所有している一眼レフ等用の50mm標準レンズを、AF/MF
や開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
今回は、予選Kブロックとして「50mm相当AFマクロ」の
レンズを5本紹介(対戦)する。
なお、「50mm相当マクロ」とは、デジタル時代における
非フルサイズ対応レンズで、換算画角が50mm近辺となり、
かつ、レンズ単体で、センサーサイズ換算撮影倍率が
1/2倍以上となるものを差す。
一眼レフ用、ミラーレス用は問わない。
つまり、焦点距離に関しては、
APS-C機専用レンズでは、焦点距離が30~35mm程度、
μ4/3機専用レンズでは、焦点距離が25~30mm前後
となり、撮影倍率に関しては、一般的なスペック表記では
各々の機種のセンサーサイズ換算であるが、フルサイズに
換算すれば、仮に等倍マクロであれば、
APS-C機では、約1.5倍、μ4/3機では約2倍となる。
また、ミラーレス機等では、さらにデジタル拡大機能により、
見かけ上の撮影倍率を上げる事が容易に可能であり、
もはや銀塩時代の「撮影倍率が、1/2倍、等倍」という
概念や住み分けも殆ど意味が無くなってきている状況だ。
それとこの条件に合えばMF/AFは問わないつもりだったが、
所有しているこのカテゴリーのレンズは全てAFレンズで
あったので、今回はMFレンズの紹介(対戦)は無い。
---
さて、まずは今回最初のマクロレンズ。
![_c0032138_17240217.jpg]()
レンズ名:SONY DT 30mm/f2.8Macro SAM(SAL30M28)
レンズ購入価格:10,000円(中古)
使用カメラ:SONY α65(APS-C機)
ハイコスパ第14回記事等で紹介の、2009年発売のAPS-C機
専用AF単焦点準広角(標準画角)等倍マクロレンズ。
![_c0032138_17240221.jpg]()
本レンズは小型軽量の「エントリー(マクロ)レンズ」である。
描写力は他の一般的なマクロレンズに比べスペシャルな要素は
殆ど無く、まあ普通に、そこそこ良く写るマクロレンズだ。
だが、一般的にマクロレンズは特に近接域での画質を最優先に
設計されている為、マクロでは無い通常型のレンズに比べて
(それらは無限遠で最高画質を得れるように設計されているから)
マクロの方が描写力が高いと感じる事が殆どだ。
だから本レンズは、そうした高画質な「専門マクロ」に比べると
描写力が低く感じてしまうのはやむを得ないのだが、それでも
通常レンズよりかは若干のアドバンテージがあり、本レンズが
エントリーレンズのカテゴリーで極めて安価に購入できる事から
とてもコスパの良いレンズとなる。
![_c0032138_17240265.jpg]()
特徴として、WD(レンズ前からの最短撮影距離)が短い事がある。
これは一般的な近接撮影では長所にも短所にも成り得る。
その長所としては、被写体に非常に近接し、360度どの方向
からも撮影が可能な為、背景の取り込み等を含めた構図の
自由度が極めて高い事だ。
短所としては、近接しないと大きな撮影倍率が得られない為
被写体に寄れない状況(物理的にそれ以上近寄れないとか、
被写体が例えば昆虫等で逃げてしまう、または刺されるので
危険等)では不利になるし、カメラやレンズの影が被写体に
かかってしまう場合もある。
しかし他の意外な長所もあり、具体的には、WDが短いレンズ
でないと装着が難しいアタッチメント(付属品)の使用だ。
その1例として「ZENJIX soratama 72(宙玉)」を使用する
際には、本DT30/2.8は極めて相性が良い(以下写真)
![_c0032138_17240187.jpg]()
本レンズで「宙玉」を使った際の写真は、ハイコスパ第21回
記事等に掲載しているので興味があれば参照されたし。
その他、あまり特徴は無いレンズだ。
あくまでエントリーレンズであるので、作りの安っぽさ等の
課題はある。また、ピントリングもスカスカな感触で
いわゆる「トルク感」も無く、MF主体が必須となる近接撮影
においては、若干の「操作性」上の不満を感じてしまう。
ただ、かろうじてピントリングは「有限回転式」であるので、
本記事で紹介(対戦)する、他の「近代マクロ」レンズの
無限回転式ピントリングに比べては、本レンズがMF操作性上
では絶対的に優位である。
値段も安価な為、SONY α(Aマウント)ユーザーでは必携の
レンズであろう。
---
では、次のマクロレンズ。
![_c0032138_17241208.jpg]()
レンズ名:SONY E30mm/f3.5 Macro (SEL30M35)
レンズ購入価格:14,000円(中古)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第72回記事、補足編第2回で紹介の、
2010年代のEマウントAPS-C機用AF等倍マクロレンズ。
![_c0032138_17241246.jpg]()
本レンズはミラーレス機用で、しかも現代ではフルサイズの
FEマウントが主力となっているSONY製品であるから、APS-C機
用のレンズとして、古くて、ニーズも少ないだろうから、若干
不人気かも知れない。しかし中古相場はその時代により変動し、
1万円台前半まで下がったり、また1万円台後半まで上がったり
と、原因不明の相場挙動を示している。
(注:恐らくだが、SONYフルサイズ機の商品展開タイミングに
影響されている模様だ。同様な例はニコンのDXレンズにもある)
本レンズには長所とも短所とも言える強い個性的な特徴があり、
それは「輪郭線がとても強く、カリカリの描写になる」という
点である(「カリカリ描写」については、匠の写真用語辞典
第5回記事参照)
これは面白い特徴であるが、撮影側としてはこの特徴を良く
認識した上で被写体を慎重に選択しなければならない。
「マクロレンズだから花の撮影等に向くだろう」と思って、
花の名所や植物園等に行って本レンズを使うと、(カメラの
モニター上では目立たないが)後で撮った写真をPC等で見ると、
「ひぇ~ どの花も、みんなカリカリに写っているよ(汗)」
などの状況になってしまう。
まあすなわち、解像力が強いカリカリ描写は、それが必要な
被写体、たとえば細かいパターンがある風景とか、
製品基板や電子部品などの精密機械の撮影とか、医療用や
学術用で、患部や検体等のサンプルを撮影する場合とか、
かなり限られてくる訳だ。
これらは技術用語では、いずれも「空間周波数分布が高い画像」
と言い換える事も出来る。、
まあ、銀塩時代の「平面マクロ」(匠の写真用語辞典第5回記事)
では、最初からそういう用途(医療、学術、複写)を想定した
コンセプトで設計されたレンズもいくつかあったのだが、
近年ではこうした特性を持つマクロレンズは珍しいので、
本 E30/3.5のこの特徴を欠点とは思わず、むしろ用途を定めて
積極的に活用するのが良いであろう。
![_c0032138_17241133.jpg]()
本レンズでは、描写特性を除いた欠点もある。
まず無限回転式ピントリングであるから、最短撮影距離が指の
感触ではわからず、結果MF操作には向かず、AF頼りになる事だ。
しかし、NEXシリーズ等の初期SONYミラーレス機はコントラスト
AFのみの搭載であり、AF精度があまりよろしく無い。
特に本レンズの場合、近接付近でオートマクロ動作が入って
いる様子も見られ、特定の距離範囲では、ピント精度の狭間に
なって、ほとんどAFではピントが合わなくなる。
この状態でのピント問題は「重欠点」のレベルだ。
だが、後年のαシリーズ・Eマウント機での像面位相差AFを
組み合わせた「ファスト・ハイブリッドAF」を使えば、若干
マシになるとは思う。しかし本E30/3.5の場合は、当初販売
時点では、ファスト・ハイブリッドAFには対応しておらず、
それを有効にするには、レンズ側のアップデートが必要だ。
が、手順が少々面倒なので、まだこのアップデートはやって
いない。現状本レンズは、NEX機で使う事が殆どなので関係
ない訳だ。(追記:本記事執筆後に、この課題を放置した
ままではまずいと思い、SONYの像面位相差AF搭載機を経由
して、レンズ側をVer.02にアップデートした。
像面位相差AF機では、AFの課題は、だいぶ改善された模様
ではあるが、逆に同機能の非搭載機(NEX-7等)での用途が
減ってしまった(組み合わせると低性能で面白く無い)
ので、なんだか良し悪しあったかも知れない)
また、WDが短い特徴があるが、それは前述のDT30/2.8と
同様に、長所にも短所にも成り得る。
価格が比較的安価なので、SONY E/FEマウントユーザーで
あれば、持っていても悪く無いレンズではある、しかし
この個性的な描写特徴は、被写体をかなり限定すると思うので、
「この1本を持っていれば、Eマウント用マクロとして十分」
という状況には、まずならないので、必ず他のマクロレンズを
(Eマウントでも、他マウントでも)併用する必要があるだろう。
---
では、次のマクロレンズ。
![_c0032138_17242050.jpg]()
レンズ名:OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/f3.5 Macro
