補足編シリーズでは、ミラーレス・マニアックス本編記事で紹介
できなかったレンズや、機材の課題の再確認などの補足を
行っている。
まず最初は、本編では未紹介のレンズだ。

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、OLYMPUS OM SYSTEM 135mm/f3.5
1970年代~1990年代のOM用MF小口径望遠だ。
同じ135mmではf2.8バージョンが存在するが、そちらは僅かに
大きく重い。小型軽量を「ウリ」とするOM SYSTEM故に、f3.5版
の方が人気があった模様で、OM全盛期にはこちらが普及していた
と思われる。
良く言われている
「OMでは、21mmから180mmまでf2で揃えられる」
という話であるが、実は135mmにはf2版は存在していない模様だ。
同時期の他社レンズには、135mm/f2は色々とあったので
(例:キヤノンNFD135/2=第15回、ニコンAi135/2=第18回記事)
ちょっと不思議な感じもするが、まあOMの大口径中望遠では、
優秀なOM100/2(第19回記事)があったので不便は無かった。

本OM135/3.5は非常にポピュラーなレンズだと前述したが、私は
今まで所有していなかった、銀塩時代は135/2.8を使っていたが
デジタル黎明期の2000年代前半に、OMシステムは、お気に入り
のレンズだけ残そうと思い、それは知人に譲渡してしまった。
しかし、後になってOM用の望遠が何も無いのも不便だと思い、
第56回記事で紹介したOM75-150mm/f4を購入し、それを
用いていた。
だが、そのズームは写りの面で特徴は無く、平均点かそれ以下の
性能でしかない。また、ピント環とズーム環が独立回転式、
という点でMF操作性も良く無かった。
という流れの中、本年2016年、中古カメラ屋のジャンクコーナーで
本レンズを見つけた。「程度」は問題なく値段も安価であったので
購入した次第である。

さて、本レンズであるが、特徴としては、まず小型軽量である事、
他社の同クラスのレンズに比べても一回り小さい。
組み込みフードを内蔵しているのでそれを使っているが、逆光耐性
もさほど問題は無さそうだ。ボケ質破綻が多少出るし、その回避も
難しい模様だが、まあ、弱点と言える程では無いであろう。
レンズ構成は4群5枚とシンプルだが、まあこのクラスでは標準的。
最短撮影距離は1.5mと、これも135mmレンズでは標準的だが、
もう少し寄れて欲しい場合が多々ある。ただ、撮影アングル的な
制約が少ない場合(例:水平に撮れば良い等)は、デジタルズーム
機能などを併用して、最短撮影距離の不満は緩和できる。
解像感などを含めた一般的な意味での描写力は高目であり、
さほど不満は無い。銀塩時代にOMシステムの定番望遠として
人気があった事も頷ける。

APS-C機のNEX-7に装着時は換算200mmとなり、街撮りには
少々長目の画角となり被写体選びの面で若干の使いにくさを感じる
が、まあ、それも被写体次第で、野良猫や昆虫などを探すには丁度
良いか、むしろ短か目だ、そうした場合にもデジタルズーム機能等は
適宜役に立つ事であろう。
総合的には、あまり弱点の無いレンズである。けど、反面、長所も
あまり無い、まあ銀塩時代の普通のMF望遠レンズと言う感じである。

