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Channel: 【匠のデジタル工房・玄人専科】
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【熱い季節2020】ドラゴンボート・ペーロン大会情報(下期)

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新型コロナウィルス感染拡大防止の観点により、
全国において大規模なイベントが自粛されている中、
本年度の各地のドラゴンボートやペーロン大会は、
下期(2020年9月~11月)の期間においても、
(日本国内の)多くの大会の中止が決定されている。

予定されていた、主要な各地の大会/イベント等の
状況について、ここで記載しておこう。
(注:2020年8月31日時点の情報)
なお、掲載写真は、昨年2019年、又は最も新しい
年度に実施された各大会の模様となっている。

2020年9月

*第8回スモールドラゴンボート日本選手権大会
(通称:スモール選手権)(滋賀県・大津市)
(↑冒頭写真)
 →中止

*第11回中川運河ドラゴンボート大会(愛知県)
 →中止
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2020年10月

*静岡ドラゴンボート大会第10回ツナカップ
(静岡県・静岡市・清水港)
(↑上写真)
 →中止

 →上記に関連し、静岡県で開催が予定されていて
 日程調整中であった下記2大会も中止となっている。
・静岡ドラゴンボート大会第1回UsaMi35°Nカップ
・静岡ドラゴンボート大会第2回御前崎パワーパドル
 なぶらカップ
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*10月4日 第14回びわ湖1000m選手権大会&
 第9回ドラゴンボート・グランドシニア大会
(滋賀県・大津市・琵琶湖漕艇場)
(↑上写真)
 →1000m大会は、参加チームを滋賀県、京都府に限定し、
  かつ、漕手を10人に限定してエントリー募集中。
 →グランドシニア大会は中止。

*宇治源平龍舟祭(京都・宇治市)
 →2020年4月よりの順延開催を予定されていた大会。
(↓下写真)
 →中止
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2020年11月

*2020 Head Of The Seta(滋賀県・大津市)
(↓下写真)
 →詳細不明
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これで、本年2020年に開催予定だった、ドラゴンボート
ペーロン、各種の船競争、関連イベント等の、ほぼ
全てが、残念ながら中止となってしまった事となる。

まあ、現在のコロナの状況からすると、しばらくは
大会としての実施が困難なのは、やむを得ないと思う。

来年には、この状態が終息し、各ドラゴン系大会や
オリンピック、「ワールドマスターズゲームズ関西」
(注:ドラゴンボートの部あり、10人/20人漕ぎ、
年齢別、カテゴリー別。2021年5月に滋賀県大津市
びわこ競艇場で開催予定)等のイベントが、いずれも
何も問題無く開催できる事を願うばかりである。

ただ、思うに、このコロナ禍に対応する為に、仕事で
あれば「テレワーク」や、TV番組等でのタレントの方
等の「リモート出演(参加)」、音楽アーティストの
ライブ等の「ネット配信」、高校野球の「交流試合」、
「リモート飲み会」等の、新しいスタイルや方法論が
色々と生まれて来ている事も確かだ。

ドラゴンボート(大会)等においても、選手達が一堂に
会しての実施は現状難しいかも知れないが・・
例えば、「テレ(リモート)ドラゴン」(各地の練習場
等で、チームの艇が所定の距離を漕ぐ様子を動画で撮影し、
そのタイムで、ネット上で対戦する等)なんていうのは
出来ないだろうか?

このテレ・ドラゴン案に限らず、コロナ禍の中でも、
何かしら工夫して出来る事はあるかも知れない・・


レンズ・マニアックス(32)補足編~新旧マクロアポランター対決

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今回記事も補足編として、COSINA Voigtlander(コシナ・
フォクトレンダー。 注:独語綴り上の変母音は省略する)
の望遠マクロレンズ2本、具体的にはMACRO APO-LANTHAR
銘の新旧MF望遠マクロ、125mm/F2.5(旧版、2001年)と、
110mm/F2.5(新版、2018年)の対決記事とする。

なお、前記事「新旧STF対決」は、「アポダイゼーション光学
エレメント」を搭載した特殊レンズでの、全交換レンズ中に
おける「ツートップによる頂上決戦」であったのだが・・
今回は、アポダイゼーションでは無い、通常タイプの中望遠
マクロレンズでの頂上決戦という感じだ。
勿論、ここで「頂上」とは「凄いレンズ」という意味だ。

ただ、最初に述べておくが、この対決は新版(110mm/F2.5)
の勝利となる事は確定している。17年の時を隔てて新開発
された新型は、さすがに旧型の様々な弱点を良く解消して
いる次第だ。

ではまず、最初のマクロ・アポランター
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター)
(新品購入価格 79,000円)(以下、MAP125/2.5)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)

2001年に発売された、フルサイズ対応MF等倍望遠マクロ
レンズ。

本レンズは、過去記事で何度も何度も紹介しているが、
近年の記事では、特殊レンズ・スーパーマニアックス第11回、
「マクロアポランター・グランドスラム」特集記事および、
本シリーズ第22回「高マニアック・高描写力レンズ特集」
記事に詳しい。

また、さらに参考記事として、本シリーズ第12回記事
「使いこなしが難しいレンズ特集(後編)」においては、
本MAP125/2.5が、数百本の全所有レンズ中、ワースト・ワン
の不名誉な記録を残している。
まあでも、そのランキングは「使いこなすのが難しい」順位
であって、勿論、本レンズの描写力が悪い訳では無い。
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さて、何度も過去に紹介してきているレンズであるので
既に、たいていの長所、短所は書き尽くしている。

それらを簡単に言えば、長所は高い描写力とマニアック度。
短所は操作性が極めて悪い事と、それに関連して使いこなし
が大変な事だ。過去の紹介記事では、たいてい「修行レンズ」
と本MAP125/2.5を称し、すなわち「使う事自体が、修行の
ように困難な事である」という意味だ。

では、本記事では、また別の視点で、例えば、本レンズを
取り巻く時代や市場の状況等について述べていくとしよう。
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まず、コシナであるが、1990年代までは銀塩MF一眼レフや
交換レンズ(主にMF)のOEMメーカーであった。
OEMとは「他社から依頼を受けて、そのブランドの製品を
製造する」という意味である。
勿論、カメラやレンズの世界では常識的な生産スタイルであり、
カメラに限らず他の様々な市場分野の製品(例:イヤホン等)
でも当たり前である。

しかし、世の中の多くの商品が「OEM」である事は、世間一般
の消費者層には知られていない。何故ならば、世の中では
依然「ブランド」という概念が重要視されていて、皆が、
「誰でも知っている有名ブランドの商品」を欲しがり、だから
そうした商品は高価でも売れ、高くてもそれらを買ってしまう
消費者は、その事で所有満足感を得たり、周囲にそれを自慢し、
自身のステータスを高めたりする事が出来る。

それが世の中の仕組みであるから、実際には、それらの商品
が「必ずしも、そのメーカー等で作られていない」という、
その「大人の事情」を、世間の皆が知ってしまうと、世の中が
上手く廻らずに、まずい事になってしまう。

だから「OEM商品」である事は、メーカーや流通は、ひた隠し、
OEMメーカーは、たとえ、どんなに巨大な企業であっても、
その名を世間が知る事は殆ど無い。


例えば、軽く前述した「イヤホン」であるが、この分野には
世界的な超巨大メーカーが存在する。その生産数は、月産で
1800万本(!)以上と言われていて、世界各国の有名ブランド
イヤホンであっても、低価格帯の物は、このOEM企業で生産
されている場合も良くあると聞く。

ただし、"低価格だから品質や性能が悪い"という訳でも無い。
むしろ非常に多数のイヤホンを生産している事で安定した品質で、
コストダウンが出来る事、かつ、こなれた(バランスの良い)
設計のものが多いと思う。まあ「コスパが良い」という事だ。

事実、私がこのメーカーのイヤホンを購入して評価した後、
他の(有名)音響メーカーの低価格帯のものを買った際、その
音質傾向が、ほぼ同等であり、恐らくはOEM製品だと推測できた。
(注:私は音響分野に関しては、かつて専門職であったので、
音を聞けば、だいたいその特性等がわかる。特にイヤホンは
60本以上を所有していて、個々に音質の詳細評価をしている)

ところが、その(有名)音響メーカーの高価格帯商品を買うと
なんとOEM品よりも音質が悪い。つまり恐らくは音響メーカーの
自社で開発したものなのだろうが、設計がこなれたOEMの大量
生産品に、完全に性能で負けてしまっている状態なのだ。

でもまあ、安いイヤホンを買ったとしても高音質であるから、
そのメーカーのブランドイメージには傷が付かない。むしろ
エントリー戦略としては、ブランド信奉を高める為に有益だ。
(=「安い製品なのに、良い音がするメーカーだ」と・・)

後で、そのメーカーの高級品を買っても、音が悪い事に気づく
絶対的評価感覚を持っているユーザーはとても少ない。だから、
「高級品は、やはりちょっと違うな!」とか言って、満足して
しまうユーザーが大半という状況な訳だ。まあ「不条理」では
あるのだが、それで世の中は上手く廻っているので問題無い。

なお、他者の評価などは参考にしても無意味だ。何故ならば
その「大人の事情」があるから、イヤホンにしても、カメラや
レンズにしても、「高価なものは性能が優れた良いものだ!」
という論理を、市場や流通やユーザーの誰もが強く打ち出そう
としている、そうしないと、安い商品の方が良い事がわかって
しまったら市場倫理が崩壊してしまい、誰の得にもならない。

したがって、そんな事(OEM生産)に目くじらを立てる必要も
まるで無く、あくまでユーザー各々の「絶対的価値感覚」で
個々の商品を正当に評価しなければならない。
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さて、という訳であり、1990年代までのコシナも別に品質の
悪いカメラを作ってた訳でもなく、むしろ他の著名メーカーの
カメラですらも一部がコシナで作られていた事は、マニア層等
には、とても良く知られた事実であった。

なお、コシナ以外にも著名なOEM(カメラ/レンズ)メーカーは、
いくつかあるし、時代によっても、それは異なる場合もある。
(例:デジタル時代に入ってから、国内の大半のメーカーの
コンパクト・デジタルカメラを生産する巨大OEMメーカーが現れて、
一時は世界シェアの何割をも占める膨大な生産数があった模様だ)

で、1990年代のコシナは、世に名前が知られていない。
だから自社ブランドのカメラやレンズを稀に発売しても、
一般(初級中級)消費者層は、誰も欲しいとは思わない。
消「何? コシナ? 知らないな、三流メーカーか?」
となった。

よって、コシナ自社ブランドのレンズは、なんと定価の
7割引き(定価が5万円と書かれているが、新品販売価格は
15,000円前後等)といった、無茶な値付けで販売されていた。

まあ、そこまで「超お買い得品」と思ってもらわない限り、
本当に誰も買わなかったわけだし、そうしたとしても、
一部のブランド信奉が強い消費者層では、
消「安かろう悪かろう。安物買いの銭失い!」とか言って、
それらコシナ製品を手に取る事も無かった。

そして、買った(初級)ユーザーもまた、レンズを評価する
経験も術(すべ)も持っていない。
ユ「安かったから買ったが、やはりたいした事無いなあ・・」
等と、値段から来る印象や「思い込み」で物事を語っていた。

まあ、本ブログでは、何本かのコシナ銘のレンズを過去記事で
紹介しているが、どれも「コスパが良い」という評価だ。
(後日、特殊レンズ超マニアックス記事で、コシナ銘レンズを
まとめて紹介予定だ)

で、一部の中上級マニア層では、こうしたコシナ銘レンズを
たまたま購入し「思ったより良く写る」等の好評価を下した。
極めて妥当な評価であろう。ただまあ「とても良い」という
評価が出来ない事も事実である。何故ならば、定価の7割引き
等で販売する前提であれば、設計も製造も、コストを掛ける
訳にはいかない、その実売価格で売っても儲けが出る程に、
ローコストな仕様にせざるを得なかったからだ。

・・まあ、ここまでは従前の記事でも何度か説明してきた事
だが、今回はさらに当時の状況を追加分析してみよう。
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まず、当時のコシナのOEMカメラは、わかっている物は全て
銀塩MF機であり、「AF機があった」という記録や情報は無い。

レンズだが、これも殆どがMFレンズである。AFのレンズは稀に
存在していて、所有もしているが、「Licenced by Minolta」
等と書かれていて、AFレンズメーカーからの技術供与を受けて
いた模様だ。

それもそうであろう、当時のコシナの生産ラインは、恐らくは
MFレンズに特化したもので、そうであればレンズ部品や鏡筒を
組み立てるだけで済み、大量に高品質のレンズが作れる訳だ。
だが、そこにAFレンズが入って来ると、電子部品とかモーター
とか、そういう異質の部材が製造現場に入ってくるし、製造の
組み立て体制も製品検査体制も、それらAFレンズには対応して
いなかったかも知れない訳だ。

さて、でもまあ、1990年代と言っても、依然MFカメラやMF
レンズは流通していたし、その時代にコシナ製OEM機が新発売
された実例もある(例:OLYMPUS OM2000、1997年、
銀塩一眼レフ・クラッシックス第22回記事参照)

ずっと銀塩時代が続いていたならば、コシナのOEM事業は
縮小傾向ながらも安泰だったかも知れない。
だが、この時代(1990年代後半)、市場にはヒタヒタと
「デジタル化」の荒波の予兆が始まっていた。

既に1995年には、CASIOよりヒット作デジタルカメラの
QV-10が発売されていて、OLYMPUS,FUJIFILM,MINOLTA等
も、デジタル(コンパクト)機の販売へ追従しようとしていた。


もしデジタル時代となると、コシナのOEMビジネスは危機的
状況に陥ってしまう。もう、どのメーカーからも、銀塩MF
一眼レフや、MFレンズの製造の注文など入って来なくなる
だろうからだ。・・であれば、コシナは自社の力でなんとか
カメラやレンズを開発・生産して、それを沢山売って儲け、
なんとかそれでビジネスを継続しなくてはならない。

その為に必要なものは何か・・? まあ生産設備も既にあるし、
設計もお手の物だ。そして技術力も品質も高い、なにせ他の
有名メーカーに製品を納めても、何も文句を言われる事が
無かった訳だ。(先のイヤホンの例では、むしろ音響メーカー
自社で開発した高級イヤホンが、大量生産のOEMイヤホンに
対して性能(音質)的に劣ってしまっていた位だ)

・・そう、新たに必要なものは、「ブランド力」つまり、
「知名度」だけであった訳だ。
だから、コシナは1990年代に「ブランド」を強く欲した。

世界(特に、旧来から光学機器の”メッカ”であるドイツ等)
を見渡してみると、世界最古の光学機器メーカーである
「フォクトレンダー」(1756年創業、モーツァルトの生誕年)
の名前が宙に浮いて余っていた。

・・まあ、とは言え、日本製カメラの世界的な台頭により、
1970年代には既に、CONTAXも、ローライも、ライカも
そうした独国ビッグネームが、カメラ市場から撤退または
日本メーカーと協業しながら、かろうじて事業継続して
いた状態だ。フォクトレンダーも同様に、もうカメラを
作っていなかった訳だし、他のビッグブランドでも、その
「名前」自体を他企業に売って(=ライセンス供与して)
生きながらえていたに過ぎない。

で、その事実自体も、国内では中上級マニア以外には殆ど
知られておらず、1990年代の中古カメラブームの際にも
初級層や金満家では「ドイツ製のカメラやレンズは凄い!」
等の、(”いったい何十年前の話だ?”、”それ、いったい
何処で作った製品なの?”といったように・・)
あまり正確では無い認識しか広まってなかった訳だ。


さて、で、コシナ社は無事「フォクトレンダー」のブランド
を手に入れる事に成功した。1999年(以前?)の事である。

コシナは、そこから畳み掛けるように、カメラでは、BESSA
(ベッサ)シリーズのレンジファインダー機や、一眼レフを。
交換レンズでは、レンジファインダー機用マウント及び、
(MF)一眼レフ用マウントのレンズ群を、その後の数年間で、
数え切れない程の多数、怒涛のように新発売したのだ。

恐らくは、とっくにそれらの設計は完了していたのであろう、
さもなければ、数年間で数え切れない程の新製品は作れない、
「後は名前だけ」の状態であった、との推察は容易だ。

新規の高級ブランド「フォクトレンダー」は、一般層にも
そこそこのインパクトを与えた。だが、当然ながらブランド
の使用料が新製品に上乗せされた為、定価もそれまでの
コシナ製品の倍以上も高価になり、かつ7割引き等の無茶な
値引きも出来る筈が無い。実質的には、それまで1万円台
で新品購入できていたのが、5万円~10万円も出さないと
フォクトレンダー銘のレンズ(カメラも)は、買えなく
なってしまった。

だから、上級マニア層等で、旧来のコシナ時代における
その「コスパの良さ」に注目していたユーザー層の一部は
「名前が変わっただけなのに、そんな高いレンズは買えない」
と、敬遠するケースも多かったかも知れない。

まあでも、2000年代初頭の最初期のフォクトレンダー製の
一眼レフ用レンズは、「カラーヘリアー75mm/f2.5SL」
「アポランター90mm/f3.5SL」「ウルトロン40mm/f2SL」
「アポランター180mm/f4SL」等では、定価も5万円前後と
さほど、”高価すぎる”という状況では無かったし、
かつ描写性能においても、極めて高いものが殆どであり、
値段が高くなっても、その分、パフォーマンス(性能)が
向上していた為、「コスパが悪くなった」とは思わなかった。
(上記の4本は、いずれ他記事でまとめて紹介する予定)

そして、2000年代前半の一般層は、新規デジタルカメラ、
銀塩高級コンパクト、中古銀塩カメラ等のカメラ本体のみに
注目し、レンズはあまりマニアックで魅力的なものは新発売
されていない。あえて挙げれば、PENTAX-FA Limitedや、
NIKON Ai45/2.8P、SIGMA広角F1.8三兄弟・・ 程度であり、
まあフォクトレンダーを含めて、それらのマニア向けレンズ
を全て買ってしまう事は、無理な話では無かった訳だ。
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なお、コシナ時代のレンズの性能が「そこそこ」であったのに
何故急にフォクトレンダー時代での描写力が高くなったのか?
と言えば、ここの理由は極めて簡単で明白だ。

つまり、コシナ時代は、その販売価格から、製造コストが
制限されていた訳であり、安いものを作らざるを得なかった
状況だ。まあ、コシナは各社のカメラやレンズを、ずっと
OEM生産していた訳だから、そのメーカーから「XX円位で
作ってくれ」と言われたら、そのコストに応じた性能や
仕様を設定する事くらいは、容易に対応出来ていた訳だ。

フォクトレンダーのブランドを取得して、安売りする必要が
無くなったのであれば、コシナはその柔軟かつ高い設計力を
遺憾なく発揮し、高性能レンズを堂々と高価に作る事が出来る
ようになった訳だ。

ちなみに、その技術力の高さは、かのカール・ツァイス社にも
高く評価され、後年2006年からはコシナはカール・ツァイス
ブランドのレンズも生産。現在においては、ツァイス社自身の
Web等に掲載(販売)されている同社の高級レンズ群の殆どは
コシナ製である。つまり、コシナはついに世界のカール・
ツァイスのOEMメーカーとなった訳なのだが・・ まあ、とは
言うものの、ツァイスも、もう50年も昔の1970年頃からは
自社で写真用レンズを製造していないと思われる。
(注:旧来のツァイス系工場の救済の為か?または、全てが
日本製であるとブランドイメージが低下する為か?、一部の
京セラ・CONTAXブランドレンズを1980年代頃までドイツで
製造していた事はある。ただ、両者の使用部品は同じであろう)

現代において、60万円以上もする高額高性能レンズを作って
売れる状況は、「ツァイス」のブランド力とコシナの技術力の
組み合わせでしか有り得ないという訳だ。 
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さて、やっと本MAP125/2.5の話となるが、こんな状況の中で
発売されており、当時のSLレンズ(一眼レフ用)としては
高額レンズである。つまり、他のカラーヘリアー75/2.5等が
記憶に頼れば、5万円程度の定価であったのに、本レンズは
およそ2倍の95,000円程度だったと覚えている。
この値段だと、マニア層であっても、ちょっと買う人も、
少ないのではなかろうか? 

しかし、他の初期フォクトレンダーSLレンズが、どれも
MFマウント(Ai,FD,PK,OM,M42等)で発売されていたのが、
本MAP125/2.5では、α、EF(EOS)のAF一眼レフ用マウント
でも発売されていた。これはまあ、高級(高額)レンズ
であるから、当時、チラホラと販売が始まっていた
「デジタル一眼レフ」での使用も意識し、ターゲットと
する消費者範囲を広めたとも思われる(まあ、お金のある
消費者層に狙いを定めた、という事であろう)

基本的には、MFである事も含めてマニア層向けのレンズだが、
でも結局、このMAP125/2.5は、販売数が少ないレア物レンズと
なってしまった。まあ「高すぎる」という市場認識であろう。

しかし、後年2000年代後半では、神戸の中古カメラ専門店で、
本レンズの海外逆輸入新品を定価のおよそ半額の48,000円
程度で販売していた位なので、買おうとさえ思えば、さほど
負担なく買える価格帯ではあったと思う。

つまりまあ、販売数が少ないので、誰からも評判を聞く事が
出来ず、雑誌等で特集される事も少なかったので、まあ一般
消費者層や初級マニア層等では、「誰かが、”良い”と言った
から買う」という受動的な購買行動に頼る為、そうした情報が
一切なければ、買うような事も無かったのだろう。
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で、後年の2010年代後半、このレンズはレア物(希少品)
という事で、残念ながら「投機対象」となってしまった。
つまり、「高くても買いたい」あるいは「もっと高く売れる
かも知れない」という消費者層が居る為に、本レンズを
高額取引の対象として、15万円とか20万円とかの相場で
売買する、という意味である。

まあ、本記事では、一切、本MAP125/2.5の性能評価等は
行わない事とする。たいてい過去記事に長所も短所も書いて
あるし、冒頭に書いた通り「使いこなしワースト・ワンの
修行レンズ」である故、実用価値はあまり高く無いレンズだ。
単に希少だから、という理由で投機対象となってしまう事には
全く賛同できない。レンズはあくまで写真を撮る為の実用品だ。

モノの本質を見極める「絶対的価値感覚」を、多くの
消費者層に身につけてもらいたい、と切望する次第である。

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さて、では新型マクロアポランターの話に進もう。
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

旧型から17年の歳月を隔て、2018年末に発売された新型
マクロアポランターである。当然、MFでフルサイズ対応だ。
当初2018年夏に発売予定であったのだが、遅れに遅れた発売と
なった。このレンズは発売後すぐに新品購入する予定(後述の
理由あり)だったので、やきもきする状況であった。

なお、前年2017年にコシナ史上2本目のマクロアポランター
65mm/F2が発売されているが(本シリーズ第10回記事等参照)
その中望遠マクロの紹介は本記事では割愛する。
本記事では、あくまで「望遠のマクロアポランター」に
特化しよう。
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依然、MFレンズであるが、どうせ近接撮影主体で使用する
レンズだから、AFが搭載されていない事はむしろメリットだ。
現代的な仕様のAFレンズは、近接域では非常に使い難い。
(例:超音波モーター搭載のマクロは実用的とは言い難い)
それと、コシナ社にも、それほどAFレンズ開発のノウハウが
蓄積されている訳でも無い。であれば、無理にAF化する
必然性は無く、MFである事がむしろ潔い。

操作性等、旧型MAP125/2.5からの弱点は良く解消されている。
描写力も高く、勿論年月を隔て、諸収差は大変良く補正されて
いて解像力等もかなり高目だ。又、コントラスト特性も極めて
良好で、ここは特筆すべてきであろう。
ただ、このあたりの高性能の理由は、本レンズは完全な
コンピューター光学設計になっているような気がする。


その確証は無いが・・ 個人的な感覚での話をするならば、
コンピューター設計は、「メリット(評価)関数」を高める
ように計算機が、どんどんと複雑なレンズ構成を提示してしまう。
結果、性能が良いレンズは出来るのだが、”大きく重く高価”な
「三重苦」レンズとなってしまう次第だ。
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例えば、本MAP110/2.5は12群14枚という超複雑なレンズ
構成であり、異常低(部分)分散ガラスを、何と8枚も使用
している。手計算の設計では、ここまで複雑なレンズは
設計の手間が掛りすぎてしまうから無理であろう。

ただ、非球面レンズは使用していないので、僅かなりとも
設計者の主張(コンセプト)はコンピューター設計上でも
加わっていると思える。・・なんと言うか、もし完全に計算
機まかせの設計となると、単に諸収差を補正する事のみが
主体となってしまい、無機質な(=特徴や主張の無い)
雰囲気の強いレンズが出来上がってしまう事があるのだ。
(他社で、そういう無機質な新鋭高性能レンズは良くある)

コンピューターもまた、あくまで「道具」であるから、
使用者(設計者)の意思が介在され、その用法の差があって
結果としての製品に個性が出て来る事が好ましい。
つまり「設計もアートである」からだ。それが無く、単に
計算機や設計ソフトに振り回されている状況だと良く無い。

まあ、この事は、カメラを使う人でも同様であり、最新の
高価な超絶性能機を購入して、フルオートのままで使い
「ただシャッターを押すだけ、カメラに使われているだけ」
の状態になってしまったら、全く好ましく無い訳だ。
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さて、それでも、新型MAP110/2.5は、やや大型化されて
しまった。サイズ感だが、フィルター径は新旧とも同じ
φ58mm、重量は旧型690g。新型は771gと、やや重い。

しかし、新型はフランジバック長の極めて短いSONY E
マウント(フルサイズ対応FEマウント)専用であるから、
将来の一眼レフ版への転用も意識して、バックフォーカス
を稼ぐ長目の鏡筒となっている可能性も高く、それによる
若干の重量増があるかも知れない。
(例:SIGMA ART Lineレンズ等では、一眼レフ用と比べて
SONY Eマウント版等は、後部にマウントアダプターを装着
したような形状となり、重量も増えている)

また、この仕様からか?本MAP110/25は、鏡筒中央部が
太く、前後がすぼまっているファット(太った)な
デザインとなっている。これは少々好みでは無いのだが
結果として、ピントリングは幅広の大型で廻しやすくなり、
回転角も適正となった為(=最大持ち替え回数8~9回)
旧型MAP125/2.5よりも操作性は雲泥の差で向上した。
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繰り返すが、性能(描写力)的には何も問題は無い。
フルサイズ機で使うよりも、周辺がカットされるAPS-C機
で使う方が、さらに画質的に有利であるし、仮にピクセル
ピッチが狭いAPS-C型の高画素機が出てきても、レンズの
解像性能とのバランスは乱れる事は無いであろう。
望遠マクロを、より望遠として特徴を強調する点においても
APS-C機での使用は望ましく、今回は、その検証の意味でも
APS-C機のSONY α6000を母艦として使用している。

勿論、描写力的な課題は何もなく、重量バランスは、やや
トップヘビーとはなるが、丁度重心位置に太いピントリング
が来るので、MFシステムとして使い易い。
ピントの歩留まりの問題も、SONY機の優秀なピーキング機能
でアシスト可能ではあるが、最短撮影距離付近では、極薄の
被写界深度となり、ピーキングすらも出ない場合があるし、
勿論撮影技法的にも、非常に困難な状況となる。

逆説的だが、等倍マクロ仕様ながら、あまり極端な近接撮影
は避けておくのも賢明かも知れない。(そういう意味では、
フルサイズ機での使用もありだろう)
あと、遠距離撮影では、僅かながら解像感が低下する
印象を持つが、重欠点では無い。
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弱点は、やや大きく重い事とコスパの悪さ、すなわちこれは
「三重苦」ではあるが、幸いにして操作性やハンドリングは
「修行」という程の覚悟はまるでいらない程度で済んでいる。

コストの高さは、レンズ市場縮退による高付加価値型商品で
あるので、若干やむを得ない。まあ、旧型の約2倍の新品
購入価格は、新型のパフォーマンスの高さを鑑みて、容認
せざるを得ないが、それでもコスパ評価は相当に低くなる。
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しばらくは生産が続くと思うが、コシナ製品は生産ロット数
も少なく、知らない間に売り切れて販売終了となってしまう
事も大変多い。 だから、初級マニア層や好事家等が、手に
入らなくなった頃に大騒ぎをして、それを受けて投機層等が、
相場高騰を狙った買占めに走ってしまう訳だ。

なお、もし不自然なまでの好評価等がある場合は、それは
相場高騰を狙った情報操作であるケースも残念ながらあり得る
話なので、消費者層は正しい価値感覚と判断力を身につける
必要がある。ここは、とても重要な事だ。

本ブログの毎回のレンズ紹介記事で、必ず購入価格を記載
しているのは、高く買ったり安く買ったりした事を自慢する
意味ではなく、「適正な相場感覚」を読者層に意識して
もらいたいからである。基本的には新品・中古相場は時間
とともに下がっていくものであるから、後年にこれらの
レンズを購入する場合、本ブログに書いてある価格以上で
購入してしまう事は、基本的には好ましく無い状態なのだ。

で、こうしたフォクトレンダー製レンズを必要だと思った
ならば、なんとしても販売期間中に入手しなければならない。
だから私も、本レンズも発売後速やかに新品購入している訳だ。

しかし、その結果として満足する場合も、不満足の場合も
あるだろうが、それもまた経験であるし、容認リスクである
とも言える。
すなわち、旧型のMAP110/2.5を買って失敗したとも思っても
新型でそれを帳消しに出来れば良い訳だ。
20年間以上使えて合計20万円、月に千円以下の「使用料」
だと思えば、両マクロアポランターを保有するのも悪く無い。
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さて、最後になるが、新旧マクロアポランターの評価点を
私個人の評価データベースから引用して公開しておく。

例によって、この点数だけが一人歩きする事は好ましく無い。
評価点は評価者によりけりで依存するし、あくまで評価とは
ユーザー毎に自分自身で行う事が大原則だ。

もしそれが出来ず、「他人の評価を参考にするしか無い」と
言うならば、そこからいくら時間をかけても、お金を使っても
それが自力で出来るように、と目標設定をして、それに向けて
精進して頑張っていくしか無いでは無いか・・
それをやらずしては「何の為の趣味なんだ?」となってしまう。
趣味を続ける上で「向上心」や「探究心」は必須の要素だ。

では評価点だ。

旧製品:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
【描写表現力】★★★★☆
【マニアック】★★★★★
【コスパ  】★★☆(新品79,000円)
【エンジョイ】★☆
【必要度  】★★★★
・評価平均値:3.5
(★=1点、☆=0.5点)

新製品:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
【描写表現力】★★★★★
【マニアック】★★★★★
【コスパ  】★☆ (新品138,000円)
【エンジョイ】★★★☆
【必要度  】★★★★☆
・評価平均値:3.9
(★=1点、☆=0.5点)

一目瞭然の評価結果だ。両者、高性能でマニアック度も高く、
その点は全所有レンズの中でも十数本しか無いトップクラスの
高評価で、その点に不満は無く、所有するに値するレンズだ。

弱点だが、旧型の場合は、操作性の悪さ等を主因とする
「修行レンズ」とも言えるまでの「エンジョイ度」の低さだ。
新型の場合は、「何故こんなに高価になった?」と思える程の
コスパの悪さである。
まあ、それらの欠点に目をつぶるとしても、旧型ではあまり
楽しめない事は確かであり、新型の勝利は明白だ。

そして、両者とも評価平均値が4点に満たないので、
いわゆる「名玉」にはノミネートし難い状態である。
本ブログで「名玉」と呼ばれる条件は、上記の評価項目を
全て高得点で乗り切り、全くと言っていい程、弱点が無い
状況にならないと無理である。それは容易な事ではなく、
評価平均点が4点を超えるレンズは、さほど多くない。

また、初級中級者や初級マニア層等が指向する「有名で
人気がある高額なレンズ」等は、上記の評価手法では
全く点数が伸びず、「名玉」にノミネートできる可能性が
皆無である事も理解できるであろう。まあだから、私は
そうした「コスパが悪い」と容易に予想できるレンズは、
事前の「書類審査」の段階で「落選」となってしまって
一切購入していない訳だ。

まあでも、そこもユーザーの好き好きであろう、つまり
この評価手法に疑問があるならば、自身の機材購入コンセプト
に合わせて、新たにユーザー個々に評価項目を設定すれば良い。

例えば、「所有満足感」とか「業務用途適正」など、色々と
考えられると思う(ただ、この評価項目でも、それらは若干
ながら意識してはいる。そして、マクロアポランターでの
「業務用途」は、まず有り得ない)
ここもまあ「評価は個人毎にそれぞれ」「評価は自分で行う」
という真理に直結する事だと思う。

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さて、今回の記事は、このあたり迄とする。
次回記事は、また通常の新規レンズ紹介を予定している。

特殊レンズ・スーパーマニアックス(39)高描写力85mm レンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。

今回の記事では「高描写力85mmレンズ」を4本紹介しよう。
これは、読んで字のごとし、"描写力が高い、85mmの
焦点距離を持つ単焦点中望遠レンズの事"である。
(なお、今回は全てフルサイズ対応AFレンズである)

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まず、最初のシステム
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レンズは、MINOLTA AF 85mm/f1.4 G (D) Limited
(新品購入価格 145,000円)(以下、AF85/1.4Limited)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)

2002年に限定700本で販売された「幻のレンズ」とも
言える希少レンズである。本ブログでは、滅多に紹介
しないので、従前の記事と内容が若干被るが、本レンズ
の出自についても簡単に述べておく。
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本レンズは1980年代にミノルタが AF用(つまりα用)
の85mm/F1.4レンズを新規に企画開発する際、
社内コンペにより競われた2本のレンズの内の1本である。

結局採用されたのは、本レンズではなく1980年代後半~
2000年代前半を通じて販売された、MINOLTA版α用
AF85/1.4系列のレンズとなったのだが、本レンズの
高い描写力はメーカー側としても捨てがたく、かなり
後の時代の2002年になって、限定品として少数生産
されたものである。


まあ、ミノルタがコニカと経営統合する、等の状況で、
「記念碑」的な意味合いで発売されたレンズだと思われる。
発売はずいぶん遅れ、発表から半年以上も待たされた。
(今更本レンズを出す意義について揉めていたのかも?
でもまあ、コニカと合併したら、こうした「ミノルタの
我儘」のようなレンズは作れない。売るとしたら、今、
コニカとの合併前年の、このタイミングしか無い訳だ)

・・といういきさつを聞くと「どんなに凄いレンズか?」
と思ってしまうであろう、事実、私もその経緯に魅かれ、
思わず予約してしまったのだ。
発売時の定価は、恐ろしく高価な185,000円(+税)
であり、その金額は予約後に聞かされたが、もう今更
「高いので買いません」とは言えない(汗)

旧来使っていたノーマルタイプのAF85/1.4(初期型)
を下取りしての購入となった。

ところが、本AF85/1.4Limitedを実際に使ってみると、
どうも「たいした事が無い」(汗)
そりゃあ、確かに悪い描写力のレンズでは無いのだが、
なんか、想像していたような「物凄い描写力」といった
要素が全く無い。

AFは遅いし、ピントは滅多に合わない、ボケ質破綻も
出るし、期待した「開放での描写性能」も、どうも
なんとも言えない。そもそも、開放では被写界深度が
浅すぎて、殆どピントが合わないのだ。
そして、大きく重く、ハンドリング性能が落ちる上に
高価すぎて、気軽に撮影に持ち出す気にもなれない。

同年2002年に発売された、同等の高価な価格帯の
CONTAX N Planar 85/1.4(後述)と後年に比べても、
本AF85/1.4Limitedの優位点は、あまり感じられない。
それどころか、この頃に生産中止となった、PENTAX
FA★85/1.4の方が、むしろ良く写ると思った事もある。

「大きく、重く、高価」という三重苦レンズに加えて
描写力も、さほどたいした事が無いのならば、コスパが
悪すぎて、もはや殆ど価値の無いレンズとなった。

・・まあ、だから「社内コンペ」に負けたのであろう。
これだったら、ノーマル版のAF85/1.4を手放すのでは
なかった(汗)
そちらの写りの方が、むしろ気にいっていたのだ(泣)
で、後年にノーマル版を買いなおそうと思ったのだが・・

(コニカ)ミノルタのカメラ事業撤退(2005年)により、
AF85/1.4は業者や投機層の買占めにあって、中古市場
から消えてしまった。品薄感を演出した後、しばらく
して出てきた中古は、とんでも無い高値(軽く10数万円
以上)となって、とても買える金額ではなかった(怒)


ちなみに、ついその先年(2004年頃)には、知人の女性に
ノーマル版AF85/1.4(旧)を薦め、29,800円と
安価な中古価格で購入できていたのに・・(泣)

Limited版もダメ、ノーマル版もダメ、これがトラウマ
となって、私は、その後10年間以上も、AF仕様の
85mmレンズを1本も買わなくなってしまった(汗)
それまでは85mmmレンズは大好きで、何本も何本も購入
していたにも係わらずだ。
まあトラウマと言うよりも、なんだか、市場での85mm
の「神話」に踊らされている事に気がついたからだ。
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さて、本AF85/1.4Limitedの描写力が不満な件だが、
まあ、それもそうだろう。そのミノルタの社内コンペが
行われたのは1980年代である。本レンズの発売時点で
既に20年近くが経過していた「オールドレンズ」で
あったのだ。

まあ確かに気合の入った設計であり「開放での描写力は
採用されたノーマル版を上回る」とのメーカー談だが、
そういう点は、レンズ性能全体の、ごくごく一部の話だ。

「伝説」と言われたのは、その時代(1980年代)での話で
あり、2000年代の視点からは、なんだか古臭い性能だ。
(注:古臭いとは、例えばCONTAX Planar 85/1.4(1975)
の時代の設計思想にも通じる物があり、特定の条件でのみ
高描写力となり、汎用的な描写安定性が得られ無い事だ)

非球面レンズや異常低分散ガラス等の新技術を使って
いるかどうかも良くわからない。おそらく古い時代の
設計なので、そういう新鋭技術は使っていないであろう。

数年前の話だが、撮影先で出会った「レンズ沼」にハマリ
かけている初級マニアの方が、SONY/MINOLTA系のレンズ
を多数集めていて、この「Limitedレンズが欲しい」と
言っていた。私は、
匠「それ持っています。限定700本でしたかね。
  しかし、やめておくのが賢明です、プレミアム相場で
  高価すぎるし、写りも開放以外たいした事ないし、
  そもそも開放では、まずピントが合いません。
  FEマウントだったら、今度出るSIGMAのArt85/1.4
  (注:2020年のDG DN型では無く、DG型の話だ)
  を買ったほうが、ずっと実用的でリーズナブルです」
と、アドバイスしておいた。

「希少なレンズ」「高額なレンズ」「伝説的なレンズ」
といった、本レンズの出自から、皆、これを「物凄く
良く写る」と勘違いしてしまって欲しくなるのであろう。

で、もし、これを苦労して探して、無理をして高値で入手
したら、もう絶対的に「良く写るレンズ」と錯覚してしまう。
いや、そう思わないと、やっていられない訳だ・・

あるいは、「たいした事ない」と気がついたとしても、
せめて、持っていない人に自慢する為に「凄いレンズだ」
と言って、購入した事を正当化するしか無いではないか・・

まあ、つくづく「不幸なレンズ」である。
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さて、ここまで、さんざん「たいした事が無い」とは
言って来たものの、私の近年でのポリシーにおいて
「レンズ性能の欠点を回避できないのは、利用者側の
 責任であって、レンズのせいにしてはならない」がある。

では、本AF85/1.4Limitedを、どう使うべきか?

まずシステムであるが、ピント精度の弱点を回避する
為に、高精度(かつ強度設定可能)なピーキング機能を
持つシステムが望ましい。基本はミラーレス機になると
思うが、SONY αフタケタ機の一眼レフでも、ミラーレス
機と同様な構造と機能であるので、こちらでも良い。

フルサイズ機かAPS-C機かは、どちらでも良いと思う。
これをポートレート用レンズとして考えれば、人物撮影に
適した間合いを得る為に、フルサイズ機で85mm相当で
使うのが、一見正しそうなのだが・・
そもそも、本レンズは人物撮影には使えないのだ。

本レンズを購入後、元を取るためにも、友人知人の
女性達から綺麗どころを選んで(笑)本レンズで何度か
撮影させてもらった。当時はまだ半分は銀塩時代であった
ので、MINOLTA α-9等の高精度なAF機で使用したのだが、
写真の歩留まり(成功率)は極めて低く、数%程度だ。
つまりフィルム1本あたり、1枚か2枚しか、まともに
撮れなかったのだ。これは意地を張って、開放でしか
撮らなかったのも原因であろうが、それにしても
使い難い。

それから少し時代が過ぎて、着物系の業務撮影が多い
時代があったのだが、この使いにくさなので、
本レンズは、そうした業務用途には全く使えず、
もっぱらPENTAX FA77/1.8や、NIKON AiAF85/1.8
等の、歩留まりが良く、安定して高描写力が得られる
レンズを使うようになった。

・・さて、現代において本レンズを使ってみると、
購入当時のような悪印象は少ない。まあ、現代のデジタル
機では、精密なピント合わせも可能だし、ボケ質破綻回避
の技法も使える。そして銀塩時代と最も違う点は、
撮影枚数を、いくらでも増やせる事だ。
たとえ本レンズの成功率が3%だったとしても、何千枚も
撮れば、そこそこまとまった数の成功写真が得られる。

だが、人物撮影には、やはり使わない方が賢明であろう。
描写力的に撮れる、という意味と、良い表情や仕草の
タイミングで、それが撮れる、というのは異なる訳だ。
そして、業務人物撮影では、何千枚という写真を撮る
時間は許されていない、結局「安全なレンズ」しか
使え無い訳だ。

なんとも使い道が少ない本レンズではあるが、まあ
それでも「描写力が悪い」という状況では無い。
が、期待しすぎると、たいした事は無いと思えるし、
現代であれば、本レンズ以上の描写力を持つ85mmは、
いくらでもあり、むしろ、それらの新鋭85mmを購入した
方が、ずっと高い総合性能を得られる。

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では、次の85mmレンズ
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レンズは、TAMRON SP 85mm/f1.8 Di VC USD
(Model F016)
(中古購入価格 70,000円)(以下、SP85/1.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2016年に発売された、高描写力単焦点AF中望遠レンズ。
手ブレ補正内蔵は85mmレンズとしては珍しい(初か?)

