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特殊レンズ・スーパーマニアックス(70)200mmクラッシックス

本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。
今回は「200mmクラッシックス」という主旨で一眼レフ用の
焦点距離200mm(近辺)の、やや古い単焦点望遠レンズで、
これまで本シリーズ記事では未紹介か、それに近い状態の
レンズを9本取り上げよう。(ただし、いずれも過去記事
では紹介済みだ)

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、PENTAX Super-Multi-Coated TAKUMAR 200mm/f4
(中古購入価格 1,000円)(以下、SMCT200/4)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

ハイコスパ名玉編で、見事、第4位にランクインした
1970年代のMF単焦点望遠レンズ、M42マウントである。

5群5枚と、割とオーソドックスなレンズ構成ながら、
(注:テレフォト型、又はテレフォト改型等と呼ばれる)
何故か写りが良い。しかもジャンク品で安価であったので、
コスパ点が非常に高く評価されたレンズだ。
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レンズ構成の話が出たが、この時代のPENTAXの望遠レンズ
の多くが、そして他社(MF)望遠レンズでも、5群5枚という
構成はとても多い。

で、初級マニア層等が良く誤解する内容としては、例えば
「レンズ構成の枚数が同じならば、写りは同じだ」とか
「レンズ枚数が多い方が、良く写る」
といった思い込みがある場合が殆どだが、これらは必ずしも
そうとは言えず、つまりその「思い込み」は間違いである。

同じレンズ構成であっても、レンズの配置、曲率、そして
ガラス材率の違いによる屈折率や色分散の違い、さらには
非球面レンズを使用しているか否か、などの差が存在する。

このあたりは、結像光学(レンズ)の専門書を開けて読んで
みれば理解できるだろうが、一般的なカメラマンはもとより
職業写真家層に至るまで、なかなかそういう本を読んで勉強
しようとする人は居ない。

そして、仮に読もうとしても、この手の専門書は、恐ろしく
難解である。理系の大学卒程度の数学/物理学の知識が
あっても、それでは足りないくらいに難しく、加えて、
古い時代からある特殊な技術分野であるが故にか?説明の
手法が全く練れておらず、難しい言葉や数式ををこねくり
廻しているだけだし、かつ、専門用語等も資料毎に微妙に
異なっている。(=光学分野での用語統一が出来ていない)
結局、何が書いてあるか良く分からないものが殆どだ。

まあ、それはそうだろう、ずっと研究や開発をしてきた
だけの専門家や技術者に、広く一般に伝える為の平易な
解説をするだけのスキルは無い。そんな事ができるのは、
教師、いや、専門の解説スキルを鍛えた「人気塾講師」
あたりしか上手く説明できないのではなかろうか?
まあ、これは光学分野に限らず、どの技術分野でも同様だ、
世間一般ではこうした事は「難解な技術内容だから」と
許容されてしまうのだが、実は、簡単な事を上手く説明し
きれていない事が大半であり、私の視点では、これは
「説明能力不足」という評価になってしまう。

さらには、メーカー等独自のノウハウ的な要素は企業秘密と
なっていて、これらの専門書にも一切書かれていない。

よって、数冊程の専門書を無理して頑張って読んだ程度では、
レンズの原理や設計についての理解は、まず不可能であり、
こういった専門業務に長年従事しない限りは、その技術の
詳細に触れる事は出来ない。

なので、世の中(雑誌やWEB等)に出回っているマニアや評価者
による、光学的な技術面に係わる要素は、その情報の殆どは
光学の非専門家層による「思い込み」や「誤解」によるものと
なってしまう。これは、意図的に嘘をついている訳では無いの
だろうが、結局、あまりにも専門的すぎて、誰もちゃんとは
わかっていない状態なのだ。

