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【玄人専科】匠の写真用語辞典(15)~撮影技法・特殊技法 Part 3

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一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」や
「本ブログ独自の用語や概念」を解説するシリーズ記事。
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今回は前記事に引き続き「ノウハウ編」でのサブカテゴリーの
「撮影技法・特殊技法」の「Part3」とする。

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<撮影技法・特殊技法>Part 3

★擬似夜景
 独自用語。

 用語の説明の前にまず、シャッターの機構についてだが、
 デジタル一眼レフやミラーレス機では、メカニカル(機械式)
 フォーカルプレーン・シャッターあるいは電子シャッターを
 使用している。(注:ここで言う「電子シャッター」とは
 銀塩時代のAE機での「電子(制御式)シャッター」では無い。
 ここは混乱しやすいので、近年では「撮像素子シャッター」
 という用語も使われている模様だ)

 しかし、(デジタル)コンパクト機の多くはレンズシャッター
 方式だ。
c0032138_07512138.jpg
 ここでこれらの方式の個々の内容や得失を示していると
 際限なく記事文字数が増えるので割愛するが・・
 ここでは、1つの特徴にのみ注目してみよう。
 それは「レンズシャッター方式では全速同調が可能」という
 点である。

 全速同調とは何か?と言えば、一眼レフ等のシャッター機構で
 内蔵フラッシュの使用の場合には「シンクロ速度」という概念
(仕様制限)があり、これは、いくら1/4000や1/8000秒という
 速い最高シャッター速度を持つ機種であっても、フラッシュを 
 使った場合でのシャッター速度は「1/125秒~1/250秒程度に
 制限されてしまう」という弱点がある事だ。

 これに対し、一眼レフ用の外付けフラッシュやコンパクト機の
 レンズシャッターではフラッシュ使用時「どのシャッター速度
 でも自由に使える」という意味である。

 一眼レフの場合、これ(外付けフラッシュによる全速同調)は
 日中、大口径レンズを使ったポートレート撮影の際などで、
 若干の逆光条件を弱めのフラッシュを焚いて消す、という
 高い実用性を持つ。大口径レンズでの絞り開放近くでの日中
 撮影は数千分の1秒の高速シャッター速度が必要となる為、
 内蔵フラッシュのシンクロ速度では、お話にならないのだ。
 外付けフラッシュを使ったこの技法は「日中シンクロ」や
「高速シンクロ」と呼ばれる場合がある。

 さて、コンパクト機での「全速同調」は、一眼レフのような
 大口径レンズが搭載されているケースは稀であり、あったと
 しても、背景を大きくボカす撮影スタイル等は、コンパクト機
 ではなく一眼レフを持ち出すだろうから、あまり一般的では無い。
(注:大口径レンズと大型センサーを搭載する高級コンパクト機
 も増えてはいるが、ピント精度やボケ量確認等の面で、一眼
 レフやミラーレス機を用いた方が撮影技法的に合理的である)

 では、コンパクト機での「全速同調」をどう使うのが効果的か?

 これを考えた独自技法が「擬似夜景」である。
 これを実現するには、M(マニュアル)露出モードがついている
 高級(デジタル)コンパクト機が必須だ。
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 今回は、FUJIFIM XQ1(2013年)を使用してみよう。
 高級コンパクトでは無いが、高性能な隠れた名機だ。

 まずISO感度を手動で固定する。XQ1ではコントロールリング
 にISO感度設定をアサインできるので、そうしておくと便利だ。
 次いでM露出モードに設定する、XQ1は1ダイヤル機なので、
 M露出は、絞り値とシャッター速度変更を背面十字キーで
 切り替える必要があるが、これはまあ、多くのコンパクト機
 で同様な操作系であり、手間だがやむをえない。

 ここでの露出値は、露出計に依存せず、超アンダー露出とする。
 この暗さが「擬似夜景」となる。

 なお、XQ1は、最高シャッター速度が1/3000秒と速いので、
 主にシャッター速度側で露出を微調整すると良いであろう。
 
 さらにフラッシュをポップアップする。XQ1のフラッシュの
 ガイドナンバー数値仕様は非公開であるが、概ねGN3~4程度と
 貧弱であろう、でもそこは問題にならない。
 
