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ハイ・コスパレンズ・マニアックス(6)MF望遠レンズ編

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コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第6回目はMF単焦点望遠レンズを4本紹介していこう。

まず、最初のシステム、
c0032138_20041497.jpg
カメラは、OLYMPUS E-410(フォーサーズ機)
レンズは、OLYMPUS OM SYSTEM Zuiko 135mm/f3.5
(中古購入価格 2,800円)

ミラーレス・マニアックス補足編第7回記事で紹介した、
1970年代~1990年代のOMシステム用MF小口径望遠レンズ。

本シリーズ記事(本ブログ)における望遠とは、レンズ自身の
焦点距離が125mm~250mm程度のものを指す。
ちなみに、70~120mm程度の焦点距離のレンズの事は「中望遠」
同300mm以上のレンズは「超望遠」と、一応は定義している。

一応は、と書いたのは、これらは銀塩(35mm判フィルム)時代の
定義であり、現代のデジタル時代においては、センサーサイズの
種類が多く、加えてデジタルズームやデジタルテレコン、さらには
ワイドコンバーター、レデューサーや、マウントアダプターに
付随したテレコンバーター、等の様々な撮影機材環境が存在し、
焦点距離と画角の関係は、一概には結び付けられなくなっている。

事実、本システムでも、フォーサーズ機であるE-410装着時の
画角は、換算270mm相当となり、もはや超望遠レンズの領域だ。
c0032138_20041410.jpg
まあ銀塩時代であってもハーフ判やブローニー判、110、APS等
様々なフォーマット(=フィルムのサイズ)が存在していたので
現代と同様にレンズ焦点距離と画角の定義は曖昧であったのだが、
銀塩一眼レフ全盛期の1970年代~2000年頃は、一眼レフに
使うフィルムと言えば35mm判がほぼ全てあったので、
焦点距離と画角のイメージは、だいたい連動していた訳だ。

そして、その時代の広角とか望遠とかの呼称が現代にまで引き継が
れている。なお、PENTAX等の一部のメーカーでは、デジタル機
(一眼)が、ほぼ全てAPS-C機であった近年迄は、デジタル専用の
DAレンズ等において、例えば50mmレンズを、その換算画角で
望遠と定義していた事もあったのだが、そのPENTAXですらも、
近年フルサイズデジタル一眼をリリースした事で、そういう換算
画角で呼ぶ新たな習慣(文化)が、今後も続けられるかどうかは
不明(微妙)である。

結局、現代においては「レンズの焦点距離と画角が対応しない」
という混乱はどうやっても避けられない、だとすれば、開き直って
35mm判銀塩(フルサイズ)での、焦点距離に対する呼び名を
そのまま使った方がわかりやすいのではなかろうか?

さて、その銀塩一眼の時代に、本レンズは長期間販売されていた
のだが、ちょっとここでまた余談である。

MF一眼レフの当時は、一眼レフのボディを購入時に付属している
(セット、あるいはキットとなる)レンズは、50mm標準レンズ
である事が普通であった。
今時であれば、換算画角28mm~90mm程度の「標準ズーム」が
セットである事が当たり前なのだが、まあ時代背景が異なる。
そのMF一眼の時代でもズームレンズはあったが、当時の技術に
おいては設計に無理をぜずに広角側に焦点距離を伸ばす事が
難しく、例えば35mm~70mmや、35mm~105mmといった
(標準)ズームである事が殆どであった。

まあ、35~70mmのようなズーム比が狭くて焦点域も一般的な
ズームであれば50mm標準レンズでフットワークを効かして撮れば
十分に等価であり、かつ50mmレンズはf1.4~f1.8級であるので、
f3.5~f4.5級である暗いズームよりも、ボケ表現力にも暗所の
撮影での手ブレ耐性にも優れるし、さらに厳密に言えば、
単焦点の方がズームより画質も良かった。

なので、1980年代後半からのAF一眼時代に入るまでは、依然、
50mm標準レンズがMF一眼レフのキットレンズであった訳だ。

そして、その頃のユーザー層もまた、現代でのビギナー層と同様に
せっかくレンズ交換が可能という特徴を持つ一眼レフを買って
おきながら、「交換レンズを一切買わない」というユーザー層が
殆どであっただろう。

