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レンズ・マニアックス(86)

新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ
関連記事では未紹介のマニアックなレンズを主に
紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ3本と、および、再掲レンズ
1本を新規紹介レンズとの比較の為に使用する。

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ではまず、今回最初のレンズ
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レンズは、CANON EF-M15-45mm/f3.5-6.3 IS STM
(中古購入価格 8,000円)(以下、EF-M15-45)
カメラは、CANON EOS M5(APS-C機)

2015年に発売された、EOS Mマウント ミラーレス機
専用の標準ズーム。

いきなり余談だが、CANON製レンズ(FL/FD/NFD/EF/EF-S
/EF-M/EF-R等)では、EF等の型番の後にスペース(空白)
は入らないのが正式名な模様。(EF-M 15-45では無い?)

この事は、CANONのWEBでは「CANON CAMERA MUSEUM」
のページで、生産終了の古い製品の情報を検索できるのだが、

そこに「FD 50mm/F1.4」と入力しても何も検索されず、
スペースを抜いて「FD50mm/F1.4」とすると、HITする
事で気づいた。他社のレンズでは型番と焦点距離の間に
スペースが入る事が大半なので、これはCANONの(Webの)
場合だけの注意点である。

こんな風に、レンズスペックの記載ルールが、各社とか
資料毎に、まちまちである事には、個人的には
賛同しておらず、やむなく「FD 50mm/f1.4」といった、
本ブログ独自の「各社共通記述法」を昔から使っている。


この書き方は必ずしも適切な表記法では無いのであるが、
そもそも光学やカメラの世界では用語統一が全く出来て
おらず、記載法などが各社でバラバラな事が大問題だ。
正解が無いのだから、勝手に決めて書くしか対策が無い。

それに、上記の話だが、CANONのレンズの実物には、
「FD」や「EF」の後にスペースを空けて型番が書かれて
いる場合が殆どで、ますますもって、何が正解なのか?
良くわからない。 まあ、「メーカー側ですら正解が
わからない状態で、ユーザー側で、わかる筈も無い」
というのが本音のところだ。(それと、CANONに限らない
がWeb制作上での機種名・型番等の誤記などが極めて多く、
各社のWeb制作担当者が、カメラやレンズに関する知識を
持っていない事が露呈されてしまっている状態だ。
Web制作を外注業者に頼るケースも多いとは思うのだが、
だとしたら、せめて社内の詳しい人等が、Webの記載を
全て綿密にチェックして検収したらどうなのだろうか?)
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さて、余談が長くなったが、本EF-M15-45の話に進む。
本レンズは単体で購入したものではなく、EOS M5の
レンズキット版の購入時での付属レンズである。

普通、キット(ズーム)レンズは、本体との付属品で
購入しても、後年には使い道が無くなってしまう事が
常なので(=より高性能なレンズを追加購入する事
が大多数だからだ)滅多に購入する事は無いのだが、
本ズームは、業務用途での利用(イベント記録撮影)を
主目的として、CANON EF-S/EF-Mマウント(つまり
APS-C機)用の標準ズームレンズを必要とした訳だ。

この条件においては、本レンズが希少な広角端15mm
始まりである事がポイントだ。

つまり、EOS EF-S/EF-M機の両APS-C型センサーは、
他社での換算倍率「実焦点距離の1.5倍相当」では
無く、1.6倍相当になっている。
ここで、他社、あるいはCANONでのAPS-C機専用標準
ズームの多くは広角端が18mm(または17mm)始まり
であり、これだと広角端の換算画角が、28mm前後
(27.2mm/28.8mm)からスタートする事になる。

例えば、会場記録撮影や大人数集合写真等の業務用途
での撮影の際、標準ズームを使う場合でも、広角端の
換算画角は、できれば24mm(相当)程度からである
事が望ましい、というのが、私の経験上での要望だ。
(↓に集合写真の例を掲載)

だからEOS APS-C機(一眼レフ/ミラーレス)を使う
場合、そういうレンズを探して装着する必要がある。
そこで、EOS EF-S(一眼用)の小型レンズで、広角端が
24mm相当になるものを当初探していたのだが、
これは逆算すると 24mm÷1.6=15mmという事となる。

