過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介のマニアック
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ2本と他シリーズ記事で紹介済みの
2本を取り上げる。
なお、コロナ禍による外出自粛中の為、掲載写真は
過去撮影のものを使用する。(注:本ブログでの
シリーズ形式の記事群は、たいてい記事掲載時点の
1~3年前に、執筆および実写撮影したものである。
さもないと、なかなか、体系的(システマチック)な
記事群は書けない、という理由からだ)
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ではまず、今回最初のレンズ
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レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 60mm/f2.4 R Macro
(中古購入価格 39,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2012年に発売された、FUJIFILM Xマウント最初期の
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
Xマウント機は現状全てAPS-C機であるので、換算画角は
90mm相当となる。
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「Xマウント用に小型軽量のマクロが必要だ」と思って購入
したレンズである。また、歴史的な価値も高く、FUJIFILM
(以下、適宜FUJIと略す)社においては、銀塩時代に殆ど
マクロレンズを発売していなかった。
具体的には、FUJIの銀塩MF一眼レフは2シリーズしか無く、
1970年代のM42時代のSTシリーズ用にはマクロは1本も無く、
続く1980年代の独自バヨネットマウントのAXシリーズに
僅かに1本だけMF標準マクロが存在していた模様だが・・
AXシリーズは、元々数年間しか発売されていない、かなり
マイナーなマウントで、1985年の「αショック」以降、
AF化に追従せずに一眼レフ市場から撤退している。
故に、レア品どころか、このFUJI製マクロの存在すらも、
世に殆ど知られていなかった事であろう(私も未所有だ)
まあつまり、本XF60/2.4が、一般に目にする事ができた
ほぼ初の、FUJIFILM製マクロレンズである。
・・のだが、正直言って購入は失敗であった(汗)
まず、AF精度にかなり弱点がある。その理由の1つとしては、
距離エンコーダーが近接域と遠距離域の二重構造である事だ。
これは距離エンコードのビット幅が足り無い為、最短撮影
距離から無限遠までを、単一の(ビット)スケールで制御
する事が出来ないという意味だ。
(まあ、仮に他社でも同様な仕様であったとしても、それを
ユーザー側の操作性への負担とか、AF性能上の弱点にしない
ように色々と工夫はしてある。本レンズはその配慮が少ない)
この説明についてはデジタル技術がわかっていないとチンプン
カンプンだとは思うが、まあつまりAF性能が弱いと言う事だ。
この為、最初期のFUJI Xマウント機(例:X-E1、2012年)
では、近接撮影においては、一々、マクロ切換ボタンを押し、
メニューから「マクロ」を選択しないとピントが合わない。
次世代のFUJI機、例えばX-T1(2014年)でも、像面位相差
AF搭載機ながら、近接域のエンコーダー仕様は同様であり
やはり当初はマクロ切換ボタンを押して切り替える操作を
強要される状態であったのだが、X-T1のファームウェア
Ver. 3あたりから、やっとオートマクロ機能が搭載され、
マクロ切換ボタン(の操作)が廃止されている。
また、今回使用機のX-T10(2015年)でも、同様なオート
マクロ仕様となっているので、マクロ切換の必要は無い。
でも、これらのオートマクロでは、やはりAF精度が出ないのだ。
何故ならば、その機能を実現するには、近接撮影である事を
カメラが認識した時点で、距離エンコード・テーブル(表)
を近接用のものに自動で差し替えるのだが、元々、現在の
ピント位置が不明でAFが迷っている状態では、テーブルを
差し替える事が出来ないからである。
技術的な原理はともかく、実用上でも、やはりAF精度が
厳しいし、MFに切り替える(またはシームレスMF)ても、
例によって無限回転式のピントリングでは、最短での停止
感触が無く、かつピントリングの回転角も大きすぎる。
ちなみに、AFが迷っている場合、たいていだが、AFでは
遠距離と判断されている。その事は、MF時にEVF内に距離
指標を表示させる設定にしておき、シームレスMFとすれば
近接撮影なのに、AF測距が5mや10mで止まっている事が
確認できる。
これでは勿論、オートでマクロに切り替えるべきかどうか
は、カメラ側では、判断できない状態だ。
で、そこからMF操作で最短撮影距離までピントリングを
廻そうとすると、実に8回以上の左手の持ち替え動作が
発生し、冗長である。また、MF距離指標にはレンズ毎の
最短撮影距離が表示されておらず(本レンズの場合は、
26.7cmである)かつ距離指標単位は、最小0.1mと次が
0.5mの狭く粗いスケールであり、さほど精密には最短撮影
距離や撮影距離に到達している事を読み取る事ができない。
頼みのピーキング機能も、FUJI機全般では精度が悪く、
つまり、AFが合い難いからと言ってMFに切り替えても、
やはりピント合わせが困難な事に変わりは無いのだ。
(注:この問題は他のFUJINON Xレンズでも同様だ)
まあ、この状況でも描写力に優れるならば我慢して使う気に
なるだろうが、本レンズの描写性能は、可も無く不可も無し
で、標準よりやや上(評価3.5点)という感じであるが、
一般に、マクロレンズの描写力は、近接撮影においては
通常のレンズよりも相当に優れる事が普通なので、この
レベルだと、ちょっと不満だ。
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そして価格が高い、定価は87,000円+税である。
本レンズは中古購入、しかも発売から若干年月を経た
状態であったが、それでも4万円近くもしている。
中古でこの値段を出すならば、高性能なTAMRON SP60/2
とTAMRON SP90/2.8の2本のマクロが同時に買えてしまう。
製品が入っている化粧箱は豪華であり、ラッピング
クロス(レンズを巻いて保管や移動をする)まで
付属しているし、フードは複雑な溶接構造の金属製である。
だが、そういった要素で「高級レンズだ」という雰囲気を
出そうとしても、ちょっと納得しずらい。
「もっとペナペナの紙箱で良いから、その分安くしてくれ」
とも思ってしまうし、下手にしっかりした豪華な箱ゆえに
捨てれないから場所を取り、あるいは又、「元箱が残って
いるから、いっそ売却してやるか!?」という気分にさえ
なってしまう。そういう点でも、箱なんてすぐに捨てられる
安っぽい物の方がメーカー側から見ても良いのかも知れない。
まあ、価格が高いのは、高性能や高品質だから、という意味
よりも販売本数が少ないので、開発費や製造原価(金型代等)
のレンズ1本あたりの償却費が高くなるのであろう。それで
値段が高くなると、ますます売れず、悪循環に陥ってしまう。
それと、フィルター径はφ39mm である。
私が所有している数百本のレンズの中で、φ39mm
という仕様は、本レンズのみ(追記:2019年の七工匠
60/2.8Macroも同様)である。
特殊な径なので、フィルターの使いまわしをする為、
φ39mm→φ49mmのステップアップリングを購入し
φ49mmの各種フィルターを使おうとしたが、なんと、
ステップアップリングは、さほど不自然な構造では無い
