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最強・最強レンズ選手権(3)決勝戦

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「選手権」シリーズでの最終リーグの決勝戦。
全ての所有レンズ(ただし「殿堂入り」レンズと
しての14本は除く→本シリーズ前々回記事参照)
の中から、最強のレンズを決定する記事だ。

「個人的レンズ評価データベース」より、高得点と
なったレンズをノミネート(選出)してあるが、
「レジェンド名玉」の大半が殿堂入りで不参戦な為
今回の決勝戦に選出されたレンズ群は、全てが近代
(2010年代後半以降発売)の、新鋭高描写表現力の
レンズとなった。
まあ、「新人王決定戦」とも言えるかも知れない。

ただし、本シリーズ記事執筆は2020年前後の時点
であり、それ以降に新発売されたり、以降に新規に
購入したレンズは出場していない。
それと、実写掲載には様々な細かいルールがあるが
本シリーズ第1回記事を参照されたし。

----
本決勝戦には、7本のレンズがノミネートされている。
内、4本がAF高描写表現力レンズで、2本がMFレンズ
残りの1本は、格安ジェネリックレンズである。

最終順位はコスパ点を除いた評価点で決定するつもりだ。
どれが最優秀レンズとなるか?は、集計をするまで不明
であるが、本決勝戦に選出されているレンズは、どれを
購入しても後悔は無いだろう非常にハイレベルなレンズ
ばかりとなっている。

ではまず、最初はアポダイゼーションレンズである。
_c0032138_06312886.jpg
レンズは、SONY FE 100mm/f2.8 STF GM OSS
(SEL100F28GM)
(中古購入価格 129,000円)(以下、FE100/2.8STF)
カメラは、SONY α7S(フルサイズ機)

2017年に発売された、史上2番目の「AF対応」
アポダイゼーション光学エレメント搭載型レンズ。
旧MINOLTA時代のSTF 135/2.8からは、実に19年ぶり
の新型STFとなった。

新旧STFの詳細比較は、レンズマニアックス第31回
「新旧STF対決編」に詳しいので、興味があれば
参照されたし。まあでも、どちらも超絶的な「高描写
表現力」を持つレンズであり、マニア層であれば必ず
いずれかのSTFは所有しておく必要があるだろう。
_c0032138_06312826.jpg
さて、実際に「高描写表現力」の観点で、ランキング系
記事へのノミネートを行うと、アポダイゼーション光学
エレメント搭載レンズ(本記事執筆開始の2019年
時点では4機種あり、その全てを、特殊レンズ第0回
「アポダイゼーション・グランドスラム」記事で
紹介している。その後、2019年末にはCANONからも
超高額なアポダイゼーションレンズが登場している)
・・(STF/APD)ばかりになってしまいそうな危惧も
あった。

本シリーズや、他のランキング系記事では、その
選出基準において「あまり同種のレンズばかりを
選出しない」(例:ハイコスパ系ランキングでは、
各社エントリー(お試し版)レンズ群が、ゾロゾロと
ランクインしてしまう事となる)・・という視点と、
「あまり同じメーカーのレンズばかりを選出しない」
(例:「SIGMA ART LINE」のような高描写表現力の
製品シリーズは、それらばかりが選出されてしまう)
という暗黙のルール(ノミネート基準)を設けている。

したがって、各社「アポダイゼーション」、SIGMAの
「ART LINE」、コシナの「(マクロ)アポランター」、
NIKONの「三次元的Hi-Fi」、TAMRONの「SP単焦点」
の各シリーズにおいては、このあたりが、自他共に認め
られるであろう最強の描写表現力のレンズであるから、
これらからは、各1本の選出となるのが公平な措置だ。
が、もうこれで、本決勝戦の枠は殆ど埋まってしまう。

なお、初級中級層に人気の「大三元ズーム」は、
業務用途専用レンズであると言え、そもそも「三重苦」
(大きく重く高価)であるから、趣味撮影のレベルでは、
適正な機材とは言えず、殆ど購入もしていないので、
当然、本シリーズ記事にも選出されていない。
(所有もしていないレンズでランキング評価をする等は
あってはならない話だ。ちなみに、一般的な、機材の
「人気投票」等は、たいていその問題を抱えているので、
情報として、全く参考にならない)

で、仮に「大三元」や「小三元」を保有していたとしても
全方位的に評価を行う、個人的レンズ評価データベース
では、全ての面で高評価が得られる訳では無いので、
本ランキングにはノミネートすら、されないであろう。

まあ、初級中級層においては「どのレンズを買ったら
良いかわからない」という課題があり、要は「レンズに
関する知識や評価経験が少なすぎる」訳だ。
だから、有名(人気)な「大三元」や「小三元」だけに
過剰に反応してしまう。

試しに、本決勝戦に登場するレンズ群の、いずれかを
買って実用に供してみると良いと思う。そのどれを買った
としても、圧倒的な描写表現力には驚きを隠せないだろう。

これらは、著名なレンズ(ビギナー層等の多くが購入し、
好評価を下す)では無いが、マニアックすぎる、という
訳でも無く、要は、多くの消費者層が「知らないだけ」の
超高描写表現力を持つレンズ群である。
_c0032138_06312819.jpg
さて、本FE100/2.8STFであるが、この描写表現力は
明らかにトップ(クラス)のレンズだ。
いかなるユーザー層においても、本レンズの描写表現力
に不満を持つ事は無いであろう。

