本シリーズでは、所有している古いデジタル一眼レフについて、
発売時の時代背景を含めた評価を行っている。
第9回~第11回目までは、デジタル一眼「第三世代」の
2008~2009年の間に発売された機種について紹介している。
今回は、NIKON D300である。
![c0032138_17260040.jpg]()
なお「世代分類」は、オリジナルな区分であり一般的ではない。
また本機D300は正確には2007年末の発売であるので、分類的
には第二世代とも言えるが、後述の理由で第三世代としている。
この時代は一眼レフと言えばデジタルが当たり前となり、
銀塩一眼レフの新製品は無い。
2000年代初期の第一、第二世代から買い換えるユーザーも多く、
デジタル一眼レフとしての完成度が高まった時期だと思う。
ただ、完成度が高まったという事は、それ以上の発展の余地も、
あまり無くなった時代であったとも思う。
2008年にはオリンパスとパナソニックにより、新たな規格
「マイクロ・フォーサーズ」が発表され「ミラーレスの時代」
が、すぐそこにまで迫ってきていた。
電子技術やデジタル技術の進歩は極めて速く、PCや携帯等の
世界で、その事は十分に承知しているとは思うが、カメラも
例外では無い。
銀塩一眼レフは数十年かけて緩やかに進化したが、AF一眼の
時代となってからは僅か20年で、その市場は消滅してしまった。
デジタル一眼の初登場は実験的な機種を含めると微妙であるが、
およそ1998~1999年頃であろう、すると、このデジタル一眼の
分野も、この時代(2008年)で10年だ。
電子・デジタル技術の進化の加速を考えると、既にピークに
到達してしまっていたようにも感じる。
さて、そういった感じで、この時代「第三世代」の機種は、
どれも完成度が上がって来ていて実用的だ。
そういう意味で、本機D300は少しだけ他に先駆けて「第三世代」
に突入したカメラであると思う。
以降、本機D300と装着レンズ AiAF マイクロニッコール
60mm/f2.8D (ミラーレス・マニアックス第57回記事)で
撮影した写真を交えながら、本機をとりまく歴史や性能評価を
していこう。
![c0032138_17260124.jpg]()
まず、本機D300の出自である。
ニコンのD三桁のモデルは、ハイアマチュアをターゲットとした
カメラであり、Dヒト桁機のサブカメラとしても良く使われる
ポジションのシリーズである。
D三桁シリーズだが、
最初のD100は、デジタル一眼黎明期(2002年)のカメラであり、
まだ実用的な性能には達してはいなかった。
続くD200は2005年の発売で、私が定義する第一世代の機種だ。
が、実用性は高いと思われる機体であり、前年に発売された
D70と、このD200で、ニコン党一般ユーザーの人気を分け合い、
デジタル一眼の普及に尽力したと思う。
こうした状況の中、本機D300はD200の後継機として2007年末の
発売である。そしてハイエンド機D3との同時期販売であり
D三桁機がDヒト桁機のサブ機、というポジションが明確だ。
本機のスペックについては後述する。
![c0032138_17260126.jpg]()
それにしても、デジタル機器の進歩は速いと前述したが、
このモデルチェンジの早さはどうだ・・
ちょっと長くなるが、歴史を振り返ってみよう。
まずは銀塩一眼の時代、ニコンFヒト桁機のモデルチェンジの
間隔は約10年毎と言われていたが、それも早まって行き、
後期には、およそ8年間隔で発売された。
F(1959年)→F2(1971年)→F3(1980年)→F4(1988年)
→F5(1996年)→F6(2004年)
本機D300に相当するのは、Fヒトケタのフラッグシップ機では
なく、サブ機(つまりハイアマチュア向け高級機)であろう。
ニコンMF時代のサブ機はFM/FE/FAシリーズであろうか。
そのクラスであると、モデルチェンジのペースは
FM(1977)→FM2(1982)
FE(1978)→FE2(1983)/FA(1983)
のように、およそ5年間隔であった。
(なお、FEとFMシリーズを統合したFM3Aは、2001年発売と
かなりの年月が流れていた。この理由は1990年代後半に
第一次中古カメラブームがあって、FE2/FM2は中古市場で
大人気であったから後継機を作ったのであろう)
で、AF時代のニコンサブ機をあげれば、
F801(1988)→F90(1992)→F90X(1994)→F100(1998)
という感じで、こちらはおよそ4年間隔の発売だ。
まあ、これらが銀塩時代の普通の時間間隔(/感覚)である。
![c0032138_17260181.jpg]()
ところがデジタル一眼ではどうだ、
D300の後継機のD300Sは2年後の2009年だ。
しかし、その間の2008年にD700というフルサイズ(FX)の
D三桁機が別系統として派生した。その後4年して2012年に
D800/EとD600(すぐD610に改良された)、さらに2年後の
2014年にはD810とD750が発売され、DXフォーマットでは、
2016年にD500が発売された(これはD5のサブ機という立場だ)
加えて、もうD三桁では型番が不足してきたからか、
D四桁シリーズが2009年頃から追加された。
APS-C(DX)でのサブ機相当高級機はD7000番シリーズであり、
D7000(2010年)→D7100(2013年)→D7200(2015年)
→D7500(2017年)という流れである。
毎年のように様々なモデルが出ていて、ここまで機種が多いと、
正直私も、型番と、そのだいたいのランクは知っていても、
それぞれの機種の正確なスペックまでは覚えていない・・
と言うか、もはや細かいスペックの差の意味があるのだろうか?
また、ここまで多数のラインナップを展開する必要があるの
だろうか?とも思ってしまう。
![c0032138_17260101.jpg]()
ミラーレス機登場後の2010年代、デジタル一眼レフ市場は
右肩下がりであり、出荷台数は減少していると聞く。
デジタル一眼レフの新規購入層には、最新型のモデルでないと
受け入れられないのかも知れないが、昔から一眼をやっている
中上級者層は、このようなごちゃごちゃした新モデルは、むしろ
「年々古くなってしまう」という危惧からか、歓迎されず、
Dヒト桁とかD三桁(FX)あるいは他社製の高級機のみに興味が
集中してしまっている模様だ。
しかし2010年代の現行最高機種であってもMarkいくつやらと、
モデルチェンジが速く、結局、中上級者層が考える
「長く使えるカメラ」というのが現在では見当たらなくなって
しまっている。
![c0032138_17255973.jpg]()
余談だが、2000年代後半のデジタルコンパクト機市場は
現在の一眼レフ以上にモデルチェンジが速い時期で、下手を
すれば数ヶ月で新製品が出て、旧機種がすぐに見劣りしていた。
ベテラン層は、それを嫌い、例えばGR Digitalを選択した。
(デジタル・コンパクト・クラッシックス第2回記事)
GRDは2005年の発売以来、必ず2年に1度、次世代機に変わる
事が暗黙の了解だった。
つまり新製品ラッシュに煩わされず、2年間は安心して使えたし、
2年毎の新製品にしても前モデルとの大きな差異は無く、
予算に応じて、最新型にするか旧機種を中古で買うか等の
選択が自在であった。
これは、ユーザー側がデジカメの仕様上の寿命をコントロール
できているという事であり、安心感があった。
そりゃあ、せっかく高価な新品カメラを買ったのに、翌月に
いきなり新製品が出てきたら正直たまったものでは無い。
コンパクト機の市場は数年後、2010年代に入ってからスマホや
ミラーレスの普及により、ほぼ終焉してしまう。
すなわち2000年代後半ではコンパクト機の市場が飽和しており、
その為に多種多様の新機種を発売してユーザーの購買意欲を
喚起しようとしていた訳だ。
現代ではコンパクト機はハイエンド機や特徴的な機種のみだ、
趣味的な要素が強いとも言える。
2010年代のデジタル一眼もそんな感じで市場が飽和している。
加えて、デジタル一眼レフに置き換わるように台頭してきた
ミラーレス機も、発売7年程を経過した2010年代後半には
すでに市場は飽和、機種名の型番も早くも8や9となっていて
毎年新型機が出ている状況を示している。
