さて、新シリーズの開始である。
本シリーズ「μ4/3(マイクロフォーサーズ)用
レンズ・マニアックス」では、μ4/3機用として
市販されている、AF、MF、トイレンズ等を、順次焦点
距離毎(広角、標準、望遠等)に区分して紹介する。
記事執筆時点(コロナ禍で外出自粛していた頃だ)
で所有しているμ4/3専用レンズは24本であった。
これらを1記事あたり6本、全4記事で紹介しよう。
ズームか単焦点かは問わない予定であったが、現状で
所有しているμ4/3用レンズは全て単焦点であった。
なお、紹介順は、ほぼレンズの実焦点距離の順番だ。
(追記:本シリーズ記事執筆後に購入したμ4/3
専用レンズがあるが、それはまた別途紹介する)
殆どが過去記事で紹介済みのレンズにつき、個々のレンズ
の特徴等は最小限として、また違う視点での説明となる。
レンズを装着するカメラは、勿論μ4/3機を使用する。
1記事の範囲では同一カメラを使用せず、全て異なる母艦
とする。これは、レンズの特性とカメラの特性をマッチ
させるように、母艦の選択を若干だが考慮している。
(注:「弱点相殺型システム」となるケースが多いが、
「オフサイド禁止」のルールは若干緩和している→
つまり、高価な機体に安価なレンズを付ける場合もある)
実写は、外出自粛期間中につき、研究用に撮り貯めて
ある写真を使用。撮影時は、カメラ側に内蔵されている
機能(例:デジタルズームやエフェクト等)は自由に
使える事とするが、事後のPCによる画像編集は、縮小、
構図調整の為の僅かなトリミング、輝度調整程度に留め
過度のレタッチ(編集)は禁止するルールとする。
(レンズの紹介記事を書く上では、あまりに画像編集で
いじくり廻したら、元のレンズの特性が、わからなく
なってしまうからだ)
----
今回記事は「広角編」という主旨で、だいたいだが
レンズの実焦点距離が、9mm~17mmの範囲としよう。
では始めよう、まず最初のμ4/3レンズ。
![_c0032138_19374491.jpg]()
レンズは、OLYMPUS Fish Eye Body Cap Lens
(BCL-0980)(9mm/f8.0 Fisheye)
(新品購入価格 9,000円)(以下、BCL-0980)
カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機)
2014年発売の魚眼型ボディキャップ(アクセサリー)
レンズ。対角線画角は約140°なので、180°には
満たず、あくまで「魚眼風」レンズである。
![_c0032138_19374425.jpg]()
ボディキャップレンズ(BCL)とは、読んで字のごとし、
主にミラーレス機用(まれに一眼レフ用もある)の
カメラマウント部を保護する「ボデイキャップ」に
レンズを組み込み、そのまま撮影する事ができるように
したものである。トイレンズ相当か、または、やや
本格的な描写力を持つものもある。
ここで、各社のボディキャップレンズの種類を述べて
いくと冗長になる。別記事「特殊レンズ超マニアックス
第30回ボディキャップレンズ編」を参照されたし。
本BCL-0980は、ボディキャップレンズとしては唯一
魚眼レンズ風の描写特性を持つユニークなアクセサリー
である。オリンパスでは、これを交換レンズとしては
見なしておらず、あくまで「アクセサリー」の分類で
あるが、レンズの描写力は、さほど悪いものでは無い。
トイ魚眼レンズを除く、やや本格的な魚眼レンズと
しては、最も安価な製品であるから、ビギナー層等が
魚眼レンズに興味を持った際、最初から高価な本格的
魚眼レンズを購入する事は避けて、本BCL-0980を
お試し版的に購入して感触を試してみるのも良いと思う。
・・と言うのも、魚眼レンズは本格的にそれを使おう
とした場合、初級中級層では手に負えないほどの高い
スキル(撮影技能)を要求されるレンズであるからだ。
よって、殆どの初級中級層では、無理をして高価な
本格魚眼レンズを買ったとしても「上手く撮れない」
「何をどう撮ったら良いか、わからない」とかなって、
まず間違いなく、飽きて(使いこなせずに)使わなく
なってしまう。そうなると、せっかくの高額投資が
無駄になるので、初級層等が、あまり最初から本格的
魚眼レンズを買う事には、個人的には賛同しにくい。
なお、なぜ高価なのか?は、魚眼レンズは一般レンズ
に比べてさほど多数、製造販売されるものでは無いので
どうしても1本あたりの原価や価格が割高となるのだ。
いつも言うように「レンズの価格と性能は比例しない」
という純然たる事実がある。だからまあ、レンズの購入
を検討する際には、必ず「コストパフォーマンス」の
概念が必要となる、と、毎回のように述べている。
さて、魚眼レンズの難しさは、画面内の直線が、歪む
場合と歪まない場合がある事だ。すなわち画面中央から
周辺に向かう放射線上にある直線は歪んでは写らない。
魚眼構図全般において、どの直線部を歪ませず、どれを
曲げて写す(または曲がってしまう)かを判断するには
少なくとも中級者以上の構図感覚が必要とされる。
そして、構図を決めたとしても、その通りに画面内の
直線性を維持するには、カメラの構えを3次元的な
あらゆる軸(例:高性能カメラの説明にある、5軸
手ブレ補正の原理を参照すれば理解が容易だ)に対して
正しく構える必要がある。これは非常に難易度が高く
上級者、又はそれを超えるレベルのスキルが必要だ。
(注:三脚を立てて、水準器で調整しようとしても
無駄である。3次元的な各軸には、水準器等では
測れない方向軸がいくつもあるからだ。本ブログでは
三脚に頼らず、常に手持ち撮影する事を推奨している)
なので初級者層等では、構図感覚的にも撮影技能的にも
魚眼レンズを使いこなす事は、まずできない。
だが「難しい/出来ないから、やらない」では、いつまで
たっても進歩が無いので、ビギナー層に対して、何らか
の魚眼(風)レンズを購入し、「魚眼構図制御」
(詳細は、匠の写真用語辞典第14回記事参照)の練習
をする事は、悪い措置では無いと思っていて、むしろ
推奨できる。
![_c0032138_19372319.jpg]()
そんな際、μ4/3機ユーザーであれば、本BCL-0980
が、安価な魚眼(風)レンズとして練習教材には最適
だと思う。なお、他のマウント機のユーザー層は
本記事の読者層では無いとは思うが、その場合には、
近年、2018年頃から、中国製の安価(1万円台)な
ミラーレス機用(本格的)魚眼レンズが色々発売されて
いるので、それらを練習教材とするのが良いと思う。
なお、それらの安価な魚眼レンズで練習して経験を
積んだ後で、また別途本格的な魚眼レンズを買う
必要は、あまり無いかも知れない。魚眼レンズの用途
や使用頻度から考えても、あまり多数の魚眼レンズが
必要となる状況も考え難い。
さらなる詳細は「特殊レンズ超マニアックス第28回
魚眼レンズ編」を参照されたし。
---
では、次のμ4/3レンズ。
![_c0032138_19374965.jpg]()
レンズは、Lomography Experimental Lens Kit
Wide-Angle Lens 12mm/f8
(新品購入価格 3,000円相当)(以下、LOMO12/8)
カメラは、OLYMPUS E-PL2 (μ4/3機)
2013年頃に発売されたμ4/3専用トイレンズ3本セット
「LOMOGRAPHY MICRO 4/3 EXPERIMENTAL」の
内の1本。
広角タイプ(フルサイズ換算24mm相当)である。
![_c0032138_19374962.jpg]()
本レンズはトイレンズであるが、強い歪曲収差と、
逆光耐性の低さ以外は、あまり「Lo-Fi」描写となる
事は無く、例えば強い周辺減光が発生する訳では無い。
「Lo-Fi」レンズとしては、もっと酷い写りを期待して
しまうので、本レンズは大人しい特性だと感じる。
