ミラーレス・マニアックスの補足編、その3。
このシリーズでは、本編記事で紹介できなかったレンズや、
機材の課題の再確認、特殊な使用法のテスト等の補足を
行っている。
まず、最初のシステムは、レンズの問題点の再確認だ。

カメラは、RICOH GXR
ユニット(レンズ)は、A12 28mm/f2.5
第1回、第7回、第24回、第59回記事と何度も登場している
ユニットであるので、システムについての詳細説明は割愛しよう。
まあともかく、ピントが合わないという重欠点を抱えるシステム
なのだが、今回チェックするポイントは、その問題点とは別だ。
これを使っていて、いつも感覚的に思う事なのだが・・、
「本ユニットは、レンズ仕様に対して、被写界深度が浅すぎるので
ないか?」という疑問点である。

「28mmレンズだから被写界深度(ボケ量)は、こんなものであろう」
と思うかも知れないのだが、本レンズの28mm/f2.5というスペック
だが、これは実焦点距離ではなく換算焦点距離だ。
APS-Cユニットなので実際のレンズの焦点距離は18.3mm/f2.5
となっている。
ちなみに最短撮影距離は20cmである。
しかし近接撮影とは言え18mmの超広角レンズで、ここまでボケる
のであろうか・・?
疑っている事だが、GXRはレンズ単体ではなくユニットという形で
センサーとレンズが一体化されている。
ここで画像処理エンジンだが「個々のレンズに合わせて最適化
されている」という事だ。なので、もしかすると「被写界深度を浅く
する為の特別な画像処理が加わっているのではなかろうか?」
という疑問点(疑い)である。

でも、もしそうであれば、近接撮影はともかく、中距離撮影の場合
とかでは、被写界深度が取れなく(深くならない)なってしまう恐れも
ある。近接撮影の場合のみボカすようにするとかは面倒だろうから、
やはり、そんな特殊な画像処理はやっていないと思うべきか?
どうやって調べたら良いか? ・・そう、同じような仕様のレンズと
比較してみたら良い筈である。
さて、手持ちのレンズの中で、18.3mm/f2.5 という本レンズの
仕様に最も近いものは・・
あった!これだ。

SIGMA 19mm/f2.8DN
第22回記事で紹介したミラーレス機専用レンズだが、これをAPS-C
機のSONY NEX-7に装着する事で、GXR A12ユニットとほぼ同じ
センサーサイズであるから、画角も両者約28mmと同等になる。
で、最短撮影距離も両者20cmと全く同じ。
違うのは開放f値だけだ、GXRの方はf2.5であるので、これを半絞り
だけ絞って、f2.8で使う事にしよう。
これで、ほぼ同一のスペックの2本のレンズ(システム)が揃った。
じゃあ、同じ被写体をまずSIGMA 19mm/f2.8で撮ってみよう。

上が、NEX-7+SIGMA19mmの写真。
撮影距離は最短撮影距離付近の25~30cmであり、絞りはf2.8。
次いで、GXRの方だ。

上が、GXR+A12 28mm(実際には18.3mm)/f2.5
撮影距離はほぼ同じ、絞りはSIGMAと合わせる為にf2.8としている。
どうだろうか? う~ん、色味とか微妙に違うのはカメラ(ユニット)
の差であり、まあ今回それはどうでも良い。
画角が微妙に違うのは、両者は焦点距離もセンサーサイズも、
ほんの僅かだけ違うし、そもそも手持ち撮影なので、完全に同一の
ポジションから撮る事は困難であるからだ。
で、それらを差し引いて比較すると・・
「ボケ量(被写界深度)は、ほぼ同じ」となっているように思う。
そもそも「被写界深度」は、レンズの焦点距離、撮影距離、絞り値、
許容錯乱円からなる厳密な計算式があって、それらが全て同じで
あれば全く同じになるのが当然だ。
この中で、許容錯乱円というのは、銀塩時代のパラメーターであり
デジタルでは定義が曖昧な為、一般には銀塩時代と同じ数値を使って
いるのだが、センサーサイズ(正確には画素ピッチ)で変化する
可能性もあるため、今回の実験では、両カメラとも、ほぼ600万画素
として、できるだけ計算式上の条件を揃えている。
良くわからないので、もう1組、
まずはNEX-7+SIGMA19/2.8