のだが、レンズに電源を入れた直後にレンズが無限遠まで
引っ込み(AF調整の為か?)それが鏡筒に引っかかって
エラーとなって撮影不能になってしまうのだ。
何故、少しでも付属品装着に余裕のある構造にしなかったの
であろうか? あるいはφ46mmやφ49mm等の一般的な
フィルターサイズとして設計しないのか? 理解に苦しむ。
近年では、各社ともレンズ毎にフィルター径がまちまちの
設計をしてしまうので、フィルターの使いまわしなどの
汎用性に大きく欠ける。銀塩時代では、オリンパスや
ニコン、キヤノン等では、ほとんどの交換レンズを同一の
フィルター径で統一する等、「標準化思想」が徹底していた。
まあ、高度成長期の経験があったから、そういう点では
製造や設計における様々なノウハウやコンセプトは、
昔は良く練られていたと思う。
製造業が衰退した現代における各メーカーでは、そうした
ユーザー利便性や、製造面での利便性すら理解できていない
のであろうか・・? だとすれば極めて残念な話である。
(参考:2010年代後半からのTAMRONでは、SP単焦点や
新鋭M1:2シリーズのレンズ群等を、フィルター径
φ67mmで統一している。やっと、近代においても、
そうした「標準化思想」がまた出てきて、好ましい。
なにせ、レンズ市場縮退の影響か? 2019年頃から、
各社の各種フィルターは、安価なものは全て生産中止と
なり、高価な商品ばかりになってしまい、適価に様々な
サイズや種類のフィルターを揃える事が、とても困難に
なってしまっている状況だからだ)
まあ、欠点のいくつかは購入前にわかっていて、覚悟の
上での購入ではあったが、しかし、それにしても度が過ぎる、
という感がある。
まあ、歴史的にもFUJIFILMは銀塩時代の一眼レフのAF化に
追従できておらず、レンズ交換式カメラにおいては、
AF化は何と、近年2012年からのXシリーズミラーレス機が
初である。おまけに銀塩時代のAF機(コンパクト等)や
デジタル時代に入ってからのコンパクト機などでも、
FUJIFILM社が全て自社で設計製造しているとはとうてい
思えない(他社OEM品である可能性が高いという事だ)
まあつまり、カメラや交換レンズ設計のノウハウがFUJIの
社内に蓄積されている状態だとは思えず、カメラやレンズ
の仕様上、様々な課題が出てきている状況だ。
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・・さて、本レンズの購入については、他に代替が可能な、
ハンドリング性能の高い簡便な中望遠(マクロ)レンズが
Xマウントでは存在しない為、やむなくの購入であるのだが、
正直言えば、この状況であれば、TAMRON SP60/2 Macro
等をXマウント機にアダプターで装着すれば、あらゆる面で
高性能であるし、中古相場も約半額でコスパにも優れる。
でも、そうできないのは、FUJI Xマウント機全般での
MF性能が貧弱である事が課題となっているからである。
(追記:本記事執筆後に新発売された、七工匠60/2.8
Macroには、Xマウント版が存在するが、MF性能の課題は
同様である。当該レンズは他マウント版を後日紹介予定)
後年のFUJI製マクロ(例:90mm/f2.8,80mm/f2)であれば、
様々な課題の改善も若干は図られているかも知れないが、
それらは極めて高価であり、簡単に購入できるものではない。
(というか、手ブレ補正内蔵、防水仕様、という、不要な
機能が入っていて高付加価値化(=値上げ)されているだけ
に思え、AF精度等が高まっている保証が無いので買えない)
すなわち、これらは皆、FUJIFILMの最初期(2012年頃の)
ミラーレス・システムが仕様的・性能的・技術的に未成熟で
あった事を起因としている課題だ。
まあ、それらの事情が良くわかっただけでも良しとするか・・
もう個人的には、Xシステムを、さらに充実させたい、という
目論見についても、「かなり控え目に考えておかなければ
ならないだろう」という意識になってきている。
すなわち、あまりにコスパが悪いからだ。
(注:その対策については、また別の記事で後日紹介する)
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さて、次のレンズ
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レンズは、VS Technology VS-LD50
(発売時定価28,000円)
カメラは、PENTAX Q7 (1/1.7型機)
本シリーズ記事では未紹介だが、別シリーズ記事の
「特殊レンズ・スーパーマニアックス第1回マシンビジョン編」
で、少しだけ紹介しているレンズである。
発売年不明(2000年代?)の、FA用低歪曲望遠マクロ(近接専用)
初期メガピクセル対応、MF単焦点手動絞りレンズ。
2/3型センサー対応、Cマウント、マシンビジョン用レンズ。
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「物像間距離」(注:聞き慣れない専門用語だと思われるが、
最短撮影距離と等価。しかし稀にワーキング・ディスタンス
と等価、という解釈もあり、ややこしい)は、スペック上で
約28cm~約67cmである。
2/3型センサーでは、この時の撮影倍率は、0.25倍(1/4倍)
~0.10倍の間で変化する。PENTAX Q7は2/3型機では無いが
ほぼ近い値(2/3型=0.66型、1/1.7型=0.58型)である
ので、だいたい同じ位の撮影倍率と判断すれば良い。
まあ、写真用での「望遠マクロ」に近い感覚のレンズだ。
開放F値は不定であり、撮影距離に関連する「露出倍数」に
応じ、F2.7~F3.1程度となる。
「露出倍数」(露光倍数とも言われる)は、近接撮影時に
見かけ上の口径比(≒F値)が落ちる事を指す。
これは本レンズに限らず、殆ど全ての交換レンズで発生する。
つまり、近接撮影ではヘリコイドを繰り出して前玉位置が
遠くなる訳だから暗くなる、という原理だ。世間一般では、
「深い井戸の底では、井戸の入り口が小さく見え、入って
くる光も減る」という概念で説明される事が多い。
暗くなる度合いは、(撮影倍率+1)x(撮影倍率+1)
の公式で表される。(これが露出倍数の値となる)
ここで撮影倍率は、センサーサイズを撮影範囲で割れば良い、
例えばフルサイズ(36mmx24mm)に対し、18mmx12mm
の小さい範囲が写る場合、これは36÷18で2倍となる。
写真用マクロレンズでの、等倍(1倍)や、1/2倍と
スペック記載も、これと同じ概念である。
(注:現代のデジタル機では、撮影倍率は、様々な機体で
撮像センサーのサイズがまちまちであるから、「センサー
換算倍率」等と明記しないと、正確なスペックとは言えない。
加えてミラーレス機等ではデジタル拡大(ズーム、テレコン)
機能の利用も普通である。
よって、撮影範囲と撮影倍率の関係は複雑だ。だがここでは
あくまで露出倍数を計算する意味において、撮影倍率の概念
を用いている。実用上では、レンズの撮影倍率については、
あまり気にする必要性は無いのだ)
で、計算時にセンサーの縦横比(アスペクト比)が異なる
場合は、若干面倒だが、直角三角形の斜辺の公式で、
対角線長を求め、その対角線同士で割り算する。
(例:フルサイズ機に対し、4.8mm x 3.6mmの撮影範囲
の場合、対角線長で計算し、約43mm÷6mm =約7.1倍)
だが、このような露出倍数の計算が必要なのは、概ね等倍
(1倍)を超える「超マクロ撮影」の場合くらいである。
例えば、一般レンズで無限遠撮影をする場合、撮影倍率は
ほぼゼロ倍であり、露出倍数は(0+1)x(0+1)=1となる。
すなわち遠距離撮影では露出倍数は無関係(そのまま)
であり、見かけ上の口径比(≒F値)が暗くなる事は無い。
では、世の中に良くある写真用の等倍(1倍、1:1)マクロ
レンズ(注:フルサイズ換算)ではどうなるか?