 そして近接被写体を見つける。そこにのみ弱いフラッシュが
 到達し、背景(暗い状態)にはフラッシュが届かないように
 すれば「擬似夜景」の完成だ。
c0032138_07512153.jpg
 フラッシュの到達距離は、GN値÷絞り値x√(ISO感度/100)
 で求まる。例えばGN値が4だったと仮定し、絞りをF2に
 設定すれば、ISO100の際のフラッシュ到達距離は2mだ。

 絞りを開けるかISOを高めると到達距離は伸びるが、XQ1の
 場合は広角で開放F1.8と明るいが、望遠側で開放F4.9と
 激減する、よって、絞り値でのフラッシュ制御は構図の
 自由度と絡めてコントロールしずらい為、絞り値はF5.6等に
 固定しておき、ISO感度側で到達距離を調節すると良い。
(この為、コントロールリングにISO感度をアサインしておく)

 ISO感度は2倍に高めても√2倍しか到達距離は伸びない、
 これは面(2次元)でフラッシュ光が広がるからだ。
 例えば2倍の到達距離(例:2m→4m)にしたい場合は、ISOを
 4倍高める。ここで、絞りをF5.6とした場合は、ISO感度を
 4000程度まで高める必要があるが、XQ1の最大感度(12800)
 に留意しながら撮影距離をコントロールすると良い。

 なお、ISO感度をあまり高めると、背景の露出まで明るく
 なって擬似夜景に見えない場合が出てくるので、さらに
 シャッター速度で調整して適正な明るさ(暗さ)とする。
 また、フラッシュの「調光補正」機能がある高機能なカメラ
 では、それを活用するのも効率的である。
 
「擬似夜景」は結構高度な技法であるが、絞り、シャッター速度、
 ISO感度、フラッシュGNの、4つの相互関係を理解するのに
 役に立つと思う。初級層では理解が困難だろうが、中級者級の
 練習にはおすすめの特殊技法だ。

 なお、コンパクト機に限らず、シャッター速度等の条件を
 整えれば、一眼レフやミラーレス機でもこの技法は可能だ。
(下写真は、フラッシュ内蔵のミラーレス機SONY NEX-7と
 マクロレンズを使用した擬似夜景)
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★夜景手持ち撮影
 一般用語。

 夜景での手持ち撮影は、ISO感度を高めてもシャッター速度の
 低下により手ブレを誘発する為、三脚を使うか、どこかに
 カメラを置いて撮るのが普通だ。だが三脚はハンドリングが
 面倒であり、カメラを置くのは構図・アングルの自由度が減る。

 そこで手持ち夜景撮影が可能となると嬉しいが、まずは
 2010年代後半からの超高感度機(例:ISO感度が20万~
 320万もある)であれば、たいていの場合手持ち夜景撮影は
 可能となる。
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 しかし、さしもの超高感度機であっても、あまりにISO感度を
 高めると画質劣化やノイズが酷い(PENTAX KP=ISO80万、
 NIKON D500=ISO160万で確認済み。超高感度域は、まだ実用性
 が低く、カタログスペック優先という印象だ)

 それと、超高感度域が必要な暗さでは、AFが合わなかったり、
 一眼の光学ファインダーでは暗くてMFも出来なかったりする。
(注:一眼レフでは、ライブビューモードが必須となる。
 D500等の、AF性能に優れる機体をライブビューで使うのは
 システム性において効率的では無いが、この場合はやむを得ない。
 つまり、どうせAFでもピントは合い難いからだ。で、ニコン機
 では、この状態での画面拡大操作系が劣悪なので、PENTAX KP
 等の他社高感度機の方が、むしろ適しているであろう。
 ただ、ライブビューでもゲインが不足して暗くなったり、
 そもそも完全暗所では露出計自体の動作が怪しくなる。
 まあ、いずれにしても中上級者向けの困難な撮影状況だ)

 そこで近年の一部のカメラでは、「手持ち夜景モード」が搭載
 されている(例:OLYMPUSミラーレス機)、これは「連写合成」
 機能の一種であり、数枚の連続撮影写真を合成する事でブレを
 防ぐとともにノイズを低減する事が可能だ(注:こうした名称
 がついてても、一部のカメラでは単にISO感度を高めるだけの
 場合もある)これならばビギナー層でも使える機能であろう。

