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ハイ・コスパレンズ・マニアックス(25)1万円クラス編

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コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事の暫定最終回。
第25回目の今回は「1万円クラス」編とする。

「1万円クラス」とは「中古購入価格が1万円前後」という風に
定義しておくが、中古相場は発売後の期間や購入時期によって
も変化する。現在での相場は、もう少し安価になったレンズも

あるのだが、まあ、「だいたい」という事にしておこう。

それと、(シリーズ最終回での)今更の説明となるが、
こうした安価なレンズを装着するカメラ本体は「さほど高価な
機体を使わない」という点が、本ブログでの基本的なルールと
なっている(カメラ価格が突出する「オフサイド」禁止の持論)

まずは、最初のシステム、
c0032138_20162575.jpg
カメラは、SONY α65(APS-C機)
レンズは、MINOLTA AF50mm/f3.5 Macro
(中古購入価格 10,000円)

ミラーレス・マニアックス第68回記事で紹介した
1990年代のAF単焦点標準マクロ。

ミノルタの標準マクロには、優秀な兄貴分である
AF50/2.8Macro(ミラーレス第38回,第69回,名玉編第4回)
が存在していて、それを愛用し続けていた為、ずいぶんと
後年になってからの購入となったレンズだ。
c0032138_20162517.jpg
兄貴分のAF50/f2.8は、最短20cmの等倍マクロである。
初期型、NEW型、D型、SONY型(現行)の4種類があるが、
いずれもレンズ構成は同じだ。1980年代の初出の時点で、
既に完成の域に達していたレンズであるとも言える。

対して、本AF50/3.5は最短23cmの1/2倍マクロである、
NEW型しか存在しておらず、後継レンズも無い。
僅かにスペックの劣るだけの本レンズが、何故F2.8版と
併売されていたのかは良くわからない。

まあ、α(A)マウントのみでレンズのラインナップを考えると
殆ど意味の無いレンズなのだが、現代においては、α(A)用
レンズは様々なミラーレス機で利用できるので、むしろ
F2.8版とは、まったく別のレンズとして考えると、それは
それで存在意義のあるレンズとなってくるであろう。

それから、α(A)マウントの50mmレンズとしては、エントリー
レンズとして極めて優秀な、SONY DT50mm/f1.8(ミラーレス
第67回、ハイコスパ第1回)も存在していて、そのレンズは
非マクロ標準レンズとしては驚異の最短34cmであり、1/5倍迄の
接写が出来る、そしてSONY αフタケタ機や各社ミラーレス機
においてはデジタル拡大機能が利用できるので、DT50/1.8も
一種のマクロレンズのように扱う事もできる。

そのように、α(A)マウントの優秀な50mmレンズ群に囲まれて
ますます肩身が狭くなりそうな本AF50/3.5ではあるのだが、
銀塩時代からの各社F3.5級マクロに特有な「絞り込むと
非常にシャープ」と言う特性が、本レンズにおいても若干ある
様子であるから、そのような使い方をすれば特徴を発揮する
事ができるかも知れない。

ただ、実のところ本レンズにおいては、絞ってもあまり極端に
「カリカリ」の描写が得られる訳では無く、「若干その傾向が
ある」という程度だ。
c0032138_20162525.jpg
・・という事から、本レンズの存在意義はやはり不明であり、
どのように使うべきか?は、実のところ購入後もずっと迷って
いる状況だ。(「用途開発」が必要になるという事だ)

中古相場が安価である、という点については、兄貴分の
MINOLTA AF50/2.8であっても、初期型またはNEW型であれば、
本レンズと同様に1万円前後の相場だ。そちらを購入した方が
ベターであろう。
c0032138_20162585.jpg
ちなみにMINOLTAのAFレンズの初期型とNEW型の見分け方だが
初期型はレンズのピントリングの幅がおよそ4mmと極めて細い。
NEW型はピントリングがゴム製となって、幅約8mmと若干太く
なっているが、依然廻し難く、デザイン的にも良く無い。

