過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介のマニアック
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回も、未紹介レンズを3本取り上げるが、それに加えて、
過去記事で紹介済みレンズを1本、比較の意味で追加する。
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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
(中古購入価格 28,000円)(以下、EX70/2.8)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2006年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。
(注:正式な型番は良くわからない、MACROとかの部分的
な名称が、どの順番で入るか不明なのだ。
一応ここでは、SIGMAのサイトでの旧製品の項目を参考に
しているのと、例によっての本ブログ独自での共通表記法
をミックスしたものだ)
現在、このレンズには後継の新型がArt Lineに属して
販売されており、そちらは、本シリーズ第24回記事等で
紹介済みだが、比較の為に新型も後で再掲しよう。
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さて、本レンズは初出の際の紹介記事(デジカメWatch)
で「カミソリマクロ」と称された。
言い得て妙ではあるが、残念ながら本レンズは、あまり
所有者の多くない「セミレア」レンズとなり、その呼称は
その後の時代でもマニア層等には広まっていなかった。
2009年頃、知人が本レンズを所有していた。私はそれを
借りて使った訳では無いのだが、見た目の仕様や知人が
撮った写真を見ると、なかなか良さそうであったので、
購入機材の候補としていたのだが・・
その後、長らく中古市場をウオッチしていても、殆ど
(全く)本レンズを見かけない。
「よほどレアなレンズなんだろうなあ・・」と思いつつ
入手が出来ないまま、9年の歳月が流れた。
2018年になって、本レンズの後継機種である「SIGMA
70mm/f2.8 DG | Art」が発売されると、私はそちらは
すぐに入手したのだが、そうなると逆に旧型との違いが
物凄く気になるようになってしまった(汗)
これは何としても旧型を入手しなければならない。
・・と、やっとその年に、旧型の中古が市場にポツポツと
数本だけ出てきた。恐らくだが旧型のユーザーが新型に
買い換えた事での下取り品であったのだろう。
そして私も無事旧型を入手、セミレア品扱いであったので
あろうか?中古価格は28,000円と、想定購入価格より
僅かに高目な印象(2万円台前後を想定)もあったが、まあ
不条理な程に高価な相場では無い、これは「買い」であろう。
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SIGMA製のマクロレンズの購入は、これで7本目となる、
ただ、いずれもいわくつきだ。
いずれ「特殊レンズ・超マニアックス」記事でまとめて
解説予定だが、本記事でも簡単に述べておこう。
1980年代
・SIGMA 90mm/f2.8 Macro(現在未所有)
1989年頃に発売された小型軽量のAFハーフマクロ。
このレンズは、当時あるいは少し後の時代のTAMRON製
90mmマクロ(F2.5版、F2.8版)と比較して描写力がかなり
落ちると私は評価し、短期間で譲渡してしまっていた。
描写力の課題はSIGMAでも意識していたのであろうか・・
名マクロとして定評のあるTAMRON 90マクロと比較される
のは、さすがに少々しんどいと思われる。
以降の時代、SIGMAは90mmのマクロを1本も発売していない。
1990年代
・SIGMA AF MACRO 50mm/f2.8
SIGMA AF MACRO 180mm/f2.8
発売年等詳細不明、この頃のSIGMA製レンズの詳細な情報は
殆ど残っておらず、おまけに正式な型番すら不明である。
冒頭にも書いたが、SIGMAのレンズ自体には、断片的に
型番の一部が順不同で書かれているだけであり、結局
正式名称がどのような順番となるのか? 良くわからない。
いずれもCANON EFマウントでの購入、特にAF50/2.8は
描写力が高く、銀塩時代には愛用した。
180/2.8の方はハーフマクロながら、非常に大型で重い
レンズであったので、あまり活躍の機会が無かった。
この課題もSIGMAは認識したのか? 後年には口径比を
F3.5に落とし、若干小型軽量化されている。
最大の課題は、これら1990年代製のSIGMA製のCANON EF
マウント用AFレンズは、2000年頃迄のCANON EOS銀塩機
であれば使用可能だが、2000年以降の銀塩/デジタルEOS
機に装着すると、エラーとなって撮影不能になる事だ。
よって、これまで使えていたSIGMA製レンズは新しいEOSに
買い替え得ると使えずに、大変困った事になる。
これは、サードパーティー製のレンズの台頭を良く思わない
CANON側がレンズとの通信プロトコル(方式)を意図的に
変更したのだと十分に推測できる。(=排他的仕様)
まあ、ユーザーの事を全く考えない非情な措置であり、
カメラ史上での汚点であると思う。(まあ「デジタル時代
を見据えた機能(仕様)追加である」といった理由はある
かも知れないが、それとて、CANON純正レンズでは古い物
でも互換性があったので、他社製品を排除した事は一緒だ)
結局、これら1990年代SIGMAレンズは、2000年代を通じて
使用できず、腹がたって捨ててしまおうとも思ったが、
別にSIGMAに非は無い。後年には新しいCANONプロトコル
に対応したSIGMA製レンズが出てきて、その後の時代も
SIGMA製レンズとEOS機とでの使用環境は何ら問題無い。
やっと旧レンズが使えるようになったのは、2010年代
からのミラーレス時代であり、絞り羽根内蔵等のEOS用
マウントアダプターで、これらのレンズは無事復活した。
ただし、絞り羽根内蔵アダプターは、光学的に言えば
「視野絞り」であり、これは露出値(光量)のみを調整する
効果があるが、通常のレンズ内絞り(開口絞り)とは
効能が異なる。よって、このアダプター・システムでは、
ボケ量およびボケ質の細かい制御が、ほぼ不可能となる。
加えて、1990年代のSIGMA製レンズは、コーティング又は
バルサム(レンズを接着する材料)の劣化により、後年に
おいて描写力が大きく低下する場合がある。久しぶりに
持ち出してみると、フレアっぽい描写になってしまった
ケースが、私の所有範囲ですら3~4件発生しているのだ。
まあ、依然困ったままであるが・・ 20年を超える期間、
色々と苦労して使った事で愛着も沸いてきて、なかなか
新型レンズに買い換える気も起こらない。
2000年代
・SIGMA MACRO 105mm/f2.8 EX DG x2本
例によって正式名や詳細情報は不明だ、まあ中望遠AF等倍
マクロであるが、超音波モーターも手ブレ補正も入って
いない旧型である(注:現行品は、それら付加機能を搭載)
しかし、このレンズ、大変良く写る。気に入ったので
異マウントで同じ物を2本所有している位である。
詳細は過去記事でも何度も紹介しているので割愛しよう。
・SIGMA MACRO 50mm/f2.8 EX DG(後日紹介予定)
・SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG(本レンズ)
2010年代
・SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM
(本記事執筆後に購入、後日紹介予定)
・SIGMA 70mm/f2.8 DG | Art
本シリーズ第24回記事等で紹介、本記事でも再度紹介。
さて、所有しているSIGMA製マクロを非常にざっくりと
紹介したが、基本的に、どのレンズも高い描写力である。
一般的には、マクロと言えば、TAMRONやOLYMPUS製が高性能
であると連想するとは思うが、SIGMAのマクロも捨てがたい。
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さて、本EX70/2.8の話題に戻ろう。
長所としては、「通り名」の「カミソリマクロ」にも
あるように解像感が高い所だ。
しかし、この点に関しては、他のSIGMA製マクロの多くが
同様の特徴を持ち、本レンズだけの長所であるとは言い難い。
(多数のSIGMA製、または他社マクロレンズを所有していれば
その事は簡単に認識できるであろう。たった1本のマクロを
見ただけでは、その特徴を言い表すのは無理があると思う)
レンズ設計上、球面収差とコマ収差の両者を優先的に補正
した、いわゆる「アプラナート」型の光学設計の場合では、
解像感に優れるが、ボケ質に劣る事が常である。
しかし、本レンズの場合は、ボケ質の破綻は起こり難く、
優秀な設計である事が見て取れる。
総合的には、描写力上での不満点は殆ど無い。
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では、弱点は何か?と言えば、あえて上げるならばAF精度
であろうか? カメラ(デジタルEOS機)を色々と変えて
試してはいるが、どの機種を使ったとしても、AFでは良く
ピントを外してしまう。
なお、同じEFマウントでの同時代のSIGMA製マクロでは、
前述の105mm/f2.8を使用しているが、実はそれはAF故障品
で極めて安価に買ったものだ。MF100%の使用法では、全くと
言っていい程不満を感じていなかったので本レンズの場合も
いっそ「AFは使えないもの」と腹をくくって、MFオンリーで
使用すれば、その弱点は解消できそうだ。
その為もあって、今回は、MF用スクリーンに換装済みの
EOS 6Dを使っている訳である。
AF問題を除いては、チラリと前述したようにコスパがやや
悪く感じる。いくら優秀なレンズであるとは言え、マクロは
基本的に、どれも非常に良く写る。
・・であれば、2000年代マクロであれば、他の同等性能品
でも2万円程度の中古相場感覚となるので、28,000円は、
やや高額であったと思う。
これまでは希少なレンズであったが、新型の後継機の登場で、
やっと少しだけ中古流通が活性化している、見かけたら購入
検討対象とするのも悪く無いであろう。
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では次のレンズ、これは比較紹介(再掲)だ。
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レンズは、SIGMA 70mm/f2.8 DG | Art
(中古購入価格 44,000円)(以下、A70/2.8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
2018年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。
上記EX70/2.8の正当な後継機種だが、実に12年ぶりの発売
となっている。その間、カメラ側ではミラーレス機が登場し
本レンズの対応マウントも、一眼レフ用に加えて、SONY FE
マウント版が販売されている。
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2013年に、SIGMAは製品ラインナップを使用目的別に整理。
これは、市場縮退による高付加価値化戦略の一環でもあり、
これにより多くのレンズは旧製品よりも大幅に値上げされて
いる。最も付加価値が高い(つまり、高価な)カテゴリーは
Art Lineであり、本A70/2.8もそこに属するのだが、定価は
他のArtレンズよりも半値から1/3程度と安価である。
そして、本レンズがArt Lineとしては初のマクロレンズだ。
長所や短所は、本シリーズ第24回記事で述べているので