本シリーズでの「TAMRON SP編」で紹介済みなので、
あまり重複しないように、簡単に述べよう。
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いきなり余談であるが、85mmmレンズの評価というと、
アマチュアから専門の評価者に至るまで、判で押したように、
美人職業モデルを雇ってのポートレート撮影ばかりだ。

だが、近年、私はその評価スタンスを好まなくなって
きている。その理由はいくつもあるが、具体的には、

*モデルに目が行き、レンズ自体の性能が良くわからない。
*モデルの魅力だけに頼った写真となり、撮り手の
 意思や意図が殆ど見えてこない(作画バリエーションを
 工夫できる可能性が見えてこず、参考にならない)
*悪く言えば、「モデルを撮って誤魔化す」事が
 できてしまう。(アート系分野等で、作品提出に困った
 時に人物写真を撮って、その場を凌ぐ事は、定番の手法)
*作画上の工夫ができない、人物の魅力を引き出すのが
 主目的となり、テクニカル的要素よりも、それが優先される。
*そもそも、何故とポートレートと言うと85mmレンズばかりに
 なってしまうのか?50mmでも100mmでも、別に良いじゃあ
 ないか。それに、カメラのセンサーサイズもまちまちだ。
*(モデルを雇うのに)お金を払って写真を撮るのは
 どうなんだろう? 写真を撮るならば、その事でお金を
 貰えるようになろうとするのが、目指すべき本筋では?
*85mmレンズだって、人物以外の被写体を撮る事も
 いくらでも有りうるだろう。単に、沢山ある焦点距離の
 単焦点レンズの内の1本にすぎない。

という感じである。
まあつまり、そういう(モデルを雇う)評価方法が、
個人的には嫌いになって来ている状況だ。


・・よって、本記事においては、85mmレンズの紹介で
ありながら、人物撮影はメインとはせず、あった場合は
ステージ・イベント系の人物撮影だ。
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なお、職業的評価者であっても、同様な感覚を持っている
のか?近年の新鋭85mmレンズの評価では職業モデル等
の雇用撮影を避け、より広範囲での一般的な被写体を
撮って作例としている事も増えてきている。


私の場合、旧来の銀塩時代には85mmレンズは、美人の
知人友人の撮影(写真を撮って喜んでもらう)がメイン
であった。デジタル時代になって着物系冠婚葬祭の撮影が
増えたが、そこで85mm、特にF1.4級レンズは成功率が
低く、実用上問題であった。まあ、職業モデル等の場合は

ピクリとも動かずにポーズを決めれるのであろうが、
一般女性(まれに男性や子供)を被写体とする場合、
1cmも動かずにじっとしていられる確率はゼロに等しい。

あまりに被写界深度が浅い85/1.4級は、それを使う時点
で不利なので、そうした目的には、85/1.8級(または
類似の焦点距離と仕様)の使用が増えてきていた。
F1.4を使わなければ、どの開放F値でも大差ないし、
開放F1.8級の方が、むしろ描写力が優れる場合も多い。

そして、ステージ系の人物撮影の場合は、ステージ下
からの撮影距離として、人物全体像の場合、だいたい
85~120mm程度、人物のアップとして200mm前後の
フルサイズ換算焦点距離の大口径(F1.4~F2級)単焦点
があれば良い事もわかってきた。

ちなみに後者の目的では70~200mm/F2.8級の望遠ズーム
で代替する事もできそうだが、それは大きく重く高価な
三重苦レンズである事と、ボケ質が好みに合わない場合が
とても多く、さらに、誰でも使いたがるありふれた高性能
レンズであるが故に、他者との「差別化」ができない。

私が様々なWEB、雑誌、ポスター等での広告・広報写真を
見ていても、そのボケ量、ボケ質、ピント面解像力等から
「あ、これはF2.8級望遠ズームで撮ったな」という事が
だいたいわかってしまう。「結局、皆が同じレンズだよな」
と、マニア的視点からは、なんだか面白味や個性が皆無に
感じられる訳だ。まあ業務撮影では、そういうレンズは
安全に撮れる利点が大きいのであろうが、それにしても
ワンパターンだ。(これも個人的には好まない機材だ)

さて、という事で、個人的な感覚において、85mmレンズ
の用途やそれに望む事は、銀塩時代から現代にかけて大きく

変わってきている。現代において、私が考える85mm
レンズの主目的は「明るい中望遠レンズ」である。
(近年では、100~105mmのF1.4級レンズも何本か
存在するが、それらは、大きく重く高価な「三重苦」だ)

市販の85mm単焦点レンズは、その大半がフルサイズ対応だ、
そうで無いものは、数える程しか無いか、皆無であろう。
であれば、母艦をフルサイズ機とAPS-C機、まれにμ4/3
機と、色々と選ぶ事で、その被写体の種別や撮影状況に
合致した「明るい中望遠」として使う事ができる。

その画角は、概ね85mm,127mm,170mmの選択ができ、
さらにデジタル拡大機能などで換算焦点距離を伸ばせ、
それでいてF1.4~F2級の明るさ(暗い場所でも撮り易い、
または、多大な背景ボケ量を得られる)となり、
しかも85mm級レンズは、各社のレンズラインナップ
を代表する、高描写力を誇るレンズばかりである。

また、センサーサイズを縮小(クロップ)する事で、
周辺収差が消え、元々良い85mmの描写性能の、中央部の
「美味しい部位」だけを使え、ほとんど完璧と言える
描写性能を得られる為、フルサイズ機でばかり使う意味も
あまり無い。

逆の言い方をすれば「85mmを人物撮影にしか使わないのは
勿体無く、かつ、それではワンパターンになってしまう」
という事である。
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本SP85/1.8についてだが、極めて描写力に優れた
新鋭レンズである。被写体汎用性がとても高く、
様々なシーンで今後長期間に渡って使用可能であろう。

直接の購入動機は、超名玉の「PENTAX FA77/1.8」の
代替である。その「ナナナナ」は、ありとあらゆる
実用(業務)撮影のシーンで長期間、極めて重宝したが、
「仕様老朽化現象」によって、そろそろ他の新鋭レンズと
比べての、古さと製品寿命を感じていた訳だ。

本SP85/1.8は、その超名玉FA77/1.8の代替に十分に
なりうる高性能レンズだ。

なお、初級中級層が勘違いしやすいポイントをいくつか
あげておく。
・開放F1.8だからF1.4版より描写力が落ちるという
 事はなく、むしろ逆だ。(F1.4級は無理をした設計だ)
・手ブレ補正内蔵は、元々明るいレンズであり、かつ
 絞りを開ける用途上では、あまり意味の無い機能である。
・超音波モーター内蔵だが、これは、そこそこ効果的だ。
 大口径単焦点はどれも、重たいレンズ群を動かすので
 なかなか厳しい状況があるが、良く対応している。
・「焦点移動」を気にする評価を見かけたが、本レンズを
 絞って使用する事は、実用シーンではありえないので
 気にする必要は全く無い。(本レンズの設計思想上でも、
 この理由で、その補正を重視しなかったのだろうと思う。
 つまり、それを直すと他の何かの性能が犠牲になるのだ)
・ニコン版で「電磁絞り対応」である事はデメリットがあり、
 近年のニコン機以外の他機では、現状、使用できない。
(もし、上記の「焦点移動」が問題になる状況においては、
 本来ならば、ミラーレス機の実絞り測光で回避したいが
 電磁絞りでは他社機で使用できないので、不満である)
・レンズ自体は、やや大きく重い。しかし他の新鋭85/1.4
級に比べると、これでも遥かに小さくて軽いのだ。
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そして、本レンズは、市場では不人気商品だ。
新品割引や中古も良く見かける。恐らくは「F1.8だから
物足りない、どうせならF1.4が欲しい」と、ビギナー層
は思ってしまうのであろう。現代における縮退したカメラ・
レンズ市場では、お金を使ってくれる主力の消費者層は、
機材の価値感覚が良くわかっていないビギナー層が、
ほぼ全てなのだ。

まあでも、本レンズは良くわかっている人だけが買えば良い。
もし不人気が続いて、もっと中古相場が安価になったら、
異マウントで、もう1本「ナンピン買い」をしたい位だ。
(=さらに安価に買い足して平均購入単価を下げる措置)

なお、この時代からのTAMRON製SP単焦点、および後年の
M1:2シリーズで、全てフィルター径がφ67mmで統一されて
いて、減光・保護・PLフィルター等のアタッチメントの
使用利便性(汎用性)が高い事は、特筆すべき利点である。

----
では、3本目のシステム
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レンズは、京セラ CONTAX N Planar T* 85mm/f1.4
(新品購入価格 115,000円)(以下、NP85/1.4)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)

2002年発売のCONATX Nマウント専用AF中望遠レンズ。
こちらは、本シリーズ第19回の「国産カール・ツァイス
編」で紹介したレンズである。
しかし、一応「高描写力85mm編」なので、高性能な
本レンズを無視する訳にはいかない。
_c0032138_17425028.jpg
だが、本来であれば、本NP85/1.4のような、古くて、
しかもレアなレンズを取り上げるのは好ましく無い。
ここに登場するべきは、新鋭のコシナ・ツァイス製の
Milvus 85/1.4 またはOtus 85/1.4が妥当であろう。

・・けど、それらは高価すぎる。定価が20数万円と
50数万円であるから、一般的な感覚では購入する事は
困難だ。趣味撮影はともかく、業務用途ではなおさら
であり、ピントの合い難い一眼レフ用MFの85/1.4を
高値で買ったら、実際の業務撮影には使えず、収支が
確実に赤字になる。
(赤字になっていたら、仕事としては意味が無い)

よって、それらのツァイスは、お金がある富裕層向けの
「ブルジョアレンズ」なので、「コスパ」を主眼とする
私のポリシーには合わないため、当面は購入する事は
無いであろう。
しかし、時代が過ぎて、仮に10万円程度にまで
それらの新鋭ツァイスの相場が下がれば、他の85mm級
レンズと比較しても割高感は減ってくる為、そうなれば
コスパの観点からも、購入に値するかも知れない。

まあ、持ってもいないレンズの事を色々と書くのは
本ブログのポリシーに反するので、このあたりまで
にしておく。

でも実際、同系統シリーズのMilvus50/1.4は既に
購入してしまっているのだが、これは中古相場が
たまたま安価なものを見かけたからである。
ライバルレンズであり同等の高描写力を持つSIGMA
Art50/1.4と大差無い価格帯であれば、悪い選択では無い。
_c0032138_17425165.jpg
さて、本NP85/1.4であるが、現代においてはレア品で、
かつ本レンズをちゃんと使用できるシステムを構築する
事も大変困難である。これをAFで動かす事すら難しい。
(ここの詳細は前述の「国産ツァイス編」に詳しい)

よって、本記事で、さらに追加で、あれこれと
本NP85/1.4について述べる事は避けておこう。
入手困難なレンズの事を色々と書いても意味が無いし
下手をすれば、それで欲しくなった人が出てきて
さらに相場が高騰したり、あるいは、レアなレンズを
持っている事を自慢している、と買えなかった人から
妬まれてしまうかも知れない。
_c0032138_17425511.jpg
世間一般では、マニアとは「レアな物を高値で購入する人」
と思われている場合が殆どだが、それは誤解であろう。

私が思うところの、「真のマニア道」とは
「モノの価値をちゃんと見分ける事ができる」を目指す
事が本筋である。よって、希少価値により高額になった
だけの、コスパが悪いレンズや他商品を購入する事は、
「モノの真の価値がわからない」事と等価となり、
「マニア道」に外れて、むしろ、とても格好悪いのだ。

機材や商品の「値段」に騙されてはいけない、それは
多くの場合、実際の価値には比例しない要素なのだ。

----
では、今回ラストのシステム
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レンズは、SIGMA 85mm/f1.4 DG HSM | ART
(中古購入価格 94,000円)(以下、A85/1.4)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

2016年に発売された、新鋭大口径単焦点AF中望遠レンズ。

本シリーズでは「SIGMA ART LINE編」で紹介済みであり
重複する為に、紹介内容を変えていこう。
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基本的には「高描写力」を狙った SIGMA ART LINE
ラインナップの中核レンズであり、描写力的な不満は
まず無いであろう。定価は16万円と微妙に高価では
あるが、中古相場は10万円を切り、同クラスの高性能
レンズとしては、あまり割高感を感じない。
(コスパ感覚としては、高描写力85mmにおいては
購入価格10万円までが、価値観からの適正相場だ)

EOS(EF)版(またはSIGMA SA版)を購入する事で、
SIGMA純正の「マウントコンバーターMC-11」を使用
すれば、SONY FEマウントボディでも利用可能であり
実際にそうしているマニア層や上級層も多い。
私はMC-11を所有していないが、その使い方をしている
マニアからは、「AFが遅い」という不満の声もあった。

このニーズにより、本A85/1.4は、2018年には
SONY FEマウント版も発売される事となった。
価格は一眼レフ版と同じであったが、ただでさえ
非常に大きく重いレンズであるのに、MC-11相当の
マウント変換部がレンズ後部に追加され、さらに大きく
重くなっている(FE版では、重量1,245g)

なお、「AFが遅い」とか言う不満やニーズは、個人的
にはあまり理解しがたく、これらのART LINEのような
F1.4級大口径レンズは、基本的にはAFに頼り切る事は
出来ず、適宜MFを併用しないと実用的には無理だ。

趣味撮影では、むしろMFを積極的に使用する事で、
ピント精度を上げる事が肝要であり、業務撮影においては
まあ、これら新鋭85mm(TAMRON SP85/1.8、
SIGMA A85/1.4)レンズであれば、他の、旧来の趣味性の
強い85mmと比べて、なんとか業務上の実用範囲のレベル
だとは思うが・・

それでも歩留まり(成功率)が低いだろうから、安全対策
としては、できるだけ使わないか、あるいは他のレンズでの
撮影と併用するか、または高度な撮影技法を駆使するならば
「高速連写+マニュアルフォーカス・ブラケット」により
ピント合致範囲(確率、歩留まり)を広げておく。

よって「AFの速度が遅い」と言っているのは、カメラや
レンズの性能上の課題を、システムや技法で回避できない
初級中級層での話なので、その意見を気にする必要は無い。
スキルがあれば、そんな問題は、なんとでもなる訳だ。
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なお、近年では高価な(高価すぎる)機材を持っている
人たちは、どう見ても経験やスキルが不足していると
見てとれるビギナー層ばかりで、不釣合いで不自然だ。

私は、そういう人達を見かけると「何で、この機材を
使っているのですか?」と聞く事が良くある。
色々と話をすると、やはり思った通り「最新の高性能な
カメラやレンズを使わないと上手く撮れないので不安だ」
という意見が、ほぼ100%返ってくる。


たとえば・・
匠「手ブレ補正が無くても、この明るさだったら、
  シャッター速度を見れば、ブレないでしょう?」
初「ムリです、たいてい手ブレします」

匠「超音波モーターがなくても、MFを使用するとか?」
初「ムリです、マニュアルで撮ると必ずピンボケします」

匠「それと、せめて1世代前のカメラを中古で買えば、
  半額以下とか、とても安く買えるのに・・」
初「ムリです、機械に弱いし、メンテナンスもできません」

匠「ううむ・・ で、そうして綺麗に撮れた写真は
  どうされるのですか? コンテストに出すとか?」
初「いいえ、コンテストなんてまだまだです、
  結局、何も使いませんね(汗)」

大半がこんなやりとりだ、非常に情けない状態では
あるが、残念ながら、これが世の中の実態だ。 
近年ではカメラ市場が縮退した状況であるから、実用的に
写真を撮る人たちは、むしろ最新の(高価な)機材には
手を出さない。1つ前の時代の機材でも十分撮れるからだ。

で、結局、最新の「高付加価値型」機材を買っているのは
ビギナー層ばかりという状況になってしまっている。
まあ、この状況は数年前から気になっていたのだが、最近
では非常に顕著だ(特に、2015年頃より、カメラやレンズ
が高付加価値化して値上した結果、そうしたアンバランス
さが悪化している)

ただ、カメラ市場全体から見れば、ビギナー層がこうして
高価な新鋭機材を買ってくれないかぎり、事業を維持する
事はできないし、個人的視点からしても、少し古い世代の
機材には誰も見向きせず、中古相場が急速に下がって
買い易くなるので、好ましい話だ。
しかし、総合的には、なんとも残念な話ではある・・

さて、余談ばかりで、本A85/1.4の話がちっとも出来ない
のだが、既に他記事で紹介済み、あるいはまた別の
記事でも紹介予定なので、長所短所等は、重複する話と
なってしまう為に、大幅に割愛する。

そもそも、この時代(2010年代)の新鋭高付加価値型
レンズは、一般的視点からは、性能に不満な要素は全く
無い事であろう、もうそこから先の微妙な描写傾向の
差異は、個々のユーザー毎の好みの世界である。

だからまあ、個人的に色々思う所があって、85mmレンズ
の購入をしばらく避けていたのだが、ここに来て、
本SIGMA A85/1.4とTAMRON SP85/1.8という
両高性能新鋭レンズを「購入に値する」と踏んだ訳だ。

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ただ、一応弱点を述べておくが、「大きく重く高価な」
三重苦レンズであるという事だ。特に「大きく重く」が
課題となる。
(追記:2020年発売の新型Art 85mm/F1.4 DG DN
は、ミラーレス機専用ながら、約500gもの重量減を
実現していて、この「三重苦」の課題を緩和している)

加えて、手ブレ補正機能を内蔵していない。
私個人的には、その仕様は「むしろ硬派で好感が持てる」
と思っている。大口径レンズを、絞って使うはずが無いし
現代の高感度カメラであれば、たいていの撮影シーンで
必要十分なシャッター速度を得る事が出来るからだ。

まあ、前述の初級層が「手ブレ補正が無いと不安だ」
と言っている現状からは、本レンズをSONYミラーレス機
のα7系のⅡ型機以降やα9系で用いれば、本体内蔵の
手ブレ補正が使えるので、その点でも不安が解消できる
のかも知れないが・・ それにしても、機材側の性能に
頼りすぎるているのではなかろうか?

それこそ「撮った写真の用途が何も無い」とか言って
いるならば、手ブレ補正なしで、勿論、手持ち撮影で、
シャッター速度を限界まで落としてみて、いったいどこまで
下げたら手ブレするのか?を理解し、それが把握できたら
次は「シャッター速度を落としても手ブレしないように
するにはどうしたら良いか?」という視点で、構え方を
主に、様々な練習や訓練を行い、スキルアップするべき
ではなかろうか? 「手ブレが怖いから三脚を使う」や
「手ブレ補正機能が無いと不安でならない」とかでは、
あまりに受動的で消極的なスタンスだ。

まあ各種レビュー記事等で、
「SIGMAとTAMRONの新鋭85mmを比較して、
 TAMRON版は手ブレ補正が入っているので、
 初心者にもオススメ!」

などの、カタログスペックだけを見た、単純すぎる
評価が世に広まらない事を祈るばかりだ、それでは
事の本質の理解や解決には、全く至っていない。


どちらのレンズを使おうが、手ブレ限界速度を意識すれば
問題ないし、これらのレンズを近代のNIKON機、CANON機
で使う上では、「AUTO-ISOの低速限界」の設定を、
先の「手ブレ限界速度の把握テスト」で得られた利用者
毎の限界値以上に設定しておけば、よほど変な撮り方を
しない限りは手ブレは起こらない訳だ。
この設定操作で、ほぼ手ブレ補正機能の代用となる。
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いずれにしても、ビギナー層においては最新の機材を
買う前に、まずスキルアップが必須だ。
そして、そのスキルアップの練習の為に、難しい機材を
買うならば、反対する理由は何も無い。
むしろ、本A85/1.4等は、使いこなす為の練習には最適
のレンズなのかも知れない。それが本A85/1.4や他の
SIGMA ART LINEが「硬派なレンズ」である所以だ。

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さて、今回の記事「高描写力85mmレンズ特集」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。

「ビオトープ」~京都御苑「トンボ池」自然観察会

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「新・関西の楽しみ」シリーズ第100回記事。

2020年8月上旬に、京都市上京区にある京都御苑
(京都御所)内の「ビオトープ」(=野生の生物等を
生息させる為に半人工的に整備された環境)である
「トンボ池」にて行われた自然観察会の模様より。
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本ブログでは数年前にも、本イベントを紹介している。

毎年、春(5月頃)と初夏(7月頃)に、「自然観察会」
(参加自由、無料)が行われているのだが、今年は
コロナ禍により、春の観察会は中止、そして夏の
観察会も、少々タイミングが遅れての開催となった。

ただし、コロナ感染拡大防止の観点から、例年のように
自由に参加できる状況ではなく、まず、完全予約制で
少数限定、観察時間は1時間限定、1日2回のみの観察会、
そして入場時には、勿論マスク着用、アルコール消毒、
および健康状態の問診等もあって、まあ万全の体制だ。
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こちらが「トンボ池」の全景。
各辺15m~20m位の、ほぼ四角形の人工池であり、
水深は数十cm程度、水はポンプで循環している。

数年前の紹介記事以降も、何度かこの観察会には来て
いるのだが、「ビオトープ」と言っても、その環境は
人間の手で、いつも一定に保たれているという訳では
なく、ある程度は、自然のままに変化していく。
それに伴い、「生態系」も変化していく状況であり、
毎回毎回、同じ生き物達が見られる訳では無い。

また、季節や気候の僅かな差も、動植物の生態に影響が
大きい、例えば、このビオトープで見られる「半夏生」
という植物も、今回はタイミングが合わず、盛りを
過ぎてしまっていた。

(参考:ハンゲショウ(半夏生)とは、元々は生活暦の
1つである。「二十四節気」(春分、立秋、立冬等)は
著名であるが、「半夏生」は二十四節気には含まれず、
「八十八夜」や「土用」と同等の区分で、「雑節」と
呼ばれており、だいたい「夏至」の後、「小暑」の頃の
7月上旬のタイミングだ。
 
この「半夏生」の時期に茂る草が「ハンゲショウ」であり、
葉の一部が花弁化して白くなる事から、”半分お化粧を
する”という観点で「半化粧」と書かれる事もある。

また、奈良県等では、昔から田植えの終わった「半夏生」
の頃に、小麦、もち米、きなこ等を材料として加工した
「半夏生餅」を食べる風習がある。これは、現代では
「さなぶり餅/半夏生餅」として、奈良県橿原市等では
土産品として市販されていて、何度か購入した事がある。
世間では”名物、美味いもの無し”と、良く言われるが、
この「半夏生餅」は、なかなかの美味で、好みだ)

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それと、気候も生態系への影響が強く、たとえば今回の
時期は、雨が少なく、「キノコ」の類は、殆ど見かける
事は無かった。ちなみに「茸」の成長は早く、自然界の
茸の場合でも、雨が降って湿度が高まると、たった数日で
数多くが繁殖する様子が見られる。

まあいずれにしても、同じ場所に、だいたい同じ季節に
訪れても、その時の僅かな季節や環境条件の差により、
動植物の生態系は大きく変化している、という事であり、
その事もまた「自然観察」の面白さに繋がる。 

一般層における「桜」や「紫陽花」「向日葵」「紅葉」
といった、ざっくりとした季節区分だけの感覚では、
見えて来ない細かい変化も多々ある、という訳だ。
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こちらは「モリアオガエル」。 都会では、もう殆ど
カエルの類を見る事は無いが、この「トンボ池」では
オタマジャクシから孵った「モリアオガエル」が
この時期には、沢山見られる。

ただし、「モリアオガエル」を探すのは、意外にも
かなり難しい。葉の裏側だとか、草木が生い茂った水際
のあたりに居て、良く見えないとか、場合により、少し
離れた木の上等にも居る。

つまり、なかなか何処に居るかはわからない状態であり、
普通であれば、たとえ目の前に生息していても、殆ど
気づかず、これを見る機会は、まず無い。

まあ、森林に居るから「森青蛙(モリアオガエル)」
という名前が付いている訳だ。生き物の名前の意味や
生態を知っていれば、様々な生物を見つけ易くなる。
だから、生物の研究の専門家の人達は、一般人よりも
様々な生き物を見つけたり、それを観察する機会が
増える訳だ。

で、近年の本ブログでの、レンズ等の紹介記事での
掲載写真は、昆虫等の自然観察写真が少しづつ増えて
来ているが、その理由は、近年、私もこの自然分野の
勉強をしていて、だんだんと知識や経験がついてきて
おり、様々な生き物を、見つけやすい状況になりつつ
あるからだ。

ちなみに、効率的に勉強をするには、一旦自分なりの
文章としてまとめてみたり、人に伝えるつもりで
話し言葉としてまとめてみる事が、有効な勉強法だと
思っている。その時点で、何かわからない点があれば、
文章化や言語化が出来ない訳であり、それを調べて
論理の体系を整える事に、重要な意味がある。
そうやって自分の考えで、その項目を纏めてしまえば
理解も出来、忘れにくくもなる。(本ブログの記事の
大半は、そうした自分の為の勉強内容となっている)

それをしないで、他者のまとめた、教科書、参考書、
資料、Web等を、ただ見たり読んでいるだけでは、
まず後にその記憶が残る事は無く、勉強にはなり難い、
と思っている。


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それから、現代の都会の子供達等では、カエル、トンボ
その他の昆虫や小動物全般において「怖い、気持ち悪い」
等の拒絶反応を起こす子供等の比率が極めて高い模様だ。
恐らくは、「自然や生き物に触れる・見る経験」が
とても少ないから、そうなってしまうのであろう。
まあ要は「知らないから、怖い」という状態だと思う。

親御さん達が、もっと子供達等に自然に触れる経験を
積ませて上げても良いのでは?とも思うのだが・・、
その親御さん自体、都会育ち等で、生き物に拒否反応を
起こしてしまう様相もあり、つまり、もう何十年も
昔から、そういう状況になってしまっているのだろう。

また、近年では、学校等でも「昆虫採集」を奨励しない
方針もある模様だ。だが、「採集」はともかく、「観察」
ですら、機会が減っているだろうから、ますます子供達等
は、自然の生き物に触れるチャンスには恵まれなくなる。
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こちらは「オオシオカラトンボ」だと思う。
一般的に良く見る「シオカラトンボ」とは、少しだけ
差異があり、1つの見分け方としては「オオシオカラ」
の方が、羽根(翅)の根元の黒い部分が多い事だ。
(まあ、ざっくり「シオカラトンボが居るな」と
思ったとしても、より細かく見れば、種類が色々と
混在している、という事である)

生物学においては、生き物の種類を見極める作業を
「同定(どうてい)する」と呼ぶ。
生き物の、その種類が何であるか?を調べる事は、
勿論、様々な研究・調査において、非常に重要な
事である。

で、研究者の撮る写真は、その生物を「同定する」
為に、他の種族と差異がある部分だけを、重点的に
撮るようなアングルを探す事が殆どだ。
だが、いわゆる「カメラマン」は、そうでは無い。

例えば、道路のアスファルト上や、排水溝の金網に
トンボが止まっていたとしよう。

「写真表現」という感覚からは、道路の真ん中に
トンボが居ても、あまり撮影する気にはなれない。
それでは「絵にならない」からであり、トンボを
撮るならば、「自然」「季節」「風情」「郷愁」・・
あたりの、いずれかの「表現」を作画意図として
構図や背景に込めたい、と思う事が中上級カメラマン
ならば当然の考え方であろう。

ところが、研究者(のカメラマン)だと、こんな
場合でも嬉々として、道路の真ん中に居るトンボを
例えば真上からや真横から撮影しようとするのだ。

何故ならば、そういうアングルの写真が、そのトンボ
の種別を同定するのに適正だからであって、それが
記録や研究における正確性を増す事になる。
(何月何日、どこそこに、オオシオカラ1頭/匹、等)
まあつまり、こちらは「写真」と言うよりも、むしろ
「記録映像」な訳だ。

両者は、どちらが良いとか悪いとかいう問題では無い。
両者における「写真を撮る」という目的が、まるで
異なるという状態だ。

まあだから、カメラやレンズの話をする時に、
仮に「どんなカメラ(レンズ)が良いのですか?」
と、聞かれたとしても、その質問者の撮影の目的
や用途(1つだけではなく、複数あるだろう)が
わからないかぎり、その質問には答えようが無い訳だ。

で、カメラマニアであれば、非常に多数の撮影機材を
所有している場合もあるだろう。まあ私も同様だ、

だが、マニアの中には「収集」つまり「コレクション」
を主目的としている場合も極めて多い。
写真を撮る事ではなく、カメラやレンズという機械
(ハードウェア)そのものが好きな訳だ。

コレクター志向を否定するつもりは無いのだが、私の
場合では、多数の所有機材は、ある撮影目的があった
として、その為に最適な機材(カメラ+レンズでの
「システム」)を選ぶ事が、最大の楽しみとなっている。
(つまり全所有機材を実用化する手法を模索している)

そして、今回の観察会でも、この目的に、ほぼBESTと
思える機材(システム)を、セレクトして来ている。
具体的には、以下のシステムだ。
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レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM
カメラは、NIKON D500(APS-C機)

このシステムが何故今回の撮影用途に最適なのか?
という点を詳しく説明すると、軽く、1記事分位の
文章量になってしまう。相当に端折って簡単に説明
しておこう。

なお、言うまでも無いが、本ブログでは三脚撮影を
推奨しておらず、必ず手持ち撮影を前提とする。
ましてや、こういう自然環境に影響が強い撮影状況
では、三脚を用いる事自体が、マナー違反となる。
(現代では「三脚族」は、絶滅危惧種となっているが
ほんの10年位前では、シニア層を中心に、マナーや
モラルの無い「三脚族」が、いたるところに居た)

<レンズ側の特徴>
1)「望遠マクロ」である事(その機種は多くは無い)
2)最短撮影距離(38cm)や撮影距離が適正である事
3)手持ち撮影での重量限界を超えていない(1150g)
4)手ブレ補正、超音波モーター内蔵
5)高解像力、高描写力である事
6)ボケ質破綻が出難い事

<カメラ側の特徴>
1)APS-C機であり、画角や撮影倍率を稼げる事
2)高速連写機であり、秒10コマで200枚迄連写可能
3)AFが高性能(精度が高い)である事
4)1.3倍クロップモードを持ち、それを使う際、
 換算画角300mm、最大撮影倍率2倍が得られる。
5)レンズ側の高解像力とあいまって、さらに最大
 2倍程度までのトリミング編集が可能。
 つまり、目の前40cm程度から、5m程度までの
 距離範囲内にある小さい昆虫等は、全て被写体と
 して見なせる事となる。
6)最高ISO感度が164万まで使え、やや暗所での近接
 撮影時のシャッター速度低下での手ブレリスクを
 ISO感度の増加で、いくらでもカバーできる。
7)AUTO-ISOが最大感度まで追従し、低速限界の手動 
 設定ができるから、手ブレのみならず、被写体ブレ
(例:蝶のはばたき)等にも任意に対応が可能だ。
8)システムとしての総重量が2kgを下回り、
 ハンドリング性能が良い他、手持ち撮影でも
 負担や疲労が少ない。

ただし微細な弱点もある。
A)レンズ側手ブレ補正機構が、動作調整の為、
 AF開始時等に一瞬「構図ブレ」を起こす。
B)システムが高価すぎる(発売時の定価レベルでは、
 税込み40万円越え) 入手時の課題のみならず、
 撮影時の取り扱いにも注意しなければならない。
(ラフに扱えない)
C)やはり、やや重い。炎天下の丸一日の撮影とも
 なれば、体力や集中力を切らせてしまうだろう。

なお、「最適のシステムを使う」という観点に
おいては、本システム(組み合わせ)は、この
「トンボ池」(での短時間撮影)以外においては、
あまり使わない、という事である。

まあカメラはカメラで、レンズはレンズで、別の
撮影目的に使う事はあるが、それはそれでまた別件だ。

注意点は、こういう「用途特定システム」において
気をつけるのは、その長所(特徴)ではなく、むしろ
「弱点」の方である。弱点が、実際の用途上での
課題になる場合は、そういうシステムは適正では無い、
ということだ。今回の場合、晴天時であれば、前記の
弱点(手ブレ補正機構の振る舞い、価格の高さ等)は、
さほど問題にはならない状況(環境、条件)なのだ。

さて、本記事はカメラやレンズの紹介記事では
無いので、このあたりの、機材性能や評価の話は、
ほどほどにしておこう。

ただし、たとえ、自然観察分野での「映像記録」が
目的であったとしても、映像を撮るための機材には、
皆、もっと関心を持っても良いのではなかろうか?
とも思う。カメラやレンズの性能や仕様は、その
撮影目的に応じて、必ず適正なものが存在するだろう
からだ。
逆に言えば、目的に合わない(適切では無い)撮影機材
を用いたら、「映像記録」そのものも、極めてやり難く
なってしまうと思う。
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こちらの「モリアオガエル」には、まだ尻尾がある、
つまりオタマジャクシから変わったばかりであり、
まだ幼生と言う事だろう。(大きくなると、きっと
森の方に行く。水際に来るのは繁殖期がメインだ)
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こちらは「ギンヤンマ」、産卵中である。
産卵をしているから、当然メスなのだが、ギンヤンマ
のオスメスの区別は、腹が水色なのがオス、黄緑色が
メスだ。


(注:関西圏では、かなり良く見かける種だが、
先日、TV番組を見ていたら、東京で、「ギンヤンマが
出たぞ!」と生物学の研究者の先生が興奮していた。
首都圏では、そんなに見る事が珍しいのだろうか?
ちなみに、長野県と高知県では準絶滅危惧(NT)に
指定されている模様だ)

トンボは水面や、水面にある草のあたりで産卵する
事が多い。

ただ、気になるのは近くにオスが見当たらない事だ、
数日前に家の近くの川で見たギンヤンマの場合では
「連結産卵」、つまり交尾したままの産卵であった。

多分、環境が異なるのだろう。
例えば周囲に、同種の他のオスが多数居る環境の
場合は、多くのトンボのオスは、ペアのメスの産卵時に、
他のオスが近づいて来て、自身の「種」を残す事を妨害
する(=メスを横取りする)事を嫌い、空中で警戒行動
(=飛翔し、他のオスが来たら、追い払う)をするか、
又は、連結したままの産卵となるケースが多い。

まあつまり、この「トンボ池」の環境では、他に
ライバルとなるオスのギンヤンマが殆ど居ないから、
オスも安心して、メスだけの単独産卵を見逃しているの
かも知れない。(実際にはどうだか・・? 勿論不明)

なお、「オスはメスに食べられてしまったのでは?」
という想像もあるかも知れない。だけど、その行為は
「トンボの世界では、まずあり得ない」との事だ・・

そういう事をするのは、例えば「カマキリ」の一種で
しかも、メスがオスをいつも食べてしまう訳では無く、
「20%前後の割合だ」という研究報告もある模様だ。

「トンボは共食いをしない」が、正解な様子だが、
ただし、異なる種属の場合は、トンボがトンボを
食べる(捕食する)ケースはある。(詳細後述)

もう1つ、この時期(8月)は、どうやらトンボに
とっては繁殖期な模様だ。この「トンボ池」以外の
普通の地域でも、トンボの連結(交尾)や産卵を
良く見かける。
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さて、こちらは「モノサシトンボ」だと思う。
「イトトンボ」と良く似ているが、こちらの方が
やや大型、そして色味もずいぶん違う(モノサシは
黒や金(黄)色が多いが、イトトンボは、青、緑、
黄、赤等だ・・)ただし、種類が多く、見た目の
差も少ない為、それらを「同定」するのは難しい。

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余談だが、「モノサシトンボ」(科/属)とは、勿論、
見た目が「物差し」(スケール)のようだからだ。

・・で、カメラを構えてファインダーを覗く時、
「被写体のサイズを測る”物差し”が表示されたら
 便利なのに・・」と、こうした自然観察撮影では
良く思う事がある。

例えば、被写体のサイズが5cmだ、とわかるとか・・
様々な生き物の中には、同定が難しく、単に個体の
大きさだけで種別が異なってしまう場合もある。

で、顕微鏡等では、そういう(スケール表示)機能が
ついている機種は珍しくないが、カメラ(写真機)
では皆無であろう。

まあ、顕微鏡での検体は、普通は平面(的)だが、
写真(カメラ)の被写体は、立体(三次元)的なので
「物差し」が表示されても、あまり意味は無いので
あろう(例えば、奥行きがあったり、斜めになったり
している被写体の場合、サイズが測りにくいからだ)

だが、AF(デジタル)カメラであれば、レンズの焦点
距離、被写体距離(始点、終点)、センサーサイズ、
記録画素数等の情報があれば、これは、立体被写体で
あっても、原理上、そのサイズを測れると思う。

ここで面倒なのは、被写体距離の始点(先端)と
終点(後端)の2箇所を独立して計測(AF合焦)する、
という、カメラ上での操作性(操作系)だ。

実は、これに似た操作性は、銀塩時代のCANON EOS
(概ね、1987年~2000年代初頭)での機能、
「DEP(深度優先AE)モード」として存在していた。

これは、例えば前後に距離が異なる2人の人物等で、
各々でAFを2回合わせると、その両者にピントが合う
(=被写界深度内に収まる)絞り値を(シャッター
速度も)自動的に設定してくれる機能であった。
だが、AFを2回合わせるのは、いかにも面倒な操作だし、
1人を測った後に、その人が動いてしまっても台無しだ。

そこで、デジタル時代のEOS(概ね2000年代~)の
初級中級機では、A-DEP(自動被写界深度優先AE)に
改善された。この機能では複数のAF測距点において
合焦した複数の被写体群(=人物の集合写真等)で、
全てが被写界深度内に収まるように、絞り値等が
設定されるようになった。(ただし、この機能は、
EOS上級機、あるいは2010年代頃からの初級中級機
では搭載されていない。意味がわかりにくい、又は
被写界深度の概念を理解していれば不要、あるいは
全自動撮影モードに含まれる、という事だと思う)

で、話を戻して、カメラ上では、多少面倒な操作を
するならば、「モノサシトンボ」の長さを測る
「物差し」の表示機能は実現できそうだ。
ただ、やはり操作系が煩雑になるのは否めない。

では、ソフト(アプリ)上ではどうだろうか?
この場合、PC上で動くソフトをプログラミングして
(別途「プログラミング・シリーズ」記事群参照)
撮影後の画像からEXIFデータ等を参照して、被写体
のサイズが測れないだろうか?

だが、これは少々実現困難であろう。被写体距離は
EXIFには記録されていないケースが大半だし、
あったとしても1つだけだろうし、被写体の何処の
部分でAF測距が行われたか?も、まず不明だ。
ましてやMFレンズであれば、撮影距離は完全に不明だ。

では、撮影距離を手動入力するのはどうか?これならば
可能性はある。ついでにレンズの焦点距離も、画素数も
センサーサイズも、全て手動入力にしてしまえば良い。

だけど・・ 撮影後に、特にマクロ撮影をして撮った
写真において、例えば「モノサシトンボ」の先端部の
撮影距離が45.3cm、後端部の撮影距離は47.2cm、
などと(写真を見ただけで)正確にわかるだろうか?
・・まあ、まず、そこまではわからない。

結局、撮影後では無理な話か? でも、限られた条件
(先端後端の距離差なし、距離はアバウトでも良い)
等のケースでは「モノサシトンボを測る物差し」(笑)
のソフトウェアは実現(開発)できそうな気もする。
いずれ、暇な時に、このソフトを作ってみよう。
(追記:記事執筆後に開発済み、後日紹介予定)

さて、余談が長くなった。自然観察の話に戻る。
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シオカラトンボの連結(交尾)
やはり、この時期は繁殖期な模様で、あちこちで
トンボのカップルが成立している。

人間が居ても気にしない模様だ。このビオトープは
普段は一般人が立ち入り出来ない(非公開)な為、
生物の、人間に対する警戒心も薄いのかも知れない。

家の近所で見かける「ハグロトンボ」(カワトンボ科)
とかは、ちょっと人間が近寄っただけで、さっさと
逃げてしまう。
_c0032138_17352411.jpg
交尾の後、連結を解除して、オスメスが別々に
飛び去った。

手前に写っている黄色がメスのシオカラトンボで
奥に飛んでいる水色が、オスのシオカラトンボだ。

この直後に普通、メスは産卵するので
他のオスの妨害等からの安全性を確保するならば、
連結産卵を行なう筈だが、これは前述のように
ここが安全な環境であるからであろう。

少し、この後もカメラを追ってみよう。
(なお、飛翔するトンボ等を撮影する事は、非常に
高難易度だが、その為にも、高性能な専用撮影機材
を準備して、その難易度を低める工夫をしている)
_c0032138_17352831.jpg
シオカラトンボのメスが産卵場所を探している。

都会の川等では、浮かぶ藻や草に卵を産み付ける場合
もある。その際、草等が流れていったらどうなるの
だろうか?とも思うが、そこは良くわからない。
産んだ卵の、ごく一部しか孵らないのかも知れない。

多分、トンボは水流等も見えるのであろう。
このビオトープ(トンボ池)は、一応、水は循環して
いるのだが、その変化はゆっくりであり、ほとんど
止まっているようにも見えるだろうから、直接水面に
産卵してしまうケースもありうる。
_c0032138_17353115.jpg
水面に直接、産卵しているようにも見えるが、
一応、草や葉を意識しているのかもしれない。

この状況で、普通はオスは空中で警戒飛行をし、
他のオスが近寄って来ると、それを追い払う。
_c0032138_17353432.jpg
ここでも、一応、オスは警戒飛行中だ。

ただ、あまり他の(同種の)オスは、ここには居ない
ので、これ以上の「事件」は起こりそうにない。
(もっと同種のトンボが多い場所だと、いたる
ところで「三角関係」が起こるので、見ていても
なかなか興味深い・・)

メスは、数回~十数回、産卵を繰り返して終了、
恐らく、その後は、ペアは解消となるのであろう。
_c0032138_17354222.jpg
さて、「トンボ」の「同定」が難しいだけではなく、
「蝶」の「同定」も、それなりに難しい。

上は、「ナガサキアゲハ」か?「クロアゲハ」か?
の判別が困難だ。専門家であれば、羽根にある模様で
区別できる模様だが、捕まえないで、ある程度の
距離から写真を撮っている状態では、その手法では
難しい。一応区別がつきそうなのは、黒い蝶において
羽根の後ろの突起が尻尾のように伸びているのが、
「クロアゲハ」なのだが、上写真はそれが無いから、
「ナガサキアゲハ」のように思える。

ただし、判定は、その昆虫の生息地によっても異なり、
さらに突起が長い「オナガアゲハ」や「カラスアゲハ」
という種類も居る。

けど、その地域によっては出現する種は限られている
ので、この京都(関西)付近で見られるならば、上の
写真は、まず「ナガサキアゲハ」であろう。
なお、今回、トンボ池に飛んできた黒い蝶の中には、
「クロアゲハ」も混ざっていた。

しかし、昆虫等は、本当に「同定」、すなわち見分ける
事が難しい分野である。(まあ、「キノコ」の方が、
はるかに難しいみたいだが・・)

この難しさは、カメラで言えば、NIKKORレンズの
AiとAi~Sを見分けるくらいか?、いやもっと難しく
CANON F-1の前期型と後期型を見分ける位のレベルか?

「その何処が違うのだ? わかりにくい例を出すな!」
と言われそうだが(汗) まあ、その「難易度」には
明確な基準はある。

つまり、昆虫等においては、フィールド(屋外等の
実際の現場)において、一般的な当該分野での知識
レベル(中級という感じ)で、その昆虫が同定できる
か否か? あるいは、実際に標本として持ち帰ったり
撮った写真を、家や研究室に持ち帰り、図鑑、資料、
文献、ネット等で調べないと、同定ができないか?
そこの線引きが、難易度での線引きでもある。

カメラの例では、中古店でNIKKORレンズを見れば、
AiとAi~Sの区別は、中級マニア層以上ならばできる。
だが、CANON F-1の前期型と後期型を見分けるには
その機体を買って、家に帰って、資料等の仕様を元に
細かくチェックしないとわからないレベルであろう。
そういう感じでの「レベル(難易度)の線引き」だ、

で、経験値や知識が増えれば、フィールド(屋外)
や中古店でも、その場で、昆虫の種類や、カメラの
種類が判断できるようになるだろうが・・ 何でも
同定(判定、鑑定)できるようになる為には、相当
にハイレベルでないとならないであろう。
(昆虫等の個別分野での専門的研究者、あるいは
 カメラでは超上級マニアや中古専門店販売員等)
_c0032138_17354235.jpg
さて、上写真の昆虫は、全然なんだかわからなかった。
これはやむをえない、専門スタッフの人に聞いてみる。

専「これはカメムシの仲間で、ハゴロモと言います」

ぐぅ・・ 全く知らない(汗)
「不勉強が露呈した」という感じだが、まだこの
自然観察を始めて数年程度なので、やむをえない。

家に帰って調べてみると、確かに「カメムシ」目
(もく)に属する「ベッコウハゴロモ」という種類
である事がわかった。

だが、全然、どんな生態なのかも、良くわからない
「そもそも、これ、飛べるの・・・?」
まあ、追々勉強していく事にしよう。
 
でも、あういう「カメムシ」も居るという事が驚きだ。 
一般的な「キマダラカメムシ」等は、誰もが見た事は
あるとは思うが、実は、カメムシの種類も、とても
多い模様であり、例えば、「セミ(蝉)」ですら、
カメムシ目(「半翅目」とも言う)に分類される
と聞く。
書店では「カメムシ」だけの数巻セットの大辞典
(勿論専門書であり、高価だ)も売っている位だ。

ちょっと変わったカメムシも、このトンボ池には
生息している模様だ。そう思って、良く良く探して
見れば、小さい虫も見えるようになってくる。
(注:発見する力を鍛える事も重要だ。一般層だと
そもそも、様々な生物等を発見する事自体が困難だ)
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これは「ウシカメムシ」だろうか? 似たような
種類が多いので、確実に同定できている訳では無い。

ここは写真的に、あるいは撮影位置的に「こういう
アングルで撮ると格好いいかな?」と思って撮って
いる訳で、もし確実に生物種を同定しようとすれば
様々なアングルで撮影をしておく必要がある。

(注:同定できる要素が何であるか? 例えば
形や模様等の特徴、は、この撮影時点では良く
わからないかも知れない。同定するポイントに
おいては、後で調べたら、例えば「腹の色」とか
「目の周りの模様」とかいった場合すらあるので、
その為には、あらゆる角度から撮っておく必要がある。
・・が、現実的には、撮影アングルを自由にできる
等の好条件は極めて少なく、とても難しいであろう)

さて、あっと言うまに、所定の時間1時間が過ぎて
しまったので、これでイベントは終了である。

ちなみに、撮影した枚数は500枚位である。
単純計算では7秒に1枚写真を撮っている状況だが、
今回は高速連写機NIKON D500を使っているので、
まあ、普通に撮影していても、最低限これ位には
なるだろう。例えば、ボート競技の記録撮影で
あれば、この倍のペースの、1時間あたり1000枚
程度となる事も良くある話だ。

多分、一般層(スマホ等で撮る人)、あるいは写真
のビギナー層とか、こういう自然観察分野の人達は、
この10分の1から100分の1程度、つまり1時間で
数枚~数十枚程度しか撮影をしないと思う。

が、カメラマンの感覚からすると、それは少なすぎる。
撮影枚数が少なければ、経験値も撮影技術も育たないし、
撮影成功確率も下がるし、被写体を探す目線も育たない。

カメラの初級中級層に言いたい事だが、いままで
撮っている枚数の、10倍から100倍のペースで撮影
する事を推奨したい。
例えば、いったん撮影目的で外出したら、目標値で
1000枚撮影するまで帰宅しない、とか、そんな風な
厳しいハードルを設けるくらいが良いかも知れない。

さて、トンボ池を出て、京都御苑の中では・・
_c0032138_17354740.jpg
これはすごい、「シオカラトンボ」のメスが、
「ウスバキ(薄羽黄)トンボ」を捕食している!

