本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では、ボディキャップ(Body Cap)レンズを
5本紹介しよう。
本来の「ボディキャップ」とは、(今更説明の必要も無いが)
カメラを保管や移動する際に、レンズを装着しない場合に
おいてカメラの内部構造(センサー、ミラー等)を保護する
為にマウント面に嵌める、単なる「蓋(フタ)」の事である。
で、「ボディキャップ レンズ」とは、ボディキャップ形状の
写真用交換レンズ全般を指す。つまり普段はカメラを保護する
為の蓋として用いるが、内部にレンズが組み込まれていて、
一応それで写真も撮れる仕組みだ。
----
では、まず最初のシステム
![_c0032138_17341568.jpg]()
レンズは、OLYMPUS Body Cap Lens BCL-1580 (15mm/f8)
(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS Pen Lite E-PL2(μ4/3機)
2012年発売のμ4/3機専用薄型MF広角レンズ。
「ボディキャップレンズ」の歴史を考察した場合、
本レンズ以前の時代にも海外製の「PC IN A CAP」(後述)
等のボディキャップ風レンズが発売されてはいたが・・
まあ、初めて一般ユーザー層にも認識されたボディキャップ
レンズとしては、本BCL-1580が最初であったと思う。
なお、ボディキャップレンズの多くには、「シールド位置」
があって、そこへ設定すると、レンズの前にバリアーが出て
完全な「蓋」になる。本BCL-1580にも、その機構があって、
これで実際にボディキャップ代わりになるのだが、まあ
「シールド位置」を持たないレンズもある為、この機構が
ある事が「ボディキャップレンズ」としての必須要件という
訳では無い。
![_c0032138_17341576.jpg]()
さて、ミラーレス機における「フランジバック長」は短く、
銀塩時代の一眼レフ用「パンケーキレンズ」のような感覚で
マウント面付近の距離に、レンズを集中配置すると、薄型で
広角気味の焦点距離のレンズが出来る。これがすなわち、
ボディキャップレンズの要件を満たす設計だ。
本BCL-1580は、3群3枚構成のトリプレット型である。
銀塩パンケーキの多くは3群4枚のテッサー型であったが、
トリプレットは、そのテッサーの原型となったレンズ構成
であり、そのままでは描写力はテッサーに負けるが、適宜
絞り込む事で、描写力は、そこそこ良くなる。
本BCL-1580では、絞り固定型の開放F8として、画質を
確保している設計であろう。
非常に薄型で、重量は22gしか無い。
見た目は、まるで玩具のようだが、そこそこちゃんと写る。
ピントはMFのレバー式であり、無限遠から少し手前の
「パンフォーカス位置」にクリックストップがあり、普段は
そこにセットしておくと、中遠距離被写体ではピント合わせ
が不要となる。また遠距離撮影であれば、念の為に∞位置に
セットしても良いし、近接撮影であれば、適宜ピントリング
を廻す。今回使用機の古いE-PL2(2011年)には、EVFや
ピーキング機能は無いが、被写界深度が、ある程度深いので、
背面モニターで見るのと、目測の勘ピントでも十分だ。
なお、オリンパス機での内蔵手ブレ補正機能を使う際には、
手動で焦点距離を15mmにセットする事を忘れないように。
30mm相当の広角レンズなので、手ブレはしにくいのだが、
開放F8と暗い為、意図せずシャッター速度が遅くなる場合
はあるので、手ブレ/被写体ブレには注意する必要がある。
さて、このような「ボディキャップレンズ」の存在意義
だが・・ どうも微妙だ。
オリンパスはこのレンズを、正式な交換レンズでは無く
「アクセサリー」として扱っている。
銀塩時代の1970~1990年代、オリンパスでは、
OMシステムにおいて、完全なパンケーキレンズは作って
いなかったが、準パンケーキ型レンズとして、OM28/3.5,
OM40/2,OM50/1.8の3本が存在していた。
28/3.5と50/1.8は、当時も現代でも入手は容易であるが
40/2は極めてレア品で、1990年代のパンケーキブーム時代
には異常な高値で取引が行われていた。(相場が高価すぎて
コスパがとても悪かった為、購入は見送った)
で、パンケーキブームの際に、高級一眼レフ(大型機)に
薄型のパンケーキレンズを付ける事が、当時の上級マニア
の間では「格好良い組み合わせ」(=「大小効果」と
本ブログでは呼ぶ)として流行していたのだ。
(レンズ・マニアックス第27/28回「薄型軽量レンズ」
編記事参照)
まあ、CONTAX RTSⅢ+T45/2.8が、その典型例ではあるが、
オリンパスOMは、高級機でも小型であったので、その
「格好良さ」が得られなかった事も、私がOM40/2の購入を
見送った理由の1つにもなっている。
![_c0032138_17341563.jpg]()
さて、時代は過ぎて、本レンズ発売後の翌年2013年、
オリンパスはμ4/3機初のフラッグシップ機「OM-D E-M1」
を発表するが、その際、ボディ単体発売において、
本BCL-1580がセットされていた。まあ「おまけ」としての
割安感を演出する意味が強いのだろうが、
「フラッグシップ機+薄型レンズ」という、およそ15年前の
流行をモチーフとしている事で、「なかなか、マニア心理を
ついた、上手い組み合わせだ」と思った。
(だが、私としては逆に、既にBCL-1580を所有していた為、
E-M1の購入意欲を、少しだけ損なってしまった。まあ元々
高価すぎる機体であった為、その時点で購入する事は絶対に
無かった。当時のμ4/3機は相場の下落が激しかった事もある。
E-M1は後年に中古が安価になったので、その後購入している。
なお、何故E-M1の中古相場が安価なのかは、後継機E-M1Ⅱ
での改良点が多く、初期型は「仕様老朽化」が目立つ事。
それと、近代ではハイエンド級機体をビギナー層が欲しがり、
「機体性能に頼る」ニーズが強い為、新機種に次々と買い替え
る傾向が強い点がある。この為、E-M1X/Ⅲが新発売されると
今度は、前機種E-M1Ⅱが中古市場に溢れかえった)
さて、本BCL-1580については、他記事でも何度も紹介
している為、説明はこのあたりまでで留めておく。
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では、次のシステム
![_c0032138_17343512.jpg]()
レンズは、LOREO PC IN A CAP 35mm/f11
(新品購入価格 2,000円)(以下 PC IN A CAP)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
2005年に発売された、各種一眼レフマウント用の
ボディキャップ(風)パンフォーカスレンズ。
まあ、「トイレンズ」の一種と言っても良いであろう。
型番のPCとは「パースペクティブ・コントロール」の
意味で、いわゆる「シフト機能」だ。
ニコンの「PC-NIKKOR」も同様の機能を意味するので
良く知られた略語であろう。(注:現代でのニコン製PC
レンズでは「PC(-E) NIKKOR」と、ハイフンが入らない。
同じメーカーでも、時代により型番ルールはまちまちだ)
シフト量は上下左右に最大5mm、フルサイズ対応レンズ
であるのだが、2005年当時において、デジタル一眼レフは
APS-C機が主流だ。APS-C機では残念ながら、殆どシフト
効果は得られない。
![_c0032138_17343553.jpg]()
この時代はまだ銀塩との混在期であったので、銀塩一眼で
の使用を想定していたのであろう。そういえば、当時の
資料を見ると、本レンズは、M42,FD,MD,OMなどの銀塩用
MFマウント版も発売されていた。
なお、そうした事情からか? APS-C機では効かないPC機能
を省略した「LOREO LENS IN A CAP」が、同時期か後年に
併売されていた模様である。
私は、後年に本「PC IN A CAP」は量販店で在庫処分品を
購入できたのであるが、「LENS IN A CAP」は簡単には
見つける事ができずに未購入だ。
なお、PC型の方は、どうやら現代でも稀に継続生産されて
いる模様なので、タイミングが合えば通販等で入手できる
かも知れない。
勿論、中古市場にはこうした安価なトイレンズは、まず
流れて来ないので、そこで探すのは不可能に近い。
本「PC IN A CAP」は、基本的にはトイレンズである。
だから写りをとやかく言う必要は無いし、むしろ酷い写り
での「Lo-Fi描写」すら期待してしまう。その点では、
「PC機構が無い型の方が写りが悪い」という情報もあるが、
所有していないので、わからない。元々、他人の評価は
それがどういう視点で評価されたのがわからない為、信用が
出来ないのだ。例えば、「トイレンズとしてのLo-Fi描写
