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ハイ・コスパレンズ・マニアックス(12)AF中望遠編

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コストパフォーマンスに優れ、マニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第12回目はAF中望遠レンズを4本紹介する。

中望遠レンズの定義だが、例によってデジタルではセンサー
サイズ(フォーマット)が様々なので、画角での判断は
少々ややこしい。よって、銀塩時代の定義をそのまま適用し、
「70~120mm程度の焦点距離を持つ単焦点レンズ」としよう。

まず、最初のシステム、
c0032138_17424444.jpg
カメラは、NIKON D300 (一部の写真はD2Hを使用)
レンズは、NIKON AiAF85mm/f1.8D
(中古購入価格 23,000円)

ミラーレス・マニアックス第66回記事で紹介した、
1990年代のAF単焦点中望遠レンズ。
c0032138_17424528.jpg
2000年代のデジタル一眼レフ時代では、中望遠85mm級レンズ
の用途は、銀塩時代より少なくなってしまったと思う。

それまで(1980~1990年代)85mmレンズと言えば、
代表的なポートレート用レンズとして、主にf1.4級の物が
人気であった。

だが2000年代のデジタル一眼では、当初APS-C機が主流で
あった為、85mmのレンズは換算130mm前後の望遠画角となり
「ポートレートには遠い」という事から用途が無くなって
しまっていた。

しかしながら、「この焦点距離は、XX用である」と言う
概念は、今から考えると様々な不自然な点がある。
例えば、28mmは風景、35mmはスナップ、85mmは人物、
等という「常識」が、銀塩時代には、まかり通っていた。

現代でもそうだが、一眼レフを買った初級ユーザーの
大多数は交換レンズを買わない。
現代ではキットの標準ズームだけで終わりであり、
MF銀塩一眼時代では付属の50mm標準レンズのみで、
他の焦点距離のレンズを買うユーザーは少なかった。

だが、カメラメーカーやカメラ流通業としては、交換レンズ
を売らないとビジネスが成り立たない。
まあ業界の都合はともかく、本来「一眼レフ」というものは
レンズ交換を行う事で、様々な被写体に対応できる汎用性が
特徴である機材だから、使う側としても交換レンズを
買わなくては、一眼レフを使う意味が殆ど無い。

でも、初級ユーザーの場合、交換レンズの種類があまりに
多いので何を買ったら良いかわからないのだ、おまけにレンズ
は高価であり、場合により一眼レフ本体の価格をも上回る。

そこで、銀塩時代の「業界」が考えた事として、
「この焦点距離のレンズは、XX用である」と、はっきりと
定義してしまう事であった。

まあ、どのレンズを買ったら良いかわからない、という初級
ユーザー層に対しては確かに効果的な交換レンズ販売戦略だ。

けど、これは良し悪しあって、皆が、その焦点距離のレンズで、
そのような撮り方ばかりになってしまう、
c0032138_17424552.jpg
ポートレート撮影が85mm/f1.4ばかりになってしまった
1990年代以降では、そこから脱却しようと、超広角レンズや、
大口径望遠(300mm/f2.8等)による、今までとは違う
ポートレート撮影技法が流行した事があった。

まあ人物写真とは、その多くが商業的な目的を含んでいる。
アマチュアの場合は、モデル撮影会等で85mm/f1.4を
使ってプロっぽい写真が撮れていれば満足であったろうが
人物写真そのものに商業的な価値がある、という撮影分野、
例えば、商業ポスターや宣材写真等においては、他の写真の
撮影スタイルと横並びで85mm/f1.4で撮ったものでは
目立つ事が無いので、商業的な価値が少くなってしまう。

だから他の写真とは違う、目を引く、すなわち「キャッチー」
な写真を撮るためには、大口径中望遠=ポートレート、
という図式を、どうしても打ち破る必要性があった訳だ。

他の焦点距離の撮影分野でもそうだ、皆が28mmレンズで
綺麗な風景を撮る事が一般的となった1980~1990年代では、
もうそうやって撮るのが当たり前だから、他と違う目立つ
写真とするには、世界各国の綺麗な場所に行ったり秘境に
行ったり夕焼けや雲のかかる特殊な天候状況を狙ったり、
特殊な撮影アングルを狙ったり・・そうやって、手間暇や
時間や、お金をかけないと、他人の写真と差別化ができなく
なってしまう。

