コストパフォーマンスに優れたマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第10回目はAF単焦点広角レンズを4本紹介する。
まず、最初のシステム、
![c0032138_19591516.jpg]()
カメラは、CANON EOS 7D
レンズは、SIGMA AF24mm/f1.8 EX DG
(新品購入価格 38,000円)
ミラーレス・マニアックス第32回記事で紹介した、
2000年代のAF大口径単焦点広角レンズ。
現代では、広角レンズという物は定義が難しい、
35mm判フィルムでの焦点距離で言えば、広角レンズとは、
だいたい28mm~35mmの焦点距離の物を指していた。
だが、それは銀塩MF時代の話であり、銀塩AF時代ともなると、
24mm~31mmを広角と呼び、焦点距離35mmは準広角と
呼ぶようになる。
そしてデジタル時代に入ると、フォーマット(センサーサイズ)
が多様化してしまい、過去記事中でも何度か述べたように、
「広角」の定義が、もはや出来なくなってしまった。
本シリーズ記事においても換算焦点距離の範囲を厳密に決めて
いる訳ではなく「だいたいこのレンズは広角と言えるだろう」
という、かなりアバウトな状況となっている。
![c0032138_19591541.jpg]()
さて、SIGMA AF24mm/f1.8だが、APS-C機であるEOS 7Dに
装着時の換算画角は約38mm相当となる。
まあ、広角と言うより、準広角という感じの画角であるが、
そのあたりは気にしないで話を進めよう。
本レンズは、2000年代初頭の「SIGMA 大口径広角3兄弟」の
うちの1本である、3兄弟には、20mm,24mm,28mmがあり、
いずれも開放f値が1.8と明るく、非常に寄れる(最短撮影
距離が短い)事が特徴である。
これは、この頃にデジタル一眼レフの時代がスタートしたが、
当時のほとんどのデジタル一眼は、APS-Cサイズのセンサーを
搭載していた為、従来の銀塩用レンズでは換算画角が狭くなり、
広角レンズが不足する事を埋める目的でラインナップされた
コンセプトのレンズ群だと思われる。
一応フルサイズ対応であるので、当時の銀塩/デジタル混在期
においては、デジタルでは準広角、銀塩では超広角と、かなり
重宝したシリーズ製品群である。
私としては珍しく、発売直後に新品で購入してしまったのも、
その利便性が最大の魅力であったからだ。
ちなみに2000年頃のAF24mm単焦点レンズでの、普通のスペック
は、24mm/f2.8、最短撮影距離30cm程度、という感じであった。
また、当時の標準ズームレンズは、広角端が28mmスタートの
ものが殆どであり、それ以下の焦点域を含む「広角ズーム」や
「超広角ズーム」は、かなり高価であり、しかも最短撮影距離
が30~40cm程度と長く、広角の撮影技法上は使いにくかった。
そうした時代背景の中、本レンズは、開放f値がf1.8と抜群に
明るく、おまけに最短撮影距離は、驚異の18cmだ!
これは、特殊なレンズを除き、一般的な24mm級広角の中では
トップクラス(まあ1位と言える)の最短撮影距離性能である。
この近接性能と大口径の背景ボケを活かした広角マクロ撮影は、
それまで見た事の無い映像を生み出してくれた。
特に銀塩一眼で使った場合は、24mmそのままの画角であるので、
大口径広角マクロとしての画像のインパクトは、十分すぎる
ほどに存在するレンズであったのだ。
まあ、この非常に魅力的な長所やスペックもまた、本レンズを
発売直後に購入した理由でもある。
購入価格38,000円は、これまで本「ハイコスパ」編で紹介して
きたレンズ群の中では高価な方であり、高コスパとは言い難い
面もあるが、近年まで長期に渡り生産し続けられたレンズ
であり、現在、中古は2万円強の相場で購入できると思うので、
そうであればコスパは良い方であろう。
![c0032138_19591584.jpg]()
なお2010年代後半より、SIGAMは「Art Line」というシリーズ
展開をしており、単焦点レンズは、そのほとんどがf1.4版に
リニューアルされた。しかし、f1.8と比べて半絞り明るいだけ
であり、残念ながら最短撮影距離を短くするというコンセプト
は、それらの新Art レンズには与えられていない。
おまけに価格は旧バージョンより2倍以上も高価になって
しまったので、そう簡単には買えるレンズ群ではなくなって
しまったのも残念な点である。(Art Lineは何本か所有して
いるので、後日紹介する)
まあでも、Art Lineに移行していくのは、単に開放f値を明るく
した事で付加価値を付け、売価を上げたい、という意味だけでは
無いであろう。超高画素時代に対応する為、解像度や画質を
上げるという大命題がそこにはあるのだ。(それ故高価になる、
勿論開発経費の減価償却も、かなりコストに乗ってきている事
だろう)
まあ、というのも、本レンズ(や大口径広角3兄弟シリーズ)の
描写性能は、決して「高い」という訳では無い点があるのだ。
弱点として、解像感がやや甘い、とか、ボケ質が汚い、とか言う
あたりはさておき、実用上の最大の課題は、逆光耐性の低さだ。
大口径にする為に複雑なレンズ構成にしてしまったからか?
逆光状態で、フレアやゴーストが発生しやすい。
ただ、これは銀塩時代にフルサイズ相当で使う場合は顕著で
あったが、たとえば画角が狭いμ4/3機で使う場合には、
逆光条件を回避しやすいという点で、問題点はだいぶ緩和
される。
また、ゴーストについては意図的に作画の中に盛り込む事で、
「暑い夏」「神々しい」「広々とした」「都会的」等の
映像イメージを作りやすい。
現代の映画やドラマ等の映像でも、そのようなシーンでは、
意図的に画面内にゴーストを入れて撮影する状況も多々
見られる。ただビデオ用カメラのレンズは、絞りの形が悪く、
絞り羽根の枚数が少ないものがあるので、そうした映像を
見ていると少々気になる。
まあでも、近年では動画撮影もビデオカメラではなく、
デジタル一眼レフを使う事が主流になりつつあるので、
そうした傾向も、今後は変わってくることであろう。
ちなみに、一眼レフ用の高性能レンズではゴーストが出にくい
ので、逆に上記のようなゴーストが似合うシーンを撮りたい
時には困ってしまうかもしれない(PCによる画像編集必須か?)
![c0032138_19591429.jpg]()
あと、本レンズのもう1つの弱点は大柄である事だ。
最短撮影距離が18cm、と書いたが、レンズの全長が長く、
ワーキング・ディスタンス(WD,レンズ先端から最短撮影距離
までの長さ)は、わずかに数cmしかない。
近接撮影中に、被写体にぶつかるとか、突っ込むとか、
レンズの影が映る、蜂に刺される(汗)等には十分に注意する
必要がある(例:WDが1.5cmのGR Digital 初期型では、
料理の酢豚の皿に突っ込んでしまい、油分でレンズバリヤー
が閉まらなくなって修理に出した事がある)
なお、被写体衝突の回避には、フードを装着する方法もある。
フォルター径も大きくφ77mmもある。
フィルターサイズが大きいと、コスト的なデメリットがあり、
保護フィルターはもとより、ND(減光)フィルターも高価で
装着しずらい。(大口径レンズを昼間絞りを開けて使えない)
ちなみに望遠レンズであれば、例えばφ77mmのフィルターが
無くても、φ72mmフィルターをステップダウン・リングで
装着しても、概ね問題は無い。これは画角が狭いからだ。
だが、本レンズは広角だ、ステップダウンリングを使うのは
やや厳しい、画面周囲に影が写る、いわゆる「ケラれ」が
発生してしまうリスクがある。
まあでも、総合的には若干のコスト高を除き、他に類を見ない
類稀なスペックは、「必要度」が極めて高く「必携レンズ」と
考えても良いと思う。
新Art Line シリーズへの移行に伴い、中古もだんだん入手
しにくくなってくる恐れもあり、見つけたら「買い」であろう。
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さて、次のシステム、
![c0032138_19591458.jpg]()
カメラは、SONY α65
レンズは、SONY DT 35mm/f1.8(SAL35F18)
(中古購入価格 12,000円)
ミラーレス・マニアックス第60回、名玉編第2回記事で
紹介した、2010年代のAF大口径単焦点準広角レンズ。
本レンズはAPS-C機専用なので、換算画角は52.5mm相当
となり、広角とは言い難いかも知れないが、まあ前述のように、
現代では広角の定義そのものが混迷している。
![c0032138_19591449.jpg]()
ミラーレス第60回記事は「最強35mm選手権」であったが、
他の名玉を抑えて圧勝の評価であった。
また、ミラーレス名玉編では全所有レンズ中、第14位という
好評価であった名レンズだ。
なお「ミラーレス名玉編」で紹介したレンズは、できるだけ
本シリーズには重複登場させない方針ではあるが、本レンズ
を「コスパ」の観点からは無視する訳にはいかない。
中古相場12,000円は、現在ではもう少し安価に購入する事が
出来ると思う。この為、本レンズのコスパは最強クラスだ。
本レンズの最大の特徴は、その最短撮影距離である。
それは23cmと驚異的な性能である(旧来はマクロ以外の
35mmレンズの中では最も短かったのだが、近年に発売された
TAMRON SP35mm/f1.8が、最短20cmと、本レンズを上回り
本レンズは第2位となってしまった)
近接撮影では、そのボケ量も撮影倍率も、本レンズよりも
遥かに高価な35mm/f1.4級のレンズをも軽く凌駕する。
弱点は安っぽい作りと、近接性能を除いて、あまり感動的と
言うほどの描写表現力は無い事だ。
つまり、普通の写り、という事であったり、あえて言えば、
ボケ質もさほど優秀では無い。
![c0032138_19592112.jpg]()
このレンズは、いわゆる「エントリー・レンズ」である、
昔からそうなのだが、近年でも、せっかく一眼レフや
ミラーレス機を購入しても、ビギナーユーザーの殆どは
その後、交換レンズを追加購入しない。
「どれを購入したら良いか、わからないから」という理由は
確かにあるとは思うが、恐らくそれは表向きの理由であり、
実際の所は交換レンズが高価すぎるのが最大の問題だろう。
それはメーカーの問題ではあるが、高いレンズを、良いレンズ
だ、とありがたがって購入したがるユーザー側にも責任の一端が
あると思う(=市場のニーズに応じて製品企画での価格は決まる)
また、高いレンズを「良い」とベタ褒めるすメディア側にも
問題がある。2000年代後半から、カメラ関連製品の弱点を
モロに書くメディアは、何故か皆無になってしまった、
だから、そういうメディアからの情報を、そのまま鵜呑みに
すると、高価なレンズ=良いレンズ、という幻影(幻想)を
植えつけられてしまう。
まあ、そういう市場の状況だから、本シリーズ記事のように、
コスパの極めて良いレンズを紹介しているのだが・・・
で、そうした状況はメーカーの側でもわかっているのであろう、
中級ユーザー層は高価な交換レンズを買ってくれるかも
知れないのだが、このままでは、ますますビギナー層の
「交換レンズ離れ」が加速すると思われる。
なので、この状況の打開の為、2010年代以降、各社から
「エントリーレンズ」が発売されている。
この製品群の位置付けは「交換レンズのお試し版」である、
だが、そうだとしても、本DT35/1.8の性能は、お試し版に
しては、やや過剰な程、良すぎるのではなかろうか?
本レンズを1本買えば、APS-C機における他の35mmレンズは、
いらなくなってしまう。なにせ、ミラーレス・マニアックス
記事では数十本の35mm級レンズを紹介しているが、その中で
3本の指に入るレンズであるし、AF部門ならば35mmレンズ中
では1位、そしてコスパは最強レベルのレンズであるからだ。
![c0032138_19592260.jpg]()
SONY α(Aマウント)ユーザーであれば必携のレンズだ。
αユーザーでなくても、APS-C以下のミラーレス機において
アダプターで使用するのも、十分に意味がある。
その際、ボディの価格も安価なものを使用し、ローコストで
あるから、故障や他のリスクが想定される厳しい撮影撮影用
として使うのも良いかも知れない。
チープな外観や作りを割り切れば、文句なく推奨できる
高コスパなレンズである。
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さて、次のシステム、
![c0032138_19592253.jpg]()
カメラは、PENTAX K-01
レンズは、PENTAX DA 35mm/f2.4 AL
(中古購入価格 12,000円)
ミラーレス・マニアックス第47回記事で紹介した、
