本シリーズでは、保有している古いデジタル一眼レフについて
時代背景を含めた評価を行っている。
第5回から第8回記事では、「第二世代」と仮に定義した
2006~2007年発売の機種について紹介している。
![c0032138_17325878.jpg]()
今回は、OLYMPUS E-410 (2007年)だ。
装着レンズは、OM SYSTEM Zuiko Macro 50mm/f3.5
(ミラーレス・マニアックス第66回記事)
本記事では同システムで撮影した写真を挟みながら、
E-410について紹介していこう。
![c0032138_17325814.jpg]()
この時代「第二世代」は、デジタル一眼レフが市場に広まって
いった時期だ、と以前の記事で書いた。
だが、オリンパスにとっては、まだ他社よりも少しだけ出遅れて
いた時代でもあった、そのあたりの事情は、歴史をちょっと
振り返えらなければならない。少し長くなるが説明しておこう。
![c0032138_17325919.jpg]()
まず時代を遡る事半世紀年以上も前の1960年代、当時の
オリンパスは、既に30年以上もカメラを作り続けている老舗の
メーカーであった。
1960年代のオリンパスは、ハーフ判カメラである「ペン」
シリーズを長期間大ヒットさせていた。
代表的な機種としては、ペンEE(1961年)やEE-3(1973年)
があり、当時の生産台数は膨大であった。
その後の1990年代の第一次中古カメラブームでも、中古市場で
各種ペンは大人気だった。
![c0032138_17324859.jpg]()
上写真は「PEN EES-2」(1968年製,1990年代に8000円で購入)
EE型とはレンズが異なる。
ペンEE型や派生機は、レンズ交換が出来ないコンパクト機だが、
レンズ交換可能型の世界初のハーフサイズ判一眼レフ「ペンF」
シリーズ(初代PEN Fが1963年発売)は、高級機として、
当時のハイアマチュア等に熱狂的に支持された。
勿論、後の中古カメラブームの際にもPEN F等はマニア間で
高値で取引され、その人気は衰える事を知らなかった。
(私も当時購入していたが、現在は未所有)
ハーフ判(ハーフサイズ)とは、一般的な35mm判フィルムの
1コマ(36x24mm)を、その半分の18x24mmで用いる事である。
そんな事をしたら画質が悪くなるのではないか?と思うかも
知れないが、概ね正解だ。
つまり、その分高性能なレンズを用いる必要がある事。
そして、適切なプリントサイズに留める事が必須だ。
35mm判フィルムの画素数は、アナログなので厳密には計算
できないが、だいたいデジタルに換算して2000万画素位だ。
ハーフ判では、半分の1000万画素相当である、これ位だと
L判や2L判でのプリントは何ら問題なく、六つ切位までは
十分にいけたと思う。
1960年代当時のフィルムは高価であった。
同じフィルムで「倍の枚数が撮れる」事は当時のユーザーに
とって大きな魅力であり、オリンパスのハーフ判の大ヒットを
見て、キヤノン、ミノルタ、リコー、ヤシカ、コニカ等も
ハーフ判カメラを発売し追従していたので、当時の殆どの
大衆向けカメラは、ハーフ判であったのではなかろうか・・
ちなみに、ハーフ判カメラは普通にカメラを横位置で構えた
場合でも、写る画面は縦位置となる。
で、1990年代の中古カメラブームの際、私は何台かのPENを
入手して使っていたのだが、その当時のDPEは「0円プリント」
と呼ばれる、600~800円程度の定額の現像代を払えば、
ネガからのL判同時プリントが無料になる方式が主流であった。
36枚撮りのネガフィルムを使ってPENで撮影すると、本来は
72枚撮りになるが、フィルム装填を工夫すると、76~77枚位
まで撮れる。これを「0円プリント」に出すと、80枚近くの
プリント写真が、ドサッ!と手渡される。
「これでは、お店は、絶対儲からないだろうなあ・・」
と思いながらも、発売から30余年を経て、ハーフ判カメラの
恩恵を感じた次第であった。
PENシリーズは、市場に大きなインパクトを与え、発売後
数十年を経ってもカメラ界の「伝説」となっていた。
その為、オリンパスは2009年、μ4/3機に丁度50年ぶりに
「PEN」をシリーズ名として復活、
その後2016年には、名機「PEN-F」も再登場させている。
なお、銀塩フィルムのフォーマット(サイズ)を変えて
カメラを小型化する、という発想は、その後の1996年からの
APS(IX240フィルムを使用)でも行われ、CANON IXY等が
大ヒットしたが、2000年代にデジタル化が進むと、当該規格も
終焉し、APSの名は撮像センサーサイズでのみ生き残っている。
![c0032138_17325964.jpg]()
話は戻って1970年代、この時代にオリンパスは歴史的に重要な
一眼レフであるOM SYSTEMを発売する。
最初はOM-1 これは1972年発売だ。
小型かつ高性能なMF一眼レフ、OMは、アマチュア層において
熱狂的に受け入れられ、いくつもの機種が作られ、1990年代末
まで生産が続けられていた(私も6機種を所有していた)
だが、この後、他の記事でも書いたが「αショック」と呼ばれた
ミノルタα-7000(1985年)による、一眼レフのAF化が始まると
各社はいっせいに追従、AF一眼時代に瞬時に突入していった。
オリンパスも OM-707(1986年)で、すぐさま追従するが、
残念ながら様々な問題点を持つ機種で、市場に受けいれられず、
このたった1つのミスが致命傷となり、オリンパスは、AF一眼
への移行が出来なくなってしまった。
![c0032138_17325700.jpg]()
で、1990年代を通じて、旧来のMFのOMシステムの販売を継続して
いたが、実際その期間に新規発売されたOM一眼は、マニア向けで
高価なOM-3Ti(1994年)と、コシナ製OEM機のOM-2000(1997年)
の2機種のみであった。
まあ、1990年代のオリンパスのカメラといえば、μ(ミュー)
シリーズが代表的であろう、これは銀塩コンパクト機(35mm判)
であるが、かなり高性能で、特に1997年のμ-Ⅱは、私も高く
評価する名機であり、今なお大事に所有している。
μの名は、近年までオリンパスのデジタルコンパクト機に
