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特殊レンズ・スーパーマニアックス(41)新鋭海外製レンズⅡ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。

今回は「新鋭海外製レンズ」を6本紹介しよう。
既に本シリーズ第17回記事で、「新鋭海外製レンズ」を
6本紹介しているが、記事執筆後に、またいくつかの海外
メーカー(中国等)が日本市場に参入、主にミラーレス機
用の(広角系)単焦点MFレンズを安価に多数発売している。

まあつまり、国内のレンズ市場が高付加価値化戦略により
高価になりすぎていて、特にミラーレス機用の安価な純正
レンズが少ない点を突いてきた製品ラインナップであろう。


だが、その事自体は、消費者側から見れば悪く無い事だ、
高価になりすぎた国内レンズ市場が、海外メーカー参入に
より、活性化すれば好ましい。

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ではまず、最初のシステム
_c0032138_19163369.jpg
レンズは、7artisans 25mm/f1.8
(漢字名:七工匠、「しちこうしょう」と読む)
(新品購入価格 12,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)

2018年に発売された、ミラーレス機(APS-C機以下)
専用MF広角(準標準画角)レンズ。

本記事だが、レンズ固有の解説は、たいてい他記事で
既に紹介しているので、最小限とし、もっと全般的な
説明を主とする。

さて、本レンズは、いわゆる「ジェネリック・レンズ」
であろう。

1970年代前後に発売されていた完成度の高いMF小口径標準
レンズ(50mm/F1.8級)の設計を、微調整しながら1/2に
スケールダウンし、25mm/F1.8とした様相である。
_c0032138_19163328.jpg
他の記事、例えば「最強50mm選手権シリーズ」等を始め
何度も書いているが、「小口径標準レンズは良く写る」
という話である。
これは、同時代(1960年代~1980年代)のMF大口径
標準レンズ(50mm~58mm/F1.4級)の描写力を
上回る事も、様々な記事で説明済みである。


まあ、つまり大口径化(F1.4や、それ以下)を実現する
には当時の設計・製造技術では、だいぶ無理をした訳であり、
開放F値を欲張らないF1.7~F1.8級の標準レンズの方が、
総合性能(描写力)に優れていた訳である。

なので「F1.4版標準だけしか販売しない」という訳にも
行かず、各社とも、大口径版と小口径版の標準レンズが、
必ず並行してラインナップされていた。(併売されていた)
(=わかっているユーザーならば、描写力の優れた小口径
版を買いなさい、という感じだ)

ただ、大口径F1.4版の方が高く売れる(高く売りたい)訳で、
従って、小口径版標準には、若干の性能(仕様)制限が
かけられていた事もある。具体的には、最短撮影距離性能
であり、F1.4版標準(50mm)は、各社とも最短45cmで
横並びであったが、F1.8級標準は各社の販売戦略に
応じて50cm~60cmに最短撮影距離が制限されていた。

こういう風に「仕様的差別化」をしておくと、メーカーや
流通(店員等)は、F1.4版を売り易くなる。具体的には
店「こちらのF1.4版は(寄れるので)背景が良くボケる
  でしょう? おまけに明るいから暗所でも手ブレも
  しにくいですよ、少々お高くなりますが、F1.8版と
  どちらをお求めになりますか?」
という感じだ。

これでは、ビギナー層の誰もが、F1.4版の方が高級レンズで
F1.8版は性能の低い廉価版だ、と思い込まされてしまう。

この単純な(しかし、優れた)販売戦略が、その後50年間も
そのまま市場や初級中級ユーザー層に根付いてしまい、
新鋭レンズですらも、「F1.4版は高性能な高級レンズだ、
F1.8版は、安物で描写力にも劣るに違い無い」という酷い
思い込みの誤解をもたらす原因となってしまっている。

まあ、実際には正反対である、開放F値が明るくなると、
例えば、球面収差は口径比の3乗に比例して大きくなる、
つまり解像力が低下してしまう。そうならないように設計
するには、非常に沢山のレンズ構成を用いた極めて複雑な
設計となり、大きく重く高価な「三重苦」レンズとなる。

1960年代~2010年頃までの50年間は、F1.4級標準は、
いずれも6~7枚前後の簡素なレンズ構成(変形ダブルガウス
型、プラナー型とも呼ばれる)であった。それでも十分に
良く写ったし、完成度もそこそこ高かった訳だ。