上がSIGMA19mmだ(絞りf2.8)
次いで、GXR

上が、GXR+A12 28mm(18.3mm)/f2.5 (絞りf2.8)
う~ん、どう見てもボケ量は同じにしか見えない・・・
すると「GXR A12 28mm/f2.5の被写界深度が浅い」
と感じたのは、やはり気のせいであったのか・・(汗)
「18.3mmという超広角が、そんなにボケる訳が無い」と思ったのは、
銀塩時代からのレンズ群での経験上の話だ、しかし、同クラスの
焦点距離のレンズは、最短撮影距離が20数cmとか30cmとか
(単焦点でも)あまり寄れないレンズであったし、開放f値も
f3.5以上で暗いものも多かった。
(ちなみに、最短もf値も、ズームならば、なおさら悪い)
それが、GXRのA12では最短20cmまで寄れて開放f値もf2.5と
明るい。なので、想定していたよりも被写界深度が浅く(ボケ量が多く)
感じたのであろう。
・・・という事で、何も問題ありませんでした、おさわがせ。
まあでも、何か疑問に感じたら、仮説を立てたり、実証の方法を
考えたり、実際に実験をやってみることは絶対に必要な事だと思う。
それをやらないでいると、自身の思い込みとか、他人の話を鵜呑み
にするとか、そういう風になってしまう危険性もある。
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さて、次は機材の問題点の回避方法の実験だ。

カメラは、LUMIX DMC-G5
レンズは、フォクトレンダー SCスコパー35mm/f2.5
第5回記事で紹介したレンズである。
SCというのは、銀塩レンジファインダー機のNIKON Sマウントと、
CONTAX Cマウントという事である。
両者のマウント形状は同じだが、距離(ピント)の繰り出し方が
異なり、50mmより望遠のレンズでは互換性が無い。
私は銀塩時代には、BESSA R2CというCONTAX Cマウントの
特殊(レア)なカメラに本レンズを装着して使っていた。
デジタル時代には入ってからしばらくは、SやCマウントのレンズは
使いようが無かったのだが(装着できるデジタルカメラが無い)
これも他のレアマウントと同様、ミラーレス時代になって復活した。

本レンズはオールドではなく、2000年代の新しい設計、しかも
コシナ製の贅沢な設計である、つまり基本的な描写力は高い。
問題点はただ1つ、35mmレンズなのに最短撮影距離が
90cmと異常に長い事だ。
その理由は、NIKON SやCONTAXレンジ機の構造上の問題だ。
距離計連動範囲が90cmからとなっていたのだ。
まあ、これはレンジファインダー機及びそのレンズ群の宿命だ、
銀塩時代、皆、よく我慢してこういうシステムで撮っていたものだと
レンジ機用レンズを使うたびにそう思う。
で、今回は最短撮影距離の問題を回避しながら使ってみる。
回避の手段だが、思いついたのはヘリコイド内蔵型アダプターだ。
しかし、手持ちのS/Cマウント対応アダプターにはその機能がついて
いない。確か、S/Cヘリコイドアダプターは、販売されていないか、
あったとしても高価だったと思う。
で、「複数アダプター組み合わせ」の手法を考えてみたが、それも
どうも組み合わせの手段が無い。
ならば、接写リングか?と思ったが、それもちょっと組み合わせの
手段が無い。どうもS/Cマウントというのが、他のマウントとの
親和性に欠けるという事なのだろう。
じゃあ、という事で、「デジタルズーム」(デジタルテレコン)は
どうだろうか? まあ、安直だが、これを使う事で見かけ上の
撮影倍率を上げて、寄れる事と等価にならないだろうか・・?

