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デジタル一眼レフ・クラッシックス(8)「OLYMPUS E-410」

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本シリーズでは、保有している古いデジタル一眼レフについて
時代背景を含めた評価を行っている。

第5回から第8回記事では、「第二世代」と仮に定義した
2006~2007年発売の機種について紹介している。
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今回は、OLYMPUS E-410 (2007年)だ。
装着レンズは、OM SYSTEM Zuiko Macro 50mm/f3.5
(ミラーレス・マニアックス第66回記事)

本記事では同システムで撮影した写真を挟みながら、
E-410について紹介していこう。
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この時代「第二世代」は、デジタル一眼レフが市場に広まって
いった時期だ、と以前の記事で書いた。

だが、オリンパスにとっては、まだ他社よりも少しだけ出遅れて
いた時代でもあった、そのあたりの事情は、歴史をちょっと
振り返えらなければならない。少し長くなるが説明しておこう。
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まず時代を遡る事半世紀年以上も前の1960年代、当時の
オリンパスは、既に30年以上もカメラを作り続けている老舗の
メーカーであった。

1960年代のオリンパスは、ハーフ判カメラである「ペン」
シリーズを長期間大ヒットさせていた。
代表的な機種としては、ペンEE(1961年)やEE-3(1973年)
があり、当時の生産台数は膨大であった。
その後の1990年代の第一次中古カメラブームでも、中古市場で
各種ペンは大人気だった。
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上写真は「PEN EES-2」(1968年製,1990年代に8000円で購入)
EE型とはレンズが異なる。

ペンEE型や派生機は、レンズ交換が出来ないコンパクト機だが、
レンズ交換可能型の世界初のハーフサイズ判一眼レフ「ペンF」
シリーズ(初代PEN Fが1963年発売)は、高級機として、
当時のハイアマチュア等に熱狂的に支持された。
勿論、後の中古カメラブームの際にもPEN F等はマニア間で
高値で取引され、その人気は衰える事を知らなかった。
(私も当時購入していたが、現在は未所有)

ハーフ判(ハーフサイズ)とは、一般的な35mm判フィルムの
1コマ(36x24mm)を、その半分の18x24mmで用いる事である。

そんな事をしたら画質が悪くなるのではないか?と思うかも
知れないが、概ね正解だ。
つまり、その分高性能なレンズを用いる必要がある事。
そして、適切なプリントサイズに留める事が必須だ。

35mm判フィルムの画素数は、アナログなので厳密には計算
できないが、だいたいデジタルに換算して2000万画素位だ。
ハーフ判では、半分の1000万画素相当である、これ位だと
L判や2L判でのプリントは何ら問題なく、六つ切位までは
十分にいけたと思う。

1960年代当時のフィルムは高価であった。
同じフィルムで「倍の枚数が撮れる」事は当時のユーザーに
とって大きな魅力であり、オリンパスのハーフ判の大ヒットを
見て、キヤノン、ミノルタ、リコー、ヤシカ、コニカ等も
ハーフ判カメラを発売し追従していたので、当時の殆どの
大衆向けカメラは、ハーフ判であったのではなかろうか・・

ちなみに、ハーフ判カメラは普通にカメラを横位置で構えた
場合でも、写る画面は縦位置となる。

で、1990年代の中古カメラブームの際、私は何台かのPENを
入手して使っていたのだが、その当時のDPEは「0円プリント」
と呼ばれる、600~800円程度の定額の現像代を払えば、
ネガからのL判同時プリントが無料になる方式が主流であった。

36枚撮りのネガフィルムを使ってPENで撮影すると、本来は
72枚撮りになるが、フィルム装填を工夫すると、76~77枚位
まで撮れる。これを「0円プリント」に出すと、80枚近くの
プリント写真が、ドサッ!と手渡される。