Lomography社は、銀塩「LOMO」を主力製品とする
トイカメラ/トイレンズの販売商社としては大手では
あるが、近年での銀塩ビジネスの縮退により、レンズ
(開発)事業をも、手がけるようになっている。
自社企画(開発)として、このExperimental Lens Kit
(他、数機種のトイレンズ)を発売した後、やはり
こうした低価格・低付加価値レンズでは、ビジネスの
継続が難しいという判断からか?2010年代中頃からは、
高価な高付加価値型レンズ(Petzval Art Lens等)を
新規に開発販売している状況である。
![_c0032138_19374971.jpg]()
本Experimental Lens Kitは、発売当初は9000円位
の通販価格であったが、後年2010年代末頃では在庫
処分価格として、およそ半額で販売されている/いた。
が、他に残った現代のLomography製レンズは、殆どが
高価な特殊レンズばかり、という状態だ。
本レンズは、完全に在庫がはけてしまった後で入手する
事は、とても困難だと思われる為、そうなった場合は、
「希少品につき非推奨」という事としておく。
----
では、3本目のシステム。
![_c0032138_19375945.jpg]()
レンズは、PANASONIC LUMIX G 14mm/f2.5 ASPH.
(型番:H-H014)
(中古購入価格 13,000円)(以下、G14/2.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G5 (μ4/3機)
2010年にPANASONIC DMC-GF2とのキット(DMC-GF2C)
で発売された広角単焦点AFレンズ、勿論単品発売もある。
![_c0032138_19375985.jpg]()
前年2009年のPANSONIC DMC-GF1のキットレンズは、
G20/1.7であったのが、DMC-GF2でキットレンズを
G14/2.5に刷新した理由は、その時点では、よく
理解できなかった。
まあ、この当時2009年~2012年くらいの時代では、
μ4/3機あるいは他社ミラーレス機において、ターゲット
となるユーザー層のプロファイルがまだ定まっておらず
新製品がでる度に、ガラリとその製品企画コンセプトが
変わっていた事も何度もあったから、(まあ、市場調査
の意味もあっただろう)あまり、仕様変更は驚くには
値しないかもしれない。
まあでも、G20/1.7に対してG14/2.5は、コストダウン
が実現でき、初期μ4/3機の貧弱なコントラストAFでも
焦点距離の短さと開放F値の暗さでピント精度が高まり、
また、当時から女性等で流行していた「セルフィー」
(自撮り)にも適した画角となっている等のいくつかの
メリットがあったのであろう、と、今では分析している。
ちなみに、この企画変更により、旧機種DMC-GF1C
(G20/1.7がキットレンズ)の新品在庫処分価格は
2011年頃に非常に安価(3万円台後半程)となった為、
それを入手したビギナー層が、付属の大口径単焦点の
その特性を初めて見て、「これは神レンズだ!」と
「神格化」してしまった、という不思議な歴史がある。
まあ、ビギナー層では大口径単焦点レンズ等は普通は
買わないから、その描写表現力に驚いてしまうのも、
「さもありなん」という話かも知れないのだが・・
困った点としては、そのビギナー評価を元に投機層
が動いてしまい、2011~2013年(後継機G20/1.7Ⅱ
が発売された年)までの期間で、G20/1.7の中古相場が
不条理に高騰してしまい、「入手したくても、コスパ
が悪すぎて買えなかった」という問題が生じた。
だが、後継機G20/1.7Ⅱの登場後は、投機的要素も
無くなってしまった為、ほどなくG20/1.7の中古相場
も下落して適正化した。
私は、こうして「市場に踊らされる事」は好まない為
これらの状況は不快であった。G20/1.7ごときの
性能(描写表現力5点満点中4点の個人評価)で、
「神レンズだ!」と大騒ぎするビギナー層の評価も
鬱陶しかったし、場合により、その好評価の原因は
投機層がレンズを「商品」として、より高価に転売
する為に、さらに後押しして「神格化」を拡散した経緯
(ネット上での情報操作)の可能性も捨てきれない。
まあ、つまらない話だ。カメラやレンズはあくまで
実用品であるから、個人等が、それの売買で儲けよう
というスタンスには賛同できないし、さらに言えば、
自分自身で正しい機材(レンズ)の価値を判断できず、
他人の言う事に振り回されてしまうビギナー層の
スタンスにも賛同できない。撮影機材の価値を判断
するのは、周囲の意見ではなく、あくまで自分自身だ、
消費者・ユーザー毎に、機材の使用目的も、それを
扱うスキルも違うのだから、当たり前の話であろう。
これは大原則であり、ここを曲げる訳には行かない。
![_c0032138_19375944.jpg]()
さて、本G14/2.5の話がちっとも出ないが・・
まあ、平凡なレンズである。小型軽量の準パンケーキ型
である事がメリットだが、単焦点の28mm相当広角は、
銀塩時代では「通向け(上級者向け)」と呼ばれていた
画角だ。(例:銀塩高級コンパクトGR1シリーズ)
これをビギナー層が使いこなせるのか?という点だが
多くのμ4/3機には、デジタル・ズームやデジタル・
テレコン機能が搭載されている。よって、単焦点広角
だから使い難い(=何をどう撮ったら良いかわからない)
という課題は、銀塩時代よりも若干緩和されているで
あろう。
特筆すべき推奨できるレンズでは無いが、比較的安価
なので、機会があれば所有しても悪く無いと思う。
----
では、4本目のμ4/3システムはトイ魚眼だ。
![_c0032138_19380512.jpg]()
レンズは、Lomography Experimental Lens Kit Fisheye
(新品購入価格 3,000円相当)
カメラは、PANASONIC DMC-GF1 (μ4/3機)
前記、2013年発売のμ4/3専用トイレンズ3本セットの
内の1本で、魚眼タイプ(円周型魚眼160度)である。
実焦点距離は不明(非公開)であるが、だいたいこの
あたりの記事内の順序で紹介しておく。
なお、魚眼レンズにおける実焦点距離の差は、あまり
重要では無く、注目すべきは、そのタイプ(円周魚眼
なのか、対角線魚眼なのか)と、その画角(180度とか)
の2つのスペックである。
![_c0032138_19380544.jpg]()
で、こちらは完全な「トイ魚眼」であるから、高い
描写力(Hi-Fi特性)は得られない。
これをどう使うか?というのが最も難しい課題であり、
有効な「用途開発」が大変困難なレンズだと思う。
前述のとおりLomography Experimental Lens Kitは
生産完了となってしまっている模様なので、現在での
入手性は低く、非推奨である。まあつまり無理をして
まで探し、高額相場で入手するような類の製品では無い。
また「どうしても欲しい」などと後になって言い出す
人達にも課題があり、2013年~2020年頃までの長期に
渡って販売されていて、いつでも安価に買えた、この
システムを欲しかったならば販売期間中に買わなかった
事が失策であろう。なお、その期間で中古も1~2度
見かけた事はあった。今後も場合によっては中古品の
流通があるかもしれないが、発売時価格(約9000円)
を超える投機的プレミアム相場になってしまっている
場合には、そこまでの実用価値は無いキットなので、
見送る事が賢明だと思う。
----
さて、5本目のシステム。
![_c0032138_19380913.jpg]()
レンズは、OLYMPUS Body Cap Lens BCL-1580
(15mm/f8)
