コストパフォーマンスに優れる、マニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回シリーズ第3回目は、MF標準レンズ編の第二回目として、
引き続き、4本のレンズを紹介していこう。
まず、最初のシステム、
![c0032138_18312404.jpg]()
カメラは、OLYMPUS E-410
レンズは、ヤシカ DSB 50mm/f1.9
(中古購入価格 2,000円)
ミラーレス・マニアックス第24回記事で紹介した、
1980年頃のMF小口径標準レンズ。
![c0032138_18312417.jpg]()
本レンズのマウントは、Y/C(ヤシカコンタックス)である、
この時代以前、1970年代のヤシカレンズはM42マウントで
あったのだが、1975年のCONTAX RTSの発売開始、そして、
同時期の京セラによるヤシカの買収から、RTS用の新マウント
(RTSマウント)にCONTAXとYASHICAのレンズが共存する事と
なった。それ故、Y/Cマウントと呼ばれる訳だ。
マニアの間では、略して「ヤシコン」と呼ばれているのだが
それでは分かり難いため、現代の中古市場にいては、他の各種
CONTAXマウント(旧CONTAXのC、京セラCONTAX GやN,645)
と区別を明確化する為、「RTSマウント」と呼ばれる事も多い。
で、Y/C(RTS)マウントのレンズは、現代においては、
これを直接装着できるデジタル一眼レフは無い。
そう、2005年に京セラはカメラ事業から撤退してしまって
いるからだ。
なので、現代ではY/Cレンズはマウントアダプターを用いて
各種のミラーレス機に装着する事が一般的となっている。
が、京セラ撤退前後からミラーレス出現以前の2000年代半ば
迄でも、デジタル一眼レフにマウントアダプターを用いて、
Y/Cレンズを使う事が可能であった。
その際に良く母艦となったのは、EF(EOS)マウント、および
フォーサーズ(4/3)マウントである。
今回の記事では、あえて、その時代(2000年代)の雰囲気と
して、4/3機(注:マイクロフォーサーズでは無い)の、
OLYMPUS E-410を母艦としている。
![c0032138_18312560.jpg]()
さて、本レンズだが、1960~70年代のM42版のヤシノンDSを
ベースとしてY/Cマウントに変更したものではなかろうか?
型番のDSBからは、そう想像できる。(DSのタイプB?)
その旧バージョンYASHICA AUTO YASHINON DS 50mm/f1.9
は、ミラーレス・マニアックス第28回記事で紹介しているが、
両者の描写傾向はかなり似ている。恐らくは同一光学系であろう。
そして、旧DSもDSBバージョンも、両者「単層コーティング」
となっている、単層(モノ)コートは、多層(マルチ)コート
では無いという意味であるが、一般に想像されるモノコートの
レンズの特性とは、
「逆光に弱い」「ヌケ(コントラスト)が悪い」「黄色く写る」
等であるが、これらは必ずしも、そうであるとは言いがたく、
まず逆光耐性は被写体の状況次第とも言える。
「黄色く写る」に関しては、確かに、例えばニコン製の50年
以上前(1960年代)の一部のレンズでは、モノクロフィルムでの
撮影を前提として、ちょっと黄色目のカラーバランスとなって
いるレンズもあった(製造技術上の制約か?、あるいは、弱い
Yeフィルターを装着しているのと等価として、コントラストの
増大を狙った設計だったのか?そのあたりの真の理由は不明)
で、その時代のレンズが単層コーティングであった事も含め、
「単層=黄色い」という誤った常識が広まってしまったのでは
なかろうか?
その後の時代の単層コーティングレンズ(本レンズも含む)
においては、カラーバランスの乱れは殆ど感じられない。
気になる逆光耐性についても、レンズ構成が4~5枚程度と
少ない単焦点レンズにおいては、レンズ内部での反射も少なく
大きな問題にはなりえない。ただし、それも被写体状況に
よりけりで、太陽光が直接レンズに入ってくるような極端な
逆光条件等では、やはり弱点になりうる。
そうした逆光条件で発生する「フレア」は、コントラストの
低下を併発する、だから、単層コーティングのレンズは
「コントラストが低い」という風に誤解されやすいのだが、
これも上記の光線条件と、かなり関連が高い項目であり、
直接的に「単層=低コントラスト」という図式は成り立たない。
被写体状況によっては、この弱点は出にくくなる(回避できる)
加えて、現代のデジタル時代のカメラにおいては、カメラ側の
設定、あるいは撮影後のレタッチ等でも、コントラストの弱点は
緩和する事ができる。
ついでに言えば、もっと古い時代のカラーバランスの悪い
レンズであっても、デジタル(一眼、ミラーレス)であれば、
ホワイトバランス及び、その詳細調整、そしてレタッチにより、
ある程度は回避可能である。
まあつまり、単層コーティングのレンズでも、実際には、
さほど致命的な弱点にはならない訳だ。
例えば、単層コートの、ニコン シリーズE100mm/f2.8
(ミラーレス第24回記事)等は、殆ど単層コートの弱点は
表面化しないレンズである。すなわち、コーティングの差異を
うんぬん言う前に、レンズの基本設計そのものの差異による
性能差の方が、要因としてはむしろ大きいのであろう。
![c0032138_18312306.jpg]()
まあ、色々書いてきたが、本レンズ DSB 50mm/f1.9 は、
単層コート故の弱点は出にくく、基本的な描写力も悪くない、
なのに僅か2000円という価格だったので、コスパは抜群だ。
加えて、滅多に市場で見ないという「マニアック度」も高い。
トップクラスの性能を持つMF小口径標準レンズとは言い難いが、
コスパが極めて良いレンズである、とは言えるであろう。
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さて、次のシステム、
![c0032138_18312432.jpg]()
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、コニカ HEXANON AR52mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)
1960年代~1970年代のMF小口径標準である。
![c0032138_18312497.jpg]()
で、実はミスをしてしまった.
ハイコスパレンズとして紹介するべきは、同じARヘキサノンの
小口径標準でも、AR50mm/f1.7であった(汗)
本AR52/1.8は、 ちょっと混同して持ち出してしまったのだ、
なにせ、ARヘキサノンの標準は、3本所有していてややこしい。
間違いに気がついたのは、本レンズでは撮影時にフレアが
出やすく、コントラストの低下が気になったからだ。
特に逆光でその傾向が著しい。
「あれ? こんなに悪いレンズだったかな?」
と疑問に思って、家に帰ってから自分用の資料(エクセルでの
性能評価リストだ)を見返して気がついた。
「あ、このレンズじゃあないや(汗)」
AT52/1.8 と AR50/1.7を間違えてしまっていた。、
![c0032138_18313769.jpg]()
まあ、せっかくなので、AR52/1.8の写真は、2枚だけ掲載して、
以降、レンズを変えることにしよう。
![c0032138_18363800.jpg]()
カメラは、同じ、LUMIX DMC-G6
レンズは、HEXANON AR50mm/f1.7 にチェンジした。
(中古購入価格 4,000~5,000円相当)
中古購入価格があいまいなのは、何かのカメラボディとの
セットで購入したからだ。
![c0032138_18444229.jpg]()
さて、こちらのAR50/1.7は、AR52/1.8に比べてフレア等が
原因のコントラスト低下も起こりにくい。
こちらは、ミラーレス・マニアックス第48回記事で紹介した
1970年代頃のMF小口径標準レンズである。
AR52/1.8とスペックが近いが、時代が異なり、かつ、こちらの
レンズの方が大柄だ。
「大きなレンズの方が写りが良い」とは言い切れないのだが、
ARヘキサンノンに関しては、似たスペックのレンズが複数ある
場合は、一般に大柄のレンズの方が性能が高そうな雰囲気だ。
![c0032138_18375842.jpg]()
「ヘキサノン」という名前は、かつて(50年以上前)には
神格化された時代もあったのだが、それはレンジ機等の時代で