最短撮影距離での撮影時、露出倍数は、(1+1)x(1+1)=4
となる、すなわち遠距離撮影より4倍(EVで2段)暗くなる。
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ここでいくつかの注意点だが、
まず一般にこれは「暗くなった」といってもレンズ利用者側は、
あまりこれを意識して特定のカメラ設定操作を行う必要は無い。
AEで撮っているならば、遠距離撮影時よりシャッター速度が
低下したり、AUTO ISOの場合は感度が若干高まっている
だけであり、普段の撮影で暗い場所にカメラを向けた場合と
同様なので、単に、手ブレや高感度ノイズに注意すれば良い
だけである。
また、これはレンズの構造や設計にも依存すると思われ、
近接撮影時で有効(瞳)径との比が変化しずらい設計
(例:IF=インターナル・フォ-カス等)とするならば、
近接時での開放F値の低下は最小限に抑えられるであろう。
一般に開放F値の低下は、具体的な数値として、レンズから
ボディ側に伝達される事はそう多くは無い。F2.8の等倍マクロ
であれば、近接撮影時にもカメラにはF2.8が表示されたままだ。
ただ、一部のメーカーのカメラと、同メーカーのマクロレンズ
では、低下したF値がカメラに表示される場合もある。
例えば、NIKON AF/デジタル一眼レフと同社マイクロレンズ
Ai AF Micro-NIKKOR 60mm/f2.8D等では、近接撮影時には、
絞り開放で撮っていても、F2.8→F5等のF値低下が表示される。
これは、ユーザーへの情報提示の配慮としては好ましいが、
実際の所、カメラから「暗くなった」と言われても、何も
対処の方法が無い。通常撮影の場合でも暗所で発生する
「手ブレ警告」や「フラッシュ発光の推奨表示」と同じ事
であり、そういうカメラ機能を「そんな事は言われないでも
シャッター速度を見ればわかっている、余計なお世話だ!」
と思う中上級者であれば「(開放)F値が下がった」とカメラから
言われても「はいそうですか、では気をつけます」で終わりだ。
そして、そういう情報表示機能は、レンズとカメラ間での
情報伝達プロトコルの内、少なくとも「開放F値、現在の
設定F値、対応センサーサイズ、撮影距離」の4つの情報が
やりとりされていないと計算が実現できない機能である。
電子接点の無いレンズ、たとえば本VS-LD50レンズでは、
開放F値は、撮影距離に応じてF2.7~F3.1程度に変動する
のではあるが、Cマウントの規格では、その値をカメラ側から
参照する方法は無い。だから、開放測光または実絞り測光で
処理せざるを得ず、暗くなった分、センサーに到達する光は
減る訳であり、カメラ側はそれに応じシャッター速度および
ISO感度(CCTVの場合は、ゲイン、およびAGC機能と呼ぶ)
を手動又は自動で調整するだけである。
で、本レンズの場合では、その開放F値変化幅からすると
近接撮影でも、あまり露出倍数がかからない設計の模様だ。
ちゃんと厳密には実験していないが、軽く試してみると、
平面光源に対してWDを約30cmから60cmまで変化させた場合、
一定ISO感度でのシャッター速度の変化は1/50→1/60秒の
約1.2倍の変化で留まっている(仕様上ではF3.1~F2.7で
これは1.3倍の露出変化だ。まあ実験誤差範囲内である)
この時、最短撮影距離での、センサーサイズ2/3型における
撮影倍率は0.25倍と仕様にある(注:今回使用機のPENTAX
Q7とは僅かに異なるが、概算上では、ほぼ同じと見なす)
本来、露出倍数は(0.25+1)x(0.25+1)=約1.56倍となる
筈であるが、そこまでは暗くならないようにと(僅かだが)
露出倍数に配慮した設計であると思われる。
なお、本レンズの絞り値を暗く設定した場合でも、撮影距離に
応じて同様のF値変化が起こる。概算ではあるが、レンズを
F8に設定したら、最近接撮影ではF9程度に暗くなる訳だ。
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さて、例によって、マシンビジョンのレンズを紹介する
場合には、専門的な技術解説が多くなってしまう。
写真の世界とは、ほとんど無関係な技術分野であるから
たとえカメラマニアや職業写真家層であっても、これらの
技術分野の理解は、とても困難であり、難解であると思う。
「さっぱり意味がわからないよ」となるのがオチであろう。
だが、マシンビジョンレンズを使ってみたいならば、
これら様々な専門的な知識や計算能力が必須となる。
よって、カメラマニアにも、これらのマシンビジョンレンズ
の使用は推奨できない。使用可能なシステムを組む際にも
本記事で書いた内容よりも、もっと高度で複雑な計算を
行う必要があるし、その計算も単に公式を覚える訳ではなく
原理理解の上で、計算式を自ら考えつかないかぎりは、他に
それを勉強できる参考書等が売っている訳では無いのだ。
つまり、あくまで独学、自力で研究せざるを得ず、さらに
言うならば、あるレベルを超えると、よくわからない部分が
沢山出てきてしまう。そして、それについては世の中全般でも
同様に、まだちゃんと解明されていない部分である事が多い。
たとえば、ごく単純な例をあげれば、デジタルカメラで
被写界深度を計算する為の「許容錯乱円」の定義は、いまだ
不明であり、業界での統一見解や厳密な解析結果の情報が無い。
まあ、デジタルカメラが一般化してから、まだ20年そこそこ
である、「デジタル光学」という分野の学問が未発達で
あるのも、やむを得ないであろう。
したがって、誰にもわからない事も依然多い分野だ。
おまけに、これは学術的には非常に高度で専門的であるのに、
デジタルカメラを使うユーザー層は、全く逆に一般層だ、
だから、ユーザー側において、好き勝手な解釈や誤まった
概念などの情報が極めて多く飛びかっている。
これらの中から正しい真実を見抜く方法は難しい。現代は
情報化社会であるから、逆に、フェイク(偽)な情報や
間違った情報が、意図的かそうで無いかに係わらず、大量に
溢れ、どれが正しいか?が、わからなくなってしまうのだ。
一見正しいと思う理論や解説であっても、やはり個々で解釈が
異なる場合もあり、単なる思い込みに過ぎないかも知れない。
でも、その事はカメラに限らず、どんな先端学術研究分野
でも必ず発生する事であろう。様々な研究者による様々な
仮説が沢山出てきて、長い時間をかけて、どれかが定説と
なっていく。それまでの期間内では、どれが正しい情報かは
良く分からない時代が続く訳だ。
まあ結局、他人の発信した情報には決してまどわされずに
自身で研究のレベルを高めていくしか無い。それもまた
現代におけるカメラマニアの1つの新しい方向性だとも
思っている(=テクニカルマニアとか研究マニアという話)
デジタル光学の世界では、まだわかっていない事が多いから、
自らそれを究明したいと思う、というスタンスである。
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さて、次のレンズ
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レンズは、TAMRON 70-150mm/f3.5 (Model 20A)
(中古購入価格 500円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
1980年発売の、開放F値固定型MF中望遠ズームレンズ。
安価なジャンク品としての購入である。
ミラーレス・マニアックス第55回記事で紹介の
TAMRON 80-210mm/f3.8-4 (Model 103A)の姉妹
レンズであり、本20A型の方が小型軽量で、103A型よりも
1年早い発売となっている。
ピントリングとズームリングが共用の為、素早いMF操作が
可能な仕様であり、この手のズームレンズを本ブログでは
「ワンハンド・ズーム」と呼ぶ(注:タムロン社では、
