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銀塩一眼レフ・クラッシックス(9)CANON New F-1

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所有している銀塩一眼レフの名機を紹介するシリーズ記事。
今回は第二世代(自動露出の時代、世代定義は第1回記事参照)の
CANON New F-1(1981年)を紹介する。
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装着レンズは、CANON New FD 35mm/f2 
(ミラーレス・マニアックス第4回記事で紹介)

本シリーズでは、例によって紹介銀塩カメラでのフィルム撮影
は行わずに、デジタル実写シミュレータ機を使用する。
今回は、まずフルサイズ機SONY α7を使用するが、記事後半
では別の機種を用いると共にレンズも交換する。
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以降はシミュレーターでの撮影写真と、本機New F-1の機能紹介
写真を交えて記事を進める。なお、本シリーズでは紹介機の
時代に合わせてシミュレーター機の発色傾向を調整している。

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さて、New F-1はキヤノンの銀塩フラッグシップ機の二代目だ。

最初に注意点だが、「New F-1」という機種名は実は存在しない、
ボディには「F-1」としか書かれていないのだ。

実は、旧来のF-1も後期型ではいくつかの改良があったのだが
機種名は変わらずF-1のままであった(本シリーズ第1回記事)

これはすなわち、ライバルのニコンのフラッグシップ機が、
F(1959年)→F2(1971年)→F3(1980年)と、順次番号が
変わっていった事に対して、
キヤノン側は「この機種が存在する限りF-1で通す」と主張
した(反発した)からである、という話が伝わっている。

が、それでは販売店やメディアやユーザー側は困ってしまう、
機種の区別がつかないからだ。

なので、実質的には以下のように通称が与えられた
F-1 1971年 F-1、旧F-1、F-1前期
F-1 1976年 F-1N、F-1改、F-1後期
F-1 1981年 New F-1、NF-1

本記事では、この通称を用いて本機を「New F-1」と呼ぶ。
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ちなみに、従来のFDレンズを簡易着脱式に改良したNew FDレンズ
は、本機登場前の1970年代末位から、FDに置き換わるように
流通が始まったのだが、こちらのレンズ名称も正式にはNew FD
ではなく、単にFDレンズである。
勿論、区別の為に通称でNew FDまたはNFDレンズと呼んでいる。
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さて、本機New F-1はキヤノンでは二代目のフラッグシップ機と
書いたが、実の所、キヤノンのMF銀塩フラッグシップ一眼と
しては最終の機種だ。

本機の5年後の1986年には、最後のFDマウント機として「タンク」
のニックネームを持つ「T90」が発売された。
その機種は、性能的には本機New F-1をも遥かに上回るが
最上位機とは言え、後年のEOSの原型とも言えるプラスチッキー
な現代的カメラであり、勿論交換式ファインダー仕様でも無い
事から、フラッグシップ機とは呼びにくい。

T90は確かに高性能なカメラであり、銀塩時代には所有していて
良く使ったが、「後世に残すべきカメラでは無いだろう」と思い、
デジタル移行期にマニアの友人に譲渡していた。

なお、その後の銀塩AF時代でのEOS-1シリーズ等も、まあ最高機種
であり、一応フラッグシップ機とも言われてはいるが、銀塩MF
時代の「フラッグシップ機」とは、ずいぶんとティストが違う。

やはり、銀塩MFのフラッグシップ機は「ファインダー交換式」が
基本であろう。つまり「非常に高いシステム拡張性を持つ」
という点が、銀塩MFフラッグシップ機の要件だ。
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そういう観点からは、銀塩MF一眼レフでのフラッグシップ機は
基本的には以下の7機種しか存在していない

NIKON F(未所有)、CANON F-1(本シリーズ第1回記事)
NIKON F2(本シリーズ第2回)、MINOLTA X-1(本シリーズ第4回)
PENTAX LX(本シリーズ第7回)、NIKON F3(本シリーズ第8回)
そして、本機 New F-1、たったこれだけである。