そうやって「バブリー」に際限なく他とは違う変わった風景を
撮る為の方向に進むのだが、1990年代のバブル崩壊以降、
(つまり、あらゆる文化や市場において、いままでの方法論
とは違うやり方が色々と求められた時代に)従来手法を嫌った
アート層等は、超広角や魚眼、超望遠あるいはトイカメラと
いった特殊機材、または、クロスプロセス、銀残し等の特殊
現像手法を用いて他者との差別化を計ろうとする。
ここもまた「28mm=風景」という常識を破ろうとする方策
そのものであった。

で、昔も今もそうだが「何を撮りたいのか、はっきりとした
意思を持たない」ビギナーユーザーが「一眼レフが欲しい」
と言って、お金を貯めてそれを買う。

一眼レフの購入時点では、交換レンズを色々と買うという
事に対し「夢」が見られる。
綺麗な風景や、美人のオネイサンや、可憐な花や、空を飛ぶ
格好良い戦闘機・・ レンズ交換をして、それらの被写体に
それぞれ対応する事を「夢見る」わけだ。 

古くは「サンダーバード」、そして様々な「ロボットアニメ」
「スパイ/忍者アクション」等、TVや映画や漫画等の何を見ても、
作業の目的や戦闘状況に合わせて様々な装備や武器を交換して
使うというのは、ユーザーに刷り込まれた「格好良さ」な訳だ。

しかし、いざ一眼を購入した後で、ビギナーユーザーは、
交換レンズの種類の多さと値段を見て、ビビってしまうのだ。

「これはとても揃えてはいられない」と思った一部の初級層は、
「交換レンズを買わない事」の言い訳を無意識に考え始める。
そうしないと、夢を持って一眼レフを購入した事の意味が
無くなってしまうからだ。

そうした初級ユーザー層の、最も一般的な「言い訳」は、
「まだこのレンズを、ちゃんと使いこなしていないから」
である。
だから、新しい交換レンズを買わない(買わなくても良い)
という理屈である。

結局、大多数の初級ユーザーは交換レンズを買わずに一眼レフ
を使用する、当然、一眼レフの真の効能は理解できず、
標準ズームのみでは、撮っていてもコンパクト機や携帯の
カメラと変わり映えもせず、「大きく重いから面倒」と、
だんだん使わなくなり、そうやって数年で仕様的に古くなり、
古いカメラを外に持ち出すのも格好悪くなり、最終的には
全く使わなくなってしまう。
新しい一眼レフに買い換えても、同じ事の繰り返しだ。

一部のユーザー層は、「これではいけない」と考えて、
交換レンズの購入計画を立てる。しかし、何本ものレンズは
予算的にも購入できない、だから最小限の構成を考える。

だが、せっかく買うならば高性能なものが欲しい。なので、
貯金を貯めて「高性能」と呼ばれている高価なズームレンズを
購入する。

単焦点はレンズ本数が増えることが予想されるから、つまり
多額の予算が必要だと思われるから、最初から購入対象には
入っていない。そもそも初級中級層のズーム主体の概念では
「焦点距離の抜けが発生する事が非常に怖い」のだ。
50mmと135mmの単焦点を買ったら、「70mmが必要な時に
どうするのだ?」と、変な考え方に捕らわれてしまう。

それらの初級中級ユーザー層は、単焦点を揃えたく無いから、
本記事で定義する「中望遠」の領域は、70~200mmのf2.8
またはf4通しのズームレンズが購入対象となる。
この概念は、母艦がフルサイズでもAPS-Cでも大差は無い、
もしAPS-C機で標準や広角域が足りないと思えば、24-70mm
とか、16-35mmとかのズームを追加購入する、という考え方に
なるからだ。(=大三元思想)

10万円、20万円、30万円という高価なズームレンズを無理して
購入すれば、もう他のレンズは不要だとも思える事だろう、
「だって、それが一番高いのだがら、一番良いものに決まって
いる」という風に、大きな誤解をしてしまってもやむを得ない。