 夜景は、エフェクト(例:擬似HDR系)を組み合わせても
 面白そうなのだが、残念ながら手持ち夜景モードとエフェクトの
 両者を組み合わせる事が出来るカメラは希少(または皆無?)
 だと思う。

★踊り撮り
 独自用語。

 夜景、特にライトアップや花火の撮影ではスローシャッター
 撮影が必須となる、まあ、夜景・ライトアップ等は静止被写体
 であるから上記「手持ち夜景(連写合成)モード」や、超高感度
 で対応可能であるが、花火等の動体は長時間の光の軌跡が必要と
 なる為、一般的には三脚を使わない限りは撮影出来ない。

 しかし、現代の花火系イベントは「一極集中化現象」により
 大変混雑する。混雑での死亡事故や爆発事故もあった事から
 警備や保安にも手間やお金がかかり、花火イベントの数が
 減っている事もまた、一極集中化の悪循環に繋がっている。

 で、人ごみの中で三脚を立てていたら周囲に非常に迷惑であるし、
 あるいは醜い「場所取り合戦」が繰り広げられ、マナーの低下が
 社会問題にもなって、ニュース等でも多数報道されている。

 よって、近年のWEBや雑誌等での花火撮影ノウハウ記事等では
「三脚を使う場合はマナーに注意するように」と強く喚起して
 いるのだが、なかなかそういう記事を読んだり、風潮(世情)
 を理解している人は少ない。まあ、そういう点には無頓着な
 人達が平気で三脚を立てて場所を占有する等のマナーの悪さを
 引き起こしてしまう訳だ。これは困った話である。
(逆に言えば、マナーやモラルに無頓着だからビギナーなのだ)

 で、本題の「踊り撮り」だが、三脚(や、ジンバル等)を
 使わない花火撮影技法である。
 これは、長時間の露光間(撮影中)に様々なアクション(動作)
 を起こす事で、通常の三脚等使用での花火撮影では得られない
 効果を得る事である。

 旧来の三脚技法においても「露光間ピントずらし」および
「露光間ズーミング」と呼ばれる特殊技法が存在していた。
 これらは、”読んで字の如し”なので説明は省略する。
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「踊り撮り」は、手持ちのカメラを露光間に様々な方向に
 振りながら撮影する技法だ。これにより、本来直線や曲線と
 なる光の軌跡がカメラ(レンズ)を振る事で様々に変化して
 非常に面白い。熟練すれば、なんらかの形状を描く事も可能
 ではあるが、花火は静止光源では無いので、文字や意味のある
 図形等を描くのは、まあ不可能であろう。

 これには表現力の増強のみならず、必ず手ブレしてしまう
 事への対策という意味も含まれている。(意図的に揺らせば
 手ブレしている事はわからない)
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 なお、「踊り撮り」は単純な動作であるので、まだ操作的には
 余裕がある、前述の露光間でのピントずらしやズーミングを
 組み合わせても、さらに面白い効果が得られる事であろう。

 ちなみに、何故「露光間」の様々な技法が存在するか?と
 言えば、これは勿論「表現力の増強」を狙っての事なのだが、
 もう1つ、花火撮影はB(バルブ)で、シャッターを押して、
 また離す、という動作の繰り返しである。このタイミングは
 極めて重要だが、何度も花火撮影を繰り返すと、タイミングも
 わかってくる、そうなると、技法(テクニカル)的には、
 花火の撮影は「極めて退屈」なのだ。三脚で固定して設定も
 変えないカメラをシャッター(またはレリーズやリモコン)
 のON/OFF操作をしているだけなので、技法的な側面からは、
 何の工夫も楽しみも無い訳だ。

 初級層で花火撮影経験が少ない人ならまだしも、中上級者層は
 花火の撮影は何度もある。退屈な撮影で、しかも正しい設定を
 行えば、誰が撮っても殆ど同じように花火が綺麗に撮れてしまう。

