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ミラーレス・マニアックス(27)

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さて、毎度おなじみ、安価なミラーレス中古機に様々な
マニアックなレンズを装着して楽しむというシリーズ。

今回27回目は、まずこのシステムから。

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カメラは、いつものアダプター母艦、DMC-G1
その大柄なG1が小さく見えるくらいの巨大なレンズは、
SIGMA APO Macro 180mm/f2.8である。

1990年代の銀塩AF一眼用レンズであり、これはEOS(EF)マウント
のものである。シリーズ第25回記事で説明しているが、この時代の
EFマウントのレンズは、2000年代以降のEOS(銀塩、デジタル)に
装着すると、エラーになって使用する事ができない。
それゆえに、EF→μ4/3アダプターを利用してのミラーレス時代
での復活だ。(注:機械絞り内蔵アダプターを使用)

レンズのスペックは、最短撮影距離は64cm、1/2倍マクロであるが
マイクロフォーサーズ機で使用することで、360mm相当の等倍
マクロ(相当)となる。
フィルター径は82mmΦと大きく、そのサイズのフィルターは高価で
あるため保護フィルターは使用していない。また、レンズフードも
内蔵されていないので取り扱いには注意が必要だ。おまけに、大き
すぎてショルダータイプのカメラバッグに入らない。

最大の問題は、その大きさに加え、重量である。
重量はなんと1600g近くもあり、銀塩時代の、他のあらゆる
f2.8級180mmレンズより重いことは勿論の事、たとえば近代の、
TAMRON 200-500mm超望遠ズーム(1200g台)よりも重く、
SIGMA 150-500mm超望遠ズーム(1700g台)に迫る重量と
なっている。

このため、ミラーレス機への装着は、アダプターの強度等もあり、
ほぼ限界に近い、これ以上重いレンズは、まあ使えないと思っても
良いであろう。サイズも大きく、ミラーレス機の中では大柄な
G1に装着しても、バランス的にも限界を超えているように思える。
c0032138_20192891.jpg

描写力であるが、フレアっぽくコントラストが低い。
まあ、この時代(1990年代)のSIGMA製レンズに共通の弱点では
あるのだが、カメラ側の設定などでコントラストを高めるのも対策
としては良いであろう。 

ただ、コントラストの問題を除いては、ボケ質の破綻も起こり難く、
さほど悪く無い。絞りについては、このレンズはEF(EOS)マウント
であるから、普通のアダプターではその制御が出来ず、今回使用の
機械絞り内蔵アタプターにおいては、このレンズの場合、あまり
絞り込むと、光束がケラrれ、画面周囲が暗くなってしまう。
まあしかし、微妙に絞ることで周辺減光(ヴィネッティング)の
効果を出すことも可能なので、その点については私は問題にはして
いない、むしろ問題となるのは、ボケ質の破綻が出そうな場合に
絞りを微調整する事が(ケラれの制約で)難しい事だろうか。
c0032138_20205050.jpg

フラット光の低コントラスト被写体においては、特に問題なく写る。
望遠とは言え、マクロレンズであるから、遠距離よりも近距離の
被写体でレンズ性能が出るように設計されているとも思われ、
さらには、こうしたネコのような、近寄り難い(=逃げるから)
被写体の中距離からの撮影に、こうした望遠マクロは適している。

しかし問題はやはり重量だ、ネコを発見してから”よいしょっ”
という感じで重たいレンズのついたカメラを向けないとならない、
この重さは致命的だと思われ、銀塩時代にこのレンズを、
思うように振り回せる人は殆ど居なかったのではなかろうか?
とも思ってしまう。

で、さすがにメーカー側も問題ありと思ったのか?後継機である
SIGMA 180mm/f3.5 は、口径を少し小さくし、重さを1kgを切る
までに押さえている(しかも等倍マクロとなっている)

さらに近年の最新型では、SIGMA 180mm/f2.8と再び f2.8
まで明るくなり、勿論等倍でもあり、手ブレ補正まで内蔵されて
いるのだが、再び重量も1600g台にまで重たくなってしまった。
(この初期型と同等か、少し重いくらいである)