これは50mmマクロレンズに限らず、他のミノルタAFレンズでも
同様だ。何故こんな事になっているかと言うと、1985年に
「α(-7000)」が発売されると、初の実用AF一眼レフという事で
社会現象にもなったのだが、この時代「AFは最新技術である」
「AFは万能だ」「MFでピントを合わせるのは時代遅れだ」
といった風潮や意識がメーカー側にもユーザー側にもあって、
MFでの操作性を、あえて重要視しなかった点がある。

α(-7000)の直後に出たオリンパスOM707(1986年)では、
レンズをMFで直接操作する事ができず、ボディ側からモーター
を介してピント合わせをする「パワーフォーカス」機構が
採用されていた。技術的には興味深いが、勿論実用性は乏しく、
この機種が市場に受けれられず、オリンパスは一眼レフのAF化
に事実上失敗してしまう(以降、デジタル時代になるまで、
20年近くもオリンパスはAF搭載の一眼レフを発売していない)

勿論、このような行き過ぎた「AF信奉」は、すぐに廃れた。
ご存知の通りオートフォーカスはどんな被写体状況でも確実に
ピントが合う訳ではないのだ。「αショック」から30数年を
経過した現代においても、依然AFは決して万能では無い。

こうした状況なので、α用のレンズのピントリングも、MFの
必然性が認められた事から、1990年代のNEW型では若干だが
太くして、さらに続くD型(2000年前後)では、現代の
マクロレンズと同様の幅となった、
2006年以降のSONY型でも、勿論ピントリングの幅は広い。
c0032138_20162515.jpg
さて、余談が長くなったが、本レンズAF50/3.5Macroに
関してはNEW型しか存在しない、したがって8mmのピントリング
幅を甘んじる事になるが、まあ、言うほど使い難いものではなく、
私が気にするのは、むしろデザインの悪さである。

本レンズ以外のαレンズでも、NEW型を買うならば、いっそMFの
使い難さを我慢しても、初期型での格好良さをチョイスして
しまうのは、私だけであろうか・・?

いずれにしても、兄貴分のAF50/2.8Macroとの、利用目的の
差別化が必要なレンズである。
「用途開発が必須」、と言い換えても良いかも知れず、
けど、あまり有益な本レンズ独自の利用法は、なかなか
見つかっていない状況でもある。

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さて、次のシステム、
c0032138_20163600.jpg
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)
レンズは、SIGMA 30mm/f2.8 EX DN
(新古品購入価格 8,000円)

ミラーレス・マニアックス第10回記事で紹介した
2010年代のミラーレス機専用AF単焦点準広角レンズ。

現在本レンズは、後継機 A(Art)30/2.8DNになっているが
外装が若干変更されただけで中身のレンズ構成は同一だ。
本レンズは、その後継型が発売される直前に新品在庫処分で
安価に購入する事ができた。
c0032138_20163690.jpg
安価なのは良いが、特徴の無いレンズだ。
まあ、現代のレンズなので、写る事は良く写る。

しかも本レンズは、SIGMAの誇る高級コンパクトDPシリーズ
のDP2系のレンズを単体発売したものだ。まあ、良く写って
当然であろう。

シャープネスもかなり高い、けど、全体に「感動的」という
写りの要素は無いレンズだ。

弱点は、他のSIGMA DNレンズと同様に、電源OFF時にモーター
部品がカタカタと音を立てる事だ、これは気になるし格好悪い。

また、他のDNシリーズ、SIGMA (A)19/2.8DNとA60/2.8DNに
付属しているフードも、何故か本レンズだけ付いていない。

他のミラーレス用レンズもそうだが、無限回転式のヘリコイド
はMF撮影にはまったく向かず、AF専用と考えた方が無難だ。
c0032138_20173246.jpg
MFがやり難いというのは、ボケ表現を活かした撮影が
出来ないという事と、ほぼ等価になる。
すなわち、センサーザイズの小さいμ4/3機で、F2.8という
小口径レンズで(注:ズームはいざしらず、単焦点レンズでは、
F2.8は小口径もいいところだ)被写界深度を浅くしようと
すると、近接撮影を行う必要があるからだ。

