コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第8回目は、AFズームレンズを4本紹介していこう。
AFズームというと、非常に広いカテゴリーであり、今時で
あれば、ほぼ99%のカメラユーザーがAFズームを常用して
いると思われる。中にはかなり高価な製品を「良い物」だと
信じて疑わずに使っている中級者層も非常に多い事であろう。
だが、本ブログにおけるマニアックなコンセプトにおいては、
そのような誰でも欲しがる当たり前の高級レンズには、基本的
に注目する事はない、私にとっての「付加価値」は無いからだ。
だが、まあ、AFズームを完全に無視する訳にもいかない、
特にコスパに優れていて、かつマニアックだと思われるもの
だけ紹介していこう。
まず、最初のシステム、
![c0032138_20135124.jpg]()
カメラは、CANON EOS 30D
レンズは、TAMRON AF28-200mm Super Zoom f3.8-5.6
Aspherical XR [IF] MACRO (A03) (以下、200XRと記載)
(中古購入価格 17,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第4回記事で紹介した、
2000年代のAF一眼用高倍率ズームレンズ。
![c0032138_20135002.jpg]()
本レンズは銀塩時代の末期のレンズであるので、当然フルサイズ
対応である、小型高倍率ズームの先駆けとも言える歴史的価値の
非常に高いレンズだ。
購入価格が少々高目なのは、発売間もない時期に知人より購入
した為で、まあ訳ありである。
現代であれば、中古は1万円程度の安価な相場で入手可能だ。
ここで「高倍率」と言う意味は、「ズーム比」を指す。
ズーム比は、肉眼での視野との関係は一切無く、単純に、
ズームレンズの望遠端焦点距離を、広角端焦点距離で割った
数値でしかない。
本レンズの時代以前の(1990年代の)代表的なズームレンズと
言えば、例えば、標準ズームとされるものは、28mm-90mmとか、
28mm-105mmとか、あるいは24mm-120mmとかである。
それぞれのズーム比は、約3,約4,約5となる。
ズーム比の単位としては、mmをmmで割るので、それは相殺される。
数学や物理の用語で言えば、これは「無名数」となり、
本来そこには単位は存在しない。
ただ、一般ユーザーに対し「無名数」を強要する訳にはいかない、
そういう単位は、学術や工学の分野でしか使われないからだ。
そこで、一般向けには「ズーム比、3倍」等とするのだが、
この「倍」という表記が、そもそもの混乱の元凶だ。
3倍とか書けば、他の光学機器、具体的には双眼鏡、望遠鏡、
顕微鏡等では「肉眼の視野に対して、その倍率の分、大きく
見える」という風に使われているので、カメラのレンズの場合
も同様だ、という印象を一般ユーザーに与えてしまうからだ。
勿論120mm程度の焦点距離の中望遠レンズが肉眼の視野の5倍も
大きく写るはずが無い、それを理解できないのは、基本的には、
初級ユーザー側の問題なのだが、しかし販売側においても、
(ズーム比の)倍率をスペックとして大きく書いておけば、
ビギナーユーザーが反応しやすい、という要素があり、一向に
この悪い傾向は改められる風潮が無い。
![c0032138_20135112.jpg]()
さて、本レンズ 200XRのズーム比だが、200mm÷28mmで、
約7.1となる。この時代(2002年)以前に、このような大きな
ズーム比を持つレンズは、TAMRON社自身の旧タイプを除き、
あまり無かったと思う。が、本レンズが注目されたのは、
その最短撮影距離が全域49cmであり、しかも従来モデルよりも
大幅な小型軽量化を実現できた事からだ。
で、TAMRONの旧タイプの28-200mm、具体的な型番をあげれば
71D(1990年代前半、現在未所有)の最短撮影距離は2.1mと
望遠域以外はとても使い物になるスペックではなかった。
(広角側で寄れない)
次くモデルの、171D,271D,371D,471D(1990年代後半)
となると、最短撮影距離は52cmまで短縮されたが、それは特定の
焦点距離(135mm時)のみであり、前モデルの悪印象からか、
これらはあまり注目される事は無かった。それにこれらの筐体は、
やや大柄であり、具体的にはフィルターサイズがφ72mmもあった。
まあ、ユーザーから見れば、このジャンルは発展途上の技術であり、
まだ実用的なものとは見なされていなかったとも思われる。
本レンズ200XRとなって、やっと実用的な高倍率ズームが
出てきた、という印象となり、型番も従来とはがらりと変わって
A03となった。発売当時はいくつかの賞をとったようにも
記憶している。
賞を獲得したとかなると、メディア(まあ、当時ではカメラ誌が
一般的であろう)とかでも盛んに取り上げられ、皆がそれに
注目する、つまり一極集中化現象が起こり、当然、このレンズは
ヒット商品となっていく。
その後の「タムロンと言えば高倍率ズーム」という印象を強く
ユーザーに与えた歴史的レンズであろう。
まあでも、私個人的には「タムロンと言えばマクロレンズ」
であり、高倍率ズームは、本200XRと続く300XR(ミラーレス・
マニアックス第69回記事)までで興味は費えてしまい、
本レンズも長らく知人に貸し出していた状況だ。
描写性能だが、望遠域になるほど若干甘くなる、ただ、この
傾向は兄貴分の300XR(A06)が酷く、本200XRは若干ましだ。
最短が全域49cmというのは望遠側では強い武器であり、
ほぼマクロレンズ的に使用できる。銀塩(=フルサイズ)時代
では、この時の撮影倍率が1/4倍(フルサイズ面に対して実際
に写る大きさの比)であったのは、少々物足りない印象が
あったが、APS-Cデジタル機では0.4倍相当で、ミラーレス機
例えばμ4/3系では、撮影倍率が1/2倍、さらにデジタルズームで
拡大可ともなると、マクロレンズとして使っても不満は無くなる。
広角側での最短49cmは不満であり、28mm相当であれば少なくとも
30cm程度までは寄れて欲しいが、まあ、そういう目的には単焦点
レンズを使えば良いという事になる。
汎用性や利便性が高い高倍率ズームであるが、わざわざ苦手と
する領域で使う必要は無いであろう。
機材は、その長所を活かして使うのが基本であり、弱点ばかりを
気にしていたら、撮影そのものが楽しくなくなってしまう。
![c0032138_20135118.jpg]()
さて、本レンズの後のデジタル時代となってからは、高倍率
ズームのスタンダードは、18-200mmという焦点距離にシフトした、
本レンズは、APS-C機では42-300mm程度の換算画角となって
やや広角が足りない印象になるからだ。
18-200mmをAPS-C機で使えば、27-300mm相当となり、
銀塩時代の300XR(A06)と、ほぼ同等の画角感覚になる訳だ。
だが、どうせ本200XRや300XRは、広角側が仕様的に弱いレンズ
である。だとすれば、広角に重きを置かない望遠系高倍率ズーム
として捕らえれば、それなりに用途はある事だろう。
そして、APS-C機の時代に人気薄であった(=安価な相場だった)
このXRシリーズは十分に買い頃であり、コスパが高いレンズで
あると言える。
まあでも、近年ではフルサイズ機のユーザーも増えている為、
手ごろな価格で買える本200XR等に再注目する傾向もあるかも
知れない(その為、手ブレ補正等を入れた後継機が出ている)
描写力や性能はともかく、歴史的な価値のあるレンズであり、
そういう意味では、マニアであれば、本レンズを知っておく
必要性は、あると思う。
なお、本200XR(A03)と300XR(A06)を比較した場合、
本200XRの方がハンドリングや描写性能の面で使いやすいと
思う(それゆえ、200XRの方を取り上げている)
----
さて、次のシステム。
![c0032138_20135093.jpg]()
カメラは、PENTAX K10D
レンズは、PENTAX FA28-70mm/f4 AL
(中古購入価格 3,980円)
ミラーレス・マニアックス第39回、第67回記事で紹介した、
1990年代のAF一眼用小口径ズームレンズ。
![c0032138_20135123.jpg]()
本レンズは銀塩AF時代のありふれた標準ズームであり、
あまり注目されていなかったと思う。
が、本レンズは、開放f値がf4というやや暗いズームながら、
ズーム全域でf4通しであり、焦点距離でf値が変化しない事が
まず第一の特徴だ。
近年の一部の初級中級ユーザーにおいては、f2.8通しズーム
で、広角、標準、望遠を揃える事を「大三元」と呼び、
f4通しで揃える事を「小三元」と呼ぶ場合がある。
まあ本シリーズ記事では、その手の新型のコスパが悪いレンズを
取り上げることは無いし、そもそも現在私は、それらを所有すら
していない。
ただ、開放f値が変化しない、というズームは撮影面では大きな
メリットがある。最も単純な例をあげればズーミング操作で
シャッター速度が変化する事が殆ど無い、という点である。
(注:構図が変われば、輝度分布も変わる場合もある)
一般的なズームレンズでは望遠側にズーミングすると、開放f値も
低下してしまい、ただでさえブレ易くなる望遠域で、さらに余計に
シャッター速度が低下する事から、その問題点が助長される。
シャッター速度や手ブレ限界の概念を理解していないビギナー層に
とってこれは厳しい事であり、手ブレ補正機能があったとしても
下手をすればカバーできない。
それから、絞り環を持たない現代のレンズにおいては、絞り値は
当然ボディ側からの制御となるが、いったん望遠側にして、
落ち込んだ絞り値は、広角側に戻しても復帰しない事が殆どだ。
具体的には、広角f2.8~望遠f4.5のズームレンズがあったとして
広角側f2.8で、ある程度のシャッター速度が得られている、
しかし、構図を変更しようとし、望遠側にズーミングすると、
開放f値が例えば4.5まで低下し、相応してシャッター速度も
半分以下に落ち込んでしまう。これではブレると思い、ズーミング
を広角側に戻しても、f4.5は変わらず、f2.8には戻らない。
よって、また絞り設定を行い、f2.8に回復しなくてはならない、
そうしないと、シャッター速度が遅いままになってしまうのだ。
AUTO ISOにしておけば、ある程度の感度自動変更により、
手ブレ限界を下回りにくいのは確かだが、例えば、舞台など
かなりの暗所の撮影で、 AUTO ISOが使えなかったり、あるいは
感度上限に近くて余裕が無い等では、大きな問題点となる。
それと、AUTO ISOは特定のシャッター速度まで落ち込むと
1つ上の感度に変更されるが(注:手動でそのシャッター速度を
設定できる機種もあるが、中上級者向け機能だ)その場合では、
仮に1/30秒とかであると、換算300mmの望遠域ともなると
手ブレ補正機能があってもビギナーではアウトで手ブレする。
あるいは、シャッター速度に表現上の意味がある動体撮影等では、
シャッター速度が、そのようにころころと変わるのは好ましくない。
まあ、そういういくつかの例(他にもある)から、開放f値固定の
ズームは開放f値変動型のズームに比べて、はるかに使い勝手が
優れている、いったん開放f値固定型を使って、そのメリットを
理解したら、もう変動型には戻れないようにも思える。
![c0032138_20135881.jpg]()
さて、本レンズだが、実のところそのような大げさなものでは
ない、かなり古いレンズだし、中古相場も恐ろしく安価だ。
恐らく誰も注目しないレンズでもあろう、だからこそ相場も
安価な訳だ。
私は本レンズを購入した事が2度ある、一度は1990年代の銀塩
時代にMZ-3とのセットで購入したが、MZ-3を限定版SE型に
リプレイスした際、SE版には超優秀なFA43/1.9がキットレンズ
となっていて魅力的であった為、ノーマルのMZ-3はFA28-70/4
とともに下取りしてしまったのだ。
だが、本レンズは決して悪い描写力では無かった事がずっと
気になっていて、近年、安価な中古を見つけたので、20年近く
ぶりに再購入した次第だ。
まあ、PENTAXのf4通しズームというのは、当時も、現代も
色々とあって、その殆どが優秀な性能であると聞く、本レンズも
非球面レンズを示すALの型番がついていて、描写力は決して
あなどれない。この圧倒的コスパの良さが、まず本レンズを
本シリーズで取り上げた一番の要因であるのだが・・
![c0032138_20135846.jpg]()
実は、本レンズには、もう1つの隠れた超マニアックな用途が
存在する。
それは「リバースシステム専用レンズ」としての使い方だ。
その件については、ミラーレス・マニアックス第67回記事に
詳しいので、本記事では割愛する。
まあ、リバースシステムとしての特殊用途、つまり
フルサイズ機では、撮影倍率1/2倍~2倍の開放f値固定、