この状況による弊害だが、まず「写りが良いレンズ」という
定義を誰もする事ができない。大半のカメラマンはこれを
「解像力に優れる」あるいは「収差が少ない」と捉えている
が、解像力(解像感)が優秀なだけでは、広い意味での
「写りが良い」とは決め難い、例えば「ボケ質がとても良い」
レンズとか、超大口径で、何を撮っても独特の立体的表現が
出来るレンズ等は必ずしも解像力が高いレンズとは限らない。

だが、専門性の低いレンズ評価記事や情報等では、必ずと
言って良いほど、「このレンズは開放から解像力が高い→
だから良いレンズだ」といった、単純な初級評価しかしない。
(下手をすれば、「開放」を「解放」と書き間違っている
事すらも多々ある、もう、そういう評価記事は論外だ)

また、「収差が少ない」という評価基準においては、前述の
ように、光学技術分野が非常に難解である事が問題となる。
例えば、マニア層以外の一般カメラマンで「ザイデルの5収差」
を知っている人は皆無であろうし、マニア等で、そこまでは
知っていたとしても、その具体的内容を、すらすらと説明が
できるカメラマンは皆無に近い事であろう。

だから一般層から専門評価者に至るまで、「収差」と言えば
直線が歪んで写る「歪曲収差」や、白い被写体の輪郭に色の
滲みが出る「色収差」位の、目で見て簡単にわかる項目しか
理解あるいは評価が出来ず、それら、レンズ性能や収差の
ごくごく一部を見て、「このレンズは収差が少ない!」と
言い張る訳だ。

でもまあ、それら以外の収差や性能項目は、ユーザー側では
評価の術(すべ)が無いものが殆どであるのでやむを得ない。
要するに、ユーザー側から見て、レンズの性能評価は
「お手上げ」の状態なのだ。

よって、ほとんどのユーザー層では、「誰がが良いと言った
から買う」という受動的な購買行動に走ってしまうしかない。
その「誰か」が、有名であればさらにそれを信用してしまうし
「一見して理屈に合っている」状態であれば、さらにその
信用度は増すのであろう。
けど、有名人だからといって、詳しいとか、評価判断基準が
絶対的である保証は無い、まあ、芸能人のグルメ評と同様に、
そんな事を簡単に信じるのは、超ビギナー層でしか無い。

それと「一見もっともらしい」というのも曲者(くせもの)
だ。
具体例を挙げると、1975年に発売されたCONTAX Planar T*
50mm/F1.4 (本シリーズ第48回「プラナー編」等で紹介)
は、当時の他(社)の標準レンズが、(5群)6枚構成で
あった中で、このプラナーは6群7枚構成となっていたし、
おまけにCONTAX(カール・ツァイス)という、ドイツの
ビッグブランドを、日本のヤシカ(後に京セラ)が取得した
ばかりの状態だ。よって、当時の全ての(専門)評価者は、
その名前に負けてしまい、
「さすがカール・ツァイス、世界最高の標準レンズだ。
 写りが良いのは、他の標準レンズよりも1枚レンズが
 多いからである」
・・といった、現代の視点では、あまり根拠の無い評価を
行った。
その話は、その後数十年が経過しても、まことしやかに、
マニア層や「CONTAX党」の間でずっと囁かれ続けていて、
この件と「T*(スター)」(多層)コーティングが、
「CONTAX神話」の、ある意味、礎(いしずえ)となっている。

なお、ちなみに、1枚レンズを多くするだけで写りが良く
なるのであれば、多社も皆、それを真似をするだろう。
だが、特に小口径版では、実際にそうしたケースは少ない。
(無いわけではない)
まあ、後年の大口径標準では6群7枚方式も増えてきたのだが、
そうであれば、結局のところ、どのメーカーの標準レンズを
買っても同じ写り、という話になってしまう。
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余談が極めて長くなったが、まあ、余談とも言い切れない
重要なポイントである。結局、この話の結論としては