![c0032138_17260038.jpg]()
このような飽和市場においては、旧機種の在庫処分価格や
中古価格の下落は甚だしいものがある。
数年前の2~3番古いミラーレス機は、とてつもなく安価な
中古相場で、極めてコスパが高く購入もしやすい。
デジタル一眼レフの場合は、2010年以前の「第三世代」か、
それ以前の時代の一眼レフの中古相場は非常に安価だ。
ただ「第三世代」のデジタル一眼は完成度が高い、と前述した、
すなわち「現行世代」(2010年以降)の一眼レフと比べても
高感度性能、動画性能、ローパスレス以外は大差が無いとも
言える。
高感度(ISO25600以上)やローパスレスの必要性が無ければ、
「第三世代」の一眼の中古は最もお買い得かも知れない。
![c0032138_17260090.jpg]()
ずいぶんと遠回りしたが、やっと本機D300の話だ。
基本スペックを記載する。
撮像素子は、DXフォーマット(APS-C)1230万画素CMOS
後年のD7000シリーズのようなDXをさらにクロップする機能は
無い。
本機ではNIKONで初めてダスト除去(ゴミ取り)機能がついた。
勿論NIKON機なのでボディ内手ブレ補正は無い。
記録メディアはCF、現代では入手がしずらいが、まあこの時代
の高級機なのでやむを得ない。(SDよりCFの方が書き込みが
速かったので連写性能が有利となる)
ISO感度は拡張しても100~6400
2010年代以降の高感度機が普通になった状況に比較すると、
この時代のカメラ性能の不満な点だ。
ただ、高感度が必要な状況というのも限られているとは思う
ので、昼間使う等では何ら問題はない。
ただしISO AUTOが別メニューで、ISO変更ボタンとの操作系に
矛盾がある。
内蔵フラッシュが搭載されている。
まあ、最高級機ではないので当然であろう。
しかし、銀塩一眼時代から、最高級機ではフラッシュ非内蔵、
それ以外では内蔵、と、そんな風に暗黙的な住み分けがなされて
いるようだが、最高級機でもフラッシュは内蔵されていた方が
勿論便利である、何故そんな事になっているのだろうか?
フラッグシップでフラッシュが内蔵されている機種は、銀塩AF
時代のMINOLTA α-9とPENTAX Z-1位か?
フラッシュを内蔵する事で光学ファインダーの性能が低下する
事を懸念する向きもあるのかもしれないが、ちなみにα-9では、
ファインダーの性能は一切犠牲にしておらず、それどころか、
銀塩AF一眼レフの中で最高性能を誇るファインダーを持つ
機種がα-9である。要は設計や仕様次第だろう。
![c0032138_17260088.jpg]()
D300の話に戻るが、ファインダー視野率は100%
MF時の見えはあまり良く無い。
測距点スーパーインポーズ機能や格子線表示機能がAF一眼や
デジタル一眼に搭載されるようになってから、
電子化スクリーンでのピントの山は確実に掴みづらくなり、
銀塩MF一眼に比べて、MF性能は、かなり悪化している。
これはNIKON機だけの問題ではなく他社も同様だ。
AFは51点、測距点の分布は広くて良いが、これだけ測距点数が
多いとその選択で操作系が悪化する、よって、11点に変更可能
であるのだが、全体的にAFモードの仕組みが複雑すぎる。
被写界深度がある程度深い通常のレンズでAFでカメラまかせで
ピントを合わせる場合ならば、こうしたインテリジェントなAFも
良いかも知れないが、複雑な設定操作が増えるのが難点だ。
さらに言えば、被写界深度の浅い大口径レンズやマクロレンズ
で精密なピント合わせをするには、かえって、こうした複雑な
AFシステムは向かない。
そうしたレンズ群を使うケースでは、私は、AFは中央1点で
仮ロックしておき、MFと切り替えて使用している。
なお、本機D300の操作性・操作系に関しては問題点が多々ある、
そのあたりは後述する。
![c0032138_17260063.jpg]()
使用可能レンズは、ニコンAiAF系(G含む)は全て。MFのAi系
(非CPU)レンズでも、手動情報入力で使用可能であり、かつ
その設定を9本まで記憶できる。
なお、Aiレンズは本来全てのニコンデジタル一眼で使用可能な
筈だが、高級機以上の機種でしか使えないようになっている。
これは高級一眼と普及一眼を差別化する為の機能制限だろうが、
このように性能制限をかける事は個人的には好きでは無い。
また、Ai絞り機構の無い、プリセット絞り等の特殊なレンズ
では、露出がかなり不安定になる弱点を持つ。
![c0032138_17261177.jpg]()
最高シャッター速度は1/8000秒
連写速度は高速時(CH)秒6コマだが、バッテリーパックを追加
して、かつハイパワーバッテリーを用いると秒8コマまで上がる。
ただ、僅かな性能向上の為に、コスト増、重量増は面白く無い。
現在であれば、D300用バッテリーパックの中古は1万円以下と
安価だが、それを装着する気は無い。
(ちなみに、バッテリー自体は、多くのD三桁,D二桁機で共通で
使え、この点は好ましい)
NIKON機で高速連写が必要であれば、本機より4年前の古い機種
だが、D2H(第1回記事)を使う方が快適だ。
(まあ、D2Hも様々な問題点を持つ機種だが)
なお、低速連続撮影時は秒あたりのコマ数が設定可能だ。
連続撮影枚数は最大100コマだが、設定で任意の枚数に減らす
事ができる。ただ、その事が実用的に意味があるかは良く
わからない、あるとすれば、物体の事象・運動等を毎回、
同一枚数で連写するような学術的用途位だろうか。
それと最大100コマは特定の条件でのみ可能で、通常では
そこまでの連続撮影枚数は得られず、46枚程度となる。
![c0032138_17261129.jpg]()
連写全般での問題だが、連写時のシャッター音がうるさい。
シャッター音は、前述の高速連写機D2Hと極めて似ている、
その機種も連写音がうるさくて、結婚式や音楽ライブの撮影で
ひんしゅくを買った事がある。
恐らく本機D300もD2Hと同系統のシャッターユニットを採用して
いるのであろう。シャッター音質だが、D2Hの周波数特性は高域
まで伸びてて、D300はそこまで高域が出ていない。ボディへの
搭載構造の差異であろう。多少は耳障りな音域が緩和されて
いるが、音量自体が大きいので依然うるさい事には変わらない。
![c0032138_17261280.jpg]()
余談だが、銀塩名機NIKON F4では、
CH(高速連写)、CL(低速連写)の他に、CS(静音連写)
というモードがあった。
これは、当時のカメラは当然フィルム使用であり、F4、F5や
他社の高速連写機では、連写時のシャッター音に加えて、
フィルムも速い速度で巻き上げなければならなかったので、
その巻上げ音が、キュインキュインと極めてうるさかった。
F4のCS静音モードでは連写中のフィルムの巻上げ速度を落とす。
すると、カシャ、ズズズという音となり、ズズズという部分が、
超低速巻上げの音だ。
これがシャッター音よりも小さい音量なのは良いのだが、
肝心のシャッター音が、この機能を用いても小さくならない。
NIKON F4のシャッターは縦走りでバランサーを搭載している等
複雑な構造で、それ自体は先進的な技術だったかも知れないが、
シャッター音の音量、音質に対する配慮は無い。
そもそも、CSモードでの、ズズズ、という音が美しく無い。
私は元音響技術者なので、絶対音感というものとは異なるが、
なんらかの音を聞くと、その音響的な特性がだいたいわかる。
NIKON機も銀塩時代の物から何十台も使ってきたが、
シャッターの「音」に拘った、あるいは配慮したカメラは
私の所有している機種の中では1台も無かった。
![c0032138_17261086.jpg]()
なお、CANONにおいては銀塩AF一眼時代の1989年に発売された
EOS-1/HSが、非常にシャッター音がうるさかった。
このシャッター音は、サンプリング(=録音してデジタル化)
され、多くの携帯電話やスマホ内蔵カメラの擬似シャッター音
として使われている、そう、”シュッギュイーン”という、
アレである。
私も同機を所有していて、音量にはちょっと閉口したが、
音質自体は、格好良くて好みであった。
音が大きいとユーザーからの指摘があったのであろうか?、
CANONは続く銀塩EOSシリーズでは「静音化」に拘る機種の
開発を始める。