あって、まあ、その後の一眼レフ時代のARヘキサノンに関しては、
飛びぬけて凄いレンズというものは多くは無いと思う。
まあしかし、どのレンズも、そこそこ良く写ると言う要素はある。
しかも現代においては、ARヘキサノンは不人気であり、相場も
恐ろしく安価だ、すなわちコスパが良いシリーズであるという事だ。
マウントアダプターの若干の制限はあるが、ミラーレス機で
あれば問題なくアダプターで装着できるので、ちょっと
マニアックに、このARヘキサンのシリーズを攻めて見るのも
楽しいかも知れない。
まあでも、ARヘキサノンの各レンズは、いずれも全てが完璧な
性能という訳でもなく、レンズ毎に各々弱点を持っている事も
確かである。ARヘキサンンは過去のミラーレス・マニアックス
記事でも計8本ほど紹介していて、かつ市場で玉数が豊富なのは、
それらのみだと思うので、購入時には過去記事を参照されたし。
中上級マニア向けのシリーズのレンズ、という事にしておこう。
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さて、次のシステム、
![c0032138_18313601.jpg]()
カメラは、SONY NEX-7
レンズは、RICOH XRリケノン 50mm/f2(後期型)
(中古購入価格 6,000円相当)
ミラーレス・マニアックス第70回記事で紹介した、
1978~1990年代のMF小口径標準レンズ。
現代でこそ、リコーはPENTAXを傘下に抱え、自社においても
描写力に定評があるGRシリーズ等を擁し、高性能なカメラや
レンズを作るメーカーとしてのブランド力がある。
しかし、昔はそうではなかった。
リコーあるいは(前身の)理研光学がカメラを発売したのは、
今から80年も昔の1930年代に遡る。
だが、カメラ市場でリコーの名が有名となったのは、1960年代の
コンパクト機「オートハーフ」シリーズではなかっただろうか?
オリンパスPENなどハーフ判カメラが大流行していた時代で
あるが、リコーもなかなか健闘していた。
ペンシリーズと人気を争った、という資料もあるくらいで、
膨大な数のカメラが生産されていた。
その理由としては、自動化を進めて簡便な操作性を狙った事で、
従来は撮影が難しかった銀塩カメラが、一般(ビギナー)
ユーザーにも普及した時代であった事が言えると思うが、
それに加えて「富岡光学」製の高性能レンズを搭載していた
事も理由としてあるかも知れない。
![c0032138_18313631.jpg]()
富岡光学は、後にヤシカや京セラ・コンタックスのレンズを
製造した伝説のメーカーである。
現代に至るまで、一部の上級マニアは「富岡光学製」と聞く
だけで、どうしても、そのレンズが欲しくなってしまう位だ。
一般に知られていない「ブランドバリュー」としては、最強
クラスのメーカー名である。
さて、ハーフ判カメラも一通り市場に行き渡った1970年代頃
になると、今度は(銀塩)一眼レフのブームが始まった。
各社はコンパクト機で様々な自動化を進め、それが今度は
一眼レフ用の技術として転換された。この為、たとえばAE
(自動露出)等の機能を持った銀塩一眼レフは、これまた
市場の初級ユーザー層のニーズを喚起する事となった。
リコーもM42マウント版の一眼レフを作るようになるが、
M42版一眼はこの時代、多くのカメラメーカーが販売しており、
かつ、アサヒペンタックス(SPシリーズ等)の人気が高かった為、
リコー製M42一眼は苦戦していたのではなかろうか?
(この時代でも、まだコンパクト機「オートハーフ」シリーズ
は併売されている)
そして様々な技術革新において、M42マウントは使い難く
なっていく。例えば「絞り優先露出」などの新機能を搭載する
事が困難なのだ。
一部のメーカー(フジやオリンパス、ペンタックス)では、
M42の規格を拡張して部品などを増やし、そうした新機能を
搭載しようとしたが、せっかくのユニバーサル(=汎用的な、
互換性の高い)なマウントであるM42の長所が失われて
しまっていた。
他社が専用マウントを採用して新機能を次々と搭載していく中、
M42陣営の本家とも言えるペンタックスも、M42マウントでは
もう限界と見たのか、この時代1975年に(以降、現代にも続く)
「Kマウント」に転換する。
こうなると一気にM42は時代遅れのマウントとなってしまう、
リコーも1970年代後半より、ペンタックスに追従して
Kマウントとほぼ互換性のあるXRマウントを用いたカメラと
レンズ群を展開する。
このあたり「リコーがペンタックスに追従する」というのが
何とも興味深い。
現代ではリコーがペンタックスの親会社なのだ。
1978年には「39,800円」という当時の一眼レフとしては
驚異的な低価格の「XR500」を発売する。
(標準レンズ付き、ケース付きの価格だ)
当時、「サンキュッパ」というTVのCMまで流し、大ヒットし、
一眼レフの販売数記録を樹立したと聞く。
このXR500に標準レンズとして同梱されていたのがXR 50mm/f2
である、ただし、XRシリーズは1990年代に至るまで長期間
発売されていたので、XR 50mm/f2にも前期型と後期型の2つの
バージョンがある模様だ。
1990年代となり、リコーはマニア受けしたAFコンパクト機
「R1」を1994年に発売する、翌年R1sとなったが、この頃から
マニアがリコーの様々なレンズの描写力に対して注目する
ようになってきた。
特に注目されたのが、一眼用の本レンズXR50/2であり、
一部のマニアが「和製ズミクロン」、つまりライカ社製の
高級レンズと同等の描写力があり、しかも安価である、という
評価をした事で、マニアの間では広く知られる事となった。
1990年代は既にAF一眼レフの時代である。ミノルタ、そして
キヤノンやニコンも新鋭のAF一眼レフを発売し、リコーとしては
MF一眼のXRシリーズではどうにも対抗できなかったとも言える。
その頃から、リコーはマニア受けを狙った市場戦略に転換する、
こうして開発されたのが、超名機「GR1」(1996年)である。
おりしも、第一次中古カメラブームだ。
GR1は10万円近くもした高価なAFコンパクト機であったし、
バブル時代は既に去っていたが、マニアはこぞって高価なこの
カメラを購入し、GR1のそのレンズの描写力を褒め称えた。
なお、マニア受けを狙った際、従来のリコーのブランドの
イメージは「大衆向け」であったので、GR1の前面には、
RICOHというメーカー名は、あえて書かれていない。
で、この前後、雨後の筍のように各社から「高級コンパクト」と
呼ばれる高価なカメラがリリースされ、空前のブームとなる。
私も多くの「高級コンパクト」を購入したが、勿論現代では
これらにフィルムを入れて使おうという気にもなれず、
まったく意味の無い状態で防湿庫に眠っているが、まあ歴史の
証人的な博物館感覚で、これらの高級コンパクトは保有し続け
ておこうと思っている。
GR1で、マニア層に対して圧倒的なブランド力を身に付けた
リコーは、その後、銀塩GRシリーズを約10年間展開し、
さらにデジタル時代では、GRDシリーズを2005年より10数年間
続けて、現代に至る。
GR1から現在に至るまでの20数年間、高級コンパクト(デジタル
含む)というカテゴリーを維持しつづけたリコーの功績は
高く評価できる。
![c0032138_18313691.jpg]()
さて、余談が非常に長くなったが、そのGR1が出る直前の
1990年代前半迄のリコーのカメラは、前述のように大衆向け、
ビギナー向けという印象であり、決してマニアが着目する
ものでは無かった訳だ。
そんな中で本レンズXR50mm/f2だけは、先鋭的な上級マニアに
受け入れられた唯一のレンズであったのかも知れない。
「おい、リコーのレンズを使っているか?」
「いや、どうせ安物だろう?」
「それが、そうでは無いのだよ、XR50mm/f2というのは、
ライカのズミクロン並みに良く写るレンズだぜ!」
「本当か?よし、オレも探して買ってみよう」
という噂が、まことしやかにマニア層に伝播していったに
違いない。(ちなみに、この時代は、まだインターネットは
一般には普及しておらず、あったとしても「パソコン通信」
の時代だ)
で、おかげで、1990年代後半、このレンズは中古市場から
一掃され、私も本レンズを探すのに大変苦労した。
前述のXR500とのセットをようやく入手したのだが、
XR500自体は不要だったので知人に譲渡した、レンズ単体の