 これでは「差別化」にもならない。そこで、様々な「露光間」の
 技法等を併用する事で、テクニカル面での不満点を解消したり
 個性的な花火撮影が出来る事で「差別化」や「表現」を得ようと
 する訳である。
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 本ブログでは開設当初から「三脚非推奨」であったので、
 私は花火撮影は業務撮影(イベントの記録撮影)の場合以外の
「趣味撮影」では三脚を使用しない事が多かった。
 花火などは三脚を立てれば誰にでも撮れる被写体だ、殆ど練習
 にもならないし、花火イベントでの撮影マナー向上の為にも、
 手持ちスタイルでの花火撮影は初級中級層には推奨である。

 なお、花火等とは別の分野においてライブ撮影やイメージビデオ
 等でも、動画撮影中にビデオカメラを左右に振る「踊り撮り」が
 近年において流行している。これも表現力の増強ではあろうが、
 場合により、手持ち花火撮影と同様「手ブレの問題を解消する」
 為の技法であるかも知れない。なお、ごく近年では、小型の
 安定装置(ジンバル、スタビライザー)が動画撮影用途に
 普及してきているので、動画の「踊り撮り」は、今後はむしろ
 減っていく可能性も高い。

★間欠連写
 やや一般的な独自用語。

 2010年代前半頃までの「高速連写カメラ」は、カメラ内部の
 バッファメモリー容量が小さく、かつメモリーカードへの
 書き込み時間もかかる為、せっかくの高速連写が、ものの
 数秒で速度低下して(または止まって)しまう事が良くある。
c0032138_07514885.jpg
 2010年代後半以降は、100枚以上の連続連写機能を持つカメラ
(一眼、ミラーレス)も増えてはいるが、まだ数は少ない。
 そこで、これらの連続撮影枚数が十分では無い高速連写機を
 使う場合には「間欠連写」が基本である。
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 これは、ずっとシャッター(レリーズボタン)を押し続けず、
 適当にシャッターボタンから指を離し、間欠的に連写する
 という単純な技法だ。
 シンプルだが、メリットは大きい。

 ・連写枚数の制限をある程度緩和できる。
 (休んでいる間に、バッファからのカードへの書き込みが
  ある程度進み、連続高速連写が復活する)

 ・露出値を再調整できる。
 (長時間の高速連写は、その間、被写体の位置も大きく変化
  する場合がある、屋外では被写体に当たる光も変化する
  場合があるので連写中に露出が合わなくなる、これを
  間欠連写することで、AE(自動露出)を適宜リセットする。
  なお、ごく稀に、連写中にもAE追従できる高性能な機体も
  存在するが、殆どのカメラはAE追従は出来ない)

 ・AF精度を再調整できる。
 (優秀な「動体予測コンテニュアスAF」機能を使ったとしても、
  動きの速い被写体には追従できない場合もあるし、いくら
  AF測距点の多いカメラでも、動体では測距点を外してしまう
  場合もある。こういった際、連写を休んでいる間にAFを
  中央測距点等に再度合焦しなおし、ピントが合った状態で
  連写を再開する)

 ・むやみに連写枚数を多くしない
 (近年の秒10コマ以上の連写機能を使うと、ワンシーン10秒間で
  100コマもの撮影になる、スポーツの各レース等で、20~50
  シーンも繰り返すと、撮影枚数は計2000~5000枚ともなる。
  これではさすがに撮り過ぎであり、後の編集が大変であるし、
  多くのカメラのバッテリーも、そこまでの枚数は持たない。
  あまりダラダラと連写せず、肝心な部分だけを連写で押さえる
  という意味もある)

 という事で、「間欠連写」技法は必須である。

★連写合成機能
 一般用語。

 連続撮影した複数の写真を画像処理的に合成し、特定の用途や
 目的に役立てる機能の総称。

 具体的な目的には以下がある
 1)輝度差を減らすまたは調整する(HDR合成等)
 2)ノイズを減らす(マルチショットNR等)
 3)連写ブレ防止(手持ち夜景等)
 4)解像度(画素数)を上げる(リアルレゾリューション等)
 5)ローパスフィルターと同様な効果を得る(ローパスセレクター等)
 6)被写界深度の調整(フォーカスブラケットと深度合成等)
 7)被写界深度(ボケ量)の調整(ぼかしコントロール等)
 8)パノラマ合成(スウィングパノラマ等)
 9)Dレンジ系エフェクトへの応用(リッチトーンモノクロ等)
10)合焦速度・精度の向上(空間認識AF等)