しかし、2010年代、コンピューター光学設計を用いた
10数群10数枚という複雑な設計の50mm/F1.4級レンズが
各社より発売され始めた、およそ50年ぶりの標準レンズの
革命ではあるが、それはレンズ市場が縮退して高価なレンズ
を売らないと、メーカーや流通が商売をやっていられなく
なる為の措置である。確かに、銀塩50mm/F1.4級よりも
諸収差の補正が行き届いていて描写性能は向上したのだが、
その代償として、銀塩標準レンズの3倍の重量で、5倍以上も
高価となってしまっている。まあ、メーカー側としては、
そういう「高付加価値」(=高価な)標準レンズを売りたい
が故にそうしている訳だ。

で、「性能は上がった事は良いが、そんな三重苦レンズは
買えないよ(欲しく無いよ)」と思うユーザー層も多い事で
あろう、私は一応研究の為に、そうした新鋭標準レンズを
何本か買ったが、事前に予想した通りであって、確かに
描写力は高いが、三重苦が容認できるかどうかは微妙だし、
私が信条とする「コスパ」の評価は、どれも最低点に近い。

まあ、私以外においても、あまり新鋭高付加価値レンズが
マニア層、中上級層、職業写真家層等に「飛ぶように売れて
いる」という話は聞かない。むしろ主力ユーザー(購買)層は、
「高価なレンズは高性能だ、F1.4レンズは高描写力だ!」
という、単純な価値(評価)感覚しか持っていないビギナー層
向けであろう。
_c0032138_19163365.jpg
さて、余談が長くなったが、まあつまり市場がこういう状況
であるから、古い時代の名レンズの設計をそのままに、ダウン・
サイジングとコストダウンを実現した「ジェネリックレンズ」
が市場に付け入る隙が出てしまっている訳だ。

ほんの10年程前までは、それら古い完成度の高い小口径標準
を、そのままAF化した一眼レフ用50mm/F1.8級レンズを
「安いわりに良く写る」と、皆思っていた訳だし、中には
「神レンズだ」と神格化する初級中級層も多かった訳だ。
それらの小口径標準がミラーレス機用にスケールダウンした
訳だから、これら「ジェネリック・レンズ」の描写力が
劣る訳では無い、基本的には何も問題は無いのだ。

ただし、古い時代の設計は、当然、様々な細かい弱点を
抱えている。だから、それらの課題を理解しつつ回避する
スキルを持たないビギナー層では、そうしたレンズの最大の
パフォーマンスを発揮する事が出来ない。
また単純に「やはり中国製だ、安かろう、悪かろう」で
終わってしまう訳だ。

---
では、次のシステム
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レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN 50mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)(以下、YN50/1.8)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)

2014年頃?に発売された(国内流通は2017年頃から)
中国製(格安)小口径AF標準レンズ、フルサイズ対応
である。

こちらは「ジェネリック・レンズ」では無い。
レンズ構成は、1987年~1990年の期間で販売された
「CANON EF50mm/f1.8」(ハイコスパレンズ・
マニアックス第1回記事等)
そして、そのコストダウン型後継機である、史上初と
思われるエントリーレンズ(お試し版レンズ)の

「CANON EF50mm/f1.8Ⅱ」(1990年~2015年)
のデッドコピー品(全く同じ中身)である。

(注:絞り羽根の枚数が異なる模様だ)
_c0032138_19163864.jpg
しかし、コピー品と言っても、レンズは単なる「機械」では
なく複雑な「電子機器」だ、外観からだけでは、そう簡単に
コピー出来る筈も無い。だが、本レンズに関しては、私が
購入後に色々と評価した感じでは、「中身は殆ど同じ」で
あって、数値スペックのみならず、描写傾向もほぼ同一だ。

これについては、コピーが容易に出来た、という何らかの
裏事情があるものだと推察している。ただ、相当にダークな
事情であろうから、それ以上の詮索はしない方が良いとも
思っている。

なお、本レンズYN50/1.8は「エントリーレンズ」では無い。
何故ならば、「お試し版」とするならば、その後に買って
もらいたい正規の(高価な)商品が存在しないとならない。

そうでなければ、「お試し版」を買った人がそれで満足する
だけで、次の購買行動が起こらない訳であり、現状では、
YONGNUO(ヨンヌオ)では、高性能レンズも高性能カメラ
も作っていないから、次に繋げるべき自社製品が無い。