価格は不明だが、一応6000円相当としている。
![c0032138_18314304.jpg]()
まあでも、こうして「神格化」されたレンズではあるが、
現代において本XR50/2を使ってみると、どうにも欠点が目立つ
レンズである。
最短撮影距離は60cmと長く、ボケ質破綻も出て、ボケ質自体も
綺麗なものでは無い。
まあ、この最短性能で、ズミクロンの代用品として使うので
あれば、やや絞り込んで解像度優先で中遠距離被写体を撮る
という、古くからの撮影スタイルが銀塩時代では行われて
いたからだと思うが、絞りを開けて使う撮影スタイルには
向かないレンズなのだ。
また、かつて人気があったレンズあるから、程度の良い個体は
現代でも中古市場で高価な相場が付けられているケースもある、
高価だとコスパが良いレンズかどうかは微妙な判断となるが、
まあでも、それこそ「歴史の証人」として、本レンズを所有
する意味はあるのではなかろうか?と思っている。
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さて、次は今回ラストのシステム、
![c0032138_18314359.jpg]()
カメラは、SONY α65
レンズは、Industar 50-2 50mm/f3.5
(新品購入価格 7,000円相当)
本レンズは、モスクワ近郊にある光学機器工場「KMZ」
(S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場)製レンズで、
恐らくは1970年代頃から生産されていたと思われる。
![c0032138_18314303.jpg]()
マウントはM42で、レンズ構成は3群4枚であり、これは著名な
ツァイス製テッサー型レンズのコピー品である。
近年、熊本市の通販会社がロシアより未使用在庫品の
輸入販売を行っていて、そこから購入したものである。
ティルト型マウントアダプター込みで14800円であったが、
便宜上、レンズ代は半額の7000円相当としている。
特徴はレンズ前面に連続可変式の絞りが搭載されている事だ、
これの操作性は良く無いのだが、まあ、その代わり、なんとも
言えない格好良さがある。
ミラーレス・マニアックス第71回記事で紹介した際には、
個性的なデザインのPENTAX K-01と組み合わせて使った、
それらの絶妙なデザインのコラボレーションがマニアックだ。
![c0032138_18314310.jpg]()
さて、本レンズのように連続可変絞りタイプのM42レンズの
場合、通常M42レンズ背面にある絞り込みピンが不要である。
よって、マウントアダプターの種類を選ばず、どんな類の
M42アダプターでも使用可能である。
すなわち、例えばKマウントのボディ(例:PENTAX K-01等の
Kシリーズのデジタル一眼レフおよびやミラーレス機)に
PENTAX純正の「マウントアダプターK」を用いた場合、
絞込みピンがあって、A/M(絞り自動、手動)切り替えが無い
M42レンズの場合、「絞り開放でしか撮影できなくなる」のだが、
本レンズでは、そうした問題が無い、という事だ。
写りは、本家のテッサー、例えば、京セラ・コンタックスの
テッサー45mm/f2.8(ミラーレス第47回記事)と類似だが
逆光性能などは若干劣る。
それから、上記テッサーとは、僅かにスペックダウンしていて
例えば開放f値は、f2.8→f3.5、
最短撮影距離は、60cm→65cm のように、本家より僅かに劣る。
ただ、テッサーの特徴である、絞り込むとキリリと解像度が
上がりつつコントラストや発色も良くなる点は踏襲されている。
![c0032138_18314228.jpg]()
カメラボディとの相性だが、M42マウントだからKマウント機
で使用する、というのはちょっと問題ありだ。
というのもKマウント機は現在全てが一眼レフであり、MFでの
ピント合わせがミラーレス機に比べてやや不利な点がある。
唯一のKマウントミラーレス機K-01(現在は生産終了)では
MFの性能が壊滅的にNGだ(背面モニターのみでEVFが無い、
またEVF装着もできない、ピーキング機能の性能が劣悪、
拡大操作系も悪い)
なお、近年のKPでは、ライブビュー時に「輪郭抽出」と言う
ピーキング類似の機能が搭載されているが、まだ精度不足だ。
なので、Kマウントには拘らず、EVF搭載ミラーレス機にM42
アダプターを介して使うのが良いのだが、今回は、ちょっと
捻くれてα65を用いている。
このカメラの中身は、ミラーレス名機NEX-7とほぼ同等であり、
高精細EVFは、MF時にはピーキング機縫も使える。
すなわちα65は一眼レフとミラーレス機のハイブリッド的な
仕様を持つカメラであるので、アダプターさえあればミラーレス
機ど同様なアダプター母艦としての使い易さがある。
ただしミノルタ/SONY α(A)マウントに使用可能なアダプター
の種類は限られている。ミラーレス機ほどフランジバックが
短くは無いので必然的にそうなってしまうのだ。
今回は、その数少ないαマウント用のマウントアダプターで、
M42→α版を使っている。
なお、本システムでの写真においてはα65のエフェクト機能
を多用している。ハイブリッド機ではエフェクトの効果が
撮影前にわかるので、使いやすいのだ。
まあしかし、レンズ側の絞りの「操作性」は良くなく、また、
カメラシステムとしての「操作系」も、あまり快適では無い。
たとえば露出補正がこのシステムではダイレクトには出来ない
事や、内蔵手ブレ補正が効かない(手動焦点距離設定が無い)
事、デジタルズームが連続可変ではなく、テレコン風の
不連続であったりする事だ。
ちなみに手ブレ補正の件だが、電子接点を持つα(A)マウント
用レンズであれば、焦点距離は自動的にボディ側に伝達される、
しかし電子接点の無いMFレンズでは、手動焦点距離設定の機能
がαには無い為、実質的に内蔵手ブレ補正は使用できないのだ。
これは、他社製品を接続する事を極端に嫌うSONY製品の問題だ、
カメラに限らず他分野のSONY製電子機器でも同様なのだが、
このように自社の製品群を使わせようとする為、他社製品を排除
しようとする非汎用的な製品仕様コンセプトには賛同できない。
ちなみに、内蔵手ブレ補正機能を持つ各メーカーのカメラ製品で
手動焦点距離設定が無いのは、SONY製品だけである。
(注:近年のα7Ⅱシリーズ、α9、α99Ⅱでは、やっと
焦点距離手動設定機能がついた)
使っていてだんだん不愉快になってきた、やはり、MFレンズの
場合は、αの一眼ではなく、何らかのミラーレス機で使った
方が良かったかも知れない。
![c0032138_18314288.jpg]()
で、ロシアンレンズ全般の話だが、購入には色々とリスクがある。
日本の製品のように品質が安定している訳でもなく、
以前はカメラに装着できなかったり、装着して外れなくなったり
レンズが鏡筒から脱落するなど、そうしたトラブルは日常茶飯事
であった。まあ、今回の購入先の通販システムにおいては、ある
程度選別した製品を新品販売しているので、そういう問題は殆ど
解消されているのだが、中古購入時などでは要注意である。
あくまで上級マニア向けということで、ビギナーや中級者が
ロシア(またはウクライナ)製レンズに簡単に手を出すことは
推奨できない。
どうしても、という場合は、ミラーレスマニアックス記事でも
過去10数本のロシア製レンズを紹介していると思うので、
適宜検索、参照の上で弱点や注意点を理解した上での購入が
良いであろう。
まあでも、面白い分野ではある、今回は「MF標準レンズ編」
なので、ロシアンレンズの紹介は本インダスター50-2の
1本のみに留めておくが、いずれ本シリーズ記事においても
ハイコスパなロシアンレンズ特集を組む事にしよう。
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さて、今回はこのあたりまでで、
都合3回にわたり、50mm前後の焦点距離の標準レンズばかり
だったので少々飽きて来た感がある。
だがまあ、標準レンズは極めて種類が多いのだ、それゆえに
奥も深いので、2回や3回の記事では本来は足りない位だ、
でも、次回シリーズ記事では標準レンズを離れ、ミラーレス機
専用のレンズを紹介していく事としよう。
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回シリーズ第3回目は、MF標準レンズ編の第二回目として、
引き続き、4本のレンズを紹介していこう。
まず、最初のシステム、