「これでは、お店は、絶対儲からないだろうなあ・・」
と思いながらも、発売から30余年を経て、ハーフ判カメラの
恩恵を感じた次第であった。

PENシリーズは、市場に大きなインパクトを与え、発売後
数十年を経ってもカメラ界の「伝説」となっていた。

その為、オリンパスは2009年、μ4/3機に丁度50年ぶりに
「PEN」をシリーズ名として復活、
その後2016年には、名機「PEN-F」も再登場させている。

なお、銀塩フィルムのフォーマット(サイズ)を変えて
カメラを小型化する、という発想は、その後の1996年からの
APS(IX240フィルムを使用)でも行われ、CANON IXY等が
大ヒットしたが、2000年代にデジタル化が進むと、当該規格も
終焉し、APSの名は撮像センサーサイズでのみ生き残っている。
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話は戻って1970年代、この時代にオリンパスは歴史的に重要な
一眼レフであるOM SYSTEMを発売する。

最初はOM-1 これは1972年発売だ。
小型かつ高性能なMF一眼レフ、OMは、アマチュア層において
熱狂的に受け入れられ、いくつもの機種が作られ、1990年代末
まで生産が続けられていた(私も6機種を所有していた)

だが、この後、他の記事でも書いたが「αショック」と呼ばれた
ミノルタα-7000(1985年)による、一眼レフのAF化が始まると
各社はいっせいに追従、AF一眼時代に瞬時に突入していった。

オリンパスも OM-707(1986年)で、すぐさま追従するが、
残念ながら様々な問題点を持つ機種で、市場に受けいれられず、
このたった1つのミスが致命傷となり、オリンパスは、AF一眼
への移行が出来なくなってしまった。
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で、1990年代を通じて、旧来のMFのOMシステムの販売を継続して
いたが、実際その期間に新規発売されたOM一眼は、マニア向けで
高価なOM-3Ti(1994年)と、コシナ製OEM機のOM-2000(1997年)
の2機種のみであった。

まあ、1990年代のオリンパスのカメラといえば、μ(ミュー)
シリーズが代表的であろう、これは銀塩コンパクト機(35mm判)
であるが、かなり高性能で、特に1997年のμ-Ⅱは、私も高く
評価する名機であり、今なお大事に所有している。
μの名は、近年までオリンパスのデジタルコンパクト機に
受け継がれたが、現在では「STYLUS」ブランドとなっている。
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で、オリンパスのカメラのデジタル化は、一眼レフではなく、
当時同社の主流であった、コンパクト機から始まった。

「CAMEDIA」(キャメティア)というブランドで、その発売が
始まったのは、C-800L(1996年)であったと思う。
当時のデジカメの走りと言えるカシオQV-10(1995年)が、僅か
25~35万画素であったのが、C-800Lでは、いっきに80万画素
となり、初めて「写真」と言えるレベルとなった。

この機種は所有していた事があったが、かなり高価(12万円台)
で、画質もイマイチであったが、専用のプリンターを使うと
インスタントフィルム機(ポラロイド等)のように、自宅で
プリントが可能となる等、写真のプライベート化に貢献した
カメラであった(それまでの時代は、撮った写真は必ずDPE店に
見られてしまうというプライバシー上の問題点があった)

その後、CAMEDIA C-1400L(1997年)では画素数は140万画素
に向上、続く200万画素中級機C-2000シリーズ(1999~2000年)
で、オリンパスはコンパクトデジカメの分野でさらに市場シェア
を伸ばしていった。

この時代(1990年代末)は、実用的なデジタル一眼レフは
まだ登場していない。デジタルカメラに興味のあるユーザー層
や、企業等のビジネス用途では、オリンパスやフジ(FinePix)の
コンパクト機を購入して使っていたと思う。
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2000年代に入ると、CANONやNIKONから、デジタル一眼レフが
発売されるようになってくる、そのあたりは本シリーズ記事では
再三紹介しているので割愛する。

オリンパスも当然、この流れに追従しようとする。
だが、前述の通り、オリンパスは1980年代後半の一眼レフの
AF化に失敗して以来、殆ど一眼レフの開発をしていなかった。