1991年のEOS100(QD)は「サイレントEOS」と呼ばれて
その静粛性をウリとしていた。
同機も私は所有していて、EOS-1HSと比較して、その静かさに
驚いた記憶がある。EOS100は名機だったとは思うが、
残念ながら銀塩末期に譲渡して現在は所有していない。
続くEOS 5QD(1992年)では、さらに静音化が進んだ。
CANONのこのコンセプトは現代に至るまで継承されていて、
EOS-1Dシリーズ等にも「サイレントモード」が搭載されている。
現代のミラーレス機では電子シャッターを使用すれば完全な
無音撮影が可能なのだが、電子シャッターは、動体が歪む、
ディスプレイの走査線が写る等、他の問題が発生するので
使用には制限がある。
まあ、完全に無音である必要は無いが、本D300においても、
もう少しシャッター音への配慮が必要であろうと思う。
![c0032138_17261050.jpg]()
さて、本D300の全般的な弱点である。
まずは、機能が多すぎて、かつ整理しきれておらず、この点、
機能を理解する事は勿論、撮影時の操作性・操作系にも悪影響
が出てしまっている。
取扱説明書を熟読すれば良い、と思うかもしれないが、
本機D300の説明書は456ページもあり、もはや「本」である。
そして、多くの機能が体系だてた分類が出来ていない事と同様、
取扱説明書自体も、だらだらと各機能を解説しているだけで
あり、とても読む気にはならない。
しかし我慢して読んだとする、けど、肝心な事(例外条件等)
が書かれていなかったりする。
使い難い操作系の例を上げる。
普通、ニコン機では「簡易露出補正」をONする事により、
A(絞り優先)露出モードにおいては、前ダイヤル(これを
サブコマンドダイヤルと呼ぶ、この命名はCANONとは正反対だ)
で絞り値を設定し、後ダイヤル(メインコマンドダイヤル)で
露出補正を決定する(これはデフォルトでは無い)
そして、撮影直後に、これらの両ダイヤルで絞り値や露出補正
を設定しようとしても、全く動作しないのだ。
半押しすれば各ダイヤルは操作が可能になるのだが、
説明書の「半押しタイマー」等の項目を読んでも詳しい事は
書かれていない。
原因は、すぐ後で気が付いた、
「撮影後の自動再生」(レビュー)機能をONにしていると、
その再生時に前後ダイヤルは表示写真を次に送る目的に使用
されてしまうのだ。結果、ファインダーを覗いたまま連続で
絞り値や露出補正を変更する操作が、この状態ではできない。
同様に、撮影後にメニューを表示して、そのまま放置しても、
前後ダイヤルはメニューの選択操作に使われているので、
絞りや露出補正設定が、半押しするまで動作しない。
この問題は本機に限らず、他社機等でも発生する場合もある。
が、自動再生のタイミングや2次元操作子と上手く連携させる
事で、あまり気にならない事が多い。
D300では、マルチコントローラー操作子があるが、
これをAF測距点選択とメニュー操作、画像選択専用として、
前後ダイヤルは、絞りと露出補正の目的に特化した方が
使いやすいであろう。
で、そもそもD300の背面モニターは、撮影画像表示とメニュー
表示のみにしか使われておらず、古い操作系だ。
他社機では、この時代以前から既に、背面モニターを様々な
GUIやコントロールパネル操作系として利用している。
操作系子が不足気味で、カメラ前部の2つのボタンを何かの
機能にアサインして、それと前後ダイヤルを併用しないと
目的の機能が呼び出せない等があり、極めて煩雑だ。
だいたいFnに何の機能をアサインしたか等、機種毎にそれぞれ
覚えてはおけない。
また、カスタム機能の変更時、それぞれの初期設定がメニュー
上に出ておらず、説明書をいちいち開かないとわからない。
そもそも、増えすぎた新機能に独自の名称をつけるため、
一部のカスタム機能は、見ただけでは意味がわからない。
それを不用意にいじくって、あれ?と思った際に、初期設定が
なんだかわからない。
まあ、細かい事を言うときりが無いのだが、本機の操作系が
全般に問題がある事は確かだ。増えすぎた機能に対する操作系
の改良が全く追いついて無いと思われる。
![c0032138_17261181.jpg]()
あとニコン機は他社機と比べて、レンズ装着方向、絞り操作
方向、露出補正方向など全て逆で、独自性が強すぎる。
この理由には実は長い歴史あるのだが、他記事で書いた事も
あり、長くなるので割愛する。ともかく、逆なものが多いと
困るのだ。
例えば、露出補正スケール表示だ。右がマイナスという、
学校の数学の先生が見たら卒倒しそうな仕様がある。
私もここは非常に気持ちが悪いので、このD300から、
「露出補正スケールを逆にする」という機能がついたので
喜び勇んで、それをONにする。
ところが、露出補正ダイヤルの回転方向は今までと一緒なのだ、
この為、ダイヤルを回した方向と表示が動く方向が逆になる
という「もっと気持ち悪い状態」になった為、やむなく元の
ままに戻した。
結局、様々な機能を詰め込みすぎてしまった機種だ、
新機能の開発には当然それを使い易くする「操作系」の改善が
必須であったのが、そこが未発達のままになってしまっている。
様々な新機能は、ビギナー層や買い替え層には簡単には
使いこなせないもので、その為、便利な新機能であっても、
初期設定では、ほぼ全てOFFとなっている。
456ページの説明書と首っ引きで新機能をそれぞれ理解して、
時間をかけて設定しないかぎり、何も使えないのだ。
様々な「フールプルーフ」(初心者の誤操作防止)機能が強い
事は、銀塩時代からNIKON機の特徴であり、それは中上級者層
からは「短所である」と評価されていた。
ソフト的のみならず、ハード的なロック機構も同様で、
例えば前述のNIKON F4では、撮影済みのフィルムを巻き上げる
だけなのに、都合4回のボタン・レバー操作が必要であった。
また、NIKON F3では露出補正を行うのに小さいロック解除の
ボタンを押しながらダイヤルを廻す必要があり面倒だった。
本機でも、メモリーカードを取り出すレバー操作が面倒だ。
なぜフールプルーフが強いかは、NIKON上級機をビギナー層や
保守的な層が買うからである。難しい機能が簡単に使えるとは
到底思えず、設計側も様々な安全対策をせざるを得ないのだ。
これがNIKON機全般での大きな問題点に繋がってきている。
---
さて、D300に対応する銀塩名機であるが、
AF一眼のF100あたりが相応だと思うが、生憎所有していない。
代替として、MFのNIKON FE2(1983年)をあげてみよう。
![c0032138_17255023.jpg]()
このカメラで書きたい事は沢山あるが、残念ながら記事文字数
が限界だ、今回は写真のみの紹介に留めておくが、とても優秀
なサブ機であり、銀塩末期まで中古の人気が高かった。
私の1990年代の中古購入価格は34000円、後にピーク時で
6万円と、むしろ本機D300より高額で取引されていた。
本機D300の価格だが、2015年頃に中古で約26000円であった、
非常に安価であり、購入時点でのコスパは申し分ない。
ちなみに発売時の市場価格は23万円程であった。
![c0032138_17261197.jpg]()
最後にNIKON D300の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★★★
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★★
【マニアック度 】★☆
【エンジョイ度 】★☆
【購入時コスパ 】★★★★☆
【完成度(当時)】★★★★
【歴史的価値 】★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.8点
購入時期が遅く、安価だったので、コスパの項目が高く評価
された。
基本性能が高く完成度も高い優等生的なカメラだ。
ただ、正直、面白味の無いカメラである、実用一辺倒、業務用、
そんな感じであろうか、そして機能肥大で使い難い欠点を持つ。
重量級で、趣味撮影に持ち出しても、あまり楽しめない。
次回シリーズ記事に続く。
発売時の時代背景を含めた評価を行っている。
第9回~第11回目までは、デジタル一眼「第三世代」の
2008~2009年の間に発売された機種について紹介している。
今回は、NIKON D300である。