2010年代のAF単焦点準広角レンズ。
![c0032138_19592269.jpg]()
これも上記D35/1.8と同様にAPS-C専用レンズなので
広角とは言いがたく、PENTAXのWEBサイトでは「標準レンズ」
としてカテゴライズされている位だ。
まあ、それはさておき、本レンズもDT35/1.8と同様に
エントリーレンズだ、しかも中古購入価格も、ほぼ同じ
12000円だ。
しかし、その両者のスペックは大きな差がある、開放f値は、
DT35/1.8より約1段暗いし(シャッター速度が半分になる、
ボケ量が小さくなる)、最短撮影距離もDTの驚異的な23cmに
対して、本DA35/2.4は30cmと標準的な性能だ。
![c0032138_19592102.jpg]()
描写力についても、残念ながらDT35/1.8に若干の分がある。
本レンズDA35/2.4は逆光耐性に問題があるのだ。
まあ、でも、そのあたり全般に間しては、DT35/1.8が
超絶的な高コスパレンズで、むしろ例外的なのであって、
本DA35/2.4も、他のレンズとの比較とか相対的なものではなく、
絶対的な評価点からのポジションを測れば、間違いなく上位に
入ってくるコスパの良いレンズである。
ボケ質は素直で破綻もしにくく、この点に関して言えば
上記DT35/1.8をも上回る。また、デザイン性や作りの良さは
安っぽいDTに対して、本レンズが、はるかに優位だ。
おまけに本レンズにはカラー・バリエーションが存在し、
その数、なんと11種類だか12種類だか、多数あるようだ。
本レンズの「銀色」というのも、実はオーダーカラー品で
あって、ノーマルのレンズの外装色は黒色だったと思う。
まあ、DT35/1.8より「マニアック度」が高いという事である、
平凡でチープな外装はDT35/1.8の弱点であり、
マニアック度の評価点を下げてしまった原因であったが、
(つまり、マニア的観点からは、持っていても、あまり
嬉しくないレンズという事だ)
もし両者が交じり合って、DAの外装でDTのスペックのような
物があれば、もう文句が無い35mmレンズになったに違いない。
で。今回の母艦K-01は、AF/MF性能に致命的なまでの弱点を
抱えるカメラであるが、「エフェクト母艦」としての利用に
おいてはカメラの長所を活かすことができる。
K-01利用において、最善のシステムはピンホールレンズとの
組み合わせだ。
(ミラーレス第59回、補足編第5回、ハイコスパ第7回)
ピンホールでは、ピント合わせが不要という事なのだが、
KマウントAFレンズの一部でも、ピント合わせが比較的
容易なものもいくつかあり、本レンズもその中の1本だ。
![c0032138_19592157.jpg]()
余談だが、K-01はミラーレス機であるのだが、Kマウントの
ままミラーレス化した唯一の機種であるので、アダプター利用
の汎用性はさほど高くない。もしこれがフランジバックの短い
ミラーレス機だったならば、各種アダプターで、特に
ピント合わせの負担の少ない「トイレンズ母艦」としての
用途を持たせられたら最適であっただろう。
まあ、その目的には、PENTAXにおいては Qマウントが存在して
いるのだが、Qマウントの場合ではアダプター親和性が高いが
換算焦点距離の倍率が、Q7で4.6倍と高すぎる(=センサー
サイズが小さすぎる)のと、MF操作系とMF性能が芳しく無い
(ピーキング機能の精度が低い等)ので、やはりちょっと
トイレンズ母艦とするのは厳しい模様だ。
本レンズだが、本格的なデジタル一眼レフ(Kヒトケタ等)
との組み合わせは、性能的にアンバランスなように思える、
(カメラの方をレンズより高くしすぎない、という持論は、
このあたりのバランス感覚にもよる)
なので、K-01クラスの低価格カメラに装着し、エフェクト等で
遊びながらの気軽な撮影、という風な目的に向いている。
![c0032138_19592794.jpg]()
まあ、一眼レフでも、Kフタケタ機や、K-Sシリーズ、
旧世代のK-r等のカラーバリエーションのあるボディと
組み合わせても、ファッショナブルかも知れない。
ただし、中古でボディとレンズを各々単独で購入する際は
カラーバリエーションがある事が裏目に出る。適正な色の
組み合わせが入手しづらくなるからだ。まあ、この事は
他の記事にも書いたが、「オーダーカラー制度」によって、
中古の売買を抑制し、新品購入を伸ばす」という市場効果
(メーカー戦略)もあると思うので、あえてそういう買い方
をする場合は、目的の色が出るまで待つとか、我慢強い中古
購入手法が必要になる。
まあ事実、本レンズ購入時も、黒の中古を何度も見送って
銀が出るまで待った、皆がそういう買い方をするとメーカー
側も困るかも知れないが、まあ、機材購入は、ユーザーが
「どれくらい、その機材を必要としているか?」というニーズ
にも強く関連するから、欲しければ、そのタイミングで新品
でも中古でも買うしか無いのであって、「待って買う」とか
いうのは、むしろ、イレギュラーな購買行動であろう。
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次は今回ラストのシステム、
![c0032138_19592771.jpg]()
カメラは、RICOH GXR
ユニットは、RICOH A12 28mm/f2.5
(中古購入価格 26,000円)
ミラーレス・マニアックス第1回、第7回、第24回、
第59回、補足編第3回記事と、多くの回数紹介した、
2000年代末のAF単焦点広角ユニット。
このユニット(レンズ)を、本シリーズで、このカテゴリー
「AF広角」に入れるかどうかは微妙な判断である。
・・と言うのも、GXRは、ご存知、唯一無二のシステムであり、
まあ、基本的にはミラーレス機に分類されるかもしれないが、
レンズ側にセンサーを持つシステムであり、これはレンズでは
なくて「ユニット」と呼ばれている。
![c0032138_19592766.jpg]()
A12ユニットは、APS-Cサイズの1200万画素、という意味で
あり、その後に続く焦点距離は、28mmと記載があるが、
これはフルサイズ換算焦点距離であり、レンズ部の実際の
焦点距離は 18.3mmとなっている。(レンズ部に記載)
都合5回も過去記事に登場しているので、だいたいの事は
書き尽くしたユニットである。
過去記事と重複するが、最大の長所は、その描写力である。
これは現代でも人気の、高級デジタルコンパクト
RICOH GR/GRⅡの搭載レンズと、ほぼ同等の仕様設計だ。
全く同じものではないが、高描写力のコンセプトは健在だ。
RICOHのGRシリーズの歴史は、銀塩時代の1994年のR1まで
遡る、R1シリーズは昔の記事でも書いた事があるが、
私は派生型を含め数台所有していて、お気に入りであった、
R1シリーズは、プリ(前)GR時代の名機であったと思う。
その後1996年に、傑作機GR1が登場、これの市場インパクト
は非常に大きかった。
私は、そのGR1を購入し、後にGR1s(1998年)に買い換えた、
さらにその後は、派生型のGR10(1998年、現在未所有)
GR21(2000年、過去記事で紹介)、GR1V(2001年、未所有)
を経て、コンパクト機市場はデジタル時代に突入した。
最初は2005年のGR Digital(コンパクト・クラッシックス
第2回記事等で紹介)であり、これも非常に市場インパクト
の高いカメラであった。
その後、2年毎に、GR Digital は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと
バージョンアップ、2013年には、センサーサイズをAPS-C
に拡大した第五世代となり、単に「GR」という名称になった。
その後も、2015年にはGRⅡと順当に進化している。
これがGRシリーズのメインストリーム(主系列)であるのだが、
いつの時代でも、マニアが注目する高性能なコンパクト機で
あった事は間違いない。
本機GXR(2009年)は、このGRシリーズの亜流となる。
メーカーラインナップ的には、GX(2004年)、GX100(2007年)
GX200(2008年)の後に位置づけられるのかも知れないが、
本A12 28mm/f2.5のユニットは、後のGRにも繋がる仕様
(ただし、レンズ構成は異なる)であり、GR Digital Ⅲの
時代の製品ではあるが、後のGRのパイロット版製品で
あったのかも知れない。
本ユニット(レンズ)の高い描写力は、GRのシリーズと
しても通用するレベルであり、発売当時のGR Digital Ⅲが
1/1.7型CCDであった事に対し、APS-Cサイズのセンサー
搭載は、2009年当時としては小型機としては圧倒的な
性能であった。
![c0032138_19592639.jpg]()
本ユニットの弱点であるが、ずばり、AF性能だ。
2009年当時は、ミラーレス機実現に必要なコントラスト検出
AF方式は、まだ発展途上の技術であり、結果的に本システム
では、AF合焦精度が極めて劣悪な状態となっている。
実用上は、殆どピントは合わない。モニターの解像度は低く、
ピントが合っているかどうかもわからず、また、MF性能も
(ピーキング機能の精度、拡大操作系、無限回転式ヘリコイド
操作性、高価て低解像度の外付けEVF等)あまり高くないので、
MFに切り替えても同様にピント合わせは困難だ。
そして、最短撮影距離が20cmと、あまり寄れない事も
不満である。後のGR,GRⅡでは同等のレンズスペックながら、
最短が10cmと、かなり寄れることが特徴であり、
また旧来の1/1.7級センサーのGR Digitalシリーズも
1cmまで寄れる事が大きな長所であったので、本ユニットを、
GRシリーズの亜流として意識すると、「寄れない事」に
対する不満が、かなり大きい。
そして、仮に寄れたとしても、すでに20cm近辺の最短
撮影距離のあたりでは、GXRシステムでのAFピント精度が
壊滅的に悪くなっているので、これ以上寄れたとしても
ピンボケを量産するだけであった事であろう。
その後の時代、コントラストAF技術は、ハイブリッドAFとか、
像面位相差AF、空間認識AF、デュアルピクセルCMOS AF等の
様々な新技術が発展し、現代ではミラーレス機のAFの速度や
精度は、さほど気になるものではないのだが、さすがに、
この時代だ、このあたりはまだまだ未成熟であった。
まあ、2009年の発売時点では、GXRシステムは先進的だった
と言える。だが、年月を経過すると、周囲の機材が進化して
しまうため、性能面は相対的にかなり見劣りしてしまう。
これが、私が言うデジタルカメラの「仕様的老朽化」であり、
カメラの機械としての機能は問題なく使えるにもかかわらず、
心理的に使いたく無くなってしまう訳だ。
高価なデジタルカメラでこの状態になると、投資したコスト
とのバランスが極めて悪く、減価償却的な考え方も厳しい。
だから私は、近年では高価なデジタルカメラを新品購入しない
方針に切り替えた訳だ。(すぐ古くなるから)
本GXRシステムも発売時点ではかなり高価であり、おいそれと
購入できるものではなかった。だが、2015年まで待った時点
では、GXRシステムの中古相場は、かなりこなれてきており、
買い頃となった為、本体とユニット3本をまとめ買いした。
だが購入後に気がついたが「仕様的老朽化」は、すでにかなり
致命的なレベルであった、本システムには後継機は無く、
GXR Ⅱのようなものがあれば、まだ救われたかも知れないが
残念ながら、今後そうした製品が出る可能性はまず無い。
よって、ともかくは、使えるうちに使わざるを得ないのだ、
これが、ミラーレス・マニアックスで、何度も何度も重複して
本システムが登場した最大の理由である。
今(2017年末)から、このシステム(ユニット)を購入する
事は、私の購入時点より、さらに「仕様的老朽化」が進んで
いる為、とても推奨する事はできない。
![c0032138_19592779.jpg]()
ただ、既にこのシステムを所有している場合ならば、
本ユニットは、描写表現力やマニアックさといった項目の
パフォーマンス評価点が高く、結果的に「コスパも良い」
という判断になるとは思う。
つまり、使えるうちに、使ってしまう、というシステムである。
なお、GXRのユニットは、当然GXR専用であり、他のカメラには
転用(装着)ができないので、GXRシステムの減価償却は、
撮影枚数的には相当に厳しいものになる事は追記しておく。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MF広角レンズを紹介していく事にする。
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第10回目はAF単焦点広角レンズを4本紹介する。
まず、最初のシステム、

