2017年7月16日(日)に大阪・天満橋の「大川」(八軒屋浜)
にて行われた「2017日本国際ドラゴンボート選手権大会」
(以下「日本選手権」)の模様より、後編。
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今回は、花形カテゴリーである「オープンの部」の観戦記事と
しよう。
オープンの部は、まさしく「頂上決戦」である。
ここで優勝したチームが、その年の日本一のチームだ。
本大会でのオープンカテゴリーの歴史であるが、
本大会が始まった1988年から当初の約10年間は、
神南(東京都)、津奈木海龍(熊本県)、坊勢酔龍会(兵庫県)
といった古豪チームが強く、各々が優勝していた。
「津奈木(つなぎ)海龍」は、現在も活動していて、九州の
各大会に参戦している他、関西圏の大会では数年前の琵琶湖の
「スモール日本選手権」で優勝した事もある(”熊本”と遠距離
なので、あまり多くの関西圏の大会に参戦できる訳では無い)
また「坊勢酔龍会」は、世代交代していて、現役バリバリで、
今回の大会のオープンの部にも出場している(昨年3位入賞)
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余談だが、中編で「神南」(じんなん)の、元選手が今回の大会を
観戦しに来て居た、と書いたのだが、彼によると「神南とは
その当時、東京渋谷の神南に、ボート(カヌー?)協会があった
ので、そこから取った名前だった」との事である。
さて、1998年頃からの約10年間だが、
横浜サーフベイザーズ(神奈川)、舞浜河探検隊(東京/千葉)
の黄金期だ。また、この頃、カヌー強豪の「大正大学カヌー部」が
異種目とも言える本競技に参戦して優勝した事もあった。
2008年頃から一昨年までの8年間は
「磯風漕友会」(兵庫・相生)の連覇が続いていた。
他チームを圧倒し、磐石とも言える勝ち方は「横綱」とも称されて
いたのであった。
で、興味深いのは、ここ数年の話である。
新鋭チーム「bp」(兵庫/大阪)は、
2012年冬に「日本一のチーム」を目指して結成され、
2013年のシーズンから皆勤賞とも言える程に各地の多数の大会に
参戦し、その殆どに優勝していた。
しかし、日本選手権や他の大会で戦う「磯風漕友会」にだけは
歯が立たない状態が2年間程続いていた。
2015年6月、大阪の堺泉北(高石)大会で、ついに「bp」は
「磯風」を破って優勝した。なかなか越せなかった巨大な壁に、
やっと手が届いた、と思えた事であろう。
続く2015年7月、「日本選手権」が開催された。
この年、海外招待チームの「フィリピンアーミー」が極めて強く、
予選では「磯風」や「bp」と同等の超絶タイムで、そのまま皆が、
決勝戦に進出、いわゆる「三つ巴戦」となった訳だ。
決勝戦前、「bp」チームは極めて緊張していた。日本選手権での
優勝はまだ無い。ここで「磯風」を先月に引き続いて再び倒せば、
自分達に「日本一」の称号が与えられる事が、ほぼ確定的となるし、
あわよくば「フィリピン」も倒して「世界」にも通用する事を
確信したい所だ。
だが決勝戦、「bp」は痛恨のスタートミスで結果3位に甘んじた。
「bp」は、その年のシーズンオフから、極めて過酷なスタートの
「特訓」を始める。勿論、2016年に向けての事だ。
明けて2016年、「磯風」は日程が変更となった「ペーロン」の
大会に注力していて、5月~6月のドラゴンの大会を欠場した。
そればかりか「20人漕ぎドラゴン艇」での練習も出来ず、
もっぱら「水槽練習」を繰り返していた、とも聞いていた。
7月の日本選手権、いきなりのドラゴン20人艇に乗り込む「磯風」
勿論、予選では他チームを圧倒したのだが、問題は決勝戦だ、
「bp]が昨年のリベンジを誓って万全の準備を整えていたのだ。
決勝戦では「磯風」と「bp」は序盤から他チームを引き離し
事実上の「一騎打ち」の状況であった、両者は、ほぼ同等・・
しかしゴールした時点で、「bp」がコンマ差で「磯風」を破り
日本選手権での初優勝をもぎ取ったのであった。
だが、その後のシーズンでは「bp」と「磯風」は対決の機会に
恵まれなかった。
そして、迎えた今年2017年、
「bp」は、5月の宇治大会、6月の堺泉北で優勝、もはや敵なしに
見えるのであるが、「磯風」は、これらの大会は出場していない。
「bp」としては、確かに昨年(2016)には「磯風」を破っては
いたが、まだ「日本一」を確実とした実感は無い。
b「全ては、今年の日本選手権が終わってからだ」
と、彼らから何度かそんな話を聞いた、つまり、この日本選手権で
再び「磯風」を倒すまでは、まだ何も始まっていない、という
意味なのであろう・・
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さて、もう始まる前から緊張感が伝わってきそうな話なのだが、
まあ、決勝戦の話は最後の最後にする事にしよう。
まずは、オープンの部の出場チームの一部を紹介して行こう。
(例によって、全てのチームは、多すぎて紹介できないので
悪しからず・・)
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こちらは「好きやねん大阪」
なんと、1988年の本大会開催年から「皆勤賞」のチームである!
ちなみに、これに次ぐのは本大会ではスモールの部に参戦している
「フォーティズ」があるとの事だ(注:昔は「ギャンブラーズ」
という名前であったと聞く)
「好きやねん大阪」は、現役の「Rスポーツマンクラブ」の
母体となったチームではあるが、本大会の参戦時にのみ、
開催当初からの名前の「好きやねん」にしている他、現役の
「R」の選手層とも、少しメンバーが変更されている模様だ。
なお「R」は、本大会終了後の翌週、マレーシア「ランカウイ島」
で行われる国際大会に参戦すると聞いている。
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さて、こちらは「ヤンググリーン」チーム。
昨年まで2年連続で決勝に進出しているが、ドラゴンのチーム
からは、あまり馴染みが無いチーム名かも知れない。
実は、彼らは「相生ペーロン」の強豪チームで、Ⅰ部または
Ⅱ部で活躍している、いわば「ペーロン専業」チームである。
同じ出自の女子チームもあって「キュリアス魚橋」と言う。
女子チームも強豪で、相生ペーロン競漕では「超連覇」中の
「Super Dolphin」に次いで、2位や3位に入賞したりする他、
他地区での地方大会に出場して優勝する事もある模様だが、
関西圏のドラゴンボートの大会に来たのは見た事が無い。
「ヤンググリーン」は、本大会では、毎年、決勝進出ぎりぎり
という感じのポジションで、同様な実力値のチームとしては
滋賀の強豪「池の里」や、静岡の強豪「うみひ」(海猿火組)
が居るので、そうしたライバルチームのタイムを気にしている
模様であった。
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さて、こちらは、その「池の里Lakeres!」(滋賀)
ご存知「町内会チーム」で、結束力抜群であるが、町内会限定
であるが故に、年々メンバー全員が歳を取っていくのが弱点だ。
毎年毎年「今年はシニアの部で出ようかな・・」と言っている
のであるが、今年もまだなんとかレギュラーカテゴリーで頑張る
模様である。
まあ、昨年、「ホーム大会」の「びわこペーロン」を2連覇
(優勝は3回目)したので、まだシニア転向は早いと見ているので
あろう。本日本選手権大会の過去の戦績は、私が記憶している
限りでは、決勝戦に2回進出して、いずれも5位であった。
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こちらは「しずはま」(静岡/神奈川)
聞き慣れない名前であるが、静岡の「海猿火組」と神奈川の
「濱龍(横浜ドラゴン)」のコラボチームである。
なお、海猿火組のメインチームは「うみひ」として本大会の
スモールの部にダブルエントリーしていた(結果4位)
「海猿火組」としては、過去、本大会のオープンの部では、
決勝進出多数、2位と3位の入賞実績があったと記憶している。
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こちらは「坊勢酔龍会」(兵庫・瀬戸内海家島諸島)
「古豪」である、初期の本大会の優勝常連チームだ。
近年の本大会では、シニアの部とのダブルエントリーが多く、
ほとんど入賞していたと思うが、今回の大会ではシニアは欠場
である。若手チームの方もなかなかの実力値で、昨年のオープン
の部では、「bp」「磯風」に次いで3位に入賞している。