を期待する」という視点の評価においては写りが悪いレンズ
を絶賛できるだろうし、そのLo-Fiの意味や用途がわからない
ユーザー層には、そうしたレンズは不要な商品となる。
逆に「このレンズは写りが悪い」と一刀両断した評価だった
としても、Lo-Fi描写が欲しいユーザーには必要な商品だ。
結局、トイレンズ系の評価とユーザーニーズは、いつでも
一致する訳では無い。
さて、シフト機能だが、実はAPS-C機で使った場合でも
僅かに効いている。
しかし、シフトを掛ける前後、等の比較の対象が無いと、
単に1枚の写真を見ただけでは、それは良くわからない。
(仮にそれをやっても、がっかりする程に差が少ないので
今回は割愛する)
![_c0032138_17343524.jpg]()
それから、本レンズにはピント機構が無いパンフォーカス
仕様である。F11と十分に絞り値は大きいのだが、これでも
シフトさせた場合等で被写界深度が不足する状況がある。
その際、本レンズでは、F22の絞り値があって、そちらを
利用する事が出来る。
ただし、一眼レフの光学ファインダーでF22では、暗く
なりすぎて使い難い。そういうケースがありうる為、
今回はEVF型一眼レフのSONY α65を使用している。
なお、こうした安価なレンズを使う場合、母艦をあまりに
高価なカメラとするとアンバランスだ(持論の「オフサイド
の法則」)その意味でも、SONY α65のような、安価で
高性能な機体は、トイレンズ用母艦として向く。
なお、PC機構は、このシステムにおいては使い道が無い為、
本記事では、α65の内蔵エフェクトを使い、本レンズを
一種の「トイレンズ」として扱っている。
----
では、3本目のボディキャップ
![_c0032138_17344977.jpg]()
レンズは、PENTAX Q System 07 MOUNT SHIELD LENS
11.5mm/f9(中古購入価格 4,000円)(以下、07MOUNT)
カメラは、PENTAX Q(1/2.3型機)
2013年に発売された、PENTAX Qシステム専用、固定絞り、
固定焦点パンフォーカス型ボディキャップレンズ。
厚さは約7mm、重量は8gと、史上最軽量の交換レンズだ。
1/2.3型機(Q/Q10)、1/1.7型機(Q7/Q-S1)の両者で使える
が、画角が広い1/1.7型機の方が、本レンズの特徴が顕著に
出る。だが、今回は試験的にPENTAX Qに装着してみよう。
その際の画角は、計算上では約63mm相当なるが、
PENTAX Qシステムは、途中でセンサーサイズが変わった際、
複雑な画像処理で両者の互換性を維持している為、正確な
換算画角については良くわからない。
まあ、だいたい標準画角だし、あまりそれを気にする必要も
無いであろう。
![_c0032138_17344995.jpg]()
最大の特徴は、1群1枚レンズである事で、これにより
「収差」が多く発生する、この収差により、まるで虫眼鏡で
風景を見たように、画面周囲に向かって強烈に画像が流れる
印象が得られる。
この効果は非常に独特であり、およそ他のレンズでは、
トイレンズも含め、このような描写傾向を持つものはない、
つまり、トイレンズの方がよほどちゃんと写る、という意味だ。
この効果を単体で、あるいは、Qシステムに備わる優秀な
エフェクト機能も含めて上手に使いこなす事が、アート表現と
しての重要なポイントとなる。
固定焦点型(パンフォーカス型)レンズとは言え、遠距離に
まで被写界深度がある訳では無い、むしろ中近距離1~2mが
主要な被写体距離であろう。
この感覚を理解するには、本レンズを使う前に、市販の
虫眼鏡を覗いてみるとわかりやすい。それは概ね近距離から
中距離でしかはっきり見えず、遠くの風景などは、むしろ
ボケて見える。これが、本07 MOUNTの距離感とほぼ同じだ。
また、虫眼鏡で見た際、画面中央部以外の周囲は、大きく
流れて写る、この特徴も本レンズと同じだ。
さて、では虫眼鏡で感覚をシミュレーションできたところで
本レンズをフィールド(屋外)に持ち出してみよう。
被写体がはっきり見える範囲は、数m先の立方体の空間だけだ。
この事を、本ブログでは「ストライクゾーン」と呼んでいる
ピッチャーから見て、打者の前にあるそのゾーンは直方体の
三次元空間である。これと同じような感覚で被写体を探せば
良い訳だ。つまりゾーンの外は、すべて「ボール」となる。
余談だが、近年の野球中継では、ストライクゾーンをバッター
毎に、白色枠や緑色枠で、CG合成してスーパーインポーズ
表示する場合がある。とてもわかりすくて好ましいのだが・・
1つだけ注意点、ストライクゾーンは実際は「三次元空間」で
あるから、CG枠のような二次元の長方形では無いのだ。
だから変化球などで、ゾーンを掠めてもストライクであり、
CGの枠とはイコールにならない場合も有りうるという事だ。
野球の件はさておき、写真においても全く同様の問題点があり
「構図」というものを、上記ストライク枠のような二次元の
長方形として認識してしまうと、実際の被写体が三次元で
ある事を忘れてしまうか、あるいは理解(認識)できていない、
という事に繋がってしまう。
そして、ビギナー層では100%、この感覚ができておらず
被写体を二次元平面として認識してしまう。
何故100%と断言できるか?と言えば、被写体を三次元として
認識できれば中上級者であり、それができなければ初級者
であるからだ。つまりこれは、それがわかるか、わらかないか
で、線引きをしている。
「魚眼レンズ」の記事でも述べたが、魚眼レンズの使いこなし
は、撮影側が三次元的にカメラの微妙なアングルを意識しないと
まともに撮れない、これも難しい事であり、初級中級層では
まず、それは出来ない。
魚眼ではレンズ側の課題であったが、同様に被写体も三次元的
であり、これが認識できないとならないのだが、それを練習
あるいは習得する為の機材が、世の中には殆ど存在しないのだ。
そこで本レンズ07 MOUNTである。これならば、その三次元的
感覚の練習用機材(教材)としても最適だ。
本レンズを何も考えずに使うと、単なる「写りが悪いレンズ」
になってしまうが、初級中級層では、残念ながら、そこまでの
使い方しか出来ない。
けど、これの「ストライクゾーン」を意識して、かつ、
ボールとなる領域には、どのような構図的な処置を加えるか
を考える事が、とても良い練習となる訳だ。
![_c0032138_17344865.jpg]()
必要ならばエフェクトを使っても良い。これは「誤魔化す」
のではなく、エフェクトを組み合わせてまともな「表現」に
しようとすれば、さらに難易度が格段に上がるので、むしろ
練習のレベルを上げる為にも効果的だ。
まあ、とても難しい話ではある。そう簡単に出来る物でも
無いが、そういう風に本レンズを用いる事が本筋であって、
その為に、私もこれで練習を繰り返している。
PENTAXのシステムは、銀塩時代から現代に至るまで、
常に「ユーザーの考えの斜め上を行く」仕様となっている。
比較的安価な機材だから「初級者向けか?」と思ってしまうと
さにあらず、非常に高度な内容がその仕様や機能の裏に隠されて
いる場合が多々ある為、「PENTAX機は、いくら使っても、使い
こなし切れるものでは無い」という印象すらある。
PENTAX機は初級中級層に人気な為に、この事実に気づいて
いる人は極めて少ないのではあるが、上級マニア層等であれば
PENTAX機やPENTAXレンズを購入して、その「奥深さ」を
味わってみるのも良いと思う。
----
では、次のボディキャップ
![_c0032138_17345879.jpg]()
レンズは、GIZMON Wtulens 17mm/f16
(新品購入価格 6,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2018年発売の、「写ルンです」レンズ再利用品トイレンズ。
姉妹商品「Utulens」(うつれんず)や、本レンズ
「Wtulens」(読み方不明)の名前は、それを由来とする。
本レンズはLマウント(注:銀塩L39の事)対応品であり、
レンズ本体そのものが薄くても、ミラーレス機で使用時には
マウントアダプターが必須で、全体的にはボディキャップ
とは言い難い形状となるが、まあ、細かい事は言うまい。
本レンズは「写ルンです」レンズの再利用(移植)品で、
1群2枚、非球面メニスカス(三日月)型構成レンズを
2枚、前後に張り合わせて広角化したものである。
銀塩「写ルンです」では、フィルム面をあえて湾曲させて
レンズの像面湾曲収差を補正するという特殊構造であったが
デジタルでは、それは無理なので、簡易絞り機構を入れて
収差を減らし、画質を維持しようとしている。
この為、銀塩「写ルンです」がF10程度の明るさであったが
絞り機構、および張り合わせ構成により、本Wtulensでは
F16と、若干暗くなっている。
![_c0032138_17345830.jpg]()