 ・・といった機能がすでに実現、一部のカメラに搭載されているが、
 この連写の応用は、これら以外にも想定できる(例:動体の連続
 記録や動感の再現、被写体切り出し合成、写真の3D化、ボケ質の
 向上(擬似アポダイゼーション)等)
c0032138_07514721.jpg
(上写真は、コンパクト機 FUJI XQ1による連写背景ボカし)
 
 従来は「デジタルカメラ」といっても、ただ単に旧来の銀塩写真を
 デジタル記録化しただけの様相があったが、ここのところ上記の
 ような「デジタルで無いと有りえない」機能が増えてきているのは
 カメラがやっと本来の意味で「デジタル時代」に突入してきている
 と言う事で好ましい状況だ。
 これら以外にも、ライトフィールド等のまったく新しい映像記録
 概念が出てきており、そのあたりの発展も期待したいところだ。

 課題はむしろユーザー側にあり、これらのデジタル的新機能を
 ユーザー側が理解し、使いこなせるかどうか?という点だろう・・
(注:ライトフィールド技術も、ユーザーから全く理解されずに
 残念ながら、現在では市場から撤退してしまっている)

★外部(単体)露出計、色温度計、(超音波)距離計
 一般用語。

 これらは、カメラ以外の外部装置(計測機)として、稀に必要な
 場合があり、銀塩時代から業務撮影分野では一般的であった。
 ただ、1点注意点であるが、これらは「写真用途専用品」で
 あると、若干高価であり、アマチュアレベルでの使用は価格的
 や使用頻度的にはあまり適さない。

 具体例を挙げれば、外部露出計は写真用途品の場合は、F値、
 シャッター速度、ISO感度等の計測が一目瞭然で便利ではある。
c0032138_07520672.jpg
 上写真の「スタジオデラックスⅡ」は、外部(入射式)露出計の
 定番中の定番の超ロングセラー商品だが、若干高価なのが課題だ。
 ただ、この機器で計測しているのは、その場の照度「フート・
 キャンドル値」のみであり、これは照度単位の「ルクス」や
 カメラの露出単位の「EV」値に、特定の計算式で変換可能だ。

 だから変換式を知ってさえ言えば、安価な「工業用照度計」
(数千円位からある)を使っても、写真の露出(入射)は計れる。
 しかしこの計算は暗算では難しいので、実用的には写真専用の 
(入射)露出計を使わざるを得ない訳だ。

 まあでも、一般用途ではカメラ内蔵の反射露出計+露出補正操作
 で十分である。
c0032138_07520626.jpg
「色温度計」については、ちょっと用途は少ないであろう。
 銀塩時代では、フィルムによる対応色温度(≒ホワイトバランス)
 は固定であったので、それを現場の照明状況に合わせて、カラー
 補正フィルター等で調整する為、このような機器が必要なケースも
 あったが、デジタル時代の現代ではホワイトバランスのマニュアル
 調整で事足りてしまう場合が多く、現行の色温度計の製品は少なく、
 あったとしても精密計測や多機能化で高価な機器となっている。

 まあ、あまり現代の写真撮影には、必要としない機材であろう。
(私は近年では、LED照明等の色温度計測に使った場合があるが、
 写真用色温度計の受光部は大きく、小型のLEDは、測る角度で
 色温度が変わってしまう模様で、少々難しい)

「距離計」は、カメラにおいては、もっと用途が少ない。
 銀塩時代のクラッシック・コンパクト機(例:ローライ35)では
 距離計を搭載しておらず、目測でMFを設定する必要のあるカメラ
 もいくつか存在していた。それらの機体をマニアックに使う為に、
 銀塩時代に、工業用(超音波)距離計を数千円で購入して使用
 していた、それで被写体までの距離を測り、MFを設定するのだ。

 だが現代、銀塩機で撮る事も、もう無くなり、その距離計は
 どこかにしまいこんで見つからなくなった(初期の本ブログで
 紹介していたと思う)
 現代では、工業用超音波距離計は安価で2000~3000円からある、
 さらには、工業用レーザー距離計ですらも4000~5000円程度
 から買えるので、業務用途ではなく、趣味の範囲でも買えない
 訳では無いのだが、いかんせん用途は少ないであろう。、
 写真撮影に用いるならば、他の距離指標のあるAF機を持ち出せば
 被写体までの距離は簡便に測れるのだ。