そのうちおよそ半数の3機種が、1980~1981年の発売に集中
していて、本シリーズでも3記事連続のフラッグシップ機特集だ。
後年のAF最高機種を「フラッグシップ機とは言い難い」という
状況においては、まさしくこの1980~1981年が、カメラらしい
銀塩MF一眼の最盛期であり、最も盛り上がった時代では
なかろうか?
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後の1990年代の第一次中古カメラブームの際も、結局、この
1980年前後のカメラが非常に人気が高かった。

まあ、その中でも最も人気があったのは、NIKON F3シリーズ
だとは思うが、前記事の第8回記事でNIKON F3を私が評価した
際には、残念ながら高得点では無かった、

それは、私が個人的な好みでカメラ毎に点数を増減させている訳
ではない。誰よりも沢山のカメラを使っている中では、F3という
カメラは、実際には、それ位のボジションでしか無いカメラだ。

で、1990年代後半は、世のバブル期は既に終わっていた時代とは
言え、中古カメラ界はフィーバーし、完全にバブル状態であった。
F3や他のニコンフラッグシップ機を値上がり期待の投機目的で
買う人達が現れ、フィーバーに浮かれてそれらの機種を高値で
買うビギナー層まで多数居たし、本当に変な時代であったと思う。

F3を高く評価した雑誌記事やパソコン通信(現代のネットだ)も
勿論多々あったが、それらが全て信憑性が高かったものだとは
到底思えない。なにせ、当時は中古カメラの雑誌までもが良く
売れていたが、実際にはそのカメラなど1度も触ってもいないで
記事を書いたり評価しているような状況も多数あったと思う。
あるいは、高価で取引する為に、わざわざそういう情報を
流した人も居るかもしれないと、うがった見方をしてしまう。

もっとも、その点は、その後の時代においても同様であり、
デジタル一眼レフ普及期の2000年代中頃や、ミラーレス機の
普及期の2010年代前半においても、カメラ専門誌でも何でも無い
雑誌等まで、そうしたデジタルカメラの紹介や評価を平然と
していた例も実際に多数あり、それらは単にカタログスペック
だけを見て良し悪しを述べていたりしたのだ。
(例:600万画素機より800万画素機が断然画質が良い、等)
勿論、私の目からは、信用できる情報とは全く言えなかったし、
多くのマニアも同様な実感を持ったのではなかろうか・・?
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さて、余談が長くなった。本機New F-1の話に戻る。

前機種F-1から10年の歳月が流れたが、この間、CANONでは
電子化カメラに係わる技術革新が急速に発達した。

代表的な機種を挙げよう。
1976年 AE-1 世界初のCPU搭載カメラ、シャッター優先AE可
1978年 A-1 CPU搭載、キヤノン初の「両優先」機 
1981年 AE-1P AE-1にプログラム露出を加えたもの

これらの「電子化カメラ」はビジネス的にも成功した。
カメラ本体の進化のみならず、外付けワインダーや、交換レンズ
としての「ズームレンズ」の発達も寄与していたと思う。

内、A-1は中古で所有していた事がある。「カメラロボット」
という愛称がつき、先進的なイメージと、若干高価な価格
(ボディのみ発売時83,000円。現在の価値で20万円弱)
から、当時のビギナー層の間での憧れのカメラであったと思う。

が、A-1はプログラム上のバグもあり(本シリーズ第6回記事参照)
電子化システムは、中上級ユーザーからは、まだ信頼を勝ち得て
いなかった。特に電源消費が速かった事と、交換電池が高価で
あったので、電池切れを懸念する声も多々あったと思う。
(そうなると写真が一切撮れない)

そういう状況の中、ニコンがF2→F3の発展において電子化機能
を多々採用したのに対し、キヤノンは、F-1→New F-1において、
これらAE-1やA-1で市場に既に普及していた電子化機能を殆ど
搭載しなかった。

まあ、業務用最高機種であるから、そうした「軟弱な」電子カメラ
はコンセプト的に似合わなかったのかも知れない。でもまあ、
これはこの状況であれば、正しい判断であったようにも思える。