本レンズの中古購入価格だが、本年2016年に2800円であった。
ジャンクコーナーに置いてあったが、キャップ類が無い程度で
レンズや外観に問題は無かった。
いつも書いている事だが、MF時代の135~200mm級の単焦点
望遠又は望遠ズームは現在極めて人気が無く、故障や問題点が
無い場合でも、数千円という中古相場である場合が殆どだ。
ただ、これらのMF望遠レンズをミラーレス機、特にAPS-C機や
μ4/3機に装着した場合、200ないし400mm相当と、かなりの
望遠画角となり、元々のレンズの光学系もしっかり望遠であるので
(注:デジタルで拡大しているだけではないという意味)、光学的な
望遠効果(例:遠近感の圧縮、ボケ量の増大等)も十分得られる為、
望遠レンズ入門用としては非常に適していると思われる。
思えば、銀塩時代は、ビギナーは望遠レンズに憧れを持っていた。
フィルム一眼用の望遠レンズは、200mmを超えるものは大きく重く
高価であり、ビギナーの使いこなせるものでもなかった。
また、フィルムのコンパクト機でも望遠を搭載したものは少なく、
コンパクト機に200mmズームがついた機種が話題になった位であった。
だが、デジタル時代、デジタルズーム機能や、センサーサイズを
1/2.3型以下に小さくすることで、コンパクト機等では700mm前後
相当の望遠画角が得られる事が当たり前になると、「望遠が欲しい」
という強いビギナーのニーズも薄まってきたように思える。
そんな状況において、こうしたMF時代の一眼用望遠が中古市場に、
ほとんど二束三文の捨て値で売られているのも、分からない訳では
無いが、それを逆手に取れば「極めてコスパの良いレンズ群」である
と言えると思う。MF135mmの性能は各社似たりよったりなので、
どれか1本持っていても悪くない。
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さて次は、システムの課題のチェックだ。

カメラは、LUMIX DMX-GX7
レンズは、PANASONIC G20mm/f1.7Ⅱ ASPH. (H-H020A)
本レンズを第45回記事で紹介した際はDMC-G5に装着して
使っていた。
本レンズの初期型G20/1.7は、ミラーレス時代の初期の2009年に
DMC-GF1とのセット「GF1C」として販売され、レンズの描写力に
定評があったものであった。

その後、GF2の時代(2011年)では、本レンズではなく
G14mm/f2.5(第66回記事)がキットレンズとなった「GF2C」が
販売された。
恐らくはレンズセットのコストダウンを図ったものと思われる。
なお、28mm相当単焦点はビギナーには使い難いが、GF2からは
デジタルズーム機能が搭載されたので、それでカバーするという
発想であろう。
その前年に発売されたSONY NEX-3Aでは、E16mm/f2.8
(24mm相当、第51回記事)がキットレンズであり、それもデジタル
ズームの使用を前提としていたので、こういう考え方が流行った
時代であったのだろうとも思われる。
が、この頃から、G20/1.7初期型は中古市場では品薄となり、
なかなか入手しずらくなってしまう。あったとしてもGF1Cとしての
セット販売であり、GF1は既に所有していたので買い難かった。
その後2013年、DMC-GX7と新型のG20/1.7Ⅱがキットレンズと
なったセットの「GX7C」が発売される。
この頃からようやく、G20/1.7は、初期型もⅡ型も中古市場で
豊富に流通するようになり、私も入手できたのだが、まあ、
そこは今回の記事の論点では無い。
今回の注目点は、GX7Cというセットが実用的か否か?という事だ。
カメラボディのGX7は、レンジファインダー機のような外観で
そこそこ格好良いのだが、写真を撮る為の仕様や操作系は、
Gシリーズ(例:G5/G6等)よりも使い難い部分が多々ある。
まあ、とは言うものの、GX7でも操作系全般は他のミラーレス機に
比べれば良い方であり、さほど捨てたものでは無い。
なお、Panasonicのμ4/3機としては初の手ブレ補正内蔵機である。
細かい部分に目が行き届いてれば良いカメラとなったものの
ちょっと中途半端だ。後継機のGX8では、独立露出補正ダイヤルや
フリーアングル式の背面モニター等、仕様上で若干改善されているが、
不要な機能も多く、結果的に高価になってしまっている。
レンズの特徴だが、フルサイズ換算40mmの準標準画角であり、
開放f1.7は、まあ大口径と言える。しかし、元々の焦点距離が
20mmであるから、50mm/f1.7級レンズ等に比べ、大きなボケ表現を
得られる訳では無い。
なお、絞りを開けられるように今回はND4フィルターを装着している。

