ミラーレス・マニアックスの補足編、その4。
このシリーズでは、本編記事で紹介できなかったレンズや、
機材の課題の回避、特殊な使用法のテスト等の補足を行っている。
まず最初は、システムの問題点の回避だ。

カメラは、PENTAX Q7
レンズは、SPACE JF7.5M-2 7.5mm/f1.4
第54回記事で紹介したマシンビジョン用レンズである、
マウントは、CCTV(監視カメラ等の閉回路テレビジョン)では
オーソドックスなCマウント。
Cマウントは、内径1インチ(25.4mm)、ピッチ1/32インチ
(約0.8mm) フランジバック約17.5mmの規格である。
近年はCCTV分野の撮像素子
の小型化から、フランジバックを約5mm短くしたCSマウントも
一般的である。
なお、CSアダプターはCマウントレンズをCSマウントカメラに
装着する際に使う約5mm厚のスペーサーだが、これを逆用して、
Cマウントレンズの接写リングとして代用する事も可能だ。
(第62回記事でTAMRON M118FM16をその手法で紹介)
C/CSマウントは、対応センサーのイメージサークルが小さい物が多い
ため、PENTAX Q7との相性は良い。基本的には2/3型対応以上の
C/CSマウントレンズを用いれば良いが(例:本JF7.5M-2)1/2型
対応レンズでもケラれずに使用できる場合もある(例:M118FM16)
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さて、本システムの課題であるが、まずPENTAX Q7はMF性能に
問題ありで、本レンズではちゃんとしたピント合わせが出来ない事だ。
第54回記事でもMFのピント合わせに苦戦し、もう1つの本レンズの
問題点であるボケ質破綻の回避も困難であった。
そこで、ちょっと考えてみる。
本レンズは7.5mmという短い焦点距離であり、かつQ7は小型の
1/1.7型センサーである、ならば被写界深度は十分に深いのでは
なかろうか?
つまり、銀塩時代の広角撮影技法である「絞り込んだパンフォーカス
撮影」が可能ではなかろうか、と。

実際にそうした撮影方法を試している。
ただし、パンフォーカス撮影は恐ろしく退屈だ。
これはミラーレス・マニアックス本編記事でも、数々の広角レンズを
MF性能の劣るカメラで使用した際にも、同様の問題が発覚していた。
例えば、28mm広角レンズを使う際、これをf8位に絞り、ピント位置を
3mくらいに設定すると、近距離以外の被写体は全て被写界深度内に
収まり、ピント合わせが不要となる。
だが、その際に、絞りもピント合わせも不要という事で、何も操作する
事がなく、写真を撮る上でクリェイティブな要素が無いので、すぐに
飽きてしまうのだ。
よって今回は、Q7の優れた機能である「エフェクト」を必ず併用する
事にしている。
Q7のエフェクト機能は非常に多彩である他、設定を色々変えたり、
自身でエフェクトを作り出す事も可能であり、加えて、一般的な絞りや
シャッター速度の効果の併用も出来る。
これであれば撮影時に様々な工夫や設定が出来る事で、創造性の
不足の不満は回避可能であろう。