ちなみに同社HPには、最新型のこのレンズの紹介のところで、
「等倍撮影が可能な180mmの望遠マクロレンズとしては初の
大口径F2.8を実現」と書かれている。
等倍でなければ、同社は20年以上も前に、本レンズ180mm/f2.8
(1/2倍マクロ)で実現していた訳だが、時代が異なっているのに、
重さが初期型のままというのはどうなのだろうか?この仕様で
1kgを切ってくれれば何も問題は無いのだが・・
まあ、もし今後180mm望遠マクロが必要な状況になったとすれば、
旧型のf3.5版を購入するとしようか。なにせ、本レンズの1600g
というのは、とても重く、撮っていて非常に疲れる(汗)
勿論三脚を使うというのは考慮の対象外だ、歩くネコを三脚を使って
撮れるはずが無いし、そもそも、ただでさえ重いレンズに、さらに三脚を
持って行くというのは、散歩や観光がてらでの撮影では有り得ない話だ。
c0032138_2023586.jpg

このレンズの購入価格は、1990年代に37000円と、中古としては
比較的高価であった。まあ、発売されてまだ日が浅い段階で
あったし、やむをえない。銀塩時代は、EOS-1などの大型機で
使用していたが、やはりその時も重さに辟易、その後、銀塩末期
以降のEOSでは利用できず、最後に使ったのは、2000年代前半、
最初期のEOSデジタルD30(注:30Dでは無い)であっただろうか?
1枚撮ってはエラーとなり、電源を入れなおしてまた1枚撮って
エラーとなるというのを繰り返す状態で、その後は2度と使って
いなかった(使いようがなかった)

現代においても、まったくおすすめできるレンズでは無い。
どうしても180マクロが必要であれば、前述のようにSIGMAの
後継機180/3.5でもTAMRON の180/3.5でも好きな方を買えば
良いと思う。もし間違って本レンズを買ってしまったら、きっと
利用方法に困ってしまう事であろうから・・

さて、次のシステム
c0032138_2025659.jpg

カメラは X-E1 だ、FUJIFILM最初期のミラーレス機であり
発色は良いが、ピント合わせの精度と操作系が、AF/MFいずれの
場合でもNGである。全体的な操作系にも色々と弱点を抱えており、
使い勝手が難しいカメラではあるが、相場が安価になるのを待って
せっかく買ったカメラであるから、なんとかその欠点を解消できる
レンズとの組み合わせ方や撮影技法を模索しているところだ。

レンズはNIKKOR H Auto 50mm/f2 1960年代のレンズだ。
ここで、Hとは、ヘキサ(=6)の意味であり、レンズが6枚
構成であることを示している(他に、7枚はS,8枚はO等)

この時代(1960年代~1970年代)には、他社でも、オリンパスOM
システムの、Gズイコー(Aから始まって7番目がGなので7枚構成)や、
ミノルタ ロッコールPF(P=ペンタで5群、F=6番目で6枚構成)
といった風に、レンズ構成を型番につけることが流行していた模様で
あるが、その後、10枚を超える複雑なレンズ構成のズームなどが
出てきたりしたら、もうややこしくて、この手の命名はできなくなって
しまったのか、1980年代以降はこのような分類名称を持つレンズは
出ていない。
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50年以上前の古いレンズであり、ニコンFやニコマートの時代の
ものである。そして、モノコート(単層コーティング)のレンズである。
1970年代(ニコンF2の時代)になると、ニッコールも順次
多層コーティング化され「Cタイプ」と呼ばれている。
(例えば、このレンズの後継機は、ニッコールHCとなっている)

現代の中古市場においては、モノコートのニッコールに「Cナシ」
という分類名が付けられ、「Cアリ」よりも若干安価な相場だ。

じゃあ、CアリとCナシ、つまり、マルチコートとモノコートの何が
違うか、という点については、シリーズ第23/24回記事でも述べて
いるが、すなわち、一般的に想像するほど写りに大きな差は無く、
特に、それらの原理や長所短所を良く理解して使えば、殆ど差異は
出ないと言っても良いと思う。