ただ、その点については、可処分所得(=使えるお金)に対する
一眼レフセットやレンズの価格の比率が、現代よりも相対的に
高価な時代でもあったので、誰でも、そう簡単に交換レンズを
ポンポンと買えるような状況でも無かったと思われる。

で、それでも一部のユーザーは、やはり交換レンズが欲しくなる。
その際、当時のユーザーのニーズあるいは憧れは「望遠レンズ」
であったであろう。

その当時のメーカーにおけるレンズ販売ラインナップは単焦点中心
であり、その焦点距離は、現代の単焦点ラインナップと大差無い。
つまり、50mmの上は、85mm、100mm or105mm、135mm・・
のような感じである。
c0032138_20041502.jpg
じゃあ、当時、望遠が欲しいユーザーは何mmのレンズを最初に
買ったのであろうか?

本来ならば、私の持論においては、単焦点レンズを複数使用する
場合の、その焦点距離の系列は、焦点距離が2倍づつ変わる事が
望ましい。
つまり、50mmの次は100mm、200mmという風に2倍づつ変化
すると、これに相応する画角、度(°)も、ほぼ2倍つづ変化し、
写る範囲は対角線距離で2倍、面積で4倍づつ変化する、これが
最も使いやすいレンズ交換における目安である、という持論だ。

この「系列論」においては、もう1つ、上記の焦点距離群を
大体√(ルート)2倍した、35mm→85mm→135mmという
系列が存在する。これもまたレンズ交換時に使いやすい訳であり、
逆に言えば、もし35mm→50mm→85mm→105mmのように
√2倍で変化する系列を使うのは、少々細かすぎるという事にもなる。

これは画角的な使い勝手のみならず、35mmと50mmレンズを
いちいちレンズ交換をして使うのは画角が近い故に面倒臭い、
という要素もあり、さらには、そんなに細かくラインナップを
揃えるほどは予算が無い、という事も言えるであろう。

まあ、当時のユーザーでは50mmの上は本来は100mmあたりが
使いやすいのだが「望遠が欲しい」というニーズにおいては、
ちょっとそれより伸ばして、135mmを買う事が普通であった。

で、沢山売れる工業製品は安価になるのが当時の常識であり、
100mmのレンズよりも135mmのレンズの方が恐らく安価で
あっただろう。なので、ますます135mmの焦点距離のレンズは、
望遠レンズの「定番」となって定着したのである。

余談や前置きが非常に長くなったが、このような状況の中で、
本OM135/3.5は存在していた、すなわち当時の定番「望遠レンズ」
であった訳だ。
c0032138_20041500.jpg
定価が比較的安価で多くの生産(販売)本数があったならば、
現代の中古市場でも多くが流通している、しかし中古レンズを
狙うユーザー層は、よほどのマニアでも無いかぎり、今時、
こんな30年以上も前のレンズを欲しがる訳は無い、それに、
マニアは、こういうありふれたレンズは殆ど見向きもしない。

加えて、135mm程度の画角では、現代では、もはや望遠とは
言えず、下手をすれば標準ズームの画角内に含まれている。
よって、この手の135mmのMF単焦点望遠レンズの中古は、
現代では恐ろしく不人気であり、非常に安価な相場でもある。

本レンズOM135/3.5の2800円という購入価格は、むしろ高目の
相場だとも言え、まあ1000円~2000円で売られていても決して
不思議では無い。

で、本レンズの長所短所だが、いずれもあまり見当たら無く、
まあ、ありふれた平凡な性能の普通の望遠レンズでもある。
ただ、平凡=低性能と言う訳でもなく、例えば現代のキットズーム
での135mm相当での画角時の描写と比べたら、少なくとも同等、
あるいは収差や解像度などで本レンズの方が良い可能性もあり、
さらに言えば、f3.5という開放f値は、単焦点レンズの常識から
言えば小口径であるが、ズームレンズの水準では、もはや
大口径の部類だ。だから、ボケ表現力がズームレンズよりも
単焦点の方が高い、というメリットすらある。