ただ、細かい弱点もいくつかある。具体的には・・

*DDSSM(ピエゾ系AF駆動モーター)によるAFが遅い。
*上記に関連し、距離指標無しの無限回転式ピント
 リング仕様では、MF操作性が効率的では無い。
*マクロモードが存在するが、手動切り替え式であり
 切り替え前後の撮影距離での操作性が煩雑である。
*近接撮影領域では、AFのピント精度が著しく落ちる。
(注:母艦側のAF方式、被写体の条件にも依存する)
 ここに、上記のMFの課題とマクロ切り替えの課題が
 絡んできて、あまりよろしく無い。
*高価すぎる(定価188,000円+税)
*高価な割りに、プラスチック鏡筒である。
 まあ、軽量化には貢献していると思うが、
 高級感や所有満足感には欠けると思う。
*流通数(販売数)が少なく、中古玉数も少なく
 連動して中古相場も相応に高額になってしまう。
*「G MASTER」という表記で高付加価値化をしている。
(注:高画質かどうか?を判断するのは、あくまで製品
 を使うユーザー側である。したがって、メーカー側
 から「これはG MASTERなので高性能です、だから
 高価なのです!」と、高値の弁明をされてしまう
 事は、消費者(ユーザー)側に分が悪い状態だ)
*そもそもE(FE)マウント専用品であり、SONY製の
 ミラーレス機以外では、殆ど使用できない。
(旧STF135/2.8ならば、α一眼レフと、αミラーレス
 機の両者で共用できる。なお、SONY Eマウントを
 NIKON Zマウントに変換可能な電子アダプターは
 ごく少数だが、存在している)


まあでも、これらの弱点は、高価格以外については
微々たるものであり、重欠点とは言えないであろう。

高価格を容認できるならば、悪く無いレンズである。

---
さて、次は高描写表現力レンズである。
_c0032138_06312830.jpg
レンズは、TAMRON SP 85mm/f1.8 Di VC USD
(Model F016)
(中古購入価格 70,000円)(以下、SP85/1.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2016年に発売された高描写力単焦点AF中望遠レンズ。

バランスの取れた、非常に優秀なレンズである。
特筆すべきは、開放F値をF1.8に抑えた事で、
設計上、諸収差の補正が行き届いていて高画質だ。
_c0032138_06313390.jpg
(注:この高描写力であれば、他のSP35/1.8、
SP45/1.8の姉妹レンズのように、最短撮影距離
を、かなり短くする措置(=そうしても描写力が
破綻しない)が出来たかも知れないが、本SP85/1.8
は、最短撮影距離仕様を欲張っていない(=80cm)
近接域での諸収差発生や焦点移動が防ぎ難かったの
かも知れないが、そのあたりの詳細は不明だ。
ただ、それが「寄れない」という僅かな不満になる)

また同時に、85mm/F1.4級レンズと比べて絞り開放
での被写界深度が「浅くなりすぎない」事から、
実用撮影上での歩留まり(成功率)が向上する。

すなわち、85mm/F1.4級レンズは、肝心な状況で
ピントを外してしまうケースが良くあるから、あまり
重要な撮影(=必ず、そこで撮らなくてはならない)
では、使用したくないレンズとなってしまうのだが
本レンズであれば、安定した確率(歩留まり)で
実用撮影に適する次第である。

そして、不人気レンズである。その理由は、いつも
述べている通りで、現代の縮退したカメラ・レンズ
市場の主力消費者層は、ビギナー層ばかりであるから、
ビ「どうせ85mmを買うならば、憧れのポートレート
  レンズである85mm/F1.4だよね!
  何? 85mm/F1.8? ・・そんなの廉価版の
  安物レンズだろう? 良く写る筈が無いよ!」

という、偏った判断(価値感覚)となる訳だ。

このビギナー層の典型的な価値観には、突っ込み所が
いくつもあるが、一々、それを言っても始まらない。
まあつまり、レンズの事も撮影の事も、良くわかって
いないから、それ故にビギナーな訳だ。

そして、不人気商品故に、新品価格も中古相場も、
すぐに下落した訳だから、良くわかっている中上級層が
本レンズに目をつけたならば、これはもう、コスパ的
には極めて優れた買い物となるであろう。

ただ、この状況はTAMRONにとっては誤算であろう。
せっかくの渾身の高性能レンズが売れない訳だから。

・・で、つい先年、2000年代あたりまでであれば、
市場でのレンズ消費者(ユーザー)層の価値感覚や
評価レベルは、そこそこ高く、「良いレンズ」を
出せば、それはすぐに、評論家やマニア層の間で
話題となり、それが市場全体に伝播し、初級中級層
でも「聞きかじり」ながらも、それを好評価で迎える
(購入する)事が出来た訳だ。

しかし、2010年代から、カメラ市場が大きく縮退
してしまうと、各社の製品群は、その対策として
単純に「高付加価値化戦略」をとった。これは、
製品販売数が大きく減少したならば、製品の値上げを
して利益率を上げていかないと、メーカーも流通も
事業が維持できない、という事で、「超絶的な高性能
を謳って、商品の価格を上げる」という戦略である。

