コンパクト・デジタル・クラッシックスは、手持ちの古いコンパクト
機を順次紹介していくシリーズ記事。
今回第3回では、2007年~2009年発売の4機種を紹介する。
まずは、こちら。

NIKON Coolpix S50 (2007年)
非常にオーソドックスなコンパクト機である。
姉妹機にS50cと言うモデルがあり、それは無線LANを搭載して
いるが、その機能は私は不要なのでS50を選択した次第だ。

S50の基本スペックであるが、
センサーは1/2.5型CCD,700万画素。
レンズは38mm-114mm(相当)/f3.3-4.2
デジタルズームが最大4倍効く。
最短撮影距離(WD)は30cmで、マクロモード時は4cm
ISO感度は100~1600である。手ブレ補正が内蔵されている。
絞り値は制御できず、プログラム露出のみ。

と、ごく普通の性能である。
広角域に不足を感じるのは前回第2回記事で紹介した3機種
(F10, T7,Optio WP)と同様であり、本機の搭載レンズの
スペックもそれらに酷似している。
前回の3機種は2005年製であり、本S50の2007年までの間の
2年間にコンパクト機が進化したのは手ブレ補正機能の搭載位
であろうか? 他は殆ど変わっていない。
あるいは、この頃のコンパクト機は、その大半が、ある大手OEM
メーカーにおいて製造されていたと聞く。ニコン機も例外では無い
であろう。いずれも似通ったスペックのカメラばかりになって、
ブランド(メーカー)のロコ名だけが違うという状況であった。
この時代になると、携帯電話に搭載されたカメラも
300~500万画素級となってくる(スマホはまだ普及していない)
が、センサーサイズが極めて小さい携帯電話カメラでは画素数が
上がっても、レンズ性能が追いついておらず、
(ミラーレス・マニアックス第57回記事参照)
画素ピッチが小さい事からのDレンジの狭さもあって、携帯カメラ
の高画素化は少々無理があった。
なので、まあ、この時代であれば、まだコンパクト機の方が
画質的には有利であったのだが・・
実のところ本S50のような1/2.5型センサー機では、レンズ性能
(解像力)を考えると、だいたい300万画素位までで頭打ちして
しまう、それ以上画素数を増やしても(本機は約700万画素)
レンズが追いついていないのだ。

さて、本機の長所であるが、
まずはスタイリッシュなデザインにあるだろう。
思うに、私が所有しているコンパクト機は、実用一辺倒の物と
デザインを優先したものに見事に分かれている。
・・という事は、どちらかの要素が無いと買わない、と言えるかも
知れない。自分でも気がついていなかったが、そんな感じだ。
続く長所だが・・残念ながらあまり見当たらない.。
あえて言うならば、この時代のニコン・コンパクト機には、
まだカメラとしての操作系が残っていた。
本S50は、この手のコンパクト機にしては、そこそこ優れていて、
写真を撮るという事について過不足無い操作系となっている。
この時代の、と書いたのは、実は次回第4回記事で紹介予定の
数年後のニコン機は、およそ写真を撮る道具である「カメラ」と
しての適切な操作系とはかけ離れてしまい、迷走してしまって
いたからだ。
その理由は、この時代の後に訪れたスマホの普及から、
その操作性(スワイプなど)が流行した事で、それをカメラに
取り入れようとして見事に失敗したケースである(汗)
あと、本S50搭載の変わった機能としては、BSS(ベスト・ショット
セレクター)がある、これをONにすると最大10コマ連写して、
その中から最も良く撮れているものを選んでくれる。
(注:原理不明。ブレが少ないという検出であろうか?)
ただ、原理が記載されていないので不安であるし(カメラが勝手に
私が気に入らないショットを選ぶリスクも多々ある。ブレ易い状況で
あれば、むしろ手ブレを逆用した写真を撮りたい場合もあるだろう)
少々お仕着せがましい機能でもあるので、勿論使わないようにして
いるが・・