詳細は割愛する。
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本レンズも描写力は高いが「新型のカミソリマクロだ」と
称される割には、あまりキリキリとした解像感は感じられず
むしろ2000年代SIGMA製マクロの方が、その称号にふさわしい。
外観や操作性は現代的なデザインと仕様となっているのだが
現代風の無限回転式ピントリングとなっている事で、MF操作に
適さず、この点、マクロレンズとしては大きな欠点だ。
いつもこの点は嘆いているのだが、現代においてはメーカーも
ユーザーも正しいMF撮影のノウハウを持っていないのであろう。
まあでも、そうだとしても、古いMF(マクロ)レンズで大量の
撮影をこなせば、そのあたりは自力でもわかって来る事だ、
つまり、殆ど誰もMFで撮っていないのだろう・・
マクロ(近接)撮影の場合、MFが絶対的に高効率であるのは
間違いない、ぜひともMFでの大量の撮影を行う事を推奨する。
MFの弱点はさておき、AFもNGだ。SONY α系機種では、どれも
AF速度も精度も出ない。本体側の像面位相差AFに正しく対応
していないのではなかろうか?と疑っているのだが、レンズの
ファームアップを期待したい所だ。
なお、従前の記事で「本レンズは、αミラーレス機の一部で
デジタルズーム機能が効かない」と記載したが、2018年末の
ファームウェアVer. 02以降で、この不具合は解消されている。
それと、近年のSIGMA製レンズでは、USB Dockという別売
付属品を買わないとレンズのファームアップが出来ずに
「鬱陶しい」と思っていたが、SONY機用のマウントであれば
PCからUSB接続でαカメラを経由したアップデートが可能だ。
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さて、本記事では、旧型EX70/2.8と、新型A70/2.8の
スペック上の比較もしておこう。
旧型:SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
・発売年 2006年
・フィルター径 φ62mm
・最短撮影距離 25.7cm
・重量 525g
・レンズ構成 9群10枚 絞り羽根9枚
新型:SIGMA 70mm/f2.8 DG | Art
・発売年 2018年
・フィルター径 φ49mm
・最短撮影距離 25.8cm
・重量 515g
・レンズ構成 10群13枚 絞り羽根9枚
12年の時を隔て、新旧両レンズの印象は全くの別物であり
特に新型はフィルター径が小さく、「細くて長いレンズ」
という印象がある。旧型は、なんと言うか?「ビア樽」型だ。
例えば他社の、新旧マクロアポランター、のように新型が
圧倒的に優れている、という印象は受けない。
特に新型でのMF操作系の悪化が、かなりの弱点となる。
なお、新旧とも「FULL/LIMIT」の切換スイッチを持つ。
昔から現代に至るまで、多くのAFマクロレンズで、この切換
機構を備えているが、カメラのAF精度が未成熟であった
1990年代頃に主に必要とされた仕様であり、現代のマクロ
レンズでは、もう、あまり有益な機能では無いかも知れない。
特に本レンズでは距離指標を持たない無限回転式の為、
「FULL/LIMIT」が機械的な制限を設ける2段切換機構では無く、
電子的な3段階切換スイッチによるものなので、誤操作し易い
危険性がある、いっそ廃止してくれてもあまり問題は無い。
(ただまあ、マクロレンズ全般での最短撮影距離から無限遠
までのAF遷移時間は、たとえ超音波モーター搭載最新マクロ
であっても、とても遅く、そのイライラを緩和する為には、
LIMITスイッチは有効だ。でも、MFが自由に効く仕様にして
くれるのであれば、次に撮る被写体距離を想定して、MFで
事前にピントを推定で動かし、AF速度の課題を解消できる。
無限回転ピントリング仕様では、これが出来ないから不満だ)
本A70/2.8は、決して悪い性能のレンズでは無いが、本シリーズ
第24回記事でも書いたように、様々なクセの強いレンズだ。
あまり簡単には、誰にでも薦められるレンズでは無いと思う。
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さて、次のシステム
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レンズは、COSINA AF ZOOM 70-210mm/f4.5-5.6 MC MACRO
(ジャンク購入価格 300円)(以下、COSINA70-210)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)
出自不明、恐らくは、1980年代末頃のAF望遠ズーム。
コシナ製のAFレンズは、かなり稀である。今となっては調べる
手段もあまり無いが「数える程しか無かった」と記憶している。
これは現代のフォクトレンダー/カールツァイス時代に至る迄
同様で、ほぼ全てがMFレンズであり、これはコシナの開発・
製造のプロセスが、MFレンズに特化しているからであろう。
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で、本レンズはMINOLTA αマウントであり、「LICENCED BY
MINOLTA」とレンズに書かれている。これはコシナ側が懇願
して技術供与を受けたのか? いや、想像だが恐らくは逆で
MINOLTAが「αショック」(1985年)以降、他社を圧倒して
いた「α」のポジションをさらに磐石とする為、「α陣営」を
増やそうとして、当時ニュートラル(中立)なOEMメーカーで
あった「コシナ」を引き込もうと、技術供給を行ったのかも
知れない。
もしそうだとすれば、当時としては、そうした「オープン戦略」
は先進的であろう。時代的に他社は、全て「クローズ」な
排他的思想が殆どであったからだ(前述したCANONのプロトコル
変更もしかり、排他的思想だ)
現代では、先端技術分野については、できるだけ「オープンな
思想」を持つ事が、企業から研究員・技術者に至るまで望ましい、
という常識になっている。何故ならば、テクノロジーが複雑かつ
高度になりすぎていて、1人とか1企業の単位で技術革新が
行える筈も無いからだ。皆が知恵を出し合って、新技術を
発展させなければならない。
もう19世紀の「エジソン」のように、「発明王」が出て来る
世情では、とうに無くなっている。
でも、そうなったのは、CPU、LSI、デジタル技術、Web、AI
等の新技術が急速に発展した、この数十年間での話である。
だからまあ、1980年代にオープン思想を持つ事は非常に
先進的であり、まるで電子楽器分野での「MIDI」(1980年代)
のような話だ。(その時代から既に、各社の電子楽器は
同じMIDIプロトコルに則って、連動して動かす事が出来る)
その後の時代でも、世の中の「偉い人」等は、この技術分野
における革新の仕組みが理解出来ておらず、いつまでも自社の
利益を第一に優先する排他的なクローズ思想を持つだけだ。
私は近年では、カメラに限らず様々な市場分野の製品において、
「クローズ思想」の強いメーカーの製品は、一切購入しない
ようにしている。つまり「クローズ思想」そのものが「製品の
購入を阻害する理由」となっている消費者も居る、という事だ。
これは商売優先のメーカーも良く認識しておく必要があるだろう。
さて、本レンズの話に戻る、これはジャンクレンズではあるが、
後玉に少しクモリがある程度で、他の動作は異常が無さそう
だったので購入したが・・・ 早速問題点が発生。
本レンズとα65(2012年)との組み合わせはで、AFと絞りが
動作しない。試しに他機に装着するとSONY α700(2007年)
やα77Ⅱ(2014年)であれば問題無く動作する。
古い機種も新しい機種でも動くのに、α65だけ動作しないと
いうのは何故なのだろうか? レンズとの通信プロトコル上の
問題である事は確実であろうが、まさかα65が中級機であるが
故に、他の上級機と差別化しているという事は無いだろうが・・
(つまり、安い機種では、使えるレンズを限定してしまう等の
意地悪を行う。「気に入らなければ、高いカメラや純正レンズ
を買え!」という仕掛けだが、そこまでは悪意が無くても、
下位機種の性能や仕様を色々と制限したり、他社システムとの
連携を拒む事(=仕様的差別化、排他的仕様)は、まあ現代の
デジタル時代では、ビジネス上では当然の措置であろうが・・
そうだとしても、何だか「とても残念な」製品戦略だ。
前記の「オープン思想」には完全に逆行している事になる。
そういう細かい意地悪を重ねてカメラの販売シェアを伸ばした
のだとしたら、外から見ていても、気分の良い話では無い。
いつの時代でもそうだが、「偉い人達」の思考プロセスは
決して褒められたものでは無い事が、大変良くある話だ)
さて、確かに面白く無い話だが、やむを得ない。α65の使用
を諦め、「オフサイド状態」(=カメラが無駄に高価過ぎる)
になるが、SONY α77Ⅱで試写を続行する事にしよう。
![_c0032138_09172898.jpg]()
カメラは変わって、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
さて本COSINA70-210だが、平凡なスペックの普及望遠ズーム
である。恐らく発売時の価格も非常に安価であっただろう。
技術力が高いコシナではあるが、まずは市場戦略上の様々な
制限により、原価の高い(=性能が良い)レンズを作りにくい
状況にあった。それから(望遠)ズームレンズの設計における
当時の技術的限界というのもあって、個人的な分析においては、
1990年代になってからでないと、望遠ズームの、特に望遠側
での収差(画質)は、改善されていかない。
まあ、これらは他の記事でも良く書いている事であり、
それぞれ事情・理由があるので、そこを責めるのは筋違いだ。
![_c0032138_09173518.jpg]()
で、案の定、本レンズは、望遠側での諸収差の増大による
解像感の低下、低コントラスト、低い逆光耐性によるフレア感
等の様々な弱点が顕著だ。
例によって様々な弱点回避技法を駆使して使ってはいるが
それも限界がある。
![_c0032138_09173543.jpg]()
私の近年のジャンクレンズの購入目的は、その殆どが、
そうした弱点回避スキルの向上の為の研究およびトレーニング
が目的となっている。レンズ性能に色々と問題点があった方が、
スキルアップの為には、むしろ適切な「教材」となるのだ。
そのレッスンの為の、ジャンク価格(300円~2000円位)
の出費は全く惜しく無い。
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次は今回ラストのレンズ
![_c0032138_09174109.jpg]()
レンズは、mEiKE 12mm/f2.8
(新品購入価格 27,000円)(以下、Meike12/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
近年(2018年?)に発売された、中国製のAPS-C型対応
ミラーレス機用MF超広角単焦点レンズ。
「mEiKE」と、大文字小文字が入り乱れたロゴマークで
あるが、ややこしいので、以下はMeikeと記載する。
つい先年までは、このブランドはNEEWER(ニーワー)とも
聞いていたのだが、Meike(メイケ)は、交換レンズ用の
新たなブランド名だろうか?
(注:NEEWERとMeike製品は、一部、ずいぶんと品質が
異なり、同じメーカーの製品とは思えない場合もある)
まあ、例によって中国製レンズは謎が多い。
なお、近年のコロナ禍における中国政府等の施策に
各方面から批判の声が出ていたが、中国製品の話とは
また別問題だ。政治の話と、製品や技術の話を混同する
のはどうか?とも思う。
古くは1980年代、フランスが対日貿易赤字の対抗策
で日本製ビデオデッキの輸入を制限した事があったが、
その際にフランスの民衆が日本製のビデオデッキを沢山
破壊している映像を見た事がある。それを見て思った事は