だが、上級層になればなるほど「なに、超高速連写?
超高感度? 瞳AF? そんなものは不要だよ」と、
自身のスキル(撮影技能、知識、経験値)が高い程に、
そうした新しい付加価値(超絶性能)には、魅力を
感じる事ができない。おまけに、それらが搭載されて
いるせいで、従来機の数割増しから、果ては数倍にも
値上げされた新鋭機には、ますますコスパ面からも
興味を持つ事ができない。

そうして、市場での新規購買層からは、上級層や
マニア層は、急激に居なくなってしまった・・

2010年代後半では、ピカピカの新鋭機を購入して
使っているのは、カメラの構え方もおぼつかない
全くの超ビギナー(又は入門)層ばかりとなった。
彼らは数値スペックでしか製品の良し悪しを判断
する事が出来ない。毎秒10コマの高速連写機より
秒60コマのカメラを欲しがる事は当然であるし、
開放F1.8レンズは、F1.4レンズに比べて、安物で、
描写力も低いと、そういう判断しかできない訳だ。

TAMRONとしても、2010年代前半(本、SP単焦点
シリーズの企画時点)で、その後数年で、ここまで
急激にユーザー(消費者)層が、レベルダウンして
しまう事は、予想しにくかったのではなかろうか?

だが、細かく分析すれば、他のカメラメーカー等
では、すでにこの時期に、「近い将来にカメラや
レンズが殆ど売れなくなる」という最悪のシナリオ
を想定していて、それに対応する市場・製品戦略も
ぼちぼち準備していた時代である。
(注:その事は、これらの時代の機材を多数購入し、
詳しく評価・研究すれば見えてくる。
シンプルな例を以下に挙げれば・・
2012年は「フルサイズ元年」であり、各社から
多数のフルサイズ高付加価値機が発売された年だ。
また、2013年には、SIGMAはART LINE等の整備、
SONY α7、OLYMPUS OM-D E-M1が発売されている。
これらも、市場戦略転換を目指した商品群や方針で
ある事は明白だ)

TAMRONは、ちょっと読みが甘かったのかも知れない。
また、まずい事に、超高性能であるSP単焦点
シリーズ(SP35/1.8、SP45/1.8、SP85/1.8
ただしSP35/1.4は除く。このレンズはF1.8戦略
の失敗の救済の為に、急遽開放F値をF1.4として
開発発売されたものであるからだ)においては、
加えて「焦点距離ラインナップ」がまずかった。

35mm、45mm、85mmは、TAMRONの70年にも
およぶ歴史(1950年創業)において初めて発売された

「実用的・汎用的な焦点距離のレンズ群」である。

すなわち、それまでTAMRONは60年以上もの長期間、
そうしたオーソドックスなレンズは作っておらず、
MF時代は、超広角、マクロ、超望遠ミラー等、
AF時代は、高倍率ズーム、マクロ、超望遠等、
デジタル時代でも、高倍率ズームが主力だ。

まあつまり、カメラメーカー等の純正品においては
生産数が少ないものは、低価格化が困難な弱点を
突いて、他社にない仕様のレンズを、大量生産で
低価格化し、それを初級中級消費者層に売る戦略
であった。しかし、そのコスパの良さ、および
マクロレンズ等の看板商品での高画質・高品質は
上級層やマニア層にも高く評価されるようになり、
銀塩MF時代のような、「ちょっと変わった仕様の
レンズを安価に売っているが、写りはたいした
事は無い」という、一般層での印象とは変化して
「高性能なレンズを安価に販売するメーカーだ」
というブランド・イメージが定着しつつあった。

だが、この時代の35mm、45mm、85mmは
これらは、上級層やマニア層では必ず所有している
焦点距離のレンズ群である。昔からポピュラーな
焦点距離な故に、オールドレンズから近代高性能
レンズまで、マニア層等では、各焦点距離で複数の
レンズを保有していても決しておかしくは無い。

そこに、新規のこれらの焦点距離のレンズが発売
され、しかも定価は10万円弱程度と微妙に高価だ。
これでは、上級層やマニア層では、これらに興味
を持たないし、F1.8である事も若干仇になるだろう。

市場からマニア層が減り、残っていたとしても
買わないから、好(高)評価が一般層に広まる事も
まず無い。(上級マニア層による、これらのレンズ
の精緻なレビューも殆どみかけない。ネット上等に
存在するのは、流通側による「売る為の記事」や、
ビギナー評価(思い込み評価)ばかりである)
そして、ビギナー層はF1.8の仕様を見て、低性能
だと誤解して買わない。

