新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ紹介記事では
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回第3回目は、ジャンクレンズ特集である。
説明は不要とは思うが「ジャンク品(ジャンクレンズ)」とは、
故障品、キズ、カビ、付属品欠品等の理由で商品としての価値が
無い物である。中古カメラ店の片隅等でワコンや籠に無造作に
置かれていて、概ね500円~2000円程度の価格帯で売られて
いる物を指す。
本記事では、そうした「ジャンク品」のレンズを4本紹介する。
なお、ジャンクは殆どの場合、実用的には使い物にならない物
ばかりではあるが、稀に殆ど問題無く使用できるものも有り、
そういう「当たり」を引く事が、ジャンク買いの楽しみだ。
なお、本記事では、過去記事紹介レンズの再掲も含む。
では、まずは最初のジャンク
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レンズは、TOKINA AF210 70-210mm/f4-5.6
(ジャンク購入価格 500円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
ちなみに、本シリーズ記事ではレンズよりカメラの価格が
突出する「オフサイド」を禁止するルールは緩和している。
本レンズは、恐らくは1980年代後半の発売と思われる、
AF望遠ズーム。ニコンFマウントであった。
人気が無いAF初期の望遠ズーム、そして若干のカビがある。
フードもキャップも何もついていない、と言う事で破格の
税込み500円だ。
ただし外観はまあまあ綺麗であるし、購入時は動くかどうか
不明であったAFも、ちゃんと動作した。
まあ要は「古くて人気が無い」というだけである。
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購入は中古カメラ店では無く、ハードウェア全般の中古品
の売買を扱う全国区のリサイクル店だ、オーディオ機器や
楽器、PC等に混じってカメラ製品も少し置かれている。
その他にも、古書店やPC中古専門店、電化製品量販店等でも
少数だがカメラ製品の中古を扱っている場合があり、
その手の店では、中古カメラ市場の相場とは連動していない
事もあり、物によっては一般的中古相場より安価であったり
高価だったりする。
勿論高価な物は買う必要は無く、中古カメラ店よりも
安価だと思った場合だけ購入すれば良い訳だ。
この為、自分が欲しいと思う多くのレンズの中古相場は
常に把握しておく必要がある、ここは中古買いの鉄則だ。
それと、近年では「中古保証」と言う制度が充実している
店舗も多く、購入した商品に不具合がある場合、返金や
無償で修理をしてくれる場合もある。
ただし、そういう保証が効くのは、比較的高価な(概ね
1万円以上)中古商品だけだ。本記事で取り上げているような
500円から2000円といった低価格のジャンク品では、通常、
一切の「保証」は無いし、返品も効かないので念の為。
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さて、本レンズTOKINA AF70-210/4-5.6であるが、
動作はちゃんとしたのだが、時代の古さと、若干のカビに
より、描写力はかなり劣悪だ。
AF駆動は遅く、かつピントの精度が出ない。
これはカメラボディとの組み合わせにも影響するかとは
思うが、今回使用のD300は、やや古いがAF性能には定評の
ある機種であり、このカメラで使い難ければ、もう事実上
AF性能はNGであり、むしろMFの方が使い易いと思う。
そしてAFが合ったとしても、レンズ自体の解像力が極めて
低く、いわゆる「甘い描写」となり、ピンボケと大差無い。
次いで逆光耐性だが、わずかな逆光でもフレアっぽく
コントラストが大きく低下する、フードを装着すれば若干は
マシかも知れないが、僅かに500円のレンズ用のフードを
別途買うと、確実にレンズよりも高くつく(汗)
まあ、汎用のねじ込みフードが使えるので、必要に応じて
それを装着するのも良いかと思う。
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短所ばかり・・、という訳ではなく、良い点もある。
幸い、ボケ質には優れている模様で、そこだけは救いだ。
また、最短撮影距離はズーム全域で1.5mの表記があるが
さらに「MACRO」域があり、ここは画質保証外だろうが
概ね1.2m~1.1mあたりまで寄る事ができる。
210mmテレ端で最短時の撮影倍率はフルサイズ換算で計算上
1対3.6程度となり、本機D300のようなAPS-C機では、およそ
0.4倍マクロとなる。
で、こうした古い時代のレンズは、現代のレンズに比べ
「APO」(色収差の補正)も無ければ、勿論、手ブレ補正も
超音波モーターも無い。コーティング性能も低くて逆光に弱く、
レンズの解像力もかなり低い。
さらにはピント、ズーム、絞り値を全て左手で操作する為、、
極めて使い難い。
だが、この時代(1980年代後半のAF初期、しかもズーム自体
も発展途上)のレンズの性能は「こんなものだろう」とは
一概には言い切れ無い。
この時代以前のMFの望遠ズームでも、もっと良く写った
レンズは確実に何本も存在するのだ。
(例:ハイコスパ第9回記事MFズーム編)
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じゃあ、こういう性能の低いレンズをどう使うか?