弱点だが、まずシャッター半押しの反応が鈍く、そこから全押し
してもピントが合っておらず切れない事が頻発する。
手ブレ補正等で内蔵CPUの処理が追いついていないのか?
それと、平凡すぎるスペックがある。前回記事での2005年発売の
カメラ群と、手ブレ補正以外の点で進化しているところが何も無い。
無難にまとめ過ぎ、というか、何かしらの冒険的な新機能が
入っていても良かったと思う。
ちなみに、この年2007年発売のコンパクト機で人気があったもの
(例:CANON IXY910IS等)の多くには、広角端28mmのズーム
が搭載され始めている。
本機の購入価格だが、2008年頃に中古で12000円程であった。
で、このあたりから後、コンパクト機は暗黒時代に入ってくる、
新製品には魅力的なスペックのものが無く、
市場は、広がり始めたスマホや、ようやく一般に手が届くように
なったデジタル一眼レフに興味が集中していく。
(注:この時点では、ミラーレス機はまだ発売されていない)
余談だが、2000年代中頃までは、初級ユーザーはコンパクト
デジタルカメラの事を「コンデジ」と呼ぶ事が多かった。
対して、デジタル一眼レフは「ガンデジ」又は「デジイチ」である、
勿論どちらも現在は死語となっているのだが、これらの俗称を
どのように使ったのか?というと・・
初級者「ガンデジいいな~、オレなんかまだコンデジだもんね」
という感じであった。
つまり、どこか自虐的というか、いじけたり捻くれた要素が
ある事が大半だった。
と言うのも、2005年頃までのデジタル一眼レフは高価であり
ビギナーカメラマンが簡単に手を出せる代物ではなかった。
対して、コンパクト機は、第1~2回記事を見て貰えれば
わかると思うが、2005年位までの物の性能はたいした事は無いし、
弱点を回避しながらビギナーが使いこなせる物でも無かった。
だが、本記事の時代の2008年前後となると、デジタル一眼レフは
初級ユーザーにも手が届く価格となっていく、銀塩時代のAF一眼
より、むしろ安価であった位だ。
そうなるとコンパクト機で我慢していたビギナー層もデジタル
一眼レフを購入できるようになり、もう「羨ましい」とか
逆に蔑んだりする気持ちは薄れてしまい、誰も「コンデジ」やら
「ガンデジ」と言う事は無くなった、つまりこれらは死語となった。
ちなみに、本ブログは2005年から続けているが、当時のこのような
俗称が、そういうユーザー層の屈折した気持ちがある事がわかって
私は嫌いであった為、コンデジやガンデジ等と言う書き方をした
事は一度も無い。
さて、余談が長くなったが、そういう時代背景の中で、OEM主体で
個性も無く、スペックも皆大同小異であったコンパクト機に対して
の魅力も薄れ、私もコンパクト機を買わなくなっていくのだが・・
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という背景の中、次のカメラは、

PANASONIC LUMIX DMC-LX3 (2008年)
混迷しつつ均一化してしまった状況から少しだけブレークスルーが
あったコンパクト機だ、
LX3の基本スペックだが、
センサーは1/1.63型 CCD, 約1000万画素。
レンズは24mm-60mm(相当)f2.0-2.8 の大口径広角。
デジタルズームと画素補完型EXズームを合わせて最大
約430mm相当まで効く。勿論手ブレ補正が内蔵されている。
最短撮影距離(WD)は50cm、マクロモード時は広角端で1cm
ISO感度は80~3200(6400可)である。
露出モードはPASMが可能。勿論絞り値も制御できる。
また、ファームウェア・バージョンアップがあった。
バッテリーは、GR Digitalシリーズと共通で便利だ。
(これは恐らく意図的だろう)
仕様は勿論、操作性・操作系ともに良く考えられた設計で、
かなり優秀なコンパクト機である。

