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ハイ・コスパレンズ・マニアックス(3)MF標準編#2

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コストパフォーマンスに優れる、マニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回シリーズ第3回目は、MF標準レンズ編の第二回目として、
引き続き、4本のレンズを紹介していこう。

まず、最初のシステム、
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カメラは、OLYMPUS E-410
レンズは、ヤシカ DSB 50mm/f1.9
(中古購入価格 2,000円)

ミラーレス・マニアックス第24回記事で紹介した、
1980年頃のMF小口径標準レンズ。
c0032138_18312417.jpg
本レンズのマウントは、Y/C(ヤシカコンタックス)である、
この時代以前、1970年代のヤシカレンズはM42マウントで
あったのだが、1975年のCONTAX RTSの発売開始、そして、
同時期の京セラによるヤシカの買収から、RTS用の新マウント
(RTSマウント)にCONTAXとYASHICAのレンズが共存する事と
なった。それ故、Y/Cマウントと呼ばれる訳だ。

マニアの間では、略して「ヤシコン」と呼ばれているのだが
それでは分かり難いため、現代の中古市場にいては、他の各種
CONTAXマウント(旧CONTAXのC、京セラCONTAX GやN,645)
と区別を明確化する為、「RTSマウント」と呼ばれる事も多い。

で、Y/C(RTS)マウントのレンズは、現代においては、
これを直接装着できるデジタル一眼レフは無い。
そう、2005年に京セラはカメラ事業から撤退してしまって
いるからだ。
なので、現代ではY/Cレンズはマウントアダプターを用いて
各種のミラーレス機に装着する事が一般的となっている。

が、京セラ撤退前後からミラーレス出現以前の2000年代半ば
迄でも、デジタル一眼レフにマウントアダプターを用いて、
Y/Cレンズを使う事が可能であった。
その際に良く母艦となったのは、EF(EOS)マウント、および
フォーサーズ(4/3)マウントである。

今回の記事では、あえて、その時代(2000年代)の雰囲気と
して、4/3機(注:マイクロフォーサーズでは無い)の、
OLYMPUS E-410を母艦としている。
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さて、本レンズだが、1960~70年代のM42版のヤシノンDSを
ベースとしてY/Cマウントに変更したものではなかろうか?
型番のDSBからは、そう想像できる。(DSのタイプB?)

その旧バージョンYASHICA AUTO YASHINON DS 50mm/f1.9
は、ミラーレス・マニアックス第28回記事で紹介しているが、
両者の描写傾向はかなり似ている。恐らくは同一光学系であろう。

そして、旧DSもDSBバージョンも、両者「単層コーティング」
となっている、単層(モノ)コートは、多層(マルチ)コート
では無いという意味であるが、一般に想像されるモノコートの
レンズの特性とは、
「逆光に弱い」「ヌケ(コントラスト)が悪い」「黄色く写る」
等であるが、これらは必ずしも、そうであるとは言いがたく、
まず逆光耐性は被写体の状況次第とも言える。

「黄色く写る」に関しては、確かに、例えばニコン製の50年
以上前(1960年代)の一部のレンズでは、モノクロフィルムでの
撮影を前提として、ちょっと黄色目のカラーバランスとなって
いるレンズもあった(製造技術上の制約か?、あるいは、弱い
Yeフィルターを装着しているのと等価として、コントラストの
増大を狙った設計だったのか?そのあたりの真の理由は不明)

で、その時代のレンズが単層コーティングであった事も含め、
「単層=黄色い」という誤った常識が広まってしまったのでは
なかろうか?
その後の時代の単層コーティングレンズ(本レンズも含む)
においては、カラーバランスの乱れは殆ど感じられない。

気になる逆光耐性についても、レンズ構成が4~5枚程度と
少ない単焦点レンズにおいては、レンズ内部での反射も少なく
大きな問題にはなりえない。ただし、それも被写体状況に
よりけりで、太陽光が直接レンズに入ってくるような極端な
逆光条件等では、やはり弱点になりうる。