ところが、15mmからスタートするCANON標準ズームは、
EF-SマウントにおいてEF-S15-85mm/f3.5-5.6 IS USM
の1本しか存在しない。しかも、それは、やや高価
(定価105,000円+税)なレンズであり、中古でも
3万円以上もする。(注:2018~2019年時点)
(注:レンズメーカー等の他社EOS用レンズにも、
広角端15mm始まりの標準ズームは存在しない)


で、「3万円では、過酷な業務撮影用途には向かない」
という判断となった。(すなわち業務用途標準ズーム
は、完全な消耗品となる為、1万円以下程度のコスト
でないと、収支バランスが悪い)

やむなく、以前に2,000円と安価に購入したEF-S
18-55mm/f3.5-5.6 USM(本シリーズ第53回記事)
を使おうとしたのだが、そのレンズは、写りは悪く
無いのだが、逆光耐性がかなり低いので、屋外晴天の
イベント撮影では、役に立たない事が大きな課題と
なっていた。

「結局、どうしようも無いか・・ NIKONかPENTAXの
 システムを使うとするか」(注:それらのマウント
では、消耗用途標準ズームを既に利用している)
と思って、しばらくはEOS機をその目的に使う事は
諦めていたのだが・・

2018年にCANONより新規フルサイズ・ミラーレス機
(EOS R/RP)が発売されていて、そこから1年程
経過した2019年頃には、従来からのAPS-C型
ミラーレス(EOS Mシリーズ)の中古相場が大きく
下落している事に気がついた。

旧来よりEOS M5を購入予定機としていたのだが、
EOS M5と本レンズのセットで5万円を切る相場
まで下がったタイミングを見計らっての購入だ。

一応、EOS M5本体42,000円。本レンズ8,000円
(いずれも10%消費税込み価格)という配分で
記録しておく事とした。
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実際に本ズームEF-M15-45を使ってみると、
ズーム比が3(倍)と狭く、やや広角寄りで、望遠
画角が不足する印象が強かった。

ただまあ、それはスペックを見た段階で気づいて
いた事である。他社ミラーレス機では、その多くに
デジタル拡大機能(デジタルテレコン、デジタルズーム)
が備わっているので、こういうレンズを使うケースでも
あまり望遠画角が不足するという印象は持たない訳だ。
だが、EOS M5には、デジタル拡大機能が無いので、
どうにも望遠画角が不足してしまう訳だ。

まあ良い、業務用途であればトリミング編集で構図を
整えてから写真を納品する事が、当たり前であるから、
そうすれば良いだけだ。

でも、デジタルズームとトリミングには実は大きな差異
がある。すなわち、デジタルズーム(拡大)であれば
撮影時に構図を、その機能で調整してあるので、上手く
すれば、「無編集」で、そのまま写真を納品できる。
しかし、トリミング処理は事後のPC上での編集作業が
必須となるので、何千枚もの写真を撮った後では、
構図調整に加えて縦横比(アスペクト)を維持しながら
のトリミングでは、その編集作業の「工数」(手間)が
大きくかかってしまい、撮影日だけの日当では、収支が
どんどん悪化してしまう訳だ。
(例:1日で済む筈の仕事が、例えば編集作業に5日も
かかってしまったら、その間、他の仕事が出来ずに、
収支が確実に赤字になってしまう)

一般に「トリミングもデジタル拡大も同じだよ」と言う
中上級層が極めて多いが、それは完全にアマチュア目線
の話であろう。趣味撮影ならば事後の編集コスト(手間)
は無視できるから、両者は原理的に同一、あるいは成果物
は同等となるのだが、業務撮影の収支の視点では、それを
納品するまでの(編集する)手間を考えないとならない。
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そして、本EF-M15-45は、解像感を重視したコンセプト
のレンズのように思える。
(注:本レンズは、ビギナー向けのKITレンズだから
 これの写りがボケボケだと、評判が悪くなる為だ。
 CANONの初級・普及機のキット標準ズームは、多くが
 その描写傾向を持つと思う。レンズキットを買った
 ビギナー層に「CANONのカメラは良く写る」という
 評価(半分は思い込み)をして貰いたいのであろう)
・・なので、本レンズのトリミング耐性は比較的高い。

ただ、反面、ボケ質が悪かったりして、設計上において
重要視している要素と、そうで無い部分が極端なので、
解像感の高さも、それだけを見て、強い長所だとは
言い難い面がある。


さて、本レンズを実用(業務)撮影に使おうとして、
まず困った事が発覚、それはフードが付属していないのだ。
フードが無いと、屋外晴天で逆光の課題が回避しずらく、
あるいは雨天では、レンズ前面に付く雨粒を防ぎ難い。
過酷な実用撮影環境では、レンズをどこかにぶつける
事も普通であるので、衝撃保護の観点からもフードの
利用は必須だ。
中古購入品であったので「付属品欠品」かと思いきや、
どうやら最初から付属していない模様。(コストダウン
の為か?)

