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最強50mmレンズ選手権(9) 予選Iブロック MF50mmマクロ

所有している一眼レフ用の50mm標準レンズを、AF/MF、
開放F値等による区分でカテゴリー別予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。

今回は、予選Iブロック「MF50mm Macro」として銀塩
時代のMF標準マクロレンズを5本紹介(対戦)する。

なお、前記事「AF50mm Macro」カテゴリーでは、
その時代(1990年前後)での何らかの技術革新により、

どのマクロレンズも描写力に優れるが、本カテゴリーの
時代(1970年代~1980年代)では、マクロレンズの
性能や描写力はまだ未成熟であり、ガクンとクオリティ
が下がってしまう。まあでも、時代あるいは歴史を知る
と言う意味では、これら(銀塩用)MF標準マクロレンズ
を知っておく事は重要だ。

GW外出自粛中での「お家で研究」に役立つならば幸い
である。なお、本シリーズ記事は、元々は、今年に
予定された東京五輪2020に合わせて準備していた
ものであり、1~3年前に撮影も執筆も完了していた。
で、他のシリーズ記事も同様に1~2年前から仕上げて
ある状況だ。遠方の知人等への安否確認の意味も
あるので、当面の間は、こうした撮影・執筆済みの
記事群を小まめにアップしていくことにしよう。

---
さて、まずは今回最初の標準マクロレンズ。
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レンズ名:MINOLTA New MD Macro 50mm/f3.5
レンズ購入価格:9,000円(中古)(以下、NMD50/3.5)
使用カメラ:SONY α7(フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第7回記事で紹介の、
1980年代のMF標準ハーフ(1/2倍)マクロ。
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_c0032138_12403312.jpg
1/2倍マクロと言うのは、35mm判フィルムのサイズ、
またはフルサイズ撮像素子において、最短撮影距離で
フィルム等と同じ「36mmx24mm」と言う範囲が写れば、
それを等倍(1対1)と呼び、その各辺の倍の広い範囲、
つまり72mmx48mmの範囲が写れば1/2倍、又は1対2、
あるいはハーフマクロ等と呼ぶ。

ちなみに、被写体の大きさや対角線長といった「1次元」
の量であれば、両者の差は額面通りの2倍であるが、
撮影範囲といった「2次元量」においては、写る範囲の
面積はハーフマクロでは等倍マクロの4倍迄広くなる。

さて、まず本レンズの当時の時代背景であるが・・
1970年代あるいは1980年代前半位までの銀塩MF時代の
マクロレンズは、ほぼ全てが1/2倍止まりの性能である。

そして1960年代~1970年代に開発されたマクロレンズは
そもそもの目的が「複写」である。すなわち当時はコピー
機等がまだ普及していなかった為、書物や新聞等の文字が
書かれた文献や、写真や絵画、あるいは病理画像(検体や
標本、レントゲン写真等)はたまた各種学術的な標本や
サンプル等を撮影(実写)して「複写する」目的であった。

これらの用途においては、被写体がはっきり写っている事、
すなわち解像力が最優先される。だから古くからのマクロ
レンズ(ニコンやオリンパス等)で、特に50~55mm程度
の焦点距離を持つ標準マクロレンズにおいては、近接撮影
において、極めて高い解像力を持つものがある。
(同時に、歪曲収差の低減も目指されていた事であろう)
ただ、当時のレンズ設計(製造)技術においては、解像力
や歪曲収差補正を優先すると、どうやらボケ質が固くなり、
場合により、ボケ質の破綻を起こしてしまう模様だ。

本ブログでは、このようなレンズを「平面マクロ」と呼び、
こうした特性のレンズ群では、「できるだけ平面の被写体、
あるいは被写界深度を深くしてパンフォーカス的に撮る
事が適切だ」として定義または説明している。

しかし、立体被写体等において、たとえ、ややボケ質が
汚いとしても、ボケ質破綻の回避技法を適用しながら、
ある程度、ボケ質が気にならないようには撮れると思う。

ただ、やはり「平面マクロ」は、前述の「複写」とかの
特殊な用途に向くレンズであって、当時から一般層にまで
普及してきた一眼レフにおいては、一般的な近接被写体
(花とか小物とか)の撮影にはあまり向かない。