レンズの設定だが、絞りをf4~f5.6程度、ピント位置を1m~1.5m
程度にする。
被写界深度を計算する上での許容錯乱円の定義がデジタルでは、
ちょっと曖昧だが、まあ、銀塩と同じパラメータとすれば、計算上は
これでほぼパンフォーカスになる筈だ。
このパンフォーカス撮影技法だが、恐らくかなり昔(60年以上前)から
あるものであろう。
一眼レフ登場以前の、その頃のカメラ、たとえばレンジファインダー
機でも銀塩コンパクト機でも、それらを触ってみればわかるが、
露出もピントも全て手動だ。
当時、高価であったカメラを無理して購入したユーザー層において、
露出やピントの意味や仕組みをわかっていた人は果たして
どれくらい居たであろうか?多分、ほとんど全滅であったと思う。
露出というもの概念はビギナーユーザーではまず分からないだろうし、
ピントという概念も下手をすればわかりにくい。
たとえば、後年(1990年代)のAF一眼レフ時代に入ってからも
「1点のAFより、9点のAFの方が優れている、何故ならば、9点AF
であれば、9つの被写体(例:9人)に同時にピントが合うからだ」
という、原理的に完全に間違った事を言う人は良く居た、これは
笑い話ではなく事実だ。
まあベテランであってもそうだったので、ビギナーであればなおさら
であろう、ピントという概念そのものが理解できていないのだ。
60年以上前であればなおさらだ、カメラ(写真)の基本原理が全く
理解できていないままで撮影をしようとするユーザー層が大半で
あったに違いない。
そうなれば、ピンボケ、露出オーバー、露出アンダー、手ブレ等の
失敗写真は当たり前だ。
これは60年前だからそうなのではなく、仮に現代のデジタルカメラ
ユーザーに「AFも、自動露出(AE)も使用禁止」と言ったら、
おそらく大半のカメラマンが同様に失敗写真を連発する事であろう。
こんな状態の中、60年前であれば、ちゃんと綺麗に撮れる写真を
撮る事自体が、高度な知識と高度な技術(技能)を必要とされる
事であったのだろうと思う。
そんな中、ピンボケ問題を回避するための1つの方法論として
「パンフォーカス技法」があったのだろうと思う。
つまり「広角レンズをf8にして、ピントを3mにすれば、ピンボケ
にはなりませんよ」というノウハウである。
これを知っていれば、ピンボケ写真が激減する事で、数十年前では
非常にありがたがれたのではなかろうか?
まあしかし、現代ではカメラも勿論進化したし、文化も変化した、
パンフォーカス技法では広角でかつ中遠距離の被写体しか撮れない。
普通にその場にあるもの(被写体)を、普通に綺麗に撮るだけでは
現代では誰も見向きもせず、興味も持たない、それはあくまで
「当たり前」の事だからだ。
だから「写真」とう言葉も、よく昔のベテランカメラマンが言うように
「真実を写す」などというものでは、まるで無くなってしまった。
現代ではむしろ撮り手の意思を、どのようにその写真に込めるか、
という「映像表現」としての役割が、はるかに重要な写真の基本
概念となってきた訳だ。
そんな時代の中「パンフォーカス撮影」などを行っても
やはり面白くない。何故ならば、その(撮影)条件が揃えば後は、
そこで誰がシャッターを押しても、結果は同じだからだ、
それならば結局、珍しいとか綺麗な被写体とかを撮るしかなくなり、
表現よりも被写体が優先になってしまう(被写体の勝ちの写真)
結局、撮り手の個性が無い撮影、創造性の無い撮影、そういうものは
すなわち、現代的ではないのだ・・

さて、という事だが、この方法であれば本システム(というかレンズ)
の問題点2つ(ピント、ボケ質)はこれで回避できる。
ピントはパンフォーカスで、この状態ではボケは発生しないので、
自動的にボケ質の破綻も起こらないという事だ。
だが、繰り返すが、全く面白みの無い撮影だ。
本レンズの使い道は、もう一度考え直す必要があるという事か・・
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さて、次のシステムは、レンズの課題回避の実験だ。

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、KIYOHARA VK70R (70mm/f5)
第5回記事で紹介したソフト(軟焦点)レンズである。
本レンズの出自は、その記事に詳しいので割愛する。
ソフトレンズは過去何本か紹介しているが、MFのピント合わせが
非常に難しく、それは、ミラーレス機のピーキング機能を用いても、
そもそもピーキングが効かず回避できない。
基本的に何処にピントが合っているか、まったくわからないのだ。
そんな中、AFのソフトレンズを紹介した、第38回記事での
ミノルタα用 AF100mm/f2.8SOFTである。
このレンズはAFが効く他、絞りとソフト量の調整が各々独立している。
(注:普通は絞り込むと球面収差が減って、結果、ソフト量が減るので、
被写界深度とソフト量の調整は、いずれも絞りの1つで共通で行う)
で、その際、絞りを絞っても、ソフト量を減らしても、同様に
ピントが見えるようになってきて、同時にピーキング機能も効くように
なってきていた。
ならば、
「それと同様に、ソフト量と通常の絞りを、2つつけたら良いのでは?」
というのが今回の実験内容だ。
KIYOHARA VK70Rはニコンマウントだ、ここに3つのアダプター
1)ニコンF→キヤノンEF
2)キヤノンEF→μ4/3(絞り羽根内蔵)
3)μ4/3→SONY E
を連結して用いてみる。