と言えば、まずAFはできるだけ使用せずにMFで使う。
フルサイズ機は使わず、APS-C機やμ4/3機で用いて、
画面周辺の課題(収差や周辺減光)をカットする。
そして絞り開放は避けて、少しだけ絞り込む(MTF特性の
向上、諸収差の低減)さらには逆光耐性の弱さを回避する
為に、被写体の光源状況に気を配る(日陰等が望ましい)
なお、開放F値が暗く、加えて望遠であり、かつ絞り込んで
日陰で撮るとなったら、シャッター速度が低下する。
当然ブレが発生しやすくなる為、カメラ側の感度を
手ブレ限界速度を意識(本レンズをフルサイズ機で使う場合、
初級者で1/250秒程度)しつつISO調整をすれば良い。
ちなみに、D300ではISO感度を800以上に上げた場合、
連写時における連続撮影枚数が大幅に低下してしまう。
レンズのみならず、こうしたカメラ側の制約事項にも注意
しなければならない。
また、解像力が低いレンズは、あまりに高画素のカメラで
使用すると、ピクセルピッチの方がレンズ解像力よりも
細かいという、アンバランスな状況となる。常に高画素の
カメラの方が良く写るという訳では決して無い。
それと、AFを使わないという前提であれば、一眼レフで
使う必要性も無く、いっそミラーレス機で撮れば良い。
例えば、近年の高精細EVFを搭載するμ4/3機であれば、
ピーキング機能でMFでの使用も問題なく、センサーが
小さいから周辺収差も出にくく、逆光耐性も若干向上し、
実絞り測光であるから(注:本レンズには絞り環がある)
ボケ量やボケ質の撮影前での確認も容易だ。
(ただし、高画素のμ4/3機では、前述のピクセルピッチ
の課題が出る、良くバランスを考えて使う必要がある)
なお、手ブレ補正を内蔵しているμ4/3機も現代では多いが
手ブレ補正の焦点距離を手動設定しても、ズーミングで
焦点距離が変われば台無しだ。なのでミラーレス機での
手ブレ補正はMFズームでは使えないと思った方が良い。
まあつまり、こういう性能の低いレンズを使っている時の方が、
様々な欠点や注意点を意識しつつ撮らなければならないので、
練習や勉強という観点からすれば、優れた教材になる訳だ。
そして、そういう練習は面白いし、非常に勉強にもなる。
高価な高性能レンズを使って、その性能まかせで撮るだけが
写真の楽しみでは無い、という事である。
いや、むしろ初級層が高性能レンズばかりを使っていたら
機材等の弱点回避の為の技能や経験が身につかず、スキル
向上の為には逆効果である。
なお、本シリーズ記事では、今後多数のジャンクレンズが
登場予定だ。近年では、こうしたレンズを「研究・練習用の
教材」として私は買う事が多い。つまり、「滅茶苦茶性能が
低いレンズを、どのようにしたら、ちゃんと使えるか?」
という練習目的なのだ。その授業料として1000円や2000円
の投資は、惜しくない。
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さて、次のジャンク
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レンズは、CANON New FD 50mm/f1.8
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第74回記事で紹介済みの
レンズであるが再掲しよう。
本レンズは、現代で言うジャンクレンズではなく、
2010年代初頭に購入した普通のレンズだ。
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この時代に何が起こったのか?と言うと、2000年代後半の
デジタルカメラ(一眼、コンパクト、ミラーレス、携帯等)の
一般への普及により、DPE業務(いわゆるフィルム現像)が
激減した。この為、地方を中心とした多くのカメラ&DPE店が
廃業する事となったのだが、そうした店舗には、銀塩時代の
カメラやレンズが中古販売用に在庫されていた事も良くあった。
これらの在庫銀塩カメラやレンズは”中央”に集められ、
使える物は再整備され適価で販売、そうで無いものは
「準ジャンク」として中古チェーン店舗等において安価に
大量に販売された。概ね2010年前後の数年間の話である。
私はこれを「大放出時代」と呼んでいて、特に付加価値が
あると思われた「MF標準レンズ」(焦点距離50m前後で、
F1.4~F2級)を沢山購入した、他のマニアも当然そうした
模様であったので、価値の高い標準レンズはおよそ数年で、
殆ど売り尽くしてしまった状況で、現代では、もうこうした
標準レンズ等は殆ど見かけず、残っているのは不人気な
標準ズームや望遠ズーム(いずれもAF/MF版)のみである。
この「大放出時代」でのMF標準レンズは1000円~3000円が
平均的な相場であり、しかも他の時代における「ジャンク」
程に程度の悪いものは少なく、わずかなホコリやカビ、傷が
ある程度でも1000円という安価な相場であり、3000円も
出せば、かなりまともな(ABランク級)のMF標準レンズが
買えた時代であった。
本NFD50/1.8は、その「大放出時代」の末期か、僅かに遅い
時代に購入したものであり、2000円の価格は、Bランク(並品)
程度だ。
「大放出時代」の初期であれば、1000円~1500円程度の
相場であったかも知れない。
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本レンズNFD50/1.8は、1980年代のレンズであり、
この時代の前後のCANONのMF標準レンズは安価な物から
高価なものまでラインナップが極めて多い。
この後、1987年頃に発売されたEOS用のEF50/1.8(初期型)
(ハイコスパ第1回記事等)や、1990年代に高コスパレンズ
として人気があったEF50/1.8Ⅱとは、レンズ構成が異なって
いて、それら高性能レンズの「直系元祖」と言う訳では無い。
(注:後日、「CANON標準レンズの歴史」の記事を掲載予定)
スペック等の詳細については、ミラーレス第74回記事と
重複してしまうので今回は割愛する。
かいつまんで言うと、本レンズの長所は比較的解像感が
高いレンズであり、小型軽量、そして安価な事がある。
弱点としては、ボケ質の破綻と最短撮影距離の長さだ。
すなわち、本レンズを「ジャンク」と呼んでしまうのは
少々可哀想な点があり、これは基本的にまともなレンズだ。
一口に「ジャンク」と言っても、以下の3種類があると思う。
1)故障品であったり、カビや傷などで”程度”が悪い物。
2)程度は問題無いが、発売が古かったり、性能や評判が
低かったりで、不人気な物。
3)程度も性能も問題は無いのだが、市場のタイミングに
より、極めて安価に売られている物。
本レンズNFD50/1.8の場合は、3)番型のジャンクである、
つまり、FD系レンズは、CANONが1987年に新マウントの
EOSに転換して以降、互換性を無くしてしまっていたのだ。
それでも、その後1990年代から2000年代前半迄の