 余談だが、銀塩末期の2000年頃、カメラマニアの集まりに私は
 超音波距離計を持ち出し、それで距離を測ってローライ35で
 写真を撮っていた。周囲のマニアが「それは何の機械ですか?」
 と聞いてきたので、私は茶目っ気を出し
「この機械で美女のスリーサイズを測れるのです」
 とウソを言うと、周囲の男性マニア達が目の色を変えて殺到、
「どこで売っているのだ? いくらだったら売ってくれるのか?」
 など、大変な事になった(汗)

 まあ、超音波距離計でも使い方を工夫すればスリーサイズが
 測れない訳では無いのだが、できれば巻尺で測りたい(笑)

 なお、近年では、超音波やレーザー距離計に変わり、
「TOFセンサー」という物が発達してきている。まだ発展途上だが、
 これは多数の距離を同時に計測できるものなので、遠い将来
 にはカメラにも搭載されて、AFの補助になるかも知れない。

★手動ズーム
 一般用語。
 
 対義語としては「電動ズーム」だ。電動ズーム(またはパワー
 ズーム等とも言う)は、銀塩時代からコンパクト機や一部の
 一眼レフ用ズームレンズで採用されていて、近年においては、
 ほぼ全てのデジタルコンパクト機や、一眼やミラーレス機の
 初級ズームレンズの一部に使用されている。
 
 ただ、写真撮影的に言うと「電動ズーム」は、ズーミングの
 精度(細かい調整が困難)が課題であったり、ズーミング速度的
 な面(遅い)で使いにくく、一眼レフ用の高性能ズームレンズは、
 ほぼ全てが「手動ズーム」仕様となっている。

 ここはまあ良いのだが、問題は近年のロングズーム・コンパクト
 機(=広角端24mm前後から望遠端700mm前後のズーム比が大きい
 レンズ固定型コンパクト機)の手動ズーム機構が、ほぼ完全に
 廃止されてしまった事だ。
 最後の製品は、私が把握している限り、FUJIFILM X-S1(2011)
 である、フルサイズ換算24~624mmの手動ズーム機だ。
c0032138_07520737.jpg
 この機体以降、他社も含め全て電動ズーム機になってしまい、
 やむなくこの機体を業務用途(ボート競技、遠距離イベント等)
 に使っているが、そろそろ耐用年数や仕様老朽化寿命が厳しい。
 だが、手動ズームの後継機が無いので、古い機体だが、やむなく
 使い続けている状態だ。

 電動ズーム機の中にも、機能リングにズームをアサインできる
 機種もPanasonic機等で存在するのだが、無限回転式リングでは
 手指の感触でズーミングを行いにくい(例:瞬時に最大望遠に
 する為、有限回転式手動ズームを、いっぱいにまで廻す等の
 撮影技法が存在する。またズーミング焦点距離を保持しながら
 カメラの電源ON/OFFが任意だ、電動ズーム機では、電源OFF時に
 収納位置まで戻ってしまい、再度の電源ONで所望する焦点距離に
 なっていない→これは自動復帰機能を用いても遅くてNGだ)
   
 手動ズームは、存外に製造コストがかかる模様で、コストダウン
 からの各社の電動ズーム化の措置だとは思うのだが、使い難い
 事は確かであり、困った傾向だ。

 X-S1以降、手動ズーム搭載のロングズーム機が復活する事を
 待ち望んでいるのだが、それがなかなか出て来ない。
 なお、手動→電動化は、「技術の進歩である」とは言えない、
 もしそれが正しいならば一眼レフ用のズームも全て電動化されて
 しまう訳だ、そうならないのは、手動のメリットが大きいからだ。

 結局あくまで製品仕様の企画設計上のコンセプトで電動ズームを
 採用しているに過ぎない、手動化でコストがかかり、価格が高く
 なるのであれば、購入者側がそれを容認すれば良いだけの話だ、
 ロングズーム機での手動ズーム復活を熱望する次第である。