しかし、本レンズの最短撮影距離(30cm)のあたりでは、
それを少しでも超えるとAFが合わないので、近接撮影では
本来MFで使うのがベターなのだが、無限回転式ヘリコイドでは
最短いっぱいでの「停止感触」が無い為、MFでは使い勝手が
どうしても悪くなってしまう。

よって、ボケを生かした撮影は、本レンズにおいては、
AFでもMFでも苦しいという事になる、

なんだかこのあたりの話は、前述のAF時代の黎明期(1980年代
後半)に「MFが軽視された」話と、どうも印象が被ってくる。
無限回転式のヘリコイドでMFがやりにくい事は明白であろう、
なぜ、こんな仕様ばかりになってしまったのか?
(注:近年のミラーレス機用高級仕様レンズにおいては、
一部だが、無限回転ピントリング+有限回転距離指標による
ハイブリッド型レンズが存在している)

まあレンズ内モーターによりAFからシームレスに(継ぎ目無く
=何の切り替え操作も無しに)MFに移行できるとか、
AF時にピントリングに触れることで自動的に画面拡大して
MFをやりやすくする(MFアシスト機能)等が可能である事は、
ミラーレス機において、確かにメリットであり、その事は
初級者に対しては「付加価値」(=欲しくなる為の機能)で
あるのかもしれない。

けど、実際の高度なMF操作は、この仕様ではできないのだ。
(MFとはAFが合わない場合の補助機能では無く、最初からMFで
ないとならない、というケースも多々あるという意味だ)
ミラーレス機は初級中級者向けだけのカメラという訳では
無いであろう。 

これでは、マニアは皆、ミラーレス機用純正AFレンズを購入せず、
マニアックな国内外製のMF高性能ミラーレス機用レンズを購入
するか、アダプターでオールドレンズを使う事に走ってしまう。
いずれ時代が過ぎれば、この仕様が果たして成功か失敗であった
のかは、判断が下される事であろう・・
c0032138_20173876.jpg
さて、余談が長くなったが、本レンズは描写性能的には、
何ら問題が無い。
中古の流通は、2015年前後では、かなりの玉数があったが、
現在では若干減ってきて、やや入手しずらくなってきている。
製品サイクルの速い現代だし、しかも安価なレンズだ、
欲しいと思った人は、すでに買っているだろうし、いらなく
なった人も死蔵しているか、既に売っているのであろう。
標準的な中古相場は、1万円を切る位だと思う。

なお、本レンズは、いわゆる「エントリーレンズ」ではなく、
SIGMAのARTラインとして高性能レンズと分類されるものだ。

描写力的に言えば、コスパは極めて高いが、作りの悪さや
マニアック度がほとんど無く所有満足度が低いであろう事は、
十分理解して購入する必要があるだろう。
まあ「実用・使い潰し型」のレンズである。

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さて、次のシステム、
c0032138_20180928.jpg
カメラは、FUJIFILM X-E1(APS-C機)
レンズは、NIKON NIKKOR-H Auto 50mm/f2
(中古購入価格 5,000円相当? カメラボディとセット
購入であった為、レンズ単体価格は不明)

ミラーレス・マニアックス第27回記事で紹介した
1964年発売のMF単焦点標準レンズ。

本レンズは単層コーティング(モノコート)であり、
銀塩時代、例えば1990年代の第一次中古カメラブームの時代に
おいては、本レンズはマニア間では「黄色く写る」と、若干
評価が低かった。しかし、それでもマニアは本レンズがモノクロ
時代のレンズであった事から、あえてモノクロフィルムを用い、
「モノクロで撮ると非常に良く写る」という評価を下す事となる。

