2015年8月23日に、大阪市平野区、「studio音屋」で
行われた、劇団「斜彼女」(SHA-GIRL:シャガール)の
公演、「SODA」のゲネプロの模様より、第2回(全4回予定)

さて、ついに出ましたね、かつて「奇才」と呼ばれた女優
「ナオミ」さんが産休明けでの、4年ぶりの舞台復帰だ。
彼女の役名は「白玉」(白玉密代)、そう、衣装にも多数の、
白玉に見立てたポンポン(玉飾り)がついているので、
きわめて分かりやすい。
舞台公演というのは、短い時間、たいてい1~2時間程度で
行われるので、その間に、観客は、その舞台の持つ世界観に
完全に入り込まないとならない、それができないと
「面白くない」「見た気がしない」となってしまう。
なので、役名がどうしたとか、複雑な前置きが必要とか、
そういうややこしいストーリー展開は舞台上では難しいのだ。
また、映画やTVドラマのように、様々なロケ地や大小道具、
CG,テロップの解説などを入れられる訳でもない。
舞台では背景(セット)は通常固定だし、大小道具も限られている、
動作もほとんどがパントマイムだ、ある意味、観客に想像力を
要求するのが舞台演劇であるのだが、それにしても、必要以上に
観客にあれこれ考えさせるのもよくない、あくまで単純化する
ことが望ましい訳だ。
「白玉」さんは、政治家(議員)の秘書である模様、後ろに
その政治家がついてきている。

政党「甘党」の議員(幹事長?党首?)の「甘味」氏である。
演じるのは、本舞台の演出も手掛ける劇団舞台処女(まちかどおとめ)
の「だんね」氏である、ベテランの役者さんであり、舞台処女の
中心人物を長らく務めてきた。現実世界においても、実際に平野区で
政治活動をやっているらしく、今回の劇には、”それを絡めてきたか”
という感じである。
「白玉」と「甘味」は、「甘党」としての政治活動の一環として
このチョコレート店「チョコ・タベナハーレ」に出向いてきた模様だ、
店長の「シロップ」氏が彼らを出迎える。

ちょっと試食してみませんか?と、店長が薦めたチョコレートを
「白玉」さんが食べる、しかし、この「白玉」さん、さすがに
政党「甘党」の秘書だけあって、チョコレートを食べただけで
中身のレシピが全てわかってしまう特異な味覚を持つ模様だ。

最初は、「美味しいと言ってもらえるかな?」とばかり祈るような
表情の店長「シロップ」だったが、「白玉」さんが、カカオの産地
から、隠し味までを次々にズバズバと言い当てるので驚いた模様。