世の中はコンパクト機や携帯電話でも画素数競争の時代であったが、
どうせ画素数を上げてもレンズ性能が追いついていないので、
本機は画素数を控え目にしている模様だ。
その代わりセンサーサイズも大き目としてレンズも大口径広角だ。
そこに過剰な位のデジタルスーム性能を与え(注:これは
光学ズームの操作からシームレスにデジタルズーム域に入れる)
初級ユーザーが良く言う「望遠が足りない」に対応している。
これらはなかなか手慣れたコンセプトメイキングのように思える。
この時代(2008年)のPANASONICは、初のミラーレス(μ4/3)機
であるDMC-G1をリリースしている。
(ミラーレス・マニアックス記事でお馴染みの操作系に優れた名機)
で、同時期に操作系や基本仕様に優れたコンパクト機LX3も
発売していると言う事は、これは偶然では無いであろう、
つまり、当時のカメラ開発陣が優秀であったという事である。
この時代以前のPANASONICでは、一応デジタルカメラを
発売していたが目を引く製品は特に無かった。
という事は、G1やLX3を開発した優秀なエンジニアが、何処かから
入って来たのだろうと思われる。想像できる事は、この数年前に
大きな2つのカメラメーカーがカメラ事業から撤退しているのだ、
まあ、それ以上詳しくは書くまい、そういう事情があったのだと
推測される。

これはデジタルズーム使用、輪郭が固くなって画質劣化している。
だが、このLX3ではデジタルズームの意味が正しく用いられている。
この後、ミラーレス機DMC-G5の時代(2012年)になると、用語上
でのデジタルズームとデジタルテレコンの意味がそっくり反対に
なってしまっている。優秀な開発陣ならばこんな初歩的なミスを
犯す筈が無い。(その点についても、これ以上は書くまい)

LX3の弱点は特に無い、あえて言えば価格が高かった位か。
(発売時には65000円程度)
私は2010年頃に中古購入、外観の程度が若干悪かったので
価格は大幅に値引きしてもらい、9000円であった。
価格が安い高性能機として、過酷な環境であるドラゴンボートの
撮影でも良く使っている。2012年のびわこペーロン大会では
ゲリラ豪雨により、本機は背面モニターに浸水し白濁してしまう
程のダメージを受けたが、自然乾燥で完全復活した。
このタフさを頼りに、2016年の雨の堺泉北や日本選手権のドラゴン
大会でもLX3を持ち出している(かなりやばい状況だったが・・)
写りであるが、高彩度(ダイナミック)モードでは、被写体に
よっては色飽和に近い不自然な描写になってしまうが、まあ、
概ね良く写る。
一応ライカ銘のレンズ(バリオ・スミクロン)であるが、
まあ、これは「プラシーボ」のようなものであろう・・
(レンズにライカやツァイスの名前が入っていれば、まあ、
それなりに、ちゃんと写そうとするから良く写る・笑)

総合的には、基本設計の優秀さが光る名機である。
さて、この時代にこういうブレークスルー的な名機が出てきて
しまうと、当面、汎用撮影目的での他のコンパクト機は
いらなくなってしまう。
よほど凄いカメラが出るのを待つか、あるいは特殊用途機だ・・
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という事で、次のカメラは特殊用途のロングズーム機である。

