マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事であるが、
今回は補足編として、TOKINA(現:KENKO TOKINA)
社製の1980年代頃~2010年代のマクロレンズ5本を
発売された時代の順で取り上げる。
なお、全て過去記事で紹介済みのレンズであるので
過去記事とは異なる視点での内容とする。
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ではまず、今回最初のTOKINA製MACRO
![_c0032138_13015733.jpg]()
レンズは、TOKINA AT-X M90 (MACRO) 90mm/f2.5
(ジャンク購入価格 2,000円)(以下、AT-X M90)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
詳細不明、1980年前後頃(?)に発売と思われる
MF中望遠1/2倍マクロ。
米Vivitar社に供給していた(OEM生産)同型マクロを
自社ブランドで国内発売したレンズという情報がある。
が、「米NASAによる設計だ」という、マニア間で良く
流れている情報は、恐らくだが根拠の無いガセであろう。
NASAの研究員に、多分そんな暇は無い、もっと重要な
国家に係わる業務が色々とある筈だ。
最大撮影倍率1/2倍は、現代のマクロレンズの感覚
では不足を感じるのと、本レンズは故障品(詳細は
後述)の為、デジタル拡大機能が最も充実している
機体のDMC-G6を母艦として使用する。
![_c0032138_13015801.jpg]()
さて、本記事は、「知られざるTOKINA MACRO」編と
銘打っている。どういう意味か?と言えば、銀塩時代
から、マクロレンズと言えばTAMRON製のものが著名で、
あったが、有名すぎて、他のレンズメーカー、つまり、
TOKINAやSIGMA、COSINAといったブランドのマクロは
殆ど注目されていなかった、という経緯があるからだ。
よって、TOKINA製のMACROレンズの真の実力値は
マニア層等にも殆ど知られていないのであるが、
勿論、それでもあえてTAMRONに対抗して商品化した、
という事から、あなどれない実力値を持つ事は
想像に難く無いであろう。もしTAMRON SP90MACRO
に対して完全に勝ち目が無い低性能なレンズであれば、
最初から、そのようなマクロレンズが発売される
筈は無い、という理屈である。
なお、全く同様の理由で、SIGMA製のMACROレンズも
悪く無い性能だ。
本記事と同等の主旨で、「特殊レンズ・スーパー
マニアックス第42回、伝説のSIGMA MACRO編」記事を
掲載済みである。まあ、本記事も「特殊レンズ~」の
カテゴリーで掲載した方が良かったのかも知れないが
当該シリーズ記事執筆後に購入したレンズが含まれて
いるが故の(間に合っていなかった)措置だ。
何故、SIGMAやTOKINAのマクロが高性能(高描写力)
なのか? と言う点を、もう少し説明しておく。
マクロレンズの市場では「超定番」とも言える
TAMRON SP90マクロ(SP90/2.5系)が1979年から
存在している。(Model 52B~)
これは発売当初から人気があり、高描写力である
事でも良く知られていた名玉だ。
40年以上も前のレンズであるが、近年においても
「タムキュー(TAMRON 90)」という愛称で、新規
初級マニア層にも人気である。
(注:「ゴロが悪い」ので、本ブログでは、その
呼び方を説明に使う事は無いし、その名が、どの
時代の、どのModelを示しているのかも不明瞭だ)
まあ、昔からのマニア層であれば、この52B系の
マクロは、殆ど誰もが持っていた筈だ。
(ハイコスパ・レンズ第15回記事等を参照。また
本シリーズ第59回では、後の時代のSP90/2.8Diとの
比較やTAMRON 90MACROの歴史の説明をしている)
で、少なくとも、1979年以降の時代で、新規に
発売する他社製マクロは、TAMRON製90マクロに
勝るとも劣らない性能(描写力)で無いと、最初
から勝負にならないからである。
つまり「後出しジャンケンで負ける」ような
シナリオは、市場戦略上、有り得ない。
(注:本レンズの海外(VIVITAR)版は、1979年
よりも僅かに早く米国で発売されていたかも??)
だが、実は、SIGMAも90mm/F2.8のAFマクロを
発売していた事がある(1990年前後頃?)
そのレンズは、銀塩時代に所有していたが、
TAMRON製90マクロに比べて描写力が劣る印象が
あったので、短期間で譲渡処分してしまっていた。
その後の時代、SIGMAはTAMRONと同じ土俵で勝負
するのは不利だと思ったのか?焦点距離の重複を
避けるように、50mm,70mm,105mm,150mm,
180mmのマクロ製品ラインナップとしている。
これらは、以降の時代から現代に至る迄、180mm
以外の焦点距離ではTAMRON製品と被る事は無い。
(全ての焦点距離のSIGMA MACROは、特殊レンズ
第42回「伝説のSIGMA MACRO」編記事で紹介)
![_c0032138_13015890.jpg]()
さて、本AT-X M90であるが、かなり高描写力の
MACROであり、これであればTAMRON製の同時代の
SP90/2.5MACRO(Model 52B/52BB/52E)に
ひけを取らない。
ただし、本レンズは故障品だ。
私としては珍しく、購入検討時に故障を見抜けず、
「やけに安いな? 値付け間違いか?」と、急いで
買って、逃げるようにして帰って来たのだが・・
実際に使用すると、ピントリングが∞の少し手前、
5m近辺で停止してしまい、遠距離~無限遠撮影が
不能であった。
購入時にピントリングの動きは勿論チェックしたが
∞までちゃんと廻っているかは未確認だった(汗)
何故ならば、そういう故障に今まで出くわした事が
無く、想定外であったのも見落としの原因だ。
この珍しい故障は、自力では修理できそうに無く、
「ああ、これが原因で安価な相場だったのか!」
と納得し、「まあ、マクロだから良いかぁ」と、
そのまま近接撮影専用レンズとして使う事とした。
「問題あり」のレンズなので、今回は母艦を
DMC-G6とし、μ4/3機での換算焦点距離倍増と、
同機の、自由度と操作系に優れたデジタルズーム
機能を活用し、課題の緩和を図る事とした。
![_c0032138_13015884.jpg]()
(上写真は、意図的に何処にもピントを合わせない撮影技法)
総括だが、優秀なマクロレンズだとは思うので、
やや(かなり?)レア品だが、もし完動品を
見つければ、8,000円位の価値は十分にあると
思われる。まあ、その値段で私が再度中古品を
見つけたら、当然、迷わず購入するだろう。
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さて、次のシステム、
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レンズは、TOKINA AF 100mm/f3.5 MACRO
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年前後と思われる、
小型軽量AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
正式名称は不明、上記型番はレンズ上に記載されて
いる内容を順次記載したものだが、デザイン上では
バラバラの位置に書かれているので、その順序や
それが型番(名称)なのかどうか?は不明だ。
![_c0032138_13021355.jpg]()
例えば、この時代(1990年前後)のTOKINA製
レンズには、良く「AF」という文字が、でかでかと
目だつように記載されていた。
何故ならば、1985年の「αショック」(MINOLTA
が他社に先駆けて実用AF一眼レフα-7000を発売)
以降、数年間で各社は銀塩一眼レフのAF化を実施、
同時に各社レンズもAF化されたが、AF化そのものに
当時では異常なまでの「付加価値」があった為、
「AF」仕様で、そう称する事が、市場において意味が
とても大きいかった訳だ。
(「MFは時代遅れ、AFにあらずんばカメラにあらず」
という風潮、思想が蔓延していた時代である。
丁度、バブル経済期に差し掛かった時代背景もあり、
世の中は「凄いモノ」を皆が期待していた。)
レンズの型番も又、MINOLTAは他社に先駆けて
「AF」型番を採用。(MINOLTA AF50mm/F1.4等)
ただし、アルファベットの2文字だけでは、商標と
しての識別力は無い為、他社でもレンズ名にAF型番を
使う事は出来たのではあるが、カメラメーカーは、
さすがにMINOLTAの型番の真似をする事はせずに、
CANONはEF、NIKONはAiAF、PENTAXは-F
(又は-FA)型番等を採用した。
しかし、レンズメーカーでは、AFレンズを供給して
いる事自体が意味がある(同じAF仕様のレンズで
あっても、カメラメーカー純正AFレンズより安価)
ので、TAMRON、SIGMA、TOKINA、COSINA等に
おいては、「AF」型番、又は型番ともなんとも区別
が付かない形で、AFという文字をレンズ名に入れて
いた・・ という時代であった。
だが、本レンズには、あまり大きな「AF」の文字
は書かれていない。レンズ前面に「TOKINA AF」と
書かれてはいるのだが、それが正式な型番かどうか
は不明だ。(注:当時の公式な資料等も、もはや
殆ど残っていない)
場合により、意図的に曖昧に書いてあるのかも
知れない。AF型番と明示してしまうと、MINOLTA