レンズ購入価格:22,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
レンズ・マニアックス第7回記事等で紹介の、
2016年発売のμ4/3専用単焦点標準画角マクロレンズ。
レンズ単体で等倍を越え、1.25倍の撮影倍率となる。
![_c0032138_17242096.jpg]()
オリンパスでは、本レンズの撮影倍率をμ4/3からフルサイズ
に換算し「2.5倍相当のマクロレンズ」と呼んでいる場合も
あるが、本記事の冒頭に述べたように、現代では、もはやその
撮影倍率の定義もあまり重要な意味を持たなくなってきている。
さて、本MZ30/3.5であるが、価格が比較的安価でありながら
十分な描写力を持つ事が長所である。
「解像力重視」という設計コンセプトがある点は、近代マクロ
としては良くある話なのだが、かといって、それらのレンズに
よくある「ボケ質の汚さ」または「ボケ質破綻の発生」の
頻度はあまり多くは見られない、
すなわち、「バランスが取れた高性能マクロレンズ」である。
レンズ構成は6群7枚と、数字だけ聞けばあまり複雑には見えない
が、DSA(Dual Super Aspheric=大偏肉両面非球面)、
EDA(Extra-low Dispersion Aspheric=特殊低分散非球面)
などの新型ガラス素材を使っていて、気合の入った設計だ。
ただ、「新技術を使えば常に良くなっている」という訳では
無い事は言うまでも無い。ある時代のある瞬間に出てきた新技術
は、その後の時代まで生き残れるかどうか?という点が課題だ、
具体的には、製造や素材コストが適正か否か? あるいは他社が
その新技術をさらに上回る最新技術を投入してきた際でも、
性能優位性を維持できるか否か? その技術は自社の固有な
ものであるかどうか?などの点である。
これらの「技術競争」により、数年後になって初めてその新技術
が本当に有益であったのかどうかが判断できる訳だ。
あえてこの時代のみで評価するとすれば、オリンパスは元々
医療分野において世界初の内視鏡を作ったなど、「マクロ」が
ひとつの看板商品となっている。銀塩時代からを通じて、
優秀なマクロレンズを開発し販売する事は、オリンパスの企業と
してのブランドイメージを維持する意味でも重要な命題であり、
まあつまり、高性能なマクロレンズが多かったという歴史だ。
この傾向はデジタル時代に入っても当然続いているのだが、
ミラーレス時代に入ってからのオリンパスマクロレンズの
ラインナップ数はあまり多くはなかった(2012年発売の
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm/F2.8 Macroがあったのみ)
![_c0032138_17242032.jpg]()
本MZ30/3.5は、2016年と遅ればせながら発売された(標準)
マクロであるが故に、オリンパスのブランドイメージ維持の為
の気合が入ったレンズであると思う。価格があまり高価では無い
事は、この時代、フルサイズ一眼レフ陣営に押され気味である
μ4/3の普及戦略として、赤字覚悟の「出血大サービス」の
可能性もあると思う。(=エントリーレンズ的な企画方針)
よって、本レンズは、価格からすれば「コスパの良いマクロ」
と見なす事が出来るだろう。
弱点であるが、ミラーレス機の例に漏れず、AF精度が足らず、
近接ではピントが合い難いのが大きな課題だ。
(注:E-M1等、像面位相差AF搭載機では若干マシになる)
加えて、これも毎回毎回書いている、ミラーレス機用レンズ
の殆どで採用されている無限回転式ヘリコイドの問題がある。
これではMF撮影は致命的と言えるまでの操作性の悪化を招いて
しまうのだが、E-M5Ⅱにおいては、S-AF+MFモードで使えば
「AFが合わなかった場合」にのみ、MFに容易に移行は可能で
その際、MFアシスト機能も自動的に使用する事ができる。
ただ、この設計思想は「AFが主体で、MFは、あくまでAFが
合わない場合の補助」というスタンスであろう。
本来であれば、近接撮影では、ほぼ100%がMF撮影だ。よって、
このシステム設計思想は、一般撮影(ズームレンズを主体とした
中遠距離撮影)では有効だが、マクロレンズや、(被写界深度
が浅い)大口径単焦点レンズを使った場合での撮影には適さない。
まあ、カメラを含めたシステムそのものに問題があるという事
であり、本レンズの描写力そのものには、まず不満は無いだろう。
なお、被写界深度合成やフォーカスブラケット等のオリンパス
μ4/3機(概ね2010年代後半よりの機体)の新鋭機能には、
本レンズは対応している。(ただし、それらの追加機能は
母艦側で、それらを呼び出す操作系があまり練れていない点が
大きな課題だ。また、深度合成等は、手持ち撮影では非常に
難易度が高くなるのも弱点だ。三脚使用オンリーであれば
せっかくのユニークな機能も用途制限が厳しくなる)
---
さらに、次のマクロレンズ。
![_c0032138_17243235.jpg]()
ユニット名:RICOH GR LENS A12 50mm/f2.5 MACRO
レンズ購入価格:24,000円(中古)
使用カメラ:RICOH GXR(A12 ユニット使用時APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第1回,第10回,第28回,第70回
ハイコスパ第17回等、多数の記事で紹介した2000年代末の
AF単焦点標準画角1/2倍(ハーフ)マクロユニット。
本レンズにおける50mm表記はフルサイズ換算画角であり
レンズの実焦点距離は33mmとなっている。
![_c0032138_17243297.jpg]()
何度も紹介しているレンズなので、殆どの長所と短所は
書き尽くしている。おまけに、GXRは古いシステムであり
「仕様老朽化寿命」が来ている事から、今からの入手は
もはや手遅れであり、全く推奨が出来ない。
結局、いまさら書く事は殆ど無いのであるが、まあいつもの
紹介記事の抜粋として長所と短所のみ簡潔にまとめれば
長所:
・上手くピントや撮影条件が決まった場合の、とんでもなく
優秀な描写力、この点では、下手をすれば近代の最新鋭
マクロにも勝てそうで、感動的と言える描写表現力を持つ。
・その高描写力が小型軽量のGXRシステムで得られる事。
短所:
・AFでもMFでも殆どピントが合わない。
なので、実用レベルでは使い物にならない。
まあこれはGXRシステムが最初期のミラーレス機であった為
時代背景的な技術レベルの問題であり、やむを得ない。
・現在このGXRシステムは勿論生産完了、古くて中古入手も
困難であるし、無理して入手しても、仕様老朽化寿命により
実用性が殆ど無い。
まあ、すなわち、もう過去の時代のシステムであり、現代に
おいて紹介する価値もあまり無いものだ。
で、1つだけ注意点だが、本システムではなくても、古い時代の
レンズとかカメラで、かつ現代では入手困難である状況において、
「非常に写りが良い」等の過剰で偏った評価がされる事が良くある。
そういった場合、そのレビューを読んでいる側は、その機材を
持っていないし、入手も困難だから、その真偽を判断しようが無い。
そして写りが良いと言った側において、例えば作例写真が掲載
されていたとしても、それがどれくらい手間をかけて撮られた
ものだかは良くわからない。
具体例としては銀塩時代のCONTAX (RTS) Planar 85mm/f1.4は、
大変良く写るレンズとして「神格化」されてはいたものの、
ピント精度やボケ質破綻の問題で、まともな写真が撮れる成功率
は私の経験上、約3%程度であった(36枚撮りフィルム中、1枚程度
まともに写っているものがあれば嬉しい、という比率)
つまり、そういう「凄い写りの写真」の裏には、膨大な数の
「ボツ写真」が隠れていたケースも多々あるという事だ。
そうした機材の評価・評判を信じて買った他のユーザーは
機材の性能的な弱点で「あれ?上手く撮れないよ」と思っても、
その事は公表しない、だって他の人がちゃんと撮れているならば
自分が撮れないのは、自分が下手である、という事を認めて
公表するようなものだ、だからそういった「ネガティブな情報」
は絶対に世の中には出て来ない。
だから、良い写りの「現物証拠」があったとしても、それを
頭から信用するわけにはいかないのだ。写真を撮る行為には
有限の時間しか無い、ひたすらP85/1.4で一生撮り続けるのは、
業務撮影はもとより、たとえ趣味撮影においても無理な話だ。
さて、RTS Planar 85/1.4の例に限らず、本GXR+A50/2.5も
恐らくは、もっと歩留まり(成功率)が低いシステムであろう、
撮影時点ではピントが合っているから、3%以下という事には
ならないとは思うが、そもそも撮影前にピントが合わない状態
が続くので、ジーコ、ジーコと無駄な動きをするAFシステムの
回数まで考慮すれば、このシステムでの成功率は0.5%以下か、
もっと低い比率でしか無い。
で、もう1つの課題。そういった「入手困難」の機材に対して
好評価が発生すると、元々レア物の中古相場が際限無く高騰して
しまう事だ。つまり「それだけ良い、凄いと言われているならば
何としてでも入手して、その写りを確かめてみたい!」という
願望が消費者側(特にマニア層)に現れるからだ。
下手をすれば、そうやって相場を吊り上げたい(高く売りたい)
からが故に、過剰なまでの高い評価をしている人が居るのでは
