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デジタル一眼レフ・クラッシックス(7)「SONY α700」

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本シリーズでは現有の古いデジタル一眼レフについて紹介、
加えて、その発売時の時代背景を含めた評価を行っている。
第5回から第8回記事では「第二世代」と仮に定義した
2006~2007年発売の機種について紹介している。
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今回は、SONY α700 (2007年)だ。
レンズは、MINOLTA AF35mm/f1.4Gを使用している。
(ミラーレス・マニアックス第60回記事)

本機と同レンズで撮影した写真を挟みながら記事を進めて行く。
なお、毎回そうだが、写真の順番と記事の内容は関連が無い。
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まず「α」の歴史であるが、1985年に社会現象にもなった
業界初の実用的なAF一眼レフMINOLTA α-7000の発売があり、
これは一般に「αショック」と呼ばれた。

「α」は人気カメラとしてAF一眼レフの普及発展を支えたが、
様々な市場の状況や変化もまたあった(デジタル一眼第3回記事)
MINOLTAは、2003年にKONICAと合併後、2006年初頭に
「α」をSONYに譲渡し、カメラ事業から撤退してしまう。
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さて、「α」を継承したSONYであるが、デジタルカメラでは
コンパクト機等は生産販売していた物の、一眼レフは初めてだ。
技術そのものはコニカミノルタから引き継いだが、ノウハウとか
文化とか、そうした部分はあまり持っていなかったかも知れない。

技術者に関しては、MINOLTA→KONICA MINOLTA→SONY
と移った方も多かっただろうが、元々MINOLTAは大阪の企業で
あった、東京等に生活拠点を異動する事が難しかった技術者も
居たかも知れない(一部の関西系新規カメラメーカーの技術力
が急に高まったのもこの時代の話だ、技術者が流れたのかも
知れないが、それはあくまで想像の域だ)

だが、多くのコニミノ時代の技術は正しくSONYに引き継がれて
いる。その代表的なものはボディ内手ブレ補正機構だ。
そして、SONYにαが引き継がれてすぐ、α100が発売されて
いるので、恐らくは引継ぎ前から共同開発していたのであろう。
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レンズだが、ミノルタ時代のα用の物が、そのまま利用できる。
(勿論MC/MDマウントはそのままでは装着できない)
SONYブランド製品では、その大半のレンズがミノルタ時代の物の
外観を変更した程度だが、定価は15~25%程度上乗せされた。

値上げは新規αユーザーにとっては困ったものであったが、
幸い私の場合はミノルタ時代からのαレンズを多数所有して
いたので特に問題にはならなかった。

加えて、αマウントの開口径は比較的大きく、若干の種類だが、
マウントアダプターが使用できる。この時代から既にマウント
アダプターは存在していたが、一眼レフでそれが可能であった
のは概ね、EOS(EF)、フォーサーズ、そしてα位であろう。

α-7 Digitalや本機α700等には内蔵手ブレ補正機能があるの
だが、残念ながら焦点距離設定メニューが無く、α純正レンズ
専用であり、オールドレンズ等を手ブレ補正で使う事は不可だ。
まあ、他社互換性を排する傾向の強いSONY製品であるから、
ある程度やむを得ない。
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また、ミノルタ時代からの「文化」もまた継承された。
具体的には、カメラ型番の命名ルール等である。
各社では、最上級機に1番やヒトケタの型番を与える事があった
が、ミノルタではそうではなく、銀塩時代のかなり昔から、
革新的な機能を持つ新鋭機に「7番」を与え、以降、最上位機
に9番、下位機種に5,3,1番を与える事が通例であり、
これはSONYの型番ルールにも受け継がれた。

で、このあたりは、特に各社間で標準化する必要は無く、
各々のルールを知ってさえいれば特に混乱する事は無い。
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2006年にSONYから最初に発売された機種はα100であったが
型番ルールからすると、これは1番でエントリー機であり、
その中身はコニミノ時代のα-Sweet Digitalとほぼ同等だ。
(注:記録画素数は大きく向上している)