中古のジャンクフード(食べ物の事では無い・笑)を
探したが、そう簡単にはズバリの物は見つからず、結局
純正品(EW-53 1,300円)を新品購入する事となった。
まあ、例えば、単焦点で標準以上の画角のレンズであれば、
汎用のフード(何でも良い)を利用できるのであるが、
広角画角を含むズームレンズの場合は専用の(バヨネット)
花形フードを使うしか無い訳だ。

付属品(フィルター、フード)の、レンズ本体入手価格に
対するコスト比率が高くなりすぎていて(注:持論では
レンズの付属品には、レンズ購入価格の5%を超える
金額を投資してはならない。→「フィルター5%の法則」)
(ルールを守れずに)非常に面白く無いのであるが、
まあ、やむを得ないであろう。近年の各カメラメーカーは
市場縮退で儲かっていないから、消費者から「何かにつけ
お金を取る事しか考えていない」という残念な状況だ。

さらにちなみに、ND(減光)フィルター等の特殊
フィルターは、2019年の消費税増税に合わせて、それまで
の1000円程度の価格の製品を全てディスコン(生産終了)
として、撥水等の高付加価値商品に入れ替え、価格は
一気に5000円~1万円と、数倍から十倍にも値上げされた。

「レンズが売れていないから、フィルターも値上げする」
では、あまりに安直すぎないだろうか? 製品を適価で
魅力的なものとして、もっと売れるようにするという
「企業努力」は、カメラ市場では無いのだろうか?
ミラーレス機をフルサイズにしたから、といって、5倍の
価格にする等・・・ どれをとっても、情けない話である。
少なくとも私は、そういう風に、メーカーの都合により
消費者の事を考えずに値上げをした製品は一切購入を
しない事としている。

NDフィルターだが、消耗品であり、10年程度の使用で
成分が劣化してムラが発生する。よって酷くなったら
新品に交換しなければならないのだが、新品が5倍
以上も高価になったら、それは無理な話だ。
趣味撮影の範囲では、劣化してムラのあるNDフィルター
のままで撮影を続ける事としよう。それで仮に画質が
悪いと思うのならば、それはレンズの課題では無く、
不条理に価格を値上げしたフィルターメーカーの問題だ。


総括であるが、消耗用キットレンズである。それ故に
描写力に大きな不満は無い(もし、キットレンズの
性能が低かったら、システムの評判が落ちるからだ)
だが、それ以上でも、それ以下でも無いという感じか。

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では、次のシステム。
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レンズは、smc PENTAX-FA 70-200mm/f4-5.6
(中古購入価格 1,800円)(以下、FA70-200)
カメラは、PENTAX KP(APS-C機)

発売年不明、恐らくは1990年代の前半くらいか?
一応、KAF2プロトコル対応、との事だが、パワー
ズーム機構等ではなく、従前のKAFプロトコルと
ほぼ互換であるし、それ故に各時代のPENTAX機で
問題なく動作する。

準ジャンク品扱いで、安価な購入価格であったが、
写りはどうだろうか?
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すぐに気づく弱点としては、ちょっとした逆光で
コントラストが低下し、フレアっぽい写りになって
しまう事だ。
まあ、準オールドレンズであるから、しかたが無いし
経年劣化(軽いクモリ、軽いカビ等)も出ている
かも知れないから、もう、このあたりはやむを得ない。

なお、古い(あるいは安価な)ズームレンズだから
必ずどれも写りが悪いか? というと、そんな単純な
話では無く、個々のレンズの設計によりけりな部分が
まず大きい。あまり高い確率では無いが、本レンズ
よりもさらに10年程前の1980年前後のMF望遠
ズームレンズの中でも、まれに良く写る物もある。
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そして勿論、レンズの課題は、撮影者(ユーザー)が
それを把握した上で、回避して用いる必要がある。
「レンズの言うがまま」に撮ってしまっていたら
「やはり安物レンズだ、まともに写らない」という
ビギナー的評価で終わってしまうかも知れない。

