新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ紹介記事では
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回第5回目は、引き続き未紹介レンズを4本取りあげる。
なお、実写用カメラはできるだけレンズの特性に合致した
ものをチョイスしており、本ブログでのルールとなっている
「カメラ価格をレンズよりも高すぎないようにする」
(=オフサイド禁止)については緩和している。
まずは最初のシステム
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レンズは、中一光学 Creator 35mm/f2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2014年発売の中国製MF準広角レンズ。
ミラーレス・マニアックス第62回、補足編第1回で紹介した
Creator 85mm/f2の姉妹レンズであり、同等のデザインや
仕様となっている。
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何の変哲も無い、実絞り型のMFレンズであるのに、「仕様」と
わざわざ書いたのは、これらのCreatorレンズには、ちょっと
不思議な特徴があり、それは絞り値F16が存在しない事だ。
通常、絞り値は√(ルート)2倍刻みで変化するから、
2-2.8-4-5.6-8-11-16-22・・という数値の並びになる。
しかし35mm、85mmの両レンズとも何故かF16が存在しない。
この理由だが、絞りの構造に起因していると思われる、
絞り羽根は、35mmが9枚、85mmが10枚であるが、どちらも
実質的には無段階絞りだ。このような構造のものはロシア製の
プリセットレンズ等で多いが、そうしたレンズの絞り羽根の
枚数は14枚以上と極めて多い(そうでないと絞り込んだ際の
円形の形状が維持出来ないからだと思われる)
だがCreatorレンズは絞り羽根の枚数が少なく、無段階で
連続的に絞り込んでいくと、途中、絞り形状が若干不規則に
変化する。こうした構造の為、Creatorでは設定した絞り値に
合わせて絞り込まれると言うより、むしろ逆で、変化しつつ
ある絞り形状の面積に合わせて絞り値のクリック・ストップ
の位置が決められている模様だ。
なのでF16が無いという理由も説明できる、上手くその面積
にはならなかったのであろう。それから良く見ると絞り値の
クリック・ストップ間の距離が不等間隔である。これも全く
同じ理由からと思われ、変化していく絞り面積に相当する
位置に絞り値が不等間隔で割り振られているからだろう。
ちなみに、この絞り構造は「粘り」等の故障が出やすい模様で、
保有している姉妹レンズ Creator 85/2の方は、
F11以上まで絞り込んだ状態で「半月状」の変な形になって
しまった。
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これは故障であるが、修理するかどうかは迷い所だ。
(場合により、ちゃんと動くので、粘りの「半故障」の状態だ)
開放に近い状態では、ほとんど絞り故障の影響は出てこない
模様であるし、そもそもCreator 85/2は「ボケ質破綻の回避が
やり難いレンズ」と以前のミラーレス・マニアックス記事で
評価したが、確証が持てず、補足編でもさらに検証を続けた。
この特性について、この故障が影響していたかどうかは、また
厳密な評価を行い影響の度合いを判断しなければならない。
(しかし、絞り形状が正しく動作しているかどうかは、
撮影時に毎回確認する事は大変難しい、その為にはレンズを
一々外さないと、まずわからないからだ・・)
そして、そもそも、絞り形状が若干変であったとしても、
その事がボケ質に強い影響を与えるという訳でもないのだ。
ここの説明は色々あるのだが、長くなるので今回は割愛しよう。
Creatro 85/2の話などで前置きが長くなったが、
ここからは、本Creator 35/2についてだ。
まず特徴だが、最短撮影距離が25cmと、かなり短い。
35mmレンズ(マクロ以外)で最短が短いものは、
20cm TAMRON SP35/1.8(後日紹介予定)
23cm SONY DT35/1.8(従来のNo.1)
24cm MIR-24、CANON EF35/2 IS USM
25cm NIKON AF-S 35/1.8G ED
のような感じだが、本レンズもこのBest5に入っている。
(注:LENSBABY Burnside 35/2.8も短いが、このレンズの
仕様はWD表記であり、最短撮影距離は非公開だが、
もう少し長いと思う)
それと価格が安い、新品で約2万円というのは、現代のレンズ
としては破格である。
この値段だから作りも悪いか?というと、そうでも無く、
鏡筒の仕上げ、ヘリコイドのトルク感、絞り環の感触等の
外観的には何ら問題が無い(注:中間絞り付近で、僅かな
ひっかかり感がある)
また、上手くハマれば、ボケ質も良く描写にも不満は無い。
安価に大口径レンズの描写を体験できる、という点では、
85mm版を含め、ズーム派の中級者クラスにもオススメだ。
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弱点だが、まず実絞り測光である事がある。
使用汎用性を高める為、本レンズはニコンFマウントで
購入している。そうすれば、ニコン一眼レフを始め、およそ
あらゆるミラーレス機でも使用可能だからだ。
で、ミラーレス機でマウントアダプターを介して装着するので
あれば何ら問題は無いが、一眼レフで使うのは若干問題有りだ。
まず、一眼レフでは絞り込むとファインダーが暗くなる。
よって、ピントや被写界深度の確認がやりにくい。
それから、これはレンズ自体の問題ではなく使用カメラ側の
問題だが、NIKON Dfは非Aiレンズを含めAi系オールドレンズ
から、現代の電磁絞りレンズに至る迄、およそあらゆる
Fマウントレンズを使える、という高い汎用性を持つ機体では
あるが、「仕様上」の問題により、多くの種類のレンズで
「操作系」が使い難い(その詳細を述べていくと際限なく
長くなるので割愛するが、例えばデジタル一眼レフ第17回
NIKON Dfの記事を参照されたし)
本Creator 35/2をDfに装着する場合、まず「レンズ情報手動
設定」で、焦点距離35mm、開放F2を登録する。
これで開放F2が背面モニターやファインダーに表示されるが
非Ai型実絞り込みレンズなので、絞り値を変えてもDf本体には
情報が伝達されない(Ai連動ピンはあえて倒す必要は無い)
この場合 Dfは「開放(実絞り)測光」となり、絞っても
露出値は正しく出る(注:ニコン製非Aiレンズでは、設定した
レンズ絞り値と同じだけDf本体の絞りダイヤルを廻す必要が
ある、という劣悪な操作系だ)
でまあ、F値表示が開放のまま固定だとか、EXIFが出ないとか、
そういうのはどうでも良いが、どうにも使っていて気持ちが
悪いのだ。
途中で「もうDfで使うのはやめてミラーレス機に変えようか」
とも思ったが、まあ、Dfの評価も含め続行しよう。
ちなみに、Df以外のニコン機では、さらに使い難く、開放
以外では上手く露出が合わない(殆ど使用不能と言える。
何故NIKON Fマウント版が売られているのか不思議に思う
程であるが、ユーザーはいったいどうやって使っているの
であろうか?まあこれはミラーレス機専用レンズであろう)
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さて、最短の短いレンズなので、Dfに装着時に「クロップ」
モードでDXフォーマットで撮影すると、そこそこ被写体は
大きく写る。
計算上、最短25cmでDXフォーマットであれば、撮影範囲は
約17cmx約12cmだ、これはフィルムサイズ36mmx24mmの
縦横およそ5倍の範囲なので、「5分の1倍マクロ」になる。
NIKON Dfとの組み合わせでは多目的レンズとして使える。
すなわち、フルサイズ(FX)時に通常の35mmレンズとして、
クロップ(DX)時には52mm準マクロとして使える、という
利便性は、なかなか良い感じだ。
(まあでも、この点については、ミラーレス機でデジタル
ズーム等を使った方が、はるかに便利だ)
で、電子接点が何も無いレンズなので、例えばEOS機で使う
場合は、絞り込むとファインダーが暗くなる他、フォーカス
エイドが出ないとか露出がバラつく等の課題がある。
結局、MFのやりやすさという点でも、やはりピーキングや拡大
機能といったMFアシスト機能を持つミラーレス機で使うのが
簡便なレンズであろう。
誰にでも薦められるレンズでは無いが、マニアックで悪く無い。
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さて、次のシステム
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レンズは、OLYMPUS Zuko Digital 14-45mm/f3.5-5.6
(新古購入価格 13,000円相当?)
カメラは、OLYMPUS E-410 (4/3機)
2004年に発売されたフォーサーズ(μ4/3では無い)用
ローコスト標準ズーム。
広角気味のスペックだが、4/3機に装着時は28-90mmの平凡な
画角の標準ズームだ。
本レンズの購入価格が不明なのは、初期のフォーサーズ機
OLYMPUS E-300(2004)の新古購入時にキットレンズとして
付属していたからであり、便宜上13000円相当としておく。
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さて、こういった「おまけズーム」は、なんとも使い道が無い。
基本的に、マニアにとって「標準ズーム」は、その個性や
描写力の点で興味の対象から外れてしまう。
まあ、別売の標準ズームならば、F2.8通しとか、ズーム比が
大きいとか、仕様的に魅力的なレンズも多いのだが、
キットズームは対象外だ。
だから、本来はレンズキットのカメラを買わないのが基本だ。
「レンズ付きにしては安価だ」等と考えて買ってしまうと、
後で、そのレンズの処遇に困る。
別途レンズを購入したら、まず使い道が無くなるからだ。
だが、このケースではやむを得ない、なにせフォーサーズは
2000年代初頭に全くの新マウントとして発売され、他に使える
(AF)レンズが無かったからだ。そういう意味でも、最初期の
E-300は、本レンズとのセットのみでの販売で、後にカメラ
単品でも販売されるようになった。
考えたあげく、本レンズは「使い潰す」ことにした。
つまり、過酷な撮影環境で、壊しても惜しくないレンズとして
使うという意味である。
想定される主目的は、雨天のボート大会撮影である。
これほどカメラやレンズにとって過酷な環境は無いであろう、
なにせ丸一日、雨でずぶ濡れ状態での撮影だ、いつ故障しても
おかしくない。
で、その目的で使い続ける事10余年・・
ボート大会以外でも雨天の撮影でも持ち出したので、都合
何十回もの、そうした過酷な状況があっただろう。
案の定E-300は5~6年間の使用で故障し、廃棄してしまったが、
ボディをE-410に買い換えて、さらに6~7年の間、本レンズを
継続して使用している。
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だが、このレンズ、壊れないのだ(汗)
オリンパスは、4/3システムをとっくに辞めて、現在はμ4/3に
注力している。現代の本レンズの中古相場は、僅かに3000円
程度であり、仮に壊れても買い換えは容易だし、できれば、
もう少し良い仕様(EDレンズ等)に買い替えたいのだが、
本レンズが健在である以上、無駄な出費だ。
なので、本レンズの最大の特徴は耐久性の高さだ(笑)
10数年間という長期間に渡り、しかも雨や酷暑、海辺の塩分等
の超過酷な環境を何十回と経験しても、全く壊れないタフさが
あると言える。
(ただまあ、私はそうした長年の実践を通じて、過酷な撮影
環境でも「いかにカメラやレンズを壊さないようにするか?」
というノウハウはかなり積んできているので、念の為)
もう1つの長所だが、4/3という小さいセンサーにおいて
実焦点距離が14mm~45mmという値であるから、基本的には
被写界深度を深く取れるレンズである。
F7.1程度に絞り込んで使えば、4/3機のAF性能でも、まずピント
を外す事が無いので、この為、晴天時のボート大会では
できるだけ絞り込んで、選手達のスナップや集合写真を撮る
事を本当に沢山行った。通算撮影枚数は恐らく4万~5万枚と
なっていて、下手をすると、私の所有レンズの中で最も多数の
写真を撮影したレンズになるかも知れない。
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弱点だが、歪曲収差が出るとか解像感が甘いとか、色々あるが、
もうそのあたりは不問だ、沢山の実用写真を撮ったという点で
全ての短所は打ち消される事であろう。
過去シリーズ「ミラーレス・マニアックス」で本レンズを
紹介できなかったのは、当該シリーズでは「ミラーレス機を
使って撮る」という条件があったからだ。
本レンズのようなフォーサーズのAFレンズは、簡易マウント
アダプターを使用しても、他のミラーレス機等では、絞りも
ピントも全く動かず、使用する事が出来なかった。
(注:4/3→μ/3の電子アダプターを用いれば使用可、
こちらはシリーズ記事執筆後の後年に入手している)
この問題があって、私はフォーサーズのレンズを、この1本と
他にはトイレンズ系のみしか所有していなかった状況だ。
ただ、他の記事でも書いたが、現在フォーサーズのシステムが
極めて安価な中古相場なので、長く使えそうな優秀なボディと
安価なレンズを数本揃えて「フォーサーズ再興」を図るのも
マニアックで良いかな?とも思っている。
(事実、そうしつつあり、今後何本かのレンズが登場する)
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さて、次のシステム
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レンズは、MINOLTA MC TELE ROKKOR 135mm/f3.5
(中古購入価格 800円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
1970年代頃のMF単焦点小口径中望遠。
ミラーレス・マニアックス第67回記事で紹介した
MC135/2.8とは兄弟レンズと言えるかも知れないが、
F2.8版はPF銘で5群6枚、本F3.5版は4群4枚と、レンズ構成が
簡略化されている。
またF2.8版はピントリングが金属製だ、その仕様のMCレンズ
は1960年代の物であり、本レンズはゴム製のリングなので
1970年前後以降と思われる。
まあ、いずれも50年も前の古いレンズなので、今となっては、
そのあたりの区別はもうどうでも良い、ちゃんと写るか否かだ。
購入価格が極めて安価であり「ジャンクレンズ」のカテゴリー
に入れても良かったかも知れない。
ただ、本レンズはジャンクと言うには、レンズキャップが
付属していなかった状態な位で、レンズ自体の程度には問題は
無かった。人気の無い135mm望遠で、かつデジタル一眼レフでは