なかろうか? と、疑った見方すらできてしまう。
![_c0032138_17243294.jpg]()
本GR LENS A12 50mm/f2.5 MACRO も、そろそろ入手困難品
となっている。これに対して、過剰なまでの好評価をしてしまう
と、相場が上がってさらに入手不能となったりするし、
その原因が本ブログの評価だ、などと言われたらかなわない。
それに、こういう事は「逃がした魚は大きい」という、一種の
変な自慢(錯覚)と同じであり、今現在で評価がしにくいものは、
どんどんと妄想が膨らんで、「あれは凄かった!」などの
根拠の無い話になってしまうのだ。(その実例は多数ある)
要は、機材はそれが販売(中古流通含む)している時点において、
ちゃんとその機材の真の実力や価値を見抜き、必要とあれば、
その時点で購入する事が、「マニア道」として重要な事だ。
入手困難になった機材を、いつまでも未練たらしく思っていても
意味の無い事だ、それは失恋をした相手にいつまでもグズグズ
した感情を持ち続ける事と同様で、前向きな状況では無い。
その機材が入手不能であれば、もうすっぱりと諦める事だ。
---
では、今回ラストのマクロレンズ。
![_c0032138_17243754.jpg]()
レンズ名:HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited
レンズ購入価格:26,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX KP (APS-C機)
レンズマニアックス第13回記事で紹介の、2013年発売の
APS-C機専用準広角(標準画角)AF等倍マクロレンズ。
![_c0032138_17243752.jpg]()
当該紹介記事でも書いたのだが、旧来のPENTAXのsmcコーテイング
からHDコーティングに置き換わった時代のレンズである。
勿論HDコーティングの効果は逆光耐性の向上など、そこそこの
改善効果はある。・・と言うか、それ以前の時代のsmcでも十分に
優秀であったし、逆に一部の安価なsmc DAレンズ群の中には正直
言えば逆光耐性が低いものもあったのだ、これは安価に設計する
上での性能上の限界点であったかも知れず、smcは古くて、HDが
新しくて良い、等とは、簡単に決め付ける訳には行かない。
本レンズの長所であるが、まずその描写力は
バランスが取れた性能であり、他の近代マクロレンズのように
変に解像度優先で設計されてはおらず、様々な被写体状況に
おいて汎用性が高く、なかなか使いやすい。
レンズ自体の仕上げも良く、金属質感すら無いが、デザインが
優れているので、あまり不満は無いであろう。
有限回転式のピントリングを採用している為、MFで使う場合が
殆どのマクロレンズとして、及第点である。
しかし、今回の母艦のPENTAX KPでは、ライブビュー時にのみ
ピーキングが出る、という一眼レフでは希少な機能を搭載して
いるものの、光学ファインダーは旧来の型式であるから、
フォーカスエイドの他は、何一つMFをアシストする機能は無い。
このあたり、現代のミラーレス機に比べて、デジタル一眼レフ
でのMF操作は、だいぶビハインド(遅れ)が大きくなってきて
いて、正直言えば、デジタル一眼レフで、マクロレンズや
MF大口径レンズ(注:これらを「精密ピント合わせ型」と
呼んでいる)を使いたく無くなってきている。
それから、PENTAX-DA型レンズであれば、まだ機械式の
絞り込み機構であるので(=電子制御や電磁絞りでは無い)
絞り込みレバーを搭載したKマウントアダプターを購入すれば
MF性能に優れた任意のミラーレス機で使用が可能なので、
AFを殆ど使わない本レンズのようなマクロでは、その方が
簡便に利用できる可能性がある、という事になる。
前述のように、ミラーレス機用純正マクロは、無限回転式の
ピントリングの問題で、MF操作に向かない為、こういう課題の
回避方法もありうるという事だ。
であれば、PENTAXの例で言えば、絞り環のあるDFA/FA型
マクロや、さらに古い時代のA型マクロであれば、一般的な
アダプターで使え、操作性も良いからさらに有利となる。
ただ問題なのは、このクラス、例えばFA50/2.8 Macroは
当時のAF時代(1990年代)としては極めて優秀なマクロでは
あったが、さすがに近代のマクロレンズ(例:本HD35/2.8
は、FAの時代よりおよそ20年後だ)に比べてしまうと、
色々と描写力上の課題が見えてきてしまう、という事だ。
それから、SONYのαフタケタ機(デジタル一眼レフ)であれば
EVF方式であり、優秀なピーキング機能を利用できる、
しかしながら、α(Aマウント)用のマクロレンズは
ミノルタ時代の1980年代~1990年代あたりから設計を変更
されておらず、これも当時としては極めて優秀ではあったが
現代の最新マクロに比べると見劣りするであろう。
そこで例えば、本記事冒頭のDT30/2.8であるが、これは
エントリーレンズであるから、そこまでの高い描写力を
期待するには荷が重過ぎる。
結局、一眼レフを見ても、ミラーレス機を見ても、近代の
描写性能を持ちながら、近接撮影での操作性にまで優れる
マクロシステム的な組み合わせは殆ど有り得ない状況だ。
例外としては、新鋭のフォクトレンダー マクロアポランター
65mm/F2を、SONY FEマウントで使用した場合なのだが、
レンズマニアックス第10回記事で評価・紹介した通り、
当該MAP65/2は、重量バランスや操作性に若干の課題を持つ
レンズである。それに、そもそも高価すぎてコスパが悪い。
結局、どんな機材をどう組み合わせたとしても、有益な
マクロシステムを構築する事は難しい。なので今回はもう
安直に一眼レフ用マクロを一眼レフで使っている訳だ。
勿論PENTAX KPとHD35/2.8の組み合わせではAF主体となり
かつその精度は期待できない、屋外(フィールド)撮影では
なおさらであり、風で揺れる被写体などには、AFではまず
ピントが合う事は無い。
これはボディKPやレンズの性能が問題では無く、AF一眼
マクロシステムにおける構造上の限界点であると思う。
昔から、こういうシステムではピントが合った試しが無いのだ。
被写界深度が浅すぎるし、そこまでの超絶AF精度は、仮に最新
のシステムであっても、とこにも存在しない。
MFに切り替えても、一眼レフの光学ファインダーでは厳密な
ピント合わせは困難だ。
だが、一眼マクロシステムが実用範囲外、という情報はあまり
世の中には流れていない。まあ、それは例えばこうした一眼
マクロシステムで10万枚以上とかの膨大な撮影経験がある
人など、そうそう多くは無いと思うし、仮に数百枚程度撮った
だけでは、ピントが合いやすい、合い難いといった評価も
殆ど出来ない事は明白なので、評価のしようが無いのだ。
![_c0032138_17243770.jpg]()
まあともかく、一眼用マクロシステムは相当に使い難い事を
承知の上で買う必要があるだろう。とは言え、ミラーレスの
システムでも同様であり、あえて言えば銀塩時代のMFマクロを
ミラーレスで使えば操作性的には快適だが描写力はかなり劣る。
結局、これらの課題を全てを根本的に解決できるシステムは
殆ど存在しない、だからまあ、あれこれの不満とかでイライラ
とせずに、あまり気にしないで使うしか無い、という事になって
しまうのだろうか・・
---
さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選Kブロック「50mm相当AFマクロ」の記事は終了だ。
この予選Kブロックは「コスパに優れる」レンズ多かったので
あるが、決勝戦に進むには絶対的なパンチ力には少々欠けると
思われる。総合評価は多岐に渡るのでコスパが良いだけでは
勝ち残れない訳だ・・
次回の本シリーズ記事は、予選Lブロック
「50mm相当トイレンズ」となる予定だ。
や開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
今回は、予選Kブロックとして「50mm相当AFマクロ」の
レンズを5本紹介(対戦)する。
なお、「50mm相当マクロ」とは、デジタル時代における
非フルサイズ対応レンズで、換算画角が50mm近辺となり、
かつ、レンズ単体で、センサーサイズ換算撮影倍率が
1/2倍以上となるものを差す。
一眼レフ用、ミラーレス用は問わない。
つまり、焦点距離に関しては、
APS-C機専用レンズでは、焦点距離が30~35mm程度、
μ4/3機専用レンズでは、焦点距離が25~30mm前後
となり、撮影倍率に関しては、一般的なスペック表記では
各々の機種のセンサーサイズ換算であるが、フルサイズに
換算すれば、仮に等倍マクロであれば、
APS-C機では、約1.5倍、μ4/3機では約2倍となる。
また、ミラーレス機等では、さらにデジタル拡大機能により、
見かけ上の撮影倍率を上げる事が容易に可能であり、
もはや銀塩時代の「撮影倍率が、1/2倍、等倍」という
概念や住み分けも殆ど意味が無くなってきている状況だ。
それとこの条件に合えばMF/AFは問わないつもりだったが、
所有しているこのカテゴリーのレンズは全てAFレンズで
あったので、今回はMFレンズの紹介(対戦)は無い。
---
さて、まずは今回最初のマクロレンズ。