近接撮影に持ち込めばボケ量を大きくできるが、最短撮影距離
(20cmと標準的)近くでは、カメラ側のAF精度が落ちて、ピントを
外しやすくなる。MFではGX7の高精細EVFと優秀なピーキンング
機能が使えるのだが、無限回転式ピントリングは近接撮影時の
MF操作性において、使いやすいとは言い難い。
それよりも問題なのは、被写界深度(及びボケ質)の確認であろう。
μ4/3機は純正レンズにおいては基本的に開放測光なので、ボケに
関する撮影前の確認は非常にやりにくい。
一応プレビュー(被写界深度確認)機能があるが、専用のボタンは
無く、Fnキーのいずれかを犠牲にして、そこにアサインしなければ
ならない。GX7のFnキーは物理キーが4つと、タッチパネル上に
ソフトFnキーが5つと豊富なのだが、そもそもEVF搭載機においては、
EVFを使用時に、カメラの構えを解いてタッチパネルを操作するのは
有り得ない操作系なので、全く使用しないようにしている。
・・と言うか、背面モニターおよびタッチパネルを用いた撮影は、
手ブレ耐性の著しい減少、MFレンズでのピント合わせが極めて困難、
外光の明るさにより画面が見え難い、露出補正の反映の確認困難、
被写界深度やボケ量の事前確認困難、などの理由で、実用的には
使えない。
勿論私もEVF非搭載ミラーレス機は所有しているが(例:GF1,
E-PL2,NEX-3)それらは、MFでのピント合わせの負担が少なく、
被写界深度等を気にする必要の無い、トイレンズや純正AF広角
レンズの母艦としていて、本格的な撮影に使用する事は無い。
で、GX7の物理Fnキーだが、4個は多いようではあるが、これらに
重要な機能をアサインしていくと、プレビュー(絞込み)までは
どうにも割り振りがたい、まあ無理にアサインしたとしても、
その機能を使うと「シャタースピード効果確認」と出て、状況に
よってはEVFやモニターのフレームレート(表示コマ数)が極端に
落ちてしまい、絞りの効果がむしろ良くわからず、使い難い。
また「常時プレビュー」というモードがあるが、こちらは
M(マニュアル露出)モードでしか使えないし、同様にフレームレート
の低下があったりする、まあ、M露出モードでも使いやすければ良い
のであるが、例えばPENTAXのハイパーマニュアルのような機能
(例:グリーンボタンでプログラムラインに乗せたり、マニュアル
シフトが出来る、マニュアル露出にISO感度を自動追従させる等)
の機能は無いので、GX7でのMモードは使い難く、実際には
A(絞り優先)モードしか実用的では無い。
結局、プレビュー機能は使いにくく、G20/1.7は開放測光のままで
使うしか無い。これだと僅かに絞った際での被写界深度はわからず
勿論、ボケ質破綻の確認なども出来ず、厳密な撮影は不可能だ。
よってμ4/3機では、MFレンズをアダプターで装着した方が厳密な
ボケの確認には向いていて、こうした純正AFレンズは使い難い。
まあそれでも、標準ズームや広角レンズ等あまりボケに配慮しない
レンズであれば使えるが、大口径レンズ等はその最大の特徴である
ボケ量をコントロールする撮影が出来なくなってしまう。
結局のところ、GX7と本レンズG20/1.7の組み合わせは、大口径で
あるというレンズの特徴を活かせず、面白みが少ない。
f1.7である事は忘れて、f5.6くらいまで絞り込む、あるいは
P(プログラム)露出モードで、絞りを意識せずに使い、
中遠距離の被写体を見たままに撮るのであれば、本レンズにおける
そういう場合の描写力は悪くないので、まあ使えるとは言えよう。
ただ、そういう使い方は、あまりに面白みの無い撮影だ、レンズの
潜在能力のうちの1割も活かしていない。