使用出来ないMC/MD系レンズであるから、結果二束三文の相場に
なっていたのであろう。
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さて、肝心の写りであるが、かなりのオールドレンズであり
そしてジャンク同然の様相ながら、意外にも良く写る。
ピント面の解像感はシャープでコントラストも高い。
が、画面周辺画質は不明だ。μ4/3機でカットされているからだ。
これは、わざとμ4/3機を持ち出しているという確信犯でもある。
つまり、古いレンズで、どうせまともには写らないだろうから、
レンズの真ん中の、ちゃんと写る美味しい部位だけを使うという
意図だ。(つまり、もしこのレンズが「ペッツヴァール型」の
構成ならば、画面周辺部の画質に弱点を持つからだ)
加えて、勿論だがμ4/3機は望遠画角をより望遠にする、
さらに、DMC-G6であればデジタルズームの操作系が快適だ。
本レンズは換算画角的には270mm~540mm/F3.5となり
(2倍デジタルテレコン使用時540~1080mm/F3.5)
フィルード(野外)での自然撮影向けのシステムとなる。
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本レンズの弱点は、ボケ質の破綻だ。
撮影条件(絞り値や撮影距離、背景距離等)を、どうやっても
背景のボケが汚い。これはもう「そういう性能だ」と諦めて
使うしか無いと思う。(4枚構成のレンズでは、像面湾曲等の
収差発生が避けられないと思う)
背景や前景をボカさ無いように、平面被写体を選択する事も
対策ではあるが、望遠レンズの場合、そのような被写体のみを
選んで撮影する事は作画目的の面で困難であろう。
あるいは背景の絵柄の選択で回避する手段はまだ残されている。
つまり背景が、もう殆ど何も見えない状態となるような構図を
選び、かつ、大ボケさせて絵柄を分からなくする、という事だ。
が、背景を意識したアングル選びには制約が出てきてしまう、
1つは、本レンズはオールド故に、逆光耐性が高く無いからだ。
ゴーストの発生は太陽の角度を意識する、あるいは直射日光
の無い天候で使うという回避法もある。
なお今回使用のDMC-G6では問題無いが、オールドレンズ母艦
として人気のSONY α7シリーズを使う際はさらに要注意だ。
少なくとも私が使用しているα7は、多くのオールドレンズで
「弱い逆光程度でも派手なゴーストが出る」という機体側の
重欠点を抱えている(他のα7系機体についは未検証)
それとフレアだが、レンズ内のカビにも強く影響される。
数十年前のレンズはもとより、もっと新しいレンズでも、
保管状態が悪い等でカビが少しでも発生していると、逆光状態
でフレアが発生しやすくなる。
オールドレンズ使用時のフレアは、レンズ自体の性能の低さが
問題である事のみならず、カビが原因となっている事も多々ある。
カビはレンズの前後から目視で発見できるが、見ただけでは
わかりにくい事もあるので要注意だ。
また、SIGMA製の1990年代迄のオールドレンズでは、後玉に
白い粒状のカビが発生しやすく、同様なコントラスト低下が
良く出るが、これは後玉を慎重に磨けば、取れて回避できる。
余談が長くなったが、本レンズの「撮影アングルの制約」の
原因の2つ目だ。これは「最短撮影距離の長さ」である。
この時代(1970年代前後)のレンズであれば、やむを得ないの
だが、「最短撮影距離<レンズの焦点距離x10」の条件が
達成されていないケースが多い。
具体的には、135mmレンズであれば「最短撮影距離が1.35m
以下のスペックで無いと撮影時に不満が多い」と言う意味だ。
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本MC135/3.5の最短は1.5mと長い。
もっとも兄弟レンズMC135/2.8も同様に1.5mだし、他社製品、
例えばキヤノンのFDレンズの135mm系も、この時代のものは
殆どが最短1.5mまでだ。
ちなみに近代の135mm単焦点は、もっと寄れる仕様のものが多い。
例として、最短撮影距離の短い代表的135mm単焦点レンズを
年代別(しかし、これがベスト4である)に挙げておく。
1990年代 MINOLTA STF135mm/f2.8[T4.5] 最短87cm
2000年代 SONY Sonnar T*135mm/f1.8 ZA 最短72cm
2010年代 SIGMA Art 135mm/f1.8 DG HSM 最短87.5cm
SAMYANG 135mm/f2 ED UMC 最短80cm
内、上から3本は所有しているが、これらの最短72cmとか87cm
との使用感から比べると、最短1.5mはいかにも寄れなく不満だ。
「寄れない」と言う事は、被写体を大きく写せない、という
意味よりも、撮影アングル(角度)やレベル(高さ)の自由度が
極端に制限される事が厳しいのだ。つまり最短が長いレンズは
単純に言えば「真横から水平にしか撮れない」という事だ。
まあ、古く、僅かに800円のレンズだから、今更色々と文句を
言っても始まらない、このあたりで留めておこう。
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次のは本記事ラストのシステム
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レンズは、SIGMA 100-400mm/f5-6.3 DG OS HSM |
Contemporary(中古購入価格 68,000円)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
2017年発売の小型軽量超望遠ズーム。
過去記事で何度か書いたが「近年のSIGMAやTAMRONの超望遠
ズームは皆、テレ(望遠)端が500mmや600mmと長くなり、
テレ端400mmm程度の小型軽量の超望遠が無い事が不満だ」
という話があった。
勿論そういうニーズは私の他にもあったのだろう、
2017年に、やっとSIGMAから発売された400mm級ズームは、
重量1160gと軽量であり、ほぼ私が所望しているスペック
通りであった。
この為、発売後に最初に出た中古(店頭展示処分品?)を
買ってしまったので、購入価格は現在の相場よりやや高い。
ちなみに、そうこうしているうちに2017年末にTAMRONからも
同じ100-400mmで本レンズより僅かに軽量な超望遠ズームが出た、
それも購入したので(後日紹介予定)さらに出費がかさんだの
だが、400mm級ズームは、ボート競技の撮影等で必須のレンズ
であり、まあ、やむを得ない。
![c0032138_12415396.jpg]()
さて、本レンズC100-400mmはコンテンポラリーのカテゴリー
名がついている。SIGMAによると、このカテゴリーはコスパが
良い軽量なシリーズとしてのコンセプトである、とのことだが、
高倍率ズームや標準・望遠ズーム等が中心で単焦点は少ない。
コンテンポラリーの名前通り、「現代的」なレンズである。
開放がら十分な解像力があるが、私の感覚では、やや輪郭が
強すぎる印象だ。
が 2010年代以降の各社の多くのレンズには、概ねそうした
傾向があり、これはカメラ側の超高画素時代への対応も理由と
してあるのかも知れないが、レンズ設計上の「味付け」として
輪郭を強くしているのかも知れない。その方が初級中級層に
対しては「良く写るレンズだ」という印象を与えやすいからだ。
だたまあ、同じSIGMAでも「ARTライン」と呼ばれている
主に大口径単焦点のレンズ群は(まだ所有本数は多くないが)
輪郭が強すぎるという描写傾向の印象は無い。結局このあたり
の味付けの差が、カテゴリーの差になっているのかも知れない。
まあ価格の面から考えても、高価なARTラインのレンズは、
上級者向けというターゲット戦略なのであろう。
上級者向けレンズでは、子供騙しの描写特性は要らない。
余談だが、輪郭の強い画像を、大画素から小画素に縮小を
行った場合、画像処理縮小アルゴリズムによっては、全ての
輪郭が強く残りすぎ、パキパキの印象の画像になってしまう。
(近年のWEB上のバナー広告などの縮小画像も、皆そうした
パキパキ画像であり、気持ちが悪く、私の目からは広告と
しては逆効果だ。しかし、画像全般でのビギナー層である
一般層が見れば、それは気にならないのであろう)
これはPCやスマホの表示環境(ブラウザ等)でも入力画素数
と表示画素数の差異をどう解決するかで、同様の問題が出る。
画素数の大きいフルサイズ機の画像をカメラ背面モニターで
再生した場合でも同様の「縮小効果」が起こり、初級中級層は、
フルサイズ機は輪郭が良く出て「画質が良い」と錯覚してしまう。
(モニターやEVFに映った画像だけを見て、カメラの画質を
判断してしまうのは、ビギナー層における大きな問題点だ。
これは近年に限らず、レンジ機の綺麗なファインダーを見て
「このレンズは良く写る」と言うトンチンカンなユーザーも
昔から極めて多かった。まあでも、そういう超ビギナー層が
多数居るから、レンジ機用レンズ等が高値で取引でき、
中古市場が維持できている訳だ)
![c0032138_12415339.jpg]()
本レンズのSIGMAによる愛称は「ライト・バズーカ」である。
私個人的には、バスーカと言えばTAMRON 200-400/5.6(75D)
である。過去何度も紹介した1990年代の名望遠ズームだが、
F5.6固定で、太くて(フィルター径φ77mm)長い(直進式)
鏡筒は、まさしく「バズーカ」の印象があった。
が、その大型の75Dバズーカでも、重量はさほど重くなく、
1210gに留まっていた。
なので本レンズC100-400mmがライトハズーカという感覚は
私はあまり持てない、重さも1160gならば75Dとあまり変わらない。
ちなみに、さらに軽量な400mm級ズームも以前存在した。
具体的にはTOKINA AT-X840 80-400/4.5-5.6
(ミラーレス第62回、ハイコスパ第8回記事)
は990gと軽量だし、MINOLTA AF100-400/4.5-6.7(末所有)
は840gとさらに軽量だ。
それと、最新型のTAMRON 100-400mm/f4.5-6.3は1115g
であり、本SIGMA製より僅かに軽い。
いずれにしても、昔の時代の400mm級ズームの方が軽量で
現代のレンズの方が重いのは、手ブレ補正機能や超音波モーター
が入っているからだろうか? あるいはレンズ構成が複雑化
しすぎているのだろか?
手ブレ補正の件に関しては、だったら、例えばボディ内手ブレ
補正のあるSONYまたはPENTAXマウント専用のレンズがあれば、
より軽量なのではなかろうか?と思われるのだが、残念ながら、
これらの最新レンズは、ニコン用、キヤノン用(およびSIGMA用)
しか発売されていない。
SIGMAやTAMRONといったレンズメーカーがニコン用、キヤノン用
のレンズしか発売しなくなったのは、2010年代中頃以降からの
傾向であり、SONYやPENTAXのカメラも使用している私としては
かなり困った状況である。(注:一眼レフ用での話。近年では
ミラーレスFEマウント版等の販売も、少しづつ増えている)
他のレンズメーカーでも、旧来のように様々なマウントで
レンズを同時に発売する事が無くなった。
これには恐らく2つの理由があり、国内一眼レフ市場が縮退
している2010年代においては、全てのメーカーのマウント用
のレンズを揃えて発売するのは厳しい(開発・製造コストや
在庫コントロール等)という事が言えると思うし、
この時代は「付加価値戦略」(高度な機能を入れた製品を作り、
ユーザーの購買欲を喚起すると共に価格や利益を上げる)
であるから、内蔵手ブレ補正が入っていない仕様のレンズ
(つまり、SONY用やPENTAX用)は、メーカー側としても
作りたくない(付加価値的に売り難い)のであろう。
まあ、理由はなんであっても、あまり好ましく無い傾向だ、
ニコンとキヤノンの一眼レフに手ブレ補正が入っていないのは
銀塩時代にフィルムカメラのままで、他社に先駆け、いち早く
手ブレ補正を実現しようとしたが、その場合、フィルムを動かす
訳にはいかず、レンズ側に手ブレ補正機構を入れるしか方法が
無かったからだ。
そこで、今にして思えば、2000年代初頭にデジタル時代になった
時に、ニコンもキヤノンも、ボディ内手ブレ補正方式に切り替え
れば良かったのだと思う。
しかし、従来システムとの互換性とか、色々と理由があったの
だろうが、結局、ニコンとキヤノンの一眼レフはボディ内
手ブレ補正を現代に至るまで採用していない、これは今後も
きっとこのまま、この状態が続くであろう。
(注:両社の近年のフルサイズミラーレス機(Z,R)では
手ブレ補正を内蔵している→しかし、おそろしく高価だ)
「レンズ内手ブレ補正ならば、どんどん進化する」という
意見もあるかも知れないが、そうとも言い切れない。
現代のデジタル時代は、レンズよりもカメラボデイの寿命の
方がはるかに短いからだ。(=仕様老朽化寿命)
もし、手ブレ補正に関する技術が、レンズ側もカメラ側も
同様に進化していくのであれば、頻繁に交替するカメラ本体の
方が、ユーザーが技術の進化に対する恩恵を受け易い。
という事で、レンズ内手ブレ補正よりも、ボディ内手ブレ補正
の方が、ユーザーから見れば、ほとんどの点でありがたい。
ニコンとキヤノンが(一眼レフでは)それが出来ない状態で、
レンズメーカーも、それらのマウント用の手ブレ補正内蔵の
高価なレンズしか作れない、と言うのは、ユーザー側から
したら困った状態だ。
![c0032138_12415363.jpg]()
余談ばかりで、本レンズC100-400の話が殆ど出て来ないが
まあ、書く事もあまり無い。現代的なレンズで普通に良く写るし
使っていてあまり(殆ど)不満も無い。
速やかな操作性、という意味では、回転式ズームリングは、
まあり好ましく無いのだが、本レンズの場合「レンズ先端を
持って直進ズーム的にレンズを引き出す」という荒技が使える。
これは、メーカー側も、この使い方を容認している(つまり
そうしても問題無い構造だ)
欲を言えば、同じ仕様のままで、もうほんの数cm全長を短くし
(そうなると、ショルダー型のカメラバッグにも縦位置で
難なく収納できる)それに伴い、ほんの100g程度軽く作って
もらえれば全く不満は無いレンズとなった事であろう。
あと、さらに欲を言えば、手ブレ補正の入っていないバージョン
でα(A)マウントがあれば嬉しい。
例えば、α77Ⅱとの組み合わせならば、付属品等を入れた
合計装備重量は、計算上1800gを少し切る程度だ。
これであれば、重量負担の少ない、理想的な超望遠高速連写
システムとなるので、α(A)マウント用の本レンズあるいは、
TAMRON版レンズでの発売を期待したい所だ。
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さて本記事はここまでとし、次回記事に続く・・
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回第5回目は、引き続き未紹介レンズを4本取りあげる。
なお、実写用カメラはできるだけレンズの特性に合致した
ものをチョイスしており、本ブログでのルールとなっている
「カメラ価格をレンズよりも高すぎないようにする」
(=オフサイド禁止)については緩和している。
まずは最初のシステム