かつ絞り値調整可能なズームマクロ(かつ衝突回避できる
安全な構造に偶然なっている)として、そして、μ4/3機では、
同1~4倍(+デジタル拡大)の「超ズームマクロレンズ」
として使う事が、本レンズ再購入の真の目的だったのだが、
その件を抜きにしても、とてもコスパの良いレンズである。
----
さて、次のシステム。
![c0032138_20135958.jpg]()
カメラは、CANON EOS 7D
レンズは、TOKINA AT-X840 AF80-400mm/f4.5-5.6
(中古購入価格 19,000円)
ミラーレス・マニアックス第62回で紹介した、
1990年代のAF超望遠ズームレンズ。
TOKINAからは、最近までAT-X840Dという同等のスペックの
レンズが発売されていたが、本レンズは、それの初期型である。
ちなみに、マイナーチェンジ時にもレンズ構成に変更は無かった
模様だ。
![c0032138_20135954.jpg]()
遠くのものを大きく写したい、つまり望遠(概ね250mm程度まで)
や超望遠(300mm超)のレンズが欲しいというニーズは、
銀塩時代から良くあった。これは、実際に、野鳥撮影やスポーツ
撮影等で超望遠域が必要な場合はともかく、望遠レンズ全般に
憧れのようなものがあったのであろう。まあ、実際には、大きく
重く高価であるという弱点がある為、よほどの状況では無いと、
単なる「憧れ」だけでは購入できるようなレンズではなかった、
現代ではセンサーサイズを小さくしたロングズーム・コンパクト機
やμ4/3等のミラーレス機、あるいはデジタルズーム機能が普及
した事で、換算700mmや800mmという超望遠域が身近になって来た
事もあり、超望遠に対する「憧れ」のようなニーズは減って来た。
なお、銀塩時代のビギナーユーザーは「ズームレンズ」と「望遠」
の意味を混同している事が良くあり、「ズームが効かない」とか
言う話を良く聞くと「望遠域が足りない」という意味だったりした。
勿論「ズーム」と「望遠」は全く違う概念である事は言うまでも
無い。
さて、本レンズAT-X840の最大の特徴は400mm級という超望遠域
を含む「ズーム」レンズとしては、ミノルタのものと並び、
最軽量クラスである、と言う事だろう。
(400mm単焦点であれば、より軽量なモデルもある)
その重量は1kgを切り、900g台だ。
軽量かつ(中古が)安価であるというのは、大きな特徴であり、
特に、掲載写真のドラゴンボート撮影のような遠距離での長時間
の手持ち撮影が必須で、加えて、雨天や水気、酷暑などの過酷な
撮影環境において使用する際に適切である。
(機動性が高い事と、壊れてもさほど惜しく無い事)
![c0032138_20135885.jpg]()
同じ1990年代のライバルレンズとして、TAMRON 200-400/5.6
(75D)(ミラーレス第71回記事)が存在している。私はそちらも
ドラゴンボート撮影で長期間常用していたレンズである。
(本レンズよりも若干重いが、描写力がやや優れる)
が、200-400は、その後 200-500mm/f5-6.3 (A08)
(ミラーレス第65回記事)にリプレイスされ、さらに
150-600mm/f5-6.3 (A011、G2型あり)(未所有)に
なった、リニューアルのたびに望遠域が拡張されたのは良いが
毎回、その分、大きく重くなり、かつ高価になっていった。
なお、サードパーティー製超望遠ズームのテレ(望遠)端が
伸びるという、この傾向は、TAMRONだけではなく、SIGMAも
TAMRONと同様のタイミングで望遠端を伸ばしていく。
SIGMAからは当初、120-400mm/f4.5-5.6という
使いやすそうな焦点距離のレンズが存在していたが、こちらは、
重量が1640gと、やや重いので購入検討の対象外とした。
その後、SIGMAからは170-500mm,50-500mm,150-500mm,
150-600mm,同SPORTS型のように、テレ端やワイド端を
少しづつ伸ばし、ズーム比を広げる形での進化が続いたのだが、
やはり重量がやや重いという問題があって、いずれのレンズも
購入はしていなかったが、今年に2017年になってやっと軽量な
100-400mmが発売された(後日紹介予定)
で、私は、TAMRONの当初の200-400mm(75D)のサイズ感や
重量感を保ったままのレンズを必要としていたのだが、その型の
中古もだんだん入手し難くなってきた為、予備レンズとして、
本TOKINA ATX-840を購入した次第である。
ちなみに、TOKINAからはMF時代に150-500mmの超望遠ズームが
存在したが、AF時代になってからは、テレ端400mmを超える
ズームは発売されていない。
そして、各カメラメーカー純正の400mm級超望遠ズームは、
価格がかなり高価となり、コスパの観点からは対象外となる。
(ちなみに、ミノルタ製のAF100-400mm/4.5-6.7 APO TELE
というレンズならば、中古相場が3万円台だ、そのレンズは
所有していないが、現行のSONY α(A)マウント機ならば、
手ブレ補正ありで使えるので、純正では唯一狙い目かも知れない)
で、本レンズAT-X840であるが、弱点もいくつかある。
まず、テレ端近くの超望遠域において、フレア発生等、逆光耐性が
低く、解像力の低下もある。本レンズの改良型のATX-840D
ではコーティング特性などの改善が見られるのかも知れないが、
本レンズでは、やや厳しい状況だ。よって雨天等の過酷な環境で
画質面での重要性よりも、ハンドリングや故障リスクの対応等の
メリットを活かすのが良いと思う。
![c0032138_20135873.jpg]()
他の弱点としては、本レンズはAF駆動が遅い事だ、しかし、MFで
対応しようとしても、ズームリングとピントリングが独立回転式
であり、両者の同時操作が出来ない事や、重心位置が常に変動する
事から、全般的にMF操作性が劣る、という問題がある。
AF性能の弱さは、本システムで使用しているAF性能に優れる
EOS 7Dでは若干の問題点改善は図れるが、カメラボディだけ優秀
でも、レンズ側が追いついていなければ根本的な改善にはならない。
前述のように、現代では、なかなか400mm級ズームというものは
サードパーティー製のものは入手しにくくなってきている。
(前述のSIGMA製があるが、まだ新しく中古相場が高い。それから
TAMRONも同様な製品を近日発売予定と聞くが、当然まだ高価だ)
そうした状況の中、比較的近年まで生産されていた本レンズや
後継型は、中古市場では今や最も入手性の良い、コスパ的に許容
できる範囲の400mm級ズームであると言える。
----
次は今回ラストのシステム。
![c0032138_20140649.jpg]()
カメラは、NIKON D70
レンズは、SIGMA ZOOM APO 75-300mm/f4-5.6
(中古購入価格 1,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第7回で紹介の、恐らくは
1990年前後のAF望遠ズームと思わるが、詳しい出自は不明だ。
APO仕様であるので、色収差を低減している。
購入価格が税込み1080円と極めて安価だったので、
レンズよりもカメラの価格が突出しないというルール(持論)
を少しでも適用する為に、カメラはデジタル一眼第一世代の
古いNIKON D70を使用している。
![c0032138_20231029.jpg]()
価格が安価であったのは、半故障品の扱いであった事からだ、
ズーミング操作が殆ど動かず、AFが動く保証も無かった。
購入後、若干強引とも言えるメンテナンスを行った結果、
現状、実際の動作には何ら問題が無い。
ただ実際には、この年代のこのクラスの望遠ズームは実動品で
あっても、数千円と極めて安価に取引されている場合が多い。
性能だが、この時代のSIGAMA製品に限って言えば、APO名称の
ついているものは、そこそこ使える。
(ちなみに、同スペックでAPO無しの廉価版も存在している)
それは本レンズもそうだし、昔の記事で紹介した類似スペック
のSIGMA APO70-300mm/f4-5.6も、同様に普通に良く写った。
(後者は知人に譲渡して現在は未所有)
![c0032138_20140714.jpg]()
本レンズの長所は、高いコストパフォーマンスである、
ジャンク品として購入価格が激安であった事を差し引いても、
3~4万円クラスのレンズに相当する価値はあると思う。
ミラーレス・マニアックス補足編第7回記事では、本レンズを
μ4/3機のDMC-G5に装着し、換算150-600mm(+デジタルズーム可)
でフィールド撮影に極めて使いやすい画角のシステムとなった。
現代のSIGAMA製レンズには存在しない絞り環(しかも1/2段刻み)
がついているのも、直進ズームである事も、アダプターでの
使用時には適している。
APS-Cのデジタル一眼に装着時は、約112~450mm相当の画角で、
まあこれもフィールド撮影向きの画角であろう。
フィールド撮影において、野鳥やノラ猫等の遠距離被写体ではなく、
植物や昆虫などの撮影に切り替えた際に重要になる最短撮影距離の
スペックも1.5mと、申し分無い(APS-C機で1/3倍強の撮影倍率)
若干の弱点であるピントリング形状によるMF操作性の悪さは、
ミラーレス機ではちょっと気になるが、逆にAF一眼に装着すると、
AFメインであれば、その欠点は目立たなくなる。
ただ、APS-C一眼だと画角や撮影倍率が少々物足りなくなるので、
良し悪しあるという感じだろうか・・・
ちなみに勿論、この時代のレンズなのでフルサイズ(銀塩)対応
ではある。ただしAPS-Cよりも、もっと望遠が物足なくなる
だろうし、加えて周辺収差も気になるようになるかも知れない。
![c0032138_20231383.jpg]()
なお、余談だが、SIGMA製のレンズで1990年代までのEF(EOS)
マウントのものを購入する際は注意が必要だ。
というのも、その時代以降(2000年代以降)のEOS一眼レフ
(銀塩、デジタル問わない)に古いSIGMA製レンズを装着すると、
エラーとなって撮れない事が多々あるからだ。
これは恐らくだが、CANON側で他社製レンズを使えないように
電子接点の信号伝達プロトコルを変更したからだと思われる、
これはユーザーにとっては非常に迷惑な話であり、それまで使って
いたレンズが新しいEOSを買ったら使えなくなってしまったのだ。
よって、私の手元にあった何本かの古いEF用SIGMA製レンズは、
銀塩EOSが、まだかろうじで実用的だった2000年代前半までは
使えたのが、デジタル一眼時代に入ってから、長期間使えなく
なってしまっていた。
2010年代に入ってから、やっとEF(EOS)マウント用のアダプターが
ミラーレス機用に発売されたので、10年近くぶりに、それらの
EF用旧SIGMA製レンズが復活する事になった訳だ。
よって、今回紹介したような古いSIGMA製レンズをジャンク等で
見つけたとしたら、EFマウント版は現代のEOSでは動作しない
可能性が極めて高いので購入しない事が無難だ。
なお、本レンズのように、ニコンマウント版であれば、およそ
あらゆるミラーレス機のマウントで使用できるし、ニコン以外の
一部のデジタル一眼レフでも、アダプターを使って(MFで)使用
する事ができる。
余談が長くなったが、APO 75-300mm/f4-5.6 の話に戻ろう。
![c0032138_20140699.jpg]()
まあ、細かい弱点は色々とあるが、「コスパ」という観点を
主コンセプトとした本シリーズ記事では、紹介するのにふさわしい
レンズであろう。
なにせ、この描写性能で1080円という価格であれば、コスパ評価は
満点を飛び越して、超高得点という感じだ。
現代における入手性は良く無いと思うが、たまたまジャンクコーナー
などで見かけたら、買っておいて損は無いレンズだ。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MFズームレンズを紹介していく事にする。
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第8回目は、AFズームレンズを4本紹介していこう。
AFズームというと、非常に広いカテゴリーであり、今時で
あれば、ほぼ99%のカメラユーザーがAFズームを常用して
いると思われる。中にはかなり高価な製品を「良い物」だと
信じて疑わずに使っている中級者層も非常に多い事であろう。
だが、本ブログにおけるマニアックなコンセプトにおいては、
そのような誰でも欲しがる当たり前の高級レンズには、基本的
に注目する事はない、私にとっての「付加価値」は無いからだ。
だが、まあ、AFズームを完全に無視する訳にもいかない、
特にコスパに優れていて、かつマニアックだと思われるもの
だけ紹介していこう。
まず、最初のシステム、