レンズは、SIGMA AF24mm/f1.8 EX DG
(新品購入価格 38,000円)
ミラーレス・マニアックス第32回記事で紹介した、
2000年代のAF大口径単焦点広角レンズ。
現代では、広角レンズという物は定義が難しい、
35mm判フィルムでの焦点距離で言えば、広角レンズとは、
だいたい28mm~35mmの焦点距離の物を指していた。
だが、それは銀塩MF時代の話であり、銀塩AF時代ともなると、
24mm~31mmを広角と呼び、焦点距離35mmは準広角と
呼ぶようになる。
そしてデジタル時代に入ると、フォーマット(センサーサイズ)
が多様化してしまい、過去記事中でも何度か述べたように、
「広角」の定義が、もはや出来なくなってしまった。
本シリーズ記事においても換算焦点距離の範囲を厳密に決めて
いる訳ではなく「だいたいこのレンズは広角と言えるだろう」
という、かなりアバウトな状況となっている。

装着時の換算画角は約38mm相当となる。
まあ、広角と言うより、準広角という感じの画角であるが、
そのあたりは気にしないで話を進めよう。
本レンズは、2000年代初頭の「SIGMA 大口径広角3兄弟」の
うちの1本である、3兄弟には、20mm,24mm,28mmがあり、
いずれも開放f値が1.8と明るく、非常に寄れる(最短撮影
距離が短い)事が特徴である。
これは、この頃にデジタル一眼レフの時代がスタートしたが、
当時のほとんどのデジタル一眼は、APS-Cサイズのセンサーを
搭載していた為、従来の銀塩用レンズでは換算画角が狭くなり、
広角レンズが不足する事を埋める目的でラインナップされた
コンセプトのレンズ群だと思われる。
一応フルサイズ対応であるので、当時の銀塩/デジタル混在期
においては、デジタルでは準広角、銀塩では超広角と、かなり
重宝したシリーズ製品群である。
私としては珍しく、発売直後に新品で購入してしまったのも、
その利便性が最大の魅力であったからだ。
ちなみに2000年頃のAF24mm単焦点レンズでの、普通のスペック
は、24mm/f2.8、最短撮影距離30cm程度、という感じであった。
また、当時の標準ズームレンズは、広角端が28mmスタートの
ものが殆どであり、それ以下の焦点域を含む「広角ズーム」や
「超広角ズーム」は、かなり高価であり、しかも最短撮影距離
が30~40cm程度と長く、広角の撮影技法上は使いにくかった。
そうした時代背景の中、本レンズは、開放f値がf1.8と抜群に
明るく、おまけに最短撮影距離は、驚異の18cmだ!
これは、特殊なレンズを除き、一般的な24mm級広角の中では
トップクラス(まあ1位と言える)の最短撮影距離性能である。
この近接性能と大口径の背景ボケを活かした広角マクロ撮影は、
それまで見た事の無い映像を生み出してくれた。
特に銀塩一眼で使った場合は、24mmそのままの画角であるので、
大口径広角マクロとしての画像のインパクトは、十分すぎる
ほどに存在するレンズであったのだ。
まあ、この非常に魅力的な長所やスペックもまた、本レンズを
発売直後に購入した理由でもある。
購入価格38,000円は、これまで本「ハイコスパ」編で紹介して
きたレンズ群の中では高価な方であり、高コスパとは言い難い
面もあるが、近年まで長期に渡り生産し続けられたレンズ
であり、現在、中古は2万円強の相場で購入できると思うので、
そうであればコスパは良い方であろう。