また本機D300は正確には2007年末の発売であるので、分類的
には第二世代とも言えるが、後述の理由で第三世代としている。
この時代は一眼レフと言えばデジタルが当たり前となり、
銀塩一眼レフの新製品は無い。
2000年代初期の第一、第二世代から買い換えるユーザーも多く、
デジタル一眼レフとしての完成度が高まった時期だと思う。
ただ、完成度が高まったという事は、それ以上の発展の余地も、
あまり無くなった時代であったとも思う。
2008年にはオリンパスとパナソニックにより、新たな規格
「マイクロ・フォーサーズ」が発表され「ミラーレスの時代」
が、すぐそこにまで迫ってきていた。
電子技術やデジタル技術の進歩は極めて速く、PCや携帯等の
世界で、その事は十分に承知しているとは思うが、カメラも
例外では無い。
銀塩一眼レフは数十年かけて緩やかに進化したが、AF一眼の
時代となってからは僅か20年で、その市場は消滅してしまった。
デジタル一眼の初登場は実験的な機種を含めると微妙であるが、
およそ1998~1999年頃であろう、すると、このデジタル一眼の
分野も、この時代(2008年)で10年だ。
電子・デジタル技術の進化の加速を考えると、既にピークに
到達してしまっていたようにも感じる。
さて、そういった感じで、この時代「第三世代」の機種は、
どれも完成度が上がって来ていて実用的だ。
そういう意味で、本機D300は少しだけ他に先駆けて「第三世代」
に突入したカメラであると思う。
以降、本機D300と装着レンズ AiAF マイクロニッコール
60mm/f2.8D (ミラーレス・マニアックス第57回記事)で
撮影した写真を交えながら、本機をとりまく歴史や性能評価を
していこう。