受け継がれたが、現在では「STYLUS」ブランドとなっている。
![c0032138_17325792.jpg]()
で、オリンパスのカメラのデジタル化は、一眼レフではなく、
当時同社の主流であった、コンパクト機から始まった。
「CAMEDIA」(キャメティア)というブランドで、その発売が
始まったのは、C-800L(1996年)であったと思う。
当時のデジカメの走りと言えるカシオQV-10(1995年)が、僅か
25~35万画素であったのが、C-800Lでは、いっきに80万画素
となり、初めて「写真」と言えるレベルとなった。
この機種は所有していた事があったが、かなり高価(12万円台)
で、画質もイマイチであったが、専用のプリンターを使うと
インスタントフィルム機(ポラロイド等)のように、自宅で
プリントが可能となる等、写真のプライベート化に貢献した
カメラであった(それまでの時代は、撮った写真は必ずDPE店に
見られてしまうというプライバシー上の問題点があった)
その後、CAMEDIA C-1400L(1997年)では画素数は140万画素
に向上、続く200万画素中級機C-2000シリーズ(1999~2000年)
で、オリンパスはコンパクトデジカメの分野でさらに市場シェア
を伸ばしていった。
この時代(1990年代末)は、実用的なデジタル一眼レフは
まだ登場していない。デジタルカメラに興味のあるユーザー層
や、企業等のビジネス用途では、オリンパスやフジ(FinePix)の
コンパクト機を購入して使っていたと思う。
![c0032138_17325875.jpg]()
2000年代に入ると、CANONやNIKONから、デジタル一眼レフが
発売されるようになってくる、そのあたりは本シリーズ記事では
再三紹介しているので割愛する。
オリンパスも当然、この流れに追従しようとする。
だが、前述の通り、オリンパスは1980年代後半の一眼レフの
AF化に失敗して以来、殆ど一眼レフの開発をしていなかった。
オリンパスは、米コダックと共に「フォーサーズ規格」を提唱し、
その1号機「E-1」は、2003年に発売されたが、定価22万円程と、
やや高かったのと、新たにフォーサーズ用レンズを買い揃え
なくてはならなかった為、少々敷居の高いカメラであった。
次いで、オリンパスは、実用的な低価格フォーサーズ機として
E-300を、2004年末~2005年に発売する。
そのE-300は、発売前に
「ペンタプリズムの無い独特なデザイン、PENの再来か?」
という噂が流れ、マニア層等から、大きな注目を浴びたのだが、
いざ発売されてみると、PENとはかなり異なるイメージで、
少々がっかりしたマニアも居たようだ。
私は、E-300を2005年頃に購入し、2010年頃まで使用して
いたが、ドラゴン競技撮影等で酷使しつづけ、電子部品が故障
してしまい、その際、今回紹介のE-410にリプレイスした次第だ。
![c0032138_17325873.jpg]()
で、オリンパスは、ほんの数年程度、他社よりも遅れて
デジタル一眼レフ市場に参入していたと言える。
その後、オリンパスも他社に遅れじと、次々に4/3マウントの
デジタル一眼レフを発売する。
代表的な機種をいくつかあげれば、
2006年 E-330(一眼初のライブビュー機),E-400(軽量機)
2007年 E-510(オリンパス初の内蔵手ブレ補正),E-3(高級機)
という感じだ。
しかし、後発ゆえに、いずれの機種も市場に大きなインパクト
を与えた訳ではない、この状況の打開からか、オリンパスは、
同じ4/3マウント機を発売していたパナソニック
(2006年に DMC-L1,2007年に DMC-L10)等と共に、
2008年に「マイクロフォーサーズ規格」を発表する。
μ4/3規格は、ミラーレス時代の走りとなり、後にオリンパスは
この分野で成功するが、その話はまた別の記事に譲ろう。
さて、そんな歴史の中、今回の紹介機種、E-410の発売である。
![c0032138_17325816.jpg]()
本機の最大の特徴は、小型軽量な事だ。
2007年4月の発売時点では、デジタル一眼レフの中で史上最軽量、
ボディ重量は僅かに375gだ。
この重量は、銀塩高級コンパクトCONTAX TVS(1993年)と同じだ。
銀塩コンパクト機と(デジタル)一眼レフが同じ重量というのは
驚きだが、そんな古い機種は知らない、という向きには、
近年の軽量ミラーレス機ではPANASONIC DMC-GX7 MK2(2016年)
が383gと、本機より僅かに重い。
なお、同時期に発売された OLYMPUS E-510は、前述の通り
手ブレ補正内蔵機で、重量は460gと重くなった。
加えて、ちゃんと調べてはいないが、銀塩一眼レフ最軽量は、
MINOLTA α-SweetⅡであったろうか?本機より軽い335gだ。
次点はEOS Kissシリーズ、NIKON U2、α-Sweet、あたりで本機
とほぼ同等。なお、MF一眼のXR8,FM10,OM-1,MX等は
400g台だ。が、いずれも電池を含まない重量なので、軽量な
ボタン電池を使用する銀塩機では、本機より軽かったかも
知れない。
![c0032138_17331348.jpg]()
本E-410の基本スペックであるが、
撮像素子は4/3型LiveMOSセンサー,1000万画素
LiveMOSセンサーとは、CMOSセンサーの構造で制御用配線数を
減らし、結果的に開口効率を高める、つまり、より光を多く
取り込めつつも消費電力を下げる効果があると言われている。
発熱が少なく、ライブビューに向く、という長所もあり、
2006年のE-330(初のライブビュー機)に初搭載された。
ただ、E-410の場合は、ボディの小型軽量化を目指して
開発された為、バッテリーも小型化されている。
この結果、消費電力の少ないLiveMOSセンサーと言えど、
大型のバッテリーを搭載する他のCMOS機に対して、撮影枚数が
増えるわけでもない。
4/3やμ4/3のセンサーサイズは17.8x13mmであり、
フルサイズに相当するレンズ換算画角は2倍である。
ちなみに、前述の銀塩ハーフ判は1.4倍であった。
オリンパスの発想は、フォーマットを小型化する事で、システム
全体を小型化するという点があると思い、PENの発想と4/3や
μ4/3の発想は、どこか似ている。