・・・つくづく不遇なレンズと言えるし、その
不運を招いたのは、市場の急激な変化(縮退)だ、
とも言えるし、その悪いシナリオを予見できず、
悪いタイミングで、こうした仕様のレンズを発売
してしまったのは、TAMRONの先見性・企画方針に
問題がなかったとも言い切れない。
_c0032138_06313404.jpg
総括だが、こうした話は、あくまで市場の状況を
客観的に見た場合での話である・・
消費者の立場からすれば、極めて高性能なレンズが
不人気で、在庫処分低価格となっているのであれば、
そのコスパは最強クラスとなるので、迷わず「買い」
の選択となる。勿論、SP35/1.8、SP45/1.8、
そして、本SP85/1.8は、どれも適価で入手していて、
シリーズを「コンプリート」し、現在でも主力レンズ
として、大変機嫌良く使っている。
(参考:過去記事「焦点距離別」の最強レンズ選手権
で、どのSPレンズも、優勝または上位入賞している)

---
さて、3本目はジェネリックレンズだ。
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レンズは、七工匠 55mm/f1.4
(新品購入価格 16,000円)
カメラは、OLYMPUS PEN-F (μ4/3機)

2018年頃に発売された、中国製(各社ミラーレス機
マウント用APS-C機以下対応)MF中望遠(相当画角)
レンズ。

1970年代~1980年代頃の、各社のPlanar系
85mm/F1.4レンズの設計(構成)を、2/3程度に
縮小(スケールダウン)した設計の新鋭レンズだ。
_c0032138_06313445.jpg
AFも超音波モーターも手ブレ補正も内蔵されて
おらず、設計工数もずいぶんと省力化できたし、
勿論古い時代の設計だから、非球面レンズや異常
低分散ガラスレンズ等の高額部品も使っていない。
かつ、製造コストの低い中国生産でもあるから、
恐ろしく安価なレンズとなった。

そして、その性能は数十年前の準オールドレンズと
殆ど同じである。しかし、設計の元にしたレンズが
当時としてはトップクラスの描写性能を持つもので
あった為、現代においても十分に通用する高描写力
のレンズが極めて安価に購入できるという、とても
ハイコスパで、嬉しい状況でもある。

ただ、この設計手法(ジェネリック、と呼んでいる)
では、設計の元にしたレンズの長所も短所も、概ね
引き継いでしまう。プラナー系レンズは高描写力
ではあったが、細かい弱点が多く(具体的には、
①ピント歩留まりの悪さ ②ボケ質破綻の発生
③焦点移動の発生、およびそれによる、さらなる
 ピント歩留まりの低下 ④最短撮影距離の長さ
⑤価格の高さ)その為、レンズの本来の高画質を
得るには、高い撮影スキルに加えて、偶然性の
要素も加味されていた。だから、「銘レンズという
評判を聞いて、高値で買ったのに、ちっとも上手く
撮れないではないか? その評判はウソか?
それとも、オレの腕前が低いのか?」等と、なって
ユーザー層は多くの比率で、プラナー系85/1.4
を手放してしまい、後年の第一次中古カメラブーム
(概ね1990年代後半)時には、中古市場には
多数のプラナー系85/1.4レンズが溢れかえった。

だが、現代において、このジェネリックレンズを
ミラーレス機で用いると、上記①~⑤の課題は
どれも、ことごとく回避されている(又は、機材環境
の変化で、撮影者の技能次第で弱点回避が可能である。
その詳細は、長くなるので本記事では割愛する。
例えば、レンズ・マニアックス第36回、第51回、
第57回、第91回記事を参照の事)
まあ、そうであれば、これはもう、弱点の殆ど無い
「超ハイコスパレンズ」となり得るであろう。

本レンズの個人評価DBでのコスパ評価点は5点満点中
4.5点の初期評価であったが、加えて後で同一レンズ
の中古品を異マウントで「ナンピン買い」(=相場が
安くなった同一商品を買い増しし、平均購入単価を
下げる措置)まで行っている。この措置により、
評価DBのコスパ点を「5点満点」に修正している。
_c0032138_06313921.jpg
上記プラナー系レンズの課題を理解し、かつ、
それを回避できるスキルを持つ、実践派中上級マニア
層に対しては、文句なく推奨できるレンズである。

ただし、銀塩時代のプラナー系85mm/F1.4を
「上手く撮れないから」と手放してしまった多数の
初級中級層と同様の感覚やスキルで、「レンズの
言うがままにしか撮れない」(=弱点回避の工夫や
対策が取れない)現代のビギナーユーザー層には、
まったく推奨できないレンズとなる。

仮に買ったところで、「しょせんは中華レンズだ、
どうも上手く写らない。安かろう、悪かろうだ!」
というビギナー評価で終わってしまう事が見えている。
(注:本レンズは2021年に早くも後継型が発売
されている。そちらは描写力が少し改善されたとの
事であるが、最短撮影距離が伸びてしまった為、
現状、未購入である)

---
では、4本目は高描写表現力レンズである。
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レンズは、SIGMA 135mm/f1.8 DG HSM | ART
(中古購入価格 102,000円)(以下、A135/1.8)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)

2017年発売の高描写力AF大口径望遠レンズ。

描写表現力自体は何も問題が無い優秀なレンズだ。
SIGMA ART LINEの代表格として、本決勝戦に選出
された訳だから、それについては不満は何も無い。
_c0032138_06314036.jpg
ただし、いくつかの弱点も持っているレンズである。