少し前述したが、「トンボは共食いをしない、が、
異種のトンボを捕まえて食べる事はある」という事を
地でいっている。
まあ、”自然界の厳しさ”であろう・・
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さて、京都御苑を出て、東に数百m歩けば、鴨川の河畔に
到達する。
川原を少し歩いて、三条駅から帰路に着く事にしようか。
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妙な行動をするカモを見かけた。
飛び立つ訳でもなく、水面を跳ね回っている。

どうやら、これは「換羽」(関連:エクリプス)で
あろうか? カモの羽根が生え変わる時期であるから、
水に付けたり、動き回ったりして、換羽を促進して
いるのではなかろうか? なお、換羽する期間は
カモ(等)の種別で差異があると思うが、下手を
すれば、換羽中は飛べなくなってしまう種も居ると
思われ、それでは敵に襲われた際に危険だし、食べ物
を得る事も難しくなるから、本能的にも、できるだけ
早く換羽したいのだろうと思われる。

そして換羽中においては、その鳥の種別も、やや
わかりにくくなってしまう。上写真は、マガモだと
は思われるが、やや遠距離で、詳しくはわからず、
かつ換羽途中であると模様や雰囲気までもガラリと
変わってしまう事もあるだろう。
_c0032138_17354815.jpg
総括だが「自然観察分野」は、なかなか奥が深くて
興味深い。その分野自体での研究的要素のみならず、
カメラマン的視点で、写真の「被写体」としても、
それが記録としての要素も含まれるので、長期間に
渡り、「飽きずに」撮れる撮影ジャンルになり得る
のではなかろうか?
今後、本ブログのカメラ・レンズ関連記事の掲載
写真でも、少しづつ、この分野の被写体が増えて
くると思う。

さて、これにて今回の記事は終了。

本「新・関西の楽しみ」カテゴリーは、完全なる
不定期連載であり、次回記事の掲載時期は未定だ。

特殊レンズ・スーパーマニアックス(40)高描写力ミラーレス用中望遠レンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では「高描写力ミラーレス用中望遠レンズ」を
5本紹介しよう。

これは、実焦点距離が55~75mmの範囲の単焦点レンズ
を指し、かつAPS-C機またはμ4/3機用と定義する。
つまり、フルサイズ換算焦点距離が85mm~150mm
程度となるレンズであり、銀塩時代の「中望遠」と同等
という定義だ。
なお、フルサイズ対応レンズが1本だけ含まれているが、
それは、APS-C機であえて使う事としよう。

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まず、最初のシステム
_c0032138_17282449.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm/f1.8
(中古購入価格 59,000円)(以下、ED75/1.8)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)

2012年に発売されたμ4/3機専用中望遠AF単焦点レンズ。

本ED75/1.8は、「高描写力」という言葉がぴったりと
嵌る高性能レンズだ。
_c0032138_17290904.jpg
本レンズの「描写表現力」の個人評価点は5点満点で、
「4.5点」となっている。これを超える5点満点のレンズは
所有レンズ数百本中、十数本しか無いので、本レンズは
例えば20位相当と、とても上位の「描写表現力」となる。

・・という事で、描写性能は何も問題無いのだが、勿論
弱点もある。

まず第一に、AF精度・AF速度の不満がある。
本レンズの画角的には、150mm相当と望遠画角であり、
2倍デジタルテレコンを併用すると300mm相当となる為に
大口径望遠レンズとして、飛ぶ鳥等の動体撮影を試して
みたくなるが、全くと言っていい程ピントが追いつかない。

MFに切り替えて使おうにも、例によって「無限回転式の
ピントリング」しか搭載されておらず、これでは無限遠の
停止感触も無いし、ピントリングの回転角も(精密ピント
合わせを狙った仕様なので)大きすぎるし、まあつまり、
MF操作性は落第点である。

AFの課題に関しては、今回の母艦は、E-M5Ⅱであるが、
この機体には、像面位相差AFが搭載されていない。

これはちょっと苦しいので、ここで母艦を変更し、
像面位相差AFを持つ OM-D E-M1としよう。
(注:最初からE-M1を使えば良かったのだが、カメラと
レンズのデザインバランス的に、E-M5ⅡLimitedの方が
好みなのだ。趣味撮影なので、最大パフォーマンスの
実現よりも、志向性を優先したい場合もある)

_c0032138_17294365.jpg
こちらの機体であれば、AFの性能上の不満は、少しだが
解消できる。(近距離から遠距離に大きくピントが動く際に
若干高速化するが、近接撮影時にAFがもたつくの弱点は、
両機(両方式)とも大差は無い)
まあやはり、被写界深度の浅い準大口径中望遠であるから、
コントラストAFのみで使うには若干無理がある。

だからまあ、オリンパスにおいても、ミラーレス初期は
こうしたF1.8級レンズをあまり発売していなかった訳で
あり、本レンズの発売時では、翌年発売予定のE-M1の
像面位相差AFでの使用を前提としていた訳なのだろう。

本レンズの後では、F1.8級単焦点レンズの発売も色々増え、
さらに2016年からは、F1.2級単焦点(PROシリーズ)が
いくつか発売されている(注:未所有)
でも、これらの口径比の明るいレンズは、その時代の同社
製の最上位機種でないと快適には使用できないのであろう。
(つまり、2016年発売のOM-D E-M1 MarkⅡを
 母艦として利用する前提なのだと思う)

まあ、これも一種の「排他的仕様」であろうと思う。

(=自社製品同士で高価なシステムを組まない限り、最高
性能を発揮する事ができない。すなわち、他社製品の使用や、
自社製品同士であっても低価格帯機種の使用を拒む考え方だ。
製品ラインナップ上では、やむを得ない戦略ではあろうが、
近年では、それが度を越していて、「意地悪」にも思える
ケースが、各社において多々見受けられる。まあ、いくら
「カメラ市場が縮退しているから」と言っても、あまりに
ユーザー利便性を意識しない無粋な戦略ではなかろうか?)
_c0032138_17295158.jpg
さて、他の弱点だが、フードが装着しずらい事だ。
まず大きいし、装着方法も、ネジ(クランプ)式で、
バヨネット式のようなワンタッチでは無い。
フードを装着したままでは、カメラバッグに入りにくい
ので、これの脱着の手間は、結構な問題点となる。


まあ、逆光耐性の低いレンズでは無いので、フード無しでも
あまり問題無いが、個人的な好みとして、このフードは
「格好良い」と思うので、できれば装着したい。
_c0032138_17295102.jpg
ED75/1.8の総括だが、焦点距離の仕様的に言えば、
銀塩時代の傑作レンズPENTAX-FA77/1.8 Limitedや、
近代の超高性能レンズTAMRON SP85/1.8と類似であり、
それらに迫る高描写力レンズであろう。

ただ、μ4/3機専用という事で、150mm相当の画角と、
それらライバルのフルサイズ用レンズとは焦点域が異なり、
必然的に用途も異なる。具体的には、本レンズでの
「人物撮影」は、一般的に想像されるようなモデルさんや
依頼者に対峙して撮影する「ポートレート」には向かず、
ステージ等での中距離人物撮影が主体となるだろう。
まあ、「用途開発」は、なかなか難しいレンズである。

前述の弱点としてのAF問題は、μ4/3機の進化を待てば良い、
新型機では、どんどんとAF性能およびMFアシスト性能も
改善されて行くと思うので、それを待つ事としよう。

----
さて、次のシステム
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レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 60mm/f2.4 R Macro
(中古購入価格 39,000円)(以下、XF60/2.4)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)

2012年に発売された、FUJIFILM Xマウント最初期の
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
_c0032138_17301645.jpg
正直言って、「高描写力」というカテゴリーには、ちょっと
入りにくいレンズだ。実力値としては、可も無く不可も無し
というレベルではあるが、一般に「マクロ」レンズは極めて
描写力の高い製品が大半なので、それらに比べると、若干
(と言うか、かなり)見劣りしてしまう。

・・で、本シリーズ記事の編集執筆において、他のいずれの
カテゴリーにも入りにくかったレンズであり、まあ、そんな
理由から、本カテゴリーでの紹介となった。

「描写力がたいした事が無い」という課題については、
FUJIFILMの交換レンズでは、銀塩時代から、殆どマクロが
存在せず、マクロレンズの設計に関するノウハウが蓄積
されていない可能性も高い。

まあ、思えば、どのメーカーの交換レンズであっても、
マクロを最初に作り始めた頃の製品は、どうも描写力が
イマイチのものが多かった。これはどうやら時代的な差に
よる技術力の成熟度よりも、むしろマクロレンズ自体の
設計経験の多寡が物を言うような気がしてならない。

事実、私はここ50年間程度の範囲の時代の、各メーカーの
レンズを所有しているが、各社での最初期のマクロレンズは、
描写力が気に入らずに手放してしまったものが4~5本ある。
現在、手元に残しているマクロは、各社において、初出の後、
数世代を経過して発売されたマクロが殆どである状況だ。

では本レンズも気に入らないから手放すのか?というと、
そういう気はあまり無い。銀塩時代であれば、描写力に課題
を持つレンズは使い道が困難であったが、現代のデジタル
時代では、撮影コストが低廉な為、色々と試行錯誤が出来る
大きなメリットがある。本レンズが最大のパフォーマンスを
発揮できるような被写体条件や技法を「用途開発」すれば良い
と思っているからだ。

それとFUJIFILMのXシステムは実用的なレンズラインナップ
(ここでは、所有するレンズの焦点距離系列とか保有数とか
いう意味である)が組み難い。
最大の課題は、他社システムでの同等性能レンズに比べて
FUJIFILMのレンズ(入手)価格が高価すぎる点がある。

例えば、スペックが類似するTAMRON SP60mm/f2 Macro
は、殆どの面で本レンズよりも高性能だが、その中古価格は

本レンズの半額以下程度だ。他にも色々と実例があるが、
原則的にFUJIFILMの純正レンズは、他社同等品よりも
2~3倍も高価となってしまう。

なので、FUJIFILMのXシステムでラインナップを組む場合、
FUJI純正レンズには拘らず、他社製レンズで埋めていくのが
望ましい。だが、その場合、他社製レンズでXマウントで
使えるマクロレンズが殆ど存在しないという状況なのだ。

まあ、MFマクロをマウントアダプターで用いればなんとか
なるが、XシステムのMF性能が全般的に低い課題がある。
・・で、AFのマクロは純正以外では極めて少ない。
よって、本レンズXF60/2.4は、ラインナップの構成上、
どうしても必要なレンズになってしまう訳だ。
_c0032138_17301606.jpg
だけど、ちょっと目論見が外れた。
本XF60/2.8は、描写力以外においても、AF精度・速度
にも課題があるからだ。
こちらは、Xシステムにおいては、距離エンコードテーブル
(距離表)を近接域と遠距離で二重化している事が大きな
課題となる。

FUJIFILMの初期ミラーレス機では、2015年頃に至るまで、
ほぼ全てのレンズで、近接撮影時には、カメラ側のマクロ
ボタンを押して、その「距離表」を入れ替える必要があった。



何故ならば、距離データを分類する限られた「ビット数」
では、詳細な近接域(例、1mm刻み)と、大雑把な
遠距離域(例、5m刻み)を共用できないからだ。

なので、この「距離表」を入れ替える必要が出てくる。

まあ、これは他社システムでも同様な必然性があるのだが、
AF技術のノウハウの期間の長い他社(概ね30年間)では、
このあたりは、あまり問題にならないように、と、上手く
技術的になんとか対処している。

FUJIFILM社では、銀塩時代から現代に至る迄、高いAF精度が
要求される「AFレンズ交換式カメラ」(一眼レフ等)を殆ど
発売しておらず、2012年からのXシステムが、ほぼ初挑戦
という状態なので、AFシステムの技術的ノウハウが蓄積されて
いないのだろう、と容易に推察できる。

で、Xシステムでは、2015年くらいの新機種またはファーム・
アップにより、「オートマクロ切換」となったのは良いが、
その切換がスムースでは無い。何故ならばAFが迷っている
状態では近接域の「距離表」に切換えようが無い訳であり、
やはりシステム動作設計的に、現在の手法では若干の無理が
ある状況だ。これを解決するには、ピント距離がどのように
変化していくのかを「解析/予測」しながら、AFを迷子に
させないようにしなければならないだろう。
(他社では「動体追従」等で、このアルゴリズムは長期に
渡って研究されている。それはマクロ撮影にも応用可能だ)

・・まあ、その事(状況)が良く理解できただけでも良し
としよう。今後においては、Xシステムでの近接(マクロ)
撮影は、出来るだけMFレンズを主体とする事とするつもりだ。
_c0032138_17301605.jpg
そして、XシステムのAF関連技術が進歩して、スムースな
オートマクロが実現した頃には、本レンズXF60/2.4は
きっと快適に使えるようになるだろう。

これも前述のED75/1.8と同じ状況だ、ミラーレス機本体
側の技術がまだ未成熟故に、レンズ性能が発揮できない。
でも、カメラ本体はいずれ改良される、そしていつか必ず
新鋭機に買い換える事になる。だからまあレンズの価値の
方が、カメラ本体よりもずっと高い理屈にもなる訳だ。

----
では、3本目のシステム
_c0032138_17303169.jpg
レンズは、SIGMA 60mm/f2.8 DN | Art
(中古購入価格 14,000円)(以下、A60/2.8)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

2013年発売の小型単焦点中望遠相当レンズ。
μ4/3機用とSONY E(APS-C機)用が存在する。
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過去記事で何度も紹介した、高描写力・高コスパレンズ。
「ハイコスパ名玉編」では堂々の第5位にランクインした
レンズではあるが、コスパが良くても、別の弱点がある。

それは「用途開発が困難である」という点だ。
簡単に言えば、「何を撮るのに使うのか?が良く分から
ないレンズである」という意味だ。


まあつまり、例えば人物撮影に使うのであれば、もう少し
開放F値も明るく被写界深度が浅く取れる方が望ましいし、
マクロレンズとして使うには、そこまでの近接能力を
持っておらず、標準(常用)レンズとして使うには、
開放F値も暗いし画角もやや狭い。
あるいは、ミラーレス機のデジタル拡大機能を併用し
望遠レンズ代用とするのも、あまり望遠にはならず・・
すなわち、何をやろうとしても中途半端なスペックな訳だ。

「描写力」は大変高いレンズであるので非常に勿体無い。
結局、今の所は、本レンズが廉価な事を理由として、
「消耗用レンズ」として利用している。
つまり、”良く写るが、とても安いので、過酷な環境で
使って、万が一壊しても惜しく無い”という用途だ。

具体的には、雨天であるとか、酷暑、海際、軽い登山、旅行、
あるいは、外出時にカメラバッグではなく一般的なカバンの
中とかにラフに収納しておいて、必要ならば取り出して使う、
等の用途が考えられる。

ただ、正直言えば、「用途開発」の本筋は何か?と考えれば
やはり天候や環境ではなく、レンズの特性に合わせた適切な
被写体または撮影技法を考察するべきであろう。

「用途開発」を行う、という事は、そのレンズで撮る際に
「どんな写真が撮れるか?」という事まで想像の範囲にある、
という事になる。だから、家を出る時に、そうした写真を
思い浮かべて、そこでレンズを選択して持っていく訳だ。

逆に言えば、用途開発の進まないレンズの場合、それで
撮りたい写真も想像できていない事となる。そうなると、
まずそのレンズを持ち出したいとは思わなくなり、レンズ
そのものの使用頻度が減ってしまう、つまりそれは
私のデータベース上での「必要度」の評価点が低いレンズ
である事を意味し、さらにその度合いが進めば、それはもう
「不要なレンズ」という最悪の状況に陥ってしまう。

そうならないようにする為には、つまりレンズの購入前に
「用途」をある程度意識して(=必要度を高めて)から
そのレンズを購入する事が望ましい。
すなわち、レンズを買った後から「用途開発」を考えている
ようでは、「手遅れ」という事になり得ると思う。

では、本レンズにおいて「用途開発」が、何故進んで
いないのか? という話なのだが・・

本レンズは「本シリーズ第5回記事、SIGMA DN編」でも
書いたのだが、SIGMA (DN)19/2.8、(DN)30/2.8を
購入後に発売されたシリーズ新レンズであり、前2本を
所有していた勢いで、シリーズのコンプリートを目論んで
惰性で購入してしまったのだ(汗) まあ「安価なレンズ
だから」という理由もあったが、値段はあまり関係無い、
たとえどんなに安価なレンズであっても、その用途が無い
状態で買ったならば、真の意味での「コスパ」は悪くなる。

それでは性能や描写力がいくら高くても、コスパは良いとは
言えず、レンズを使わないのであれば、実パフォーマンスは
限りなくゼロに近づき「真のコスパ」も極めて悪い事となる。
_c0032138_17314598.jpg
まあでも、そんな状況であっても、値段が安価であれば、
ある程度は許容できる要素もあるだろう。


本当にダメなレンズの買い方は、用途も何も考えず、かつ
単に「値段が高いならば高性能だ」と勘違いして、コスパの
非常に悪いレンズを買ってしまう事だ。で、たとえ、いくら
基本性能が高くても、何に使ったら良いか?が、わかって
いないならば、実用上のパフォーマンスを得る事ができず、
真の意味でのコスパ評価は、限りなく0点に近づいてしまう
事となる(=これは様々な意味で、使いこなして無い状態)

結局のところ、機材(レンズやカメラ)のコスパの評価は
単に値段と性能の比のみならず、購入者(ユーザー)毎の
用途や、あるいはユーザーのスキル(技能、知識、経験、
創造力等)によっても、まるっきり変わってしまう訳だ。

用途やスキルがなければ評価も出来ない筈であるし、
用途もスキルも異なる他人の評価も原則的には参考とする
意味が無い。
だから、あくまで評価はユーザー自身が行うしか無い訳だ。

----
では、4本目のシステム
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レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 56mm/f1.2 R APD
(中古購入価格 112,000円)(以下、APD56/1.2)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

2014年に発売された、FUJIFILM Xマウント専用
AF中望遠画角アポダイゼーション搭載大口径レンズ。
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過去記事で何度も紹介している本レンズではあるが・・
これは厳密に言えば「高画質」なレンズだとは言い難い。

例えば、ビギナー層の考える「高画質」とは、すなわち
「高忠実性(High Fidelity/Hi-Fi)」であろう。
つまり、人間の目で見えている綺麗な景色等が、細部まで
細かく写り、色再現性も高く、明暗差も見た目通りに写真が
撮れていれば、”それで良い、高画質だ!”と思ってしまう。

まあだからビギナー層の写真は、昔から現代に至るまで、
例えば綺麗な景色を前にして、少し絞り込んだ広角~準広角
画角のレンズで綺麗な風景写真が撮れれば、それで満足な訳だ。
・・よって、「高忠実性」が得られる性能のレンズであれば、
それで十分と思ってしまい、それを「高画質」なレンズだ
と(間違った)判断をする。

しかし、中上級層であれば、そんな考え方は、まるっきり
持っていない。


中上級層では、ビギナー層の持つ標準ズーム以外にも、
様々な画角のレンズを持っているし、あるいはさらに、
マクロ、超望遠、超広角、大口径、魚眼、特殊レンズ等の
バリエーション豊かなレンズを都度交換して写真を撮る。

標準(ズーム)レンズ以外の、ほぼ全てのレンズは、
それらを使った時点で「人間の肉眼での見た目」とは、全く
異なる写真が撮れる事は、中上級者ならば誰でも知っている。

そして、その「見た目との違い」を利用し、それが写真に
おける「表現」という事と、ほぼ等価である事も、中上級層
であれば十分すぎる程承知している。

つまり「人間の見た目と違う映像を創り出す」事が写真の
本質である事が中上級層ではわかっていて、逆に言えば
その事を全く理解しておらず、見た目と同じ映像を求めて
しまう場合は、それでは完全なビギナーか、または「写真」
とは異なる世界での「映像記録」(用途)である訳だ。

よって、レンズの性能評価においては、「高忠実性」を
求めるのは、微妙に写真の本質とは離れてしまっている。
だから、本ブログでは、レンズの評価項目の、その1は
「描写表現力」と定義している訳だ。

「描写力+表現力」とは、高画質(高忠実性)か否か?を
示す指標では無い。 どれだけ写真としての表現力を
得る事ができるか? という意味だ。


勿論、その一部には高画質であるという前提条件は必須で
あろう、でも例えば、超大口径レンズで独特なボケ質が
得られたり、様々な特殊効果(例:魚眼、シフト、ティルト、
ソフト、ピンホール、ぐるぐるボケ、アポダイゼーション等)
が得られる場合でも「描写表現力」の評価得点は加点となる。
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さて、本APD56/1.2は、「描写表現力」の高いレンズである。
それは、アポダイゼーション光学エレメントの効果により
ボケ質が極めて優れたレンズであるからだ。
だが、少し考えてみればわかると思うが、そもそも人間が
目で見ている映像には「ボケ」などは存在していない。

だから、本APD56/1.2の「アポダイゼーション+大口径」
によるボケ映像は、いわば人間の目からすれば「嘘の映像」
である。だが、カメラマンは、いかにそうした「現実では
有り得ない映像を撮って、そこに表現を込めるのか?」
という事をいつも考えている、それが写真の本質だからだ。
その表現力の幅(コントローラビリティ)が高い本レンズは
「描写表現力」が高いと言える。

だけど、ビギナー層の視点での「高忠実性」(高画質)は、
本レンズには、あまり備わっていない。これは Xシステム
との親和性もあるのだが、解像感はあまり高くなく、カメラ
設定によっては、発色傾向も現実とはかけ離れたものとなる。

だが、その事自体が「写真の本質」だ。つまり、いかに撮り手
がイメージした「架空の世界」を演出できるか? という事
であるから、本レンズに「高忠実性」が少ないとしても
「描写表現力」の高さにより、それは問題にはならない訳だ。

この話は、残念ながらビギナー層には全く理解できない事で
あろう。だが、本シリーズ記事はビギナー向けでは決して
無いので、そこはやむを得ない。
まあ、思うに、何故、ビギナー層かこの話を理解できない
のか? については、「描写表現力」が高いレンズを1本も
持っておらず、また、買おうともしない事が最大の原因では
なかろうか? 使った事も無ければ、理解できる筈も無い。

別に本レンズでなくても構わないが、「描写表現力」の
高いレンズをまず入手して、それを徹底的に使う事が、
ビギナーレベルから中級クラスにステップアップする為の
近道であるようにも思える。ただ注意するのは、一般的に
ビギナー層が欲しがるような、人気が高い高価格レンズは、
それが「描写表現力」の高いレンズとイコールであるとは
思い難い状況な事だ。
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なお、ビギナーが交換レンズを買わない事は、それはそれで
理由もあり、その1つは「どのレンズを買ったら良いのか、
わからないから」である。

だから、誰かが「良い」と言ったレンズであるとか、高価で
あるとか(注:高忠実性がある)、販売サイトでの購入者の
評価が良いとか、そんな受動的な理由で、購入するレンズを
決めてしまうのだ。

その結果、前述の「用途開発」も意識しておらず、真の意味
での「コスパ」が最悪のレンズを購入する事になってしまう。
勿論、これでは何をしているのか?全く意味が無い事であろう。

結局、ビギナー層に、交換レンズの知識が無い事が最大の
問題点な訳だ。わからないから無意味な物を買ってしまう。

まあ、それ故に、たとえば本シリーズ記事を参照して
貰えれば良い訳だ、世の中には、これほどの他種多様な
レンズが存在する、という事がわかったならば、ビギナー層
であっても、交換レンズの用途や使い方や必要性の理解に
繋がる可能性はあるだろうからだ・・・

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2.0
(注:例によって独語綴り上の変母音は省略している)
(新品購入価格 122,000円)(以下、MAP65/2)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

2017年に発売された、フルサイズ対応大口径MF準中望遠
1/2倍マクロレンズ。

APS-C機で使っているのは、この組み合わせの方が
換算焦点距離(約100mm相当)、撮影倍率(約0.75倍)
重量バランス(重心位置がピントリング上に来る)の
3つの理由で個人的な好みに合うからである。
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こちらは、かなりの高描写力レンズである。
本MAP65/2の「描写表現力」の評価点は、4.5点。
これは前述のAPD56/1.2と同じであるが、その評価の
中身は、ずいぶんと異なる。

具体的にはAPD56/1.2が、多大なボケ量と優秀なボケ質で
「ふわっとした幽玄の世界感」を演出できるのであれば、
本MAP65/2は近接域における高精細と高コントラスト特性で
「未知のミクロの世界観」を演出する事を可能とするレンズだ。

このクラス(評価4.5点)以上の、高「描写表現力」の
レンズ群は、それぞれ独特の世界観を持つ。それを被写体と
いかにうまくマッチさせるか、そして、どのような表現を
演出できるのか? が、これらのレンズの使用の肝となる。

だけど、正直言えば、それはとても難しい。何故ならば、
それが「写真の本質」に極めて近いハイレベルな事だからだ。
そこで撮影者に要求されるスキルは、基本的な写真撮影技能の
知識、経験、技術等に加え、アート的な感覚や感性や発想や
創造性といった多面的な能力が必要となる。

さらに、レンズや、カメラを含む機材全般での知識や理解も
勿論必要となる為、実際のところは、そんなに全ての方向性の
分野に精通している「スーパーマン」はどこにも存在しないし、
仮に一生の殆どをライフワーク的に、それらの修練に捧げたと
しても、それでも到達は出来ない高いレベルであると思うし、
そもそも、いくら努力してもカバーしきれない才能や天分と
いった要素もある訳だ。

まあ例えば絵画の世界においても高い技術と感性と創造性を
合わせ持つような「天才」でも無い限りは、名画は生まれない
訳であり、そういう名画を生み出した巨匠の数は人類史全体を
振り返っても、数えられる程度の人数しか生まれてこなかった
状況である。

ただ、写真においてもそうだが、「目標」がわかっていて、
それを目指して努力や修練をする事と、そうではなく、
ただなんとなく写真を撮り、「綺麗に撮れた」などと喜んで
いるだけでは、そこに雲泥の差は生じてしまうだろう。
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さて、余談が長くなったが、本MAP65/2の話に戻る。
高価なレンズではあるが、勿論、長所も短所も存在する。

長所は高い描写表現力、この点については、一般的な観点、
つまり収差の類や解像感や逆光耐性などについては弱点は
見当たらない。おまけにそれに加えて、近接域における
「ミクロ的世界観」の演出能力に優れる特性なので、
マクロ撮影が楽しくなる事は間違いない。
すなわち「エンジョイ度」も「必要度」も高いレンズだ。

さらには「マニアック度」も高いが、ここは逆に短所にも
なりうるのでユーザーの志向によっては注意が必要だ。

つまり、マニアック度の高さは、例えば「入手性が悪い」
「高価すぎる」「MFのみでは使いにくい」「等倍では無い」
「大きく重い」「ミラーレスEマウント機と重量バランスが悪い」
「絞り環が使い難い」「ピントリングの操作性が悪い」などの
さまざまな本レンズの「特色」は、それは利用者によっては、
短所となるし、逆に、使いこなしの楽しみや希少性の高さを
マニアックな長所と見なすこともできてしまう訳だ。

だから、マニアック度の高いレンズ、いや、そうでなくても
多くのレンズの評価は、利用者の各々によって異なって
くるのが当然な訳であり、原則的に他人の評価は参考には
ならない。あくまで評価は自身により決めなければならない。
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だがまあ、ここまでの事から、本レンズの、私の評価点を
掲載しておこう(本シリーズ第11回記事の再掲)

Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2
・描写表現力:★★★★☆
・マニアック:★★★★★
・コスパ  :★★
・エンジョイ:★★★★
・必要度  :★★★★
・評価平均値:3.9
(★=1点、☆=0.5点)

私の観点においては、悪い得点では無いレンズだが、同時に
「名玉の条件」(総合4.0点以上)には僅かに届かない。
その主な原因はコスパ点の低評価であり、入手性が悪い故に
新品で高価に購入してしまったからだ。
まあ、適切なタイミングで上手く中古で入手できるので
あれば、もう少しだけ評価点が伸びるレンズである。

でも、必要性に関しては、あくまで利用者毎により異なる。
MFで絞りも一々設定しなくてはならず、レンズ内の手ブレ補正
も持たなければ、ビギナー層では使いこなす事すら困難だ。
他人の評価はあてにならない、ここは最も重要な事だと思う。

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さて、今回の記事「高描写力ミラーレス用中望遠レンズ
特集」は、このあたり迄で。次回記事に続く。

銀塩コンパクト・クラッシックス(6) RICOH GR1s/CONTAX Tvs

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本シリーズは、所有している銀塩コンパクトカメラを
順次紹介していく記事だ。
今回は1990年代のAF高級コンパクト機を2台紹介する。

まずは、
RICOH GR1s (1998年)
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本機は、1996年に発売されたGR1の小改良機である。
仕様上、表面的な改良点は殆ど無いものの、耐久性等の
実使用面での信頼度が向上している機体だ。

本シリーズではシミュレーター機を用いて、当時の撮影
の雰囲気を紹介しているが、今回は、同じ製品系列に
属するGR DIGITAL(初代、2005年)を用いる事にする。
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以下、シミュレーター機による写真を交えながら説明を
していく。
(ちなみに、私の初代GRDは15年という長期間の使用で
ボロボロだが、そこは突っ込み所では無い。むしろ
それだけ長期に渡って使えているという事で、真の
名機と言えるだろう)
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ではまず「GR1」の系譜を示す、これは本シリーズ第3回
記事での「RICOH ELLE」の内容と一部重複するが、
今回は年表形式でまとめてみよう。

<RICOH R/GRシリーズの系譜>

1994年 R1
 30mm/F3.5単焦点を搭載した薄型の普及コンパクト
 パノラマモード時に24mm/F8となるのが特徴。
 ユニークなコンセプトのカメラであり、後のGRシリーズ
 の源流となったカメラ。(譲渡により現在未所有)

1995年 R1s
 R1のレンズのコーティングを強化、描写力が向上した。
 R1と同様に、パノラマ機構の改造を施し、二焦点カメラ
 として使用可能。(譲渡により現在未所有)

1995年 Rollei Prego Micron
 R1をローライ銘として外装デザインを変えたOEM機
 (譲渡により現在未所有)

1996年 GR1
 28mm/F2.8広角単焦点、R1シリーズをマニア向けに
 高品質化した、いわゆる「高級コンパクト」であり
 その製品カテゴリーを明確化した歴史的名機。
 RICOHのブランド銘はカメラ前面には無く、
 これは「GRという新たなブランドだ」と呼ばれた。
(故障廃棄、現在未所有)

1998年 GR1s (本機)
 GR1の小改良版。 

1998年 GR10
 GR1と同一のレンズを使用しながら、絞り優先機構等
 を廃した普及版高性能コンパクト機。定価6万円。
 実用利便性とコスパが高かった、隠れた名機。
(譲渡により現在未所有)

1998年 ELLE
 R1sからパノラマ機構を廃し、ファッションブランド
 とのコラボ商品としてデザインを一新した普及機。
 (本シリーズ第3回記事で紹介)

2000年 GR21
 21mm/F3.5単焦点レンズを搭載した、非常に希少な
 超広角AF高級コンパクト機。
 (本シリーズ次回記事で紹介予定)

2001年 GR1v
 GR1sの小改良機、ブラケット、MF機能などを追加。
 (未購入)

2005年 GR DIGITAL
 デジタル版GRの初号機。
 (コンパクト・デジタル・クラッシックス第2回記事
  で紹介の他、本記事でもシミュレーターとして使用)

以降、デジタル版GRは、Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,GR,GRⅡ,GRⅢと、
およそ2年毎に進化を続けているが、現状、Ⅱ型以降
のGRDは所有していない。

さて、ここまでがGR系列のカメラの年表だ。
思えば、GR1v以外の全ての銀塩シリーズ機を所有して
いた事があるので、かなりこの製品系列には思い入れが
強かったのだろう、と自分でも思う。

が、デジタル時代になってからは、初代以外のGRDを
購入していないので、そこで興味が費えてしまった
のか?(汗) まあでも、Ⅱ型以降のGRDも、勿論
どれも優れたカメラであるとは思うので、マニア層で
あれば、デジタルのGRも、必ずいずれかは、保有して
おく必要があるだろう。
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では、ここからは本機GR1sの話だ。

RICOH GR1sは、マニア向け高級コンパクトである。
28mm広角単焦点搭載のコンパクト機は、数える程しか
無く(本シリーズ第2回、「NIKON MINI」の項目参照)
その点、希少である。

GR1sの仕様的には、以下の通りだ。
28m/F2.8 高画質なGRレンズ 4群7枚構成。
絞り優先AE、P(プログラム露出)を備える。
絞りはアナログ式専用ダイヤル1段刻みでF2.8~F22まで。
アナログ式専用ダイヤルで露出補正も可(±2EV)
最高シャッター速度は1/500秒(これは物足りない
 ばかりか、日中では絞りを開けて使う事が出来ない
 という課題を持つ)

セルフタイマーボタンで、T(タイム)モード可。
(タイムモード=シャッターを一度押すと露光開始、
 もう一度押すと露光終了。長時間露光モードであるが、
 B(バルブ)モードのように、ずっとシャッターを
 押し続ける必要が無い)

AFはパッシブ型だが、「ゾーン型」MFがあり
(山、スナップ=人)山、スナップモードにより、
距離固定のMFとなる。(この場合、AF駆動不要)
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最短撮影距離 35cm(?)
(注:公式情報無し、GR1本体には撮影距離に関する
 表示無し。一般的には30cm表記と、35cm表記の
 2種類の情報が混在する。
 30cm表記は、WD(ワーキング・デイスタンス=
 レンズ前からの距離)の可能性が高く、正確には
 最短撮影距離35cm、最短WD30cmという事か?
 当時のRICOHや、一部の他社では、コンパクト機の
 カタログ性能を良く見せる為、レンズ前からの
 WDの数値を表記する事が多かった。
 なお、近接撮影時、花のマークがファインダー内に
 表示されるが、マクロモードが付いているという
 訳では無い)

ファインダーは採光式(ブライトフレーム)
マグネシウム外装
小型、軽量(本来のみ175g)
電池は、CR2型x1本
デート(日付記録)機能は、機種が異なる形で対応
発売時価格は95,000円(デート付きは105,000円)
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旧GR1との仕様上の差異は、見かけ上では2点あり
1)ファインダー照明(イルミネーション)
 (フレームが明るく光る)
 および液晶パネルの照明可
2)専用レンズフード取り付け可
となる。

これ以外に、GR1の弱点であったモーターが強力化
されている等、目に見えない改良点がある。

まあ、GR1sの仕様だけ見ていたら、今時のデジタル
コンパクトに比べては、貧弱な点も多々見受けれらる。

具体的には、近接(マクロ)モードが無い、MFが無い
ファンダー内に絞り値等の表示が無い、最高シャッター
速度が低い等が不満点であるが、まあ銀塩カメラなので、
そこまで色々なものを要求しても過剰であろう。
ちなみに、連写性能はどうでも良い、銀塩の本機で
連写をする事は、まず有り得ないからだ。
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さて、本機GR1sの長所であるが、

まずは、搭載GRレンズの高い描写力であろう。
初代GR1の発売時には、その点が市場から絶賛された。

GR1の各種販売(発表)イベント等では、全紙
(=560x467mm これはA2版(594x420mm)と、
ほぼ同等の面積)位にまで大きく引き伸ばした写真で、
画面の隅々まで細かく解像されている点が、アピール
されていた。

広角レンズである事もあいまって、これはなかなか
効果的なプレゼンテーションである。
マニア等は「こんな小型機で、一眼レフと同等か
 それ以上の描写力がある! しかも広角でそれが
 撮れるならば、風景写真などでも最強ではないか?」
と、GR1やGRレンズを褒め称えた。

このプレゼンや、あるいはGR1の直前のCONTAX G1
(1994年)や同時期のCONTAX G2(1996)のプレゼン
では、こういう事も言われていた・・

Gシリーズでの実例をあげよう、
「Gシリーズの広角交換レンズ、ビオゴンは、
 一眼レフではミラーボックスが存在する関係で
 設計不可能であった対称型構成の高性能レンズです。
 対称型レンズは収差が打ち消しあって高画質です。
 一眼レフ用の広角のディスタゴンタイプでは、
 ミラーボックスの長さ分の焦点距離(位置)を
 伸ばす為に、逆望遠(レトロフォーカス)型に
 せざるを得ず、余分なレンズが入ってしまい、
 どうしても性能が落ちます」

これもまた説得力のある話だ。
こういう事から、マニアや中上級者層は一眼レフの
広角レンズが、さほど優れておらず、レンジ機や
コンパクト機の広角レンズの方が、原理的にも
高い描写力を得れるであろう事を学んだのだ。

まあ、こういう状況があって、ここから一気に
「高級コンパクト」のブームが加速した次第だ。
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で、「高級コンパクト」の先駆けについては、
CONTAX T2(1990年)が存在していたのではあるが、
T2は正直言うと、描写力がスペシャルという訳では
なく、定価が12万円と高額であったので、これは
「バブル期での富裕層向けのカメラ」のような、
負のイメージが強く、マニア的にはあまり魅力を

感じなかった。私はT2は一時期使用していたが、
後にT3にリプレイスした。

1996年時点では、すでにバブル経済もとっくに
崩壊、前年の1995年には未曾有の大災害の
「阪神淡路大震災」もあった。
消費者(ユーザー)の価値観や購買行動の心理は、
バブル期の1990年前後とは大きく変わってきている
最中であった。

そこで、ブルジョア的イメージが強かった、高価
すぎるCONTAX T2、あるいはNIKON 35Ti(1993年、
125,000円)や、NIKON 28Ti(1994年、135,000円)
等に対しての反発心もあったマニア層は、
「GR1こそ、写真を撮る為の道具としての、真の
 高級コンパクトである」
という意識を強く持つようになる。

こういう状況から、私としては「高級コンパクトの
先駆けはGR1である」と言っても差し支えない無いと
思っている。
よって、本ブログ記事では、説明の内容に応じ
CONTAX T2を走りであるとも言うし、GR1がそうだ
とも言っている。
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まあでも、このあたりの「高画質である」という話は、
GR1の見事なプレゼンに乗せられていたという要素も
多々あったのかも知れない。
・・と言うのも、GRレンズで無くても、全紙での
大伸ばしに耐えうる画質を持った、優秀なレンズ性能
を持つコンパクト機は、普及機を含めて他にもあった
だろうからだ。

だが、実際には誰も、他の普及コンパクトで撮った
写真を、全紙に伸ばす事などはしない。
お金もかかるし、写真展やコンテストに出す場合でも、
そこまで大きくする必要は無い。
そもそも「普及版コンパクトは、絶対にGR1よりも
性能が落ちるはず」という思い込みが強かった。
だから、結局、GR1(GRレンズ)と他機は、比較の
しようが無かったのだ。

現に、本シリーズ記事第3回で登場したOLYMPUS μ-Ⅱ
(1997年)は、私の感覚では、画角こそ違えど、
GR1と同等の描写力を持っていると思う。
それで値段はGR1(s)のおよそ1/3の普及版コンパクト
なのだ。コスパからすれば、μ-Ⅱの圧勝となる。

なお、μ-Ⅱは、P(プログラム)露出モードしか無い
のだが、後述するが、GR1(s)でも実質的に絞り優先は
使えず、Pモードでしか撮り難いので、結局同じ事と
なる。

画角が同じ28mmで言えば、本シリーズ第2回記事の
NIKON MINI(AF600 1993年)も、かなり良い線は
行くと思う。
ただ、NIKON MINIも、Pモードしかないので、うまく
F8前後での、搭載レンズのMTF(性能)が向上する
ところに(条件が)ハマってくれて撮った写真で
しか、GR1に対する勝機は無いであろう。

まあつまり、そういう条件を整えて、全紙引き伸ばし
ででGR1と比較する、という機会は一般ユーザーには
有り得なかったのだ。
だからGR1が本当に最強クラスとして優れていたのか
どうかは、確かめようが無かった。

そして一眼レフに広角設計上の不利があると言う話は、
一見して理屈が通っているのだが、まあ、ここもまた、
ある意味、強制的にそう思わされたのかも知れない・汗

だいたい、レトロフォーカス型でレンズ構成が増えた
位で、そんなに性能が悪化するものなのか?
が疑問であるし、そもそも、RICOHやCONTAXでも、
これまで、さんざん一眼レフ用の広角レンズを作って
きただろう、何故、今頃(1990年代)になって、
今までの自社の製品を頭から否定するような事を
言い出すのか? だったら、一眼レフや交換レンズを
作って来た意味が無いし、そうしてメーカーが自信を
持って宣伝した一眼用広角レンズを、ユーザーは
さんざん買わされたでは無いか・・と。

(さらに言えば、2010年代後半からの、コシナ製の
ツァイス銘の新鋭一眼レフ用レンズの一部では、
たとえ標準レンズであっても、レトロフォーカス型の
ディスタゴン構成である。
つまり、設計次第でレンズ性能は、どうとでもなる訳で、
「レンズ構成そのものが描写力を決める物でも無い」
という話である)

まあ厳しく言えばそういう話で、全てが頭から信用
できるものでは無いのだが、それでもGR1(GRレンズ)
の描写性能が高かった事は、間違いの無い事実だ。
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さて、GR1sの他の長所だが、実はあまり無い。

あえて言うならば、前機種GR1が、脆く、柔(やわ)な
カメラであった事が、多少なりとも改善されている点か。

GR1の内部駆動系のモーターは、それ以前の機種
R1シリーズの流用と言われている。

そして、それはあまり強靭なモーターではなく、
私のGR1や知人のGR1は、いずれもハードな使用状況で
モーターが、へばって壊れてしまったのだ。


これは一度修理したが、今度は、誤って数十cm程度の
低い高さからビーチの砂に落としただけで、底部の
バッテリー周辺の細いマグネシウムの外装が割れて
しまった(汗)
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これも修理したが、このあたりでGR1への信頼や
愛着心は無くなり、「モーターが強化された」と
マニア間で噂のあった、本機GR1sにリプレイス
(置き換え)する事になった訳だ。

次いで、GR1sの弱点だが、こちらは色々ある。
全てを書いていくとキリが無いので、最大の課題だけ
上げよう。
それは「日中では絞り優先AEは使えない」という
弱点である。

GR1sの最高シャッター速度は、1/500秒でしか無い。
ISO100の低感度フィルムを入れたとしても、日中で
快晴時では、絞りをF8より開けると、シャッター速度
オーバーとなる。
広角レンズであり、最短撮影距離も長い事とあいまって、
結局昼間の撮影では、絞りでの被写界深度の効果は
全く得られない。
・・であれば、シャッター速度オーバーの心配が無い
(つまり勝手に絞り込まれる)P(プログラム)露出
モードで使うしか無いという事となる。

本機GR1sで絞り値の変更効果が得られるのは、
日中屋外のケースでは無く、やや暗所において、
そこでかつ、シャッター速度による動感効果を得たい、

とする場合のみだ。
ただ、こういう撮影は、夜間スナップとか、あまり
一般的では無く、隠し撮り等の、ダークなイメージ
すらある、特殊な撮影技法だ。

まあ、であれば、GR1sは、ほぼ100%、Pモードでの
撮影となる。
せっかくの絞り値がついた専用アナログダイヤルは、
「ただの飾り」となってしまうのだ。
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まあ、このあたりの弱点は、古い銀塩機であるから
とも言え、近代のGR DIGITAL系では、最高シャッター
速度の高速化や近接撮影を可能とした事、ISO感度の
設定が可能、などにより、その問題は解決されていて、
絞りの効果を出す事が出きる。

まあ、いくら「高級コンパクト」であるとは言え、
銀塩機では、あまり凝ったカメラ設定を行う事は
できないのだ。

さて、ここで本機の総合評価を9項目で示す。

RICOH GR1s 1998年
【基本・付加性能】★★★
【描写力・表現力】★★★★☆
【操作性・操作系】★★★
【質感・高級感 】★★★☆
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★★☆
【購入時コスパ 】★★  (中古購入価格45,000円)
【完成度(当時)】★★★★
【歴史的価値  】★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.2点

総合点は平均よりちょっと高い程度。
高級コンパクトとは言え、描写力以外はあまり見所が
無く、カメラ設定の自由度を活かす事もできない。
まあそれでも、基本的な性能面に関してはいずれも
平均点以上の好評価だ。

課題はやはり価格の高さ、中古購入で約半額とは言え、
一眼レフの旗艦機が中古で買えてしまう高額な価格帯だ。
そして、GR1ならともかく、小改良でしか無い2代目の
GR1sとなれば歴史的価値も低く評価せざるを得ない。

まあでも、勿論悪いカメラでは無い。点数的には
あまり伸びてはいないが、銀塩コンパクト機の中では、
ぎりぎりで名機と言えるであろう。
私の実際の使用は(何度も壊した)初代GR1の方が、
ずっと多く、GR1sは、リプレイス後にしばらく使って
いる内に、デジタル時代を迎えてしまったのだ。

ただ、現代で使うのであれば、勿論GR DIGITAL系の
方がはるかに使い勝手が良いので、あえて銀塩GR1系を
購入する必要は無い事であろう。

---
さて、次いで本記事の2機種目。

CONTAX Tvs
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1993年に発売された、希少なズーム搭載高級コンパクト。
チタン外装で、定価はなんと17万円(+税)
私は、店頭でこのカメラを見て大きく惹かれ、かなり
無理をして、これを新品で購入してしまったのだ(汗)

これが、私が最初に購入した「まともなカメラ」で
あったかも知れない。

シミュレーター機は迷い所だが、μ4/3機のPANASONIC
DMC-G6にG14mm/f2.5レンズを使用。
ここでG6のデジタルズーム機能をファンクションレバー
にアサインして用いる事で、フルサイズ換算で
28~56mmというTvsのズームと同じ画角比が得られる。
_c0032138_19264266.jpg
絞りは、本機Tvsは暗いので、シミュレーターも
同様にF5.6以上に絞って使う事としよう。

ずいぶんとトリッキーなシミュレーションだが、
ズーム比2(倍)の、本機Tvsの特性に見合った現代の
レンズは、あまり無い。
まあ「雰囲気だけ」という事で、以下はシミュレーター
での写真を交えて説明を続ける。
_c0032138_19264292.jpg
なお、名称のvsはバリオゾナーを意味し、シリーズ
名のTは、他機種を含めてシリーズ化されている為に、
大文字で表記。
サブ名称のvsは小文字とする「Tvs」が正しい。

よって「TVS」と全て大文字で表記している資料等は
間違いであり、その時点で「情報に信憑性が無い」と
見なしている。まあ本機を所有していれば、カメラの
上部にデカデカとそう書いてあるので必ず知っている
はずだ。型番等が間違っている記事や資料は、
「カメラを所有せず、使ってもいないのに、それに
 ついて語って(書いて)いる」と厳しく判断している。
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では最初に、CONTAX Tシリーズの系譜をあげておこう

1984年 T
 MF機、前部カバー方式、外装はチタンでは無い
 (未購入)

1990年 T2
 AF機 38mm/F2.8単焦点、チタン外装
 高級コンパクトの元祖、定価12万円と高価
 (譲渡により現在未所有)
         
 後年、ブラック、ゴールド、プラチナ等の
 外装を変えたバリエーションが存在(未購入)

1993年 Tvs (本機)
 28~56mm/F3.5~6.5のズームレンズ搭載
 チタン外装。

1994年 G1
 別系列の、レンズ交換型AFレンジファインダー機
 (未購入)
1996年 G2
 G1の改良版、基本性能が大幅に向上 (未購入)