を始め、他社と被りまくりなので、あまりそれを
主張すると(商標訴訟にはならないだろうが)
まあ、対立する状況になるかも知れないからだ・・
だが、それでも「AFである」とはアピールしたい、
それ故の「TOKINA AF」の記載であろう。
この状況は、1990年代の他のレンズメーカーでも
同様であり、「TAMRON AF」「SIGMA AF」等、
正式型番とも、なんとも判断しにくい名称だ。
そして、本レンズはNIKON Fマウント版のAF仕様
(AiAF~S相当)ではあるものの、今回はNIKON製
デジタル一眼レフを母艦とはしていない。
その理由は、ちょっとAF精度に課題があるレンズ
であるので(=時代的に、やむを得ない)その
課題の緩和の為に、むしろMFで使った方が良い
かも知れない(?)という事での試験的措置だ。
しかしながら、MFで使うと、ピントリングが
スカスカに廻ってしまうので(注:これは当時の
AFレンズでは、良くあるパターンだ)MF操作性的
には、やや使い難い状態だ。
やはり、マクロレンズは、近接撮影時において、
精密なピント操作を要求される為、ピントリング
(ヘリコイド)には、適切な粘り(=「トルク感」
と呼ばれる場合がある)がある方が望ましい。
![_c0032138_13021378.jpg]()
さて、描写力であるが、こちらは前出のAT-X M90
とは大きく異なり、「平面マクロ」的である。
つまり、解像感は高いが、ボケ質が良く無い。
少し前の時代のCOSINA製MF100mm/F3.5 MACRO
(特殊レンズ第20回「平面マクロ」編参照)
と、極めて類似の描写傾向、およびスペック的にも、
AFかMFかを除いて同一なので、メーカーの垣根を
超えた同一設計品かも知れない。
(注:TOKINAとCOSINAは、銀塩時代には近しい
関係だったと思われ、他にも両社が同一スペック
で、同等なレンズを発売しているケースがある。
さらには、現在TOKINAの親会社であるKENKO社
とも関係があり、3社で同等製品を展開していた
事もある。そして、ご存知の通り、1990年代迄の
COSINA社は、各カメラ・レンズメーカーに多数の
製品を製造して提供する巨大OEMメーカーであった)
「平面マクロ」特性は、銀塩時代には、それが
必要とされた理由もあった(=資料、絵画、検体
等の、写真による複写やアーカイブの為)のだが、
1990年代以降のマクロでは、そのような特性を
持つレンズは極めて少ない(=もっと、一般的な
近接立体被写体をも撮れるような味付けである)
まあ、個人的には、以前は「平面マクロ」特性は、
嫌いであった、何故ならば被写体汎用性に欠ける
様相と、ボケ質が固い弱点があったからだ。
しかし、近代では、もう「平面マクロ」特性が
はっきり出るマクロレンズの発売は極めて少ない為、
むしろ、銀塩時代の「平面マクロ」特性の個性を
重んじるようにしていて、重点的に集めている
次第である。
![_c0032138_13021418.jpg]()
総括だが、他に代替できるマクロレンズを所有
していないユーザーの場合、本レンズをいきなり
使う事は全く推奨できない。
逆に、近代の被写体汎用性の高いマクロを複数
他に所有している場合、それらとは全く異なる
特性のマクロを知る(使う)という意味で、
本レンズの存在意義/所有価値は十分にある。
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では、3本目のマクロシステム。
![_c0032138_13021937.jpg]()
レンズは、TOKINA AT-X M100 PRO D (100mm/f2.8)
(中古購入価格 20,000円)(以下、AT-X M100)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2005年に発売された、フルサイズ対応AF中望遠
等倍(1対1)マクロレンズ。
![_c0032138_13021958.jpg]()
本レンズは長期間に渡り販売が継続されていたが、
やっと近年に後継型として、以下の2機種が発売
されている。(反面、本レンズは生産終了)
FiRIN 100mm/F2.8 FE MACRO
(2019年、SONY FEマウント対応)
atx-i 100mm/F2.8 FF MACRO
(2019年、NIKON F/CANON EFマウント対応)
新型機はいずれも未所有であるが・・
内、一眼レフ用のatx-i 100/2.8は、本レンズ
と類似の光学系と思われ、マイナーチェンジ版で
あろうが、従来製品(本レンズ)よりも、定価は
値下げとなっている。(注:近年においては、
各社を通じ、後継機種での値下げは珍しい事だ)
さて、本AT-X M100も、かなり高描写力のマクロ
である。TAMRON SP90/2.8、SIGMA 105/2.8の
両社の看板(主力)中望遠マクロの描写力にも
見劣りしない。
個人レンズ評価DB(データベース)での各社主力
マクロの「描写表現力」の評価得点は、それぞれ
TAMRON SP90/2.8Di→4.5点
SIGMA105/2.8EX DG→4点
TOKINA100/2.8 PRO→4点
となっていて、殆ど差が無く、かつ高得点だ。
(注:評価は0.5点刻みで5点満点である。
4.5点と4点の差は殆ど無く、4点あれば及第点、
4.5点だと特定の撮影条件下で何らかの長所が
見られる場合等だ。ちなみに、5点満点は
「殆ど弱点が無く、どんな場合でも高描写表現力」
という感じで、その満点評価のレンズは、多数の
所有レンズ中で5%以下の比率と、極めて少ない)
![_c0032138_13022011.jpg]()
弱点であるが、主に描写表現力以外の部分だ。
まずは、中古相場が高価だ。これはセミレア品
である事も理由かも知れず、本レンズと同等か
それ以上の描写表現力を持つTAMRON SP90/2.8
の前期型等であれば1万円前後からの中古相場
であるのに、その2倍程度も高価でコスパが悪い。
上記と同様の原因で、長期間(2005~2019年)
に渡って販売されていたにも係わらず、全くと
言っていい程に市場(ユーザー層)から注目されて
おらず、結果として販売数も少なかっただろうと
想像でき、その為にセミレア品で流通数が少なく
結果として希少価値で中古相場も高めなのであろう。
しかし、それはユーザー層が注目しなかった事が
原因とも言えるので、その結果で高価な相場なので
あれば、あまり納得のいく話では無い。
まあつまり、「状況被害」(?)で、コスパが悪い
商品を掴まされてしまっている、という不満がある。
何故ユーザー層が注目しないか?は、当然ながら
TAMRON SP90/2.8MACROシリーズ(Model 72E/
172E/272E)が著名である(有名すぎる)からだ。
近代では、レンズ市場が縮退していて、結果として
ビギナー層が新製品購買層の主力だ。よってレンズ
に係わる知識も不足していて、「有名なレンズ」
「市場で話題となるレンズ」「定番/鉄板のレンズ」
「誰かが良いと言ったレンズ」「イイネの多いレンズ」
等の、他動的な意見でしか(=自分の価値観では無い)
レンズしか(ビギナー層は)買う事が出来ない状態だ。
![_c0032138_13022037.jpg]()
総括だが、悪いレンズでは無いが、定価や中古相場が
高価すぎる、つまりコスパが悪い。
なお、「PRO」という名前が付いているから、と言って
高価である事を容認するスタンスは間違いだと思う。
レンズを評価するのは、あくまでユーザー側が主体で
あって、メーカー側から一方的に「PRO」等の高性能
の名前(称号)を押し付けられる必要は、まるで無い。
個人的には、むしろ、高画質を示すメーカーの称号が
付いているレンズは、あまり買いたく無い状態だ。
(勿論、多くのケースでコスパが悪すぎるからだ)
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では、4本目のマクロレンズ。
![_c0032138_13022756.jpg]()
レンズは、TOKINA AT-X M35 PRO DX (35mm/f2.8)
(中古購入価格 18,000円)(以下、AT-X M35)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
2007年発売の、APS-C機専用準広角(標準相当)
AF等倍マクロレンズ。
本レンズが恐らくは初のAPS-C専用35mmマクロだ、
(本シリーズ第68回「35mmマクロマニアックス」
編記事参照)
その歴史的価値は大きいが、その事が、すなわち
高性能(高描写力)である保証は無い。
まあ、個人評価DBでも本レンズの「描写表現力」
の評価点は3.5点と、標準的な3点を少し上回る
程度に収まっている。
![_c0032138_13022760.jpg]()
マクロレンズと言えば、少なくともデジタル時代
以降のものであれば、各社の、たいていのマクロを
買っても、全て通常レンズ(マクロでは無いレンズ)
に比べて、優れた描写表現力を持つケースが大半だ。
まあつまり、単純に言えば「マクロは写りが良い」と
言う事になり、マクロならば個人DBの「描写表現力」
評価は4点以上もある事が普通であり、3.5点だと
ちょっと不満がある訳だ。
何が不満か? という詳細の説明はやや難しい。
まあ、感覚的な話で言えば「感動的または凄い写り、
と思うケースが殆ど無い」という感じだろうか?
「普通に良く写るが、特筆すべき描写力は無い」
という言い方も出来るかも知れない。
場合により、他社に先駆けて35mm(APS-C機専用)
マクロ市場に参入した事が、少々仇になったの
