頭の中で、こうすれば動く、と設計されていて、
実際にこのNIKON Dfで写真を撮ってみて使い難さや問題点を
洗い出して改良していって発売された物では無いのであろう。

昔からのニコン機の欠点ばかりを集約したような酷いカメラだ。
何故、こうしたカメラが「仕様検討会議」等を通過して市場に
出てきてしまうのか?まあ、そこには何か他者が反論しずらい
「大人の事情」があるのだろうと推察される。
c0032138_20211314.jpg
思えば、過去NIKON F3以降の銀塩旗艦機で、「操作性」が
全く練れてないものはいくらでもあった。けど、それらは
頑として改善される事はなかったし、デジタル時代に入って
からも、過剰なハードウェアロック機構は改善の方向があったが
「ソフトウェア操作系」での「安全対策」は大問題であった。

NIKONデジタル機の場合、メニュー全般における操作系概念の
他社機に対する遅れは、もう致命的なレベルであって、これは
「重欠点」と呼べるものであろう。
ファンクション設定が殆ど無く、メニューはただ単にダラダラと
続くだけで、階層構造が不足しているばかりか、使用頻度で分類
する概念もなく、メニューのカスタマイズ性も弱い。

登録した「マイメニュー」はメニューから呼び出すしかなく、
ショートカットが出来ない。そもそもここはメニューセットを
4x4組程度にグルーピングして それを「Iボタン」から
呼び出せるようにすれば良いだけの話であった。
c0032138_20204883.jpg
そして、メニューにおける操作系が劣悪だけならばまだしも、
本機Dfの場合は、銀塩時代のNIKON旗艦機(上写真)のように
殆どのダイヤルやレバー類にまで、ハードウェア・ロック機構が
存在するのだ。

ロック機構を電子スイッチにして、ON/OFFを選択できるように
するのはCANON機では30年も前から実現している。
また、近年のOLYMPUSミラーレス機等では押し込むだけでON/OFF
の切り替えが可能な機械的トグル・ロック機構を採用している。

本機Dfでは、何故、常にロックが解除できない状況を「ユーザー
側に強要する」のだろうか?

例えば、露出補正のアナログダイヤルにロックがある事だが、
前後電子ダイヤルを露出補正に使うと、露出補正ダイヤルと
矛盾するので設計がしにくい。けど、このままでは露出補正を
掛けたかったら、常にロックを解除せざるを得ない。

ちなみに、他社機、例えばSONY α7では専用露出補正ダイヤル
を持つが、「ダイヤル露出補正」機能をONとすれば、
専用露出補正ダイヤルが±0の場合にのみ、電子ダイヤルで
露出補正が効き、全体に矛盾なく操作系が成り立っている。
こういう工夫が何故本機Dfではできないのだろうか?

まあ、メニュー操作系に係わる基幹ソフトウェア部分は、
本機の開発チームでは恐らく変更できず、他機ど同等のまま
矛盾が生じたままで製品化が進んでしまったのであろう。
でも、であれば、古臭い「ロック機構」を絶対に外すべきだ。

それから、操作子の配置も問題が多々ある。
例えば、カメラを構えながらでも左手のみで操作できるか?
右手でグリップをホールドしたまま右手指で操作できるか?
等の概念が非常に重要だが、この「動線」への配慮が無い。
(例:前部Fnボタンを押しながら、前後ダイヤルを廻す操作系
は特にNGだ)

関連する話だが、銀塩旗艦機のF3は特に報道分野で良く使われた
つまり、そのカメラは、その用途であれば殆どが手持ち撮影だ、
その際、F3では、カメラを構えながら左手のみで露出補正の
ロックを外す事がほぼ不可能という重欠点を持つカメラであった。
(銀塩一眼第8回記事参照)
c0032138_20204802.jpg
F3でその点(上写真)をだいぶ叩かれてから、およそ33年、
F4でもF5でも改善されず、デジタル時代になって少しマシになった
と思ったのだが、それはアナログダイヤルを廃して電子ダイヤルに
なったからロック機構が外れただけであって、根本的な「概念」
そのものは表面化されずに、水面下でくすぶっていただけだ、