展開をしており、単焦点レンズは、そのほとんどがf1.4版に
リニューアルされた。しかし、f1.8と比べて半絞り明るいだけ
であり、残念ながら最短撮影距離を短くするというコンセプト
は、それらの新Art レンズには与えられていない。
おまけに価格は旧バージョンより2倍以上も高価になって
しまったので、そう簡単には買えるレンズ群ではなくなって
しまったのも残念な点である。(Art Lineは何本か所有して
いるので、後日紹介する)
まあでも、Art Lineに移行していくのは、単に開放f値を明るく
した事で付加価値を付け、売価を上げたい、という意味だけでは
無いであろう。超高画素時代に対応する為、解像度や画質を
上げるという大命題がそこにはあるのだ。(それ故高価になる、
勿論開発経費の減価償却も、かなりコストに乗ってきている事
だろう)
まあ、というのも、本レンズ(や大口径広角3兄弟シリーズ)の
描写性能は、決して「高い」という訳では無い点があるのだ。
弱点として、解像感がやや甘い、とか、ボケ質が汚い、とか言う
あたりはさておき、実用上の最大の課題は、逆光耐性の低さだ。
大口径にする為に複雑なレンズ構成にしてしまったからか?
逆光状態で、フレアやゴーストが発生しやすい。
ただ、これは銀塩時代にフルサイズ相当で使う場合は顕著で
あったが、たとえば画角が狭いμ4/3機で使う場合には、
逆光条件を回避しやすいという点で、問題点はだいぶ緩和
される。
また、ゴーストについては意図的に作画の中に盛り込む事で、
「暑い夏」「神々しい」「広々とした」「都会的」等の
映像イメージを作りやすい。
現代の映画やドラマ等の映像でも、そのようなシーンでは、
意図的に画面内にゴーストを入れて撮影する状況も多々
見られる。ただビデオ用カメラのレンズは、絞りの形が悪く、
絞り羽根の枚数が少ないものがあるので、そうした映像を
見ていると少々気になる。
まあでも、近年では動画撮影もビデオカメラではなく、
デジタル一眼レフを使う事が主流になりつつあるので、
そうした傾向も、今後は変わってくることであろう。
ちなみに、一眼レフ用の高性能レンズではゴーストが出にくい
ので、逆に上記のようなゴーストが似合うシーンを撮りたい
時には困ってしまうかもしれない(PCによる画像編集必須か?)