レンズは、ヤシカ DSB 50mm/f1.9
(中古購入価格 2,000円)
ミラーレス・マニアックス第24回記事で紹介した、
1980年頃のMF小口径標準レンズ。

この時代以前、1970年代のヤシカレンズはM42マウントで
あったのだが、1975年のCONTAX RTSの発売開始、そして、
同時期の京セラによるヤシカの買収から、RTS用の新マウント
(RTSマウント)にCONTAXとYASHICAのレンズが共存する事と
なった。それ故、Y/Cマウントと呼ばれる訳だ。
マニアの間では、略して「ヤシコン」と呼ばれているのだが
それでは分かり難いため、現代の中古市場にいては、他の各種
CONTAXマウント(旧CONTAXのC、京セラCONTAX GやN,645)
と区別を明確化する為、「RTSマウント」と呼ばれる事も多い。
で、Y/C(RTS)マウントのレンズは、現代においては、
これを直接装着できるデジタル一眼レフは無い。
そう、2005年に京セラはカメラ事業から撤退してしまって
いるからだ。
なので、現代ではY/Cレンズはマウントアダプターを用いて
各種のミラーレス機に装着する事が一般的となっている。
が、京セラ撤退前後からミラーレス出現以前の2000年代半ば
迄でも、デジタル一眼レフにマウントアダプターを用いて、
Y/Cレンズを使う事が可能であった。
その際に良く母艦となったのは、EF(EOS)マウント、および
フォーサーズ(4/3)マウントである。
今回の記事では、あえて、その時代(2000年代)の雰囲気と
して、4/3機(注:マイクロフォーサーズでは無い)の、
OLYMPUS E-410を母艦としている。

