Quantcast
Channel: 【匠のデジタル工房・玄人専科】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

ミラーレス・クラッシックス(21)OLYMPUS PEN-F(後編)

$
0
0
本シリーズは、所有しているミラーレス機本体の詳細を
世代別に紹介して行く記事だ。
今回はミラーレス第四世代・成熟期(注:世代の定義は
本シリーズ第一回記事参照)の「OLYMPUS PEN-F」
(2016年)について紹介する。

既に前編記事を掲載済みだが、今回の後編では、主に
本機の長所・短所等について説明して行こう。
_c0032138_14524864.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm/f1.8
を引き続き使用する。(以下、ED75/1.8)

以降、本システムで撮影した写真を交えながら記事を
進めるが、このレンズは前編記事から使用しているもの
である為、本記事では適宜、別の特性のレンズに交換し、
本機との相性(マッチング)についても検証していく。
_c0032138_14522984.jpg
今回使用しているED75/1.8のような、μ4/3用純正
AFレンズと、本機PEN-Fの相性は悪く無い。
まあそれは、近年のOLYMPUSでは、自社純正レンズを
使用時のみに有効な機能が生じる場合がある等、
(例:深度合成モード等、ただし本レンズは未対応)
少々「排他的仕様」が出てきているので、まあ、
そういう事(相性)となるのであろう。

ただ、たとえ相性が良いとは言っても、実用的か否かは
別の話だ。大柄でレンズ質量が重く、被写界深度が浅い
本ED75/1.8は、AFの速度・精度ともに、動体被写体を
捉えられる程の迅速性は殆ど無い。
これは本機PEN-Fが、像面位相差AF機能を搭載して
いない事も若干ながら関連している。その機能を持つ
OM-D E-M1等では、僅かにED75/1.8のAF動作は高速だ。

ただ、OLYMPUSの像面位相差AFや「DUAL FAST AF」は
動作原理の詳細を、ちゃんと説明した資料が殆ど無く、
カメラ内部で、どのような場合に、どのような動作を
しているのか?が不明瞭である。よって、使用する
レンズの種類やカメラ設定、被写体状況等によっては、
像面位相差AFの恩恵を、ちゃんと得られない可能性も
あり、なんとも曖昧な状態である。
つまり、像面位相差AF機能が、あっても無くても
あまり根本的な性能差には繋がらないのかも知れない。

普通、このような「あてにならない性能や機能」は、
あまり、それに全面的に頼るような事をせず、例えば
MFを使って回避する等の措置をすれば良いのだが・・
生憎、現代のμ4/3機用純正レンズは、一部の高級
レンズを除き、ピントリングが無限回転式の仕様で、
MFの操作性に、かなり劣ってしまう。
_c0032138_14522942.jpg
本ED75/1.8も同様、非常に高い描写力と、フルサイズ
換算150mm、2倍テレコン併用時に300mmの望遠画角
になる事から、中遠距離で飛ぶ野鳥等を撮りたいケース

も多々あるのだが、どの(μ4/3)機体を持ち出し、
どのような撮り方(AF/MF)をしたとしても、高速
動体には、ちゃんとピントを合わせる事が出来ず、
大いに不満である。これであれば銀塩用MF135mmや
銀塩用MF70-200mm級望遠ズーム等を使った方が、
高速小型動体の撮影においては、MFで遥かにピント
の歩留まり(成功率)が向上する。

元々、μ4/3機は望遠画角となる事から、遠距離の
撮影には向くのだが、遠距離での動体撮影となると
多くのシステム環境(コントラストAFのみとか、
良くわからないAF仕様の機体で、MF性能に優れない
純正μ4/3レンズ等)においては、それは向かない。

むしろμ4/3+MF望遠ズームの方がずっと効率的な
遠距離動体撮影が可能なのだが、銀塩時代の古い
時代のズームでは、その描写力は現代レンズと比べて
お話にもならない低い性能であるから、結局の所
μ4/3システムでは、遠距離動体を高性能かつ
高描写力で捉えられる有益なシステムを組む事が
出来ない(厳密には「そう簡単では無い」)状態だ。