本機Dfで、アナログダイヤルが復活採用された結果、その長い間
眠ってた問題点が、またいっきに表面化されてしまった。

せっかくアナログライクで格好良いデザインと操作子を持って
いるのに、この劣悪な操作系では、まったくもってNGだ。
誰がこれを使えるのであろうか? 何もカメラ設定を操作しない
超初級者だろうか・・? あるいは、三脚を立てて、のんびりと
30分に1枚程度撮影をする趣味人であろうか・・?
c0032138_20212705.jpg
さて、本機Dfがまるっきり現代的な操作系の概念を持たない
とても古い設計思想のカメラである事は良くわかった。

だが、本機以外にも操作系が劣悪なカメラは多数存在している。
そんな場合はどうするか?と言えば、問題点を出来るだけ回避
できるレンズや撮影技法を使えば良い。

以下、本機Dfの「重欠点」の回避手法だ

1)非Aiレンズを使う際に、絞りの二重操作を強いられる

→非Aiレンズを使わない事しか対処方法が無い。

2)ISO感度ダイヤルにロック機構があり容易に変更出来ない他、
 ISO感度ダイヤル上にAUTO位置が存在せず、「感度自動制御」
 設定が深い位置の別メニューとなり、矛盾ど使い難さがある。

→ISO自動制御をONし、ダイヤル側を低ISO設定とし、
 ISO上昇方向のみの半自動ISOで使うしか無い。
 幸い本機Dfの場合はAUTO ISOの最大追従感度が約20万と高く、
 ISO感度が切り替わるシャッター速度を手動で設定できる、
 という長所を持つ。
 注1:この回避法の概念は初級者には難解だ。
 注2:この「低速限界設定」は、何故かマイメニューに
    登録不可、という不条理な制限事項がある。

3)露出補正ダイヤルにロック機構が存在し、かつ軍艦部左上に
 存在する為、カメラをホールドする右手のみに負担がかかるか、
 または、そもそも左手だけでのブラインド操作が困難。

→露出補正を頻繁にしないしか無い。できるだけその必然性の
 少ない被写体を選ぶ、あるいは高度なAEロック代用技法で
 対応する、又はPC上での輝度補正レタッチで対応する。
 注:電子ダイヤルでも露出補正を並列的に可能とする仕様と
   すれば改善出来たはず(例:SONYミラーレス機)

4)メニューの階層構造が練れておらず、かつカスタイマイズ性も
 かなり弱い。そして、コンパネ的GUI操作系になっていない。
  iボタンを用いてショートカットしようとしても、
 そのメニュー群が全く変更できないというお粗末さだ。

→学習型または登録型マイメニュー機能が存在するので、それを
 上手く利用する。ただし相当に使い難い事は確かだ。

5)ライブビューでの画面拡大解除キーが存在しない。
 及びライブビューでの設定変更メニュー項目が変えられない。
 
→構図確認を諦めて拡大状態のままシャッターを切る、または
 一々縮小ボタンを拡大回数の分だけ押して戻すという不便を
 受け入れる。
 ライブビュー時のメニュー項目が固定である事については、
 必ずライブビュー開始前に、全てのカメラ設定を行ってから
 ライブビューモードに移行する事。
 あるいは固定式背面モニターでは、そもそもライブビューは
 「使えないもの」として一切使用しない。

6)各操作子の配置が悪い、すなわち「使用頻度」に対応する
「操作性」の設計が練られていない事と、手指の動線を意識せず
 設計している為、操作を行う際に右手や左手にカメラ重量が集中
 してホールディングが厳しい、あるいは片手操作が出来ない。
 
→操作子ダイヤルをできるだけ使わない撮影技法に頼るしかない。
  
7)測光パターン変更ダイヤル、露出モード変更ダイヤル、そして
 AFモード変更ダイヤルのいずれも、ファンダーを覗いたまま
 での設定変更が困難で、いったん構えを解き、場合によっては
 カメラの向きを変える、あるいはどこかに置く等しないと
 設定できない。

→これらの操作子をできるだけ使わないようにするしか無い。

8)カメラ前部にあるプレビューボタンとFnボタンは、これらを
 押す為には右手のグリップ・ホールディングを緩めるしか
 方法が無く、方向的に力が入り難く、加えてこれらのボタンを
 押しながら他のダイヤルを廻し難く、そもそもアサイナブルな
 ボタンの数が少ない上に、メニュー項目のショートカットも
 出来ない為、自由度が極めて少ない。

