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特殊レンズ・スーパーマニアックス(32)AFマクロ・レジェンド(後編)

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やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に紹介するシリーズ
記事。
今回の記事では、AFマクロ・レジェンド(後編)という事で
現代では生産完了となっていて、「レジェンド」とも呼べる
高描写力を持つAF一眼レフ用マクロレンズを5本紹介する。

なお、今回の前後編では、レンズの製造年代順ではなく
ランダムな順番での紹介となる。また、本記事では
本シリーズの過去記事との重複紹介レンズも多い。

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まずは今回最初のマクロ
_c0032138_10512704.jpg
レンズは、MINOLTA AF Macro 50mm/f2.8(初期型)
(中古購入価格 15,000円)(以下 AF50/2.8)
カメラは、SONY α700(APS-C機)

ミラーレス・マニアックス名玉編第4回(第4位相当)
等の記事で紹介の、1980年代後半のAF標準等倍マクロ。
_c0032138_10512709.jpg
「これぞ、本物のレジェンド」と呼べる銘マクロだ。
高い描写力に加えて、コスパが極めて良く、現代において
本レンズ(初期型)は軽く1万円を切る安価な中古相場で
入手できる。
この事実を持って、「ハイ・コスパレンズ名玉編」では
堂々の第1位にランクインしている。

銀塩時代から、友人知人に推薦した回数も多数あり、
私の周囲で、本レンズを所有していないかった人は
むしろ少ないくらいであった。

ただし、古いレンズ故に、色々と課題はある、
順次、そのポイントと回避の方法を述べていこう。

「手ブレ補正無し」に関しては、SONY α(A)機であれば
内蔵手ブレ補正が、こうした古いレンズであっても有効に
機能する。(注:α-7D等、コニカミノルタ機でもOK)
そして、そもそも、マクロレンズに手ブレ補正機能は
あっても無くても良い事は、前回の「前編」記事で説明
した通りである。

「超音波モーター無し」も、しかり。ここも前記事で
書いたように、近接撮影では、どうでも良い話である。
(むしろ、入っていない方が、ずっと有り難い)

「MFの操作性の悪さ」に関しては、ピントリング幅が
およそ4mmと狭い初期型(=MFを軽視した世情を反映)
であると、やや苦しいが、まあ、慣れれば問題は無い。
どうしても気になるならば、若干中古相場は上がるが、
NEW型、D型、SONY型のいずれかを選べば、後年の
機種になればなるほど、ピントリングの幅が広い。
なお、レンズ構成は、どのモデルでも同じなので、
あくまでMF操作性が気になるか否か?だけの話だ。

ちなみに、α機の機種によっては「DMF機構」が使え、
AFからMFへのシームレスな移行を可能とする為、
このDMFを上手に使えるのであれば(例:DMFはピントが
一旦合わないとMF移行できない為、合い難い被写体では
別距離でAFを仮ロックする等の高度な使用法で対処する。
なお、当たり前だが、そういう使い方をするならば、半押し
でのAEロックは「効かない設定」としておく必要がある)
・・そうすれば、現代の超音波モーターによるフルタイム
(シームレズ)MFと同等以上の操作性を得る事が出来る。
(今回使用のα700でも、一応DMF機能が使える。
ただし本レンズでは、DMF時に「MF表示」が出ない)

「画面周辺部の描写力低下」については、今回使用の
α700といった、APS-C機の利用で抑える事ができる。
なお、2010年代以降のαフタケタ機であれば、さらに
デジタル拡大(テレコン)機能により、画質無劣化で
画像をトリミングできるので、さらに画面中央部の
画質(解像力等)が良い部位のみを利用でき、かつ、
見かけ上の撮影倍率を高める事ができる。

この「スマート・テレコンバーター機能」を最大に
利用時には、いわゆる「最大撮影倍率」は、
1倍(等倍マクロ)x1.5(APS-C)x2(テレコン)で、
合計最大約3倍のマクロレンズとなる。
(注:今回使用のα700では、この機能は入っていない)