1980年代あたりからは世の中にコピー機も普及してきた為、
マクロレンズの用途は、それまでの複写用途から、より一般
撮影に適するように、近接撮影での解像力をやや犠牲にし
その替わり中遠距離撮影でも、ある程度の解像力が得られ
かつボケ質も柔らかくなり、花や人物等の一般的被写体で
背景をボカした写真でも、あまり不自然にならないように、
と、各社のマクロレンズは特性の変更が進められていく。
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_c0032138_12403373.jpg
こんな状況の中、本NMD50/3.5であるが、1980年代の
マクロで一般撮影向けのテイストになりつつある時代の物だ。

しかし解像力が高目の傾向は依然変りがなく、被写体に
よっては、やや「固い描写」の印象があるレンズだ。

また、この1980年代では、より高い撮影倍率、つまり
「等倍撮影」へのニーズも高くなってきていた。
この為、本レンズには「等倍アダプター」が付属している。

これは、本レンズの、ほぼ専用のアクセサリーであるが、
まあ単なる筒である。他のハーフマクロレンズ等でも
接写用アタッチメント(付属品)が用意されている場合が
多く、マニアの間では、通称「ゲタ」と呼ばれる事もある。

(注:クローズアップ用(凸)レンズが付属している
場合もあるが、収差の増加により描写力はかなり落ちる)

また同様な構造で、様々なレンズで使用できる、汎用の
別売アクセサリーとして、「エクステンション・チューブ」
(延長鏡筒)あるいは「接写リング」と呼ばれている物も
各社から販売されていた。

これらのアタッチメントにより、撮影倍率を高める事が
出来るのだが、これを装着すると「無限遠にピント合わない」
「暗くなる(露出倍数がかかる)」と言った課題が出る。

また、普通、マクロレンズは、近接撮影において最良の
画質が得られるように設計されているが、一般レンズは
その逆で、無限遠被写体の場合に最良画質となる。
よって、一般レンズに接写リング等をつけて超近接撮影を
行うと、設計範囲外(想定外)の使用法である為、画質が
低下する等の問題点もあった。

現代ではミラーレス機等で、デジタル拡大機能を用いれば
(条件が合えば)画質を損なわずに見かけ上の撮影倍率を
簡便に高める事ができる。
いや、もっと簡単には、フルサイズ機ではなく、例えば
μ4/3機を用いれば、それだけで撮影倍率は2倍に上がる。
(本レンズであれば、μ4/3機では等倍マクロだ)

ただ、デジタル拡大機能を用いる、あるいはセンサーサイズを
下げて見かけの撮影倍率を高める場合と、実際にマクロレンズ
や接写リングを用いて近接撮影をするのではずいぶんと様子が
替わる。対象となる被写体の写る大きさは変わらないとしても
背景等までを含めて考えれば、パースペクテイブ(遠近感)や
被写界深度の変化、それから撮影アングルの自由度、など
多くの要素の振る舞いがデジタル拡大の場合とは異なる訳だ。

このあたり、つまり光学的な拡大(近接)と、デジタル的な
拡大を自在に組み合わせると、銀塩時代では考えられなかった
撮影技法も生まれる。

ごく簡単な例を上げれば、被写界深度を一定に確保しながら
デジタル拡大機能で構図を微調整する等である。
これ以外にも、例えば撮影距離とズーミング焦点距離での画角
の変化に係わる背景の取り込み等(パースペクティブ)の変化
の原理は中級者レベルにも比較的良く知られてはいるが、
そこにさらにデジタルの拡大を組み合わせると、構図あるいは
被写界深度の調整、さらにはボケ質破綻の回避等の組み合わせ
の自由度が格段に上がる。