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こちらは「IHI相生」(兵庫)
長崎、そして相生と伝承された「ペーロン競漕」は、100年以上
の長い伝統を持つが、その立役者となった企業チームだ。
兄弟チームとしての「IHI瑞龍丸」(東京/埼玉)と、毎年本大会
に参戦しているが、「瑞龍丸」は今回準決勝進出と健闘した。
「IHI相生」は長距離に強く、地元「相生ペーロン競漕」では、
上位カテゴリーの「Ⅰ部」に定着している(注:成績が悪いと
入れ替わりがある)また、琵琶湖で行われる「1000m選手権」
の長距離戦では、昨年まで3連覇中と非常に強い。
ドラゴンボートの視点から見ると独特な「ペーロン漕ぎ」の
伝統を色濃く受け継ぐチームであり、本大会のような短距離戦
(250m)は、やや苦手意識があるかも知れない。
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余談だが、相生のチーム(ヤンググリーン、磯風、ドルフィン
IHI相生)は、不思議な事に、各地の大会参戦時に大量のドリンク
類を持参してくるのが特徴だ。今日もまた「IHI相生」からPETの
お茶と缶ビールを頂いた。(いつも、ありがとうございます)
なお、本大会に限らず、全てのドラゴン大会では、レース中の
飲酒は厳禁である(ビール等は、試合終了後用、という訳だ)
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さて、このあたりで「磯風漕友会」の様子を見に行きたいのだが、
どうも、なかなかタイミングが悪い。ずっとアップ(準備運動)を
しているか、あるいはレースに出ているかで、テントに行っても
殆ど誰も居ない事が多く、あるいは選手達が居ても、どうにも、
緊張感が漂う雰囲気(汗)で、なかなか近寄り難い。
やむを得ない、兄妹チームの「Super Dolphin」に行って、
「磯風」の様子を間接的に聞きだしてみようか・・
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ド「匠さん、タイミング悪いね~、今、女子選手たちの
体重の自己申告中!」
(注:左右の漕手の重量バランスを取る為であろう)
匠「ありゃ~、それは失礼(汗) 聞こえてないですよ~
それに体重は写真に写らないから大丈夫。また後で来ます!」
・・と言う事で、またしても「磯風漕友会」の様子を
聞きそびれてしまった。
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さて、オープンの部は予選を終えたところで、時間軸は前後
するが「B決勝」(下位決勝)の結果をお知らせしておこう。
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1位:IHI相生
2位:近畿車輛電龍(大阪)
3位:関空飛龍(大阪)
4位:好きやねん大阪
5位:大阪産業大学 常翔喜龍
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以降は、注目のオープンの部の準決勝
第1組は以下の通り(レーン順)
1)TAITAM X DRAGONS(東京/香港)
2)磯風漕友会
3)bp next(大阪/兵庫)
4)坊勢酔龍会
5)しずはま
ところが、このレースで、ドラゴンボート界では殆ど前例の無い
アクシデントが起こってしまう(汗)
まず「bp next」とは、超強豪「bp」のサブチームである、
ただ、さしもの「bp」も、20人漕ぎでのダブルエントリーは
少々メンバー数が苦しいのか、新人選手も多く乗っている模様だ。
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写真は、今回初参戦の「bo next」の美人鼓手。
![c0032138_17220479.jpg]()
さて、レース開始序盤だが、「磯風」が順当に頭を取る、
しかし、サブチームとは言え「bo next」との差は広がり
すぎていないだろうか?
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「bp next」は、4レーン「坊勢」や5レーン「しずはま」
からも遅れている模様だ。
焦ったのだろうか?このあたりから「bp next」の挙動が
怪しくなり、右に蛇行を始める。
匠「あ、危ない!」
「bp next」と「坊勢」が接触模様だ、
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瞬時にカメラを向けたが、600mm超級の望遠レンズは、ぴったりと
狙った場所を撮るのは難しい、転覆の瞬間は、ブレながら、かなり
下を撮ってしまった。
まあ、転覆はやむを得ない、これはアクシデンドだ。
問題は、この後だ、まず安否確認をしなければならない。
![c0032138_17220325.jpg]()
5レーンの「しずはま」には、水難救助の専門家である、
「海上保安庁」のメンバーが乗ってはいるが、レース中であり
また、位置関係も悪い、ここはスタッフの「救助艇」に任せる
事になるであろう。
美人ドラマーの姿が見えないが、大丈夫か?
![c0032138_17304534.jpg]()
・・全員無事な模様であった、これで一安心。
しかし、このレースの結果は、どうなるのか?
一応100m地点を越えていればレース成立の可能性もあるが、
これは、カーレースで言えば「レッド・フラッグ」の状態だ、
すなわち「レース中断」という事で、追い越しも順位戦も
もう無効である。
そして、進路妨害である「bp next」の失格は止むを得まい、
すると、残りのチームで再レースとなるかな?
しばらくして、本部から説明のアナウンスがあった。
予想通り「bp next」を失格として、他は再レースだ。
まあ、妥当な措置であろう。が、一部のチームの選手達は、
連続で他のレースにも出場するので、しんどいだろう(注:
内規として、同一選手のレース間隔を30分以上取る事、がある)
が、途中でB決勝とその表彰式を挟む模様なので、ほぼ大丈夫だ。
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「bp next」のアクシデントの原因は色々あった模様だが、
そこはもう言及はするまい、起こってしまった事は仕方が無い、
ともかく、メンバーが皆無事で良かった。
(誰かのサンダルの片方が水没紛失した模様だが・・)
ちなみに、本「日本選手権」での転覆・沈没事故は初である。
私が過去十数年間、各地で約5000を超えるレースを観戦した
中で、(危険な)「高島ペーロン」を除いての、ドラゴンと
ペーロン大会においては、転覆・沈没事故は過去6件あった。
うち4件は、強風による艇への浸水沈没で、やむを得ず、
1件はビギナーチームが優勝の喜びで皆立ち上がっての転覆。
残りの1件は、つい最近の2017年6月の高石大会で、蛇行後の
操船ミスでバランスを崩しての転覆であった。
また、いずれも単独事故であり、接触事故も割と珍しいし
接触した場合でも、転覆に至った事は過去無かった。
なお、舵や船体の破損は過去数件あった。
(注:14年以上前の大会や、地方大会での例は知らない)
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・・さて、気を取り直して、オープン準決勝第2組の結果だが
1位:bp
2位:池の里Lakers!
3位:Bon Oyage(東京)
4位:ヤンググリーン
5位;IHI瑞龍丸
となった。
うち、「bp」と「池の里」は決勝進出が確定、
3位の「Bon Oyage」は、第一組の再レース後、3位となった
チームとタイムの速い方が決勝進出だ。
![c0032138_17221493.jpg]()
会場は、準決勝での超強豪の「bp next」の転覆にまだ
ざわついた様子が残っている。
しかし、意外に「bp」のアクシデント回数は多く、以前にも
パドルの破損は数件、そして、膨張式のライフジャケットを
漕いでいる途中で膨らましてしまった事もあった。
まあ、極めて多数の大会に参戦しているので、確率的に
アクシデントも多いのであろう。
結果、決勝進出チームは以下の通り(レーン順)
1)池の里Lakers!
2)bp
3)磯風漕友会
4)坊勢酔龍会
5)Bon Oyage
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なお「TAITAM X DRAGONS」と「Bon Oyage」は、各々3位で
完全に同タイムであったので、抽選で決勝進出を決めたそうだ。
(上写真は、Bon Oyageチーム)
「TAITAM X」は不運であったが、まあ、今回に関しては、
