
さあ、今年の「熱い季節」も真っ盛り。
今回の記事は、2015年8月2日、滋賀県大津市・琵琶湖岸の
なぎさ公園で行われた「ドラゴンキッズ大会」の模様より、前編。
その名の通り、この大会は、子供のドラゴンボート大会である。
2006年から始まったこの大会も、すでに10回目、すっかり
琵琶湖の夏のイベントとして定着した。

風向明媚な琵琶湖、湖上には、遊覧船「ミシガン」や「ビアンカ」が
優雅に進み、ヨットやウィンドサーフィン、水上バイクなども行きかう。
そうした中を、小学生の子供達や、その親御さんを乗せたドラゴン
ボートが湖上を滑っていく・・・
と言うと、なんだかのんびりした夏休みのイメージだが、実は、この
大会は「選手権大会」と呼ばれているくらいで、かなり競技性が強い。
ドラゴンボート専業チームを後ろ盾にした常連の3勢力が、毎年、
三つ巴戦を繰り広げる、そう、子供の大会とは言え、お父さん達の
「代理戦争」とも言える、シビアな戦いの舞台なのだ。

さあ、子供達が集まってきた、めいめい準備運動を進めている。
今日の参加チーム数は23と、この手の特殊なイベントとしては、
まずまずの規模のチーム数だ。
特殊というのは、ドラゴンボートの子供の大会というのは全国でも
類を見ないからだ。
個人的には大阪(例えばATC)でも、キッズ大会を、いずれ実現
したいと考えてはいるが、なかなかその実現は難しいであろう。
やはり「マザーレイク琵琶湖」を擁する滋賀県は、子供の頃からマリン
スポーツに親しむ機会が多く、環境面では申し分無いからだ。
レースのレギュレーションだが、従来からの「20人漕ぎ小学生の部」
と「20人漕ぎ親子の部」の2つに加え、今年から「10人漕ぎの部」が
加わり、3カテゴリーだ。
なお、10人漕ぎでも、専用の艇を用いるのではなく、22人乗りの
レギュラー艇を用いる、これは、ここ2年ほど、ATC大会、日本選手権、
堺泉北大会、琵琶湖グランドシニア大会などで採用されている方式で、
多数のチームメンバーを集めるのが難しいドラゴンボートの大会に
おいては、チーム側からは参加の障壁が減り、運営側からは複数の
専用艇を準備する必要が無いため、22人艇→10人漕ぎが、
現在流行となってきている。
また、少し変則的な例としては、(強風で中止になってしまったが)、
静岡の御前崎大会が、22人艇→16人漕ぎであった。
レギュレーションを4人減らしただけで地元チームなども集まりやすく
なり、参加チーム数が例年より増えたとの事だ。
ただ、琵琶湖で用いる旧艇(ペーロン艇)は重量が650~700kgも
あると聞き、かなり重い。それで10人漕ぎ、しかも今回漕ぐのは
小学生中心であり、相当苦労するだろうし、かつタイムも出ないとは
思うが、まあ、琵琶湖の艇は、重いだけあって、安全性・安定感は
抜群なので、初心者のチームでも安全に大会が出来るという意味では
良いであろう。
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さて、ざっと本大会での主要な参加チームを紹介していこう。

大津市の「平野スポーツ少年団」チーム。
いや、チームというか、これはもう「軍団」と言っても良いかもしれない。
なにせ、各カテゴリーに、ソフトボール、少年野球、サッカー、
バレーボール、バドミントン、と様々なスポーツ競技のチームを
エントリー、その数は、全体の参加チーム数のおよそ半数にも上る。
勿論、本大会の最大勢力である。

ちなみに、「平野軍団」のバックボーンとなるドラゴン専業チームは、
滋賀県の強豪チーム「小寺製作所」だ、監督の通称「小寺団長」は
地元のスポーツ振興にも力をいれていて、その1つの現れがこの
状況なわけだ。なお、「平野軍団」の中でも、本大会優勝候補と
なっている強いチームが、小寺団長が直接指揮を取る「バドミントン」だ。

ただし、バドミントンチームは1つではない。小学生の部に1つ、
親子の部に2つ、10人漕ぎの部に1つ、合計4つの異なるメンバー
のバドミントンチームをエントリーし、あわよくば「全カテゴリー制覇」
の偉業を狙っているようにも思える。
あるいは、バドミントン以外の複数のスポーツチームにより、
例えば、親子の部のカテゴリーでの、ワンツーフィニッシュ、または
1~3位入賞独占などの野望があるのかも知れない。
この強大な「平野軍団」に立ち向かうのは、個々の1チームではなかなか
難しい、例えば、地元大津市でこの大会常連の「日吉台スポーツ少年団」
こちらは過去入賞経験を持つ強豪であるが、今日はメンバーが集まら
なかったのか、10人漕ぎの部に参戦だ。
同様に10人漕ぎの部では、初出場の「青山イーグルス」が居る。
ドラゴンの選手がコーチしているようだが、実力は未知数だ。
また、「ボーイスカウト(カブスカウト)大津第15団」は、
10人漕ぎの部が出来たことで、久しぶりのエントリーだ。