(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)
今回の記事では、似たようなシリーズのレンズで、
かつトイレンズ系のものが多くなっているのだが・・
μ4/3のシステムは、その画角がフルサイズ換算で
2倍となる事を利点として、小型軽量の「望遠システム」
としての利用が、その特性上からは正しい選択だ。
だから、あまりμ4/3システムで広角レンズを主体
として使用したいとは思わなくなる為、μ4/3機用
の(単焦点&高性能)広角レンズは、その販売数の
少なさから量産効果が出ず、どうしても高額になって
しまう。そうなるとコスパが悪く感じる為、個人的
には、μ4/3システムの広角ラインナップを充実
させたいという気にはあまりなれず、特殊レンズや
トイレンズ等ばかりになってしまっている次第だ。
![_c0032138_19381298.jpg]()
本レンズは、2012年に発売されていて、すぐに
新品で単品購入している。前述のようにμ4/3で
広角システムを主力にしたくなかったから、あえて
安価なものを購入した次第だ。
ちょっとした課題としては、翌年2013年発売の
OLYMPUS OM-D E-M1本体に、ボディキャップ代わりに、
本BCL-1580が付属していたキットが販売された事だ。
後年、E-M1Ⅱ発売(2016年)以降では、旧機種の
E-M1の中古相場は急落し、コスパが良くなった為
私もそれを入手したのだが、購入検討時に本レンズ
が付属している中古品が多く、ボディキャップ
代わりとは言え、レンズが重複してしまうのは
無駄な気がして、E-M1の中古の機体選択の幅が
少し狭まった事があった。
メーカー側としては、E-M1ボディ単品発売時での
他機や他社機との差別化の為に(注:ほぼ同時期に
SONYよりα7/Rが発売されている)顧客サービス
としての、本レンズの付属であったのだろうが、
発売から時間が経っていたレンズなので、既に
所有していたユーザーも多かったかも知れない。
「所有している物と重複する」という、その些細な理由
でE-M1の購買意欲の減退にも繋がる。さらに言えば、
なんだかメーカー側で沢山作りすぎたレンズの在庫品を、
おまけにつけているような印象もあり、好ましく無い。
まあ、どうせやるならば、E-M1と本レンズを同時発売
にして、それでセット品を作るべきであっただろう。
・・でもまあ、いずれにしても、これは些細な話だ。
![_c0032138_19381593.jpg]()
本レンズBCL-1580だが、正式なレンズでは無い
(オリンパスでは、ボディキャップとしての
アクセサリー扱いだ)とは言え、レンズ構成は
3群3枚のトリプレットで、F8の円形絞りがある事も
あって、テッサー並みに、そこそこ良く写る。
(注:経験的には、3群4枚のテッサーと、3群3枚の
トリプレットは、絞り込むと同等の写りとなる。
ただし、絞りを開けた場合、トリプレットは場合に
より「シャボン玉ボケ」が発生する可能性がある。
→それはそれで、良し悪しあるだろうが・・)
最短撮影距離は30cm、一応MFのピントレバーもある。
価格も安価であるので、まあまあコスパは良いが、
意外にも、あまり中古流通は多く無い。
恐らく、所有している人が不要だと思ったとしても、
わざわざ、本レンズを中古店に売りに行く事も無く
(売却しても二束三文であるからだ)そのままで
死蔵してしまっているのかも知れない。
まあ、もし中古があれば、2000円前後という
感じになるだろうか。
ボディキャップ代用として、複数のμ4/3機に
付けるまでの必要性は無いとは思うが、1つ位は
持っていても悪く無い。
----
では、次は今回ラストのμ4/3システム
![_c0032138_19381816.jpg]()
レンズは、LAOWA 17mm/f1.8 MFT (LAO0049)
(新品購入価格 19,000円)(以下、LAOWA17/1.8)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G6 (μ4/3機)
2019年発売の中国製μ4/3機専用広角(準広角相当)
単焦点MFレンズ。
本レンズはμ4/3専用で、他マウントでは発売されて
いない。(型番MFTはMicro Four Thirdsの意味)
恐らくだが、ドローン等への搭載も意識している
のであろう。(参考:近年の高性能ドローンでは、
μ4/3のカメラユニットを搭載し、市販μ4/3レンズ
が装着できるケースもある模様だ)
その場合、本レンズの小型軽量が活かせるし、
実焦点距離の短い広角レンズであるから、空撮時には、
ほぼパンフォーカス撮影で事足りるであろう。
わざわざAFを動かして、ドローンへの搭載機構の
構造を複雑化したり、バッテリーの消耗を早くする
無駄を省ける。つまり本レンズであれば、ピントが
固定のままで空撮が出来る、という事になる訳だ。
空撮では無く、実際の一般写真撮影の場合でも、
パンフォーカス化のメリットはある。
![_c0032138_19571678.jpg]()
以下、少し長くなるが、技術的な話を中心に
進めていこう、これは本レンズ自体の長所短所等の
話よりも、はるかに重要な事だ。
で、本LAOWA17/1.8の被写界深度の例であるが、
このレンズを、軽くF5.6程度まで絞って使う
だけで、撮影距離を2m前後と設定しておけば、
もう、1m~∞(無限遠)までは全てピントが合う。
(注:被写界深度を計算する為に必要となる
パラメータである「許容錯乱円(径)」の
定義は、デジタルにおいては極めて曖昧であり
誰も(専門家でも、メーカーでも、研究者でも)
ちゃんと数値の定義が出来ていない。
→例えば、オリンパスでは、フィルムでの値の、
0.033mmの半分、0.016mmを提唱しているの
だが、これで計算しても、実際の撮影時での感覚
との違和感が大きい。そこで個人的には、デジタル
の場合でも、フィルムと同様の0.033mm程度を
許容錯乱円(径)として用いるのが適正と見なし
本ブログでは、このパラメータ値を用いた場合
での被写界深度の値を計算している)
まあつまり、ピント合わせの必要が無いので、
レンズをどこに向けても、AFで一々合焦(ピント
合わせ)をしなくても、ゼロタイムで瞬時に
撮影が可能であり、速写性が極めて高い。
(勿論、動画撮影時でも連続AFの必要性が無い)
現代のビギナー層では、「AFが速いシステム」
(カメラ+レンズ)を買うと、それを自慢して
「爆速AF!」などと言うのだが、どんな速い
AFシステムでも、なにかしらの時間はかかる。
特に、AFが近距離と遠距離を大きく移動する
ような撮影条件では、いくら「爆速AF」でも、
AFは遅くてかったるく、速写性は劣ってしまう。
(参考:近年の高級μ4/3機では、AFが動く距離
範囲を3つのゾーンに区分し、その制限の中では
合焦速度を速めようとする工夫もある。
また、SONY α99系一眼レフでも同様に、AF合焦
範囲の上限/下限距離を制限する手動設定ができる。
ただし、合焦距離を制限するのは、趣味撮影には
向かないので、あくまで遠距離スポーツ等の業務
撮影分野の場合で、一定の被写体距離条件の下で
AF動作の迷い(速度低下)を防ぐ為の機能だ)
それが、こうした「MFパンフォーカスシステム」
ならば、どんな場合でも「ゼロ秒」で合焦が
完了する訳だ。ピント合わせは「不要」なので
AFでの「速度」という概念すら持つ意味が無い。
この「パンフォーカス撮影技法」は、今から50年
以上前の銀塩時代であっても、当時の中上級層で
実践されていた。
だが、当時の撮影機材環境では、やや苦しい
ところがある。例えば、当時であれば一般的に
入手できる広角レンズは、28mmが最広角だ。
このレンズを用い、銀塩35mm判フィルム使用時、
F11まで絞ってピント距離を3mに設定すれば、
およそ1.5m~∞の範囲でパンフォーカスとなる。
