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最強50mmレンズ選手権(13) 予選Mブロック MF焦点距離違い

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所有している一眼レフ等用の50mm標準レンズを、AF/MFや
開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。

今回は、予選Mブロックとして「MF焦点距離違い」の
レンズを6本紹介(対戦)する。

ここで「MF焦点距離違い」とは、本来このシリーズでは
50mm前後の焦点距離の標準レンズを主体に紹介(対戦)
して来たが、このカテゴリーでは、その焦点距離の範囲
の枠を緩め、概ね40mm~60mm程度の実焦点距離の
レンズを選出している。

(なお、既に何本かの57mm~60mmの焦点距離の
レンズを他のカテゴリーで紹介している)

また、フルサイズ用やAPS-C機用(換算)は問わない
つもりではあったが、今回は銀塩時代のMFレンズばかり
となり、全てフルサイズ対応である。
(ただし、実写に使用する機体のセンサーサイズは
まちまちとなる)

それから、本予選(記事)では、故障欠場のレンズを
何本か含むのだが、その為、レンズ毎の紹介文章量は、
極端に差がある事を最初に断っておく。

---
さて、まずは今回最初のレンズ。
_c0032138_16440183.jpg
レンズ名:smc PENTAX-M 40mm/f2.8
レンズ購入価格:12,000円(中古)
使用カメラ:SONY α7(フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第37回記事、
特殊レンズ超マニアックス第14回記事等で紹介の、
1970年代後半頃のMF単焦点準標準薄型レンズ。
_c0032138_16440120.jpg
いわゆる「パンケーキ」型レンズであり、パンケーキ
ブーム(1990年代後半頃)の際には、PENTAX MX
(1976年。それまで世界最小であった一眼レフの
OLYMPUS OM-1を超える小ささで、世界最小記録を更新)
と組み合わせた状態が「格好良い」と人気であった。

このMXと本M40/2.8の組み合わせは、近年、2010年代に
「ガチャポン」(or ガチャガチャ。駅等でコインを入れて
買うカプセル型の玩具)に入っているのを見つけ、
「よし、MX+M40/2.8を出すまで買うぞ」と思ったら、
上手く1発で引き当て、「ラッキー!」となった。
_c0032138_16440217.jpg
ちなみに、カプセル型玩具商品は、非常にマニアックかつ
優れた企画モノが多く、マーケティング的な視点からは、
とても興味深いので、いつも良く見てチェックしている。
2018年には、今度は「キヤノンのMFカメラ」の企画が出て、
こちらでも「旧F-1が出るまで引くぞ!」と、何度かトライ、
3回目で無事F-1とFD85/1.2Lの玩具セットを引き当てた。
_c0032138_16440242.jpg
さて、本レンズM40/2.8であるが、後年1990年代後半には
第一次中古カメラブームと合わせて、パンケーキブームが
起こり、様々な古い薄型レンズを、マニアはこぞって高値で
購入した。
その時代、レンズは既にAF化されていて、各社の薄型レンズは
小型故にAF機構を入れるのが難しく、絶滅していたのだ。
マニア層が新たに入手した銀塩MF一眼レフと組み合わせると
「格好良い」というのは、いつの時代でも同じ感覚なのだろう。

私はパンケーキがブームとなる直前に本レンズを入手して
いたので12,000円という価格で入手できたが、後年には
かなり相場が吊りあがってしまった。

何故パンケーキの相場が上がったかと言えば、あまり販売数が
多くなかったからだ、レアなレンズを皆が欲しがればそうなる。
何故数が少ないのかは、パンケーキが発売されていた時代には、
不人気で、皆、あまり欲しいと思わなかったからだ。
何故、欲しく無いか?と言えば、パンケーキは格好は良いが
性能はたいした事は無いからだ。

具体的に述べよう、1970~1980年代には、MF一眼レフを
新たに買う場合に、標準レンズと共に買うのが普通だ。
その選択肢は、50mm/F1.4級の大口径か50mm/F1.8級の
小口径かのいずれかだ。本シリーズ記事では、ここまで
数十本のそうしたレンズを紹介(対戦)しているが、
それらの描写力が高い事は良くわかった事であろう。