最短撮影距離が18cm、と書いたが、レンズの全長が長く、
ワーキング・ディスタンス(WD,レンズ先端から最短撮影距離
までの長さ)は、わずかに数cmしかない。
近接撮影中に、被写体にぶつかるとか、突っ込むとか、
レンズの影が映る、蜂に刺される(汗)等には十分に注意する
必要がある(例:WDが1.5cmのGR Digital 初期型では、
料理の酢豚の皿に突っ込んでしまい、油分でレンズバリヤー
が閉まらなくなって修理に出した事がある)
なお、被写体衝突の回避には、フードを装着する方法もある。
フォルター径も大きくφ77mmもある。
フィルターサイズが大きいと、コスト的なデメリットがあり、
保護フィルターはもとより、ND(減光)フィルターも高価で
装着しずらい。(大口径レンズを昼間絞りを開けて使えない)
ちなみに望遠レンズであれば、例えばφ77mmのフィルターが
無くても、φ72mmフィルターをステップダウン・リングで
装着しても、概ね問題は無い。これは画角が狭いからだ。
だが、本レンズは広角だ、ステップダウンリングを使うのは
やや厳しい、画面周囲に影が写る、いわゆる「ケラれ」が
発生してしまうリスクがある。
まあでも、総合的には若干のコスト高を除き、他に類を見ない
類稀なスペックは、「必要度」が極めて高く「必携レンズ」と
考えても良いと思う。
新Art Line シリーズへの移行に伴い、中古もだんだん入手
しにくくなってくる恐れもあり、見つけたら「買い」であろう。
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さて、次のシステム、