又は、F8に絞ってピント距離5mであれば、
約2m~∞の範囲が被写界深度である。
これらの用法は、先輩層等からの口伝で伝え
られていたり、あるいは当時のMF28mmレンズ
を入手して現物を見れば分かるが、F8やF11の
位置の絞り値の指標が異なる色で書かれていたり、
加えて、被写界深度指標(目盛)もあるから、
その原理を良く理解し、見て設定すれば、それで
パンフォーカス撮影が実現できた次第であった。
それに、当時のレンズは、まだ性能的に未成熟
な点もあり、絞りを開けていくと、どんどんと
収差の発生が酷くなり、解像感等が無くなって
しまったから、そうした諸収差の一部を減らし、
(MTF特性を向上させて)高画質で撮る為にも、
絞りをF5.6~F11程度に絞って使う必要性が
あった次第である。
(注:現代においてもシニア層等では、この時代
の感覚のまま、「どんなレンズでもF5.6以上に
絞って使う」という人達が多い。現代レンズでは
収差補正が行き届いており、画質向上の目的で
そこまで絞り込む必要は、あまり無い)
だが、当時の低感度の、具体的にはASA(ISO)
50~100程度のフィルムでは、こういう設定を
するとシャッター速度の低下が著しい。
だから、手持ち撮影ではブレてしまうので、
皆、三脚を使って撮影をしていた訳だ。
まあ、ストリート・スナップ等では、このような
ゼロタイム合焦技法は有効なのであるが、手持ち
撮影が前提では、ブレを防ぐのは容易では無い。
よって、あまり絞り込まずに、ゾーン(範囲)
フォーカス(例:35mmレンズで、絞りF4で、
ピント位置が5mならば、3.5m~10mの範囲で
ピントが合っている)として使うのだが、
残念ながら、当時の(今もか?)アマチュア層の
写真知識・技術では、こうした専門的な技法は
使えない。だから、職業写真家層などでしか
ストリート・スナップを上手く撮る事は困難で
あった訳だ。
そして、その後数十年が経ち、1990年代頃とも
なると、世間的にも肖像権等のコンプライアンス
の概念が普及していくので、街中で見知らぬ人を
撮影する、などのスタイルは、そもそも出来なく
なってしまう。(=「盗撮」として犯罪となる)
1990年代には、銀塩RICOH GR1シリーズ等の
ストリート・スナップ専用とも言えるカメラが
発売され、それ以前の時代での職業写真家層に
よる、ストリート・スナップ撮影のスタイルに
憧れた上級層等が、GR1等を入手したのだが、
残念ながら、もう、その時代では、見知らぬ人
にカメラを向けるなどは許されず・・
「何撮っているんだ、コラ!」等と、言われて、
ヤバい人などの場合、身の危険を感じてしまう
ような状況(汗)になっていた訳だ。
![_c0032138_19571685.jpg]()
さて、本レンズLAOWA17/1.8の話に戻る。
本レンズであれば、μ4/3機用の為に、実焦点
距離が短く、F5.6程度まで軽く絞るだけで、
換算34mmの準広角画角で、ほぼパンフォーカス
撮影が実現できる。
「ブレ無いのか?」というビギナー層の心配
事項だが、日中での明所(EV=15、つまり晴天)
での撮影であれば、その場合のシャッター速度は、
およそ、ISO100で1/800秒~ISO200で1/1600秒
程度となる。(注:曇天ではこの半分位)
これだけ速いシャッター速度が得られているので
あれば、手持ち撮影でも手ブレなど起こりようが
無いし、又は、スナップ撮影で良く課題となる
「カメラを振りながら構えて撮ったら、その
動きでブレてしまった」という状況も、シャッター
速度が十分に速いので、あまり起こり得ない。
(注:暗所に向いている状態で、シャッターボタン
を「半押し」してしまうと、そこでAEが固定される
カメラ設定にしていた場合、低速シャッターとなり、
そこからカメラを振ると、低速シャッターのままで
ブレが起こると同時に、被写体が明所に存在すると、
酷いオーバー露出となってしまう。→典型的失敗例)
また、このパンフォーカス設定では、ドローンや
車両(ドライブレコーダーとして)に、あるいは
スポーツ(アクションカメラとして)用途等で、
本レンズを搭載した場合、空中や機動中での振動は
手ブレと同等となるだろうが、シャッター速度が
1/1000秒前後も出ているのであれば、あまりその
ブレは(静止画撮影であれば)影響が少ない。
(注:動画撮影の場合は、多少問題になるだろう。
その場合は、動画手ブレ補正システムが必須だ)
ともかく、一般写真(静止画)撮影の場合では、
本LAOWA17/1.8は、パンフォーカス設定として
使うのが、撮影範囲の幅を広げる、速写性が
得られる、などの効能から、なかなか有効だ。
この設定でも、昼間の静止画撮影であれば、
手ブレ補正機能も不要なので、今回の母艦は
内蔵手ブレ補正を持たないDMC-G6を使用した。
![_c0032138_19382438.jpg]()
現代のビギナー層において、「手ブレ補正機能が
入っていなければ嫌だ(上手く撮る自身が無い)」
と泣き言を言っている状況は、ここまで説明して
きたような、写真撮影上の基本原理、すなわち
被写界深度、露出値(絞り値やシャッター速度)、
手ブレ限界シャッター速度、等の概念、知識や
経験則が皆無である事が、最大の問題点である。
たいして難しい話では無い、写真の教科書等を
読めば、どこにでも書いてある事だし、ちゃんと
読めば1日程度で、それは理解できるであろう。
わからない部分があれば、実際に自分で実践して
確かめて見たらよい。(注:現代のユーザー層は、
その実施検証をしないのが課題だ。ネットで検索
して調べただけで、わかった気になってしまう
から、いつまでも技能が身につかない。また、
そうしたネット情報の信憑性も、要注意だ)
わからない事は放置せず、必ず自身でわかるまで
試して確かめてみる、ここが大原則である。
----
では、「μ4/3用レンズ・マニアックス広角編」は、
このあたり迄で。次回記事は、「標準編」となる
予定だ。
本シリーズ「μ4/3(マイクロフォーサーズ)用
レンズ・マニアックス」では、μ4/3機用として
市販されている、AF、MF、トイレンズ等を、順次焦点
距離毎(広角、標準、望遠等)に区分して紹介する。
記事執筆時点(コロナ禍で外出自粛していた頃だ)
で所有しているμ4/3専用レンズは24本であった。
これらを1記事あたり6本、全4記事で紹介しよう。
ズームか単焦点かは問わない予定であったが、現状で
所有しているμ4/3用レンズは全て単焦点であった。
なお、紹介順は、ほぼレンズの実焦点距離の順番だ。
(追記:本シリーズ記事執筆後に購入したμ4/3
専用レンズがあるが、それはまた別途紹介する)
殆どが過去記事で紹介済みのレンズにつき、個々のレンズ
の特徴等は最小限として、また違う視点での説明となる。
レンズを装着するカメラは、勿論μ4/3機を使用する。
1記事の範囲では同一カメラを使用せず、全て異なる母艦
とする。これは、レンズの特性とカメラの特性をマッチ
させるように、母艦の選択を若干だが考慮している。
(注:「弱点相殺型システム」となるケースが多いが、
「オフサイド禁止」のルールは若干緩和している→
つまり、高価な機体に安価なレンズを付ける場合もある)
実写は、外出自粛期間中につき、研究用に撮り貯めて
ある写真を使用。撮影時は、カメラ側に内蔵されている
機能(例:デジタルズームやエフェクト等)は自由に
使える事とするが、事後のPCによる画像編集は、縮小、
構図調整の為の僅かなトリミング、輝度調整程度に留め
過度のレタッチ(編集)は禁止するルールとする。
(レンズの紹介記事を書く上では、あまりに画像編集で
いじくり廻したら、元のレンズの特性が、わからなく
なってしまうからだ)
----
今回記事は「広角編」という主旨で、だいたいだが
レンズの実焦点距離が、9mm~17mmの範囲としよう。
では始めよう、まず最初のμ4/3レンズ。