何故ならば、50mm標準は各社の「看板商品」であるから、
もし、これらの描写力が劣っていたら、お話にならない
どころか下手をすればカメラが売れずに非常に困ってしまう。
よって、どの標準レンズも必死で、高性能を得る為の改善
努力をして、その結果はちゃんと出ている訳だ。


そんな中、パンケーキ型標準は、開放F2.8級と、開放F1.4
には遠く及ばない。その当時は開放F値が小さいレンズが、
全ての点で高性能で、だから高価なのだ、と信じられていた。

(そうとは言い切れないのだが、これは世間からの視点だ)

当時でも、少しわかっている人ならば最短撮影距離も見る。
F1.4級標準は、全て45cmと、まあ寄れる性能だ。
だが、パンケーキは皆60cmと、遠くからしか撮れない。
そして実際に手にしてみると、パンケーキはピントリングが
とても狭く、ビギナー層の苦手とするMF操作がさらに困難だ、
これだけ性能差があれば、当時のほとんどの消費者層は、
パンケーキ型標準など、買うはずが無い。

まあ「格好良い」という風には思われていただろうが、
ユーザーが既に所有している高性能の50mm/F1.4に追加して、
ただ「格好良いから」というだけの目的で、M40/2.8などの
パンケーキ標準を買うはずが無いではないか・・
それは、よほどお金が余っている金満家の購買行動だ。

それと、所有している50mm/F1.4を売って、わざわざ性能
(開放F値等)が劣るパンケーキに買い換えるというユーザー
も皆無であろう。

前述のガチャポンに何故「MX+M40/2.8」が入っていたかは
明白だ、つまり誰もこの組み合わせを持っていないからだ!

ガチャポンの企画は凄い、何故ならば、マニアですらおよそ
持っていないものを重点的に商品化するのだ。
(注:私の場合はMXは過去所有していたが、譲渡により、
現在は保有していない)

またCANONのガチャポンの例では「旧F-1を引き当てた」と
書いたが、私はその機体を現有している(銀塩一眼第1回記事)
が、その商品はマニアックな「オーリブ塗装」バージョンで
あったのだ、さすがに私も、レアなそれは持っていない。
「う~ん、やられた、カプセル玩具恐るべし!」となった訳だ。

で、結局、発売期間中にパンケーキを買う人は殆ど居なかった
のだ。だから後年の中古市場では極端な品薄となって、中には
10万円近くの相場になったパンケーキすら数種類あった位だ。
勿論どのパンケーキも性能から言えば、1万円台の相場が良い
ところであり、それも「マニアック度」を加味した甘い値付け
である。現代の感覚で純粋に性能だけを見れば、7000円程度が
妥当なコスパ感覚だ。
_c0032138_16441173.jpg
・・さて、本レンズM40/2.8は、他社パンケーキの多くが
テッサー型(3群4枚)であったのに、4群5枚と、ちょっと
変わったレンズ構成となっている。

しかし、だから高性能であるとは言えない。特に本レンズの
場合は描写力もたいした事はなく、発売当時の消費者層が
恐らく気にしたように、開放F値の暗さや最短撮影距離の長さ
という問題から、背景をボカす等の撮影技法は殆ど使えず、
不満となるだろう。

特に、この時代の直前の1975年、ヤシカ(京セラ)より、
「CONTAX RTS」が発売され、その主力交換レンズである
プラナー等の大口径レンズでの「背景ボケを生かした」
撮影技法が、一般にも広まりつつあった時代なのだ。
(銀塩一眼レフ・クラッシックス第5回記事参照)

で、本レンズは現代ではセミレアである。これを無理して
入手するのであれば、今時のAFパンケーキである
smc(またはHD) PENTAX-DA40mm/f2.8(またはXS)が、
4群5枚という同じレンズ構成ながら、AF化は勿論、最短の
短縮(40cm)および小型軽量化、と、全ての点で本M40/2.8
よりも性能的に上回っている。
それらの近代レンズであれば1万円台前半から中古購入できる
ので、銀塩時代のオールドパンケーキに拘る理由が殆ど無い。