現に、A-1等で現在ちゃんと完動する個体は、発売後40年を
経過した現在では殆ど残っていない状況だが(注:電子回路の
耐久性のみならず、シャッター周りも耐久性が低かった)
New F-1であれば、現代でもほとんど問題無く使えてしまう、
という驚異の耐久性だ。
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そして、New F-1の本体は金属ボディのつや消し仕上げであり、
プラスチッキーな普及機群とは一線を画す、高品質で高耐久性を
誇るカメラである。

シャッター周りも、最高1/2000秒に留まるものの、低速側は
電子式シャッターを採用し、高速側は機械シャッターの
ハイブリッドである。これは前年のPENTAX LXと仕様上は同一
ではあるが、電池が切れても、ほぼ問題なく撮影を継続できる
というメリットと安心感は絶大であり、おまけに電子、機械式
の両者において、シャッター速度の実質誤差が殆ど無い事は、
本機の隠れた特徴だ。
(発売時、1/2000秒の公称値に最も近いシャッター速度が実測
で得られたのが本機New F-1だ。ただし固体差もあるだろうし、
現代では経年劣化もあるだろう)
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当時のフラッグシップ機の要件であるシステム拡張性だが、
New F-1には面白い特徴がある。
ファインダー交換やモータードライブの追加は当然なのだが・・

まず、ベーシックな「アイレベルファインダーFN」を装着した
状態では、本機は基本的にマニュアル露出機だ。
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次いで「AEファインダーFN」に換装した状態では、
絞り優先露出機となる。

さらに「AEパワーワインダーFN」又は「AEモータードライブFN」
を追加すると、今度はシャッター優先機となる。
AEファインダーと両方を追加した状態では「両優先機」と
なる訳だ。

これはちょっとマニアックな機能拡張システムである。

余談だが、本機New F-1の発売の2年前の1979年に、
「機動戦士ガンダム」のTV放送が始まっている。
当初の放映時には視聴率が振るわず、途中打ち切りになった。
しかし、再放送が行われた1981年(本機New F-1発売年)では
人気が沸騰、視聴率も20%前後まで伸びで、その後、約40年も
続く「ガンダムブーム」の礎となった。

で、ガンダム等の新世代のロボット系アニメでは「オプション
パーツを装着すると性能が格段に向上する」という概念が多く
取り入れられている。これはアニメだけに留まらず、数年後から
始まる家庭用TVゲーム全盛期においても、RPGゲーム等で
「アイテムを用いてパワーアップ」という概念が一般にも広く
浸透した。勿論、その後の玩具やホビー製品等でも全て同様だ。

で、本機New F-1におけるファインダーやモードラを追加して
機能を大幅にアップする、という考え方は、そうした概念の
先駆けであったようにも思える。

まあ、オプションパーツを買ってもらう必要性を高めて、
売り上げを増やす、というビジネス的な狙いも大きかったとは
思うが、それは別に不適切な方法論では無い。

しかし、この件には裏に重要なポイントが存在していた。
まず、私の所有しているNew F-1は、アイレベル形式の
ファインダーである、よって、本来ならばマニュアル露出しか
動かない。

けど、実は、このNew F-1のAE(自動露出)機構は、当時の他機
のように、交換パーツ(ファインダー等)側にあるのではなく、
カメラボディ本体側に最初から入っているのだ。
よって、交換パーツは、その「機能制限」を解除する為の
役割しか果たさない。

なので、アイレベルファインダーを用いても、シャッター
ダイヤルをA位置に設定すれば、「絞り優先」機能が動作して
しまうのだ。この時の制限事項だが、正規のAEファインダーを
用いれば、露出メーターが表示され、絞り値とシャッター速度が
確認できるのだが、アイレベルでは、それらは何も表示されない。

すなわち、アイレベルでも絞り優先で撮影する事は可能なのだが、
何も情報が無いまま撮影せざるを得ず、実用的には不安である。

ただ、その点では絞り値はレンズから直読できるし、シャッター
速度はフィルム感度とその場の明るさから、少なくとも屋外では
経験的に予測が出来る。あるいは、本機以外に他のカメラを
同時に持ち出している状況や単体露出計があれば、シャッター
速度を実測するのは容易である。または、マニュアル露出に
切り替えてしまえば安全確実にシャッター速度の情報を得れる。