やはり、「あちゃ~、”政治”と”製品”は全く別モノ
なのになぁ・・」という技術屋視点での感想であった。
以下、Meikeレンズの技術や市場背景の話を進める。
![_c0032138_09174100.jpg]()
何故、2016年位から数年間で中国製レンズの急速な台頭
が起こったのか? と言えば、これは、日本製レンズが
市場縮退により高付加価値化してしまった事が要因であり、
すなわち国産レンズは、今や高すぎて、かつ価格が性能に
見合っていない、すなわちコスパが極めて悪い。
まあ、国内市場の様々な変化によって、国内メーカーは、もう
低価格帯のコスパ良い製品を作れるような状況では無いから、
そこに中国製(等)レンズの「付け入る隙」が出来た訳だ。
まあ、これは当たり前の市場原理、ビジネス戦略であろう。
初級中級層や初級マニア層では、これらを「中華レンズ」と
呼んで、「安かろう、悪かろう」と馬鹿にしながらも
試しに買ってみて、「思ったより良く写る、びっくり!」
等と言っている状況だが、ここも当たり前の話だ。
新鋭中国製レンズの一部では、数十年前の非常に完成度の高い
レンズ設計を探して来て、そのレンズ構成を殆どそのまま、
又はフランジバック長等を、少しだけ改善後、さらに例えば
2/3程度の寸法にダウン・サイジングして、イメージサークル
の小さいミラーレス機用(APS-C機用)にアジャストしている。
(注:メーカーによっては、その戦略を取らない場合もある)
![_c0032138_09174883.jpg]()
本レンズは、超広角で、10群12枚構成との事。
レンズ構成図が見当たらない為に詳細は不明ではあるが、
このあたりの多群構成は、その昔のカール・ツァイスの
高性能広角レンズ「ディスタゴン」構成とかの転用では
なかろうか?
他の「七工匠」等の中国製レンズも同様な設計手法であり、
七工匠25mm/F1.8(本シリーズ第26回記事)は、5群7枚
の変形ダブルガウス構成であり、これはまあ、あえて
ざっくりとした言い方をすれば「殆どツァイスのプラナー」
である。
こうした、古い時代の完成度の高いレンズ構成を流用する
事については、仮に特許等があったとしても、とうに切れて
いるだろうから、何も問題はあるまい。
そうだとすれば、新設計等に係わる開発コストが限りなく
ゼロに近づくでは無いか・・
中国等でも自動光学設計ソフトは普及している事であろう、
ソフトでゼロから光学設計をすると、とてつもなく複雑で
高価な構成を提示してくるのだが(現代の国産レンズが
それだ)ベースとなる基本設計があって、それを現代の
多種多様な硝材等を使用した小改良をする程度は造作も無い。
よって、七工匠25/1.8の紹介記事では、そのレンズの事を
「ジェネリック」と称した。つまり、ジェネリック薬品も
既に世の中にある薬品の成分をコピーして製造する事で
新薬の研究開発や検証(臨床)・認可にかかる膨大な費用を
削減でき、安価に作れる訳である。
レンズも同様、全くの新規のレンズを設計し製造するには
莫大な費用がかかる。まあ、それでも沢山売れるならば
開発費や金型費等の製造コストを多数の製品に振り分けて
安価になるのだが・・(これは「大量生産」という意味であり
かつて数十年前に、日本の製造業が得意とした手法である)
もし市場が縮退して、製品の数があまり出なくなると、
個々の製品に乗せる償却費用が大きくなり、とんでも無く
高いレンズとなってしまう訳だ。
・・なので、30万円とか50万円とかの、不条理なまでに
高価なレンズが市場に出揃ってしまう。
それでも、初級中級層や初級マニア層等の一部では、そうした
一般常識的な「市場原理」が全くわかっていない状態において、
「それだけ高価ならば、きっと素晴らしい性能のレンズに
違い無い」と大誤解をして、無理をしても買ってくれるので、
かろうじて現代の縮退したレンズ市場は崩壊せずに、なんとか
ビジネスを継続できている訳だ。
![_c0032138_09174846.jpg]()
さて、では具体的に本レンズの長所短所はいかに?
長所だが、まず勿論コスパが良い事である。
ただ、他の格安中国製レンズに比べると、少々割高感は
あるが、まあ、そこは超広角の付加価値で相殺できる。
(注:最近では新品相場が大きく下落している。やはり
中国製レンズとしては高価過ぎる印象が強かったのであろう)
「FUJI Xシステムを成立させるのは難しい」と従前の
記事でも何度か書いている。まあつまりFUJI純正レンズは
種類が少なく、かつ市場シェアも小さいので、レンズ単価
が高くなってしまう。同等の性能を持つ他社レンズよりも
2倍前後も高価ならば、純正レンズを買い難い。
また、マイナーマウントに向けては、レンズメーカーも
製品を販売しない、前述の開発費等が償却出来ないから
面倒なのだ。
・・であれば、こうした新鋭海外製レンズを使用する等で、
FUJI Xシステムの基本ラインナップ(広角から望遠までを
実用レベルとして揃える事)を充実させるしか無い。
「全体の作り」や品質等も良く、むしろ国内の低価格帯レンズ
は、さまざまなコストダウンが市場戦略上で必須の状況なので
(=つまり、儲けを出さないとビジネスが継続出来ないから)
こうした新鋭海外製レンズの方が、はるかに品質が高く、
高級感がある。(=さも無いと、”安かろう、悪かろう”
では、本当に売れなくなってしまうからだ)
収差の類も少ない。超広角レンズで良く問題になる、
「歪曲収差」「周辺減光」「ゴースト」のいずれも少なく
及第点だ。ただし、僅かな「像面湾曲収差」が出ている
模様だが、これは実用上では気になる事は無いであろう。
短所であるが・・
これが特に見当たらない、ただ、非常に細かい点を言えば
最短撮影距離は10cmの仕様だが、そこまで距離指標は無く
15cmが最低で、実際の最短撮影距離は曖昧だ。
(追記:後日入手した他のMeike製レンズでも、距離指標
の問題点があった。詳細は不明だが、何かの製造技術的な
課題が背後に存在している可能性が高い)
ピントリングはやや重い、まあでも気になる程では無い。
他記事でも良く「ディスタゴン構成はピントが分かり難い」
と書いているが、本レンズもその傾向がある。近接撮影で
被写界深度が浅い場合、EVFでもピーキングでも、やはり
ピントの山が良くわからない。
結局、パンフォーカス撮影とする場合が多いので、被写界
深度目盛りがあると嬉しいが、残念ながら、それは無い。
説明書は中国語であり、一応日本語のものも付いているが、
「絞りを解放すると」といった、まるでビギナーのような
誤記がある。(勿論、正しくは「絞りを開放にすると」
であり、”解放”では”解き放つ”という意味だから、
まるで絞りの部品がレンズから外れて、すっ飛んでいって
しまいそうな表現だ・・汗 日本のビギナー層でも、その
誤記は極めて多いが、まあ、中学生以下レベルの国語能力だ)
ダウンサイジング設計は、少々光学的に無理が出る場合も
あるようで、本レンズに限らず、中国製レンズ全般で
画面周辺収差の増大、歪曲収差の発生、周辺減光等の
課題が生じる場合もあるが、本レンズでは僅かなレベルに
良く抑えられている。まあ、そもそも、元にした設計が
数十年前の物であれば、それら旧レンズに元々存在していた
弱点だったのかも知れない訳だ。
もし、あまりに気になるような場合は、周辺をカットして
使用する方法論もある。例えば簡便には、これらのレンズは
APS-C機対応イメージサークルだから、μ4/3機で使えば
周辺は写らない。またはトリミング編集するか・・だ。
歪曲収差で無ければ、絞ると改善する収差が殆どであるし、
歪曲収差は高機能編集ソフトならば、簡単に補正できる。
まあ、元々広角レンズが欲しくて買っているのでトリミング
は心理的に行い難いとは思うが、それも、写真での構図とか
意図とか目的によりけりであろう。
つまり本レンズに限らず、機材全般では、色々と考えて使う
事で、その弱点を回避するのが良い、という事だ。
それが出来ずに、カメラやレンズの文句ばかり言っているのは
工夫して使いこなす事が出来ない初級中級層だ、という事が
明白となる。練習や研究でスキルアップして、そこから脱出
しなければならない、その向上心が無ければ趣味は成り立たない。
余談だが、ビギナー層による「評価」の問題点を挙げておく。
ビギナー層は基本、自身の買った機材の悪口を言わない。
安価な中国製レンズでも「意外に良く写るよ」という評価が
大半だ。何故ならば、自身の消費行動(購入倫理)を否定
しない為であり、意識・無意識にかかわらず、もし自分が
買った「モノ」に満足がいかなかったら、「失敗した!」と
なって心理的に打撃を受けてしまうからだ。だからそれを
避けるためには「意外に良いよ」としか言わない。
これは、あらゆる「モノ」の購入時に同じ心理が発生する。
そして、「モノ」が多少わかっていて、その長所短所が自力で
判断できる中級者層となると、今度は、その買った「モノ」の
欠点ばかりを責めたてるようになる。
その心理は「期待して買ったのに、期待はずれであった」
という事だ。まあ、これもカメラやレンズに限らず全ての
商品分野で同様だし、商品でなくても、例えば、恋愛において
「美人だと思って、苦労してクドいたのだが、無事お付き合い
(や結婚)する事になったら、とんでもなく性格が悪かった!」
という話も世の中には大変多い事だろう。
でもこれは別に、相手が「悪女」だった訳でも無いケースも
大半であり、つまり男性側が相手を理想的な状態に迄「美化」
してしまっているから、その理想のレベルに対して、たとえ
些細な事であっても、皆、欠点として目についてしまう訳だ。
だが、これも外から見れば「あてにならない(信用に値しない)
評価内容」である。
こうした初級中級者的な評価方法は、多分に個人の「思い込み」
が入っている、これらを全て冷静に判断する為には、かなりの
経験値等のスキルが必要であり、そうなればもう、商品購入に
おいても、恋愛においても「上級者」であろう。
しかし、どの分野でも上級者の数はそう多くは無い。
したがって、たとえ現代が「インターネット時代であるから、
情報がいくらでも入る」と思っていても、そこで流れている
情報の大半は信用するに値しないものばかりだ。
イイネの数を頼りにしても無意味だし、製品の口コミサイトの
ユーザー評価を参照しても無意味だ、何故ならば、それらの
評価者は、自身の心理や個人的な印象には決して左右されない、
「絶対的価値感覚」を持つ程の「エキスパート」では無い事が
大半であるからだ。
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余談が長くなった、本レンズMeike12/2.8であるが、
超広角という希少なスペックを見れば、一見してコスパは
良いので、「必要だ」と思えば買うのも良いであろう。
品質や性能は殆ど何も問題無いので、実用的には十分だ。
(追記:2020年の春頃から、本レンズの新品販売価格
は大きく下落、2万円そこそこで新品購入できるので
コスパがさらに良くなっている。もし、もっと下がったら
異マウントで追加購入(ナンピン買い)をするかも知れない)
でも、例えば広角端12mmの超広角ズームは、古い他マウント
のものであれば、1万円台で中古購入できる物も存在する。
それを買って来てFUJIFILM X機に装着する事は容易だ。
いずれもMF操作になるので同様、描写力的にも大差は無いで
あろうし、どちらでも不満を感じる事も少ないであろう。
この方法であれば導入コストは約半分に削減できる。
そのように、世の中の事を色々と知った上で、自身の購入
行動・購入倫理に反映していかなくてはならない。
難しい事ではあるが、そうして研究や経験を続けていく事が
前述のように「趣味」を続けていくための根幹となる。
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さて、今回の第29回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回も、未紹介レンズを3本取り上げるが、それに加えて、
過去記事で紹介済みレンズを1本、比較の意味で追加する。
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まず、今回最初のレンズ