「SONY αはエントリー機だけ」の状況が1年以上続いたのだが、
2007年に満を持して発売されたのが本機α700であった。

7の型番であるので、何か革新的な技術を採用・搭載している
のではないか?と思われたが、実際にリリースされた製品は
ごく普通の性能の中高級機であった。

ほぼ同じ時期には、同クラスではNIKON D300等の完成度の
高い機種が発売されたので、それらに比べるとやや地味だ。
ちなみに2007年でのα700の発売時定価(市場価格)は、
18万円程であり、D300は23万円程であった。

「7の意味は、ミノルタやコニミノ時代ほど強くは無いのだな」
と思い、少しだけがっかりしたが、まあでも、恐らくは中身は
完全にSONYにより新たに設計しなおされたカメラであろう
そういう意味では「革新的で記念碑的な7番」だ。

ちなみに、ミノルタ・コニミノ時代のαは、α-7等、
ハイフンが入るのであるが、SONY時代のαにはハイフンは
省略されている(α7等)

いずれにしても「α」の名称は、SONYが継承後も10年以上を
過ぎて今なお残っている。「αショック」からは既に30年以上
が経過している。よく「α」の伝統を守ってくれていると思い、
好ましい。

ただ、現在のαは一眼レフ用の「A」マウントとミラーレス用の
「E」(NEX)マウントが混在していて、少々わかりにくい。
また、Aマウント機は、2017年現在では、α77Ⅱ/99Ⅱの
高級機2機種しかラインナップされていない。
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それと、本機α700以降のSONYの「7番」は、2011年発売の
α77となるのだが、その機種はα700の後継機ではなく、
完全に中身の構造が異なるカメラだ。

α77ではクイックリターンミラーすらも使っておらず、
もはや一眼レフとも言い難い。
あえて言えば一眼レフとミラーレス機のハイブリッドのような
カメラだ。
それにその構造の最初の機種は、α77では無くα55(2010年)
であり「革新的な7番」の意味すら無くなってきている。

α77が、デジタル一眼レフとは異なるものになってしまい、
続くα7(2013年)はマウントすら異なるミラーレス機なので
本機α700はSONYデジタル一眼で唯一の「7番」であろう。
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さて、その栄光の7番機の実力は・・

α700の基本スペックであるが、

撮像素子はAPS-Cサイズ、1200万画素、自社製CMOS(Exmor)
勿論手ブレ補正内蔵、ゴミ取り機能つき。

ファインダー視野率95%、スクリーンは優秀であったミノルタ
時代からの技術を引き継いではいるが、銀塩時代のα-9やα-7程
には見やすくない。フルサイズでは無いし倍率も下がっているし、
測距点スーパーインポーズ機能も弊害となっているのであろう。
MF向きで無い事は確かだ。

連写性能は、高速でも秒5コマと、少々物足りない。
最大連写枚数は画質設定条件で異なるが、低画質モードならば
無制限に撮れる(この点は後継機のαより優れている)

最高シャッター速度は1/8000秒
シャッター音は、摺れる感じの高音域が、やや耳障りだ。

測距点は11点。自動選択、中央固定、任意選択が選べる。
フォーカスモードは、シングル、コンディニュアス、そして
自動切換え(AF-A)は、DMFに切り替え可能である。

DMF、すなわちダイレクトマニュアルフォーカス機能は、
シリーズ第3回記事の「α-7 Digital」でも紹介したが、
ミノルタ銀塩α時代から引き継ぐ便利な機能だ。

簡単にその効能を述べると、AFでピントが合った瞬間、レンズを
駆動するモーターのクラッチが外れ、ヘリコイドをMFで自在に
廻してピントの微調整ができる。

他社の超音波モーター内蔵レンズや、近年のミラーレス機用の
無限回転ヘリコイド式のレンズでは、同様にAF/MFの自在
切り替えが任意に出来るが、それらはレンズ側の機能である。