ワンハンド・スリー・アクション機構、と呼んでいた)
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長所としては、当時の銀塩時代のMF望遠ズームにおいては、
無理に望遠端焦点距離を伸ばすと、大きく重く高価な三重苦
レンズとなる事を避け、かつ手ブレのリスクを減らす事も
意図した、思い切りの良い「小型軽量化」の製品コンセプト
である事だ。
他記事でも色々書いているが、その当時のビギナー層は
「ともかく望遠レンズが欲しい」とばかりに、実際には
とても使いこなせないような大型の望遠レンズばかりに
目が行って(憧れて)しまう中、なかなか本レンズは
「通好み」の仕様であると言えよう。
まあ、この時代の直前の1970年代には一眼レフシステムの
小型軽量化が流行し、OLYMPUS M-1(OM-1)(1972年)や
PENTAX MX(1976年)が、小型軽量化を実現し、合わせて
交換レンズも小型化された。
それらの純正望遠レンズにおいても OLYMPUS OM75-150/4
(ミラーレス・マニアックス第56回記事)や、
PENTAX-M75-150/4(本シリーズ第16回記事)といった、
本レンズと極めて近いスペックの小型望遠ズームが発売されて
いるので、小型化は本レンズだけの特徴という訳でも無い。
しかし、それらメーカー純正の2本に比べ、本レンズは広角端
焦点距離を70mmに拡張、開放F値もF3.5と少し明るくし、
メーカー純正レンズに、しっかりと対抗している状況が良く
見えて、なかなか興味深い。
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それと、ワンハンド直進式ズームは、やはり使い易い。
現代のAFズームレンズは皆、ズームリングとピントリングが
二重独立回転式であるので、MFはもとより、AFにおいても
その操作性は決して快適とは言えないので、こうした
オールドズームで、ワンハンド仕様となっているものは
格段に効率的に感じてしまう。この操作性を体感し、現代の
ズームレンズの操作性と比較する事も、十分に意味のある
話であり、そうやって、様々な機材を使って比べることで
マニアとして必須の「絶対的価値感覚」を養う事ができる。
ジャンク品で500円(+税)という激安価格、しかし程度は
問題なく、ちゃんと使える。おまけに「アダプトール2」
まで付属していた。この交換マウント用部品を買うだけでも
1000円~2000円の中古相場となる事が普通なので、
仮に何らかの故障で本レンズが全く使えなかったとしても、
惜しくは無い金額である。
カメラ店ではなく、リサイクル店での購入であったので、
アダプトール2自体の市場価値は見逃していたのであろう。
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写りだが、全般的に弱い(悪い)。
具体的には、解像感および逆光耐性が低い事があげられる。
ただまあ、このあたりは40年も前のオールドズームなので
やむを得ない節もある。
被写体や光線状況を良く意識して、弱点を回避して使うのが
良いであろう、そういう類の練習を行う為の「教材レンズ」
として考えれば、500円は超お買い得であろう。
つまり「ワンハンドズーム」ならぬ「ワンコイン・レッスン」
という感じだ。
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次は今回ラストのレンズ
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)
2018年発売の、コシナ史上3本目のマクロアポランター。
MFレンズで等倍マクロ仕様。SONY E(FE)マウント専用で
あり、今の所、他のマウント版が発売される気配は無い。
全マクロアポランターについては、特殊レンズ・スーパー・
マニアックス第11回記事「マクロアポランター・グランド
スラム」にて、紹介済みである。
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2001年発売の旧型MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5SL
のスペックに近いが、そのレンズと本レンズは、17年の時
を隔てて、全く違うものと言えるくらいに変化している。
個人的に最も嬉しかった差異は、MAP125/2.5でのピント
リングの回転角が異常に大きかった課題の改善だ。
MAP125/2.5は最短撮影距離から無限遠まで、実に平均
14回もの左手の持ち替え操作が必要であり、使っていて
非常に疲れる事が大きな課題であった。
本MAP110/2.5では、同条件で持ち替えの回数は8~9回で
行ける。
「レンズの持ち替えくらい、たいした欠点では無い」と思う
初級中級層も多いとは思う。しかし、では、そのMAP125/2.5
や、同等の持ち替え回数を持つ京セラCONTAX (RTS)マクロ
プラナー100/2.8を実際にフィールド(屋外)に持ち出して
近接撮影から遠距離撮影と、バラエティに富んだ撮影技法を
実施してみると良い。ものの1時間も経たない間に、左手が
(そして重たいシステムを支える右手も)疲労してきて、
「これは何かの修行(苦行)か?」と思えるようにまで
辛くなってくる事を実感できる事であろう。
頭の中で想像して物事を語っているだけではダメであり
実際に体験しないと分かり得ない事も色々ある訳だ。
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そして本MAP110/2.5も、MAP125/2.5より、かなりマシとは
言え、やはり重たいピントリングを8~9回も持ち替える
撮影を続けていると、数時間が限界だとも思われる。
だが「そんなもの、三脚を使ってピント固定で花を撮れば
良いではないか?」と考えるシニア・ビギナー層も多いで
あろう。
でも、マクロレンズだから、と言って、そんな数十年も昔の
時代の撮影技法を使っていたら、レンズの実際の性能など、
何もわからないままだ。
本MAP110/2.5は、多くの被写体条件において、どんな状況
(光線状況、撮影距離、背景距離、絞り値など)においても、
優秀な描写力を発揮できる、極めて被写体汎用性が高い
高性能レンズである。
その「描写・表現力」の評価点は、私の評価データベース上
では、5点満点であり、およそ400本程度の私の所有レンズの
中では10数本しか無い、極めてハイレベルなレンズである。
そんな超高性能レンズだからこそ、どこへでも向けて、何でも
撮るべきであろう、三脚で花だけを撮っていたら勿体無い。
マニアック度も勿論高いので、本シリーズの従前の記事
「高マニアック・高描写力レンズ特集」シリーズ第21回~
第23回にノミネートされるべきレンズではあるが、あいにく
その記事の執筆後での購入であった次第だ。
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特に描写力上の不満は無いのだが、問題点はその価格である。
定価148,000円+税は、勿論コスト高だ。いくらカメラ
(レンズ)市場縮退による高付加価値化の時代だとは言え、
たかが単焦点のMFマクロが、この値段というのは酷すぎる。
ちなみに、1990年代頃に同じコシナ社から発売されていた、
COSINA MC MACRO 100mm/f3.5
(ミラーレス・マニアックス第48回記事参照)という
レンズは、本MAP110/2.5と、割と近いスペックながらも、
新品購入価格が14000円であり、本レンズの10分の1である。
勿論総合描写力は、本MAP110/2.5が遥かに優れるが、
その、昔のマクロレンズで撮影条件を整えた最良の写りと
本レンズとの差を見分けるのは、多分困難かも知れない。
だとしたら、付加価値とか値段とか、そういうのはいったい
何なんだろう? と思うかも知れない、まあ、それはそれで