ちなみに下写真は、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)と
銀塩用MF望遠ズームCANON New FD70-210mm/F4
(1979年)との組み合わせ。古いし、合計2万円程度で
組める格安システムだが、現状私が考える所の、最も
操作系的に高効率な遠距離動体撮影用システムである。
(オールドレンズながら写りもさほど酷いものでは無い)
_c0032138_14525152.jpg
まあ、そのあたりの遠距離動体撮影は、本機ではなく
新鋭ハイエンド機のOM-D E-M1XやE-M1 MarkⅢと、
純正の高性能新鋭望遠レンズを買えば改善されている
のかも知れないが、わざわざ、それらを数十万円から
100万円もかけて揃える気は、個人的には毛頭無い。
(追記:DC-G9とG100-400のシステムは記事執筆後
に入手している。後日紹介予定だが、それであっても
効率的な遠距離動体撮影が出来る程には、改善されては
いなかった・・)

比較として、近代の高性能の動体撮影専用のAPS-C型
デジタル一眼レフ、例えばCANON EOS 7D MarkⅡ
(2014年)や、NIKON D500(2016年)を用いて、
それにSIGMAやTAMRONの高性能100-400mmレンズ
(いずれも2017年発売、手ブレ補正と超音波モーター
内蔵)を装着するのであれば・・(下写真が実例)
_c0032138_14525787.jpg
こうしたシステムを中古で入手するならば、およそ
11万円~14万円程度で、μ4/3超高性能システムと
同等以上のAF/MF/連写性能により、より安価に遠距離
高速動体撮影に適したシステムが構築可能だ。
(ただし、勿論、大型化・重量化するという弱点があり、
多数の機材を併用したり、重量級機材が使い難い撮影
条件においては、ハンドリング性能の低下で不利である)

趣味撮影のケースのみならず、業務撮影用途ならば、
なおさらであり、同等品質の写真を納品して同じ報酬を
得るならば、使用する機材システムの原価は安価であれば
ある程、利益率が向上してビジネス的には適正だ。

今時の職業写真家層では、使用機材を、所属する企業や
組織から供給/貸与してもらえる等の「非常に恵まれた
環境」の人以外は、あまり最新鋭機は使わないであろう、
上級機や旧世代機等を、できるだけ長く使い続けようと
している訳であり、高価すぎる新鋭機を次々に買って
いたら、設備投資費用が膨らみすぎ、それでは赤字と
なって、商売として成り立たなくなるからだ。

多くのビギナー層が考えるような「プロは、もの凄く
高価な機材を使っている」というのは幻想であろう。
(=上記のように、それでは商売にならないからだ)

現代において、高額な新鋭機材を使っているのは、
そのほとんどが、アマチュアの初級中級層であり、
その理由は「プロっぽい高級機材を使って、周囲に
自慢したい(または尊敬されたい)」という自己
満足であるケースが殆ど、さらに別の理由としては、
「自分に腕前が無いので、高性能な機材を使わないと、
 上手く写真が撮れずに、周囲から馬鹿にされる」
というネガティブな脅迫心理からのケースであろう。
(例:超音波モーターが無いとピンボケする、
 手ブレ補正や超高感度が無いとブレてしまう、
 高速連写が無いと、ちょうどいい一瞬を撮れない等)

さて、話の途中であるが、ここで使用レンズを交換する。
_c0032138_14525738.jpg
レンズは、LAOWA 17mm/f1.8 MFT (LAO0049)
(新品購入価格 19,000円)(以下、LAOWA17/1.8)

2019年発売の中国製μ4/3機専用広角(準標準相当)
MF単焦点小型軽量レンズ。

本レンズはμ4/3専用で、非常に小型軽量な事が特徴で
重量は172gしか無い。
_c0032138_14525873.jpg
これは、近年、μ4/3のカメラユニット(撮像センサー
+画像処理エンジン+I/O(入出力)制御機能)が、
写真撮影用カメラ以外の分野に進出している世情が
あり、その最も代表的なものは、空撮用ドローンの
カメラとしてのμ4/3ユニットの使用であろう。

で、空を飛ばすものであるから重量級レンズは不利だ。
できればAFも使いたくない、地上から、または自力で
ピントを都度、制御するのは大変だし、電力も喰う。
そこで本レンズである。小型軽量、MFだが実焦点距離が
短いので、初めからF5.6~F8あたりまで絞っておけば
パンフォーカスとなり、ピント合わせは不用となる。
_c0032138_14525848.jpg
写真の世界だけしか見ていないと、「μ4/3機は
撮像センサーの面積が、フルサイズ機の1/4しか無い
から、画質的に不利だ」などと、わかったような話を
言い出すユーザーは多いと思うが・・