そうした逆光条件で発生する「フレア」は、コントラストの
低下を併発する、だから、単層コーティングのレンズは
「コントラストが低い」という風に誤解されやすいのだが、
これも上記の光線条件と、かなり関連が高い項目であり、
直接的に「単層=低コントラスト」という図式は成り立たない。

被写体状況によっては、この弱点は出にくくなる(回避できる)
加えて、現代のデジタル時代のカメラにおいては、カメラ側の
設定、あるいは撮影後のレタッチ等でも、コントラストの弱点は
緩和する事ができる。

ついでに言えば、もっと古い時代のカラーバランスの悪い
レンズであっても、デジタル(一眼、ミラーレス)であれば、
ホワイトバランス及び、その詳細調整、そしてレタッチにより、
ある程度は回避可能である。

まあつまり、単層コーティングのレンズでも、実際には、
さほど致命的な弱点にはならない訳だ。
例えば、単層コートの、ニコン シリーズE100mm/f2.8 
(ミラーレス第24回記事)等は、殆ど単層コートの弱点は
表面化しないレンズである。すなわち、コーティングの差異を
うんぬん言う前に、レンズの基本設計そのものの差異による
性能差の方が、要因としてはむしろ大きいのであろう。
c0032138_18312306.jpg
まあ、色々書いてきたが、本レンズ DSB 50mm/f1.9 は、
単層コート故の弱点は出にくく、基本的な描写力も悪くない、
なのに僅か2000円という価格だったので、コスパは抜群だ。
加えて、滅多に市場で見ないという「マニアック度」も高い。

トップクラスの性能を持つMF小口径標準レンズとは言い難いが、
コスパが極めて良いレンズである、とは言えるであろう。

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さて、次のシステム、
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カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、コニカ HEXANON AR52mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)

1960年代~1970年代のMF小口径標準である。
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で、実はミスをしてしまった.
ハイコスパレンズとして紹介するべきは、同じARヘキサノンの
小口径標準でも、AR50mm/f1.7であった(汗)

本AR52/1.8は、 ちょっと混同して持ち出してしまったのだ、
なにせ、ARヘキサノンの標準は、3本所有していてややこしい。

間違いに気がついたのは、本レンズでは撮影時にフレアが
出やすく、コントラストの低下が気になったからだ。
特に逆光でその傾向が著しい。

「あれ? こんなに悪いレンズだったかな?」
と疑問に思って、家に帰ってから自分用の資料(エクセルでの
性能評価リストだ)を見返して気がついた。

「あ、このレンズじゃあないや(汗)」

AT52/1.8 と AR50/1.7を間違えてしまっていた。、
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まあ、せっかくなので、AR52/1.8の写真は、2枚だけ掲載して、
以降、レンズを変えることにしよう。
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カメラは、同じ、LUMIX DMC-G6
レンズは、HEXANON AR50mm/f1.7 にチェンジした。
(中古購入価格 4,000~5,000円相当)

中古購入価格があいまいなのは、何かのカメラボディとの
セットで購入したからだ。
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さて、こちらのAR50/1.7は、AR52/1.8に比べてフレア等が
原因のコントラスト低下も起こりにくい。

こちらは、ミラーレス・マニアックス第48回記事で紹介した
1970年代頃のMF小口径標準レンズである。

AR52/1.8とスペックが近いが、時代が異なり、かつ、こちらの
レンズの方が大柄だ。

「大きなレンズの方が写りが良い」とは言い切れないのだが、
ARヘキサンノンに関しては、似たスペックのレンズが複数ある
場合は、一般に大柄のレンズの方が性能が高そうな雰囲気だ。
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「ヘキサノン」という名前は、かつて(50年以上前)には
神格化された時代もあったのだが、それはレンジ機等の時代で
あって、まあ、その後の一眼レフ時代のARヘキサノンに関しては、
飛びぬけて凄いレンズというものは多くは無いと思う。

まあしかし、どのレンズも、そこそこ良く写ると言う要素はある。
しかも現代においては、ARヘキサノンは不人気であり、相場も
恐ろしく安価だ、すなわちコスパが良いシリーズであるという事だ。