したがって、単に格安レンズを大量に販売して、商品
そのもので利益を得る、シンプルなビジネスモデルだ。

まあ、かつては、大量生産で高品質な製品を製造するのは、
日本の高度成長期の「お家芸」であったのだが、世情の変化や
土地代や人件費の高騰等で、今の日本では、大量生産型の
工業製品を作る事は困難だ。だから、そのやり方を手本と
して、ここ10年程での中国工業製品は、恐ろしく発展して
来ている、品質も昔のように「安かろう、悪かろう」等と
いった事は微塵も無い。

むしろ、冒頭の「七工匠」等は、製品の品質や高級感も
コストダウン型の日本製品に対して明らかに優れている。
例えば、本YN50/1.8は安っぽく感じるが、それは元々
コピーをしたCANON EF50/1.8Ⅱが、コストダウン型の
レンズであったので、当たり前の話だ。
別にレンズに「CANON」と書いてあっても、それで高級感
を感じる訳ではない。

で、もう国内メーカーでは安価な製品を作れない現状から
すれば、もうここは「ブランド力」に物を言わせるしかない。
コシナ社だって、2000年前後に大量生産(OEM)型から、
ブランド型(フォクトレンダーやカール・ツァイス)に
転換を果した訳だし、SIGMA社でも、2013年頃に、
Art Line等のラインナップ見直しで、ブランド型企業に
変遷して来ている。
2018年からの各社一斉のフルサイズ・ミラーレス機への
戦略転換も、ブランド力を前面に押し出して「高付加価値化」
(すなわち値上げ、または利益増加戦略)を行いたい訳だ。

日本のレンズ市場が空洞化(=ここでは経済的な意味で、
低価格帯商品が消滅してしまった事を指す)を弱点と見た、
海外(特に中国製)レンズが、この市場の隙間に、大量に
押し寄せて来ている訳であり、これはメーカーから見れば
「脅威」であろうが、ユーザーから見れば、高品質のレンズ
が格安で買え、非常にコスパが良いので嬉しい話だ。
_c0032138_19163873.jpg
ただまあ、市場全体が低価格帯に推移してしまうと、
ますます日本メーカーは厳しい戦いを強いられてしまい、
次に出すべき商品の企画が難しくなる。まさか中国製レンズ
と価格競争をしても勝ち目が無い、製造に係わるコストが
まるで違うのだから、まともに勝負をしたら、大赤字となり
破綻してしまう・・

ここは難しい問題だ、消費者側が気にする問題では無い
ようにも思うが、これ以上、カメラ・レンズ市場が混迷して
しまって、結果的に魅力的な製品が出なくなってきたら、
それもマニア的には、困った話なのだ・・

このままでは、また中古ブームが起こってしまう可能性も
あるが、市場が混迷してしまう事と、銀塩時代の「第一次
中古カメラブーム」が、デジタル時代に入って、いくつかの
カメラメーカーの市場撤退への遠因となっていたようにも
分析が進んでいる為、「もうそういう悲劇が繰り返される
のを見たくない」という純粋な気持ちもある・・・

---
では、3本目のシステム
_c0032138_19164410.jpg
レンズは、7artisans(七工匠) 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

2018年に発売された、ミラーレス機(APS-C機以下)
専用MF大口径準広角(標準画角)レンズ。

こちらも七工匠(しちこうしょう)製である、ゆえに
「ジェネリック・レンズ」だ、まだ同社の製品戦略はレンズ
の発売種類も少なく、良く見えてこない段階ではあるが、
初期に発売されたレンズ群の殆どが、過去の名レンズの
設計をそのままにダウンサイジングした状況である。

本レンズの場合は、銀塩MF時代の大口径標準(F1.2級、
55~58mm、1960年代~1970年代に展開)の設計を
およそ2/3(60%)程度にスケールダウンした設計である。
_c0032138_19164411.jpg
だが、この時代のF1.2級レンズは「名レンズ」と呼べる
程には完成度が高く無い。私も同時代の各社の同等仕様品を
6本ほど所有していて(現有品は5本のみ)現代においても
たまに持ち出して撮って評価はしているが、どれも設計の
未成熟による弱点が、かなり目立つ。

まあつまり、50年以上前にF1.2級標準レンズを作るのは
無謀であり、諸収差の発生が抑えきれておらず、描写力が
とても低い。弱点を回避しつつ使う事が上級層やマニア層の
責務ではあるが、それでも限界はあり、ちゃんと使いこなす
のは至難の業である。