(中古購入価格 28,000円)(以下、EX70/2.8)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2006年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。
(注:正式な型番は良くわからない、MACROとかの部分的
な名称が、どの順番で入るか不明なのだ。
一応ここでは、SIGMAのサイトでの旧製品の項目を参考に
しているのと、例によっての本ブログ独自での共通表記法
をミックスしたものだ)
現在、このレンズには後継の新型がArt Lineに属して
販売されており、そちらは、本シリーズ第24回記事等で
紹介済みだが、比較の為に新型も後で再掲しよう。

で「カミソリマクロ」と称された。
言い得て妙ではあるが、残念ながら本レンズは、あまり
所有者の多くない「セミレア」レンズとなり、その呼称は
その後の時代でもマニア層等には広まっていなかった。
2009年頃、知人が本レンズを所有していた。私はそれを
借りて使った訳では無いのだが、見た目の仕様や知人が
撮った写真を見ると、なかなか良さそうであったので、
購入機材の候補としていたのだが・・
その後、長らく中古市場をウオッチしていても、殆ど
(全く)本レンズを見かけない。
「よほどレアなレンズなんだろうなあ・・」と思いつつ
入手が出来ないまま、9年の歳月が流れた。
2018年になって、本レンズの後継機種である「SIGMA
70mm/f2.8 DG | Art」が発売されると、私はそちらは
すぐに入手したのだが、そうなると逆に旧型との違いが
物凄く気になるようになってしまった(汗)
これは何としても旧型を入手しなければならない。
・・と、やっとその年に、旧型の中古が市場にポツポツと
数本だけ出てきた。恐らくだが旧型のユーザーが新型に
買い換えた事での下取り品であったのだろう。
そして私も無事旧型を入手、セミレア品扱いであったので
あろうか?中古価格は28,000円と、想定購入価格より
僅かに高目な印象(2万円台前後を想定)もあったが、まあ
不条理な程に高価な相場では無い、これは「買い」であろう。