ニコンのD三桁のモデルは、ハイアマチュアをターゲットとした
カメラであり、Dヒト桁機のサブカメラとしても良く使われる
ポジションのシリーズである。
D三桁シリーズだが、
最初のD100は、デジタル一眼黎明期(2002年)のカメラであり、
まだ実用的な性能には達してはいなかった。
続くD200は2005年の発売で、私が定義する第一世代の機種だ。
が、実用性は高いと思われる機体であり、前年に発売された
D70と、このD200で、ニコン党一般ユーザーの人気を分け合い、
デジタル一眼の普及に尽力したと思う。
こうした状況の中、本機D300はD200の後継機として2007年末の
発売である。そしてハイエンド機D3との同時期販売であり
D三桁機がDヒト桁機のサブ機、というポジションが明確だ。
本機のスペックについては後述する。

このモデルチェンジの早さはどうだ・・
ちょっと長くなるが、歴史を振り返ってみよう。
まずは銀塩一眼の時代、ニコンFヒト桁機のモデルチェンジの
間隔は約10年毎と言われていたが、それも早まって行き、
後期には、およそ8年間隔で発売された。
F(1959年)→F2(1971年)→F3(1980年)→F4(1988年)
→F5(1996年)→F6(2004年)
本機D300に相当するのは、Fヒトケタのフラッグシップ機では
なく、サブ機(つまりハイアマチュア向け高級機)であろう。
ニコンMF時代のサブ機はFM/FE/FAシリーズであろうか。
そのクラスであると、モデルチェンジのペースは
FM(1977)→FM2(1982)
FE(1978)→FE2(1983)/FA(1983)
のように、およそ5年間隔であった。
(なお、FEとFMシリーズを統合したFM3Aは、2001年発売と
かなりの年月が流れていた。この理由は1990年代後半に
第一次中古カメラブームがあって、FE2/FM2は中古市場で
大人気であったから後継機を作ったのであろう)
で、AF時代のニコンサブ機をあげれば、
F801(1988)→F90(1992)→F90X(1994)→F100(1998)
という感じで、こちらはおよそ4年間隔の発売だ。
まあ、これらが銀塩時代の普通の時間間隔(/感覚)である。