レンズは、SONY DT 35mm/f1.8(SAL35F18)
(中古購入価格 12,000円)
ミラーレス・マニアックス第60回、名玉編第2回記事で
紹介した、2010年代のAF大口径単焦点準広角レンズ。
本レンズはAPS-C機専用なので、換算画角は52.5mm相当
となり、広角とは言い難いかも知れないが、まあ前述のように、
現代では広角の定義そのものが混迷している。

他の名玉を抑えて圧勝の評価であった。
また、ミラーレス名玉編では全所有レンズ中、第14位という
好評価であった名レンズだ。
なお「ミラーレス名玉編」で紹介したレンズは、できるだけ
本シリーズには重複登場させない方針ではあるが、本レンズ
を「コスパ」の観点からは無視する訳にはいかない。
中古相場12,000円は、現在ではもう少し安価に購入する事が
出来ると思う。この為、本レンズのコスパは最強クラスだ。
本レンズの最大の特徴は、その最短撮影距離である。
それは23cmと驚異的な性能である(旧来はマクロ以外の
35mmレンズの中では最も短かったのだが、近年に発売された
TAMRON SP35mm/f1.8が、最短20cmと、本レンズを上回り
本レンズは第2位となってしまった)
近接撮影では、そのボケ量も撮影倍率も、本レンズよりも
遥かに高価な35mm/f1.4級のレンズをも軽く凌駕する。
弱点は安っぽい作りと、近接性能を除いて、あまり感動的と
言うほどの描写表現力は無い事だ。
つまり、普通の写り、という事であったり、あえて言えば、
ボケ質もさほど優秀では無い。

昔からそうなのだが、近年でも、せっかく一眼レフや
ミラーレス機を購入しても、ビギナーユーザーの殆どは
その後、交換レンズを追加購入しない。
「どれを購入したら良いか、わからないから」という理由は
確かにあるとは思うが、恐らくそれは表向きの理由であり、
実際の所は交換レンズが高価すぎるのが最大の問題だろう。
それはメーカーの問題ではあるが、高いレンズを、良いレンズ
だ、とありがたがって購入したがるユーザー側にも責任の一端が
あると思う(=市場のニーズに応じて製品企画での価格は決まる)
また、高いレンズを「良い」とベタ褒めるすメディア側にも
問題がある。2000年代後半から、カメラ関連製品の弱点を
モロに書くメディアは、何故か皆無になってしまった、
だから、そういうメディアからの情報を、そのまま鵜呑みに
すると、高価なレンズ=良いレンズ、という幻影(幻想)を
植えつけられてしまう。
まあ、そういう市場の状況だから、本シリーズ記事のように、
コスパの極めて良いレンズを紹介しているのだが・・・
で、そうした状況はメーカーの側でもわかっているのであろう、
中級ユーザー層は高価な交換レンズを買ってくれるかも
知れないのだが、このままでは、ますますビギナー層の
「交換レンズ離れ」が加速すると思われる。
なので、この状況の打開の為、2010年代以降、各社から
「エントリーレンズ」が発売されている。
この製品群の位置付けは「交換レンズのお試し版」である、
だが、そうだとしても、本DT35/1.8の性能は、お試し版に
しては、やや過剰な程、良すぎるのではなかろうか?
本レンズを1本買えば、APS-C機における他の35mmレンズは、
いらなくなってしまう。なにせ、ミラーレス・マニアックス
記事では数十本の35mm級レンズを紹介しているが、その中で
3本の指に入るレンズであるし、AF部門ならば35mmレンズ中
では1位、そしてコスパは最強レベルのレンズであるからだ。