まあ、確かにデジタルズームやデジタルテレコンを使えば、
近接撮影のような感じにはなる。
実際に計算してみると、
本システム(μ4/3+35mmレンズ)で、撮影距離90cmの場合、
撮影範囲は、約44cmx33cmとなる。
ここで、デジタルズーム2倍の場合、70mm相当として計算すると
撮影範囲は、約22cmx17cmと半分(面積比は1/4)となる。
これは、35mmレンズのままで撮影距離を半分、つまり45cm
とした場合の撮影範囲と同じだ。
同様に、デジタルズーム(テレコン)4倍では、撮影距離を22.5cm
まで縮めているのと同じ事(撮影範囲)となる。
すなわち、デジタルズームを2~4倍程度の範囲で使えば、撮影範囲
的には、最短撮影距離を45~23cm程度に短縮したのと同様となり、
これであれば、35mm最強クラスの最短撮影距離を誇るレンズ群、
・SONY DT35/1.8 (最短23cm 、第60回記事)
・MIR-24H (最短24cm 、第14回、第55回記事)
・CANON EF35/2(最短25cm、第68回記事)
あたりと同等の性能となり、不満は無くなる。
・・不満は無くなる筈だったのが、
やはり単に(デジタルズームで)画面拡大しているのと
実際に最短撮影距離が短くなるのとは、大きく異なる。
何が問題か?といえば、撮影アングルの自由度が無い事だ。
デジタルズームで拡大しても、最短撮影距離は90cmのままだ、
例えば、目の前の高さ1m位の場所に花があったとする。
この花を撮る際、最短25cmであれば、その花を、横からでも上から
でも下からでも、好きな角度(アングル)から撮影できる。
けど、90cmの撮影距離では、その1mの高さの花は、横から撮るしか
無いではないか・・上からは、1.9mの高さから撮る事になり、
これは脚立か2階から撮らない限り無理、下からは、地上10cmから
撮ることになり、これも困難だ。

結局、デジタルズーム(デジタルテレコン)で、最短撮影距離の
長さを緩和しよう、という方法論が無理であった(汗)
まあ元はと言えば、レンジファインダー(用レンズ)の最短撮影
距離の長さが問題なのだ。
レンジ機での50年以上も前の古い撮影技法であれば中遠距離
被写体をスナップ的に撮るだけで問題はなかったのかも知れない。
が、現代の様々な撮影技法においては、最短の長さは致命的だ。
結局、ヘリコイドアダプターを使わない限りは無理という事か・・
まあでも、前述のGXRの話と同じで、疑問やアイデアが出たら
実際に試してみる事は非常に重要だ。
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さて、次のシステムは、これもまた新しい実験だ。

カメラは、FUJIFILM X-E1
レンズは、COSINA MC MACRO 100mm/f3.5
第48回記事で紹介済みのレンズだが、これを、ティルト・アダプター
で装着している。
ティルト・アダプターは、レンズを傾けて画面内の一部のみピントを
合わせたり、逆に傾いた被写体全体にピントを合わせる効果がある。
前者は10数年前から「ミニチュア(ジオラマ)写真風」効果として
流行し、(それが撮れる)LENS BABYなどの製品群を生み出した。
後者は業務用商品写真や建築写真、集合記念写真等の分野では
「アオリ撮影」として、古くから行われていた手法だ。
LENS BABYについては、第11回、第14回、第40回記事で
紹介している。また、ティルトアダプターについては、
第72回記事で対角線魚眼レンズのZenitar 16mm/f2.8を
試していて、これはかなり効果が高かった。
しかし補足編2で、ピンホールレンズ KENKO PIHOLE 02を
装着して実験した時は効果が無かった、これはまあ、そういう原理
なのでやむをえない。
今回は、マクロレンズでティルト・アダプターを試してみよう。
画角が狭く、撮影距離も短い(つまり、画面内の被写体間の距離差も
少ない)100mmマクロであり、かつLENS BABYや業務用ティルト
レンズに比べ、傾きの最大角度も小さいティルト・アダプターであるから、
効果が出難いかと想定されるが・・まず試してみよう。