FUJIFILM FinePix S200EXR (2009年)
本シリーズでは、初回に2004年発売のロングズーム機
DiMAGE A2を紹介している。それは28-200mm相当で、望遠域
が物足りなかった事と、古いカメラであり、長年「雨天専用機」として
酷使した為、代替機を準備する必要性が出てきた。
DiMAGE A2の所で書いたが、ロングズーム機は手動ズームで
無いと実用性が厳しい。しかし、既に手動ズーム機は市場には
少くなりつつあった。FUJI製の一部の機種が手動ズームであった為、
その中からの選択となった。
DiMAGE A2を使っていて感じたのは、そのカメラ位センサーサイズ
が大きく無いと(2/3型)描写力が厳しいだろう、という点であった。
だが、2009年当時の各社ロングズーム機は画素数競争ならぬ、
望遠競争であり、銀塩換算で600mmとか700mm相当とか、
そんな調子であった。
だが、そこには大きなカラクリがあった、各社ともセンサーサイズ
をどんどん小さくして、見かけ上の望遠画角を稼いでいたのだ。
センサーサイズを1/2.3型や1/2.5型にして、600mmや700mmの
望遠を実現したとしても、それだったら、もっと大きなセンサーで
300mmや400mmで撮った写真をトリミングした方が有利では
無いか? というのも、広く撮った方がブレにくくなる訳である。
メーカー側が勝手に進めている望遠競争や、そのトリックの仕掛け
が、どうもユーザーを騙しているようで腹立たしく思えてもいた。
結局、選択肢としては、1/1.6型センサー(注:DiMAGE A2の
2/3型より僅かに小さく上記 DMC-LX3と同等)を搭載した
FUJIFILM S200EXRしか当時はなかった訳だ。
S200EXRの基本スペックだが、
センサーは1/1.6型CCD, 約1200万画素。
レンズは約30-436mm(相当)f2.8-5.3
手ブレ補正が内蔵されている。

最短撮影距離(WD)は50cm、ただし望遠端では2.5mと長い。
マクロとスーパーマクロモードがあり、最短は広角端で1cm
ISO感度は100~12800である、露出モードはPASMが可能だが、
露出モードによってはAUTO ISOが出来ないという仕様ミスがある。
シャッター速度は、コンパクト機では珍しい1/4000秒まであるが
絞り値によってはその全速は使えない。
EVF内蔵、そして勿論手動ズーム機である。
これらのスペックは、まあ不満は無い、私が所望した通りであり、
この基本性能の高さが長所であると言えるであろう。
ただ、短所も多々ある。
まずは機体そのものが大きく重い事。重さ自体は900g弱と
まあ一眼レフ+望遠ズームより勿論軽いが、大きさは一眼レフ
本体より大きく、「どこが、コンパクト(な)カメラだ?」と
文句を言ってしまいそうなサイズだ。