本レンズの場合、条件を整えれば普通に良く写るが、
あまり優れた描写力という感じでは無い。
個人データベース(エクセルの表だ)における
本FA70-200の描写表現力の得点は3点(5点満点)
であり、まあ普通、という点数だが、若干これは
甘い得点かも知れず、逆光耐性の課題はあまり
考えないようにしている。(経年劣化の可能性が
高いから)
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現代において、本レンズを指名買いする必要は
殆ど無い。
ただし、1970年代より、ずっと小型機を志向して
きたPENTAXには、あまり、これという(AF)望遠
ズームが存在していなかった事は課題であろう。

本FA70-200には、前モデルF70-210/4-5.6や
ほぼ並行販売だったF/FA80-200/4.7-5.6が
存在していた模様だ(いずれも未所有)
スペックが微妙に異なるが、その差異は不明。

これらの後の時代では、デジタル時代に入って
いた為、DA型番のAPS-C機専用望遠ズームの
発売が増えてくる。(それらは廉価版または
★(スター)仕様の高級レンズとなっていて
少々両極端な為、どうも食指が動かない)

結局、適正な望遠ズームが、PENTAXには殆ど
存在していない状況だ、そういう意味においては
本レンズのような、中級・準オールド望遠ズーム
は、程度の良い個体を安価に見かければ、現代
においても何とか使える状況かも知れない。

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さて、次は再掲レンズだが、本記事のラストでの紹介
レンズとの比較検証用である。
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レンズは、SIGMA 20mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL (RF)
(新品購入価格 44,000円)(以下、EX20/1.8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用の
AF大口径広角単焦点レンズ。
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本ブログで言うところの「SIGMA 広角3兄弟」に属する。
これは、デジタル黎明期にSIGMAより発売された3本の
大口径広角単焦点レンズ群(シリーズ)の事を指す。

なぜ、このようなレンズが生まれてきたのかは?
簡単に述べれば、フィルムからデジタルの転換期で
あり、初期デジタル一眼レフは、殆ど全てが
APS-C型のセンサーサイズを搭載していたから、
銀塩時代のレンズがそのまま使える、とは言っても
全てが望遠側に画角が狭くなり、広角レンズが
不足するからである。この時代では、まだデジタル
機(APS-C機)専用の焦点域を持つズーム等は
発売されていなかった為だ。

銀塩機では超広角、デジタル機では広角で使える、
20mm/F1.8、24mm/F1.8、28mm/F1.8の
3本のシリーズがSIGMAよりリリースされた訳だ。

詳細は、特殊レンス第52回「SIGMA 広角3兄弟」編
に詳しいので、興味があれば参照されたし。
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本EX20/1.8の最大の特徴は、フルサイズ(/銀塩)
システムで撮影時に「超広角レンズでありながら
近接撮影が出来る」(最短撮影距離20cm、1/4倍)
という事だ。つまり、これは「超広角マクロ」で
あるのだが、開放F値も、F1.8と十分に明るいので、
超広角レンズでありながも、近接撮影時において
被写界深度を浅くする事が可能であり、背景を
ボカした超広角撮影が可能である。

本レンズ以前の時代においては、こうした特性を
持つレンズは、私の知る限りでは存在せず・・
「撮影技法を変革させる、衝撃的な特徴だ!」
と、当時では思った次第だ。

ただまあ、PENTAX (KAF)マウント版を購入して
しまったので、その後のデジタル時代においては
2016年のK-1まで、Kマウントのフルサイズ機は
発売されず、かつK-1系機体は所有していないので、
ずっとAPS-C機のPENTAX機で使う状況が続いていた。

そうした場合、本レンズの換算スペックは、
30mm相当、F1.8、最短20cm、最大0.375倍
という感じとなる。

今回は、マウントアダプターを介して、SONY α7
フルサイズ・ミラーレス機に装着しているので、
20mm画角で最大1/4倍(0.25倍)のスペックとなる。

実は、「SIGMA広角3兄弟」での、最大撮影倍率が
得られるレンズは、本レンズではなく、同シリーズ
のEX 24mm/F1.8の1/2.7倍(0.37倍)である。
だが、画角は本レンズが最大なので、本レンズの
開放F1.8の特徴を活用した超広角マクロ表現は、
銀塩時代に感じた「衝撃的な感覚」が新鮮なままに
蘇る。
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だが、課題もいくつかある。