トケイソウの花、2つの花の距離は20cmほど離れていて、右側の
花が奥まった位置にある。一般的なレンズでは、被写界深度が浅い
状態では、これらの2つの花に同時にピントを合わせる事はできない。
だが、ここでティルト・アダプターを左に傾け、同時に絞りも少し
絞り込んで、ピント面をできるだけ2つの花の相対位置と平行に
するように設定すると、この両者にピントを合わせる事ができる。
余談だが、「トケイソウ」は、英語で「パッションフラワー」
これはパッションフルーツと同じだと私は思っていて、トケイソウ
(野草である)の実を捜せば、そこにパッションフルーツが出来て
いるものだ、と思っていたのだが、どうやらそれは違う模様だ。
食べられるパッションフルーツは「クダモノトケイソウ」という
種類で、同じ「科」だが、微妙に違うらしい。
まあ、トケイソウ科自体、数百種類もある模様なので、普通に
そのへんで野生で生えているのトケイソウから、パッションフルーツ
が取れるような事はそう簡単には無い模様だ。
さて、ティルト・アダプターだが、今度は逆に右に傾けてみよう。

同時に絞りも開けている、この状態だと2つの花の距離の差以上に
ボケの差が大きくなっている。
ちなみに、この両者の撮影ではピント位置も各々変える必要がある、
ピントを固定したままで、ティルトを傾けるとこのようにボケ量が
変化するという訳ではない。
で、この実験は、まさしく、普通にティルト・レンズを使っている
状態と同じだ。まあ、ティルト・レンズ、と言っても、私は本格的
なものは(高価なので)所有しておらず、せいぜいLENS BABY
くらいなのだが・・
ティルト・アダプターは、マクロレンズであってもその効果は有効
であるという事がわかった。
じゃあ、これをもっと活用していこう。
まず立体被写体で、被写界深度を極端に浅くしたり深くしたりする
事ができるという効果。

こちらは、木立の奥になるほど強烈にボケるという効果。
ティルトの原理から言うと、木々を結ぶ線とは逆方向にティルトを
傾けるとこのようになり、逆に、出来るだけ平行になるように
傾けると通常より被写界深度を深くする事ができる。
その際に、絞りの効果もティルトに併用するとさらに良いであろう。
つまり、大きくボカすならば絞りを開け、パンフォーカスにするならば
絞りを絞る事が良い。
この効果は立体被写体の場合は、撮影前に事前によく考えて
ティルトや絞りの操作を行わなければならない。
ティルトの傾きを変えると前述のようにピント位置も変わるので
意外にちょっと面倒な操作となるが、まあ、この効果はEVFでも
撮影前に確認できるので、時間をかければなんとでもなる。
そして立体被写体ではなく、平面被写体においても同様に
ティルト操作を行うと、ピント面を傾ける事ができる。
以下がその例。