銀塩時代であれば、CANONのフィルムMF一眼レフの名機
(例;新旧F-1,A-1,T90等)を使って、FD系レンズを使う
事は十分可能であったのだが、2000年代中期からの完全な
デジタル時代に入ると、FD系レンズは、その当時の
デジタル機マウント、つまりNIKON F(Ai),CANON EF(EOS),
PENTAX K(KAf),KONICA MINOLTA/SONY α(A),フォーサーズ、
の、いずれにもFDレンズは、そのままでは勿論、通常型の
マウントアダプターですらも装着できなかったのだ。
「今では使い難いレンズ」となれば、相場は下落する、
そのピークがおよそ2000年代末~2010年頃であった訳だ。
この当時、CANON FDの他ではKONICA AR,MINOLTA MC/MD,
CONTAX G等の「デジタルで使い難い」マウントも同様に
相場がかなり下落、かなり買い易かったのだが、当然
デジタルで使えないレンズには、誰も興味が無かった。
状況が変わるのは、2010年頃からであって、その頃から
μ4/3やSONY NEXといったミラーレス機の普及が始まり
同時に、多数のマウントアダプターがサードパーティから
発売され、上記のようなマイナーなマウントのいずれも
ミラーレス機で使用可能となった。
ただ、それでもCONTAX Gを除き、他のMF一眼用のマイナー
マウント普及版レンズの相場はあまり上がらず、値上がり
したのは、ややレアな高性能(?)レンズだけであった。
例えばFD系で言えば、50mm/f1.2L,85mm/f1.2L,135mm/f2
あたりか、さらにレアな高級レンズだけである。
(まあ、「L」の名前がついていて、発売時定価が高ければ
初級マニア等は「高性能レンズだ」と思い込んでしまう訳だ。
勿論それは大誤解であるが、沢山のレンズを使っていない限り
誤解という事自体、理解が出来ない事であろう)
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本NFD50/1.8は「L」レンズでもなければ、F1.2などの
大口径でもない、だから「値上がりを免れた」という訳
なのだが、じゃあ「普及版レンズだから、写りが酷いのか?」
と言えば、そういう事はまるで無く、レンズの特性を良く
把握して、注意点に対処して、できるだけ長所を引き出す
ように使えば何ら問題なく撮れる訳だ。
結局のところ「上手に使うならば、どんなレンズを使って
も同じである」という事だ。
これを逆説的に言えば、「上手く撮れそうも無い」と不安に
思うビギナーほど、少しでも高性能なレンズを欲しがる訳だ。
結局、現代において高価格レンズを買うのは、ビギナー層
ばかり、という市場状況に陥ってしまっている。
あまりに受動的なスタンスで好ましく無いが、それが実態だ。
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さて、次のジャンク
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レンズは、サン光機 SUN Hi-Tele Zoom 85-210mm/f4.8
(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
「サン光機」とは聞き慣れない名前かと思う。本ブログ
では初登場であるが、知らなかったという訳では無く、
私は1990年代の銀塩時代に何本かのSUNのズームレンズを
使っていた事があった。
で「SUN」とは、今で言う「レンズ・サードパーティ」
(レンズ専業メーカー)のブランド名である。
そしてサードパーテイには得意分野があるのが普通だ、
例えばTAMRON社であれば「マクロ」と「高倍率ズーム」が
著名であり、そうした人気がある分野はメーカーとしても
力を入れて開発する為、さらに品質や性能が向上する。
まあ、そうやって何らかの「売り」が無いと、カメラメーカー
の純正品には、なかなか対抗できない、という意味もある。
何も得手が無ければ、その事業の継続が難しくなる訳だ。
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さて、「サン光機」の得意分野は何か?と言えば、
ズバリ「ズームレンズ」であった。
1960年代、まだカメラメーカー等がズームレンズの開発に
手間取っていた頃に「サン ズーム」と言う名前で、
悠々と各種ズームレンズを発売、カメラ誌等にも良く広告が
載っていた様子だ。
また「TOPCON」や「PETRI」といった一眼レフの草分け的な
カメラメーカーにもズームレンズをOEM供給していた模様だ
(本85-210/4.8がOEM供給されていたと言う情報もある)
・・が、その後1980年代頃には「サン光機」はレンズ市場
から撤退(または廃業)していたように思う。
(恐らくは、AF化に追従できなかったのであろうか?)
なお、SUNのレンズのマウントは交換式であり、各MFマウント
の物が発売されていた模様であるが、その後に中古で流通して
いる物はニコンマウント品が殆どであったと思う。
で、当然、価格もメーカー純正品に比べて安価だ。基本的には
サードパーティ製レンズは、よほどのブランド力が無いと
(例:コシナによる「フォクトレンダー」や「ツァイス」等)
メーカー純正レンズよりも高価にする事は出来ない。
私も何本かの「サン ズーム」を1990年代に購入したと
前述したが、それらはおよそ発売後20年か、もう少し古い
時代のものであっただろう。
ところが、それらは酷い性能であった。
まあ、私の購入したものが、たまたま性能の低い類のもの
ばかりであったのかも知れないのだが、ともかく、まともに
写るようなレンズでは無かった。で、それらは短期間で
処分(譲渡)してしまっていたのであった。
まあでも、その頃は私も、「レンズの言うがままに」
撮ってしまっていたのだ、レンズの弱点とかはわかるけど
「それを回避して使おう」等と言う前向きな発想は微塵も
持っていなかった(汗)
近年、中古店のジャンクコーナーで本レンズを見つけた、
匠「ああ・・ SUNか。懐かしいな。
性能はきっと厳しいかも知れないけど、上手く使えば
楽しいかも。仮に酷い写りでも、それもまた逆に
個性にしてしまえば良いか。良い練習になるしな」
と思い、購入したのが本Hi-Tele Zoom 85-210mm/f4.8
である。
本レンズの出自は不明だ、現代においては「サン光機」
自体も殆ど情報が残っていない。
外から見える範囲だけでの本レンズの仕様だが
焦点距離:85~210mm
絞り値:F4.8~F22 プリセット型絞り
絞り羽根:8枚
ズーミング:回転式(全長固定型)
フォーカス:MF、回転式(全長変化型)
最短撮影距離:約2.4m
マウント:ニコンF(ねじ込み式で交換可能)
重量:約604g
発売年や製造年は不明だが、「プリセット絞り」という
構造からすると、1960年代後半位の発売であろうか?