D300の後継機のD300Sは2年後の2009年だ。
しかし、その間の2008年にD700というフルサイズ(FX)の
D三桁機が別系統として派生した。その後4年して2012年に
D800/EとD600(すぐD610に改良された)、さらに2年後の
2014年にはD810とD750が発売され、DXフォーマットでは、
2016年にD500が発売された(これはD5のサブ機という立場だ)
加えて、もうD三桁では型番が不足してきたからか、
D四桁シリーズが2009年頃から追加された。
APS-C(DX)でのサブ機相当高級機はD7000番シリーズであり、
D7000(2010年)→D7100(2013年)→D7200(2015年)
→D7500(2017年)という流れである。
毎年のように様々なモデルが出ていて、ここまで機種が多いと、
正直私も、型番と、そのだいたいのランクは知っていても、
それぞれの機種の正確なスペックまでは覚えていない・・
と言うか、もはや細かいスペックの差の意味があるのだろうか?
また、ここまで多数のラインナップを展開する必要があるの
だろうか?とも思ってしまう。

右肩下がりであり、出荷台数は減少していると聞く。
デジタル一眼レフの新規購入層には、最新型のモデルでないと
受け入れられないのかも知れないが、昔から一眼をやっている
中上級者層は、このようなごちゃごちゃした新モデルは、むしろ
「年々古くなってしまう」という危惧からか、歓迎されず、
Dヒト桁とかD三桁(FX)あるいは他社製の高級機のみに興味が
集中してしまっている模様だ。
しかし2010年代の現行最高機種であってもMarkいくつやらと、
モデルチェンジが速く、結局、中上級者層が考える
「長く使えるカメラ」というのが現在では見当たらなくなって
しまっている。

現在の一眼レフ以上にモデルチェンジが速い時期で、下手を
すれば数ヶ月で新製品が出て、旧機種がすぐに見劣りしていた。
ベテラン層は、それを嫌い、例えばGR Digitalを選択した。
(デジタル・コンパクト・クラッシックス第2回記事)
GRDは2005年の発売以来、必ず2年に1度、次世代機に変わる
事が暗黙の了解だった。
つまり新製品ラッシュに煩わされず、2年間は安心して使えたし、
2年毎の新製品にしても前モデルとの大きな差異は無く、
予算に応じて、最新型にするか旧機種を中古で買うか等の
選択が自在であった。
これは、ユーザー側がデジカメの仕様上の寿命をコントロール
できているという事であり、安心感があった。
そりゃあ、せっかく高価な新品カメラを買ったのに、翌月に
いきなり新製品が出てきたら正直たまったものでは無い。
コンパクト機の市場は数年後、2010年代に入ってからスマホや
ミラーレスの普及により、ほぼ終焉してしまう。
すなわち2000年代後半ではコンパクト機の市場が飽和しており、
その為に多種多様の新機種を発売してユーザーの購買意欲を
喚起しようとしていた訳だ。
現代ではコンパクト機はハイエンド機や特徴的な機種のみだ、
趣味的な要素が強いとも言える。
2010年代のデジタル一眼もそんな感じで市場が飽和している。
加えて、デジタル一眼レフに置き換わるように台頭してきた
ミラーレス機も、発売7年程を経過した2010年代後半には
すでに市場は飽和、機種名の型番も早くも8や9となっていて
毎年新型機が出ている状況を示している。

中古価格の下落は甚だしいものがある。
数年前の2~3番古いミラーレス機は、とてつもなく安価な
中古相場で、極めてコスパが高く購入もしやすい。
デジタル一眼レフの場合は、2010年以前の「第三世代」か、
それ以前の時代の一眼レフの中古相場は非常に安価だ。
ただ「第三世代」のデジタル一眼は完成度が高い、と前述した、
すなわち「現行世代」(2010年以降)の一眼レフと比べても
高感度性能、動画性能、ローパスレス以外は大差が無いとも
言える。
高感度(ISO25600以上)やローパスレスの必要性が無ければ、
「第三世代」の一眼の中古は最もお買い得かも知れない。

基本スペックを記載する。
撮像素子は、DXフォーマット(APS-C)1230万画素CMOS
後年のD7000シリーズのようなDXをさらにクロップする機能は
無い。
本機ではNIKONで初めてダスト除去(ゴミ取り)機能がついた。
勿論NIKON機なのでボディ内手ブレ補正は無い。
記録メディアはCF、現代では入手がしずらいが、まあこの時代
の高級機なのでやむを得ない。(SDよりCFの方が書き込みが
速かったので連写性能が有利となる)
ISO感度は拡張しても100~6400
2010年代以降の高感度機が普通になった状況に比較すると、
この時代のカメラ性能の不満な点だ。
ただ、高感度が必要な状況というのも限られているとは思う
ので、昼間使う等では何ら問題はない。
ただしISO AUTOが別メニューで、ISO変更ボタンとの操作系に
矛盾がある。
内蔵フラッシュが搭載されている。
まあ、最高級機ではないので当然であろう。
しかし、銀塩一眼時代から、最高級機ではフラッシュ非内蔵、
それ以外では内蔵、と、そんな風に暗黙的な住み分けがなされて
いるようだが、最高級機でもフラッシュは内蔵されていた方が
勿論便利である、何故そんな事になっているのだろうか?
フラッグシップでフラッシュが内蔵されている機種は、銀塩AF
時代のMINOLTA α-9とPENTAX Z-1位か?
フラッシュを内蔵する事で光学ファインダーの性能が低下する
事を懸念する向きもあるのかもしれないが、ちなみにα-9では、
ファインダーの性能は一切犠牲にしておらず、それどころか、
銀塩AF一眼レフの中で最高性能を誇るファインダーを持つ
機種がα-9である。要は設計や仕様次第だろう。

MF時の見えはあまり良く無い。
測距点スーパーインポーズ機能や格子線表示機能がAF一眼や
デジタル一眼に搭載されるようになってから、
電子化スクリーンでのピントの山は確実に掴みづらくなり、
銀塩MF一眼に比べて、MF性能は、かなり悪化している。
これはNIKON機だけの問題ではなく他社も同様だ。
AFは51点、測距点の分布は広くて良いが、これだけ測距点数が
多いとその選択で操作系が悪化する、よって、11点に変更可能
であるのだが、全体的にAFモードの仕組みが複雑すぎる。
被写界深度がある程度深い通常のレンズでAFでカメラまかせで
ピントを合わせる場合ならば、こうしたインテリジェントなAFも
良いかも知れないが、複雑な設定操作が増えるのが難点だ。
さらに言えば、被写界深度の浅い大口径レンズやマクロレンズ
で精密なピント合わせをするには、かえって、こうした複雑な
AFシステムは向かない。
そうしたレンズ群を使うケースでは、私は、AFは中央1点で
仮ロックしておき、MFと切り替えて使用している。
なお、本機D300の操作性・操作系に関しては問題点が多々ある、
そのあたりは後述する。