あらゆる技術には、長所と短所が合わせて存在している。
もし、弱点の無い完璧な技術があれば、それはあっと言う
間に普及して、世の中の全てがそれとなる(デファクト・
スタンダード化する) もしそれが、カメラの世界で
起こったら、その「完璧なカメラ」しか売れず、皆がその
同じカメラを使う訳だが・・ 現実にはそうなっておらず
個々のユーザー(人間であるとは限らない)の用途や
目的に応じて、異なる種類のカメラやレンズが使われる
訳である。(まあ、当たり前の話だ。だから「μ4/3機
vs フルサイズ機」といったような、十把ひとからげ的な
比較や評価をする事は適切では無い)

μ4/3機(システム)は、望遠画角が得易い事、そして
小型軽量、低消費電力である事がメリットである。
そしてμ4/3機を広角画角で使う際(今回のLAOWA17/1.8
等)には、小型軽量である事に加えて、センサーサイズ
の小ささとレンズ実焦点距離の短さから、被写界深度を
深く取る事が容易で、同時にピント精度も高まる。

この特徴は、μ4/3以前の4/3(フォーサーズ)時代から
同様であり、私は2000年代前半から、イベント等での
会場スナップや参加者の記念撮影等において、4/3機
と広角(ズーム)の組み合わせを十数年間使っていた。
つまり、業務撮影であれば失敗は許されない訳であり
4/3機と広角であれば、AFでもピントを外すような事態は
まず有り得ないから、安全確実に写真が撮れる訳だ。

μ4/3時代で、その用法をしなかったのは、2013年迄の
μ4/3機は、全て、AF速度・精度の面での性能が貧弱な
コントラストAFしか搭載されていなかったからであり、
これであれば位相差AFのデジタル一眼(APS-C機)と
広角端10mm台の標準または広角ズームを使った方が
初期μ4/3機よりピント歩留まり(成功率)が高くて
有利であった訳だ。

ただ、やはりデジタル一眼レフのシステムは、μ4/3機
システムよりも大きく重くなってしまうので、どうしても
ハンドリング性能は劣る。
もう少しだけμ4/3機のAF性能が向上すれば、こうした
用途にも使えるようになるだろうとは思っている。

勿論、新鋭μ4/3機のAF性能は順次改善されているが、
前述のように高額な最新鋭機をイベントのスナップ程度の
撮影用途に用いるのは、業務撮影としての費用対効果が
見合わない。
ガンガンに使って消耗させる用途であれば、システム
合計価格が5万円以下程度で無いとならない訳だ。
(=つまり、高性能/高額機材を所有していたとしても、
そういう撮影環境には持ち出さない状態となる)
_c0032138_14530268.jpg
で、本レンズLAOWA17/1.8は、サイズ感、デザイン等
において、本機PEN-Fとのバランスは悪く無い。

元々、PEN-Fにおいては大型のレンズとの組み合わせは
アンバランスである。それを確認する為にも、前編と
本記事冒頭では、やや大型なED75/1.8を試験的に装着
していた訳だ。
実際にはED75/1.8あたりがバランス的に限界点であり、
それ以上の大型のμ4/3機用(または他マウント用の)
レンズは、PEN-Fとの組み合わせにおいて適正では無い。

まあつまり、μ4/3機として実用的望遠(動体)撮影を
意図しても、それは「E-M1」系機体であれば可能だが、
本機PEN-Fでは、まるっきり的外れなシステムとなる訳だ。

---
さて、ここでまたレンズを交換してみよう。
_c0032138_14530732.jpg
レンズは、7 Artisans (七工匠)60mm/f2.8 Macro
(新品購入価格 24,000円)(以下、七工匠60/2.8)

2019年に発売された、中国製のAPS-C機以下の
ミラーレス機対応MF中望遠等倍マクロレンズ。
μ4/3機用マウント版で購入している。

こちらは、精密なピント合わせが要求されるMFレンズ
である。こうしたタイプのレンズがPEN-Fに向くか否か?
という検証目的だ。
_c0032138_14530706.jpg
まず目につく課題は、PEN-Fでは、非純正(MF)レンズ
を装着時に、ピーキングが常時出ない事である。