ただ、いずれもいわくつきだ。
いずれ「特殊レンズ・超マニアックス」記事でまとめて
解説予定だが、本記事でも簡単に述べておこう。
1980年代
・SIGMA 90mm/f2.8 Macro(現在未所有)
1989年頃に発売された小型軽量のAFハーフマクロ。
このレンズは、当時あるいは少し後の時代のTAMRON製
90mmマクロ(F2.5版、F2.8版)と比較して描写力がかなり
落ちると私は評価し、短期間で譲渡してしまっていた。
描写力の課題はSIGMAでも意識していたのであろうか・・
名マクロとして定評のあるTAMRON 90マクロと比較される
のは、さすがに少々しんどいと思われる。
以降の時代、SIGMAは90mmのマクロを1本も発売していない。
1990年代
・SIGMA AF MACRO 50mm/f2.8
SIGMA AF MACRO 180mm/f2.8
発売年等詳細不明、この頃のSIGMA製レンズの詳細な情報は
殆ど残っておらず、おまけに正式な型番すら不明である。
冒頭にも書いたが、SIGMAのレンズ自体には、断片的に
型番の一部が順不同で書かれているだけであり、結局
正式名称がどのような順番となるのか? 良くわからない。
いずれもCANON EFマウントでの購入、特にAF50/2.8は
描写力が高く、銀塩時代には愛用した。
180/2.8の方はハーフマクロながら、非常に大型で重い
レンズであったので、あまり活躍の機会が無かった。
この課題もSIGMAは認識したのか? 後年には口径比を
F3.5に落とし、若干小型軽量化されている。
最大の課題は、これら1990年代製のSIGMA製のCANON EF
マウント用AFレンズは、2000年頃迄のCANON EOS銀塩機
であれば使用可能だが、2000年以降の銀塩/デジタルEOS
機に装着すると、エラーとなって撮影不能になる事だ。
よって、これまで使えていたSIGMA製レンズは新しいEOSに
買い替え得ると使えずに、大変困った事になる。
これは、サードパーティー製のレンズの台頭を良く思わない
CANON側がレンズとの通信プロトコル(方式)を意図的に
変更したのだと十分に推測できる。(=排他的仕様)
まあ、ユーザーの事を全く考えない非情な措置であり、
カメラ史上での汚点であると思う。(まあ「デジタル時代
を見据えた機能(仕様)追加である」といった理由はある
かも知れないが、それとて、CANON純正レンズでは古い物
でも互換性があったので、他社製品を排除した事は一緒だ)
結局、これら1990年代SIGMAレンズは、2000年代を通じて
使用できず、腹がたって捨ててしまおうとも思ったが、
別にSIGMAに非は無い。後年には新しいCANONプロトコル
に対応したSIGMA製レンズが出てきて、その後の時代も
SIGMA製レンズとEOS機とでの使用環境は何ら問題無い。
やっと旧レンズが使えるようになったのは、2010年代
からのミラーレス時代であり、絞り羽根内蔵等のEOS用
マウントアダプターで、これらのレンズは無事復活した。
ただし、絞り羽根内蔵アダプターは、光学的に言えば
「視野絞り」であり、これは露出値(光量)のみを調整する
効果があるが、通常のレンズ内絞り(開口絞り)とは
効能が異なる。よって、このアダプター・システムでは、
ボケ量およびボケ質の細かい制御が、ほぼ不可能となる。
加えて、1990年代のSIGMA製レンズは、コーティング又は
バルサム(レンズを接着する材料)の劣化により、後年に
おいて描写力が大きく低下する場合がある。久しぶりに
持ち出してみると、フレアっぽい描写になってしまった
ケースが、私の所有範囲ですら3~4件発生しているのだ。
まあ、依然困ったままであるが・・ 20年を超える期間、
色々と苦労して使った事で愛着も沸いてきて、なかなか
新型レンズに買い換える気も起こらない。
2000年代
・SIGMA MACRO 105mm/f2.8 EX DG x2本
例によって正式名や詳細情報は不明だ、まあ中望遠AF等倍
マクロであるが、超音波モーターも手ブレ補正も入って
いない旧型である(注:現行品は、それら付加機能を搭載)
しかし、このレンズ、大変良く写る。気に入ったので
異マウントで同じ物を2本所有している位である。
詳細は過去記事でも何度も紹介しているので割愛しよう。
・SIGMA MACRO 50mm/f2.8 EX DG(後日紹介予定)
・SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG(本レンズ)
2010年代
・SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM
(本記事執筆後に購入、後日紹介予定)
・SIGMA 70mm/f2.8 DG | Art
本シリーズ第24回記事等で紹介、本記事でも再度紹介。
さて、所有しているSIGMA製マクロを非常にざっくりと
紹介したが、基本的に、どのレンズも高い描写力である。
一般的には、マクロと言えば、TAMRONやOLYMPUS製が高性能
であると連想するとは思うが、SIGMAのマクロも捨てがたい。