「TAITAM X」は、スモールの部で見事優勝している。
決勝常連の「しずはま」(海猿火組)と「ヤンググリーン」は
残念ながら今回は準決勝敗退となった(いずれも昨年は決勝進出)
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さて、いよいよ「決勝戦」だ。
余談になるが、前編で「一般観客の大会観戦の注意点」を書いた。
これに関して、カメラ関連で追加だが、本大会を観戦撮影する
アマチュアカメラマン(静止画)の場合、三脚は不要だ。
天候が快晴時であれば、400mm以上級の超望遠レンズを使った際の
開放絞り値f5.6程度で、感度ISO100でのシャッター速度は、
およそ1/1000秒に到達する。
ビギナークラスであっても、これは超望遠レンズでの手ブレ限界
シャッター速度(1/400~1/800秒)を上回るので、三脚あるいは
手ブレ補正機能すら不要だ。
天候が曇りや夕方であっても、ISO感度を400程度まで高めれば
必要十分のシャッター速度が得られる。逆に言えば、1/1000秒の
シャッター速度が保持できるように絞り値やISO感度を決める。
換算500mm未満の望遠レンズや中上級者であれば、シャッターの
低速限界は、もっと低くする事も出来る。
不要な重たい荷物になり、他の観客の通行や観戦の邪魔にもなる
三脚の使用は非推奨である。
それでもブレてしまう場合は、カメラの構え方(重心を支える)
の問題か、または、動くボートに合わせて、カメラを不用意に
振り回してしまったりするケースだと思う。
----
さて、ここまでの余談は、概ね撮影機材や技法に関する事だ。
でも、ドラゴンの撮影では、機材よりももっと重要な点がある。
撮影ポジションをどうするか?が、最重要である。
そして、本決勝戦では、それが極めて迷い所だ。
本会場の本部側、スタート地点であれば、一瞬は全艇が揃って
撮れるが、すぐ2),3)レーンが先行するだろうから無意味だ。
コース中央では、レース全体が見渡せる。撮影という観点で
言えばそれで良いが、観戦という事からすると、ゴールの瞬間は、
角度と距離の問題で、どこが勝ったのかはわからない事であろう。
それに、このあたりは大変混雑する、大きな望遠レンズを左右に
振り回すのは周囲の一般観戦客にも非常に迷惑な話だ。
(実際にそうしているアマチュアを見かけた)
コース後半地点はベストに近い。しかし、もし「bp」と「磯風」
がコンマ差の超接戦になった場合、勝敗を見極めるのが困難だ。
最後、ゴール前は、観戦場所としては不人気だ、何故ならば
そこはコースの殆どが死角で見えない。ラストの50m、ほんの
10数秒しか写真を撮るチャンスが無いのだ。
それと、磯風リードの場合、ラスト50m付近ではレーン順から
撮影アングルが「逆順」となり、両者の艇を同時に画角には
入れられない。
だが、私は最終的にはゴール前地点をあえて選択、このレースは
最後まで接戦となるだろうと見たのだ。
----
「bp」と「磯風」、どちらが勝つか?の事前予想はさらに難しい。
予選タイムはあまり参考にならない。
「磯風」は各レースで常に本気だが、「bp」もそうだとは
限らない。
「磯風」は、今回若干メンバーを変えてきているように見える、
そもそも、この1年間、ドラゴンの大会には一切顔を出さなかった
所を見ると、秘密練習で最強のメンバーを揃えてきているのかも
知れない(前述のように、事前に情報を聞き出せなかった)
----
運はどうか?「bp」のドラマーは、お馴染み「謎の美少女」だ、
最近は学業の関係で忙しいそうだが、本大会は毎年鼓手を務めて
下さっている。で、私は各地の大会で彼女が鼓手となっている
レースで優勝出来ずに破れた事を、ほんの数回しか見ていない。
![c0032138_17221521.jpg]()
つまり「bo」にとっては「幸運の女神」であろう。
恐らく決勝で負けた回数は3回のみ(兄弟チーム戦を除く)
いずれも日本選手権での「磯風」戦であったと思う。すると、
彼女の幸運も「磯風」には通用しない、という事かも知れない。
対する「磯風」のドラマー氏も「ゲン担ぎ」タイプである。
その昔は、毎レースのたびに海や川の水で手を清める所作を
していたのだが、ある時、勢い余って落水してしまった(汗)
それ以降、その「儀式」は行っていないように思える。
![c0032138_17221364.jpg]()
実力とか運は、まあ良い、そもそも、実力伯仲チームでの決勝戦
ともなれば、ほとんどが「心理状態」に結果が左右されるのだ。
2015年の決勝での「bp」の緊張によるミスが、その一例であろう、
だが、そうしたミスを起こさない為に、「bp」は、その後、
過酷すぎるとも思える練習を繰り返してきた。「平常心」を
養うには、幾多のトレーニングで、それを日常とするしか無い。
ちなみに、写真撮影だって同じ事だ、アマチュアカメラマンが、
慣れない望遠レンズを持ち出して、いきなりドラゴン大会等を
撮ろうとしても上手くいく筈が無い。
「日常」とも言える位に、望遠レンズなり自身のカメラ機材を
使いこんで初めて、様々な余裕を持って撮影ができるのだ。
その「余裕」が無ければ、自分自身が撮影が出来ずに困る他、
周囲が見えずに、様々な迷惑やトラブルを引き起こしてしまう。
(近年の様々な混雑するイベントでのカメラマンのマナーの悪さは
社会的な問題にもなっている。で、殆どがビギナーそのものだ)
----
それから「bp」は、やはり兄弟チームの転覆事故が、精神的に
影響があるだろうと思える、本レースには直接の関係は勿論無い
のだが、何とも、もやもやとした気持ちがあるかもしれない。
・・さて、私の最終予想は「磯風有利」である。
そしてレース前に、幾人かの大会スタッフにもそう言って、
「磯風ゴールのシーンを撮るから、ゴール前に行きますね」と
撮影ポジションを変えたのだ。
これで予想が外れたら、とんでもない「スカ」の写真となるが、
まあ、それは一種の賭けだ。
選手達は皆、勝負の世界に身を投じているのだ、カメラマンだって
その気持ちを少しでも受け止めても良いでは無いか・・
「Are you ready? Attention Go!」
さあレースが始まった、しかし、ゴール前の死角地点で
あるので、およそ最初の40秒間はレースの模様が見えない。
でも頭の中で予想はついていた、2),3)レーンが、他艇を
1艇身、いや2艇身近くも引き離していくのだ・・
場内実況アナウンスは勿論ある、「bp」と「磯風」の
接戦を伝えている、だが言葉を頭で映像化するのは無理だ。
![c0032138_17221480.jpg]()
200m地点、さあ見えた、この瞬間、予想していた映像のイメージ
とドンピシャ一致だ、もう予め望遠レンズをそこに向けて待って
いた位である。なにせ撮影可能時間は約10秒間しかない。
で、「磯風」のリードも予想通り。
(写真的に「逆順」だが、この瞬間はやむを得ない)
その差は、約半艇身(1秒程度)、「bp」は、かなり強烈な
ラストスパートをかけてはいるが、もはや、ここからの逆転は無い。
![c0032138_17221463.jpg]()
さて、ゴール! 「磯風」2年ぶりに日本一を奪回!
![c0032138_17222109.jpg]()
常に冷静な「磯風」としては極めて珍しく、パドルを持ち上げて
の歓喜と勝利のパフォーマンス。
---
以下、オープンの部の表彰式の模様。
![c0032138_17222085.jpg]()
オープンの部の最終結果だが、下記のようになった。
1位:51秒65:磯風漕友会
2位:52秒50:bp
3位;56秒97:坊勢酔龍会
4位;58秒50:池の里Lakeres!
5位;59秒10:Bon Oyage
![c0032138_17222021.jpg]()
本大会の総括だが、結果的には「混合の部」も「オープンの部」も
一昨年の優勝チームが再び勝利する事となった。
しかし、その背景には、本当に様々な人間ドラマが潜んでいた。
選手達は色々と大変だったとは思うが、それなりに達成感は
得られた事であろう。今回負けたチームも、もう明日から来年の
本大会に向けての活動が始まり、モチベーションも高まるであろう。
そして、観戦側の立場としても、眼前で極めて興味深い多数の
レースが展開されて満足感の高い大会となった。
これは「一流のエンタティンメント」としても通用すると思う。
沢山の観戦客の皆様にも、この面白さを伝えたく、そして、
来年の「30周年記念大会」にも期待をして、本大会のシリーズ
記事を終了する。
今年の「熱い季節:ドラゴンボート」は、まだまだ続く。
次回は「高島ペーロン」の記事となる予定だ、その大会は
極めて観戦のエンジョイ度が高いので、またお楽しみに・・
にて行われた「2017日本国際ドラゴンボート選手権大会」
(以下「日本選手権」)の模様より、後編。