モノコートでもあまり心配は要らないという事は良くわかったので、
今回は、あえてカメラをモノクロモードにしたりもせず、気にしない
で、ガンガン撮っていくことにしよう。
c0032138_2028135.jpg

で、実は、ニッコールの50mm/f2 (初期のものは、5cm f2と
表記されている場合も)は、Hタイプの他、Sタイプが存在する。

Sタイプとは、前述のラテン語区分方法では、セプタ=7なので、
5群7枚を意味していると思われ、一見、4群6枚のHタイプよりも
高性能な印象があるが、実際には、そちらのSタイプの方が早く
(ニコンFと同時期の1950年代末期)に発売されていて、やや特殊な
構成だったからか?写りに関しては、その後のHタイプの方が評判が
良く、Sタイプも後期には、S名称のままで、Hタイプと同様の4群6枚
に変更されたと聞く。

この事は、銀塩時代のマニアの間においても、難しいレンズ構成
などの理屈はともかく、写りの感覚的には良く知られており
「ニッコールの50mm/f2は、Sは買うな、Hを買え!」と良く
言われていた。私も1990年代に、中古カメラ屋で店長に同じ
セリフを言われ、手にしかけていたSタイプをやめて、こちらの
Hタイプを購入した次第であった。(しかし、値段は不明である、
というのも、ニコマートに装着されている状態のものを購入した
為であり、カメラ込みで2万円強だったように記憶している)
c0032138_20285560.jpg

そして、このレンズは Ai非対応である。ニコンAiとは何か?
という話をすると少々ややこしい。簡単に言えば、Ai非対応の
ニコンレンズでは、外爪(カニ爪)により、カメラに「開放f値」
を伝えるわけだ、カメラの露出計を正しく動作させるためには
外爪をカメラに装着する結構手間な作業があったのだ。
しかし、Ai対応レンズの場合、レンズのマウント面近くに
小さい爪(Ai爪)がついていて、これでAi対応のニコンのカメラに
開放f値を簡単に正しく伝える事ができる。

最もややこしかった時代は、1970年代のニコンF2の時代だった、
最初のF2、通称アイレベルは、露出計が非搭載であったので、
Aiかどうかは関係なく(自動絞りの)ニッコールレンズを問題
なく使用できた。そして、F2フォトミックとして露出計が搭載
されると、それを動作させるには、Aiではなく外爪が必須だった。
後期のF2フォトミックAは、Ai対応であり、この段階では外爪は
関係なく、Ai爪がついている事が必須であった。

このややこしい時代においては、あるいは、ニコンF2などを後の
時代に購入したマニアにとっては、ニコンのレンズには外爪と
Ai爪の両方がついていることが理想であった。勿論純正でそうした
レンズもあったが、市場には「Ai改造」と呼ばれる改造品が多く
出回り、これはすなわちAi以前のユーザー層が、F2フォトミックA
や1980年頃のF3以降のカメラに買い換えた時、過去のレンズを
使うために、これらの改造を行ったと思われる。

で、実は、現代、ミラーレス時代において、アダプターでニコン
のMFレンズを使う際、Aiかどうか、そして外爪があるかどうかは
一切関係ない。ニコンマウントと総称する「Fマウント」であって
絞り環がついてさえいれば、どんなMFレンズでも使える訳である、
むしろ注意するのは、AF時代の新しいGタイプ、すなわち「絞り環
の無い」レンズである、これは特殊なアダプターを使わない限り、
絞り値を変えられないので困るわけだ、そしてGタイプのレンズを
特殊なアダプターで使用するくらいなら、ニコンの安いデジタル
一眼レフを買ってしまった方が簡便なようにも思う。

どんなレンズでも使えるというのは、ミラーレス+アダプター
が絞込み測光方式だからだ(一眼レフは開放測光)このために、
アダプターの場合は、ボケ量やボケ質すらも、おおよそだが
EVFで確認できる、これは一眼レフとミラーレスの最も大きな
相違点であり、ミラーレスを使う最大のメリットも、ここに
あると思っても良いであろう。