ベースとしてY/Cマウントに変更したものではなかろうか?
型番のDSBからは、そう想像できる。(DSのタイプB?)
その旧バージョンYASHICA AUTO YASHINON DS 50mm/f1.9
は、ミラーレス・マニアックス第28回記事で紹介しているが、
両者の描写傾向はかなり似ている。恐らくは同一光学系であろう。
そして、旧DSもDSBバージョンも、両者「単層コーティング」
となっている、単層(モノ)コートは、多層(マルチ)コート
では無いという意味であるが、一般に想像されるモノコートの
レンズの特性とは、
「逆光に弱い」「ヌケ(コントラスト)が悪い」「黄色く写る」
等であるが、これらは必ずしも、そうであるとは言いがたく、
まず逆光耐性は被写体の状況次第とも言える。
「黄色く写る」に関しては、確かに、例えばニコン製の50年
以上前(1960年代)の一部のレンズでは、モノクロフィルムでの
撮影を前提として、ちょっと黄色目のカラーバランスとなって
いるレンズもあった(製造技術上の制約か?、あるいは、弱い
Yeフィルターを装着しているのと等価として、コントラストの
増大を狙った設計だったのか?そのあたりの真の理由は不明)
で、その時代のレンズが単層コーティングであった事も含め、
「単層=黄色い」という誤った常識が広まってしまったのでは
なかろうか?
その後の時代の単層コーティングレンズ(本レンズも含む)
においては、カラーバランスの乱れは殆ど感じられない。
気になる逆光耐性についても、レンズ構成が4~5枚程度と
少ない単焦点レンズにおいては、レンズ内部での反射も少なく
大きな問題にはなりえない。ただし、それも被写体状況に
よりけりで、太陽光が直接レンズに入ってくるような極端な
逆光条件等では、やはり弱点になりうる。
そうした逆光条件で発生する「フレア」は、コントラストの
低下を併発する、だから、単層コーティングのレンズは
「コントラストが低い」という風に誤解されやすいのだが、
これも上記の光線条件と、かなり関連が高い項目であり、
直接的に「単層=低コントラスト」という図式は成り立たない。
被写体状況によっては、この弱点は出にくくなる(回避できる)
加えて、現代のデジタル時代のカメラにおいては、カメラ側の
設定、あるいは撮影後のレタッチ等でも、コントラストの弱点は
緩和する事ができる。
ついでに言えば、もっと古い時代のカラーバランスの悪い
レンズであっても、デジタル(一眼、ミラーレス)であれば、
ホワイトバランス及び、その詳細調整、そしてレタッチにより、
ある程度は回避可能である。
まあつまり、単層コーティングのレンズでも、実際には、
さほど致命的な弱点にはならない訳だ。
例えば、単層コートの、ニコン シリーズE100mm/f2.8
(ミラーレス第24回記事)等は、殆ど単層コートの弱点は
表面化しないレンズである。すなわち、コーティングの差異を
うんぬん言う前に、レンズの基本設計そのものの差異による
性能差の方が、要因としてはむしろ大きいのであろう。