しよう。
オープンの部は、まさしく「頂上決戦」である。
ここで優勝したチームが、その年の日本一のチームだ。
本大会でのオープンカテゴリーの歴史であるが、
本大会が始まった1988年から当初の約10年間は、
神南(東京都)、津奈木海龍(熊本県)、坊勢酔龍会(兵庫県)
といった古豪チームが強く、各々が優勝していた。
「津奈木(つなぎ)海龍」は、現在も活動していて、九州の
各大会に参戦している他、関西圏の大会では数年前の琵琶湖の
「スモール日本選手権」で優勝した事もある(”熊本”と遠距離
なので、あまり多くの関西圏の大会に参戦できる訳では無い)
また「坊勢酔龍会」は、世代交代していて、現役バリバリで、
今回の大会のオープンの部にも出場している(昨年3位入賞)

観戦しに来て居た、と書いたのだが、彼によると「神南とは
その当時、東京渋谷の神南に、ボート(カヌー?)協会があった
ので、そこから取った名前だった」との事である。
さて、1998年頃からの約10年間だが、
横浜サーフベイザーズ(神奈川)、舞浜河探検隊(東京/千葉)
の黄金期だ。また、この頃、カヌー強豪の「大正大学カヌー部」が
異種目とも言える本競技に参戦して優勝した事もあった。
2008年頃から一昨年までの8年間は
「磯風漕友会」(兵庫・相生)の連覇が続いていた。
他チームを圧倒し、磐石とも言える勝ち方は「横綱」とも称されて
いたのであった。
で、興味深いのは、ここ数年の話である。
新鋭チーム「bp」(兵庫/大阪)は、
2012年冬に「日本一のチーム」を目指して結成され、
2013年のシーズンから皆勤賞とも言える程に各地の多数の大会に
参戦し、その殆どに優勝していた。
しかし、日本選手権や他の大会で戦う「磯風漕友会」にだけは
歯が立たない状態が2年間程続いていた。
2015年6月、大阪の堺泉北(高石)大会で、ついに「bp」は
「磯風」を破って優勝した。なかなか越せなかった巨大な壁に、
やっと手が届いた、と思えた事であろう。
続く2015年7月、「日本選手権」が開催された。
この年、海外招待チームの「フィリピンアーミー」が極めて強く、
予選では「磯風」や「bp」と同等の超絶タイムで、そのまま皆が、
決勝戦に進出、いわゆる「三つ巴戦」となった訳だ。
決勝戦前、「bp」チームは極めて緊張していた。日本選手権での
優勝はまだ無い。ここで「磯風」を先月に引き続いて再び倒せば、
自分達に「日本一」の称号が与えられる事が、ほぼ確定的となるし、
あわよくば「フィリピン」も倒して「世界」にも通用する事を
確信したい所だ。
だが決勝戦、「bp」は痛恨のスタートミスで結果3位に甘んじた。
「bp」は、その年のシーズンオフから、極めて過酷なスタートの
「特訓」を始める。勿論、2016年に向けての事だ。
明けて2016年、「磯風」は日程が変更となった「ペーロン」の
大会に注力していて、5月~6月のドラゴンの大会を欠場した。
そればかりか「20人漕ぎドラゴン艇」での練習も出来ず、
もっぱら「水槽練習」を繰り返していた、とも聞いていた。
7月の日本選手権、いきなりのドラゴン20人艇に乗り込む「磯風」
勿論、予選では他チームを圧倒したのだが、問題は決勝戦だ、
「bp]が昨年のリベンジを誓って万全の準備を整えていたのだ。
決勝戦では「磯風」と「bp」は序盤から他チームを引き離し
事実上の「一騎打ち」の状況であった、両者は、ほぼ同等・・
しかしゴールした時点で、「bp」がコンマ差で「磯風」を破り
日本選手権での初優勝をもぎ取ったのであった。
だが、その後のシーズンでは「bp」と「磯風」は対決の機会に
恵まれなかった。
そして、迎えた今年2017年、
「bp」は、5月の宇治大会、6月の堺泉北で優勝、もはや敵なしに
見えるのであるが、「磯風」は、これらの大会は出場していない。
「bp」としては、確かに昨年(2016)には「磯風」を破っては
いたが、まだ「日本一」を確実とした実感は無い。
b「全ては、今年の日本選手権が終わってからだ」
と、彼らから何度かそんな話を聞いた、つまり、この日本選手権で
再び「磯風」を倒すまでは、まだ何も始まっていない、という
意味なのであろう・・
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さて、もう始まる前から緊張感が伝わってきそうな話なのだが、
まあ、決勝戦の話は最後の最後にする事にしよう。
まずは、オープンの部の出場チームの一部を紹介して行こう。
(例によって、全てのチームは、多すぎて紹介できないので
悪しからず・・)