(BCL-0980)(9mm/f8.0 Fisheye)
(新品購入価格 9,000円)(以下、BCL-0980)
カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機)
2014年発売の魚眼型ボディキャップ(アクセサリー)
レンズ。対角線画角は約140°なので、180°には
満たず、あくまで「魚眼風」レンズである。

主にミラーレス機用(まれに一眼レフ用もある)の
カメラマウント部を保護する「ボデイキャップ」に
レンズを組み込み、そのまま撮影する事ができるように
したものである。トイレンズ相当か、または、やや
本格的な描写力を持つものもある。
ここで、各社のボディキャップレンズの種類を述べて
いくと冗長になる。別記事「特殊レンズ超マニアックス
第30回ボディキャップレンズ編」を参照されたし。
本BCL-0980は、ボディキャップレンズとしては唯一
魚眼レンズ風の描写特性を持つユニークなアクセサリー
である。オリンパスでは、これを交換レンズとしては
見なしておらず、あくまで「アクセサリー」の分類で
あるが、レンズの描写力は、さほど悪いものでは無い。
トイ魚眼レンズを除く、やや本格的な魚眼レンズと
しては、最も安価な製品であるから、ビギナー層等が
魚眼レンズに興味を持った際、最初から高価な本格的
魚眼レンズを購入する事は避けて、本BCL-0980を
お試し版的に購入して感触を試してみるのも良いと思う。
・・と言うのも、魚眼レンズは本格的にそれを使おう
とした場合、初級中級層では手に負えないほどの高い
スキル(撮影技能)を要求されるレンズであるからだ。
よって、殆どの初級中級層では、無理をして高価な
本格魚眼レンズを買ったとしても「上手く撮れない」
「何をどう撮ったら良いか、わからない」とかなって、
まず間違いなく、飽きて(使いこなせずに)使わなく
なってしまう。そうなると、せっかくの高額投資が
無駄になるので、初級層等が、あまり最初から本格的
魚眼レンズを買う事には、個人的には賛同しにくい。
なお、なぜ高価なのか?は、魚眼レンズは一般レンズ
に比べてさほど多数、製造販売されるものでは無いので
どうしても1本あたりの原価や価格が割高となるのだ。
いつも言うように「レンズの価格と性能は比例しない」
という純然たる事実がある。だからまあ、レンズの購入
を検討する際には、必ず「コストパフォーマンス」の
概念が必要となる、と、毎回のように述べている。
さて、魚眼レンズの難しさは、画面内の直線が、歪む
場合と歪まない場合がある事だ。すなわち画面中央から
周辺に向かう放射線上にある直線は歪んでは写らない。
魚眼構図全般において、どの直線部を歪ませず、どれを
曲げて写す(または曲がってしまう)かを判断するには
少なくとも中級者以上の構図感覚が必要とされる。
そして、構図を決めたとしても、その通りに画面内の
直線性を維持するには、カメラの構えを3次元的な
あらゆる軸(例:高性能カメラの説明にある、5軸
手ブレ補正の原理を参照すれば理解が容易だ)に対して
正しく構える必要がある。これは非常に難易度が高く
上級者、又はそれを超えるレベルのスキルが必要だ。
(注:三脚を立てて、水準器で調整しようとしても
無駄である。3次元的な各軸には、水準器等では
測れない方向軸がいくつもあるからだ。本ブログでは
三脚に頼らず、常に手持ち撮影する事を推奨している)
なので初級者層等では、構図感覚的にも撮影技能的にも
魚眼レンズを使いこなす事は、まずできない。
だが「難しい/出来ないから、やらない」では、いつまで
たっても進歩が無いので、ビギナー層に対して、何らか
の魚眼(風)レンズを購入し、「魚眼構図制御」
(詳細は、匠の写真用語辞典第14回記事参照)の練習
をする事は、悪い措置では無いと思っていて、むしろ
推奨できる。