つまり、アイレベルファインダーのままで絞り優先撮影を
行う事は、趣味撮影の範囲であれば十分に可能であったのだ。
よって、私は、高価な交換ファインダーやモードラの購入は
保留する事とし、アイレベルのままで絞り優先AEとマニュアル
露出を併用する機体として、本機New F-1を扱う事とした。
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まあこの話は、ここ迄で完結だが、実は、この状況において
ちょっと気になる点が生じていた。

それは「本来、絞り優先機能は入っているのに、メーターを
表示しない、という機能制限をかけて、その利用を封じた」
という製品コンセプトである。

本来ある機能を「出し惜しみ」する、あるいは、お金を出さない
ユーザーに「意地悪をする」という発想は、まあメーカー側の
ビジネス論理からは、わからない訳ではないが、ユーザーの
心情的には面白くは無い(賛同できない)

その後、キヤノンにおいては、デジタル時代の現代に至るまで
高級機に元々入っている高い基本性能を、普及機に部品流用する
際に(=機種毎に異なるデジタル部品を開発していたら開発費
が膨れ上がって大変だからだ)大幅に機能制限をかけてしまう事が
普通になったし、あるいは、キヤノン純正レンズを使えば、本体
機能が全て使えるのに、他社製MFレンズ等ではフォーカスエイド、
収差補正、精度の高い測光、などの性能がすべて失われてしまう
(使えない)という状態が、ごく普通になってしまっている。

(最も酷い例は、他社製レンズを付けるとエラーになってしまう
ケースや、キヤノン製レンズを他社機で使うとMFすら動かない
という状況もあるが、これらはまた追って別の記事で述べよう)

まあ、それらは別に責めるべき事でも無いかも知れない、
あくまで製品を作る上でのコンセプトでありポリシーである。
しかし、その「思想」において、ユーザーの利便性を重んじない
方向性は、メーカー側の「良心」を感じられない点もある。
そういう風潮が、本機New F-1の時代から現れてしまった事は
カメラマニア的視点からは残念な事実だ。
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なお、勿論こういった事は、キヤノン機に限らず他社のカメラに
おいても多かれ少なかれ見られる事なのだが、2010年代からは
各メーカーとも、その風潮がさらに加速され、同一メーカーでの
システムを組まない限り、写真を撮る道具としても、まともには
動作しないというケースが多々ある(例、自社製レンズを装着
しないと、AFが極端に遅くなったり、露出値が狂ったり、
使えない機能が多発する)

まあ、実のところ、個人的にはこれは結構重要な課題であり、
私自身、2010年代になってからカメラ本体の買い控えが始まり
2015年以降のカメラを殆ど買っていない、という状況に繋がる。
これはマニアとしては、あまり考えられない状況なのではあるが
1つは私は中古主体の購入ポリシーであるし、まだ最新機種が
高価である事も原因だが、それに加えて、システムとしての
汎用性が欠ける事で、純正システム全体への投資効率が悪い
(純正レンズ等を全て買い足さなくてはならず、コスパが悪い)
事が買い控えの別の理由にもなっている。

なお、その背景にはカメラ市場の縮退があり、メーカーとしては
より儲けないと事業が継続できない、という状況もあるだろう。
(高付加価値型の自社システムで、高利益を得るという事だ)
が、そういう視点においては、私自身、中古買いでメーカーへの
利益還元などの貢献度はゼロに等しいので、あまり排他的仕様
への問題点を強くは指摘する事は出来ないのであるが・・
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さて余談はともかく、本機New F-1は、フラッグシップ機として
必要十分の性能を持った、FDマウント最後の名機ではある。