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余談が長くなったが、最後に、このレンズの価値である。
NIKKOR H Auto 50mm/f2 は昔から定評のあるレンズであり
それは銀塩時代のみならず、現代においても言える事だと思う。

ニコンの標準(50mm)レンズは昔から、残念ながら、さほど良いと
思われるレンズは多くなかったのだが(=ボケ質が固いものが多い)
本シリーズ第21回記事で紹介した、Ai50/1.8と並んで、本レンズは
まあ、比較的良い方ではなかろうか?
1つだけ弱点をあげれば、最短撮影距離が60cmと長い事であり、
通常の50mm標準レンズは45cmである事が大半なので、これは大きな
不満である、まあでも、これは古いレンズなのでしかたが無い。

中古の玉数は多く、7000円前後で購入できる。この価格であれば
コスパはかなり良いと見なせるであろう。古いレンズであるという
理由だけで安価なので、うまく使いこなせばオールドレンズの入門
用としても適している、購入の際は「Hタイプ」である事が条件で、
「Cナシ」すなわち単層コーティング型であっても、その弱点を
理解していれば特に問題は無い。

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さて、次のシステム
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カメラは、LUMIX DMC-G5である。
普段はノクトン42.5mm/f0.95という特殊なレンズの専用機と
しているカメラだが、望遠レンズでデジタルズームを使いたい場合で
かつ開放f値が2.8より暗いレンズを使う場合のアダプター母艦とする
場合もある。(開放が暗いレンズ用というのは、この機種のベース
ISO感度が160と、やや高めの為)

レンズは(京セラ)CONTAX SONNAR 85mm/f2.8である。
1980年前後の発売、いわゆるY/CまたはRTSマウントというもので、
CONTAX やヤシカの銀塩MF一眼レフに装着できるレンズだ。

しかし、このレンズは京セラ・CONTAX のレンズ群の中では、あまり
人気が無い。というのも、同じ焦点距離に、CONTAXファン誰もが
憧れる(欲しがる/買う)PLANAR 85mm/f1.4が存在するからだ。

プラナーのその影に隠れて目立たない、それどころか、CONTAX党
すら、当時このレンズの存在を知らなかったかも知れない。
c0032138_20302930.jpg

ゾナーとプラナーの違いは何であろうか?レンズ構成が違うのは
当然であるが、使い勝手に若干の差異があると私は思っている。

まず、プラナーは基本的に「絞りを開けなくてはならない」と思う、
けど、いわゆるプラナーボケが出る、つまりボケ質の破綻である。

銀塩時代は、これを回避できる術を持ち合わせている人は殆ど
いなかったのではあるまいか?しかし、ミラーレス時代、前述の
ようにボケ量とボケ質、あるいはそれと撮影条件の関係が、高精細
なEVFにより分かるようになってきた事で、この問題を回避できる
方法論が固まってきたように思われる。まあ、簡単に言えば、
「ボケ質が破綻しないように良く見て撮影条件を変えて撮りなさい」
という事である、簡単には絞り値の変更だ、あるいは撮影ポジション
やアングルを変更してボケが汚くならない角度を選ぶという事だ。

こうすることで「決まった時には最高」であるプラナーの素晴らしい
ボケ質と、たとえば人物写真であれば「まるで人物を切り抜いて
貼り付けたみたいな」被写体部分の高いシャープネスやコントラスト
を得ることができる。

そいてゾナーの場合には、少し(f4~f8)絞って、そのキリキリと
した高解像力を生かすのが良い。撮影距離も、中~遠距離が良いと
思う、人工物、すなわち建物やらを撮るには適していると思う。

まあでも、これらは銀塩時代の常識、という感じの話である。
今時、デジタル時代(ミラーレス時代)であれば、プラナーも
ゾナーもほとんど関係が無い、レンズの性能要素よりも、デジタル
化におけるカメラ側の絵作り、およびカメラ設定、さらにはPCに
おけるレタッチの方法論、などがずっと大きい要素だからだ。
c0032138_2031192.jpg