ただまあ、倍率が高ければ必ずしも良いというもの
でも無いが、作画の自由度が高まる事や、事後編集の
トリミングの作業コスト(手間)が低下する事は確かだ。
なお、いずれの場合にもWD(ワーキングディスタンス)
や最短撮影距離(約20cm)は、元のレンズのスペック
のままである。

「ボケ質の破綻」に関しては、本レンズはほとんど
出ないのであるが、破綻回避する必要は少なくても、
それでも最良のボケを得るポイントは存在するであろう。
ただ、これをコントロールする事は、α(A)マウント機
では少々難しい。例え、EVF仕様のαフタケタ機を
使ったとしても、それらは開放測光であるので、
一々絞り込みプレビューの操作が必要である。
(ただし、光学ファインダーに比べて、EVFは画面が
暗くならない為、はるかにこの目的には使い易い)

なお、「ボケ質破綻回避操作が不要」そして「あまり
極端なデジタル拡大も行わない」という視点で、
今回は、母艦として、それらがやりにくい(出来ない)
古いα700をあえて使用している。すなわち、母艦となる
カメラは、色々な機能が付いている事は勿論望ましいので
あるが、使用する目的に対して無駄となる機能を持つ事は
必ずしも効率的なシステムとは言えないからだ。

撮影前に用途を考察し、デジタル拡大やエフェクトが
必要だと想定するならば、αフタケタ機を持ち出せばよく、
それから、ボケ質破綻回避が頻繁に発生するαレンズを
使うのであれば、α一眼レフではなく、μ4/3機や
APS-C型ミラーレス機で、マウントアダプターを介して
使えば良い。その際にもα用レンズは、機械式レバーで
絞り値を制御する方式なので、絞り込み(実絞り)測光
となり、ボケ質破綻のチェックが若干やりやすい。
また、高価な電子アダプターを使う必要も無い訳だ。

さらには広角のαレンズを使うとか、画像周辺の画質を
チェックしたいならば、フルサイズのα一眼レフ又は
αミラーレス機を使えば良い。それで画面周辺が使い物に
ならなければ、それらの機種での各種デジタル拡大機能を
使うか、あるいは事後のトリミング処理で、画角を犠牲に
するか、画質を犠牲にするかを選べば良い。
そうしたチェックの後、課題があるならば、次回からは
APS-C機で使用すれば良い訳だ。

まあつまり、レンズによって、使うカメラは様々であり
万能の高級カメラを1台もっていれば、それで済む
(大は小を兼ねる)という訳でも無いのだ。
あまりに重厚長大な母艦に、小さいレンズをつけていく
等では、ハンドリング的なバランスが悪いであろう。
(ただし、大型機にパンケーキレンズを付けるなどで、
デザイン的な格好良さが出るケースもある)

デザインと言えば、
「本、初期型AF50/2.8のデザインの古さ」に関しては
もうどうしようも無い。30年以上も前で、かつプラスチック
成型技術が発展した時代の大量生産品的なレンズだからだ。
まあでも、「一周廻って格好良い」とも最近は思うように
なってきているので、このあたりは個人の好みであろう。
_c0032138_10512708.jpg
さて、こんな感じで、様々な弱点は個別に回避可能だ。
本AF50/2.8 Macroだが、まあ一言で言えば「銘マクロ」
であり、α(A)マウントユーザーであれば必携だ。

ただし、30年以上も前の古いレンズであり、現代の
安直なレンズに慣れたビギナー層では、使い難く感じる
事もあるだろう。上記で、たいていの課題を上げているが
まあ、それらは全て問題回避する方法があるという事だ。
(注:本ブログでは、レンズの評価において「問題回避」
が可能な項目については評価しない。例えば「AFが遅い」
というのは、高性能AF機を用いたりMF利用等で弱点回避
が出来る為、そのような項目は評価の対象にはならない)