良く、そう疑問を感じて、色々と調べたり実写して研究する
事が大事なのであり、それを全くせずに、「時代も違うし
値段も違う、現代のMAP110/2.5の方が絶対に良く写る」
などと単純に思い込んでしまってはいけないのだ。
本MAP110/2.5は、値段が高価な故に、誰にでも推奨できる
レンズとは決して言い難いのだが、パフォーマンスを重視
するのであれば、そのコスト高は容認できる事であろう。
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今回の第25回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ2本と他シリーズ記事で紹介済みの
2本を取り上げる。
なお、コロナ禍による外出自粛中の為、掲載写真は
過去撮影のものを使用する。(注:本ブログでの
シリーズ形式の記事群は、たいてい記事掲載時点の
1~3年前に、執筆および実写撮影したものである。
さもないと、なかなか、体系的(システマチック)な
記事群は書けない、という理由からだ)
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ではまず、今回最初のレンズ
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(中古購入価格 39,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2012年に発売された、FUJIFILM Xマウント最初期の
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
Xマウント機は現状全てAPS-C機であるので、換算画角は
90mm相当となる。
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したレンズである。また、歴史的な価値も高く、FUJIFILM
(以下、適宜FUJIと略す)社においては、銀塩時代に殆ど
マクロレンズを発売していなかった。
具体的には、FUJIの銀塩MF一眼レフは2シリーズしか無く、
1970年代のM42時代のSTシリーズ用にはマクロは1本も無く、
続く1980年代の独自バヨネットマウントのAXシリーズに
僅かに1本だけMF標準マクロが存在していた模様だが・・
AXシリーズは、元々数年間しか発売されていない、かなり
マイナーなマウントで、1985年の「αショック」以降、
AF化に追従せずに一眼レフ市場から撤退している。
故に、レア品どころか、このFUJI製マクロの存在すらも、
世に殆ど知られていなかった事であろう(私も未所有だ)
まあつまり、本XF60/2.4が、一般に目にする事ができた
ほぼ初の、FUJIFILM製マクロレンズである。
・・のだが、正直言って購入は失敗であった(汗)
まず、AF精度にかなり弱点がある。その理由の1つとしては、
距離エンコーダーが近接域と遠距離域の二重構造である事だ。
これは距離エンコードのビット幅が足り無い為、最短撮影
距離から無限遠までを、単一の(ビット)スケールで制御
する事が出来ないという意味だ。
(まあ、仮に他社でも同様な仕様であったとしても、それを
ユーザー側の操作性への負担とか、AF性能上の弱点にしない
ように色々と工夫はしてある。本レンズはその配慮が少ない)
この説明についてはデジタル技術がわかっていないとチンプン
カンプンだとは思うが、まあつまりAF性能が弱いと言う事だ。
この為、最初期のFUJI Xマウント機(例:X-E1、2012年)
では、近接撮影においては、一々、マクロ切換ボタンを押し、
メニューから「マクロ」を選択しないとピントが合わない。
次世代のFUJI機、例えばX-T1(2014年)でも、像面位相差
AF搭載機ながら、近接域のエンコーダー仕様は同様であり
やはり当初はマクロ切換ボタンを押して切り替える操作を
強要される状態であったのだが、X-T1のファームウェア
Ver. 3あたりから、やっとオートマクロ機能が搭載され、
マクロ切換ボタン(の操作)が廃止されている。
また、今回使用機のX-T10(2015年)でも、同様なオート
マクロ仕様となっているので、マクロ切換の必要は無い。
でも、これらのオートマクロでは、やはりAF精度が出ないのだ。
何故ならば、その機能を実現するには、近接撮影である事を
カメラが認識した時点で、距離エンコード・テーブル(表)
を近接用のものに自動で差し替えるのだが、元々、現在の
ピント位置が不明でAFが迷っている状態では、テーブルを
差し替える事が出来ないからである。
技術的な原理はともかく、実用上でも、やはりAF精度が
厳しいし、MFに切り替える(またはシームレスMF)ても、
例によって無限回転式のピントリングでは、最短での停止
感触が無く、かつピントリングの回転角も大きすぎる。
ちなみに、AFが迷っている場合、たいていだが、AFでは
遠距離と判断されている。その事は、MF時にEVF内に距離
指標を表示させる設定にしておき、シームレスMFとすれば
近接撮影なのに、AF測距が5mや10mで止まっている事が
確認できる。
これでは勿論、オートでマクロに切り替えるべきかどうか
は、カメラ側では、判断できない状態だ。
で、そこからMF操作で最短撮影距離までピントリングを
廻そうとすると、実に8回以上の左手の持ち替え動作が
発生し、冗長である。また、MF距離指標にはレンズ毎の
最短撮影距離が表示されておらず(本レンズの場合は、
26.7cmである)かつ距離指標単位は、最小0.1mと次が
0.5mの狭く粗いスケールであり、さほど精密には最短撮影
距離や撮影距離に到達している事を読み取る事ができない。
頼みのピーキング機能も、FUJI機全般では精度が悪く、
つまり、AFが合い難いからと言ってMFに切り替えても、
やはりピント合わせが困難な事に変わりは無いのだ。
(注:この問題は他のFUJINON Xレンズでも同様だ)
まあ、この状況でも描写力に優れるならば我慢して使う気に
なるだろうが、本レンズの描写性能は、可も無く不可も無し
で、標準よりやや上(評価3.5点)という感じであるが、
一般に、マクロレンズの描写力は、近接撮影においては
通常のレンズよりも相当に優れる事が普通なので、この
レベルだと、ちょっと不満だ。
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本レンズは中古購入、しかも発売から若干年月を経た
状態であったが、それでも4万円近くもしている。
中古でこの値段を出すならば、高性能なTAMRON SP60/2
とTAMRON SP90/2.8の2本のマクロが同時に買えてしまう。
製品が入っている化粧箱は豪華であり、ラッピング
クロス(レンズを巻いて保管や移動をする)まで
付属しているし、フードは複雑な溶接構造の金属製である。
だが、そういった要素で「高級レンズだ」という雰囲気を
出そうとしても、ちょっと納得しずらい。
「もっとペナペナの紙箱で良いから、その分安くしてくれ」
とも思ってしまうし、下手にしっかりした豪華な箱ゆえに
捨てれないから場所を取り、あるいは又、「元箱が残って
いるから、いっそ売却してやるか!?」という気分にさえ
なってしまう。そういう点でも、箱なんてすぐに捨てられる
安っぽい物の方がメーカー側から見ても良いのかも知れない。
まあ、価格が高いのは、高性能や高品質だから、という意味
よりも販売本数が少ないので、開発費や製造原価(金型代等)
のレンズ1本あたりの償却費が高くなるのであろう。それで
値段が高くなると、ますます売れず、悪循環に陥ってしまう。
それと、フィルター径はφ39mm である。
私が所有している数百本のレンズの中で、φ39mm
という仕様は、本レンズのみ(追記:2019年の七工匠
60/2.8Macroも同様)である。
特殊な径なので、フィルターの使いまわしをする為、