1:レンズ構成だけを見て、そのレンズの性能は測れない
2:「レンズの写りが良い」という定義ははっきりしていない
3:職業的な専門家以外、誰もレンズの仕組みは理解できない
4:他人の評価や噂話は、あてにならない

である。

本レンズは極めてコスパが良いが、弱点として、他の
200mm/F4級レンズよりも、大きく(やや太く)、
重い事をあげておく。


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では、次のシステム
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レンズは、MINOLTA MD TELE-ROKKOR 200mm/f4
(中古購入価格 15,000円)(以下、MD200/4)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

発売年不明、1970年代後半頃と思われるMF望遠レンズ。
私は、本レンズを銀塩時代から愛用しているのだが、
MDマウント(MINOLTA Xシリーズ MF一眼レフ用)の
ポピュラーな(定番の)望遠レンズである。

発売時の世情としては、多くのユーザー層は、一眼レフでの
50mm標準レンズのセットを購入後、望遠レンズを買い足す
のであれば、まずは135mm(F2.8級またはF3.5級)を買い、
そして次に買う望遠レンズが、こうした200mm(主にF4級)
である。

だから販売数は多い。本レンズは銀塩時代での購入なので
若干高価ではあったが、後の時代では(望遠)ズームレンズ
も一般的に普及し、ズームに内含される焦点距離である
135mmや200mm単焦点は不人気となり、デジタル時代に入ると、
こうした、MINOLTA MDやCANON FD(等)のMFマウントは、
各社初期デジタル一眼レフでは使用不能(仮に、マウント
アダプターが存在してもフランジバック長の関係で装着困難)
であった為、中古相場は大幅に下落、3000円前後という
いわゆる「二束三文」の価格帯になった。

2010年代でのミラーレス機ではMD等のマイナーマウントも
アダプターで問題無く使用できるようになったのだが・・
それ以前、2000年代での10年間以上の「空白期間」が
存在していた為、現代ではこうしたMF単焦点望遠レンズは
「とてつもなく古い時代の機材(レンズ)」と判断され
比較的程度の良い個体でも、ジャンク品扱いとなり、
概ね1000円程度で販売されている状況である。

だが、「安かろう、悪かろう」という訳では勿論無く、
本記事200mm編、あるいは従前の「135mm編」で紹介して
いるように、これらオールド単焦点望遠の中には、比較的
良く写るレンズも多数存在している。
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本MD200/4も、写りはさほど悪く無い、適正な使用法を
行えば、そこそこちゃんとは写る。

ただ、本レンズもまた、いくつか弱点を持っている。
具体的には逆光耐性の低さや、ボケ質破綻の発生だ。
・・けど、このあたりは、オールドレンズであれば、
どれであっても起こる課題である、そのあたりを注意して
(回避して)撮影をする事が基本となるだろう。

本MD200/4は、他の200mm/F4級に比べ太さは細いのだが、
全長が長い、まあこの時代の「小型化競争」の世情を受けて
の設計と思われるが、カメラバック等への収納性は悪い。
後、最単撮影距離が2.5mと長めな点も弱点としておこう。

現代において、本レンズを無理に探す必要は無いが、
仮に1,000円程度で安価に見かけたら、買っておいても、
損は無い事であろう。

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さて、3本目のシステム
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レンズは、RICOH XR RIKENON 200mm/f4
(中古購入価格 7,000円)(以下、XR200/4)
カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

発売年不明、恐らくは1970年代末頃と思われる
単焦点MF望遠レンズ。

XRマウントは、PENTAX Kマウントとは、ほぼ互換性が
あるが、こうした電子接点の無い時代のKマウント系MF
レンズは、近代のPENTAXデジタル一眼レフでは、使用が
極めて面倒(困難)か、または、開放でしか撮れない。