まあでも、このあたりは光学とデジタルの両者の様々な特性を
理解した上で無いと無理な技法だ、これは仮に撮影経験が長い
上級者や職業写真家であっても応用が難しい話だと思うので、
「通常の撮影技法では無い」という事にもなるだろう。
(注:「デジタル拡大はトリミングと等価だ」とは言うなかれ、
撮影時点で、デジタル拡大を使いボケ質や被写界深度を意識
しながら撮る事が重要なのであり、後編集のトリミングでは、
被写界深度等は、もう変えようが無い訳だ)
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さて本NMD50/3.5のスペックとしては、レンズ構成4群6枚
最短撮影距離23cmである。フィルター径はφ49mmと小型だ。

なお、前記事で紹介のMINOLTA AF MACRO 50mm/f3.5
のスペックは、5群5枚、最短23cm、φ55mmであり、

仕様だけ見ると本レンズとはずいぶんと異なるので、
そのAF版が本レンズの後継機種であるとは言い難い模様だ。

本NMD50/3.5の描写傾向の総括としては、高目の解像力を
活かして平面近接被写体あるいは遠景被写体に適切であると
思われ、逆にマクロとしての一般的な撮影用途にはあまり
向かない。つまり一種の「平面マクロ」である。

この時代、ミノルタのXシリーズ等の、MDマウント系の
MF銀塩機を使う上では、マクロレンズの選択肢が少なく
必要とされるレンズではあったのかも知れないのだが、
現代においては、本NMD50/3.5を指名買いする理由は
殆ど無い。まあ、あくまでこの時代のマクロレンズの
特徴の紹介としての参考まで。

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では、次のマクロ(マイクロ)レンズ
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レンズ名:NIKON Ai Micro-NIKKOR 55mm/f3.5
レンズ購入価格:8,000円(中古)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)

レンズマニアックス第16回記事等で紹介の、恐らくは
1970年代後半の製品と思われる1/2倍標準マクロ。
4群5枚構成、最短撮影距離は24.1cmだ。
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このマイクロ(マクロ)レンズは、「平面マクロ」である。
(匠の写真用語辞典第5回記事参照)

つまり、平面被写体に特化し、その際の解像力を高める
レンズ設計コンセプトであり、半面、ボケ質が固くて
破綻し易いという弱点を持つ。

この弱点を回避しながら使う為には、本来であれば
高精細なEVFを持つミラーレス機に装着し、ボケ質を
ある程度確認しながら撮影する必要があるが、まあ今回は
銀塩時代の雰囲気を味わう為に、ニコン・フルサイズ一眼
レフで使っている。
そしてNIKON Dfは、記録画素数が1600万画素と少な目で、
結果、ピクセルピッチが約7.2μmと大きい為に、銀塩時代
のオールドレンズを使う際に、センサー側が過剰性能に
ならずにバランスが良い。(しかし、本レンズの特性
とは、あまりマッチしていない事は確かだ)

ただまあ、Dfは操作系が劣悪なカメラなので、あまり
凝った撮影技法を使うには適さない、今回は、ごく普通の
近接撮影スタイルに特化しよう。
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本レンズの系列は比較的長期間に渡って販売されていた
MFマクロではあるが、後年のF2.8版の方が被写体汎用性
が高い事は間違いがない。
ただまあ、あえてこのF3.5版を選んだ理由は、本レンズ
の、かなり特徴的な「平面マクロ」の特性である。
これの意味を理解し、使う意義を認めるのであれば、
本レンズを所有する価値や意味が出てくると思う。、

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では、次のマクロレンズ。
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レンズ名:CANON FDM50mm/f3.5 Macro
レンズ購入価格:15,000円(中古)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第18回記事で紹介の、
1970年代のMF標準ハーフ(1/2倍)マクロレンズ。
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こちらも本ブログでは、久しぶりの登場であるが、その
理由は「あまり好きなレンズでは無いからだ」と言える。

まず、とても古いレンズである。発売は恐らく1973年頃
であり、CANON 旧F-1(銀塩一眼レフ・クラッシックス
第1回)の時代だ。

これは '70大阪万博の3年後であり、マクドナルドが
日本に初上陸してからや、日清カップヌードルが新発売
されてからも、まだ日が浅い。

オイルショックが起こり、「トイレットペーパーの買占め
騒動」が起こった年でもあり(注:2020年3月にも、
コロナ禍で、トイレットペーパーの買占め騒動があった)
邦楽では「喝采」(ちあきなおみ)や「神田川」(かぐや姫)
邦画では「日本沈没」(初代作、小松左京原作)が流行して
いた時代のレンズである。