なお、例えばニコンの最初期の望遠ズームの発売年は、
85-250mm/f4-4.5がNIKON Fと同じ1959年であり、
その後1960年代にも何本かの望遠ズームが発売されている。
ちなみに世界初の標準ズーム43-86mm/f3.5は1963年の
発売であった。
キヤノンにおいても1964年頃から一眼レフ用FLマウント
の望遠ズームを発売している。
まあ、要はズームレンズ自体は、1960年代には既に存在は
していたのだが、メーカー純正品は恐らくはいずれも高価で
あり、純正品と同様なスペックであっても価格メリットで
SUNのズームは、まあ売れていたのであろう。
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さて、本レンズの長所だが、
まず、ズーミングでレンズ全長が変化しない構造である事だ。
これは、なかなか素晴らしい。
プリセット絞りである点は、個人的には好ましく思う、
それはまあ、銀塩MF一眼レフの時代であれば、開放測光に
しないと、絞り込んだ時に光学ファインダーが暗くなって、
MFピント合わせが厳しくなるし、その絞り開閉操作は
面倒だった。
しかし、現代のミラーレス時代では、マウントアダプター
で使用時に、絞り込み(実絞り)測光で、かつ絞っても
暗くならないEVF/モニターであるから何ら問題無い。
プリセット絞りの裏技は、最大値に絞り込んでおけば、
OPEN/CLOSEリングで無段階に絞り値をコントロールする事が
出来る他、予め中間の絞り値にプリセットしておけば、
例えばF11と絞り開放とをOPEN/CLOSEで瞬時に変更でき、
パンフォーカスと背景ボカしの2種類の作画意図を簡便に
選択する操作性が可能となる。
なお、この時、急激に露出値あるいはシャッター速度が
変化するが、現代の高感度ミラーレス機であればAUTO ISO
でも追従が可能であろう、そして勿論、被写界深度の変化も
EVF等で確認が容易だ。
このあたりは(銀塩)一眼レフでは、とても実現不可能で
あるので、まあ現代的な撮影技法と言える。
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本レンズの短所だが、
まず、やはり画質や性能である。さすがに古いレンズであり、
解像力、コントラスト、逆光耐性、ボケ質、最短撮影距離等、
殆ど全ての性能が相当に厳しい。
が、その点は、μ4/3機を使う事や、様々な撮影技法により、
できるだけ回避して行くしか無い。
次いで、ピントとズーミングが二重回転式なので
同時操作が出来ず、操作性がスームスで無い事も問題だ。
それと、ロシア製のプリセット絞りレンズでは、絞り羽根の
枚数が非常に多い場合があり、ボケ形状等の面から好ましい
のだが、本レンズでは8枚羽根と、やや物足りない。
・・と言うか、できれば奇数枚数の方が、物理的原理
(フーリエ級数等)により、光芒(光条)の発生が細かくなり、
望ましく思えるのだ。
さらには、やや重量級レンズである事。
ただ、意外に「作り」は良いので、その点は悪く無い。
まあ、実用的とはとても言えないレンズではあるが、
1000円でこれだけ色々と楽しめ、練習や研究も出来たら
十分であろう・・
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次は今回ラストのジャンク
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レンズは、MINOLTA New MD50mm/f1.4
(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第23回記事で紹介の
1980年代初頭頃の発売と思われるMF大口径標準レンズ。
前述の「大放出時代」に購入したものであり、価格は
僅かに1000円(税込み)であった。
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余談だが、「大放出時代」以降、大阪でも多くの店で
「値切り」が効かなくなってしまった。
「商人の町、大阪」あるいは関西圏では「値切り」の文化は
はるか昔から地域に根付いている。
カメラ流通市場でも例外ではなく、特に第一次中古カメラ
ブームで中古店が林立していた1990年代には、「ちょっと
負けてぇなぁ」とか軽く言うだけで、どのカメラ店でも値切り
が効いたし、常連の店舗や、下手をすると「初見」の店ですら
たとえ黙っているだけでも、少し値段を引いてくれたものだ。
まあ、客が「あの店は少しまけてくれる」という印象を
持てば「リピーターになる」という仕組みであり、
これはまあ、現代のポイントカードやスタンプカードによる
リピーター戦略と基本的には同じだ。
商人の町・大阪であるから、商売の原理やノウハウは昔から
大変よく発達している。
なお、ヨドバシカメラでは家電量販店初のポイントカード制
を1989年に既に開始していた。
だが、大阪等での「値切り」は、大阪人・関西人以外では
少々難しい、値切りの話を切り出すタイミングや話術等に
ちょっとしたテンポ、センスや慣れが必要になるからだ。
2000年代になると、デジタル機の台頭により銀塩中古店等
は少しづつ経営が厳しくなってくる、この頃からクレジット
カードによる支払形態も世の中では一般的ではあったのだが、
中古商売は「現金仕入れ、現金販売」が基本であったので
「現金で買う場合のみ、値引きが可能」というスタイルに
変わっていった。
その頃では、ポイントカード制も世に普及、カメラ界では、
キタムラは、ツタヤで既に始まっていた「Tポイント」を
2006年から導入開始した。
まあ、Tポイントは値引率として考えれば、0.5%と微々たる
ものであるが、全国区として目を向ければ、関西圏以外でも
値引き(値切り)が可能となるので、これは広まっていく。
と同時に、関西圏での値切り文化も地域独自であるから
全国チェーン店等では特例として認め難くかったのだろうか?
値切りが効かなくなっていくのだ。(店長等が転勤で全国の
店舗を巡る事も多く、地域独自の文化に溶け込み難い)
チェーン店ではなく独立した地方カメラ店は、この時期、
前述のように廃業が相次ぎ、残っているのは「高付加価値」
型の専門店、つまり、ライカ等の舶来ブランドカメラや
ニコン、コンタックス等の国内ブランドの主に銀塩機材を
扱う店だけになってしまった。このような店舗では、シニア
等での「富裕層」が対象であり、元々値切りが効き難い
状態であったが、市場縮退により、ますます「値切り」は、
”過去の文化”になってしまったのだ。
2010年代、もう大阪でも値切りが効く店は、老舗の数店だけ
になってしまい、それも、端数を切るなどの微々たるもので
あるが、他に来ている客でも、値切っている姿を見かける
事は皆無となった。今では外国人観光客位だけが値切りを
要求する状況になってきている。
2010年代後半には大阪の老舗の中古店も、いくつかが廃業、