よって、無理にPENTAX機には直接装着はせず、今回は
マウントアダプター(K用で良い)を介して、望遠母艦の
ミラーレス機DMC-G6に装着して使用する。

本レンズは、本シリーズ第36回「XR RIKENON」編で
紹介済みであり、重複する為、詳細は大幅に割愛する。

簡単に言えば、この時代におけるオーソドックスな
仕様の望遠レンズであり、標準的な描写性能を持つ。
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5群6枚構成と、まあ、まともな設計仕様であるので、
特徴こそ無いものの、描写力的観点では、あまり不満に
感じる事も無いであろう。

しかしながら、あまりに無個性なので、「指名買い」
(つまり、わざわざ本XR200/4を探して購入する)
必要性は無いと思う。「他に代替できる類似仕様の望遠
レンズはいくらでもある」という感じだからだ。

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では、4本目のシステム
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レンズは、Телеар-Н 200mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

出自不明のレンズ、まあ勿論ロシア製だと思われる。
キリル文字は、英字だと「TELEAR-N」となる。
「TELE」の部分は「望遠レンズ」という意味であろう。

ニコン風マウントであるが、ニコン機に直接装着するのは
大変危険であるので、必ずマウントアダプターを介して
ミラーレス機で用いるのが良い。この措置は本レンズに
限らず、全てのロシアンレンズで同様の安全対策を取る
必要がある。

現在、本レンズは絞りが粘っていて故障中であり、
開放でしか撮影が出来ない。なので、あまり記事で紹介
する事も無いのだが、近年では海外レンズマニアックス
第3回「ロシアン編(1)」記事でも紹介しているので、
本レンズの説明も最小限としておこう。
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基本的には写りは悪く無い。200mm/F3.5級は、MF時代の
200mm単焦点望遠においては最大口径であり、小口径版
(200mm/F4~F5.6級)との仕様差別化からか? どれも
比較的描写力が高い事が特徴である。

それについては、この後にも続けて登場するF3.5級
レンズのところでも説明する。
本レンズは現代となっては入手困難である。勿論無理を
してまで探す必要も無いので、解説はこのあたり迄で・・

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では、5本目のシステム
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レンズは、MINOLTA MC TELE-ROKKOR QF 200mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)(以下、MC200/3.5)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)

発売年不明、恐らくは1970年頃のMF準大口径望遠レンズ。
描写力は悪く無い・・ だが、いくつか弱点がある。
まず、重量約770g と、相当に重たい事だ。

まあ現代の新鋭高性能レンズでは、標準レンズでさえも
1kgもの重量を持つものもあり、単焦点中望遠レンズでは
軽く1kgオーバーとなる(汗)
その原因は、それらの新鋭レンズは十数枚のレンズを
用いていて、単純にその重さがかかってくるからである。

それらに比べれば、本MC200/3.5の770gは容認できると
思うかも知れないが、本MC200/3.5は、4群6枚と
かなりシンプルなレンズ構成である、それでいて
この重さは、ちょっと納得が行かないのだが、まあ、
この項目の前後で紹介している200/3.5級レンズは
どれも重いので、似たり寄ったりの状況だ。
すなわちレンズの枚数は少ないが、大きさや厚さで
重くなってしまうのであろう、それが口径比を明るく
する代償な訳だ。
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さて、もう1つの弱点は、最短撮影距離が2.5mと
少々長い事だ。ここで「少々」と書いたのは、いわゆる
「焦点距離の10倍法則」であれば、200mmレンズは2mの
最短撮影距離が標準的なので、それよりちょっとだけ
寄れない程度だし、他の200mmレンズでも最短2.5mの
スペックは良く見かけるのだが・・・