なんと、1988年の本大会開催年から「皆勤賞」のチームである!
ちなみに、これに次ぐのは本大会ではスモールの部に参戦している
「フォーティズ」があるとの事だ(注:昔は「ギャンブラーズ」
という名前であったと聞く)
「好きやねん大阪」は、現役の「Rスポーツマンクラブ」の
母体となったチームではあるが、本大会の参戦時にのみ、
開催当初からの名前の「好きやねん」にしている他、現役の
「R」の選手層とも、少しメンバーが変更されている模様だ。
なお「R」は、本大会終了後の翌週、マレーシア「ランカウイ島」
で行われる国際大会に参戦すると聞いている。

昨年まで2年連続で決勝に進出しているが、ドラゴンのチーム
からは、あまり馴染みが無いチーム名かも知れない。
実は、彼らは「相生ペーロン」の強豪チームで、Ⅰ部または
Ⅱ部で活躍している、いわば「ペーロン専業」チームである。
同じ出自の女子チームもあって「キュリアス魚橋」と言う。
女子チームも強豪で、相生ペーロン競漕では「超連覇」中の
「Super Dolphin」に次いで、2位や3位に入賞したりする他、
他地区での地方大会に出場して優勝する事もある模様だが、
関西圏のドラゴンボートの大会に来たのは見た事が無い。
「ヤンググリーン」は、本大会では、毎年、決勝進出ぎりぎり
という感じのポジションで、同様な実力値のチームとしては
滋賀の強豪「池の里」や、静岡の強豪「うみひ」(海猿火組)
が居るので、そうしたライバルチームのタイムを気にしている
模様であった。

