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ハイ・コスパレンズ・マニアックス(7)トイレンズ編

コストパフォーマンスに優れたマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第7回目はトイレンズを4本紹介していこう。

まず、最初のシステム、
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カメラは、PENTAX Q7
レンズは、PENTAX 03 FISH-EYE 3.2mm/f5.6
(中古購入価格 5,000円)

ミラーレス・マニアックス第2回,第10回記事で紹介した、
2010年代の Qシステム用魚眼風トイレンズ。
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いわゆる「トイレンズ」ではあるが、PENTAXでは
「ユニークレンズ」という呼び名でラインナップされている。

このユニークレンズのシリーズは4本あって、他には
04(広角),05(望遠),07(キャップ風収差レンズ)がある。
各々ミラーレス・マニアックスのシリーズ記事で紹介済みだ。
これらは、いずれも価格は安価であり、各々数千円の定価だ。
中古もまれに市場に出てきて、その際の相場は、種類により
3000円~5000円程度となるであろう。

03のスペックだが、3.2mmの焦点距離は、Q7装着時には、
16.5mm相当となるが、これは魚眼(風)レンズなので、
焦点距離と画角は直接関係せず、画角は173度となり、
対角線魚眼風の写りである。最短撮影距離は9cmと、まあ短い。

ただ、これらのスペックは、トイレンズの場合あまり意味は無い。
というのも、本レンズの最大の弱点として、ピントが合って
いるのかどうか良くわからない、という点がある。
一応、ピントリングは存在する、ただ、そこにはNear/Farと
ピントを合わせようとする方向が書かれているだけであり、
例えばFar いっぱいまで廻しても、どうも無限遠にピントが
上手く来ていない模様である。
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PENTAX Q7は、一応MF時にピーキング機能が使えるが精度が悪く、
殆どわからない。画面拡大は可能だが、それでも分かり難い。
おまけに、レビュー再生(撮影後の自動再生)に問題があって、
JPEGが解像度通りに表示されない(注:これは同時期=2010年代
前半の他社のミラーレス機でも同様の問題を抱えている機体が
いくつかあり、この時期に供給された再生系部品の不良または
バグ、あるいは制御ソフトのバグが原因として考えられる)

そして、本体PENTAX Q7は、それまでの Q/Q10よりも
センサーのサイズが(1/2.3型から1/1.7型へ)拡張されている。
ユニーク系レンズのイメージサークルは、その際に拡張されては
おらず、1/2.3型対応のままである。
Q7ではこの問題回避の為、画素を少しトリミングして撮影し
その後、1/1.7型センサーの対応画素になるまで拡大している。
これはやや複雑な処理であり、ここでなんらかの問題が発生
している可能性も高い。

これらの状況は、すなわちMFのやりにくさと、システムの
機械的な両方の課題に繋がる問題となっている。
要は、Q7で本03 Fish-Eyeや他のユニーク系レンズを
使った際、どうやってもピントが上手く合わないのだ。

まあ、その点が最大の問題点なのだが、まったく合わない
と言う訳ではなく、思いもしないピント位置で合う事も
まれにある、この理由はよくわからない、上記の本体内部
での画像処理に問題があるのかも知れない。

けど、本レンズはトイレンズである、あまり厳密な事を
言っても始まらないし、そもそも若干ピンボケ気味に
なっていたりしている事もトイレンズの特徴とも言える。
さらに、Q7の最大の特徴である豊富な「エフェクト処理」
をかけて個性的な描写の写真にしてしまえば良い訳だ。

トイレンズを使うというのは、そういう事であり、つまり、
真面目に綺麗な写真を撮ろうとする方が、トイレンズの
本質には似合わない訳だ。
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で、まあ、本レンズに限らず今回の記事で紹介する4本の
トイレンズは、いずれも本格的な写真撮影という観点からは
「所有する必然性はまったく無い」レンズである。