その何が誤解であるかは、もうここではくどくどと説明しない
「ハイコスパ」という概念で、本シリーズ記事を続けている
事からも想像できるであろう。

中級ユーザーの持つ「焦点距離の抜けが怖い」という概念に
おいては、逆に言えば
「被った焦点距離のレンズを買う必要は無い」という思想にも
繋がる。中望遠は70mm~200mmのズームを持っていれば、
大方それで十分な訳で、あえて単焦点の中望遠レンズを
焦点距離を被ってまで買う必要は無い、と考えるのであろう。

そういう考え方においては、彼らが、あえて単焦点を必要と
するケースはマクロレンズ位であろう。
c0032138_17424485.jpg
前置きがとても長くなったが、こうして「単焦点中望遠レンズ
離れ」は進んだ。現代はAPS-C機とフルサイズ機が混在ずる
時代ではあるが「画角がポートレートに合わないとか」そういう
論点は、APS-C機主流の時代を経て、もう消えてしまったように
思える。カメラメーカーは例えば2000年以降、あまり新設計の
中望遠レンズを出していない、
出てくるのはサードパーティ製のちょっとマニアックなもの
ばかりであり、逆説的に言えばメーカー純正品が弱い分野を
サードパーティは狙ってくるので、そういう図式になる訳だ。

ニコンもまた1990年代以降、85mmレンズの新規開発を
殆どしていないが、まあPCニッコールやエントリーマクロ、
そして絞り環を省いたG型へのアップデートがある。
本レンズAiAF85mm/f1.8Dに関しては、1988年のS型から、
1994年にD型(距離エンコーダー対応)に変更されたが、
そこでレンズ構成には変化が無かった。

現行品は絞り環を持たないAF-S 85mm/f1.8Gとなっているが
これはレンズ構成が異なる。ただしG型はニコン一眼で使用
しないと使い難いので、せっかくのニコンマウントレンズの
特徴、すなわち他の殆どのマウントで使用可能、という長所が
弱くなってしまう、やはり絞り環ががあるSまたはD型レンズが
マニア的には使いやすい。
c0032138_17424473.jpg
余談が長くなり本レンズの事を書く余地が無くなってきた、
本レンズは、描写力が高くボケ質も良く、総合的な性能が良い。
おまけに価格も安い、初期型であれば1万円台の相場で購入
可能だし、D型でも2万円強程度だ。
弱点はMFがスカスカで操作性に劣る事だが、まあやむを得ない。

ニコンマウント中望遠のエントリーのみならず、主力レンズと
しても十分に使えるコスパの大変良いレンズである。

なお、ニコン党ならば85mm/f1.4との比較が気になる点で
あろう、どの時代でもf1.8の兄貴分としてf1.4が存在している。
ビギナーならば、そちらの方が高級品で良いレンズだと思って
も当然であろう。

実は私も1990年代後半にAiAF85mm/f1.4Dを最初に
購入した(当時はF4とかF5に装着して使っていた)
しかし、歩留まりの悪さ(ピントが合わず、ほとんどが
ミスショットとなる)と、コスパの悪さから、それを手放し
本f1.8版にダウングレードした訳だが、むしろ満足している。

思えば、全ての点において、f1.4版が優れていれば
f1.8版は淘汰されて、ラインナップから外れているではないか、
ずっと健在だという事は、何か存在意義があるという事だ。

85mm/f1.4の使いにくさはニコンだけの問題ではない、
その後殆ど全てのメーカーの85/1.4級レンズを入手して使って
いるが、どれも歩留まりの悪さは実用レベルからは程遠く、
すべて趣味(遊び)の撮影にしか使えないであろう。
それはミラーレスマニアックスの各85/1.4級の記事でも
繰り返し述べている事なので、これ以上は割愛する。

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さて、次のシステム、
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カメラは、KONICA MINOLTA α-7 Digital
レンズは、MINOLTA AF100mm/f2
(中古購入価格 20,000円)