さて、撮影してみるが、やはりMFでのピント合わせは非常に困難だ。
NEX-7の236万ドット高精細EVF、優秀なピーキング機能や
拡大操作系,いずれを用いても、ピントはまったくわからない。
ならば、ソフト量を減らせば良いのだろうが、本レンズの絞りは
レンズ前面にある、すなわち、レンズ最前部の薄いリングを廻して
調整するのだが、この操作性があまり良く無い。
本来の想定される本レンズの使い方としては、レンズを前から見て、
予め必要なソフト量を絞りリングで決める、で、そこから
光学ファインダーやEVFを見て、ピント合わせをするのだろう。
だが、その方法では正確なピント合わせができない、そこで代替手段
としては、EVFを覗きながら、手探りでレンズ前部の絞りリングを最大
近くまで廻す、絞り込めばピーキング等でピント位置(距離)がわかる。
この時、ミラーレス機のEVFでは最大近くまで絞ってもEVFに映る映像
は暗くならない、ここが一眼レフの光学ファインダーと最も異なる点で
あり、一眼レフではこうした使い方が出来ない為、恐らくだが誰も
ピント合わせが満足に出来ない状態だったのではあるまいか?
で、次いで、絞りリングを戻しながら、適正なソフト量を決める。
(ここも一眼レフでは仕様上難しいところだ)
これで上手くいく筈だが、ところが、絞りリングを戻している時に、
ピントリングも少し廻ってしまう事がある。
加えて、どうやら絞り値を変えるとピント位置がずれてしまうという
「焦点移動」が発生している節もある、これらの為、ピント位置が
ずれてわからなくなってしまう。
さらに細かく言えば、絞り込んだ時には被写界深度が深く、目視でも
ピーキングでもあらゆる距離にピントが合っているように見える。
だが、ここで絞りを開けた際、結局のところ、どの距離にピントが
合っていたのか良くわからない。
だから、結局、この手法は通常よりは多少はマシだが、やはりピント
合わせが困難である事は変わりない。
で、今回、この問題の回避実験の為に用いたのが、アダプター3連結
による「二重絞り機構」である。
レンズ前部の本来のソフト調整より前絞りと、レンズ後玉以降にある
EFマウント用内蔵機械絞り機構(後絞り)、この2つにより、ピント
合わせの負担を減らそうという実験だ。
具体的には、前絞りでソフト量を調整したら、後絞りは被写界深度を
一時的に深くして、MFピント合わせを容易にし、ピントが合ったら、
後絞りを開放に戻して前絞りで決めたソフト量で撮影するという作戦だ。
だが、このシステムで後絞りを絞ると、どうなるかと言うと・・・