ここでは橋の上を走る車を待ち構えて、その位置にのみピントが
来るように、あらかじめティルトを傾けて待機し、車が来たら
シャッターを押す。
この場合、被写界深度を深くするように、というのは、元々平面的
被写体なので無理だ。なので、平面のどちらか(上下左右)に
ティルトしてピント面を傾け、画面内の特定の部分にしかピントが
合わない効果を作り出している。まあ、これが、ミニチュア効果とか
ジオラマ効果とか呼ばれるものだ。
ただ、これをやるならば、被写体もレンズも選ぶ必要があるだろう。
今回はテスト的に100mmのマクロレンズ(換算150m相当)を
使ってみたが、画角が狭いので、なかなか被写体選びは難しい。
ちなみに、カメラもまた問題だ、MF操作系全般とその精度に課題を
持つX-E1では、このような難しいシステムは正直厳しい。
ちなみに、何故MF性能に問題を持つX-E1用にティルト・アダプターを
買っているか?と言えば、X-E1の用途がなかなか見つからないからだ。
何かX-E1に独自の役割を与えなければ、性能がNGなカメラは、
だんだん使い道が無くなってくる。
しかし、無理してでも色々役割を与えて使ってさえいれば、X-E1の
減価償却が済む頃(=1枚2円の法則)になれば、いずれ、X-T3か
X-Pro3だかでAF/MF精度や操作系全般の改善がなされた機種が
出てくるであろう。
つまり現在はともかくとして、将来的にはXマウントのシステムは
使えるようになるかもしれない、それを期待しての事だ。
カメラはどんどん新しいものが出ると同時に、どんどん古くなってしまう。
だからあまり本体は重要ではないのだ、重要なのは勿論レンズであり、
レンズを含めたシステムを長期間使えるように考えなければならない。
新品の最新カメラに飛びついて、予算がそれで限界になってしまい、
レンズの事をちっとも考えない、というのは完全にNGだ。
余談が長くなったが・・ティルトの件に戻ると。
で、どんな被写体を、どれくらいの画角で撮るかとか、撮影距離とか、
元々のレンズ自体の被写界深度も深く関係がありそうだ。それらが
うまくドンピシャにハマれば、なかなか面白い効果が出そうだと思う。
でも、あまり懲りすぎると本格的な業務用のティルト&シフトレンズ
が欲しくなるかもしれない、それらはニコンやキヤノンの一眼レフ用
に昔から販売はされているが、かなり高価であり、それに、効果をより
発揮させたい場合は、フルサイズ・デジタル一眼の方が良いと思う、
中古で集めたとしても合計数十万円の出費となるのでちょっと厳しい。
まあ当面は、本ティルトアダプター(新品約8000円相当)や、
LENS BABY 3G(中古取得価格約1万円)で遊んでみるとしようか・・
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さて、ラストのシステムは、未紹介レンズだ。

カメラは、LUMIX DMC-GX7
レンズは、PANASONIC G25mm/f1.7 (H-H025M)
本レンズの元々の型番はH-H025であり、
本来Sがシルバー Kがブラックとなっている、Mというのは、恐らく
レンズキット用のタイプであり、梱包箱(元箱)が簡略化されている。
なお、PANASONICのレンズ型番は統一されたルールが無い模様で、
個々にバラバラでありわかりにくい。また、カメラの説明書用語も
多くの誤用が目立ち、褒められたものではない。
で、このタイプが大量に在庫になってしまったからか?2016年春頃に
大手カメラチェーン店がこれを大量に買取り、定価37000円を
半額程度で「中古品扱い」として市場に流した内の1本だ。
購入は比較的最近の為、シリーズ本編には間に合わず、補足編での
紹介になった次第だ。
定価37000円、実売2万円台前半と安価な「エントリーレンズ」である。
しかし、いつも書いているように、エントリーレンズは良く写る、
そうでないと、ユーザーが次に高価なレンズを買わなくなるからだ。
さて、本レンズの写りはいかに・・?