ピーキングを表示する為には、どこかのFnボタンに、
ピーキング機能をアサイン(割り振って)、かつ、
電源をONした度に、あるいはモードダイヤルを
変更した都度、毎回そのFnボタンを押す事で、やっと
ピーキングが出せる。(注:強度、色の変更可能では
あるが、その変更メニューまではショートカットが
飛べず、仮に、設定がレンズに合っていない場合、
毎回、メニューの奥底から掘り出して設定し直さ
なくてはならない)
_c0032138_14530739.jpg
本機PEN-Fでは、アサイナブルなFn系ボタンの数は
さほど潤沢では無い。それらに対して、少なくとも
デジタルテレコン、HDRモード、ブラケット(BKT)ON、
絞り込みプレビュー、画面拡大表示、といった機能群
のアサインは必須であろうから、ピーキングONを
入れると、もうアサイナブルボタンの数が足りない。


おまけに、これらの設定は、EVFやモニター上には
表示されないので、カメラを持ち替えた際に、
この機種ではどう設定していたか?を忘れてしまう。

全オリンパス機で、同じボタン設定にしたい所だが、
機種毎にFnボタン数は違うし、その配置(位置)も
異なるし、元々、機種毎に撮影用途も全然違うから、
各機種毎に異なるボタン設定をせざるを得ない訳だ。

いったい何故、他社の殆ど全てのミラーレス機のように
非純正レンズでも常時ピーキングが出ないのであろうか?
(注:純正レンズであれば、MFアシストでピントリング
に触れるだけで、ピーキングをすぐに出せる)

これは、オリンパス等の純正レンズを使った場合のみに、
カメラの高性能が発揮できるようになる、という意地悪な
「排他的仕様」であるとしか思えない。
つまり、実質的には、PEN-Fで精密なピント合わせを
要求される非純正レンズは「実用的には使用できない」
という話となる。

以下、念の為、「ではピーキングを使わなければ良い」
と思うかも知れないが、まず本機PEN-FのEVF解像度は
236万ドットで、近年の高性能ミラーレス機の中では
最低限の性能であり、MFのピント確認がやや困難だ。

さらに「画面拡大を併用できるか?」だが、オリンパス
機の全般で、ここの拡大操作系が非常に劣っている。
ボタンを探して押さないと解除が出来ないという困った
仕様であり、これは同じμ4/3機でもPANASONICの機体
と比較すると、笑ってしまう位に操作系の優劣の差がある。

また、オリンパス機では、シャッター半押しでも
ピーキングが消えてしまう。これは「もうピントも
合ったし、構図も決めたし、後はシャッターを切る
だけだから、ピーキング表示は邪魔でしょう?」
という設計思想だとは思うが・・

個人的には、オリンパスには高速連写機が多い為、
MFレンズを用いて、「飛び物」(野鳥、昆虫等)に
「高速連写をしながらMFでピントを合わせる」という
MF技法を良く使う、その際、半押し・全押し中でも
ピーキングが表示されていないと困ってしまうのだ。
(注:一部の他社機では、これが可能)

それから、「ピーキング背景の輝度調整」の機能が
存在し、これをONすると、若干だがピーキングを
見やすくする事ができる。ただ、この機能はEVF等
のライブビューで確認できる写真の輝度と、実際に
撮れる写真の明るさが異なるという大問題が生じる。

「これをONすると、ピント精度が高まる」という
ビギナー層のレビュー等は、かなり多いのだが、
それは「作画」という概念を全く理解していないと
思われ、単にピンボケが怖い、というだけであろう。

なお、こうした劣悪な、ピーキングおよび拡大操作系
の仕様に関しては、本機PEN-Fだけの課題では無く、
2013年以降の全てのOLYMPUS製μ4/3機で同様の
「重欠点」を持つ。
_c0032138_14531354.jpg
さらに言うと、PEN-Fでの各ボタンの動作レスポンスは
非常に遅い。もしかすると、誤操作防止の為にわざと
簡単には動作しないようにしているかも知れない。

(あるいはカメラ機器を動作させる為のOSを、組み込み
型専用品から汎用品として、コストダウンや開発業務の
効率化を図っているのかも知れない→2010年代前半の
SONYに前例あり。ただし、仮にそういう事情だったと
しても、それはメーカー側の一方的な都合であり、
その事によるユーザー側のメリットは何も無い。
仮に「動作が遅くても、このカメラの想定ユーザー層
(=実用的に多数の写真を撮らない、シニア層、投機層、
コレクター層等)に対しては問題は無い」とメーカーの
開発側や営業側が判断したのならば、その時点で、
結果的には「わざと動作を遅くした」事と、設計基準上
で見れば等価だ)