単層コート故の弱点は出にくく、基本的な描写力も悪くない、
なのに僅か2000円という価格だったので、コスパは抜群だ。
加えて、滅多に市場で見ないという「マニアック度」も高い。
トップクラスの性能を持つMF小口径標準レンズとは言い難いが、
コスパが極めて良いレンズである、とは言えるであろう。
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さて、次のシステム、

レンズは、コニカ HEXANON AR52mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)
1960年代~1970年代のMF小口径標準である。

ハイコスパレンズとして紹介するべきは、同じARヘキサノンの
小口径標準でも、AR50mm/f1.7であった(汗)
本AR52/1.8は、 ちょっと混同して持ち出してしまったのだ、
なにせ、ARヘキサノンの標準は、3本所有していてややこしい。
間違いに気がついたのは、本レンズでは撮影時にフレアが
出やすく、コントラストの低下が気になったからだ。
特に逆光でその傾向が著しい。
「あれ? こんなに悪いレンズだったかな?」
と疑問に思って、家に帰ってから自分用の資料(エクセルでの
性能評価リストだ)を見返して気がついた。
「あ、このレンズじゃあないや(汗)」
AT52/1.8 と AR50/1.7を間違えてしまっていた。、

以降、レンズを変えることにしよう。

レンズは、HEXANON AR50mm/f1.7 にチェンジした。
(中古購入価格 4,000~5,000円相当)
中古購入価格があいまいなのは、何かのカメラボディとの
セットで購入したからだ。

原因のコントラスト低下も起こりにくい。
こちらは、ミラーレス・マニアックス第48回記事で紹介した
1970年代頃のMF小口径標準レンズである。
AR52/1.8とスペックが近いが、時代が異なり、かつ、こちらの
レンズの方が大柄だ。
「大きなレンズの方が写りが良い」とは言い切れないのだが、
ARヘキサンノンに関しては、似たスペックのレンズが複数ある
場合は、一般に大柄のレンズの方が性能が高そうな雰囲気だ。

神格化された時代もあったのだが、それはレンジ機等の時代で
あって、まあ、その後の一眼レフ時代のARヘキサノンに関しては、
飛びぬけて凄いレンズというものは多くは無いと思う。
まあしかし、どのレンズも、そこそこ良く写ると言う要素はある。
しかも現代においては、ARヘキサノンは不人気であり、相場も
恐ろしく安価だ、すなわちコスパが良いシリーズであるという事だ。
マウントアダプターの若干の制限はあるが、ミラーレス機で
あれば問題なくアダプターで装着できるので、ちょっと
マニアックに、このARヘキサンのシリーズを攻めて見るのも
楽しいかも知れない。
まあでも、ARヘキサノンの各レンズは、いずれも全てが完璧な
性能という訳でもなく、レンズ毎に各々弱点を持っている事も
確かである。ARヘキサンンは過去のミラーレス・マニアックス
記事でも計8本ほど紹介していて、かつ市場で玉数が豊富なのは、
それらのみだと思うので、購入時には過去記事を参照されたし。
中上級マニア向けのシリーズのレンズ、という事にしておこう。
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さて、次のシステム、

レンズは、RICOH XRリケノン 50mm/f2(後期型)
(中古購入価格 6,000円相当)
ミラーレス・マニアックス第70回記事で紹介した、
1978~1990年代のMF小口径標準レンズ。
現代でこそ、リコーはPENTAXを傘下に抱え、自社においても
描写力に定評があるGRシリーズ等を擁し、高性能なカメラや
レンズを作るメーカーとしてのブランド力がある。
しかし、昔はそうではなかった。
リコーあるいは(前身の)理研光学がカメラを発売したのは、
今から80年も昔の1930年代に遡る。
だが、カメラ市場でリコーの名が有名となったのは、1960年代の
コンパクト機「オートハーフ」シリーズではなかっただろうか?
オリンパスPENなどハーフ判カメラが大流行していた時代で
あるが、リコーもなかなか健闘していた。
ペンシリーズと人気を争った、という資料もあるくらいで、
膨大な数のカメラが生産されていた。
その理由としては、自動化を進めて簡便な操作性を狙った事で、
従来は撮影が難しかった銀塩カメラが、一般(ビギナー)
ユーザーにも普及した時代であった事が言えると思うが、
それに加えて「富岡光学」製の高性能レンズを搭載していた
事も理由としてあるかも知れない。