具体的には以下となる、

*大きく(フィルター径φ82mm)
 重く(1130g~1230g、マウント仕様に依存)
 高価(定価175,000円+税)
 な「三重苦レンズ」である事。

*手ブレ補正を内蔵していない。大口径レンズで
 あるが故に、多くの撮影環境・状況では、これは
 問題にはならないが、「暗所での手持ち低速シャッター
 撮影」、「重量級レンズ故に、長時間の手持ち撮影に
 おける、体力や集中力の低下による、ブレの発生」
 等の、特定の条件下で、厳しい状況となる。

*「用途開発」が難しい。
 暗所のステージ撮影(ライブ、演劇等)には最適の
 スペックであるが、一般的な趣味撮影で、そうした
 機会は、さほど多くは無いであろう。
 すなわち一般層では「何を撮るレンズなのだ?」と
 いう事になってしまう。

これらの弱点は、撮影者のスキル等では、回避できない
場合も多く、そもそもの「用途」や「必要性」をよく
吟味検討した上で、本レンズの購入や活用を意識しない
とならない。
基本的には、趣味撮影向けのレンズにはなりえず、
業務用途、それもステージ系の専用レンズとなるだろう。

ただし、本レンズは、最短撮影距離が87.5cm
(最大撮影倍率1/5倍、@フルサイズ時)という
優秀な近接性能を持つ(注:135mm単焦点レンズの
中ではBEST 5に入る近接性能だと思われる)ので、
「自然観察撮影」にも副次的用途があると思っている。

「自然観察撮影」においては、概ね「望遠マクロ」を
所有していれば、そちらを主力にすれば良いとは
思うが、135mm(近接)大口径レンズにも利点が
存在する。

その詳細は長くなるので、本記事では割愛するが、
「レンズ・マニアックス第66回望遠マクロvs近接
135mm」編記事で、自然観察撮影における
両システムの長所短所を詳しく検証している。

_c0032138_06314015.jpg
まあでも、趣味撮影において強引に「用途開発」を
行うというのも、かなり変則な措置ではあるだろう。
普通の感覚であれば・・
「これは業務(実用)撮影における、ステージ撮影
 専用レンズだ、それが必要ならば買うし、そういう
 撮影シーンが無ければ、買う必然性も無い」
で終わるであろう。

ただ、その「特定の撮影シーン」というのは、
別にステージ撮影には限らないと思う。
撮影者(ユーザー)の用途によっては、
「中距離人物撮影」や「中距離スポーツ競技」
あるいは「鉄道撮影」等、いくつかの本レンズの
仕様が適正となる撮影ジャンルはあり得ると思う。
でも、結局「ピンポイントな用途」となるのは、どの
撮影ジャンルを志向したとしても、やむを得ない。

総括だが、「このレンズの仕様や性能がぴったりと
ハマる撮影ジャンルがあるならば、購入しても
悪く無いし、描写性能的にも不満は出ないだろうから
手放せないレンズとなるだろう。
しかし、そうした具体的「用途」が何も無いならば、
「三重苦」である本レンズを買う必然性は全く無い」
・・と言えると思う。

---
さて、5本目はMFの(中)望遠マクロレンズだ。
_c0032138_06315359.jpg
レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR
110mm/f2.5(注:独語綴りの変母音省略)

(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

2018年に発売されたMF中望遠等倍マクロレンズ。

旧型が2001年に発売された「MACRO APO-LANTHAR
125mm/F2.5 SL」である。
だが、現在そちらの旧型レンズは、レア物(希少品)
として、残念ながら「投機対象」(コレクションや
転売目的で高価に取引する)となってしまっている。
_c0032138_06315392.jpg
両者の比較評価だが、新型の本レンズの圧勝である。
その詳細を比較した近年の記事としては以下がある、

*特殊レンズ・スーパー・マニアックス第11回
「マクロアポランター・グランドスラム」編記事
*レンズマニアックス第32回
「新旧マクロアポランター対決」編記事

・・を、興味があれば参照されたし。

さて、簡単に言えば、本MAP110/2.5の描写表現力は
一級品であり、マクロ(近接)撮影の為のアイテム
(機材)としては、トップクラスだ。

TAMRON/SIGMA/TOKINA等の、老舗(=実績のある)
中望遠マクロも、決して悪くは無い描写表現力だが、
変に高付加価値化で近代的仕様(超音波モーターや
手ブレ補正)で武装している為、それが仇となり
近接撮影では操作性・速写性が悪化してしまったり、
あるいはレンズ自体のコスパ評価が低まったりする。

本MAP110/2.5は、MFのレガシー(≒時代遅れ)な
仕様ではあるが、近接撮影においては、この仕様で
十分どころか、むしろ実用面で優れる要素が多々ある。
この事は、中級層以上において、近接撮影をMFで
行った経験のある人であれば、容易に理解できるだろう。
_c0032138_06315324.jpg
課題は、「三重苦レンズ」である事だ。
特に価格の高さは問題であり、例えば、ほとんど同等の
描写表現力が得られる、他社高性能マクロの旧製品
(例:TAMRON90マクロでの172Eや272E型とか、
SIGMA EXシリーズ初期の105mm/F2.8)であれば、
1万円台の安価な中古相場で購入も可能だ。