---
では、次のレンズ。
_c0032138_16441433.jpg
レンズ名:NIKON Ai Nikkor 45mm/f2.8P
レンズ購入価格:38,000円(新品)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第19回記事等で紹介の
MF単焦点薄型標準レンズ。
2001年頃に発売と、遅ればせながらのMFレンズだが、
これはニコンが中古カメラブームやパンケーキブーム
に乗って、企画されたレンズだからだ。しかし発売が
やや遅かった。発売時には、パンケーキブームは既に
終息してしまっていたのだ。

当該紹介記事では、「絞りが不調だ」と書いた。
実はこのレンズは2000年代に一度絞り故障で修理に
出したのだが、また同じ症状が再発してしまった。
その後、この状態は回復せず、現在なお不調のままで
修理もしていない。

まあ、修理に出すような貴重なレンズであるとも思えないし
ブームに乗せて、急ごしらえで発売されたようなレンズで
ある為、あまり好きなレンズでは無いのだ。
(そうであっても、本レンズは現在、準投機対象品であり
実用性よりも高価な相場で取引されている状況だ・・
本ブログでは投機対象になってしまった機材は、コスパが
極めて悪い為に一切推奨しない持論としている)

まあ、本記事では、やむなく「故障欠場」とする。

---
では、次のレンズ。
_c0032138_16442944.jpg
レンズ名:KONIKA HEXANON AR 52mm/f1.8
レンズ購入価格:4,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

ミラーレス・マニアックス第31回記事で紹介の
1970年代以前のMF標準レンズ。
_c0032138_16442934.jpg
まず最初に述べるが、このレンズは描写力が、かなり低い。
まあ時代的な、設計の未成熟であろう。
後年のHEXANON AR 50mm/f1.7は、それなりに良く
写るので、この時代の、本レンズ固有の設計の問題だろう。


これを「Lo-Fi描写用に使えないであろうか?」とも考えたの
だが、性能が低く、あまり使用もしてないので、そういう
用法も試していない。まあ正直言えば、無理に使う必要も
殆ど無いレンズな訳だ。

あまり書くべき事も無いし、決勝に進出できるような
レンズでは勿論無いので、早々に本レンズは終了しよう。

---
では、次のレンズ。
_c0032138_16444422.jpg
レンズ名:PENTAX SMC Takumar 55mm/f1.8
レンズ購入価格:9,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX K-5(APS-C機)

ハイコスパ第2回記事等で紹介の、1970年代の
MF標準レンズ、M42(改)マウントである。

この時代ではSMC銘は冒頭には付かず、かつ大文字表記
であったと思われる。(その後の時代では、smc PENTAX。
ただし、この事はレンズ実物上の表記からの推測であり、
メーカ側等からの公式な製品名等の情報では無い。
もはや、ここまで古い時代の正確な情報等は、殆ど
残されていないし、他社等の公式情報であっても、古い
時代のレンズ名等は、実物とは異なるケースも多々ある)
_c0032138_16444450.jpg
当時、膨大な生産台数があったPENTAX SP系一眼レフ用の
オーソドックスな小口径キットレンズであり、恐らくは
数百万本という膨大な生産本数となっている事であろう。
後年、そして現代に至るまで中古の玉数は極めて豊富だ。

価格も程度や時代によりけりで、多少バラつくが、概ね
3000円~5000円程度と、買いやすい中古相場である。
(注1:本レンズは若干高価に買ってしまっている。
 注2:近年では、もう少し高額な相場となっているが、
   適正な相場感覚は上記の通りだ)

おまけに、描写力が非常に優れている。その点では現代の
AF単焦点標準レンズに勝るとも劣らないどころか、むしろ
本レンズの方が優れているケースすらもある。

何故そうなるかは、本ブログの読者なら良くわかるであろう。
まず開放F1.4級よりも、F1.8級標準が優れるのが、この時代
の特徴だ、これはさんざん本シリーズ記事で検証済みである。