(新品購入価格 20,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2014年発売の中国製MF準広角レンズ。
ミラーレス・マニアックス第62回、補足編第1回で紹介した
Creator 85mm/f2の姉妹レンズであり、同等のデザインや
仕様となっている。

わざわざ書いたのは、これらのCreatorレンズには、ちょっと
不思議な特徴があり、それは絞り値F16が存在しない事だ。
通常、絞り値は√(ルート)2倍刻みで変化するから、
2-2.8-4-5.6-8-11-16-22・・という数値の並びになる。
しかし35mm、85mmの両レンズとも何故かF16が存在しない。
この理由だが、絞りの構造に起因していると思われる、
絞り羽根は、35mmが9枚、85mmが10枚であるが、どちらも
実質的には無段階絞りだ。このような構造のものはロシア製の
プリセットレンズ等で多いが、そうしたレンズの絞り羽根の
枚数は14枚以上と極めて多い(そうでないと絞り込んだ際の
円形の形状が維持出来ないからだと思われる)
だがCreatorレンズは絞り羽根の枚数が少なく、無段階で
連続的に絞り込んでいくと、途中、絞り形状が若干不規則に
変化する。こうした構造の為、Creatorでは設定した絞り値に
合わせて絞り込まれると言うより、むしろ逆で、変化しつつ
ある絞り形状の面積に合わせて絞り値のクリック・ストップ
の位置が決められている模様だ。
なのでF16が無いという理由も説明できる、上手くその面積
にはならなかったのであろう。それから良く見ると絞り値の
クリック・ストップ間の距離が不等間隔である。これも全く
同じ理由からと思われ、変化していく絞り面積に相当する
位置に絞り値が不等間隔で割り振られているからだろう。
ちなみに、この絞り構造は「粘り」等の故障が出やすい模様で、
保有している姉妹レンズ Creator 85/2の方は、
F11以上まで絞り込んだ状態で「半月状」の変な形になって
しまった。