レンズは、TAMRON AF28-200mm Super Zoom f3.8-5.6
Aspherical XR [IF] MACRO (A03) (以下、200XRと記載)
(中古購入価格 17,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第4回記事で紹介した、
2000年代のAF一眼用高倍率ズームレンズ。

対応である、小型高倍率ズームの先駆けとも言える歴史的価値の
非常に高いレンズだ。
購入価格が少々高目なのは、発売間もない時期に知人より購入
した為で、まあ訳ありである。
現代であれば、中古は1万円程度の安価な相場で入手可能だ。
ここで「高倍率」と言う意味は、「ズーム比」を指す。
ズーム比は、肉眼での視野との関係は一切無く、単純に、
ズームレンズの望遠端焦点距離を、広角端焦点距離で割った
数値でしかない。
本レンズの時代以前の(1990年代の)代表的なズームレンズと
言えば、例えば、標準ズームとされるものは、28mm-90mmとか、
28mm-105mmとか、あるいは24mm-120mmとかである。
それぞれのズーム比は、約3,約4,約5となる。
ズーム比の単位としては、mmをmmで割るので、それは相殺される。
数学や物理の用語で言えば、これは「無名数」となり、
本来そこには単位は存在しない。
ただ、一般ユーザーに対し「無名数」を強要する訳にはいかない、
そういう単位は、学術や工学の分野でしか使われないからだ。
そこで、一般向けには「ズーム比、3倍」等とするのだが、
この「倍」という表記が、そもそもの混乱の元凶だ。
3倍とか書けば、他の光学機器、具体的には双眼鏡、望遠鏡、
顕微鏡等では「肉眼の視野に対して、その倍率の分、大きく
見える」という風に使われているので、カメラのレンズの場合
も同様だ、という印象を一般ユーザーに与えてしまうからだ。
勿論120mm程度の焦点距離の中望遠レンズが肉眼の視野の5倍も
大きく写るはずが無い、それを理解できないのは、基本的には、
初級ユーザー側の問題なのだが、しかし販売側においても、
(ズーム比の)倍率をスペックとして大きく書いておけば、
ビギナーユーザーが反応しやすい、という要素があり、一向に
この悪い傾向は改められる風潮が無い。