「ミラーレス名玉編」のシリーズ記事では、レンズの評価
項目の1つに「必要度」というものが入っていた。
トイレンズの場合、その殆どは「必要度」の評価点数は
最低点に近いものである。つまり、持っていなくても
何ら困らないレンズ群である訳だ。
その結果トイレンズは上記「名玉編」には、1本もノミネート
されなかった、まあ、それはやむを得ないであろう、
「必要性の無い名玉」というのもおかしな話だ。

ただまあ、トイレンズがどんな性質のレンズであるかという
事は、マニアあるいは中上級者であれば知っておく必要がある、
綺麗に良く写るレンズだけが、写真を撮る為の条件では無い
という事だ・・

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さて、次のシステム
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カメラは、PENTAX K-01
レンズは、KENKO PINHOLE 02
(新品購入価格 3,000円)

ミラーレス・マニアックス第59回,第66回,補足編第5回記事
で紹介した、2000年代の市販ピンホール。
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まず、本レンズは厳密に言えば、「ピンホール」であって、
レンズでは無い。どこにもレンズは入っておらず、単に穴が
開いているだけの物だ。
一般のレンズで言うところの、焦点距離とf値は、この
ピンホールのカメラへの装着の方法によって若干変わってくる、
本システムの場合、焦点距離は約45mm相当(換算画角約68mm)
f値が約f225相当である。

f値が極めて暗いので、一眼レフの光学ファインダーで使用する
のは厳しい、真っ暗で何も見えない状況になる。
デジタル一眼レフのライブビュー機能を用いると画像はなんとか
見えるが、暗い被写体の場合には、ライブビューのゲイン
(=画像の明るさを増幅する度合い)が足りず、モニターが暗く
なってしまう事も良くある。

また、露光時間も極めて長くなる、銀塩時代は昼間でも
1~8秒程度の超スローシャッターが必須だった。
この場合、三脚または、どこかに置いて撮らないとならないが
まあ露光中に、わざとカメラをブラすなどのテクニックも一応
存在はしていた。

デジタル時代においては、ISO感度を十分に高めることで、
数十分の1秒のシャッター速度が得られ、手持ち撮影が
可能となった。しかし、その際にはISO25600以上が必須
である、これ以下だとシャッター速度が足りず、暗い被写体
では手ブレを誘発する。

K-01はピンホール母艦としては最適に近く、AUTO ISO設定の
ままでもISO25600に到達し、ミラーレス機であるから、
ライブビューモニターで撮影する画面が見れる。ゲインは
なんとか足りている様子で、よほど暗い被写体でなければ
ほとんど問題ない。加えて、ボディ内手ブレ補正があるので
焦点距離を手動設定しておけば、ISO感度を手動で12800または
状況により6400~3200迄落としても手持ち撮影が可能だ。

それから、K-01には優秀なエフェクト機能とその操作系があり、
ピンホールであっても、リアルタイムでエフェクト撮影及び
その効果を撮影前に確認できる、という大きな長所がある。
(注:感度が高い状態でエフェクトをかけると、モニター画面
のフレームレート(表示コマ数)は、若干低下する)
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K-01はPENTAX唯一のKマウントミラーレス機であるが、
カメラとしての基本性能は、AF/MFともに致命的な迄の
問題点をかかえ、まあ落第点もいいところなのだが、
このピンホールの母艦として使う際は、全ての弱点が消えて
極めて使いやすいシステムとなる、まさにピンホール撮影の
為にあるような機体だとも言える。

さて、ピンホールは光学的には「パンフォーカス」である、
ピント合わせという概念ば無く、全ての距離の被写体に
ピントが合う。
ただ、完全パンフォーカスと言っても、ピンホールの画質は
はっきりとは写らず、ぼやけた曖昧な写りになってしまう。

また、ピンホールの画質は、穴径と工作精度にほぼ依存する、
穴径は、市販品でも自作品でも、ほぼ0.2mm前後になって
いるとは思うが、さらに、より真円に近い方が良い。

肉眼で形状が良くわからない場合は、太陽に向けて撮影して
みると多数の光芒(光条)が出るので、それらが比較的形が
そろっていればOKと見なすなど、評価の工夫が必要だ。