レンズ横に、x14.3とデカデカと書いてあるのも気に入らない。
これは勿論ズーム比、すなわち望遠端436mm÷広角端30.5mm
が14.3倍である、と言う意味だ。ここまでならばギリギリセーフな
表現である。
が、多くのメーカーや店舗ではこれを 14.3倍ズームと大きく書き、
その意味を何もわかっていないビギナーが見ると、
初級者「すげ~、肉眼の14倍も大きく写るのか!」
と勘違いするであろう、何故ならば、双眼鏡などでは肉眼の視野に
比較した値が倍率表記となっているからだ。
このトリックの仕掛けは、もう何度も書いてきた事なので、
くどくどとは言うまい。
ともかくこれは確信犯的であり、ビギナーを騙す行為に等しい。
そう書くメーカーや小売店も悪いし簡単に騙されてしまう方も悪い。
が、何の為の情報化社会なのか?PCやスマホを持っているならば、
疑問に思う事があれば都度調べれば良いと思う。
ちなみに、このカメラの場合、双眼鏡的な意味の倍率で言えば
約8倍に過ぎない。(簡易計算法:50mm=1倍)
で、本ブログでは、実際の撮影上では殆ど意味の無いズーム比の
仕様を重視する事はまず無い。
他の弱点だが、例のFUJIFILM製カメラの出来の悪い操作系だ。
本機も例外では無いが、ただ、これも機種によりけりの要素も有り
コンパクト機F10やミラーレス機X-E1は最悪だ。
ロングズーム機の本S200EXRも良くは無いが、なんとか許せる
程度という感じではある。
これは、設計者あるいはOEM先の差異と想像するべきであろう、
根源的には設計チームの仕様決定力のレベルの差異もある。
これは昔から各メーカーにおいても、そういう問題があった、
オリンパスでも、ニコンでも、パナソニックでも、皆そうである、
沢山のカメラを使用していると、そのあたりが手に取るように
わかってしまう。すなわち機種によって、基本仕様や操作系が
優秀なものと劣悪なものに、綺麗に二分される。
その原因の推察は容易だ。つまり、開発者(開発チーム)の
カメラあるいは写真を撮影する行為に対しての造詣が深いか
否かで、その製品の操作系の出来不出来が決まってしまう。
銀塩時代はそうではなかった、しかしデジタル時代、従来の
エンジニアの持つ技術では不足する部分が多々出てくる。
やむなくカメラの事を良く知らないデジタル技術者を入れたり
OEMにせざるを得なかったのかも知れない。
で、たいていのメーカーでは、操作系の良し悪しはノーチェックの
ままで製品化されてしまう模様だ。何故、仕様検討会議や品質会議で
それらを問題とする事ができないのであろうか?それも疑問である。
他の弱点としては、望遠時の描写力(主に解像度や収差)が
低下することだ、これはロングズーム機としては、致命的に近い
問題点だ。望遠機なのに望遠が使えないというのは面白く無い。
まあしかし、厳しく言えばそうだが、まあ、これもギリギリ許せる
程度であるとは言える。
また、EVFは解像度が低く、MFピント合わせは絶望的だ。
だがこれも当時の性能ではやむを得ない。
で、この時代のFUJIのカメラにある「EXR」という表記は
「スーパーCCDハニカムEXR」を搭載していると言う意味だ。
だが、この機構を用いた例えばダイナミックレンジの拡張
(100~800%)という機能は、これを用いるとコントラストが
低下していわゆる「眠い」画像になるという弱点を持っている。
それに、この程度の処理であれば、レタッチソフトのトーンカーブ
補正を行った方が自由度も高く、有利かつ簡便である。
で、発売時の価格が約6万円と、さほど安価なカメラでは無い。
購入するのはある程度カメラ知識のある人だと想定できる、
そうした状況においては、子供だましの機能は一切いらない、
基本性能だけ高ければ、あとは何とでもなるのだ。

ただ、様々な問題点はあるのだが、本機の所有意義に関しては
私は比較的寛容だ、その理由は購入価格が安価であったからだ。
本機S200の中古購入価格だが、2011年頃に11000円程度で
あった。これは無茶苦茶安い。
殆ど中古に出る事もなかったカメラの為、中古店側が値付けを
間違えたのかも知れない。
まあでも、その値段であれば非常にお買い得感が高かったので、
多くの欠点は目をつぶることができる。
もしこれを、6万円で新品購入していたのであれば、
「ふざけるな~!」と、ちゃぶ台をひっくり返していたかも(笑)
余談だが、このあたりの時代(2000年代後半)から、新製品の
レビュー記事等を読んでも、製品の問題点、すなわちメーカーに
不利な事は殆ど書かれなくなってしまった。
それ以前には、そんな事も無く、辛口評価も多く見られた。
表現がマイルドになってしまった理由を追求する必要性は無いが、
本音あるいは真実の書かれていない記事を読んでも何の意味も
持たない為、私は、2000年代後半以降、一切のカメラ雑誌等を
買わなくなり、ネット上の記事も「○○の発売」とかのタイトルと
概要だけ読んで、本文は読まなくなってしまった、仮にそれを
詳しく読んでも何も参考にならないのであれば、しかたがない。
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さて、今回のラストに紹介するのは、コンパクト機というよりは、
一種のミラーレス機とも言える RICOH GXR (2009年)である。

ミラーレス・マニアックス記事でもお馴染みのGXRを何故
本シリーズで登場させるか?と言えば、「時代背景の比較」である。
本シリーズで、色々と古いコンパクト機を紹介してきたが、
凄いなあ、と思えるようなカメラは無かったのではあるまいか?
そう、時代的にまだコンパクト機の性能は熟成されていない
状況であったのだ。
だが、そんな時代背景の中、いきなり登場した GXRと、
その交換ユニット(レンズ)群が、どれだけ市場に大きなインパクト
を与えたのか?と、その部分の感覚を紹介したい訳だ。
ユニットは、A12 50mm(相当)/f2.5 Macroを選んでみよう。
これまでに紹介してきたようなクラッシックなコンパクト機では
絶対に得られない描写表現力が得られると思う。
まあ、GXRについての出自や詳細はミラーレスマニアックス記事
に詳しいので、ばっさり割愛する。