また、2000年代前半のデジタル一眼初期の時代では、銀塩時代
にはなかった「ホワイトバランス調整機能」が付いた事から、
マニアは、WBを手動で調整し本レンズの色味の問題をクリア、
あえてこのレンズを復活させようとした人も多かった位の、
発売50年を越えてもマニア受けのするレンズである。
(注:実際には黄色く写る訳では無い。ガラス材質および
コーティングで、レンズが黄色く見える事からの誤解である)
c0032138_20181046.jpg
本レンズは1972年に前年のNIKON F2発売やカラーフィルムの
普及の状況を受け、マルチコート(多層コーティングト)化され、
NIKKOR-HC Auto 50mm/f2という名称となった。

レンズ構成はHもHCも4群6枚で同じであり、最短撮影距離も
両者60cmと全く同じものである。
わかりにくいので、中古流通業界においては、旧型のHタイプ
を「Cナシ」と明記する事が慣例となっている。

このように書いておくと、もし購入客から質問があった場合は、
店「ああ、これは”Cナシ”なので、カラーフィルム用ではなく
  白黒フィルム用です、それでもよろしいですか?」
と、店員の誰でもが容易に説明する事ができるし、購入客も
理解が早い事であろう。

店員の説明の話のみならず、この「C」は「カラー対応」または
「コーティング」を意味する「C」だと想像できる。

ちなみに、H型とは何の意味か?と言えばこれは、ラテン語の
HEXA(ヘキサ)であり、数字の6という意味だ、これはレンズが
6枚構成であった事から付けられた。
(なんだか各記事で毎回同じような説明をしているが、今後は、
こういう事は「常識」として、説明を省略していこう。
詳しくは「匠の写真用語辞典」シリーズ記事で説明する)

ところで、区別しにくい型番は、本レンズH型と後期のHC型の
ケースだけではなく、H型よりも前のS型(ニコンFと同時期の
1959年発売)とも区別がややこしい。

旧製品NIKKOR S Auto 5cm/f2 は、その「S」の名の通り、
Septa(セプタ=7)であり、5群7枚構成のレンズだ。
ただ、このレンズは特殊なレンズ構成で、その描写力は市場
での評価があまり高くなく、その後期型はS名称のままで、
続くH型と同様の構成の4群6枚に変更された。

なお、S型初期型の時代(1960年前後)ではレンズの焦点距離
はcmで表現し、50mmでは無く5cmと呼んでいた(他社レンズも
同様)のだが、S型の後期型から「50mm」の表記となった。
(注:この理由として「有効数字」があると聞く、つまり5cm
の表記の場合では、焦点距離48mmとか52mmとかでも、まとめて
5cmレンズと呼べる、という事だ。=当時の公差は5%以内程度)

いずれにしても、S型は後年のマニア間においても評価が低く
「Sは買うな、Hを買え」は、合言葉のように浸透していた。

さて、このあたりの話はミラーレス第27回記事と重複している
点が多かった(後で以前の記事を読み返して気がついた・汗)
まあ良い、これらは比較的重要な情報だ、マニアであれば
必ず知っておかなくてはならない事である。
c0032138_20181078.jpg
そして「色味が黄色い」と言われている、「Cナシ」のH型だが、
発色が良い FUJIFILM X-E1との組み合わせにおいては、
銀塩一眼レフの時代とは違い、その点は殆ど目立たない。
(そもそも「黄色く写る」という事自体が誤解の類だ)

あるいは、デジタル一眼初期の時代にホワイトバランスを手動で
調整していた事も、現代のAWB性能であれば手動調整は不要だ。
銀塩時代の白黒フィルム使用のように、デジカメをあえてモノクロ
モードにする必要も無く、カラーのまま普通に撮れば良い。

まあ、モノコートの本レンズのガラス自体が「黄色く見える」
ことから、「黄色く写る」とユーザー層が思いこんでしまった
だけなのかも知れない。

本レンズであるが、ニコンの銀塩時代の標準レンズは解像力を
重視する設計で、描写やボケが固すぎるものが殆どであるのだが
本レンズは比較的適正な描写力やボケ質で好感が持てる。
最短60cmは標準レンズとしては長すぎるが、この時代のレンズ
は標準レンズに限らず、たいてい最短が長いのでやむを得ない。