ご存知「町内会チーム」で、結束力抜群であるが、町内会限定
であるが故に、年々メンバー全員が歳を取っていくのが弱点だ。
毎年毎年「今年はシニアの部で出ようかな・・」と言っている
のであるが、今年もまだなんとかレギュラーカテゴリーで頑張る
模様である。
まあ、昨年、「ホーム大会」の「びわこペーロン」を2連覇
(優勝は3回目)したので、まだシニア転向は早いと見ているので
あろう。本日本選手権大会の過去の戦績は、私が記憶している
限りでは、決勝戦に2回進出して、いずれも5位であった。

聞き慣れない名前であるが、静岡の「海猿火組」と神奈川の
「濱龍(横浜ドラゴン)」のコラボチームである。
なお、海猿火組のメインチームは「うみひ」として本大会の
スモールの部にダブルエントリーしていた(結果4位)
「海猿火組」としては、過去、本大会のオープンの部では、
決勝進出多数、2位と3位の入賞実績があったと記憶している。

「古豪」である、初期の本大会の優勝常連チームだ。
近年の本大会では、シニアの部とのダブルエントリーが多く、
ほとんど入賞していたと思うが、今回の大会ではシニアは欠場
である。若手チームの方もなかなかの実力値で、昨年のオープン
の部では、「bp」「磯風」に次いで3位に入賞している。

長崎、そして相生と伝承された「ペーロン競漕」は、100年以上
の長い伝統を持つが、その立役者となった企業チームだ。
兄弟チームとしての「IHI瑞龍丸」(東京/埼玉)と、毎年本大会
に参戦しているが、「瑞龍丸」は今回準決勝進出と健闘した。
「IHI相生」は長距離に強く、地元「相生ペーロン競漕」では、
上位カテゴリーの「Ⅰ部」に定着している(注:成績が悪いと
入れ替わりがある)また、琵琶湖で行われる「1000m選手権」
の長距離戦では、昨年まで3連覇中と非常に強い。
ドラゴンボートの視点から見ると独特な「ペーロン漕ぎ」の
伝統を色濃く受け継ぐチームであり、本大会のような短距離戦
(250m)は、やや苦手意識があるかも知れない。

IHI相生)は、不思議な事に、各地の大会参戦時に大量のドリンク
類を持参してくるのが特徴だ。今日もまた「IHI相生」からPETの
お茶と缶ビールを頂いた。(いつも、ありがとうございます)
なお、本大会に限らず、全てのドラゴン大会では、レース中の
飲酒は厳禁である(ビール等は、試合終了後用、という訳だ)
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さて、このあたりで「磯風漕友会」の様子を見に行きたいのだが、
どうも、なかなかタイミングが悪い。ずっとアップ(準備運動)を
しているか、あるいはレースに出ているかで、テントに行っても
殆ど誰も居ない事が多く、あるいは選手達が居ても、どうにも、
緊張感が漂う雰囲気(汗)で、なかなか近寄り難い。
やむを得ない、兄妹チームの「Super Dolphin」に行って、
「磯風」の様子を間接的に聞きだしてみようか・・

体重の自己申告中!」
(注:左右の漕手の重量バランスを取る為であろう)
匠「ありゃ~、それは失礼(汗) 聞こえてないですよ~
それに体重は写真に写らないから大丈夫。また後で来ます!」
・・と言う事で、またしても「磯風漕友会」の様子を
聞きそびれてしまった。
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さて、オープンの部は予選を終えたところで、時間軸は前後
するが「B決勝」(下位決勝)の結果をお知らせしておこう。

2位:近畿車輛電龍(大阪)
3位:関空飛龍(大阪)
4位:好きやねん大阪
5位:大阪産業大学 常翔喜龍
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以降は、注目のオープンの部の準決勝
第1組は以下の通り(レーン順)
1)TAITAM X DRAGONS(東京/香港)
2)磯風漕友会
3)bp next(大阪/兵庫)
4)坊勢酔龍会
5)しずはま
ところが、このレースで、ドラゴンボート界では殆ど前例の無い
アクシデントが起こってしまう(汗)
まず「bp next」とは、超強豪「bp」のサブチームである、
ただ、さしもの「bp」も、20人漕ぎでのダブルエントリーは
少々メンバー数が苦しいのか、新人選手も多く乗っている模様だ。


しかし、サブチームとは言え「bo next」との差は広がり
すぎていないだろうか?