結局のところ、GX7に限らず、本レンズの性能を十分に引き出せる
ボディが存在しないのが問題なのだろう、これはプレビュー操作の
やりにくいμ4/3規格における、純正レンズ故の問題だと思う。
まあ、その点を抜きにしても、本レンズの描写力は平均点より
やや上程度、コスパは平均点以下という感じであり、決して
大騒ぎや神格化する程の優れたレンズでは無い。
セットとしてのGX7Cだが、さほど安価なものでは無い。
2013年の発売時に新品で11万円くらい、価格がこなれた2015年
頃においても、8万円程度していた。
まあ高級なシステムと言えるのだが、高級すなわち高性能である
というものでは決して無い。このセットではボディ・レンズともに
各々の性能を十分に活かしきれないであろう。
なんと言うか、ちょっと勿体無く思う・・
ちなみに、このセットを買うのであれば、レンズG20/1.7を
初期型とすれば2016年時点での中古相場が17000円くらい。
ボディもGX7は現在Ⅱ型となっているので、初期型は3万円を切る
中古価格で購入できる。(初期型はシャッター速度が1/8000秒
とか、Ⅱ型よりも優れている点もある)
この場合、合計4万円台後半となり、まあ性能と価格比においては、
ぎりぎり許せる範囲であろう。でも、これだけの予算を出すならば、
GX7Cというセットに拘るよりも、例えば本体をG6として(中古
価格2万円程度)、残りの約3万で一眼用高性能レンズを中古で
買って、それを装着した方がベターだとも思う。
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さて、次のシステムは未紹介レンズだ。

カメラは、OLYMPUS Pen Lite E-PL2
レンズは、安原製作所 MOMO100 28mm/f6.4 Soft
本レンズは、2016年発売の最新のソフト(軟焦点)レンズである。
ソフトレンズの原点である「ベス単フード外し」を現代に
蘇らせた仕様となっていて、それが約100年前のレンズ(カメラ)
であったことから、MOMO(=百)というネーミングがついている。
「ベス単フード外し」については、他のソフトレンズの記事でも
何度か述べている。最近の記事では補足第4回のキヨハラVK70R
の項目に詳しい。
また、ソフトレンズ全般については、ミラーレスマニアック本編の
VK70R=第5回、KENKO 85mmSOFT=第19回、
α100mmSOFT=第38回や、
補足編1での、キルフィット キラー150/3.5のソフト風使用にも
詳しく述べており、重複するので割愛する。
本MOMO100は、これまで所有していたソフトレンズが、
70mm~150mmの望遠画角であった事から、広角ソフトが
欲しかったので購入となった。
銀塩時代には、標準ソフトとして、KENKO MC SOFT45mm/f4.5
や、キヨハラVK50R 50mm/f4.5 というレンズが存在していたが、
いずれも買いそびれ、その後はレアなため入手不能となっていた。
また、それらよりも広角なソフトはあまり記憶がなく、存在して
いないか、あったとしても極端にレアなレンズとなる事であろう。
で、いつもソフトレンズの記事で書いているように、ソフトレンズ
のピント合わせは極端に難しい、光学ファインダーやEVFはもとより
ピーキングや拡大も全く役に立たず壊滅的だ。
だが、MOMO100は、28mm/f6.4という被写界深度が深いレンズだ、
その為、目測ピントで使うという前提で本レンズを使ってみよう。
カメラはトイレンズ母艦のE-PL2を使用する。

ソフト効果は、他のソフトレンズほどは大きく無い。
まあでも、補足編4で説明したように、そもそも「ベス単フード外し」
では、あまり大きなソフト量を得るものではなく、上品な感じの
ソフト効果を得ることが主眼だったと思われるので、これ位でも
まあ良いと思う。
それに、ソフト量が少ない事と被写界深度が深い事で
ピント合わせが、他のソフトレンズに比べて格段に容易だ。
他のソフトレンズど同様に絞り込むとソフト量が減って通常の
写真が撮れるようになる、本レンズは、開放f6.4(ソフト用)の他、
f8,11,16,22の絞り値が利用できる。
しかし、VPK(ヴェスト・ポケット・コダック)型の1群2枚構成の
レンズは、f11以上に絞り込んで撮ると無茶苦茶固い描写となる
(補足第4回記事参照)ので、そうした描写傾向が好みかどうかは
微妙なところだ。