・・・で、ボタン類のレスポンスの遅さであるが、
軽くポンと押しただけでは動作せず、しっかりと、
およそ0.5秒くらいは押し続けないと、その機能を
呼び出す事ができないのだ。


(注:同年2016年発売のOM-D E-M1 MarkⅡでは
「ボタン長押し設定」というツールメニューがあり
各種ボタン機能の長押しの反応時間を0.5秒~3秒で
調整できる。本機PEN-Fには、その設定機能は無いし、
そもそも問題なのは、「長押し」ではなく、通常の
ボタン押下でも反応が鈍い事が課題なのだ)

前編で少し書いたが「若々しさが無い仕様」という
のは、こういう事も理由の1つである。
間違って操作する事を防ぐ為に、機器の動作を重く
(のろく、遅く)する等は、まるで「老人向けの
介護設備」のような設計思想であり、迅速で効率的な
撮影には、全く向かない事になる。
(注:仮に「高齢者向けだから」と言っても、だから
動作を遅くするべき理由も良くわからない)

それから本機PEN-Fは、非純正レンズでも、カメラ
内蔵手ブレ補正は効くが、その設定操作系は劣悪だ。
まず「スーパーコンパネ」を容易に表示できる設定に
した後、それを呼び出し、コンパネ上の手ブレ補正の
機能ボタンを十字キーで選択して呼び出し、さらに
手ブレ補正設定表示中に、速やかにinfoボタンを押し、
手動焦点距離入力メニューを出して、5ケタあるその
焦点距離入力を、各ケタ毎に0・・0・・6・・0・・0
(=60.0mm)と、十字キーで変更しないとならない。
_c0032138_14531376.jpg
かなり面倒だし、レンズ交換の度にこれを行わないと
ならないのだが、入力を忘れてしまうリスクもある。

何故ならば、純正レンズ使用時には、ファインダー
(EVF)や背面モニター上に、使っているレンズの焦点
距離が表示される(ように設定できる)のだが、生憎
焦点距離手動設定時には、これが表示されないので、
レンズ(非純正)を交換した際、以前の設定のままで
あっても気づかない事が多いのだ。

なお、本機PEN-Fでは、従前のオリンパス機には無かった
「レンズ情報登録」機能が付き、これを使えば、自身で
設定した(複数の)レンズ情報から、非純正レンズで
あっても、EVFやモニター上にレンズ焦点距離情報を
表示させる事が出来るようになった。

この新機能を使えば、レンズ交換時の焦点距離入力
忘れのリスクが減り、一見有益な改善なのだが・・
(注:同年発売のOM-D E-M1 MarkⅡでは、焦点距離
設定を行うだけで、「登録」をせずとも、EVF上等
に、設定したレンズ焦点距離情報が表示される)
_c0032138_14531392.jpg
生憎、まずこのレンズ情報登録が恐ろしく煩雑であり、
1本のレンズを設定するのにソフトウェアキーボード
から多数の文字列を入力する必要がある。1本分を入力
するのに数分かかってしまい、私のように非常に多数
の交換レンズをPEN-Fで使うユーザーの場合、これは
面倒でやっていられない。

それと、この操作系には若干の矛盾がある。
登録された情報をLOAD(読み出す)するタイミングは、
毎回のカメラ電源ON時である模様だ。
そこで、電源がONされている間に、何か、ダミーの
登録情報(例:OM50/1.4と入力してある)を手動で
読み出した後に、これを(七工匠)60/2.8と変更する
ならば、とりあえずカメラが電源ONの時間中では、
EVF等の表示は60mmとなり、EXIF情報にもこれが
記録されているのだが・・
いったん電源をOFFとすると、もうこの変更内容は
忘れてしまい、再度の電源ON時に、登録情報を
再(Re)LOADし、またOM50/1.4に逆戻りだ。
(注:再LOAD問題は、別の要素でも関係→後述)

だから、七工匠60/2.8に修正した時点で60/2.8の
情報を、正規に新規登録してあげないとならない。
だが、これから撮影するのに、いちいち1分や2分も
かかる情報登録など、やっていられないのだ。