マウントアダプターの若干の制限はあるが、ミラーレス機で
あれば問題なくアダプターで装着できるので、ちょっと
マニアックに、このARヘキサンのシリーズを攻めて見るのも
楽しいかも知れない。

まあでも、ARヘキサノンの各レンズは、いずれも全てが完璧な
性能という訳でもなく、レンズ毎に各々弱点を持っている事も
確かである。ARヘキサンンは過去のミラーレス・マニアックス
記事でも計8本ほど紹介していて、かつ市場で玉数が豊富なのは、
それらのみだと思うので、購入時には過去記事を参照されたし。
中上級マニア向けのシリーズのレンズ、という事にしておこう。

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さて、次のシステム、
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カメラは、SONY NEX-7
レンズは、RICOH XRリケノン 50mm/f2(後期型)
(中古購入価格 6,000円相当)

ミラーレス・マニアックス第70回記事で紹介した、
1978~1990年代のMF小口径標準レンズ。

現代でこそ、リコーはPENTAXを傘下に抱え、自社においても
描写力に定評があるGRシリーズ等を擁し、高性能なカメラや
レンズを作るメーカーとしてのブランド力がある。

しかし、昔はそうではなかった。
リコーあるいは(前身の)理研光学がカメラを発売したのは、
今から80年も昔の1930年代に遡る。

だが、カメラ市場でリコーの名が有名となったのは、1960年代の
コンパクト機「オートハーフ」シリーズではなかっただろうか?

オリンパスPENなどハーフ判カメラが大流行していた時代で
あるが、リコーもなかなか健闘していた。
ペンシリーズと人気を争った、という資料もあるくらいで、
膨大な数のカメラが生産されていた。

その理由としては、自動化を進めて簡便な操作性を狙った事で、
従来は撮影が難しかった銀塩カメラが、一般(ビギナー)
ユーザーにも普及した時代であった事が言えると思うが、
それに加えて「富岡光学」製の高性能レンズを搭載していた
事も理由としてあるかも知れない。
c0032138_18313631.jpg
富岡光学は、後にヤシカや京セラ・コンタックスのレンズを
製造した伝説のメーカーである。

現代に至るまで、一部の上級マニアは「富岡光学製」と聞く
だけで、どうしても、そのレンズが欲しくなってしまう位だ。
一般に知られていない「ブランドバリュー」としては、最強
クラスのメーカー名である。

さて、ハーフ判カメラも一通り市場に行き渡った1970年代頃
になると、今度は(銀塩)一眼レフのブームが始まった。

各社はコンパクト機で様々な自動化を進め、それが今度は
一眼レフ用の技術として転換された。この為、たとえばAE
(自動露出)等の機能を持った銀塩一眼レフは、これまた
市場の初級ユーザー層のニーズを喚起する事となった。

リコーもM42マウント版の一眼レフを作るようになるが、
M42版一眼はこの時代、多くのカメラメーカーが販売しており、
かつ、アサヒペンタックス(SPシリーズ等)の人気が高かった為、
リコー製M42一眼は苦戦していたのではなかろうか?
(この時代でも、まだコンパクト機「オートハーフ」シリーズ
は併売されている)

そして様々な技術革新において、M42マウントは使い難く
なっていく。例えば「絞り優先露出」などの新機能を搭載する
事が困難なのだ。

一部のメーカー(フジやオリンパス、ペンタックス)では、
M42の規格を拡張して部品などを増やし、そうした新機能を
搭載しようとしたが、せっかくのユニバーサル(=汎用的な、
互換性の高い)なマウントであるM42の長所が失われて
しまっていた。

他社が専用マウントを採用して新機能を次々と搭載していく中、
M42陣営の本家とも言えるペンタックスも、M42マウントでは
もう限界と見たのか、この時代1975年に(以降、現代にも続く)
「Kマウント」に転換する。