1990年代、私は所有していたNew FD50/3.5 Macro
を一度手放し(それも描写が気に入らなかったからだ)
後から、より古い時代の本FDM50/3.5を購入したのだが、
描写傾向は特に変わらずに少々落胆した。
まあでも、こちらの旧型は処分せずに残しておいた物の、
好みでは無い事は確かだ。

で、もしかすると、4群6枚と言うレンズ構成がいけない
(好みに合わない)のだろうか?
いや、前述のMINOTA NMD50/3.5も後述のPENTAX A50/2.8
も同様に4群6枚であり、それらのレンズには違和感は
あまり感じ無いので、それが原因とも言い切れない。

そして同じ4群6枚構成であれば、まったく同じ描写力である
とも言い切れず、レンズのパワー配置(=ごく簡単に言えば、
レンズの曲がり具合)や、レンズ配置位置の差異、ガラス素材
の差異(屈折率やアッベ数)等、つまり設計の差異によって、
当然、写りも変わって来る事であろう。
結局のところ、設計思想、設計手法による特性の差異が、
利用者の目的や好みに合致するか否か?という差だ。
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本レンズだが、最短23.2cmの1/2倍仕様だ。
この時代のMF標準ハーフマクロは、だいたいこのあたりの
最短撮影距離となる。

中古購入時に「等倍アダプター」等は付属していなかった、
前オーナーが紛失したのか、あるいは別売なので購入して
いなかったのか、それとも元々、そういうアクセサリーは
存在していなかったのか? 40年近くも前のレンズなので
今となっては詳しい情報等も殆ど残っていない。

そして問題の描写力についても、古いレンズ故に経年劣化が
起こっているのかも知れない。ただ、経年劣化していたと
しても、基本的な描写傾向に大差は起こらない事であろう。

それと価格が高かった。購入は1990年代末か2000年代
初頭頃だったと思うが、15000円は、このレンズの性能や
古さからすれば、極めてコスパが悪い。

結局、「コスパが悪い」という要素があると、個人的に
それは嫌いなレンズになってしまう模様である。

多少高くても性能が良いレンズであれば、まあ許せるの
ではあるが、そのあたりの、性能対価格比、つまりコスパ
は、レンズ購入時の最優先の判断ポイントとしている。

本FDM50/3.5は、現代となっては、あまり推奨できない
レンズではあるが、まあこちらも、この時代の参考資料
(サンプル)としての意義が大きい。

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では、4本目の標準マクロレンズ。
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レンズ名:smc PENTAX-A Macro 50mm/f2.8
レンズ購入価格:20,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)

ハイコスパレンズ・マニアックス第15回記事等で
紹介の1980年代のMF標準(ハーフ)マクロレンズ。
ミラーレス名玉編では、類似特性のレンズの存在で
ノミネートから外れたが、なかなか良いレンズである。
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PENTAXにおける「A」レンズとは、プログラムAE等の
マルチモードAEに対応した PENTAX Super A (1983年)
の発売以降に、順次普及した「KAマウント」のMFレンズ
であり、絞りの最小位置の隣に「A」位置があり、そこに
指標をセットすれば、カメラ本体側のダイヤル等での
絞り値変更操作を受け付けたり、絞り優先AE以外の
シャッター優先AE等の機能も実現できる型式のレンズだ。

前述のFDM50/3.5からは約10年の歳月が流れている。
今となっては、本レンズの正確な発売年は不明であるが、
仮に1983年頃とすれば、その当時の世情としては、
「探偵物語」(初代作。邦画/邦楽、薬師丸ひろ子)や
「時をかける少女」(初代作。邦画/邦楽、原田知世)
が流行り、ヒット商品としては「カロリーメイト」や
「六甲のおいしい水」がある。

それと「任天堂ファミリーコンピューター」(ファミコン)
が発売されたのも、この1983年だ。
また、あまり知られていないが、最初期のインターネットが
開始されたのも、どうやらこの1983年であった模様だ。