なお、後継機種でも現代に至るまで、レンズ構成は全て
同じだと思われる、つまり発売開始時点から、既に完成
の域に近かったレンズだ。さもなければ、とうに様々な
改良が施されている(ただまあ、SONYにおいては2006年
にMINOLTAから引き継いだレンズ群は、外装変更を施した
だけで光学系には手を入れていない為、相当に古い時代
(1980年代~1990年代)の設計のままの商品も多い)

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では、次のマクロ
_c0032138_10514456.jpg
レンズは、TAMRON SP AF 90mm/f2.8 MACRO[1:1]
(Model 172E)(中古購入価格 20,000円)
カメラは、PENTAX KP(APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第31回記事等、多数の記事で
紹介の、1990年代後半のAF中望遠等倍マクロ。

本シリーズ記事でも、第8回「TAMRON SP特集」で
紹介している、重複するが、銘レンズ故に何度紹介
しても問題無いであろう。
_c0032138_10514492.jpg
言わずと知れた「TAMRON 90マクロ」である。
MF時代のF2.5版から、AF時代のF2.8版、そして
デジタル時代のDi版、高付加価値化時代のVC USD版、
いずれかの時代の「90マクロ」を所有していないという
マニアや中上級層は居るのだろうか? まあつまり、
「誰でも持っているレンズだ」という事である。

私は、F2.5版(Medel 52BB,1988年)と、F2.8版
(172E,1999年x2)の計3本を長年使用していて、
Di版(272E,2004年)以降は本記事執筆時点では
未所有であったが、後日これを2本入手している。
これで、各時代の光学系での90マクロが揃った事と
なったので、いずれ特集記事で比較検討してみよう。

Di版はデジタル機でのセンサー面の内部反射の防止で
レンズ後玉部にコーティングが加わっただけだ。
そして旧型でも、デジタル機での利用に特に問題点を
感じなかった為、積極的には購入に結びつかなかった。
近年のVC USD版(F004,2012年、F017,2016年)は、
手ブレ補正と超音波モーターで武装しているが、この手の
高付加価値型マクロはコスパ面で好きでは無い(前編記事
で詳細説明)のだが、研究目的で後日に購入している。

まあ、本「90マクロ」(172E)も、完成されたレンズ
である。長年に渡り、レンズ構成に変化は無かった。
予算に応じて、どれかの時代の「90マクロ」は必携だ。

ただ、完成されたレンズではあるが、完璧な性能とは
言い切れない部分もある。私が昔から気にしているのは
中距離の撮影でボケ質破綻が出る事だ。
これは、旧来の1/2倍マクロのF2.5版(52B等)から、
F2.8版(等倍、72EまたはMF版の72B)になった際に、
画質設計基準を近接側に変えたからだと思われる。

これはつまり、一般的な写真用レンズは、無限遠で
最良の性能(収差の低減等)が発揮できるように設計
されるのだが、その場合、近接撮影では画質が低下する。
しかし、マクロレンズの場合は、近接撮影において
最良の性能が出るように設計されているので、逆に
中距離や遠距離での描写力が低下してしまうのだ。

実は、銀塩MF時代のマクロレンズの多くは、通常レンズ
と同じく無限遠基準でに設計されているように思える。
(注:「近接基準」と「無限遠基準」は、非常に曖昧な
技術開発用語である為、個人的には推奨しない用語だが、
その件の詳細は長くなる為、本記事ではそのまま使う)
・・MFマクロレンズによっては、近接撮影をするよりも
中遠距離で撮影した方が良く写る場合もあるからだ。
TAMRONの旧F2.5版も同様であり、中距離あたりでの
ボケ質破綻が、新しいF2.8版よりも少ない。