が、安価な魚眼(風)レンズとして練習教材には最適
だと思う。なお、他のマウント機のユーザー層は
本記事の読者層では無いとは思うが、その場合には、
近年、2018年頃から、中国製の安価(1万円台)な
ミラーレス機用(本格的)魚眼レンズが色々発売されて
いるので、それらを練習教材とするのが良いと思う。
なお、それらの安価な魚眼レンズで練習して経験を
積んだ後で、また別途本格的な魚眼レンズを買う
必要は、あまり無いかも知れない。魚眼レンズの用途
や使用頻度から考えても、あまり多数の魚眼レンズが
必要となる状況も考え難い。
さらなる詳細は「特殊レンズ超マニアックス第28回
魚眼レンズ編」を参照されたし。
---
では、次のμ4/3レンズ。

Wide-Angle Lens 12mm/f8
(新品購入価格 3,000円相当)(以下、LOMO12/8)
カメラは、OLYMPUS E-PL2 (μ4/3機)
2013年頃に発売されたμ4/3専用トイレンズ3本セット
「LOMOGRAPHY MICRO 4/3 EXPERIMENTAL」の
内の1本。
広角タイプ(フルサイズ換算24mm相当)である。

逆光耐性の低さ以外は、あまり「Lo-Fi」描写となる
事は無く、例えば強い周辺減光が発生する訳では無い。
「Lo-Fi」レンズとしては、もっと酷い写りを期待して
しまうので、本レンズは大人しい特性だと感じる。
Lomography社は、銀塩「LOMO」を主力製品とする
トイカメラ/トイレンズの販売商社としては大手では
あるが、近年での銀塩ビジネスの縮退により、レンズ
(開発)事業をも、手がけるようになっている。
自社企画(開発)として、このExperimental Lens Kit
(他、数機種のトイレンズ)を発売した後、やはり
こうした低価格・低付加価値レンズでは、ビジネスの
継続が難しいという判断からか?2010年代中頃からは、
高価な高付加価値型レンズ(Petzval Art Lens等)を
新規に開発販売している状況である。

の通販価格であったが、後年2010年代末頃では在庫
処分価格として、およそ半額で販売されている/いた。
が、他に残った現代のLomography製レンズは、殆どが
高価な特殊レンズばかり、という状態だ。
本レンズは、完全に在庫がはけてしまった後で入手する
事は、とても困難だと思われる為、そうなった場合は、
「希少品につき非推奨」という事としておく。
----
では、3本目のシステム。

(型番:H-H014)
(中古購入価格 13,000円)(以下、G14/2.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G5 (μ4/3機)
2010年にPANASONIC DMC-GF2とのキット(DMC-GF2C)
で発売された広角単焦点AFレンズ、勿論単品発売もある。

G20/1.7であったのが、DMC-GF2でキットレンズを
G14/2.5に刷新した理由は、その時点では、よく
理解できなかった。
まあ、この当時2009年~2012年くらいの時代では、
μ4/3機あるいは他社ミラーレス機において、ターゲット
となるユーザー層のプロファイルがまだ定まっておらず
新製品がでる度に、ガラリとその製品企画コンセプトが
変わっていた事も何度もあったから、(まあ、市場調査
の意味もあっただろう)あまり、仕様変更は驚くには
値しないかもしれない。
まあでも、G20/1.7に対してG14/2.5は、コストダウン
が実現でき、初期μ4/3機の貧弱なコントラストAFでも
焦点距離の短さと開放F値の暗さでピント精度が高まり、
また、当時から女性等で流行していた「セルフィー」
(自撮り)にも適した画角となっている等のいくつかの
メリットがあったのであろう、と、今では分析している。
ちなみに、この企画変更により、旧機種DMC-GF1C
(G20/1.7がキットレンズ)の新品在庫処分価格は
2011年頃に非常に安価(3万円台後半程)となった為、
それを入手したビギナー層が、付属の大口径単焦点の
その特性を初めて見て、「これは神レンズだ!」と
「神格化」してしまった、という不思議な歴史がある。
まあ、ビギナー層では大口径単焦点レンズ等は普通は
買わないから、その描写表現力に驚いてしまうのも、
「さもありなん」という話かも知れないのだが・・
困った点としては、そのビギナー評価を元に投機層
が動いてしまい、2011~2013年(後継機G20/1.7Ⅱ
が発売された年)までの期間で、G20/1.7の中古相場が
不条理に高騰してしまい、「入手したくても、コスパ
が悪すぎて買えなかった」という問題が生じた。
だが、後継機G20/1.7Ⅱの登場後は、投機的要素も
無くなってしまった為、ほどなくG20/1.7の中古相場
も下落して適正化した。
私は、こうして「市場に踊らされる事」は好まない為
これらの状況は不快であった。G20/1.7ごときの
性能(描写表現力5点満点中4点の個人評価)で、
「神レンズだ!」と大騒ぎするビギナー層の評価も
鬱陶しかったし、場合により、その好評価の原因は
投機層がレンズを「商品」として、より高価に転売
する為に、さらに後押しして「神格化」を拡散した経緯
(ネット上での情報操作)の可能性も捨てきれない。
まあ、つまらない話だ。カメラやレンズはあくまで
実用品であるから、個人等が、それの売買で儲けよう
というスタンスには賛同できないし、さらに言えば、
自分自身で正しい機材(レンズ)の価値を判断できず、
他人の言う事に振り回されてしまうビギナー層の
スタンスにも賛同できない。撮影機材の価値を判断
するのは、周囲の意見ではなく、あくまで自分自身だ、
消費者・ユーザー毎に、機材の使用目的も、それを
扱うスキルも違うのだから、当たり前の話であろう。
これは大原則であり、ここを曲げる訳には行かない。

まあ、平凡なレンズである。小型軽量の準パンケーキ型
である事がメリットだが、単焦点の28mm相当広角は、
銀塩時代では「通向け(上級者向け)」と呼ばれていた
画角だ。(例:銀塩高級コンパクトGR1シリーズ)
これをビギナー層が使いこなせるのか?という点だが
多くのμ4/3機には、デジタル・ズームやデジタル・
テレコン機能が搭載されている。よって、単焦点広角
だから使い難い(=何をどう撮ったら良いかわからない)
という課題は、銀塩時代よりも若干緩和されているで
あろう。
特筆すべき推奨できるレンズでは無いが、比較的安価
なので、機会があれば所有しても悪く無いと思う。
----
では、4本目のμ4/3システムはトイ魚眼だ。

(新品購入価格 3,000円相当)
カメラは、PANASONIC DMC-GF1 (μ4/3機)
前記、2013年発売のμ4/3専用トイレンズ3本セットの
内の1本で、魚眼タイプ(円周型魚眼160度)である。
実焦点距離は不明(非公開)であるが、だいたいこの
あたりの記事内の順序で紹介しておく。
なお、魚眼レンズにおける実焦点距離の差は、あまり
重要では無く、注目すべきは、そのタイプ(円周魚眼
なのか、対角線魚眼なのか)と、その画角(180度とか)
の2つのスペックである。