オリンパスは、米コダックと共に「フォーサーズ規格」を提唱し、
その1号機「E-1」は、2003年に発売されたが、定価22万円程と、
やや高かったのと、新たにフォーサーズ用レンズを買い揃え
なくてはならなかった為、少々敷居の高いカメラであった。

次いで、オリンパスは、実用的な低価格フォーサーズ機として
E-300を、2004年末~2005年に発売する。

そのE-300は、発売前に
「ペンタプリズムの無い独特なデザイン、PENの再来か?」
という噂が流れ、マニア層等から、大きな注目を浴びたのだが、
いざ発売されてみると、PENとはかなり異なるイメージで、
少々がっかりしたマニアも居たようだ。

私は、E-300を2005年頃に購入し、2010年頃まで使用して
いたが、ドラゴン競技撮影等で酷使しつづけ、電子部品が故障
してしまい、その際、今回紹介のE-410にリプレイスした次第だ。
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で、オリンパスは、ほんの数年程度、他社よりも遅れて
デジタル一眼レフ市場に参入していたと言える。

その後、オリンパスも他社に遅れじと、次々に4/3マウントの
デジタル一眼レフを発売する。
代表的な機種をいくつかあげれば、
2006年 E-330(一眼初のライブビュー機),E-400(軽量機)
2007年 E-510(オリンパス初の内蔵手ブレ補正),E-3(高級機)
という感じだ。

しかし、後発ゆえに、いずれの機種も市場に大きなインパクト
を与えた訳ではない、この状況の打開からか、オリンパスは、
同じ4/3マウント機を発売していたパナソニック
(2006年に DMC-L1,2007年に DMC-L10)等と共に、
2008年に「マイクロフォーサーズ規格」を発表する。

μ4/3規格は、ミラーレス時代の走りとなり、後にオリンパスは
この分野で成功するが、その話はまた別の記事に譲ろう。

さて、そんな歴史の中、今回の紹介機種、E-410の発売である。
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本機の最大の特徴は、小型軽量な事だ。
2007年4月の発売時点では、デジタル一眼レフの中で史上最軽量、
ボディ重量は僅かに375gだ。

この重量は、銀塩高級コンパクトCONTAX TVS(1993年)と同じだ。
銀塩コンパクト機と(デジタル)一眼レフが同じ重量というのは
驚きだが、そんな古い機種は知らない、という向きには、
近年の軽量ミラーレス機ではPANASONIC DMC-GX7 MK2(2016年)
が383gと、本機より僅かに重い。

なお、同時期に発売された OLYMPUS E-510は、前述の通り
手ブレ補正内蔵機で、重量は460gと重くなった。

加えて、ちゃんと調べてはいないが、銀塩一眼レフ最軽量は、
MINOLTA α-SweetⅡであったろうか?本機より軽い335gだ。
次点はEOS Kissシリーズ、NIKON U2、α-Sweet、あたりで本機
とほぼ同等。なお、MF一眼のXR8,FM10,OM-1,MX等は
400g台だ。が、いずれも電池を含まない重量なので、軽量な
ボタン電池を使用する銀塩機では、本機より軽かったかも
知れない。
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本E-410の基本スペックであるが、

撮像素子は4/3型LiveMOSセンサー,1000万画素

LiveMOSセンサーとは、CMOSセンサーの構造で制御用配線数を
減らし、結果的に開口効率を高める、つまり、より光を多く
取り込めつつも消費電力を下げる効果があると言われている。
発熱が少なく、ライブビューに向く、という長所もあり、
2006年のE-330(初のライブビュー機)に初搭載された。

ただ、E-410の場合は、ボディの小型軽量化を目指して
開発された為、バッテリーも小型化されている。
この結果、消費電力の少ないLiveMOSセンサーと言えど、
大型のバッテリーを搭載する他のCMOS機に対して、撮影枚数が
増えるわけでもない。

4/3やμ4/3のセンサーサイズは17.8x13mmであり、
フルサイズに相当するレンズ換算画角は2倍である。

ちなみに、前述の銀塩ハーフ判は1.4倍であった。
オリンパスの発想は、フォーマットを小型化する事で、システム
全体を小型化するという点があると思い、PENの発想と4/3や
μ4/3の発想は、どこか似ている。