もっとも、このあたりはメーカ側としては「確信犯」
であろう。他の記事でも良く書くが、1970年代頃
(最初の90マクロの52Bが発売された頃)の一眼レフ
ユーザーは交換レンズを殆ど買わず、持っていたとしても
28mm,50mm,135mmの3本が良いところであった。
その状況において、ユーザーが持っていない90mmという
中望遠、これは人物撮影にも向く、そしていざとなれば
1/2倍までの近接撮影が出来る、これはとても便利だ。
その特徴を示すため、52Bは「ポートレートマクロ」
というキャッチフレーズを持って発売された。

この製品コンセプトは見事に1970年代末の消費者層の
ニーズを捕らえ、そこから約40年間も続く「90マクロ」
の信頼への礎となった訳だ。
52B/52BBの「ポートレートマクロ」という呼び名は、
現代においてもなお、マニアの間では伝説として残っている。
(注:「タムキュー」という呼び名も良く使われるのだが
どの時代の物の話をしているのか?が不明なので非推奨だ)

もし最初期の52Bが、違うキャッチフレーズで発売されて
いたら、あるいは90mmでは無く別の焦点距離であったら
(例えば、既に当時のユーザー層の誰もが持っている
50mmや135mmで発売されていたら)、恐らくは現代に
至るまで続く「90マクロ」は、存在していなかったのでは
なかろうか。
_c0032138_10514420.jpg
ただ、F2.8版で、近接側に設計基準を移してしまったので
そこからはもう「ポートレートマクロ」というキャッチ
コピーは使えない。F2.8版で中距離人物撮影を行ったら
ボケ質破綻が出るし、そもそもF2.8ではボケ量も稼げない。

これは、1990年代では既に「ポートレートは85mm」が
常識となっていて(まあ1970年代のCONTAX(RTS)プラナー
85mm/F1.4がその走りであろう)各社から、F1.4級や
F1.8級の大口径85mmレンズが色々と発売されていた。

本格的な人物撮影を志向するユーザー層は、それらの
85mmレンズを買った訳であり、もう「ポートレートも
マクロも両方いけます」というコンセプトは通用しなく
なっていたのであろう。

という事で、F2.8版以降の「90マクロ」を使用する際は
中遠距離撮影を潔く諦め、近接撮影に特化して使う事が
得策であろう。そうした撮り方をするのであれば、
まず、描写力的な不満は感じる事は無いと思う。
さすがに、20年近くもレンズ構成を変える事なく通用
しつづけた、完成された「レジェンド・マクロ」である。

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では、3本目のマクロシステム
_c0032138_10520420.jpg
レンズは、OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 50mm/f2 Macro
(中古購入価格 22,000円)(以下、ZD50/2)
電子アダプター:OLYMPUS MMF-2(4/3→μ4/3)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

2003年発売の、フォーサーズ用の1/2倍マクロ。
標準(50mm)焦点距離だが4/3型センサー機専用の為、
換算100mm相当の中望遠画角、等倍マクロ相当となる。

本シリーズ第2回記事「OLYMPUS新旧マクロレンズ」
特集で紹介済みなので重複するので、今回は簡単な
紹介に留めよう。
_c0032138_10520488.jpg
長所としては、希少なF2級マクロである事だ。
銀塩時代から現代に至るまで、開放F2の大口径マクロは
極めて数が少なく、OLYMPUS、COSINA、TAMRON等で
数える程しかない。で、その殆どは1/2倍マクロだ。
(注:TAMRON SP60/2のみ等倍、ただしAPS-C機専用だ)

本ZD50/2も1/2倍マクロである、ただし現代のμ4/3
機で使う上では、様々なデジタル拡大機能のと併用で
機種によっては、撮影倍率を非常に上げる事も可能で
あり、撮影倍率のスペックの低さは気にする必要も無い。
むしろ、μ4/3機で、あまりに拡大率を上げすぎると、
超望遠レンズ並みの800mm画角となってしまう事もある。