それが本レンズの場合は、その数倍の価格であるし、
販売数が少ないから中古の玉数も少ない。新品購入だと、
旧型高性能マクロの10倍近くもの価格となってしまう。

まあつまり、本MAP110/2.5を買う予算で、各社の
旧型の銘マクロ(例:TAMRON SP60/90/180mm、
SIGMA EX50/70/105/150mm、TOKINA AT-X100等)
が、よりどりみどり、片っ端から(下手をすれば
シリーズのコンプリートも可能)買えてしまう訳だ。

どちらを選ぶべきか?は、微妙な判断であろう。
ほんの僅かな描写表現力の優位性(例えば、当該
評価項目で、本レンズ5点満点 vs 旧型銘マクロ
4.5点前後)の差で、どちらを選ぶのかは難しい。

これはもう、消費者各々の価値感覚に判断を委ねる
しか無いであろう。マニアックで最高性能のマクロ
が欲しければ、本MAP110/2.5を選択するもよし、
実用一辺倒であれば、各社旧型銘マクロの1~2本
も買っておけば十分だ。(余った予算で、他の
優秀なレンズを買えば良い)

---
では、次は特異な大口径中望遠レンズである。
_c0032138_06315395.jpg
レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 105mm/f1.4E ED
(中古購入価格 148,000円) (以下、AF-S105/1.4)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)

2016年に発売された高付加価値仕様大口径AF単焦点
中望遠レンズ。「三次元的ハイファイ」(3D Hi-Fi)
設計コンセプトによる第二弾レンズだ。

勿論、フルサイズ対応レンズだが、今回、初級APS-C機
で使用している理由は2つあり・・
*重たいレンズであるから、システムのトータル重量を
 低減する目的。
*D5300は、ピクセルピッチが狭く、かつローパスレスの
 機体であるから、ピクセルピッチの広いフルサイズ機
 よりも、むしろ高解像力型の本レンズとの相性は良い。
と、なっている。
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高付加価値というのは、メーカーからの美辞麗句であり
この時代、カメラ市場縮退により、全く交換レンズが
売れなくなってしまっていたから、要は「値上げの弁明」
として、「三次元ハイファイ」等と謳って高価格化を
した訳だ。
本AF-S105/1.4の定価は、24万円+税、と高額である。
おまけに、「Made In China」製品だ。

個人的には「中国製だから」と言って差別する事は無い。
むしろ2010年代後半から、怒涛のように日本市場に
参入してきている新規中国メーカーのレンズを多数買って
みて(参考:海外レンズ・マニアックスシリーズ記事)
それらを評価すると、品質的には、なんら問題はなく、
レンズの作り(高級感)は、現代の「量産品」と化した
プラスチッキーな国産レンズ群より、はるかに優れている
事がわかっている。

ただ、そういう状況であるのに、本AF-S105/1.4は、
生産コストの低い中国生産でコストダウンしていて、
鏡筒等もプラスチック製で質感が低いにも関わらず
値段(定価)が恐ろしく高価であるから・・
「そこまでして儲けたいか?」と、懸念を生じてしまう
訳である。まあもっとも、NIKONもこの時代(2010年代
後半)では赤字が続き、カメラ事業が大変苦しい状況
であるから、少しでもコストダウンして、利益を増やさ
ないと厳しい、という状況は、とても良く理解できる。

しかし、この時代のNIKON機、またはNIKKORレンズの
主力ユーザー層は、定年退職した「団塊の世代」層だ。

彼らが若い頃い憧れたNIKON機は、当時の団塊の世代
には高級(高価)すぎて手が出なかった製品である。
高度成長期を支えてきて、働きすぎた彼らが2010年代
に引退し「のんびりとNIKONのカメラで写真を撮る」
というのは、悪いシナリオでは無かったのであろう。

だけど、団塊の世代は、工業製品にシビアな世代であり
日本が世界一の製造品質となった(Japan As Number One
=1979年の世界的ヒット書籍がある。この時、団塊の世代
は30歳前後だ)歴史を、影で支えてきた人達でもある。

「Made In China」について、「俺達が"24時間戦って"
必死に築いてきた世界最高品質に勝てる筈が無い!」
(注:「24時間戦えますか?」は、バブル期1990年
前後の「リゲイン」(栄養ドリンク)のヒットCM。
この時、団塊の世代は40歳前後だ)と思うのも不思議
では無い状況(世代価値観)であろう。

よって、言いたい事は、NIKONの高級機材においては、
「Made In China」はまずい、という事である。
主力ユーザー層の持つ製品価値感覚とは、完全に乖離
してしまっている。このあたりの企画感覚値の低さが、
数年後の、新鋭高付加価値ミラーレス機「Zシリーズ」
での販売不振に繋がっていったのではなかろうか?
まあ、販売不振はNIKONだけの問題ではなく、この時代
2010年代後半の全てのカメラメーカーで同様だが・・
初期NIKON Zシリーズは、雑食性のカメラマニアで
ある私でも、食指が全く動かないシステムであった。


その最大の理由は「NIKONらしくない」からである。
極めて曖昧な表現だが、私はNIKONのカメラやレンズ
は、過去50年間以上の様々な時代の製品を全て実用と
してきて、そのメーカーとしての「テイスト」は、
文章では表現し難くても、良くわかっているつもりだ。
(それに、文書化すると、滅茶苦茶に酷い言い回しと
なるだろうから、それができたとしても、書きたく無い)