レンズ購入価格:10,000円(中古)
使用カメラ:SONY α65(APS-C機)
ハイコスパ第14回記事等で紹介の、2009年発売のAPS-C機
専用AF単焦点準広角(標準画角)等倍マクロレンズ。

描写力は他の一般的なマクロレンズに比べスペシャルな要素は
殆ど無く、まあ普通に、そこそこ良く写るマクロレンズだ。
だが、一般的にマクロレンズは特に近接域での画質を最優先に
設計されている為、マクロでは無い通常型のレンズに比べて
(それらは無限遠で最高画質を得れるように設計されているから)
マクロの方が描写力が高いと感じる事が殆どだ。
だから本レンズは、そうした高画質な「専門マクロ」に比べると
描写力が低く感じてしまうのはやむを得ないのだが、それでも
通常レンズよりかは若干のアドバンテージがあり、本レンズが
エントリーレンズのカテゴリーで極めて安価に購入できる事から
とてもコスパの良いレンズとなる。

これは一般的な近接撮影では長所にも短所にも成り得る。
その長所としては、被写体に非常に近接し、360度どの方向
からも撮影が可能な為、背景の取り込み等を含めた構図の
自由度が極めて高い事だ。
短所としては、近接しないと大きな撮影倍率が得られない為
被写体に寄れない状況(物理的にそれ以上近寄れないとか、
被写体が例えば昆虫等で逃げてしまう、または刺されるので
危険等)では不利になるし、カメラやレンズの影が被写体に
かかってしまう場合もある。
しかし他の意外な長所もあり、具体的には、WDが短いレンズ
でないと装着が難しいアタッチメント(付属品)の使用だ。
その1例として「ZENJIX soratama 72(宙玉)」を使用する
際には、本DT30/2.8は極めて相性が良い(以下写真)