→これらの操作子の設定は、プレビュー程度に留めておき、
 かつ、できだけこれらに頼らないようにするしか無い。

9)「infoボタン」による設定一覧表示は、直接的に設定変更が
 可能になっていない(他社機ではコンパネとしてGUI的に可能)
 また「iボタン」による直接設定機能は8項目しかなく、しかも
 設定内容が固定で一切変更出来ない。

→もう対処不能である、できるだけメニューから設定変更する
 しか無いが、メニュー階層も練れておらず、最悪だ。

10)電子化スクリーンでのMFでのピントの山がわからない、
 またファインダーを覗く角度を変えると表示が見え難い。

→MF撮影は行わないか、又はフォーカスエイドに頼る。
c0032138_20212776.jpg
総論だが、本機NIKON Dfにおいては、まずは現代のAFレンズを
使って、しかも何もカメラ設定を変更せずに使うしか無い。
(今回の記事で、安直な現代レンズを使っているのもその為だ)

そう「MFレンズ母艦」とする当初の意図は瓦解したのみならず、
せっかくの格好良いアナログダイヤルは、全て使う事が出来ない
のだ。
まあ、ガンダムでの「ジオン」のエンジニアであれば、きっと
「ダイヤルなんて、ただの飾りです・・」と言った事であろう。
c0032138_20204876.jpg
さて、相当に酷い状況であるが、勿論本機Dfにも長所はある。

まず、格好良い事だ、これはある意味、「趣味性の高いカメラ」
としては最大の長所であろう。
銀色ボディは銀塩時代は良くあったが、デジタル一眼レフでは
珍しく、ニコンでは本機位か? 

そして基本性能が高い事だ。
画素数は1600万画素と控え目であるが、これはフルサイズである
事とあいまって、画素ピッチが大きく、ピクセル面積が広いので、
ダイナミックレンジの増大、すなわち階調表現力やノイズ耐性に
優れる。

感度も広く、拡張時にISO50から高感度側はISO約20万まで広げられ、
趣味撮影においては十分すぎる程の性能である。
これらは画像処理エンジンも含めて旗艦機D4と同等の仕様だ。

ただ、D4と同等と言いながらもドライブ性能は貧弱で連写コマ数
は遅く、最高シャッター速度も1/4000秒でしか無い。
これらはNIKONフルサイズのローエンド機のD600系と同等だ。

次期旗艦機D5の開発で余った旧D4のエンジン部を使いまわし、
高いカタログスペックを維持しながら、低価格機の機構部品を
流用し、コストダウン(利益確保)を実現したという事であろう。

実際に連写を行うと、近年の高速連写機(一眼レフ/ミラーレス)
と比べると、かなりのんびりとした印象がある。
それに連写音は音質的に品が無く、音量も大きいので、静かな
場所では使えない(静音撮影モードが存在するが効果は少ない)
c0032138_20212735.jpg
まあしかし「控え目」なドライブ性能とした事で、ボディの
重量は軽量化されていて、本体のみ710gだ。
この重量はD610より軽いのでNIKONフルサイズ機では最軽量か?

が、ボディは大柄で、特に厚みがある為、軽さとあいまって
なんだか「スカスカ」な印象となる。厚みがある事も、せっかく
銀塩機ライクな格好良さが台無しだ。

なお、小型のバッテリーを使用している割には良く持ち、
3000枚や4000枚の撮影は余裕だ。ただ、バッテリー消費を
抑える為には、それなりの技法も必要となるので念の為。
c0032138_20204971.jpg
それから、各種のアナログ操作子は電源OFF時でもカメラの
設定の多くを視認できる事は長所である。
ただ、さんざん書いてきたようにロック機構により設定が
やりにくいので長所が帳消しだ。
そしてロック機構があっても、露出補正ダイヤルでは僅かに
接点の「遊び」が生じていて、ロックしたままでも+0.3段等に
露出値が動いてしまう場合がある。

まあ、操作性を追及するならば、全てのダイヤルでのロック機構
は完全に不要である。

なお、ロック機構だけが問題なのでは無い、本機での操作系の
最大の問題は、アナログ操作系(操作子)とデジタル操作系が
上手く融合できていない事だ。

つまり、デジタルダイヤルを廻すと、アナロク操作子との矛盾が
当然発生する、他社では、そこを矛盾なく操作できる仕様として
いる場合があるが、本期Dfでは「アナログ操作子優先」という
安直な解決策を取ってしまっているのだ。