ミラーレス・マニアックス第72回で紹介した、
1990年前後のAF単焦点中望遠レンズ。

本レンズはセミレア品である、ヒットシリーズのミノルタ銀塩
α用の交換レンズでありながら、出自もよくわからないし、
中古市場での流通量も極端に少ない。
また、前身となるMFレンズも無く、後継レンズも無い。
交換レンズの進化の流れの中で派生的に登場し、自然に消滅
したものとも思える。

100mm/f2級のレンズはMF時代からも存在するが、
AF/デジタル時代まで含めても種類はさほど多くは無い。
Ai105/1.8,RTS-P100/2,OM100/2,NFD100/2,EF100/2,
DC105/2,LAOWA105/2,αAF100/2等・・
10種類前後しかないであろう。
その中の過半数は所有していて、ミラーレスマニアックス記事
でも紹介済みだが、優秀な描写性能を持つレンズが多い。

本レンズは、それらのレンズの中では最上級の描写力とは
言い難いが、基本的には悪くない。
c0032138_17425016.jpg
本レンズの主要な用途は、2000年代でのライブや舞台撮影で
あった。暗所での撮影においては、口径を考えると開放f2
以下である事が望ましい。

また、被写体との間合いを考えるとAPS-C機においては
中望遠(70~105mm)レンズであることが望ましい。
そしてAFが使え、かつ(ボディ内)手ブレ補正を含む、とまで
なると、2000年代半ばにおいては、コニミノのα-7Dまたは、
SONY α700と、本AF100/2の組み合わせしかありえなかった、

αの他には、PENTAXの85/1.4もあるが、85/1.4は
被写界深度が浅すぎて使い難い。で、その他のメーカーの
システムでは手ブレ補正が内蔵されていない。

PENTAXであれば他にはFA77mm/f1.8が使える、
このレンズは仕様的や性能的には全く問題ないが、あいにく
当時使用していたK10Dは、最高感度がISO1600と低かった。

また2000年代後半からはSONY ZA135/1.8が存在していたが、
定価20万円以上の高価なレンズで当時は所有していなかった。
(現在ではZA135/1.8がこの目的の主力レンズとなっている)

まあ、そのように、ある時代において、どうしてもその
システム(カメラ+レンズ)で無いと成り立たない撮影分野、
というものもあったという事だ。
c0032138_17425040.jpg
現代において、本レンズでなくてはならない必然性は無い、
加えて、レア品でもあり、本レンズを必死に探す必要も無い。

確かに、2000年代後半には、私の知人もライブ撮影用に
本レンズでの上記と同様のシステム構成を狙って探していたが
レアなので、結局入手できなかった模様だ。
c0032138_17425099.jpg
勿論現代では、超高感度を搭載しているカメラが殆どなので
暗所の撮影であっても、どんなレンズでも概ね問題は無い。
本レンズの必要性は高くは無いが、コスパが良くマニアック
なレンズである事は間違いの無い事実だ。

さて、次のシステム、
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カメラは、PENTAX K-5
レンズは、smc PENTAX-DA 70mm/f2.4 Limited
(中古購入価格 22,000円)

ミラーレス・マニアックス記事では未紹介の、
2006年発売のAF単焦点中望遠レンズ(APS-C機専用)
c0032138_17425589.jpg
本レンズの発売時、一部のマニアの間では過去に発売された
フォクトレンダー Color Heliar 75mm/f2.5 SLと
「レンズ構成が極めて似ている」と話題になった。

カラーヘリアー75/2.5 SLはミラーレス第2回記事で
紹介した2000年代初頭のMFレンズであり、各MFマウント用に
発売されていた。描写力に優れるが、生産数が少なく短期間で
生産中止になってしまった為、現在ではレア品である。

DA70/2.4が発売された際、私は「カラヘリと同じなのであれば
描写力は信用できる」と思ったのだが、逆に言えば同じような
レンズであれば必要性が少なく、ずっと購入を保留していた。

本レンズは、後年(2013年)にコーティング性能を強化した
「HD PENTAX-DA 70mmF2.4 Limited」にマイナーチェンジされ
旧来のレンズは「SMC版」と呼ばれるようになり、中古相場が
低下し始めた。そこで2016年に十分に安くなった(22000円)
と見なして購入した次第である。