(場合により、ちゃんと動くので、粘りの「半故障」の状態だ)
開放に近い状態では、ほとんど絞り故障の影響は出てこない
模様であるし、そもそもCreator 85/2は「ボケ質破綻の回避が
やり難いレンズ」と以前のミラーレス・マニアックス記事で
評価したが、確証が持てず、補足編でもさらに検証を続けた。
この特性について、この故障が影響していたかどうかは、また
厳密な評価を行い影響の度合いを判断しなければならない。
(しかし、絞り形状が正しく動作しているかどうかは、
撮影時に毎回確認する事は大変難しい、その為にはレンズを
一々外さないと、まずわからないからだ・・)
そして、そもそも、絞り形状が若干変であったとしても、
その事がボケ質に強い影響を与えるという訳でもないのだ。
ここの説明は色々あるのだが、長くなるので今回は割愛しよう。
Creatro 85/2の話などで前置きが長くなったが、
ここからは、本Creator 35/2についてだ。
まず特徴だが、最短撮影距離が25cmと、かなり短い。
35mmレンズ(マクロ以外)で最短が短いものは、
20cm TAMRON SP35/1.8(後日紹介予定)
23cm SONY DT35/1.8(従来のNo.1)
24cm MIR-24、CANON EF35/2 IS USM
25cm NIKON AF-S 35/1.8G ED
のような感じだが、本レンズもこのBest5に入っている。
(注:LENSBABY Burnside 35/2.8も短いが、このレンズの
仕様はWD表記であり、最短撮影距離は非公開だが、
もう少し長いと思う)
それと価格が安い、新品で約2万円というのは、現代のレンズ
としては破格である。
この値段だから作りも悪いか?というと、そうでも無く、
鏡筒の仕上げ、ヘリコイドのトルク感、絞り環の感触等の
外観的には何ら問題が無い(注:中間絞り付近で、僅かな
ひっかかり感がある)
また、上手くハマれば、ボケ質も良く描写にも不満は無い。
安価に大口径レンズの描写を体験できる、という点では、
85mm版を含め、ズーム派の中級者クラスにもオススメだ。