描写力(Hi-Fi特性)は得られない。
これをどう使うか?というのが最も難しい課題であり、
有効な「用途開発」が大変困難なレンズだと思う。
前述のとおりLomography Experimental Lens Kitは
生産完了となってしまっている模様なので、現在での
入手性は低く、非推奨である。まあつまり無理をして
まで探し、高額相場で入手するような類の製品では無い。
また「どうしても欲しい」などと後になって言い出す
人達にも課題があり、2013年~2020年頃までの長期に
渡って販売されていて、いつでも安価に買えた、この
システムを欲しかったならば販売期間中に買わなかった
事が失策であろう。なお、その期間で中古も1~2度
見かけた事はあった。今後も場合によっては中古品の
流通があるかもしれないが、発売時価格(約9000円)
を超える投機的プレミアム相場になってしまっている
場合には、そこまでの実用価値は無いキットなので、
見送る事が賢明だと思う。
----
さて、5本目のシステム。

(15mm/f8)
(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)
今回の記事では、似たようなシリーズのレンズで、
かつトイレンズ系のものが多くなっているのだが・・
μ4/3のシステムは、その画角がフルサイズ換算で
2倍となる事を利点として、小型軽量の「望遠システム」
としての利用が、その特性上からは正しい選択だ。
だから、あまりμ4/3システムで広角レンズを主体
として使用したいとは思わなくなる為、μ4/3機用
の(単焦点&高性能)広角レンズは、その販売数の
少なさから量産効果が出ず、どうしても高額になって
しまう。そうなるとコスパが悪く感じる為、個人的
には、μ4/3システムの広角ラインナップを充実
させたいという気にはあまりなれず、特殊レンズや
トイレンズ等ばかりになってしまっている次第だ。

新品で単品購入している。前述のようにμ4/3で
広角システムを主力にしたくなかったから、あえて
安価なものを購入した次第だ。
ちょっとした課題としては、翌年2013年発売の
OLYMPUS OM-D E-M1本体に、ボディキャップ代わりに、
本BCL-1580が付属していたキットが販売された事だ。
後年、E-M1Ⅱ発売(2016年)以降では、旧機種の
E-M1の中古相場は急落し、コスパが良くなった為
私もそれを入手したのだが、購入検討時に本レンズ
が付属している中古品が多く、ボディキャップ
代わりとは言え、レンズが重複してしまうのは
無駄な気がして、E-M1の中古の機体選択の幅が
少し狭まった事があった。
メーカー側としては、E-M1ボディ単品発売時での
他機や他社機との差別化の為に(注:ほぼ同時期に
SONYよりα7/Rが発売されている)顧客サービス
としての、本レンズの付属であったのだろうが、
発売から時間が経っていたレンズなので、既に
所有していたユーザーも多かったかも知れない。
「所有している物と重複する」という、その些細な理由
でE-M1の購買意欲の減退にも繋がる。さらに言えば、
なんだかメーカー側で沢山作りすぎたレンズの在庫品を、
おまけにつけているような印象もあり、好ましく無い。
まあ、どうせやるならば、E-M1と本レンズを同時発売
にして、それでセット品を作るべきであっただろう。
・・でもまあ、いずれにしても、これは些細な話だ。

(オリンパスでは、ボディキャップとしての
アクセサリー扱いだ)とは言え、レンズ構成は
3群3枚のトリプレットで、F8の円形絞りがある事も
あって、テッサー並みに、そこそこ良く写る。
(注:経験的には、3群4枚のテッサーと、3群3枚の
トリプレットは、絞り込むと同等の写りとなる。
ただし、絞りを開けた場合、トリプレットは場合に
より「シャボン玉ボケ」が発生する可能性がある。
→それはそれで、良し悪しあるだろうが・・)
最短撮影距離は30cm、一応MFのピントレバーもある。
価格も安価であるので、まあまあコスパは良いが、
意外にも、あまり中古流通は多く無い。
恐らく、所有している人が不要だと思ったとしても、
わざわざ、本レンズを中古店に売りに行く事も無く
(売却しても二束三文であるからだ)そのままで
死蔵してしまっているのかも知れない。
まあ、もし中古があれば、2000円前後という
感じになるだろうか。
ボディキャップ代用として、複数のμ4/3機に
付けるまでの必要性は無いとは思うが、1つ位は
持っていても悪く無い。
----
では、次は今回ラストのμ4/3システム

(新品購入価格 19,000円)(以下、LAOWA17/1.8)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G6 (μ4/3機)
2019年発売の中国製μ4/3機専用広角(準広角相当)
単焦点MFレンズ。
本レンズはμ4/3専用で、他マウントでは発売されて
いない。(型番MFTはMicro Four Thirdsの意味)
恐らくだが、ドローン等への搭載も意識している
のであろう。(参考:近年の高性能ドローンでは、
μ4/3のカメラユニットを搭載し、市販μ4/3レンズ
が装着できるケースもある模様だ)
その場合、本レンズの小型軽量が活かせるし、
実焦点距離の短い広角レンズであるから、空撮時には、
ほぼパンフォーカス撮影で事足りるであろう。
わざわざAFを動かして、ドローンへの搭載機構の
構造を複雑化したり、バッテリーの消耗を早くする
無駄を省ける。つまり本レンズであれば、ピントが
固定のままで空撮が出来る、という事になる訳だ。
空撮では無く、実際の一般写真撮影の場合でも、
パンフォーカス化のメリットはある。