そういう風に現代にも通用する性能(描写表現力)でありながら
価格がとてつもなく安価である、という事から「コスパが良い」
という観点においては、疑いも無い事実であると言える。

総合的には、本レンズ、OM135/3.5は購入価値のあるレンズでは
あると思う。
ちなみに、OM 135mm/f2.8という仕様の近いレンズも存在する。
そちらは昔、短期間だけ所有していたが譲渡してしまっていた、
描写傾向は余り覚えていない(汗) そのf2.8版の方が
現代ではやや入手しずらいかも知れないが、まあ偶然見つけたら
どちらでもお好みで・・

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さて、次のシステム、
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カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、PENTAX SMC-Takumar 200mm/f4
(中古購入価格 1,000円)

ミラーレス・マニアックス第70回記事で紹介した、
1970年代のMF望遠レンズ。

本レンズは、M42マウントである、この為、汎用性が極めて高く、
多くの他マウントのカメラ(一眼、ミラーレス)でアダプターを
介して装着する事が可能だ。
c0032138_20041499.jpg
μ4/3機であるDMC-G6装着時の換算画角は400mm相当と、かなりの
望遠(超望遠)画角となる、単焦点でこの画角だと被写体探しに
苦労しそうなのだが、実際には、DMC-G6はデジタルズーム系の
仕様と操作系に優れ、私は「望遠母艦」として用いている。

この為、野鳥やノラ猫など遠距離フィルード撮影全般に役立つが
こういう場合に問題となるのは最短撮影距離であり、本レンズの
場合は、最短2.5mと、ちょっと性能的に物足りない。

ただ、この点も、デジタルズーム機能で見かけ上の最短を短縮する
事が可能なのだが、まあそれは水平アングルでの撮影の場合のみ
の話で、上からや下からの角度のついた撮影では、最短の長さが
ネックとなって撮影アングル(レベル)の制約が大きくなる。
(例えば、数mの上空から真下の被写体を狙う撮影は普通は無理だ)

で、その最短撮影距離だけが本レンズの弱点であり、他の描写性能
すなわち、解像感、発色、コントラスト、ボケ質、いずれも一級品
である。写りに関する不満は、若干のボケ質破綻以外は全く無い。
また、そのボケ質破綻も絞り値設定変更による回避は容易であり
ミラーレス機で絞込み測光で使う上では、何ら問題にはならない。

おまけにこのコストだ、僅かに1000円は、不人気のMF望遠レンズ
とは言え、いくらなんでも安すぎるのではなかろうか?
現代において、同じような200mm/f4を内包する高性能望遠ズーム
では、10万円を軽く超える場合も多々あるので、この1000円
のレンズの、実に100倍以上の価格だ。
c0032138_20122118.jpg
そう考えると、今時の高価な新型レンズを買う意味が何処にあるの
だどうか?と思ってしまうのだが、まあ、初級中級ユーザーが、
高価な新型レンズを買ってくれてこそ、カメラ市場は成り立って
いるのだし、だからこそ誰も注目しない本レンズのような物が、
とんでもなく安く売られてたりしている訳dだ。まあ、モノの
本質に拘るような人だけが買えば良いレンズという事だ。

そして高価な新型レンズを買うようなユーザー層も、そうした
レンズを買った事で満足したり、あるいは周囲の人に自慢したり
するのであれば、それはそれで彼等にとっては意味(価値)のある
事だろう、だから、結局誰も損はしない。
c0032138_20041406.jpg
高価なレンズを買うユーザー層が、「こっちの世界」に皆、流れて
来たら、市場のバランスが崩れてしまうだろうが、実際にはそれは、
ありえない話だ、内蔵手ブレ補正とか超音波モーターとか、
そういう点に付加価値を感じるユーザー層が、それらが何も入って
いない古い中古レンズなど、興味を持つ事も、ましてや購入する
事など、ありえないからだ・・

とやかく言う必要は無く、本SMCT200/4は、様々なレンズの
「コスパ選手権」をやるとすれば、間違いなくベスト5には
入賞するレンズである。
M42マウントで、殆どのミラーレス機や一眼レフにアダプターで
装着可能という点も利便性が高いであろう。
(A/M切り替えスイッチが付いているので絞り制御の問題も無い)