ここで本機New F-1の仕様について述べておく、

マニュアルフォーカス、35mm判フィルム使用AEカメラ
最高シャッター速度:1/2000秒(機械式+電子式)
       チタン幕フォーカルプレーン横走り
シャッターダイヤル:倍数系列1段刻み、8秒~1/2000秒
A(絞り優先),X,B位置あり。
       A位置に切り替えるにはダイヤルを持ち上げる。
電池切れ時では、1/125~1/2000秒が
       機械シャッターで動作可。
フラッシュ:非内蔵、シンクロ速度1/90秒 X接点
ホットシュー:ファインダーによっては有り
ファインダー:交換式、スクリーンも多種交換可能。
       倍率0.8倍 視野率97%(アイレベル)
ファインダー内照明:LIGHTモードで可
使用可能レンズ:キヤノン FD系マウント
絞り込みプビュー:有り
露出制御:マニュアル、絞り優先(AEファインダーFN使用時)
     シャッター優先(AEワインダーFN等使用時)
測光方式:SPD素子、スクリーン交換で変化
     平均測光(A型:視野の50%)
     中央部分(P型:視野の12%)
     スポット(S型;視野の 3%)
露出補正:専用ダイヤルあり(±2EV)、ロック有り
露出インジケーター:マニュアル露出時に機械式追針式
HOLDモードで追針動作の固定化可能
露出メーター電源:4SR44 1個使用 (4LR44使用可)
電池チェック:マウント部横に専用スイッチ
フィルム感度調整:ASA(ISO)6~6400(1/3段ステップ)
フィルム巻き上げレバー角:139度、予備角30度、分割巻上げ可
セルフタイマー:有り(電子式)
本体重量:795g(ボディのみ)
発売時定価:149,000円(アイレベルファインダー付き)

さて、このあたりで実写シミュレータ機とレンズを交換しよう。
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カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
レンズは、CANON New FD 135mm/f2
(ミラーレス・マニアックス第15回記事)

本レンズは大口径望遠だが、ニコン等の同一仕様の製品に
比べて相当に小型軽量であり、そこそこ高性能である。
APS-C機のX-T1に装着時は200mmの換算画角とはなるが、
本記事では画角の変化は不問としよう。
フィールドでの自然撮影に適した使い易いレンズである。
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さて、本機New F-1 の長所だが、

まずは高いシステム性と、高耐久性があるが、これはまあ
業務用途向けの要件であり、趣味撮影では最小限のアイレベル
仕様でも(前述のようにAEは裏技で使用可だし)十分だ。

シャッターフィールはキレが良く、気持ち良く使える。
レリーズタイムラグの数値は未公表だが、かなり速い部類だと
感覚的にはわかる。
一説によると、本機のシャッター幕速は「横走りシャッター
としては史上最速である」という実測結果もある模様で、
感覚的な「シャッターのキレの良さ」を裏付けるデータだ。

シャッターダイヤルにはマニュアル露出時に廻しやすいように
突起もあり、細かい配慮がある。

ファインダー内の追針式露出インジケーターでは、瞬時に
針が反応する「Normal」と、前の露出針の位置を保持する
「Hold」モードの切り替えがあり、意外に便利な機能だ。
c0032138_20223584.jpg
なお、この考え方は当時の音響機器の「VUメーター」等でも
「ピークホールド」という類似の機能があって、そこから
ヒントを得たのかも知れない。

スクリーンの見えは非常に素晴らしい。
まあ、本機の交換ファインダーおよび交換スクリーンの種類は
非常に多く、どれを選択するかでも変わるかとは思うが、
私が使用しているのは、A(平均測光)の全面マットタイプだ。
(注:型番は忘れた・汗)
この状態での、MFのピントの合わせ易さは、私が思うに全ての
一眼レフ中で最強レベルである。

私は良くファインダー・ベストスリーと言う事で、「New F-1」
「LX」「α-9」を挙げているのだが、正直言えば本機New F-1
が1位であるように思う。

が、ファインダーの見えの性能の感覚評価は、スクリーンの
種類は勿論、装着レンズによっても異なる、これはピントが
シビアな大口径中望遠クラスでの話なので念の為。

まあ、本機New F-1の感覚的な要素は比較的高いと思う。
細かい弱点は後述するが、それらを上回る長所が存在する。
c0032138_20233439.jpg
で、本機New F-1の弱点であるが、