・・で、余談はともかく、このKAマウントレンズだが、
MF銀塩時代のレンズでありながらも、現代のPENTAX製
デジタル一眼レフでも操作性を損なわずに快適に使える、
と言う特徴があり、今回使用のボディPENTAX KP(2017年)
に装着しても(勿論AFが効かない他は)何ら問題無く使用
できる。

PENTAXは1980年代末のAF化により、従来のKマウントの
形状を変えなかったので、MF時代のレンズでも30数年
の時を経て、新鋭の一眼レフで使う事が可能なのだ。

ただ、注意するべきは、同じPENTAX Kマウントレンズでも
1970年代後半~1980年代初頭の、K(P),Mと呼ばれている
「A位置」の無いレンズは近代のPENTAXデジタル一眼レフ
では、ほぼ使用できない(絞りが開放のままになる等)

こうした場合、デジタル初期のPENTAX機、例えば
*istDs(2004年、デジタル一眼レフ第2回記事)
K10D (2006年、デジタル一眼レフ第6回記事)
等では、多少使い勝手は悪いものの、K(P)やMレンズも
なんとか使用する事が可能だ。

これらの古い時代のデジタル一眼レフを使わない場合は、
いっそ現代のミラーレス機でKマウントのアダプターを
用いるのが良い。それを使えば、KやMといった古い時代の
PENTAX Kマウントレンズであっても、絞り込み(実絞り)
測光で使えるし、高精細EVF搭載機であれば、被写界深度や
ボケ質の事前確認も可能、さらにはピーキングや拡大機能
等でMF操作をアシストできるので、むしろ一眼レフで使う
よりも、ずっと快適だ。

と言うのも、近接撮影ではMF主体となり、MFのピント精度
も要求される。PENTAXデジタル機の光学ファインダーは
他社機のような、電子式、透過式と言った要素があまり
搭載されていないので、むしろ逆にMF性能は高いのだが、
それでもミラーレス機でのMFアシスト機能に比べると
ピントが合っているか否か、の不安はつきまとうし、
実際に光学ファインダー使用時には、フォーカスエイドで
合っている、と表示されていても、厳密なピンポイント
での撮影(例えば、花の雄しべにピントを合わせたい等)
では、希望する位置にピントが合っていないケースも
頻発する。これはMFに限らずAFであっても同様であり、
一眼レフの使用はマクロレンズには基本的に向いていない。

(注:レンズ側に超音波モーターが搭載されていれば
AFでピントが合い易い訳では無く、むしろシームレスMF
での操作系が悪化して、マクロレンズの場合では逆効果と
なってしまうケースも多発する。加えて、近接から遠景
までのAF移動量が大きいマクロレンズでは、上手く距離
制限機能等を用いない限り、いくら超音波モーター搭載
レンズであっても、AFは実用範囲以下の遅さだ。
まあつまり、近接撮影においてはMFが圧倒的に有利だ)
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さて、本レンズであるが、この時代(1980年前後)の
MF標準ハーフマクロとしては珍しいF2.8仕様だ。

他の同時代のF2.8ハーフマクロには、
NIKON Ai Micro-NIKKOR 55mm/f2.8S(1981)や
CONTAX S-Planar(Makro Planar) 60mm/f2.8
(1978~)があったと思う(他にもあったか??)


上記のレンズの内、マクロプラナー60/2.8(C型)は
所有していた事があったが、譲渡により現在は手元に
残っていない。写りは悪く無いが、高価すぎてコスパが
悪いレンズであったと思う。

ニコンは、前機種F3.5版を本記事で紹介しているが、
F2.8版は生憎所有の機会に恵まれていない。
(注:NIKONのF2.8版は、家には研究用としてあるが、
知人の所有物(借り物)なので、紹介や評価は行わない。
どんな場合でも、借り物を評価をしない事は大原則だ。
世間ではこの原則が守られていないレビュー等が、いくら
でも存在し、そこが気にかかっているし、そういう様相が
見られるレビュー等は、一切参考にしない事にしている)

さて、という事で、現在私が所有している唯一のF2.8級
MF標準ハーフマクロが本A50/2.8なのだが、これを残して
いる理由は、描写傾向が好みにあっているからだ。