しかし、個人的な経験則から言うと、最短撮影距離が、
2.5m以上となるレンズは、被写体に対峙した場合に、
かなり遠くに感じてしまうのだ。

これについては、個人的な「感覚値」も影響している
のかも知れず、私は2m以下程度であれば、だいたい
被写体距離は感覚でわかる。具体的には最短が1m前後
の中望遠レンズ(85mm~120mm級)であるとか、
最短が1.5m前後の望遠レンズ(135mm~150mm級)の
場合では、だいたいそれを(最短)撮影距離とする
ようにフットワークが効く。でも、2.5mだとダメだ、
「このあたりかな?」と、足を止めると、大抵2m強
程度しかなく、(最短を下回って)ピントが合わず、
やむなくバック(後退)して撮るケースが頻発する。

これについては個人差があるかも知れないし、練習で
解決できる可能性もあるのだが・・ たまにオールド
望遠レンズで2.5m以上の最短のものを持ち出すと、
「あ、ダメだ・・ 距離感がわからないや」と、すぐに
メゲてしまうのだ(汗)

まあ、滅多に、そうした最短2.5m以上のレンズを使わない
というのも課題であろう。そうであれば「特訓」が必要
かも知れない、徹底的に2.5m以上の距離感を身につければ、
こうしたオールド望遠レンズも怖くない(笑)

まあ、この2つの課題をクリア(回避)できるのであれば、
本MC200/3.5は、なかなか悪く無い望遠レンズだと思う。

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さて、6本目のシステム
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レンズは、KONICA HEXANON AR 200mm/f3.5
(中古購入価格 10,000円)(以下、AR200/3.5)
カメラは、PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)

詳細不明、恐らくは、1970年代頃と思われる、KONICA
ARマウント用、MF準大口径望遠レンズ。
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本レンズも前述の他の200mm/F3.5級レンズと同様の
特徴を持つ。

すなわち描写力は、そこそこ良いが、最短が長く、重い
という弱点を持つ事だ。200/3.5級望遠は、どれも似たり
寄ったりという印象がある。

また、本レンズ独自の弱点としてはピントリングが重く、
「修行レンズ」に近い程に、撮影の「エンジョイ度」評価が
低まってしまっている事である。
(注:「修行レンズ」とは、操作性等を起因とした、使い
こなしが難しく、さらには弱点の回避を行う操作が困難で、
また、使っていて非常に疲れるような状況を指す。
つまり「あまり使いたく無い」レンズという事だ)

ピントリングの重さは、オールドレンズ故に、経年劣化の
可能性もあるが、他の所有しているHEXANON ARに関しては、
同時代の物でも、そここまでピントリングは重く無いので、
元々の仕様あるいは製造上の課題があったのかも知れない。 

本レンズは、本シリーズ第34回「KONICA HEXANON AR」
編でも紹介済みであり、内容重複を避ける為に、
最小限の説明としよう。

なお、現代においても、本AR200/3.5の中古は、たまに
見かける事がある。ただしKONICA ARレンズの中古品は、
マイナーマウント故にか?中古店でずっと売れ残っている
場合も良くあるので、それらを中古購入時には、レンズの
程度(状態)を、良く確認してから買うのが良いであろう。

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では、7本目の200mmシステム
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レンズは、SIGMA (AF) MACRO 180mm/f2.8
(中古購入価格 37,000円)(以下、SIGMA180/2.8)
カメラは、OLYMPUS E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

出自等の詳細情報は不明、1990年代発売と思われる
フルサイズ(銀塩)対応AF望遠1/2倍マクロレンズ。
後年2010年代に類似仕様のレンズ「SIGMA APO MACRO
180mm/f2.8 EX DG OS HSM」が存在するが、そちらは
等倍仕様であり、本レンズとは全く異なる。
(=後継レンズでは無い、という意味だ)

EF(EOS)マウントであるが、2000年頃のCANONによる
情報伝達プロトコルの意図的な変更により、以降の
EOS一眼レフ機(銀塩、デジタル)では、使用が出来なく
なってしまった不運のレンズだ。
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「不運」と言うのは、そのプロトコル変更は、CANON側の
「排他的戦略」であったから、SIGMAに責任がある訳では
無い、という事だ。(注:当時、SIGMAはCANON製レンズ
のOEM生産をやっていた可能性もあり、そうであれば
このプロトコル変更は、SIGMAも知っていたのであろう。
なんらかの事情で、それをやらなければならない状態だった
として、デジタルに切り替わる「2000年」というのが
そのタイミングであったのかも知れない。そうであれば
これは「確信犯」だったとも言える)