新しいHD版との実写での相違は知らないし、あまり興味も無い、
旧来のSMC版で撮っていて、逆光耐性等が気になるのであれば、
それを回避しながら使うか、あるいはHD版を買うかどうか?を
コスパを含めて検討し、改めて決めれば良い事だ。
c0032138_17425564.jpg
本レンズの最大の特徴は小型軽量であることだ、
特に薄型であり「望遠パンケーキ」という風に呼ばれる事も
ある。ただし付属の延長型の組み込みフードを装着すると、
その特徴は失われる。

同等のレンズ構成と思われる銀塩用のカラヘリ75/2.5より
大幅に小型化できたのは、本レンズがDA型番の通り、APS-C機
専用レンズであり、イメージサークルの小型化などの光学系の
見直しが出来たからであろう。

ただ、2000年代後半のDA型番レンズは、私はその多くを所有して
いる訳では無いが、それ以前のFA-Limited型に比べて逆光耐性
に劣る点は確かにある。なので薄型のメリットが失われたと
しても、屋外においてはフードを装着するのが良い。

PENTAXには同等の焦点域で、超優秀なFA77/1.8Limited
(ミラーレス第40回、名玉編第4回(第1位))があるので。
そちらを所有するならば不要なレンズであるとも言えるが、
FA77は、やや高価なレンズであるから、コスパの点に関しては
DA70/2.4に分がある。
c0032138_17425548.jpg
DA70/2.4も、弱点は殆ど無いレンズであるから、
PENTAX APS-C機ユーザーであれば持っておいても損は無い。

ただまあ、中級機K-5でも被写界深度の浅い撮影状況では
ピントをはずし易い事がある。なので、PENTAXの一眼ではなく、
ミラーレス機で使用した方が、MFでのピーキングや画面拡大等の
アシスト機能、そして絞込み測光でボケ量確認、ボケ質破綻の
回避等がより厳密に行える。が、DAレンズに絞り環は無いので、
絞り開閉機構を持つアダプターが必要となり、その点は面倒だ。

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次は今回ラストのシステム、
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カメラは、SONY α65
レンズは、SONY 85mm/f2.8 SAM (SAL85F28)
(中古購入価格 15,000円)

ミラーレス・マニアックス補足編第6回で紹介の、
2010年発売のAF単焦点中望遠レンズ。

いわゆる「エントリーレンズ」の位置づけではあるが、
フルサイズ対応であり、なかなか捨てがたい性能を持つ。
c0032138_17430095.jpg
ちなみに型番のSAMというのは、SONYではDCモーター使用
という意味だと聞く。まあ一般的な駆動方式であり、
SSM(超音波モーター)よりも安価で簡便だ。

AFモーターは何が良いか?という議論もあまり意味が無く、
使用レンズの光学的構成やボディ側AF機構との組み合わせに
よっても合焦性能は変わるし、それから、撮影用途とか、
コスパにも影響が大きい。

もし最良の技術的手法が存在していれば、市場は自然にその
方式に統一される。
つまり「デファクトスタンダードになる」とも言える。
「技術」というのは、いつの世でもそう言うものであり、
様々な方式が林立している間は、どれにも長所や短所がある
という事だ。
だから、どれか優れているか?という議論も殆ど意味が無い。
むしろ理解するべきは、機材や用途における、それぞれ技術の
長所を活かし短所を回避しながら使うというノウハウであろう。

本記事ではあまり各レンズの細かい長所や短所を書いていない、
まあ、中望遠単焦点レンズは基本的にどれも高性能であり、
通常の状況で使用する上で何も問題は無い事が普通だからだ。

何かと何かを比べる、という相対的な比較は、容易ではある
のだが、AとBを比べて、この点でBが劣っている、と言っても
絶対的な基準を用いないと、そのBの弱点が実用上で問題で
あるのかどうかは判断しにくく、逆に言えばAの持つ優位点が
本当に長所になりうるかどうかも、比較的な手法では判断が
難しい。

市場における様々な商品は、カメラやレンズに限らず、
あらゆるジャンルで、そうやって比較的な手法で長所を強調
することが多い。例えば、従来比とか、当社比とか、他社製品
との比較とかだ・・