で、E-410のマウントは、そのフォーサーズである。
ただ、他社デジタル一眼レフにおいては、いずれも銀塩AF時代から
の純正又はサードパーティ製レンズが、ほぼ問題なく使えたので、
銀塩からデジタル一眼の買い替えにおいては、新たにレンズを
追加購入しなくても大丈夫で、その点、高価なデジタル一眼レフ
購入のハードルを、やや下げていた。
4/3は新規のマウントだ、この為、誰も交換レンズを持っていない。
なので、前述のE-300では、先にレンズキットが発売され、
後からボディ単体が発売されている。
なお、E-300等購入の際、付属の申込書をオリンパスに送ると、
OMマウントレンズを4/3に変換するマウントアダプターを
無償で送ってきてくれた。私は、E-300は新品在庫処分で
購入していたので、アダプターが入手できた。
本記事においても、その時のアダプターを用いて、
E-410にOM用のレンズを装着して使っている。
が、その当時(2005年)では、OMシステムの実質上の最後の機種
OM-4Ti(1986年)が出てから既に20年近くが経過していた為
「従前のレンズの互換性がある、と言うのは良い事だけど、
果たして20年も前のシステムのレンズを皆が持っているのか?」
とちょっと疑問に思った。
(注:OM用以外にも多くのアダプターが4/3では使用可能)
![c0032138_17331315.jpg]()
なお、E-300で初めてOMレンズを銀塩時代の画角の2倍で使った
際には、50mmレンズが100mm相当の画角になる事に少々戸惑った。
だが、それは標準レンズでの話であり、望遠系レンズを用いれば、
簡単に300mm超の超望遠画角が得られる事は、むしろメリットが
あると感じた。
さらには、E-300のキットズームは14~45mmという焦点距離
であり、これが28~90mm相当の標準ズーム画角となる。
で、元々のレンズ焦点距離が短いため、被写界深度が深い。
この為、やや絞って使用すると、スナップ撮影ではピントを
外し難いというメリットが生じる。
この利点を用いて、ドラゴン大会撮影での選手達のスナップ
撮影で大量の写真を、素早く撮るケースにおいて、大きな
メリットとなった。
その点は、コンパクト機でも同様のメリットがあるが、
4/3機は、あくまで一眼レフである、よって電源ONからの起動
時間も、AFの速度・精度も、コンパクト機とは比較にならない
高レベルであり、小型軽量な事もあいまって、E-300やE-410は、
最強のスナップ・マシーンとなっていた。
これは現代においても同様で、本E-410はドラゴン競技等の
スナップ撮影で、いまだなおバリバリの現役カメラである。
惜しむらくは、小型4/3機は、その後の E-420(2008年)や
E-620(2009年)をもって、事実上、μ4/3に役割を委譲し、
終焉を迎えてしまった事がある。
約5年間と短命であったが、今から考えると少々惜しい。
というのも、μ4/3機の普及は、2009年頃よりスタートしたが、
像面位相差AFや空間認識AF等の特殊技術が2010年代後半に
出てくる迄、コントラストAFのみに頼っていて、一眼レフの
位相差AF程の速度や精度が出ていなかったからである。
この為、初期ミラーレス機全般では、純正AFレンズを使って
スナップ撮影をする等は厳しく、オールドレンズ等での趣味的な
撮影等にしか用途がなかった。
まあ、とは言え、ミラーレス機+アダプター+オールドレンズは、
なかなか奥が深く、本ブログでも「ミラーレス・マニアックス」
シリーズ記事を多数連載していた。
![c0032138_17331347.jpg]()
さて、E-410のその他の基本スペックだ、
AF測距点は僅かに3点、内蔵手ブレ補正無し。
ISO感度は100~1600と不満、AUTO ISOでは400迄しか
上がらないので、手動ISO設定が必須である。
最高シャッター速度は1/4000秒
背面モニターは2.5型、解像度は23万ドットと低い。
ライブビューは可能だが、通常のコントラストAF方式であるので
(オリンパスで言うBモード)実用性は低い。
露出補正やWBの変更はライブビューに反映するが、モニター
画素数が低いので、MFピント合わせやボケ量・ボケ質の確認は
無理だ。
CFとxDのデュアルスロットであるが、2010年以降、
xDピクチャーカードは入手性が極めて悪く、CFも現在は同様だ。
連写性能は、記録メディアと画質設定に依存するが、
基本的には秒3コマで最大7枚(以上)と貧弱だ。
このあたりのスペックを見ていると、「第一世代」の
2003~2005年発売のデジタル一眼と同等か、それ以下である。
何度も前述しているが、オリンパス・フォーサーズは後発で
あったので、そのあたりはやむを得ない。
まあ、このあたりがスペック至上主義のユーザー層からは嫌われ、
4/3の人気が高まらなかった理由の1つだろうと思う。
何故、ユーザーがスペック至上主義になるのか?と言えば、
殆どのユーザーは数値スペックを見る事しかカメラの選択基準が
無いからだ。そりゃあ、画素数や連写速度が高いカメラの方が
良いカメラだと思って欲しくなって買うのは、やむを得ない。
(実際にはそうとは限らない事は、言うまでも無い)
視野率は95%と、標準的か、やや不満。
ファインダー倍率は0.92倍と高いが、これは測定基準が良く
わからず、フルサイズ換算かも知れない。
実際にはファインダー像はやや見え難い。
そこで、純正のマグニファイヤーアイカップ「ME-1」を装着して、
1.2倍に拡大している。
このアクセサリーは、新品でしか入手できず値段も5000円+税
と、やや高価であるが、多くのオリンパス製4/3機で共通して
使用できるので必須アイテムだ。
(一度、ドラゴン大会撮影中に落として、非常に慌てたが、
偶然、選手の1人が拾ってくれて「匠さんのカメラ部品かな?」
と届けてくれた、大変助かりました!)
![c0032138_17331359.jpg]()
さて以下は、スペックに現れないE-410の長所だ。
バッテリーが小さいと前述したが、通常撮影で900枚以上は
楽に持つ。他の小型軽量機、例えばコンパクト機ではこの枚数は
絶対に無理だ。低消費電力センサーが効いているのであろう。
なお、私は省エネ撮影には常に心がけているので、一般的な
撮影スタイルでは、そこまで持たないかも知れない。