本レンズと今回使用のOM-D E-M1においては、
通常の利用で、100mm相当の画角、フルサイズ換算で
等倍相当。デジタルテレコン利用で200mm、2倍相当だ。

描写力だが、逆光耐性が低く、フレアが出てコントラスト
が低下する。これの回避の為に、まずフード装着は必須、
さらに、あまりレンズを、あちらこちらに向けずに、
近接撮影に特化すればよい。さらに、可能ならば曇天や
雨天などの「フラット光」下で持ち出すのも良いだろう。

本ZD50/2は、防滴構造にはなっていないが、今回使用の
母艦のE-M1は防塵防滴仕様であり、天候耐性が高い。
別にE-M1で無くても、オリンパスのカメラやレンズの
多くは、昔から天候耐性に優れたものが多く、様々な
カメラやレンズを雨天でも良く使用したが、多少の雨に
濡れただけで壊れてしまうような軟弱なカメラは1台も
無かった。
まあでも、このあたりは雨天でカメラを壊さずに使う
経験やノウハウが必要な話であり、ビギナー層では無理で
あろう。でも、「では、そういう経験をいつ積むのだ?」
という話にも繋がる。
観光地やイベントなどに、高価なカメラやレンズを
持ってきているアマチュア層は、急に雨が降ったりすると、
蜘蛛の子を散らすように、さ~っ、と、一斉に居なくなる。

大事な高価なカメラを壊すのが怖いのかも知れないが、
どう見ても、ある程度の天候耐性がある高級機ばかり
である。私は雨が予想されると、逆に「壊れても良い」
消耗機を持ち出す事が多いが、それらは殆どが古い時代の
安価な機種であるから、防塵防滴性能など、何も無い。
でもまあ、雨天でも、それらの機体を壊さずに使っている
訳であり、ビギナー層は、せっかく壊れ難い高級機を使って
いるのに、「雨が怖い」などとは、むしろ矛盾のある話だ。
本当に「壊しても良い機体」を使って、ギリギリの環境で
酷使するような経験を多数積む必要があるかも知れない。
_c0032138_10520417.jpg
余談が長くなったが、本レンズにおいては前述のように
ある程度、撮影条件(環境)を整えてあげないと、
まともに写らない場合がある。ただ、その条件は決して
難しいものではなく、例えば、単に日陰で近接撮影を
すれば良いだけのような類だ。
そうやって撮影条件を整えてあげれば、本ZD50/2は
良く写るマクロとなる。

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では、4本目のマクロ
_c0032138_10522033.jpg
レンズは、SIGMA 105mm/f2.8 EX DG Macro
(中古購入価格 5,000円)(以下、EX105/2.8)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第41回記事等で紹介の
2000年代のAF中望遠等倍マクロ。
_c0032138_10522086.jpg
中古購入価格5,000円は破格であるが、これはAF故障品
をナンピン買いしたからだ。ここで言う「ナンピン買い」
とは、すでに本マクロと同型品をNIKONマウント版で
使用していたのだが、大変写りが良く、後年に異マウント
で買い足した次第なのだが、その際に故障品を買う事で
「2本の平均購入単価を大きく下げる事が出来た」
という次第である。


AFが全く動かない。EOS 6DでAFモードとすると
キューっと変な音がして、火を吹きそうで(汗)危険だ。

だが、MFで使用する上では何ら問題が無い。
マクロ撮影ではMFを多用する為、本レンズを使っていると
むしろ「マクロにAFなどは本当に必要なのか?」とも
思ってしまう位だ。

まあ、思ってしまう、ではなくて、これは事実であり、
私は、殆どのAFマクロレンズでは、MFで使う比率が
極めて高い。つまり、近接被写体で最短撮影距離付近で
ピントを合わせるのは、どんな優秀なAF性能を持つカメラと
組み合わせても、たとえレンズ側に各種モーターが内蔵
されていたとしても、まず無理な話だからだ。