約7.1となる。この時代(2002年)以前に、このような大きな
ズーム比を持つレンズは、TAMRON社自身の旧タイプを除き、
あまり無かったと思う。が、本レンズが注目されたのは、
その最短撮影距離が全域49cmであり、しかも従来モデルよりも
大幅な小型軽量化を実現できた事からだ。
で、TAMRONの旧タイプの28-200mm、具体的な型番をあげれば
71D(1990年代前半、現在未所有)の最短撮影距離は2.1mと
望遠域以外はとても使い物になるスペックではなかった。
(広角側で寄れない)
次くモデルの、171D,271D,371D,471D(1990年代後半)
となると、最短撮影距離は52cmまで短縮されたが、それは特定の
焦点距離(135mm時)のみであり、前モデルの悪印象からか、
これらはあまり注目される事は無かった。それにこれらの筐体は、
やや大柄であり、具体的にはフィルターサイズがφ72mmもあった。
まあ、ユーザーから見れば、このジャンルは発展途上の技術であり、
まだ実用的なものとは見なされていなかったとも思われる。
本レンズ200XRとなって、やっと実用的な高倍率ズームが
出てきた、という印象となり、型番も従来とはがらりと変わって
A03となった。発売当時はいくつかの賞をとったようにも
記憶している。
賞を獲得したとかなると、メディア(まあ、当時ではカメラ誌が
一般的であろう)とかでも盛んに取り上げられ、皆がそれに
注目する、つまり一極集中化現象が起こり、当然、このレンズは
ヒット商品となっていく。
その後の「タムロンと言えば高倍率ズーム」という印象を強く
ユーザーに与えた歴史的レンズであろう。
まあでも、私個人的には「タムロンと言えばマクロレンズ」
であり、高倍率ズームは、本200XRと続く300XR(ミラーレス・
マニアックス第69回記事)までで興味は費えてしまい、
本レンズも長らく知人に貸し出していた状況だ。
描写性能だが、望遠域になるほど若干甘くなる、ただ、この
傾向は兄貴分の300XR(A06)が酷く、本200XRは若干ましだ。
最短が全域49cmというのは望遠側では強い武器であり、
ほぼマクロレンズ的に使用できる。銀塩(=フルサイズ)時代
では、この時の撮影倍率が1/4倍(フルサイズ面に対して実際
に写る大きさの比)であったのは、少々物足りない印象が
あったが、APS-Cデジタル機では0.4倍相当で、ミラーレス機
例えばμ4/3系では、撮影倍率が1/2倍、さらにデジタルズームで
拡大可ともなると、マクロレンズとして使っても不満は無くなる。
広角側での最短49cmは不満であり、28mm相当であれば少なくとも
30cm程度までは寄れて欲しいが、まあ、そういう目的には単焦点
レンズを使えば良いという事になる。
汎用性や利便性が高い高倍率ズームであるが、わざわざ苦手と
する領域で使う必要は無いであろう。
機材は、その長所を活かして使うのが基本であり、弱点ばかりを
気にしていたら、撮影そのものが楽しくなくなってしまう。