αユーザーでなくても、APS-C以下のミラーレス機において
アダプターで使用するのも、十分に意味がある。
その際、ボディの価格も安価なものを使用し、ローコストで
あるから、故障や他のリスクが想定される厳しい撮影撮影用
として使うのも良いかも知れない。
チープな外観や作りを割り切れば、文句なく推奨できる
高コスパなレンズである。
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さて、次のシステム、

レンズは、PENTAX DA 35mm/f2.4 AL
(中古購入価格 12,000円)
ミラーレス・マニアックス第47回記事で紹介した、
2010年代のAF単焦点準広角レンズ。

広角とは言いがたく、PENTAXのWEBサイトでは「標準レンズ」
としてカテゴライズされている位だ。
まあ、それはさておき、本レンズもDT35/1.8と同様に
エントリーレンズだ、しかも中古購入価格も、ほぼ同じ
12000円だ。
しかし、その両者のスペックは大きな差がある、開放f値は、
DT35/1.8より約1段暗いし(シャッター速度が半分になる、
ボケ量が小さくなる)、最短撮影距離もDTの驚異的な23cmに
対して、本DA35/2.4は30cmと標準的な性能だ。

本レンズDA35/2.4は逆光耐性に問題があるのだ。
まあ、でも、そのあたり全般に間しては、DT35/1.8が
超絶的な高コスパレンズで、むしろ例外的なのであって、
本DA35/2.4も、他のレンズとの比較とか相対的なものではなく、
絶対的な評価点からのポジションを測れば、間違いなく上位に
入ってくるコスパの良いレンズである。
ボケ質は素直で破綻もしにくく、この点に関して言えば
上記DT35/1.8をも上回る。また、デザイン性や作りの良さは
安っぽいDTに対して、本レンズが、はるかに優位だ。
おまけに本レンズにはカラー・バリエーションが存在し、
その数、なんと11種類だか12種類だか、多数あるようだ。
本レンズの「銀色」というのも、実はオーダーカラー品で
あって、ノーマルのレンズの外装色は黒色だったと思う。
まあ、DT35/1.8より「マニアック度」が高いという事である、
平凡でチープな外装はDT35/1.8の弱点であり、
マニアック度の評価点を下げてしまった原因であったが、
(つまり、マニア的観点からは、持っていても、あまり
嬉しくないレンズという事だ)
もし両者が交じり合って、DAの外装でDTのスペックのような
物があれば、もう文句が無い35mmレンズになったに違いない。
で。今回の母艦K-01は、AF/MF性能に致命的なまでの弱点を
抱えるカメラであるが、「エフェクト母艦」としての利用に
おいてはカメラの長所を活かすことができる。
K-01利用において、最善のシステムはピンホールレンズとの
組み合わせだ。
(ミラーレス第59回、補足編第5回、ハイコスパ第7回)
ピンホールでは、ピント合わせが不要という事なのだが、
KマウントAFレンズの一部でも、ピント合わせが比較的
容易なものもいくつかあり、本レンズもその中の1本だ。

ままミラーレス化した唯一の機種であるので、アダプター利用
の汎用性はさほど高くない。もしこれがフランジバックの短い
ミラーレス機だったならば、各種アダプターで、特に
ピント合わせの負担の少ない「トイレンズ母艦」としての
用途を持たせられたら最適であっただろう。
まあ、その目的には、PENTAXにおいては Qマウントが存在して
いるのだが、Qマウントの場合ではアダプター親和性が高いが
換算焦点距離の倍率が、Q7で4.6倍と高すぎる(=センサー
サイズが小さすぎる)のと、MF操作系とMF性能が芳しく無い
(ピーキング機能の精度が低い等)ので、やはりちょっと
トイレンズ母艦とするのは厳しい模様だ。
本レンズだが、本格的なデジタル一眼レフ(Kヒトケタ等)
との組み合わせは、性能的にアンバランスなように思える、
(カメラの方をレンズより高くしすぎない、という持論は、
このあたりのバランス感覚にもよる)
なので、K-01クラスの低価格カメラに装着し、エフェクト等で
遊びながらの気軽な撮影、という風な目的に向いている。

旧世代のK-r等のカラーバリエーションのあるボディと
組み合わせても、ファッショナブルかも知れない。
ただし、中古でボディとレンズを各々単独で購入する際は
カラーバリエーションがある事が裏目に出る。適正な色の
組み合わせが入手しづらくなるからだ。まあ、この事は
他の記事にも書いたが、「オーダーカラー制度」によって、
中古の売買を抑制し、新品購入を伸ばす」という市場効果
(メーカー戦略)もあると思うので、あえてそういう買い方
をする場合は、目的の色が出るまで待つとか、我慢強い中古
購入手法が必要になる。
まあ事実、本レンズ購入時も、黒の中古を何度も見送って
銀が出るまで待った、皆がそういう買い方をするとメーカー
側も困るかも知れないが、まあ、機材購入は、ユーザーが
「どれくらい、その機材を必要としているか?」というニーズ
にも強く関連するから、欲しければ、そのタイミングで新品
でも中古でも買うしか無いのであって、「待って買う」とか
いうのは、むしろ、イレギュラーな購買行動であろう。
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次は今回ラストのシステム、

ユニットは、RICOH A12 28mm/f2.5
(中古購入価格 26,000円)
ミラーレス・マニアックス第1回、第7回、第24回、
第59回、補足編第3回記事と、多くの回数紹介した、
2000年代末のAF単焦点広角ユニット。
このユニット(レンズ)を、本シリーズで、このカテゴリー
「AF広角」に入れるかどうかは微妙な判断である。
・・と言うのも、GXRは、ご存知、唯一無二のシステムであり、
まあ、基本的にはミラーレス機に分類されるかもしれないが、
レンズ側にセンサーを持つシステムであり、これはレンズでは
なくて「ユニット」と呼ばれている。