こういう事は、自身で試してみれば容易に理解できる
筈である。というか、中級者以上においては、「常識」の
レベルであって、一々説明の必要も無い。

つまり「ピントが合い難い、カメラやレンズのせいだ!」
と言っているのは、初級者層だけ、という話であり、
そういう評価などを見かけたら、それはビギナー視点
での話なので、まったく聞く耳を持たなくても良い。
中級者以上であれば、AFが合わないと思ったら、速やかに
MFに切り替えて撮る、それで何も問題は無い。
あるいはもう最初から、合うか合わないかがわからない
AFに頼らず、全てMFで撮るか、だ。

この為、今回は、母艦としてMF用スクリーンEg-Sに
換装したEOS 6Dを使用している。他にもEOS機は色々
と持っているが、どれもスクリーンのMF性能が低くて
使い難いからだ。まあでもMF用スクリーンは「若干
暗くなる」という弱点もあるので、開放F値の暗い
超望遠ズームなどを良く使う機体では、ノーマルの
スクリーンのままとしている。
まあ、こういう意味においても、1台のカメラだけで
事足りるという事はなく、使用するレンズの特性に
合わせて複数のカメラが必要になる事は当然であろう。

今時のビギナー層は、高級機ばかりを欲しがるのだが、
それを買う予算があるならば、中級機を2台買って
さらに予算が余ったら、レンズ購入に充てるのが正解だ。
その方がずっと実用性が高くなる事は間違いは無い。

というか、もっと本筋を言うならば、ある機材購入予算
があった場合、その8割をレンズ購入に充てるのが
本ブログでの持論だ(1対4の法則) つまりレンズを
買って余った金額で、買える範囲のカメラを買う訳だ。

そうしないと、50万円のカメラに3万円の標準ズームを
付けるなど、極めてアンバランスで格好悪い状態になる。
何故ならば、写真の画質の大半はレンズの性能で決まる
為、それでは50万円のカメラの高性能が全く発揮できない。

それを買う予算があるならば、むしろ逆だ。10万円の
高性能単焦点レンズを5本買って、残りの3万円で
中級機または古い上級機を、中古で買えば良い。
きっとその方がはるかに写りが良く、かつ様々な被写体に
汎用的に高描写力が得られる機材ラインナップとなる。
_c0032138_10522020.jpg
余談が長くなったが、本EX105/2.8は、あまり目立たず、
好評価も殆ど聞こえてこないが、極めて描写力に優れた
銘マクロである。

私個人的には「TAMRON 90マクロ」とどっこいどっこい
(同等)の高描写力と評価している。

ただ、それについては「90マクロ」は初級中級層から
「神格化」されている為、「そんなバカな」という意見
となるだろう、でも買って使ってみれば、すぐわかる筈だ。
別に「90マクロ」だけが銘マクロでは無い訳だ。

さもなければ私も、たとえ「ナンピン買い」だと言っても、
同じレンズを2本も買う筈も無い、そういう事をするのは、
よほど優れたレンズの場合だけだ。
さらに言えば、本記事執筆後に、この時代のSIGMA MACRO
(EX DG版)の多くを入手している。それらの光学設計が
良質な事が良くわかってきたからでる。
(今後、長期の研究・検証後に記事に纏める予定だ)

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では、今回ラストのマクロシステム
_c0032138_10522723.jpg
レンズは、TAMRON SP AF60mm/f2 DiⅡ LD [IF]

MACRO 1:1 (Model G005)

(中古購入価格 20,000円)(以下、SP60/2)

カメラは、SONY α65(APS-C機)

2009年発売の、APS-C機専用・中望遠画角・大口径等倍
AFマクロレンズ。
_c0032138_10522762.jpg
こちらも過去記事で何度か紹介しており、本シリーズ記事
でも、第8回「TAMRON SP特集」で紹介している。
なお、シリーズ内等で紹介レンズが重複する場合には、
できるだけ使用カメラを変える等の措置を行っている。
勿論、紹介(評価)内容も、記事毎に全くまちまちであり、
「文章をコピー&ペーストして執筆終了」等にはしない。
すなわち、書きたい事があるから記事を書いているので
あって、記事を効率的に作る事が目的では無いからだ。