この件は、ユーザー利便性を考えていない措置である。
それまで使用していたSIGMA製のEFマウントレンズが
新しいEOSを買ったら、全て使えなくなった、という状況
になる。ユーザー側から見ると、とても腹立たしい話だし、
今時だったら消費者センターに訴えられそうな話でもあるが、
まあ、もはや20年以上も昔の話だ・・

で、上記の問題点により、現代なお、本レンズを正規に
使う事は出来ない。つまりEOS機に直接装着できないから
である。よって、機械式絞り羽根内蔵アダプターにより
μ4/3機で使用している次第だが、これはレンズ後群
からの光束を遮るだけの「視野絞り」の仕組みであり、
レンズ内の本来の絞り(開口絞り)と、同等の光学的な
効能を得る事は出来ない。
すなわち「視野絞り」を絞っても、被写界深度やボケ質
の調整、収差の低減、といった効能が殆ど得られない。
得られるのは単に露出値の調整のみである。
まあつまり、殆ど絞り開放で撮っているようなものだ。

なので、この状態ではレンズ画質についての評価は
不可能である、その事についての言及は避けよう。
ただまあ、現代において使用困難なレンズを色々と工夫して
使う事は、研究や様々なスキルアップには役立っている。
その点についは「不幸中の幸い」と言えるであろう。

他に、本レンズの課題としては、極めて重量級の
レンズである事だ、詳しい重量はデータが無いが、
実測してみると、約1570gとなった。
まあともかく、外に持ち出すのが嫌になる程の重さで
あり、手持ち撮影の限界点に近いレベルであろう。
(個人的には、レンズの手持ち限界重量は、1.5kg迄
と判断している)

それと、この時代(1990年代)迄のSIGMA製レンズ
の共通の弱点として「コントラストが低い」事を
挙げておく。これはコーティング技術の問題かも
知れないが、どれも、フレアっぽい写りをするのだ。

さらに、この課題は「経年劣化」で助長される事があり、
所有しているこの時代(1980~1990年代)のSIGMA製
レンズの3本が、同様な状況となっていて、酷いもの
では僅かな逆光ですぐにフレアっぽくなり、実用に
適さない。一部のレンズは後玉一面に白いカビのような
ものが発生していて、それを布等で拭うと描写力が
復活するが、レンズ内部でこうした、カビ、クモリ、
バルサム切れ(注:レンズ接着剤の劣化)等が発生した
場合には、分解しないと補修が効かず、それをやったと
しても再度の発生の可能性もあるし、また、外からでは、
その状況がわかりにくい事もあり、ほぼお手上げとなる。

まあ、全ての同時代のSIGMA製レンズが、そうなるとは
限らないが、危険性はある、という事は確かであろう。
同時代のSIGMA製レンズ全般において、コントラスト性能の
課題を除いては、描写力が悪い訳では無いので、課題を
回避しながら使うのが良い。

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さて、8本目のシステム
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レンズは、CANON (New) FD 200mm/f2.8(IF 後期型)
(中古購入価格 30,000円)(以下、NFD200/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第42回記事以来、数年ぶりの
紹介のレンズだ。
1980年代頃(New F-1の時代)の発売と思われる。

本レンズは、FDの時代から微妙なマイナーチェンジが
あって、それは最短撮影距離で見分ける事が出来、
旧FD200/2.8およびNew FD200/2,8初期型は、最短
撮影距離が1.8mであるが、New FD200/2.8(本レンズ)
では、最短が1.5mに短縮されている。
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長所であるが、まずはその最短撮影距離だ。
やはり「寄れるレンズ」は、文句無く好ましい。
ボケ質破綻が若干出るが、多くの被写体状況では
問題にはならず、むしろボケ質は良い方であろう。
トータルでの描写力は、決して悪く無いレンズだ。