ただし、F2.8版だからF3.5版よりも性能や描写が良い
といった因果関係は全く無く、例えば本A50/2.8のレンズ
構成は4群6枚、フィルター径もφ49mmと小径であり、
これは前出のNMD50/3.5やFDM50/3.5と似たり寄ったりであり、
最短撮影距離も24cmと、仕様上は他レンズと大差は無い。

では何故、このレンズの描写が好みなのか?というのは
恐らくは、あまり解像力を優先していない設計だからだ。
開放F値の僅かなアドバンテージ(または諸収差発生に
よる弱点?)もあり、絞りを開け気味で使用した際、
同時代の他の標準マクロのようなカリカリの描写となる
印象はさほど受けにくい。(但し、ボケ質破綻が発生
する場合があるので、そこは要注意だ)


しかし、設計上のどのあたりの差異(例:諸収差補正の
バランスをどのように取るのか?)で、その差が出てくる
のか?とう部分に関しては、光学設計技術上での専門的な
話や、設計思想なので、詳しい理由はわからない。

まあユーザー視点からでの注目点は。設計コンセプトの
差異よりも後継レンズsmc PENTAX-FA Macro 50mm/f2.8
(前回記事で紹介)との比較であろうか?

が、FA型は、等倍仕様で最短も19.5cm、レンズ構成も、
本レンズよりもずっと複雑化されていて7群8枚となり、
同時に大型化されている。しかし当該記事でも説明したが
デザインが悪く、MF操作性も良く無い。

よって、MFのマクロとして使うのであれば、後継のFA型
よりも本A50/2.8の方が、様々な面で優れているように
感じてしまうのだ。ただ、FA型も描写力は、かなり良好
で、等倍仕様でもあり、そちらも捨てがたい。
そして本A50/2.8も、同時代のMF標準ハーフマクロと
しては現代的なテイストに通じる描写傾向で好ましい。
結局、そういう理由から、両レンズとも残している次第だ。

本レンズは、現代となってはセミレア品で、中古相場も
あまり落ちて来ないとは思うが、もし1万円台前半位で
入手できるのであれば、MFマクロをMFで快適に使う
という視点において、コスパ的にも悪く無い選択だ。

なお、その際は、PENTAX一眼で使うのも「マニア的な
拘り」の視点では良いのだが、実用的には、MF精度や、
稀に発生するボケ質破綻の回避の意味でもミラーレス機
で使うのが遥かに有益で簡便だ。

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では、今回ラストのマクロレンズ。
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レンズ名:OLYMPUS OM SYSTEM Zuiko Macro 50mm/f3.5
レンズ購入価格:8,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)

ミラーレス・マニアックス第66回記事や、特殊レンズ
スーパー・マニアックス第2回記事等で紹介の
1970年代~のMF標準ハーフマクロレンズ。
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20年程の間に、都合3回も再購入した、という、いわく
付きのマクロレンズだ。
その理由は何度か述べているが、描写傾向が解像力優先で
固く、好みに合わないと手放して(知人に譲渡する等)は、
またしばらくすると、この、かなり個性的な描写が何だか
気になってくるのだ。

4群5枚、最短23cm、フィルター径φ49mmと、他の
この時代のレンズとあまり変わらない仕様であるが、

小型軽量をコンセプトとしたOMシステム用のレンズで
あるから、本レンズも実に小さく、重量は200gと軽量だ。

OM用レンズは、同じ焦点距離で大口径版と小口径版が
並行ラインナップされているケースが多く、この上位
レンズとして、OM50mm/f2(ハーフマクロ)(未所有)
がある。

この時代のF2級マクロは珍しく、同じオリンパスでは
他にOM90mm/f2ハーフマクロ(ミラーレス名玉編第3回等)
が存在する。(注:他にも医療用の特殊マクロがある)
OM90/2は、個人的にはかなり好みの描写傾向であり、
それ故に名玉編にもランクインしているのであるが、
(中古)価格が高く、かつレア品であり、あまり一般的
には推奨できない。