かも知れない。つまり、先行商品が存在しないので
リファレンス(参考/比較参照)となるマクロが無く、
どのレベルの製品(注:現代のコンピューター光学
設計においては、どの程度の性能とするか?の
制御は容易だが、あくまで、かかるコスト(価格)
とのバランス感覚である)をリリース(発売)
するかが、市場で最初の製品だと、決め難い点が、
課題であったのだろうと思われる。
まあつまり、他社に先行する事は、歴史的価値が
高く、かつ先行者利益(=他に類する商品が無い
のであれば、それしか買うモノが無い)は得られる
のだろうが、すぐに他社が「追いつけ追い越せ」と
ばかりに、対抗商品(=たいてい性能に優れる)を
出してくる、という状況に陥ってしまう訳だ。
![_c0032138_13022708.jpg]()
(上写真は、意図的に上下ブレを起こした撮影技法)
総括だが、あまり推奨できないレンズである。
私の購入時点(2010年代末頃)であれば、確かに
この購入価格(18,000円)は、他社35mm級
(APS-C機専用)マクロの中古相場と比較すれば
最も安価な類(注:OLYMPUS ZD35/3.5Macroは、
終焉した4/3機用につき比較対象外。また、NIKON
DX Micro40/2.8も同様に安価であるが、NIKKORは
この時代、フルサイズ対応FXレンズが主流となり
APS-C機専用(DX)レンズは不人気で、相場が下落
していた)・・(最も安価な類)ではあったが、
だからと言って、18,000円も出すのであれば、
他に優秀なフルサイズ対応標準~中望遠マクロは
この予算があれば、(旧型なら)よりどりみどり
である。
つまり、絶対的な購入コストが同等スペックの
他マクロレンズに比べて安価な類であったとしても、
性能等に特筆すべきものが無いならば、相対的な
「コスパ」が悪いマクロとなってしまっている訳だ。
また、NIKON Fマウント用バージョンであっても、
レンズ内モーターが搭載されていない為、近代の
NIKONデジタル一眼レフ初級機(D3000/D5000系)
では、実用的に使用できない事も課題と言える。
まあ、どちらかと言えば「マニア層向けレンズ」
という事になるであろう。
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次は、今回ラストのシステム
![_c0032138_13022703.jpg]()
ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のミラー(レンズ)である。
μ4/3機版しか発売されておらず、フルサイズ換算
600mm相当の超望遠ミラー(レンズ)となる。
電子接点に対応していて、DMC-GX7との組み合わせ
では、焦点距離手動入力不要で、内蔵手ブレ補正
機能が使用可能であったり、MF時の自動画面拡大
やEXIF記録にも対応している。
![_c0032138_13023363.jpg]()
また、あまり知られていないが、DMC-GX7との
組み合わせでは、本来PANASONICの多くのμ4/3機
では、AUTO-ISO時の低速限界(切り替わりシャッター
速度)が固定(手動変更不可)であるものが、
本レンズ装着時には、自動的に速いシャッター速度
で切り替わり、手ブレのリスクを軽減してくれる。
まあ、AUTO-ISO低速限界の手動設定機能があれば
良いのだが、μ4/3機で、それを備えている機体は
当時所有する範囲(2015年製以前)では無かった。
(参考:2016年以降の、いくつかのμ4/3機に、
その低速限界手動設定機能は搭載されている)
最短撮影距離は80cm、最大撮影倍率は1/2倍にも
達し、超望遠マクロとして利用可能である。
勿論、多くのμ4/3機に備わっている拡大機能
(デジタルズーム、デジタルテレコン)を併用
すれば、撮影倍率は見かけ上、数倍に高める事が
可能だ。(DMC-G7では、最大8倍のデジタル拡大)
ただ、撮影倍率が(フルサイズ換算で)数倍にも
達すると、手ブレ等の課題が相当に目立つように
なり、いくら優秀な手ブレ補正機能が機体に
内蔵されていたとしても、(超)望遠画角である
事もあいまって、補正精度不足、あるいは被写体
ブレの発生で、手に負えなくなってしまう。
本レンズに限っては、もう無理に、これ以上の
撮影倍率を得ようと欲張らない事が賢明であろう。
![_c0032138_13023310.jpg]()
描写力だが、通常のガラスレンズに比べて
ミラー(レンズ)は、画質(描写力)が落ちる事
は、ごく普通である。
まあ、他分野で言えば、超本格的な学術用途の
巨大望遠鏡(例:「すばる望遠鏡」口径8.2m)
の殆ど全ては、ガラスレンズでは無く、反射式、
つまりミラー(レンズ)である。
何故ならば、数mもの巨大な口径を持つ学術用の
望遠鏡は、一般的な(珪素)ガラスレンズでそれを
作る事が、製造の精度的にも、過大な重量的にも
不可能に近いから、皆、ミラー(反射)型望遠鏡
になっている訳である。
しかし、そうした学術用の超高性能反射望遠鏡に
比べ、写真用のミラー(レンズ)は、そこまでの
超絶的性能を持たす必要性も無く、かつ価格も
そこそこ安価で、一般ユーザー層が買える価格帯で
なければならない。
だから、製造精度(研磨や蒸着の)に対しても、
そこその品質でしか作れず、ガラスレンズに比べ
ミラー(レンズ)が、なんとなく描写力が劣る印象
が強かった訳だ。
具体的には、多くのミラー(レンズ)は解像感が
低く感じ、かつピントが合い難い。
ピントが合い難いのは、解像力の問題のみならず
遠距離域でピントリングの回転角が、ガラスレンズ
の場合よりも大きい点も、微妙に影響している。
これは本来、回転角が大きい方がMFピント精度が
高まる道理なのだが、何故か、逆に合わせ難い。
ただ、KENKO社あるいはKENKO TOKINA社は、
銀塩時代の古くから、ずっとミラー(レンズ)を
ラインナップしつづけていた長年の製品ノウハウ
を持つ。
本MF300/6.3は2010年代の新鋭ミラーである為、
旧来の時代のミラー(レンズ)よりも様々な点での
改善が見られる。
具体的には、高画質化、電子接点の搭載、
通常フィルター装着可能、最短撮影距離の短縮が
それである。
しかし、ミラー特有の弱点もあり、それは絞り
機構を持たない事だ。開放(固定)F6.3ならば
作画上の意図(スローシャッター効果等)を
狙わない限りは、シャッター速度オーバには
ならないので、絞り込む必要は無いが、必要で
あれば通常ND(減光)フィルターを装着できる。
だが、被写界深度の調整が効かないのは辛い。
よって、私が本レンズを使う場合には、デジタル
拡大機能を備えた母艦を用い、被写界深度を
深めたい場合、撮影距離を離して、デジタル拡大
で被写体構図を同等に調整する。この事で擬似的
に被写界深度を深める効果がある。
ただし、被写界深度を浅くする方向には、この
技法は使えず、作画意図ならびに、ボケ質破綻の
回避を綿密に行う為には、恐ろしく煩雑かつ高度な
技法となる。
なお「それはトリミングと等価だ」とは言うなかれ、
現場で被写体に対峙しながら、被写界深度やボケ質を
考慮して、撮影時に行う調整行為と、家に帰ってから、
パソコンの編集ソフトでトリミングをする事は、まるで
意味、効果、心情や編集コストが異なってくる。
それと、こうした撮影技法を行うには、連続デジタル
ズーム機能がファンクションレバーにアサイン出来て
デジタル拡大の操作性の自由度が高い2つのμ4/3機、
つまり、PANASONIC DMC-G5、DMC-G6を母艦として
使用する事が望ましいのだが、あいにくそれらの
機種には、ボディ内手ブレ補正機能が無い。
日中屋外明所であれば、600mm相当F6.3の仕様でも、
適切なシャッター速度(例:1/500秒以上)をキープ
できるの状態で、手ブレのリスクは低減できるが
日中でも、日陰や弱暗所(森の中等)では、この
スペックだと手ブレ発生のリスクがある。
よって私の場合は、撮影状況を鑑みて、DMC-G6
系列か、または手ブレ補正内蔵μ4/3機、
(PANASONICでは、DMC-GX7(2013年)以降、
OLYMPUSではμ4/3機発売時点から、ほぼ全ての機体)
を使い分ける事としている。
それと、ミラー(レンズ)で発生する「リングボケ」
については、長所とも短所とも言える特徴なので
不問である。それは背景での光線の入れ方の配慮で、
出す事も消す事も可能であるので、必要に応じて
撮影者がコントロールすれば良い。
![_c0032138_13023335.jpg]()
総括だが、本MF300/6.3は、過去のランキング系
記事の多く、具体的には・・
*ミラーレス・マニアックス名玉編=第13位
*ハイコスパレンズBEST40=第12位
*最強超望遠選手権=決勝戦進出、優勝
*価格別レンズ選手権1万円級(2)=優勝
と、全てのランキング系記事で高順位を獲得して
いる名玉(=総合評価点4.1)である。
購入を迷う必要は無い、いやむしろ、このミラー
を使う為にμ4/3機を購入しても悪く無い位だ。
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さて、今回の「知られざるTOKINA MACRO編」記事は、
このあたり迄で・・ 次回記事に続く。
今回は補足編として、TOKINA(現:KENKO TOKINA)
社製の1980年代頃~2010年代のマクロレンズ5本を
発売された時代の順で取り上げる。
なお、全て過去記事で紹介済みのレンズであるので
過去記事とは異なる視点での内容とする。
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ではまず、今回最初のTOKINA製MACRO