なお、銀塩時代のレンズは、このような性能だったから、
近距離の撮影がやりにくく、結局、中距離スナップや遠距離の
風景等の被写体が殆どになってしまった。また、その際、
やや絞り込む事で、MTF特性が向上したり収差が減る事、
そして、シャッター速度オーバーを避けられる事から、
F5.6~F8程度に絞って風景を撮る等の撮り方が、50年程前の
「常識」の撮影技法となっていた。
(注:それより若干以前のカメラ内蔵露出計の無い時代に
おいて、F5.6やF8における天候別推奨シャッター速度が
フィルムに記載されていたり、その値を皆が覚えていたのも
こうした撮影技法に囚われる原因の1つだ)

その常識がデジタルの時代の近年まで、ずっと「呪縛」のように
世代の異なるカメラマン達にまで語り継がれてしまい、未だに
シニア層などでは、そのような極めて古い時代の撮り方を
頑なに守っている事が多い。

勿論、現代においては、大口径化、高解像度化、ボケ質の向上、
最短撮影距離の短縮、手ブレ補正、カメラ側の高感度化や
最高シャッター速度の向上、そして写真表現面でのバリエーション
の増加等により、そのような撮影技法が強く推奨される事は
全く無い。
c0032138_20180920.jpg
たまに、こういう古い時代のレンズを使うと、表現の自由度の
無さに、イラっとくる時もある。そして、オールドレンズならば
オールドらしく、解像感や逆光耐性が低かったりの、いわゆる
「ローファイ」の特徴があれば、それはそれで現代の超高性能化
してしまい面白味の無くなった新鋭レンズ群へのアンチテーゼ
としての「個性」となりうるのだが、本レンズのように、変に
「ちゃんと写ってしまう」と、むしろ中途半端なようにも
思えてしまう。

まあでも、世代を越え時を超えた名レンズである事は確か
であろう。現代でも中古は良く流通しており、概ね7000円~
1万円程度の相場になると思うので、現代の感覚においても、
コスパが高いレンズだと思う。
歴史的価値のあるオーソドックスな標準レンズとして、
ニコン党ならずともマニア必携のレンズであろう。

----
次は今回ラストのシステム、
c0032138_20182324.jpg
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6(μ4/3機)
レンズは、SIGMA AF MACRO 50mm/f2.8(初期型)
(中古購入価格 14,000円)

ミラーレス・マニアックス第25回記事で紹介した
1990年代のAF単焦点標準マクロレンズ。

近年に至るまで発売が継続されていたSIGMA製「名」標準マクロ
の初期型である。なお、SIGMAのラインナップ再編成(2013年頃
にART,CONTENPORARY,SPORTSに製品群を振り分けた)の時点で
残念ながらカタログ落ちしてしまったようで、現在では本製品は
販売されていない。(その理由は不明、特定のガラス(硝材)が
入手できなくなったという噂もあるが真偽は不明。もしかすると
定価3万円台の安価なレンズであったので、その時代からの
SIGMAの高付加価値化戦略に合わなかったのかも知れない。
まあ、いずれにしてもSIGMAのART Lineでは近年の70mm
Macroの発売まで、マクロレンズが無かった)

c0032138_20182374.jpg
そもそもミラーレス機やスマホの台頭により一眼レフの販売数
が減少し、必然的に交換レンズの販売絶対数が減ってしまった
2010年代においては、レンズメーカーでは超音波モーターや
手ブレ補正、そして高解像度化などの「付加価値」を設けて
レンズの価格を上げないと、商売がやっていられない時代に
なっている。

よって「安価で良く写る」などのコスパが良い良心的なレンズは
ビジネスという名の下においては、適切な商品にはなりにくい。

現代は「良いモノ(製品)だから、生き残れる」という時代では
無くなってきている。まあ、これはある意味残念な話である。

まあ、あえてそういう製品を作るのであれば「お試しレンズ」
としての「エントリーレンズ」という戦略があるが、それは
カメラメーカー側での戦略であり、レンズメーカーでは
やりにくい。