銀塩「写ルンです」は、その内容や見かけよりも画質が
優れている事が特徴であった。
が、本Wtulensでは、2枚張り合わせと、前述の像面の
湾曲構造が実行不能である為、銀塩版よりも画質は
当然、かなり落ちる。
本Wtulens の使用上では、あまり銀塩時代の、良く写る
印象を損なわないように意識するのも、コンセプト的に
有りだし、それとは逆に、あくまで「写ルンです」は
銀塩時代の安価なシステムであるから、銀塩っぽくユルく
撮る方法論もある。
前者、Hi-Fi志向の場合、μ4/3機やAPS-C機を使って
みるのも良く、小さいセンサーで周辺収差を消して、
かつ露出やら光源状況やらにも留意して撮る。
小センサー機では画角が狭くなるが、そんな事は全く気に
する必要は無い、本Wtulensは17mmの広角ではあるが、
これをフルサイズ機で使っても、残念ながらケラれて
超広角画角は得られない弱点もある。
だから、最初から「準広角レンズだ」と思って撮れば良い。
それよりも、レンズの弱点に配慮しながら撮っていけば、
元々描写力の高いレンズだ、そこそこまともに写るであろう。
この結果、例えば、銀塩時代を知らない人にも、
「へ~、これが”写ルンです”のレンズか、当時から
なかなか良く写っていたんだね」という印象を
与える事ができるかも知れない。
後者、Lo-Fi志向の場合は、元々銀塩「写ルンです」は
固定絞り、固定シャッター速度で、露出はネガフィルムの
ラティチュード(≒ダイナミックレンジ)頼みであった
事から(つまり、あまりに明るかったり暗かったりする
被写体には「写ルンです」は本来の性能が発揮できない)
・・デジタルでも、その弱味をシミュレートする為、
あえて逆光条件等の厳しい被写体状況で撮影したり、
収差が厳しく出るフルサイズ機を使ったり、あるいは
意図的に露出をバラつかしても良いだろう。
![_c0032138_17345700.jpg]()
また、銀塩時代には無かった「エフェクト」の中から、
控え目な処理のものを使用しても(すなわち、若干ユルい系
の描写に加工する)、それなりに効果的であろう。
デジタルから写真を始めた人達や、写真をあまり撮らない
人達は、昔のフィルムカメラは、皆、酷い写りだったと
誤解しているのだが・・
実際にはそういう事は一切無くても、あえてそういう印象を
与えるような写真とする意図が有り得る。そうする事で
「なんだかフィルムっぽくて、懐かしい感じですね」と
いったイメージを、見る人に与える事ができる訳だ。
結局のところ、こういうトイレンズ系を使用する場合には、
どのように「コントローラブル」にするかは、撮影者の
考え方(コンセプト、意図)やスキル次第という事だ。
レンズの言うがままに撮っていたら、単にレンズ性能に
振り廻されているだけだ。高性能なレンズでも、低性能な
レンズでも、どのようにでも好きに撮れるようにしてくのが
重要であろう。さもないと、高価なレンズを買ったけど
「性能が気に入らない」とか言って、またさらに高価だったり
最新型だったりのレンズの方に、目が移ってしまう。
それは別に、問題だと言う訳ではないが、あまりに非効率的な
お金の使い方であるし、あまりに「機材の性能頼み」の状態だ。
「レンズを使いこなす」という意味は、「そのレンズの描写
性能までも管理下に置く事が望ましい」という意味でもある。
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では、今回ラストのシステム
![_c0032138_17351015.jpg]()
レンズは、FUJIFILM FILTER LENS XM-FL 24mm/f8
(中古購入価格 6,000円)(以下、FILTERLENS)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)
2015年に発売されたFUJI Xマウント専用ボディキャップ型
効果フィルター内蔵、固定焦点型レンズ。
銀色版、黒色版が存在する(注:黒色版は生産完了か?)
一種のボディキャップレンズであり、ピント機構を持たない。
しかし仕様的に「完全パンフォーカス」には、私の計算上では
なっていない様子なので、特に遠景ではピント感の甘さが
気になるかも知れない事は注意しておく必要があるだろう。
が、そういう撮り方をするならば、FUJI Xマウントには描写力
に優れたレンズが沢山あろうから、それらを使えば良い。
![_c0032138_17351051.jpg]()
本レンズの使い方の最大の特徴は、本体内に内蔵されている
ノーマル、クロスフィルター、ソフトフィルターの3種類の
効果による描写を使い分ける事だ。
内、ノーマル撮影は、前述のように、他のより優秀なHi-Fi
仕様のレンズで代替すれば良い。
もしこの時、ノーマルモードで、トイレンズ風の写り(例えば
周辺減光や解像感の甘さ)が出るのであれば、それはそれで
ノーマルの使い道があった、でも本FILTERLENSは、4群4枚
という本格的なレンズ構成であり、そこそこちゃんと写って
しまい、むしろ中途半端に用途が無い。
それから、クロスフィルター効果は、まあ派手ではあるが
夜景撮影などでそれを入れて撮ってしまうと、後からその効果
をレタッチ等で消す事は不可能となる。加えて「弱めに掛ける」
とかの調整も出来ない。
さらに言えば、このフィルターを使用すると解像感も悪化する。
よって、本レンズのクロスフィルター効果は、レタッチ等で
後付けする方が、様々な面で簡便だとも思う。
対して、ソフトフィルター効果はなかなか使える。
本来、ソフト効果はフィルターよりも、実際の「ソフトレンズ」
を使った方が望ましい。それはコントローラブルである事や
物理フィルターでは得られない雰囲気が出せるからだ。
(本シリーズ第7回記事「ソフトレンズ編」参照)
だが、ソフト(フォーカス)レンズはピント合わせが困難で、
実際の使用時には、かなりストレスとなる。
そこで、本FILTERLENSのソフトフィルター効果であるが、
ピント合わせが不要な準パンフォーカスなので、使用が極めて
楽である。ここで課題となる「ソフト量調整不可」だが、
割合に丁度良い効果量となっている為、ほとんど不満は感じ
ない事であろう。それから、本レンズでのソフトフィルター
使用時の画角は、約36mm相当と準広角だ。
広角から準広角の「ソフトレンズ」は、他には安原製作所
MOMO 100(28mm)と、LENSBABY TRIO28 (未所有)の
2種類しか存在しないので、とても希少だ。
私は、本FILTERLENSを数年間使っているが、実用上では、
ソフトフィルター効果を主に使うのが良いではなかろうか?
と近年では思っている。
なお、その際にFUJIFILMのXシリーズミラーレス機に搭載
されている優秀なフィルムシミュレーション機能と併用する
のも良いであろう(特に、アスティア、モノクローム系、
セピア等)
さらには、最初期を除くXシリーズのカメラにはエフェクト
(アドバンスド・フィルター)機能も搭載されているので
それを組み合わせても良いが、FUJI機はエフェクト機能に
関しては後発であり、現状、あまり良い組み合わせが無い
かも知れない。
![_c0032138_17351044.jpg]()
まあ、いずれにしても、全てのボディキャップ系レンズは
画質やら表現やらを気にして撮るような類のものでも
無いかも知れない。それこそボディキャップの代わりに
常時装着しておき、「いざとなったら」それでも撮れる
という感じであろう。
ちなみに、「いざ」とはどんな状況か?と言えば、例えば
撮影に(超)望遠レンズを持ち出したが、それは、ある用途
(例:野鳥撮影やスポーツ撮影等)に使うものであり、
最初からそれをカメラに付けていっても、撮るものがないし
ハンドリング(持ち運び)も悪い。
そこで、撮影の現地に行く迄は、カメラ本体にはFILTERLENS
をつけておき、それでスナップ撮影や、記念撮影や、現場の
記録撮影等に使えば良い、と、まあそんな感じであろう。
こういう事が「いざという場合」なのであれば、本レンズ
におけるノーマルモード撮影でも十分に使い道が出てくる。
----
さて、今回の記事「ボデイキャップ レンズ特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・
紹介している。
今回の記事では、ボディキャップ(Body Cap)レンズを
5本紹介しよう。
本来の「ボディキャップ」とは、(今更説明の必要も無いが)
カメラを保管や移動する際に、レンズを装着しない場合に
おいてカメラの内部構造(センサー、ミラー等)を保護する
為にマウント面に嵌める、単なる「蓋(フタ)」の事である。
で、「ボディキャップ レンズ」とは、ボディキャップ形状の
写真用交換レンズ全般を指す。つまり普段はカメラを保護する
為の蓋として用いるが、内部にレンズが組み込まれていて、
一応それで写真も撮れる仕組みだ。
----
では、まず最初のシステム