このように、光束が遮られて、画面がケラれてしまう。
思えば、このVK70Rというレンズの設計思想だが、そもそもは、
「ベス単フード外し」をベースにしている。
これは、ヴェスト・ポケット・コダック(VPK)という約100年前の
カメラが元になっている、そのカメラの単玉(1群2枚構成)レンズの
フード状の絞りを外すと、絞り開放による球面収差が発生し、
軟焦点レンズとなった事から、ソフトレンズの代名詞となったのだ。
同時にその改造方法が「ベス単フード外し」と呼ばれて流行した、
との事である。
本レンズVK70Rは、その「ベス単フード外し」の描写を復活させた
ヴェスト・キヨハラという意味の1980年代の限定発売レンズだ。
で、この単玉の前部に絞りを配置すれば、確かにベス単のフード状
絞りと同様に、絞り込んで球面収差を消し、シャープな写りを得る
事ができる、元祖VPKでは、その意味からも仕様上ではf11程度
まで絞り込んでいた(固定絞り)と聞く。
だが、後絞りでは単に光束を遮っているだけであり、球面収差を
減らす事は難しいのであろう、結果的に、ケラれが発生するだけで
ソフト効果の調整の目的には、ほとんど使用する事が出来なかった。
まあしかたない、これは光学的な原理なのであろう、前絞りと後絞りで、
どんな光学的な差があるのかは、これまで良くわからなかったのだが、
今回の実験である程度はっきりしたと思う。
後絞りは、やはり光量調整がメインであって、ボケ量(被写界深度)
やボケ質調整の目的には、ほとんど効果が無いのだろう。
では、別の実験として、前絞りを使って絞りをf11程度まで絞り、
100年前のVPK(ヴェスト・ポケット・コダック)のレンズの写りを
再現してみるとしよう。

う~ん、メチャクチャ固い!
VPKは、こんなに、パキパキな写りだったのだろうか?
なんだか、輪郭を筆で書き足したような不思議な写りだ。
まあでも実際にはこの状態で撮る事は無い、これはあくまで
ピント合わせを容易に行うために絞り込んでいるだけの話なのだ。
(だが、面白い写りなので、今後はこれも使ってみようかな・・?)
ここから絞りを開けていく。
「ベス単フード外し」では、その改造の結果としての開放f値は
f6.8程度であったと聞く。本VK70Rも、それと同様のf7前後に
調整してみよう。

ふうむ、確かに上品なソフト量と質だ、これは確かに良い。
ハロ(明るい部分の光の滲み)が結構出るが、まあそれはソフト
レンズの基本的な性質だ。
過去紹介した他のソフトレンズも同様な描写傾向であり、
また、ソフトレンズでは無いが、補足第1回で紹介したキルフィットの
テレキラーを、ソフト的に使った「マクロキラーもどき」でも
同様な効果が得られている。
これらが本来のソフトレンズだ。これは、ソフトフィルターとか
エフェクトとしてのソフト効果とは別物の描写だ。
勿論、ニコンDCレンズ(DC105/2、第35回記事)のDCリングを
過調整した場合の収差による軟焦点レンズ化とも異なる。
(私は、DCレンズを軟焦点レンズとは認識していない)
ソフトレンズは希少な為、なかなか実際に扱った経験のある人は
多くないのであろう(だから憶測が広まる)
本レンズVK70Rだが、現在、レア品となっていて入手困難だ。
代替製品としては、KENKO SOFT 85(第19回記事)や、
PENTAX 85 SOFT(2種類あるが、いずれも未所有)がある。
なお、最近、安原製作所からもMOMO100というVPKの写りを
再現したソフトレンズが発売されている(いずれ紹介予定)
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さて、次のシステムは、ちょっとした実験だ。

カメラは、SONY NEX-3
レンズは、オリンパス ボディキャップレンズ BCL-1580
μ4/3専用の15mm/f8の超広角レンズ(30mm相当)
ただし、パンフォーカスではなくピント調整レバーが存在している。
で、μ4/3用レンズであるのでイメージサークルは小さい、
これを、APS-C機に装着すると、当然画面周辺がケラれる。
問題は、どれくらいケラれるか?だ。
もし、本レンズのイメージサークルが十分に大きく、APS-C機でも
殆どケラれないのであれば、本レンズを22.5mm相当の
広角レンズとして使えるではないか・・
今回は、すなわちそういう実験である。

う~ん、まずは予想通りという感じでケラれている。
だが、意外にイケているかもしれない、アスペクト(縦横)比が
3:2のNEX-3であるので、画面左右周辺の隅が暗くなってはいるが、
これを例えば4:3アスペクトでトリミングすれば、μ4/3機装着時の
30mm相当ではなく、恐らくだが25mmくらいの画角になっている
のではなかろうか・・?
横位置でかつ空が入っているからケラれが目立つのであろうか?
だとすると、ちょっと構図を工夫して、ケラれを目立たなく出来ない
であろうか?