まあ、この時代、市場では「大口径化競争」が起こっていて
各社ともF1.4では飽き足らず、F1.2や、あるいはそれ以上
の超大口径レンズを、こぞって設計し、それを販売した時代
でもある。ある意味、その当時の米ソの「宇宙開発競争」と
同様であり、後年の時代から見ると「ずいぶんとお金がかかる
無駄な事をやっていたなあ・・」という感想にもなりかねない。

よって、その「多少無理がある」設計を現代によみがえらした
本レンズも、相当に無理がある(汗)
_c0032138_19164408.jpg
まあ、弱点回避の為の練習・研究用の「教材」として購入
するならば、新品2万円は安価なので問題は無いだろう。

なにせ銀塩オールドの標準は、F1.2という点だけで中古
相場が高騰してしまい、5万円とか下手をすれば8万円と
いった高値で取引されているのだ。それらを無理をして
買ったユーザーも「上品な写り」とか「独特のボケ質」
等の、弱点をオブラートで包んだような好評価しかしない
ものだから、ますます中古相場はプレミアム化し、高騰
してしまう訳だ。(そうやって高評価を広めた後で高価に
売れば、売却益が出るから、投機的観点では望ましい訳だ。
ただ、勿論それは「マニア道」に反する行為だと思っている)

あるいは、現代において本レンズを「開放F1.2だから、
凄そうだ、よほど良く写るレンズに違い無い、しかも安い」
と、購入をしたビギナー層は、大口径標準の弱点回避が出来る
ようなスキルを持たない為、「写りが悪い、やはり中国製だ」
で終わってしまうであろう。

まあ、いずれの話も「見当違い」であろう、つまり50年前
の大口径標準は、使いこなしが困難である。また、現代の
ミニュチュア版ジェネリック大口径も同様に使いこなしが
とても難しい。
それが真実であり、それ以下でも、それ以上でもない。

---
では、次のシステム
_c0032138_19165336.jpg
レンズは、中一光学 FREEWALKER 20mm/f2 SUPER MACRO
(新品購入価格 23,000円)(以下、FW20/2)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

2017年に発売された、フルサイズ対応超マクロ(近接専用)
レンズ。

元々は、1970年代のオリンパスの医療用特殊マクロレンズ
「OM-SYSTEM ZUIKO 20mm/f2 Macro」の設計を
コピーしたレンズだと思われる。

撮影倍率だが、レンズ本体のみで、4~4.5倍と強烈だ。


銀塩時代では、延長鏡筒(ベローズ等)を用いて、さらに
13倍程度の撮影倍率が得られ、オリンパス版では、医療用途
の顕微鏡的撮影に用いられたと思われる。
_c0032138_19165309.jpg
現代においては、延長鏡筒が入手しずらいので、
(まあ、本レンズはニコンFマウント版なので、ニコン製の
各種近接アクセサリーを流用する事は可能ではある)
今回は、μ4/3機を用いて、フルサイズ換算8~9倍の
超マクロとして使用、さらにデジタル拡大機能を併用すれば
最大72倍の撮影倍率が得られるが、一般撮影では、そんなに
拡大して撮影しなければならない用途は無く、そして当然だが
手持ち撮影(特に屋外)では、不可能である。
8倍程度の撮影倍率でも屋外手持ちでの撮影成功率は、
私の場合で1%以下、ほとんど偶然でしか撮影が出来ない。

まあ、本レンズに関しては、過去記事でも何度か紹介済みで
あり、撮影も非常に困難なので(汗)、早々に終了しよう。

ちなみに、中一光学は、コピー品やジェネリックばかりを
作っている訳ではなく、ちゃんとした自社設計力を持ち、
正統派のコストダウン型レンズを販売する中国企業である。
(他にも3本の中一光学製レンズを他記事で紹介済み)

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さて、5本目のシステム
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レンズは、Meike 12mm/f2.8
(新品購入価格 27,000円)(以下、Meike12/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

2018年頃に発売された、中国製のAPS-C型対応
ミラーレス機用MF超広角単焦点レンズ。

詳しい情報が無い状態であるが、購入後の検証により、
このレンズも、七工匠と同様の「ジェネリック・レンズ」
であるように思えて来ている。
_c0032138_19170283.jpg
元になった設計だが、恐らくは、1980年代前後の
カール・ツァイス(京セラ)の、「デイスタゴン」構成
に近いと思われる。