まずは古い時代の設計なので、描写力は完璧では
無く、特に、ボケ質破綻と逆光耐性の低さが気に
なる点だ。
さらに、大柄なレンズであり、全長は約9cm
フィルター径はφ82mmもある。

「逆光耐性が低いから」と、フードを装着すると
最短WDが短い為、たいてい、フードが被写体に
ぶつかってしまう。まあフードがストッパー代わり
になるので、レンズを直接被写体にぶつけず安全だ、
とは言えるかも知れないが、コツン、コツンと
どこかに当たって、あまりに鬱陶しいので、近年
では、フードは未装着のままで使うようにしている。
逆光によるゴーストやフレアは、まあ「ご愛嬌」
とも言えるし、高度な撮影技法を用いるのであれば
ゴーストすらも、また一種の映像表現になり得る。

それと、本EX20/1.8は、さすがに超広角であり
さほどの最大撮影倍率は得られない。

まあその点では、後年に発売のLAOWA 15mm/F4
(2016年、本シリーズ第8回記事等)では
超広角ながら等倍マクロという驚異のスペック
であるのだが、最短WDは何と4.7mmしか無く、
殆どレンズ前の「すれすれの状態」で近接撮影
するしか無い。(注:これはこれで、とても難しい
撮影技法が要求される。なにせ、屋外では殆どの
近接被写体にレンズの影がかぶるし、そこまで
物理的に近づけないケースも多々ある→例:
昆虫等や、木の枝が複雑に入り組んだ場所に
ある小さい花等)

で、EX20/1.8では物足りないし、LAOWA 15/4
ではやりすぎだし、「丁度良い超広角マクロは
無いものか・・?」というニーズ(不満)が
存在していた。
「その解決策になるのでは?」と久しぶりに
思ったのが、後述のTAMRON 20/2.8である。

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次は、今回ラストのレンズ
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レンズは、TAMRON 20mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2
(Model F050)(新古購入価格 30,000円)
カメラは、SONY α7S(フルサイズ機)

2020年に発売されたミラーレス機用、フルサイズ
対応AF超広角ハーフマクロレンズ。
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コロナ禍の直前に、新古品での購入であった。
(注:発売されてから日が浅いタイミングであった
ので、展示品入れ替え等による理由の新古品ではなく、
この購入者が、何らかの”表裏ある事情”で購入商品の
現金化を目論んだ「金融新品」であったかも知れない?
昔の中古市場では「金融新品」の表示もよくあったが
近年ではまず無い、犯罪を連想させる為か?)

さて、入手の経緯はともかく、本レンズの購入目的は、
前項目のSIGMA EX20/1.8のところで説明した
ような「超広角マクロ」の実現を狙ってである。

最短撮影距離は、同じ20mmという焦点距離で
SIGMA EX20/1.8が20cm、これで1/4倍だが。
本TAMRON 20/2.8は11cm、こちらは1/2倍となる。

寄れる事で、SIGMA版よりも2倍大きく被写体を
捉える事ができるのだが、これも少し前述したように
あまりに寄れる、という場合では、被写体環境に
ある程度、制限が出てきてしまう事もある。
でもやはり、「寄りたくても物理的に寄れない」
というケースが最もストレスとなる状況であろうか。

本レンズは、とても面白い製品コンセプトであり
好感が持てる。企画のみならず、製造的汎用性の
観点からも、このシリーズ、および同社のSP単焦点
シリーズ(35/1.8、45/1.8、85/1.8)は、
全てフィルター径がφ67mmで統一されている事も、
かつてのオリンパスでの天才技師、「米谷氏」の
とても強い「標準化思想」を彷彿できて好ましい。
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また、「SP仕様」を思い切って外し、その分、安価に
売っている事も好ましい。

なんだか、SPとか、他社での「L」とか「G」とかは、
「価格を吊り上げる為のマーク」にしか、私には
見えず、そういう「高画質仕様」をメーカー側から
一方的に押し付けるスタンスの製品を、好んでは
「欲しい」とは思えない。
そんなマークが入っていなくても良く写るレンズは
星の数ほど存在する訳であり、そういうレンズの事を
知らずして、「高いレンズは良く写る」と思い込むのは
早計だ、とも思っている。