1997年 Tix
 APS機 28mm/F2.8単焦点 チタン外装
(本シリーズ第5回記事)

1997年 TvsⅡ
 Tvsの小改良版(未購入)

1999年 TvsⅢ
 初代T風のフロントカバーのデザインを採用
 (未購入)

2001年 T3
 35mm/F2.8単焦点、チタン外装
 (本シリーズ次回記事で紹介予定)

2003年 Tvs DIGITAL
 Tシリーズ初のデジタル機(未購入)

2005年 京セラCONTAXがカメラ事業から撤退

さて、これがTシリーズおよび関連機種の歴史であるが、
まず、Tはかなり古い製品であり、あまり一般的では
無かった。
Tvsの前機種CONTA T2は、軽く前述したように、
描写力があまり高く無いという弱点があるが、
それよりも、38mmレンズで、最短撮影距離が70cmと
極めて長く、加えて、アクティブ式AFの測距点が
フレーム内表示ときっちり対応しておらず、「ピントを
良く外す」という重欠点を持つカメラであった。
本機Tvsは、それらのT2の弱点はだいぶ改善されている。

Tシリーズには、どの機種も長所短所があって、ベスト
バイはCONTAX T3あたりになると思うのだが、まあ、
その話は、追って次回記事に譲ろう。
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さて、軽く本機Tvs の仕様をあげておく
28mm~56mm/F3.5~F6.5 6群6枚 手動ズーム
φ30.5mmフィルター装着可
最短撮影距離 50cm
最高シャッター速度 1/700秒(P時)
          1/500秒又はそれ以下(A時)
パッシブAF+赤外線補助光、
目測式MF可能(ダイヤル操作による)

絞り優先プログラムAE搭載(絞り優先モードで使用時、
 露出範囲が適正で無い場合、自動的にPモードに切り
 替わる露出安全機構)
ファインダーは実像式ズーム(倍率は低い)
重量 375g(軽量一眼レフやミラーレス機並みに重い)

ずっしりと重いカメラだ。
店頭で一目惚れして、大枚をはたいて買ったのは
良いが、重さ、そして高額すぎる事から、実際に
外に持ち出して使える範囲はかなり限られていた。


海外旅行で使う事等は、狙われる危険性があって
もっての他であり、もっぱら国内旅行や、ちょっと
した遠出の際に使ったが、それでも使用頻度は、
極めて高かったと思う。
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描写力は、「高額なカメラを買った」という意気込み
からも、当初は不満は感じなかったが、後年、様々な
カメラを所有するようになり、それらと比較していくと
気に入らない点も色々と見えてきていた。

・・で、本機の長所は、あまり無い。

まあ、「高級感の塊」のようなカメラである事から、
「所有満足度が極めて高い」という事は言えるし、
サファイアシャッターボタンやチタン外装の冷たい
手触りも素晴らしいが、まあ、性能的には、並の
コンパクト機と同等である。
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ズームレンズの周りにあるレバーが電源スイッチを
兼ねているのは良し悪しあると思うが、操作性的な
観点からしても、私は、この仕様は嫌いでは無い。

この点においては、後継機Tvs Ⅱがレバーを廃し
レンズバリアーを搭載したが、ズーミングがやりにくく
なった事で、むしろ本機の仕様が好ましく思う。
さらなる後継機のTvs Ⅲは、電動式ステップズーム
なので、もうそれは論外と見なし、購入していない。
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あと、露出補正が±5段もあるのだが、これは露出補正
として使うよりも、ポジフィルムの増感現像の際等で
役に立つ仕様だ。

フィルターは、φ30.5mmの物が市販品でも簡単に装着
できるのは良い点だが、せっかくの流麗なデザインで
あるから黒のフィルターは似合わず、CONTAXの純正品
を使うようになる。
その場合、フィルターの種類や、価格の高さに課題が
あるという事だ。

なおPLフィルターは、装着できてもコンパクト機では
その効果を撮影前に確認できず、事実上使用不可だ。
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短所だが、
勿論、高価すぎる事。そして高価な割りに、平凡な
性能である事だ。

特に、搭載ズームは28~56mmとズーム比が2でしか
無い事や、望遠側で急にF値が落ち込み、開放でも
F6.5まで下がることは大きな不満である。
低感度フィルム使用時では、望遠側にすると軽い暗所
でも手ブレを頻発させる事にもなる。

広角側28mmにすれば、開放F値は明るくなるが、
広角側の描写力は、例えばGR1やNIKON MINI等に
比べて高いとは言えない。

結局、中途半端なズームレンズを搭載していた事が
全ての原因であるが・・ それが理解できたのは、
それ以降、私が沢山のカメラを使った後であった。
本機の購入時に思ったのは「ズームが付いてなくちゃ
嫌だ!」という、まったくのビギナー感覚だったのだ。

で、前機種T2は、実用的には厳しいカメラであり、
それでも値段が高かったのでネガティブなイメージが
極めて強かったが、本機Tvsは、描写性能等は最上とは
言えないまでも、かろうじて実用的な範囲のカメラだ。

まだ色々欠点はあるが、あまり書きたく無い気持ちも
ある。まあ、惚れ込んで最初に買ったまともなカメラで
あり、私としては記念すべきカメラであるからだ。
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最後に、本機の評価だ。

CONTAX Tvs 1993年
【基本・付加性能】★★★
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★★★
【質感・高級感 】★★★★☆
【マニアック度 】★★★★
【エンジョイ度 】★★★★
【購入時コスパ 】★  (新品購入価格130,000円)
【完成度(当時)】★★★
【歴史的価値  】★★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.2点

評価は平均よりやや上、まあ、コスパが極めて低いのが
災いしているが、他はあまり不満点は無い。
平凡な性能だが、高級感、マニアック度、歴史的価値が
高い事で、評価点がじわじわと上がっている。

エンジョイ度が高いのは、私が銀塩時代に、このカメラ
を極めて多く使用したからであり、あくまで個人的な
加点評価だ。

なお、本記事のGR1sの評価と同等の点数だが、
だからと言って本機Tvsを名機とは呼び難い。
確実にそう言えるのは、総合評価が3.5点を越えた
あたりからであろう。

まだ中古で入手可能ではあるが、定価が高いため、
中古相場も結構な高額だ。あるいは近年では投機的
な要素も加わっている模様で、CONTAX機は、どれも
不条理な「プレミアム相場」となってしまっている。
飾っておいて、高級感を楽しむ目的ならば良いが、
現代においての実用価値は低い。

そして、発売後四半世紀を超える、この時代の高級
コンパクト機は、外装のチタンは劣化しないのだが、
内部電子部品の耐久性は、もはや、かなり苦しい。
実用機とした場合では、いつ電気的に故障しても
やむを得ない(修理も困難)、という覚悟が必要
であろう。

次回コンパクト機記事に続く・・

特殊レンズ・スーパーマニアックス(41)新鋭海外製レンズⅡ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。

今回は「新鋭海外製レンズ」を6本紹介しよう。
既に本シリーズ第17回記事で、「新鋭海外製レンズ」を
6本紹介しているが、記事執筆後に、またいくつかの海外
メーカー(中国等)が日本市場に参入、主にミラーレス機
用の(広角系)単焦点MFレンズを安価に多数発売している。

まあつまり、国内のレンズ市場が高付加価値化戦略により
高価になりすぎていて、特にミラーレス機用の安価な純正
レンズが少ない点を突いてきた製品ラインナップであろう。


だが、その事自体は、消費者側から見れば悪く無い事だ、
高価になりすぎた国内レンズ市場が、海外メーカー参入に
より、活性化すれば好ましい。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、7artisans 25mm/f1.8
(漢字名:七工匠、「しちこうしょう」と読む)
(新品購入価格 12,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)

2018年に発売された、ミラーレス機(APS-C機以下)
専用MF広角(準標準画角)レンズ。

本記事だが、レンズ固有の解説は、たいてい他記事で
既に紹介しているので、最小限とし、もっと全般的な
説明を主とする。

さて、本レンズは、いわゆる「ジェネリック・レンズ」
であろう。

1970年代前後に発売されていた完成度の高いMF小口径標準
レンズ(50mm/F1.8級)の設計を、微調整しながら1/2に
スケールダウンし、25mm/F1.8とした様相である。
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他の記事、例えば「最強50mm選手権シリーズ」等を始め
何度も書いているが、「小口径標準レンズは良く写る」
という話である。
これは、同時代(1960年代~1980年代)のMF大口径
標準レンズ(50mm~58mm/F1.4級)の描写力を
上回る事も、様々な記事で説明済みである。


まあ、つまり大口径化(F1.4や、それ以下)を実現する
には当時の設計・製造技術では、だいぶ無理をした訳であり、
開放F値を欲張らないF1.7~F1.8級の標準レンズの方が、
総合性能(描写力)に優れていた訳である。

なので「F1.4版標準だけしか販売しない」という訳にも
行かず、各社とも、大口径版と小口径版の標準レンズが、
必ず並行してラインナップされていた。(併売されていた)
(=わかっているユーザーならば、描写力の優れた小口径
版を買いなさい、という感じだ)

ただ、大口径F1.4版の方が高く売れる(高く売りたい)訳で、
従って、小口径版標準には、若干の性能(仕様)制限が
かけられていた事もある。具体的には、最短撮影距離性能
であり、F1.4版標準(50mm)は、各社とも最短45cmで
横並びであったが、F1.8級標準は各社の販売戦略に
応じて50cm~60cmに最短撮影距離が制限されていた。

こういう風に「仕様的差別化」をしておくと、メーカーや
流通(店員等)は、F1.4版を売り易くなる。具体的には
店「こちらのF1.4版は(寄れるので)背景が良くボケる
  でしょう? おまけに明るいから暗所でも手ブレも
  しにくいですよ、少々お高くなりますが、F1.8版と
  どちらをお求めになりますか?」
という感じだ。

これでは、ビギナー層の誰もが、F1.4版の方が高級レンズで
F1.8版は性能の低い廉価版だ、と思い込まされてしまう。

この単純な(しかし、優れた)販売戦略が、その後50年間も
そのまま市場や初級中級ユーザー層に根付いてしまい、
新鋭レンズですらも、「F1.4版は高性能な高級レンズだ、
F1.8版は、安物で描写力にも劣るに違い無い」という酷い
思い込みの誤解をもたらす原因となってしまっている。

まあ、実際には正反対である、開放F値が明るくなると、
例えば、球面収差は口径比の3乗に比例して大きくなる、
つまり解像力が低下してしまう。そうならないように設計
するには、非常に沢山のレンズ構成を用いた極めて複雑な
設計となり、大きく重く高価な「三重苦」レンズとなる。

1960年代~2010年頃までの50年間は、F1.4級標準は、
いずれも6~7枚前後の簡素なレンズ構成(変形ダブルガウス
型、プラナー型とも呼ばれる)であった。それでも十分に
良く写ったし、完成度もそこそこ高かった訳だ。

しかし、2010年代、コンピューター光学設計を用いた
10数群10数枚という複雑な設計の50mm/F1.4級レンズが
各社より発売され始めた、およそ50年ぶりの標準レンズの
革命ではあるが、それはレンズ市場が縮退して高価なレンズ
を売らないと、メーカーや流通が商売をやっていられなく
なる為の措置である。確かに、銀塩50mm/F1.4級よりも
諸収差の補正が行き届いていて描写性能は向上したのだが、
その代償として、銀塩標準レンズの3倍の重量で、5倍以上も
高価となってしまっている。まあ、メーカー側としては、
そういう「高付加価値」(=高価な)標準レンズを売りたい
が故にそうしている訳だ。

で、「性能は上がった事は良いが、そんな三重苦レンズは
買えないよ(欲しく無いよ)」と思うユーザー層も多い事で
あろう、私は一応研究の為に、そうした新鋭標準レンズを
何本か買ったが、事前に予想した通りであって、確かに
描写力は高いが、三重苦が容認できるかどうかは微妙だし、
私が信条とする「コスパ」の評価は、どれも最低点に近い。

まあ、私以外においても、あまり新鋭高付加価値レンズが
マニア層、中上級層、職業写真家層等に「飛ぶように売れて
いる」という話は聞かない。むしろ主力ユーザー(購買)層は、
「高価なレンズは高性能だ、F1.4レンズは高描写力だ!」
という、単純な価値(評価)感覚しか持っていないビギナー層
向けであろう。
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さて、余談が長くなったが、まあつまり市場がこういう状況
であるから、古い時代の名レンズの設計をそのままに、ダウン・
サイジングとコストダウンを実現した「ジェネリックレンズ」
が市場に付け入る隙が出てしまっている訳だ。

ほんの10年程前までは、それら古い完成度の高い小口径標準
を、そのままAF化した一眼レフ用50mm/F1.8級レンズを
「安いわりに良く写る」と、皆思っていた訳だし、中には
「神レンズだ」と神格化する初級中級層も多かった訳だ。
それらの小口径標準がミラーレス機用にスケールダウンした
訳だから、これら「ジェネリック・レンズ」の描写力が
劣る訳では無い、基本的には何も問題は無いのだ。

ただし、古い時代の設計は、当然、様々な細かい弱点を
抱えている。だから、それらの課題を理解しつつ回避する
スキルを持たないビギナー層では、そうしたレンズの最大の
パフォーマンスを発揮する事が出来ない。
また単純に「やはり中国製だ、安かろう、悪かろう」で
終わってしまう訳だ。

---
では、次のシステム
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レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN 50mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)(以下、YN50/1.8)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)

2014年頃?に発売された(国内流通は2017年頃から)
中国製(格安)小口径AF標準レンズ、フルサイズ対応
である。

こちらは「ジェネリック・レンズ」では無い。
レンズ構成は、1987年~1990年の期間で販売された
「CANON EF50mm/f1.8」(ハイコスパレンズ・
マニアックス第1回記事等)
そして、そのコストダウン型後継機である、史上初と
思われるエントリーレンズ(お試し版レンズ)の

「CANON EF50mm/f1.8Ⅱ」(1990年~2015年)
のデッドコピー品(全く同じ中身)である。

(注:絞り羽根の枚数が異なる模様だ)
_c0032138_19163864.jpg
しかし、コピー品と言っても、レンズは単なる「機械」では
なく複雑な「電子機器」だ、外観からだけでは、そう簡単に
コピー出来る筈も無い。だが、本レンズに関しては、私が
購入後に色々と評価した感じでは、「中身は殆ど同じ」で
あって、数値スペックのみならず、描写傾向もほぼ同一だ。

これについては、コピーが容易に出来た、という何らかの
裏事情があるものだと推察している。ただ、相当にダークな
事情であろうから、それ以上の詮索はしない方が良いとも
思っている。

なお、本レンズYN50/1.8は「エントリーレンズ」では無い。
何故ならば、「お試し版」とするならば、その後に買って
もらいたい正規の(高価な)商品が存在しないとならない。

そうでなければ、「お試し版」を買った人がそれで満足する
だけで、次の購買行動が起こらない訳であり、現状では、
YONGNUO(ヨンヌオ)では、高性能レンズも高性能カメラ
も作っていないから、次に繋げるべき自社製品が無い。


したがって、単に格安レンズを大量に販売して、商品
そのもので利益を得る、シンプルなビジネスモデルだ。

まあ、かつては、大量生産で高品質な製品を製造するのは、
日本の高度成長期の「お家芸」であったのだが、世情の変化や
土地代や人件費の高騰等で、今の日本では、大量生産型の
工業製品を作る事は困難だ。だから、そのやり方を手本と
して、ここ10年程での中国工業製品は、恐ろしく発展して
来ている、品質も昔のように「安かろう、悪かろう」等と
いった事は微塵も無い。

むしろ、冒頭の「七工匠」等は、製品の品質や高級感も
コストダウン型の日本製品に対して明らかに優れている。
例えば、本YN50/1.8は安っぽく感じるが、それは元々
コピーをしたCANON EF50/1.8Ⅱが、コストダウン型の
レンズであったので、当たり前の話だ。
別にレンズに「CANON」と書いてあっても、それで高級感
を感じる訳ではない。

で、もう国内メーカーでは安価な製品を作れない現状から
すれば、もうここは「ブランド力」に物を言わせるしかない。
コシナ社だって、2000年前後に大量生産(OEM)型から、
ブランド型(フォクトレンダーやカール・ツァイス)に
転換を果した訳だし、SIGMA社でも、2013年頃に、
Art Line等のラインナップ見直しで、ブランド型企業に
変遷して来ている。
2018年からの各社一斉のフルサイズ・ミラーレス機への
戦略転換も、ブランド力を前面に押し出して「高付加価値化」
(すなわち値上げ、または利益増加戦略)を行いたい訳だ。

日本のレンズ市場が空洞化(=ここでは経済的な意味で、
低価格帯商品が消滅してしまった事を指す)を弱点と見た、
海外(特に中国製)レンズが、この市場の隙間に、大量に
押し寄せて来ている訳であり、これはメーカーから見れば
「脅威」であろうが、ユーザーから見れば、高品質のレンズ
が格安で買え、非常にコスパが良いので嬉しい話だ。
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ただまあ、市場全体が低価格帯に推移してしまうと、
ますます日本メーカーは厳しい戦いを強いられてしまい、
次に出すべき商品の企画が難しくなる。まさか中国製レンズ
と価格競争をしても勝ち目が無い、製造に係わるコストが
まるで違うのだから、まともに勝負をしたら、大赤字となり
破綻してしまう・・

ここは難しい問題だ、消費者側が気にする問題では無い
ようにも思うが、これ以上、カメラ・レンズ市場が混迷して
しまって、結果的に魅力的な製品が出なくなってきたら、
それもマニア的には、困った話なのだ・・

このままでは、また中古ブームが起こってしまう可能性も
あるが、市場が混迷してしまう事と、銀塩時代の「第一次
中古カメラブーム」が、デジタル時代に入って、いくつかの
カメラメーカーの市場撤退への遠因となっていたようにも
分析が進んでいる為、「もうそういう悲劇が繰り返される
のを見たくない」という純粋な気持ちもある・・・

---
では、3本目のシステム
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レンズは、7artisans(七工匠) 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

2018年に発売された、ミラーレス機(APS-C機以下)
専用MF大口径準広角(標準画角)レンズ。

こちらも七工匠(しちこうしょう)製である、ゆえに
「ジェネリック・レンズ」だ、まだ同社の製品戦略はレンズ
の発売種類も少なく、良く見えてこない段階ではあるが、
初期に発売されたレンズ群の殆どが、過去の名レンズの
設計をそのままにダウンサイジングした状況である。

本レンズの場合は、銀塩MF時代の大口径標準(F1.2級、
55~58mm、1960年代~1970年代に展開)の設計を
およそ2/3(60%)程度にスケールダウンした設計である。
_c0032138_19164411.jpg
だが、この時代のF1.2級レンズは「名レンズ」と呼べる
程には完成度が高く無い。私も同時代の各社の同等仕様品を
6本ほど所有していて(現有品は5本のみ)現代においても
たまに持ち出して撮って評価はしているが、どれも設計の
未成熟による弱点が、かなり目立つ。

まあつまり、50年以上前にF1.2級標準レンズを作るのは
無謀であり、諸収差の発生が抑えきれておらず、描写力が
とても低い。弱点を回避しつつ使う事が上級層やマニア層の
責務ではあるが、それでも限界はあり、ちゃんと使いこなす
のは至難の業である。

まあ、この時代、市場では「大口径化競争」が起こっていて
各社ともF1.4では飽き足らず、F1.2や、あるいはそれ以上
の超大口径レンズを、こぞって設計し、それを販売した時代
でもある。ある意味、その当時の米ソの「宇宙開発競争」と
同様であり、後年の時代から見ると「ずいぶんとお金がかかる
無駄な事をやっていたなあ・・」という感想にもなりかねない。

よって、その「多少無理がある」設計を現代によみがえらした
本レンズも、相当に無理がある(汗)
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まあ、弱点回避の為の練習・研究用の「教材」として購入
するならば、新品2万円は安価なので問題は無いだろう。

なにせ銀塩オールドの標準は、F1.2という点だけで中古
相場が高騰してしまい、5万円とか下手をすれば8万円と
いった高値で取引されているのだ。それらを無理をして
買ったユーザーも「上品な写り」とか「独特のボケ質」
等の、弱点をオブラートで包んだような好評価しかしない
ものだから、ますます中古相場はプレミアム化し、高騰
してしまう訳だ。(そうやって高評価を広めた後で高価に
売れば、売却益が出るから、投機的観点では望ましい訳だ。
ただ、勿論それは「マニア道」に反する行為だと思っている)

あるいは、現代において本レンズを「開放F1.2だから、
凄そうだ、よほど良く写るレンズに違い無い、しかも安い」
と、購入をしたビギナー層は、大口径標準の弱点回避が出来る
ようなスキルを持たない為、「写りが悪い、やはり中国製だ」
で終わってしまうであろう。

まあ、いずれの話も「見当違い」であろう、つまり50年前
の大口径標準は、使いこなしが困難である。また、現代の
ミニュチュア版ジェネリック大口径も同様に使いこなしが
とても難しい。
それが真実であり、それ以下でも、それ以上でもない。

---
では、次のシステム
_c0032138_19165336.jpg
レンズは、中一光学 FREEWALKER 20mm/f2 SUPER MACRO
(新品購入価格 23,000円)(以下、FW20/2)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

2017年に発売された、フルサイズ対応超マクロ(近接専用)
レンズ。

元々は、1970年代のオリンパスの医療用特殊マクロレンズ
「OM-SYSTEM ZUIKO 20mm/f2 Macro」の設計を
コピーしたレンズだと思われる。

撮影倍率だが、レンズ本体のみで、4~4.5倍と強烈だ。


銀塩時代では、延長鏡筒(ベローズ等)を用いて、さらに
13倍程度の撮影倍率が得られ、オリンパス版では、医療用途
の顕微鏡的撮影に用いられたと思われる。
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現代においては、延長鏡筒が入手しずらいので、
(まあ、本レンズはニコンFマウント版なので、ニコン製の
各種近接アクセサリーを流用する事は可能ではある)
今回は、μ4/3機を用いて、フルサイズ換算8~9倍の
超マクロとして使用、さらにデジタル拡大機能を併用すれば
最大72倍の撮影倍率が得られるが、一般撮影では、そんなに
拡大して撮影しなければならない用途は無く、そして当然だが
手持ち撮影(特に屋外)では、不可能である。
8倍程度の撮影倍率でも屋外手持ちでの撮影成功率は、
私の場合で1%以下、ほとんど偶然でしか撮影が出来ない。

まあ、本レンズに関しては、過去記事でも何度か紹介済みで
あり、撮影も非常に困難なので(汗)、早々に終了しよう。

ちなみに、中一光学は、コピー品やジェネリックばかりを
作っている訳ではなく、ちゃんとした自社設計力を持ち、
正統派のコストダウン型レンズを販売する中国企業である。
(他にも3本の中一光学製レンズを他記事で紹介済み)

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さて、5本目のシステム
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レンズは、Meike 12mm/f2.8
(新品購入価格 27,000円)(以下、Meike12/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

2018年頃に発売された、中国製のAPS-C型対応
ミラーレス機用MF超広角単焦点レンズ。

詳しい情報が無い状態であるが、購入後の検証により、
このレンズも、七工匠と同様の「ジェネリック・レンズ」
であるように思えて来ている。
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元になった設計だが、恐らくは、1980年代前後の
カール・ツァイス(京セラ)の、「デイスタゴン」構成
に近いと思われる。

例えば21mm/F2.8等であろうが、それを60%前後に
ダウンサイジングすると、だいたいこのスペックとなる。

ただし、レンズ構成は元のディスタゴンとは多少異なり、
完全なジェネリックでは無いとは思われる。


元の設計を光学設計ソフトに入力し、数枚程度のレンズを
省くような簡易版の設計としたのであろうか?
また、ミラーレス機での(一眼レフとの)バックフォーカス
の差異の調整の為であるようにも思える。

まあ、「ディスタゴン」はその名の通り、一眼レフにおける
ミラーボックスの存在による、フランジバック長の長さを
広角レンズにおいて、打開する為の「逆望遠型」(=レトロ
フォーカス型)構成であるから、ミラーボックスを持たない
ミラーレス機用では、バックフォーカスを一眼レフ程には
稼がないでも済む。その点で、2~3枚の後群レンズは
省略できたのかも知れない。

しかし、元々複雑な構成の高級レンズであるから、本レンズも
部材のコストが嵩み、あまり安価な状態にはなっていないし、
そもそもディスタゴンは21mm等は大型のレンズであったから、
本レンズも他のジェネリック・レンズよりだいぶ大きく重い。
(フィルターサイズはφ72mmもある)

で、ディスタゴン構成の場合、描写力はさほど問題に
ならない。多くのディスタゴンを保有している訳では無いので
明言は避けるが、まあ、私の所有している(いた)範囲では、
どれも高性能である。解像力に優れ、歪曲収差も少なく、
コントラスト特性も良好である。ここは本レンズも同様だ。

ただし、弱点も有り得る、コーティング性能により逆光耐性に
モロに影響する事、それと超広角故に周辺減光が発生する事だ。
しかし、この点も本レンズではあまり気にならない。

その他の実用上の弱点は、これは私の個人的見解であるが
「ディスタゴン構成は、MFでのピント合わせが困難」
といった状況がある。

具体的には、例えば、他の構成のレンズでは、ピントが合って
いるか否かは、光学ファインダー(スクリーン)でも
EVF等でも、比較的はっきりとわかる。つまりフォーカス部と
アウトフォーカス部の差異が明瞭だ。

だが、デイスタゴン構成は、なんとなくだが、その差が曖昧
であるような気がしてならない。
他のCONTAX系(コシナ・ツァイス系含む)のディスタゴンは
その多くに、そうした傾向があって、MFでのピントがどうにも
不安なのだ。

本レンズでも同様の傾向がある。FUJIFILM Xマウント機で
システムを組む際の、広角のラインナップの穴を埋める、
(つまり、FUJI純正広角レンズは高価すぎて買えない、又は
コスパが悪く感じるので、買いたいとは思えない状態)為の
措置で本レンズを購入したのだが、MF性能が全般的に劣る
FUJI Xマウント機では、ますますピント合わせが不安だ。

なので、やや絞り込んでパンフォーカス気味にしてピント
精度の弱点を相殺してしまう用法が主体となる、中遠距離
のスナップや風景等だ。また、こういった設定では、
「ノーファインダー技法」も使える。
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ただ、本レンズは、最短撮影距離が10cmと優秀だ。
これは他のディスタゴン構成レンズでも、ほぼ焦点距離の
10倍則に則った仕様であったので、本レンズも12cm程度
である事は納得がいく。(ただし、本レンズは仕様上では
最短10cmであるが、距離指標は15cmまでしか書かれて
おらず、本当に10cmまで寄れているか? やや疑問だ)
・・で、そうした近接撮影を行いたいのではあるが、
ディスタゴン構成レンズでのピントの山の分かり難さと、
FUJIミラーレス機でのMF性能の低さにより、近接撮影時の
ピント合わせが困難となる(=良く外してしまう)
まあ、ここが実用上の最大の不満点であろう。

近接撮影に拘らず、中遠距離の風景等を超広角的に撮る
ならば全く問題は無いが、せっかくの「寄れる広角」で
あり、高描写力でもあるので、その性能は有効活用したい。
だが、やりたくても、それがやりにくいので、ちょっと
ストレスが溜まるレンズだ。(Eマウント版で購入した
方がベターであっただろう)

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN 35mm/f2
(中古購入価格 8,000円)(以下、YN35/2)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)

2018年頃? に発売された、中国製小口径AF準広角
レンズ、フルサイズ対応である。

またしても、完全コピー品のYONGNUO社のレンズである。
このレンズの元になった製品は、CANON EF35mm/f2
(1990年頃~2012年頃)である。

CANONの現行品は、手ブレ補正内蔵、超音波モーター
内蔵のCANON EF35mm/f2 IS USM となっているが、

旧型EF35/2、および、そのコピー品の本YN35/2は、
通常型AF(DC)モーター内蔵のみの仕様である。
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本レンズはEFマウントでの完全コピー品ではなく、マウント
を変更したNIKON Fマウント版である。AFモーター内蔵の
メリットを活かし、NIKON D3000/D5000番台の普及機
でもAFが動作して使用が可能だ(注:これらニコン普及機
では、内蔵モーターが無いレンズはMF撮影しか出来ない。
かつ、ニコン普及機のファインダーは「全くMFに適さない
劣悪な性能」と、酷く意地悪な仕様的差別化が見られる)

性能や仕様は、CANON EF35/2と全く同じ、当該レンズは
所有しているで、描写傾向など含めてチェックしたが・・
まあ、異マウントなので同一機体でのチェックはできず、
厳密とは言い難いが、感覚的には「全く同じ」という印象だ。

やはり本レンズも、色々と裏事情がある「完全コピー品」
なのであろう、まあ理由の推測は可能であるが、それらは
あくまで裏の世界の話だ、あまり勘ぐるのはやめておこう。

さて、EF35/2のコピー品であれば悪い性能では無い。
それ以前、MFのFDマウントの時代から、CANON (New)FD
35mm/f2は、優秀な描写力を持つお気に入りのレンズだ。

ただし、NewFD版→EF版→IS/USM版、と、各々の時代で
レンズ構成は、ずいぶんと変化している。まあ単純に
「AF化しました」「手ブレ補正が入りました」と、元の
レンズ構成を変えていない状態では無い、という事であり、
そこは常に技術の改善を目指すCANONの良いところだと思う。

他社では、MF時代の単焦点レンズをそのままAF化した例も
いくらでもあった訳だ(まあ、「αショック」(1985年)
以降、各社はAF化への移行がとても大変だったので、レンズ
を新設計する余裕が全く無かった、とも言えるが・・)

弱点は特に無い、ベースとなったEF35/2もまた、同じレンズ
構成のままで、20年以上も販売が継続されたロングセラー品
である、もし性能に課題があるならば、その長い発売期間の
間に、あれこれと改善が図られたはずだ、それが無かった
という事は、それ自体が、「完成度が高いレンズだった」
という状況を示している。

現代のCANONユーザーであっても、「別に手ブレ補正や
USMは不用だよ」と言うのであれば、旧型のEF35/2で
十分であった訳だし、事実、私も、EF35/2を長年使って
いて、特に不満を感じた訳でもなかった。


まあ、買い換えるとしたら、2010年代のSIGMA版35/1.4と
TAMRON版の35/1.4が、なかなか良さそうなので、それを
選ぶ位であろうが、それらは大きく重く高価な三重苦レンズ
であるから、EF35/2の小型軽量は捨てがたく、代替購入には
なり得ず、追加購入となるであろう。
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まあ、個人的には、これまでCANON機でしか使えなかった
EF35/2が、本YN35/2の登場により、ニコン機でも使える
ようになった事が好ましい。しかも、それはかなり安価に
入手できている(EF35/2の中古購入価格の半額程)
・・まあ、色々と出自に係わる裏事情はあるとは思うが、
それはユーザー側には、あまり関係の無い話である。

「サービス(サポート)に不安がある」というならば、
国内メーカー純正品を買えば良いわけであり、そのあたりは
ユーザーの、目利きや、機材使用スキル、使用コンセプトにも
依存する訳だ、個人的には、このあたりの価格帯(1万円以下)
のレンズは「実用的消耗レンズ」である。雨天・荒天や
水際、酷暑等の過酷な撮影環境とか、あるいは機材の安全に
注意を払いにくくなる旅行とか、忙しい撮影状態で使用し、
万が一壊れたり、無くしても惜しく無い、という感覚であり、
そうした用途専用のレンズである。高価な新鋭(三重苦)
レンズ等は、そういう用途に持ち出すには適切では無い訳だ。

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さて、今回の記事「新鋭海外製レンズⅡ」編は、
このあたり迄で・・
なお、新鋭海外レンズは、次々に市場参入してきているので、
適宜「海外製レンズ(Ⅲ)」記事を後日掲載予定だ。

カメラの変遷(7)KONICA MINOLTA編(後編)

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本シリーズは、各カメラメーカーが発売した銀塩・デジタル
のカメラを、およそ1970年代から現代2020年代に至る迄の
約50年間の変遷の歴史を世情等と絡めて辿る記事群である。
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今回は、MINOLTA編の後編として、2003年以降の
KONICA MINOLTA時代について、同時代の機体を紹介
するが、少しKONICAの歴史についても述べておく。



なお、言うまでも無いが、その後の2006年に、
コニカミノルタは、カメラ事業(α)をSONYに譲渡して
撤退しているので、ほんの数年間だけの短期間の話だ。

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さて、まず、KONICA(コニカ)についての話だが、
銀塩一眼レフ・クラッシックス第3回記事での
KONICA AUTOREFLEX T-3(1973年)の項目で、
だいたいのコニカの(銀塩)一眼レフカメラの歴史を
紹介しているので、今回は簡単に、かつ、別の視点での
内容としよう。

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(注:T-3は、カメラ前面にはT3、カメラ上部にはT-3
と書かれていて、正式名称が良くわからないカメラだ)

コニカは基本的にフィルムメーカーではあるが、カメラも
勿論販売している。歴史上の重要ポイントとして以下がある。
1903年 国産初のカメラ、「チェリー」を発売
1975年 初のフラッシュ内蔵機「C35EF」(ピッカリコニカ)
1977年 世界初のAFコンパクト「C35AF」(ジャスピンコニカ)
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その後1980年代では銀塩MF一眼レフ、AR/Fシリーズを
展開していた(現在未所有) いち早くコンパクト機で
AF化を実現したコニカではあったが、一眼レフのAF化に
残念ながら追従できず、「αショック」(1985年)以降の
1980年代後半には、一眼レフ市場からは撤退していた。

(参考:1977年のKONICA C35AFでは、米ハネウェル社
のVAF(距離検出)モジュールを採用。
しかし、同部品の性能では一眼レフのAF化は困難であった
模様で、KONICAは前述のように一眼レフのAF化を断念。
後年1992年にMINOLTAはハネウェル社からのAF特許侵害
訴訟に敗訴、MINOLTA及び他の国内AF一眼レフメーカーは
ハネウェル社に米国販売分のAF一眼レフにおける多額の
特許使用料を支払う事となる。しかしながら「一眼レフには

使えないAFの基本技術」をもって、特許訴訟に敗訴する、
というのも、どうにも腑に落ちない話ではなかろうか?
この時、国内メディア等では「MINOLTAが米国の技術を
盗んだ」かのような誤った視点での報道が極めて多く、
そして仮に、この事が1990年代中期でのMINOLTA αの
事業の低迷と、後年のKONICAとの合併、および2006年
のカメラ事業撤退、に繋がったのであれば、なんとも
残念な歴史であったと思う)

では、KONICAの話に戻って・・
1990年代では、銀塩35mm判コンパクト機として
「BIGmini」シリーズを発売、こちらは高画質な単焦点
機が多く、そこそこマニア受けしていた(現在未所有)
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また、1992年には、高級コンパクトの草分け的存在
である「HEXAR」が発売されていた。(未所有)
が、大口径の35mm/F2レンズ搭載機でありながらも、
最高シャッター速度が1/250秒と貧弱でアンバランスな
スペック故、実用派マニアには受けはイマイチであった。
私も、その課題を重要視して、購入はしていなかった。

1990年代後半、主要フィルムメーカーでもあったコニカ
は、新規格APS(IX240フィルム)対応カメラを多数発売。
RevioシリーズやSuper BIGminiシリーズが代表的で
あろう、単焦点機も多く、普及機ながらも比較的高画質で
あった。

デジタル時代に差し掛かり、APSフィルムの人気に陰りが
出た2000年代初頭には、これらのコニカ製APSカメラは
数千円という捨て値での新品在庫処分価格で大量に中古
市場に流通、私も多数のコニカ製(主に単焦点)APS機
を購入したが、その後、譲渡等で雲散霧消してしまい、
現在では手元に無いか所在不明だ。
そして仮に残っていたとしても、現代では、APS(IX240)
フィルムの入手も現像も、ほぼ不可能だ。

また、1990年代後半には「第一次中古カメラブーム」
が起こっていて、これを受けて、コニカにおいても、
1992年の「HEXAR」をレンジファインダー機として
リニューアルした「HEXAR RF」(1999年)を発売。
1/4000秒、ライカMマウント互換で人気機種となった。

その機体は、2001年に、さらにバブリーな
「KONICA HEXAR RF Limited」となる。
こちらは2001台限定発売、50mm/F1.2のMヘキサノン
をセットした愛蔵版とも言える仕様で、税込42万円と
超高額であった。


ニコンの復刻S3(ミレニアム。2000年発売、48万円)
は、数千台程があっと言う間に売り切れたが・・
HEXAR RF Limitedは売れ残ってしまった。この理由は、
ニコンというブランドバリューから、当時の投機層が、
後年の値上がり期待で、こぞって買占めしたからである。
まあつまり、「株」や「金塊」、「仮想通貨」などと同じ
ような扱いとなっていた訳だ。

で、コニカは「ブランドバリュー」が弱く、投機対象には
ならなかったから売れ残った訳だ。

1~2年程してHEXAR RF Limitedの新品在庫品を持て余した
カメラ専門的から「半額でどうか?」という打診があって、
依然高価だとは思ったが、F1.2ヘキサノンに非常に興味が
あった為、これを21万円で購入。しかし、実際に使用して
みると、レンジ機での開放F1.2レンズは、全くピントが
合わず、ほぼ全ての写真がピンボケとなり「実用価値無し」
と見なし、短期間で他のマニアに譲渡してしまっていた。

(注:後年に分析すると、この大口径レンズは、絞り開放
近くで撮影した場合、レンジ機で発生するコサイン誤差
(厳密には、セカント誤差)が、原理上、回避できない事が
わかった。つまり、ちゃんと撮れるシステムでは無かった。
→「匠の写真用語辞典第29回記事」で詳細を説明)

なお、NIKON 復刻S3/SP、KONICA HEXAR RF Limited
といった高額カメラで、他の人が写真を撮っているところは
一度も見た事は無い。いずれも「投機対象カメラ」であって
実際に使用してしまうと「価値が下がる」と思うのであろう。
私は、「カメラは全て写真を撮る為の実用品だ」と考えて
いるので、こうした事実は残念な限りである。

なお、NIKONは、この「事実」を発売前から恐らく認識して
おり、S3とSPの復刻発売時に、キット(付属)レンズ以外
のSマウントの新規交換レンズを1本も発売しなかった。
(出しても、どうせ誰も写真を撮らないのだから、買う筈が
無いという認識)(・・・ただまあ、投機目的のカメラを
新発売する、というのもメーカーとしてどうか?と思うが)

しかしCOSINA社では、NIKON S3(とSP)の復刻、および
自社フォクトレンダーブランドでの、BESSA-R2S/R2C
(2002年)の発売を機に、NIKON Sと旧CONTAX C
のレンジ(ファインダー)機マウント用交換レンズを、
フォクトレンダー銘で7機種程新発売した。

だが、これらは各700~800本の少量生産品ながら、
完全に売れ残ってしまった不人気商品となった。
(後年に、在庫処分品を2本ほど購入している)

まあ、「ブームに乗った商品を出してみたが、実際には
誰も写真を撮っていない。だから交換レンズも不要なので
売れない」という、ここもまた残念な結論であった訳だ。
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同様に、ミノルタやコニカ銘での、旧レンジ機用の
Mロッコールやヘキサノンレンズも、投機目的から一時的に
1990年代後半頃に、買占での品薄→相場高騰の状態には
なっていたが、2000年代に入る頃には「欲しい」という
マニア層でのニーズ(需要)も急速に減退。そうこうして
いるうちにデジタル時代に突入し、レンジ機のブームも終焉、
なんとも「うやむや」な結末になってしまっている。
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さて、以降はミノルタのカメラの話であるが・・
ミノルタについては、本記事の前編で詳しく述べている。
1930年代からおよそ70年に渡ってカメラを開発販売した
老舗カメラメーカーである。

色々と紆余曲折もあった歴史ではあるが、2000年前後に
なって、ようやく歴史的超名機「MINOLTA α-7」を
筆頭に、「α-9」や「α-SweetⅡ」などによる
「α黄金期」を築けたのは、特筆すべき歴史だと思う。
(銀塩一眼レフクラッシックス第23回、第27回、第29回)
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また、ミノルタでは、既にデジタルカメラ(コンパクト機)
の開発販売を開始していた。1990年代後半では実験的かつ
試作機的な要素が大きい機体も多かった事は確かではあるが
(まあ、他社も同様の状況だ)、2000年代に入った頃から
ようやく実用的なデジタル機が出揃い、この分野が軌道に
乗りつつある最中であった。(本記事前編参照)
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さて、そんな状態からの、2003年でのコニカとミノルタの
合併である。


ただ、カメラマニア的視点では、カメラ部門・製品の合併の
影響が強く興味と期待を引くが、実際には両社とも大企業で
あるから、カメラ以外の様々な事業部門が存在している。

事務機、コピー機、フィルム等写真関連商品、プリント
機器、プリント業務(特に、当時の運転免許証(本体)用の
写真印刷機では、コニカの機器のシェアは非常に大きかった)
証明用写真機、その他、色々な「カメラ以外」の業務内容が
あった為、マニアが想像するような「合併によるカメラ部門
での市場シェアの奪回」とか、そういう狭い分野だけの話
では無かったかも知れない。


実際のところ、「コニカミノルタ」銘でのカメラ事業の
展開は、2003年~2006年までの僅か4年間(実質は
2004年~2005年までの2年間)に留まっていて、
2006年には、カメラ(デジタル一眼レフ=α)関連事業を
SONYに譲渡。さらには、現像関連業務をノーリツ鋼機へ、
プリント関連業務を、カメラのキタムラと大日本印刷へ
それぞれ譲渡移管し、これらの事業から撤退している。

開発費をバカ喰いするデジタルカメラや、縮退が始まって
いた銀塩フィルム関連事業は、「不採算部門である」という
経営判断だろうと思う。その後も勿論コニカミノルタ社は
存続していて、様々な事業分野に分割、それらの内容は
新規事業や先端研究開発部門であったりして、いずれも
簡単には理解や説明がしずらいが、ともかく、もうカメラ
の分野とはあまり関係が無さそうな事業内容が多そうだ。

さて、では、以下については、そのコニカミノルタ
(KONICA MINOLTA)時代のカメラについて紹介しよう。
僅かな期間(2003年~2005年)ではあるが、魅力的な
カメラがいくつかある時代であった。
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ここで、くどいようだが、さらに2000年代前半の時代
背景の詳細を説明しておこう。

チラリと前述したように、既に各カメラメーカーから
デジタルコンパクト機が出揃い、銀塩35mm判コンパクト
機は、この時代に、急速に人気と市場シェアを失っていく。

かろうじて生き残っていたのは、新分野の高付加価値型の
「(銀塩)高級コンパクト機」だけである。
(2001年:RICOH GR-1V、GR21。CONTAX T3)

もっとも、ミノルタ銘の高級コンパクト機は、
1996年発売のTC-1(現在未所有)と、その限定版の
TC-1 Limited(未所有、高価である)が存在してた
だけである。この機種の搭載レンズがLマウントで単体
発売された程(現在未所有)に、マニア受けはしていたが
いずれも高額な製品である為、一般的なカメラとは言えない。

コニカに関しては、高級機路線は前述の「HEXAR」系列の
製品群が存在していた。でも、もう2000年代においては、
ごく一部の生き残り(銀塩)マニアだけが注目する状態で
あって、実用派マニア層は、急速に発展してきている
デジタルコンパクト機、およびニコンとキヤノンから
チラホラと出現しているデジタル一眼レフに興味の対象を
移し始めていた。

また、2000年代前半には、携帯電話にカメラ機能が
初搭載され、そのままメール添付で写真送信が可能であった。
ここでの「写メール」(写メ)の愛称は、文化ともなり、
携帯電話(や後年のスマホで)で写真を撮る習慣は、この
時代から急速に発展し、一般化していく。

デジタル機(コンパクト等)の急速な普及により、それまで
人気のあった、APS(IX240)機市場は大打撃を受けて崩壊。

このAPSフィルムを現像する為に、世の多く(ほぼ全て)の
DPE店に自動現像機(QSS等)が導入され、その結果としての
「銀塩0円プリント」が1990年代後半のDPE店での主流の
ビジネスモデルであったのに、僅かに5~6年で、それも
ほぼ終焉。フィルム現像をする人が大きく減った状態で、
自動現像機で大量処理をしても意味が無いのである。

おまけに、自動現像機は、お客さんが誰1人現像に来ない
場合でも、機械に薬品を入れて回し続けていないと不調に
なってしまうのだ(汗)これでは、店を開けているだけで
赤字になってしまうという厳しい状況である。

DPE店では、スマートメディア、CF、SDカード、CD-ROM、
USBメモリーなどの記録メティア全般を読み込める
「自動受付機」を新たに設置し、そこにお客さんが、
SDカード等を差して写真を選べば、自動現像機と連動して
写真のプリントが出来る仕組みも急速に普及した。
まあ、既存設備の救済の為の方策であろう。

しかし、銀塩時代であれば、撮った写真はDPEを通さない
と見る事が出来なかったが、デジタル写真は、カメラ本体
(携帯を含む)や、パソコンやTVでも写真を鑑賞できるし、
自分でプリンターを用いてプリントアウトも可能だ。

銀塩写真では、撮った写真をDPE店の店主や店員に見られて
しまう、というプライバシー上の課題があったが、デジタル
写真ではそれも無い。ここから急速にDPE業務は縮退して
いく事になる。残念ではあるが、もう世の中の流れが
そうなっているので、やむを得ない。

まあ、コニカやミノルタのように、この市場分野の親分格
の老舗企業ですら、もうこの市場は見限るしか無い状況で
あった訳だ。コニカにいたっては、初の国産カメラを
発売してから、丁度100年だ。その長い歴史にピリオドを
打つのは、とても残念な様相だが、逆に言えば、
「良くフィルム関連事業で百年も持ったな」とも思える。