こうなると一気にM42は時代遅れのマウントとなってしまう、
リコーも1970年代後半より、ペンタックスに追従して
Kマウントとほぼ互換性のあるXRマウントを用いたカメラと
レンズ群を展開する。

このあたり「リコーがペンタックスに追従する」というのが
何とも興味深い。
現代ではリコーがペンタックスの親会社なのだ。

1978年には「39,800円」という当時の一眼レフとしては
驚異的な低価格の「XR500」を発売する。
(標準レンズ付き、ケース付きの価格だ)

当時、「サンキュッパ」というTVのCMまで流し、大ヒットし、
一眼レフの販売数記録を樹立したと聞く。

このXR500に標準レンズとして同梱されていたのがXR 50mm/f2
である、ただし、XRシリーズは1990年代に至るまで長期間
発売されていたので、XR 50mm/f2にも前期型と後期型の2つの
バージョンがある模様だ。

1990年代となり、リコーはマニア受けしたAFコンパクト機
「R1」を1994年に発売する、翌年R1sとなったが、この頃から
マニアがリコーの様々なレンズの描写力に対して注目する
ようになってきた。

特に注目されたのが、一眼用の本レンズXR50/2であり、
一部のマニアが「和製ズミクロン」、つまりライカ社製の
高級レンズと同等の描写力があり、しかも安価である、という
評価をした事で、マニアの間では広く知られる事となった。

1990年代は既にAF一眼レフの時代である。ミノルタ、そして
キヤノンやニコンも新鋭のAF一眼レフを発売し、リコーとしては
MF一眼のXRシリーズではどうにも対抗できなかったとも言える。

その頃から、リコーはマニア受けを狙った市場戦略に転換する、
こうして開発されたのが、超名機「GR1」(1996年)である。

おりしも、第一次中古カメラブームだ。
GR1は10万円近くもした高価なAFコンパクト機であったし、
バブル時代は既に去っていたが、マニアはこぞって高価なこの
カメラを購入し、GR1のそのレンズの描写力を褒め称えた。

なお、マニア受けを狙った際、従来のリコーのブランドの
イメージは「大衆向け」であったので、GR1の前面には、
RICOHというメーカー名は、あえて書かれていない。

で、この前後、雨後の筍のように各社から「高級コンパクト」と
呼ばれる高価なカメラがリリースされ、空前のブームとなる。

私も多くの「高級コンパクト」を購入したが、勿論現代では
これらにフィルムを入れて使おうという気にもなれず、
まったく意味の無い状態で防湿庫に眠っているが、まあ歴史の
証人的な博物館感覚で、これらの高級コンパクトは保有し続け
ておこうと思っている。

GR1で、マニア層に対して圧倒的なブランド力を身に付けた
リコーは、その後、銀塩GRシリーズを約10年間展開し、
さらにデジタル時代では、GRDシリーズを2005年より10数年間
続けて、現代に至る。
GR1から現在に至るまでの20数年間、高級コンパクト(デジタル
含む)というカテゴリーを維持しつづけたリコーの功績は
高く評価できる。
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さて、余談が非常に長くなったが、そのGR1が出る直前の
1990年代前半迄のリコーのカメラは、前述のように大衆向け、
ビギナー向けという印象であり、決してマニアが着目する
ものでは無かった訳だ。

そんな中で本レンズXR50mm/f2だけは、先鋭的な上級マニアに
受け入れられた唯一のレンズであったのかも知れない。

「おい、リコーのレンズを使っているか?」
「いや、どうせ安物だろう?」
「それが、そうでは無いのだよ、XR50mm/f2というのは、
 ライカのズミクロン並みに良く写るレンズだぜ!」
「本当か?よし、オレも探して買ってみよう」

という噂が、まことしやかにマニア層に伝播していったに
違いない。(ちなみに、この時代は、まだインターネットは
一般には普及しておらず、あったとしても「パソコン通信」
の時代だ)
で、おかげで、1990年代後半、このレンズは中古市場から
一掃され、私も本レンズを探すのに大変苦労した。