記事等に掲載しているので興味があれば参照されたし。
その他、あまり特徴は無いレンズだ。
あくまでエントリーレンズであるので、作りの安っぽさ等の
課題はある。また、ピントリングもスカスカな感触で
いわゆる「トルク感」も無く、MF主体が必須となる近接撮影
においては、若干の「操作性」上の不満を感じてしまう。
ただ、かろうじてピントリングは「有限回転式」であるので、
本記事で紹介(対戦)する、他の「近代マクロ」レンズの
無限回転式ピントリングに比べては、本レンズがMF操作性上
では絶対的に優位である。
値段も安価な為、SONY α(Aマウント)ユーザーでは必携の
レンズであろう。
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では、次のマクロレンズ。

レンズ購入価格:14,000円(中古)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第72回記事、補足編第2回で紹介の、
2010年代のEマウントAPS-C機用AF等倍マクロレンズ。

FEマウントが主力となっているSONY製品であるから、APS-C機
用のレンズとして、古くて、ニーズも少ないだろうから、若干
不人気かも知れない。しかし中古相場はその時代により変動し、
1万円台前半まで下がったり、また1万円台後半まで上がったり
と、原因不明の相場挙動を示している。
(注:恐らくだが、SONYフルサイズ機の商品展開タイミングに
影響されている模様だ。同様な例はニコンのDXレンズにもある)
本レンズには長所とも短所とも言える強い個性的な特徴があり、
それは「輪郭線がとても強く、カリカリの描写になる」という
点である(「カリカリ描写」については、匠の写真用語辞典
第5回記事参照)
これは面白い特徴であるが、撮影側としてはこの特徴を良く
認識した上で被写体を慎重に選択しなければならない。
「マクロレンズだから花の撮影等に向くだろう」と思って、
花の名所や植物園等に行って本レンズを使うと、(カメラの
モニター上では目立たないが)後で撮った写真をPC等で見ると、
「ひぇ~ どの花も、みんなカリカリに写っているよ(汗)」
などの状況になってしまう。
まあすなわち、解像力が強いカリカリ描写は、それが必要な
被写体、たとえば細かいパターンがある風景とか、
製品基板や電子部品などの精密機械の撮影とか、医療用や
学術用で、患部や検体等のサンプルを撮影する場合とか、
かなり限られてくる訳だ。
これらは技術用語では、いずれも「空間周波数分布が高い画像」
と言い換える事も出来る。、
まあ、銀塩時代の「平面マクロ」(匠の写真用語辞典第5回記事)
では、最初からそういう用途(医療、学術、複写)を想定した
コンセプトで設計されたレンズもいくつかあったのだが、
近年ではこうした特性を持つマクロレンズは珍しいので、
本 E30/3.5のこの特徴を欠点とは思わず、むしろ用途を定めて
積極的に活用するのが良いであろう。