申し遅れましたが・・ という感じで、何故か「仁義を切る」2人。
このあたりの演出は、恐らく「だんね」氏であろう、
ネットアイドルとかスイーツとか恋愛といった、本舞台の根幹部は、
原作が「ysd」すなわち、本劇団「斜彼女」の団長の安田明日香嬢だ。
しかし、明日香嬢は演技力こそピカイチであるが、脚本の経験は
少ないと思われる。若い女性ならではの斬新な視点による新しい
コンセプトの劇はよろしいが、やもすれば「軽く」なってしまう
恐れもある。「仁義」のシーンだけで舞台に重みが出る訳では
無いのだが、その発想そのものは、若い女性には無いだろう、
そうして、若い脚本と、老練な演出がコラボすることで、舞台が
うまくバランスしていく好例だと思う。
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今時のビジネス・マーケティングにおけるターゲット・セグメン
テーションはかなり細分化されている、これは、簡単に言えば、
想定されるお客さんをピンポイントで絞っている、という事だ。
スイーツ(甘味)ビジネスしかり、アイドルやアニメなどの
ビジネスも同様だろう、車やビールといった商品もまた同様だ。
車やビールは、ターゲットの年齢別に細分化された想定ユーザー
層が存在している模様だ、これは、たとえばTVのCMで流れる
BGMを聞けば一発でわかる。音楽に詳しい人であれば、流れる
BGMが、いつ流行したものかがわかるであろう、その流行した
年代において、想定ユーザー層が多感な青春時代(=音楽をよく
聞く世代)を過ごしたと考えれば計算ができる。
具体例をあげれば「君は天然色」であれば、大滝詠一氏が
1981年にヒットさせた音楽だ、1981年に青春時代、すなわち
たとえば16歳~25歳であったユーザー層は、2015年現在では、
(差の34年を足して)50歳~59歳となる、つまりだいたい50歳代
がメインターゲットの商品であるということが推測できる。
他に、深夜放送のテーマ曲や、70年代ロックが使われている
例もあるので、同様な手法で、ターゲット層の年代を計算して
みるのも面白いであろう。
(自分が知らない曲・・ とか言う無かれ、音楽好きと言うならば、
あらゆるジャンル、あらゆる時代、の音楽を聞いておくのが
良いと思う)
ここで、年齢はひとつの例であるが、勿論、特定のアイドルや
アニメのファン層だとか、食べ物の嗜好とか、家族構成とか、
ライフスタイルとか、いくらでも分類の方法はある。
で、商品のターゲットをそのように細分化していくと、その層に
向けて徹底的に売り方も(広告の出し方とか商品名等)あるいは
商品の仕様や機能も、カリカリにチューニングして合わせていく
必要がある。結果的に、セグメンテーションされた特定の層には
非常にウケの良いものが出来上がるが、そうでないユーザー層に
とっては「まったく興味が無い」商品となってしまう。
これは、商品という事で書いているが、製品といった「モノ」に
限らず、サービスや、コンテンツといった要素でも同じ事だ、
「舞台のシナリオ」すらも、同様だと思う。
20代女性だけに向けたシナリオを書いていたら、たとえば男性
観客が見ても、ちっとも面白くない劇となるかも知れない。
TVの番組だったら、興味がなければチャンネルを変えてしまえば
良いのだが、舞台となるとそうはいかない、たとえ趣味に合わなく
ても、面白くなくても、終わるまで、ずっと客席で耐えて座って
いなくてはならないのだ、さすがに、生の舞台で役者さんを前に
して途中で席を立つといった事は出来るはずもない。
ストリートパフォーマーであれば、客は興味がなければ足を止めない。
だから、ストリートでは、観客をつなぎとめる技術が非常に重要に
なる。これは演じる(演奏なども同様)側に要求されるスキルだ。
ハコ(閉ざされた会場)での演奏や舞台での、お客さんはたいてい
最後まで座っていてくれる、けど、演者側は、それに甘んじている
わけにはいかない、ごくごく一部の細分化されたお客さんに対し
熱狂的に受け入れられる内容の劇(や演奏など)にするのか?
あるいは、広く、できるだけ多くの観客に支持される内容とするのか、
このあたりは、非常に難しい選択になると思う。
まあ、これは舞台に限らず同じ事が、ラーメン屋さんやカレー屋さん
等にも言えるとは思うが・・マニア受けの味を狙うのか、それとも
一般大衆向けを狙うのか、そのあたりが、どの世界においても悩む
要素になるのだろうと思う。

さて、舞台の方に戻るが、政党の「甘党」は、現在、支持者の数を
増やそうとしている模様だ。対抗勢力として「辛党」があるのだが、
最近は、それに加え、新進勢力の「苦党」と「すっぱ党」が台頭
してきているとのことだ。
特に「すっぱ党」は、酢酸、クエン酸、乳酸の「三味(位)一体」
政策(笑)で、確実に支持者を増やしているとのこと。
そして「苦党」は、青汁などの健康志向を進めているとのこと。