シャッター音がなかなか良い。”シュッキーン”という感じだ。
音質の良し悪しは、感覚的な部分があり、個人の好みもあって
評価が難しい。だから、一般的には「そんなの好き好き」で
終わってしまう。しかし、私は昔、電子楽器等の開発に深く
関わっていた事がある、その世界においては”個人の好み”
等とは言っていられない、必ず、なんらかのポリシーを持って、
出音を決めていかなければ製品が作れない。
そういう視点からすると、E-410のシャッター音は、同時期の
例えば、NIKON D300の大音量で乾いた耳障りな音質に比べ、
小さく、高域が多いが上品で、かつシャッター音としての「芯」
があって、なかなか上質な音色だ。当然耳障りな要素も殆どなく、
静かで周囲に人が居るシチュエーションで撮影しても問題は無い。
「芯がある」という点については、あまりに静かな音だと
撮っている側も、いつ撮れているのか不安になる事もあるので、
その「芯」の音は絶対欲しい。
例えば、近年のミラーレス機やコンパクト機で電子シャッターで
撮ると、何らシャッター音がしない為「撮れている気がしない」
と思うのと同様だ。
こうした点は、どうでも良い事や個人の好み、では決してなく、
実用上では重要な事だ。
TVでの記者会見等で、報道用カメラのシャッター音が
極めてうるさく、発言者の声が聞こえ難いなど、放映に悪影響
が出ている場合がある、視聴者は「やむを得ない」と思って
いるのかもしれないが、そういう業界において、「音」という
ものへの配慮がこれまで行われてきていなかった文化・慣習も、
関連する問題点の1つではなかろうか。
ちなみに、結婚式撮影業界等においては、シャッター音が小さい
一眼レフを使う事が常識になっている模様だ。
![c0032138_17331448.jpg]()
それから、E-410の操作系の話だが、
背面液晶に各種カメラ設定が表示され、ダイヤルとは別途儲け
られた十字キーで、それらのカメラ設定を直接変更できる。
これを「スーパーコンパネ」とオリンパスは呼び、
その後の4/3機やμ4/3機でもこの機能は搭載されており、
2000年代後半にはオリンパスのみならず、SONYやPENTAX,CANON
のカメラにも同様な機能があった。
このアイデアは単純だが極めて使い易い。
これに比べると、前後ダイヤルのみでメニューを操作する形式の
他機は、かなり使い難さを感じる。
本E-410では、他の操作系(メニュー構造等)は、まだ未成熟な
部分も多々あるが、「スーパコンパネ」を搭載していることで
操作系はこの時代のカメラとしては、及第点、あるいは優秀で
あったと言えよう。
![c0032138_17331248.jpg]()
他の長所であるが、タフな事が言えるだろうか。
使用およそ7年、その間、雨中の撮影も何十回もあったが、1度も
故障していないし不調の気配すらない。
仕様上では防滴構造にはなっていないが、そのあたりに配慮の
あるオリンパスの製品だ、エントリー機とは言え、他社機よりも
構造的に雨に強いのかも知れない。
上部液晶を持たない事も、その点ではメリットだ、雨が酷いと、
通常、そのあたりから浸水し、液晶が白濁するばかりか内部の
電子部品にまで影響が出てしまい、最悪は動作不能となり
自然乾燥をもって回復させるしかない。
----
さて、E-410に対応する同社銀塩名機としては、
ズバリなものが無い。一応OM-4Tiと、加えて本記事中で
再三話題となったE-300を紹介しておこう。
![c0032138_17324883.jpg]()
こちらがOM-4Ti、小型軽量フラッグシップ機だ。
(1990年代末に中古で5万円で購入)
![c0032138_17324953.jpg]()
こちらはE-300、PENの再来か?と、当初呼ばれた機種だ。
(2005年頃に新品レンズキットで5万円で購入)
これらの機種の詳細は、文字数限界につき残念ながら割愛する。
かなり昔の記事で、それぞれ紹介していたと思う。
![c0032138_17331237.jpg]()
さて、本機E-410の購入価格だが、2009年末か2010年初頭頃に、
新品で15000円と極めて安価であった。
オリンパスがμ4/3機に転換し、4/3が終焉するだろう事は
市場動向に敏感なカメラ流通業界(中古店含む)では、
この時期、すでに察しがついていた。
しかも現行機種はE-420でありE-410は型遅れだ。
なんとしても売り切って在庫リスクを避けなければならない、
それ故の安価な新品処分価格だ。
だが、買う側も、それは十分承知、
「とりあえず5年ほど持てば十分」とそんな感じで購入している。
減価償却(1枚3円の法則)は当然あっと言う間に完了、
後は壊れるまで使い続けるだけである。
注意した点としては、4/3交換レンズの購入を控えた事だ。
この時点でそれを買ってしまうと、将来的に使えなくなる
リスクが高かった。
現在、事実上4/3が終焉した後においては、4/3交換レンズの
中古相場は下落している。
もし安定して長期に使えるボディ(E-3やE-5)が確保できれば、
安価な相場になった4/3システムを再興させるのも、マニアック
で良いかとも思っている。
![c0032138_17331257.jpg]()
さて、最後に本機E-410の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★☆
【購入時コスパ 】★★★★★
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値 】★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.2点
思っていたよりも高評価点となって、自分でも驚いた。
コスパが高かったのが一番幸いしたが、小型軽量で使いやすい
という点が、じわじわと各評価に効いている。
今更、フォーサーズに将来は無いとは言えるが、動いている
限りにおいては、十分な実用機であるとは言えるであろう。
特に過酷な環境でのスナップ撮影には最適である。
前述のように「再興」も十分ありかもしれない。
次回シリーズ記事に続く。
時代背景を含めた評価を行っている。
第5回から第8回記事では、「第二世代」と仮に定義した
2006~2007年発売の機種について紹介している。