まず無限回転式ピントリングであるから、最短撮影距離が指の
感触ではわからず、結果MF操作には向かず、AF頼りになる事だ。
しかし、NEXシリーズ等の初期SONYミラーレス機はコントラスト
AFのみの搭載であり、AF精度があまりよろしく無い。
特に本レンズの場合、近接付近でオートマクロ動作が入って
いる様子も見られ、特定の距離範囲では、ピント精度の狭間に
なって、ほとんどAFではピントが合わなくなる。
この状態でのピント問題は「重欠点」のレベルだ。
だが、後年のαシリーズ・Eマウント機での像面位相差AFを
組み合わせた「ファスト・ハイブリッドAF」を使えば、若干
マシになるとは思う。しかし本E30/3.5の場合は、当初販売
時点では、ファスト・ハイブリッドAFには対応しておらず、
それを有効にするには、レンズ側のアップデートが必要だ。
が、手順が少々面倒なので、まだこのアップデートはやって
いない。現状本レンズは、NEX機で使う事が殆どなので関係
ない訳だ。(追記:本記事執筆後に、この課題を放置した
ままではまずいと思い、SONYの像面位相差AF搭載機を経由
して、レンズ側をVer.02にアップデートした。
像面位相差AF機では、AFの課題は、だいぶ改善された模様
ではあるが、逆に同機能の非搭載機(NEX-7等)での用途が
減ってしまった(組み合わせると低性能で面白く無い)
ので、なんだか良し悪しあったかも知れない)
また、WDが短い特徴があるが、それは前述のDT30/2.8と
同様に、長所にも短所にも成り得る。
価格が比較的安価なので、SONY E/FEマウントユーザーで
あれば、持っていても悪く無いレンズではある、しかし
この個性的な描写特徴は、被写体をかなり限定すると思うので、
「この1本を持っていれば、Eマウント用マクロとして十分」
という状況には、まずならないので、必ず他のマクロレンズを
(Eマウントでも、他マウントでも)併用する必要があるだろう。
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では、次のマクロレンズ。

レンズ購入価格:22,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
レンズ・マニアックス第7回記事等で紹介の、
2016年発売のμ4/3専用単焦点標準画角マクロレンズ。
レンズ単体で等倍を越え、1.25倍の撮影倍率となる。

に換算し「2.5倍相当のマクロレンズ」と呼んでいる場合も
あるが、本記事の冒頭に述べたように、現代では、もはやその
撮影倍率の定義もあまり重要な意味を持たなくなってきている。
さて、本MZ30/3.5であるが、価格が比較的安価でありながら
十分な描写力を持つ事が長所である。
「解像力重視」という設計コンセプトがある点は、近代マクロ
としては良くある話なのだが、かといって、それらのレンズに
よくある「ボケ質の汚さ」または「ボケ質破綻の発生」の
頻度はあまり多くは見られない、
すなわち、「バランスが取れた高性能マクロレンズ」である。
レンズ構成は6群7枚と、数字だけ聞けばあまり複雑には見えない
が、DSA(Dual Super Aspheric=大偏肉両面非球面)、
EDA(Extra-low Dispersion Aspheric=特殊低分散非球面)
などの新型ガラス素材を使っていて、気合の入った設計だ。
ただ、「新技術を使えば常に良くなっている」という訳では
無い事は言うまでも無い。ある時代のある瞬間に出てきた新技術
は、その後の時代まで生き残れるかどうか?という点が課題だ、
具体的には、製造や素材コストが適正か否か? あるいは他社が
その新技術をさらに上回る最新技術を投入してきた際でも、
性能優位性を維持できるか否か? その技術は自社の固有な
ものであるかどうか?などの点である。
これらの「技術競争」により、数年後になって初めてその新技術
が本当に有益であったのかどうかが判断できる訳だ。
あえてこの時代のみで評価するとすれば、オリンパスは元々
医療分野において世界初の内視鏡を作ったなど、「マクロ」が
ひとつの看板商品となっている。銀塩時代からを通じて、
優秀なマクロレンズを開発し販売する事は、オリンパスの企業と
してのブランドイメージを維持する意味でも重要な命題であり、
まあつまり、高性能なマクロレンズが多かったという歴史だ。
この傾向はデジタル時代に入っても当然続いているのだが、
ミラーレス時代に入ってからのオリンパスマクロレンズの
ラインナップ数はあまり多くはなかった(2012年発売の
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm/F2.8 Macroがあったのみ)

マクロであるが故に、オリンパスのブランドイメージ維持の為
の気合が入ったレンズであると思う。価格があまり高価では無い
事は、この時代、フルサイズ一眼レフ陣営に押され気味である
μ4/3の普及戦略として、赤字覚悟の「出血大サービス」の
可能性もあると思う。(=エントリーレンズ的な企画方針)
よって、本レンズは、価格からすれば「コスパの良いマクロ」
と見なす事が出来るだろう。
弱点であるが、ミラーレス機の例に漏れず、AF精度が足らず、
近接ではピントが合い難いのが大きな課題だ。
(注:E-M1等、像面位相差AF搭載機では若干マシになる)
加えて、これも毎回毎回書いている、ミラーレス機用レンズ
の殆どで採用されている無限回転式ヘリコイドの問題がある。
これではMF撮影は致命的と言えるまでの操作性の悪化を招いて
しまうのだが、E-M5Ⅱにおいては、S-AF+MFモードで使えば
「AFが合わなかった場合」にのみ、MFに容易に移行は可能で
その際、MFアシスト機能も自動的に使用する事ができる。
ただ、この設計思想は「AFが主体で、MFは、あくまでAFが
合わない場合の補助」というスタンスであろう。
本来であれば、近接撮影では、ほぼ100%がMF撮影だ。よって、
このシステム設計思想は、一般撮影(ズームレンズを主体とした
中遠距離撮影)では有効だが、マクロレンズや、(被写界深度
が浅い)大口径単焦点レンズを使った場合での撮影には適さない。
まあ、カメラを含めたシステムそのものに問題があるという事
であり、本レンズの描写力そのものには、まず不満は無いだろう。
なお、被写界深度合成やフォーカスブラケット等のオリンパス
μ4/3機(概ね2010年代後半よりの機体)の新鋭機能には、
本レンズは対応している。(ただし、それらの追加機能は
母艦側で、それらを呼び出す操作系があまり練れていない点が
大きな課題だ。また、深度合成等は、手持ち撮影では非常に
難易度が高くなるのも弱点だ。三脚使用オンリーであれば
せっかくのユニークな機能も用途制限が厳しくなる)
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さらに、次のマクロレンズ。