で、この時代以降、1980年代にカメラはAF化し、この当時の
MF標準レンズ(特にF1.4級)は、各社、そのままAF標準
レンズとなり、それが何と2010年代頃まで、各社とも中身が
殆ど変更される事がなく延々と続いてしまっていたのだ。
(まあ、詳しく言えば、完成度が高いから、レンズ構成の
改良の必要性が少なかった事と、ズームレンズが主流に
なった為、単焦点レンズの性能改善が後回しになっていた)

すなわち、この1970年代において優れていた標準レンズは、
その後40年間、ずっと相対的に変わらず優れたままであるし
新しいレンズも性能的な改善が行われなかった訳だ。

ただし、2010年代の最新設計の標準レンズには、さすがに
描写力的には太刀打ちできない。けど、それら新鋭標準レンズ
は高価であり、数万円あるいは十数万円もしてしまうのだ、
「数千円で買える本レンズと、どっちがコスパが良いか?」
などはもう、聞く必要も無いであろう。
_c0032138_16444403.jpg
さて、安価で高性能と言えば、当然「神格化」が起こる。
1990年代後半の第一次中古カメラブーム以降、初級マニア
層により本レンズは「銀のタクマー」と呼ばれてあがめられた。
その傾向は現代まで続き、依然、本SMC55/1.8は初級マニア層
においては「神格化」されている。

ただまあ、中級マニア以上で本レンズを所有していない人等、
まず有り得ないのだ。200万本か、それ以上も生産されて
いるならば、その一部が中古市場に流れているとしても、
これはマニアの総数よりも、はるかに多い流通本数だ。
だから必ず本レンズは皆持っているし、良く写る事も常識だ。

そんなところへ、新たな初級マニアがこれを買って、
「銀のタクマー、よく写る、スゲ~!」等と騒いだところで
他のベテランマニア達は、「なんだ、今頃気付いたか?」と
むしろ冷静なのだ。
下手をすれば、「今頃になって騒ぐなんて格好悪い」とすら
思っているかも知れないので要注意だ。

まあつまり、本レンズが良く写る事は、誰でも知っている
事実なので、この記事でも、あまりこれ以上、あれこれと
言う必要も無い。
_c0032138_16444859.jpg
ちなみに、本ブログの「ハイコスパBEST40編」では、
本SMCT55/1.8のランキング順位は、数百本のレンズ中、
堂々の第17位。
この順位の前後には、他にも初級中級層から「神格化」されて
いるCANON EF50mm/f1.8(Ⅰ/Ⅱ)が第19位でランクイン
している。

頑張ってはいるのだが、まあ「それくらいの順位でしか無い」
とも言える訳であり、私の所有しているレンズの範囲で
あっても、本SMCT55/1.8よりもコスパが優れる高性能レンズ
は、少なくとも16本は存在している、という事になる。


まあやはり、あまり初級マニア層は「銀のタクマー」などと
騒がない方が良いだろう、という事になると思う。
マニアと言うならば、最低でも30本以上の様々なレンズを
使い込んでから、物事を語るのが望ましいとも思うからだ。
(匠の写真用語辞典第16回「トリプルスリーの法則」参照)

---
さて、次のレンズ。
_c0032138_16445566.jpg
レンズ名:HELIOS-44-2 58mm/f2
レンズ購入価格:7,000円(中古)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)

ハイコスパ第19回「ロシアン編」等の記事で紹介した
MF単焦点標準レンズであり、Carl Zeiss Jena BIOTARの
デッドコピー品である、と言われている。

しかし、毎回このレンズを使うたびに思うのは、描写力が
極めて低い、という点である。(注:いくつかのバージョン
違いが存在するのだが、他は未所有。けれどもバージョンに
よって描写力に大差があるとも思い難い状況だ)
_c0032138_16445587.jpg
欠点の回避も殆ど不可能なくらいの酷いレベルであるから、
使っていてもストレスが溜まるばかりだ。「ツァイスの
コピー品だから良く写る」と思うのは大きな勘違いである。