また、後期型の場合、IF(ピント操作で、全長が
変化しない、インナー・フォーカス/インターナル・
フォーカス)仕様となっていて、重量級レンズの
場合は、これは重量バランスやMF操作性の観点では
好ましい仕様だ。

弱点は、やや大きく、やや重く、そして銀塩時代での
購入時点では、やや高価であった事で、まあすなわち
「プチ三重苦レンズ」と呼べるかも知れない。
この為、出動機会も少なく、数年ぶりの紹介となって
しまった次第である。結局、いくら性能が良いレンズで
あっても、「三重苦」は、実用上では、大きな問題点と
なる訳だ。

本レンズは、現代においても中古市場で良く流通して
いる。後期型の場合は「New FD200/2.8 IF New」と
いった表記となっていると思う。概ね2万円前後の
中古相場ではあるが、1万円台で程度が良ければ、
コスパは高いレンズになりうると思う。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、MINOLTA HI-SPEED AF APO 200mm/f2.8
(中古購入価格 44,000円(以下、APO200/2.8)
カメラは、SONY α700 (APS-C機)

ハイコスパ名玉編で、第35位にランクインした
1990年代の高性能AF単焦点望遠レンズ。

本レンズの紹介記事では毎回書いている事だが、
「HI-SPEED」とは、大口径(=シャッター速度が速い)
を間接的に意味する英語表現であり、AFが速いという
意味では全く無い。(むしろ、AFは遅い・汗)

銀塩時代には中級マニア層ですら、本レンズに書かれている
「HI-SPEED AF」を読んで、「このレンズはAFが速い」と
勘違いしていた。
「AF」は、単にMINOLTAレンズの型番であり、
消費者層に、そう思わせる為の確信犯的なロゴ・デザイン
であった疑いもある。

まあ、その話はどうでも良いと思える程に、本APO200/2.8
は、大変描写力が高いレンズである。
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2006年に、KONICA MINOLTAが、カメラ事業をSONYに委譲
した際、大半の(KONICA)MINOLTA製α(Aマウント)レンズは
SONY銘で生産が引き継がれる事となったが、本APO200/2.8
は、そのタイミングで生産終了となってしまった。

恐らく「他に、70-200/2.8のレンズがあるから、それと
焦点距離と開放F値が同じである本レンズは不要」との、
営業的な判断があったのだろう。

だが、焦点距離と開放F値が同じであれば片方は不要と
言うのも、ちょっと早計な考え方だ。勿論、違うレンズで
あれば描写力は全く異なるし、さらには、大きさや重量等
によるハンドリング性能も異なる。
まあ、200mm/F2.8には、ズームレンズでは得られない
長所も、それなりに存在する訳だ。

本レンズを高く評価する人は少ないと思うが、昔から一部の
上級マニア層には、本レンズの実力値が認められている。
惜しむらくは、前述のようにSONY時代に入って生産完了と
なってしまった為、本レンズの中古流通は少なく、それに
よるレア感からか、稀に出てくる中古品は若干の高額相場と
なってしまっている事だ。他の記事にも書いたが、本レンズ
の性能から判断できる適正相場は5万円あたりまでであろう。
それを超えてまでは、あまり入手の必然性が無いレンズだ。

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さて、他にもまだ200mm近辺の焦点距離の単焦点レンズで
描写力に優れるレンズが何本か存在するのだが、それらは
本シリーズの別記事で紹介済みだ(例:NIKON ED180/2.8
や、アポランター180/4等)適宜別記事を参照されたし。

では、今回の「200mmクラッシックス編」は、このあたり迄で。
次回記事に続く。



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