で、E-410のマウントは、そのフォーサーズである。
ただ、他社デジタル一眼レフにおいては、いずれも銀塩AF時代から
の純正又はサードパーティ製レンズが、ほぼ問題なく使えたので、
銀塩からデジタル一眼の買い替えにおいては、新たにレンズを
追加購入しなくても大丈夫で、その点、高価なデジタル一眼レフ
購入のハードルを、やや下げていた。

4/3は新規のマウントだ、この為、誰も交換レンズを持っていない。
なので、前述のE-300では、先にレンズキットが発売され、
後からボディ単体が発売されている。

なお、E-300等購入の際、付属の申込書をオリンパスに送ると、
OMマウントレンズを4/3に変換するマウントアダプターを
無償で送ってきてくれた。私は、E-300は新品在庫処分で
購入していたので、アダプターが入手できた。

本記事においても、その時のアダプターを用いて、
E-410にOM用のレンズを装着して使っている。

が、その当時(2005年)では、OMシステムの実質上の最後の機種
OM-4Ti(1986年)が出てから既に20年近くが経過していた為
「従前のレンズの互換性がある、と言うのは良い事だけど、
果たして20年も前のシステムのレンズを皆が持っているのか?」
とちょっと疑問に思った。
(注:OM用以外にも多くのアダプターが4/3では使用可能)
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なお、E-300で初めてOMレンズを銀塩時代の画角の2倍で使った
際には、50mmレンズが100mm相当の画角になる事に少々戸惑った。
だが、それは標準レンズでの話であり、望遠系レンズを用いれば、
簡単に300mm超の超望遠画角が得られる事は、むしろメリットが
あると感じた。

さらには、E-300のキットズームは14~45mmという焦点距離
であり、これが28~90mm相当の標準ズーム画角となる。
で、元々のレンズ焦点距離が短いため、被写界深度が深い。

この為、やや絞って使用すると、スナップ撮影ではピントを
外し難いというメリットが生じる。
この利点を用いて、ドラゴン大会撮影での選手達のスナップ
撮影で大量の写真を、素早く撮るケースにおいて、大きな
メリットとなった。

その点は、コンパクト機でも同様のメリットがあるが、
4/3機は、あくまで一眼レフである、よって電源ONからの起動
時間も、AFの速度・精度も、コンパクト機とは比較にならない
高レベルであり、小型軽量な事もあいまって、E-300やE-410は、
最強のスナップ・マシーンとなっていた。
これは現代においても同様で、本E-410はドラゴン競技等の
スナップ撮影で、いまだなおバリバリの現役カメラである。

惜しむらくは、小型4/3機は、その後の E-420(2008年)や
E-620(2009年)をもって、事実上、μ4/3に役割を委譲し、
終焉を迎えてしまった事がある。

約5年間と短命であったが、今から考えると少々惜しい。
というのも、μ4/3機の普及は、2009年頃よりスタートしたが、
像面位相差AFや空間認識AF等の特殊技術が2010年代後半に
出てくる迄、コントラストAFのみに頼っていて、一眼レフの
位相差AF程の速度や精度が出ていなかったからである。

この為、初期ミラーレス機全般では、純正AFレンズを使って
スナップ撮影をする等は厳しく、オールドレンズ等での趣味的な
撮影等にしか用途がなかった。
まあ、とは言え、ミラーレス機+アダプター+オールドレンズは、
なかなか奥が深く、本ブログでも「ミラーレス・マニアックス」
シリーズ記事を多数連載していた。
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さて、E-410のその他の基本スペックだ、

AF測距点は僅かに3点、内蔵手ブレ補正無し。
ISO感度は100~1600と不満、AUTO ISOでは400迄しか
上がらないので、手動ISO設定が必須である。
最高シャッター速度は1/4000秒