(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS Pen Lite E-PL2(μ4/3機)
2012年発売のμ4/3機専用薄型MF広角レンズ。
「ボディキャップレンズ」の歴史を考察した場合、
本レンズ以前の時代にも海外製の「PC IN A CAP」(後述)
等のボディキャップ風レンズが発売されてはいたが・・
まあ、初めて一般ユーザー層にも認識されたボディキャップ
レンズとしては、本BCL-1580が最初であったと思う。
なお、ボディキャップレンズの多くには、「シールド位置」
があって、そこへ設定すると、レンズの前にバリアーが出て
完全な「蓋」になる。本BCL-1580にも、その機構があって、
これで実際にボディキャップ代わりになるのだが、まあ
「シールド位置」を持たないレンズもある為、この機構が
ある事が「ボディキャップレンズ」としての必須要件という
訳では無い。

銀塩時代の一眼レフ用「パンケーキレンズ」のような感覚で
マウント面付近の距離に、レンズを集中配置すると、薄型で
広角気味の焦点距離のレンズが出来る。これがすなわち、
ボディキャップレンズの要件を満たす設計だ。
本BCL-1580は、3群3枚構成のトリプレット型である。
銀塩パンケーキの多くは3群4枚のテッサー型であったが、
トリプレットは、そのテッサーの原型となったレンズ構成
であり、そのままでは描写力はテッサーに負けるが、適宜
絞り込む事で、描写力は、そこそこ良くなる。
本BCL-1580では、絞り固定型の開放F8として、画質を
確保している設計であろう。
非常に薄型で、重量は22gしか無い。
見た目は、まるで玩具のようだが、そこそこちゃんと写る。
ピントはMFのレバー式であり、無限遠から少し手前の
「パンフォーカス位置」にクリックストップがあり、普段は
そこにセットしておくと、中遠距離被写体ではピント合わせ
が不要となる。また遠距離撮影であれば、念の為に∞位置に
セットしても良いし、近接撮影であれば、適宜ピントリング
を廻す。今回使用機の古いE-PL2(2011年)には、EVFや
ピーキング機能は無いが、被写界深度が、ある程度深いので、
背面モニターで見るのと、目測の勘ピントでも十分だ。
なお、オリンパス機での内蔵手ブレ補正機能を使う際には、
手動で焦点距離を15mmにセットする事を忘れないように。
30mm相当の広角レンズなので、手ブレはしにくいのだが、
開放F8と暗い為、意図せずシャッター速度が遅くなる場合
はあるので、手ブレ/被写体ブレには注意する必要がある。
さて、このような「ボディキャップレンズ」の存在意義
だが・・ どうも微妙だ。
オリンパスはこのレンズを、正式な交換レンズでは無く
「アクセサリー」として扱っている。
銀塩時代の1970~1990年代、オリンパスでは、
OMシステムにおいて、完全なパンケーキレンズは作って
いなかったが、準パンケーキ型レンズとして、OM28/3.5,
OM40/2,OM50/1.8の3本が存在していた。
28/3.5と50/1.8は、当時も現代でも入手は容易であるが
40/2は極めてレア品で、1990年代のパンケーキブーム時代
には異常な高値で取引が行われていた。(相場が高価すぎて
コスパがとても悪かった為、購入は見送った)
で、パンケーキブームの際に、高級一眼レフ(大型機)に
薄型のパンケーキレンズを付ける事が、当時の上級マニア
の間では「格好良い組み合わせ」(=「大小効果」と
本ブログでは呼ぶ)として流行していたのだ。
(レンズ・マニアックス第27/28回「薄型軽量レンズ」
編記事参照)
まあ、CONTAX RTSⅢ+T45/2.8が、その典型例ではあるが、
オリンパスOMは、高級機でも小型であったので、その
「格好良さ」が得られなかった事も、私がOM40/2の購入を
見送った理由の1つにもなっている。