現代のビジネスモデルはもっとテンポが早く、20年か30年
もすれば、もうすっかり世の中は変わってしまい、同じ
事業形態を長く続ける事は難しい世情だ。
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さて、前置きが長くなったが、そんな市場状況であるので
今更コニカミノルタ社で銀塩機を発売する事は無理である。

ここからは、全てデジタル機(コンパクト、一眼レフ)
の話になる。

2003年 DiMAGE(ディマージュ) A1 発売
コニカミノルタ時代のカメラではあるが、「MINOLTA」の
ブランド銘での発売となっていた。

従前のMINOLTA DiMAGE 7シリーズ(7,7i,7Hi)シリーズ
で定評のあった28mm-200mm相当/F2.8-F3.5の高倍率

高画質(GT仕様、現代のGレンズ相当)固定式ズームを
搭載している。(注:1990年代迄の製品はDimage表記)

DiMAGE 7シリーズのレンズは定評があったが、本体の
バッテリー消費が極めて早く、(知人が所有していたが)
単三乾電池4本を使用し、そのセットが数十枚の撮影で
消耗してしまうので、予備電池を大量に持ってきている、
という可哀想な状態であった。

DiMAGE A1は、初のボデイ内CCDシフト方式手ブレ補正
を内蔵した事で、さらに電池消費が厳しくなりそうな
気配ではあったが、専用のリチウムイオンバッテリーに

変わった事や、回路消費電力の改善が行われたであろう。

この機体は所有していないので、そのへんの詳細は
今となっては不明である。なお、記録メディアはCFだ。
搭載された電子シャッターは、コンパクト機最速の
1/16000秒を実現していた点でも話題性が高かった。

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2004年、DiMAGE A2
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コンパクト・デジタル・クラッシックス第1回記事参照。

DiMAGE A1の改良機、この機体からKONICA MINOLTA
銘となっている。

A1の時代から、2/3型という大型CCDを採用していて、
後年の高級機RICOH GR DIGITALシリーズよりも大きい。
レンズも、好評のGTレンズ28-200mmを踏襲している。

A1の弱点を良く改善している実用機であり、例えば
記録画素数は500万→800万画素へとアップ。
EVFは、A1の23万画素から、92万画素(640x480x3色)
に解像度が激増していて、この結果、MF操作もなんとか
可能となった。

絵作りは、コニカのノウハウが入った事からか・・?
従来機(DiMAGE 7等)よりも格段に改善されている。
ただし、それでも、ちょっと不満な要素は多々あり、
特に年々、絵作りが改善されていく後年のデジタル一眼
レフ等と比較すると、だんだんと不満が募っていった。

色々と撮っていると、高輝度下(晴天時の風景等)では
色味やコントラスト、絵作りなどの再現性が厳しく、
低コントラスト状態(曇天や雨天等)では、むしろ本機
DiMAGE A2の発色・絵作りは、さほど悪く無い事を発見。

そこで2000年代後半位では、本機を「雨天専用機」
として利用する事とした。

ただし、勿論本機は、防水・防滴仕様機では無いので
雨天での取り扱いは十分に注意する必要がある。
しかし、レンズ固定式で浸水がしにくい点や、小型の
高ズーム比(高倍率)機で、傘を差しながらの片手撮影
も、なんとか可能な点で、むしろ使いやすかった。
手ブレ補正が内蔵されている点も良かったし、その機能
による発熱も結構あり、雨粒などの蒸発乾燥の早さも
隠れた長所であった。

ただし、最高ISO感度がISO800と、とても低く、
明るいF値のGTレンズと合わせても、雨天の暗所では
望遠側では手ブレの可能性が高かった事も、課題では
あったと思う。

でもまあ、機嫌よく雨天で使っていて、その目的で、
2010年代中頃まで使用を続けていた。
「仕様老朽化寿命=10年」の持論により、2010年代
後半からは、さすがに本機の出番は、限りなく減っては
いる状態だが、ごく為に、(雨天の際等に)持ち出して
遊んでいる状況だ。

何故ならば、「手動ロングズーム機」というカテゴリー
の製品は、現代では1台も発売されておらず、その
最後の手動ズーム機が、FUJIFILM X-S1(2011年)と
なっている。X-S1は、現在でもボート競技撮影等で
たまに使用している。本機DiMAGE A2を含め、いずれの
手動ズーム機も現代ではとても貴重な存在であるからだ。

それと、本機は、発売時の新品定価が14万円程と
高価なカメラでもあった。中古購入価格は35,000円で
減価償却ルール(1枚3円の法則)は、とうに完了しては
いるが、元々の高級機であり、できるだけ長く使って
あげたいという気持ちもある。
まあ、コニカミノルタの最後の高級機でもあるからだ・・

この機体以降だが、DiMAGE Z系、DiMAGE X系の数機種、
およびDiMAGE A200が2004年~2005年に展開されたが、
2006年のKONICA MINOLTA事業撤退もあり、これらの
機種群は、カメラ専門店等では、在庫処分の投げ売り
価格となっていた。(・・が、購入しなかった)
これらをもって、コニカミノルタ銘のコンパクト機は
終了。SONYには、DiMAGE銘は継承されなかった。

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2004年 KINOCA MINOLTA α-7 DIGITAL
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デジタル一眼レフ・クラッシックス第3回記事参照。

コニカミノルタ初のデジタル一眼レフである。
また、世界初のボディ内手ブレ補正(CCDシフト方式)
搭載一眼レフでもある。この仕様により、銀塩時代からの
αマウント交換レンズの(ほぼ)全てが手ブレ補正付きで
使えるようになるという、極めて嬉しいカメラであった。

ただ、電子接点の無いレンズ、つまりマウントアダプター
を介してM42レンズ等を使う場合には、残念ながら手ブレ
補正の焦点距離設定が無い為に、手ブレ補正の恩恵を得る
事は出来ない。
(注:マニアの間では、「焦点距離設定が無い場合は
デフォルトで85mmにセットされる」という噂もあった。
これを実際に確かめてみたが、良くわからなかった。
なにせセンサーシフト方式のカメラは、ファインダーでは
手ブレ補正の効果は見えないし、実写をしても、実際に
ある程度手ブレをしない構えをしていたら、効果の程は
良くわからない)
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さて、この機体の発売年、2004年は、各社から廉価版の
デジタル一眼レフが出揃った「デジタル一眼レフ元年」
である(と、私は定義している)

具体的には、NIKON D70、CANON EOS 20D、
PENTAX *istDs、OLYMPUS E-300、そして
本機KONICA MINOLTA α-7 DIGITALである。



私はこれらの全ての機種を所有していたが、
うちEOS 20DとE-300は経年劣化で故障してしまい、
廃棄して、EOS 30DとE-410に代替している。


それまでの時代のデジタル一眼レフは、まだ黎明期とも
言える段階であり、数百万円だったのが、この時代の
直前に、やっと数十万円程度まで下がって来たのだが、
まだまだ一般ユーザー層が買える価格帯では無い。
上記にあげた機体の価格帯は、デジタル一眼レフの
一般層への普及を狙った事で、急速に下がってきていた。


発売時価格は、殆どがオープン価格だが、実勢価格で
述べると、CANON EOS 20Dは、やや高めの19万円程で
あったが、これは前年のEOS Kiss Digitalの約12万円
の上位機種としての価格的差別化戦略であった。
NIKON D70は、上記2機種の中間を狙って15万円で発売。
PENTAX *istDsは、史上最安値のデジタル一眼レフを
目論んで10万円を切る価格であった。

まあ各社とも、戦略的な意味での値付けであり、つまり
「いくらであれば売れるか?」という要素が極めて大きく、
仮に「性能が高かったり部品代が高いから、高価になる」
という市場論理は、この時代では全く成り立っていない。

(注:その後の時代でも同様だ。カメラやレンズの性能
と価格は比例していない。どんな場合でも、「消費者は
いくらならば買うか?」という観点から、製品企画が
始まり、そして、最終的な製品価格が決められている。
もし、今時に至って「高価なカメラやレンズは部品等が
良いから高いのだ」と思っているようならば、「世の中
の仕組みが、まるでわかっていない」という事になる)
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こうした中、本機α-7 DIGITALは、約20万円弱と
2004年普及版一眼中、最も高い価格での発売となった。
まあ、この機体だけは、コニミノの合併やら、内蔵手ブレ
補正機構の開発やらで、なんだか、まともに原価が
上がって高価になってしまっていたようにも感じた。

市場の雰囲気も、まさにそんな感じであり、消費者側
から見れば、「各社ともデジタル一眼レフが、かなり
安くなってきているのに、α-7Dだけ高いなあ」
という印象だったと思う。

まあ、そのせいか、あまり本機は売れていなかった
のではなかろうか? それでも、発売後数年間は、
中古流通はあったが、コニミノが事業撤退を発表した
2006年頃になると中古流通はピタっと止まり、
その後、全くと言っていいほど本機の中古は見かけて
いない。まさか、本機のような製品に「投機層」が
飛びつく筈もなかろうが、それでも中古が無いという
事は、元々の流通量が少なかったのだろう、と私は
解釈している。
もしかすると、その事もコニミノの事業撤退を早めた
要因になったのかも知れないが、もはや昔話であり、
真相は闇の中である。

ただまあ個人的には、本機は、この時代に大活躍した。
ミノルタαレンズにはF1.4級大口径レンズが3機種
(35mm/50mm/85mm)存在し、私はそのいずれも
所有していたが、これらのレンズ群を本機α-7Dで
用いると、他社に無い大口径レンズで手ブレ補正で
使えるわ(注:他社のレンズ内手ブレ補正では、最大の
開放F値は、F2.8迄で留まっていた)当時は希少な
最大感度ISO3200は使えるわ、で、暗所での撮影に、

無類の適合性を発揮したシステムとなった。
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私は、本機α-7 DIGITALを「夜間戦闘機」と称し、
夜景ライトアップ撮影や暗所のライブ撮影等に
2000年代を通じ、さらに2010年代前半に至るまで
長く本機を愛用したものである。

発売後10年を過ぎて「仕様老朽化寿命」が来ても
本機は問題なく動作したが、さすがに、新鋭の
α機、例えば、SONY α77Ⅱ(2014年)に比べると
あらゆる点で見劣りしてしまう。すなわち、新鋭機
に比べると、あまりの性能の差で、もう使いたく
無くなってしまう訳で、それが「仕様老朽化寿命」
という意味である。

・・という事で、もう実質引退状態にある機体だが、
ごく稀に、古いレンズ等と組み合わせて、のんびりと
撮影する時もあり、本ブログでの、近年または後日の
レンズ紹介系記事でも、たまに登場する事はあると思う。

2005年 α-Sweet DIGITAL
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コニカミノルタ製の(デジタル)一眼レフの最終機
となった機体。
一応エントリー機ではあるが、やや大柄で、あまり
軽量コンパクトなイメージは無い。


「α-7 DIGITALの価格が高すぎた」という意味での
敗戦投手的な存在であろうか? 遅ればせながら
約10万円という価格での発売となり、やっと他社の
低価格機と勝負できる値段帯となった訳だ。

α-7 DIGITALと本機は、似て非なる「操作系」であり、
本機は、まあ一種独特だ。でもまあ、その後の時代
でのデジタル一眼レフの操作系と比較した場合、
むしろ本機の方がオーソドックスで合理的なように
思えてしまう。つまりα-7Dは異端なのだ。

その理由であるが、銀塩α-7は、銀塩機の最高傑作機
とも言える秀逸な操作系を持つ機体であったのだが
これをデジタル化する際、デジタルでは当然ながら
銀塩と異なる操作系が必要とされるにも係わらず、
銀塩機の概念のままでα-7Dを作ってしまった訳だ。

まあでも、ここはやむをえない。当時は誰も、それまで
存在していなかったデジタル一眼レフは使った事が
無かった訳だ。
開発側でも、たとえ社外アドバイザーの写真家でも、
何一つデジタルの操作系の名案は浮かぶ筈もなかった
だろうからだ。
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だからまあ、α-7Dは極めて不思議な操作系の
デジタル一眼レフとなってしまっている。
でも幸いな事に(偶然だとは思うが)不条理なまでの
操作系の破綻は無い。そして、本機α-Sweet DIGITAL
も独特ではあるが、操作系はさほど破綻はしていない。

もし、コニカミノルタがこの後もデジタル一眼レフの
開発を継続していて、銀塩機で最高傑作の操作系の
α-7を完成させたように、デジタルでも最高の操作系
を目指していたならば、きっと今頃、物凄く使い易い
デジタル一眼レフが発売されていただろうに、まことに
もって惜しい限りである。
そうなっていれば、いまだに、不条理なまでに劣悪な
操作系を持つ一眼レフを平然と発売している他社にも、
気づかせ、目を覚まさせる事が出来たかも知れない・・

さて、本機α-Sweet DIGITALだが、使用数年で故障
してしまい、残念ながら現在は動作しない。
もう修理が効く筈もなかろうが、それでも廃棄処分に
せずに残してあるのは、MINOLTAおよびKONICAでの
70年から100年におよぶカメラ事業での、最後の
カメラとしての歴史的価値を重んじての記念碑的な
意味からである。

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さて、今回の記事はこのあたりまでで・・

以降のSONY時代のα機については、引き続き本シリーズでも
SONY編を掲載予定であるが、とりあえずは「デジタル一眼
レフ・クラッシックス」や、「ミラーレス・クラッシックス」
シリーズ記事にも詳しい。


特殊レンズ・スーパーマニアックス(41)伝説のSIGMA MACRO

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー
別に紹介している。

今回は「伝説のSIGMA MACRO」編という主旨で
SIGMA製の新旧マクロレンズを年代順に5本紹介しよう。

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ではまず、最初のSIGMA製マクロ
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レンズは、SIGMA AF MACRO 50mm/f2.8
(中古購入価格 14,000円)(以下、SIGMA50/2.8)
カメラは、PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)

出自等の詳細情報は今や不明。1990年代発売と思われる
フルサイズ(銀塩)対応AF等倍標準マクロレンズ。

後継機種が2000年代に発売されていて、それはEX (DG)
型番で区別する事が出来る。EX版はレンズ鏡筒の仕上げが
高品質となっているが、中身の光学系は、恐らくは共通か、
新硝材やコーディングで僅かに改良が施されている程度
だろうか? ここも、今となっては詳しい情報が無い。


後継のEX版も2010年代初頭に生産終了(ディスコン)と
なってしまい、現在2020年代のSIGMAの製品ラインナップ
上では、50mmのマクロレンズは存在していない。


(注:メーカー談では「ガラス素材が入手できなくなった
から、EX DGマクロは生産中止とした」・・であるが、
ちょっとそれは信じ難い話だ。実際の所は、EX DGマクロ
の多くは低価格帯であったので、大量販売型の商品だ。
こういうビジネスモデルでは、2010年代でのレンズ市場の
縮退の状況においては、そぐわなくなっていた次第であり、
2013年での、SIGMA高付加価値化ラインナップ整備の際に
市場戦略的な理由から生産中止にされたのだと思われる)

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本SIGMA50/2.8頃の時代では、90mm/F2.8のマクロが
存在していた。それは銀塩時代に保有していたが、当時の
TAMRON製90mmマクロ(F2.5版、F2.8版)と比べると、
どうしても性能的に見劣りしてしまい、早々に譲渡処分
していた。

SIGMAとしても、90mmの土俵で定評のあるTAMRONと
勝負するのは得策では無いと見たのであろう。
1990年代以降、SIGMAは90mmのマクロを1本も発売せず、
2000年代からは、90mmの焦点距離を避けるかのように、
50mm、70mm、105mm、150mm、180mmと、
同社製のマクロレンズの焦点距離系列を独自に整備する。


SIGMAの50mmマクロに関しては、前述のように選択肢は、
1990年代版の無印の初期型(注:この時代の中でもモデル
チェンジがあったかも知れないが、もはや詳細は不明だ)
または、2000年代のEX (DG)版しか選びようが無い。

マウントはAF用のものをいくつか選べた筈なので、あえて
古い時代の初期型等を探すマニア等もいるかも知れない。
(何故ならば、EX版と光学系が同様でも、古いから安価だ)

だが、ここでマニア層であれば知っておくべき、非常に
重要な歴史上のポイント(注意点)がある。

【重要な注意点】
SIGMA製の1990年代製造のレンズを購入する場合、
それがCANON EF(EOS)マウント用のものを買うと、
それらは、銀塩EOS一眼レフ(1990年代のものまで)で
あれば、問題無く使用ができるが・・


2000年以降の銀塩・デジタルEOS一眼レフ(例:2000年
発売のEOS 7(銀塩)、EOS D30(デジタル)以降の全て
のEOS機)では、1990年代SIGMAレンズを装着すると・・


1)装着したとたんにエラーとなり、撮影できない、または、
2)装着して写真を撮るとエラーとなり記録できない、あるいは
3)1枚撮影毎にエラーが出て、毎回電池を抜いてリセットして
使う、・・という困った状態となる。

事実上、どのケースでも「使用できない」と等価である。
これを避けるのは、
A)1990年代SIGMA EF用レンズは1990年代迄の銀塩EOSで使う。
B)2000年代以降のEOS機では、SIGMA製の2000年代以降の
 レンズを用いる(買い換えるか、買い足す)この組み合わせ
 であれば問題無く動作する。
・・の、いずれかの方法論が基本だ。

(注:プロトコル互換性の高い、逆に言えば、あまり
排他的仕様が強くない(→あまり賢くない)各種の電子
アダプターを用いれば、プロトコルエラーを回避できる
かも知れない? という予想をつけている。
実験によると「CANON EF-EOS M」電子アダプターでは、
一部の機能は動作するが、実用レベルでは無い。
他の電子アダプターではどうか? ここは追々、実験
環境を整えて検証してみる予定だ。)


・・だが、これは元々は、メーカー側の都合や「排他的
で意地悪な製品戦略で起こった問題(後述)」なので、
ユーザー側で、ここまでするのは馬鹿馬鹿しい話だが、
その当時のメーカー等は、何も対策を行わなかった訳で
あり、その憤りからも”回避法を生み出してやろう”と
考えている。

ここまでで【重要な注意点」は終わりだ。
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どうしても1990年代のSIGMA EF用レンズを使いたい場合
は、後年のミラーレス機に、機械式絞り羽根内蔵マウント
アダプターを用いて装着する。(今回使っている手法)

ただし、この場合の問題点は別にあり、後述する。

なお、この問題の原因は、CANON側が2000年頃にカメラと
レンズの間の通信プロトコル(簡単に言えば、やりとりの手順)
を変更したからであろう、この措置はデジタル化に向けた改良
という名目はあるだろうが、その実体は他社製品を排除する
為の「排他的仕様」であった可能性が高い。

あまり気分が良い措置では無いのは勿論だが、他のマウント
(NIKON F,PENTAX等)でSIGMA旧レンズがどう動くかは、
良くわからないし、そこまで全ての組み合わせをユーザー側
で試す義務も責任も何も無い。


本来ならば、2000年の時点で、
CANON側からは「SIGMA製旧レンズは使えなくなりました」
SIGMA側からは「これまでの当社レンズは、新型のEOSに
 装着するとエラーになります、しかるべき対応を行います」

といった、公式アナウンスが出て当然であろう。それが
メーカーの責任だ、しかし、どちらもメーカー側としては、
やりたくない発表・対応である。

結局、デジタル転換期のどさくさに紛れて、うやむやにされて
しまった様相もある。まあつまり「ああ、そのレンズは古い
フィルムカメラ用なので、デジタル一眼では使えませんよ」
と言えば、市場や消費者層の誰もが、一応は納得するからだ。

だから、困るのは、1990年代のSIGMA EF用レンズを愛用
していたユーザー層だけだ。新型のEOSに買い換えたら、
これまで使っていたSIGMA製レンズが殆ど(多分、全て)
使えなくなって、途方に暮れてしまった訳だ。

これは、クレームや訴訟が起きてもおかしく無い話であるが、
そこまで全体の仕掛けが推察できるユーザーも皆無に近いし
ユーザー側から情報発信する手段も殆ど無かった時代だ。
なんだか良くわからない間に、泣き寝入りであろう。

さて、結局、2000年代の10年間を通じて本SIGMA50/2.8
は防湿庫の中で眠りつづけた。まあ、2000年代前半迄は
まだ銀塩・デジタルの混在期であったので、私もたまには、
古いEOS機を持ち出す事もあり、そこに本レンズを装着
した事もあったが・・ 2000年代後半には世の中は完全に
デジタル時代となったので、本レンズはもう「死蔵」だ。
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なんとか復活を遂げたのは、2010年前後に各社から発売
されたミラーレス機のおかげである。
ここではCANON EF(EOS)用の簡易(=電子式では無い)
マウントアダプターを用いる事で、こうした1990年代の
SIGMA EF用レンズが使用可能となる。

私が使用しているアダプターは、機械的な絞り機構を内蔵
したタイプである、これで露出調整は、なんとか可能だ。
ただし、この絞り機構は、後玉からの光を遮るだけの
「視野絞り」という光学原理となり、露出(露光、光量)の
調整は可能だが、一般的な”レンズ内部にある絞り機構”、
つまり「開口絞り」のような光学的な効能は殆ど無い。

すなわち「被写界深度調整」「収差低減調整」あるいは
「ボケ質破綻の回避」といった、光学的な撮影技法に
殆ど効果が無く、それらの調整が出来ずに困った状態だ。

まあ、つまり「ほぼ、絞り開放で撮っているのと同じ」
状態である。でもまあ、そういう制約の中でも本レンズを
再び使えるようになって良かった。

なお、色々と苦労してまで本レンズを使いたいのは、
「写りが良く、気にいっているから」である。
ただ、使用利便性からすると、当然ながら2000年代の
EX版を選ぶべきである。知人友人には勿論であるがEX版
を薦めており、買った人は皆、満足して使っている。


(追記:上記の電子アダプター試験だが、記事執筆後
に、さらに電子アダプターを購入して追加検証したが、
どれも、エラーにはならないものの、全てのレンズ
機能が正しく使える訳ではなかった。この検証で
我慢の限界を超えた為(汗)その後EX版を購入した。
こちらであれば近代のEOS機で何も問題無く使える)

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さて、次のシステム
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レンズは、SIGMA AF MACRO 180mm/f2.8
(中古購入価格 37,000円)(以下、SIGMA180/2.8)
カメラは、OLYMPUS E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

出自等の詳細情報は今や不明、1990年代発売と思われる
フルサイズ(銀塩)対応1/2倍AF望遠マクロレンズ。

こちらも、上のSIGMA50/2.8と同時代のレンズであり、
しかもCANON EFマウント用であるから、前述と全く
同じ理由により、現代のEOS機で使用する事ができない。

(前述の【重要な注意点】を熟読していただきたい)

上記と同様の手法で、EOS(EF)→μ4/3用、機械絞り機構
内蔵アダプターを経由して装着しよう。
360mmと、かなり長目の画角となるが、望遠マクロなので
それは良しとする。(マクロ撮影では、画角の変化よりも
背景の取り込み範囲の多寡の要素が、より重要になる)
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なお、アダプターを適宜用いれば本レンズは銀塩用なので、
他のフルサイズ・ミラーレス機でも利用可能だろう。
その場合でも、まあ、前述のように、簡易アダプターでは
光学的撮影技法が使えない、ほぼ絞り開放で撮っている
のと同じだ。それと、電子式アダプターは動作の保証が
出来ない、そのあたりはユーザーが各々の自己責任
(オウンリスク)で試してみる事となるだろう。
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さて、本SIGMA180/2.8は、大柄で重いレンズである。
まあ、この当時(1990年代)に、180mmのマクロをF2.8で
作ろうというのは、企画的にも技術的にも少々無理がある。


なので、後継レンズでは、開放F3.5にダウングレードし、
若干の小型軽量化を図っているが、それでも大きく重い
であろう。さらに近年では「高付加価値化」を狙って、
またF2.8版に戻ったが、さらに大きく重くなった。

まあ、本レンズ以降の後継型は、いずれも購入していない
ので、詳細の言及は避けておこう。(自分が所有しても
いない機材の事を、あれこれと語るのは無責任な行為だ)

何故、後継レンズを買っていないか?の理由だが・・
すなわち、大型の望遠マクロは、あまり使用頻度が高い
機材とは言い難いからだ。

一般的な望遠マクロの用途として言われている事は、
趣味撮影の範囲では、例えば花壇等での、被写体に余り
近づけない距離から三脚を立てて撮る・・などの
古い時代の撮影用途位となるのだが、現代ではそうした
撮影は「土壌を荒らす」「往来の迷惑になる」等の
マナーやモラル面から、全く推奨されていない(むしろ
禁止されている)撮り方である。

まあ今時、植物園の花壇等で三脚を使っていたら、
係員が飛んで来て怒られるか、周囲の人から白い目で
見られたり、あるいは直接他人からも注意されて、恥を
かくだけであろう。だが、未だにシニア層のビギナーで、
稀にそういう人達がいて、顰蹙を買っている。
(だから、最低限「三脚は使うな」といつも言っている。
「重たいレンズを持っていられない」と言うならば、それも
「持っていられないような重いレンズは絶対に買うな!」
とも言っている、まあ、それが当然の三段論法であろう)

結局、初級中級層では、そうした撮り方にしか使えないし
あるいは、他の用途開発が出来ない(=応用が効かない)
為、ますます望遠マクロの出番は少ない。

まあ、あえてあるとすれば実用・業務用途撮影において、
こうしたレンズでの、ワーキングディスタンスや、
パースペクティブが適正となる被写体の場合が有効だ。

上は、アマチュア初級中級層には意味不明の説明であろう、
つまり望遠マクロは現代では、そうした高度な撮影技法を
用いる為の業務撮影用レンズであり、アマチュアが趣味的に
使えるような物では、あまり無くなっている。

・・まあ、とは言うものの、何本かの望遠マクロは持って
いるので、いずれ、まとめて紹介する事とする。
1つだけ趣味撮影に適合する分野としては「屋外の自然
観察撮影」がある。これであれば、望遠マクロを使用する

意味が、かなり大きいであろう。

本レンズの詳細については、ざっくりと割愛しよう。
描写力については、あまり褒めるべき要素も無いし、
全般的に低コントラストの描写だ。(注:経年劣化か?
SIGMA製の1990年代以前のレンズでは、稀に、
コーティングの劣化等の原因で、こうなる場合がある)



まあ、今更入手するべきものでも無であろう。どうしても
望遠マクロが必要ならば、後継機(後継型)を選べば良い。


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では、3本目のマクロ
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レンズは、SIGMA AF MACRO 105mm/f2.8 EX DG
(中古購入価格 25,000円)(以下、EX105/2.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2000年代前半に発売と思われる、フルサイズ(デジタル可)
対応等倍AF中望遠マクロレンズ。


本レンズは異マウントで2本所有している。つまりそれだけ
「必要度が高い」と言うことで、TAMRON 90マクロシリーズ
に匹敵する(中望遠)名マクロレンズだ。
もう1本はCANON EFマウント品であるが、この時代からの
SIGMA製レンズは、どの時代のEOS機と組み合わせても
エラーにならず、問題なく使用できる。
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さて、中望遠マクロは激戦区であり、他にも名玉が目白押し
の状態だが、高価であったり、MFであったり、古い時代の
ものである場合も多く、近代のAFマクロとしては、本レンズ
又は、TAMRON 90マクロ(172E/272E型)が、最も実用的、
かつ、コスパに優れていると思う。

ただし、TAMRON90マクロも本EX105/2.8もロングセラー
レンズ故に、バージョンが色々と存在している。
両者、近年の機種は、超音波モーターや内蔵手ブレ補正で
武装している為、コスパがかなり悪化している。
それらの付加機能は、通常のマクロ撮影においては不要とも
言える物だし、場合により、MF性能(操作性)が大きく悪化
する事もある。レンズ光学系は、どのバージョンでも殆ど
同じな為、あえて旧モデルを選択するのも十分に有りだろう。

本EX105/2.8は、特に弱点も無い優秀なレンズである。
もし最強の100mm級レンズを決定する記事を書くならば、
決勝戦にまで勝ち上がってくる可能性が高いレンズだ。
(追記:「最強100mm選手権」記事を近日掲載予定)

今から歴史を振り返ると本レンズの時代(2000年代前半)に、
SIGMAのマクロレンズの性能はピークを迎えたと思われる、
何らかの技術革新があったのか、設計者が優秀であった
のか、その両方かであろう。
_c0032138_19270163.jpg
余談だが、新技術として新硝材や非球面レンズが入ったから
「性能が良くなった」と、単純に因果関係を語るのは早計だ。
たとえ新技術が出来ても、コンピューター設計になろうとも、
それらをどう使い、どういう風に性能や仕様に反映させるかは、
あくまで設計者の持つセンスや設計コンセプト次第である。

技術者以外には、この事は理解が困難であるから、世の中
一般では「XXという新技術が入ったから性能が良くなった」
などの、単純すぎるビギナー的評価が後を絶たない。

また、近年では設計者もコンピューター光学設計に頼りすぎて、
PC等は勿論、性能を高めようと計算するから、結果的に複雑で
大きく重く高価な三重苦レンズばかりが設計されてしまう。
まあ、メーカーはそういうものを高く売りたいので、そのまま
商品化されてしまうが、技術者は本来、安くて良いものを作りたい
のだ、この矛盾は恐らく設計者・技術者のストレスになるだろう。

これが「XXなんて飾りです、偉い人にはそれがわからんのです」
という技術者の不満に結びつく。勿論、初代ガンダムの名セリフ
であるが、40年以上も前のアニメで、よくもまあ、技術者の
心理等を上手く描写していると思う。(注:上記のセリフには
別の政治的要因(意味)があった、という説も非常に有名だが、
どんどんと脱線しそうなので、やむなく割愛する)

で、本EX105/2.8に限らず、この時代のSIGMAマクロを
色々と集めてみるのも良いかも知れない。
発売当時は高価なものもあっただろうが、発売から
10~15年をも過ぎれば、どれも、かなり安価な中古相場に
落ち着いている。


----
さて、次のシステム
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レンズは、SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
(中古購入価格 28,000円)(以下、EX70/2.8)
カメラは、EOS 6D (フルサイズ機)

2006年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。

本レンズは初出の際のレビュー記事で「カミソリマクロ」
と称された。
まあ、言い得て妙ではあるが、その通称はあまり浸透せず
本レンズの後継レンズの発売時(2018年、後述)に、
メーカー側から「待望のカミソリマクロがついに・・」の
ように記載された。まあ多分に「キャッチコピー」扱いと
なってしまったのであろう。
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で、その「キレの良い」という描写力であるが、本レンズ
だけの特徴では無く、前述のEX105/2.8や、やや古い時代の
SIGMA50/2.8等にもあった特徴である。

・・というか、「平面マクロ」(匠の用語辞典第5回参照)
のレンズ群に備わる共通の特徴なのであるが、そういう
設計コンセプトで解像力を高めると、ボケ質が固くなる
事が普通なのだが、本EX70/2.8や、前述のEX105/2.8
は、そこまで固い(悪い)ボケ質とはなりにくい点が、
本レンズ等の真の長所であろう。

ここもまた、上記の「2000年代のSIGMA製のマクロは、
完成の域に近づいた」という話を裏付ける根拠となっている。
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本レンズの入手は近年になってからだ。2000年代後半に
知人が使っているのを見て、私も欲しかったのだが、
極端にレア品で、10数年間、中古を一度も見かけなかった。


本レンズの中古流通が始まるのは、後継のArt70/2.8
が発売された2018年になってからだし、それもポツポツ
と数本くらいしかない(ユーザーが新型への買い替え時の
下取り品かも知れない)

まあつまり、2000年代SIGMAマクロのユーザー数は少ない
訳であり、推察される1つの理由としては、それ以前の
時代からTAMRONの90マクロシリーズがとても有名であり、
それは誰でも知っているから、皆、それを欲しがった事だ。

しかし、TAMRONは2000年代を通じて、殆ど90マクロを
リニューアルしなかった。恐らくだが、APS-C機が主流の
当時では焦点距離90mmは、換算135m以上の画角となり
「マクロとしては長すぎる」という印象がTAMRON側にも
あったと思われる(だからSP60/2マクロを新たに作った)

・・で、理由はともかく、2000年代後半では、発売時期が
古いTAMRONの90マクロが新品値引きや豊富な中古流通で
一般層にとって入手しやすい。だから誰も、新型で高価で
性能が良いかどうかもわからないSIGMA製のマクロは
買いたいと思わず、結果、非常にレアとなってしまった
のだと思われる。

なお、近年の本ブログでは「2010年代、カメラ市場が
縮退するとともに、消費者層のレンズに関わる知識等が
レベルダウンし、皆が、”誰か”が良いと言った、同じ
機種しか欲しがらなくなった。結果的に、隠れた優秀な
レンズの評価が広まらなかったり、そういう隠れ名玉の
販売数が少なくて入手が困難になってしまったり、最悪は
投機的(高額取引)対象となってしまう」等の、近代の
市場や消費者層の問題点を良く挙げているのだが・・

その傾向は、確かに2010年代後半頃では顕著ではあるが
もしかすると、2000年代後半から、消費者層のレベル
ダウン傾向は、既に少しづつ始まっていたのかも知れない。
さも無ければ、インターネットも普及している時代で
あるのに、本EX70/2.8のユーザー側の好評価が皆無で、
(注:見つかる情報は流通側の「宣伝記事」ばかりだ)
かつ、極端にレア物化している説明がつかない。
思えば、同時代において、他にも沢山の思い当たる節が
あるが、冗長になる為、やむなく今回は割愛しよう。
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しかし、こうして誰も知らない・・ マニアや職業写真家
や評論家層ですらも知らない中で、SIGMAのMACROの
「伝説」(レジェンド)は作られていたのであろう。


最新の製品が常に優れる訳では無い。古いからといって
常に性能が低い訳でも無い、又、値段が高いものが良いとも
限らない・・ そう、写真用レンズの世界では、そんな事が
いくらでも起こってしまうのだ、それは別にSIGMAのマクロ
の話だけではなく、様々なレンズで同様な話だ。

それは、本ブログでも、本・特殊レンズシリーズや、他の
ハイコスパ系のシリーズ記事で、散々説明してきた事なので
本ブログの読者であれば、皆、わかっている事であろう。
まあ、今更、という話でもあるので、このあたり迄で。

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では、今回ラストの新鋭マクロシステム
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レンズは、SIGMA 70mm/f2.8 DG MACRO | Art
(中古購入価格 44,000円)(以下、A70/2.8)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

2018年発売のフルサイズ対応中望遠AF等倍マクロレンズ。
前述のEX70/2.8の12年ぶりの正統な後継機であり、
ここでSIGMAは、この新レンズに「カミソリマクロ」
というキャッチフレーズを公式につけている。


ただ、いくぶん「単にキャッチコピーだ」という雰囲気も
しないでも無い。ここまで述べてきたように、SIGMA製
マクロは伝説(レジェンド)と呼べる程に、昔から高性能
(高解像力とボケ質を両立)であったし、特に本A70/2.8
だけが「カミソリマクロ」だとは思えないのだ。

(注:本レンズにおいても、流通側の「広告宣伝記事」に
おいては、必ずメーカー側からの「カミソリマクロ」という
キャッチコピーを引用し、それについて「シャープだ」とか
「解像感が高い」とか、と語っている。
でも、なんだか、それではワンパターンすぎないだろうか?)
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それに、その「カミソリ感」だけを述べるのであれば、
あくまでそれは「比喩的表現」であるし、個人的な感覚値も
各々異なるのだが、そういう官能(感覚)評価においては、
A)他社の各時代の「平面マクロ」の方が輪郭感が強い。
B)2000年代SIGMAマクロの方が、キレが良い。
という風にも感じてしまう。

ここで「平面マクロの輪郭感」とは、まるで絵画において
輪郭を強く書いたような表現技法を想像して貰ったら良いし
画像編集がわかる人ならば「輪郭強調」や「シャープネス」
「大きな比率の画素数縮小」等の画像編集処理を行って
「パキッパキ」に輪郭線が硬くなったような状態を指す。

でも、この状態は、SIGMA製マクロの描写特徴とは異なる。

「キレ」とは、もっと曖昧な感覚的用語だ。
私が思うには、「キレ」とは「ボケの遷移」ではなかろうか?
被写体におけるピント面(合焦面)からアウトフォーカス部
(ボケ部)に至る変化の度合いだ。

銀塩時代のCONTAX プラナー等は、稀に「キレが物凄く良い」
描写を魅せてくれた。例えば「被写体を切り出して、背景の
前に貼ったような描写」である。おそらくはピント面から
急激にボケが始まるのであろう、その「遷移」が速い。
また、マクロレンズでも、1970年代~1980年代の中望遠
MFマクロでは「キレの強い」設計であるものが多いと思う。
(例:NIKON Ai105/4)

また、その「遷移」が上品なのは、例えば銀塩時代からの
超名玉、PENTAX FA77/1.8(通称:ナナナナ)が代表格か?
(近年ではNIKON AF-S 58/1.4や、同AF-S 105/1.4
 の「三次元的ハイファイ」レンズも、そんな感じだ)

ピント面はあまり解像感は無いが、非常にスムースにボケ部
に変化していくという極めて自然な描写となり、人物撮影には
最適だ。先の「キレが良すぎる」レンズは、よほど条件が
ハマらない限り、人物写真としてやや不自然な様相にもなる。
(=人物部分を切り取って、背景に貼り付けたような描写)

つまり「キレが良すぎる」レンズは、被写体や被写体状況を
選ぶ事となり、使いこなしが難しい。意図と結果がよほど
上手く組合さなれない限り、見事にハマる事は無いのだ。

なお、それを撮影技能でコントロールする事は不可能に近い、
もう完全に、運任せ・神頼み、の世界になるだろう。

まあ、銀塩RTSプラナー85/1.4(1970年代~)が、たまに
とんでも無く凄い画(え)を吐き出して、皆、それに憧れて
プラナーを買ったが、そんな画が得られる確率は、1%以下
でしか無かった。たいていの場合は、そんな凄い写真は
滅多に撮れない訳だ。

それに、「名玉」との評判に踊らされて、そうした商品を
買うのは、いつの時代でも初級中級層が主である。なので、
1980年代~1990年代には、「使いこなせない」となって、
哀れ、名玉RTSプラナー85/1.4は、中古市場に多数
溢れかえっていた。
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・・脱線しそうなので話しを元に戻す。
「キレの良いレンズは、使いこなしが難しい」訳であり、
現代的な設計コンセプトを目指した上では、メーカー側
は、そうした難しいレンズを発売しないであろう。


何故ならば、カメラ(レンズ)市場の縮退を受けて、
新製品をすぐ購入するのは、初級中級層ばかりである。
例えば本レンズA70/2.8であっても、旧製品EX70/2.8
を持っていれば、特に買い換える必要は無いではないか。
すなわち、現代においては中上級ユーザーは、そんなに
すぐに新製品に飛びつく事はしない。

で、「使いこなしが難しい」レンズを、初級中級層に
売ってしまうと、「良く写らない、ダメなレンズだ」と
悪評判が立ってしまう危険性があるのだ。

本A70/2.8は、現在のSIGMA Art Lineに属するレンズ
であるし、「Art Line」はSIGMAで最も付加価値の高い、
つまり「ブランドレンズ」である。
その中で、他の高性能Artレンズの半額から1/3の価格
である最も安価な本A70/2.8を安直に買ったユーザーが、
「Art Lineは、ダメなカテゴリーだ」等と言い出したら
ますます困る。(ブランド名にキズがつく)

だからまあ、本レンズA70/2.8は、あまり過剰なまでの
特異な特性は持たせていないと思われる。
使いこなしが困難なレンズは、現代的では無い訳だ。

ただ、それでもまだ他のArt Lineに比べては少々過激な
特性がある。だから、あえてキャッチコピーとして
「カミソリマクロ」と称したのではなかろうか?
そう言っておけば、通常レンズに比べてボケ部への遷移
が急激であろうが、ボケ質が若干固かろうが、それらは

「カミソリだから・・」と全て説明がつき、ユーザー側
でも納得がしやすいからだ。


しかし、総合的には本レンズの描写力に不満は無い。
むしろ、ややマイルド化された事で、歩留まり(成功率)
が向上し、様々な撮影状況でも安定して使えるマクロと
なったと思う。
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本レンズの総括だが、いくぶんマイルドになった特性から
旧来のSIGMAマクロほどのエキセントリックさは無い、
万人向けの無難かつ優秀な特性・設計と言えるであろう。

弱点は、近代レンズ特有の無限回転式ピントリングであり、
この結果、MF操作性が壊滅的に悪い。中遠距離撮影が主体の
通常レンズであれば、あまり問題にならないが、本レンズは
近接撮影主体なので、このMF仕様・操作性は「重欠点」だ。

今後、マクロレンズが各社とも無限回転式ピントリングに
ならない事を願うのみであるが、世情はどうもそうでは無い。

買う側からの対策としては、当面の間は、もう、この仕様の
マクロレンズは買い控えをするしか無い状況であろう。
いずれ有限回転切換式または、有限区間距離指標を持つ
次世代型のマクロレンズが出るならば、まあそれは買いだ。

それと、本レンズは、発売直後、SONYのミラーレス機の
α以降(2013年以降)でデジタルズームが効かない課題が
あった(だから本記事では、NEX-7(2012年)を用いている)
だが、2018年末のファームウェアVer.02にアップデート
すれば、不具合が解消され、全てのα(ミラーレス機)で、
デジタルズーム機能が使用できる。

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追記:本記事執筆後に、APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG
OS HSM(2011年発売)を追加購入している。
本記事には評価等が間に合っていなかったが、
とりあえず、1枚だけ写真を掲載しておく。
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こちらも、大変描写力が高いマクロレンズである。

SIGMAにおける、レンズラインナップ整備(2013年)
の直前の時代のレンズなので、Art Line等には
含まれていないのだが、そうしたカテゴリー分け等は、
どうでも良い、と思える位の、高性能レンズである。
いずれ、別記事で詳しく紹介しよう。

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では、今回の「伝説のSIGMA MACRO編」は、このあたり
迄で、次回記事に続く。


μ4/3用レンズ・マニアックス(1)広角編

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さて、新シリーズの開始である。
本シリーズ「μ4/3(マイクロフォーサーズ)用
レンズ・マニアックス」では、μ4/3機用として
市販されている、AF、MF、トイレンズ等を、順次焦点
距離毎(広角、標準、望遠等)に区分して紹介する。

記事執筆時点(コロナ禍で外出自粛していた頃だ)
で所有しているμ4/3専用レンズは24本であった。
これらを1記事あたり6本、全4記事で紹介しよう。

ズームか単焦点かは問わない予定であったが、現状で
所有しているμ4/3用レンズは全て単焦点であった。
なお、紹介順は、ほぼレンズの実焦点距離の順番だ。
(追記:本シリーズ記事執筆後に購入したμ4/3
 専用レンズがあるが、それはまた別途紹介する)

殆どが過去記事で紹介済みのレンズにつき、個々のレンズ
の特徴等は最小限として、また違う視点での説明となる。

レンズを装着するカメラは、勿論μ4/3機を使用する。
1記事の範囲では同一カメラを使用せず、全て異なる母艦
とする。これは、レンズの特性とカメラの特性をマッチ
させるように、母艦の選択を若干だが考慮している。
(注:「弱点相殺型システム」となるケースが多いが、
「オフサイド禁止」のルールは若干緩和している→
つまり、高価な機体に安価なレンズを付ける場合もある)

実写は、外出自粛期間中につき、研究用に撮り貯めて
ある写真を使用。撮影時は、カメラ側に内蔵されている
機能(例:デジタルズームやエフェクト等)は自由に
使える事とするが、事後のPCによる画像編集は、縮小、
構図調整の為の僅かなトリミング、輝度調整程度に留め
過度のレタッチ(編集)は禁止するルールとする。
(レンズの紹介記事を書く上では、あまりに画像編集で
いじくり廻したら、元のレンズの特性が、わからなく
なってしまうからだ)

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今回記事は「広角編」という主旨で、だいたいだが
レンズの実焦点距離が、9mm~17mmの範囲としよう。

では始めよう、まず最初のμ4/3レンズ。
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レンズは、OLYMPUS Fish Eye Body Cap Lens
(BCL-0980)(9mm/f8.0 Fisheye)
(新品購入価格 9,000円)(以下、BCL-0980)
カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機)

2014年発売の魚眼型ボディキャップ(アクセサリー)
レンズ。対角線画角は約140°なので、180°には
満たず、あくまで「魚眼風」レンズである。
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ボディキャップレンズ(BCL)とは、読んで字のごとし、
主にミラーレス機用(まれに一眼レフ用もある)の
カメラマウント部を保護する「ボデイキャップ」に
レンズを組み込み、そのまま撮影する事ができるように
したものである。トイレンズ相当か、または、やや
本格的な描写力を持つものもある。


ここで、各社のボディキャップレンズの種類を述べて
いくと冗長になる。別記事「特殊レンズ超マニアックス
第30回ボディキャップレンズ編」を参照されたし。

本BCL-0980は、ボディキャップレンズとしては唯一
魚眼レンズ風の描写特性を持つユニークなアクセサリー
である。オリンパスでは、これを交換レンズとしては
見なしておらず、あくまで「アクセサリー」の分類で
あるが、レンズの描写力は、さほど悪いものでは無い。

トイ魚眼レンズを除く、やや本格的な魚眼レンズと
しては、最も安価な製品であるから、ビギナー層等が
魚眼レンズに興味を持った際、最初から高価な本格的
魚眼レンズを購入する事は避けて、本BCL-0980を
お試し版的に購入して感触を試してみるのも良いと思う。

・・と言うのも、魚眼レンズは本格的にそれを使おう
とした場合、初級中級層では手に負えないほどの高い
スキル(撮影技能)を要求されるレンズであるからだ。

よって、殆どの初級中級層では、無理をして高価な
本格魚眼レンズを買ったとしても「上手く撮れない」
「何をどう撮ったら良いか、わからない」とかなって、
まず間違いなく、飽きて(使いこなせずに)使わなく
なってしまう。そうなると、せっかくの高額投資が
無駄になるので、初級層等が、あまり最初から本格的
魚眼レンズを買う事には、個人的には賛同しにくい。