ズームのスタンダードは、18-200mmという焦点距離にシフトした、
本レンズは、APS-C機では42-300mm程度の換算画角となって
やや広角が足りない印象になるからだ。
18-200mmをAPS-C機で使えば、27-300mm相当となり、
銀塩時代の300XR(A06)と、ほぼ同等の画角感覚になる訳だ。
だが、どうせ本200XRや300XRは、広角側が仕様的に弱いレンズ
である。だとすれば、広角に重きを置かない望遠系高倍率ズーム
として捕らえれば、それなりに用途はある事だろう。
そして、APS-C機の時代に人気薄であった(=安価な相場だった)
このXRシリーズは十分に買い頃であり、コスパが高いレンズで
あると言える。
まあでも、近年ではフルサイズ機のユーザーも増えている為、
手ごろな価格で買える本200XR等に再注目する傾向もあるかも
知れない(その為、手ブレ補正等を入れた後継機が出ている)
描写力や性能はともかく、歴史的な価値のあるレンズであり、
そういう意味では、マニアであれば、本レンズを知っておく
必要性は、あると思う。
なお、本200XR(A03)と300XR(A06)を比較した場合、
本200XRの方がハンドリングや描写性能の面で使いやすいと
思う(それゆえ、200XRの方を取り上げている)
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さて、次のシステム。