オリンパスはμ4/3機初のフラッグシップ機「OM-D E-M1」
を発表するが、その際、ボディ単体発売において、
本BCL-1580がセットされていた。まあ「おまけ」としての
割安感を演出する意味が強いのだろうが、
「フラッグシップ機+薄型レンズ」という、およそ15年前の
流行をモチーフとしている事で、「なかなか、マニア心理を
ついた、上手い組み合わせだ」と思った。
(だが、私としては逆に、既にBCL-1580を所有していた為、
E-M1の購入意欲を、少しだけ損なってしまった。まあ元々
高価すぎる機体であった為、その時点で購入する事は絶対に
無かった。当時のμ4/3機は相場の下落が激しかった事もある。
E-M1は後年に中古が安価になったので、その後購入している。
なお、何故E-M1の中古相場が安価なのかは、後継機E-M1Ⅱ
での改良点が多く、初期型は「仕様老朽化」が目立つ事。
それと、近代ではハイエンド級機体をビギナー層が欲しがり、
「機体性能に頼る」ニーズが強い為、新機種に次々と買い替え
る傾向が強い点がある。この為、E-M1X/Ⅲが新発売されると
今度は、前機種E-M1Ⅱが中古市場に溢れかえった)
さて、本BCL-1580については、他記事でも何度も紹介
している為、説明はこのあたりまでで留めておく。
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では、次のシステム