まあ、少しだけ目立たないが大同小異だ。
トイレンズのように、段階的にケラれるという訳でもなく、いきなり
ドーンと暗くなるので、「周辺光量落ち」(ヴィネッティング)効果
として使うのもちょっと厳しそうだ。
ちょっとここで違う実験をしてみよう。
NEX-3には、パノラマ撮影モードがある、これは、横方向(縦も可)
にカメラをスィングしながら、連続撮影をして、自動的な画像処理
により、前後の画像と共通部分を探して接続するという仕組みである。
本NEX-3やSONY製のカメラの他、FUJIやPANASONICのカメラにも搭載
されている機能である。
もし、ケラれがあるレンズのままでパノラマ撮影を行うと、
連結合成画像に、ケラれが入ってしまうのではなかろうか?という
想定による実験である。
じゃあ、やってみよう。

ふ~ん、パノラマ合成画像にケラれは入らないのか!
この実験結果は技術(エンジニアリング)的には興味深いものが
あるのだが、でも、普通に写ってしまったのでは面白くない(笑)
では最後に近接撮影だ、BCL-1580は30cmまで寄る事が出来る。

やはりちょっと物足りない、かなりの広角になっているので、もう少し
寄れて欲しい。もう少し寄れれば、15mm/f8のレンズでも背景ボケを
少し出す事が出来ると思う。
で、ここでデジタルズームを使えば構図上の自由度が上がるのだが、
残念ながら、NEX-3では純正AF単焦点以外ではその機能は効かない、
NEX-7等を使えばよかったかも知れない。デジタルズームをかければ、
画面周辺のケラれも減少していくので、その意味でも、その機能は
あった方が望ましい。
まあでも、上の写真のように構図を工夫して、ケラれ部分を暗所として
うずめてしまえば、ケラれは目立たなくなるので、そういう工夫を
する事がまず先決か・・
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さて、ラストのシステムは未紹介レンズだ。

カメラは、LUMIX DMC-G5
レンズは、TAMRON AF28-200mm Super Zoom f3.8-5.6
Aspherical XR [IF] MACRO (A03)
例によって、タムロンやシグマのレンズ名は長い、ちょっとこれでは
困ったものなので、以下28-200XRと省略する事にしよう。
2001年発売の、「元祖」とも言える高倍率AFズームである。
フルサイズ対応で、その優秀な仕様から大ヒットしたモデルである。
定価は59000円だったとの事だが、新品値引きもあり、中古も豊富に
市場に流通していた。
私が本レンズを入手した事は2回あり、まずは2000年代前半に
NIKON用を購入したのだが、すぐ飽きてしまい、欲しいという知人に
譲渡した。
が、数年して、別の知人がCANON用の本レンズがいらなくなった
ので引き取って欲しい、と頼まれて、やむなくこれをまた購入。
だが、CANON用では第69回記事で紹介した 28-300XRをすでに
所有していたので、本レンズの必要性はあまり多くはなかった。
ただ、歴史的な名レンズであるので、一応抑えておくか、という
気持ちもあった。その後、本レンズはまた別の知人に長期間貸与して
手元に無かったのだが、今回、久しぶりにこのレンズが返ってきて、
だったら、また使ってみるか、と思った次第である。