装着レンズは、OM SYSTEM Zuiko Macro 50mm/f3.5
(ミラーレス・マニアックス第66回記事)
本記事では同システムで撮影した写真を挟みながら、
E-410について紹介していこう。

いった時期だ、と以前の記事で書いた。
だが、オリンパスにとっては、まだ他社よりも少しだけ出遅れて
いた時代でもあった、そのあたりの事情は、歴史をちょっと
振り返えらなければならない。少し長くなるが説明しておこう。

オリンパスは、既に30年以上もカメラを作り続けている老舗の
メーカーであった。
1960年代のオリンパスは、ハーフ判カメラである「ペン」
シリーズを長期間大ヒットさせていた。
代表的な機種としては、ペンEE(1961年)やEE-3(1973年)
があり、当時の生産台数は膨大であった。
その後の1990年代の第一次中古カメラブームでも、中古市場で
各種ペンは大人気だった。

EE型とはレンズが異なる。
ペンEE型や派生機は、レンズ交換が出来ないコンパクト機だが、
レンズ交換可能型の世界初のハーフサイズ判一眼レフ「ペンF」
シリーズ(初代PEN Fが1963年発売)は、高級機として、
当時のハイアマチュア等に熱狂的に支持された。
勿論、後の中古カメラブームの際にもPEN F等はマニア間で
高値で取引され、その人気は衰える事を知らなかった。
(私も当時購入していたが、現在は未所有)
ハーフ判(ハーフサイズ)とは、一般的な35mm判フィルムの
1コマ(36x24mm)を、その半分の18x24mmで用いる事である。
そんな事をしたら画質が悪くなるのではないか?と思うかも
知れないが、概ね正解だ。
つまり、その分高性能なレンズを用いる必要がある事。
そして、適切なプリントサイズに留める事が必須だ。
35mm判フィルムの画素数は、アナログなので厳密には計算
できないが、だいたいデジタルに換算して2000万画素位だ。
ハーフ判では、半分の1000万画素相当である、これ位だと
L判や2L判でのプリントは何ら問題なく、六つ切位までは
十分にいけたと思う。
1960年代当時のフィルムは高価であった。
同じフィルムで「倍の枚数が撮れる」事は当時のユーザーに
とって大きな魅力であり、オリンパスのハーフ判の大ヒットを
見て、キヤノン、ミノルタ、リコー、ヤシカ、コニカ等も
ハーフ判カメラを発売し追従していたので、当時の殆どの
大衆向けカメラは、ハーフ判であったのではなかろうか・・
ちなみに、ハーフ判カメラは普通にカメラを横位置で構えた
場合でも、写る画面は縦位置となる。
で、1990年代の中古カメラブームの際、私は何台かのPENを
入手して使っていたのだが、その当時のDPEは「0円プリント」
と呼ばれる、600~800円程度の定額の現像代を払えば、
ネガからのL判同時プリントが無料になる方式が主流であった。
36枚撮りのネガフィルムを使ってPENで撮影すると、本来は
72枚撮りになるが、フィルム装填を工夫すると、76~77枚位
まで撮れる。これを「0円プリント」に出すと、80枚近くの
プリント写真が、ドサッ!と手渡される。
「これでは、お店は、絶対儲からないだろうなあ・・」
と思いながらも、発売から30余年を経て、ハーフ判カメラの
恩恵を感じた次第であった。
PENシリーズは、市場に大きなインパクトを与え、発売後
数十年を経ってもカメラ界の「伝説」となっていた。
その為、オリンパスは2009年、μ4/3機に丁度50年ぶりに
「PEN」をシリーズ名として復活、
その後2016年には、名機「PEN-F」も再登場させている。
なお、銀塩フィルムのフォーマット(サイズ)を変えて
カメラを小型化する、という発想は、その後の1996年からの
APS(IX240フィルムを使用)でも行われ、CANON IXY等が
大ヒットしたが、2000年代にデジタル化が進むと、当該規格も
終焉し、APSの名は撮像センサーサイズでのみ生き残っている。

一眼レフであるOM SYSTEMを発売する。
最初はOM-1 これは1972年発売だ。
小型かつ高性能なMF一眼レフ、OMは、アマチュア層において
熱狂的に受け入れられ、いくつもの機種が作られ、1990年代末
まで生産が続けられていた(私も6機種を所有していた)
だが、この後、他の記事でも書いたが「αショック」と呼ばれた
ミノルタα-7000(1985年)による、一眼レフのAF化が始まると
各社はいっせいに追従、AF一眼時代に瞬時に突入していった。
オリンパスも OM-707(1986年)で、すぐさま追従するが、
残念ながら様々な問題点を持つ機種で、市場に受けいれられず、
このたった1つのミスが致命傷となり、オリンパスは、AF一眼
への移行が出来なくなってしまった。