背面モニターは2.5型、解像度は23万ドットと低い。
ライブビューは可能だが、通常のコントラストAF方式であるので
(オリンパスで言うBモード)実用性は低い。
露出補正やWBの変更はライブビューに反映するが、モニター
画素数が低いので、MFピント合わせやボケ量・ボケ質の確認は
無理だ。

CFとxDのデュアルスロットであるが、2010年以降、
xDピクチャーカードは入手性が極めて悪く、CFも現在は同様だ。

連写性能は、記録メディアと画質設定に依存するが、
基本的には秒3コマで最大7枚(以上)と貧弱だ。

このあたりのスペックを見ていると、「第一世代」の
2003~2005年発売のデジタル一眼と同等か、それ以下である。

何度も前述しているが、オリンパス・フォーサーズは後発で
あったので、そのあたりはやむを得ない。
まあ、このあたりがスペック至上主義のユーザー層からは嫌われ、
4/3の人気が高まらなかった理由の1つだろうと思う。

何故、ユーザーがスペック至上主義になるのか?と言えば、
殆どのユーザーは数値スペックを見る事しかカメラの選択基準が
無いからだ。そりゃあ、画素数や連写速度が高いカメラの方が
良いカメラだと思って欲しくなって買うのは、やむを得ない。
(実際にはそうとは限らない事は、言うまでも無い)

視野率は95%と、標準的か、やや不満。
ファインダー倍率は0.92倍と高いが、これは測定基準が良く
わからず、フルサイズ換算かも知れない。

実際にはファインダー像はやや見え難い。
そこで、純正のマグニファイヤーアイカップ「ME-1」を装着して、
1.2倍に拡大している。
このアクセサリーは、新品でしか入手できず値段も5000円+税
と、やや高価であるが、多くのオリンパス製4/3機で共通して
使用できるので必須アイテムだ。
(一度、ドラゴン大会撮影中に落として、非常に慌てたが、
偶然、選手の1人が拾ってくれて「匠さんのカメラ部品かな?」
と届けてくれた、大変助かりました!)
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さて以下は、スペックに現れないE-410の長所だ。

バッテリーが小さいと前述したが、通常撮影で900枚以上は
楽に持つ。他の小型軽量機、例えばコンパクト機ではこの枚数は
絶対に無理だ。低消費電力センサーが効いているのであろう。
なお、私は省エネ撮影には常に心がけているので、一般的な
撮影スタイルでは、そこまで持たないかも知れない。

シャッター音がなかなか良い。”シュッキーン”という感じだ。
音質の良し悪しは、感覚的な部分があり、個人の好みもあって
評価が難しい。だから、一般的には「そんなの好き好き」で
終わってしまう。しかし、私は昔、電子楽器等の開発に深く
関わっていた事がある、その世界においては”個人の好み”
等とは言っていられない、必ず、なんらかのポリシーを持って、
出音を決めていかなければ製品が作れない。

そういう視点からすると、E-410のシャッター音は、同時期の
例えば、NIKON D300の大音量で乾いた耳障りな音質に比べ、
小さく、高域が多いが上品で、かつシャッター音としての「芯」
があって、なかなか上質な音色だ。当然耳障りな要素も殆どなく、
静かで周囲に人が居るシチュエーションで撮影しても問題は無い。

「芯がある」という点については、あまりに静かな音だと
撮っている側も、いつ撮れているのか不安になる事もあるので、
その「芯」の音は絶対欲しい。
例えば、近年のミラーレス機やコンパクト機で電子シャッターで
撮ると、何らシャッター音がしない為「撮れている気がしない」
と思うのと同様だ。

こうした点は、どうでも良い事や個人の好み、では決してなく、
実用上では重要な事だ。

TVでの記者会見等で、報道用カメラのシャッター音が
極めてうるさく、発言者の声が聞こえ難いなど、放映に悪影響
が出ている場合がある、視聴者は「やむを得ない」と思って
いるのかもしれないが、そういう業界において、「音」という
ものへの配慮がこれまで行われてきていなかった文化・慣習も、
関連する問題点の1つではなかろうか。
ちなみに、結婚式撮影業界等においては、シャッター音が小さい
一眼レフを使う事が常識になっている模様だ。
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それから、E-410の操作系の話だが、
背面液晶に各種カメラ設定が表示され、ダイヤルとは別途儲け
られた十字キーで、それらのカメラ設定を直接変更できる。