(新品購入価格 2,000円)(以下 PC IN A CAP)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
2005年に発売された、各種一眼レフマウント用の
ボディキャップ(風)パンフォーカスレンズ。
まあ、「トイレンズ」の一種と言っても良いであろう。
型番のPCとは「パースペクティブ・コントロール」の
意味で、いわゆる「シフト機能」だ。
ニコンの「PC-NIKKOR」も同様の機能を意味するので
良く知られた略語であろう。(注:現代でのニコン製PC
レンズでは「PC(-E) NIKKOR」と、ハイフンが入らない。
同じメーカーでも、時代により型番ルールはまちまちだ)
シフト量は上下左右に最大5mm、フルサイズ対応レンズ
であるのだが、2005年当時において、デジタル一眼レフは
APS-C機が主流だ。APS-C機では残念ながら、殆どシフト
効果は得られない。

の使用を想定していたのであろう。そういえば、当時の
資料を見ると、本レンズは、M42,FD,MD,OMなどの銀塩用
MFマウント版も発売されていた。
なお、そうした事情からか? APS-C機では効かないPC機能
を省略した「LOREO LENS IN A CAP」が、同時期か後年に
併売されていた模様である。
私は、後年に本「PC IN A CAP」は量販店で在庫処分品を
購入できたのであるが、「LENS IN A CAP」は簡単には
見つける事ができずに未購入だ。
なお、PC型の方は、どうやら現代でも稀に継続生産されて
いる模様なので、タイミングが合えば通販等で入手できる
かも知れない。
勿論、中古市場にはこうした安価なトイレンズは、まず
流れて来ないので、そこで探すのは不可能に近い。
本「PC IN A CAP」は、基本的にはトイレンズである。
だから写りをとやかく言う必要は無いし、むしろ酷い写り
での「Lo-Fi描写」すら期待してしまう。その点では、
「PC機構が無い型の方が写りが悪い」という情報もあるが、
所有していないので、わからない。元々、他人の評価は
それがどういう視点で評価されたのがわからない為、信用が
出来ないのだ。例えば、「トイレンズとしてのLo-Fi描写
を期待する」という視点の評価においては写りが悪いレンズ
を絶賛できるだろうし、そのLo-Fiの意味や用途がわからない
ユーザー層には、そうしたレンズは不要な商品となる。
逆に「このレンズは写りが悪い」と一刀両断した評価だった
としても、Lo-Fi描写が欲しいユーザーには必要な商品だ。
結局、トイレンズ系の評価とユーザーニーズは、いつでも
一致する訳では無い。
さて、シフト機能だが、実はAPS-C機で使った場合でも
僅かに効いている。
しかし、シフトを掛ける前後、等の比較の対象が無いと、
単に1枚の写真を見ただけでは、それは良くわからない。
(仮にそれをやっても、がっかりする程に差が少ないので
今回は割愛する)

仕様である。F11と十分に絞り値は大きいのだが、これでも
シフトさせた場合等で被写界深度が不足する状況がある。
その際、本レンズでは、F22の絞り値があって、そちらを
利用する事が出来る。
ただし、一眼レフの光学ファインダーでF22では、暗く
なりすぎて使い難い。そういうケースがありうる為、
今回はEVF型一眼レフのSONY α65を使用している。
なお、こうした安価なレンズを使う場合、母艦をあまりに
高価なカメラとするとアンバランスだ(持論の「オフサイド
の法則」)その意味でも、SONY α65のような、安価で
高性能な機体は、トイレンズ用母艦として向く。
なお、PC機構は、このシステムにおいては使い道が無い為、
本記事では、α65の内蔵エフェクトを使い、本レンズを
一種の「トイレンズ」として扱っている。
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では、3本目のボディキャップ

11.5mm/f9(中古購入価格 4,000円)(以下、07MOUNT)
カメラは、PENTAX Q(1/2.3型機)
2013年に発売された、PENTAX Qシステム専用、固定絞り、
固定焦点パンフォーカス型ボディキャップレンズ。
厚さは約7mm、重量は8gと、史上最軽量の交換レンズだ。
1/2.3型機(Q/Q10)、1/1.7型機(Q7/Q-S1)の両者で使える
が、画角が広い1/1.7型機の方が、本レンズの特徴が顕著に
出る。だが、今回は試験的にPENTAX Qに装着してみよう。
その際の画角は、計算上では約63mm相当なるが、
PENTAX Qシステムは、途中でセンサーサイズが変わった際、
複雑な画像処理で両者の互換性を維持している為、正確な
換算画角については良くわからない。
まあ、だいたい標準画角だし、あまりそれを気にする必要も
無いであろう。