このDMF機能では、ごく普通の旧来のα用AFレンズを使っても
AF/MFのシームレスな切り替えを可能とする、これは多大な
メリットだ。

だが弱点もある、ピントが一旦合うまでは、このDMF機能は
使えないのだ。よってピントが合い難い被写体では、いつまでも
DMFが使えず、手動でMFに切り替えなければならない。
それと、各種モーター搭載レンズではDMFが効かないので、
近年のαではDMF機能が省略されている。
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銀塩α時代にあったグリップセンサーが復活していて、
アイスタートセンサーとのAND条件でAFをスタートさせる事も
出来る。ただ、あまり実用的な機能ではなく、これはOFFとして
おくのが良い。

ISO感度は100~6400と、やや物足りないが、これは
この時代であれば、こんなものだ。
・・と言うか、他社の一眼レフにセンサー部品を供給していた
本家のSONYであるから、必然的に各社の性能は同等になる。

もっとも、その点については、近年であってもSONYから供給
された高感度型のCMOSセンサーを使用した他社の高級機が、
ISO51200や10万というスペックでありながら、本家SONYの
高級機がISO25600迄に留まっていたケースもあり、
「あれ?SONYは、自社製品の高感度に自信が無いのかな?」
と思った事がある。

なお、本α700のAUTO ISOは200~1600の範囲でしか変化せず
低感度も高感度も使えないので、手動ISOで設定した方が有利だ。
この点でも上記の最高感度同様にSONYはノイズに対して厳し目の
評価基準を意識しているものだとうかがえる。

まあ、第一回記事でのNIKON D2Hが、2003年当時としては珍しい
ISO6400を搭載していながら、まだデジタルに慣れないユーザー
層が、目一杯その高感度を使い「ノイズが多い」と酷評し、
その評価が一般にも広まり、D2Hシリーズの製品寿命を短くして
しまった経緯がある。

それから4年経ったとは言え、依然銀塩一眼レフは健在であり、
「初めてのデジタル機」という新規ユーザー層も多い。
彼等が安易に高感度を使って「ノイズが酷い」という評価をしたら、
D2Hの時と同様に、SONYの新規事業としてのデジタル一眼レフの
市場展開そのものに大きな悪影響を与えるかも知れない。
だから、最高感度をあえて控え目にしたり、AUTO ISOの可変範囲
上限を低くしたりしていたのかも知れない。
(デフォルト上限はISO800と低い)

多くのユーザーがISO感度という物がどういう性質であるかを
理解し、その結果として高感度競争に走るのは、2010年代以降の
話である。この時代2007年ではユーザー側がまだ未成熟なのだ。
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また、センサーは各社同じだが、画像処理エンジンは各社で
異なる。画像処理エンジンは数値的なスペックで性能が評価
されるのではなく、色表現、色再現性などの感覚的な性能が
重要視される為、一般のデジタル系技術者では開発が難しく、
フィルム時代から等の長年のノウハウが必要とされる分野だ。

コニミノ時代のα-7 Digital(2004年)では、コニカの100年にも
およぶフィルム技術の色再現性ノウハウが惜しみなく投入され
(ちょっと当時の技術が追いついていなかったが)癖はある
ものの、まずまずの発色を見せてくれる事もあった。

本α700では「BIONZ」という名称の新開発のエンジンを使って
いるが、正直言うと、本機の色味は個人的には好きではない。

この次の世代の各社のデジタル一眼の発色は大きく改善されて
いる。実は、その点が、本シリーズ記事で「第二世代」と
「第三世代」を分けている一番大きな要因だ。(この区分は
シリーズ第1回記事参照)
2008年頃に、その「断層」が存在している模様で、それ以降の
機種は色再現性あるいは色表現力に優れると思っている。
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さて、α700の記録メディアはCFとメモリースティック(MS)
のデュアルスロット、どちらのメモリーカードを用いても、
連写性能やバッテリーの持ちに差異は無い。