例えば21mm/F2.8等であろうが、それを60%前後に
ダウンサイジングすると、だいたいこのスペックとなる。

ただし、レンズ構成は元のディスタゴンとは多少異なり、
完全なジェネリックでは無いとは思われる。


元の設計を光学設計ソフトに入力し、数枚程度のレンズを
省くような簡易版の設計としたのであろうか?
また、ミラーレス機での(一眼レフとの)バックフォーカス
の差異の調整の為であるようにも思える。

まあ、「ディスタゴン」はその名の通り、一眼レフにおける
ミラーボックスの存在による、フランジバック長の長さを
広角レンズにおいて、打開する為の「逆望遠型」(=レトロ
フォーカス型)構成であるから、ミラーボックスを持たない
ミラーレス機用では、バックフォーカスを一眼レフ程には
稼がないでも済む。その点で、2~3枚の後群レンズは
省略できたのかも知れない。

しかし、元々複雑な構成の高級レンズであるから、本レンズも
部材のコストが嵩み、あまり安価な状態にはなっていないし、
そもそもディスタゴンは21mm等は大型のレンズであったから、
本レンズも他のジェネリック・レンズよりだいぶ大きく重い。
(フィルターサイズはφ72mmもある)

で、ディスタゴン構成の場合、描写力はさほど問題に
ならない。多くのディスタゴンを保有している訳では無いので
明言は避けるが、まあ、私の所有している(いた)範囲では、
どれも高性能である。解像力に優れ、歪曲収差も少なく、
コントラスト特性も良好である。ここは本レンズも同様だ。

ただし、弱点も有り得る、コーティング性能により逆光耐性に
モロに影響する事、それと超広角故に周辺減光が発生する事だ。
しかし、この点も本レンズではあまり気にならない。

その他の実用上の弱点は、これは私の個人的見解であるが
「ディスタゴン構成は、MFでのピント合わせが困難」
といった状況がある。

具体的には、例えば、他の構成のレンズでは、ピントが合って
いるか否かは、光学ファインダー(スクリーン)でも
EVF等でも、比較的はっきりとわかる。つまりフォーカス部と
アウトフォーカス部の差異が明瞭だ。

だが、デイスタゴン構成は、なんとなくだが、その差が曖昧
であるような気がしてならない。
他のCONTAX系(コシナ・ツァイス系含む)のディスタゴンは
その多くに、そうした傾向があって、MFでのピントがどうにも
不安なのだ。

本レンズでも同様の傾向がある。FUJIFILM Xマウント機で
システムを組む際の、広角のラインナップの穴を埋める、
(つまり、FUJI純正広角レンズは高価すぎて買えない、又は
コスパが悪く感じるので、買いたいとは思えない状態)為の
措置で本レンズを購入したのだが、MF性能が全般的に劣る
FUJI Xマウント機では、ますますピント合わせが不安だ。

なので、やや絞り込んでパンフォーカス気味にしてピント
精度の弱点を相殺してしまう用法が主体となる、中遠距離
のスナップや風景等だ。また、こういった設定では、
「ノーファインダー技法」も使える。
_c0032138_19170290.jpg
ただ、本レンズは、最短撮影距離が10cmと優秀だ。
これは他のディスタゴン構成レンズでも、ほぼ焦点距離の
10倍則に則った仕様であったので、本レンズも12cm程度
である事は納得がいく。(ただし、本レンズは仕様上では
最短10cmであるが、距離指標は15cmまでしか書かれて
おらず、本当に10cmまで寄れているか? やや疑問だ)
・・で、そうした近接撮影を行いたいのではあるが、
ディスタゴン構成レンズでのピントの山の分かり難さと、
FUJIミラーレス機でのMF性能の低さにより、近接撮影時の
ピント合わせが困難となる(=良く外してしまう)
まあ、ここが実用上の最大の不満点であろう。

近接撮影に拘らず、中遠距離の風景等を超広角的に撮る
ならば全く問題は無いが、せっかくの「寄れる広角」で
あり、高描写力でもあるので、その性能は有効活用したい。
だが、やりたくても、それがやりにくいので、ちょっと
ストレスが溜まるレンズだ。(Eマウント版で購入した
方がベターであっただろう)

----
では、今回ラストのシステム
_c0032138_19170556.jpg
レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN 35mm/f2
(中古購入価格 8,000円)(以下、YN35/2)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)