「収差」が多く発生する、この収差により、まるで虫眼鏡で
風景を見たように、画面周囲に向かって強烈に画像が流れる
印象が得られる。
この効果は非常に独特であり、およそ他のレンズでは、
トイレンズも含め、このような描写傾向を持つものはない、
つまり、トイレンズの方がよほどちゃんと写る、という意味だ。
この効果を単体で、あるいは、Qシステムに備わる優秀な
エフェクト機能も含めて上手に使いこなす事が、アート表現と
しての重要なポイントとなる。
固定焦点型(パンフォーカス型)レンズとは言え、遠距離に
まで被写界深度がある訳では無い、むしろ中近距離1~2mが
主要な被写体距離であろう。
この感覚を理解するには、本レンズを使う前に、市販の
虫眼鏡を覗いてみるとわかりやすい。それは概ね近距離から
中距離でしかはっきり見えず、遠くの風景などは、むしろ
ボケて見える。これが、本07 MOUNTの距離感とほぼ同じだ。
また、虫眼鏡で見た際、画面中央部以外の周囲は、大きく
流れて写る、この特徴も本レンズと同じだ。
さて、では虫眼鏡で感覚をシミュレーションできたところで
本レンズをフィールド(屋外)に持ち出してみよう。
被写体がはっきり見える範囲は、数m先の立方体の空間だけだ。
この事を、本ブログでは「ストライクゾーン」と呼んでいる
ピッチャーから見て、打者の前にあるそのゾーンは直方体の
三次元空間である。これと同じような感覚で被写体を探せば
良い訳だ。つまりゾーンの外は、すべて「ボール」となる。
余談だが、近年の野球中継では、ストライクゾーンをバッター
毎に、白色枠や緑色枠で、CG合成してスーパーインポーズ
表示する場合がある。とてもわかりすくて好ましいのだが・・
1つだけ注意点、ストライクゾーンは実際は「三次元空間」で
あるから、CG枠のような二次元の長方形では無いのだ。
だから変化球などで、ゾーンを掠めてもストライクであり、
CGの枠とはイコールにならない場合も有りうるという事だ。
野球の件はさておき、写真においても全く同様の問題点があり
「構図」というものを、上記ストライク枠のような二次元の
長方形として認識してしまうと、実際の被写体が三次元で
ある事を忘れてしまうか、あるいは理解(認識)できていない、
という事に繋がってしまう。
そして、ビギナー層では100%、この感覚ができておらず
被写体を二次元平面として認識してしまう。
何故100%と断言できるか?と言えば、被写体を三次元として
認識できれば中上級者であり、それができなければ初級者
であるからだ。つまりこれは、それがわかるか、わらかないか
で、線引きをしている。
「魚眼レンズ」の記事でも述べたが、魚眼レンズの使いこなし
は、撮影側が三次元的にカメラの微妙なアングルを意識しないと
まともに撮れない、これも難しい事であり、初級中級層では
まず、それは出来ない。
魚眼ではレンズ側の課題であったが、同様に被写体も三次元的
であり、これが認識できないとならないのだが、それを練習
あるいは習得する為の機材が、世の中には殆ど存在しないのだ。
そこで本レンズ07 MOUNTである。これならば、その三次元的
感覚の練習用機材(教材)としても最適だ。
本レンズを何も考えずに使うと、単なる「写りが悪いレンズ」
になってしまうが、初級中級層では、残念ながら、そこまでの
使い方しか出来ない。
けど、これの「ストライクゾーン」を意識して、かつ、
ボールとなる領域には、どのような構図的な処置を加えるか
を考える事が、とても良い練習となる訳だ。

のではなく、エフェクトを組み合わせてまともな「表現」に
しようとすれば、さらに難易度が格段に上がるので、むしろ
練習のレベルを上げる為にも効果的だ。
まあ、とても難しい話ではある。そう簡単に出来る物でも
無いが、そういう風に本レンズを用いる事が本筋であって、
その為に、私もこれで練習を繰り返している。
PENTAXのシステムは、銀塩時代から現代に至るまで、
常に「ユーザーの考えの斜め上を行く」仕様となっている。
比較的安価な機材だから「初級者向けか?」と思ってしまうと
さにあらず、非常に高度な内容がその仕様や機能の裏に隠されて
いる場合が多々ある為、「PENTAX機は、いくら使っても、使い
こなし切れるものでは無い」という印象すらある。
PENTAX機は初級中級層に人気な為に、この事実に気づいて
いる人は極めて少ないのではあるが、上級マニア層等であれば
PENTAX機やPENTAXレンズを購入して、その「奥深さ」を
味わってみるのも良いと思う。
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では、次のボディキャップ

(新品購入価格 6,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2018年発売の、「写ルンです」レンズ再利用品トイレンズ。
姉妹商品「Utulens」(うつれんず)や、本レンズ
「Wtulens」(読み方不明)の名前は、それを由来とする。
本レンズはLマウント(注:銀塩L39の事)対応品であり、
レンズ本体そのものが薄くても、ミラーレス機で使用時には
マウントアダプターが必須で、全体的にはボディキャップ
とは言い難い形状となるが、まあ、細かい事は言うまい。
本レンズは「写ルンです」レンズの再利用(移植)品で、
1群2枚、非球面メニスカス(三日月)型構成レンズを
2枚、前後に張り合わせて広角化したものである。
銀塩「写ルンです」では、フィルム面をあえて湾曲させて
レンズの像面湾曲収差を補正するという特殊構造であったが
デジタルでは、それは無理なので、簡易絞り機構を入れて
収差を減らし、画質を維持しようとしている。
この為、銀塩「写ルンです」がF10程度の明るさであったが
絞り機構、および張り合わせ構成により、本Wtulensでは
F16と、若干暗くなっている。

優れている事が特徴であった。
が、本Wtulensでは、2枚張り合わせと、前述の像面の
湾曲構造が実行不能である為、銀塩版よりも画質は
当然、かなり落ちる。
本Wtulens の使用上では、あまり銀塩時代の、良く写る
印象を損なわないように意識するのも、コンセプト的に
有りだし、それとは逆に、あくまで「写ルンです」は
銀塩時代の安価なシステムであるから、銀塩っぽくユルく
撮る方法論もある。
前者、Hi-Fi志向の場合、μ4/3機やAPS-C機を使って
みるのも良く、小さいセンサーで周辺収差を消して、
かつ露出やら光源状況やらにも留意して撮る。
小センサー機では画角が狭くなるが、そんな事は全く気に
する必要は無い、本Wtulensは17mmの広角ではあるが、
これをフルサイズ機で使っても、残念ながらケラれて
超広角画角は得られない弱点もある。
だから、最初から「準広角レンズだ」と思って撮れば良い。
それよりも、レンズの弱点に配慮しながら撮っていけば、
元々描写力の高いレンズだ、そこそこまともに写るであろう。
この結果、例えば、銀塩時代を知らない人にも、
「へ~、これが”写ルンです”のレンズか、当時から
なかなか良く写っていたんだね」という印象を
与える事ができるかも知れない。
後者、Lo-Fi志向の場合は、元々銀塩「写ルンです」は
固定絞り、固定シャッター速度で、露出はネガフィルムの
ラティチュード(≒ダイナミックレンジ)頼みであった
事から(つまり、あまりに明るかったり暗かったりする
被写体には「写ルンです」は本来の性能が発揮できない)
・・デジタルでも、その弱味をシミュレートする為、
あえて逆光条件等の厳しい被写体状況で撮影したり、
収差が厳しく出るフルサイズ機を使ったり、あるいは
意図的に露出をバラつかしても良いだろう。