さらに言えば、もう七工匠60/2.8は、二度と本機
PEN-Fで使わないかも知れない。ピーキングと拡大
操作系の課題があるので、精密ピント合わせ不能で
あれば、本機で本レンズを使用するのは効率的では
無い。だから試用が終わり、その弱点が確認できれば、
もう本レンズ等の登録情報は無駄になってしまう。
_c0032138_14531772.jpg
さて、詳細説明が長くなったが、まだ言いたい事の
半分にも達していない(汗)

課題はユーザー側にもある。

本機のユーザー層は、8割が団塊世代のシニア層、
2割が上級カメラマニア層である、と分析しているが、
この主力ターゲットユーザーと、本機の高機能(多機能)
がマッチしていない。
取扱説明書は、わずかに184page(注:Ver.3)しか
無く、細かい(詳しい)説明が殆ど載っていない。
まあ、仮に細かく書いたとしても、シニア層はそれを
読まない、という想定なのだろう。

例えば、本機PEN-Fには「フォーカスブラケット」機能
が搭載されているが、それの概念、実際の使い方や、
メニューからの呼び出し方等を知っている本機の
ユーザーの比率は、どれくらいあるのであろうか?
恐らく、1割にも満たず、数%であろう。

あるいは、本機PEN-Fには、ISO AUTO時の低速限界
シャッター速度を手動で変更できる機能が、「やっと」
搭載されている。これは、NIKONやCANONの一眼レフ
には従前から搭載されていて、有益な機能である為、
個人的には待ち望んでいた機能であったが、本機以前
のOLYMPUS機には、この機能が入っていなかった。
_c0032138_14532182.jpg
で、それらの効能や使い方を理解していたとしても、
今度は、それらの設定はメニュー階層の奥深くに
沈んでいて、そう簡単に呼び出せないという重欠点
を目の当たりにするであろう。

本機PEN-Fでは、そのようにメニューの奥深くにある
機能をワンタッチで呼び出せる「ショートカット」の
設定機能は何も存在していない。よってメニュー等の
ボタンを何度も何度も押して、それを呼び出す必要が
ある為、有益な事がわかっていても、通常の撮影状況で
あれば、面倒なので、その操作は割愛してしまう。
また、しばらく使わなければ、その機能がメニューの
どこに入っていたか?すらも忘れてしまうかも知れない。

いずれにしても、全ての操作系仕様が、煩雑であり、
かったるく、遅く、全般に鈍重な印象だ。
_c0032138_20520407.jpg
銀塩機風アナログ操作子を搭載したNIKON Df(上写真)
にも、そういう類の操作系の鈍重さがあり、デジタル
一眼レフ・クラッシックス第17回記事では、そのDfの
「操作性・操作系」評価を、史上最低の1点(5点満点)
と評価した。
全ての操作の概念が、例えば三脚を立てたカメラ上でしか
成り立たなかったり、あるいは、いちいちカメラを持つ
構えを解いて、どこかにカメラを置いて、両手で操作
する必要がある等、古臭く、極めて非効率的だからだ。

近年の新製品レビューでは、あまり新鋭機材の弱点を
書く事が許されていない模様だ。市場での流通側と
しては、広告宣伝の目的でのレビューなので、そこで
ネガティブな事を書いても無意味だからである。

NIKON Dfの、ある評価記事では、「じっくりと撮る
のに向くカメラ」という記載があった。
これは言いえて妙だ、つまり弱点をそのまま書く事を
しない「婉曲表現」であり、裏を返せば「効率的な
撮影には、全く向かないカメラだ」と、きっと、その
専門評価者は言いたかった訳なのだろう。
_c0032138_14532835.jpg
本機PEN-FにもNIKON Dfほどでは無いが、その操作系
上に非効率な点が目立ち、「じっくり撮るのに向く」
カメラに成り下がってしまっている点が残念である。

まあもっとも、ターゲットユーザーがシニア層で
あるならば、そういう仕様は、わざとそうしている
「確信犯」なのかも知れない訳だ。
・・だとすれば、実践派のマニア層が志向するべき
機体では無いかも知れない。

余談だが、銀塩一眼レフCONTAX RTS(1975年、銀塩
一眼レフ第5回記事参照)や、RTSⅡ(1982年、未所有)
は、シャッターボタンのストロークが極めて短く
触れるだけでシャッターが切れる「フェザータッチ」
を採用していた。富裕層の高齢者のユーザーが当時
は多かったCONTAX機だが、この仕様は、いわゆる
「RTSの暴発」(意図せずに写真を撮ってしまう)を
招きながらも好評であった。これらの機体のオーナー
は、これを周囲に「触れるだけでシャッターが切れる」
と言いふらし、その仕様を使いこなせる事を自慢と
していた訳だ。(=「じゃじゃ馬」を乗りこなす)
後年には、こうした仕様のカメラは殆ど無いので・・
(注:2018年のPANASONIC DC-G9が、若干だが
「フェザータッチ」気味である。これは悪く無い)
やはり、高齢者等にも向けた「安全思想」が広まった
のかも知れないが、カメラのシャッターを切る事は、
普通は生命に危険を及ぼすような物では無いので、
必要以上に安全対策を施してしまうのは、どうなの
だろうか?