いたが、実際その期間に新規発売されたOM一眼は、マニア向けで
高価なOM-3Ti(1994年)と、コシナ製OEM機のOM-2000(1997年)
の2機種のみであった。
まあ、1990年代のオリンパスのカメラといえば、μ(ミュー)
シリーズが代表的であろう、これは銀塩コンパクト機(35mm判)
であるが、かなり高性能で、特に1997年のμ-Ⅱは、私も高く
評価する名機であり、今なお大事に所有している。
μの名は、近年までオリンパスのデジタルコンパクト機に
受け継がれたが、現在では「STYLUS」ブランドとなっている。

当時同社の主流であった、コンパクト機から始まった。
「CAMEDIA」(キャメティア)というブランドで、その発売が
始まったのは、C-800L(1996年)であったと思う。
当時のデジカメの走りと言えるカシオQV-10(1995年)が、僅か
25~35万画素であったのが、C-800Lでは、いっきに80万画素
となり、初めて「写真」と言えるレベルとなった。
この機種は所有していた事があったが、かなり高価(12万円台)
で、画質もイマイチであったが、専用のプリンターを使うと
インスタントフィルム機(ポラロイド等)のように、自宅で
プリントが可能となる等、写真のプライベート化に貢献した
カメラであった(それまでの時代は、撮った写真は必ずDPE店に
見られてしまうというプライバシー上の問題点があった)
その後、CAMEDIA C-1400L(1997年)では画素数は140万画素
に向上、続く200万画素中級機C-2000シリーズ(1999~2000年)
で、オリンパスはコンパクトデジカメの分野でさらに市場シェア
を伸ばしていった。
この時代(1990年代末)は、実用的なデジタル一眼レフは
まだ登場していない。デジタルカメラに興味のあるユーザー層
や、企業等のビジネス用途では、オリンパスやフジ(FinePix)の
コンパクト機を購入して使っていたと思う。

発売されるようになってくる、そのあたりは本シリーズ記事では
再三紹介しているので割愛する。
オリンパスも当然、この流れに追従しようとする。
だが、前述の通り、オリンパスは1980年代後半の一眼レフの
AF化に失敗して以来、殆ど一眼レフの開発をしていなかった。
オリンパスは、米コダックと共に「フォーサーズ規格」を提唱し、
その1号機「E-1」は、2003年に発売されたが、定価22万円程と、
やや高かったのと、新たにフォーサーズ用レンズを買い揃え
なくてはならなかった為、少々敷居の高いカメラであった。
次いで、オリンパスは、実用的な低価格フォーサーズ機として
E-300を、2004年末~2005年に発売する。
そのE-300は、発売前に
「ペンタプリズムの無い独特なデザイン、PENの再来か?」
という噂が流れ、マニア層等から、大きな注目を浴びたのだが、
いざ発売されてみると、PENとはかなり異なるイメージで、
少々がっかりしたマニアも居たようだ。
私は、E-300を2005年頃に購入し、2010年頃まで使用して
いたが、ドラゴン競技撮影等で酷使しつづけ、電子部品が故障
してしまい、その際、今回紹介のE-410にリプレイスした次第だ。

デジタル一眼レフ市場に参入していたと言える。
その後、オリンパスも他社に遅れじと、次々に4/3マウントの
デジタル一眼レフを発売する。
代表的な機種をいくつかあげれば、
2006年 E-330(一眼初のライブビュー機),E-400(軽量機)
2007年 E-510(オリンパス初の内蔵手ブレ補正),E-3(高級機)
という感じだ。
しかし、後発ゆえに、いずれの機種も市場に大きなインパクト
を与えた訳ではない、この状況の打開からか、オリンパスは、
同じ4/3マウント機を発売していたパナソニック
(2006年に DMC-L1,2007年に DMC-L10)等と共に、
2008年に「マイクロフォーサーズ規格」を発表する。
μ4/3規格は、ミラーレス時代の走りとなり、後にオリンパスは
この分野で成功するが、その話はまた別の記事に譲ろう。
さて、そんな歴史の中、今回の紹介機種、E-410の発売である。

2007年4月の発売時点では、デジタル一眼レフの中で史上最軽量、
ボディ重量は僅かに375gだ。
この重量は、銀塩高級コンパクトCONTAX TVS(1993年)と同じだ。
銀塩コンパクト機と(デジタル)一眼レフが同じ重量というのは
驚きだが、そんな古い機種は知らない、という向きには、
近年の軽量ミラーレス機ではPANASONIC DMC-GX7 MK2(2016年)
が383gと、本機より僅かに重い。
なお、同時期に発売された OLYMPUS E-510は、前述の通り
手ブレ補正内蔵機で、重量は460gと重くなった。
加えて、ちゃんと調べてはいないが、銀塩一眼レフ最軽量は、
MINOLTA α-SweetⅡであったろうか?本機より軽い335gだ。
次点はEOS Kissシリーズ、NIKON U2、α-Sweet、あたりで本機
とほぼ同等。なお、MF一眼のXR8,FM10,OM-1,MX等は
400g台だ。が、いずれも電池を含まない重量なので、軽量な
ボタン電池を使用する銀塩機では、本機より軽かったかも
知れない。