使用汎用性を高める為、本レンズはニコンFマウントで
購入している。そうすれば、ニコン一眼レフを始め、およそ
あらゆるミラーレス機でも使用可能だからだ。
で、ミラーレス機でマウントアダプターを介して装着するので
あれば何ら問題は無いが、一眼レフで使うのは若干問題有りだ。
まず、一眼レフでは絞り込むとファインダーが暗くなる。
よって、ピントや被写界深度の確認がやりにくい。
それから、これはレンズ自体の問題ではなく使用カメラ側の
問題だが、NIKON Dfは非Aiレンズを含めAi系オールドレンズ
から、現代の電磁絞りレンズに至る迄、およそあらゆる
Fマウントレンズを使える、という高い汎用性を持つ機体では
あるが、「仕様上」の問題により、多くの種類のレンズで
「操作系」が使い難い(その詳細を述べていくと際限なく
長くなるので割愛するが、例えばデジタル一眼レフ第17回
NIKON Dfの記事を参照されたし)
本Creator 35/2をDfに装着する場合、まず「レンズ情報手動
設定」で、焦点距離35mm、開放F2を登録する。
これで開放F2が背面モニターやファインダーに表示されるが
非Ai型実絞り込みレンズなので、絞り値を変えてもDf本体には
情報が伝達されない(Ai連動ピンはあえて倒す必要は無い)
この場合 Dfは「開放(実絞り)測光」となり、絞っても
露出値は正しく出る(注:ニコン製非Aiレンズでは、設定した
レンズ絞り値と同じだけDf本体の絞りダイヤルを廻す必要が
ある、という劣悪な操作系だ)
でまあ、F値表示が開放のまま固定だとか、EXIFが出ないとか、
そういうのはどうでも良いが、どうにも使っていて気持ちが
悪いのだ。
途中で「もうDfで使うのはやめてミラーレス機に変えようか」
とも思ったが、まあ、Dfの評価も含め続行しよう。
ちなみに、Df以外のニコン機では、さらに使い難く、開放
以外では上手く露出が合わない(殆ど使用不能と言える。
何故NIKON Fマウント版が売られているのか不思議に思う
程であるが、ユーザーはいったいどうやって使っているの
であろうか?まあこれはミラーレス機専用レンズであろう)