φ39mm→φ49mmのステップアップリングを購入し
φ49mmの各種フィルターを使おうとしたが、なんと、
ステップアップリングは、さほど不自然な構造では無い
のだが、レンズに電源を入れた直後にレンズが無限遠まで
引っ込み(AF調整の為か?)それが鏡筒に引っかかって
エラーとなって撮影不能になってしまうのだ。
何故、少しでも付属品装着に余裕のある構造にしなかったの
であろうか? あるいはφ46mmやφ49mm等の一般的な
フィルターサイズとして設計しないのか? 理解に苦しむ。
近年では、各社ともレンズ毎にフィルター径がまちまちの
設計をしてしまうので、フィルターの使いまわしなどの
汎用性に大きく欠ける。銀塩時代では、オリンパスや
ニコン、キヤノン等では、ほとんどの交換レンズを同一の
フィルター径で統一する等、「標準化思想」が徹底していた。
まあ、高度成長期の経験があったから、そういう点では
製造や設計における様々なノウハウやコンセプトは、
昔は良く練られていたと思う。
製造業が衰退した現代における各メーカーでは、そうした
ユーザー利便性や、製造面での利便性すら理解できていない
のであろうか・・? だとすれば極めて残念な話である。
(参考:2010年代後半からのTAMRONでは、SP単焦点や
新鋭M1:2シリーズのレンズ群等を、フィルター径
φ67mmで統一している。やっと、近代においても、
そうした「標準化思想」がまた出てきて、好ましい。
なにせ、レンズ市場縮退の影響か? 2019年頃から、
各社の各種フィルターは、安価なものは全て生産中止と
なり、高価な商品ばかりになってしまい、適価に様々な
サイズや種類のフィルターを揃える事が、とても困難に
なってしまっている状況だからだ)
まあ、欠点のいくつかは購入前にわかっていて、覚悟の
上での購入ではあったが、しかし、それにしても度が過ぎる、
という感がある。
まあ、歴史的にもFUJIFILMは銀塩時代の一眼レフのAF化に
追従できておらず、レンズ交換式カメラにおいては、
AF化は何と、近年2012年からのXシリーズミラーレス機が
初である。おまけに銀塩時代のAF機(コンパクト等)や
デジタル時代に入ってからのコンパクト機などでも、
FUJIFILM社が全て自社で設計製造しているとはとうてい
思えない(他社OEM品である可能性が高いという事だ)
まあつまり、カメラや交換レンズ設計のノウハウがFUJIの
社内に蓄積されている状態だとは思えず、カメラやレンズ
の仕様上、様々な課題が出てきている状況だ。
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ハンドリング性能の高い簡便な中望遠(マクロ)レンズが
Xマウントでは存在しない為、やむなくの購入であるのだが、
正直言えば、この状況であれば、TAMRON SP60/2 Macro
等をXマウント機にアダプターで装着すれば、あらゆる面で
高性能であるし、中古相場も約半額でコスパにも優れる。
でも、そうできないのは、FUJI Xマウント機全般での
MF性能が貧弱である事が課題となっているからである。
(追記:本記事執筆後に新発売された、七工匠60/2.8
Macroには、Xマウント版が存在するが、MF性能の課題は
同様である。当該レンズは他マウント版を後日紹介予定)
後年のFUJI製マクロ(例:90mm/f2.8,80mm/f2)であれば、
様々な課題の改善も若干は図られているかも知れないが、
それらは極めて高価であり、簡単に購入できるものではない。
(というか、手ブレ補正内蔵、防水仕様、という、不要な
機能が入っていて高付加価値化(=値上げ)されているだけ
に思え、AF精度等が高まっている保証が無いので買えない)
すなわち、これらは皆、FUJIFILMの最初期(2012年頃の)
ミラーレス・システムが仕様的・性能的・技術的に未成熟で
あった事を起因としている課題だ。
まあ、それらの事情が良くわかっただけでも良しとするか・・
もう個人的には、Xシステムを、さらに充実させたい、という
目論見についても、「かなり控え目に考えておかなければ
ならないだろう」という意識になってきている。
すなわち、あまりにコスパが悪いからだ。
(注:その対策については、また別の記事で後日紹介する)
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さて、次のレンズ
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(発売時定価28,000円)
カメラは、PENTAX Q7 (1/1.7型機)
本シリーズ記事では未紹介だが、別シリーズ記事の
「特殊レンズ・スーパーマニアックス第1回マシンビジョン編」
で、少しだけ紹介しているレンズである。
発売年不明(2000年代?)の、FA用低歪曲望遠マクロ(近接専用)
初期メガピクセル対応、MF単焦点手動絞りレンズ。
2/3型センサー対応、Cマウント、マシンビジョン用レンズ。
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最短撮影距離と等価。しかし稀にワーキング・ディスタンス
と等価、という解釈もあり、ややこしい)は、スペック上で
約28cm~約67cmである。
2/3型センサーでは、この時の撮影倍率は、0.25倍(1/4倍)
~0.10倍の間で変化する。PENTAX Q7は2/3型機では無いが
ほぼ近い値(2/3型=0.66型、1/1.7型=0.58型)である
ので、だいたい同じ位の撮影倍率と判断すれば良い。
まあ、写真用での「望遠マクロ」に近い感覚のレンズだ。
開放F値は不定であり、撮影距離に関連する「露出倍数」に
応じ、F2.7~F3.1程度となる。
「露出倍数」(露光倍数とも言われる)は、近接撮影時に
見かけ上の口径比(≒F値)が落ちる事を指す。
これは本レンズに限らず、殆ど全ての交換レンズで発生する。
つまり、近接撮影ではヘリコイドを繰り出して前玉位置が
遠くなる訳だから暗くなる、という原理だ。世間一般では、
「深い井戸の底では、井戸の入り口が小さく見え、入って
くる光も減る」という概念で説明される事が多い。
暗くなる度合いは、(撮影倍率+1)x(撮影倍率+1)
の公式で表される。(これが露出倍数の値となる)
ここで撮影倍率は、センサーサイズを撮影範囲で割れば良い、
例えばフルサイズ(36mmx24mm)に対し、18mmx12mm
の小さい範囲が写る場合、これは36÷18で2倍となる。
写真用マクロレンズでの、等倍(1倍)や、1/2倍と
スペック記載も、これと同じ概念である。
(注:現代のデジタル機では、撮影倍率は、様々な機体で
撮像センサーのサイズがまちまちであるから、「センサー
換算倍率」等と明記しないと、正確なスペックとは言えない。
加えてミラーレス機等ではデジタル拡大(ズーム、テレコン)
機能の利用も普通である。
よって、撮影範囲と撮影倍率の関係は複雑だ。だがここでは
あくまで露出倍数を計算する意味において、撮影倍率の概念
を用いている。実用上では、レンズの撮影倍率については、
あまり気にする必要性は無いのだ)
で、計算時にセンサーの縦横比(アスペクト比)が異なる
場合は、若干面倒だが、直角三角形の斜辺の公式で、
対角線長を求め、その対角線同士で割り算する。
(例:フルサイズ機に対し、4.8mm x 3.6mmの撮影範囲
の場合、対角線長で計算し、約43mm÷6mm =約7.1倍)
だが、このような露出倍数の計算が必要なのは、概ね等倍
(1倍)を超える「超マクロ撮影」の場合くらいである。
例えば、一般レンズで無限遠撮影をする場合、撮影倍率は
ほぼゼロ倍であり、露出倍数は(0+1)x(0+1)=1となる。
すなわち遠距離撮影では露出倍数は無関係(そのまま)
であり、見かけ上の口径比(≒F値)が暗くなる事は無い。
では、世の中に良くある写真用の等倍(1倍、1:1)マクロ
レンズ(注:フルサイズ換算)ではどうなるか?