でも、誰にでも薦められるレンズという訳でもない、あくまで、
実際これを欲しいと思える人だけが購入すれば、それで良い話だ。

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さて、次のシステム、
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カメラは、SONY NEX-7
レンズは、MINOLTA TELE ROKKOR QF MC 200mm/f3.5
(中古購入価格 3,980円 テレコンバーターKENKO MC6付き)

ミラーレス・マニアックス第68回記事で紹介した、
1970年ごろのMF望遠レンズ

当時の200mmレンズではf2.8級は珍しく、ミノルタにおいては
多分無かったと思う。だから200mmでf3.5は最大口径級であり、
他社の同時期のレンズでも200mm/f3.5というのは結構ある。
ミラーレス・マニアックス記事でも他に2~3本の同スペックの
レンズを紹介していたと思う。
c0032138_20042472.jpg
さて、本レンズの弱点を最初にあげておくが、
上記SMCT200/4と同様に、最短撮影距離が2.5mと長めな所だ。

レンズの最短撮影距離は、焦点距離の10倍というのが標準的な
性能である。つまり200mmレンズであれば、2mが標準的な性能と
なり、これより最短が短ければ良し、長ければ不満という事になる。

それから重量が重い事がある、約770g程あり、これはさすがに重い。

逆に長所であるが、描写力がそこそこ高く、加えて安価である事だ。
勿論、3980円(付属していたテレコンの分を引いて、実施的には
3000円相当)であれば、コスパはかなり良い部類である。
c0032138_20042406.jpg
まあ、そもそもこのシリーズ記事に登場している時点で、コスパの
良いレンズばかりを集めている訳であり、紹介しているレンズの
どの1本を取ってみても、購入して損は無いレンズばかりである。

が、ひとつ注意点をあげれば、全ての点で完璧なレンズなど
世の中には1本も存在しない。例えば、最新の設計で完璧な描写
性能を誇るレンズがあったとしても、コスト(価格)が高い
という弱点が必ず存在する事であろう。

それに重箱の隅を突くように見ていけば、どんなレンズでも
何かしらが弱点はある、例えば本レンズであれば「重い」という
のが弱点となる。
また前述のコスパ選手権入賞確実のSMCT200mm/f4でも、
最短撮影距離が長い、開放f値が暗い、という弱点を無理やり
指摘する事もできる。
c0032138_20042402.jpg
で、非常に多数あるレンズの評価ポイントを全て理解し把握して
その上で、客観的な評価を下すことは難しい。例えば本レンズの
弱点の「重さ」をどう評価するか? だが、マニアックさと言う
点に関しては、ミノルタMC/MDレンズでは、200mmはf4級が
ポピュラーである分、f3.5版は結構レアで、かつマニアックだ、
だからそこもコスパ評価に加味するなどの配慮も必要になる。

他にも歴史的な価値であるとか、使っていて楽しいか(エンジョイ
度が高い)とか、システム構築の上での「必要性」など、様々な
評価項目が有り得るのは、ミラーレス・マニアックスの名玉編でも
述べている通りである。

まあ「超音波モーターが入っているレンズでなくちゃ嫌だ」とか
言うユーザーは高いお金を出してそういうものを買えば良いだけだ。
ちなみに、本レンズはMFだが、どうせ望遠レンズなので、無限遠の
被写体を撮る前提でピントリングを予めそこに合わせて待機すれば、
構えた後、瞬時に撮影が可能だ。
この場合の合焦時間は完全にゼロ秒である。すなわち、いかなる
高性能な超音波モーターAFレンズよりもピント合わせが速い、
まあ、例としては、そういう事である・・
レンズの使い方等、色々とある訳であって、数値スペックとかの
狭い範囲、狭い視点でのレンズ評価など、殆ど無意味なのだ。

本レンズは、見つけることが出来ればミノルタMC時代の代表的
200mmレンズとして、抑えておくのも良いであろう。

---
さて、次は今回ラストのシステム、
c0032138_20042448.jpg
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7
レンズは、SIGMA TELE PHOTO 400mm/f5.6
(中古購入価格 3,000円)