モードでDXフォーマットで撮影すると、そこそこ被写体は
大きく写る。
計算上、最短25cmでDXフォーマットであれば、撮影範囲は
約17cmx約12cmだ、これはフィルムサイズ36mmx24mmの
縦横およそ5倍の範囲なので、「5分の1倍マクロ」になる。
NIKON Dfとの組み合わせでは多目的レンズとして使える。
すなわち、フルサイズ(FX)時に通常の35mmレンズとして、
クロップ(DX)時には52mm準マクロとして使える、という
利便性は、なかなか良い感じだ。
(まあでも、この点については、ミラーレス機でデジタル
ズーム等を使った方が、はるかに便利だ)
で、電子接点が何も無いレンズなので、例えばEOS機で使う
場合は、絞り込むとファインダーが暗くなる他、フォーカス
エイドが出ないとか露出がバラつく等の課題がある。
結局、MFのやりやすさという点でも、やはりピーキングや拡大
機能といったMFアシスト機能を持つミラーレス機で使うのが
簡便なレンズであろう。
誰にでも薦められるレンズでは無いが、マニアックで悪く無い。
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さて、次のシステム

(新古購入価格 13,000円相当?)
カメラは、OLYMPUS E-410 (4/3機)
2004年に発売されたフォーサーズ(μ4/3では無い)用
ローコスト標準ズーム。
広角気味のスペックだが、4/3機に装着時は28-90mmの平凡な
画角の標準ズームだ。
本レンズの購入価格が不明なのは、初期のフォーサーズ機
OLYMPUS E-300(2004)の新古購入時にキットレンズとして
付属していたからであり、便宜上13000円相当としておく。

基本的に、マニアにとって「標準ズーム」は、その個性や
描写力の点で興味の対象から外れてしまう。
まあ、別売の標準ズームならば、F2.8通しとか、ズーム比が
大きいとか、仕様的に魅力的なレンズも多いのだが、
キットズームは対象外だ。
だから、本来はレンズキットのカメラを買わないのが基本だ。
「レンズ付きにしては安価だ」等と考えて買ってしまうと、
後で、そのレンズの処遇に困る。
別途レンズを購入したら、まず使い道が無くなるからだ。
だが、このケースではやむを得ない、なにせフォーサーズは
2000年代初頭に全くの新マウントとして発売され、他に使える
(AF)レンズが無かったからだ。そういう意味でも、最初期の
E-300は、本レンズとのセットのみでの販売で、後にカメラ
単品でも販売されるようになった。
考えたあげく、本レンズは「使い潰す」ことにした。
つまり、過酷な撮影環境で、壊しても惜しくないレンズとして
使うという意味である。
想定される主目的は、雨天のボート大会撮影である。
これほどカメラやレンズにとって過酷な環境は無いであろう、
なにせ丸一日、雨でずぶ濡れ状態での撮影だ、いつ故障しても
おかしくない。
で、その目的で使い続ける事10余年・・
ボート大会以外でも雨天の撮影でも持ち出したので、都合
何十回もの、そうした過酷な状況があっただろう。
案の定E-300は5~6年間の使用で故障し、廃棄してしまったが、
ボディをE-410に買い換えて、さらに6~7年の間、本レンズを
継続して使用している。

オリンパスは、4/3システムをとっくに辞めて、現在はμ4/3に
注力している。現代の本レンズの中古相場は、僅かに3000円
程度であり、仮に壊れても買い換えは容易だし、できれば、
もう少し良い仕様(EDレンズ等)に買い替えたいのだが、
本レンズが健在である以上、無駄な出費だ。
なので、本レンズの最大の特徴は耐久性の高さだ(笑)
10数年間という長期間に渡り、しかも雨や酷暑、海辺の塩分等
の超過酷な環境を何十回と経験しても、全く壊れないタフさが
あると言える。
(ただまあ、私はそうした長年の実践を通じて、過酷な撮影
環境でも「いかにカメラやレンズを壊さないようにするか?」
というノウハウはかなり積んできているので、念の為)
もう1つの長所だが、4/3という小さいセンサーにおいて
実焦点距離が14mm~45mmという値であるから、基本的には
被写界深度を深く取れるレンズである。
F7.1程度に絞り込んで使えば、4/3機のAF性能でも、まずピント
を外す事が無いので、この為、晴天時のボート大会では
できるだけ絞り込んで、選手達のスナップや集合写真を撮る
事を本当に沢山行った。通算撮影枚数は恐らく4万~5万枚と
なっていて、下手をすると、私の所有レンズの中で最も多数の
写真を撮影したレンズになるかも知れない。

もうそのあたりは不問だ、沢山の実用写真を撮ったという点で
全ての短所は打ち消される事であろう。
過去シリーズ「ミラーレス・マニアックス」で本レンズを
紹介できなかったのは、当該シリーズでは「ミラーレス機を
使って撮る」という条件があったからだ。
本レンズのようなフォーサーズのAFレンズは、簡易マウント
アダプターを使用しても、他のミラーレス機等では、絞りも
ピントも全く動かず、使用する事が出来なかった。
(注:4/3→μ/3の電子アダプターを用いれば使用可、
こちらはシリーズ記事執筆後の後年に入手している)
この問題があって、私はフォーサーズのレンズを、この1本と
他にはトイレンズ系のみしか所有していなかった状況だ。
ただ、他の記事でも書いたが、現在フォーサーズのシステムが
極めて安価な中古相場なので、長く使えそうな優秀なボディと
安価なレンズを数本揃えて「フォーサーズ再興」を図るのも
マニアックで良いかな?とも思っている。
(事実、そうしつつあり、今後何本かのレンズが登場する)
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さて、次のシステム

(中古購入価格 800円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
1970年代頃のMF単焦点小口径中望遠。
ミラーレス・マニアックス第67回記事で紹介した
MC135/2.8とは兄弟レンズと言えるかも知れないが、
F2.8版はPF銘で5群6枚、本F3.5版は4群4枚と、レンズ構成が
簡略化されている。
またF2.8版はピントリングが金属製だ、その仕様のMCレンズ
は1960年代の物であり、本レンズはゴム製のリングなので
1970年前後以降と思われる。
まあ、いずれも50年も前の古いレンズなので、今となっては、
そのあたりの区別はもうどうでも良い、ちゃんと写るか否かだ。
購入価格が極めて安価であり「ジャンクレンズ」のカテゴリー
に入れても良かったかも知れない。
ただ、本レンズはジャンクと言うには、レンズキャップが
付属していなかった状態な位で、レンズ自体の程度には問題は
無かった。人気の無い135mm望遠で、かつデジタル一眼レフでは
使用出来ないMC/MD系レンズであるから、結果二束三文の相場に
なっていたのであろう。