残っている店も規模縮小などの状況だ、さすがにこれでは
値切りも言い出し難く、もう事実上「値切り文化」は終焉だ。
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余談が長くなった(汗) 本New MD50mm/f1.4の話だが、
実は何度も何度も、本ブログの記事中に登場している。
それは「ミノルタはMD型からNew MD型に小型化した際
性能を落としてしまった」と言う、ネガティブな要因での
引用である。
何度も、その話をしていたら、New MD50/1.4が少々
可哀想だ、このあたりで、汚名返上の為にも、
「ちゃんと写るレンズだ」という事を示しておこう。
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という事で、あまりこれ以上、欠点とかは書くまい。
他社レンズを含め全体的に見れば、そこそこちゃんと写る
レンズであるし、旧来のMC/MD型の50/1.4は多少良く写るが、
本レンズよりだいぶ大型だ。
ボケ質の破綻が出る場合が多いが、それについては
今回使用のNEX-7のような、高精細(236万ドット)の
EVFを活用し、絞り値などを微調整する事で、ある程度は
回避可能だ。
なお、こんな場合に「絞りブラケット」があると便利
だとは思うが、例えば、ブラケット機能が充実している
FUJIFILM X-T1でも、その機能は搭載されていない。
他機種でも、シャッター優先モードで通常のAEブラケット
を掛ければ、絞り値が連続的に変更されるが、その際には
露出値も変わってしまう。
ただ、近年の「LUMIX DMC-GX7 MK2」やCASIOのコンパクト
機、「PENTAX KP」等では、その機能が搭載されているので、
今後の広まりを期待しよう。
(まあ、とは言え、アダプター使用時には、その機能が効く
筈は無いが、AF純正レンズのボケ質破綻回避には有効だ)
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さて、今回のジャンクレンズ編(Ⅰ)はこのあたり迄と
する、次回シリーズ記事は、また未紹介レンズを中心とするが
少し先に、またジャンク編(Ⅱ)を特集する予定だ。、
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回第3回目は、ジャンクレンズ特集である。
説明は不要とは思うが「ジャンク品(ジャンクレンズ)」とは、
故障品、キズ、カビ、付属品欠品等の理由で商品としての価値が
無い物である。中古カメラ店の片隅等でワコンや籠に無造作に
置かれていて、概ね500円~2000円程度の価格帯で売られて
いる物を指す。
本記事では、そうした「ジャンク品」のレンズを4本紹介する。
なお、ジャンクは殆どの場合、実用的には使い物にならない物
ばかりではあるが、稀に殆ど問題無く使用できるものも有り、
そういう「当たり」を引く事が、ジャンク買いの楽しみだ。
なお、本記事では、過去記事紹介レンズの再掲も含む。
では、まずは最初のジャンク
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(ジャンク購入価格 500円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
ちなみに、本シリーズ記事ではレンズよりカメラの価格が
突出する「オフサイド」を禁止するルールは緩和している。
本レンズは、恐らくは1980年代後半の発売と思われる、
AF望遠ズーム。ニコンFマウントであった。
人気が無いAF初期の望遠ズーム、そして若干のカビがある。
フードもキャップも何もついていない、と言う事で破格の
税込み500円だ。
ただし外観はまあまあ綺麗であるし、購入時は動くかどうか
不明であったAFも、ちゃんと動作した。
まあ要は「古くて人気が無い」というだけである。
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の売買を扱う全国区のリサイクル店だ、オーディオ機器や
楽器、PC等に混じってカメラ製品も少し置かれている。
その他にも、古書店やPC中古専門店、電化製品量販店等でも
少数だがカメラ製品の中古を扱っている場合があり、
その手の店では、中古カメラ市場の相場とは連動していない
事もあり、物によっては一般的中古相場より安価であったり
高価だったりする。
勿論高価な物は買う必要は無く、中古カメラ店よりも
安価だと思った場合だけ購入すれば良い訳だ。
この為、自分が欲しいと思う多くのレンズの中古相場は
常に把握しておく必要がある、ここは中古買いの鉄則だ。
それと、近年では「中古保証」と言う制度が充実している
店舗も多く、購入した商品に不具合がある場合、返金や
無償で修理をしてくれる場合もある。
ただし、そういう保証が効くのは、比較的高価な(概ね
1万円以上)中古商品だけだ。本記事で取り上げているような
500円から2000円といった低価格のジャンク品では、通常、
一切の「保証」は無いし、返品も効かないので念の為。
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動作はちゃんとしたのだが、時代の古さと、若干のカビに
より、描写力はかなり劣悪だ。
AF駆動は遅く、かつピントの精度が出ない。
これはカメラボディとの組み合わせにも影響するかとは
思うが、今回使用のD300は、やや古いがAF性能には定評の
ある機種であり、このカメラで使い難ければ、もう事実上
AF性能はNGであり、むしろMFの方が使い易いと思う。
そしてAFが合ったとしても、レンズ自体の解像力が極めて
低く、いわゆる「甘い描写」となり、ピンボケと大差無い。
次いで逆光耐性だが、わずかな逆光でもフレアっぽく
コントラストが大きく低下する、フードを装着すれば若干は
マシかも知れないが、僅かに500円のレンズ用のフードを
別途買うと、確実にレンズよりも高くつく(汗)
まあ、汎用のねじ込みフードが使えるので、必要に応じて
それを装着するのも良いかと思う。
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幸い、ボケ質には優れている模様で、そこだけは救いだ。
また、最短撮影距離はズーム全域で1.5mの表記があるが
さらに「MACRO」域があり、ここは画質保証外だろうが
概ね1.2m~1.1mあたりまで寄る事ができる。
210mmテレ端で最短時の撮影倍率はフルサイズ換算で計算上
1対3.6程度となり、本機D300のようなAPS-C機では、およそ
0.4倍マクロとなる。
で、こうした古い時代のレンズは、現代のレンズに比べ
「APO」(色収差の補正)も無ければ、勿論、手ブレ補正も
超音波モーターも無い。コーティング性能も低くて逆光に弱く、
レンズの解像力もかなり低い。
さらにはピント、ズーム、絞り値を全て左手で操作する為、、
極めて使い難い。