μ4/3機であるDMC-G5に装着する事で、56-400mm/f3.8-5.6
の望遠系ズームとなる、デジタルズームを併用することで、
テレ端をさらに800mmへ、あるいは、デジタルテレコン併用で
(実用限界の)1600mm程度まで伸ばすことも容易に可能である。
広角端開放f値は、兄貴分の28-300XR(A06)のf3.5より、何故か
本レンズの方が少し暗いが、まあ本レンズが先に開発されたので、
300XR(2002年発売)ではちょっと技術の進歩があったのであろう。
で、28-200XRの最大の特徴は、ズーム全域で49cmまで寄れる事だ、
このため、望遠マクロ的に用いる事ができる。
なお、フローティング+IF方式なので、望遠近接時は見かけ画角が
変わってしまい、超マクロ撮影になる訳ではなく、実質的には
1/4倍の撮影倍率となる。(μ4/3機での使用時でフルサイズ換算
1/2倍マクロ。デジタルズーム2倍併用で換算等倍マクロとなる)
まあ、仕様上の問題点はさておき、本レンズは、望遠マクロとしての
使用は基本であろう。
なお、その際の開放f値はf5.6と暗くなるので、シャッター速度の
低下からくるブレには注意する必要がある。
もう1つの本レンズの使い方は、小型軽量な望遠レンズとしての
用途であろう、μ4/3機では400mm相当(以上)となるので、
遠距離被写体は得意だ。

今回は、逆光耐性のテストもあり、フードは装着していない、
しかし、遠距離被写体では若干フレアっぽくなるので、本来ならば
フードを装着するのが望ましいし、遠距離や逆光撮影は好ましくない。
この傾向は本レンズよりも兄貴分の28-300XR(A06)の方が顕著で、
せっかく超望遠域(μ4/3機で600mm相当)の撮影を期待しても、
被写体によっては、フレアや解像度の低下に悩まされる。
まあそういう意味では、本レンズの存在意義が出てくるという
事かもしれない、全て兄貴分が勝っていたら立場が無い訳だ。
では、さらに、超望遠撮影にトライしてみよう。
200mm(望遠端)x2(μ4/3)x4(デジタルテレコン)の1600mmだ。

背景の城までは直線距離で約2km、近距離の屋根瓦までは約120m
ここでは、光学ズームによる1600mmのように大きな望遠圧縮効果
(被写体を同一サイズで撮影しても望遠レンズだと背景が大きく見える)
は発生していない、あくまでパースペクティブ(遠近感)は200mmの
ままの状態だ(まあ、だから背景を入れれるという風に解釈しても良いが)
EOS用レンズなので、絞りの調整は後玉以降のアダプター内蔵機械絞り
を使用している、前述のソフトレンズでも述べたが、この絞り機構は
光量調整がメインで、被写界深度やボケ質調整の効果は僅かだ。
まあでも、それもレンズ設計によりけりで、本レンズの場合は若干の
被写界深度調整が効く模様だ。
したがって、望遠撮影でない場合は、通常は絞りを中間絞り位に
設定しておき、中望遠・中距離スナップ的目的に使う事も可能である。

被写界深度をある程度深くしておけば、MFの必要性が減るので、
ふいの出会い頭の被写体にも対応できるという事になる。
本レンズは、AFで、かつ複雑に内部カムが絡み合うフローディング+
IF機構であるから、ピントリングはスカスカで、かつ回転角は小さい、
これは原則的にはMF操作性に劣るという事だが、逆に言えば、ほんの
ちょっとしたピント微調整は速やかにでき、∞位置から3~5m程度、
とかへのピント位置変更は瞬時に行える。
本レンズの購入価格だが、2000年代前半に17000円であった、
まあ知人からの購入で、その方はレンズ買い替えの資金にするとの
事であったから、値切る事はなく、当時の中古相場相当で買い取った
のであった。
本レンズは多数の中古が現在でも中古市場に溢れている、
一時期(2000年代後半~)APS-C機においては、28-200mmは、
42-300mm相当となり画角が中途半端、という事で嫌われ、
広角18mmスタートのAPS-C専用高倍率ズームに人気を奪われた
のだが、フルサイズデジタル一眼が手の届く価格帯になってきた現代
においては、再評価されている兆しもある。
現在の中古相場は、玉数の多さともあいまって、7000~10000円位
と安価だ、この価格だったら性能的な面からのコスパは良いかと思う。
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さて、今回はこのあたりまでで、次回補足編に続く。