SONYおよび数社が開発し、1998年より発売されたMSは、
カメラの他、PCやゲーム機、携帯電話など様々な機器間での
互換使用が想定されていた。この規格が業界標準になればSONYは
多大な利益を得られたのであろうが、2000年代以降、デファクト
(事実上の業界標準)は、SDカード系となってしまっていた。

個人的な感覚だが、MSは進化するデジタル技術に合わせて規格の
変更が多々あり、種類が多すぎた事が煩雑であるという印象を
与えたのかもしれない。また、互換性があると言っても殆どが
SONY系の製品間のみでの話であり、他社製品を含めた互換性
(たとえばカメラもそうだ)は無かったのも課題だ。

一度デファクト化が始まるともう止められない。SDカードの価格
はどんどん低下し、多くのデジタル機器もSDカード使用となる。
MSや他の記憶メディア(xD等)とのユーザー利便性の差は
広まっていく一方であった。(ちなみにxDは絶滅してしまった)

なので、本α700発売時の2007年では、MSを主力記録メディア
とするわけにはいかない、よって本機では、CFとMSのデュアル
(ダブル)スロット仕様となったのであろう。
(切り替え式であり同時書き込みは不可)

ちなみに現代のαデジタル一眼ではMSとSDの共用またはデュアル
スロットとなっている、
搭載理由はともあれ、デュアルスロットは便利な場合もある、
CFの予備カードを持参せず、MS側にも適当なサイズのカードを
入れておき、CF空き容量がちょっと足りなくなってきた際にも、
「まだMSが入っているので大丈夫」という安心感があるのだ。

余談だが用語の話だ。「スロット」(細長い溝)が正解で、
「スロットル」は誤用。これではバイクのアクセルだ。
同様に「ブラケット」(連結器、又は複数枚設定を変えて連写)
が正解で「ブランケット」は誤用、こちらは”毛布”である。
もう1つ、「スティル」写真(止まっている)が正解で、
「スチール」写真は誤用、それでは”盗む”又は”鋼鉄”だ。
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バッテリーはインフォリチウム型で、電池残容量が%表示で
出せるが、カメラを使わない時にも自然放電がある。
ただ、バッテリーの持ちはなかなか良く、1000枚程度の撮影を
しても残容量50%を切ることはない、まあでも、このあたりは
MF併用やモニター再生を最小限にするなど、消費電力を抑える
手法を駆使しての話である。
なお、インフォリチウム型も他社互換バッテリー使用を排除する
仕様だと思われるが、純正予備電池購入が高価となるので、
個人的にはそういうユニバーサルで無い仕様は好きでは無い。

それと、アスペクト比が変更できる。3:2と16:9が選択可能だ。
同社ハイビジョンTVとの接続を意識した仕様であるが、例えば
同時代のPANASONIC製のカメラでもそうした仕様の機種がある。
(注:この時代はアナログTVから地上波デジタルへの移行期だ、
アナログ放送が終了するのはこの数年後の2011年である。
2011年以降、TVの市場価格は驚く程急落したが、2000年代後半に
おいては、ハイビジョンTVは憧れの高価な家電製品で、メーカー
側としても高付加価値(高利益)製品であったのだ)

ここまで、いずれの仕様もSONY製の他分野製品との互換性を
意識した仕様になっていると思われる。
その事自体は企業の製品戦略的には優れた思想であると思うが、
ユーザーから見れば「SONY党」で無い限り、その恩恵は受け
られず、むしろ他社製品との互換性を排除する結果となって
しまうのは、ちょっと残念だ。
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さて、基本スペックとしてはそんな感じだ、
以降、長所短所を見て行こう。