あり、その後に続く焦点距離は、28mmと記載があるが、
これはフルサイズ換算焦点距離であり、レンズ部の実際の
焦点距離は 18.3mmとなっている。(レンズ部に記載)
都合5回も過去記事に登場しているので、だいたいの事は
書き尽くしたユニットである。
過去記事と重複するが、最大の長所は、その描写力である。
これは現代でも人気の、高級デジタルコンパクト
RICOH GR/GRⅡの搭載レンズと、ほぼ同等の仕様設計だ。
全く同じものではないが、高描写力のコンセプトは健在だ。
RICOHのGRシリーズの歴史は、銀塩時代の1994年のR1まで
遡る、R1シリーズは昔の記事でも書いた事があるが、
私は派生型を含め数台所有していて、お気に入りであった、
R1シリーズは、プリ(前)GR時代の名機であったと思う。
その後1996年に、傑作機GR1が登場、これの市場インパクト
は非常に大きかった。
私は、そのGR1を購入し、後にGR1s(1998年)に買い換えた、
さらにその後は、派生型のGR10(1998年、現在未所有)
GR21(2000年、過去記事で紹介)、GR1V(2001年、未所有)
を経て、コンパクト機市場はデジタル時代に突入した。
最初は2005年のGR Digital(コンパクト・クラッシックス
第2回記事等で紹介)であり、これも非常に市場インパクト
の高いカメラであった。
その後、2年毎に、GR Digital は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと
バージョンアップ、2013年には、センサーサイズをAPS-C
に拡大した第五世代となり、単に「GR」という名称になった。
その後も、2015年にはGRⅡと順当に進化している。
これがGRシリーズのメインストリーム(主系列)であるのだが、
いつの時代でも、マニアが注目する高性能なコンパクト機で
あった事は間違いない。
本機GXR(2009年)は、このGRシリーズの亜流となる。
メーカーラインナップ的には、GX(2004年)、GX100(2007年)
GX200(2008年)の後に位置づけられるのかも知れないが、
本A12 28mm/f2.5のユニットは、後のGRにも繋がる仕様
(ただし、レンズ構成は異なる)であり、GR Digital Ⅲの
時代の製品ではあるが、後のGRのパイロット版製品で
あったのかも知れない。
本ユニット(レンズ)の高い描写力は、GRのシリーズと
しても通用するレベルであり、発売当時のGR Digital Ⅲが
1/1.7型CCDであった事に対し、APS-Cサイズのセンサー
搭載は、2009年当時としては小型機としては圧倒的な
性能であった。

2009年当時は、ミラーレス機実現に必要なコントラスト検出
AF方式は、まだ発展途上の技術であり、結果的に本システム
では、AF合焦精度が極めて劣悪な状態となっている。
実用上は、殆どピントは合わない。モニターの解像度は低く、
ピントが合っているかどうかもわからず、また、MF性能も
(ピーキング機能の精度、拡大操作系、無限回転式ヘリコイド
操作性、高価て低解像度の外付けEVF等)あまり高くないので、
MFに切り替えても同様にピント合わせは困難だ。
そして、最短撮影距離が20cmと、あまり寄れない事も
不満である。後のGR,GRⅡでは同等のレンズスペックながら、
最短が10cmと、かなり寄れることが特徴であり、
また旧来の1/1.7級センサーのGR Digitalシリーズも
1cmまで寄れる事が大きな長所であったので、本ユニットを、
GRシリーズの亜流として意識すると、「寄れない事」に
対する不満が、かなり大きい。
そして、仮に寄れたとしても、すでに20cm近辺の最短
撮影距離のあたりでは、GXRシステムでのAFピント精度が
壊滅的に悪くなっているので、これ以上寄れたとしても
ピンボケを量産するだけであった事であろう。
その後の時代、コントラストAF技術は、ハイブリッドAFとか、
像面位相差AF、空間認識AF、デュアルピクセルCMOS AF等の
様々な新技術が発展し、現代ではミラーレス機のAFの速度や
精度は、さほど気になるものではないのだが、さすがに、
この時代だ、このあたりはまだまだ未成熟であった。
まあ、2009年の発売時点では、GXRシステムは先進的だった
と言える。だが、年月を経過すると、周囲の機材が進化して
しまうため、性能面は相対的にかなり見劣りしてしまう。
これが、私が言うデジタルカメラの「仕様的老朽化」であり、
カメラの機械としての機能は問題なく使えるにもかかわらず、
心理的に使いたく無くなってしまう訳だ。
高価なデジタルカメラでこの状態になると、投資したコスト
とのバランスが極めて悪く、減価償却的な考え方も厳しい。
だから私は、近年では高価なデジタルカメラを新品購入しない
方針に切り替えた訳だ。(すぐ古くなるから)
本GXRシステムも発売時点ではかなり高価であり、おいそれと
購入できるものではなかった。だが、2015年まで待った時点
では、GXRシステムの中古相場は、かなりこなれてきており、
買い頃となった為、本体とユニット3本をまとめ買いした。
だが購入後に気がついたが「仕様的老朽化」は、すでにかなり
致命的なレベルであった、本システムには後継機は無く、
GXR Ⅱのようなものがあれば、まだ救われたかも知れないが
残念ながら、今後そうした製品が出る可能性はまず無い。
よって、ともかくは、使えるうちに使わざるを得ないのだ、
これが、ミラーレス・マニアックスで、何度も何度も重複して
本システムが登場した最大の理由である。
今(2017年末)から、このシステム(ユニット)を購入する
事は、私の購入時点より、さらに「仕様的老朽化」が進んで
いる為、とても推奨する事はできない。

本ユニットは、描写表現力やマニアックさといった項目の
パフォーマンス評価点が高く、結果的に「コスパも良い」
という判断になるとは思う。
つまり、使えるうちに、使ってしまう、というシステムである。
なお、GXRのユニットは、当然GXR専用であり、他のカメラには
転用(装着)ができないので、GXRシステムの減価償却は、
撮影枚数的には相当に厳しいものになる事は追記しておく。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MF広角レンズを紹介していく事にする。