長所としては、「通り名」の「カミソリマクロ」にも
あるように解像感が高い所だ。
しかし、この点に関しては、他のSIGMA製マクロの多くが
同様の特徴を持ち、本レンズだけの長所であるとは言い難い。
(多数のSIGMA製、または他社マクロレンズを所有していれば
その事は簡単に認識できるであろう。たった1本のマクロを
見ただけでは、その特徴を言い表すのは無理があると思う)
レンズ設計上、球面収差とコマ収差の両者を優先的に補正
した、いわゆる「アプラナート」型の光学設計の場合では、
解像感に優れるが、ボケ質に劣る事が常である。
しかし、本レンズの場合は、ボケ質の破綻は起こり難く、
優秀な設計である事が見て取れる。
総合的には、描写力上での不満点は殆ど無い。

であろうか? カメラ(デジタルEOS機)を色々と変えて
試してはいるが、どの機種を使ったとしても、AFでは良く
ピントを外してしまう。
なお、同じEFマウントでの同時代のSIGMA製マクロでは、
前述の105mm/f2.8を使用しているが、実はそれはAF故障品
で極めて安価に買ったものだ。MF100%の使用法では、全くと
言っていい程不満を感じていなかったので本レンズの場合も
いっそ「AFは使えないもの」と腹をくくって、MFオンリーで
使用すれば、その弱点は解消できそうだ。
その為もあって、今回は、MF用スクリーンに換装済みの
EOS 6Dを使っている訳である。
AF問題を除いては、チラリと前述したようにコスパがやや
悪く感じる。いくら優秀なレンズであるとは言え、マクロは
基本的に、どれも非常に良く写る。
・・であれば、2000年代マクロであれば、他の同等性能品
でも2万円程度の中古相場感覚となるので、28,000円は、
やや高額であったと思う。
これまでは希少なレンズであったが、新型の後継機の登場で、
やっと少しだけ中古流通が活性化している、見かけたら購入
検討対象とするのも悪く無いであろう。
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では次のレンズ、これは比較紹介(再掲)だ。

(中古購入価格 44,000円)(以下、A70/2.8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
2018年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。
上記EX70/2.8の正当な後継機種だが、実に12年ぶりの発売
となっている。その間、カメラ側ではミラーレス機が登場し
本レンズの対応マウントも、一眼レフ用に加えて、SONY FE
マウント版が販売されている。

これは、市場縮退による高付加価値化戦略の一環でもあり、
これにより多くのレンズは旧製品よりも大幅に値上げされて
いる。最も付加価値が高い(つまり、高価な)カテゴリーは
Art Lineであり、本A70/2.8もそこに属するのだが、定価は
他のArtレンズよりも半値から1/3程度と安価である。
そして、本レンズがArt Lineとしては初のマクロレンズだ。
長所や短所は、本シリーズ第24回記事で述べているので
詳細は割愛する。

称される割には、あまりキリキリとした解像感は感じられず
むしろ2000年代SIGMA製マクロの方が、その称号にふさわしい。
外観や操作性は現代的なデザインと仕様となっているのだが
現代風の無限回転式ピントリングとなっている事で、MF操作に
適さず、この点、マクロレンズとしては大きな欠点だ。
いつもこの点は嘆いているのだが、現代においてはメーカーも
ユーザーも正しいMF撮影のノウハウを持っていないのであろう。
まあでも、そうだとしても、古いMF(マクロ)レンズで大量の
撮影をこなせば、そのあたりは自力でもわかって来る事だ、
つまり、殆ど誰もMFで撮っていないのだろう・・
マクロ(近接)撮影の場合、MFが絶対的に高効率であるのは
間違いない、ぜひともMFでの大量の撮影を行う事を推奨する。
MFの弱点はさておき、AFもNGだ。SONY α系機種では、どれも
AF速度も精度も出ない。本体側の像面位相差AFに正しく対応
していないのではなかろうか?と疑っているのだが、レンズの
ファームアップを期待したい所だ。
なお、従前の記事で「本レンズは、αミラーレス機の一部で
デジタルズーム機能が効かない」と記載したが、2018年末の
ファームウェアVer. 02以降で、この不具合は解消されている。
それと、近年のSIGMA製レンズでは、USB Dockという別売
付属品を買わないとレンズのファームアップが出来ずに
「鬱陶しい」と思っていたが、SONY機用のマウントであれば
PCからUSB接続でαカメラを経由したアップデートが可能だ。

スペック上の比較もしておこう。
旧型:SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
・発売年 2006年
・フィルター径 φ62mm
・最短撮影距離 25.7cm
・重量 525g
・レンズ構成 9群10枚 絞り羽根9枚
新型:SIGMA 70mm/f2.8 DG | Art
・発売年 2018年
・フィルター径 φ49mm
・最短撮影距離 25.8cm
・重量 515g
・レンズ構成 10群13枚 絞り羽根9枚
12年の時を隔て、新旧両レンズの印象は全くの別物であり
特に新型はフィルター径が小さく、「細くて長いレンズ」
という印象がある。旧型は、なんと言うか?「ビア樽」型だ。
例えば他社の、新旧マクロアポランター、のように新型が
圧倒的に優れている、という印象は受けない。
特に新型でのMF操作系の悪化が、かなりの弱点となる。
なお、新旧とも「FULL/LIMIT」の切換スイッチを持つ。
昔から現代に至るまで、多くのAFマクロレンズで、この切換
機構を備えているが、カメラのAF精度が未成熟であった
1990年代頃に主に必要とされた仕様であり、現代のマクロ
レンズでは、もう、あまり有益な機能では無いかも知れない。
特に本レンズでは距離指標を持たない無限回転式の為、
「FULL/LIMIT」が機械的な制限を設ける2段切換機構では無く、
電子的な3段階切換スイッチによるものなので、誤操作し易い
危険性がある、いっそ廃止してくれてもあまり問題は無い。
(ただまあ、マクロレンズ全般での最短撮影距離から無限遠
までのAF遷移時間は、たとえ超音波モーター搭載最新マクロ
であっても、とても遅く、そのイライラを緩和する為には、
LIMITスイッチは有効だ。でも、MFが自由に効く仕様にして
くれるのであれば、次に撮る被写体距離を想定して、MFで
事前にピントを推定で動かし、AF速度の課題を解消できる。
無限回転ピントリング仕様では、これが出来ないから不満だ)
本A70/2.8は、決して悪い性能のレンズでは無いが、本シリーズ
第24回記事でも書いたように、様々なクセの強いレンズだ。
あまり簡単には、誰にでも薦められるレンズでは無いと思う。
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さて、次のシステム

(ジャンク購入価格 300円)(以下、COSINA70-210)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)
出自不明、恐らくは、1980年代末頃のAF望遠ズーム。
コシナ製のAFレンズは、かなり稀である。今となっては調べる
手段もあまり無いが「数える程しか無かった」と記憶している。
これは現代のフォクトレンダー/カールツァイス時代に至る迄
同様で、ほぼ全てがMFレンズであり、これはコシナの開発・
製造のプロセスが、MFレンズに特化しているからであろう。