なお、なぜ高価なのか?は、魚眼レンズは一般レンズ
に比べてさほど多数、製造販売されるものでは無いので
どうしても1本あたりの原価や価格が割高となるのだ。

いつも言うように「レンズの価格と性能は比例しない」
という純然たる事実がある。だからまあ、レンズの購入
を検討する際には、必ず「コストパフォーマンス」の
概念が必要となる、と、毎回のように述べている。

さて、魚眼レンズの難しさは、画面内の直線が、歪む
場合と歪まない場合がある事だ。すなわち画面中央から
周辺に向かう放射線上にある直線は歪んでは写らない。
魚眼構図全般において、どの直線部を歪ませず、どれを
曲げて写す(または曲がってしまう)かを判断するには
少なくとも中級者以上の構図感覚が必要とされる。

そして、構図を決めたとしても、その通りに画面内の
直線性を維持するには、カメラの構えを3次元的な
あらゆる軸(例:高性能カメラの説明にある、5軸
手ブレ補正の原理を参照すれば理解が容易だ)に対して
正しく構える必要がある。これは非常に難易度が高く
上級者、又はそれを超えるレベルのスキルが必要だ。
(注:三脚を立てて、水準器で調整しようとしても
無駄である。3次元的な各軸には、水準器等では
測れない方向軸がいくつもあるからだ。本ブログでは
三脚に頼らず、常に手持ち撮影する事を推奨している)

なので初級者層等では、構図感覚的にも撮影技能的にも
魚眼レンズを使いこなす事は、まずできない。
だが「難しい/出来ないから、やらない」では、いつまで
たっても進歩が無いので、ビギナー層に対して、何らか
の魚眼(風)レンズを購入し、「魚眼構図制御」
(詳細は、匠の写真用語辞典第14回記事参照)の練習
をする事は、悪い措置では無いと思っていて、むしろ
推奨できる。
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そんな際、μ4/3機ユーザーであれば、本BCL-0980
が、安価な魚眼(風)レンズとして練習教材には最適
だと思う。なお、他のマウント機のユーザー層は
本記事の読者層では無いとは思うが、その場合には、
近年、2018年頃から、中国製の安価(1万円台)な
ミラーレス機用(本格的)魚眼レンズが色々発売されて
いるので、それらを練習教材とするのが良いと思う。

なお、それらの安価な魚眼レンズで練習して経験を
積んだ後で、また別途本格的な魚眼レンズを買う
必要は、あまり無いかも知れない。魚眼レンズの用途
や使用頻度から考えても、あまり多数の魚眼レンズが
必要となる状況も考え難い。
さらなる詳細は「特殊レンズ超マニアックス第28回
魚眼レンズ編」を参照されたし。

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では、次のμ4/3レンズ。
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レンズは、Lomography Experimental Lens Kit
Wide-Angle Lens 12mm/f8
(新品購入価格 3,000円相当)(以下、LOMO12/8)
カメラは、OLYMPUS E-PL2 (μ4/3機)

2013年頃に発売されたμ4/3専用トイレンズ3本セット
「LOMOGRAPHY MICRO 4/3 EXPERIMENTAL」の
内の1本。
広角タイプ(フルサイズ換算24mm相当)である。
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本レンズはトイレンズであるが、強い歪曲収差と、
逆光耐性の低さ以外は、あまり「Lo-Fi」描写となる
事は無く、例えば強い周辺減光が発生する訳では無い。
「Lo-Fi」レンズとしては、もっと酷い写りを期待して
しまうので、本レンズは大人しい特性だと感じる。

Lomography社は、銀塩「LOMO」を主力製品とする
トイカメラ/トイレンズの販売商社としては大手では
あるが、近年での銀塩ビジネスの縮退により、レンズ
(開発)事業をも、手がけるようになっている。

自社企画(開発)として、このExperimental Lens Kit
(他、数機種のトイレンズ)を発売した後、やはり
こうした低価格・低付加価値レンズでは、ビジネスの
継続が難しいという判断からか?2010年代中頃からは、
高価な高付加価値型レンズ(Petzval Art Lens等)を
新規に開発販売している状況である。
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本Experimental Lens Kitは、発売当初は9000円位
の通販価格であったが、後年2010年代末頃では在庫
処分価格として、およそ半額で販売されている/いた。
が、他に残った現代のLomography製レンズは、殆どが
高価な特殊レンズばかり、という状態だ。

本レンズは、完全に在庫がはけてしまった後で入手する
事は、とても困難だと思われる為、そうなった場合は、
「希少品につき非推奨」という事としておく。

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では、3本目のシステム。
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レンズは、PANASONIC LUMIX G 14mm/f2.5 ASPH.
(型番:H-H014)
(中古購入価格 13,000円)(以下、G14/2.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G5 (μ4/3機)

2010年にPANASONIC DMC-GF2とのキット(DMC-GF2C)
で発売された広角単焦点AFレンズ、勿論単品発売もある。
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前年2009年のPANSONIC DMC-GF1のキットレンズは、
G20/1.7であったのが、DMC-GF2でキットレンズを
G14/2.5に刷新した理由は、その時点では、よく
理解できなかった。

まあ、この当時2009年~2012年くらいの時代では、
μ4/3機あるいは他社ミラーレス機において、ターゲット
となるユーザー層のプロファイルがまだ定まっておらず
新製品がでる度に、ガラリとその製品企画コンセプトが
変わっていた事も何度もあったから、(まあ、市場調査
の意味もあっただろう)あまり、仕様変更は驚くには
値しないかもしれない。

まあでも、G20/1.7に対してG14/2.5は、コストダウン
が実現でき、初期μ4/3機の貧弱なコントラストAFでも
焦点距離の短さと開放F値の暗さでピント精度が高まり、
また、当時から女性等で流行していた「セルフィー」
(自撮り)にも適した画角となっている等のいくつかの
メリットがあったのであろう、と、今では分析している。

ちなみに、この企画変更により、旧機種DMC-GF1C
(G20/1.7がキットレンズ)の新品在庫処分価格は
2011年頃に非常に安価(3万円台後半程)となった為、
それを入手したビギナー層が、付属の大口径単焦点の
その特性を初めて見て、「これは神レンズだ!」と
「神格化」してしまった、という不思議な歴史がある。

まあ、ビギナー層では大口径単焦点レンズ等は普通は
買わないから、その描写表現力に驚いてしまうのも、
「さもありなん」という話かも知れないのだが・・

困った点としては、そのビギナー評価を元に投機層
が動いてしまい、2011~2013年(後継機G20/1.7Ⅱ
が発売された年)までの期間で、G20/1.7の中古相場が
不条理に高騰してしまい、「入手したくても、コスパ
が悪すぎて買えなかった」という問題が生じた。


だが、後継機G20/1.7Ⅱの登場後は、投機的要素も
無くなってしまった為、ほどなくG20/1.7の中古相場
も下落して適正化した。

私は、こうして「市場に踊らされる事」は好まない為
これらの状況は不快であった。G20/1.7ごときの
性能(描写表現力5点満点中4点の個人評価)で、
「神レンズだ!」と大騒ぎするビギナー層の評価も
鬱陶しかったし、場合により、その好評価の原因は
投機層がレンズを「商品」として、より高価に転売
する為に、さらに後押しして「神格化」を拡散した経緯
(ネット上での情報操作)の可能性も捨てきれない。

まあ、つまらない話だ。カメラやレンズはあくまで
実用品であるから、個人等が、それの売買で儲けよう
というスタンスには賛同できないし、さらに言えば、
自分自身で正しい機材(レンズ)の価値を判断できず、
他人の言う事に振り回されてしまうビギナー層の
スタンスにも賛同できない。撮影機材の価値を判断
するのは、周囲の意見ではなく、あくまで自分自身だ、
消費者・ユーザー毎に、機材の使用目的も、それを
扱うスキルも違うのだから、当たり前の話であろう。
これは大原則であり、ここを曲げる訳には行かない。
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さて、本G14/2.5の話がちっとも出ないが・・


まあ、平凡なレンズである。小型軽量の準パンケーキ型
である事がメリットだが、単焦点の28mm相当広角は、
銀塩時代では「通向け(上級者向け)」と呼ばれていた
画角だ。(例:銀塩高級コンパクトGR1シリーズ)

これをビギナー層が使いこなせるのか?という点だが
多くのμ4/3機には、デジタル・ズームやデジタル・
テレコン機能が搭載されている。よって、単焦点広角
だから使い難い(=何をどう撮ったら良いかわからない)
という課題は、銀塩時代よりも若干緩和されているで
あろう。
特筆すべき推奨できるレンズでは無いが、比較的安価
なので、機会があれば所有しても悪く無いと思う。

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では、4本目のμ4/3システムはトイ魚眼だ。
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レンズは、Lomography Experimental Lens Kit Fisheye
(新品購入価格 3,000円相当)
カメラは、PANASONIC DMC-GF1 (μ4/3機)

前記、2013年発売のμ4/3専用トイレンズ3本セットの
内の1本で、魚眼タイプ(円周型魚眼160度)である。
実焦点距離は不明(非公開)であるが、だいたいこの
あたりの記事内の順序で紹介しておく。
なお、魚眼レンズにおける実焦点距離の差は、あまり
重要では無く、注目すべきは、そのタイプ(円周魚眼
なのか、対角線魚眼なのか)と、その画角(180度とか)
の2つのスペックである。
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で、こちらは完全な「トイ魚眼」であるから、高い
描写力(Hi-Fi特性)は得られない。
これをどう使うか?というのが最も難しい課題であり、
有効な「用途開発」が大変困難なレンズだと思う。

前述のとおりLomography Experimental Lens Kitは
生産完了となってしまっている模様なので、現在での
入手性は低く、非推奨である。まあつまり無理をして
まで探し、高額相場で入手するような類の製品では無い。

また「どうしても欲しい」などと後になって言い出す
人達にも課題があり、2013年~2020年頃までの長期に
渡って販売されていて、いつでも安価に買えた、この
システムを欲しかったならば販売期間中に買わなかった
事が失策であろう。なお、その期間で中古も1~2度
見かけた事はあった。今後も場合によっては中古品の
流通があるかもしれないが、発売時価格(約9000円) 
を超える投機的プレミアム相場になってしまっている
場合には、そこまでの実用価値は無いキットなので、
見送る事が賢明だと思う。

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さて、5本目のシステム。
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レンズは、OLYMPUS Body Cap Lens BCL-1580

(15mm/f8)
(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)

今回の記事では、似たようなシリーズのレンズで、
かつトイレンズ系のものが多くなっているのだが・・


μ4/3のシステムは、その画角がフルサイズ換算で
2倍となる事を利点として、小型軽量の「望遠システム」
としての利用が、その特性上からは正しい選択だ。

だから、あまりμ4/3システムで広角レンズを主体
として使用したいとは思わなくなる為、μ4/3機用
の(単焦点&高性能)広角レンズは、その販売数の
少なさから量産効果が出ず、どうしても高額になって
しまう。そうなるとコスパが悪く感じる為、個人的
には、μ4/3システムの広角ラインナップを充実
させたいという気にはあまりなれず、特殊レンズや
トイレンズ等ばかりになってしまっている次第だ。
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本レンズは、2012年に発売されていて、すぐに
新品で単品購入している。前述のようにμ4/3で
広角システムを主力にしたくなかったから、あえて
安価なものを購入した次第だ。

ちょっとした課題としては、翌年2013年発売の
OLYMPUS OM-D E-M1本体に、ボディキャップ代わりに、
本BCL-1580が付属していたキットが販売された事だ。

後年、E-M1Ⅱ発売(2016年)以降では、旧機種の
E-M1の中古相場は急落し、コスパが良くなった為
私もそれを入手したのだが、購入検討時に本レンズ
が付属している中古品が多く、ボディキャップ
代わりとは言え、レンズが重複してしまうのは
無駄な気がして、E-M1の中古の機体選択の幅が
少し狭まった事があった。

メーカー側としては、E-M1ボディ単品発売時での
他機や他社機との差別化の為に(注:ほぼ同時期に
SONYよりα7/Rが発売されている)顧客サービス
としての、本レンズの付属であったのだろうが、
発売から時間が経っていたレンズなので、既に
所有していたユーザーも多かったかも知れない。

「所有している物と重複する」という、その些細な理由
でE-M1の購買意欲の減退にも繋がる。さらに言えば、
なんだかメーカー側で沢山作りすぎたレンズの在庫品を、
おまけにつけているような印象もあり、好ましく無い。
まあ、どうせやるならば、E-M1と本レンズを同時発売
にして、それでセット品を作るべきであっただろう。
・・でもまあ、いずれにしても、これは些細な話だ。
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本レンズBCL-1580だが、正式なレンズでは無い
(オリンパスでは、ボディキャップとしての
アクセサリー扱いだ)とは言え、レンズ構成は
3群3枚のトリプレットで、F8の円形絞りがある事も
あって、テッサー並みに、そこそこ良く写る。
(注:経験的には、3群4枚のテッサーと、3群3枚の
トリプレットは、絞り込むと同等の写りとなる。
ただし、絞りを開けた場合、トリプレットは場合に
より「シャボン玉ボケ」が発生する可能性がある。
→それはそれで、良し悪しあるだろうが・・)
最短撮影距離は30cm、一応MFのピントレバーもある。

価格も安価であるので、まあまあコスパは良いが、
意外にも、あまり中古流通は多く無い。


恐らく、所有している人が不要だと思ったとしても、
わざわざ、本レンズを中古店に売りに行く事も無く
(売却しても二束三文であるからだ)そのままで
死蔵してしまっているのかも知れない。


まあ、もし中古があれば、2000円前後という
感じになるだろうか。
ボディキャップ代用として、複数のμ4/3機に
付けるまでの必要性は無いとは思うが、1つ位は
持っていても悪く無い。

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では、次は今回ラストのμ4/3システム
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レンズは、LAOWA 17mm/f1.8 MFT (LAO0049)
(新品購入価格 19,000円)(以下、LAOWA17/1.8)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G6 (μ4/3機)

2019年発売の中国製μ4/3機専用広角(準広角相当)
単焦点MFレンズ。

本レンズはμ4/3専用で、他マウントでは発売されて
いない。(型番MFTはMicro Four Thirdsの意味)

恐らくだが、ドローン等への搭載も意識している
のであろう。(参考:近年の高性能ドローンでは、
μ4/3のカメラユニットを搭載し、市販μ4/3レンズ
が装着できるケースもある模様だ)

その場合、本レンズの小型軽量が活かせるし、
実焦点距離の短い広角レンズであるから、空撮時には、
ほぼパンフォーカス撮影で事足りるであろう。
わざわざAFを動かして、ドローンへの搭載機構の
構造を複雑化したり、バッテリーの消耗を早くする
無駄を省ける。つまり本レンズであれば、ピントが
固定のままで空撮が出来る、という事になる訳だ。

空撮では無く、実際の一般写真撮影の場合でも、
パンフォーカス化のメリットはある。
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以下、少し長くなるが、技術的な話を中心に
進めていこう、これは本レンズ自体の長所短所等の
話よりも、はるかに重要な事だ。

で、本LAOWA17/1.8の被写界深度の例であるが、
このレンズを、軽くF5.6程度まで絞って使う
だけで、撮影距離を2m前後と設定しておけば、
もう、1m~∞(無限遠)までは全てピントが合う。

(注:被写界深度を計算する為に必要となる
パラメータである「許容錯乱円(径)」の
定義は、デジタルにおいては極めて曖昧であり
誰も(専門家でも、メーカーでも、研究者でも)
ちゃんと数値の定義が出来ていない。
→例えば、オリンパスでは、フィルムでの値の、
0.033mmの半分、0.016mmを提唱しているの
だが、これで計算しても、実際の撮影時での感覚
との違和感が大きい。そこで個人的には、デジタル

の場合でも、フィルムと同様の0.033mm程度を
許容錯乱円(径)として用いるのが適正と見なし
本ブログでは、このパラメータ値を用いた場合
での被写界深度の値を計算している)

まあつまり、ピント合わせの必要が無いので、
レンズをどこに向けても、AFで一々合焦(ピント
合わせ)をしなくても、ゼロタイムで瞬時に
撮影が可能であり、速写性が極めて高い。
(勿論、動画撮影時でも連続AFの必要性が無い)

現代のビギナー層では、「AFが速いシステム」
(カメラ+レンズ)を買うと、それを自慢して
「爆速AF!」などと言うのだが、どんな速い
AFシステムでも、なにかしらの時間はかかる。

特に、AFが近距離と遠距離を大きく移動する
ような撮影条件では、いくら「爆速AF」でも、
AFは遅くてかったるく、速写性は劣ってしまう。

(参考:近年の高級μ4/3機では、AFが動く距離
範囲を3つのゾーンに区分し、その制限の中では
合焦速度を速めようとする工夫もある。
また、SONY α99系一眼レフでも同様に、AF合焦
範囲の上限/下限距離を制限する手動設定ができる。
ただし、合焦距離を制限するのは、趣味撮影には
向かないので、あくまで遠距離スポーツ等の業務
撮影分野の場合で、一定の被写体距離条件の下で
AF動作の迷い(速度低下)を防ぐ為の機能だ)

それが、こうした「MFパンフォーカスシステム」
ならば、どんな場合でも「ゼロ秒」で合焦が
完了する訳だ。ピント合わせは「不要」なので
AFでの「速度」という概念すら持つ意味が無い。

この「パンフォーカス撮影技法」は、今から50年
以上前の銀塩時代であっても、当時の中上級層で
実践されていた。

だが、当時の撮影機材環境では、やや苦しい
ところがある。例えば、当時であれば一般的に
入手できる広角レンズは、28mmが最広角だ。
このレンズを用い、銀塩35mm判フィルム使用時、
F11まで絞ってピント距離を3mに設定すれば、
およそ1.5m~∞の範囲でパンフォーカスとなる。
又は、F8に絞ってピント距離5mであれば、
約2m~∞の範囲が被写界深度である。

これらの用法は、先輩層等からの口伝で伝え
られていたり、あるいは当時のMF28mmレンズ
を入手して現物を見れば分かるが、F8やF11の
位置の絞り値の指標が異なる色で書かれていたり、
加えて、被写界深度指標(目盛)もあるから、
その原理を良く理解し、見て設定すれば、それで
パンフォーカス撮影が実現できた次第であった。

それに、当時のレンズは、まだ性能的に未成熟
な点もあり、絞りを開けていくと、どんどんと
収差の発生が酷くなり、解像感等が無くなって
しまったから、そうした諸収差の一部を減らし、
(MTF特性を向上させて)高画質で撮る為にも、
絞りをF5.6~F11程度に絞って使う必要性が
あった次第である。
(注:現代においてもシニア層等では、この時代
の感覚のまま、「どんなレンズでもF5.6以上に
絞って使う」という人達が多い。現代レンズでは
収差補正が行き届いており、画質向上の目的で
そこまで絞り込む必要は、あまり無い)

だが、当時の低感度の、具体的にはASA(ISO)
50~100程度のフィルムでは、こういう設定を
するとシャッター速度の低下が著しい。
だから、手持ち撮影ではブレてしまうので、
皆、三脚を使って撮影をしていた訳だ。

まあ、ストリート・スナップ等では、このような
ゼロタイム合焦技法は有効なのであるが、手持ち
撮影が前提では、ブレを防ぐのは容易では無い。

よって、あまり絞り込まずに、ゾーン(範囲)
フォーカス(例:35mmレンズで、絞りF4で、
ピント位置が5mならば、3.5m~10mの範囲で
ピントが合っている)として使うのだが、
残念ながら、当時の(今もか?)アマチュア層の
写真知識・技術では、こうした専門的な技法は
使えない。だから、職業写真家層などでしか
ストリート・スナップを上手く撮る事は困難で
あった訳だ。

そして、その後数十年が経ち、1990年代頃とも
なると、世間的にも肖像権等のコンプライアンス
の概念が普及していくので、街中で見知らぬ人を
撮影する、などのスタイルは、そもそも出来なく
なってしまう。(=「盗撮」として犯罪となる)

1990年代には、銀塩RICOH GR1シリーズ等の
ストリート・スナップ専用とも言えるカメラが
発売され、それ以前の時代での職業写真家層に
よる、ストリート・スナップ撮影のスタイルに
憧れた上級層等が、GR1等を入手したのだが、
残念ながら、もう、その時代では、見知らぬ人
にカメラを向けるなどは許されず・・
「何撮っているんだ、コラ!」等と、言われて、
ヤバい人などの場合、身の危険を感じてしまう
ような状況(汗)になっていた訳だ。
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さて、本レンズLAOWA17/1.8の話に戻る。
本レンズであれば、μ4/3機用の為に、実焦点
距離が短く、F5.6程度まで軽く絞るだけで、
換算34mmの準広角画角で、ほぼパンフォーカス
撮影が実現できる。

「ブレ無いのか?」というビギナー層の心配
事項だが、日中での明所(EV=15、つまり晴天)
での撮影であれば、その場合のシャッター速度は、
およそ、ISO100で1/800秒~ISO200で1/1600秒
程度となる。(注:曇天ではこの半分位)


これだけ速いシャッター速度が得られているので
あれば、手持ち撮影でも手ブレなど起こりようが
無いし、又は、スナップ撮影で良く課題となる
「カメラを振りながら構えて撮ったら、その
 動きでブレてしまった」という状況も、シャッター
速度が十分に速いので、あまり起こり得ない。

(注:暗所に向いている状態で、シャッターボタン
を「半押し」してしまうと、そこでAEが固定される
カメラ設定にしていた場合、低速シャッターとなり、
そこからカメラを振ると、低速シャッターのままで
ブレが起こると同時に、被写体が明所に存在すると、
酷いオーバー露出となってしまう。→典型的失敗例)

また、このパンフォーカス設定では、ドローンや
車両(ドライブレコーダーとして)に、あるいは
スポーツ(アクションカメラとして)用途等で、
本レンズを搭載した場合、空中や機動中での振動は
手ブレと同等となるだろうが、シャッター速度が
1/1000秒前後も出ているのであれば、あまりその
ブレは(静止画撮影であれば)影響が少ない。
(注:動画撮影の場合は、多少問題になるだろう。
その場合は、動画手ブレ補正システムが必須だ)

ともかく、一般写真(静止画)撮影の場合では、
本LAOWA17/1.8は、パンフォーカス設定として
使うのが、撮影範囲の幅を広げる、速写性が
得られる、などの効能から、なかなか有効だ。

この設定でも、昼間の静止画撮影であれば、
手ブレ補正機能も不要なので、今回の母艦は
内蔵手ブレ補正を持たないDMC-G6を使用した。
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現代のビギナー層において、「手ブレ補正機能が
入っていなければ嫌だ(上手く撮る自身が無い)」
と泣き言を言っている状況は、ここまで説明して
きたような、写真撮影上の基本原理、すなわち
被写界深度、露出値(絞り値やシャッター速度)、
手ブレ限界シャッター速度、等の概念、知識や
経験則が皆無である事が、最大の問題点である。

たいして難しい話では無い、写真の教科書等を
読めば、どこにでも書いてある事だし、ちゃんと
読めば1日程度で、それは理解できるであろう。

わからない部分があれば、実際に自分で実践して
確かめて見たらよい。(注:現代のユーザー層は、
その実施検証をしないのが課題だ。ネットで検索
して調べただけで、わかった気になってしまう
から、いつまでも技能が身につかない。また、
そうしたネット情報の信憑性も、要注意だ)


わからない事は放置せず、必ず自身でわかるまで
試して確かめてみる、ここが大原則である。

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では、「μ4/3用レンズ・マニアックス広角編」は、
このあたり迄で。次回記事は、「標準編」となる
予定だ。

レンズ・マニアックス(33)

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過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介の
マニアックなレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ4本を取り上げる。

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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、NIKON AF-S DX Micro NIKKOR 40mm/f2.8G
(中古購入価格 約20,000円)(以下、DX40/2.8)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)

2011年に発売されたDX(APS-C機)専用準標準
(標準画角)AF等倍マクロレンズ。


(注:Micro と NIKKORの間にはハイフンは入らない。
ただし、Ai時代の「Micro-」にはハイフンが有る。
また、「NIKKOR」は、いつでも全て大文字だ。
レンズ本体にはちゃんとそう書いてあるが、このあたり
を間違えている情報がとても多く、あまり好ましくない。
なお、F値の表示は、NIKON WEBではf/表記。レンズ上
では、1:2.8表記だ。統一性が無いし、そもそも各社で
バラバラなので正解が無い。そこで本ブログでは、昔から、
40mm/f2.8といった暫定表記法を、やむなく用いている)
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本レンズは、発売時から注目していて「購入予定リスト」
に載せていたのだが、その際の「想定購入金額」は、
「2万円」と記載しており、それよりも高価であれば購入
しない。で、やっとその中古相場まで下がったのが発売から
8年後の2019年初頭であった。税込み19,980円で購入した
次第である。(注:NIKONは、フルサイズ機全面移行を
目論んだのか?この頃からDX型レンズの新品実売価格も
大幅に低下、連動してDX型のレンズ中古相場も下落が
始まっていた。現在においては、私の入手価格よりも、
さらに安価となり、買いやすくなっているだろう)

発売時定価は36,000円+税であり、「エントリーレンズ」
と見なす事が出来るであろう。

この時代、「エントリーレンズ戦略」は各社が実施していた。
その理由は、毎回の説明となるが、「スマホやミラーレス機の
台頭による、一眼レフおよびその交換レンズ市場の縮退」を
危惧しての措置であり、エントリーレンズを初級層等に対して
の「お試し版」とし、その後の高級レンズ販売や、あるいは
自社マウントシステムへの「囲い込み戦略」を行う為である。

なお、これは様々な商品市場で行われている、ごく当たり前の
市場戦略であるが、カメラユーザーの中には、こうした戦略の
意味が全く理解できずに、ただ単に「安価で品質や性能が悪い
レンズである」と酷い誤解をしている人が極めて多い。

また、この市場戦略を理解していたとしても、これらを
「捲き餌(まきえ)レンズ」と呼ぶ人達も一部に居る。
さすがにレンズを「エサ扱い」では、売る側にも買う側にも
失礼な話であろう。むしろ、「捲き餌」という言葉には、
「悪事」を表す意味も若干ある。なので、そうした場合には
エントリーレンズを「下に見ている」又は「敵視している」
心理状態も多々あるのだろう、と分析している。

勿論、エントリーレンズは、どれも高品質・高性能である。
もし「お試し版」が、がっかりする性能しか持たなければ・・
その後、そのユーザーは二度と、そのメーカーの製品を買って
くれなくなってしまう、それは市場戦略上、有り得ない。

(注:近年、化粧品のTV CMで、「我が社は試供品と言えど
品質は一切妥協していない」という趣旨の宣伝があった。
まあ、当然の話だろう。試供品の品質が悪かったら、消費者を
「囲い込む」事は不可能であるからだ)

だからエントリーレンズはどれを買っても、高品質(高性能)
かつ、コスパが極めて良い事が保証されている。
まあ、決してビギナー向けだけの廉価版商品では無い訳だ。

また、近年普及している中国製等の海外製新鋭レンズでは、
低価格なものも多いが、それらはエントリーレンズでは無い。
何故ならば、そうしたレンズを売った後に繋げるべき自社の
高額製品が無いからだ。

その手の海外製レンズは、徹底的にコストダウンを施して
大量販売を狙った「ローコスト・レンズ」であるか、あるいは
昔の名レンズの設計をコピーする事で、新規開発経費を大幅に
削減した「ジェネリック・レンズ」である場合が殆どだ。

なお、コストダウンの場合も、ジェネリックの場合も、性能や
品質が劣る訳では無い。私は多数の(15本以上の)それら
新鋭海外製レンズを所有しているが、まあ、いずれもコスパが
良いレンズばかりである。

ただし、ジェネリック設計の場合は、元にした旧レンズの設計
上の弱点は存在する。それを認識して、問題点を回避しながら
用いるのは上級クラスのスキルが必要となる。

同様にローコストレンズでも、価格的な制限による性能上の
弱点が存在するケースもあるので、同様にその回避は高度だ。
そうした措置が出来ないビギナー層等では、「やはり中国製だ、
安かろう、悪かろう」という評価になってしまうのも、まあ、
やむを得ないだろう。
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さて、本DX40/2.8はエントリーレンズである、
NIKONのエントリーレンズは、他には本シリーズ第1回記事で
「AF-S DX NIKKOR 35mm/f1.8G」を紹介している。
その記事でも書いたが、NIKONのエントリーレンズは、
仕様上で手を抜く事は行っていない。


DX35/1.8も本DX40/2.8も超音波モーター搭載の仕様であり、
AF速度・AF精度の向上の他、今回使用機のNIKON D5300と
いった初級機においても、レンズ内モーターであるから問題
無くAFが動作する。(注:NIKON下位機種はレンズ内モーター
が無い場合、あるいは、当該プロトコルに対応していない場合
には、AFが効かず、MFでしか撮影できない)

また、M/A位置を持ち、つまり「シームレスMF」を実現
可能である。(AFで撮影中、任意の時点でMFに移行できる)

但し、この仕様は個人的にはあまり長所だとは思っていない。
何故ならば、シームレスMFを実現するには、ピントリングを
無限回転式にせざるを得ないからだ。この時、最短撮影距離
および無限遠でピントリングが停止する感触が手指に伝わら
無いと・・
MFが必須となる、マクロでの近接撮影や、望遠レンズでの
無限遠距離撮影時に、速やかにそれらの撮影距離へ追従する
MF設定が出来ない。つまり、操作にモタモタして撮影機会を
逃してしまう。勿論だがAFは万能では無いので、遠距離を
飛ぶ小さい野鳥とか、近接撮影で被写界深度が浅い状態に
おいては、MFでピントを合わせる必要がある。

現代では上級MF撮影技法を実践するユーザーも減り、こうした
とても重要なポイントが、初級ユーザー側でもメーカー側でも
理解できずにいるのではなかろうか?そうであれば残念な話だ。

まあでも、NIKONにおいては本レンズを含め多くのレンズが
「無限回転式ピントリング」+「有限距離指標」の仕様となって
いるのは好ましい。これは他社では、高級レンズにしか搭載
されていない機構である。

この仕様であると、無限回転式ピントリングであっても、
最短撮影距離と無限遠で、僅かにヘリコイドが停止する感触が
指に伝わってくる為、前記の上級MF撮影技法を、かろうじて
実践する事が可能なのだ。

まあ、他社等においては(特にミラーレス機用レンズの場合)
無限回転式ピントリングのみの仕様となっている場合が殆どで
あり、これは「どうせ、こういうレンズを買うユーザーは
ビギナー層だから、MFなどでは使わないに違い無い」といった
思い込みのレンズ設計思想が見受けられて、好ましく無い。


まあ、そうであれば酷い意地悪であるか、または高級レンズに
それを搭載しているならば、それも酷い「仕様的差別化」であり、
または、そんな事(MF技法)は何もわかっておらずにレンズを
設計しているかだ。今時はメーカー設計者であっても、MFでの
多数の写真の撮影経験を持つ人など、殆ど居ないだろうからだ。

なお、高額な製品と安価な製品の仕様や性能を「差別化」する
事については、当然の製品ラインナップ戦略であるとは言えるが、
本来、その思想においては「高級品に、優れた性能や新機能を
搭載し、廉価版や普及品には、それを搭載しない」という状態
が本筋であるべきだ。(=下位が標準となり、上位は付加価値)

だが、現代においては、そこまでの高性能や多数の新機能が
(技術的に成熟してしまっている為)開発できていない。

よって、ではどうするか?というと、下位機種になるほど、
順次性能を削っていく不条理な「仕様的差別化」を行う訳だ。
これは、上位製品を使っていて、下位機種を使うと、
「あ、あの機能が無い、この機能が無い」と、性能や機能を
「出し惜しみ」している傾向が、とても強く見受けられる。

これは、ある意味「意地悪」なやり方であり、好ましく無いし
本来の「仕様的差別化」では無い。これは、新たな付加価値を
創生できないメーカー側に全ての責任がある事であり、
現代においては「付加価値」とは「値上げの理由」という
概念にまで成り下がってしまっている。これは「モノづくり」
の真理からすれば、相当に的外れな状況であろう。

そして、下位機種の性能や機能を制限している度合いは、
各メーカーによって大差がある。良心的なメーカーに
おいては、下位機種でも性能制限を殆どかけていない。


だが、ここには「良心的」といった内容とは別の理由もある。
性能制限(=仕様的差別化)が強いメーカーは、市場シェアが
高い、つまり人気メーカーばかりである。

つまり、それらのメーカーでは、より上位の(高価な)機種を
買って貰いたいが為に、そうした仕様差別化を細かく行うのだ。
だが、そうすると下位機種の性能や機能は「スカスカ」に低下
してしまう。(注:これらは架空の話ではなく、事実である)

市場シェアの低い他メーカーでは、人気メーカーのその弱点を
突いてきて、下位機種でも性能制限をあまり掛けない。
その結果、低価格帯の機種同士を見比べると、人気メーカーの
機種よりも、他メーカーの機種の方が、性能や機能が優れる。
そうやって、他メーカーでは、少しでも人気メーカーに対抗
しようとしている訳だ。

結局、人気メーカーの下位機種は、コスパ視点においては、
買うべきではなく、単にコスパだけみれば、他メーカーの
下位機種の方が好ましい訳だ。

では何故人気メーカーの上位機種を買うのか?という理由だが、
その場合は、その機種に搭載されているパフォーマンス(性能や
機能)を純粋に必要とする場合だけだ。そうであればコストが
多少高くても、コスパ(コストとパフォーマンスの比)は
許容できるレベルに落ち着く。

まあつまり、人気メーカーの上位機種は、そのパフォーマンス
を必要としない、あるいは使いこなせないといった初級中級層
は、本来では買う必要が全く無い機材なのだ。

だが、そのあたりが全くわかっていない新規初級ユーザーが
近年では多数増えてきており、必要としない超絶性能を謳った
新鋭機は、むしろ初級層にしか売れていない状況だ。

これは極めて不自然な市場の状況ではあるが、そうした、
初級層の「無駄な出費」により、かろうじて市場は崩壊せずに、
なんとかメーカーや流通はカメラ事業が継続できている状態
でもある。まあ、とても変な話だが、そういう世情なので
やむを得ないとも言えるだろう。

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さて、余談が長くなった、本DX40/2.8は、あまり仕様(性能)
に手を抜いていないエントリーレンズである事は良くわかった。

では実際の描写力はどうか?
・・実は、これが、あまり芳しく無い状態なのだ(汗)
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このレンズの描写傾向は、「平面マクロ」に近い。
(その用語の意味は、匠の写真用語辞典第5回記事参照)

NIKON(NIKKOR)の典型的な「平面マクロ」は
「Ai Micro-NIKKOR 55mm/f3.5」(1970年代前後、
すなわち、55mm/F3.5系列のレンズ群)であろう。

(特殊レンズ超マニアックス第20回「平面マクロ編」参照)
で、その55mm系レンズは、前後の時代にも色々と変遷して、
1990年頃に60mm/f2.8となり、光学系も勿論変更された。

Ai AF Micro NIKKOR 60mm/f2.8S(以下、AiAF60/2.8)
(ミラーレス・マニアックス第57回記事)は、ボケ質が
固く、あまり好みでは無いレンズであったのだ。


本DX40/2.8は、そのAiAF60/2.8の描写傾向にそっくりだ。


慌ててレンズ構成を調べてみると、本DX40/2.8が7群9枚
AiAF60/2.8が7群8枚。・・まあ、違うと言えば違うし、
似ていると言えば似ている、という感じだ。
AiAF60/2.8を2/3程度にダウンサイジングして、APS-C機
専用としたのかも知れない。そうであれば、まるで近年の
中国製の「ジェネリック・レンズ」と同様の設計手法だ。

・・と言う訳で、あまり好みでは無い描写傾向のレンズを
また購入してしまった訳なのだが・・(汗)
まあ、嫌いだと言っていても始まらない。本レンズの弱点を
上手く回避する方法論や用途開発を追々考えていくとしよう。

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さて、次のレンズ
_c0032138_16225958.jpg
レンズは、TOKINA AT-X M90 (MACRO) 90mm/f2.5
(ジャンク購入価格 2,000円)(以下、ATX90/2.5)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)

発売年不明(1980年代前半頃?)の、MF中望遠1/2倍マクロ。
正式名称も、もはや記録(情報)が無くて不明。
「旧来、米Vivitar社に供給していた(OEM生産であった)
 同型マクロを、自社ブランドで国内発売したレンズだ」
という情報がある。
_c0032138_16225935.jpg
この時代のレンズとしては、TAMRON SP90/2.5(52B、
1979年)が極めて著名であり、こちらのTOKINA版は、
マニア層にも、あまり知られていなかったと思われる。

ただ、一部のマニア層の中では「NASAが設計に関与した」
という噂が流れていた模様だが、私はその話を一度も聞いた
事はなかったし、「それは、まったくのデマであった」
という説が一般的になっている模様だ。

まあ、レンズ設計は、実際のところ専門的作業であるので
レンズ専業メーカーでもなければ、ノウハウも無いだろうし、
そう簡単には行かないであろう。
とても面倒なレンズ光路設計の計算をやっている暇があれば、
NASAであれば、もっと色々と別の、天文やらロケットやらの
重要な計算シミュレーションの仕事が多数ある筈だ。

いったい何故、根拠が無く、しかも少し考えれば有り得ない
だろう話が、デマとなって流れるのか? 理解できない。
そして、根拠の無いデマを、そのまま転記したりして
他に伝えてしまう事も、誤った情報が拡散するだけだ。
_c0032138_16225905.jpg
さて、本レンズは近年でのジャンク購入であるが、正直
失敗した(汗) 老舗の中古カメラ専門店のジャンクコーナー
から「サルベージ」したのだが、そこそこ程度も良く、
「ずいぶんと安いなあ」という印象があって、「もしかして
値段の付け間違いか?」とも思って、さっさと購入し、
逃げるようにして帰ってきたのであった(笑)

マウントは不明であったが、まあ、どのマウントでも
使用できる環境はある、PENTAX Kマウントであった事が
判明し、さて、実際に使ってみよう。

「ふむふむ、なかなか良く写るレンズだ・・」と、何十枚
か撮っていて、ふと遠くに現れた野鳥にレンズを向けると、
なんと、ピントが全く合わない(汗)

「なんじゃこりゃ~?」と思って、ピントリングを見ると
∞(無限遠)の数mm前の所で、ヘリコイド(ピントリング)
が止まってしまい、それ以上廻らない。
この状態だと、約5m以上の距離にはピントが合わない。
「何かが、ひっかかって止まっているのか?」と、色々と
修復作業を試みたが、どうにもならない。

つまり、「故障品であった」という事なのだが、数百本の
レンズを所有していても、こうした不良は、なかなか見た
事が無く、珍しい故障だ。
「さすが老舗専門店、これを良く見つけたなあ」
とも思ったが、これは完全に私のミスだ。ピントリングの
動きは勿論チェックした上で購入はしていたが、無限遠まで
廻っているかどうか?は、完全に見落としていた(汗)

値段が安かったので逃げるように購入して帰ってきたのだが、
専門店であれば、勿論そのあたりまでちゃんとチェックした
上で価格を決めている。
「なるほど、これが安値の理由だったのか・・」と納得。

・・そう言えば、ここのところジャンクレンズの購入は、
あえて中古カメラ専門店を避けて、リサイクル店等での
購入を主体にしていたのだ。何故ならば、リサイクル店等の
中古相場は、専門市場の価格(相場)とリンクしておらず
値段が高いものや安いものがあるからだ、そうした中から、
「お買い得」と思えるレンズのみを選んで購入していたのだ。

逆に言えば、専門店の中古相場はシビアすぎる。すなわち、
安いものは本当に実用価値が無いものであり、ちょっとでも
使えそうなものは、そこそこ高価な相場となってしまうのだ。
・・まあ、カメラ・レンズ市場が縮退している近年においては、
中古専門店もシビアな経営をしていなかないと、潰れてしまう
訳だから、中古品の値付けも、当然シビアとなる。

リサイクル店で中古品を選ぶ感覚で、「ん? これは値段が
相場より安いな。値付け間違いか? では、これを買っておこう」
等という買い方は、さすがに専門店では、もう通用しない・・
という事であろう。

さて、まあ故障の件は良い、ジャンクレンズであるから、
そういう事も稀にある。それにまあ、マクロレンズであるから、
遠距離撮影が出来なくても、色々と使い道はある。
_c0032138_16225912.jpg
描写力であるが、驚く程良い。
何故本レンズがマニア層であまり注目されていなかったのか?
そこが不思議であるが、この性能は同時代の最大のライバル
TAMRON SP90/2.5に勝るとも劣らないであろう。

半故障品であった事が残念だ、いつの日かまた完動品を
見つけたら、それを入手する事にしようか・・・
(追記:本レンズからTOKINA製のマクロにハマってしまい
 その後、何本かを購入している。いずれ、他記事で、
 それらをまとめて紹介・評価する事としよう)

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では、次のレンズ
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レンズは、smc PENTAX-M (ZOOM) 80-200mm/f4.5
(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

1970年代後半頃(?)に発売と思われる、開放F値固定型
MF望遠ズームレンズ(注:型番の「ZOOM」は、レンズ上に
大文字で記載されているが、これが正式名称か?は不明)
こちらは、安価なジャンク品としての購入である。
_c0032138_16231071.jpg
型番の「M」は、当時、世界最小の一眼レフPENTAX MX
(1976年、現在未所有)の発売に合わせて設計された
小型軽量化されたシリーズのレンズ群である事を示す。

Mシリーズの一部のレンズは、それ以前の時代のK(P)型を
リニューアルした状況であったが、本レンズはどうやら
新設計の模様だ。9群12枚と複雑なレンズ構成であり、
最短撮影距離1.2mは、まあ普通か、そこそこ優秀な方だ。

本シリーズ第16回記事で紹介した、M75-150/4の姉妹
レンズに当たると思われる。 
小口径の開放F値固定ズームは、PENTAXのお家芸であり、
一般的な開放F値変動型ズームと比較して、ズーミングで殆ど
シャッター速度の変動が無く、画角変動からの被写界深度の
変化の類推や、手ブレ限界の変動もリニア(=1次直線的に
比例する)に変化する為、感覚的にも、かなり使い易い。
 
私は、銀塩時代には「ズーム嫌い」(=当時のズームレンズ
は単焦点レンズに比べて、画質やボケ質、最短撮影距離等の
性能全般が劣っていた為)であったのだが、たまに購入する
ズームレンズは、殆ど全てが「開放F値固定型」であった、
開放F値固定型ならば、まあ、ズームの他の低い性能は相殺
できるだけの長所だ、と見なしていたからである。

また、本レンズや、この時代(1980年前後)のMF望遠ズーム
の多くは「ワンハンド・ズーム」構造である為、それにより、
ズーミングとMFピント合わせの操作が同時に行えるので、
その点においても操作性が良い。

後年のAFズームは、殆ど全てピントリングとズームリング
が独立回転式である為、この時代のMF望遠ズームと比べて
MF操作性は非常に悪く、加えて、単にAFで撮る上でも、
回転式ズームリングは、直進式ズームに比べて、「迅速な
ズーミング操作を行う事が出来ない」という弱点を持つ。
(=「構え」における「持ち替え」が頻発する)
_c0032138_16231025.jpg
さて、本レンズの購入目的だが、例によって「ワンコイン・
レッスン」である。
それは、オールドレンズをジャンクコーナーから探して来て
安価に購入、そのレンズの課題や問題点などを探し出し、
かつ、その問題点を回避する練習を行う。


総合的に、高度で濃い内容の練習になる訳だが、それが、
500円~1000円という価格で行えるから、「これは一種の
レッスンとしては非常に安価だ」という考え方だ。

数千枚程度を練習撮影をした後では、旧来はこういうジャンク
レンズは処分や譲渡をしてしまう事が殆どであったが、近年は
できるだけ所有し続ける事としている。
それは、他の同時代のレンズと比較したり、あるいはレンズの
技術的な進歩の歴史を研究する為の資料となるからである。

だから、同一メーカーの類似のスペックで時代の異なるレンズ
を購入する事も十分に有りだと思っている。まあ、あまりに
時代が近いと意味は無いが、10年か、それくらいの時間が
経つと、そこそこレンズ関連の技術は進歩しているからだ。
その比較が、研究対象として、とても面白い訳だ。
_c0032138_16231054.jpg
本レンズだが、描写力はそこそこ良い。
ただしオールドズームの常で、逆光耐性は低く、ボケ質
破綻も出易く、また、望遠端での解像感の低下もあるので、
そのあたりは各課題を回避して使う必要はある。

最大の課題だが、先ほど「ワンハンドズームは操作性が良い」
と書いたのだが、本レンズの場合、ピントリングの回転角が
大きすぎる。最短から無限遠までのレンズ持ち替え回数は、
4~5回にも及び、せっかくのワンハンドズームなのに、
ズーミングとピント合わせが、同時にはやりにくい。
他社のワンハンドズームを使う際には、殆ど持ち替え無しで
ピント合わせが出来る場合が多いのに、そこだけは残念だ。

この弱点については回避が難しく、撮影前に、あらかじめ
ピントリングを想定した被写体距離の近くまで廻しておく
必要がある。だけど、予測不能の、不意に現れた被写体の
場合には、この手法も使えない。
まあ、なかなか難しいレンズと言えよう・・

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次は、今回ラストのレンズ
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レンズは、KAMLAN FS 50mm/f1.1 (初期型)
(新品購入価格 23,000円)(以下、FS50/1.1)
カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

2019年に国内販売開始された海外製レンズ。

台湾のメーカー(瑪暢光電有限公司/Sainsonic社)が設計し、
同社工場のある中国の「深セン」地区で製造されたレンズ
である。(なので、純粋な中国製レンズとは言い難い)