進めていこう、これは本レンズ自体の長所短所等の
話よりも、はるかに重要な事だ。
で、本LAOWA17/1.8の被写界深度の例であるが、
このレンズを、軽くF5.6程度まで絞って使う
だけで、撮影距離を2m前後と設定しておけば、
もう、1m~∞(無限遠)までは全てピントが合う。
(注:被写界深度を計算する為に必要となる
パラメータである「許容錯乱円(径)」の
定義は、デジタルにおいては極めて曖昧であり
誰も(専門家でも、メーカーでも、研究者でも)
ちゃんと数値の定義が出来ていない。
→例えば、オリンパスでは、フィルムでの値の、
0.033mmの半分、0.016mmを提唱しているの
だが、これで計算しても、実際の撮影時での感覚
との違和感が大きい。そこで個人的には、デジタル
の場合でも、フィルムと同様の0.033mm程度を
許容錯乱円(径)として用いるのが適正と見なし
本ブログでは、このパラメータ値を用いた場合
での被写界深度の値を計算している)
まあつまり、ピント合わせの必要が無いので、
レンズをどこに向けても、AFで一々合焦(ピント
合わせ)をしなくても、ゼロタイムで瞬時に
撮影が可能であり、速写性が極めて高い。
(勿論、動画撮影時でも連続AFの必要性が無い)
現代のビギナー層では、「AFが速いシステム」
(カメラ+レンズ)を買うと、それを自慢して
「爆速AF!」などと言うのだが、どんな速い
AFシステムでも、なにかしらの時間はかかる。
特に、AFが近距離と遠距離を大きく移動する
ような撮影条件では、いくら「爆速AF」でも、
AFは遅くてかったるく、速写性は劣ってしまう。
(参考:近年の高級μ4/3機では、AFが動く距離
範囲を3つのゾーンに区分し、その制限の中では
合焦速度を速めようとする工夫もある。
また、SONY α99系一眼レフでも同様に、AF合焦
範囲の上限/下限距離を制限する手動設定ができる。
ただし、合焦距離を制限するのは、趣味撮影には
向かないので、あくまで遠距離スポーツ等の業務
撮影分野の場合で、一定の被写体距離条件の下で
AF動作の迷い(速度低下)を防ぐ為の機能だ)
それが、こうした「MFパンフォーカスシステム」
ならば、どんな場合でも「ゼロ秒」で合焦が
完了する訳だ。ピント合わせは「不要」なので
AFでの「速度」という概念すら持つ意味が無い。
この「パンフォーカス撮影技法」は、今から50年
以上前の銀塩時代であっても、当時の中上級層で
実践されていた。
だが、当時の撮影機材環境では、やや苦しい
ところがある。例えば、当時であれば一般的に
入手できる広角レンズは、28mmが最広角だ。
このレンズを用い、銀塩35mm判フィルム使用時、
F11まで絞ってピント距離を3mに設定すれば、
およそ1.5m~∞の範囲でパンフォーカスとなる。
又は、F8に絞ってピント距離5mであれば、
約2m~∞の範囲が被写界深度である。
これらの用法は、先輩層等からの口伝で伝え
られていたり、あるいは当時のMF28mmレンズ
を入手して現物を見れば分かるが、F8やF11の
位置の絞り値の指標が異なる色で書かれていたり、
加えて、被写界深度指標(目盛)もあるから、
その原理を良く理解し、見て設定すれば、それで
パンフォーカス撮影が実現できた次第であった。
それに、当時のレンズは、まだ性能的に未成熟
な点もあり、絞りを開けていくと、どんどんと
収差の発生が酷くなり、解像感等が無くなって
しまったから、そうした諸収差の一部を減らし、
(MTF特性を向上させて)高画質で撮る為にも、
絞りをF5.6~F11程度に絞って使う必要性が
あった次第である。
(注:現代においてもシニア層等では、この時代
の感覚のまま、「どんなレンズでもF5.6以上に
絞って使う」という人達が多い。現代レンズでは
収差補正が行き届いており、画質向上の目的で
そこまで絞り込む必要は、あまり無い)
だが、当時の低感度の、具体的にはASA(ISO)
50~100程度のフィルムでは、こういう設定を
するとシャッター速度の低下が著しい。
だから、手持ち撮影ではブレてしまうので、
皆、三脚を使って撮影をしていた訳だ。
まあ、ストリート・スナップ等では、このような
ゼロタイム合焦技法は有効なのであるが、手持ち
撮影が前提では、ブレを防ぐのは容易では無い。
よって、あまり絞り込まずに、ゾーン(範囲)
フォーカス(例:35mmレンズで、絞りF4で、
ピント位置が5mならば、3.5m~10mの範囲で
ピントが合っている)として使うのだが、
残念ながら、当時の(今もか?)アマチュア層の
写真知識・技術では、こうした専門的な技法は
使えない。だから、職業写真家層などでしか
ストリート・スナップを上手く撮る事は困難で
あった訳だ。
そして、その後数十年が経ち、1990年代頃とも
なると、世間的にも肖像権等のコンプライアンス
の概念が普及していくので、街中で見知らぬ人を
撮影する、などのスタイルは、そもそも出来なく
なってしまう。(=「盗撮」として犯罪となる)
1990年代には、銀塩RICOH GR1シリーズ等の
ストリート・スナップ専用とも言えるカメラが
発売され、それ以前の時代での職業写真家層に
よる、ストリート・スナップ撮影のスタイルに
憧れた上級層等が、GR1等を入手したのだが、
残念ながら、もう、その時代では、見知らぬ人
にカメラを向けるなどは許されず・・
「何撮っているんだ、コラ!」等と、言われて、
ヤバい人などの場合、身の危険を感じてしまう
ような状況(汗)になっていた訳だ。

本レンズであれば、μ4/3機用の為に、実焦点
距離が短く、F5.6程度まで軽く絞るだけで、
換算34mmの準広角画角で、ほぼパンフォーカス
撮影が実現できる。
「ブレ無いのか?」というビギナー層の心配
事項だが、日中での明所(EV=15、つまり晴天)
での撮影であれば、その場合のシャッター速度は、
およそ、ISO100で1/800秒~ISO200で1/1600秒
程度となる。(注:曇天ではこの半分位)
これだけ速いシャッター速度が得られているので
あれば、手持ち撮影でも手ブレなど起こりようが
無いし、又は、スナップ撮影で良く課題となる
「カメラを振りながら構えて撮ったら、その
動きでブレてしまった」という状況も、シャッター
速度が十分に速いので、あまり起こり得ない。
(注:暗所に向いている状態で、シャッターボタン
を「半押し」してしまうと、そこでAEが固定される
カメラ設定にしていた場合、低速シャッターとなり、
そこからカメラを振ると、低速シャッターのままで
ブレが起こると同時に、被写体が明所に存在すると、
酷いオーバー露出となってしまう。→典型的失敗例)
また、このパンフォーカス設定では、ドローンや
車両(ドライブレコーダーとして)に、あるいは
スポーツ(アクションカメラとして)用途等で、
本レンズを搭載した場合、空中や機動中での振動は
手ブレと同等となるだろうが、シャッター速度が
1/1000秒前後も出ているのであれば、あまりその
ブレは(静止画撮影であれば)影響が少ない。
(注:動画撮影の場合は、多少問題になるだろう。
その場合は、動画手ブレ補正システムが必須だ)
ともかく、一般写真(静止画)撮影の場合では、
本LAOWA17/1.8は、パンフォーカス設定として
使うのが、撮影範囲の幅を広げる、速写性が
得られる、などの効能から、なかなか有効だ。
この設定でも、昼間の静止画撮影であれば、
手ブレ補正機能も不要なので、今回の母艦は
内蔵手ブレ補正を持たないDMC-G6を使用した。

入っていなければ嫌だ(上手く撮る自身が無い)」
と泣き言を言っている状況は、ここまで説明して
きたような、写真撮影上の基本原理、すなわち
被写界深度、露出値(絞り値やシャッター速度)、
手ブレ限界シャッター速度、等の概念、知識や
経験則が皆無である事が、最大の問題点である。
たいして難しい話では無い、写真の教科書等を
読めば、どこにでも書いてある事だし、ちゃんと
読めば1日程度で、それは理解できるであろう。
わからない部分があれば、実際に自分で実践して
確かめて見たらよい。(注:現代のユーザー層は、
その実施検証をしないのが課題だ。ネットで検索
して調べただけで、わかった気になってしまう
から、いつまでも技能が身につかない。また、
そうしたネット情報の信憑性も、要注意だ)
わからない事は放置せず、必ず自身でわかるまで
試して確かめてみる、ここが大原則である。
----
では、「μ4/3用レンズ・マニアックス広角編」は、
このあたり迄で。次回記事は、「標準編」となる
予定だ。