(ジャンク購入価格 2,000円)(以下、AT-X M90)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
詳細不明、1980年前後頃(?)に発売と思われる
MF中望遠1/2倍マクロ。
米Vivitar社に供給していた(OEM生産)同型マクロを
自社ブランドで国内発売したレンズという情報がある。
が、「米NASAによる設計だ」という、マニア間で良く
流れている情報は、恐らくだが根拠の無いガセであろう。
NASAの研究員に、多分そんな暇は無い、もっと重要な
国家に係わる業務が色々とある筈だ。
最大撮影倍率1/2倍は、現代のマクロレンズの感覚
では不足を感じるのと、本レンズは故障品(詳細は
後述)の為、デジタル拡大機能が最も充実している
機体のDMC-G6を母艦として使用する。

銘打っている。どういう意味か?と言えば、銀塩時代
から、マクロレンズと言えばTAMRON製のものが著名で、
あったが、有名すぎて、他のレンズメーカー、つまり、
TOKINAやSIGMA、COSINAといったブランドのマクロは
殆ど注目されていなかった、という経緯があるからだ。
よって、TOKINA製のMACROレンズの真の実力値は
マニア層等にも殆ど知られていないのであるが、
勿論、それでもあえてTAMRONに対抗して商品化した、
という事から、あなどれない実力値を持つ事は
想像に難く無いであろう。もしTAMRON SP90MACRO
に対して完全に勝ち目が無い低性能なレンズであれば、
最初から、そのようなマクロレンズが発売される
筈は無い、という理屈である。
なお、全く同様の理由で、SIGMA製のMACROレンズも
悪く無い性能だ。
本記事と同等の主旨で、「特殊レンズ・スーパー
マニアックス第42回、伝説のSIGMA MACRO編」記事を
掲載済みである。まあ、本記事も「特殊レンズ~」の
カテゴリーで掲載した方が良かったのかも知れないが
当該シリーズ記事執筆後に購入したレンズが含まれて
いるが故の(間に合っていなかった)措置だ。
何故、SIGMAやTOKINAのマクロが高性能(高描写力)
なのか? と言う点を、もう少し説明しておく。
マクロレンズの市場では「超定番」とも言える
TAMRON SP90マクロ(SP90/2.5系)が1979年から
存在している。(Model 52B~)
これは発売当初から人気があり、高描写力である
事でも良く知られていた名玉だ。
40年以上も前のレンズであるが、近年においても
「タムキュー(TAMRON 90)」という愛称で、新規
初級マニア層にも人気である。
(注:「ゴロが悪い」ので、本ブログでは、その
呼び方を説明に使う事は無いし、その名が、どの
時代の、どのModelを示しているのかも不明瞭だ)
まあ、昔からのマニア層であれば、この52B系の
マクロは、殆ど誰もが持っていた筈だ。
(ハイコスパ・レンズ第15回記事等を参照。また
本シリーズ第59回では、後の時代のSP90/2.8Diとの
比較やTAMRON 90MACROの歴史の説明をしている)
で、少なくとも、1979年以降の時代で、新規に
発売する他社製マクロは、TAMRON製90マクロに
勝るとも劣らない性能(描写力)で無いと、最初
から勝負にならないからである。
つまり「後出しジャンケンで負ける」ような
シナリオは、市場戦略上、有り得ない。
(注:本レンズの海外(VIVITAR)版は、1979年
よりも僅かに早く米国で発売されていたかも??)
だが、実は、SIGMAも90mm/F2.8のAFマクロを
発売していた事がある(1990年前後頃?)
そのレンズは、銀塩時代に所有していたが、
TAMRON製90マクロに比べて描写力が劣る印象が
あったので、短期間で譲渡処分してしまっていた。
その後の時代、SIGMAはTAMRONと同じ土俵で勝負
するのは不利だと思ったのか?焦点距離の重複を
避けるように、50mm,70mm,105mm,150mm,
180mmのマクロ製品ラインナップとしている。
これらは、以降の時代から現代に至る迄、180mm
以外の焦点距離ではTAMRON製品と被る事は無い。
(全ての焦点距離のSIGMA MACROは、特殊レンズ
第42回「伝説のSIGMA MACRO」編記事で紹介)