苦い、すっぱいという表情は、さすがベテランの「だんね」氏だ。
で、「甘党」としては、「糖構想」(まあ、大阪都構想のパロディ
ですよね・・)により、特に若い女性をターゲットとして、
支持層を広げていきたいとのこと。
若い女性といえば、スイーツ、それで、このチョコレート店にも、
調査や普及といった政治活動をしに来たとのことだ。
はは、先ほど「商品」のターゲット・セグメンテーション(細分化)
の余談を長々と書いたのだが、「政治」においても、やはり同じ
事なのだろう、ターゲットを絞って集中する必要があるのは、
どんな世界でも同じということか。
ちなみに、カメラの世界でも、ここ数年は、ターゲットの細分化が
進み、製品ごとの特徴が顕著になってきた。だいたい本体色だけを
見ても、ほんの10年位前までは、黒か銀色以外のカメラは殆ど
存在していなかった(黒や銀以外の色のカメラがあっても、マニア
層や、ハイアマチュア層には敬遠されていたものだ)
10年以上前のフィルム時代のカメラでは、さらに「高性能なもので
あることが唯一の製品の指標」であり、性能と価格が比例していた。
勿論、今やそんな事はなく、また、性能だけが購入の絶対動機になる
訳でもない。フィルム時代であれば、フラッグシップと呼ばれる
最高級機を1台所有していれば満足できたものが、今は、何々用とか、
目的別に、あるいは、本体色別に(!)様々なカメラが欲しくなる。
まあ成熟市場であるから、市場そのものが、そういう製品展開の
傾向になっているのであろう。
(車やバイクでも、同様に性能絶対主義が、目的主義に変化した、
今時、何馬力だから、という購入動機は少ない事であろう)
知人に、何十万円もする高級デジタル一眼を購入した人が居るが
知「雨が降ったら持ち出せないし、山や海にも持っていけない」
と嘆いていた
匠「そんな昔風の買い方をするからだよ、すぐにサブ機を買いなさい
同マウントの安いボディを中古で、それとコンパクトもいるね」
と言っているのだが、あいにくその知人は高級機を持っている事自体
に満足している模様で、写真を撮る事の優先度は2の次な模様だ(汗)
ちなみに、今時でも、高級なカメラなどを自慢するのは、たいてい
高齢者層だと相場は決まっているが、それは何故かと言うと、
今から数十年前の時代では、高価なカメラや時計などは、それが
一種のステータス・シンボルであったからだ。
具体的には、自身の地位、収入などを象徴するアイテムであった
訳だ。だが、前述の理由で、現代では、それらはステータスの
象徴ではなくなった、その時代感覚の変化に若年層はついて
いけるが、シニア層はそうではない。
これは前述の「ヒット曲を聞いていた世代」という内容にも非常に
強く連携する、つまり、多感な青春時代に得た価値観というのは、
一生を通じて、あまり変化しないという事になる。
高度なプロファリングを行うならば、対象の人が持っている
価値感覚と時代(世代)とは相関がある事がわかると思う。
簡単には、それは「世代ギャップ」と捕らえることも出来るかも
しれないが、「価値観が合わないと」簡単に切り捨ててしまわず、
自らの時代・世代感覚を柔軟に変化(時代のシフト)させて、
プロファイリングやコミュニケーションを行う事も必要かと思う。
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さて、チョコレート店に来た「甘党」の政治家「甘味」氏は、
その女性支持層の獲得の為、チョコレート店の女性店員の誰かを
「甘党」から擁立したい模様だ、そこで、秘書の「白玉」さんが
店員たちの面接を始めた。

まずは、店員の「夏美」(堂・夏美:ドーナツ美)ちゃんが
面接に挑む、

演じるのは「千夏」さんだ、「斜彼女」団長の「明日香」嬢の
実の妹さんだ、今日が初舞台、若干の緊張の色が隠せないが
お姉さん譲りの演技力の片鱗は見せてきている。
夏「議員さんって儲かるの? いくら貰えるの?」
とお金の話ばかり、これでは残念ながら立候補は無理であろう。
次いで「豆子」だ、一見、根暗で陰湿な性格、しかし現在は
恋もしていて、チョコレートの資格試験も受験するという実利派、
さらに実世界を離れれば、ネットアイドルの「ぷりん」ちゃんという
異なる側面も見せる、なかなか際立ったキャラクターの登場人物だ。
芸達者な明日香嬢ならではのハマり役だ。
だが、予想通り、彼女は政治の世界などはまったく興味が無い模様。

さて、女性店員はあと1人居る。
それが「板・千代子」(板チョコ)さんだ、「千代子」さんは、
「夏実」や「豆子」の態度をいさめるのだが、どうやらそれが
”政治家の資質あり”と、認められた模様で、候補者に抜擢された。

「千代子」さんを演じるのは、劇団「斜彼女」副団長の田中さん、
団長の明日香さんとは、同じ舞台でのデビューだ。
それは、劇団舞台処女(まちかどおとめ)の「地下鉄ジプシー」
2010年の劇だ。アンカー(リンク)を辿ってもらえれば、その時の
観劇記事が出てくるが、それは結構衝撃的なデビューであった、
衝撃的というのは、田中さんや、明日香さんが、いきなりの
準主役に抜擢された事が1つ、それから、その役柄のユニークさ、
田中さんは、そのときは「フェルマーの最終定理」の解法について
研究している女子高生という奇妙で個性的な役柄であった。
2人とも初舞台とは思えないくらいに好演した上、劇自体の完成度も
高かったので、5年前の劇とはいえ、今なお強く印象に残っている。
なお、本ブログでは、劇の模様をラストまですべて公開しているが
初期のころ、あえてラストシーンは省いていた、再演の可能性も
あるかと思い、まだ劇を見ていない観客への配慮があったからだ。
しかし、燦の会(さんのかい)、舞台処女(まちかどおとめ)や、
斜彼女(シャガール)など、過去撮影を行った劇団側に聞くと、
「まず再演は行わない」という事であったので、ならば逆に全ての
シーンをしっかり記録しておかないと、後々に記録としての価値が
半減すると思った。なので、本記事でも、ラストシーンまで公開する
予定である。