ミラーレス・マニアックス第51回記事で紹介した、
1970年代の製品と思われるMF超望遠レンズ。
c0032138_20042397.jpg
前述したが、この当時の一眼レフユーザーは、交換レンズを買う際、
望遠とは言え135mmの焦点距離の物を購入するのが普通であった、

その上の焦点距離となると、200mmのf4級のレンズが一般的だ、
例えば、本記事でも紹介しているがPENTAX SMCT 200/4である。
他社、他マウントにも同様なスペックのものは多く、たとえば
ミノルタでもMC(MD)200mm/f4が存在している。
この状況で、200mm級の大口径、つまり前出のMC200mm/f3.5
とかは高級品であったことは想像できるであろう。

なお、ニコンにはED180mm/f2.8という名レンズがある、
(ミラーレス第46回記事)このレンズの前身は、1970年代から
発売はされていたが、報道撮影分野向けであり、恐らくだが一般の
ユーザーが簡単に買えるような価格帯では無かった事であろう、
つまり手が届かない憧れの高級品だ。まあ、そいう状況もあって、
高級品=素晴らしい性能のレンズ、という風にニコンの180mmが
過剰に高く評価された可能性もある(まあ、ミラーレスの記事でも
1980年代のEDタイプの180/2.8は、ニコンにしては珍しくボケ質も
柔らかく、使いやすくて良いレンズという評価にはなっているが)

さて、1970年代の200mm級の望遠レンズについてはそんな状況
であった、じゃあ、それ以上の超望遠レンズについては、どうか?
一応各社300mmの単焦点超望遠レンズがラインナップされていた、
低価格帯は300mm/f5.6あたりで、高級品は300mm/f4.5程度と
開放f値に若干の差があった。

しかし、勿論それらは高価だし、当時のMF一眼レフにおいて
ISO100程度のフィルム、高々1/1000秒程度のシャッター速度では
ブレを抑える高速シャッターは使い難い。
加えてf5.6版はまだしも、300mm/f4.5級の1kg超えの重量級
レンズでは、結局、三脚を使わない限りブレないように撮る
だけでも、せいいっぱいだったかも知れない。

「いや、もっと望遠が欲しいんだ」、勿論そんなニーズもある事
であろう、まあ野鳥などの被写体分野では、300mm程度では
お話にもならず、最低でも500mm級以上のレンズが必要だ。

まあ、そういう確固たる目的が無くて、何が撮りたいかもわからず、
なんとなく「望遠が欲しい、だって格好いいだろう?」という類の
初級中級ユーザーも勿論沢山居たと思われる。

一部のユーザーは「テレコンバーター」を購入した事であろう、
MF用のそれはあまり高価でもなかったからだ、ただ、テレコンは
補正レンズが入っていて画質が低下する事や、例えば焦点距離を
2倍に伸ばしたら開放f値も2倍暗くなってしまう。

すなわち、300mm/f4.5級のレンズに2倍テレコンをかましたら、
600mm/f9のレンズとなる訳だ。
これでは暗すぎて、ちょっと当時の銀塩機材環境では実質的には
使えないであろう。
c0032138_20042393.jpg
まあそうした環境の中、SIGMA製の本レンズ、400mm/f5.6という
ものは、超望遠が欲しいというユーザーのニーズにぴったりだった
のかも知れない。ただ、本レンズに関する詳しい情報はあまり無い、
雑誌等で評価するケースも恐らく少なかっただろうし、使って
いる人も少なかっただろう。

まあ、現在でこそSIGMAは高性能なレンズを中心にラインナップ
する高級品メーカーであるが1970年当時はまだ無名だったと思う。

また、ユーザーの「ブランド信奉」に関しては、現代でもまだ若干
残っているが、20世紀の高度成長期のそれは、もっと顕著だ。
「有名メーカーの製品でないと安心して使えない」という論理は、
まあ、その時代、様々な工業製品や電気製品が、賃金収入の増えた
各家庭に爆発的に普及した際、そのビジネスに乗る為、粗悪な製品
を作るメーカーも色々とあったと思われるからだ。