加えて、このレンズ構成の場合は「焦点移動」が発生する模様である。
「焦点移動」は絞り値によってピント位置がずれてしまう現象であり、
オールド名レンズ「テッサー」が、その代表格として知られている
(第47回、第71回記事)
本レンズに関しては、ピント合焦マークが、開放時と最大絞り時の
2種類ついていて、目測MF時にどちらのマークに距離を合わせるかで
この問題を緩和できる。
なお、最短撮影距離は30cmであり、近接撮影では、この仕様
(28mm広角、開放f6.4)でも、背景を僅かにボカす事ができる。
MOMO100の発売元の「安原製作所」は、世界でもあまり類を見ない
個人経営のカメラメーカーであり、銀塩末期にレンジファインダー機
「安原一式」で一世を風靡した。
その後、一度活動を休止したが、その頃の様子は、安原氏の著作
「安原製作所回顧録」に詳しい、この本は所有しているが、
裏話などが多数載っていて、なかなか面白かった。
近年、レンズメーカーとして活動を再開、2011年以降に、
5倍マクロレンズのNANOHAx5、円周魚眼レンズのMADOKA180、
そしてソフトレンズのMOMO100を発売している。
生産は恐らく中国製だと思われるが、金属鏡筒(鏡胴)で、
作りは悪くなく、ピントリングのヘリコイドの感触も悪くない。
マウントの工作精度はあまり高くない模様であり、μ4/3機に
装着時は少し緩い感じ。加えて、Eマウント変換アダプターには
上手く嵌らず、μ4/3とEの両用レンズとする事は出来なかった。
なお、光学系はμ4/3でもEでも共通な模様で、どちらも焦点距離
28mmで、APS-Cサイズのセンサーに対応している。

本レンズの購入価格だが、本年2016年に新品で21,800円
(税・送料込)であった。μ4/3用の他、Eマウント用(但しAPS-C)
および、一眼用(Ai,EF用、焦点距離43mm、フルサイズ可)が
発売されている。
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さて、今回のラストも未紹介レンズ。

カメラは、LUMIX DMC-G5
レンズは、SIGMA ZOOM APO 75-300mm/f4-5.6
このレンズの出自は不明である、恐らく1990年前後のAF望遠
ズームと思われ、色収差を低減したAPO仕様である。
以前、これに良く似たスペックの同社製APO70-300mm/f4-5.6
を所有していた、それは2000年代後半にジャンクコーナーに
故障品として1000円で売られていた物だったが、試しに購入
してみると何の問題も無く動作した。昔の本ブログの記事でも
紹介したのだが、その後、デジタル一眼を購入した友人が
「望遠が欲しい」と言ったので、譲渡してしまっていた。
最近、その友人から、当該レンズが
友「白っぽく写るようになった」という連絡を受け
匠「ああ、たぶんカビを生やしたのだね」と答えた、
恐らく保管状態が悪かったのであろう。
まあでも極めて安価だったので、修理をする気にもなれないだろう
から、そのまま使うか、廃棄処分とするしか無いであろう。

で、今回、そのいわくつきレンズと殆ど同じスペックのものが
やはりジャンクコーナーで1080円で売られていた、レンズ自体は
何も問題ないように思える、直進式ズームが固いようだが、
ピントリングは動いている、試しに購入してみよう。
家に帰ってさらにチェックすると、やはりズームが極めて固い。
無理に何度か動かしていると、ゴムパッキンが直進ズームの
隙間から、はみ出してきた(汗)
どうやら、このゴム部が経年劣化で固化してしまい、動きか
固かった模様だ。その為、故障品として扱われていたのであろう。
はみ出したゴムパッキンを無理に引っ張り出して(汗)そこから
シリコングリスを流し込む、これは滅茶苦茶な修理方法だが、
僅かに1080円の半故障レンズだ、多少無茶をしても問題は無い。
で、この処置で見事に復活、全く問題なく使えるようになった。
さて、SIGMAのこのクラス(70-300mm程度)のズームレンズには、
昔から現代に至るまで、APO有りと、APO無しの2バージョンが
併売されている場合が多い。
で、その場合は、APO有りしか選択肢は無い。すなわちAPO無しは
望遠域での解像度が不足する場合が殆どなのだ。
勿論、定価も中古価格もAPO有りの方が高価だ。
だが、ごく稀に、半故障品であったり、店舗側の値付け間違い
(APO無しの相場でAPO有りを値付けしてしまった)等の理由で
APO有りでも安価なものが見つかる場合がある、それが今回の
本レンズであったり、前述の友人に譲渡したAPO70-300/4-5.6
であったりした訳だ。