さて、本レンズは中古市場では人気が無い。何故ならば
APS-C機専用レンズだからだ。
フルサイズ人気が全盛の現代においては、APS-C機などは
初心者向けのシステムだと思われてしまうのであろう。
だけど、そう思っている時点で、すでに初級者である。

フルサイズやAPS-C、あるいはμ4/3や、さらに小型の
センサー機には、それぞれ長所短所があって、撮影の用途や
レンズとの組み合わせにより、最適のシステムは変化する。
だから、値段が高いフルサイズ機を1台持っていれば
それで全てに対応できる訳では無いのだ。

まあ、勿論ここらへんは中級者以上には「常識」の話だ。
だが、では何故、新品カメラ流通や中古市場が、そうした
初級者の志向性に左右されてしまうのか?と言えば、
現代のカメラ市場が、初級者により支えられているからだ。

何故ならば、カメラ市場縮退により、高付加価値化した、
つまり大きく値上がりした現代のカメラは、より以前の
時代を知る中上級層、マニア層、ベテラン層においては
コスパが極めて悪く感じ、魅力的な商品では無いからだ。

すなわち、中級者層以上であれば、前世代の、多少古い
カメラやレンズを使っても、別に不便を感じずに撮影が
出来てしまう、弱点を回避するスキルを持っているからだ。
つまり、そのスキルが無い初級層だけが、手ブレ補正が
入っていなくちゃ、高画素でなくちゃ、AFが良く合わなくちゃ、
連写が速くなくちゃ・・と、そういうものを欲しがるのだ。
何故ならば、そういう最新機能で武装しないと、「上手く
撮れない」という不安を常に抱えているからだ。

・・まあ良い、いずれ初級者層だって、その不条理さに
気づくタイミングが来る、そうなったら、機材使用の
志向性もガラリと変わるだろうから、何も問題は無い。

で、本レンズと、この話の何が関係するのか?と言えば、
本SP60/2は、APS-C機専用だ、だから現代では人気がなく、
よって中古相場も安価である。おまけに描写性能も優れて
いる。よって何も問題は無いのだが、その事実に誰も注目
しないのは、およそ10年前に発売のレンズであるからか?
だとしたら、いかにも、市場を見ている範囲が狭すぎる
というビギナー特有の状況ではなかろうか?という事だ。
(=過去の製品の歴史を知らず、今現時点で量販店等で
入手可能な製品の事しかわかっていない)
_c0032138_10522897.jpg
そもそも、本レンズが企画・発売された2000年代後半、
その時代のデジタル一眼レフはAPS-C機が主流であった。
だからTAMRONの看板商品「90マクロ」も、APS-C機では
135mm相当の、かなり長目の望遠的なマクロとなる。
これはビギナー層にとっては、少々使い難い。

まあ中上級層であれば、近接撮影においては、レンズの
焦点距離(画角)の差は、通常撮影ほどの差異が無い事は
知っているだろう。よって、別に望遠画角になったからと
言って使い難いとは思わず、むしろ撮影倍率が1.5倍相当に
なる事は嬉しい話だったのだ。

まあでも、当時であっても市場での主力ターゲットは
ビギナー層だ、だから90マクロは、なかなか売り難い。

TAMRONは、2000年代、およそ8年間も「90マクロ」の
新機種更新を止めてしまっていた。まあ画角の問題等から
時代的に「タイミングが悪い」と思ったのであろう。
では、その間は「どう繋ぐか?」という回答の1つが、
本SP60/2であろう。