MINOLTA」とレンズに書かれている。これはコシナ側が懇願
して技術供与を受けたのか? いや、想像だが恐らくは逆で
MINOLTAが「αショック」(1985年)以降、他社を圧倒して
いた「α」のポジションをさらに磐石とする為、「α陣営」を
増やそうとして、当時ニュートラル(中立)なOEMメーカーで
あった「コシナ」を引き込もうと、技術供給を行ったのかも
知れない。
もしそうだとすれば、当時としては、そうした「オープン戦略」
は先進的であろう。時代的に他社は、全て「クローズ」な
排他的思想が殆どであったからだ(前述したCANONのプロトコル
変更もしかり、排他的思想だ)
現代では、先端技術分野については、できるだけ「オープンな
思想」を持つ事が、企業から研究員・技術者に至るまで望ましい、
という常識になっている。何故ならば、テクノロジーが複雑かつ
高度になりすぎていて、1人とか1企業の単位で技術革新が
行える筈も無いからだ。皆が知恵を出し合って、新技術を
発展させなければならない。
もう19世紀の「エジソン」のように、「発明王」が出て来る
世情では、とうに無くなっている。
でも、そうなったのは、CPU、LSI、デジタル技術、Web、AI
等の新技術が急速に発展した、この数十年間での話である。
だからまあ、1980年代にオープン思想を持つ事は非常に
先進的であり、まるで電子楽器分野での「MIDI」(1980年代)
のような話だ。(その時代から既に、各社の電子楽器は
同じMIDIプロトコルに則って、連動して動かす事が出来る)
その後の時代でも、世の中の「偉い人」等は、この技術分野
における革新の仕組みが理解出来ておらず、いつまでも自社の
利益を第一に優先する排他的なクローズ思想を持つだけだ。
私は近年では、カメラに限らず様々な市場分野の製品において、
「クローズ思想」の強いメーカーの製品は、一切購入しない
ようにしている。つまり「クローズ思想」そのものが「製品の
購入を阻害する理由」となっている消費者も居る、という事だ。
これは商売優先のメーカーも良く認識しておく必要があるだろう。
さて、本レンズの話に戻る、これはジャンクレンズではあるが、
後玉に少しクモリがある程度で、他の動作は異常が無さそう
だったので購入したが・・・ 早速問題点が発生。
本レンズとα65(2012年)との組み合わせはで、AFと絞りが
動作しない。試しに他機に装着するとSONY α700(2007年)
やα77Ⅱ(2014年)であれば問題無く動作する。
古い機種も新しい機種でも動くのに、α65だけ動作しないと
いうのは何故なのだろうか? レンズとの通信プロトコル上の
問題である事は確実であろうが、まさかα65が中級機であるが
故に、他の上級機と差別化しているという事は無いだろうが・・
(つまり、安い機種では、使えるレンズを限定してしまう等の
意地悪を行う。「気に入らなければ、高いカメラや純正レンズ
を買え!」という仕掛けだが、そこまでは悪意が無くても、
下位機種の性能や仕様を色々と制限したり、他社システムとの
連携を拒む事(=仕様的差別化、排他的仕様)は、まあ現代の
デジタル時代では、ビジネス上では当然の措置であろうが・・
そうだとしても、何だか「とても残念な」製品戦略だ。
前記の「オープン思想」には完全に逆行している事になる。
そういう細かい意地悪を重ねてカメラの販売シェアを伸ばした
のだとしたら、外から見ていても、気分の良い話では無い。
いつの時代でもそうだが、「偉い人達」の思考プロセスは
決して褒められたものでは無い事が、大変良くある話だ)
さて、確かに面白く無い話だが、やむを得ない。α65の使用
を諦め、「オフサイド状態」(=カメラが無駄に高価過ぎる)
になるが、SONY α77Ⅱで試写を続行する事にしよう。

さて本COSINA70-210だが、平凡なスペックの普及望遠ズーム
である。恐らく発売時の価格も非常に安価であっただろう。
技術力が高いコシナではあるが、まずは市場戦略上の様々な
制限により、原価の高い(=性能が良い)レンズを作りにくい
状況にあった。それから(望遠)ズームレンズの設計における
当時の技術的限界というのもあって、個人的な分析においては、
1990年代になってからでないと、望遠ズームの、特に望遠側
での収差(画質)は、改善されていかない。
まあ、これらは他の記事でも良く書いている事であり、
それぞれ事情・理由があるので、そこを責めるのは筋違いだ。

解像感の低下、低コントラスト、低い逆光耐性によるフレア感
等の様々な弱点が顕著だ。
例によって様々な弱点回避技法を駆使して使ってはいるが
それも限界がある。

そうした弱点回避スキルの向上の為の研究およびトレーニング
が目的となっている。レンズ性能に色々と問題点があった方が、
スキルアップの為には、むしろ適切な「教材」となるのだ。
そのレッスンの為の、ジャンク価格(300円~2000円位)
の出費は全く惜しく無い。
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次は今回ラストのレンズ

(新品購入価格 27,000円)(以下、Meike12/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
近年(2018年?)に発売された、中国製のAPS-C型対応
ミラーレス機用MF超広角単焦点レンズ。
「mEiKE」と、大文字小文字が入り乱れたロゴマークで
あるが、ややこしいので、以下はMeikeと記載する。
つい先年までは、このブランドはNEEWER(ニーワー)とも
聞いていたのだが、Meike(メイケ)は、交換レンズ用の
新たなブランド名だろうか?
(注:NEEWERとMeike製品は、一部、ずいぶんと品質が
異なり、同じメーカーの製品とは思えない場合もある)
まあ、例によって中国製レンズは謎が多い。
なお、近年のコロナ禍における中国政府等の施策に
各方面から批判の声が出ていたが、中国製品の話とは
また別問題だ。政治の話と、製品や技術の話を混同する
のはどうか?とも思う。
古くは1980年代、フランスが対日貿易赤字の対抗策
で日本製ビデオデッキの輸入を制限した事があったが、
その際にフランスの民衆が日本製のビデオデッキを沢山
破壊している映像を見た事がある。それを見て思った事は
やはり、「あちゃ~、”政治”と”製品”は全く別モノ
なのになぁ・・」という技術屋視点での感想であった。
以下、Meikeレンズの技術や市場背景の話を進める。

が起こったのか? と言えば、これは、日本製レンズが
市場縮退により高付加価値化してしまった事が要因であり、
すなわち国産レンズは、今や高すぎて、かつ価格が性能に
見合っていない、すなわちコスパが極めて悪い。
まあ、国内市場の様々な変化によって、国内メーカーは、もう
低価格帯のコスパ良い製品を作れるような状況では無いから、
そこに中国製(等)レンズの「付け入る隙」が出来た訳だ。
まあ、これは当たり前の市場原理、ビジネス戦略であろう。
初級中級層や初級マニア層では、これらを「中華レンズ」と
呼んで、「安かろう、悪かろう」と馬鹿にしながらも
試しに買ってみて、「思ったより良く写る、びっくり!」
等と言っている状況だが、ここも当たり前の話だ。
新鋭中国製レンズの一部では、数十年前の非常に完成度の高い
レンズ設計を探して来て、そのレンズ構成を殆どそのまま、
又はフランジバック長等を、少しだけ改善後、さらに例えば
2/3程度の寸法にダウン・サイジングして、イメージサークル
の小さいミラーレス機用(APS-C機用)にアジャストしている。
(注:メーカーによっては、その戦略を取らない場合もある)

レンズ構成図が見当たらない為に詳細は不明ではあるが、
このあたりの多群構成は、その昔のカール・ツァイスの
高性能広角レンズ「ディスタゴン」構成とかの転用では
なかろうか?
他の「七工匠」等の中国製レンズも同様な設計手法であり、
七工匠25mm/F1.8(本シリーズ第26回記事)は、5群7枚
の変形ダブルガウス構成であり、これはまあ、あえて
ざっくりとした言い方をすれば「殆どツァイスのプラナー」
である。
こうした、古い時代の完成度の高いレンズ構成を流用する
事については、仮に特許等があったとしても、とうに切れて
いるだろうから、何も問題はあるまい。
そうだとすれば、新設計等に係わる開発コストが限りなく
ゼロに近づくでは無いか・・
中国等でも自動光学設計ソフトは普及している事であろう、
ソフトでゼロから光学設計をすると、とてつもなく複雑で
高価な構成を提示してくるのだが(現代の国産レンズが
それだ)ベースとなる基本設計があって、それを現代の
多種多様な硝材等を使用した小改良をする程度は造作も無い。
よって、七工匠25/1.8の紹介記事では、そのレンズの事を
「ジェネリック」と称した。つまり、ジェネリック薬品も
既に世の中にある薬品の成分をコピーして製造する事で
新薬の研究開発や検証(臨床)・認可にかかる膨大な費用を
削減でき、安価に作れる訳である。
レンズも同様、全くの新規のレンズを設計し製造するには
莫大な費用がかかる。まあ、それでも沢山売れるならば
開発費や金型費等の製造コストを多数の製品に振り分けて
安価になるのだが・・(これは「大量生産」という意味であり
かつて数十年前に、日本の製造業が得意とした手法である)
もし市場が縮退して、製品の数があまり出なくなると、
個々の製品に乗せる償却費用が大きくなり、とんでも無く
高いレンズとなってしまう訳だ。
・・なので、30万円とか50万円とかの、不条理なまでに
高価なレンズが市場に出揃ってしまう。
それでも、初級中級層や初級マニア層等の一部では、そうした
一般常識的な「市場原理」が全くわかっていない状態において、
「それだけ高価ならば、きっと素晴らしい性能のレンズに
違い無い」と大誤解をして、無理をしても買ってくれるので、
かろうじて現代の縮退したレンズ市場は崩壊せずに、なんとか
ビジネスを継続できている訳だ。