親子の部での単独参加としては、初出場の「タカラドラゴン」がある。

日本酒、チューハイなどで有名な「宝酒造」のチーム。
本大会での出場は初めてであるが、今年5月の「宇治大会」でも
市内の部で出場していた、ドラゴンボートの選手の親御さんが2名ほど
入っているチームであり、こちらも今後戦力を増してくるかもしれない。

さて、こちらは、本大会第二の巨大勢力「大津スキースポーツ少年団」
(以下大津SS)である。
本大会の最初から、恐らく全大会において、必ず入賞あるいは優勝を
遂げている超強豪チームだ。本大会でも、従来からの「小学生の部」と
「親子の部」に20人のフルメンバーを乗せ、昨年までは、3チーム
であったのが、今年は4チーム参加にバージョンアップしている。
小学生の部には「大津SS 赤龍丸」の1チームがエントリーだが、
こちらは6年生のドラゴンキッズ経験者を中心とした強力なチームで
同カテゴリー優勝候補の筆頭だ。
また、親子の部には、「大津SS青龍丸」「白龍丸」「黒龍丸」の
3チームをエントリー。応援団の数も非常に多く、「平野軍団」と
まっこう勝負にも思える。
ちなみに、バックを支える、ドラゴン専業チームは、滋賀県の強豪
「龍人(どらんちゅ)」だ。
「平野」と「大津SS」の軍団一騎打ちと思いきや、少人数でも強力な
チームが1つある。

ご存知、町内会最強チーム「池の里Laksers!」だ、
毎年親子の部に「池の里Junior Lakers!」として出場、連覇を含む
入賞を続け、「平野軍団」「大津SS軍団」に引けをとらない戦績だ。
いつも書いている事だが、「池の里」の弱点は、町内会チームであるが
故の、メンバー募集や新メンバー加入が困難なことだ。
ジュニアの場合も同様に「純血」を守るため、実際に「池の里」メンバーの
子供達が選手として参加する、しかし、連覇を続けていた頃の子供達は
すでに卒業し中学生や高校生になっている。小学生の数が少なくなって
きたため、近年は戦力が弱体化、そして、毎年「来年は参加が難しい」と
いいながらも、なんとかエントリーを続けている状況だ。
池「いや、来年こそ本当に危ないんです、なので、今年を最後と思って
また優勝を狙います!」
とのことである。
で、池の里のT監督は・・と言うと、おや、何処にいるかな?

ああ、木陰に居ましたね、しかも、カメラとか持って、すっかり
観戦モードではないですか。
匠「あれ?、今日は漕がないんですか?」
T「先週の高島ペーロンで、艇を降りるときに腰を痛めちゃって・・」
匠「おやまあ・・せっかくペーロン大会では優勝したのに災難ですね」
T「今日は応援ですが、今年で最後の戦いと思って優勝を狙います」
匠「毎年毎年最後と言ってますけどねえ・・笑 まあ、「平野」の
入賞独占や「大津SS」の2カテゴリー優勝は阻止してくださいね」
T「了解です、今日は大人たちが頑張ってくれると思います」
まあしかし「池の里」も1チームだけだ、本当に優勝を狙っていかないと
表彰台に上るのは「平野」と「大津SS」ばかりになる可能性も多々ある。
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さて、今年の琵琶湖はちょっとした問題が出ている。

それは水草(藻)が酷いこと。
まあ、例年多少はあるし、ある程度は、地元大津市や、観光船ミシガン等
を運営する企業「琵琶湖汽船」がボランティアで清掃してくれているのだが、
今年は、2週間ほど前に大きな台風が連続して来襲したことで、琵琶湖の
水位が上がり、そのため、しばらくの間、下流の瀬田川や宇治川の
ダム等を全開放流していた、つい先日、その放流は止まったのであるが、
その影響か、琵琶湖の南端にあたるこのあたりには、多くの藻が溜まって
くるとのことだ、数日前に清掃した模様だが、上写真のようにいくらでも
溜まるありさまで、下手をすると警戒艇モーターボートのスクリューは
もとより、ドラゴンボートの航行にも影響が出そうだ。
さて、前置きが非常に長くなったのだが、とりあえず開会式の模様、
選手宣誓は、「日吉台スポーツ少年団」の子供だ。