本ピンホールは市販品だけあって、穴の精度は高い、けれども
少しくらい写りが甘い方がピンホールらしさは出るのだが・・

弱点だが、センサー上のゴミが写り込む事だ、
まあ、これはどんなレンズでも絞り込むとゴミが写り易く
なるのであるが、ピンホールのf値は非常に大きいので特に
顕著に現れる、このあたりはゴミ取り機能のあるカメラでも
防げないと思うので、レタッチは必須になると思う。

ピンホールは銀塩時代は自作するのが普通であった、
ボディキャップにドリルで穴を開け、黒い紙等に針の先で
小さな穴を開け、それをボディキャップに裏から貼り付ければ
出来上がりだ。この場合、焦点距離(画角)はフィルム又は
センサー面から、穴をあけた所までの距離、すなわち、ほぼ
そのマウントのフランジバック長に相当する。

一眼レフの場合、おおむね45mm程度の焦点距離となるが、
やや望遠になりすぎるという向きには、フランジバックの短い
ミラーレス機で工作を工夫(センサーに近づけて配置)すれば
広角気味のピンホールにする事もできる。

f値は、焦点距離÷開けた穴の直径で求まる、
例として、0.25mm径で焦点距離45mmであれば、f180となる。 
穴径は小さい方が、よりシャープに写るが、その分f値が
暗くなるので露光時間は長くなる。

ただまあ、自作ピンホールは、こういう工作や作業に慣れて
いたり工作道具がある事が必須なので、面倒ならば市販品を
買うのも良いであろう、なにせ約3000円と安価なのだ。
ちなみに、本ピンホールは、ほぼM42マウントと等価であるので
アダプターを用いれば、たいていの一眼レフやミラーレス機に
装着可能だ。
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こちらも必須のレンズ(ピンホール)という訳では無いが
歴史的には「カメラの原点」である。光学的にはレンズが
無くても写真は撮れる。という事を実感できる学習用の教材
とも言えるかもしれないが、なんともいえないレトロで郷愁を
誘うような写りには、銀塩時代からファンも多い。

デジタルカメラの内蔵エフェクト、物理フィルター、レタッチ
(編集)等では、なかなかこの効果を得る事はできないので、
そういう意味では、実物のピンホールを持つ価値はあるかも
知れない。

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さて、次のシステム
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カメラは、OLYMPUS E-PL2
レンズは、LOMO 12mm/f8
(新品購入価格 3,000円)

ミラーレス・マニアックス第0回,第7回記事で紹介した、
2010年代のMFトイレンズ。

正式名称を「Lomography Experimental Lens Kit」と言い、
μ4/3用の、魚眼、広角、標準のトイレンズ3本セットの中の
1本である、新品価格は3本で9000円と安価で、1本あたり
3000円相当だ。
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本レンズの最大の特徴は貴重なミラーレス用の広角トイレンズで
ある事だ、ただし、写りはトイレンズと言うほど酷い写りでは
なく本レンズに関しては、上記3本セットの中では普通に写る。

貴重な、という意味だが、μ4/3用の単焦点広角レンズはさほど
多くは無い、特に12mmという焦点距離として選ぶと、
OLYMPUS 12mm/f2,KOWA 12mm/f1.8,SAMYANG 12mm/f2.8
等があるが、いずれも高性能レンズで、価格もかなり高価だ。

本レンズは、それらの高級レンズの僅かに数十分の1の価格で
買えてしまう、まあ、高級レンズ群は、口径(開放f値)が
明るいのが特徴ではあるが、果たして、それらをf8まで絞って、
中遠距離を平面的に撮った写真と、本レンズで同様に撮った
写真を比べてみて、ぱっと見で差異がわかるものであろうか?
多分それは無理だと思う。 