だが、この時代(1980年代後半のAF初期、しかもズーム自体
も発展途上)のレンズの性能は「こんなものだろう」とは
一概には言い切れ無い。
この時代以前のMFの望遠ズームでも、もっと良く写った
レンズは確実に何本も存在するのだ。
(例:ハイコスパ第9回記事MFズーム編)
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と言えば、まずAFはできるだけ使用せずにMFで使う。
フルサイズ機は使わず、APS-C機やμ4/3機で用いて、
画面周辺の課題(収差や周辺減光)をカットする。
そして絞り開放は避けて、少しだけ絞り込む(MTF特性の
向上、諸収差の低減)さらには逆光耐性の弱さを回避する
為に、被写体の光源状況に気を配る(日陰等が望ましい)
なお、開放F値が暗く、加えて望遠であり、かつ絞り込んで
日陰で撮るとなったら、シャッター速度が低下する。
当然ブレが発生しやすくなる為、カメラ側の感度を
手ブレ限界速度を意識(本レンズをフルサイズ機で使う場合、
初級者で1/250秒程度)しつつISO調整をすれば良い。
ちなみに、D300ではISO感度を800以上に上げた場合、
連写時における連続撮影枚数が大幅に低下してしまう。
レンズのみならず、こうしたカメラ側の制約事項にも注意
しなければならない。
また、解像力が低いレンズは、あまりに高画素のカメラで
使用すると、ピクセルピッチの方がレンズ解像力よりも
細かいという、アンバランスな状況となる。常に高画素の
カメラの方が良く写るという訳では決して無い。
それと、AFを使わないという前提であれば、一眼レフで
使う必要性も無く、いっそミラーレス機で撮れば良い。
例えば、近年の高精細EVFを搭載するμ4/3機であれば、
ピーキング機能でMFでの使用も問題なく、センサーが
小さいから周辺収差も出にくく、逆光耐性も若干向上し、
実絞り測光であるから(注:本レンズには絞り環がある)
ボケ量やボケ質の撮影前での確認も容易だ。
(ただし、高画素のμ4/3機では、前述のピクセルピッチ
の課題が出る、良くバランスを考えて使う必要がある)
なお、手ブレ補正を内蔵しているμ4/3機も現代では多いが
手ブレ補正の焦点距離を手動設定しても、ズーミングで
焦点距離が変われば台無しだ。なのでミラーレス機での
手ブレ補正はMFズームでは使えないと思った方が良い。
まあつまり、こういう性能の低いレンズを使っている時の方が、
様々な欠点や注意点を意識しつつ撮らなければならないので、
練習や勉強という観点からすれば、優れた教材になる訳だ。
そして、そういう練習は面白いし、非常に勉強にもなる。
高価な高性能レンズを使って、その性能まかせで撮るだけが
写真の楽しみでは無い、という事である。
いや、むしろ初級層が高性能レンズばかりを使っていたら
機材等の弱点回避の為の技能や経験が身につかず、スキル
向上の為には逆効果である。
なお、本シリーズ記事では、今後多数のジャンクレンズが
登場予定だ。近年では、こうしたレンズを「研究・練習用の
教材」として私は買う事が多い。つまり、「滅茶苦茶性能が
低いレンズを、どのようにしたら、ちゃんと使えるか?」
という練習目的なのだ。その授業料として1000円や2000円
の投資は、惜しくない。
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さて、次のジャンク
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(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第74回記事で紹介済みの
レンズであるが再掲しよう。
本レンズは、現代で言うジャンクレンズではなく、
2010年代初頭に購入した普通のレンズだ。
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デジタルカメラ(一眼、コンパクト、ミラーレス、携帯等)の
一般への普及により、DPE業務(いわゆるフィルム現像)が
激減した。この為、地方を中心とした多くのカメラ&DPE店が
廃業する事となったのだが、そうした店舗には、銀塩時代の
カメラやレンズが中古販売用に在庫されていた事も良くあった。
これらの在庫銀塩カメラやレンズは”中央”に集められ、
使える物は再整備され適価で販売、そうで無いものは
「準ジャンク」として中古チェーン店舗等において安価に
大量に販売された。概ね2010年前後の数年間の話である。
私はこれを「大放出時代」と呼んでいて、特に付加価値が
あると思われた「MF標準レンズ」(焦点距離50m前後で、
F1.4~F2級)を沢山購入した、他のマニアも当然そうした
模様であったので、価値の高い標準レンズはおよそ数年で、
殆ど売り尽くしてしまった状況で、現代では、もうこうした
標準レンズ等は殆ど見かけず、残っているのは不人気な
標準ズームや望遠ズーム(いずれもAF/MF版)のみである。
この「大放出時代」でのMF標準レンズは1000円~3000円が
平均的な相場であり、しかも他の時代における「ジャンク」
程に程度の悪いものは少なく、わずかなホコリやカビ、傷が
ある程度でも1000円という安価な相場であり、3000円も
出せば、かなりまともな(ABランク級)のMF標準レンズが
買えた時代であった。
本NFD50/1.8は、その「大放出時代」の末期か、僅かに遅い
時代に購入したものであり、2000円の価格は、Bランク(並品)
程度だ。
「大放出時代」の初期であれば、1000円~1500円程度の
相場であったかも知れない。
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この時代の前後のCANONのMF標準レンズは安価な物から
高価なものまでラインナップが極めて多い。
この後、1987年頃に発売されたEOS用のEF50/1.8(初期型)
(ハイコスパ第1回記事等)や、1990年代に高コスパレンズ
として人気があったEF50/1.8Ⅱとは、レンズ構成が異なって
いて、それら高性能レンズの「直系元祖」と言う訳では無い。
(注:後日、「CANON標準レンズの歴史」の記事を掲載予定)
スペック等の詳細については、ミラーレス第74回記事と
重複してしまうので今回は割愛する。
かいつまんで言うと、本レンズの長所は比較的解像感が
高いレンズであり、小型軽量、そして安価な事がある。
弱点としては、ボケ質の破綻と最短撮影距離の長さだ。
すなわち、本レンズを「ジャンク」と呼んでしまうのは
少々可哀想な点があり、これは基本的にまともなレンズだ。
一口に「ジャンク」と言っても、以下の3種類があると思う。
1)故障品であったり、カビや傷などで”程度”が悪い物。
2)程度は問題無いが、発売が古かったり、性能や評判が
低かったりで、不人気な物。
3)程度も性能も問題は無いのだが、市場のタイミングに
より、極めて安価に売られている物。