そういう意味では、ゾナー85mm/f2.8は不遇のレンズである、
同じゾナーであっても、85mm/f2であれば、銀塩MF一眼レフ
以前のレンジファインダー時代においても、各マウントで高い
評価であったし、あるいは、銀塩時代を通じて高評価を受けた
180mmの焦点距離のソナーもある。

そんな中、85/2.8や100/3.5,135/2.8のゾナーは、
他の焦点距離のゾナーに比べ、地味で非常に影が薄い。

なお、MF一眼時代のゾナーは、主に85mm以上の望遠レンズに
おけるレンズ構成を示すものであったが、レンジ機では、標準
レンズのゾナーも存在し、近年のミラーレス時代においては、
標準はおろか広角のゾナーすら存在する。それらはなんとなく
良く写りそうなイメージはあるものの、「ゾナーと言えば望遠でしょう、
そして、ボケ質よりもシャープネスを追求するもの」という銀塩時代
からの常識(固定概念)があるのと、値段が高価な事もあり、私は
未だ購入にいたっていない。おまけに、今どきのカールツァイスは
ゾナーとかプラナーといった古典的な名称以外に、デジタル一眼や
ミラーレス機用として、Otus,Milvus,Touit,Batis,Loxia 等
新しい名称の新レンズが次々と発売されているので、興味は
どうしてもそれら最新ツアイスに目が向いてしまう訳だ。

で、往年のゾナー85mm/f2.8の写りであるが、さほど悪くは無い、
ゾナーを使う場合の自分なりのセオリーに則り、絞りを開放で
使うよりも、f4~f8の範囲で、都度可変しながら使っているし、
ボケ質についても、破綻が起こり難いように意識しながら使って
いるので、なおさら良いと感じたのかも知れない。
c0032138_20334658.jpg

ただ、どうだろう・・? さしたる特徴もなく平均的に良く写る
というレンズであれば、面白味が無い事も事実である。例えば
焦点距離は僅かに違うが、近年のSIGMA A60mm/f2.8DNで
あれば、中古で1万円強というはるかに安価な価格で、このゾナーと
同等かあるいはそれ以上の描写力を持つのではあるまいか?
だとすると現代における、このレンズの存在価値はどこにあるのか?

多分、このレンズは、学校のクラスで言えば、勉強は出来るが
トップというわけでもなく、やや目立たない生徒なのであろう。
どちらかといえば、トップの優等生か、あるいは、落ちこぼれの
劣等性の方が目立つし、または、テストの成績はイマイチであっても
スポーツが出来るとか、楽器の演奏が上手いとか、皆を笑わす
人気者であるとか、そういう特別な才能があった方が(先生としては)
魅力的な生徒となるという事なのであろう。

まあ、そういう訳であり、正直、今の時代において、絶対に
必要なレンズかどうか?という点では疑問がある。
本レンズの購入価格だが、2000年代に、25000円程であった、
近年は、少しCONTAX(Y/Cマウント) レンズの相場が上がって
きている模様なので、この価格では買えないかも知れないが、
性能から厳しく評価すれば、適正な価格は、2万円までだと思う
ので、もし購入する場合は参考まで。

さて、次は今回のラストのシステム。
c0032138_2035469.jpg

カメラは、Eマウント最強の操作系を持つNEX-7だ。
レンズは、SMCペンタックス50mm/f1.2 である。

1970年代のKマウントレンズであり、SMCというのは、M42マウント
時代と同様にスーパー・マルチ・コートの略である。
PENTAXの一眼レフがKマウントに変更されたため、多くのM42レンズ
が同一のレンズ構成のままKマウントに変更された時代のものである。
ただし、この50/1.2は、それまでのタクマーには存在してない仕様で、
新規開発のものである。M42からマウント径が大きくなったので
後玉を大きく設計できるようになったのだと想像できる。