この事は「だったら高級レンズを買っても意味が無い」という
趣旨で言っているのではなく「高性能レンズの特徴を活かした
撮り方をしないと意味が無い」という話だ。
具体的には、それら高級レンズ群には、開放f値の明るさという
長所がある、この為広角レンズでありながらも、被写体に近接
する事で被写界深度の浅い写真を撮る事が出来る訳だ。
広角レンズを絞り込んでパンフォーカスで中遠距離を平面的に
撮る、いわゆる「風景写真撮り」だけに使うのは勿体無い。

この時、高性能レンズの方が寄れる(最短撮影距離が短い)
のであれば、その価値の差は明白なのだが、不思議な事に、
高性能レンズ3本と、本トイレンズの、いずれも最短撮影距離
は20cmと全く同じだ。

逆にトイレンズの特徴を活かすには、出来るだけ悪い撮影条件で
撮ってみると良い。具体的には、酷い逆光条件とか、レンズ
自体の解像度の高さが要求される細かい被写体とかだ。

さらにはカメラ本体のエフェクト機能と組み合わせるのも
効果的だ、そうした機能を使う時は、レンズ自体の高い性能は
さほど必要では無いからだ。
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本LOMO 12mm/f8だが、前述のように、あまりトイレンズ
らしからぬ、普通に写ってしまうのが、まあ弱点と言えば弱点で
あろう。ただ歪曲収差はかなり大きく、周辺光量落ちも出るので
構図上の工夫は常に必要である、収差に関しては、具体的には
画面周辺に放射線方向以外の直線被写体を置かない等である。

全体の作りはプラスチック成型でかなり安っぽい、しかし、
3000円という実売価格を考えると、これもやむを得ない。

多重露光レバーがついていて、機械的操作だけで多重露光が
出来るが、これの使いこないはかなり難しい。
というか、多重露光自体が難しい撮影技術だ。すなわち
一般的にはコマ送りをせずに連続して撮影しないと多重露光
は成り立たない。普通、多重露光は、かけ離れたイメージの
被写体を組み合わせる事で効果的な作画が出来るのだが、
例えば昼間の風景と夜景とを組み合わせたい場合、
その間、そのカメラでの撮影が出来なくなってしまう、
また、先に撮った構図と後から重ねる構図にも意味がある為、
時間を置くと、そのあたりがわからなくなってしまう。

露出値もまた問題だ、画像を重ねれば勿論明るくなるので、
多重露光する枚数に合わせて露出補正をマイナスに設定
しなければならない、カメラの露出計は平均的な露出値
でしか動かず、露出補正も画面全体にしか効かないので、
構図上の個々の部分の露出値を適正にするのは難しい。

まあ、近年のデジタルカメラでは任意のコマに戻って
多重露光が出来る機能が付いているカメラも一部には存在
するのだが、そうであっても露出値の問題等は残る。

そうであれば、撮影した写真をPC上で編集しながら合成する
とか、あるいは、以前の記事でも自作版を紹介したが、簡便な
「比較明合成」ソフトを活用するなどの画像処理を行った方が
多重露光を行うよりも効率的であろう。

まあ作業効率の面から言えばそうだが、「多重露光撮影による
偶然性」という面では、編集作業では偶然はありえず、実際の
多重露光を行わない限り、その「突然変異」の効果は得られない。

ただ、そうだとしても効率が悪い事は否めず、おまけに、仮に
その作品が良かったとしても、その作風は二度と再現性が無い
ので、継続的にその表現を狙う撮影は無理だ。

まあ、偶然性、突然変異性という点では、多重露光に限らず
全てのトイレンズでそれが得られるという事も、1つの特徴で
あると思う、その観点でトイレンズを使うのは、中上級者に
とっては表現力を増長する手段として適正であろう。
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LOMO のレンズでは、普通に撮ると、あまり「突然変異」は
得られないが、逆光など厳しい撮影条件で撮ることで、
それが少しは期待できるレンズとなっている。

---
さて、次は今回ラストのシステム
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カメラは、SONY NEX-3
レンズは、KENKO LENS BABY 3G
(中古購入価格 10,000円)