MACROであり、これであればTAMRON製の同時代の
SP90/2.5MACRO(Model 52B/52BB/52E)に
ひけを取らない。
ただし、本レンズは故障品だ。
私としては珍しく、購入検討時に故障を見抜けず、
「やけに安いな? 値付け間違いか?」と、急いで
買って、逃げるようにして帰って来たのだが・・
実際に使用すると、ピントリングが∞の少し手前、
5m近辺で停止してしまい、遠距離~無限遠撮影が
不能であった。
購入時にピントリングの動きは勿論チェックしたが
∞までちゃんと廻っているかは未確認だった(汗)
何故ならば、そういう故障に今まで出くわした事が
無く、想定外であったのも見落としの原因だ。
この珍しい故障は、自力では修理できそうに無く、
「ああ、これが原因で安価な相場だったのか!」
と納得し、「まあ、マクロだから良いかぁ」と、
そのまま近接撮影専用レンズとして使う事とした。
「問題あり」のレンズなので、今回は母艦を
DMC-G6とし、μ4/3機での換算焦点距離倍増と、
同機の、自由度と操作系に優れたデジタルズーム
機能を活用し、課題の緩和を図る事とした。

総括だが、優秀なマクロレンズだとは思うので、
やや(かなり?)レア品だが、もし完動品を
見つければ、8,000円位の価値は十分にあると
思われる。まあ、その値段で私が再度中古品を
見つけたら、当然、迷わず購入するだろう。
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さて、次のシステム、