レンズ購入価格:24,000円(中古)
使用カメラ:RICOH GXR(A12 ユニット使用時APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第1回,第10回,第28回,第70回
ハイコスパ第17回等、多数の記事で紹介した2000年代末の
AF単焦点標準画角1/2倍(ハーフ)マクロユニット。
本レンズにおける50mm表記はフルサイズ換算画角であり
レンズの実焦点距離は33mmとなっている。

書き尽くしている。おまけに、GXRは古いシステムであり
「仕様老朽化寿命」が来ている事から、今からの入手は
もはや手遅れであり、全く推奨が出来ない。
結局、いまさら書く事は殆ど無いのであるが、まあいつもの
紹介記事の抜粋として長所と短所のみ簡潔にまとめれば
長所:
・上手くピントや撮影条件が決まった場合の、とんでもなく
優秀な描写力、この点では、下手をすれば近代の最新鋭
マクロにも勝てそうで、感動的と言える描写表現力を持つ。
・その高描写力が小型軽量のGXRシステムで得られる事。
短所:
・AFでもMFでも殆どピントが合わない。
なので、実用レベルでは使い物にならない。
まあこれはGXRシステムが最初期のミラーレス機であった為
時代背景的な技術レベルの問題であり、やむを得ない。
・現在このGXRシステムは勿論生産完了、古くて中古入手も
困難であるし、無理して入手しても、仕様老朽化寿命により
実用性が殆ど無い。
まあ、すなわち、もう過去の時代のシステムであり、現代に
おいて紹介する価値もあまり無いものだ。
で、1つだけ注意点だが、本システムではなくても、古い時代の
レンズとかカメラで、かつ現代では入手困難である状況において、
「非常に写りが良い」等の過剰で偏った評価がされる事が良くある。
そういった場合、そのレビューを読んでいる側は、その機材を
持っていないし、入手も困難だから、その真偽を判断しようが無い。
そして写りが良いと言った側において、例えば作例写真が掲載
されていたとしても、それがどれくらい手間をかけて撮られた
ものだかは良くわからない。
具体例としては銀塩時代のCONTAX (RTS) Planar 85mm/f1.4は、
大変良く写るレンズとして「神格化」されてはいたものの、
ピント精度やボケ質破綻の問題で、まともな写真が撮れる成功率
は私の経験上、約3%程度であった(36枚撮りフィルム中、1枚程度
まともに写っているものがあれば嬉しい、という比率)
つまり、そういう「凄い写りの写真」の裏には、膨大な数の
「ボツ写真」が隠れていたケースも多々あるという事だ。
そうした機材の評価・評判を信じて買った他のユーザーは
機材の性能的な弱点で「あれ?上手く撮れないよ」と思っても、
その事は公表しない、だって他の人がちゃんと撮れているならば
自分が撮れないのは、自分が下手である、という事を認めて
公表するようなものだ、だからそういった「ネガティブな情報」
は絶対に世の中には出て来ない。
だから、良い写りの「現物証拠」があったとしても、それを
頭から信用するわけにはいかないのだ。写真を撮る行為には
有限の時間しか無い、ひたすらP85/1.4で一生撮り続けるのは、
業務撮影はもとより、たとえ趣味撮影においても無理な話だ。
さて、RTS Planar 85/1.4の例に限らず、本GXR+A50/2.5も
恐らくは、もっと歩留まり(成功率)が低いシステムであろう、
撮影時点ではピントが合っているから、3%以下という事には
ならないとは思うが、そもそも撮影前にピントが合わない状態
が続くので、ジーコ、ジーコと無駄な動きをするAFシステムの
回数まで考慮すれば、このシステムでの成功率は0.5%以下か、
もっと低い比率でしか無い。
で、もう1つの課題。そういった「入手困難」の機材に対して
好評価が発生すると、元々レア物の中古相場が際限無く高騰して
しまう事だ。つまり「それだけ良い、凄いと言われているならば
何としてでも入手して、その写りを確かめてみたい!」という
願望が消費者側(特にマニア層)に現れるからだ。
下手をすれば、そうやって相場を吊り上げたい(高く売りたい)
からが故に、過剰なまでの高い評価をしている人が居るのでは
なかろうか? と、疑った見方すらできてしまう。

となっている。これに対して、過剰なまでの好評価をしてしまう
と、相場が上がってさらに入手不能となったりするし、
その原因が本ブログの評価だ、などと言われたらかなわない。
それに、こういう事は「逃がした魚は大きい」という、一種の
変な自慢(錯覚)と同じであり、今現在で評価がしにくいものは、
どんどんと妄想が膨らんで、「あれは凄かった!」などの
根拠の無い話になってしまうのだ。(その実例は多数ある)
要は、機材はそれが販売(中古流通含む)している時点において、
ちゃんとその機材の真の実力や価値を見抜き、必要とあれば、
その時点で購入する事が、「マニア道」として重要な事だ。
入手困難になった機材を、いつまでも未練たらしく思っていても
意味の無い事だ、それは失恋をした相手にいつまでもグズグズ
した感情を持ち続ける事と同様で、前向きな状況では無い。
その機材が入手不能であれば、もうすっぱりと諦める事だ。
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では、今回ラストのマクロレンズ。