ということで、「千代子」は政党「甘党」の新候補に擁立された、
次の選挙に出るということで「甘味」氏の期待を一身に受ける。
選挙について詳しい打ち合わせをする、ということで「千代子」
を含む一行は店を退出。そして入れ替わりに入ってきたのが
常連客の「軽亜」(カルーア)氏だ。

軽「千代子ちゃん、選挙に出るんだって?」
と、何処から聴いてきたのか、なかなかの地獄耳だ。
怪優と称される木下氏は、福井県の劇団13番街からの客演だ。
よく大阪の劇には出演している模様だが、当然、舞台には事前の
練習もある、一時期は「月額の旅費・宿泊費が15万円にもなった」
と、こぼしていた事もあった。
まあ、それだけの費用を、自腹でかけても舞台に出たいという事は
やはり相当の演劇好きなのであろう。
近年は、男優でありながらも、「老王女」や「老婆」といった役が
多く、そういう難しい役柄が廻ってくるのも名優の証しか。

「ホレチョコ」の効果により「軽亜」氏に恋をしている「豆子」さん、
なんとか気持ちを伝えようとするが、勿論、「豆子」のキャラ的に
それは無い。
思うに「ホレチョコ」が本舞台の中で占める位置というのは、
恐らくは「恋に恋する」少女の気持ちであろうか(?)
そもそも、”若い女性”と、一口に言っているが、この劇が目指す
コンセプトとしては、その若い女性とは、どの年代なのだろうか?
劇を創り、さらに演じている彼女達の実年齢は20代前半だ、
しかし、ネットアイドル、チョコレート(スイート)、恋に恋する、
これらは20代前半の女性の感覚ではあるまい、むしろ
13~16歳のローティーンの世代感覚であるようにも思える。
じゃあ、何故「斜彼女」(シャガール)の彼女達は、あえて自分達の
世界でも無い、若い世代の感覚を舞台で表現しているのだろうか?
ふうむ・・このあたりは難しい、その脚本の真意は、今のところ、
こちらでは、勝手に想像するしかないからだ。
ただ、1つ言えるのは、この新劇団の名前が「斜彼女」であるという
事だ。「斜」という文字が示しているのは、まっとうに正面からは
ぶつからないという事だろう。むしろ実際の彼女達は、ネットに
夢中になることも無いし、美容の為(?)チョコレートも食べない
だろうし、少女のように「恋に恋する」ことも無いのであろう。
だから恐らく「斜」の目線なのだろう、自分達に関係の無い世界を
ある意味、批判的に表現しようとしているのかもしれない。
そう思うと、色々とつじつまが合ってきた。
ふうむ、なるほど・・こういうのが「若い女性の生態」だと思って
いる世の男性達に対しても、「そんな訳ないだろう!」と、
痛烈な皮肉を言いたい訳なんだね・・
だんだん、この劇の本質が読めてきたぞ・・
いや、しかし「観客の目線で舞台を見ながら撮影する」というのが
こちらの舞台撮影コンセプトだ、あまりに深読みするのは、むしろ
観客目線にはそぐわない、もっと単純に舞台を楽しむのが良いかも
知れない・・
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舞台はシーンが転換する、
「甘党」より立候補した「板・千代子」の選挙活動のシーンだ、

「千代子」は誰かと電話をしている、電話の相手は「甘党」の
秘書の「白玉」さんであろうか。
彼女のアピールは、ともかく選挙活動が大変であるという事、
広報も何もかも自分でやらなければならず、方法論もわからないし
その費用も全部自腹となってしまうこと、これでは、どうにもならない
という必死の状態だ。
まあ、それはそういうものだ、さて、この後、どうなってしまうのか?
けど、だいたいシナリオは読めてきている、恐らくネットアイドルと
なるのであろう、さあ、実際にそうなるだろうか?
次回記事、続編(3)に続く・・・