現代の主力ユーザー層の「団塊の世代」も、そこまでは
NIKON機をちゃんと使って来てはいないだろうが(高度
成長期やバブル経済で、働き詰めだった世代だからだ)
それでも「NIKONに憧れた」のであれば、NIKON製品の
「テイスト」は、感覚的に感じる事は出来るとは思う。

(参考:そういう理由もあったのだろうか? NIKONでは
2021年にZfcを発売し、旧来のNIKON製品に近い感覚
を持たせ、あるいは、旗艦機Z9も同年に発売し、
遅ればせながら、このZシリーズのテコ入れを図っている)
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・・さて、本AF-S105/1.4の最大の特徴である
「三次元的ハイファイ」については、説明する事も
理解する事も困難である。これは、そういう名前の
部品や技術が搭載されている訳では無く、一種の
「設計思想(コンセプト)」であるからだ。

詳細は長くなるので、例えば、レンズ・マニアックス
第63回「三次元的ハイファイ」編を参照して貰えれば
良いと思う。
悪い描写力のレンズでは無いのだが、課題は
「その効能や特徴が、消費者層に伝わらない」という
点であろう。
特に、前述のように「ニコン党」あるいは「ニコンの
伝統的なテイスト」を重んじる現代のユーザー層には
本レンズの「思想」が、伝わらないのではなかろうか?

残念な話だとも言えるし、厳しく見れば「売り方が
まずいレンズ」だとも言える。何だか訳のわからない
ものに対して消費者は大金を積む事は無い。

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さて、今回のラストは、地味な仕様だが超高描写力の
標準レンズだ。
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レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 50mm/f2
Aspherical(注:変母音省略)
(新古品購入価格 104,000円)(以下、APO50/2)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

2019年発売のフルサイズ対応MF小口径標準レンズ。

本決勝戦でのメーカー被り(フォクトレンダーが2本)
が発生してしまうが、このレンズは外せない、
史上稀に見る、超高描写力レンズであるからだ。
_c0032138_06315857.jpg
地味なスペック(開放F2、最短撮影距離45cm)は、
無論、最強の描写力を目指した設計の為に、無理を
させないスペックなのだが・・
実は、この仕様については、マニア層をターゲットと
する絶妙な心理戦術が含まれている。


すなわち、ライカ社に、これと同スペックの標準レンズが
存在し、そちらは100万円以上もする超高額商品である。
そのライバルレンズに勝るとも劣らない性能でありながら
値段が1/10程度(本レンズの定価は12万円+税)で
あるならば、マニア的な心理からは「コスパに優れる」と
判断しやすく、しかも本レンズでの元々のコスト高
(つまり、小口径MF標準レンズなのに12万円もする・・)
は、価格比較心理から、うやむやになってしまう。

まさしく絶妙、私もこれに「乗せられて」しまい(汗)
本レンズを入手した次第だ。

コシナ社は、最近、これと同様の手法を何度も使って
いる。他の実例としては、2020年に発売された
μ4/3機用のSUPER NOKTON 29mm/F0.8がある。
こちらは、ニコンのZ58mm/F0.95に相応する画角
でありながら、開放F値がさらに明るい。
価格も超高額なニコン製品の1/6程度である。

これもまた、マニア層に向けての心理戦術であろう。
(まだまだ他にも多数の企画実例がある事が、私の
追加研究により分かってきているが、キリが無いので
本記事では、もう、このあたりまでに留めておく)

気をつけないと、マニア層においては次々にコシナ製の
高額レンズを買わされてしまう(汗)
まあ、とは言え、「2016年断層」以降のコシナ製の
ツァイス/フォクトレンダー銘のレンズの描写力は、
(そう多数保有している訳では無いのだが)本当に
従来のコシナ社製レンズから、大幅に性能改善が見られ
多少高価であったとしても、性能的な不満は一切無いと
思われる。 

本レンズAPO50/2の光学系だが、前群においては、
2017年発売のMACRO APO-LANTHAR 65mm/F2と
同一であり、スケールダウン版ジェネリック設計だ。
ただ、後群については、MACRO仕様にする必要性の無い
本APO50/2では、フローティング機構を廃し、
さらに非球面レンズを1枚追加し、通常撮影距離領域
(45cm~)における描写力を改善していると思われる。

最少の手間で、最大の効果を得られる設計手法だが、
これもまた、コンピューター光学設計手法やソフトの
進化の恩恵と言えるのであろう。
描写力については全く問題が無い超優秀なレンズだ。

小さい弱点だが、絞りF2.8で円形絞りとなる事から、
どうも心理的に「絞りをF2.8にしなければならない」
と誘導されてしまう点がある。
F2.8円形絞りの前後でのF2.5やF3.5あたりでは、
絞り羽根の形状が、変な形となってしまうので、
そのあたりで撮るべき被写界深度等の意図があっても
「やはり、円形絞りになるF2.8にしておくか・・」
と、なんだか「レンズに使われてしまっている」ような
気持ち悪さがある。