レンズは、PENTAX FA28-70mm/f4 AL
(中古購入価格 3,980円)
ミラーレス・マニアックス第39回、第67回記事で紹介した、
1990年代のAF一眼用小口径ズームレンズ。

あまり注目されていなかったと思う。
が、本レンズは、開放f値がf4というやや暗いズームながら、
ズーム全域でf4通しであり、焦点距離でf値が変化しない事が
まず第一の特徴だ。
近年の一部の初級中級ユーザーにおいては、f2.8通しズーム
で、広角、標準、望遠を揃える事を「大三元」と呼び、
f4通しで揃える事を「小三元」と呼ぶ場合がある。
まあ本シリーズ記事では、その手の新型のコスパが悪いレンズを
取り上げることは無いし、そもそも現在私は、それらを所有すら
していない。
ただ、開放f値が変化しない、というズームは撮影面では大きな
メリットがある。最も単純な例をあげればズーミング操作で
シャッター速度が変化する事が殆ど無い、という点である。
(注:構図が変われば、輝度分布も変わる場合もある)
一般的なズームレンズでは望遠側にズーミングすると、開放f値も
低下してしまい、ただでさえブレ易くなる望遠域で、さらに余計に
シャッター速度が低下する事から、その問題点が助長される。
シャッター速度や手ブレ限界の概念を理解していないビギナー層に
とってこれは厳しい事であり、手ブレ補正機能があったとしても
下手をすればカバーできない。
それから、絞り環を持たない現代のレンズにおいては、絞り値は
当然ボディ側からの制御となるが、いったん望遠側にして、
落ち込んだ絞り値は、広角側に戻しても復帰しない事が殆どだ。
具体的には、広角f2.8~望遠f4.5のズームレンズがあったとして
広角側f2.8で、ある程度のシャッター速度が得られている、
しかし、構図を変更しようとし、望遠側にズーミングすると、
開放f値が例えば4.5まで低下し、相応してシャッター速度も
半分以下に落ち込んでしまう。これではブレると思い、ズーミング
を広角側に戻しても、f4.5は変わらず、f2.8には戻らない。
よって、また絞り設定を行い、f2.8に回復しなくてはならない、
そうしないと、シャッター速度が遅いままになってしまうのだ。
AUTO ISOにしておけば、ある程度の感度自動変更により、
手ブレ限界を下回りにくいのは確かだが、例えば、舞台など
かなりの暗所の撮影で、 AUTO ISOが使えなかったり、あるいは
感度上限に近くて余裕が無い等では、大きな問題点となる。
それと、AUTO ISOは特定のシャッター速度まで落ち込むと
1つ上の感度に変更されるが(注:手動でそのシャッター速度を
設定できる機種もあるが、中上級者向け機能だ)その場合では、
仮に1/30秒とかであると、換算300mmの望遠域ともなると
手ブレ補正機能があってもビギナーではアウトで手ブレする。
あるいは、シャッター速度に表現上の意味がある動体撮影等では、
シャッター速度が、そのようにころころと変わるのは好ましくない。
まあ、そういういくつかの例(他にもある)から、開放f値固定の
ズームは開放f値変動型のズームに比べて、はるかに使い勝手が
優れている、いったん開放f値固定型を使って、そのメリットを
理解したら、もう変動型には戻れないようにも思える。