製造した伝説のメーカーである。
現代に至るまで、一部の上級マニアは「富岡光学製」と聞く
だけで、どうしても、そのレンズが欲しくなってしまう位だ。
一般に知られていない「ブランドバリュー」としては、最強
クラスのメーカー名である。
さて、ハーフ判カメラも一通り市場に行き渡った1970年代頃
になると、今度は(銀塩)一眼レフのブームが始まった。
各社はコンパクト機で様々な自動化を進め、それが今度は
一眼レフ用の技術として転換された。この為、たとえばAE
(自動露出)等の機能を持った銀塩一眼レフは、これまた
市場の初級ユーザー層のニーズを喚起する事となった。
リコーもM42マウント版の一眼レフを作るようになるが、
M42版一眼はこの時代、多くのカメラメーカーが販売しており、
かつ、アサヒペンタックス(SPシリーズ等)の人気が高かった為、
リコー製M42一眼は苦戦していたのではなかろうか?
(この時代でも、まだコンパクト機「オートハーフ」シリーズ
は併売されている)
そして様々な技術革新において、M42マウントは使い難く
なっていく。例えば「絞り優先露出」などの新機能を搭載する
事が困難なのだ。
一部のメーカー(フジやオリンパス、ペンタックス)では、
M42の規格を拡張して部品などを増やし、そうした新機能を
搭載しようとしたが、せっかくのユニバーサル(=汎用的な、
互換性の高い)なマウントであるM42の長所が失われて
しまっていた。
他社が専用マウントを採用して新機能を次々と搭載していく中、
M42陣営の本家とも言えるペンタックスも、M42マウントでは
もう限界と見たのか、この時代1975年に(以降、現代にも続く)
「Kマウント」に転換する。
こうなると一気にM42は時代遅れのマウントとなってしまう、
リコーも1970年代後半より、ペンタックスに追従して
Kマウントとほぼ互換性のあるXRマウントを用いたカメラと
レンズ群を展開する。
このあたり「リコーがペンタックスに追従する」というのが
何とも興味深い。
現代ではリコーがペンタックスの親会社なのだ。
1978年には「39,800円」という当時の一眼レフとしては
驚異的な低価格の「XR500」を発売する。
(標準レンズ付き、ケース付きの価格だ)
当時、「サンキュッパ」というTVのCMまで流し、大ヒットし、
一眼レフの販売数記録を樹立したと聞く。
このXR500に標準レンズとして同梱されていたのがXR 50mm/f2
である、ただし、XRシリーズは1990年代に至るまで長期間
発売されていたので、XR 50mm/f2にも前期型と後期型の2つの
バージョンがある模様だ。
1990年代となり、リコーはマニア受けしたAFコンパクト機
「R1」を1994年に発売する、翌年R1sとなったが、この頃から
マニアがリコーの様々なレンズの描写力に対して注目する
ようになってきた。
特に注目されたのが、一眼用の本レンズXR50/2であり、
一部のマニアが「和製ズミクロン」、つまりライカ社製の
高級レンズと同等の描写力があり、しかも安価である、という
評価をした事で、マニアの間では広く知られる事となった。
1990年代は既にAF一眼レフの時代である。ミノルタ、そして
キヤノンやニコンも新鋭のAF一眼レフを発売し、リコーとしては
MF一眼のXRシリーズではどうにも対抗できなかったとも言える。
その頃から、リコーはマニア受けを狙った市場戦略に転換する、
こうして開発されたのが、超名機「GR1」(1996年)である。
おりしも、第一次中古カメラブームだ。
GR1は10万円近くもした高価なAFコンパクト機であったし、
バブル時代は既に去っていたが、マニアはこぞって高価なこの
カメラを購入し、GR1のそのレンズの描写力を褒め称えた。
なお、マニア受けを狙った際、従来のリコーのブランドの
イメージは「大衆向け」であったので、GR1の前面には、
RICOHというメーカー名は、あえて書かれていない。
で、この前後、雨後の筍のように各社から「高級コンパクト」と
呼ばれる高価なカメラがリリースされ、空前のブームとなる。
私も多くの「高級コンパクト」を購入したが、勿論現代では
これらにフィルムを入れて使おうという気にもなれず、
まったく意味の無い状態で防湿庫に眠っているが、まあ歴史の
証人的な博物館感覚で、これらの高級コンパクトは保有し続け
ておこうと思っている。
GR1で、マニア層に対して圧倒的なブランド力を身に付けた
リコーは、その後、銀塩GRシリーズを約10年間展開し、
さらにデジタル時代では、GRDシリーズを2005年より10数年間
続けて、現代に至る。
GR1から現在に至るまでの20数年間、高級コンパクト(デジタル
含む)というカテゴリーを維持しつづけたリコーの功績は
高く評価できる。

1990年代前半迄のリコーのカメラは、前述のように大衆向け、
ビギナー向けという印象であり、決してマニアが着目する
ものでは無かった訳だ。
そんな中で本レンズXR50mm/f2だけは、先鋭的な上級マニアに
受け入れられた唯一のレンズであったのかも知れない。
「おい、リコーのレンズを使っているか?」
「いや、どうせ安物だろう?」
「それが、そうでは無いのだよ、XR50mm/f2というのは、
ライカのズミクロン並みに良く写るレンズだぜ!」
「本当か?よし、オレも探して買ってみよう」
という噂が、まことしやかにマニア層に伝播していったに
違いない。(ちなみに、この時代は、まだインターネットは
一般には普及しておらず、あったとしても「パソコン通信」
の時代だ)
で、おかげで、1990年代後半、このレンズは中古市場から
一掃され、私も本レンズを探すのに大変苦労した。
前述のXR500とのセットをようやく入手したのだが、
XR500自体は不要だったので知人に譲渡した、レンズ単体の
価格は不明だが、一応6000円相当としている。

現代において本XR50/2を使ってみると、どうにも欠点が目立つ
レンズである。
最短撮影距離は60cmと長く、ボケ質破綻も出て、ボケ質自体も
綺麗なものでは無い。
まあ、この最短性能で、ズミクロンの代用品として使うので
あれば、やや絞り込んで解像度優先で中遠距離被写体を撮る
という、古くからの撮影スタイルが銀塩時代では行われて
いたからだと思うが、絞りを開けて使う撮影スタイルには
向かないレンズなのだ。
また、かつて人気があったレンズあるから、程度の良い個体は
現代でも中古市場で高価な相場が付けられているケースもある、
高価だとコスパが良いレンズかどうかは微妙な判断となるが、
まあでも、それこそ「歴史の証人」として、本レンズを所有
する意味はあるのではなかろうか?と思っている。
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さて、次は今回ラストのシステム、

レンズは、Industar 50-2 50mm/f3.5
(新品購入価格 7,000円相当)
本レンズは、モスクワ近郊にある光学機器工場「KMZ」
(S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場)製レンズで、
恐らくは1970年代頃から生産されていたと思われる。

ツァイス製テッサー型レンズのコピー品である。
近年、熊本市の通販会社がロシアより未使用在庫品の
輸入販売を行っていて、そこから購入したものである。
ティルト型マウントアダプター込みで14800円であったが、
便宜上、レンズ代は半額の7000円相当としている。
特徴はレンズ前面に連続可変式の絞りが搭載されている事だ、
これの操作性は良く無いのだが、まあ、その代わり、なんとも
言えない格好良さがある。
ミラーレス・マニアックス第71回記事で紹介した際には、
個性的なデザインのPENTAX K-01と組み合わせて使った、
それらの絶妙なデザインのコラボレーションがマニアックだ。