最短撮影距離は25cmと、焦点距離にしては普通だ。
ここではデジタルテレコンをかけて、さらに撮影倍率を上げている。
絞りf1.7をフルレンジで使用するために、ND4減光フィルターを装着、
最低ISO125、最高シャッター速度1/8000秒のGX7の性能と
あいまって、これでほぼ絞りを開放から最大まで自由に使う事ができる。
どうやらボケ質破綻が出やすいレンズの模様なので、絞り値の細かい
制御は必須になるであろう。
ただし、μ4/3の純正AFレンズでは、絞りを絞っても、その状態では
EVFやモニターでは確認できない、絞り込み(プレビュー)操作が
必須となるのだ。しかし、一眼レフとは異なり、ほとんど全ての
μ4/3機には、専用の絞込みボタンが存在しない、どこかのFn
(ファンクション)キーを犠牲にして、そこに機能を割り振る必要がある。
だが、自由に使えるFnキーの少ないDMC-GX7だ、とてもその余裕は
無い為、絞りをプレビューせずに撮影をしていた。この場合、絞りを
変えて撮影し、撮影後のレビュー(自動再生)を参照するという事だ。
この為、無駄打ち(撮影枚数)が非常に多くなる、
絞込み測光では無い事はμ4/3システムの大きな弱点であろう、
(他のミラーレスシステムでは、絞込み測光の場合もある)
よって、μ4/3機で純正AFレンズを使う上では、物理的なFnキー
(注:タッチパネル上のソフトFnキーはEVF使用時には操作不能で
あり意味が無い)が沢山ある機種を使うのが良いと思われる。
今回、GX7に本レンズを装着しているのは、GX7のMF操作系が
Gシリーズに比べてイマイチなので、GX7をAFレンズ専用機に
するかどうか?という事へのテストの意味もあった。
だが、どうやらFnキーの少なさ、あるいは絞り込み測光で無い事から
すると、AF専用機にするにしても、ボケ量やボケ質の厳密なチェック
の不要な広角AFレンズ(例:G14mm/f2.5)あたりを使うしかない
かと思われる。
やはりGX7は、不十分な仕様であってもMFレンズのアダプター母艦
にするのが良さそうだ・・
まあ、総合的には、近年のμ4/3機は、MF望遠レンズの使用が適して
いるように思える、それは絞込み測光である事、高感度、優秀なEVF,
優秀なピーキング、デジタルズームやデジタルテレコン、内蔵手ブレ
補正、そしてそもそも換算画角が2倍になること、など、いずれも
MF望遠レンズに有利だ。
だが、GX7の小さいボディは大柄なMF望遠レンズの装着はバランス
が悪いので、その点がちょっとGX7の存在意義の弱いところだ・・・

さて、レンズであるが、前述のとおり、解像力重視型でボケ質破綻
への配慮は少なそうだ。
逆光性能を見るために、フードは装着していないが、まあ、あまり
逆光耐性が弱いという訳でもなさそうだ。
ちなみに、フードを装着する際は、レンズ前部の飾りリングを外して
から代わりにそこにはめ込む、これは余計な操作を強いられ、外した
リングの保管場所にも困ってしまうので、あまり好ましくない仕様だ。

まあ普通に良く写るレンズである、特に個性や必要性は感じられない。
大口径単焦点というものを知らないエントリーユーザー層には良い
かもしれないが、マニアであれば、MFの50mm/f1.7級のレンズを
装着した方がボケ表現力の高さや、絞込み測光でのボケ量・ボケ質
確認の上でも有利であろう。AFでフルオートか、せいぜい絞り優先で
撮るようなビギナー向けのレンズであるとも言える。
ところで、エントリーレンズを、近年「蒔き餌レンズ」と言う事もある
模様だが、レンズを「エサ」扱いでは、これは売る側にも買う側にも
失礼な表現であろう。その呼び方には賛同できないので、本ブログ
では、あくまで「エントリーレンズ」と呼ぶ事にしている。

本レンズの購入価格だが、前述の大手チェーン店では、当初、これを
21000円台の価格で未使用中古品で販売、100本以上もリストに
上がっていれば、当然「もっと安くなるだろう」という判断ができる。
しばらく待つと、19000円台まで下がった、でも誰も買わない。
さらに待つと、17000円台まで下落、でもまだ買わない。
結局、私が購入したのは、14000円まで下がったタイミングだった。
これだったら、たとえNGレンズであっても、まあ許せる価格だからだ。
ちなみに、他のマニアも「下げ止まり」と見たか、その価格帯の個体は
一瞬で売り切れた。
まあ、新品14000円(税込)であれば、この性能であれば、コスパは
良いと言えるであろう、他のミラーレス用エントリーレンズと
比較したとしても、1万円台前半の中古価格で、そこそこ良く写る
レンズは沢山存在する。
新品在庫がはけた後、本レンズを中古として購入する際でも、
まあ適正な相場は15000円までではなかろうか?
そんな感じの印象である。
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さて、今回はこのあたりまでで、次回補足編に続く。