控え目な処理のものを使用しても(すなわち、若干ユルい系
の描写に加工する)、それなりに効果的であろう。
デジタルから写真を始めた人達や、写真をあまり撮らない
人達は、昔のフィルムカメラは、皆、酷い写りだったと
誤解しているのだが・・
実際にはそういう事は一切無くても、あえてそういう印象を
与えるような写真とする意図が有り得る。そうする事で
「なんだかフィルムっぽくて、懐かしい感じですね」と
いったイメージを、見る人に与える事ができる訳だ。
結局のところ、こういうトイレンズ系を使用する場合には、
どのように「コントローラブル」にするかは、撮影者の
考え方(コンセプト、意図)やスキル次第という事だ。
レンズの言うがままに撮っていたら、単にレンズ性能に
振り廻されているだけだ。高性能なレンズでも、低性能な
レンズでも、どのようにでも好きに撮れるようにしてくのが
重要であろう。さもないと、高価なレンズを買ったけど
「性能が気に入らない」とか言って、またさらに高価だったり
最新型だったりのレンズの方に、目が移ってしまう。
それは別に、問題だと言う訳ではないが、あまりに非効率的な
お金の使い方であるし、あまりに「機材の性能頼み」の状態だ。
「レンズを使いこなす」という意味は、「そのレンズの描写
性能までも管理下に置く事が望ましい」という意味でもある。
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では、今回ラストのシステム

(中古購入価格 6,000円)(以下、FILTERLENS)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)
2015年に発売されたFUJI Xマウント専用ボディキャップ型
効果フィルター内蔵、固定焦点型レンズ。
銀色版、黒色版が存在する(注:黒色版は生産完了か?)
一種のボディキャップレンズであり、ピント機構を持たない。
しかし仕様的に「完全パンフォーカス」には、私の計算上では
なっていない様子なので、特に遠景ではピント感の甘さが
気になるかも知れない事は注意しておく必要があるだろう。
が、そういう撮り方をするならば、FUJI Xマウントには描写力
に優れたレンズが沢山あろうから、それらを使えば良い。

ノーマル、クロスフィルター、ソフトフィルターの3種類の
効果による描写を使い分ける事だ。
内、ノーマル撮影は、前述のように、他のより優秀なHi-Fi
仕様のレンズで代替すれば良い。
もしこの時、ノーマルモードで、トイレンズ風の写り(例えば
周辺減光や解像感の甘さ)が出るのであれば、それはそれで
ノーマルの使い道があった、でも本FILTERLENSは、4群4枚
という本格的なレンズ構成であり、そこそこちゃんと写って
しまい、むしろ中途半端に用途が無い。
それから、クロスフィルター効果は、まあ派手ではあるが
夜景撮影などでそれを入れて撮ってしまうと、後からその効果
をレタッチ等で消す事は不可能となる。加えて「弱めに掛ける」
とかの調整も出来ない。
さらに言えば、このフィルターを使用すると解像感も悪化する。
よって、本レンズのクロスフィルター効果は、レタッチ等で
後付けする方が、様々な面で簡便だとも思う。
対して、ソフトフィルター効果はなかなか使える。
本来、ソフト効果はフィルターよりも、実際の「ソフトレンズ」
を使った方が望ましい。それはコントローラブルである事や
物理フィルターでは得られない雰囲気が出せるからだ。
(本シリーズ第7回記事「ソフトレンズ編」参照)
だが、ソフト(フォーカス)レンズはピント合わせが困難で、
実際の使用時には、かなりストレスとなる。
そこで、本FILTERLENSのソフトフィルター効果であるが、
ピント合わせが不要な準パンフォーカスなので、使用が極めて
楽である。ここで課題となる「ソフト量調整不可」だが、
割合に丁度良い効果量となっている為、ほとんど不満は感じ
ない事であろう。それから、本レンズでのソフトフィルター
使用時の画角は、約36mm相当と準広角だ。
広角から準広角の「ソフトレンズ」は、他には安原製作所
MOMO 100(28mm)と、LENSBABY TRIO28 (未所有)の
2種類しか存在しないので、とても希少だ。
私は、本FILTERLENSを数年間使っているが、実用上では、
ソフトフィルター効果を主に使うのが良いではなかろうか?
と近年では思っている。
なお、その際にFUJIFILMのXシリーズミラーレス機に搭載
されている優秀なフィルムシミュレーション機能と併用する
のも良いであろう(特に、アスティア、モノクローム系、
セピア等)
さらには、最初期を除くXシリーズのカメラにはエフェクト
(アドバンスド・フィルター)機能も搭載されているので
それを組み合わせても良いが、FUJI機はエフェクト機能に
関しては後発であり、現状、あまり良い組み合わせが無い
かも知れない。

画質やら表現やらを気にして撮るような類のものでも
無いかも知れない。それこそボディキャップの代わりに
常時装着しておき、「いざとなったら」それでも撮れる
という感じであろう。
ちなみに、「いざ」とはどんな状況か?と言えば、例えば
撮影に(超)望遠レンズを持ち出したが、それは、ある用途
(例:野鳥撮影やスポーツ撮影等)に使うものであり、
最初からそれをカメラに付けていっても、撮るものがないし
ハンドリング(持ち運び)も悪い。
そこで、撮影の現地に行く迄は、カメラ本体にはFILTERLENS
をつけておき、それでスナップ撮影や、記念撮影や、現場の
記録撮影等に使えば良い、と、まあそんな感じであろう。
こういう事が「いざという場合」なのであれば、本レンズ
におけるノーマルモード撮影でも十分に使い道が出てくる。
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さて、今回の記事「ボデイキャップ レンズ特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・