すなわち、たとえばニコン機ユーザーのビギナーに、ニコンが
エントリーレンズを売れば、気にいって他のニコン製レンズも
買ってくれるかも知れないし、何本かレンズ群が揃ってくれば、
そのビギナーユーザーは、次にまたニコンの一眼を買ってくれる。

けど、シグマが安いレンズを作って、それを買ってくれたとして
次にまたシグマのレンズを買ってくれるかどうかは不明だし、
キヤノン用レンズを買ったユーザーが、次にまた新型EOSを
買ってくれたとしても、シグマは一銭も儲からない訳だ。

まあ、そうであるからシグマが製品ラインナップを大幅に見直し、
高価な大口径(F1.4級)高性能単焦点を広角から望遠まで揃えたり
他に類を見ない明るさのF1.8通しズームを販売してくる等の
戦略はわからない訳ではない。他でもあるような普通のスペック
のレンズを作って売っていたのでは、ユーザーの購買意欲を喚起
する事ができないから、高価であっても、高いお金を出して
買ってくれるユーザー層を狙っていくしか無いではないか。

しかし、各社ともに、そういった「高級ブランド化戦略」を
取ってくれば、それはいずれ、ありふれた話となり、他社との
差別化もできない。ユーザーの購買意欲は無くなり、残るのは、
高価になりすぎた製品群ばかりになり、それらはそう簡単には
買えないから、ますますユーザーの交換レンズ離れは加速する。

これではインフレーション(インフレ)でも、バブルでもなく
スタグフレーション(不況+物価高騰)となってしまう危険性
があり、何らかの外的要因が加わらない限りその解消が難しい。

具体的には、例えば、一眼レフカメラ側の劇的な変化により、
需要が急増するなどの要因だ。でも、現時点では、デジタル
一眼レフは、高画素化や高感度化、動画性能の向上が進んだ
2010年代以降でも、むしろ国内ユーザーの一眼レフ離れが
進んでいる状況だ。

現代では、ちょっとカメラをやっている人であれば、誰でも
デジタル一眼レフくらいは持っている、もう需要(市場)が
飽和している状況なのだ・・

まあ、こんな状況だからこそ、本年2018年秋からの、怒涛の
各社からのフルサイズ・ミラーレス機の発売・発表の経緯に
繋がったのだろう。(ミラーレス機用フルサイズセンサーの
解禁時期等が、メーカー間で示し合わされていたと思われる。
ただし、いずれの新機種も恐ろしく値上げしている事は、
ユーザー側では冷静にコスパを判断しなければならない)
c0032138_20182267.jpg
さて、余談が長くなったが、本レンズSIGMA AF50/2.8は、
高描写力なマクロレンズである、各バージョンによって、
中古相場は異なるが、概ね1万円代前半で購入可能であろう。

注意点だが、1990年代のSIGMA製のEF(EOS)マウントレンズ
は、2000年代以降のEOS(銀塩、デジタル)に装着すると
エラーになってしまう。なので、今回使用しているように、
EFマウントでありながら、EOS一眼ではなくミラーレス機に
EFマウント用アダプターを介して装着しなければならない。

この問題があって、本レンズは、2000年代を通じてEOSで
使用する事ができなかった。銀塩EOSであれば使えるのだが
2000年代後半からは、誰も銀塩で撮る事は無くなっていた。

この件はSIGMAの問題ではなく、情報伝達方式を故意に変更した
CANON側の問題だと思う。何だか腹が立って捨ててしまおうかと
思ったレンズだが、ミラーレス時代に無事復活できて良かった。

まあ、もう20年も昔の話ではあるが、それでも事実は事実だ。
ともかく、自社のビジネスを守ろうとして、他社互換性等を
排除しようとする思想は、現代的ではなく賛同できない。
この例に限らず「自社専用」としようとする傾向がカメラ業界
では強すぎる。マウントが共通化できない等は、その代表的な
例であろう。そうしたメーカー側の頑な姿勢が、デジタル一眼
レフの市場縮退の一因でもあるのでは?とも思えてしまう。、