(非CPU)レンズでも、手動情報入力で使用可能であり、かつ
その設定を9本まで記憶できる。
なお、Aiレンズは本来全てのニコンデジタル一眼で使用可能な
筈だが、高級機以上の機種でしか使えないようになっている。
これは高級一眼と普及一眼を差別化する為の機能制限だろうが、
このように性能制限をかける事は個人的には好きでは無い。
また、Ai絞り機構の無い、プリセット絞り等の特殊なレンズ
では、露出がかなり不安定になる弱点を持つ。

連写速度は高速時(CH)秒6コマだが、バッテリーパックを追加
して、かつハイパワーバッテリーを用いると秒8コマまで上がる。
ただ、僅かな性能向上の為に、コスト増、重量増は面白く無い。
現在であれば、D300用バッテリーパックの中古は1万円以下と
安価だが、それを装着する気は無い。
(ちなみに、バッテリー自体は、多くのD三桁,D二桁機で共通で
使え、この点は好ましい)
NIKON機で高速連写が必要であれば、本機より4年前の古い機種
だが、D2H(第1回記事)を使う方が快適だ。
(まあ、D2Hも様々な問題点を持つ機種だが)
なお、低速連続撮影時は秒あたりのコマ数が設定可能だ。
連続撮影枚数は最大100コマだが、設定で任意の枚数に減らす
事ができる。ただ、その事が実用的に意味があるかは良く
わからない、あるとすれば、物体の事象・運動等を毎回、
同一枚数で連写するような学術的用途位だろうか。
それと最大100コマは特定の条件でのみ可能で、通常では
そこまでの連続撮影枚数は得られず、46枚程度となる。

シャッター音は、前述の高速連写機D2Hと極めて似ている、
その機種も連写音がうるさくて、結婚式や音楽ライブの撮影で
ひんしゅくを買った事がある。
恐らく本機D300もD2Hと同系統のシャッターユニットを採用して
いるのであろう。シャッター音質だが、D2Hの周波数特性は高域
まで伸びてて、D300はそこまで高域が出ていない。ボディへの
搭載構造の差異であろう。多少は耳障りな音域が緩和されて
いるが、音量自体が大きいので依然うるさい事には変わらない。

CH(高速連写)、CL(低速連写)の他に、CS(静音連写)
というモードがあった。
これは、当時のカメラは当然フィルム使用であり、F4、F5や
他社の高速連写機では、連写時のシャッター音に加えて、
フィルムも速い速度で巻き上げなければならなかったので、
その巻上げ音が、キュインキュインと極めてうるさかった。
F4のCS静音モードでは連写中のフィルムの巻上げ速度を落とす。
すると、カシャ、ズズズという音となり、ズズズという部分が、
超低速巻上げの音だ。
これがシャッター音よりも小さい音量なのは良いのだが、
肝心のシャッター音が、この機能を用いても小さくならない。
NIKON F4のシャッターは縦走りでバランサーを搭載している等
複雑な構造で、それ自体は先進的な技術だったかも知れないが、
シャッター音の音量、音質に対する配慮は無い。
そもそも、CSモードでの、ズズズ、という音が美しく無い。
私は元音響技術者なので、絶対音感というものとは異なるが、
なんらかの音を聞くと、その音響的な特性がだいたいわかる。
NIKON機も銀塩時代の物から何十台も使ってきたが、
シャッターの「音」に拘った、あるいは配慮したカメラは
私の所有している機種の中では1台も無かった。

EOS-1/HSが、非常にシャッター音がうるさかった。
このシャッター音は、サンプリング(=録音してデジタル化)
され、多くの携帯電話やスマホ内蔵カメラの擬似シャッター音
として使われている、そう、”シュッギュイーン”という、
アレである。
私も同機を所有していて、音量にはちょっと閉口したが、
音質自体は、格好良くて好みであった。
音が大きいとユーザーからの指摘があったのであろうか?、
CANONは続く銀塩EOSシリーズでは「静音化」に拘る機種の
開発を始める。
1991年のEOS100(QD)は「サイレントEOS」と呼ばれて
その静粛性をウリとしていた。
同機も私は所有していて、EOS-1HSと比較して、その静かさに
驚いた記憶がある。EOS100は名機だったとは思うが、
残念ながら銀塩末期に譲渡して現在は所有していない。
続くEOS 5QD(1992年)では、さらに静音化が進んだ。
CANONのこのコンセプトは現代に至るまで継承されていて、
EOS-1Dシリーズ等にも「サイレントモード」が搭載されている。
現代のミラーレス機では電子シャッターを使用すれば完全な
無音撮影が可能なのだが、電子シャッターは、動体が歪む、
ディスプレイの走査線が写る等、他の問題が発生するので
使用には制限がある。
まあ、完全に無音である必要は無いが、本D300においても、
もう少しシャッター音への配慮が必要であろうと思う。