長所だが、まず勿論コスパが良い事である。
ただ、他の格安中国製レンズに比べると、少々割高感は
あるが、まあ、そこは超広角の付加価値で相殺できる。
(注:最近では新品相場が大きく下落している。やはり
中国製レンズとしては高価過ぎる印象が強かったのであろう)
「FUJI Xシステムを成立させるのは難しい」と従前の
記事でも何度か書いている。まあつまりFUJI純正レンズは
種類が少なく、かつ市場シェアも小さいので、レンズ単価
が高くなってしまう。同等の性能を持つ他社レンズよりも
2倍前後も高価ならば、純正レンズを買い難い。
また、マイナーマウントに向けては、レンズメーカーも
製品を販売しない、前述の開発費等が償却出来ないから
面倒なのだ。
・・であれば、こうした新鋭海外製レンズを使用する等で、
FUJI Xシステムの基本ラインナップ(広角から望遠までを
実用レベルとして揃える事)を充実させるしか無い。
「全体の作り」や品質等も良く、むしろ国内の低価格帯レンズ
は、さまざまなコストダウンが市場戦略上で必須の状況なので
(=つまり、儲けを出さないとビジネスが継続出来ないから)
こうした新鋭海外製レンズの方が、はるかに品質が高く、
高級感がある。(=さも無いと、”安かろう、悪かろう”
では、本当に売れなくなってしまうからだ)
収差の類も少ない。超広角レンズで良く問題になる、
「歪曲収差」「周辺減光」「ゴースト」のいずれも少なく
及第点だ。ただし、僅かな「像面湾曲収差」が出ている
模様だが、これは実用上では気になる事は無いであろう。
短所であるが・・
これが特に見当たらない、ただ、非常に細かい点を言えば
最短撮影距離は10cmの仕様だが、そこまで距離指標は無く
15cmが最低で、実際の最短撮影距離は曖昧だ。
(追記:後日入手した他のMeike製レンズでも、距離指標
の問題点があった。詳細は不明だが、何かの製造技術的な
課題が背後に存在している可能性が高い)
ピントリングはやや重い、まあでも気になる程では無い。
他記事でも良く「ディスタゴン構成はピントが分かり難い」
と書いているが、本レンズもその傾向がある。近接撮影で
被写界深度が浅い場合、EVFでもピーキングでも、やはり
ピントの山が良くわからない。
結局、パンフォーカス撮影とする場合が多いので、被写界
深度目盛りがあると嬉しいが、残念ながら、それは無い。
説明書は中国語であり、一応日本語のものも付いているが、
「絞りを解放すると」といった、まるでビギナーのような
誤記がある。(勿論、正しくは「絞りを開放にすると」
であり、”解放”では”解き放つ”という意味だから、
まるで絞りの部品がレンズから外れて、すっ飛んでいって
しまいそうな表現だ・・汗 日本のビギナー層でも、その
誤記は極めて多いが、まあ、中学生以下レベルの国語能力だ)
ダウンサイジング設計は、少々光学的に無理が出る場合も
あるようで、本レンズに限らず、中国製レンズ全般で
画面周辺収差の増大、歪曲収差の発生、周辺減光等の
課題が生じる場合もあるが、本レンズでは僅かなレベルに
良く抑えられている。まあ、そもそも、元にした設計が
数十年前の物であれば、それら旧レンズに元々存在していた
弱点だったのかも知れない訳だ。
もし、あまりに気になるような場合は、周辺をカットして
使用する方法論もある。例えば簡便には、これらのレンズは
APS-C機対応イメージサークルだから、μ4/3機で使えば
周辺は写らない。またはトリミング編集するか・・だ。
歪曲収差で無ければ、絞ると改善する収差が殆どであるし、
歪曲収差は高機能編集ソフトならば、簡単に補正できる。
まあ、元々広角レンズが欲しくて買っているのでトリミング
は心理的に行い難いとは思うが、それも、写真での構図とか
意図とか目的によりけりであろう。
つまり本レンズに限らず、機材全般では、色々と考えて使う
事で、その弱点を回避するのが良い、という事だ。
それが出来ずに、カメラやレンズの文句ばかり言っているのは
工夫して使いこなす事が出来ない初級中級層だ、という事が
明白となる。練習や研究でスキルアップして、そこから脱出
しなければならない、その向上心が無ければ趣味は成り立たない。
余談だが、ビギナー層による「評価」の問題点を挙げておく。
ビギナー層は基本、自身の買った機材の悪口を言わない。
安価な中国製レンズでも「意外に良く写るよ」という評価が
大半だ。何故ならば、自身の消費行動(購入倫理)を否定
しない為であり、意識・無意識にかかわらず、もし自分が
買った「モノ」に満足がいかなかったら、「失敗した!」と
なって心理的に打撃を受けてしまうからだ。だからそれを
避けるためには「意外に良いよ」としか言わない。
これは、あらゆる「モノ」の購入時に同じ心理が発生する。
そして、「モノ」が多少わかっていて、その長所短所が自力で
判断できる中級者層となると、今度は、その買った「モノ」の
欠点ばかりを責めたてるようになる。
その心理は「期待して買ったのに、期待はずれであった」
という事だ。まあ、これもカメラやレンズに限らず全ての
商品分野で同様だし、商品でなくても、例えば、恋愛において
「美人だと思って、苦労してクドいたのだが、無事お付き合い
(や結婚)する事になったら、とんでもなく性格が悪かった!」
という話も世の中には大変多い事だろう。
でもこれは別に、相手が「悪女」だった訳でも無いケースも
大半であり、つまり男性側が相手を理想的な状態に迄「美化」
してしまっているから、その理想のレベルに対して、たとえ
些細な事であっても、皆、欠点として目についてしまう訳だ。
だが、これも外から見れば「あてにならない(信用に値しない)
評価内容」である。
こうした初級中級者的な評価方法は、多分に個人の「思い込み」
が入っている、これらを全て冷静に判断する為には、かなりの
経験値等のスキルが必要であり、そうなればもう、商品購入に
おいても、恋愛においても「上級者」であろう。
しかし、どの分野でも上級者の数はそう多くは無い。
したがって、たとえ現代が「インターネット時代であるから、
情報がいくらでも入る」と思っていても、そこで流れている
情報の大半は信用するに値しないものばかりだ。
イイネの数を頼りにしても無意味だし、製品の口コミサイトの
ユーザー評価を参照しても無意味だ、何故ならば、それらの
評価者は、自身の心理や個人的な印象には決して左右されない、
「絶対的価値感覚」を持つ程の「エキスパート」では無い事が
大半であるからだ。

超広角という希少なスペックを見れば、一見してコスパは
良いので、「必要だ」と思えば買うのも良いであろう。
品質や性能は殆ど何も問題無いので、実用的には十分だ。
(追記:2020年の春頃から、本レンズの新品販売価格
は大きく下落、2万円そこそこで新品購入できるので
コスパがさらに良くなっている。もし、もっと下がったら
異マウントで追加購入(ナンピン買い)をするかも知れない)
でも、例えば広角端12mmの超広角ズームは、古い他マウント
のものであれば、1万円台で中古購入できる物も存在する。
それを買って来てFUJIFILM X機に装着する事は容易だ。
いずれもMF操作になるので同様、描写力的にも大差は無いで
あろうし、どちらでも不満を感じる事も少ないであろう。
この方法であれば導入コストは約半分に削減できる。
そのように、世の中の事を色々と知った上で、自身の購入
行動・購入倫理に反映していかなくてはならない。
難しい事ではあるが、そうして研究や経験を続けていく事が
前述のように「趣味」を続けていくための根幹となる。
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さて、今回の第29回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。