ミラーレス・マニアックス第11回,第40回記事で紹介した、
2000年代のティルト(あおり)レンズ。

ティルトの効果についての詳細は、それらの過去記事に
詳しいので割愛するが、簡単に言ってしまえば画面内での
ピントの合う位置(平面の傾き)を変更できる事である。
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一般的にはカメラのレンズは、フィルムやセンサーに対し
平行に配置されているので、レンズから等距離の面の被写体に
ピントが合う。しかし、ティルトレンズでは光軸を任意に傾けて
ピント面も傾けてしまうのだ、その為、等距離にある被写体でも、
画面内の、ごく一部にしかピントを合わせ無いようにしたり、
逆に、等距離では無い(平面では無い)被写体全体にピントを
合わせたりする事が可能となる。

原理的にはこういう事なのだが、使いこなしは相当に難しい
レンズである。
元々は、こうした「ティルト」あるいは光軸を平行移動する
「シフト」レンズは、クラッシックな大判カメラや、業務用撮影
機材として使われていたものだ。
例えば集合写真、建築写真、商品写真などがその代表格であろう。

趣味撮影の分野で注目されたのは、2000年代前半の
「ジオラマ風写真」のブームであろう、これの効果は
見た事が無い人達にはインパクトが大きかった、しかしそれは
本格的で高価な業務用「あおりレンズ」の使用や、PCでの高度
なレタッチ(編集)作業を要求するもので、ビギナーが簡単に
真似が出来るものではなかった。

その効果を安価に簡便に得られる事を目的としたのが、
本LENSBABYシリーズであり、元々は海外メーカー製であるが
現在、日本ではKENKOが販売代理店業務を行っている。

LENSBABYは、その後も様々な特殊効果(ソフトやグルグルボケ
等の)レンズを開発して発売しているが、本レンズは、3Gと言う
名の通り、第三世代の製品で、ティルト効果のみに限定される。

LENSBABY製品は、まあトイレンズの一種とは言えるが、写りは
かなり本格的だ、そして値段もそれなりに高価なものも多い。
中古はあまり出回っていないが、あれば手が届く価格帯に
なっているので、興味があればそれを待つのも良い。

さて、ティルト効果のブームは現在は、やや沈静化している
1つは使いこなしが難しいからであろう、そしてもう1つは
時代の流れがあるかと思う。
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ティルトレンズに限らず、トイレンズ全般の話であるが、
前述した「偶然性」を求めるという要素がある。

少し歴史を振り返ってみよう。

2000年代前半にアート系写真を志向するビギナーが、こぞって
トイカメラ(トイレンズ)を使ったというブームがあった。

これについて、私は当初あまり良い印象を持っていなかった、
具体的に、彼ら彼女らは、その当時は銀塩カメラは性能的には
ほぼ頂点に達していて、市場にはデジタルカメラも普及しつつ
ある時代であったが、ビギナーであるから、高価なAF一眼と
高級レンズ、あるいは、より高価なデジタル一眼レフ等は購入
できない。
なので、まともに高性能機材と勝負しても無理だと踏んで
あえてチープなトイレンズやトイカメラで「作品」を作ろうと
したのであった。

で、それは一応成功した、高価な機材で綺麗な写真を撮る
という風潮への完全なアンチテーゼとして、今まで見たこと
もない、ある意味「汚い写真」(ローファイ写真)はアート的
なインパクトも高かったのだ。

見た事が無いという点では、ジオラマ風の写真もそうであった
だろう。
だが問題点は、ジオラマはともかく、トイレンズ写真では、
その再現性が少なかった事だ、偶然性に頼る作風は、同一の
コンセプトでの作風を続ける事が困難だった。
アート系にとってそれは痛い、ギャラリー(閲覧者、観衆)は、
その作者に、ずっと同じ作風を期待してしまうからだ。

2000年代後半となると、デジタル一眼は初級中級クラスにも
手が届く価格帯となって普及した、その結果、「高価な機材で
綺麗な写真を撮る事へのアンチテーゼ」としてのトイレンズや
トイカメラのブームも沈静化してしまった。