撮像素子は4/3型LiveMOSセンサー,1000万画素
LiveMOSセンサーとは、CMOSセンサーの構造で制御用配線数を
減らし、結果的に開口効率を高める、つまり、より光を多く
取り込めつつも消費電力を下げる効果があると言われている。
発熱が少なく、ライブビューに向く、という長所もあり、
2006年のE-330(初のライブビュー機)に初搭載された。
ただ、E-410の場合は、ボディの小型軽量化を目指して
開発された為、バッテリーも小型化されている。
この結果、消費電力の少ないLiveMOSセンサーと言えど、
大型のバッテリーを搭載する他のCMOS機に対して、撮影枚数が
増えるわけでもない。
4/3やμ4/3のセンサーサイズは17.8x13mmであり、
フルサイズに相当するレンズ換算画角は2倍である。
ちなみに、前述の銀塩ハーフ判は1.4倍であった。
オリンパスの発想は、フォーマットを小型化する事で、システム
全体を小型化するという点があると思い、PENの発想と4/3や
μ4/3の発想は、どこか似ている。
で、E-410のマウントは、そのフォーサーズである。
ただ、他社デジタル一眼レフにおいては、いずれも銀塩AF時代から
の純正又はサードパーティ製レンズが、ほぼ問題なく使えたので、
銀塩からデジタル一眼の買い替えにおいては、新たにレンズを
追加購入しなくても大丈夫で、その点、高価なデジタル一眼レフ
購入のハードルを、やや下げていた。
4/3は新規のマウントだ、この為、誰も交換レンズを持っていない。
なので、前述のE-300では、先にレンズキットが発売され、
後からボディ単体が発売されている。
なお、E-300等購入の際、付属の申込書をオリンパスに送ると、
OMマウントレンズを4/3に変換するマウントアダプターを
無償で送ってきてくれた。私は、E-300は新品在庫処分で
購入していたので、アダプターが入手できた。
本記事においても、その時のアダプターを用いて、
E-410にOM用のレンズを装着して使っている。
が、その当時(2005年)では、OMシステムの実質上の最後の機種
OM-4Ti(1986年)が出てから既に20年近くが経過していた為
「従前のレンズの互換性がある、と言うのは良い事だけど、
果たして20年も前のシステムのレンズを皆が持っているのか?」
とちょっと疑問に思った。
(注:OM用以外にも多くのアダプターが4/3では使用可能)

際には、50mmレンズが100mm相当の画角になる事に少々戸惑った。
だが、それは標準レンズでの話であり、望遠系レンズを用いれば、
簡単に300mm超の超望遠画角が得られる事は、むしろメリットが
あると感じた。
さらには、E-300のキットズームは14~45mmという焦点距離
であり、これが28~90mm相当の標準ズーム画角となる。
で、元々のレンズ焦点距離が短いため、被写界深度が深い。
この為、やや絞って使用すると、スナップ撮影ではピントを
外し難いというメリットが生じる。
この利点を用いて、ドラゴン大会撮影での選手達のスナップ
撮影で大量の写真を、素早く撮るケースにおいて、大きな
メリットとなった。
その点は、コンパクト機でも同様のメリットがあるが、
4/3機は、あくまで一眼レフである、よって電源ONからの起動
時間も、AFの速度・精度も、コンパクト機とは比較にならない
高レベルであり、小型軽量な事もあいまって、E-300やE-410は、
最強のスナップ・マシーンとなっていた。
これは現代においても同様で、本E-410はドラゴン競技等の
スナップ撮影で、いまだなおバリバリの現役カメラである。
惜しむらくは、小型4/3機は、その後の E-420(2008年)や
E-620(2009年)をもって、事実上、μ4/3に役割を委譲し、
終焉を迎えてしまった事がある。
約5年間と短命であったが、今から考えると少々惜しい。
というのも、μ4/3機の普及は、2009年頃よりスタートしたが、
像面位相差AFや空間認識AF等の特殊技術が2010年代後半に
出てくる迄、コントラストAFのみに頼っていて、一眼レフの
位相差AF程の速度や精度が出ていなかったからである。
この為、初期ミラーレス機全般では、純正AFレンズを使って
スナップ撮影をする等は厳しく、オールドレンズ等での趣味的な
撮影等にしか用途がなかった。
まあ、とは言え、ミラーレス機+アダプター+オールドレンズは、
なかなか奥が深く、本ブログでも「ミラーレス・マニアックス」
シリーズ記事を多数連載していた。

AF測距点は僅かに3点、内蔵手ブレ補正無し。
ISO感度は100~1600と不満、AUTO ISOでは400迄しか
上がらないので、手動ISO設定が必須である。
最高シャッター速度は1/4000秒
背面モニターは2.5型、解像度は23万ドットと低い。
ライブビューは可能だが、通常のコントラストAF方式であるので
(オリンパスで言うBモード)実用性は低い。
露出補正やWBの変更はライブビューに反映するが、モニター
画素数が低いので、MFピント合わせやボケ量・ボケ質の確認は
無理だ。
CFとxDのデュアルスロットであるが、2010年以降、
xDピクチャーカードは入手性が極めて悪く、CFも現在は同様だ。
連写性能は、記録メディアと画質設定に依存するが、
基本的には秒3コマで最大7枚(以上)と貧弱だ。
このあたりのスペックを見ていると、「第一世代」の
2003~2005年発売のデジタル一眼と同等か、それ以下である。
何度も前述しているが、オリンパス・フォーサーズは後発で
あったので、そのあたりはやむを得ない。
まあ、このあたりがスペック至上主義のユーザー層からは嫌われ、
4/3の人気が高まらなかった理由の1つだろうと思う。
何故、ユーザーがスペック至上主義になるのか?と言えば、
殆どのユーザーは数値スペックを見る事しかカメラの選択基準が
無いからだ。そりゃあ、画素数や連写速度が高いカメラの方が
良いカメラだと思って欲しくなって買うのは、やむを得ない。
(実際にはそうとは限らない事は、言うまでも無い)
視野率は95%と、標準的か、やや不満。
ファインダー倍率は0.92倍と高いが、これは測定基準が良く
わからず、フルサイズ換算かも知れない。
実際にはファインダー像はやや見え難い。
そこで、純正のマグニファイヤーアイカップ「ME-1」を装着して、
1.2倍に拡大している。
このアクセサリーは、新品でしか入手できず値段も5000円+税
と、やや高価であるが、多くのオリンパス製4/3機で共通して
使用できるので必須アイテムだ。
(一度、ドラゴン大会撮影中に落として、非常に慌てたが、
偶然、選手の1人が拾ってくれて「匠さんのカメラ部品かな?」
と届けてくれた、大変助かりました!)