からも遅れている模様だ。
焦ったのだろうか?このあたりから「bp next」の挙動が
怪しくなり、右に蛇行を始める。
匠「あ、危ない!」
「bp next」と「坊勢」が接触模様だ、

狙った場所を撮るのは難しい、転覆の瞬間は、ブレながら、かなり
下を撮ってしまった。
まあ、転覆はやむを得ない、これはアクシデンドだ。
問題は、この後だ、まず安否確認をしなければならない。

「海上保安庁」のメンバーが乗ってはいるが、レース中であり
また、位置関係も悪い、ここはスタッフの「救助艇」に任せる
事になるであろう。
美人ドラマーの姿が見えないが、大丈夫か?

しかし、このレースの結果は、どうなるのか?
一応100m地点を越えていればレース成立の可能性もあるが、
これは、カーレースで言えば「レッド・フラッグ」の状態だ、
すなわち「レース中断」という事で、追い越しも順位戦も
もう無効である。
そして、進路妨害である「bp next」の失格は止むを得まい、
すると、残りのチームで再レースとなるかな?
しばらくして、本部から説明のアナウンスがあった。
予想通り「bp next」を失格として、他は再レースだ。
まあ、妥当な措置であろう。が、一部のチームの選手達は、
連続で他のレースにも出場するので、しんどいだろう(注:
内規として、同一選手のレース間隔を30分以上取る事、がある)
が、途中でB決勝とその表彰式を挟む模様なので、ほぼ大丈夫だ。

そこはもう言及はするまい、起こってしまった事は仕方が無い、
ともかく、メンバーが皆無事で良かった。
(誰かのサンダルの片方が水没紛失した模様だが・・)
ちなみに、本「日本選手権」での転覆・沈没事故は初である。
私が過去十数年間、各地で約5000を超えるレースを観戦した
中で、(危険な)「高島ペーロン」を除いての、ドラゴンと
ペーロン大会においては、転覆・沈没事故は過去6件あった。
うち4件は、強風による艇への浸水沈没で、やむを得ず、
1件はビギナーチームが優勝の喜びで皆立ち上がっての転覆。
残りの1件は、つい最近の2017年6月の高石大会で、蛇行後の
操船ミスでバランスを崩しての転覆であった。
また、いずれも単独事故であり、接触事故も割と珍しいし
接触した場合でも、転覆に至った事は過去無かった。
なお、舵や船体の破損は過去数件あった。
(注:14年以上前の大会や、地方大会での例は知らない)
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・・さて、気を取り直して、オープン準決勝第2組の結果だが
1位:bp
2位:池の里Lakers!
3位:Bon Oyage(東京)
4位:ヤンググリーン
5位;IHI瑞龍丸
となった。
うち、「bp」と「池の里」は決勝進出が確定、
3位の「Bon Oyage」は、第一組の再レース後、3位となった
チームとタイムの速い方が決勝進出だ。

ざわついた様子が残っている。
しかし、意外に「bp」のアクシデント回数は多く、以前にも
パドルの破損は数件、そして、膨張式のライフジャケットを
漕いでいる途中で膨らましてしまった事もあった。
まあ、極めて多数の大会に参戦しているので、確率的に
アクシデントも多いのであろう。
結果、決勝進出チームは以下の通り(レーン順)
1)池の里Lakers!
2)bp
3)磯風漕友会
4)坊勢酔龍会
5)Bon Oyage

完全に同タイムであったので、抽選で決勝進出を決めたそうだ。
(上写真は、Bon Oyageチーム)
「TAITAM X」は不運であったが、まあ、今回に関しては、
「TAITAM X」は、スモールの部で見事優勝している。
決勝常連の「しずはま」(海猿火組)と「ヤンググリーン」は
残念ながら今回は準決勝敗退となった(いずれも昨年は決勝進出)
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さて、いよいよ「決勝戦」だ。
余談になるが、前編で「一般観客の大会観戦の注意点」を書いた。
これに関して、カメラ関連で追加だが、本大会を観戦撮影する
アマチュアカメラマン(静止画)の場合、三脚は不要だ。
天候が快晴時であれば、400mm以上級の超望遠レンズを使った際の
開放絞り値f5.6程度で、感度ISO100でのシャッター速度は、
およそ1/1000秒に到達する。
ビギナークラスであっても、これは超望遠レンズでの手ブレ限界
シャッター速度(1/400~1/800秒)を上回るので、三脚あるいは
手ブレ補正機能すら不要だ。
天候が曇りや夕方であっても、ISO感度を400程度まで高めれば
必要十分のシャッター速度が得られる。逆に言えば、1/1000秒の
シャッター速度が保持できるように絞り値やISO感度を決める。
換算500mm未満の望遠レンズや中上級者であれば、シャッターの
低速限界は、もっと低くする事も出来る。
不要な重たい荷物になり、他の観客の通行や観戦の邪魔にもなる
三脚の使用は非推奨である。
それでもブレてしまう場合は、カメラの構え方(重心を支える)
の問題か、または、動くボートに合わせて、カメラを不用意に
振り回してしまったりするケースだと思う。
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さて、ここまでの余談は、概ね撮影機材や技法に関する事だ。
でも、ドラゴンの撮影では、機材よりももっと重要な点がある。
撮影ポジションをどうするか?が、最重要である。
そして、本決勝戦では、それが極めて迷い所だ。
本会場の本部側、スタート地点であれば、一瞬は全艇が揃って
撮れるが、すぐ2),3)レーンが先行するだろうから無意味だ。
コース中央では、レース全体が見渡せる。撮影という観点で
言えばそれで良いが、観戦という事からすると、ゴールの瞬間は、
角度と距離の問題で、どこが勝ったのかはわからない事であろう。
それに、このあたりは大変混雑する、大きな望遠レンズを左右に
振り回すのは周囲の一般観戦客にも非常に迷惑な話だ。
(実際にそうしているアマチュアを見かけた)
コース後半地点はベストに近い。しかし、もし「bp」と「磯風」
がコンマ差の超接戦になった場合、勝敗を見極めるのが困難だ。
最後、ゴール前は、観戦場所としては不人気だ、何故ならば
そこはコースの殆どが死角で見えない。ラストの50m、ほんの
10数秒しか写真を撮るチャンスが無いのだ。
それと、磯風リードの場合、ラスト50m付近ではレーン順から
撮影アングルが「逆順」となり、両者の艇を同時に画角には
入れられない。
だが、私は最終的にはゴール前地点をあえて選択、このレースは
最後まで接戦となるだろうと見たのだ。
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「bp」と「磯風」、どちらが勝つか?の事前予想はさらに難しい。
予選タイムはあまり参考にならない。
「磯風」は各レースで常に本気だが、「bp」もそうだとは
限らない。
「磯風」は、今回若干メンバーを変えてきているように見える、
そもそも、この1年間、ドラゴンの大会には一切顔を出さなかった
所を見ると、秘密練習で最強のメンバーを揃えてきているのかも
知れない(前述のように、事前に情報を聞き出せなかった)
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運はどうか?「bp」のドラマーは、お馴染み「謎の美少女」だ、
最近は学業の関係で忙しいそうだが、本大会は毎年鼓手を務めて
下さっている。で、私は各地の大会で彼女が鼓手となっている
レースで優勝出来ずに破れた事を、ほんの数回しか見ていない。