本シリーズ記事は、最強の50mmレンズを決めるコンセプトだ
本レンズは、残念ながら「棄権」とする。

なお、長所短所等が、どうしても気になる場合は、詳細は
前述のハイコスパ第19回記事等を参照されたし。
ただし、それらの記事では、レンズの弱点を様々な技法で
回避して使っている。
使いこなしは、そう簡単では無いので念の為。

---
では、今回ラストのレンズ。
_c0032138_16450117.jpg
レンズ名:CONTAX Tessar T* 45mm/f2.8
レンズ購入価格:24,000円(中古)
使用カメラ:CANON EOS 6D(フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第47回記事、
特殊レンズ超マニアックス第14回記事等で紹介の、
1982年発売(AE型)の、パンケーキ型MF標準レンズ。
(注:本レンズは後期型のMM型であり、恐らくは1993年
頃の発売だ)

さて、今回使用の「Y/C→EF」のマウントアダプターは、
APS-C機のEOS(一眼レフ)で使う場合、ほぼ全てのCONTAXや
YASHICA製のY/Cマウントレンズを装着しても問題なく使える。

ただし、これをEOS 6D等のフルサイズ機で使う場合、一部の
Y/Cレンズは装着できるものの、他は、内部部品が干渉して
いるのか?、ミラーアップして撮影不能になってしまう。
このTessar 45/2.8も同様に上手く動かないパターンだ。
_c0032138_16450136.jpg
なんとか数枚だけ撮れたものの、非常に危険な状態だ。
【注意】このまま使い続けると、カメラが壊れてしまう。

この件に関してはEOSフルサイズ機にAPS-C専用のEF-Sレンズ
を装着した際にも同様のミラー干渉が起こるのだが、これに
ついては、EF-Sレンズにはストッパーを設けて、EOSの
フルサイズ機には「物理的に装着不可」とする工夫がある。

EOS機にはこの制限がある為、APS-C用EF-Sレンズを購入すると、
フルサイズ機とAPS-C機の両方での使いまわしが出来ない、
という、ユーザー利便性を損なう課題がある。

他社、具体的にはNIKONのFXとDXレンズや、PENTAXの
FAとDA、またSONYのSALとDTレンズでは、このような事は
起こらず、フルサイズ機にAPS-C用レンズを装着しても、
自動または手動でクロップされて問題なく使用できる。


また、ニコン機ではフルサイズ用レンズでもクロップモード
が使え、画角の変化とともに、被写界深度を維持した画角
調整の技法が使えるが、一般的なEOS機にはクロップモード
は無い。(注:EOS 5DR系機種を除く)


なお、EOS機にこの問題がある為、EF-S型レンズは、私は
殆ど購入しておらず、2000年代での周囲のEOS APS-C機
ユーザーにも推奨していなかった。
「将来、フルサイズEOSに買い換えた際、使えなくなりますよ」
という理由である。

さて、余談はともかく、Y/C(RTS)マウントの一部のレンズは
フルサイズEOS 6Dではミラー干渉で使えない。このテッサー
も同様である、それでも騙し騙し使う事は出来ない事は無い
のだが、無理をして、例えば、ミラーが削れてしまったら
大変だ、早々に使用を諦める事としよう。

やむなく、ここでカメラを交替する。
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
_c0032138_16450639.jpg
こちらであれば何ら問題は無い、画角が1.5倍に変化する事は
本ブログ全般では(特にこの最強50mmシリーズにおいては)
一切気にしてはいない、むしろ画角が狭くなれば、こうした
単純構成レンズでの周辺収差をカットできて好ましい点もある。
_c0032138_16451404.jpg
さて、 Tessar 45mm/f2.8はパンケーキレンズの代表とも
言えるレンズであるが、初出の1982年から、3機種が存在
していたと記憶している。

まずは、最初期のAE型(絞り優先対応)だが、1982年頃
の発売であるが、不人気で一度生産中止になったと聞く。
まあその理由は、本記事のPENTAX-M40/2.8の項目に書いた
事と同様であり、当時のユーザーは高性能な標準レンズを
求めたからだと思われる。特にCONTAXの標準は、優秀だ
と著名なPlanar 50mm/f1.4が存在するのでなおさらだ。