ご覧のように、描写表現力(画質等の基本的な描写力に加え
撮影技法を加える事による表現力の多彩さ)については、
これまでのクラッシックなコンパクト機とはまるで異次元である。
まあ、APS-Cサイズのセンサーに、50mm相当(1/2倍)の
大口径マクロを使えば、デジタル一眼レフと同等ではある。
ただし、ピントが合えば・・の話だ。
コンパクトなボディに一眼レフと同等のスペックを与えるという
GXRのコンセプトは非常に良いのだが、問題はピント機構だ。
AFは、一眼では高精度な位相差センサーが使える。ただしこれは
AFセンサーという部品が必要で、これはコンパクトやミラーレス機
では光路分割が出来ず、簡単には搭載できない。
で、このころから普及し始めた「コントラスト検出」という技術
があり、これがミラーレス機や一眼レフのライブビューモードで
使われた訳である。GXRも当然この方式を採用している。
ところが、これのAF精度が良く無い。遅いし、殆ど合わないのだ。
EVF搭載のミラーレス機であれば、EVFの性能が優秀であれば、
AFを一切使わずMFに頼れば良い。だが、GXRは小型化の為EVFを
搭載していない。外付け別売りのEVFは存在したが、高価で、かつ
MFに必要な性能を満たしていなかった。他にMF操作に必要なのは
高精度なピーキングと優れた拡大操作系であるが、さしもの
高性能なGXRと言えど、そのあたりは、まだ実用レベルでは無い。
よって、ピント合わせが、AF/MFとも致命的に近い弱点となって
しまっている。これはGXRの問題だけではなく、多くの初期
ミラーレス機で同様の重欠点を抱えていた。

コンパクト機の場合は、AF補助光(可視光、赤外線、超音波)等の
アクティブな機構と、コントラスト検出のパッシブ機構の混成により、
ある程度のAF精度を備えていた。これは1983年の銀塩時代初の
AFコンパクト「ジャスピンコニカ」より、この時代まで四半世紀も
かけて各社が熟成してしてきた技術なので、まだ初期ミラーレス機
よりはピントが合ったのだ。

まあピント問題はあるが、このGXR+A12の描写力はどうだ・・
GXRが小型機の市場に大きなインパクトを与えたのは確かである、
この頃のマニア等もGXRの話ばかり、だったのではあるまいか?
しかし高価であったのが難点だ。そして、2009年以降、各メーカー
は雨後の筍のように小型軽量なミラーレス機を発売し始め、
GXRの優位性も、一般の興味も急速に失われていく・・
追ってGXRシステムは生産中止になり、性能改良の術も失われた。
私は2015年まで待って、ようやくこのシステムを入手した、
中古相場は下げ止まり傾向、GXR本体が1万円台前半、
A12ユニットは優秀な50mmMacroも28mm広角(後のGRと同等)
も2万円台前半で中古購入できた。
問題は仕様的な古さだ、技術革新が急速に進む他のミラーレス機
に比べ、どうしても大きく見劣りする。レンズ(ユニット)は専用で
他のミラーレス機に転用する訳にもいかない。

ということで、GXRの減価償却(元をとる)を目指す為、今日も
合わないAFをジーコシーコと、無駄に動かし続けるのであった・・
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さて、第3回記事はこのあたりまで。
ようやくこの時代のコンパクト機は使える性能となってきたが、
次回第4回記事(最終回)では、2010~2013年頃発売の
コンパクト機を、数機種紹介していくことにしよう。
この時代のものはさらに強力あるいはユニークだ。