また、僅かにオーバーインフ(無限遠を超えてピント
リングが廻る)気味な仕様は、MF操作性を少しだけ
損なっている。(MAP65/2の前群に、新たな後群を
合体した為であろうか? 詳細は設計仕様につき不明)

あと、フードの取り付けが、バヨネット式ではなく
ネジ込みである事を弱点として指摘した意見を見かけた
事があったが、これは、まあ、どうでも良い話だ。
ちなみに、マニアであれば、上での紹介写真のように、
バヨネット式では無い事を逆用し、市販の角型フードを
装着するとか、そんな風な楽しみ方が出来てしまう。

他の課題だが・・ もう、この値段を出してまでも、
「買うか、買わないか?」という消費者層の選択に
委ねられる事となる点だ。

まあ、従前の時代であれば、これほどの超高描写力の
レンズが新しく登場したのならば、あっと言う間に、
マニア層の間で情報が伝播・拡散されたのだが・・
近代のカメラ/レンズ市場縮退の状況においては、
マニア層が激減していて、それらの精緻なユーザー
レビューは存在せず、残っているのは、市場・流通側
に属する立場での「新製品の宣伝記事」ばかりと
なっている為、現代で主力の初級消費者層においては
これほどの高額、かつ地味な仕様のレンズには興味を
示さないと思われる。

だからこそ「消費者が買うか、買わないかの選択」が、
このレンズにおける大きな課題となっている訳だ。
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最後に、今回の「最強・最強レンズ」編での、
最終順位を掲載しておこう。

得点は、個人レンズ評価データベース得点のうち、
コスパ評価を除く(すなわち、今回は価格の高さを
問題点とはしない)残りの評価平均点(5点満点)だ。

第1位:4.75点:SONY FE100/2.8 STF
第2位:4.50点:MACRO APO-LANTHAR 110/2.5
第2位:4.50点:TAMRON SP 85/1.8
第2位:4.50点:APO-LANTHAR 50/2
第5位:4.25点:NIKON AF-S NIKKOR 105/1.4
第6位:4.00点:SIGMA ART 135/1.8
第7位:3.88点:七工匠 55/1.4

総評:コスパ評価点を抜いて順位を決定した為、
高コスパ型のレンズ(例:七工匠55/1.4)は、
やや点数と順位を落としてしまった。
逆に言えば、純粋な実力値で最終順位が決定された
とも言える。

第1位のFE100/2.8は、
アポダイゼーション(STF)内蔵であり、超絶的な
ボケ質による高描写表現力は特筆すべきだ。
このレンズの優勝は、まあ妥当であろう。

第2位のMAP110/2.5は、現代の中望遠マクロと
しては最強の描写表現力であろう。
価格が高いのが難点であるが、価格要素を抜いての
評価であれば、高順位は、これも妥当。

同率第2位のSP85/1.8は、現代の85mmレンズの
中では、描写表現力、基本性能、価格、が3拍子
揃った優秀なレンズだと思う。「優勝も狙えるか?」
と予想していたが、基本的には「高コスパ型レンズ」
なので、この採点方法だと、若干の不利があった。

同率第2位のAPO50/2は、前述のように
超高描写力レンズである。描写力だけを評価する
ならば、本決勝戦での最強(優勝)レンズであろう。
ただ、この地味なスペックと、高価な価格をどう
捉えるか?は、なかなか難しい。
上級マニア層御用達のレンズと言えるかも知れない。

第5位のAF-S 105/1.4は、「三次元ハイファイ」
設計コンセプトによる、優良なボケ表現が得られる
レンズである。価格が高価なのがネックだが、純粋
な実力値は高い。

第6位のART135/1.8は、多くの点で死角が無く、
望遠画角の大口径レンズとしては、実用的観点からは
唯一の選択肢であろう。ただし、用途がかなり限られる
と思われ、基本的には業務撮影専用レンズだと思う。

第7位の七工匠55/1.4は、往年の銘レンズの縮小
コピー設計(ジェネリック)であり、恐ろしくコスパ
が良い。ただし、古い時代の基本設計とも言えるし、
AF、手ブレ補正、超音波モーター等で武装している
訳では無いので、実用性や総合性能としては、近代
レンズには、さすがに及ばない。

----
最後になるが、各焦点距離別選手権で優勝した
レンズ名(注:省略名表記)を挙げておこう。

最強 50mm選手権:TAMRON SP45/1.8
最強 35mm選手権:SONY DT35/1.8
最強 100mm選手権:SONY FE100/2.8 STF
最強 200mm選手権:TAMRON SP180/3.5
最強 135mm選手権:MINOLTA STF135/2.8
最強超望遠選手権:TOKINA MF300/6.3
最強広角 選手権:SIGMA EX24/1.8
最強 85mm選手権:TAMRON SP85/1.8
最強マクロ選手権:TAMRON SP180/3.5(2冠)
最強トイ&特殊 :Lomography Petzval 55/1.7
最強・最強選手権:SONY FE100/2.8 STF(2冠)

----
では、本記事「最強・最強レンズ選手権/決勝」は
これにて終了。選手権シリーズもこれが最終回だ。
続編や補足編記事は、今のところ予定していない。


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