まず長所としては、バランスの良い安定した高性能だ。
特に目立つような派手なスペックの部分は無いが、
逆に基本性能の上で大きな短所は無い。
まあ、あえて言えば「地味で特徴が無い」という位か・・
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操作性は可も無く不可も無し、カメラ上部に液晶が無く、
一見他社機より劣っているように思えるが、実際のところは
背面モニターに様々な情報が表示されるので何ら問題ない。

背面モニターは「クイックナビ」と呼ばれる、カメラの様々な
設定値の一覧が表示され、それを操作子で選んで直接設定変更
できる。
これは、この時代くらいから一部のメーカーで使われている
操作系だ、単純ではあるが極めて便利だ。
(2010年代以降のEVF型SONY一眼では、ファインダーの中でも、
このクイックナビが使用でき、さらに便利だ)
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なお「クイックナビ」は、カメラを縦位置に構えると、表示も
自動的に縦位置に変更される、この特徴は2000年の銀塩名機
α-7の「ナビゲーション・ディスプレィ」(第3回記事参照)
に初搭載されたと記憶しているが、コニミノ時代のα-7 Digital
そしてSONY時代の本α700にも引き継がれている。

いずれにしても背面ディスプレイにカメラ設定一覧が表示され
かつ、それをGUIとして設定変更できる機能は使いやすい。
特許という訳では無さそうだが、他社機では現代に至るまで、この
あまりに当然だが、便利な操作系を搭載していない場合がある。

保守的なユーザー層が新しい機能を嫌っているのかも知れない。
こういう機能を使う為には、何らかの新しい2次元操作子
(ポインティングデバイスまたは十字キー)も必要になるだろう、
そういうモノを新たに付けると「操作性が変わるとイヤだ」と
言ってくるらしい。

もし実際にそうであれば、ネガティブなユーザー層をどう扱うか、
という点は、カメラ界全体にかかわる大きな問題点だ。カメラの
進歩や発展の為には、マイナス要因は、あえて切り捨てる必要も
あるのではなかろうかと思う。(まあ、とは言うものの、カメラ
の高機能化を大義名分としたマウント変更等は、そう簡単に
容認できるものでは無いが・・)

ちなみに本機α700で、何故その新しい操作系が実現できたか?
と言えば、SONYには前機種が存在しないからだ。
だから古いユーザー層に気を使う事なく、新しい事が出来た訳だ。
逆に、古くから一眼レフを作っているメーカーでは、なかなか
新しい操作系を搭載できないという課題が、現代に至る迄、
依然継続している。

で、その新型の操作子である、背面のマルチセレクター
(2次元ポインティングデバイスとスイッチの複合体、まあPCで
言うマウスだと思えば良い)は、操作性的には、やや小さくて
動かし難いが、操作系コンセプトや機能上の問題的は無い。

そして、メニュー操作系は操作子の動作方向との関連等で、
やや直感的では無い部分があるが、欠点と言う程でもない。
シンプルな機能だが、この操作系は長所と言えるであろう。

操作系改善はカメラ専業メーカーではむしろ難しく、SONYの
ような多種多様の家電製品を開発している総合メーカーであった
から実現できたのかもしれない(UI開発の専門部署がある等)
ただカメラとして必要な操作系は、勿論家電製品での考え方とは
大幅に異なる、そういう中で、良くやったカメラだとは思う。

c0032138_20055118.jpg
本機α700の実用上での課題だが、発色(色味)の問題がある。
通常の使用状況では問題は無いが、非常に厳しい環境、例えば
ドラゴンボート競技の撮影で、真夏の強烈な光線下で、かつ
強い逆光、水面からの強烈な反射、などの状況において、
発色が怪しくなる。つまり色再現性が悪くなるのだ。

これは、露出補正などの調整はおろか、カメラ内部の各設定や、
改良された「Dレンジオプチマイザー」等を使っても効果が無く、
撮像センサーあるいは画像処理エンジンの限界だろうと思われる。