さて、DMC-G5装着時の画角は、150-600mm/f4-5.6相当となる、
まるでSIGMAの最新高性能超望遠ズームのようなスペックだが、
まあ勿論、光学的な望遠効果は、換算150-600mm相当と、
実際の150-600mmの光学ズームでは大きく異なる。
DMC-G5の優れた操作系による無劣化のデジタルズームを併用
すれば、150-1200mm相当の超望遠ズームとなり、本レンズの
特徴である最短撮影距離1.5m(=1/4倍マクロ、μ4/3機で使用時は、
1/2倍マクロ換算、デジタルズーム2倍併用時は等倍換算)と
あいまって、フィールドでの自然観察撮影(野鳥、昆虫、小動物等)
には最適なレンズとなるであろう。

描写力は捨てたものでは無い、さすがにAPO仕様である。
ボケ質破綻は出易いが、嬉しい事に本レンズ(ニコンマウント)には、
絞り環がついていて開放f4から1/2段刻みで絞り値を微調整できる、
この細かい刻み幅は、ボケ質破綻の回避の目的には最適である。
ちなみに、現代のSIGMA製レンズには、全て絞り環はついていない。
また、直進ズームは、レンズ前部のピントリングとあいまって
ズーミングとピント調整が同時に出来る為、この点ではMF時の
操作性も、さほど悪くない。
逆光耐性は、この当時のSIGMA製レンズでは、フレアやゴーストが
出るものが多々あるが、今回の使用時には殆ど気にならなかった。
試験的にフードは装着していないのだが、実は1080円という破格の
値段ながら、専用フードも付属していたので、後からはそれを使用
して、逆光耐性はさらに問題になりにくかった。
総合的には何も問題点は無さそうだが、細かい弱点はある。
まず、AFレンズ故にピントリングがスカスカだ、かつ、形状も
良くなく、MFの操作性全般に劣るという問題点がある。
このあたりは1990年頃のAF初期のレンズに共通の問題点であり、
「AFが最新技術であり、万能である」と、ユーザーもメーカーも
多大な期待をかけてしまったのだ。このため、チマチマとMFで
レンズを操作するのは「時代遅れな事、格好悪い事」と誤解して
しまい、MFを無視し、構造や操作性がどのレンズも大幅に悪化して
しまった時代であったのだ。
勿論MFの必要性は、ほんの数年で再認識された、初期のAFはどんな
状況においてもピントが合う訳ではなかったので、AF万能の幻想
は廃れ、MFの併用を前提とした新しいAFレンズが流通し始めるのは、
1990年代の後半以降であった・・

本SIGMA APO 75-300mm/f4-5.6であるが、1080円という
価格であれば申し分ないレンズである、コスパは最強クラスだと思う。
ただまあ、絶対に必要という類のレンズでも無いし、もう少し高価で
あれば購入をためらうレンズであるとも言える。
あくまで、1000円~3000円程度のジャンク価格であれば買い、
という感じのレンズであろう。
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さて、ミラーレス・マニアックス補足編は、一応これにて終了。
また、新しくレンズを購入したり、あるいは、紹介済みのレンズを
さらに面白く・楽しく使えるような方法を考え付いたら、適宜また
補足編を書くとしよう。
いずれ、ミラーレス・マニアックス「名玉編」を掲載予定だ。