(中古購入価格 3,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年前後と思われる、
小型軽量AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
正式名称は不明、上記型番はレンズ上に記載されて
いる内容を順次記載したものだが、デザイン上では
バラバラの位置に書かれているので、その順序や
それが型番(名称)なのかどうか?は不明だ。

レンズには、良く「AF」という文字が、でかでかと
目だつように記載されていた。
何故ならば、1985年の「αショック」(MINOLTA
が他社に先駆けて実用AF一眼レフα-7000を発売)
以降、数年間で各社は銀塩一眼レフのAF化を実施、
同時に各社レンズもAF化されたが、AF化そのものに
当時では異常なまでの「付加価値」があった為、
「AF」仕様で、そう称する事が、市場において意味が
とても大きいかった訳だ。
(「MFは時代遅れ、AFにあらずんばカメラにあらず」
という風潮、思想が蔓延していた時代である。
丁度、バブル経済期に差し掛かった時代背景もあり、
世の中は「凄いモノ」を皆が期待していた。)
レンズの型番も又、MINOLTAは他社に先駆けて
「AF」型番を採用。(MINOLTA AF50mm/F1.4等)
ただし、アルファベットの2文字だけでは、商標と
しての識別力は無い為、他社でもレンズ名にAF型番を
使う事は出来たのではあるが、カメラメーカーは、
さすがにMINOLTAの型番の真似をする事はせずに、
CANONはEF、NIKONはAiAF、PENTAXは-F
(又は-FA)型番等を採用した。
しかし、レンズメーカーでは、AFレンズを供給して
いる事自体が意味がある(同じAF仕様のレンズで
あっても、カメラメーカー純正AFレンズより安価)
ので、TAMRON、SIGMA、TOKINA、COSINA等に
おいては、「AF」型番、又は型番ともなんとも区別
が付かない形で、AFという文字をレンズ名に入れて
いた・・ という時代であった。
だが、本レンズには、あまり大きな「AF」の文字
は書かれていない。レンズ前面に「TOKINA AF」と
書かれてはいるのだが、それが正式な型番かどうか
は不明だ。(注:当時の公式な資料等も、もはや
殆ど残っていない)
場合により、意図的に曖昧に書いてあるのかも
知れない。AF型番と明示してしまうと、MINOLTA
を始め、他社と被りまくりなので、あまりそれを
主張すると(商標訴訟にはならないだろうが)
まあ、対立する状況になるかも知れないからだ・・
だが、それでも「AFである」とはアピールしたい、
それ故の「TOKINA AF」の記載であろう。
この状況は、1990年代の他のレンズメーカーでも
同様であり、「TAMRON AF」「SIGMA AF」等、
正式型番とも、なんとも判断しにくい名称だ。
そして、本レンズはNIKON Fマウント版のAF仕様
(AiAF~S相当)ではあるものの、今回はNIKON製
デジタル一眼レフを母艦とはしていない。
その理由は、ちょっとAF精度に課題があるレンズ
であるので(=時代的に、やむを得ない)その
課題の緩和の為に、むしろMFで使った方が良い
かも知れない(?)という事での試験的措置だ。
しかしながら、MFで使うと、ピントリングが
スカスカに廻ってしまうので(注:これは当時の
AFレンズでは、良くあるパターンだ)MF操作性的
には、やや使い難い状態だ。
やはり、マクロレンズは、近接撮影時において、
精密なピント操作を要求される為、ピントリング
(ヘリコイド)には、適切な粘り(=「トルク感」
と呼ばれる場合がある)がある方が望ましい。

とは大きく異なり、「平面マクロ」的である。
つまり、解像感は高いが、ボケ質が良く無い。
少し前の時代のCOSINA製MF100mm/F3.5 MACRO
(特殊レンズ第20回「平面マクロ」編参照)
と、極めて類似の描写傾向、およびスペック的にも、
AFかMFかを除いて同一なので、メーカーの垣根を
超えた同一設計品かも知れない。
(注:TOKINAとCOSINAは、銀塩時代には近しい
関係だったと思われ、他にも両社が同一スペック
で、同等なレンズを発売しているケースがある。
さらには、現在TOKINAの親会社であるKENKO社
とも関係があり、3社で同等製品を展開していた
事もある。そして、ご存知の通り、1990年代迄の
COSINA社は、各カメラ・レンズメーカーに多数の
製品を製造して提供する巨大OEMメーカーであった)
「平面マクロ」特性は、銀塩時代には、それが
必要とされた理由もあった(=資料、絵画、検体
等の、写真による複写やアーカイブの為)のだが、
1990年代以降のマクロでは、そのような特性を
持つレンズは極めて少ない(=もっと、一般的な
近接立体被写体をも撮れるような味付けである)
まあ、個人的には、以前は「平面マクロ」特性は、
嫌いであった、何故ならば被写体汎用性に欠ける
様相と、ボケ質が固い弱点があったからだ。
しかし、近代では、もう「平面マクロ」特性が
はっきり出るマクロレンズの発売は極めて少ない為、
むしろ、銀塩時代の「平面マクロ」特性の個性を
重んじるようにしていて、重点的に集めている
次第である。

していないユーザーの場合、本レンズをいきなり
使う事は全く推奨できない。
逆に、近代の被写体汎用性の高いマクロを複数
他に所有している場合、それらとは全く異なる
特性のマクロを知る(使う)という意味で、
本レンズの存在意義/所有価値は十分にある。
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では、3本目のマクロシステム。

(中古購入価格 20,000円)(以下、AT-X M100)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2005年に発売された、フルサイズ対応AF中望遠
等倍(1対1)マクロレンズ。