★手持ち限界望遠焦点距離
 独自概念。

 例えば前述の現代のロングズームコンパクト機で光学ズームと
 デジタルズーム等を併用すると、簡単に2000mm級以上の換算
 焦点距離が得られる。デジタル一眼レフでは、デジタル拡大
 機能は殆ど搭載されていないので換算1000mm級以上の画角を
 得る事は容易では無い為、近年での野鳥撮影分野や、フィールド
(自然観察)分野では、大きく重く高価なデジタル一眼システム
 を使わず、このようなロングズーム機を主力またはサブ機と
 して併用するケースを良く見る(特に、自然観察員等の業務
 撮影分野では、ほぼ100%、ロングズーム機を使用している。
 今時、一眼レフと600mm望遠等で趣味的に野鳥を撮っている
 のは、シニア層を中心としたアマチュアのみだ。が、機材が
 重すぎて三脚必須で、鳥も追えない→効率的な撮影が出来ない
 のみならず、殆ど写真も撮らず、機材談義をしているだけだ)

 同様にミラーレス機でも、デジタルズームやデジタルテレコン
 機能を容易に使える、例えば、μ4/3機に400mmレンズを
 装着し、デジタル拡大で8倍を加えれば、それで6400mm相当の
 超々望遠画角が得られてしまうのだ(下写真は6400mmで
 手持ち撮影、手ブレ補正機能は無し)
c0032138_07520606.jpg
 デジタル拡大機能を使った際の画質劣化はさておき、そもそも
 こうした超々望遠画角では手持ち撮影が壊滅的に困難である。

 勿論手振れ補正機能をONし、手動焦点距離設定も調整し、
 さらには、その換算焦点距離に相応する高速シャッター
(例:2000mm相当であれば、1/2000秒以上)
 を得る為に、日中であってもISO感度を適宜高めるのだが、
 そういう措置をしても、超々望遠画角ではブレが止まらない。
 ほんの僅かなカメラの角度のブレが、遠距離の被写体を撮る
 角度の大きなズレに繋がるからだ。そして、この超々望遠の
 焦点距離領域では手ブレ補正機能も、まともに動作しない。

 以下、超々望遠焦点距離と実際に被写体が写る角度(対角線画角)
 を対応させてみよう(注:35mm判フルサイズ換算)
 1000mm→約2.4度
 2000mm→約1.2度
 3000mm→約0.8度
 4000mm→約0.6度
 5000mm→約0.5度
 6000mm→約0.4度
 ・・となり、これは非常に狭い角度しか写らないという事だ。
 
 この超々望遠域でどこまで手持ち撮影が可能か?は手ブレ補正の
 有無などにはあまり関係が無く、殆ど撮影者のスキル(技能)で
 決まってくる。そしてこうした超々望遠域では常に被写体は大きく
 揺れてファインダー等に写っている、だからフレーミンングすらも
 ままならない訳だ。たまたまフレーミングが合って撮れる場合も
 あるだろうが、あくまでそれは「偶然」だ。

 よって「手持ち限界の最大望遠焦点距離」は一概には決まらない、
 ただ、これは興味深い実験だと思うので、各自「どこまで焦点
 距離を伸ばしたら、手持ち撮影の限界を超えるのか?」は
 やってみると面白いであろう。

 ちなみに、私が何度もこれを実験した結果では、私の場合の
「手持ち限界望遠焦点距離」は、およそ1500~1600mmとなった。
 これを超えると、もう偶然でしか撮れない。

 で、もう1つ超々望遠撮影には難しい要素があって、概ね1000mm
 の焦点距離を越えると(=撮影対角線画角が、2度程度となると)
 カメラを(遠くの)被写体に向けても、まずそこに求める被写体
 は存在しない、手持ちでは、2度以下という狭い角度に、正確に
 カメラを向ける事が出来ないからだ。

 ただ、ここもスキルにより限界値を上げる事は可能だと思う。
 ゴルゴ13ばりに、正確にターゲットを視野に捉える訓練を積めば
 1000~1500mmの超々望遠域での手持ち撮影は、無理な話では無い。
c0032138_07521588.jpg
さて、今回の「撮影技法・特殊技法Part 3」は、このあたりまでで、
次回は、「ルール・法則編」の用語解説を行う。


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