カメラマニアの私ですら、2010年代以降のデジタル一眼レフを
全く新品購入していない現状は異常だ、市場全体を見たら、
かなり深刻な状況なのかもしれない。

そもそも、今時小さい本屋さん等でカメラ月刊誌を探しても
殆ど置いていないではないか!1990年代の第一次中古カメラ
ブーム時代や2000年代でのデジタル一眼の爆発的普及の時代
には、あれだけ多数の雑誌があったにもかかわらずだ・・

私自身、2000年代後半以降、カメラ雑誌を一切買っていないし
立ち読みすらしていない。そこにはユーザーの立場で役に立つ
情報が載っていなくて、メーカー側に都合が良い記事ばかりと
なり、はっきり言って面白くなくなったからだ。

これは「ネット(WEB)による情報伝達が普及して、紙媒体の
メディアが減少したからだ」という世間一般的な理屈では
説明がつかない事だ。原因としては、あくまでコンテンツ
(内容)自身の魅力や情報価値の点が問題なのであろう。
例えば露出原理の説明をするのに、いまだに「蛇口から水を
バケツに貯める」では、何の事やらさっぱり意味がわからないし、
必ず「新製品だから良い物だ」とメーカーを擁護する事ばかり
書かれていたら、旧機種ユーザーは腹が立つだけであろう。

さて、余談ばかりになっていて、ちっとも本レンズ
SIGMA AF50/2.8の話が出てこないのだが(汗)
まあ、あまり欠点も無いレンズだし、下手をすれば現代の
カメラユーザーは、このようなごく普通のスペックのレンズ
には、もはや興味を持たず、高価で「エキセントリック」な
仕様を持つレンズにしか興味を持たないかも知れない。

でも、それでは、本記事あるいは他の記事でも繰り返し
述べてきた現代のカメラ業界の状況の「罠」にハマっていて、
そういう興味の対象しか無くなってしまっているのだとすれば、
その事が、むしろ「普通では無い」状況なのだろうとも思える。
c0032138_20182332.jpg
まあ、だからこそ「ハイコスパレンズ・マニアックス」という
本シリーズ記事の連載を始めたきっかけになったとも言える。
つまり、今の時代の初級中級ユーザーが皆欲しがるような
高価な最新鋭レンズだけが良いレンズであるとは限らず、
安価な、やや古い中古レンズの中でも、コスパという概念からは
とてつもなく良いレンズがいくらでもある事を認識して貰いたい
というコンセプトのシリーズ記事である。

そういう事から、本シリーズ読者のごく一部でも、交換レンズの
魅力を理解してもらえれば、従属的に新品レンズや新品カメラの
購入も増加し、カメラ業界を盛り上げる一因になる可能性が
あるかも知れない。

私自身は、カメラ業界そのものとは何ら関係が無いのであるが、
それでもユーザーあるいはカメラマニアの立場としては、カメラ
業界が衰退してしまい、魅力のある製品が無くなってしまったり
コスパの良い中古の流通が停滞してしまうのは極めて困る状況だ。

市場が衰退していく事をただ傍観しているのみならず、自分達で
出来る事を少しでもやるべきではなかろうか・・?

まあ、本年2018年秋からの各社新鋭フルサイズ・ミラーレス
機が、カメラ市場を活性化してくれる事を願う所はあるが、
非常に高価なそれらが、冷静なユーザー層に必ずしも受け入れ
られるかどうかは現状では不明だ、もうしばらく市場の様子を
見守っていくしか無いと思っている。

---
さて、本シリーズ記事では、ここまでで計100本の高コスパな
レンズ群を紹介して来たが、今回の記事迄で暫定終了とする。
以降は、新規購入レンズ等を適宜「補足編」又は別シリーズ
記事として紹介するのと、場合により「ハイコスパ名玉編」を
続編としてシリーズ化するかも知れない。


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