まずは、巻上げ感が「ゴリゴリ、ガシャン」という感じで
がさつな印象があって良く無い点がある。

これは前記事のNIKON F3と対極的であり、F3がその点では
最強の機種であれば、本機New F-1はフラッグシップ機としては
最悪だ。
ただまあ、本機New F-1は業務用途においては、モードラ等を
装着するのが基本だ、その結果としてシャッター優先機能も
使えるようになる、そうであれば、巻き上げは手動では行わない
ので、その欠点は無視できる。

それと、ファインダー内の表示等がメカニカルでクラッシックな
追針式である事だ。だが、ここも前述のようにCANON A-1等での
電子式システムは、信頼性や耐久性に欠ける事が自明な状況で
あったので、フラッグシップ機から電子的要素をできるだけ排除
しようとした事は、逆に長所にも繋がる。

露出補正の操作性は、NIKON F3と同様にロック解除ボタンが
あって、あまり好ましく無い。しかしNIKON F3では、どこを
どう動かしても左手のみでの操作はまず不可能であったのが、
本機New F-1では、ピアニスト並みの指使いをすれば、かろうじて
左手のみで操作が可能だ。
c0032138_20223575.jpg
シャッターボタンのレリーズロック(すなわち電源スイッチ)は、
ロック、ON(A)、セルフタイマーの位置があって外からの視認性が
良く無いし、意図せずセルフのモードになる事も多々ある。
ただしまあ、ここは機体操作への「慣れ」もあるので、重欠点
とは言えない。

シャッターダイヤルをA位置(絞り優先)に入れる操作や
露出補正、ASA感度ダイヤルの操作は、持ち上げたり、ロックを
解除する事でやや煩雑だ、しかし安全機構としては大きな
問題では無い。
c0032138_20223556.jpg
後、最大の問題点は重い事か。本体のみで約800gが公称値
だが、小型レンズなどを装着した実用状態においては
軽く1kgを越え、1.1kg~1.2kg程度が最低ラインだ。

これはずっしりと重く感じ、業務撮影はともかく、趣味撮影に
おいては重すぎて、あまり外に持ち出す気にはなれなくなる。
ただ、とは言え「エンジョイ度」を低める程の弱点にはならず
優秀なファインダースクリーンや、キレの良いシャッター性能で、
快適に撮影ができ、エンジィ度はむしろ高い。
c0032138_20233426.jpg
さて、最後に本機New F-1の総合評価をしてみよう。
評価項目は10項目だ(項目の意味は本シリーズ第1回記事参照)

-----
CANON New F-1 (1981年) 

【基本・付加性能】★★★★
【操作性・操作系】★★★
【ファインダー 】★★★★★
【感触性能全般 】★★★
【質感・高級感 】★★★★☆
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★★★
【購入時コスパ 】★★ (中古購入価格:60,000円)
【完成度(当時)】★★★★☆
【歴史的価値  】★★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.7点

かなりの好評価だ。

全体的に殆ど不満は無いが、新品も中古もやや高価だったのが
コスパ面でのネックとなっている。

MFにおいて特に高性能なファインダー、優れたレリーズフィール
そして、タフで実用的でありながらも、どこかマニアックな
拡張的システム仕様は、通好みの機体として十分な魅力がある。

完成度も高く、キヤノン最後のFD系フラッグシップ機として
歴史的価値もそこそこ高い。

本機もマニア必携のカメラであろう、同時代のPENTAX LXや
NIKON F3と並び、今なお現役で使用可能なパフォーマンスと
価値を保ち続けている名機だ。

なお、現代での中古相場は3万円前後と、決して安くは無いが
幸い投機対象機とはなっていない模様で、もしフィルムを
入れて実用機とするならば、PENTAX LXと並んでその価値は
十分にある。また、FD系レンズの中古相場が安価である事も
情報として述べておく。

次回記事では、引き続き第二世代の銀塩一眼レフを紹介する。


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