「DfのfはFusion(融合)のf」と言いながら、実際には融合が
出来ていないのは困ったものだ。なお、機種名を「DF」に出来な
かったのはブランドイメージの低下を嫌っての事だと聞く。

それから、若干のエフェクト(画像編集)機能が存在しているが、
一眼レフでこの手の機能は基本的には使い難いものの、前の撮影
画像に遡ってエフェクト処理が出来る点は良く、むしろこの点に
おいては、エフェクトを得意とするPENTAX一眼レフのエフェクト
操作系よりも使い易く感じる。

ここは比較的新しい機能だから操作系が良いのであろうか?
つまり、旧来のカメラ操作に係わる部分がNGで、新しい部分が
OKという事は、基本設計思想が古いのだ。

その他の長所はあまり無い、本来のカメラとしての性能は十分に
高いのに、多数の欠点が目立ってしまい、長所が見えて来ない
事は非常に残念だ。
c0032138_20212738.jpg
さて、恒例の本機Dfに対応する銀塩名機であるが、
冒頭に述べたように NIKON F4をあげておこう。
c0032138_20204849.jpg
ちなみに、F4の多数の操作子にも各々ロック機構があって極めて
うっとうしいが、ネガフィルムを用いて、MFレンズを装着し、
いっそそれらの操作子の殆どを使わない事で、逆説的に操作系の
課題を回避する事ができた。

F4でも本機同様にファインダー視点の角度を変えると液晶表示が
全く見えなくなる重欠点はあったが、F4のスクリーンのMF性能は、
電子化で性能を落とした本機Dfよりずっとマシだ。
c0032138_20212750.jpg
さて本機Dfの購入価格だが、中古で約16万円であった。
高価でコスパが悪いのも、また大きな問題点となる。

最後にNIKON Df の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)

【基本・付加性能】★★★★
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★
【マニアック度 】★★★★
【エンジョイ度 】★★
【購入時コスパ 】☆
【完成度(当時)】★★
【歴史的価値  】★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.5点

残念ながら本シリーズ記事での最低評価点になってしまった。

最大の問題は、作る側の「伝えたい事」がちゃんと具現化できて
おらず、その物足りない点が全て低評価に直結している。

アナログダイヤルによる「操作性」の向上を狙ったコンセプトで
ありながら、実際の所ではアナログとデジタルの切り分けや
各種設定の有機的な連携が出来ておらず、結果的に「操作系」を
大幅に悪化させてしまった。本機はフィルム機では無いのだから
フィルム時代の操作性の考え方をそのまま踏襲する事は出来ない
事は言うまでも無い。つまり設計思想が古くて頑固なのだ。

まあ、アナログ感覚を取り入れようとした事自体は評価できるが、
それが上手くまとめられておらず、多数の矛盾が発生してしまって
いて、不要なロック機構と合わせて非常に使い難くなっている。

ただまあ、外観としての格好は極めて良いカメラだ。
写真を撮らずに「持って歩くだけ」、あるいは使えない操作子で
凝った設定をあえてしようとはせずに、カメラまかせでオートで
適当に撮るならば良いであろう。

すなわち本機は「超初級者向けカメラ」であり、中上級者の
「趣味的な玩具」には決して成り得ないカメラだ、という事だ。

冒頭に挙げた下世話な例で言えば、「美人であるから
デートの相手として連れ歩くには最高だが、性格が悪いので、
結婚は絶対にしたくない!」というタイプのカメラであろうか・・
c0032138_20204832.jpg
ちなみに「初級者のニコン党」ならば、上の評価点には
納得が行かない事であろう。
ビギナー目線やシニア目線からすると、本機は、性能が高い、
あるいは使い易いカメラだと錯覚してしまうだろうからだ。

だが、それがとんでもない思い込みである事は、本記事で
様々な問題点を事実として詳しく述べてきた通りである。
残念な結果だが、これが本機Dfの真実だ。

まあでも本機は「美人」である事は確かなので、私の場合は
処分せず、とにかく元が取れるまで使い潰すつもりだ。
既に2万枚以上を本機で撮影している、メゲずに頑張って
もう少しだけ付き合ってみよう・・

次回シリーズ記事に続く。

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