ない、かなり古いレンズだし、中古相場も恐ろしく安価だ。
恐らく誰も注目しないレンズでもあろう、だからこそ相場も
安価な訳だ。
私は本レンズを購入した事が2度ある、一度は1990年代の銀塩
時代にMZ-3とのセットで購入したが、MZ-3を限定版SE型に
リプレイスした際、SE版には超優秀なFA43/1.9がキットレンズ
となっていて魅力的であった為、ノーマルのMZ-3はFA28-70/4
とともに下取りしてしまったのだ。
だが、本レンズは決して悪い描写力では無かった事がずっと
気になっていて、近年、安価な中古を見つけたので、20年近く
ぶりに再購入した次第だ。
まあ、PENTAXのf4通しズームというのは、当時も、現代も
色々とあって、その殆どが優秀な性能であると聞く、本レンズも
非球面レンズを示すALの型番がついていて、描写力は決して
あなどれない。この圧倒的コスパの良さが、まず本レンズを
本シリーズで取り上げた一番の要因であるのだが・・

存在する。
それは「リバースシステム専用レンズ」としての使い方だ。
その件については、ミラーレス・マニアックス第67回記事に
詳しいので、本記事では割愛する。
まあ、リバースシステムとしての特殊用途、つまり
フルサイズ機では、撮影倍率1/2倍~2倍の開放f値固定、
かつ絞り値調整可能なズームマクロ(かつ衝突回避できる
安全な構造に偶然なっている)として、そして、μ4/3機では、
同1~4倍(+デジタル拡大)の「超ズームマクロレンズ」
として使う事が、本レンズ再購入の真の目的だったのだが、
その件を抜きにしても、とてもコスパの良いレンズである。
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さて、次のシステム。

レンズは、TOKINA AT-X840 AF80-400mm/f4.5-5.6
(中古購入価格 19,000円)
ミラーレス・マニアックス第62回で紹介した、
1990年代のAF超望遠ズームレンズ。
TOKINAからは、最近までAT-X840Dという同等のスペックの
レンズが発売されていたが、本レンズは、それの初期型である。
ちなみに、マイナーチェンジ時にもレンズ構成に変更は無かった
模様だ。

や超望遠(300mm超)のレンズが欲しいというニーズは、
銀塩時代から良くあった。これは、実際に、野鳥撮影やスポーツ
撮影等で超望遠域が必要な場合はともかく、望遠レンズ全般に
憧れのようなものがあったのであろう。まあ、実際には、大きく
重く高価であるという弱点がある為、よほどの状況では無いと、
単なる「憧れ」だけでは購入できるようなレンズではなかった、
現代ではセンサーサイズを小さくしたロングズーム・コンパクト機
やμ4/3等のミラーレス機、あるいはデジタルズーム機能が普及
した事で、換算700mmや800mmという超望遠域が身近になって来た
事もあり、超望遠に対する「憧れ」のようなニーズは減って来た。
なお、銀塩時代のビギナーユーザーは「ズームレンズ」と「望遠」
の意味を混同している事が良くあり、「ズームが効かない」とか
言う話を良く聞くと「望遠域が足りない」という意味だったりした。
勿論「ズーム」と「望遠」は全く違う概念である事は言うまでも
無い。
さて、本レンズAT-X840の最大の特徴は400mm級という超望遠域
を含む「ズーム」レンズとしては、ミノルタのものと並び、
最軽量クラスである、と言う事だろう。
(400mm単焦点であれば、より軽量なモデルもある)
その重量は1kgを切り、900g台だ。
軽量かつ(中古が)安価であるというのは、大きな特徴であり、
特に、掲載写真のドラゴンボート撮影のような遠距離での長時間
の手持ち撮影が必須で、加えて、雨天や水気、酷暑などの過酷な
撮影環境において使用する際に適切である。
(機動性が高い事と、壊れてもさほど惜しく無い事)

(75D)(ミラーレス第71回記事)が存在している。私はそちらも
ドラゴンボート撮影で長期間常用していたレンズである。
(本レンズよりも若干重いが、描写力がやや優れる)
が、200-400は、その後 200-500mm/f5-6.3 (A08)
(ミラーレス第65回記事)にリプレイスされ、さらに
150-600mm/f5-6.3 (A011、G2型あり)(未所有)に
なった、リニューアルのたびに望遠域が拡張されたのは良いが
毎回、その分、大きく重くなり、かつ高価になっていった。
なお、サードパーティー製超望遠ズームのテレ(望遠)端が
伸びるという、この傾向は、TAMRONだけではなく、SIGMAも
TAMRONと同様のタイミングで望遠端を伸ばしていく。
SIGMAからは当初、120-400mm/f4.5-5.6という
使いやすそうな焦点距離のレンズが存在していたが、こちらは、
重量が1640gと、やや重いので購入検討の対象外とした。
その後、SIGMAからは170-500mm,50-500mm,150-500mm,
150-600mm,同SPORTS型のように、テレ端やワイド端を
少しづつ伸ばし、ズーム比を広げる形での進化が続いたのだが、
やはり重量がやや重いという問題があって、いずれのレンズも
購入はしていなかったが、今年に2017年になってやっと軽量な
100-400mmが発売された(後日紹介予定)
で、私は、TAMRONの当初の200-400mm(75D)のサイズ感や
重量感を保ったままのレンズを必要としていたのだが、その型の
中古もだんだん入手し難くなってきた為、予備レンズとして、
本TOKINA ATX-840を購入した次第である。
ちなみに、TOKINAからはMF時代に150-500mmの超望遠ズームが
存在したが、AF時代になってからは、テレ端400mmを超える
ズームは発売されていない。
そして、各カメラメーカー純正の400mm級超望遠ズームは、
価格がかなり高価となり、コスパの観点からは対象外となる。
(ちなみに、ミノルタ製のAF100-400mm/4.5-6.7 APO TELE
というレンズならば、中古相場が3万円台だ、そのレンズは
所有していないが、現行のSONY α(A)マウント機ならば、
手ブレ補正ありで使えるので、純正では唯一狙い目かも知れない)
で、本レンズAT-X840であるが、弱点もいくつかある。
まず、テレ端近くの超望遠域において、フレア発生等、逆光耐性が
低く、解像力の低下もある。本レンズの改良型のATX-840D
ではコーティング特性などの改善が見られるのかも知れないが、
本レンズでは、やや厳しい状況だ。よって雨天等の過酷な環境で
画質面での重要性よりも、ハンドリングや故障リスクの対応等の
メリットを活かすのが良いと思う。