これを「スーパーコンパネ」とオリンパスは呼び、
その後の4/3機やμ4/3機でもこの機能は搭載されており、
2000年代後半にはオリンパスのみならず、SONYやPENTAX,CANON
のカメラにも同様な機能があった。
このアイデアは単純だが極めて使い易い。
これに比べると、前後ダイヤルのみでメニューを操作する形式の
他機は、かなり使い難さを感じる。

本E-410では、他の操作系(メニュー構造等)は、まだ未成熟な
部分も多々あるが、「スーパコンパネ」を搭載していることで
操作系はこの時代のカメラとしては、及第点、あるいは優秀で
あったと言えよう。
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他の長所であるが、タフな事が言えるだろうか。

使用およそ7年、その間、雨中の撮影も何十回もあったが、1度も
故障していないし不調の気配すらない。
仕様上では防滴構造にはなっていないが、そのあたりに配慮の
あるオリンパスの製品だ、エントリー機とは言え、他社機よりも
構造的に雨に強いのかも知れない。

上部液晶を持たない事も、その点ではメリットだ、雨が酷いと、
通常、そのあたりから浸水し、液晶が白濁するばかりか内部の
電子部品にまで影響が出てしまい、最悪は動作不能となり
自然乾燥をもって回復させるしかない。

----
さて、E-410に対応する同社銀塩名機としては、
ズバリなものが無い。一応OM-4Tiと、加えて本記事中で
再三話題となったE-300を紹介しておこう。
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こちらがOM-4Ti、小型軽量フラッグシップ機だ。
(1990年代末に中古で5万円で購入)
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こちらはE-300、PENの再来か?と、当初呼ばれた機種だ。
(2005年頃に新品レンズキットで5万円で購入)

これらの機種の詳細は、文字数限界につき残念ながら割愛する。
かなり昔の記事で、それぞれ紹介していたと思う。
c0032138_17331237.jpg
さて、本機E-410の購入価格だが、2009年末か2010年初頭頃に、
新品で15000円と極めて安価であった。

オリンパスがμ4/3機に転換し、4/3が終焉するだろう事は
市場動向に敏感なカメラ流通業界(中古店含む)では、
この時期、すでに察しがついていた。
しかも現行機種はE-420でありE-410は型遅れだ。
なんとしても売り切って在庫リスクを避けなければならない、
それ故の安価な新品処分価格だ。

だが、買う側も、それは十分承知、
「とりあえず5年ほど持てば十分」とそんな感じで購入している。
減価償却(1枚3円の法則)は当然あっと言う間に完了、
後は壊れるまで使い続けるだけである。

注意した点としては、4/3交換レンズの購入を控えた事だ。
この時点でそれを買ってしまうと、将来的に使えなくなる
リスクが高かった。
現在、事実上4/3が終焉した後においては、4/3交換レンズの
中古相場は下落している。
もし安定して長期に使えるボディ(E-3やE-5)が確保できれば、
安価な相場になった4/3システムを再興させるのも、マニアック
で良いかとも思っている。
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さて、最後に本機E-410の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)

【基本・付加性能】★★
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★☆
【購入時コスパ 】★★★★★
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値  】★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.2点

思っていたよりも高評価点となって、自分でも驚いた。
コスパが高かったのが一番幸いしたが、小型軽量で使いやすい
という点が、じわじわと各評価に効いている。

今更、フォーサーズに将来は無いとは言えるが、動いている
限りにおいては、十分な実用機であるとは言えるであろう。
特に過酷な環境でのスナップ撮影には最適である。
前述のように「再興」も十分ありかもしれない。

次回シリーズ記事に続く。

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