本レンズNFD50/1.8の場合は、3)番型のジャンクである、
つまり、FD系レンズは、CANONが1987年に新マウントの
EOSに転換して以降、互換性を無くしてしまっていたのだ。
それでも、その後1990年代から2000年代前半迄の
銀塩時代であれば、CANONのフィルムMF一眼レフの名機
(例;新旧F-1,A-1,T90等)を使って、FD系レンズを使う
事は十分可能であったのだが、2000年代中期からの完全な
デジタル時代に入ると、FD系レンズは、その当時の
デジタル機マウント、つまりNIKON F(Ai),CANON EF(EOS),
PENTAX K(KAf),KONICA MINOLTA/SONY α(A),フォーサーズ、
の、いずれにもFDレンズは、そのままでは勿論、通常型の
マウントアダプターですらも装着できなかったのだ。
「今では使い難いレンズ」となれば、相場は下落する、
そのピークがおよそ2000年代末~2010年頃であった訳だ。
この当時、CANON FDの他ではKONICA AR,MINOLTA MC/MD,
CONTAX G等の「デジタルで使い難い」マウントも同様に
相場がかなり下落、かなり買い易かったのだが、当然
デジタルで使えないレンズには、誰も興味が無かった。
状況が変わるのは、2010年頃からであって、その頃から
μ4/3やSONY NEXといったミラーレス機の普及が始まり
同時に、多数のマウントアダプターがサードパーティから
発売され、上記のようなマイナーなマウントのいずれも
ミラーレス機で使用可能となった。
ただ、それでもCONTAX Gを除き、他のMF一眼用のマイナー
マウント普及版レンズの相場はあまり上がらず、値上がり
したのは、ややレアな高性能(?)レンズだけであった。
例えばFD系で言えば、50mm/f1.2L,85mm/f1.2L,135mm/f2
あたりか、さらにレアな高級レンズだけである。
(まあ、「L」の名前がついていて、発売時定価が高ければ
初級マニア等は「高性能レンズだ」と思い込んでしまう訳だ。
勿論それは大誤解であるが、沢山のレンズを使っていない限り
誤解という事自体、理解が出来ない事であろう)
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大口径でもない、だから「値上がりを免れた」という訳
なのだが、じゃあ「普及版レンズだから、写りが酷いのか?」
と言えば、そういう事はまるで無く、レンズの特性を良く
把握して、注意点に対処して、できるだけ長所を引き出す
ように使えば何ら問題なく撮れる訳だ。
結局のところ「上手に使うならば、どんなレンズを使って
も同じである」という事だ。
これを逆説的に言えば、「上手く撮れそうも無い」と不安に
思うビギナーほど、少しでも高性能なレンズを欲しがる訳だ。
結局、現代において高価格レンズを買うのは、ビギナー層
ばかり、という市場状況に陥ってしまっている。
あまりに受動的なスタンスで好ましく無いが、それが実態だ。
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さて、次のジャンク
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(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
「サン光機」とは聞き慣れない名前かと思う。本ブログ
では初登場であるが、知らなかったという訳では無く、
私は1990年代の銀塩時代に何本かのSUNのズームレンズを
使っていた事があった。
で「SUN」とは、今で言う「レンズ・サードパーティ」
(レンズ専業メーカー)のブランド名である。
そしてサードパーテイには得意分野があるのが普通だ、
例えばTAMRON社であれば「マクロ」と「高倍率ズーム」が
著名であり、そうした人気がある分野はメーカーとしても
力を入れて開発する為、さらに品質や性能が向上する。
まあ、そうやって何らかの「売り」が無いと、カメラメーカー
の純正品には、なかなか対抗できない、という意味もある。
何も得手が無ければ、その事業の継続が難しくなる訳だ。
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ズバリ「ズームレンズ」であった。
1960年代、まだカメラメーカー等がズームレンズの開発に
手間取っていた頃に「サン ズーム」と言う名前で、
悠々と各種ズームレンズを発売、カメラ誌等にも良く広告が
載っていた様子だ。
また「TOPCON」や「PETRI」といった一眼レフの草分け的な
カメラメーカーにもズームレンズをOEM供給していた模様だ
(本85-210/4.8がOEM供給されていたと言う情報もある)
・・が、その後1980年代頃には「サン光機」はレンズ市場
から撤退(または廃業)していたように思う。
(恐らくは、AF化に追従できなかったのであろうか?)
なお、SUNのレンズのマウントは交換式であり、各MFマウント
の物が発売されていた模様であるが、その後に中古で流通して
いる物はニコンマウント品が殆どであったと思う。
で、当然、価格もメーカー純正品に比べて安価だ。基本的には
サードパーティ製レンズは、よほどのブランド力が無いと
(例:コシナによる「フォクトレンダー」や「ツァイス」等)
メーカー純正レンズよりも高価にする事は出来ない。
私も何本かの「サン ズーム」を1990年代に購入したと
前述したが、それらはおよそ発売後20年か、もう少し古い
時代のものであっただろう。
ところが、それらは酷い性能であった。
まあ、私の購入したものが、たまたま性能の低い類のもの
ばかりであったのかも知れないのだが、ともかく、まともに
写るようなレンズでは無かった。で、それらは短期間で
処分(譲渡)してしまっていたのであった。
まあでも、その頃は私も、「レンズの言うがままに」
撮ってしまっていたのだ、レンズの弱点とかはわかるけど
「それを回避して使おう」等と言う前向きな発想は微塵も
持っていなかった(汗)
近年、中古店のジャンクコーナーで本レンズを見つけた、
匠「ああ・・ SUNか。懐かしいな。
性能はきっと厳しいかも知れないけど、上手く使えば
楽しいかも。仮に酷い写りでも、それもまた逆に
個性にしてしまえば良いか。良い練習になるしな」
と思い、購入したのが本Hi-Tele Zoom 85-210mm/f4.8
である。
本レンズの出自は不明だ、現代においては「サン光機」
自体も殆ど情報が残っていない。
外から見える範囲だけでの本レンズの仕様だが
焦点距離:85~210mm
絞り値:F4.8~F22 プリセット型絞り
絞り羽根:8枚
ズーミング:回転式(全長固定型)
フォーカス:MF、回転式(全長変化型)
最短撮影距離:約2.4m
マウント:ニコンF(ねじ込み式で交換可能)
重量:約604g
発売年や製造年は不明だが、「プリセット絞り」という
構造からすると、1960年代後半位の発売であろうか?