前述のXR500とのセットをようやく入手したのだが、
XR500自体は不要だったので知人に譲渡した、レンズ単体の
価格は不明だが、一応6000円相当としている。
c0032138_18314304.jpg
まあでも、こうして「神格化」されたレンズではあるが、
現代において本XR50/2を使ってみると、どうにも欠点が目立つ
レンズである。
最短撮影距離は60cmと長く、ボケ質破綻も出て、ボケ質自体も
綺麗なものでは無い。

まあ、この最短性能で、ズミクロンの代用品として使うので
あれば、やや絞り込んで解像度優先で中遠距離被写体を撮る
という、古くからの撮影スタイルが銀塩時代では行われて
いたからだと思うが、絞りを開けて使う撮影スタイルには
向かないレンズなのだ。

また、かつて人気があったレンズあるから、程度の良い個体は
現代でも中古市場で高価な相場が付けられているケースもある、
高価だとコスパが良いレンズかどうかは微妙な判断となるが、
まあでも、それこそ「歴史の証人」として、本レンズを所有
する意味はあるのではなかろうか?と思っている。

----
さて、次は今回ラストのシステム、
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カメラは、SONY α65
レンズは、Industar 50-2 50mm/f3.5
(新品購入価格 7,000円相当)

本レンズは、モスクワ近郊にある光学機器工場「KMZ」
(S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場)製レンズで、
恐らくは1970年代頃から生産されていたと思われる。
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マウントはM42で、レンズ構成は3群4枚であり、これは著名な
ツァイス製テッサー型レンズのコピー品である。

近年、熊本市の通販会社がロシアより未使用在庫品の
輸入販売を行っていて、そこから購入したものである。
ティルト型マウントアダプター込みで14800円であったが、
便宜上、レンズ代は半額の7000円相当としている。

特徴はレンズ前面に連続可変式の絞りが搭載されている事だ、
これの操作性は良く無いのだが、まあ、その代わり、なんとも
言えない格好良さがある。

ミラーレス・マニアックス第71回記事で紹介した際には、
個性的なデザインのPENTAX K-01と組み合わせて使った、
それらの絶妙なデザインのコラボレーションがマニアックだ。
c0032138_18314310.jpg
さて、本レンズのように連続可変絞りタイプのM42レンズの
場合、通常M42レンズ背面にある絞り込みピンが不要である。
よって、マウントアダプターの種類を選ばず、どんな類の
M42アダプターでも使用可能である。

すなわち、例えばKマウントのボディ(例:PENTAX K-01等の
Kシリーズのデジタル一眼レフおよびやミラーレス機)に
PENTAX純正の「マウントアダプターK」を用いた場合、
絞込みピンがあって、A/M(絞り自動、手動)切り替えが無い
M42レンズの場合、「絞り開放でしか撮影できなくなる」のだが、
本レンズでは、そうした問題が無い、という事だ。

写りは、本家のテッサー、例えば、京セラ・コンタックスの
テッサー45mm/f2.8(ミラーレス第47回記事)と類似だが
逆光性能などは若干劣る。
それから、上記テッサーとは、僅かにスペックダウンしていて
例えば開放f値は、f2.8→f3.5、
最短撮影距離は、60cm→65cm のように、本家より僅かに劣る。

ただ、テッサーの特徴である、絞り込むとキリリと解像度が
上がりつつコントラストや発色も良くなる点は踏襲されている。
c0032138_18314228.jpg
カメラボディとの相性だが、M42マウントだからKマウント機
で使用する、というのはちょっと問題ありだ。

というのもKマウント機は現在全てが一眼レフであり、MFでの
ピント合わせがミラーレス機に比べてやや不利な点がある。

唯一のKマウントミラーレス機K-01(現在は生産終了)では
MFの性能が壊滅的にNGだ(背面モニターのみでEVFが無い、
またEVF装着もできない、ピーキング機能の性能が劣悪、
拡大操作系も悪い)