バッテリーが小さいと前述したが、通常撮影で900枚以上は
楽に持つ。他の小型軽量機、例えばコンパクト機ではこの枚数は
絶対に無理だ。低消費電力センサーが効いているのであろう。
なお、私は省エネ撮影には常に心がけているので、一般的な
撮影スタイルでは、そこまで持たないかも知れない。
シャッター音がなかなか良い。”シュッキーン”という感じだ。
音質の良し悪しは、感覚的な部分があり、個人の好みもあって
評価が難しい。だから、一般的には「そんなの好き好き」で
終わってしまう。しかし、私は昔、電子楽器等の開発に深く
関わっていた事がある、その世界においては”個人の好み”
等とは言っていられない、必ず、なんらかのポリシーを持って、
出音を決めていかなければ製品が作れない。
そういう視点からすると、E-410のシャッター音は、同時期の
例えば、NIKON D300の大音量で乾いた耳障りな音質に比べ、
小さく、高域が多いが上品で、かつシャッター音としての「芯」
があって、なかなか上質な音色だ。当然耳障りな要素も殆どなく、
静かで周囲に人が居るシチュエーションで撮影しても問題は無い。
「芯がある」という点については、あまりに静かな音だと
撮っている側も、いつ撮れているのか不安になる事もあるので、
その「芯」の音は絶対欲しい。
例えば、近年のミラーレス機やコンパクト機で電子シャッターで
撮ると、何らシャッター音がしない為「撮れている気がしない」
と思うのと同様だ。
こうした点は、どうでも良い事や個人の好み、では決してなく、
実用上では重要な事だ。
TVでの記者会見等で、報道用カメラのシャッター音が
極めてうるさく、発言者の声が聞こえ難いなど、放映に悪影響
が出ている場合がある、視聴者は「やむを得ない」と思って
いるのかもしれないが、そういう業界において、「音」という
ものへの配慮がこれまで行われてきていなかった文化・慣習も、
関連する問題点の1つではなかろうか。
ちなみに、結婚式撮影業界等においては、シャッター音が小さい
一眼レフを使う事が常識になっている模様だ。

背面液晶に各種カメラ設定が表示され、ダイヤルとは別途儲け
られた十字キーで、それらのカメラ設定を直接変更できる。
これを「スーパーコンパネ」とオリンパスは呼び、
その後の4/3機やμ4/3機でもこの機能は搭載されており、
2000年代後半にはオリンパスのみならず、SONYやPENTAX,CANON
のカメラにも同様な機能があった。
このアイデアは単純だが極めて使い易い。
これに比べると、前後ダイヤルのみでメニューを操作する形式の
他機は、かなり使い難さを感じる。
本E-410では、他の操作系(メニュー構造等)は、まだ未成熟な
部分も多々あるが、「スーパコンパネ」を搭載していることで
操作系はこの時代のカメラとしては、及第点、あるいは優秀で
あったと言えよう。

使用およそ7年、その間、雨中の撮影も何十回もあったが、1度も
故障していないし不調の気配すらない。
仕様上では防滴構造にはなっていないが、そのあたりに配慮の
あるオリンパスの製品だ、エントリー機とは言え、他社機よりも
構造的に雨に強いのかも知れない。
上部液晶を持たない事も、その点ではメリットだ、雨が酷いと、
通常、そのあたりから浸水し、液晶が白濁するばかりか内部の
電子部品にまで影響が出てしまい、最悪は動作不能となり
自然乾燥をもって回復させるしかない。
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さて、E-410に対応する同社銀塩名機としては、
ズバリなものが無い。一応OM-4Tiと、加えて本記事中で
再三話題となったE-300を紹介しておこう。

(1990年代末に中古で5万円で購入)

(2005年頃に新品レンズキットで5万円で購入)
これらの機種の詳細は、文字数限界につき残念ながら割愛する。
かなり昔の記事で、それぞれ紹介していたと思う。

新品で15000円と極めて安価であった。
オリンパスがμ4/3機に転換し、4/3が終焉するだろう事は
市場動向に敏感なカメラ流通業界(中古店含む)では、
この時期、すでに察しがついていた。
しかも現行機種はE-420でありE-410は型遅れだ。
なんとしても売り切って在庫リスクを避けなければならない、
それ故の安価な新品処分価格だ。
だが、買う側も、それは十分承知、
「とりあえず5年ほど持てば十分」とそんな感じで購入している。
減価償却(1枚3円の法則)は当然あっと言う間に完了、
後は壊れるまで使い続けるだけである。
注意した点としては、4/3交換レンズの購入を控えた事だ。
この時点でそれを買ってしまうと、将来的に使えなくなる
リスクが高かった。
現在、事実上4/3が終焉した後においては、4/3交換レンズの
中古相場は下落している。
もし安定して長期に使えるボディ(E-3やE-5)が確保できれば、
安価な相場になった4/3システムを再興させるのも、マニアック
で良いかとも思っている。

(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★☆
【購入時コスパ 】★★★★★
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値 】★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.2点
思っていたよりも高評価点となって、自分でも驚いた。
コスパが高かったのが一番幸いしたが、小型軽量で使いやすい
という点が、じわじわと各評価に効いている。
今更、フォーサーズに将来は無いとは言えるが、動いている
限りにおいては、十分な実用機であるとは言えるであろう。
特に過酷な環境でのスナップ撮影には最適である。
前述のように「再興」も十分ありかもしれない。
次回シリーズ記事に続く。