恐らく決勝で負けた回数は3回のみ(兄弟チーム戦を除く)
いずれも日本選手権での「磯風」戦であったと思う。すると、
彼女の幸運も「磯風」には通用しない、という事かも知れない。
対する「磯風」のドラマー氏も「ゲン担ぎ」タイプである。
その昔は、毎レースのたびに海や川の水で手を清める所作を
していたのだが、ある時、勢い余って落水してしまった(汗)
それ以降、その「儀式」は行っていないように思える。

ともなれば、ほとんどが「心理状態」に結果が左右されるのだ。
2015年の決勝での「bp」の緊張によるミスが、その一例であろう、
だが、そうしたミスを起こさない為に、「bp」は、その後、
過酷すぎるとも思える練習を繰り返してきた。「平常心」を
養うには、幾多のトレーニングで、それを日常とするしか無い。
ちなみに、写真撮影だって同じ事だ、アマチュアカメラマンが、
慣れない望遠レンズを持ち出して、いきなりドラゴン大会等を
撮ろうとしても上手くいく筈が無い。
「日常」とも言える位に、望遠レンズなり自身のカメラ機材を
使いこんで初めて、様々な余裕を持って撮影ができるのだ。
その「余裕」が無ければ、自分自身が撮影が出来ずに困る他、
周囲が見えずに、様々な迷惑やトラブルを引き起こしてしまう。
(近年の様々な混雑するイベントでのカメラマンのマナーの悪さは
社会的な問題にもなっている。で、殆どがビギナーそのものだ)
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それから「bp」は、やはり兄弟チームの転覆事故が、精神的に
影響があるだろうと思える、本レースには直接の関係は勿論無い
のだが、何とも、もやもやとした気持ちがあるかもしれない。
・・さて、私の最終予想は「磯風有利」である。
そしてレース前に、幾人かの大会スタッフにもそう言って、
「磯風ゴールのシーンを撮るから、ゴール前に行きますね」と
撮影ポジションを変えたのだ。
これで予想が外れたら、とんでもない「スカ」の写真となるが、
まあ、それは一種の賭けだ。
選手達は皆、勝負の世界に身を投じているのだ、カメラマンだって
その気持ちを少しでも受け止めても良いでは無いか・・
「Are you ready? Attention Go!」
さあレースが始まった、しかし、ゴール前の死角地点で
あるので、およそ最初の40秒間はレースの模様が見えない。
でも頭の中で予想はついていた、2),3)レーンが、他艇を
1艇身、いや2艇身近くも引き離していくのだ・・
場内実況アナウンスは勿論ある、「bp」と「磯風」の
接戦を伝えている、だが言葉を頭で映像化するのは無理だ。

とドンピシャ一致だ、もう予め望遠レンズをそこに向けて待って
いた位である。なにせ撮影可能時間は約10秒間しかない。
で、「磯風」のリードも予想通り。
(写真的に「逆順」だが、この瞬間はやむを得ない)
その差は、約半艇身(1秒程度)、「bp」は、かなり強烈な
ラストスパートをかけてはいるが、もはや、ここからの逆転は無い。


の歓喜と勝利のパフォーマンス。
---
以下、オープンの部の表彰式の模様。

1位:51秒65:磯風漕友会
2位:52秒50:bp
3位;56秒97:坊勢酔龍会
4位;58秒50:池の里Lakeres!
5位;59秒10:Bon Oyage

一昨年の優勝チームが再び勝利する事となった。
しかし、その背景には、本当に様々な人間ドラマが潜んでいた。
選手達は色々と大変だったとは思うが、それなりに達成感は
得られた事であろう。今回負けたチームも、もう明日から来年の
本大会に向けての活動が始まり、モチベーションも高まるであろう。
そして、観戦側の立場としても、眼前で極めて興味深い多数の
レースが展開されて満足感の高い大会となった。
これは「一流のエンタティンメント」としても通用すると思う。
沢山の観戦客の皆様にも、この面白さを伝えたく、そして、
来年の「30周年記念大会」にも期待をして、本大会のシリーズ
記事を終了する。
今年の「熱い季節:ドラゴンボート」は、まだまだ続く。
次回は「高島ペーロン」の記事となる予定だ、その大会は
極めて観戦のエンジョイ度が高いので、またお楽しみに・・