まずは、機能が多すぎて、かつ整理しきれておらず、この点、
機能を理解する事は勿論、撮影時の操作性・操作系にも悪影響
が出てしまっている。
取扱説明書を熟読すれば良い、と思うかもしれないが、
本機D300の説明書は456ページもあり、もはや「本」である。
そして、多くの機能が体系だてた分類が出来ていない事と同様、
取扱説明書自体も、だらだらと各機能を解説しているだけで
あり、とても読む気にはならない。
しかし我慢して読んだとする、けど、肝心な事(例外条件等)
が書かれていなかったりする。
使い難い操作系の例を上げる。
普通、ニコン機では「簡易露出補正」をONする事により、
A(絞り優先)露出モードにおいては、前ダイヤル(これを
サブコマンドダイヤルと呼ぶ、この命名はCANONとは正反対だ)
で絞り値を設定し、後ダイヤル(メインコマンドダイヤル)で
露出補正を決定する(これはデフォルトでは無い)
そして、撮影直後に、これらの両ダイヤルで絞り値や露出補正
を設定しようとしても、全く動作しないのだ。
半押しすれば各ダイヤルは操作が可能になるのだが、
説明書の「半押しタイマー」等の項目を読んでも詳しい事は
書かれていない。
原因は、すぐ後で気が付いた、
「撮影後の自動再生」(レビュー)機能をONにしていると、
その再生時に前後ダイヤルは表示写真を次に送る目的に使用
されてしまうのだ。結果、ファインダーを覗いたまま連続で
絞り値や露出補正を変更する操作が、この状態ではできない。
同様に、撮影後にメニューを表示して、そのまま放置しても、
前後ダイヤルはメニューの選択操作に使われているので、
絞りや露出補正設定が、半押しするまで動作しない。
この問題は本機に限らず、他社機等でも発生する場合もある。
が、自動再生のタイミングや2次元操作子と上手く連携させる
事で、あまり気にならない事が多い。
D300では、マルチコントローラー操作子があるが、
これをAF測距点選択とメニュー操作、画像選択専用として、
前後ダイヤルは、絞りと露出補正の目的に特化した方が
使いやすいであろう。
で、そもそもD300の背面モニターは、撮影画像表示とメニュー
表示のみにしか使われておらず、古い操作系だ。
他社機では、この時代以前から既に、背面モニターを様々な
GUIやコントロールパネル操作系として利用している。
操作系子が不足気味で、カメラ前部の2つのボタンを何かの
機能にアサインして、それと前後ダイヤルを併用しないと
目的の機能が呼び出せない等があり、極めて煩雑だ。
だいたいFnに何の機能をアサインしたか等、機種毎にそれぞれ
覚えてはおけない。
また、カスタム機能の変更時、それぞれの初期設定がメニュー
上に出ておらず、説明書をいちいち開かないとわからない。
そもそも、増えすぎた新機能に独自の名称をつけるため、
一部のカスタム機能は、見ただけでは意味がわからない。
それを不用意にいじくって、あれ?と思った際に、初期設定が
なんだかわからない。
まあ、細かい事を言うときりが無いのだが、本機の操作系が
全般に問題がある事は確かだ。増えすぎた機能に対する操作系
の改良が全く追いついて無いと思われる。

方向、露出補正方向など全て逆で、独自性が強すぎる。
この理由には実は長い歴史あるのだが、他記事で書いた事も
あり、長くなるので割愛する。ともかく、逆なものが多いと
困るのだ。
例えば、露出補正スケール表示だ。右がマイナスという、
学校の数学の先生が見たら卒倒しそうな仕様がある。
私もここは非常に気持ちが悪いので、このD300から、
「露出補正スケールを逆にする」という機能がついたので
喜び勇んで、それをONにする。
ところが、露出補正ダイヤルの回転方向は今までと一緒なのだ、
この為、ダイヤルを回した方向と表示が動く方向が逆になる
という「もっと気持ち悪い状態」になった為、やむなく元の
ままに戻した。
結局、様々な機能を詰め込みすぎてしまった機種だ、
新機能の開発には当然それを使い易くする「操作系」の改善が
必須であったのが、そこが未発達のままになってしまっている。
様々な新機能は、ビギナー層や買い替え層には簡単には
使いこなせないもので、その為、便利な新機能であっても、
初期設定では、ほぼ全てOFFとなっている。
456ページの説明書と首っ引きで新機能をそれぞれ理解して、
時間をかけて設定しないかぎり、何も使えないのだ。
様々な「フールプルーフ」(初心者の誤操作防止)機能が強い
事は、銀塩時代からNIKON機の特徴であり、それは中上級者層
からは「短所である」と評価されていた。
ソフト的のみならず、ハード的なロック機構も同様で、
例えば前述のNIKON F4では、撮影済みのフィルムを巻き上げる
だけなのに、都合4回のボタン・レバー操作が必要であった。
また、NIKON F3では露出補正を行うのに小さいロック解除の
ボタンを押しながらダイヤルを廻す必要があり面倒だった。
本機でも、メモリーカードを取り出すレバー操作が面倒だ。
なぜフールプルーフが強いかは、NIKON上級機をビギナー層や
保守的な層が買うからである。難しい機能が簡単に使えるとは
到底思えず、設計側も様々な安全対策をせざるを得ないのだ。
これがNIKON機全般での大きな問題点に繋がってきている。
---
さて、D300に対応する銀塩名機であるが、
AF一眼のF100あたりが相応だと思うが、生憎所有していない。
代替として、MFのNIKON FE2(1983年)をあげてみよう。

が限界だ、今回は写真のみの紹介に留めておくが、とても優秀
なサブ機であり、銀塩末期まで中古の人気が高かった。
私の1990年代の中古購入価格は34000円、後にピーク時で
6万円と、むしろ本機D300より高額で取引されていた。
本機D300の価格だが、2015年頃に中古で約26000円であった、
非常に安価であり、購入時点でのコスパは申し分ない。
ちなみに発売時の市場価格は23万円程であった。

(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★★★
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★★
【マニアック度 】★☆
【エンジョイ度 】★☆
【購入時コスパ 】★★★★☆
【完成度(当時)】★★★★
【歴史的価値 】★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.8点
購入時期が遅く、安価だったので、コスパの項目が高く評価
された。
基本性能が高く完成度も高い優等生的なカメラだ。
ただ、正直、面白味の無いカメラである、実用一辺倒、業務用、
そんな感じであろうか、そして機能肥大で使い難い欠点を持つ。
重量級で、趣味撮影に持ち出しても、あまり楽しめない。
次回シリーズ記事に続く。