2018年頃? に発売された、中国製小口径AF準広角
レンズ、フルサイズ対応である。

またしても、完全コピー品のYONGNUO社のレンズである。
このレンズの元になった製品は、CANON EF35mm/f2
(1990年頃~2012年頃)である。

CANONの現行品は、手ブレ補正内蔵、超音波モーター
内蔵のCANON EF35mm/f2 IS USM となっているが、

旧型EF35/2、および、そのコピー品の本YN35/2は、
通常型AF(DC)モーター内蔵のみの仕様である。
_c0032138_19171199.jpg
本レンズはEFマウントでの完全コピー品ではなく、マウント
を変更したNIKON Fマウント版である。AFモーター内蔵の
メリットを活かし、NIKON D3000/D5000番台の普及機
でもAFが動作して使用が可能だ(注:これらニコン普及機
では、内蔵モーターが無いレンズはMF撮影しか出来ない。
かつ、ニコン普及機のファインダーは「全くMFに適さない
劣悪な性能」と、酷く意地悪な仕様的差別化が見られる)

性能や仕様は、CANON EF35/2と全く同じ、当該レンズは
所有しているで、描写傾向など含めてチェックしたが・・
まあ、異マウントなので同一機体でのチェックはできず、
厳密とは言い難いが、感覚的には「全く同じ」という印象だ。

やはり本レンズも、色々と裏事情がある「完全コピー品」
なのであろう、まあ理由の推測は可能であるが、それらは
あくまで裏の世界の話だ、あまり勘ぐるのはやめておこう。

さて、EF35/2のコピー品であれば悪い性能では無い。
それ以前、MFのFDマウントの時代から、CANON (New)FD
35mm/f2は、優秀な描写力を持つお気に入りのレンズだ。

ただし、NewFD版→EF版→IS/USM版、と、各々の時代で
レンズ構成は、ずいぶんと変化している。まあ単純に
「AF化しました」「手ブレ補正が入りました」と、元の
レンズ構成を変えていない状態では無い、という事であり、
そこは常に技術の改善を目指すCANONの良いところだと思う。

他社では、MF時代の単焦点レンズをそのままAF化した例も
いくらでもあった訳だ(まあ、「αショック」(1985年)
以降、各社はAF化への移行がとても大変だったので、レンズ
を新設計する余裕が全く無かった、とも言えるが・・)

弱点は特に無い、ベースとなったEF35/2もまた、同じレンズ
構成のままで、20年以上も販売が継続されたロングセラー品
である、もし性能に課題があるならば、その長い発売期間の
間に、あれこれと改善が図られたはずだ、それが無かった
という事は、それ自体が、「完成度が高いレンズだった」
という状況を示している。

現代のCANONユーザーであっても、「別に手ブレ補正や
USMは不用だよ」と言うのであれば、旧型のEF35/2で
十分であった訳だし、事実、私も、EF35/2を長年使って
いて、特に不満を感じた訳でもなかった。


まあ、買い換えるとしたら、2010年代のSIGMA版35/1.4と
TAMRON版の35/1.4が、なかなか良さそうなので、それを
選ぶ位であろうが、それらは大きく重く高価な三重苦レンズ
であるから、EF35/2の小型軽量は捨てがたく、代替購入には
なり得ず、追加購入となるであろう。
_c0032138_19171141.jpg
まあ、個人的には、これまでCANON機でしか使えなかった
EF35/2が、本YN35/2の登場により、ニコン機でも使える
ようになった事が好ましい。しかも、それはかなり安価に
入手できている(EF35/2の中古購入価格の半額程)
・・まあ、色々と出自に係わる裏事情はあるとは思うが、
それはユーザー側には、あまり関係の無い話である。

「サービス(サポート)に不安がある」というならば、
国内メーカー純正品を買えば良いわけであり、そのあたりは
ユーザーの、目利きや、機材使用スキル、使用コンセプトにも
依存する訳だ、個人的には、このあたりの価格帯(1万円以下)
のレンズは「実用的消耗レンズ」である。雨天・荒天や
水際、酷暑等の過酷な撮影環境とか、あるいは機材の安全に
注意を払いにくくなる旅行とか、忙しい撮影状態で使用し、
万が一壊れたり、無くしても惜しく無い、という感覚であり、
そうした用途専用のレンズである。高価な新鋭(三重苦)
レンズ等は、そういう用途に持ち出すには適切では無い訳だ。

----
さて、今回の記事「新鋭海外製レンズⅡ」編は、
このあたり迄で・・
なお、新鋭海外レンズは、次々に市場参入してきているので、
適宜「海外製レンズ(Ⅲ)」記事を後日掲載予定だ。


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