OM50/2もセミレア品で同様に相場が高く、購入する機会
に恵まれなかった。そして後年ではフォーサーズ機用で
同じ数値仕様のZUIKO DIGITAL ED 50mm/f2が存在する。
(特殊レンズ・スーパーマニアックス第2回記事)
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で、オリンパスMF版F2級のマクロの描写傾向はサンプルが
OM90/2しか無いので、本OM50/3.5等と比較するのは
難しいのだが、あえて言えば、F3.5級では描写傾向が
がらりと変わり、前述のように「平面マクロ」となるが、
OM90/2では、そうした傾向は少ない。

恐らくはOM50/2もOM90/2と同様の描写傾向だ、と仮定
するのであれば、OMの50mm標準ハーフマクロにおける
大口径版(F2)と小口径版(F3.5)は、価格や性能の
差異での「上位下位機種」と言う位置づけではなく、
全く異なる設計コンセプトから並存しているレンズ群だ。

つまり、両レンズの用途では、被写体も撮影技法も
まるっきり異なるという事であり、その具体的な一例を
挙げれば、F2版は、開放近くで、柔らかいボケや若干の
収差発生により、花や人物の中近距離撮影に向き、
F3.5版はF5.6~F8程度に少し絞り込んで、平面被写体の
接写といった複写的な用途に向くという事だ。

今から考えると、この両者の設計コンセプトの差は
「憎い製品ラインナップ戦略」であるように思える。
もし、この両者の特性の差がわかる上級者やマニア層で
あれば、どちらか一方のレンズを所有していれば済む、
という訳にはいかず、両方とも欲しくなってしまうでは
ないか。つまり同じOMマウントの同じ50mm焦点距離の
同じハーフマクロが2本必要だ、という事になる。

・・・いかんいかん、これを書いていたらOM50/2も
欲しくなってきた(汗)
銀塩時代の「OM党」ならいざしらず、現代においては、
代替できるマクロ等のレンズも色々とある事であろう、
今になって、わざわざ、レア品で、かつプレミアム価格の
40年以上も前のオールドレンズを買うなどは、ずいぶんと
酔狂な話だ。
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さて、本OM50/3.5であるが、繰り返し述べておくが、
固い描写のレンズである。この特性における長所も短所も
しっかり把握して、かつ、その適切な用途もちゃんと理解
した上で購入するのであれば、まあ相場もあまり高くなく、
マニアック度や歴史的価値も、そこそこ高いと思うので、
悪くは無い選択肢だ、

特に、今回母艦として使用している、OM-D E-M5 MarkⅡ
Limitedは、銀塩希少機「OM-3Ti」のデザインコンセプト
を踏襲した機体であり、本OM50/3.5との組み合わせは
マニアック度満載である。なお「μ4/3機ではレンズの
換算画角が2倍に伸びてしまう」等の野暮な事は言うまい。

どうせ「より大きく写したい」したいという基本ニーズ
があるマクロレンズだ、ハーフマクロであっても、
μ4/3機の2倍換算で、すでに等倍マクロとなっていて、
さらにE-M5 MarkⅡに備わるデジタルテレコン2倍機能を
併用すれば、2倍の撮影倍率となるスーパーマクロだ!

また、E-M5 MarkⅡの強力な5軸手ブレ補正は、MFレンズ
の際でも有効だ(ただし、焦点距離手動設定を忘れずに。

それから勿論、近接撮影で課題となる「被写体ブレ」や
「前後ブレ」には優秀な手ブレ補正機能でも対応できない。
→しかしながら、純正AFマクロの場合では、カメラ内の
「フォーカスブラケット」機能や、MFマクロでは「連写
MFブラケット」等の、特殊機能/特殊技法、を用いる事で
前後ブレ等の課題にも、かろうじて対処可能かも知れない)

という事で、OM50/3.5はOLYMPUS μ4/3機ユーザーにも
お勧めのオールド(ハーフマクロ)レンズとしておこう。

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さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選Iロック「MF50mm Macro」の記事は終了だ。

次回の本シリーズ記事は、予選Jブロック
「AF50mm相当(APS-C機専用レンズ等)」となる予定だ。


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