次いで、MM型(プログラム露出等に対応。本レンズ)が
1993年頃の発売となる。で、もしかするとこの時期の
テッサーの再生産が、マニア層でのパンケーキブームの
火付け役になったのかも知れない。

・・と言うのも、この当時、CONTAXの旗艦機RTSⅢ
(1990年)が発売されていたのだが。(未所有)
大柄なそのボディに、この薄型のテッサーを組み合わせた
アンバランスな状態を、一部の上級マニアが実践していたが、
それを見た他のマニアの間で、「とても格好良い!」と
評判になっていたのだ。


それと、重要な社会情勢だが、この前年1992年にはバブル
景気が崩壊している。他記事でも良く書いているが、バブル
崩壊後、消費者層の価値観やニーズが、ガラリと変わって
しまっている状況がある。カメラ市場も動揺であり、華美な
スペックのAF新鋭機にはマニアは誰も見向きもしなかった。


マニア層は、MF一眼の名機、レンジ機、名レンズ、高級
コンパクト、そしてパンケーキレンズ等に、興味の主軸を
シフトし始めていた時代なのだ。ちょうどそこに、この
テッサーの再発売が、ぴったりハマったのかも知れない。

3つ目のテッサーはちょっと特殊なモデルである。
2002年に、CONTAXの70周年記念のシルバー塗装 Ariaと、
そのキットレンズとして、Tessar 100周年シルバーモデルの
セットが発売されている、この時のレンズ名は、
「Carl Zeiss Tessar T* 45mm/f2.8 MMJ 100 Jahre」
となっていて、銀塗装である他、旧来のテッサーのフィルター
径がφ49mmであったのが、この限定版ではφ46mmに小型化
されている。(恐らくは、CONTAX Gレンズ用のφ46mm銀色
フードやフィルターを共用できるようにする為であろう。
このセットは知人のマニアが所有していた)
_c0032138_16451489.jpg
さて、どのテッサーも中身は同じレンズなのであるが、
ここで、Tessar 45mm/f2.8の長所短所を述べておこう。

長所:
・薄型(パンケーキ)で、極めて格好良い。
(1980年代には不人気であったのが、ユーザー層の価値観が
 バブル崩壊後に大きく変化し、パンケーキが格好良い、
 という事になった)

・小型、超軽量である。
 一般に、MF一眼レフ用交換レンズで、各社の最軽量クラス
 のレンズが、こうしたテッサータイプのパンケーキだ。
(ただし、本Tessar 45mm/f2.8は約90g台だが、これは最軽量
 では無い、記憶によれば、リケノン XR45/2.8(現在未所有)
 がMF一眼用レンズの最軽量の55gだったと思う)

・絞り込んで使うと、解像力や発色傾向が良くなり、
 単純構成のレンズでありながら侮れない描写力を持つ。
(余談だが、テッサー発売後の20世紀初期では、
 ツァイスはこのレンズのキャッチコピーとして
 「あなたのカメラの鷹の目」と言う表現を使った。
 この文言が有名になり、その後、何十年たっても
 マニア層はシャープな特性を持つレンズの事を「鷹の目」
 と呼ぶ事が多い。例えば、本「鷹の目テッサー」や、
 「鷹の目ロッコール」などである。
 ただ、その呼び方は既に100年も前の古いキャッチコピー
 である。同じキャッチを何度何度も使うのも面白味が無い、
 マニア層は何か新しい文言は思いつかないだろうか?)