余談だが、先年、撮影スポットで初級マニアと見られる
男性と出会った。そこで彼から出た質問だが
男「高いレンズの方が良いレンズなのでしょうか?」

匠「いえ、そんな事はありません。高いレンズは、
  開発費やらが沢山かかっているのを、販売数で
  振り分けるので、売れる数が少ないと、値段が
  高くなるのですよ」
男「・・・(しばらく考えて)
  ああ、なるほど! そういう事なのでしたか!」

匠「ちなみに、製造上においても大量生産が効かないと
  単価が上がりますし・・ それから、高いと販売
  本数が減るし、本数が減るとビジネス面からも
  余計高くなります、これは悪循環ですね・・」

男「ふうむ、そういう考え方もありますね」

(いや、これは私個人の考えではなく、経済原理、つまり
世の中の理屈であり事実であり、常識なんだけどなあ・・
こういう事を知らないと、きっと損をすると思う)

まあ、確かにレンズの開発というのは、お金がかかる。
人件費としての研究費、マーケティング費、設計用ソフト
ウェア開発・改良、筐体デザイン、ハードウェア試作、
原材料の性能改善についての研究費と部材代、外注費・・
そして無事生産に漕ぎ着けたとしても、金型、治具、
生産ラインの改善・整備、部品代、加工代、梱包費、
輸送費、さらには営業的な、カタログ原稿、同デザイン、
印刷、Webページの整備、キャンペーンおよび、各種
営業販促費・・

計、数億円、いや、それ以上の金額がかかっているかも
知れない。
それはレンズ一本だけの開発費では無いかもしれないが、
レンズの販売数も伸び悩んでいるのが現状だ。
下手をすれば、高額なレンズだと、その定価のうち数万円
以上という金額が、これらの開発費や間接経費の回収の
為に使われているのかも知れない。

(でもまあ、沢山売れるのであれば、価格は安くなる)

ちなみに、カメラの世界でも有名ブランドのレンズとか
がある。これはクラッシックなレンズでプレミアムなモノの
話ではなく、現代における新品ブランド・レンズの話だ・・

で、カメラ仲間とかの周囲にそういうブランド・レンズを
持っている人が沢山居るだろうか? まず殆ど居ないに
違いない。
その理由は「高価だから買える人が限られている」のでは
ない、逆に「買う人が少ないから、値段が高くなる」訳だ。

メーカーでは、その製品の売れる数(企画台数)を想定して
値段を決めるのだ。そして、もしその製品が想定数よりも
売れなければ、開発費やらの償却が出来ずに大損だが、
万が一高い製品がヒットして沢山売れて「損益分岐点」を
越えれば、後は丸儲けだ。

ここまでは当然の経済原理だが、近年の情報化社会では
高いものを沢山売るために、様々な情報操作をする場合すら
ある。これは、モノの価値がわからないビギナー層であれば
周囲からの様々な情報に踊らされて、イチコロであろう・・

だから、高いレンズが必ずしも良いレンズである保証は無い、
「コスパ」を最優先に考える事。
そこが本ブログでの基本概念だ。

余談が長くなったが、ここまでの話はとても重要な事だ。
基本的な経済原理でもあり、このあたりが理解できない
と少々ヤバい。
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さて、最後に本TAMRON 20/2.8の弱点を挙げておこう。
超音波モーターが搭載されておらず、AFの精度・速度
ともに不満である。だが、MFで撮れば良いという訳にも
いかない、本レンズは、距離指標すらついていない
安っぽい無限回転式のピントリングであり、手指の
感覚でのMF操作性が壊滅的にNGだからだ。
 
だから、11cmという超近接撮影で、ちょっとでも
最短を下回ったりする等、とても難しいピント合わせ
は、AFでもMFでも回避しようが無い。

正直言うと、これは「重欠点」であろう、ピントが
合わせ難ければ実用的なレンズとは言えないからだ。
(注:2020年7月のレンズ・ファームウェアVer.02
にアップデートしても、状況は殆ど改善されていない)

これだったら、いっそ、MF専用レンズにして貰った
ほうがずっと楽だった、SONY機等でのピーキング性能
は、とても優秀だからだ。

「描写表現力」は申し分の無い評価点だが、ピントの
課題が大きい為、「エンジョイ度」と「必要度」を
それぞれ大幅に減点評価する事とした。申し訳無いが、
本シリーズの他のレンズを買う事は、多分無いであろう。

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さて、今回の第86回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。

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