2010年代となると、ミラーレス機や一部のデジタル一眼レフ、
あるいは携帯電話カメラや、スマホアプリでさえも、多数の
エフェクト(アートフィルター)が搭載されるようになり
その大半には、トイカメラ系のエフェクトが入っているし、
ジオラマ風効果を搭載しているカメラも多い。

それらの機能を使えば、「偶然性に頼る」という弱点は
ある程度解消できる、まあ一部のカメラには、あえてランダムに
効果を変化させるトイカメラ系エフェクト(例:クロスプロセス)
も入ってはいるが・・
でも、そうなると、今度は「誰にでも撮れる」という、別な
問題点が出てくる。アートとして考えると、他人と同じ事を
やっていても意味が無いからだ。

まあそうなると、エフェクトの使い方そのものに視点が変化
してきているという事になる。

ということで、現代においては、トイカメラ系効果あるいは
ジオラマ風効果は、もはや当たり前、誰でも、好きにそれは
使えば良いので、特別な事ではなくなり、その事から特殊性
(あるいは個性)というアート面の利点は失われてしまった。

そしてトイレンズ自身も、あまり人気が無くなってきている、
わざわざ、そんな機材を買わないでも、カメラ本体やPCでの
編集でどうにでもなるからだ。

加えて、本格的な機材で写真を撮れる環境(機材やスキル)が
ある中上級層は、もっとトイレンズには興味が無い。せっかく
高いお金を出して購入した自慢の機材や、苦労してそれを使い
こなす為にした「修行」が、トイレンズでチープな作品を撮る
というスタンスでは、スタート地点に逆戻りしてしまうからだ。

まあでも、逆に、そういう環境だからこそ、中上級者には
もっとトイレンズに着目してもらいたいようにも思える。

ビギナーの場合では、写真撮影に関する知識やスキルがまだ
不足していて、それ故に、手ブレ、ピンボケ、露出オーバーや
アンダー、超逆光でのフレアやゴースト、などの偶然性効果が
うまくトイレンズの特性とマッチして、より面白い作品が
撮れたのかも知れない。しかし中上級者ともなれば、そうした
ミスとも言える撮り方は自然に行わなくなってしまう。

だが、トイレンズは、そういう撮り方をした方が基本的には
面白い訳だ、だから、あえて今まで身につけてきた知識や
スキルを別の方向性に使って、いかにトイレンズで面白い
効果を得るか?その為には、写真知識を逆用してあえて
ミスをする撮り方をしなければならない、それがまた、うまく
すれば写真表現の幅を広げる事に繋がるわけだ・・
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余談が非常に長くなった、LENSBABY 3Gだが、まあ、ともかく
使いこなしが難しいレンズである。

難しいというのは2点ある、1つはその操作性だ、うまく効果
を出すには、レンズの傾きを含めたかなり微妙な操作が要求
される、一般には三脚使用が推奨されるかもしれないが、
私の場合、三脚を使わない撮影スタイルだし、そもそも三脚を
使った事で本レンズの操作性が劇的に改善されるという訳でも
無い。

SONY NEX-3を使用しているのは、このカメラの形状と仕様から、
手持ちティルト撮影が比較的容易という事で「ティルト母艦」
としているカメラだからだ。他のカメラではさらに難しい。
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もう1つの問題は、どういう作画意図で撮影するかが難しい事だ。
つまり、ティルト効果の度合の事前予想がほとんど効かない
ので、撮ってみないとわからない、という状況だ。
コントールできない作画は、前述の「偶然性写真」になって
しまう可能性も高い。

これらの難しさは、一般レンズを含めた、あらゆるレンズ中で
最難関とも言えるかもしれない。そして、こういう難しいレンズ
だからこそ中上級者にも使って貰いらたいレンズであるとも
言える。これに挑戦する事は「修行」(練習)としても意味が
あると思えるからだ。

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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、AFズームレンズを紹介していく事にする。


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