やっと近年に後継型として、以下の2機種が発売
されている。(反面、本レンズは生産終了)
FiRIN 100mm/F2.8 FE MACRO
(2019年、SONY FEマウント対応)
atx-i 100mm/F2.8 FF MACRO
(2019年、NIKON F/CANON EFマウント対応)
新型機はいずれも未所有であるが・・
内、一眼レフ用のatx-i 100/2.8は、本レンズ
と類似の光学系と思われ、マイナーチェンジ版で
あろうが、従来製品(本レンズ)よりも、定価は
値下げとなっている。(注:近年においては、
各社を通じ、後継機種での値下げは珍しい事だ)
さて、本AT-X M100も、かなり高描写力のマクロ
である。TAMRON SP90/2.8、SIGMA 105/2.8の
両社の看板(主力)中望遠マクロの描写力にも
見劣りしない。
個人レンズ評価DB(データベース)での各社主力
マクロの「描写表現力」の評価得点は、それぞれ
TAMRON SP90/2.8Di→4.5点
SIGMA105/2.8EX DG→4点
TOKINA100/2.8 PRO→4点
となっていて、殆ど差が無く、かつ高得点だ。
(注:評価は0.5点刻みで5点満点である。
4.5点と4点の差は殆ど無く、4点あれば及第点、
4.5点だと特定の撮影条件下で何らかの長所が
見られる場合等だ。ちなみに、5点満点は
「殆ど弱点が無く、どんな場合でも高描写表現力」
という感じで、その満点評価のレンズは、多数の
所有レンズ中で5%以下の比率と、極めて少ない)

まずは、中古相場が高価だ。これはセミレア品
である事も理由かも知れず、本レンズと同等か
それ以上の描写表現力を持つTAMRON SP90/2.8
の前期型等であれば1万円前後からの中古相場
であるのに、その2倍程度も高価でコスパが悪い。
上記と同様の原因で、長期間(2005~2019年)
に渡って販売されていたにも係わらず、全くと
言っていい程に市場(ユーザー層)から注目されて
おらず、結果として販売数も少なかっただろうと
想像でき、その為にセミレア品で流通数が少なく
結果として希少価値で中古相場も高めなのであろう。
しかし、それはユーザー層が注目しなかった事が
原因とも言えるので、その結果で高価な相場なので
あれば、あまり納得のいく話では無い。
まあつまり、「状況被害」(?)で、コスパが悪い
商品を掴まされてしまっている、という不満がある。
何故ユーザー層が注目しないか?は、当然ながら
TAMRON SP90/2.8MACROシリーズ(Model 72E/
172E/272E)が著名である(有名すぎる)からだ。
近代では、レンズ市場が縮退していて、結果として
ビギナー層が新製品購買層の主力だ。よってレンズ
に係わる知識も不足していて、「有名なレンズ」
「市場で話題となるレンズ」「定番/鉄板のレンズ」
「誰かが良いと言ったレンズ」「イイネの多いレンズ」
等の、他動的な意見でしか(=自分の価値観では無い)
レンズしか(ビギナー層は)買う事が出来ない状態だ。

高価すぎる、つまりコスパが悪い。
なお、「PRO」という名前が付いているから、と言って
高価である事を容認するスタンスは間違いだと思う。
レンズを評価するのは、あくまでユーザー側が主体で
あって、メーカー側から一方的に「PRO」等の高性能
の名前(称号)を押し付けられる必要は、まるで無い。
個人的には、むしろ、高画質を示すメーカーの称号が
付いているレンズは、あまり買いたく無い状態だ。
(勿論、多くのケースでコスパが悪すぎるからだ)
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では、4本目のマクロレンズ。

(中古購入価格 18,000円)(以下、AT-X M35)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
2007年発売の、APS-C機専用準広角(標準相当)
AF等倍マクロレンズ。
本レンズが恐らくは初のAPS-C専用35mmマクロだ、
(本シリーズ第68回「35mmマクロマニアックス」
編記事参照)
その歴史的価値は大きいが、その事が、すなわち
高性能(高描写力)である保証は無い。
まあ、個人評価DBでも本レンズの「描写表現力」
の評価点は3.5点と、標準的な3点を少し上回る
程度に収まっている。

以降のものであれば、各社の、たいていのマクロを
買っても、全て通常レンズ(マクロでは無いレンズ)
に比べて、優れた描写表現力を持つケースが大半だ。
まあつまり、単純に言えば「マクロは写りが良い」と
言う事になり、マクロならば個人DBの「描写表現力」
評価は4点以上もある事が普通であり、3.5点だと
ちょっと不満がある訳だ。
何が不満か? という詳細の説明はやや難しい。
まあ、感覚的な話で言えば「感動的または凄い写り、
と思うケースが殆ど無い」という感じだろうか?
「普通に良く写るが、特筆すべき描写力は無い」
という言い方も出来るかも知れない。
場合により、他社に先駆けて35mm(APS-C機専用)
マクロ市場に参入した事が、少々仇になったの
かも知れない。つまり、先行商品が存在しないので
リファレンス(参考/比較参照)となるマクロが無く、
どのレベルの製品(注:現代のコンピューター光学
設計においては、どの程度の性能とするか?の
制御は容易だが、あくまで、かかるコスト(価格)
とのバランス感覚である)をリリース(発売)
するかが、市場で最初の製品だと、決め難い点が、
課題であったのだろうと思われる。
まあつまり、他社に先行する事は、歴史的価値が
高く、かつ先行者利益(=他に類する商品が無い
のであれば、それしか買うモノが無い)は得られる
のだろうが、すぐに他社が「追いつけ追い越せ」と
ばかりに、対抗商品(=たいてい性能に優れる)を
出してくる、という状況に陥ってしまう訳だ。

総括だが、あまり推奨できないレンズである。
私の購入時点(2010年代末頃)であれば、確かに
この購入価格(18,000円)は、他社35mm級
(APS-C機専用)マクロの中古相場と比較すれば
最も安価な類(注:OLYMPUS ZD35/3.5Macroは、
終焉した4/3機用につき比較対象外。また、NIKON
DX Micro40/2.8も同様に安価であるが、NIKKORは
この時代、フルサイズ対応FXレンズが主流となり
APS-C機専用(DX)レンズは不人気で、相場が下落
していた)・・(最も安価な類)ではあったが、
だからと言って、18,000円も出すのであれば、
他に優秀なフルサイズ対応標準~中望遠マクロは
この予算があれば、(旧型なら)よりどりみどり
である。
つまり、絶対的な購入コストが同等スペックの
他マクロレンズに比べて安価な類であったとしても、
性能等に特筆すべきものが無いならば、相対的な
「コスパ」が悪いマクロとなってしまっている訳だ。
また、NIKON Fマウント用バージョンであっても、
レンズ内モーターが搭載されていない為、近代の
NIKONデジタル一眼レフ初級機(D3000/D5000系)
では、実用的に使用できない事も課題と言える。
まあ、どちらかと言えば「マニア層向けレンズ」
という事になるであろう。
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次は、今回ラストのシステム