なお、例えばニコンの最初期の望遠ズームの発売年は、
85-250mm/f4-4.5がNIKON Fと同じ1959年であり、
その後1960年代にも何本かの望遠ズームが発売されている。
ちなみに世界初の標準ズーム43-86mm/f3.5は1963年の
発売であった。
キヤノンにおいても1964年頃から一眼レフ用FLマウント
の望遠ズームを発売している。
まあ、要はズームレンズ自体は、1960年代には既に存在は
していたのだが、メーカー純正品は恐らくはいずれも高価で
あり、純正品と同様なスペックであっても価格メリットで
SUNのズームは、まあ売れていたのであろう。
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まず、ズーミングでレンズ全長が変化しない構造である事だ。
これは、なかなか素晴らしい。
プリセット絞りである点は、個人的には好ましく思う、
それはまあ、銀塩MF一眼レフの時代であれば、開放測光に
しないと、絞り込んだ時に光学ファインダーが暗くなって、
MFピント合わせが厳しくなるし、その絞り開閉操作は
面倒だった。
しかし、現代のミラーレス時代では、マウントアダプター
で使用時に、絞り込み(実絞り)測光で、かつ絞っても
暗くならないEVF/モニターであるから何ら問題無い。
プリセット絞りの裏技は、最大値に絞り込んでおけば、
OPEN/CLOSEリングで無段階に絞り値をコントロールする事が
出来る他、予め中間の絞り値にプリセットしておけば、
例えばF11と絞り開放とをOPEN/CLOSEで瞬時に変更でき、
パンフォーカスと背景ボカしの2種類の作画意図を簡便に
選択する操作性が可能となる。
なお、この時、急激に露出値あるいはシャッター速度が
変化するが、現代の高感度ミラーレス機であればAUTO ISO
でも追従が可能であろう、そして勿論、被写界深度の変化も
EVF等で確認が容易だ。
このあたりは(銀塩)一眼レフでは、とても実現不可能で
あるので、まあ現代的な撮影技法と言える。
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まず、やはり画質や性能である。さすがに古いレンズであり、
解像力、コントラスト、逆光耐性、ボケ質、最短撮影距離等、
殆ど全ての性能が相当に厳しい。
が、その点は、μ4/3機を使う事や、様々な撮影技法により、
できるだけ回避して行くしか無い。
次いで、ピントとズーミングが二重回転式なので
同時操作が出来ず、操作性がスームスで無い事も問題だ。
それと、ロシア製のプリセット絞りレンズでは、絞り羽根の
枚数が非常に多い場合があり、ボケ形状等の面から好ましい
のだが、本レンズでは8枚羽根と、やや物足りない。
・・と言うか、できれば奇数枚数の方が、物理的原理
(フーリエ級数等)により、光芒(光条)の発生が細かくなり、
望ましく思えるのだ。
さらには、やや重量級レンズである事。
ただ、意外に「作り」は良いので、その点は悪く無い。
まあ、実用的とはとても言えないレンズではあるが、
1000円でこれだけ色々と楽しめ、練習や研究も出来たら
十分であろう・・
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次は今回ラストのジャンク
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(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第23回記事で紹介の
1980年代初頭頃の発売と思われるMF大口径標準レンズ。
前述の「大放出時代」に購入したものであり、価格は
僅かに1000円(税込み)であった。
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「値切り」が効かなくなってしまった。
「商人の町、大阪」あるいは関西圏では「値切り」の文化は
はるか昔から地域に根付いている。
カメラ流通市場でも例外ではなく、特に第一次中古カメラ
ブームで中古店が林立していた1990年代には、「ちょっと
負けてぇなぁ」とか軽く言うだけで、どのカメラ店でも値切り
が効いたし、常連の店舗や、下手をすると「初見」の店ですら
たとえ黙っているだけでも、少し値段を引いてくれたものだ。
まあ、客が「あの店は少しまけてくれる」という印象を
持てば「リピーターになる」という仕組みであり、
これはまあ、現代のポイントカードやスタンプカードによる
リピーター戦略と基本的には同じだ。
商人の町・大阪であるから、商売の原理やノウハウは昔から
大変よく発達している。
なお、ヨドバシカメラでは家電量販店初のポイントカード制
を1989年に既に開始していた。
だが、大阪等での「値切り」は、大阪人・関西人以外では
少々難しい、値切りの話を切り出すタイミングや話術等に
ちょっとしたテンポ、センスや慣れが必要になるからだ。
2000年代になると、デジタル機の台頭により銀塩中古店等
は少しづつ経営が厳しくなってくる、この頃からクレジット
カードによる支払形態も世の中では一般的ではあったのだが、
中古商売は「現金仕入れ、現金販売」が基本であったので
「現金で買う場合のみ、値引きが可能」というスタイルに
変わっていった。
その頃では、ポイントカード制も世に普及、カメラ界では、
キタムラは、ツタヤで既に始まっていた「Tポイント」を
2006年から導入開始した。
まあ、Tポイントは値引率として考えれば、0.5%と微々たる
ものであるが、全国区として目を向ければ、関西圏以外でも
値引き(値切り)が可能となるので、これは広まっていく。
と同時に、関西圏での値切り文化も地域独自であるから
全国チェーン店等では特例として認め難くかったのだろうか?
値切りが効かなくなっていくのだ。(店長等が転勤で全国の
店舗を巡る事も多く、地域独自の文化に溶け込み難い)
チェーン店ではなく独立した地方カメラ店は、この時期、
前述のように廃業が相次ぎ、残っているのは「高付加価値」
型の専門店、つまり、ライカ等の舶来ブランドカメラや
ニコン、コンタックス等の国内ブランドの主に銀塩機材を
扱う店だけになってしまった。このような店舗では、シニア
等での「富裕層」が対象であり、元々値切りが効き難い
状態であったが、市場縮退により、ますます「値切り」は、
”過去の文化”になってしまったのだ。
2010年代、もう大阪でも値切りが効く店は、老舗の数店だけ
になってしまい、それも、端数を切るなどの微々たるもので
あるが、他に来ている客でも、値切っている姿を見かける
事は皆無となった。今では外国人観光客位だけが値切りを
要求する状況になってきている。
2010年代後半には大阪の老舗の中古店も、いくつかが廃業、
残っている店も規模縮小などの状況だ、さすがにこれでは
値切りも言い出し難く、もう事実上「値切り文化」は終焉だ。
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実は何度も何度も、本ブログの記事中に登場している。
それは「ミノルタはMD型からNew MD型に小型化した際
性能を落としてしまった」と言う、ネガティブな要因での
引用である。
何度も、その話をしていたら、New MD50/1.4が少々
可哀想だ、このあたりで、汚名返上の為にも、
「ちゃんと写るレンズだ」という事を示しておこう。
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他社レンズを含め全体的に見れば、そこそこちゃんと写る
レンズであるし、旧来のMC/MD型の50/1.4は多少良く写るが、
本レンズよりだいぶ大型だ。
ボケ質の破綻が出る場合が多いが、それについては
今回使用のNEX-7のような、高精細(236万ドット)の
EVFを活用し、絞り値などを微調整する事で、ある程度は
回避可能だ。
なお、こんな場合に「絞りブラケット」があると便利
だとは思うが、例えば、ブラケット機能が充実している
FUJIFILM X-T1でも、その機能は搭載されていない。
他機種でも、シャッター優先モードで通常のAEブラケット
を掛ければ、絞り値が連続的に変更されるが、その際には
露出値も変わってしまう。
ただ、近年の「LUMIX DMC-GX7 MK2」やCASIOのコンパクト
機、「PENTAX KP」等では、その機能が搭載されているので、
今後の広まりを期待しよう。
(まあ、とは言え、アダプター使用時には、その機能が効く
筈は無いが、AF純正レンズのボケ質破綻回避には有効だ)
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する、次回シリーズ記事は、また未紹介レンズを中心とするが
少し先に、またジャンク編(Ⅱ)を特集する予定だ。、