そんな時代に無名のSIGMAを買うのは一種の冒険だ。ニコンや
ペンタックスを買う程の安心感は無い、まあだからこそ売る側も
大メーカーがラインナップしておらず、ユーザーが欲しがるような
特殊なスペックのレンズを作って売らざるを得なくなる。
つまり、まともに大メーカーにぶつかっても、勝ち目が無いからだ。
この400mmレンズというものは、そういう時代背景で出てきたと
思われる。

でも、その銀塩時代に400mmレンズを使いこなせる人は居たので
あろうか? 超望遠が欲しくて買ったは良いが、撮る被写体が
無かったり、撮ってもブレてしまい、使い物にならない状況で、
死蔵してしまったユーザーも多かったのではなかろうか?

さて、当時のそんな時代背景を知った上で、あらためて現代、
本レンズについて考えてみよう。

今回利用のμ4/3機DMC-GX7に装着時は 800mm相当の
画角となる。開放f値はf5.6のままであり、さほど暗くは無い。

GX7の最高ISO感度はISO25600である、ISO100フィルムの
256倍の速さのシャッター速度を得る事ができる。
最高シャッター速度は1/8000秒、手ブレ防止の為にシャッター
速度をかなり上げても、当時の銀塩一眼のように1/1000秒で
頭打ちする事は無い。

おまけにGX7には内蔵手ブレ補正機能がある、MFオールドレンズ
をアダプターで使用した際にも勿論この機能は有効だ。
デジタルテレコンバーターおよびデジタルズームが使え、さらに
焦点距離を望遠側に伸ばす事ができる。ただし、それらの拡大機能
を使うと、手ブレ補正の設定焦点距離を手動で変えなくてはならず、
テレコンで2倍ならば、まあ800mmに設定して1600mm相当、
と計算が簡単だが、デジタルズームで1.7倍とかにしたら、
焦点距離の計算が面倒だし、「あ、やっぱ、1.9倍にしようか」
とかなったら、その都度手ブレ補正の再設定ではやってられない。

また、いくら手ブレ補正ありと言っても換算1600mmを超えたら、
実用手持ち範囲(持論では1500mmまで)をオーバーしてしまう、
だからまあ、せいぜいたまにテレコンを2倍に入れるか入れないか、
という感じで普段は800mm相当の超望遠単焦点として使う事になる。

長所は、アダプターを入れても800g台という超望遠らしからぬ
軽量。ピントはIF方式なので、重心が狂う事もない、
1/2段刻みの絞りリングが付いている点も良い。
c0032138_20042367.jpg
ただ、肝心の写りだが、色収差が目立ち、解像感も低く感じる。
被写体や状況を選ぶ必要があるだろう。
おまけに最短撮影距離は、4mと非常に長い。

中古購入価格は、3000円と恐ろしく安価である。
デジタル初期の2000年代前半に購入したものであり、
その当時はFDマウントである本レンズは、デジタル一眼レフでは
実質使用不可であった事も安価だった理由だ。
ミラーレス時代の現代においては、μ4/3でも、Eでも、Xでも
EOS-Mでも、FDマウントレンズは何も問題なくアダプターで
使用できる。

また、現代のAF400mm級レンズは確かに高性能ではあるが、
かなり高価であり、簡単に買えるものでは無く、かつ業務用の
非常に重いレンズが殆どである。
本レンズのように、簡単に持ち運べるほど小型軽量の400mm
レンズは、ミラー(反射)レンズを除いて、現代では存在しない
状況だ。

本レンズの総合的な描写力は決して高くは無い、けれども稀に
上手く決まれば、そこそこの写りになる場合もある。

まあ、お遊び感覚で買える値段であり、多少の欠点があっても
目をつぶる事は可能だ、そして万が一(笑)ちゃんと写った際には、
現行レンズの100分の1の価格帯で、同等の写真が撮れるのであれば、
それはそれで、ニヤリと思ってしまえるマニアックな楽しみ方も
あるという事だ。

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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は「トイレンズ」を紹介していく事にする。


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