・構造がシンプルであり、製造が容易(製造コストが低い)
(元々、100年以上も前の古い設計であり、ライト兄弟の
 初飛行の頃に開発されたレンズだ。特許が切れた戦後には
 極めて多くのカメラがテッサー構成のレンズを採用していて、
 とてもありふれたレンズではあったが、これはつまり、
 安価に製造が出来、そこそこ高性能であったからだろう)

短所:
・ピントリングが極めて狭く、MF操作性が悪い。

・一般にMF時代のテッサー型レンズは最短撮影距離が
 60cm前後と、変形ダブルガウスタイプ標準レンズの
 45cm前後に比べ、かなり長目である(寄れない)

・開放F値がF2.8級と、大口径標準レンズのF1.4級に比べて
 かなり暗い。加えて上記最短撮影距離の長さとあいまって
 被写界深度が深く、背景ボケを生かした撮影表現が出来ない。

・焦点移動が発生する。
 これは開放測光でピントを合わせ、撮影時に自動絞り機構で
 絞り込まれると、ピント位置がずれてしまう現象だ。
(ただし、絞り込むと同時に被写界深度も深くなる為、あまり
 大きな問題にはなり難い。加えて、現代においてマウント
 アダプターで使用する際には、絞り込み(実絞り)測光で
 あるから、この弱点は解消され、何ら問題では無くなる)

・パンケーキブーム時にはコスパが極めて悪かった。
(=実際の性能に対して中古相場が高すぎた。
 なお、パンケーキブームが終息した2000年頃以降も依然、
 これらを求める初級マニア層が多い為、現代に至るまで
 相場は高値傾向だ。なので未だに「コスパは悪い」と
 言う事が出来るだろう)
_c0032138_16451412.jpg
さて、という事で、実際のところのテッサー型構成は非常に
ポピュラーな(ありふれた)レンズであり、あまり本レンズ
Tessar 45mm/f2.8を特別視する必要は無い。
その割に、CONTAXのブランドバリューで価格が高価なので
コスパがかなり悪い。

よって、本ブログでは、ミラーレス・マニアックスのシリーズ
記事以降、ハイコスパレンズ系のシリーズ記事には、ずっと
本レンズは登場する事がなく、勿論、名玉編にもノミネート
される事もなかった。

最後に、私が思うところの本Tessar 45mm/f2.8の最も
マニアックな使い方だが、CONTAX AX(銀塩一眼第20回記事)
に装着し、ABF機構をMACROモードとして、これを
「マクロ・テッサー」としてしまう事だ。
(注:マクロ・プラナーやマクロ・ゾナーは存在するが、
マクロ・テッサーという名称は存在しない故のマニアック度
の高さだ。ただし、テッサー型構成のマクロレンズは
他社には存在している)

CONTAXでは、Tessar 45mm/f2.8の、そのAXでの使い方を、
「近接撮影で、設計基準外に画質が低下する恐れがある」
と、非推奨だったように記憶しているが、まあそれはあまり
関係が無い、高画質である事が写真の必須要件ではなく、
あくまで個人の好きにレンズを使えば良いだけだ。
実際に、銀塩時代に私は、AXでこの「マクロ・テッサー」を
極めて多く使っていた。

ただまあ、AXは今でも完動保有(動態保存)しているが、
今時では銀塩撮影を行うのは、かなり酔狂な話であろう。
また他の人が行おうとしても、AXは現代では入手困難だ。
_c0032138_16451440.jpg
そこで今回の使用システムのように、NEX-7等のミラーレス機
に搭載されているデジタルズーム機能を用いて、擬似的に
マクロ・テッサーを試してみるのも良いだろうし、あるいは
ヘイコイド付きのY/C(RTS)アダプターを使えば、CONTAX AXの
ABF同様に、繰り出しによる光学的な「マクロ・テッサー」が
実現する。
これを試してみるのもマニアックで面白いとは思うのだが、
この状態での描写力はたいした事は無い。CONTAXがAXの際に
注意書きで書いたように、あまり、こうした無茶な使い方が
出来るような高性能なレンズでは無い訳だ・・

---
さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選Mブロック「MF焦点距離違い」の記事は終了だ。

ちょっと変わったレンズばかりになってしまったカテゴリー
ではあるが、もしかすろとPENTAX SMCT55/1.8であれば、
決勝リーグに進出できる可能性はある(決勝およびB決勝
への進出50mmレンズは後日発表する)

次回の本シリーズ記事は、予選Nブロック
「AF焦点距離違い」となる予定だ。


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