国内代理店としては、既にLAOWA製品等を扱っている
サイトロンジャパン社が務め、KAMLANブランド製品として、
家電量販店等でも新品購入が可能となっている。


ミラーレス機用のいくつかのマウントで発売されているが、
μ4/3用を購入した。こうしておくとμ4/3とSONY Eマウント
機で共用する事が出来る(後で紹介)
_c0032138_16232335.jpg
さて、本FS50/1.1は、かなりの大口径レンズである。
一応、本ブログでは「超大口径」は、開放F値1.0以下と
定義しているので、そう呼ぶ事は避けておこう。

5群5枚と、とてもシンプルな構成。が、これによる弊害
があり、そこは後述しよう。



製品の元箱には、「高折射率鏡片」を2枚使用していると
書かれている、これは日本語では、「異常低分散ガラス」
と訳すのであろう。
ただ、非球面レンズは使用していない、これも弊害となる
ので後述する。

製品の品質は、アルミ鏡筒で、そこそこ高い。
しかし、しばらく使っていると、稀にヘリコイドに引っ掛かり
が出るようになってしまった。引っ掛かると、ピントリングと
絞り環(無段階式)が恐ろしく重くなる。でも、上手くすると
また軽く廻るようになる。これは製造上の問題かも知れないが
引っ掛かりが発生する原因や条件は特定できていない。

本レンズは、他の一部の中国製レンズ、例えば「七工匠」の
ようなジェネリックレンズでは無い。今まで見た事の無い
レンズ構成なので、完全な自社での新規設計であろう。

近年では、パソコン上で動く、レンズ(光学)設計ソフトも
存在する為、専門技術者ではなくてもレンズの設計が可能だが、
「設計ノウハウ」があるかどうか?は別問題だ。

この手の(超)大口径レンズは、日本国内メーカーにおいても、
一時期それが流行していた。およそ1960年代前後の、かなり
昔の話だ。まあつまり「大口径化競争」が行われていたのだ、
だが、その時代のF1.2級レンズを、いくつか入手して使って
みると、極めて写りが悪い。

まだ大口径レンズを作るだけの技術的背景が未成熟であった
(例:非球面レンズは未登場、異常低分散ガラスも希少、等)
のに、無理に大口径レンズを製品化したからである。
_c0032138_16232307.jpg
本レンズもFS50/1.1も同様だ。非球面レンズを使用して
いないシンプルなレンズ構成の為、球面収差の発生が顕著だ。
またコマ収差も同時に発生しているのか? 解像感が殆どなく、
極めて甘い描写となってしまうし、この状態ではPANASONIC G
シリーズの優秀なピーキング機能さえ効かない。(注:同様に、
球面収差を意図的に増大させた「ソフト(軟焦点)レンズ」でも、
ピーキングは反応しない。つまり、ソフトレンズと同レベルの
低い解像力だという事だ)

絞り込むと、球面収差は口径比の3乗に反比例して低減していく
理屈であるが、かなり絞って、やっとピーキングが出る程度で
あるし、そもそも、そういう使い方では本レンズの大口径を
活用する事が出来ない。

なお、後述の、SONY機利用でピーキングレベルを「高」に
した場合は、なんとかピーキングを出す事が出来る。
_c0032138_16232324.jpg
また、自作ソフトウェア「超高精度ピーキング」アルゴリズム
であれば、撮影後の写真で、後付のピーキングが出来るので
ピント位置を確認可能だが(上図) いずれにしてもμ4/3機
での撮影時のピーキング(ピント)確認は困難である。

それから、絞りを開けて、背景等をボカした状態では、
昔(1960年代)の大口径オールドと同様の「ぐるぐるボケ」
が発生する。これは像面湾曲と非点収差等を補正しきれて
いない事が原因だと思われる。(ただし、ここは個人的
には重欠点とは見なしていない、ここは回避の方法論は
存在するからだ)

まあつまり、少ないレンズ構成なのは良い点(光線透過率の
向上、軽量化、製造コストの低減、等)もあるのだが・・
肝心の描写性能において、多くの収差が補正しきれておらず
結果的に60年も前の大口径標準レンズと同等程度の性能しか
得られていない。まあそれでも、当時の大口径標準が性能的に
及第点であれば良いのだが、それらオールド超大口径標準は、
性能的に満足いかないレベルであったからか? 1970年代
から1980年代にかけて、ほぼ絶滅してしまっている状態で
あったのだ。

KAMLANが、そのレンズ界での歴史を知っていたか知らずか?
まあ、現代において異常低分散ガラスを2枚使った程度では、
その収差の問題は回避できておらず、この程度の描写力での
製品化は、ちょっと成り立たないと思う。

さて、本FS50/1.1の最大の課題が「諸収差による描写力
の低さ」である事は良くわかった。では、それを回避して

使えば良い、それがユーザーの責務であろう。
「写りが悪い、ダメなレンズだ」と、投げ出してしまう
のでは、ビギナークラスの考え方だ。

では、ピント問題を解決する為、まず本レンズの母艦を変え
SONY NEX-7(APS-C機)で使用してみよう。
_c0032138_16234145.jpg
「何故、μ4/3機とSONY機で兼用ができるのだ?」という
質問はちょっとレベルが低い。電子接点の無いMFレンズだし、
イメージサークルがAPS-Cをカバーしている事は、レンズの
マウント・ラインナップからは明白だ。すなわちマウント形状
だけを変換してしまえば、本レンズは異マウントで共用できる。

まあ、その用法を目論んで、最初からμ4/3マウント用で
購入している次第だ。(注:但し、今回の組み合わせでは、
NEX-7に装着時、やや斜めにレンズが装着されてしまう)

こちらのNEX-7であれば、ピーキングを出す事ができる。
だが勿論、諸収差の発生は止められない。
ここは1つ1つ解決していく必要がある。

少し絞って球面収差を減らしながら・・ とは言え、ボケ量を
犠牲にせず、撮影状況に合わせた厳密で適切な絞り値を
設定する。それが良くわからない場合は、手動絞りブラケット
技法を用いる、本FS50/1.1の絞り環は無段階式なので、
微調整を行う事も容易だ。
それに加えて、解像感をあまり要求されにくい被写体を選ぶ。
_c0032138_16234147.jpg
依然、ボケ質が悪いが、ここについては、ボケを作らない
平面被写体を選ぶのも回避法の1つであろう。
または、ボケ質破綻回避技法を慎重に行って、良いボケ質
となっているものを選び出す。

あるいは、あれこれと複数の収差の課題を回避するのが
困難である場合は、エフェクトをかけて誤魔化してしまう
という最終手段も存在する。
_c0032138_16234198.jpg
本FS50/1.1の総評だが・・
まず、設計の不慣れ(ノウハウ不足)からか?現代の市場で
要求される性能レベルに達していない。
この課題の回避は、上級者以上のスキルが必要な為、この
時点で初級中級層の使いこなせるレンズでは無い事は確定だ。

しかしながら、歪曲収差、色収差については、良く補正
されており、周辺減光はAPS-C型センサーで僅かに出るが、
課題となるレベルでは無いし、μ4/3機ならば回避できる。

・・で、もしかすると、これらの課題は初級中級層や
初級中級マニア層でも、すぐわかり、問題視する要素なので
それら「目につきやすい部分」だけを、設計上で重点的に補正
したのであろうか? そうであれば「確信犯」であり、むしろ
手馴れた設計と言えるし、あるいは設計者やメーカー自身が、
そうした初級マニア的な視点でしか、レンズ性能を評価して
いないか?であり、後者であれば少々問題だ。

製造精度も少々怪しい、ヘリコイドの引っ掛かりは個体差かも
知れないが、気になる点であり、あまりに酷くなったら修理に
出すか廃棄処分にするしか無いであろう。

中国の「深セン」は、知人がかつて駐在していた都市であり
事情を聞くと、近代化の進歩が凄まじいそうだ。
(参考:七工匠のレンズも「深セン」で製造されている)
だけどまあ、全てが優秀な企業ばかりとも限らない、まだ
発展途上な部分もあるだろうし、本レンズは、同社での
「初号機」でもある、もう少し今後の製品展開を見ながら、
同社製品の品質や性能等については判断する事としよう。
_c0032138_16234128.jpg
価格だが、まあ安価であろう。でも、ビギナー層などでは
単純に「大口径レンズは高性能だから高価なのだ」と誤解
しているので「コスパが良い」と誤まった判断をしてしまう
だろうが、コスパの「パ」の字、つまり「パフォーマンス」
(性能)を判断しない限り、コスパ評価点は決められない。
本レンズの私の評価は、描写表現力もコスパ点も標準以下の
減点対象として、データベースに記載されている。

まあ、「今後の製品に期待」という結論にしておこう。

---
追記:本レンズは、発売後ほんの数ヶ月で「Ⅱ型」に
バージョンアップされている。
レンズ構成は全くの作りなおしで8枚(?)に複雑化された。
やはり上記の通り、この低性能での製品化は「失敗だった」
という認識なのであろう。
つまり、Ⅱ型は「ごめんなさい製品」であると思われる。
(=国内外の各メーカーにおいて、初期型等の製品で、
何らかの重欠点が発覚し、速やかに改良型等を発売する事。
そうした実例はいくつも知っているが、初期型のオーナー
にとっては不快な情報であろうから、具体例は記載しない)

ただまあ、Ⅱ型は大型化し、かつ価格も数十%もアップ
されたので、現状では購入に至っていない。

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さて、今回の第33回記事は、このあたり迄で・・
今回記事で紹介のレンズは、正直言えば、全て「失敗レンズ」
であった(汗) でもまあ、多数のレンズを購入していれば
こういう事もあるだろう。・・という訳で次回記事に続く。


特殊レンズ・スーパーマニアックス(43)MINOLTA ROKKOR 標準レンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に(分類して)紹介している。

今回は「MINOLTA ROKKOR 標準レンズ」編という主旨で、
MINOTAの銀塩時代の一眼レフ用MF標準レンズのうち、
「ROKKOR」(ロッコール)銘の入っている物を年代順に
8本(厳密には7本。1本はROKKOR以降)紹介しよう。

ではまず、最初のロッコール
_c0032138_16504932.jpg
レンズは、MINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm/f1.4(前期型)
(中古購入価格 1,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)

MINOLTAの1960年代前半のSRシリーズ一眼レフ用の
キット(付属販売)レンズであると思われる。
MC(=メーター・カプラー。つまり露出計連動やAE連動を
行うという意味)の型番は、まだこの時代では付いていない。

発売後およそ60年近くも経っているオールドレンズ
故に、経年劣化で、残念ながら、まともに動作しない。
具体的には、絞り羽根の粘りが発生していて、絞り環を
廻しても、何らかの軽い衝撃を加えないと、絞り羽根が
所定の位置まで絞り込まれない。

本レンズは2度目の購入(2010年代でのジャンク品)だ。
以前、2000年代に購入した同型レンズも、全く同じ
故障が発生して知人に無償で譲渡していた。
まあ、とっくに耐用年数を過ぎている状況であり、
ジャンク品であるが故に修理をする気にもなれない。

では、何でそんなに役に立ちそうも無いレンズを保有して
いるか?(または、何故2度も買ったのか?)と言えば、
本レンズは「虹のようなゴースト」を意図的に発生させる
事が出来、それが楽しいからだ。

レンズマニアックス第7回記事では1本の虹を発生させた
例を紹介したが、今回は大サービス(笑)で、4本の虹を
出してみよう。
_c0032138_16504965.jpg
・・まあ、これだけが本レンズの楽しみだ(汗)

ただ、この虹を出すのは少々難しい。カメラとの相性も
あるし(今回は、やや出にくいDMC-G1を使用)さらには
太陽光の入射角度の調整も微妙である。

今回はさらに、虹では無くて変則的なゴーストも出して
みよう。
_c0032138_16504907.jpg
で、これより古い時代のオールドレンズでも、このような
虹のゴーストを発生させる事が出来るものがあると思うが、
本レンズの場合は、コントローラブル(撮影技法により、
虹の発生の制御が出来る)である事が特徴だ。

ちなみに、本ブログで紹介する範囲、つまり私が所有して
いる範囲の機材は「1970年~2020年までの50年間の
機材のみ」と、だいたいだが制限をかけている。

以前、2000年頃には、1960年代~2000年という範囲で
収集していたのを、2000年代のデジタル転換期に、
1970年を目処にして、それより古い時代の機材の大半を
「古すぎて実用価値なし」と見なし処分してしまっていた。

だからまあ、後10年位したら、1980年以前の機材も
「古すぎて・・・」と、処分してしまうかも知れない。
逆に言えば、概ねいつの時代でも、まあ過去50年程度の
範囲であれば、それは「実用価値がまだある」という事を
意味する。
私は、コレクション(収集)を志向しているのではなく、
所有機材は全て「実用品」としたいから、こうなる訳だ。

そんな状況なので、1960年代前後の機材は、現在私が
所有している中では、かなり稀であり、カメラ・レンズを
合わせて、数台(本)くらいしか無いであろう。

本レンズあたりが、現有するレンズの中では、最も古い
時代のものだ。(他にも、キルフィット社製のレンズと、
NIKON Sマウントのレンズが1950年代製であったか?)
勿論、標準レンズとしての完成度も、まだまだの時代である、
本レンズの長所や短所をいまさら言っても始まらないであろう。

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さて、次のロッコール
_c0032138_16511500.jpg
レンズは、MINOLTA MC ROKKOR-PF 58mm/f1.4
(中古購入価格 1,000円)(以下、PF58/1.4)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

1960年代末頃?に発売の大口径MF標準レンズ。

少しづつであるが、標準レンズの完成度も上がりつつある
時代だ。PF、つまり5群6枚構成は、F1.7級標準であれば、
もうその構成でも十分なのだが、F1.4級の大口径とすると、
まだ諸収差の発生が大きい時代だ。
_c0032138_16511531.jpg
そして勿論、まだこの時代では諸収差を低減する効果の
大きい非球面レンズは使われて無いし、それが存在して
いたとしても、細密な加工が大変なので、極めて高価だ。


それ(非球面)が実用的になってからも、標準レンズに
非球面レンズが使われるのは、ごく最近の2010年代頃
からである。(近年であれば、非球面レンズであっても
「モールド金型」を使用して製造する事が出来る模様だ)

(参考:近年に新型の標準レンズが出てきている理由と
しては・・ 従来の技術によるレンズ構成での完成度が
1980年代頃に高まっていた為、その後も標準レンズを
新規開発する必要性があまり無かった。

特に、1980年代末にはAF化、1990年代にはズーム化、
2000年頃にはデジタル化を優先したので、標準レンズの
改良は、30年間以上も、ほったらかしであった。

で、現代、何故新型の高性能標準レンズが出て来ているかは、
レンズ市場の縮退により、利益率の大きい新製品を開発する
必要があったからだ。しかし、その措置により、標準レンズ
の価格は、銀塩時代の5倍前後も高価になってしまった(汗)

同等の仕様の製品がここまで高価になった例は、他の市場を
見渡してもあまり無い。あまりにこういう不自然な状況が続く
ようになると、誰も高額な新製品を買わなくなり、余計に
市場が縮退または崩壊してしまう。
まあ、だから近年には安価な中国製レンズ等が多数流通して
いる訳だ、つまり国内メーカーの市場戦略が、到底、まとも
だとは思えないから、その隙を突いている訳だろう)

---
さて、ここで「ロッコール(ROKKOR)」銘の由来であるが、
この名前が「六甲山」から付けられている事は、マニアの
間では極めて有名な話(=常識と言える)だ。まあ、その
逸話はWeb上や書籍等で無数にあるので詳細は割愛する。

しかし、六甲山の周辺で「ロッコール」が作られていた
訳ではなく、六甲山頂とミノルタ創業の地の西宮・武庫川
とは、直線距離で10km以上も離れている。

まあ、それを言うならば、「阪神タイガース」の応援歌は
通称「六甲おろし」と呼ばれているが、こちらも六甲山頂
から見て、甲子園球場(ミノルタ旧工場に近い場所だ)
は、直線距離で11kmも東にある。

何故、そうした離れた山を、メーカーや球団のシンボルに
するのか? ・・というのは、兵庫県民が言う「六甲」とは、
「六甲山」そのものを指すのでは無く、「六甲山系」全般を
表す訳であり、西宮市や神戸市等の阪神間地区の北にある
山々は、全て、ざっくりと「六甲」と認識されている訳だ。

「ロッコール」の名称は、ミノルタ製のレンズにおいて、
戦前の1940年代前後から使われていた模様だが、戦前の
ミノルタは、まだ企業としての形態が整っておらず、社名
や組織も色々と変遷している。社名が「ミノルタ(カメラ
株式会社)」となったのは、後年、1962年の事である。

また、実用的レベルに達したミノルタ初期MF一眼レフの
SR-7、SR-T101等の発売は、1960年代になってからだ。
(参考:NIKON FやPENTAX SP等と、ほぼ同時代)

その後、「ロッコール」の名称は、1980年代前半頃まで
使われていた。なお一眼レフがAF化された「αショック」は、
1985年である。つまり、αの時代には、もう「ロッコール」
とは呼ばれていない。

そう、この記事ではミノルタとして一眼レフ用MF交換レンズ
を作っていた1960年代~1980年頃の時代の標準レンズを
「ロッコール」で括って、網羅しようとする次第だ。

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では、3本目のロッコール
_c0032138_16511942.jpg
レンズは、MINOLTA MC ROKKOR-PG 58mm/f1.2
(中古購入価格 20,000円)(以下、PG58/1.2)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)

1970年前後?に発売の(超)大口径MF標準レンズ。

マニアの間では「鷹の目ロッコール」と呼ばれていて、
「神格化」された様相もあるレンズである。
(今時の言葉では、「神レンズ」として賞賛された)

型番「PG」は、5群7枚構成を表す。(P=ペンタ)、
(G=7番目のアルファベット)
この時代の他の一般的な大口径標準レンズが5群6枚構成の
変形ガウス型であるものが殆どの中、このレンズは1枚多い
事から(注:他にもMINOLTA MC PG50/1.4がある→後述)
本レンズが「良く写る」という印象に繋がったのかも知れない。

しかし、マニア層とは言え「絶対的評価感覚」を持っている
人は稀であるから、誰かが「鷹の目」だとか「良い写りだ」
と言えば、その話が何十年間も伝わってしまう状況が常だ。

で、単にレンズが1枚多いだけで、良く写るとは限らないし、
もしこの設計手法に圧倒的な優位性があるならば、この後の
時代の標準レンズは、他社製品も含め、全て5群7枚になる
筈である。(=デファクト・スタンダード化する)
しかし、実際にはそうなっておらず、各社、その後の時代
においても、殆どの標準レンズは、5群6枚か6群7枚の
構成に落ち着いている。

それと、銀塩時代のMINOLTAのMF一眼レフは、X-1
(1973年、銀塩一眼第4回記事)系の最高シャッター速度
1/2000秒を除き、他は全て1/1000秒機と、貧弱な性能
である。

で、1/1000秒はもとより、1/2000秒機であっても、
日中にF1.2のレンズを絞りを開けて使うのは不可能だ。

銀塩時代では(NDフィルターを使わない限りは)低感度の
フィルムを用いても、日中での絞り値はF4またはF5.6が
限界であり、それ以上開けるとシャッター速度オーバー
となる。

だから、本レンズにおいても、どんな撮影環境で、どんな
カメラ(レンズ)設定で、どのような技法で、どのような
写真を撮ったのか? そのあたりが不明である限りは、
正しく本レンズの評価が出来ていたとは思い難い。

まあともかく、方法論が不明な他人の評価は頭からは信用
しない事が、マニア層における大原則である。評価を行う
のは、どんな場合でも、あくまで自分自身なのだ。
_c0032138_16512296.jpg
さて、本PG58/1.2について評価したいのだが、残念ながら
本レンズも絞り羽根が故障(粘り)している。

2000年頃に1度修理に出して直したのだが、経年劣化で、
また同じ故障が発生し、現在は絞り開放でしか撮れない。
ただ、長年使って来ていて、性能が低いレンズでは無い
事は、わかってはいる。

(描写表現力の項目の評価点は5点満点で4点)

しかし、「神格化」される程の「物凄いレンズ」では無い。
描写力が評価点4点以上のレンズは、いくらでも(私の所有
している範囲においても、およそ100本以上も)あるのだ。

本レンズの銀塩時代での「神格化」が、本当に他の様々な
レンズと比較して、「このレンズは凄い!」と言っている
のかどうかは、甚だ疑問である。

もしかすると、本レンズは生産数が少なく、故に、割高で
あった事から「高価なレンズは良く写る(と誤解している)」
「高価なレンズを所有している事を自慢したい為に凄いと言う」
「保有している本レンズを、中古市場でさらに高価に売りたい為、
 投機的な観点から好評価を意図的に流す」のいずれかのケース
での評価であったかも知れない。

実際の性能だが、最短撮影距離が60cmと長く、F1.2の大口径の
ボケを活かした撮影技法が使い難い。また、この時代のF1.2級
レンズにありがちな欠点で、絞りを開けると「球面収差」等が
酷くなって解像感が低下する。それから、重量がかなり重い。

まあ、これらは重欠点では無いが、こうした細かい欠点が
重なると「描写表現力」の評価点は4点以上は付けづらく、
また、使い難い点は「エンジョイ度」の評価の減点にもなるし、
当然「コスパ」の評価も低くなるから、総合的には「名玉」の
類には、なり得ない事は確かである。

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さて、次のロッコール
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レンズは、MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7
(中古購入価格 3,000円)(以下、PF55/1.7)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

1970年前後に発売の小口径MF標準レンズ。

1990年代の中古カメラブームの際に購入したジャンク
レンズであるが、若干購入価格が高目であった。

この後、デジタル時代に突入した事で、MC/MD系レンズは、
いずれのデジタル一眼レフでも使用困難となった為
ROKKORの中古相場は暴落、そのピークは2010年前後の
「大放出時代」(匠の写真用語辞典第26回記事参照)
であり、およそ1000円~2000円という、二束三文の
価格帯となっていた。

結局、「ROKKOR」は、銀塩時代においてはミノルタ一眼の
カメラ側の性能的未成熟で使い難く、デジタル時代では
レンズ使用(装着)環境が整っておらず、やはり使えない
事から、「長年にわたり誰も正しく評価できる術(すべ)を
持っていなかった」と言うのが実際の所であろう。

2010年頃よりミラーレス時代に入り、マウントアダプター
使用で、「ROKKOR」がやっと本来の性能を発揮できる
状態になったと言える。


本記事でも沢山のロッコール標準を取り上げているが
まあ、総括的な感覚を言えば、「各時代の標準レンズに
おいて、ロッコールは他社とほぼ同等か、又は、ほんの
僅かだけ描写力の優位性がある。しかし現代においては、
不人気であり中古相場がとても安価である為、コスパが
極めて良い」となる。
_c0032138_16513031.jpg
本レンズPF55/1.7であるが、古臭い外観、かつジャンク品
として購入したオールドレンズであり、見るからに、あまり
良くは写りそうも無いが・・(汗)

だが、実際には、まずまずの写りだ。場合により2つ後で
紹介するMC50/1.7と、同様の設計によるかも知れず、
そうであれば、描写力上の不満はあまり無い事にも納得
が行く。

なお、この時代のPENTAX SMC-TAKUMAR 55mm/f1.8
も、スペックが酷似していて、それも本レンズと同等か、
あるいはそれ以上の描写力を持つ名玉である。
(ハイコスパ名玉編で、第17位にランクイン)

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では、5本目のロッコール
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レンズは、MINOLTA MC ROKKOR-PG 50mm/f1.4
(中古購入価格 10,000円)(以下、MC50/1.4)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

1970年代に発売の大口径MF標準レンズ。
この時代頃から、そろそろ(大口径)標準レンズの
設計完成度が上がって来ている。
購入価格が高価であったのは、1990年代、まだ銀塩時代
で、このレンズが現役で使用できていた時代だからだ。
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では、標準レンズの設計完成度をどこで見分けるのか?
と言えば、まず、ごく簡単には、50mmか? それとも
他の焦点距離か?という点である。

各社のF1.4級(以上)の大口径標準は、これ以前の時代
では、50mmという焦点距離の設計ができず、だいたい
52mm~58mm位の、やや長めの焦点距離となっていた。

合わせて、最短撮影距離が45cmか否か?という点も
判別の基準であり、つまり「50mm/F1.4 最短45cm」
となっていれば、各社いずれも完成度の高い大口径標準で
あり、逆に「55mm/F1.4 最短60cm」といったスペック
であると「まだまだ発展途上」と見分ける事が出来る。

まあでも、この話は「ざっくり」としたものであり、
勿論、個々の標準レンズにおいて、性能差はあった。
だが、それも1980年代頃になれば、各社もう横並びの
性能となっている。

何故ならば、銀塩MF時代には、各社MF一眼レフは、
50mm標準レンズ(大口径F1.4級、又は小口径F1.7級)
をセットして販売されていた訳であり、もし他社の
標準レンズより描写力や性能が低いと、悪評判により
そのメーカーのカメラが全く売れなくなってしまう。
そうならないように、各社とも標準レンズの改良は
優先的に続けていた訳であり、それが1980年代頃には
もう改良の余地が無い程に完成度が高まった訳である。

だが、本MC50/1.4に関しては、そうした開発競争の
中でも、ほんの僅かに他社をリードして、既に完成度が
かなり高まっていたようにも感じる。
そういう事実は、他社の同時代の同等仕様のレンズを
複数入手して比較してみれば、だいたい見えて来る事だ。
(参考:別シリーズ「最強50mm選手権」においては、
様々な時代の、各社の標準レンズの比較を行っている)

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では、6本目のロッコール
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レンズは、MINOLTA MC ROKKOR-PF 50mm/f1.7
(中古購入価格 2,000円)(以下、MC50/1.7)
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)

1970年代頃に発売の小口径MF標準レンズ。
大口径レンズにも増して設計完成度が高いものは、
この時代の各社50mm/F1.7~F2級の小口径標準である。

1980年代に大口径標準の完成度が高まったと前述したが、
小口径標準は、もう1970年代には完成の域に達していた。
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本MC50/1.7も同様であり、この時代のレンズとしても、
あるいは、さらに後年の小口径標準と比較して何も文句の
つけようが無く(注:1980年代後半からのAF時代から
2000年代位まで、小口径(MF/AF)標準のレンズ構成は、
5群6枚で、ほぼ定番であった)

・・で、本MC50/1.7は低価格で買えて結果的にコスパ点が
非常に良い事からも、「ハイコスパ名玉編」記事では、
数百本の所有レンズ中、堂々の第3位にランクインしている。

本レンズは様々な記事で紹介しているで、今回は最小限の
説明に留めておこう、ともかく「安価に見かけたら、絶対に
買い」の名玉である。

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さて、7本目のロッコール
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レンズは、MINOLTA MD MACRO ROKKOR 50mm/f3.5
(中古購入価格 9,000円)(以下、MD50/3.5)
カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

1970年代後半頃?に発売のMF標準マクロレンズ。
この時代から、レンズ構成を示すPF等の記載が
省略された。

MDレンズは両優先AE対応型である。両優先についての
詳細は、銀塩一眼レフ・クラッシックス第6回記事
MINOLTA XD(1977年)を参照されたし。

本MD50/3.5は、レンズ単体では、最短撮影距離23cmの
1/2倍(ハーフ)マクロである。
付属の「等倍アタッチメント」(型番記載無し。いわゆる
エクステンションチューブ。通称=「ゲタ」)を用いると、
等倍マクロとして使用できるが、無限遠は出なくなる。
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4群6枚で、やや「平面マクロ」的な描写傾向を持つ。
1980年代からのα用のAF50/2.8Macro(6群7枚、等倍)
とは、まるで描写傾向が異なる。
(ちなみに、AF50/2.8Macroは「ハイコスパ名玉編」で
第1位、「ミラーレス・マニアックス名玉編」では第4位
となった、とても優秀なレンズである)

まあつまり、マクロレンズの完成度が高まり、描写性能が
格段に良くなるのは、概ねAF時代の1990年前後から、
という事になる。

本レンズの時代、つまりMF時代では、等倍マクロも殆ど
存在せず、描写傾向も、平面接写の解像力に重点を置いた
固い写りのものが多い(何故ならば、1970年代頃までは、
マクロレンズは、コピー機の代用として使われたからだ)

まあ、マクロレンズを買うならば、あまりオールドを
選ばす、1990年代以降のものを選ぶのが無難であろう。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、MINOLTA (New) MD (ROKKOR) 50mm/f1.4
(中古購入価格 1,000円)(以下、NMD50/1.4)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)

1980年代前半頃に発売の大口径MF標準レンズ。
ついに、本レンズの時代から、レンズ上での「ROKKOR」の
記載が無くなっているが、便宜上これも「ROKKOR」と呼ぶ。

New MDレンズの、Newとは、最小絞り値のロック機構が
付いた等の小改良をMD型に対して施したものであるが
市場・流通上では、あまり明確な区分はしておらず、
Newが正式名称となっている訳でも無いと思う。
ただまあ、マニア的には、区分の為に「New」と付けて
呼ぶ場合が殆どだ。

ただ、本レンズの場合は、MD50/1.4とNew MD50/1.4
はマイナーチェンジにより、だいぶ変化しているので、
単に最小絞り値ロック機構だけの差異では無い。
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本NMD50/1.4だが、あまり書きたく無い事ではあるが・・
本レンズは、カメラ(レンズ)史上、あまり類を見ない
描写性能的な「改悪」が起こってしまっている。

その原因だが、1972年にOLYMPUS OM-1が世界最小
最軽量の一眼レフとして発売されると、それに触発されて

1976年にはPENTAX MXが世界最小を更新し、同時に
PENTAXは全ての交換レンズをM型として小型軽量化した。

そして、1980年前後には各社ともMF一眼レフの小型軽量化
の措置は当たり前となる。何故ならば、小型化に成功した
メーカーが既にある以上、そこに追従しないと、いつまでも
大きく重い一眼レフを作っていても、売れなくなってしまう
という理由からだ。

・・で、MINOLTAも、カメラやレンズの小型化に挑戦する。
本レンズは、確かに小さく軽い、たとえばフィルター径は
前モデルMD50/1.4のφ55mmから、本(New)MD50/1.4は
φ49mmまで小型化されている次第だ。

だが、この小型化により、残念ながら描写性能を落として
しまっている。
で、旧来、本(New)MD50/1.4の紹介記事を書くたびに、
この史上稀な「改悪」の話ばかり書いていたのであるが、
まあ、実際のところは、さほど酷いレベルではなく、
「多少旧モデルの方が良い」、という程度の話である。

それに、近年での私の持論では、「レンズの弱点を回避
できないのは、使う側の責任」という考え方なので、
あまりブツブツと文句を言わず、「弱点を出さないように
上手く使いこなしてしまえば良い」という事となる。
(今回、μ4/3機を用いているのも、その対策の1つだ)

なお、本(New)MD50/1.4の構成は、「α」以降、そのまま
AF化されてAF50/1.4となった(最強50mm選手権第3回等)
さらにそのまま、光学系を変更せずに、2006年に
また、そっくりSONYに引き継がれ、2010年代に至るまで、
この構成がずっと踏襲されている。
旧型のMC(MD)50/1.4の方の構成を引き継いだ方が
良かったのに・・ と思う事は多々あるが、まあ、今更
何を言っても手遅れであり、少しだけだが残念な本レンズ
の歴史である。
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最後に、
歴史のある「ROKKOR」銘が何故使われなくなったのか?の
実際の理由は不明である。

ただ、時代背景が密接に影響していた事は確かであろう。
具体的に、この時代の世情だが、1970年代後半には、CPU
(マイクロプロセッサ)が世の中に普及した。

これは「マイコン」として技術派(実験派)マニア層に
おいて大ヒットした他、1977年には「AppleⅡ」が発売、
国産では「NEC PC-8001」が1979年に登場し、これらは
後に「パーソナル・コンピューター」(PC)と呼ばれて、
「コンピューター時代」の到来を如実に示す状況であった。

CPUは、勿論、様々な市場分野の製品にも応用された。
一般層から見て最も有名な物は、アーケードゲームで
あろう。1970年代末には「スペースインベーダー」が
社会的現象となった。(参考:あまりにヒットした為、
1983年の任天堂ファミコンは「家庭でTVゲームが出来る」
というニーズでの新規市場を作り上げる事に大成功した)

音楽の分野でも、デジタル・シーケンサーやアナログ
シンセサイザーが普及し、それらを用いた先進的な音楽は
「テクノ」等と呼ばれ、ヒットした他、これはファッション
分野にも波及、すなわち、世の中全体が「新しい技術」に
対しての強い期待や憧れを持っていた時代である。

当然、CPUはカメラにも採用され、CANON AE-1(1976)
が走りであるが、その後の時代のカメラにおいても、
CPU搭載による、様々な自動化機能は常識となる。

ミノルタでは、1980年に新人モデルの宮崎美子さん
(現:女優/クイズの女王)をCMに起用した「X-7」が
大ヒットし、これは社会現象ともなる。
ただ、あまりにインパクトが大きすぎたかも知れず、
その時代、またはその後の時代を通じ、「宮崎美子さん
のカメラ」は誰でも知っていたが、その機種名を正しく
覚えている人は、殆ど居なかった。

時代がデジタル化したり、一般層にもわかりやすく格好良い
商品名が求められる中、「X-7」では、いかにも無機質で
あった事だろうし、一般層に沢山売れた、その「X-7」に
付属されていたレンズに書かれている「ROKKOR」という
名称は、「六甲?? なにそれ!?」と、なんだか古臭くて
時代に合っていない名前のように一般層は感じたに違い無い。

この時代では、外国語風の、今までに聞いた事が無い名称を
つける事が、「新しく、お洒落で、格好良い」という認識
として世間に広まっていた訳だ。
(例:「沢田研二」の1980年のヒット曲「TOKIO」は
TOKYO(東京)を外国語風に読み替えたものであろう)

このあたりで、ミノルタは「ROKKOR」銘の使用をやめる
決断を行ったのではなかるうか・・?

恐らくだが、ブランド名(銘)というものは、どの市場
分野でも、時代の風潮に合わない時期はあった事であろう。

でも、それを超えて使い続ける事で、そのブランド銘は
定着する。たとえば、この時代に「ROKKOR」銘を止めず、
もう数年使い続けていけば、1985年の「阪神タイガース」
の優勝の社会現象と関連して「六甲」の名前は、一般層
に対して「いまどきのネーミングだ!」と感じられたの
かも知れない訳だ。 事実、ミネラルウォーター商品の
「六甲のおいしい水」は、1983年から発売されていたが
阪神優勝を機に、世間一般にも定着した名称であると思う、
また、「六甲」と名前が付く様々な乳製品も、現代に
おいてはブランド高級品として人気を博している。

「ROKKOR」は、その名称も、またレンズとしての描写性能
も、少しだけ時代を先取りしすぎていたのかも知れない。
もうちょっとだけ商売を上手くやっていれば、現代にも続く
「ハイ・ブランド」として、今尚、継続されていた可能性も
無きにしもあらずであった。
マニア層が、こぞって「ロッコール、ええなあ、欲しいなあ」
などと言っている世界が、「パラレルワールド」として存在
しているのかも知れない訳だ・・・

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では、今回の「MINOLTA ROKKOR 標準レンズ編」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。

「ぐるぐるボケ」生成ソフトのプログラミング

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「画像処理プログラミング」シリーズ第6回記事。

本シリーズ記事では、「世の中に前例が無い、全くの
新しいPC用画像処理ソフトウェア」(アプリケーション)
を、自力開発する事を主眼としていて、そのソフト開発
のプロセス(経緯、方法)を紹介している。

なお、これは仕事でソフトを作っているのでは無く、
あくまで、個人的な趣味の範疇だ。

そして、このプログラミングは、全く新たな「画像処理」
(注:ここで言う「画像処理」とは、「画像工学的」な
演算をパソコンで行う事で、自動的に画像を加工したり、
検出、診断、判断等を行う処理全般の事を示す。
「フォトショップ」等のレタッチ(編集)ソフトを用いて、
手動で画像を加工する「作業」の事は「画像編集」と呼び、
ここでの「画像処理」とは、全くの別ものとなる)

・・(その)画像処理のアルゴリズムの考案を伴う為、
専門性が極めて高く、非常に高難易度である。

これは「開発」(≒やるべき事が、だいたい決まっている)
では無く、むしろ新規の「研究」に近い内容であるから、
毎回のこうした趣味的な研究が全て成功する保証は無く、
本シリーズ記事では、既に、いくつかの同様のソフト
開発の実例を示しているが、失敗したテーマもあえて
紹介している場合もある。まあ、新規開発の成功率は
3割程度であろうが、野球で言う「三割バッター」と
考えれば、まあ、及第点ではなかろうか・・?
(注:今回のソフトは「成功例」とは言えず、とは言え
失敗例でも無い。まあ「△」(判断不能)としておこう)
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では、今回のソフトウェア開発(プログラミング)は、
写真の「ぐるぐるボケ」を生成するソフトである。

まず「ぐるぐるボケ」の意味であるが、市販されている
特殊なレンズを用いる事で、写真の背景や前景のボケが
「ぐるぐる」と渦巻く状態を示す。

本ブログでは、様々な記事でそうした特殊な「ぐるぐる
ボケ」レンズを紹介している。

近々の記事では、以下に詳しい。(注:近日掲載予定)
*レンズマニアックス第37回「ペッツヴァール対決」編

・・という事で、通常であれば、一般的な写真用交換
レンズで「ぐるぐるボケ」を出す事は不可能だ。
現代の一般(的)レンズでは「ぐるぐるボケ」が発生
するものは見られず、専用の「ぐるぐるボケ」レンズを
購入するしか無い状態である。

まあ、稀にオールドレンズの一部(例:1960年代頃
の超大口径、F1.2以下級の標準レンズ)で、それが
発生する事もある。元々、ぐるぐるボケの発生原因は
収差(非点収差や像面湾曲等)を起因とする為、当時
での「開放F値競争」(=他社製品よりも、より明るい
開放F値を持つレンズの開発競争があった)の世情では
開放F値(≒口径比)の向上を意図すると、諸収差の
発生が避けられない状況であったのであろう。

また、2000年代~の一眼レフ用のマウントアダプターの
一部には、異マウント間でのフランジバック長の調整の
為の「補正レンズ」が入っている物が存在した/する。

これを使い、ある特定の交換レンズと組み合わせた場合、
同様に像面湾曲や非点収差等が増長してしまい、類似の
「ぐるぐるボケ」が発生するケースもある。

まあでも、オールド超大口径レンズは現代では入手困難
であるし、補正レンズ入りマウントアダプターを使って
も、「ぐるぐるボケ」が発生する組み合わせを調べる
だけでも、物凄い手間が掛ってしまう。

簡便には、やはり現代の「ぐるぐるボケ」専用レンズを
購入してしまう事だ。これならば最も入手が容易である。

しかし、私は4本(+α)の「ぐぐるボケ」レンズを
所有しているが、いずれも、やや高価だ。

1)Lomography New Petzval (Art) Lens 85mm/f2.2
(中古購入価格 50,000円)
2)LENSBABY Twist 60mm/f2.5
(新品購入価格 39,000円)
3)LENSBABY Burnside 35 (35mm/f2.8)
(中古購入価格 34,000円)
4)Lomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡ
(新品購入価格 41,000円)

5)LENSBABY Velvet 56mm/f1.6(準ぐるぐるボケ)
(中古購入価格 30,000円)

このように、3万円~5万円も出して購入する程の
価値があるレンズかどうか?は、やや懐疑的である。
(注:中古品は滅多に見る事は無い、すぐに欲しい
ならば新品購入が主体となるだろう→さらに高価と
なるので、コスパ面からは”要注意”レベルだ)

私の場合は、この効果はとても好きであり、比較研究
の意味もあって、いくつもの「ぐるぐるボケ」レンズを
購入してしまったのだが(汗) 一般ユーザー層では、
不要または、せいぜい1本所有しておけば済む話だ。


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上写真はLomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡであり、これは2019年に発売された、比較的新しい
「ぐるぐるボケ」レンズである。

(注:上記紹介の5本は、全て2010年代の発売)

「ぐるぐるボケ」を強く発生させる為には、画角を
広げる必要があり、つまり、フルサイズ機が必須だ。
なので、上写真でも「SONY α7」(フルサイズ機)に
そのレンズを装着している。

実際に撮った写真は、以下のようになる。
_c0032138_10173214.jpg
画面中心は、比較的シャープに写り、被写界深度外で
ボケた部分が、ぐるぐると渦巻くように見える。

ただし、専用の「ぐるぐるボケ」レンズを使用しても
全ての写真に「ぐるぐるボケ」が発生する訳では無い。

この因果関係は極めて難解であり、私が言うところの
「ボケ質破綻回避技法」(匠の写真用語辞典第13回)
の逆を行い、意図的に「ボケ質破綻」を発生させる事で
同時に「ぐるぐるボケ」が発生するのではなかろうか?
という仮説を立て、様々な実験・研究を行っているが・・
(参考:本シリーズ第5回「ボケ質解析ソフト」)

そう簡単に答えが出てくるものでもなく、10年やそこら
の長期間の試写を繰り返す必要があると思っている。

ビギナー層では、これのコントロール(意図的に制御する)
は無理だ、と言っていい程に困難な事であり、上記
「ぐるぐるボケ」専用レンズ群は、ビギナー層への推奨は
一切行わない。

・・さて、そんな概況の中、今回の「ぐるぐるボケ生成
ソフトウェア」の開発構想では、”一般的な(通常の)
交換レンズで撮影した写真を、「ぐるぐるボケ」にして
しまう自動加工処理ソフトを作る”という発想だ。

世の中には、そんなソフトやアプリは存在しないと
思うので、これはゼロから開発しなければならない。

で、私が考えた「ぐるぐるボケ」処理の基本原理は、
「画面の中心部から遠くなる程に、画像を強く回転
 させたらどうだろうか?」という方法論だ。

(注:小型カメラで、機体を廻しながら撮影する
 「回転撮り」という特殊撮影技法が存在するが、
 その描写と似ているようにも思えたからだ・・)

でも、すぐに否定的な課題も、また思いつくであろう。
「画像を回転させてしまったら、ボケていない部分も
 一緒に廻ってしまう、それではNGでは?」

・・ただまあ、そうであれば、そのソフトに入力する
写真の方を制限してしまえば良い。つまり、画面中心部
に被写体を置いた「日の丸構図」であり、かつ大口径の
レンズ等を用いて、周囲の背景をボカしてしまった写真
である。

そういう写真を入力する事で、前記の「ピント面も同時に
回転してしまう」という課題を防ぐ事が出来る。

課題やマイナス面ばかりを考えてしまい、「手が止まる」
(=つまり、実際に試そうともしない)状態は良く無い。
上記「基本原理」を頼りに、プログラミングに着手する
事としよう。
_c0032138_10173233.jpg
上は、Microsoft Visual Studio 2013の開発用画面、
言語は「C#」を用いよう。 なお、Visual Studioは
もっと新しいバージョン(2017や2019)も持っては
いるが、この2013は、ソフトの立ち上がり(起動)が
高速なので、こういう風に、趣味的に「ちょっと作って
みようか」といった場合には、むしろ”軽くて”良い。

(注1:カメラやレンズ機材と同様であり、「常に最新の
最高級の機材を1つ持っていれば、それで済む」という
訳では無いのだ。ユーザー(利用者)の、目的や状況に
応じて、あえて低性能、低機能な機材や道具を使った方が
効果的・効率的である事も、多々ある次第だ)

(注2:C#言語で開発する場合、「.NET Framework」の
互換性の高さにより、あまりPC環境に依存し難いEXEが
生成されるのだが、Visual C++言語による開発の場合、
VS/VC++ 2013等のバージョンに応じて、必要な
ランタイム・ライブラリが変わって来る。Windows OS
のバージョンや環境によっては、VC++ 2015以前のソフト
では、動作させる為には「再頒布パッケージ」の別途
インストールが必要な場合もある。まあでも、自身の
PCで、開発環境と動作環境が同じ場合は、こうした
バージョン違いによる動作上の課題は起こらない)

で、上画面では、画像を表示する箱(Piuture Box)や
スライダー(Track Bar)、ボタン等といった部品を
ペタペタと画面(エディター)上で貼っていく。

まだ、この時点ではデザインも微調整されていないし
打ち込んだ文字列なども、スペルミス等があるが、
そういうものは、開発中に追々直していけばよい。

この画面開発は、簡単なものならば30分もあれば
完成してしまう。
_c0032138_10174211.jpg
次いで、エディター(Visual Studio)をプログラミング
の画面に切換え、ここでプログラムを打ち込んでいく。

まあ、このプログラミングは30分では無理な作業だ。
今回での簡単なプログラムのコードですら、11Kbyte
(約1万1000文字)もある。

ただまあ、大半のソースコードは、過去に何度も
プログラミングしている部分と共通であり、
「あ、あのソフトの、あの部分を持ってこよう」
と思い出し、それを探してコピペ(Copy & Paste)
すれば良いので、プログラミングの経験値が、あれば
ある程に、この作業が効率化していく。

初級プログラマーならば1ヶ月以上かかる作業量が、
慣れていれば、例えば、約1時間でプログラミングが
完了する程の大差が出る。

世の中での一般的な「仕事」(業務)では、初心者と
熟練者が同じ仕事をした場合(その品質はともかく)
そう何倍も作業時間に差が出るものでは無いと思うが、
プログラミングの世界では、熟練者と初級者では、
100倍~1000倍もの、多大な時間差が出てしまう。

さて、本ソフトの開発の骨子において「画面中央部
(中心部)からの距離に応じて、画像を回転させる」
があったのだが・・

これ、もしかして「周辺減光」(≒ビネッティング、
ヴィグネッティング、口径食の一種。注:初級者の言う
「トンネル効果」は他に同じ技術用語がある為、非推奨)
が出せるのではないか?
 