ちょっと緊張してあがってしまった模様だが、微笑ましくて良い。
今日は、天候には恵まれた大会日和だが、心配は「暑さ」だ。
なにせ、天気予報では、37度オーバー、隣県の京都府などでは、
39度という、恐ろしい最高気温が予報されている、ここまでいくと
「熱中症に注意」どころの話ではなく、ちょっと危険な世界だ。
大会では勿論救護体制も整い、およそ10分置きくらいに、
熱中症対策のアナウンスが流れる。
また、アナウンスでは、ボートへの水分持込(ペットボトル)も
推奨している、熱中症対策は慎重を期す必要があるだろう。
で、子供達とは言え、選手のほぼ全員は、普段から各種スポーツに
親しむ頑健なキッズ達だ、これはむしろ、大人の方が危ないかな?
と思っていた。 まあ、ともあれ、気温は今のところ体温を超える
ような状況ではない、なお大会は午後1時くらいには終了する予定
なので、最も気温が上がる時間帯は避けることができるであろう。

「平野軍団」、しかも青のユニフォームは、主力の「バドミントン」だ、
ただ、前述のように、バドミントンだけでも4チームも出ているので
ちょっと見た感じでは、どれがどのチームかわからない。
レースの「組み合わせ表」と照らし合わせながらの観戦となる。

今進行中なのは今年から新設された「10人漕ぎの部」だ。
(小学生6名+大人4名)
本大会のルールは、各カテゴリーとも、「2回戦合計タイム制」である。
すなわち各チーム2本づつ漕いで、合計タイムの速いチームが勝ちだ。
10人漕ぎは重たい艇を少ない子供達で漕ぐので、私の事前予想では
200mのコースを、20人漕ぎの時の5割増しの、1分30~40秒位と
考えていた。
しかし、「平野バドミントン」は、それを1分20秒くらいで漕ぎきる、
ううむ、なかなかレベルの高い戦いだ。

20人漕ぎの「小学生の部」や「親子の部」となると、さらにタイムは
上がり、小学生の部(4人だけ大人が漕ぐ)では、1分10秒を切り、
親子の部(小学生10人+大人10人)では、1分2秒くらいという
驚異的なタイムである。
このタイムは年々上がる傾向にあり、初期のこの大会では、
最速でも1分15秒とか、それくらいだったように記憶している。
現状、もう2~3秒タイムが上がったら、1分を切り、大人のドラゴン
大会と同じくらいのタイムだ、まあ、もしかすると、優勝争いをする
キッズチームは、すでに大人のチームに勝てるレベルなのかもしれない、
一度、中堅ドラゴン専業チームと、対決してみると面白いかも(汗)
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やはり、「代理戦争」により、各チームの、特にお父さんお母さん達
が必死になっていることがタイム向上の1つの理由であろう。
それと、後ろ盾の各専業チームが、本大会も、遊びではなく競技性の
高い重要なドラゴン大会であるという認識が出てきたのか、子供達に
ちゃんとドラゴンの練習をさせていることも理由であろう。
さらには、この大会で、たとえば小学校1年から選手として参加したと
する、ならば6年生になるまで出場しつつければ、ドラゴン経験6年の
ベテラン(?)キッズ選手となる、一丁前に漕ぐことなど朝飯前であろう。
TVゲームで大人が子供に絶対に勝てないように、子供の技術習得は
速い、で、実際にそうなっている可能性もある。
しかし、そのあたりの感覚は、さすがに、湖国、滋賀県だ。
他府県、例をあげれば大阪などにおいては、子供達に対して、そこまで
マリンスポーツを推奨しないだろうし、あるいは、仮にそうしたくても、
練習環境も無ければ、指導する体系も整っていない状況だ。
これは琵琶湖の子供達にとっては、非常に恵まれた環境であると思える。
で、1つだけ問題点が出てきている、ここまでハイレベルになってくると
もはや「子供の遊び」とは言えない、下手をすると大人の選手ですらも
負ける速さ、となれば、他地区から、ふらりと新しく子供達のチームが
来ても、まるで手も足も出ない状態だ。
従来、この大会には、他地区、遠くは鳥取県とか、あるいは大阪府、
京都府などのチームが出場したこともあった、しかし、今年に関しては
なんと、全チームが大津市という状況だ、これは私が記憶している限り
本大会10回の歴史では初めてのこと。で、他地区不参加の理由は
ちょっと良くわからないが、もしかすると、他地区からの参加チームが、
レベル差に驚いて、参加をためらっているのかも知れない。
そうであれば、子供の大会にも「実力別カテゴリー制」を
導入しなければならなくなるかも知れない(??)
けど、キッズの「エキスパート」チームなんて、そら恐ろしい話だ。
だが、もしかすると、このムーブメントが大きくなってくれば、
そうしたドラゴン英才教育というのも決して不思議な話ではない。
実際に、将来的にはオリンピックにドラゴンボートを種目として
入れていこうという動きがあると聞く、仮にそうなったら、この大会
に参加している子供達の中から将来のオリンピック選手が出る
可能性は極めて高いではないか(!)
さて、今回はこのあたりまでとし、以降は「後編」に続く・・