だが、そういう手法では、必ずしもその長所が実用的に意味が
あるかどうかはわからない。従来比が良くとも、そもそも
実用的では無いかも知れない訳だ。
カメラの例で言えば、ミラーレス機のコントラスト検出AF方式
は、まだ未成熟の技術であり、AFの精度や速度で、いくら
従来製品を上回ったところで、まだ実用的レベルとは言い難い。

他の分野の例では「従来より半分の洗剤の量で汚れが落ちる」と
言っても、従来製品の安売り値より2倍高価であれば、それは
結果的に同じ事では無かろうか・・

じゃあ、何故そういう手法で宣伝広告をするか?といえば、
それで消費者が納得して購買行動に走るからだ。
まあ、良く言えば、比較手法は「付加価値」を消費者に意識
させる上で、良い広告戦略ではあるが、逆に悪く言えば、
消費者は、そういう文言には簡単に騙されてしまうという事だ。
c0032138_17430048.jpg
さて、本レンズSAM85/2.8であるが、大きな長所としては、
最短撮影距離が60cmと、かなり短い点がある。
これだけ見ればなかなか凄い、他の(マクロレンズではない)
85mmレンズで、ここまで寄れるものは確か無かったと思うので、
「従来比」ならば、トップクラスの性能であろう。

しかし、ちょっと広く目を向けると、例えば90mm/f2,8の
マクロレンズは「定番」であるから、マニアやベテラン層
ならば誰でも持っている。
だから、仕様が似ている本レンズを、わざわざ近接撮影目的で
持ち出す事は無いであろう。
90mmマクロを使った方がずっと便利な訳だ。

じゃあ、他の用途であるが、かと言って中距離撮影では
開放f2.8と暗く、大きな背景ボケ量を得られない事が、
例えば人物撮影等では不満な点となる。その目的であれば
85mm/f1.4や85mm/f1.8を使った方がベターだ。

本レンズにおける作りの安っぽさや、それによる所有満足度の
低さ等の欠点は、逆に考えれば、安価であって壊しても惜しく
ない「消耗用」レンズとして、過酷な撮影環境、例えば雨天や
雪、あるいは海辺や登山などでの利用も考えられる。
けど、より小型で安価なコンパクト機等の方が本当に過酷な
環境での使用に適しているかもしれない。

あれやこれや考えても、本レンズの用途は、実に中途半端だ。

まあ、小型軽量、近接撮影能力と85mmという焦点距離、
フルサイズ対応可等により、気軽な普段使い用の中望遠として
人物からネイチャー撮影等の汎用性の高さを意識するのが
一番妥当だとは思うが、それでもマニアであれば、代替できる
レンズは多く、あくまで初級中級ユーザー向けであろう。

ただ気になる点として、現在SONYは、αのAマウント機は
縮小傾向で、Eマウント機に主軸を移している。そんな中で
このクラスのエントリーレンズに見合うボディが新製品では
皆無な状況だ。つまり高価なα77Ⅱやα99Ⅱを、本レンズと
組み合わせて使うのはいかにもアンバランスだ。

また、今回使用のα65でも、購入価格の比を見れば、
ボディがレンズ価格の約2倍となり、「ボディを高くしない」
という私のルール(持論)にそぐわない。
α55クラスの中古とかの1万円台の安価なボディであれば、
使い潰すにも最適なのだろうが、現在の中古市場で安価な
αのAマウント機は余り流通していない状況だ。
c0032138_17425996.jpg
色々考えると、新規に本レンズを活用する為のシステムを
構築するのは難しく、αの中級機以下を現有しているユーザー
層において、コスパの良い中望遠レンズを「お試し的」に
使うケースに限定されるであろう。まあ、すなわち本レンズ
の製品コンセプトである「エントリーレンズ」と、それは
等価である。
勿論コスパは良いが、決してマニアックなものでは無いし、
市場あるいは個々のユーザーにおいて、α Aマウント機が
高級機ばかりになると、使い難いレンズとなるだろう事は、
購入の検討時には、十分に理解しておく必要があると思う。

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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MF中望遠レンズを紹介していく事にする。


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