しかし、これはこの時代(第二世代)くらいまでのカメラでは
同様の傾向があるが、2010年代以降の現行世代のカメラであれば、
同様の厳しい撮影条件でも、なんとか発色の色再現性は保たれる
事もあるので、つまりは、当時の技術での限界なのであろう。

本機α700だけの問題点という訳でもないので、厳しい評価で
あるのかも知れ無いが、とは言っても、欠点は欠点である。

色味に関連して、AWBの不安定さもある、これは本機に限らず
続く2010年代のSONY製ミラーレス機でさえも見られる問題点だ。
AWBのばらつきと色再現性の悪さで、常に発色に不安を抱える訳だ。

他に大きな欠点は見当たらず、良くまとめられたカメラである。
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さて、α700に対応する銀塩名機としては、
MINOLTA X-700を紹介しよう。
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1981年に発売された銀塩MF一眼中級機であるが、この頃の
MINOLTAはハイエンド機をラインナップしておらず、X-700が
実質上のフラッグシップであった。

X-700に大きな特徴は無く、例えば最高シャッター速度も
1/1000秒と、あまり性能的にも高く無いが、全体としての
完成度はかなり高く、1990年代末まで発売が継続された
超ロングセラー製品だ。
(なお、後期には僅かに仕様の異なるNew X-700となっていた)

また、感触性能(ファインダーの見え、巻き上げ感、シャッター
音、質感など、数値スペックに表れない感覚的な性能全般の事)
に関しては、最上位とは言わないまでも、銀塩MF一眼レフ中では
ベスト10あたりには入ってくる高品位なカメラだ。

カメラのポジション的には、ハイエンドではない最上位機という
点では、α700とX-700は似ていると思う。

X-700の中古購入価格は、1990年代に32000円であった、
これはα700の購入価格よりも高価であった。
c0032138_20055012.jpg
本機α700の購入価格だが、2012年頃に中古で29000円であった、
現在2017年ではさらに相場は下落傾向、2万円程で入手できる。

なお、2007年の発売時の価格は18万円程度であった。
一般ユーザーが目を引くような特徴的な性能の無い本機としては、
やや高目だったのではなかろうか?とも思う。(こういう地味な
高性能機は、残念ながら一般には評価されにくい)

本α700の購入動機としては、従来使用していたα-7Digital
(2004年)が、長年のドラゴンボート競技撮影等の酷使により、
いつ壊れても不思議ではない状態になってきた為、
α700を予備・代替機として購入したのだ。

α-7Digital と、ほぼ同等のスペックや操作性という事で、
本機を購入対象としたのだが、3年という発売時期の差があっても、
実際の所、殆ど変わっておらず、目に見えるスペック差としては、
1/8000秒シャッターとISO6400が使える程度であった。

操作系はずいぶんと変更されているが、α-7 Digitalは、銀塩
名機α-7を良い意味でも悪い意味でも踏襲してしまっていたので、
むしろα700でデジタルに向け刷新されたのは良かった事だと思う。

まあでも、安心してαレンズが使える、まずまずの性能の機種で、
十分に名機α-7 Digitalの代替となりうるカメラだったと思っている。

ただ、前述のように過酷な撮影条件での発色等に不満がある為
原価償却(1枚3円の法則)終了後は、より新しいSONY機に既に
代替している。
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さて、最後に本機α700の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)

【基本・付加性能】★★★☆
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★★☆
【マニアック度 】★★☆
【エンジョイ度 】★★
【購入時コスパ 】★★★★
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値  】★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.0点

評価点はいずれも標準的、あまり特徴の無いカメラである。
実用一辺倒、業務用等で本領を発揮するカメラであると思う、
面白味が無く、やや重い為、趣味撮影に持ち出す気にはなれない。

厳しい撮影条件での発色・描写力などをあまり気にする必要が
無いのであれば、安価で、そこそこ高性能ゆえに、コスパの良い
機種として現代でも十分に使用できる事は言うまでも無い。

次回シリーズ記事に続く。


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