なお、近年のKPでは、ライブビュー時に「輪郭抽出」と言う
ピーキング類似の機能が搭載されているが、まだ精度不足だ。

なので、Kマウントには拘らず、EVF搭載ミラーレス機にM42
アダプターを介して使うのが良いのだが、今回は、ちょっと
捻くれてα65を用いている。
このカメラの中身は、ミラーレス名機NEX-7とほぼ同等であり、
高精細EVFは、MF時にはピーキング機縫も使える。

すなわちα65は一眼レフとミラーレス機のハイブリッド的な
仕様を持つカメラであるので、アダプターさえあればミラーレス
機ど同様なアダプター母艦としての使い易さがある。

ただしミノルタ/SONY α(A)マウントに使用可能なアダプター
の種類は限られている。ミラーレス機ほどフランジバックが
短くは無いので必然的にそうなってしまうのだ。
今回は、その数少ないαマウント用のマウントアダプターで、
M42→α版を使っている。

なお、本システムでの写真においてはα65のエフェクト機能
を多用している。ハイブリッド機ではエフェクトの効果が
撮影前にわかるので、使いやすいのだ。

まあしかし、レンズ側の絞りの「操作性」は良くなく、また、
カメラシステムとしての「操作系」も、あまり快適では無い。
たとえば露出補正がこのシステムではダイレクトには出来ない
事や、内蔵手ブレ補正が効かない(手動焦点距離設定が無い)
事、デジタルズームが連続可変ではなく、テレコン風の
不連続であったりする事だ。

ちなみに手ブレ補正の件だが、電子接点を持つα(A)マウント
用レンズであれば、焦点距離は自動的にボディ側に伝達される、
しかし電子接点の無いMFレンズでは、手動焦点距離設定の機能
がαには無い為、実質的に内蔵手ブレ補正は使用できないのだ。

これは、他社製品を接続する事を極端に嫌うSONY製品の問題だ、
カメラに限らず他分野のSONY製電子機器でも同様なのだが、
このように自社の製品群を使わせようとする為、他社製品を排除
しようとする非汎用的な製品仕様コンセプトには賛同できない。

ちなみに、内蔵手ブレ補正機能を持つ各メーカーのカメラ製品で
手動焦点距離設定が無いのは、SONY製品だけである。
(注:近年のα7Ⅱシリーズ、α9、α99Ⅱでは、やっと
焦点距離手動設定機能がついた)
使っていてだんだん不愉快になってきた、やはり、MFレンズの
場合は、αの一眼ではなく、何らかのミラーレス機で使った
方が良かったかも知れない。
c0032138_18314288.jpg
で、ロシアンレンズ全般の話だが、購入には色々とリスクがある。
日本の製品のように品質が安定している訳でもなく、
以前はカメラに装着できなかったり、装着して外れなくなったり
レンズが鏡筒から脱落するなど、そうしたトラブルは日常茶飯事
であった。まあ、今回の購入先の通販システムにおいては、ある
程度選別した製品を新品販売しているので、そういう問題は殆ど
解消されているのだが、中古購入時などでは要注意である。

あくまで上級マニア向けということで、ビギナーや中級者が
ロシア(またはウクライナ)製レンズに簡単に手を出すことは
推奨できない。

どうしても、という場合は、ミラーレスマニアックス記事でも
過去10数本のロシア製レンズを紹介していると思うので、
適宜検索、参照の上で弱点や注意点を理解した上での購入が
良いであろう。

まあでも、面白い分野ではある、今回は「MF標準レンズ編」
なので、ロシアンレンズの紹介は本インダスター50-2の
1本のみに留めておくが、いずれ本シリーズ記事においても
ハイコスパなロシアンレンズ特集を組む事にしよう。
----
さて、今回はこのあたりまでで、
都合3回にわたり、50mm前後の焦点距離の標準レンズばかり
だったので少々飽きて来た感がある。
だがまあ、標準レンズは極めて種類が多いのだ、それゆえに
奥も深いので、2回や3回の記事では本来は足りない位だ、

でも、次回シリーズ記事では標準レンズを離れ、ミラーレス機
専用のレンズを紹介していく事としよう。


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