これはシャッター仕様以外においても、本機PEN-Fや、
近年のNIKON機全般の仕様で見られる様々な「安全対策」
であるのだが・・ それが邪魔になるという場合も
極めて多く、鬱陶しい。
ターゲット・ユーザー層の心理状態や真のニーズを、
メーカー側ももっと認識するべきではなかろうか?

---
では、ごく簡単に本機PEN-Fの長所短所をまとめて
おこう。


<長所>
*AUTO ISOの低速限界設定が可能。
 (ただし、ショートカットで呼び出せない)
*画質のコントローラビリティが高い。
 (ダイヤル操作優先であり、ちょっと使いにくさも
  あるが、単に「レバー」と呼ばれる操作子が
  意外に使い易い。下写真) 
_c0032138_20520870.jpg
*周辺減光の制御(調整)機構がある事が大変良い、
 しかもプラスマイナス両方向へ可能だ(下写真)
_c0032138_14533302.jpg
*3ダイヤル機であり、ISO感度直接変更も可能。
*優美なデザイン。
*高い連写性能、高速連写は40~50コマは低速化せず、
 バースト枚数も、中画素で90コマ以上もある。
 また、低速連写であれば、いくらでも連写が効く。
*フォトストーリー機能(下写真が一例)がある。
_c0032138_14533318.jpg
*高速1/8000秒機械式シャッター搭載。
 ただし、ベース感度は、AUTO ISO時にISO200
 とやや高目であり、日中に大口径レンズを使う
 領域には僅かに足りない。

*バッテリーは良く持つ。CIPA規格準拠で
 330枚だが、個人的にはこの5~6倍が目標値だ。
 実際に1700枚の撮影まで問題なく可能であった。
 (それ以上、まだまだ行けたと思う)
 また、E-M1,E-M5Ⅱ等と共通の「BLN-1」型
 リチウムイオン電池である為、汎用性が高い。

<短所>

*煩雑な操作性。
 これはFnボタンの不足、スーパーコンパネの
 機能不足(および、そのエディットが不可)
 ショートカットメニュー不可等、多岐に及ぶ。
*非純正レンズ使用時の劣悪な操作系。
 特に、ピーキング機能を何処のボタンに割り振るか
 と拡大操作系、焦点距離手動入力等が煩雑すぎる。

*露出モードダイヤル上にARTモードが無い。
 この結果、アートフィルターブラケットが、露出
 モードダイヤルから簡便に設定が出来ない。
 これを実現するには、アートフィルターブラケット
 としたカメラ設定を、C(カスタム)1~4の
 いずれかに登録しなければならないのだが、
 Cモード設定は、電源ON時に毎回Re-LOADされて
 しまう為、例えば、従前にデジタルテレコンをON
 した状態が記憶されず、「電源ON時にいつも同じ
 設定のままとなる」という弱点(矛盾)がある。

(注:2020年発売のOM-D E-M1Ⅲ(未所有)で、
 やっとRe-LOAD問題に改善が図れらている模様だ。
 その機体では、「カスタム読み込み後のカメラ設定
 変更を保持するか否か」の設定があると聞く。
 ただ、これも良し悪しある機能であり、加えて
 操作系が煩雑すぎるようにも思えてしまう)
_c0032138_14533314.jpg
*(像面)位相差AF無し。
 まあでも、ここは重欠点では無いとは思う。
*ボタン、ダイヤル操作の鈍さ。
 前述のように、すぐに反応しない。

*意匠においてFの花文字無し。
 「前面パネルが薄くて加工しにくい」との
 メーカーの弁だが、それは言い訳であろう、
 何故ならばPENの文字はパネル前面に彫られて
 いるから、Fの花文字が出来ない訳では無いと
 思う(加工外注業者次第ではなかろうか?)