最短撮影距離での撮影時、露出倍数は、(1+1)x(1+1)=4
となる、すなわち遠距離撮影より4倍(EVで2段)暗くなる。
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まず一般にこれは「暗くなった」といってもレンズ利用者側は、
あまりこれを意識して特定のカメラ設定操作を行う必要は無い。
AEで撮っているならば、遠距離撮影時よりシャッター速度が
低下したり、AUTO ISOの場合は感度が若干高まっている
だけであり、普段の撮影で暗い場所にカメラを向けた場合と
同様なので、単に、手ブレや高感度ノイズに注意すれば良い
だけである。
また、これはレンズの構造や設計にも依存すると思われ、
近接撮影時で有効(瞳)径との比が変化しずらい設計
(例:IF=インターナル・フォ-カス等)とするならば、
近接時での開放F値の低下は最小限に抑えられるであろう。
一般に開放F値の低下は、具体的な数値として、レンズから
ボディ側に伝達される事はそう多くは無い。F2.8の等倍マクロ
であれば、近接撮影時にもカメラにはF2.8が表示されたままだ。
ただ、一部のメーカーのカメラと、同メーカーのマクロレンズ
では、低下したF値がカメラに表示される場合もある。
例えば、NIKON AF/デジタル一眼レフと同社マイクロレンズ
Ai AF Micro-NIKKOR 60mm/f2.8D等では、近接撮影時には、
絞り開放で撮っていても、F2.8→F5等のF値低下が表示される。
これは、ユーザーへの情報提示の配慮としては好ましいが、
実際の所、カメラから「暗くなった」と言われても、何も
対処の方法が無い。通常撮影の場合でも暗所で発生する
「手ブレ警告」や「フラッシュ発光の推奨表示」と同じ事
であり、そういうカメラ機能を「そんな事は言われないでも
シャッター速度を見ればわかっている、余計なお世話だ!」
と思う中上級者であれば「(開放)F値が下がった」とカメラから
言われても「はいそうですか、では気をつけます」で終わりだ。
そして、そういう情報表示機能は、レンズとカメラ間での
情報伝達プロトコルの内、少なくとも「開放F値、現在の
設定F値、対応センサーサイズ、撮影距離」の4つの情報が
やりとりされていないと計算が実現できない機能である。
電子接点の無いレンズ、たとえば本VS-LD50レンズでは、
開放F値は、撮影距離に応じてF2.7~F3.1程度に変動する
のではあるが、Cマウントの規格では、その値をカメラ側から
参照する方法は無い。だから、開放測光または実絞り測光で
処理せざるを得ず、暗くなった分、センサーに到達する光は
減る訳であり、カメラ側はそれに応じシャッター速度および
ISO感度(CCTVの場合は、ゲイン、およびAGC機能と呼ぶ)
を手動又は自動で調整するだけである。
で、本レンズの場合では、その開放F値変化幅からすると
近接撮影でも、あまり露出倍数がかからない設計の模様だ。
ちゃんと厳密には実験していないが、軽く試してみると、
平面光源に対してWDを約30cmから60cmまで変化させた場合、
一定ISO感度でのシャッター速度の変化は1/50→1/60秒の
約1.2倍の変化で留まっている(仕様上ではF3.1~F2.7で
これは1.3倍の露出変化だ。まあ実験誤差範囲内である)
この時、最短撮影距離での、センサーサイズ2/3型における
撮影倍率は0.25倍と仕様にある(注:今回使用機のPENTAX
Q7とは僅かに異なるが、概算上では、ほぼ同じと見なす)
本来、露出倍数は(0.25+1)x(0.25+1)=約1.56倍となる
筈であるが、そこまでは暗くならないようにと(僅かだが)
露出倍数に配慮した設計であると思われる。
なお、本レンズの絞り値を暗く設定した場合でも、撮影距離に
応じて同様のF値変化が起こる。概算ではあるが、レンズを
F8に設定したら、最近接撮影ではF9程度に暗くなる訳だ。
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場合には、専門的な技術解説が多くなってしまう。
写真の世界とは、ほとんど無関係な技術分野であるから
たとえカメラマニアや職業写真家層であっても、これらの
技術分野の理解は、とても困難であり、難解であると思う。
「さっぱり意味がわからないよ」となるのがオチであろう。
だが、マシンビジョンレンズを使ってみたいならば、
これら様々な専門的な知識や計算能力が必須となる。
よって、カメラマニアにも、これらのマシンビジョンレンズ
の使用は推奨できない。使用可能なシステムを組む際にも
本記事で書いた内容よりも、もっと高度で複雑な計算を
行う必要があるし、その計算も単に公式を覚える訳ではなく
原理理解の上で、計算式を自ら考えつかないかぎりは、他に
それを勉強できる参考書等が売っている訳では無いのだ。
つまり、あくまで独学、自力で研究せざるを得ず、さらに
言うならば、あるレベルを超えると、よくわからない部分が
沢山出てきてしまう。そして、それについては世の中全般でも
同様に、まだちゃんと解明されていない部分である事が多い。
たとえば、ごく単純な例をあげれば、デジタルカメラで
被写界深度を計算する為の「許容錯乱円」の定義は、いまだ
不明であり、業界での統一見解や厳密な解析結果の情報が無い。
まあ、デジタルカメラが一般化してから、まだ20年そこそこ
である、「デジタル光学」という分野の学問が未発達で
あるのも、やむを得ないであろう。
したがって、誰にもわからない事も依然多い分野だ。
おまけに、これは学術的には非常に高度で専門的であるのに、
デジタルカメラを使うユーザー層は、全く逆に一般層だ、
だから、ユーザー側において、好き勝手な解釈や誤まった
概念などの情報が極めて多く飛びかっている。
これらの中から正しい真実を見抜く方法は難しい。現代は
情報化社会であるから、逆に、フェイク(偽)な情報や
間違った情報が、意図的かそうで無いかに係わらず、大量に
溢れ、どれが正しいか?が、わからなくなってしまうのだ。
一見正しいと思う理論や解説であっても、やはり個々で解釈が
異なる場合もあり、単なる思い込みに過ぎないかも知れない。
でも、その事はカメラに限らず、どんな先端学術研究分野
でも必ず発生する事であろう。様々な研究者による様々な
仮説が沢山出てきて、長い時間をかけて、どれかが定説と
なっていく。それまでの期間内では、どれが正しい情報かは
良く分からない時代が続く訳だ。
まあ結局、他人の発信した情報には決してまどわされずに
自身で研究のレベルを高めていくしか無い。それもまた
現代におけるカメラマニアの1つの新しい方向性だとも
思っている(=テクニカルマニアとか研究マニアという話)
デジタル光学の世界では、まだわかっていない事が多いから、
自らそれを究明したいと思う、というスタンスである。
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さて、次のレンズ
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(中古購入価格 500円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
1980年発売の、開放F値固定型MF中望遠ズームレンズ。
安価なジャンク品としての購入である。
ミラーレス・マニアックス第55回記事で紹介の
TAMRON 80-210mm/f3.8-4 (Model 103A)の姉妹
レンズであり、本20A型の方が小型軽量で、103A型よりも
1年早い発売となっている。
ピントリングとズームリングが共用の為、素早いMF操作が
可能な仕様であり、この手のズームレンズを本ブログでは
「ワンハンド・ズーム」と呼ぶ(注:タムロン社では、
ワンハンド・スリー・アクション機構、と呼んでいた)
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無理に望遠端焦点距離を伸ばすと、大きく重く高価な三重苦
レンズとなる事を避け、かつ手ブレのリスクを減らす事も