そしてジャンク同然の様相ながら、意外にも良く写る。
ピント面の解像感はシャープでコントラストも高い。
が、画面周辺画質は不明だ。μ4/3機でカットされているからだ。
これは、わざとμ4/3機を持ち出しているという確信犯でもある。
つまり、古いレンズで、どうせまともには写らないだろうから、
レンズの真ん中の、ちゃんと写る美味しい部位だけを使うという
意図だ。(つまり、もしこのレンズが「ペッツヴァール型」の
構成ならば、画面周辺部の画質に弱点を持つからだ)
加えて、勿論だがμ4/3機は望遠画角をより望遠にする、
さらに、DMC-G6であればデジタルズームの操作系が快適だ。
本レンズは換算画角的には270mm~540mm/F3.5となり
(2倍デジタルテレコン使用時540~1080mm/F3.5)
フィルード(野外)での自然撮影向けのシステムとなる。

撮影条件(絞り値や撮影距離、背景距離等)を、どうやっても
背景のボケが汚い。これはもう「そういう性能だ」と諦めて
使うしか無いと思う。(4枚構成のレンズでは、像面湾曲等の
収差発生が避けられないと思う)
背景や前景をボカさ無いように、平面被写体を選択する事も
対策ではあるが、望遠レンズの場合、そのような被写体のみを
選んで撮影する事は作画目的の面で困難であろう。
あるいは背景の絵柄の選択で回避する手段はまだ残されている。
つまり背景が、もう殆ど何も見えない状態となるような構図を
選び、かつ、大ボケさせて絵柄を分からなくする、という事だ。
が、背景を意識したアングル選びには制約が出てきてしまう、
1つは、本レンズはオールド故に、逆光耐性が高く無いからだ。
ゴーストの発生は太陽の角度を意識する、あるいは直射日光
の無い天候で使うという回避法もある。
なお今回使用のDMC-G6では問題無いが、オールドレンズ母艦
として人気のSONY α7シリーズを使う際はさらに要注意だ。
少なくとも私が使用しているα7は、多くのオールドレンズで
「弱い逆光程度でも派手なゴーストが出る」という機体側の
重欠点を抱えている(他のα7系機体についは未検証)
それとフレアだが、レンズ内のカビにも強く影響される。
数十年前のレンズはもとより、もっと新しいレンズでも、
保管状態が悪い等でカビが少しでも発生していると、逆光状態
でフレアが発生しやすくなる。
オールドレンズ使用時のフレアは、レンズ自体の性能の低さが
問題である事のみならず、カビが原因となっている事も多々ある。
カビはレンズの前後から目視で発見できるが、見ただけでは
わかりにくい事もあるので要注意だ。
また、SIGMA製の1990年代迄のオールドレンズでは、後玉に
白い粒状のカビが発生しやすく、同様なコントラスト低下が
良く出るが、これは後玉を慎重に磨けば、取れて回避できる。
余談が長くなったが、本レンズの「撮影アングルの制約」の
原因の2つ目だ。これは「最短撮影距離の長さ」である。
この時代(1970年代前後)のレンズであれば、やむを得ないの
だが、「最短撮影距離<レンズの焦点距離x10」の条件が
達成されていないケースが多い。
具体的には、135mmレンズであれば「最短撮影距離が1.35m
以下のスペックで無いと撮影時に不満が多い」と言う意味だ。

もっとも兄弟レンズMC135/2.8も同様に1.5mだし、他社製品、
例えばキヤノンのFDレンズの135mm系も、この時代のものは
殆どが最短1.5mまでだ。
ちなみに近代の135mm単焦点は、もっと寄れる仕様のものが多い。
例として、最短撮影距離の短い代表的135mm単焦点レンズを
年代別(しかし、これがベスト4である)に挙げておく。
1990年代 MINOLTA STF135mm/f2.8[T4.5] 最短87cm
2000年代 SONY Sonnar T*135mm/f1.8 ZA 最短72cm
2010年代 SIGMA Art 135mm/f1.8 DG HSM 最短87.5cm
SAMYANG 135mm/f2 ED UMC 最短80cm
内、上から3本は所有しているが、これらの最短72cmとか87cm
との使用感から比べると、最短1.5mはいかにも寄れなく不満だ。
「寄れない」と言う事は、被写体を大きく写せない、という
意味よりも、撮影アングル(角度)やレベル(高さ)の自由度が
極端に制限される事が厳しいのだ。つまり最短が長いレンズは
単純に言えば「真横から水平にしか撮れない」という事だ。
まあ、古く、僅かに800円のレンズだから、今更色々と文句を
言っても始まらない、このあたりで留めておこう。
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次のは本記事ラストのシステム

Contemporary(中古購入価格 68,000円)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
2017年発売の小型軽量超望遠ズーム。
過去記事で何度か書いたが「近年のSIGMAやTAMRONの超望遠
ズームは皆、テレ(望遠)端が500mmや600mmと長くなり、
テレ端400mmm程度の小型軽量の超望遠が無い事が不満だ」
という話があった。
勿論そういうニーズは私の他にもあったのだろう、
2017年に、やっとSIGMAから発売された400mm級ズームは、
重量1160gと軽量であり、ほぼ私が所望しているスペック
通りであった。
この為、発売後に最初に出た中古(店頭展示処分品?)を
買ってしまったので、購入価格は現在の相場よりやや高い。
ちなみに、そうこうしているうちに2017年末にTAMRONからも
同じ100-400mmで本レンズより僅かに軽量な超望遠ズームが出た、
それも購入したので(後日紹介予定)さらに出費がかさんだの
だが、400mm級ズームは、ボート競技の撮影等で必須のレンズ
であり、まあ、やむを得ない。