 で、私はあまり気にしないが、マニア層は、たいてい
 この点を「大問題だ」と言う。皆、PEN Fをオマージュ
 して買う訳だから、そう言われる事は製品企画時から
 十分に想像できていただろうに、わざわざこうした
「突っ込まれる」仕様にする意味が理解不能だ。
 それに、製品の元箱上やポップ広告には花文字が
 書かれているので、箱を開けた瞬間に、ユーザーは、
 ますます、がっかりする感覚が強いと思われる。

*手動手ブレ補正入力が煩雑
 レンズ情報登録をしなければ焦点距離情報の表示
 やEXIFへの記録も無い、またレンズ情報登録を
 しても前述のように使いにくさや毎回のRe-LOAD
 の課題がある。
 それと、MFズームでは焦点距離が入力できず、
 手ブレ補正機能が使えない(他機、他社機も同様)
*電子シャッターの機能不足
 単に静音モードとして使えるだけで、最高シャッター
 速度は、メカシャッターと同一の1/8000秒だ。
 できれば1/32000秒等の高速電子シャッターとして、
 大口径レンズでのシャッター速度オーバーに備えて
 もらいたいところ(他社機では良くある仕様)
*ファインダー倍率が低い。
 これは1.23倍(実質0.61倍)である。
 なお、この仕様は説明書には書かれていない、
 不利なスペックだからか?

*電源スイッチが左側にあり、必ずカメラを両手で
 構えないと、電源をON/OFFする事が出来ない。
(これに関連し、μ4/3機では、カメラが起動後で
 ないとMFのピント操作を受け付けない課題もある、
 つまり、なかなか撮影体制に入れない訳だ)

*超高感度なし(ISO25600止まり)
*説明書が簡素すぎる(184pageしか無い)
*価格が高価である事。
*フラッシュ非内蔵。
*元箱がやたら豪華(無意味なまでに豪華)
*全体的にシニア向けであり、若々しさが無い
 仕様、機能、操作系、性能である事。
 結果的に迅速かつ効率的な撮影には一切向かない。
_c0032138_14533361.jpg
最後に本機OLYMPUS PEN-F の総合評価を行ってみよう。
評価項目は10項目である(項目の定義は第一回記事参照)

【基本・付加性能】★★★★
【描写力・表現力】★★★★☆
【操作性・操作系】★★
【アダプター適性】★★
【マニアック度 】★★★★☆
【エンジョイ度 】★★★☆
【購入時コスパ 】★☆  (中古購入価格:86,000円)
【完成度(当時)】★★★☆
【仕様老朽化寿命】★★★★
【歴史的価値  】★★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.35点

事前に予想していたのは総合3点程度であった。
概ね好評価だが、E-M5 MarkⅡ(評価3.30点)と、
ほぼ同等、という感じである。

ただしこの評価点は、「本機の多彩な高機能を
使いこなす事が出来る」という条件付きである。
なんとなく「銀塩PEN Fのようで格好良い」といった
理由で本機を購入してしまうビギナー/シニア層では、
殆どの多機能を使いこなせず、無駄に高額な
買い物になってしまう恐れがある。


本機の評価に限らないが、機材の評価や価値は
あくまでユーザー個々の用途やスキルによりけり
という事である。
_c0032138_14534198.jpg
で、評価が低かった項目は、「操作性・操作系」、
「アダプター適正」と「コスパ」である。
アダプター適正が低いのは、MF性能の全般的な低さ
(ピーキングが常時出ない、EVFの性能が低い)から
であり、もうこれはどうしようもない。

操作系は全般的に煩雑かつ鈍重であり、効率的な
撮影には向かない点がある。ましてや銀塩用レンズ
母艦としては全く向いていない。意匠(デザイン)的
には、銀塩用レンズを装着したいのに、大きな矛盾だ。

「コスパ」も、例えば本機と同等の性能を持つμ4/3機
Panasonic DMC-GX7に比べて3倍以上も高価であるから、
これはもう、割高と見なされてもやむを得ないであろう。

長所としての「描写力・表現力」「マニアック度」
「エンジョイ度」「仕様老朽化寿命」を、いかに判断
するかが、本機の購入を検討する際のポイントとなる。

----
さて、本記事はこのあたりまでで、
続く第五世代(2018年~)のミラーレス機は、適価で
買える機体が1台も無く、現状「全てコスパが悪い」と
見なしている為、次回記事の掲載は未定だ。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>