レンズ購入価格:26,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX KP (APS-C機)
レンズマニアックス第13回記事で紹介の、2013年発売の
APS-C機専用準広角(標準画角)AF等倍マクロレンズ。

からHDコーティングに置き換わった時代のレンズである。
勿論HDコーティングの効果は逆光耐性の向上など、そこそこの
改善効果はある。・・と言うか、それ以前の時代のsmcでも十分に
優秀であったし、逆に一部の安価なsmc DAレンズ群の中には正直
言えば逆光耐性が低いものもあったのだ、これは安価に設計する
上での性能上の限界点であったかも知れず、smcは古くて、HDが
新しくて良い、等とは、簡単に決め付ける訳には行かない。
本レンズの長所であるが、まずその描写力は
バランスが取れた性能であり、他の近代マクロレンズのように
変に解像度優先で設計されてはおらず、様々な被写体状況に
おいて汎用性が高く、なかなか使いやすい。
レンズ自体の仕上げも良く、金属質感すら無いが、デザインが
優れているので、あまり不満は無いであろう。
有限回転式のピントリングを採用している為、MFで使う場合が
殆どのマクロレンズとして、及第点である。
しかし、今回の母艦のPENTAX KPでは、ライブビュー時にのみ
ピーキングが出る、という一眼レフでは希少な機能を搭載して
いるものの、光学ファインダーは旧来の型式であるから、
フォーカスエイドの他は、何一つMFをアシストする機能は無い。
このあたり、現代のミラーレス機に比べて、デジタル一眼レフ
でのMF操作は、だいぶビハインド(遅れ)が大きくなってきて
いて、正直言えば、デジタル一眼レフで、マクロレンズや
MF大口径レンズ(注:これらを「精密ピント合わせ型」と
呼んでいる)を使いたく無くなってきている。
それから、PENTAX-DA型レンズであれば、まだ機械式の
絞り込み機構であるので(=電子制御や電磁絞りでは無い)
絞り込みレバーを搭載したKマウントアダプターを購入すれば
MF性能に優れた任意のミラーレス機で使用が可能なので、
AFを殆ど使わない本レンズのようなマクロでは、その方が
簡便に利用できる可能性がある、という事になる。
前述のように、ミラーレス機用純正マクロは、無限回転式の
ピントリングの問題で、MF操作に向かない為、こういう課題の
回避方法もありうるという事だ。
であれば、PENTAXの例で言えば、絞り環のあるDFA/FA型
マクロや、さらに古い時代のA型マクロであれば、一般的な
アダプターで使え、操作性も良いからさらに有利となる。
ただ問題なのは、このクラス、例えばFA50/2.8 Macroは
当時のAF時代(1990年代)としては極めて優秀なマクロでは
あったが、さすがに近代のマクロレンズ(例:本HD35/2.8
は、FAの時代よりおよそ20年後だ)に比べてしまうと、
色々と描写力上の課題が見えてきてしまう、という事だ。
それから、SONYのαフタケタ機(デジタル一眼レフ)であれば
EVF方式であり、優秀なピーキング機能を利用できる、
しかしながら、α(Aマウント)用のマクロレンズは
ミノルタ時代の1980年代~1990年代あたりから設計を変更
されておらず、これも当時としては極めて優秀ではあったが
現代の最新マクロに比べると見劣りするであろう。
そこで例えば、本記事冒頭のDT30/2.8であるが、これは
エントリーレンズであるから、そこまでの高い描写力を
期待するには荷が重過ぎる。
結局、一眼レフを見ても、ミラーレス機を見ても、近代の
描写性能を持ちながら、近接撮影での操作性にまで優れる
マクロシステム的な組み合わせは殆ど有り得ない状況だ。
例外としては、新鋭のフォクトレンダー マクロアポランター
65mm/F2を、SONY FEマウントで使用した場合なのだが、
レンズマニアックス第10回記事で評価・紹介した通り、
当該MAP65/2は、重量バランスや操作性に若干の課題を持つ
レンズである。それに、そもそも高価すぎてコスパが悪い。
結局、どんな機材をどう組み合わせたとしても、有益な
マクロシステムを構築する事は難しい。なので今回はもう
安直に一眼レフ用マクロを一眼レフで使っている訳だ。
勿論PENTAX KPとHD35/2.8の組み合わせではAF主体となり
かつその精度は期待できない、屋外(フィールド)撮影では
なおさらであり、風で揺れる被写体などには、AFではまず
ピントが合う事は無い。
これはボディKPやレンズの性能が問題では無く、AF一眼
マクロシステムにおける構造上の限界点であると思う。
昔から、こういうシステムではピントが合った試しが無いのだ。
被写界深度が浅すぎるし、そこまでの超絶AF精度は、仮に最新
のシステムであっても、とこにも存在しない。
MFに切り替えても、一眼レフの光学ファインダーでは厳密な
ピント合わせは困難だ。
だが、一眼マクロシステムが実用範囲外、という情報はあまり
世の中には流れていない。まあ、それは例えばこうした一眼
マクロシステムで10万枚以上とかの膨大な撮影経験がある
人など、そうそう多くは無いと思うし、仮に数百枚程度撮った
だけでは、ピントが合いやすい、合い難いといった評価も
殆ど出来ない事は明白なので、評価のしようが無いのだ。

承知の上で買う必要があるだろう。とは言え、ミラーレスの
システムでも同様であり、あえて言えば銀塩時代のMFマクロを
ミラーレスで使えば操作性的には快適だが描写力はかなり劣る。
結局、これらの課題を全てを根本的に解決できるシステムは
殆ど存在しない、だからまあ、あれこれの不満とかでイライラ
とせずに、あまり気にしないで使うしか無い、という事になって
しまうのだろうか・・
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さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選Kブロック「50mm相当AFマクロ」の記事は終了だ。
この予選Kブロックは「コスパに優れる」レンズ多かったので
あるが、決勝戦に進むには絶対的なパンチ力には少々欠けると
思われる。総合評価は多岐に渡るのでコスパが良いだけでは
勝ち残れない訳だ・・
次回の本シリーズ記事は、予選Lブロック
「50mm相当トイレンズ」となる予定だ。