名がついている。SIGMAによると、このカテゴリーはコスパが
良い軽量なシリーズとしてのコンセプトである、とのことだが、
高倍率ズームや標準・望遠ズーム等が中心で単焦点は少ない。
コンテンポラリーの名前通り、「現代的」なレンズである。
開放がら十分な解像力があるが、私の感覚では、やや輪郭が
強すぎる印象だ。
が 2010年代以降の各社の多くのレンズには、概ねそうした
傾向があり、これはカメラ側の超高画素時代への対応も理由と
してあるのかも知れないが、レンズ設計上の「味付け」として
輪郭を強くしているのかも知れない。その方が初級中級層に
対しては「良く写るレンズだ」という印象を与えやすいからだ。
だたまあ、同じSIGMAでも「ARTライン」と呼ばれている
主に大口径単焦点のレンズ群は(まだ所有本数は多くないが)
輪郭が強すぎるという描写傾向の印象は無い。結局このあたり
の味付けの差が、カテゴリーの差になっているのかも知れない。
まあ価格の面から考えても、高価なARTラインのレンズは、
上級者向けというターゲット戦略なのであろう。
上級者向けレンズでは、子供騙しの描写特性は要らない。
余談だが、輪郭の強い画像を、大画素から小画素に縮小を
行った場合、画像処理縮小アルゴリズムによっては、全ての
輪郭が強く残りすぎ、パキパキの印象の画像になってしまう。
(近年のWEB上のバナー広告などの縮小画像も、皆そうした
パキパキ画像であり、気持ちが悪く、私の目からは広告と
しては逆効果だ。しかし、画像全般でのビギナー層である
一般層が見れば、それは気にならないのであろう)
これはPCやスマホの表示環境(ブラウザ等)でも入力画素数
と表示画素数の差異をどう解決するかで、同様の問題が出る。
画素数の大きいフルサイズ機の画像をカメラ背面モニターで
再生した場合でも同様の「縮小効果」が起こり、初級中級層は、
フルサイズ機は輪郭が良く出て「画質が良い」と錯覚してしまう。
(モニターやEVFに映った画像だけを見て、カメラの画質を
判断してしまうのは、ビギナー層における大きな問題点だ。
これは近年に限らず、レンジ機の綺麗なファインダーを見て
「このレンズは良く写る」と言うトンチンカンなユーザーも
昔から極めて多かった。まあでも、そういう超ビギナー層が
多数居るから、レンジ機用レンズ等が高値で取引でき、
中古市場が維持できている訳だ)

私個人的には、バスーカと言えばTAMRON 200-400/5.6(75D)
である。過去何度も紹介した1990年代の名望遠ズームだが、
F5.6固定で、太くて(フィルター径φ77mm)長い(直進式)
鏡筒は、まさしく「バズーカ」の印象があった。
が、その大型の75Dバズーカでも、重量はさほど重くなく、
1210gに留まっていた。
なので本レンズC100-400mmがライトハズーカという感覚は
私はあまり持てない、重さも1160gならば75Dとあまり変わらない。
ちなみに、さらに軽量な400mm級ズームも以前存在した。
具体的にはTOKINA AT-X840 80-400/4.5-5.6
(ミラーレス第62回、ハイコスパ第8回記事)
は990gと軽量だし、MINOLTA AF100-400/4.5-6.7(末所有)
は840gとさらに軽量だ。
それと、最新型のTAMRON 100-400mm/f4.5-6.3は1115g
であり、本SIGMA製より僅かに軽い。
いずれにしても、昔の時代の400mm級ズームの方が軽量で
現代のレンズの方が重いのは、手ブレ補正機能や超音波モーター
が入っているからだろうか? あるいはレンズ構成が複雑化
しすぎているのだろか?
手ブレ補正の件に関しては、だったら、例えばボディ内手ブレ
補正のあるSONYまたはPENTAXマウント専用のレンズがあれば、
より軽量なのではなかろうか?と思われるのだが、残念ながら、
これらの最新レンズは、ニコン用、キヤノン用(およびSIGMA用)
しか発売されていない。
SIGMAやTAMRONといったレンズメーカーがニコン用、キヤノン用
のレンズしか発売しなくなったのは、2010年代中頃以降からの
傾向であり、SONYやPENTAXのカメラも使用している私としては
かなり困った状況である。(注:一眼レフ用での話。近年では
ミラーレスFEマウント版等の販売も、少しづつ増えている)
他のレンズメーカーでも、旧来のように様々なマウントで
レンズを同時に発売する事が無くなった。
これには恐らく2つの理由があり、国内一眼レフ市場が縮退
している2010年代においては、全てのメーカーのマウント用
のレンズを揃えて発売するのは厳しい(開発・製造コストや
在庫コントロール等)という事が言えると思うし、
この時代は「付加価値戦略」(高度な機能を入れた製品を作り、
ユーザーの購買欲を喚起すると共に価格や利益を上げる)
であるから、内蔵手ブレ補正が入っていない仕様のレンズ
(つまり、SONY用やPENTAX用)は、メーカー側としても
作りたくない(付加価値的に売り難い)のであろう。
まあ、理由はなんであっても、あまり好ましく無い傾向だ、
ニコンとキヤノンの一眼レフに手ブレ補正が入っていないのは
銀塩時代にフィルムカメラのままで、他社に先駆け、いち早く
手ブレ補正を実現しようとしたが、その場合、フィルムを動かす
訳にはいかず、レンズ側に手ブレ補正機構を入れるしか方法が
無かったからだ。
そこで、今にして思えば、2000年代初頭にデジタル時代になった
時に、ニコンもキヤノンも、ボディ内手ブレ補正方式に切り替え
れば良かったのだと思う。
しかし、従来システムとの互換性とか、色々と理由があったの
だろうが、結局、ニコンとキヤノンの一眼レフはボディ内
手ブレ補正を現代に至るまで採用していない、これは今後も
きっとこのまま、この状態が続くであろう。
(注:両社の近年のフルサイズミラーレス機(Z,R)では
手ブレ補正を内蔵している→しかし、おそろしく高価だ)
「レンズ内手ブレ補正ならば、どんどん進化する」という
意見もあるかも知れないが、そうとも言い切れない。
現代のデジタル時代は、レンズよりもカメラボデイの寿命の
方がはるかに短いからだ。(=仕様老朽化寿命)
もし、手ブレ補正に関する技術が、レンズ側もカメラ側も
同様に進化していくのであれば、頻繁に交替するカメラ本体の
方が、ユーザーが技術の進化に対する恩恵を受け易い。
という事で、レンズ内手ブレ補正よりも、ボディ内手ブレ補正
の方が、ユーザーから見れば、ほとんどの点でありがたい。
ニコンとキヤノンが(一眼レフでは)それが出来ない状態で、
レンズメーカーも、それらのマウント用の手ブレ補正内蔵の
高価なレンズしか作れない、と言うのは、ユーザー側から
したら困った状態だ。

まあ、書く事もあまり無い。現代的なレンズで普通に良く写るし
使っていてあまり(殆ど)不満も無い。
速やかな操作性、という意味では、回転式ズームリングは、
まあり好ましく無いのだが、本レンズの場合「レンズ先端を
持って直進ズーム的にレンズを引き出す」という荒技が使える。
これは、メーカー側も、この使い方を容認している(つまり
そうしても問題無い構造だ)
欲を言えば、同じ仕様のままで、もうほんの数cm全長を短くし
(そうなると、ショルダー型のカメラバッグにも縦位置で
難なく収納できる)それに伴い、ほんの100g程度軽く作って
もらえれば全く不満は無いレンズとなった事であろう。
あと、さらに欲を言えば、手ブレ補正の入っていないバージョン
でα(A)マウントがあれば嬉しい。
例えば、α77Ⅱとの組み合わせならば、付属品等を入れた
合計装備重量は、計算上1800gを少し切る程度だ。
これであれば、重量負担の少ない、理想的な超望遠高速連写
システムとなるので、α(A)マウント用の本レンズあるいは、
TAMRON版レンズでの発売を期待したい所だ。
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さて本記事はここまでとし、次回記事に続く・・