意図した、思い切りの良い「小型軽量化」の製品コンセプト
である事だ。
他記事でも色々書いているが、その当時のビギナー層は
「ともかく望遠レンズが欲しい」とばかりに、実際には
とても使いこなせないような大型の望遠レンズばかりに
目が行って(憧れて)しまう中、なかなか本レンズは
「通好み」の仕様であると言えよう。
まあ、この時代の直前の1970年代には一眼レフシステムの
小型軽量化が流行し、OLYMPUS M-1(OM-1)(1972年)や
PENTAX MX(1976年)が、小型軽量化を実現し、合わせて
交換レンズも小型化された。
それらの純正望遠レンズにおいても OLYMPUS OM75-150/4
(ミラーレス・マニアックス第56回記事)や、
PENTAX-M75-150/4(本シリーズ第16回記事)といった、
本レンズと極めて近いスペックの小型望遠ズームが発売されて
いるので、小型化は本レンズだけの特徴という訳でも無い。
しかし、それらメーカー純正の2本に比べ、本レンズは広角端
焦点距離を70mmに拡張、開放F値もF3.5と少し明るくし、
メーカー純正レンズに、しっかりと対抗している状況が良く
見えて、なかなか興味深い。
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現代のAFズームレンズは皆、ズームリングとピントリングが
二重独立回転式であるので、MFはもとより、AFにおいても
その操作性は決して快適とは言えないので、こうした
オールドズームで、ワンハンド仕様となっているものは
格段に効率的に感じてしまう。この操作性を体感し、現代の
ズームレンズの操作性と比較する事も、十分に意味のある
話であり、そうやって、様々な機材を使って比べることで
マニアとして必須の「絶対的価値感覚」を養う事ができる。
ジャンク品で500円(+税)という激安価格、しかし程度は
問題なく、ちゃんと使える。おまけに「アダプトール2」
まで付属していた。この交換マウント用部品を買うだけでも
1000円~2000円の中古相場となる事が普通なので、
仮に何らかの故障で本レンズが全く使えなかったとしても、
惜しくは無い金額である。
カメラ店ではなく、リサイクル店での購入であったので、
アダプトール2自体の市場価値は見逃していたのであろう。
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具体的には、解像感および逆光耐性が低い事があげられる。
ただまあ、このあたりは40年も前のオールドズームなので
やむを得ない節もある。
被写体や光線状況を良く意識して、弱点を回避して使うのが
良いであろう、そういう類の練習を行う為の「教材レンズ」
として考えれば、500円は超お買い得であろう。
つまり「ワンハンドズーム」ならぬ「ワンコイン・レッスン」
という感じだ。
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次は今回ラストのレンズ
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(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)
2018年発売の、コシナ史上3本目のマクロアポランター。
MFレンズで等倍マクロ仕様。SONY E(FE)マウント専用で
あり、今の所、他のマウント版が発売される気配は無い。
全マクロアポランターについては、特殊レンズ・スーパー・
マニアックス第11回記事「マクロアポランター・グランド
スラム」にて、紹介済みである。
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のスペックに近いが、そのレンズと本レンズは、17年の時
を隔てて、全く違うものと言えるくらいに変化している。
個人的に最も嬉しかった差異は、MAP125/2.5でのピント
リングの回転角が異常に大きかった課題の改善だ。
MAP125/2.5は最短撮影距離から無限遠まで、実に平均
14回もの左手の持ち替え操作が必要であり、使っていて
非常に疲れる事が大きな課題であった。
本MAP110/2.5では、同条件で持ち替えの回数は8~9回で
行ける。
「レンズの持ち替えくらい、たいした欠点では無い」と思う
初級中級層も多いとは思う。しかし、では、そのMAP125/2.5
や、同等の持ち替え回数を持つ京セラCONTAX (RTS)マクロ
プラナー100/2.8を実際にフィールド(屋外)に持ち出して
近接撮影から遠距離撮影と、バラエティに富んだ撮影技法を
実施してみると良い。ものの1時間も経たない間に、左手が
(そして重たいシステムを支える右手も)疲労してきて、
「これは何かの修行(苦行)か?」と思えるようにまで
辛くなってくる事を実感できる事であろう。
頭の中で想像して物事を語っているだけではダメであり
実際に体験しないと分かり得ない事も色々ある訳だ。
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言え、やはり重たいピントリングを8~9回も持ち替える
撮影を続けていると、数時間が限界だとも思われる。
だが「そんなもの、三脚を使ってピント固定で花を撮れば
良いではないか?」と考えるシニア・ビギナー層も多いで
あろう。
でも、マクロレンズだから、と言って、そんな数十年も昔の
時代の撮影技法を使っていたら、レンズの実際の性能など、
何もわからないままだ。
本MAP110/2.5は、多くの被写体条件において、どんな状況
(光線状況、撮影距離、背景距離、絞り値など)においても、
優秀な描写力を発揮できる、極めて被写体汎用性が高い
高性能レンズである。
その「描写・表現力」の評価点は、私の評価データベース上
では、5点満点であり、およそ400本程度の私の所有レンズの
中では10数本しか無い、極めてハイレベルなレンズである。
そんな超高性能レンズだからこそ、どこへでも向けて、何でも
撮るべきであろう、三脚で花だけを撮っていたら勿体無い。
マニアック度も勿論高いので、本シリーズの従前の記事
「高マニアック・高描写力レンズ特集」シリーズ第21回~
第23回にノミネートされるべきレンズではあるが、あいにく
その記事の執筆後での購入であった次第だ。
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定価148,000円+税は、勿論コスト高だ。いくらカメラ
(レンズ)市場縮退による高付加価値化の時代だとは言え、
たかが単焦点のMFマクロが、この値段というのは酷すぎる。
ちなみに、1990年代頃に同じコシナ社から発売されていた、
COSINA MC MACRO 100mm/f3.5
(ミラーレス・マニアックス第48回記事参照)という
レンズは、本MAP110/2.5と、割と近いスペックながらも、
新品購入価格が14000円であり、本レンズの10分の1である。
勿論総合描写力は、本MAP110/2.5が遥かに優れるが、
その、昔のマクロレンズで撮影条件を整えた最良の写りと
本レンズとの差を見分けるのは、多分困難かも知れない。
だとしたら、付加価値とか値段とか、そういうのはいったい
何なんだろう? と思うかも知れない、まあ、それはそれで
良く、そう疑問を感じて、色々と調べたり実写して研究する
事が大事なのであり、それを全くせずに、「時代も違うし
値段も違う、現代のMAP110/2.5の方が絶対に良く写る」
などと単純に思い込んでしまってはいけないのだ。
本MAP110/2.5は、値段が高価な故に、誰にでも推奨できる
レンズとは決して言い難いのだが、パフォーマンスを重視
するのであれば、そのコスト高は容認できる事であろう。
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今回の第25回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。