(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のミラー(レンズ)である。
μ4/3機版しか発売されておらず、フルサイズ換算
600mm相当の超望遠ミラー(レンズ)となる。
電子接点に対応していて、DMC-GX7との組み合わせ
では、焦点距離手動入力不要で、内蔵手ブレ補正
機能が使用可能であったり、MF時の自動画面拡大
やEXIF記録にも対応している。

組み合わせでは、本来PANASONICの多くのμ4/3機
では、AUTO-ISO時の低速限界(切り替わりシャッター
速度)が固定(手動変更不可)であるものが、
本レンズ装着時には、自動的に速いシャッター速度
で切り替わり、手ブレのリスクを軽減してくれる。
まあ、AUTO-ISO低速限界の手動設定機能があれば
良いのだが、μ4/3機で、それを備えている機体は
当時所有する範囲(2015年製以前)では無かった。
(参考:2016年以降の、いくつかのμ4/3機に、
その低速限界手動設定機能は搭載されている)
最短撮影距離は80cm、最大撮影倍率は1/2倍にも
達し、超望遠マクロとして利用可能である。
勿論、多くのμ4/3機に備わっている拡大機能
(デジタルズーム、デジタルテレコン)を併用
すれば、撮影倍率は見かけ上、数倍に高める事が
可能だ。(DMC-G7では、最大8倍のデジタル拡大)
ただ、撮影倍率が(フルサイズ換算で)数倍にも
達すると、手ブレ等の課題が相当に目立つように
なり、いくら優秀な手ブレ補正機能が機体に
内蔵されていたとしても、(超)望遠画角である
事もあいまって、補正精度不足、あるいは被写体
ブレの発生で、手に負えなくなってしまう。
本レンズに限っては、もう無理に、これ以上の
撮影倍率を得ようと欲張らない事が賢明であろう。

ミラー(レンズ)は、画質(描写力)が落ちる事
は、ごく普通である。
まあ、他分野で言えば、超本格的な学術用途の
巨大望遠鏡(例:「すばる望遠鏡」口径8.2m)
の殆ど全ては、ガラスレンズでは無く、反射式、
つまりミラー(レンズ)である。
何故ならば、数mもの巨大な口径を持つ学術用の
望遠鏡は、一般的な(珪素)ガラスレンズでそれを
作る事が、製造の精度的にも、過大な重量的にも
不可能に近いから、皆、ミラー(反射)型望遠鏡
になっている訳である。
しかし、そうした学術用の超高性能反射望遠鏡に
比べ、写真用のミラー(レンズ)は、そこまでの
超絶的性能を持たす必要性も無く、かつ価格も
そこそこ安価で、一般ユーザー層が買える価格帯で
なければならない。
だから、製造精度(研磨や蒸着の)に対しても、
そこその品質でしか作れず、ガラスレンズに比べ
ミラー(レンズ)が、なんとなく描写力が劣る印象
が強かった訳だ。
具体的には、多くのミラー(レンズ)は解像感が
低く感じ、かつピントが合い難い。
ピントが合い難いのは、解像力の問題のみならず
遠距離域でピントリングの回転角が、ガラスレンズ
の場合よりも大きい点も、微妙に影響している。
これは本来、回転角が大きい方がMFピント精度が
高まる道理なのだが、何故か、逆に合わせ難い。
ただ、KENKO社あるいはKENKO TOKINA社は、
銀塩時代の古くから、ずっとミラー(レンズ)を
ラインナップしつづけていた長年の製品ノウハウ
を持つ。
本MF300/6.3は2010年代の新鋭ミラーである為、
旧来の時代のミラー(レンズ)よりも様々な点での
改善が見られる。
具体的には、高画質化、電子接点の搭載、
通常フィルター装着可能、最短撮影距離の短縮が
それである。
しかし、ミラー特有の弱点もあり、それは絞り
機構を持たない事だ。開放(固定)F6.3ならば
作画上の意図(スローシャッター効果等)を
狙わない限りは、シャッター速度オーバには
ならないので、絞り込む必要は無いが、必要で
あれば通常ND(減光)フィルターを装着できる。
だが、被写界深度の調整が効かないのは辛い。
よって、私が本レンズを使う場合には、デジタル
拡大機能を備えた母艦を用い、被写界深度を
深めたい場合、撮影距離を離して、デジタル拡大
で被写体構図を同等に調整する。この事で擬似的
に被写界深度を深める効果がある。
ただし、被写界深度を浅くする方向には、この
技法は使えず、作画意図ならびに、ボケ質破綻の
回避を綿密に行う為には、恐ろしく煩雑かつ高度な
技法となる。
なお「それはトリミングと等価だ」とは言うなかれ、
現場で被写体に対峙しながら、被写界深度やボケ質を
考慮して、撮影時に行う調整行為と、家に帰ってから、
パソコンの編集ソフトでトリミングをする事は、まるで
意味、効果、心情や編集コストが異なってくる。
それと、こうした撮影技法を行うには、連続デジタル
ズーム機能がファンクションレバーにアサイン出来て
デジタル拡大の操作性の自由度が高い2つのμ4/3機、
つまり、PANASONIC DMC-G5、DMC-G6を母艦として
使用する事が望ましいのだが、あいにくそれらの
機種には、ボディ内手ブレ補正機能が無い。
日中屋外明所であれば、600mm相当F6.3の仕様でも、
適切なシャッター速度(例:1/500秒以上)をキープ
できるの状態で、手ブレのリスクは低減できるが
日中でも、日陰や弱暗所(森の中等)では、この
スペックだと手ブレ発生のリスクがある。
よって私の場合は、撮影状況を鑑みて、DMC-G6
系列か、または手ブレ補正内蔵μ4/3機、
(PANASONICでは、DMC-GX7(2013年)以降、
OLYMPUSではμ4/3機発売時点から、ほぼ全ての機体)
を使い分ける事としている。
それと、ミラー(レンズ)で発生する「リングボケ」
については、長所とも短所とも言える特徴なので
不問である。それは背景での光線の入れ方の配慮で、
出す事も消す事も可能であるので、必要に応じて
撮影者がコントロールすれば良い。

記事の多く、具体的には・・
*ミラーレス・マニアックス名玉編=第13位
*ハイコスパレンズBEST40=第12位
*最強超望遠選手権=決勝戦進出、優勝
*価格別レンズ選手権1万円級(2)=優勝
と、全てのランキング系記事で高順位を獲得して
いる名玉(=総合評価点4.1)である。
購入を迷う必要は無い、いやむしろ、このミラー
を使う為にμ4/3機を購入しても悪く無い位だ。
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さて、今回の「知られざるTOKINA MACRO編」記事は、
このあたり迄で・・ 次回記事に続く。