場合、通常M42レンズ背面にある絞り込みピンが不要である。
よって、マウントアダプターの種類を選ばず、どんな類の
M42アダプターでも使用可能である。
すなわち、例えばKマウントのボディ(例:PENTAX K-01等の
Kシリーズのデジタル一眼レフおよびやミラーレス機)に
PENTAX純正の「マウントアダプターK」を用いた場合、
絞込みピンがあって、A/M(絞り自動、手動)切り替えが無い
M42レンズの場合、「絞り開放でしか撮影できなくなる」のだが、
本レンズでは、そうした問題が無い、という事だ。
写りは、本家のテッサー、例えば、京セラ・コンタックスの
テッサー45mm/f2.8(ミラーレス第47回記事)と類似だが
逆光性能などは若干劣る。
それから、上記テッサーとは、僅かにスペックダウンしていて
例えば開放f値は、f2.8→f3.5、
最短撮影距離は、60cm→65cm のように、本家より僅かに劣る。
ただ、テッサーの特徴である、絞り込むとキリリと解像度が
上がりつつコントラストや発色も良くなる点は踏襲されている。

で使用する、というのはちょっと問題ありだ。
というのもKマウント機は現在全てが一眼レフであり、MFでの
ピント合わせがミラーレス機に比べてやや不利な点がある。
唯一のKマウントミラーレス機K-01(現在は生産終了)では
MFの性能が壊滅的にNGだ(背面モニターのみでEVFが無い、
またEVF装着もできない、ピーキング機能の性能が劣悪、
拡大操作系も悪い)
なお、近年のKPでは、ライブビュー時に「輪郭抽出」と言う
ピーキング類似の機能が搭載されているが、まだ精度不足だ。
なので、Kマウントには拘らず、EVF搭載ミラーレス機にM42
アダプターを介して使うのが良いのだが、今回は、ちょっと
捻くれてα65を用いている。
このカメラの中身は、ミラーレス名機NEX-7とほぼ同等であり、
高精細EVFは、MF時にはピーキング機縫も使える。
すなわちα65は一眼レフとミラーレス機のハイブリッド的な
仕様を持つカメラであるので、アダプターさえあればミラーレス
機ど同様なアダプター母艦としての使い易さがある。
ただしミノルタ/SONY α(A)マウントに使用可能なアダプター
の種類は限られている。ミラーレス機ほどフランジバックが
短くは無いので必然的にそうなってしまうのだ。
今回は、その数少ないαマウント用のマウントアダプターで、
M42→α版を使っている。
なお、本システムでの写真においてはα65のエフェクト機能
を多用している。ハイブリッド機ではエフェクトの効果が
撮影前にわかるので、使いやすいのだ。
まあしかし、レンズ側の絞りの「操作性」は良くなく、また、
カメラシステムとしての「操作系」も、あまり快適では無い。
たとえば露出補正がこのシステムではダイレクトには出来ない
事や、内蔵手ブレ補正が効かない(手動焦点距離設定が無い)
事、デジタルズームが連続可変ではなく、テレコン風の
不連続であったりする事だ。
ちなみに手ブレ補正の件だが、電子接点を持つα(A)マウント
用レンズであれば、焦点距離は自動的にボディ側に伝達される、
しかし電子接点の無いMFレンズでは、手動焦点距離設定の機能
がαには無い為、実質的に内蔵手ブレ補正は使用できないのだ。
これは、他社製品を接続する事を極端に嫌うSONY製品の問題だ、
カメラに限らず他分野のSONY製電子機器でも同様なのだが、
このように自社の製品群を使わせようとする為、他社製品を排除
しようとする非汎用的な製品仕様コンセプトには賛同できない。
ちなみに、内蔵手ブレ補正機能を持つ各メーカーのカメラ製品で
手動焦点距離設定が無いのは、SONY製品だけである。
(注:近年のα7Ⅱシリーズ、α9、α99Ⅱでは、やっと
焦点距離手動設定機能がついた)
使っていてだんだん不愉快になってきた、やはり、MFレンズの
場合は、αの一眼ではなく、何らかのミラーレス機で使った
方が良かったかも知れない。

日本の製品のように品質が安定している訳でもなく、
以前はカメラに装着できなかったり、装着して外れなくなったり
レンズが鏡筒から脱落するなど、そうしたトラブルは日常茶飯事
であった。まあ、今回の購入先の通販システムにおいては、ある
程度選別した製品を新品販売しているので、そういう問題は殆ど
解消されているのだが、中古購入時などでは要注意である。
あくまで上級マニア向けということで、ビギナーや中級者が
ロシア(またはウクライナ)製レンズに簡単に手を出すことは
推奨できない。
どうしても、という場合は、ミラーレスマニアックス記事でも
過去10数本のロシア製レンズを紹介していると思うので、
適宜検索、参照の上で弱点や注意点を理解した上での購入が
良いであろう。
まあでも、面白い分野ではある、今回は「MF標準レンズ編」
なので、ロシアンレンズの紹介は本インダスター50-2の
1本のみに留めておくが、いずれ本シリーズ記事においても
ハイコスパなロシアンレンズ特集を組む事にしよう。
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さて、今回はこのあたりまでで、
都合3回にわたり、50mm前後の焦点距離の標準レンズばかり
だったので少々飽きて来た感がある。
だがまあ、標準レンズは極めて種類が多いのだ、それゆえに
奥も深いので、2回や3回の記事では本来は足りない位だ、
でも、次回シリーズ記事では標準レンズを離れ、ミラーレス機
専用のレンズを紹介していく事としよう。