で、この時代のレンズには、それを分類する特定のレンズ群名称は
なく、K(あるいはP)シリーズと便宜上分類される場合もある。
c0032138_20361251.jpg

f1.2と大口径な上、最短撮影距離は他の標準50mmレンズと
同等の45cm、したがって、近接撮影での多大なボケ量を活かした
撮影スタイルにこそ真価を発揮するレンズであるが、しかしながら
ボケ質は最良という訳ではなく、ボケ質の破綻回避の為に、絞り値
を微妙に調整する必要もあり、f1.2の利点を活かし難いのが
ジレンマである。
c0032138_20363379.jpg

本レンズは、以後の1980年代に小型軽量化された「Mシリーズ」
のPENTAX製レンズに比較すると、かなり大きく重い。
まあ、f1.2の大口径であるので、大きく重いのはしかたが無い
のであるが、それにしてもPENTAXらしく無いレンズである。

K50mm/f1.2の性能であるが、正直どうだろうか・・? 
写りは比較的平凡であり、絞り開放近くは、甘さやボケ質破綻が
気になるケースがある。
感覚的ではあるが、これだと、前時代のM42版のSMCT55/1.8
あたりの方が良く写って使いやすく、はるかに安価でコスパが
良いようにも思えてしまう。

1970年代という時代には、各社f1.2級の大口径標準
(50mm~58mm)レンズを発売し、それまでの小口径(f1.8前後)、
大口径(f1.4)の、さらに上位のラインナップを完成させる事を
目指した時代である。

レンズの値段差も、勿論開放f値が小さくなるほど高価であり、
小口径は初心者向け、大口径はベテラン向けなどのように
ユーザー層が区分されていた。
しかし、そのマーケティング発想には、当時の技術の方が追いついて
おらず、小口径レンズの方が写りが良いという逆転現象がおきていた。

よって、当時の標準レンズでは大口径や超大口径のレンズが必ずしも
描写力の良いレンズであるとは限らない。優位点は、その開放f値が
明るい(暗い場所でも手ブレしにくい、大きなボケ量を得られる)
という点だけだったようにも思える。

では現代ではどうか?近年のデジタルカメラではISO感度が
どんどん高感度化していき、ミラーレス機では最大ISO40万、
最新の一眼レフでは、なんとISO328万(エンジニアにはお馴染みの、
32768という数字)となっている。ここまでいかずとも実用的には、
ISO12800~25600あれば十分であり、かつ、f1.2や、それ以下の
開放f値を活用するには、明るすぎて、低ISO感度または、
超高速(電子)シャッター、デジタルND等がカメラ側の機能として
必要なのであるが、それらが出来る機種はごく限られている。

なので現代では開放f値が極めて小さい事が、暗所での撮影を容易に
するいう利点にはならず、むしろ明所ではシャッター速度が足りず
あるいは、被写界深度が浅すぎる事から、MFでのピント合わせが
困難になるというデメリットの方が目立つようになってくる。

すると、やはりボケ質が優れているか否か?という点が最大注目と
なるのだが、その点ではオールド大口径レンズは、やはり不利
である事は否めない。
c0032138_20383521.jpg

このレンズは、1990年代に購入したものだ、当時の中古価格は
3万円と、やや高価であったが、各社のMF標準レンズでのf1.2版は
いずれも3万~4万円くらいが当時の相場であった。勿論買う時には、
それまで使っているf1.4よりだいぶ(倍以上)高価なレンズなので、
もっと良く写る事を期待しての購入なのだが、残念ながら、どの
メーカーのf1.2版標準を購入しても描写力については裏切られる
事が殆どであった。 
「高価なもが必ずしも良いレンズでは無い」という事を実感したの
は、その頃であったわけだ。

現在において、このレンズはレア品であり、あまり中古市場に出て
来ない。出たとしたら「時価」であろう、ジャンク品で安価な
可能性もあり、レアものとして高価かも知れない。
性能からの価値であるが、f1.4の標準レンズよりも使い難い点を
考えると、1万円台がまあ妥当な相場だと思う。

さて、もう文字数が限界なので次回記事に続く・・

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