対応しようとしても、ズームリングとピントリングが独立回転式
であり、両者の同時操作が出来ない事や、重心位置が常に変動する
事から、全般的にMF操作性が劣る、という問題がある。
AF性能の弱さは、本システムで使用しているAF性能に優れる
EOS 7Dでは若干の問題点改善は図れるが、カメラボディだけ優秀
でも、レンズ側が追いついていなければ根本的な改善にはならない。
前述のように、現代では、なかなか400mm級ズームというものは
サードパーティー製のものは入手しにくくなってきている。
(前述のSIGMA製があるが、まだ新しく中古相場が高い。それから
TAMRONも同様な製品を近日発売予定と聞くが、当然まだ高価だ)
そうした状況の中、比較的近年まで生産されていた本レンズや
後継型は、中古市場では今や最も入手性の良い、コスパ的に許容
できる範囲の400mm級ズームであると言える。
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次は今回ラストのシステム。

レンズは、SIGMA ZOOM APO 75-300mm/f4-5.6
(中古購入価格 1,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第7回で紹介の、恐らくは
1990年前後のAF望遠ズームと思わるが、詳しい出自は不明だ。
APO仕様であるので、色収差を低減している。
購入価格が税込み1080円と極めて安価だったので、
レンズよりもカメラの価格が突出しないというルール(持論)
を少しでも適用する為に、カメラはデジタル一眼第一世代の
古いNIKON D70を使用している。

ズーミング操作が殆ど動かず、AFが動く保証も無かった。
購入後、若干強引とも言えるメンテナンスを行った結果、
現状、実際の動作には何ら問題が無い。
ただ実際には、この年代のこのクラスの望遠ズームは実動品で
あっても、数千円と極めて安価に取引されている場合が多い。
性能だが、この時代のSIGAMA製品に限って言えば、APO名称の
ついているものは、そこそこ使える。
(ちなみに、同スペックでAPO無しの廉価版も存在している)
それは本レンズもそうだし、昔の記事で紹介した類似スペック
のSIGMA APO70-300mm/f4-5.6も、同様に普通に良く写った。
(後者は知人に譲渡して現在は未所有)

ジャンク品として購入価格が激安であった事を差し引いても、
3~4万円クラスのレンズに相当する価値はあると思う。
ミラーレス・マニアックス補足編第7回記事では、本レンズを
μ4/3機のDMC-G5に装着し、換算150-600mm(+デジタルズーム可)
でフィールド撮影に極めて使いやすい画角のシステムとなった。
現代のSIGAMA製レンズには存在しない絞り環(しかも1/2段刻み)
がついているのも、直進ズームである事も、アダプターでの
使用時には適している。
APS-Cのデジタル一眼に装着時は、約112~450mm相当の画角で、
まあこれもフィールド撮影向きの画角であろう。
フィールド撮影において、野鳥やノラ猫等の遠距離被写体ではなく、
植物や昆虫などの撮影に切り替えた際に重要になる最短撮影距離の
スペックも1.5mと、申し分無い(APS-C機で1/3倍強の撮影倍率)
若干の弱点であるピントリング形状によるMF操作性の悪さは、
ミラーレス機ではちょっと気になるが、逆にAF一眼に装着すると、
AFメインであれば、その欠点は目立たなくなる。
ただ、APS-C一眼だと画角や撮影倍率が少々物足りなくなるので、
良し悪しあるという感じだろうか・・・
ちなみに勿論、この時代のレンズなのでフルサイズ(銀塩)対応
ではある。ただしAPS-Cよりも、もっと望遠が物足なくなる
だろうし、加えて周辺収差も気になるようになるかも知れない。

マウントのものを購入する際は注意が必要だ。
というのも、その時代以降(2000年代以降)のEOS一眼レフ
(銀塩、デジタル問わない)に古いSIGMA製レンズを装着すると、
エラーとなって撮れない事が多々あるからだ。
これは恐らくだが、CANON側で他社製レンズを使えないように
電子接点の信号伝達プロトコルを変更したからだと思われる、
これはユーザーにとっては非常に迷惑な話であり、それまで使って
いたレンズが新しいEOSを買ったら使えなくなってしまったのだ。
よって、私の手元にあった何本かの古いEF用SIGMA製レンズは、
銀塩EOSが、まだかろうじで実用的だった2000年代前半までは
使えたのが、デジタル一眼時代に入ってから、長期間使えなく
なってしまっていた。
2010年代に入ってから、やっとEF(EOS)マウント用のアダプターが
ミラーレス機用に発売されたので、10年近くぶりに、それらの
EF用旧SIGMA製レンズが復活する事になった訳だ。
よって、今回紹介したような古いSIGMA製レンズをジャンク等で
見つけたとしたら、EFマウント版は現代のEOSでは動作しない
可能性が極めて高いので購入しない事が無難だ。
なお、本レンズのように、ニコンマウント版であれば、およそ
あらゆるミラーレス機のマウントで使用できるし、ニコン以外の
一部のデジタル一眼レフでも、アダプターを使って(MFで)使用
する事ができる。
余談が長くなったが、APO 75-300mm/f4-5.6 の話に戻ろう。

主コンセプトとした本シリーズ記事では、紹介するのにふさわしい
レンズであろう。
なにせ、この描写性能で1080円という価格であれば、コスパ評価は
満点を飛び越して、超高得点という感じだ。
現代における入手性は良く無いと思うが、たまたまジャンクコーナー
などで見かけたら、買っておいて損は無いレンズだ。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MFズームレンズを紹介していく事にする。