90マクロのAF版初代の72E型からは、十数年の歳月が
流れていて、コンピューター設計や、異常低分散ガラス、
非球面レンズ(注:本レンズでは未使用)等の技術革新が
ずいぶんと進んでいる。
いくら「90マクロ」が「レジェンド」だからといって、
様々な新技術で武装したバリバリの若手である本レンズに
勝てるのだろうか? いや、それは正直難しいであろう。

事実、ある面においては、本SP60/2は、90マクロ
(272E型以前)をも上回る高い描写性能を魅せてくれる。
「APS-C専用だから」など、もはやどうでも良い話だ。
安価な本レンズであるから、コスパは最強クラスに近い。

ただ、ハイコスパ名玉編記事のランキングでは、本SP60/2
は、兄貴分のSP90/2.8に僅かに負けてしまった。

その理由だが、本レンズは「ちょっとやりすぎて」
しまっていたのだ。

まず、その描写特性だが、色収差や球面収差の補正低減に
注力した結果だろうか? 極めて解像力は高いが、
その分、「カリッカリ」の描写特性になってしまっている。

通常被写体であれば、こういう特性は「現代的である」とも
言えるのだが、マクロ撮影の場合はそうとも言い切れない、
「自然物」のイメージとは、もっと「柔らかい」のだ。

余談だが、小説/アニメの「戦闘妖精・雪風」の登場人物で、
電子工学の専門家で、木製のブーメランを作る趣味のある
「ジェイムズ・ブッカー少佐」は、かつて人工知能搭載の
「絶対に戻ってくる完璧なブーメラン」を作ったのだが、
それは、思いも寄らぬ方向から凄い速度で戻ってきて、
彼は怪我を負ってしまった。

アニメ版では、少佐の顔に傷をつけたAIブーメランが落下後の
地上で、まるで生きているかのように、LEDを明滅させながら、
羽根をピクピクと動かしているシーンが不気味で印象的であった。
(注:元々、この原作は、人間が「ジャム」と言う、異星の
未知で理解不能の機械生命体(?)と戦うストーリーである。
ジャムに対抗する為に人間は、ジャムとある意味同じとも言える
人間と機械の複合生命体の「雪風」を切り札とするのだ。
つまり、この「AIブーメラン」は「ジャムと人間の戦い」の
メタファー(暗喩)となっている、だから不気味なのだ)

少佐は「機械が空を舞うのは硬すぎる」と言って、その後、
また、木製のブーメランを削る日々を過ごすのであった・・

で、なんだか、本SP60/2のネイチャー被写体の描写傾向は、
「雪風の人工知能(AI)ブーメラン」を連想してしまう。
すなわち、本レンズも「自然を撮るには硬すぎる」訳だ。

そして操作性、本レンズでは新しくフルタイムMF機構を
搭載したのだが、これは無限回転式ピントリングだ。
(注:距離指標は持っているが、停止感触が殆ど無い)
この機構がMF操作には全く向かない事は、様々な記事で
述べている通りである。
この点で、旧来のF2.8版90マクロ(Di仕様以前)より
MF操作性が悪化していて、近接撮影に適していない。

ただまあ、F2の大口径である事と、ボケ質破綻が少ない
事は、90マクロよりも優れている点である。
_c0032138_10522849.jpg
本レンズの弱点を回避しようとすれば、AFを用いて
近接撮影を行わない事だ、中遠距離に特化すれば良い。
そうであれば、旧来のF2.5版90マクロのように
「ポートレートマクロ」のような用途には適している。
ただまあ、カリッカリ描写だから、たとえポートレートを
撮るとしても、女性よりも男性被写体向けかも知れない。

本SP60/2の総括だが、勿論悪いレンズでは無い、
ただ、上記のように、なかなかクセのあるレンズだ、
この特性を良く理解し、上手く使いこなせるのであれば
コスパは大変良く、文句のつけようも無いであろう。

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さて、今回の記事「AFマクロ・レジェンド(後編)」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


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