という事で、先にその「周辺減光」および、その逆の
効果「周辺増光」(?と言うべきか?)の機能を
プログラミングして実装する事とした。

まあ、多くの(高機能型)レタッチソフトでも、
こういう機能は実装されているとは思うが、自分で
作ってみる事も、原理理解の観点等で重要だ。

実際に動かしてみた状態が、以下となる。
(注:周辺減光の例)
_c0032138_10174346.jpg
そして、こういった「周辺減光/周辺増光」の
エフェクト(効果)は、ミラーレス機等のカメラにも
搭載されている場合がある。具体的には、OLYMPUS
PEN-F(2016年)であれば、「周辺減光/周辺増光」
の両者を、ダイヤル1つの簡便な操作で調整できる。

写真界では、「周辺増光」は、あまり実例が無いと
思うので、ここで、このソフトで実現してみよう。

以下のようになる。(画面の左側写真が、右側のように
自動加工される。VIGNETTINGと書いたツマミを中央より
左に動かすと周辺減光となり、中央より右にすると、
周辺増光の効果が付与される仕組みで作ってある)
_c0032138_10175767.jpg
さて、「周辺減光/周辺増光」は上手く動いている
模様だが、まあこれは「おまけ」の機能である。
あくまで「ぐるぐるボケ」を実現しない限り、
このソフトの開発に着手した意味が無い。

引き続き、「回転」の部分のプログラミングを
行ってみよう。
_c0032138_10175769.jpg
だいたい、ここは30分程度で暫定完成した。

「画像回転」のプログラミングは、ちょっと難しく、
元画像のXY座標に、三角関数(sin、cos)を
掛けて、回転後の座標を求めるのでは無く・・

逆に、回転後の画像の、全てのXY座標に、そこに
対応する元画像のピクセルを(三角関数で計算し)
貼りつけるのだ。

何故ならば、元画像を回転させて、回転後画像とすると、
計算丸め誤差により、整数座標が飛び飛びになってしまう。
つまり「画像に隙間が開いてしまう」訳だ。

そうならないように、「回転後の画像のピクセルを全て
カバーするように、元画像から画素を引っ張ってくる」
という、動作のイメージとは逆のアルゴリズムとなる。

ただ、上記の話は、一般的な「画像回転処理」である。

ここでは、「画像の中心からの距離に応じて、回転
の度合いを変える」という、やや複雑な処理だ。
どういう結果になるかは、ソフトを作って動かして
みるまで、良くわからない(汗)

では、写真を入力して、ソフトで自動加工しよう。
_c0032138_10180436.jpg
・・ふうむ、悪く無い感じだ。だいたいだが、
「ぐるぐるボケ」っぽい処理画像になっている。

本来の「ぐるぐるボケ」では、像面湾曲や非点収差等の
収差を起因とするのだが、本ソフトでは、それらを意識
してシミュレートするのでは無く、「回転」という簡単な
代替処理であるのだが、それでも、あまり不自然では無い。

処理後画像を、単体の画像としてコピーできる機能を
つけているので、それで保存してみよう。
_c0032138_10180788.jpg
上写真が処理前画像。写真の画素数はブログ掲載用に
縮小したものを使っている。撮ったままの元画像では
例えば千数百万画素とかの巨大なサイズであるから、
これのピクセル毎に、計数千万回以上もの複雑な
sin(サイン)、cos(コサイン)の計算をしていたら、
いくらパソコンとは言え、物凄く時間がかかってしまう。

(注:座標回転では「行列式」を用いる為、単に
1pixelを回転させるだけでも、三角関数での4回の
計算が必要となる。角度「θ」が一定ならば、同じ
三角関数値を使いまわせるのだが、これが可変なので、
どうしても、非常に大きな計算量となる)

それでは開発効率が落ちる(作ったプログラムが
上手く動くかどうか?が、すぐに確認できない)為、
こういうテスト画像は、できるだけ小画素(数十万画素
程度)とするのが鉄則である。

_c0032138_10181191.jpg
で、上写真が「ぐるぐるボケ」画像処理後である。

一見、上手くいってそうだが、ここで課題が3点、
見つかってしまった(汗)

1)画像を傾けるので、周囲に余白が出る場合がある。

(対策として、処理済み画像を、わずかに手動で
 トリミングする事とした→これは自動化も可能だ)

2)画像の中に、点点点・・と、ノイズが発生する。

(これは、少し前述したように、画像を傾けた際に
 計算誤差(小数値をピクセル毎の整数値に丸める為)
 により、コピー元が存在しない座標が発生する為だ。
 ただまあ、これの対策は極めて困難だ、と思われる。
 よって、「気にしない」事にするか、または、
 「入力する写真を、それが目立たないものを選ぶ」
 という対策としよう)

3)効果がわかりやすい画像(写真)と、そうで無い
 画像がある。

(まあ、当たり前であろう。冒頭に述べたように、
 背景までピントが全て合っている「パンフォーカス」
 写真等では、この画像処理効果がちゃんと出ない事は
 想定済みだ。
 一般のプログラマーであれば、ここで「頭を抱えて」
 しまうだろうが、幸い、当方はカメラマニアである。
 ・・であれば、このソフトの処理内容に向く写真を
 選んだり、新たに撮影して来る事は容易だ。
 →題して「靴に足を合わせろ作戦」だ・・笑
 つまり、ここのソフト的対策は取らなくても良い)

さて、それでは、色々な画像で、このソフトウェアの
効果を確認してみよう。

まずは前述の「周辺減光」と「ぐるぐるボケ」を
組み合わせた場合。
_c0032138_10182350.jpg
まず、この処理においては、写真の構図的に「日の丸」
構図でなくてはならない。また、大口径レンズ等で撮り
被写体の周囲(背景や前景)がボケてなくてはならない。

まあ、効果は出ているようだが、前記の課題2)の
「画像上に点点点・・が入る」が、結構目だっている。

でも、ここはもう「やむを得ない」という結論だ。

これは、ゼロからの完全自力開発ソフトだ、全てが全て、
上手くいく訳では決して無い。

(注:Webや書籍等の、どこかに掲載されているソース
コードを拾ってきてコピーしたものでは無いし、OpenCV
等の汎用画像処理ライブラリを参照・インポートして
作っているものではない。これは、プログラムの全部を
自分自身で考えて書いた(打ち込んだ)ものである。
そういう事をしないと、どこかに既にある部品を使って
いたのでは、世の中に無い新たなものは創造できない。

いつも例であげるように、近代のLEGO(ブロック玩具)
等では、自動車、宇宙船、ロボット等の、予め決められた

物を作る為のパーツが揃っているセット商品が多いのだが、
本当に創造性を高めようとするならば、自分で何でも
想像して作れる、基本部品だけのセット(例:バケツ等)
の方が望ましいのではなかろうか? プログラミングも、
それと同じである、と思っている)
_c0032138_10182743.jpg
では次の例、上写真ような建築物(塔)ではどうか?
上写真が画像処理前である。
_c0032138_10183012.jpg
上写真が、「ぐるぐるボケ」の効果付与後。

この画像の場合は「点点点・・・」は、目立たない
のだが、傾けた事で余白が出てしまい、そこはまず
手動でトリミングしている。

次いで、画面の「塔の先端部」まで、ぐるぐるボケ化
してしまっている(ブレて見える)事が課題である。

でもまあ、これは写真撮影時の構図で調整しないと
ならないであろう。

ちなみに、このソフト的には、画面中央部(中心の
座標)から、画像の四隅や長短辺を結んだ距離
(=最大で画像対角線長の半分)の、また、半分位
までの距離の内部に、主要被写体が入っているならば、
「ぐるぐるボケ」や「周辺増減光」の処理効果の影響を
受け難いように、プログラムを書いて(設計)している。

自分で作って、その事(中身)がわかっているから、
このソフトの処理に合う写真を撮る事も容易だ。
(例:画面全体の中心部から1/4までの距離で、
主要被写体を収めるように撮り、F1.4級以下の大口径
レンズで他を全てボカしてしまう等)

これがもし、他人が作ったソフトで、中身でどんな
処理をどのようにやっているか?が、全く不明ならば
その仕組みに合う画像を選ぶなどは容易な事では無い。

・・で、まあ、ここまでで、だいたいだが、本ソフト
ぐるぐるボケ生成「Petzval Ver. 0.90」は、概ね
完成である。(注:命名の元となった「ペッツヴァール」
氏(人名)の話は、様々な「ぐるぐるボケ」レンズの
紹介記事で詳しく書いてある)

ソフトの開発時間が約2時間、完成後に、これで
遊んだ時間が1時間ほど・・ とまあ、休日の半日を
これに費やす程度の趣味的作業量は適正であろう。

(仮に、何かを1つ作るのに何ヶ月もかかるようだと、
それの作業をやろうするモチベーション維持が大変だ。
それに、この作業は2020年の「コロナ禍」による
外出自粛中に行っていた為、その後も、数個のこうした
新規プログラム開発を行っていたので、本シリーズは
少なくとも、あと6~7回は継続される予定だ)

作ってしまえば、もう興味の大半は失われてしまう(汗)
まあ、ある意味、プラモデルとか、ジグゾーパズル等と
同じ類の趣味なのだろう、「全く新しいソフトを作る事
自体が楽しい」という訳である。

本プログラムは、比較的内部の知的財産の要素が少ない、
つまり、「誰もが簡単に思いつき、それを実現できる」
という類の画像処理内容(アルゴリズム)である。

だが、あくまで個人的な趣味のものだから、本ソフト
を配布したり販売したりはしない。

そのあたりは、本シリーズ記事で紹介している、他の
画像(自動)処理ソフトも同様だ。
C#という簡易言語で組んでいるものが大半であるが、
この言語はexe(実行ソフト)から、簡単にソースコード
が、逆コンパイルできてしまう。つまり、どこかに配布
したら、何をどうやって、それを実現しているか?
という知的財産が、簡単に流出してしまう訳だ。

他の紹介済み画像処理ソフトは、本ソフトよりも遥かに
高度な処理をしているものが大半であるから、それが
世の中に出るのは、私としては好ましく無い訳だ。
(まあつまり、これは「企業秘密」とか、「秘伝のタレ」
とかいった類のものと同様の「門外不出」だ)

さて、では、最後に今度は「既にぐるぐるボケレンズ
で撮って、ぐるぐるボケが発生している」写真に、
さらに本ソフトを掛けたららどうなるのであろうか?
という実験を行う。
まあ、「ぐるぐるボケ」の「二重掛け」である。
_c0032138_10183658.jpg
ううむ・・ 確かに凄い状態には、なっているが、
外周部の花が回転処理で二重化してしまっているので、
やはり、これは少々「やりすぎ」であろう。

「ぐるぐるボケ」レンズを所有して、それで撮って
いるならば、そちらをメインとして、単独で光学的に
効果を得る事が、正当な手段だと思う。

なお、本ソフトの逆、つまり「ぐるぐるボケ」レンズ
で撮った写真から「ぐるぐるボケを排除(削除)する
処理」は、どう考えても、実現できそうになかった。

それが出来ると、オールドレンズ等においても、
撮った写真を、後加工処理で「諸収差を低減させる」
という、凄い事ができるかも知れないのだが・・・

まあつまり、オールドレンズの悪い写りを全て補正し、
近代レンズに負けない、素晴らしい写りとなるような
「夢のソフトウェア」が実現するかも知れない訳である。

ただまあ、(レンズ)マニア的観点からは、そんな補正
ソフトは不要だ。オールドレンズは、その描写力上での
弱点までもが個性であり、それを承知した上で、楽しむ
べき機材であるからだ。

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さて、以下は参考であるが・・

「ぐるぐるボケ」専用レンズは前述のように、やや高価
であるし、使いこなしが難しい事から、入手の敷居が
高いと思われる。

そこで、「補正レンズ入りマウントアダプター」を用いて、
弱い「ぐるぐるボケ」を発生させた事例を紹介しておく。
_c0032138_10184550.jpg
使用レンズ:MINOLTA (TELE) ROKKOR MC 85mm/f1.7
アダプター:MINOLTA MD→CANON EF(補正レンズ入り)
使用カメラ:CANON EOS 6D (フルサイズ機)

レンズは、50年程前(1970年頃)のオールドレンズ
である。5群6枚構成であり、標準レンズ型の設計の
拡大コピー版か?とも思われる。

これの後群に凸の補正レンズを追加すると、像面湾曲や
非点収差等が増強され、弱いぐるぐるボケが発生する。
_c0032138_10184545.jpg
このレンズは古い時代のもので、経年劣化による故障品
(絞りが粘っていて、開放でしか撮れない)ではあるが、
「ぐるぐるボケ」の発生要因である、「絞りを開けて」
および「フルサイズ機で画角を広めて」という条件に
当てはまる為、故障レンズながらも有益な使い道がある、
という訳だ。

なお母艦EOS 6Dは、MFでの利用の為、MF用スクリーン
Eg-Sに換装済み。それから、同機は最高シャッター速度が
1/4000秒機なので、屋外日中使用時での絞り開放撮影
によるシャッター速度オーバーの対策の為、「ND4」減光
フィルターを使用している。

(参考計算事例:快晴時の輝度は一般にEV=15となり、
カメラ側感度ISO100において、最高1/4000秒シャッター
でカバーできるF値はF2.8迄(より暗い)となる。
本レンズはF1.7開放固定なので、ND4フィルター装着時
にはF3.5相当となり、ビーチや雪山(EV=16)といった
特殊な環境に持ち出さない限りは、EOS 6Dの1/4000秒
シャッター@ISO100でも撮影が可能となる)

ただし前述のように、「補正レンズ入りアダプター」を
使えば、どのレンズで、どのマウントでも「ぐるぐるボケ」
が発生する訳では無い。

それが出る組み合わせは、かなり限られていると思うので
かたっぱしから組み合わせをチェックする必要があるし、
「ぐるぐるボケ」が発生する組み合わせであって、どんな
撮影条件でも常に、それが出る訳でも無い。
相当に手間と根気がいる作業となるので、こうした方法論
は、上級マニア層向け、または研究派マニア向けである。
_c0032138_10184730.jpg
それから、2019年発売のKAMLAN FS 50mm/f1.1
「初期型/Ⅰ型」(台湾設計、中国製造)というレンズ
も、F1.1の超大口径で諸収差の補正が出来ておらず、
(前述の1960年代の大口径化競争と同様)
稀に、弱い「ぐるぐるボケ」が発生する。

このレンズは、他にも描写力上の課題が大きく、
発売後僅かに3ヶ月でⅡ型に改良されている状態だ。
わざわざ描写力に問題がある、この初期型(Ⅰ型)を
探して買う必要は無いが、「ぐるぐるボケ」という
観点での参考まで。

---
さて、では本記事はこのあたりまでで。
本「プログラミング・シリーズ」だが、個人的には、気が
向いた時にしか、プログラミングをしないので、不定期の
連載となっているが、前述のようにコロナ外出自粛中に
いくつかの独自ソフトを開発しているので、それらを順次
紹介していく予定だ。

最強35mmレンズ選手権(1) B決勝戦(1)

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さて、「最強レンズ選手権」の35mm編をスタートする。
_c0032138_16161247.jpg
既に「50mmレンズ選手権」が終了し、標準レンズの
カテゴリーでのチャンピオンレンズが決定しているのだが、
そのシリーズ記事を進めていく上で、いくつかの問題点が
生じていた、具体的には・・

1)所有(対戦)レンズの数が多すぎる(汗)
 50mm選手権では約80本ものレンズが対戦し、
 その結果、総記事数は17で、約8ヶ月ものシリーズ
 記事となってしまっていた。

2)長期に渡り連載をしている為、その間に新鋭レンズ等を
 新規購入した場合、後からでは選手権に追加で参戦する
 事は困難である。(記事を書き終わっているか、場合に
 より記事をアップ済みの状態だ)
3)カテゴリーで分類すると、例えば「MF50mm/F1.4級」
 等は、どのメーカーのレンズも、ほとんど同じ性能や
 描写力となり、記事上または対戦上での差別化が困難。
4)準備の手間が大きすぎる。準備期間は最大3年間にも
 及び、掲載用写真の撮影枚数も、軽く十数万の単位と
 なっていて、なかなか負担が大きい。

・・といった複数の課題があった。
そこで今回の35mm選手権からは、「下位にランキング
されるだろう」と予想されるレンズは、申し訳無いが
割愛させてもらおう。つまり選手権は、予めノミネート
された上位レンズ(描写力が高い、またはコスパが良い、
あるいは特徴的な仕様を持つ)のみで対戦する事とする。

なお、ノミネートされなかったレンズ群も試写評価等は全て
行っている為、いずれ「特殊レンズ・超マニアックス」や
「レンズ・マニアックス」記事において、(例えば今回の
ケースでは、35mmレンズを)まとめて紹介しよう。

では、今回のシリーズ記事は35mmレンズの上位ランカー
の対戦となる。まずは「B決勝戦」を行う。
「B決勝」とは「惜しくも決勝戦に進む事は出来なかった
が、それに準ずる成績のレンズを集めた下位決勝戦」と
しておこう。なお、実際のスポーツ競技の場合は、同様に
「B決勝」あるいは「順位決定戦」と定義される時もある。

個人レンズ評価データベースでの総合評価点は、5点満点中
3点台のものが主となり、4点を超える名玉は、恐らくは
決勝戦に集中するであろう。

今回の記事では、B決勝戦(1)(第一ブロック)とする、
(第二ブロックまである予定)6本の35mm(または相当)
レンズの対戦としよう。

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まずは最初の35mm(対戦)レンズ。
_c0032138_16162690.jpg
レンズ名:MINOLTA AF 35mm/f1.4 G (New)
レンズ購入価格:75,000円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ (APS-C機)

αショック(1985年)後の、比較的早い時期の1980年代
後半(1987年頃?)に、本レンズの前身(初期型)が
発売されていたのだが、当時の製造技術では量産が難しい
「非球面レンズ」を採用した為、とても高価(十数万円?
詳細不明)なレンズとなり、ほとんど注目されないままで
1990年代を通じて販売が継続されていたが・・
1998年頃に、外観を変更した後継版となった。それが
本レンズである。

この頃、ミノルタは1992年~1997年頃に様々な事情で
低迷していたα(一眼レフ)を再興する為か? カメラ
では名機α-9や、レンズでは最強の描写力を誇る名玉
STF135/2.8を発売、その流れを汲んでの、Gタイプ(=
高性能を表す称号)の本レンズの発売であっただろう。

価格はやはり高価で、もうあまり記録が残っていないが
記憶によれば、定価は税抜き15万円位だったと思う。
(本レンズは”定価の半額”で中古購入していた筈だ)
_c0032138_16162703.jpg
高価なレンズだし、Gタイプであるから、マニア層等は
これを「きっと凄いレンズだろう」と解釈して購入した。
しかし、開放でやや甘い、ボケ質が汚い(破綻する)等の
ビギナー層の嫌う特性を持っている為か、一部のマニア層
等の間では「値段が高いのに、たいした事が無かった」
という悪評が広まる。

販売数が少なく、中古でも、ややレア品であったのだが、
発売後数年間は、市場における中古ブーム、デジタル化の
荒波とMINOLTAとKONICAの企業合併等の世情に翻弄された。

特に2004年頃の初期デジタル機においては、各社APS-C機
ばかりであった為、換算画角が標準(50mm)相当となる
35mmレンズにユーザー層は注目し、稀にあった本レンズの
中古品も売れて(買い占められて)レア化が進んで行く。

その後、(KONICA)MINOLTAが、カメラ(α)事業をSONYに
譲渡した2006年頃は、SONYは当初、本レンズをSONY α用
レンズとして再ラインナップしなかった為(生産中止とした
為)、さらに投機層や中古流通業者による組織的な買占め
にあい、中古市場から綺麗さっぱり一掃されてしまった。

稀に出てくる中古品は、発売時定価を超えて20万円前後
と、完全に投機対象商品となった。
なので、さらに購入者数は減ったが、プレミアム価格化
した本レンズを購入する金満家層等は「ここまで高いの
だから、凄いレンズなのだろう」と思い込んで買う。

ところが前述のように、本レンズの使いこなしは困難で
ある為、銀塩時代の1990年代と同様に「思ったほどの
高性能では無い」という悪評が、また広まってしまった。

その後、SONYは、非球面レンズの切削・加工技術を
用いる目処が出来たのか? SONY版35mm/F1.4 G
(SAL35F14G)として、本レンズを2007年頃に再発売、
しかし価格は、税込みでおよそ20万円と高額になって
しまっていた。なお、現在でも継続販売されていて、
定価は188,000円である。(税込み20万円越え。
MINOLTA時代からの値上げ率は定価ベースで25.3%
にも及ぶ、中身は同じレンズであるにも関わらずだ)

値段が高いが・・ 困った事に本レンズの基本設計は、
1980年代と、(SONY版発売時点から)20年以上も
前のオールドな設計である。
「新鋭高性能レンズ」を期待したデジタル時代からの
新規マニア層等は、やはりここでも「コスパが悪い」と
一刀両断の低評価だ。
_c0032138_16162752.jpg
こうやって歴史を見ていくと、不遇なレンズである。
そんなに悪い描写力のレンズでは無く、弱点を理解した
上で、少し絞る、無理な近接撮影を避ける、ボケ質破綻
回避を行う等の対策を行えば、特に問題は無いレンズだ。
・・まあ、なので、本記事「B決勝(1)」編にもノミネート
されている次第だ。
(このB決勝に進出できるレンズは、悪いレンズでは無い)

ただ、コスパが悪い事は確かであり、現代であれば
より高性能で安価な、フルサイズ対応大口径35mmレンズ
は、他にもいくらでもある。
本レンズを入手する意義は、あくまでMINOLTA時代での
ノスタルジックな描写傾向を楽しむ、と、かなりマニアック
な目的となるだろう。
結果、一般マニア層には推奨できるレンズとは言い難い。

---
では、次の35mmレンズ。
_c0032138_16163717.jpg
レンズ名:KONICA HEXANON AR 35mm/f2.8
レンズ購入価格:10,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)

HEXANON(ヘキサノン)AR (又は稀にAR HEXANON)
とは、KONICAが1960年代後半~1980年代と
長期に渡って展開した銀塩MF一眼レフ「ARシリーズ」
用の交換レンズ群である。(当然、すべてMFレンズだ)

ARシリーズの意味は、1960年代後半の「AUTOREX」の
カメラを元にした略語と思われるが、「AUTOREX」では
意味的に通じない為、輸出向け展開を始める際に、正しい
英語である「AUTOREFLEX」に改められたと想像できる。
(銀塩一眼レフクラッシック第3回AUTOREFLEX T-3参照)
_c0032138_16163701.jpg
HEXANON ARは、長期に渡って多数の機種が生産されて
いる為、個々のレンズにより(かつ、時代背景等も含め)
レンズの評価は、かなり変わって来る。

なお、この時代以前も、以降も、KONICA製レンズには
「HEXANON」の名称が良く与えられ、ある時代においては、
他社のレンズよりも性能優位性があった為、一部の
マニア層の間には、現代に至ってもなお「ヘキサノンは
良く写る」という評判が残っている(=ブランド化している)
のであるが、あくまで個々のヘキサノンによりけりであり、
全てのHEXANON(AR)が優秀であるという保証は全く無い。

個人的に所有しているHEXANON ARは何本もある為、
特殊レンズ・スーパーマニアックス第34回記事で、
「KONICA HEXANON AR」特集を掲載しているので、
興味があれば、適宜参照していただくのが良いであろう。

_c0032138_16163787.jpg
本AR35/2.8は、個人的には気にいっているHEXANON AR
である。ただまあ、本35mm選手権記事に登場する他の
様々な時代の35mmレンズと比較して、特に大きな性能
優位性がある訳でも無い。まあ、普通に良く写る銀塩
MF時代の準広角35mm単焦点、という位置づけであろう。

ある時代において、他社レンズを頭一つリードしていた
「ヘキサノン」のテイストを感じたいのであれば、
上級マニア層において、歴史的な観点で入手しておく
のも悪く無いレンズであろう。

---
次いで、3本目の35mmレンズ。
_c0032138_16164942.jpg
レンズ名:中一光学 CREATOR 35mm/f2 
レンズ購入価格:22,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS 6D (フルサイズ機)

2014年発売の中国製MF準広角レンズ(フルサイズ対応)
非Ai方式のFマウントレンズであるが、NIKON製デジタル
一眼レフでは(NIKON Df以外では)露出が狂ってしまい
殆ど使用できない。それを知っていてもなお、NIKON F
マウント版を購入しているのは、NIKON Fマウントレンズは
汎用性が高く、今回使用のように、CANON製一眼レフや、
各社製のミラーレス機等のほとんどで使えるからである。
(他社機で用いる場合、露出は概ね正しく設定可能だ)
_c0032138_16165488.jpg
中一光学は、2010年代半ば頃から国内(日本)市場に
参入しているのだが、30年以上も続く老舗光学機器
メーカーであると聞く。

中一光学に限らず、2010年代後半には、多数の海外
(中国が主だ)メーカー(例、LAOWA、七工匠、Meike、
KAMLAN、Yongnuo、SAMYANG(韓国)等)が、国内
レンズ市場に参入しているのは、この時代、国内では交換
レンズ市場が縮退していて、国内メーカーの新鋭レンズは、

販売数の減少を「値上げ」でカバーせざるを得ない状態と
なった為、空洞化した「低価格帯レンズ市場」に向け、
海外製低価格交換レンズが、多数参入した状況である。

ローコストなレンズであるから、多くのレンズでは、
AFも超音波モーターも手ブレ補正も内蔵されていない。
しかし、レンズの設計自体は、コンピューター設計が
一般化したし、中には過去の名レンズの設計を大幅に
参考とした「ジェネリック」レンズもある為、写りは
そう捨てたものでも無い。(また、LAOWA等の一部の
メーカーは高性能レンズを主眼とした企画思想であり、
高付加価値型(高性能だが高価)製品を展開している)

また、外観等も金属鏡筒を採用するなどして品質が高く、
従前の中国製品の持つイメージ「安かろう、悪かろう」を
完全に払拭している。

まあ、日本製品も、かつて1970年代位までは、諸外国
から見て「安かろう、悪かろう」と思われていたのだが、
1979年の世界的ヒット書籍「Japan as Number One」
の頃から、続く1980年代には、もう日本製品は、
「高性能で壊れ難く、おまけに安価だ」という好評価を
得て、結果的に全世界を「Made In Japan」製品が席巻
する事になった訳だ。

しかし、その後、日本製品は、バブル期から始まる
国内製造コストの上昇などでコスパの面では世界に通用
する商品は作りにくくなってしまっていた。
そこで現代の日本製品は、かつての様々な製品分野での
海外有名(老舗)ブランドのように、そのブランド力を
利した製品展開に変化してきている。

例えば、カメラの世界を見ても、現代の外国人が
欲しがるカメラは、「SONY」「CANON」「NIKON」
といった世界的に有名なブランドカメラばかりである。

それらの価格が高くても(高すぎても)、ブランドを
信奉する外国人は、ありがたがってそれらを買う。

まあ、これは逆に、日本製カメラが発展期であった
銀塩(MF)時代で、日本人がドイツ製のビッグブランド
カメラ(ライカ、コンタックス、ローライ・・等)に
憧れて欲しがったのと同じ志向性であろう。

日本においては、高度成長期(概ね1970年前後)に
諸外国の製品品質を参考とし、「海外製品に追いつけ、
追い越せ」とばかりに製品品質を高めてきた経緯がある。

そして、その「高度成長期を支えてきた」との自負がある
現代のシニア層では、頑ななまでに、日本製品の品質が
世界一である、と信じ込んでいるのだが・・ あいにく
時代や世界情勢は、少しづつ変遷を見せているのだ。

現代において、日本製カメラが高価になりすぎていれば
世界的観点では、また、歴史が繰り返されて、新興勢力の
台頭が始まりかけている段階である。

・・よって、近代の中国製造業の技術的進化を理解でき、
かつ、アジア製品に偏見を持たないならば、これらの
海外製新鋭レンズは、きわめてコスパが良く、まるで
海外に初めて日本製品が広まった高度成長期(1970年代
頃)の海外ユーザーと同様な感覚を国内ユーザーは持つ訳だ。

まあつまり、時代とか世界情勢は常に変遷して来ている。
このまま、中国製レンズが市場に受け入れられていけば、
いずれ中国ではデジタルカメラも作られるようになり
10年後、あるいは20年後には、それらが世界の市場を
席巻する可能性もある訳だ。

では、国内メーカーはどうすれば良いのだろうか?
・・・ここは、かなり難しい。メーカー側だけの製造
システムや商品企画・技術開発のみならず、ユーザー側の
意識もまた大きく影響するからだ。

たとえば、現代のカメラ初級中級層は、ほぼ全員が
「フルサイズ機で、高速連写機能が入っていて、
 超高感度で、AFが良く合って、手ブレ補正が入っていて、
 超音波モーターで、開放F値が明るくて・・」と、
自身のスキル不足をカバーしてくれる(事を期待する)
高性能システムばかりを欲しがってしまう。

その結果、そういう超絶性能システムを揃えるには、
100万円を超える機材予算が必要となるのだが、それが
「高価すぎる」とは思わない(比較の基準を持たない)
初級層が、無理をして高額予算を投資してしまう訳だ。
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だが新品2万円の中国製格安レンズでも写真は撮れる訳だ。
その事実をどう感じるかは、あくまでユーザー次第だ。
これは難しい問題であり、ユーザー側が考えるべき内容
でも無いかも知れないが、私個人の基本方針では、

「コスパが悪い機材は買わない」というものがあるので
こういう安価な中国製レンズの台頭は悪くは思わない。

これを見て、国内メーカーもまた、製品群のローコスト
化を推進してくれれば、スマホ等に押されて酷く低迷化
しているデジタルカメラ(交換レンズ)市場が、また
活性化するかも知れないからだ。
カメラファンとしても、安くて良い製品が、沢山市場に
出て来る事は、十分に歓迎すべき方向性だと思う。

---
では、4本目の35mmレンズ。
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レンズ名:HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited
レンズ購入価格:26,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)

2013年に発売された新鋭HDコーティング仕様の
DA型(APS-C専用)準広角(標準画角)等倍マクロ。
「Limited」シリーズでは初のマクロ仕様である。

高品質仕上げを示す「Limited」仕様ではあるが、
銀塩時代のFA Limitedに比べると、よくよく見れば
金属鏡筒では無く、プラスチック製の感触がある。
が、殆ど見分けはつかず、高級感が高い。
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描写力も悪く無く、有限回転式ピントリングで、
マクロレンズとしての仕様要件を満たしている。
実用上では何も問題は無いのだが、ただ1点、APS-C
機専用、という事が、初級中級層には不人気だ。

本レンズの発売前年2012年には、各社から低価格の
フルサイズ・デジタル一眼レフが出揃い、私は
その年を「フルサイズ元年」と呼んでいる。

そして、本レンズと同年の2013年には、SONYから
初のフルサイズ・ミラーレス機α7/Rが発売され、
時代は一気にフルサイズ化となった。

しかし、PENTAXでの初のフルサイズ機は、2016年の
PENTAX K-1と出遅れ、それまで大半の交換レンズは、
DA型(APS-C機専用)となっていたので、事の本質を
理解できないビギナー層では「フルサイズでなくちゃ嫌だ」
(=フルサイズ機で撮らないと、高画質が得られないと
思い込んでいて、かつ、高画質な写真を撮らないと、
周囲から下手だと言われてしまう事が怖い、との思想)
・・という傾向が出初めて、PENTAXを始め一気に各社の
APS-C型システムは不人気となってしまう。

だが、中上級層にとってみれば、フルサイズ機で
撮らなくてはならない理由は全く無い。まあそれに
フルサイズ・システムの中古が安価になったのであれば、
それもまた入手し、撮影状況や条件に応じて、APS-C機と
フルサイズ機を使い分ければ良いだけの話である。

だから、こういうAPS-C機専用システム等で中古相場等
が安価になったものは、恐ろしくコスパが良く、推奨
できるシステムとなる。

ここもまた、前述の中国製レンズのケースと同様に、
ユーザー側の意識次第である。APS-C機システムを
卑屈に感じないのであれば、それはかなり得をする事に
なるのだが、たとえばビギナー層の周囲の写真仲間等が
「おや、キミはまだAPS-C機なのかね? ボクらはもう
 皆、フルサイズ機だよ」などと、入手価格の高価さを
自慢するような状況だと、ちょっとビギナー心理と
しては苦しいかも知れない。

多少腕前や経験があれば、もうそんな機材自慢等は聞く
耳を持たなければ良いし、そもそも、そんな風に経済力
を自慢するだけのコミュニティには、参加する価値も
無いので、さっさと離脱すれば良いだけの話だ。
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まあ、試しに本レンズを使ってみれば、コスパの良さは
誰しもが、きっと実感できるであろう。
「35mm決勝戦」にノミネートしても良かったのだが、
前述のように不人気であるから、一般的なレンズだとも
言い難く、あえてB決勝戦に進出させている。

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さて、5本目の35mmレンズ。
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レンズ名:Voigtlander SC SKOPAR 35mm/f2.5
レンズ購入価格:30,000円(新品)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
(注:フォクトレンダーの綴りの変母音は省略している)

2002年頃に発売された、レンジ機S(NIKON系)および
レンジ機C(旧CONTAX系)兼用、準広角MF単焦点レンズ。

とても特殊な出自のレンズであり、1990年代後半での
中古カメラブームを受けて、何機種かが復刻生産された
SおよびCマウントレンジファインダー機用のレンズだ。
この歴史の詳細は「銀塩一眼レフ・クラッシックス
第28回BESSA-R2C」記事に詳しい。

現代となっては、本レンズの中古入手性はゼロに等しいし
無理をしてまで探す理由のあるレンズとも言い難い。
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レンズの描写力そのものは悪くは無いが、レンジ機用
なので、最短撮影距離は90cmと極めて長く、現代的な
広角撮影技法が実現不可で、少し絞って風景を撮る等の
とても古い時代の撮影技法でしか使えない。

おまけに特殊な出自でレア品である、価格も最初から
高価であったので(定価55,000円、本品は在庫処分品)
新品、中古を含め、殆ど流通もしていない。 
現代において推奨する理由は皆無に等しい為、本レンズの
紹介は最小限としておこう。 
まあでも、歴史的価値とマニアック度はとても高いレンズだ。

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次は本記事ラストの35mmレンズだ。
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レンズ名:CANON EF-S 35mm/f2.8 Macro IS STM
レンズ購入価格:30,000円(中古)
使用カメラ:CANON EOS 8000D(APS-C機)

2017年頃発売の、APS-C機専用AF準広角(標準画角)
等倍マクロレンズ。
最大の特徴は、白色LED照明を内蔵した交換レンズ
(マクロ)である事だ。
この仕様のレンズは、発売時には同じくCANONからの、
EF-Mマウント用の「EF-M 28mm/F3.5 Macro IS STM」
と、本レンズの2本しか市場に存在していなかった。
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LED補助照明付きの利点を考察すると、「買うに値する
レンズ」と踏んだのだが、屋外明所では、LEDの効果は
残念ながら殆ど得られない(=自然光に対して暗すぎる)
まあ、弱暗所等で使うのが良さそうなのだが、従前には
存在しない仕様のレンズであった為、経験則が通用せず
上手くLED照明を使いこなすのは至難の業だ。

弱点は、そのLED照明の使いこなしの他、レンズ自体の
描写特性が「平面マクロ」的(匠の写真用語辞典第5回)で
被写体条件や作画意図が、かなり制限される、という点だ。

また、発売間もない段階で購入した為、中古相場が高価で
結果的にコスパがあまり優れない。
例えば、前述のHD35/2.8に比べると、およそ5割増の
高値相場は、LEDの付加価値を鑑みても、レンズの描写力
自身で負けているのだから、なんとも割高感を感じる。
まあしかし、本レンズの購入目的には、史上稀な仕様
であるLED付きレンズの実用性を探る、という要素も
あった為、コスト高については目をつぶる事にしよう。
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本当にLED補助照明が必要、というケースは、業務用撮影は
いざ知らず、趣味撮影においては、極めて少ないとは思うが、
それをわかっての購入であれば、止める理由も無い。

描写傾向の特異さ(例:ボケ質破綻等)も、それをわかって
買えば(=回避できるスキルを持っていれば)、あるいは
ビギナー層等で、そういう部分に気づかず、又は気にもしない
のであれば、この弱点も不問であろう。

基本、ビギナー層向けのマクロであり、中上級者層においては
「LED照明」が有効に活用できるシチュエーションを作り出し
「用途解発」を行えば良い。まあ、そういう事になる。

---
さて、ここまでで「B決勝(1回戦)」は終了だ。

個人用レンズ評価データベースを参照し、一応だが、この
6本のレンズに順位をつけておこう。評価基準は色々あるが
今回はあくまで総合(平均)評価点のみでのランキングだ。
(つまり、今回は「特別加点」は、無しとする)

1位:3.8点:KONICA HEXANON AR 35/2.8
2位:3.7点:HD PENTAX-DA 35/2.8 Macro
3位:3.6点:MINOLTA AF 35/1.4 (G)
4位:3.5点:中一光学 CREATOR 35/2
5位:3.2点:CANON EF-S 35/2.8 Macro
6位:2.7点:Voigtlander SC SKOPAR 35/2.5

意外な事に、オールドレンズのAR35/2.8が、この
B決勝(1回戦)での1位となった。

まあ、1位~4位は僅差であったが、その実・・
2位のHD35/2.8は、「マニアック度」が低く評価され、
3位のAF35/1.4は、「コスパ点」が壊滅的に低く、
4位のCREATORは、平凡なスペックである事が災いした。

いずれにしても、これらのレンズは「B決勝」止まりで
あり、決勝戦にはエントリーされなかったレンズ群だ。
これでもまあ、「B決勝」にノミネートされているだけ
ハイランカーな方であり、これ以下、数十本の所有35mm
レンズは、参戦を割愛されてしまっていた次第である。

また、上記個人評価DBでは、「名玉」と呼ばれるものは
評価総合点が4点以上のものであり、それは35mmレンズ
に限らず、全ての所有レンズの中でも、そう沢山ある
状況では無い。(全体の1割以下の比率でしか無い)

今回紹介レンズの中には、評価点数があまり高く無い
ものも混じっているが、「個性」を尊重している面も
あり、まあ、どれを使っても、さほど悪いレンズでは
無い事は確かだ。

追記1:2019年11月に発売された「安原製作所 ANTHY
35m/F1.8」(ミラーレス用マウント・フルサイズ対応)
(下写真)は、個人評価DB総合評価点3.8点と、
このB決勝にノミネートされても良かったのだが、
本記事執筆時点では、購入および評価が、残念ながら
間に合っていなかった。
もし、ここにエントリーしていたら、ANTHY 35/1.8
(下写真)がB優勝(第1位)となった事であろう。
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追記2:安原製作所を1人で経営していた安原伸儀氏
(ANTHY銘はアナグラム)は、2020年3月に逝去
されてしまった。優秀なANTHY35/1.8が遺作となって
しまった形なので、そのレンズを大切に使うとともに、
安原氏のご冥福をお祈りしたいと思う。

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さて、ここまでで「最強35mmレンズ選手権」における
「B決勝(1)」の記事は終了だ。
次回の記事は「B決勝(2)」となる予定。

特殊レンズ・スーパーマニアックス(44)超広角ズーム

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。
今回は「超広角ズーム(レンズ)」を4本紹介しよう。

「超広角ズームとは?」の定義が難しいが、だいたい
「望遠端が30mm以下のズームレンズ」としておこう。
なお、フルサイズ対応か否か?と、広角端の焦点距離に
ついては不問としておく。

それから、本記事では同一のレンズを異なるカメラで
使用した場合の差異についても解説しておく。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、SIGMA AF 15-30mm/f3.5-4.5 EX DG
ASPHERICAL
(中古購入価格 45,000円)(以下、AF15-30)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)

2001年発売のフルサイズ対応AF超広角ズーム。
・・と言うか、この時代はまだ銀塩時代であり、
フルサイズ(35mm判)に対応しているのは当然であった。

広角端15mmを実現したズームとしては初であり、
すなわち「初の超広角ズーム」と言う事ができるだろう。

よって本レンズの歴史的価値は、かなり高いと思う。
_c0032138_19415874.jpg
大柄のレンズであり、やや重い。花形フードが固定されて
いて、前部にフィルターを装着する事はできない。
レンズキャップをするには、リング状の付属品を嵌めてから、
キャップを付けなければならない。つまり、大柄な上に、
レンズを保護する手段が煩雑であるから、ハンドリング性能
(運搬、取り回し・振り回し)が極めて悪い。

ついでに弱点を挙げておくが、最短撮影距離が30cmと、
望遠端以外では「焦点距離10倍側」に達していない。
それでも、被写界深度が深い超広角ながらも近接撮影では、
背景ボケを得る事は、かろうじて出来るのだが、その際の
「ボケ質」が極めて悪い。

これらの弱点を回避するのは、なかなか困難だ。
ハンドリング性能については、もう、慎重に扱うしか無く、
描写の課題は、あくまで少し絞ってパンフォーカスとして、
中遠距離の撮影に特化するのが良いであろう。

そうした用法の際の解像感は、さほど悪くなく、業務用途
での団体集合写真にも使った事もある。
_c0032138_19415838.jpg
ただ、本レンズはデジタル時代に入ってからは、しばらくの
間はAPS-C機で使用していた。本レンズはEF(EOS)マウント
版であるが、フルサイズのEOS機は、長らく、ずっと高価で

あったので、今回使用のEOS 6Dを購入したのは、ようやく
2010年代中頃になってからである。

で、フルサイズ機で使用してみると、APS-C機の場合よりも
使いこなしが少し難しくなる。

まず、広い画角を持て余してしまう事が課題の1つであり、
あまり寄れないので、さらに構図的な主体が作り難い。

そしてズーム比が2(倍)と狭いが故に、ズームとしての
意味があまり無く、かといって24mmより長い焦点域では、
単なる広角レンズと等価であるので、これであれば、例えば
15mmとか17mmの単焦点を使う方が、被写体選びや
構図感覚が単純明快となって良いかも知れない。


さて、APS-C機での用法もここであげておこう。
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レンズは、そのままで、
カメラを、CANON EOS 8000D(APS-C機)に交替する。

小型軽量のボディにあえて装着してみた、これは重量バランス
のチェックの意味もある。

昔からの一般的な常識として「重いレンズには、重たいボディ
を、あてがわないとバランスが悪い」という話が何十年間も
定着しているが・・
まあ、1980年代の銀塩MF時代迄では、ピントリングの付近に
全体の重心位置が来ないと、確かに操作性が悪化した。
だが1990年代からのAF時代以降では、ピントリングの操作性は
重要度が減り、現代においては、上記のような「重いボディ」
である必然性は殆ど無い。

重要なのは「重心バランス点がホールドしやすいか?」と
「トータルのシステム重量をどこまで削減可能か?」の
2点である。

それから、ユーザー毎に撮影用途、撮影スタイルも個々に違う、
ここも重要な点だ、
1980年代の昔のように、誰でもが三脚を立てて風景を撮る
時代では無くなっている。だからシステム総重量は、とても
大事な要素だ、例えば、合計3kgもの重量級機材を振り廻せる
筈が無い事は、どんなビギナーにでもわかるであろう・・

昔の古い常識はもう忘れて、現代的な考えに転換するならば・・
この「システムの組み合わせの重量配分」については
あくまで「個々に試してみる」しか無い。

現代において「手持ち撮影を可能とする」交換レンズ群は、
市販されている範囲で軽量なものから重量級のものまでは
約100g~約1500gと、10倍以上もの重量の開きがあり、
(注:経験的には、1500gを超えるレンズの手持ち撮影は
大変困難である。それはもう限定された特殊用途専用だ)

カメラ側も、軽量ミラーレス機から一眼レフ旗艦機まで
約200g~約1500gと、ここも8倍程度の重量差が存在する。
これらは原理上、どのような組み合わせも可能であり、
200gの軽量ミラーレス機に1500gの重量級レンズを付ける
事も十分有り得る話であるし、あるいは1kg超えの旗艦機に
100g程度の軽量パンケーキレンズを装着する事も、昔から
マニアの間で「大小効果」として定番の使用形態であった。

つまり、数十通り、数百通りもの、重量バランス配分が
現代では有り得る訳であり、その使用快適性については、
撮影用途に応じて、それぞれ個別に試してみるしかない。

だから「重量級レンズには重量級ボディ」の話は、現代では
意味が無い。あくまで古い時代からの思い込みの概念であろう。
そういう事は、何十通り、何百通りもの組み合わせを様々に
組んで、自分で、屋外に持ち出しで自由に振り回して撮って
試してみれば、容易に理解できるはずである。
1台のカメラと1本のレンズだけで、それを三脚に乗せて、
「重量級レンズには・・」などと神妙に語っているのでは
全くもってNGである。
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さて、軽量なAPS-C機に装着時は、重量バランス以上に、
画角的に、かなり中途半端だ、換算24-48mmの画角範囲で
あれば、まあギリギリ単焦点28mm広角1本での守備範囲だ、
と言う事も出来る。
ただまあ、デジタル初期(2000年代前半)においては、
広角画角で高描写力を得られるシステム構成が、あまり
存在していなかったので、本レンズの出番も色々とあった
訳である。

ちなみに、「28mmの守備範囲である」という点において
は、大型でハンドリング性能が悪い本レンズを趣味撮影に
持ち出す気にはあまりなれず、2005年に発売された
「RICOH GR Digital(初期型)」を入手すると、もっぱら
その28mmの画角は、趣味撮影全般において有効であり、
小型軽量のそのカメラを、いつもカメラバッグに入れて
おいて、デジタル一眼レフ(APS-C機ばかり)は、
望遠撮影に特化するスタイルが主となっていく。だから
(超)広角ズームも、ほとんど出番が無くなっていた訳だ。

総合的には、色々と制約の多いレンズが故に「エンジョイ度」
があまり高く無いレンズである。
「エンジョイ度評価が低いレンズ(やカメラ)は、やがて
 使わなくなって行く」というのが、様々な機材評価において
わかって来ているのだが、本レンズも同様な状況であり、
実際、本レンズは殆ど使用しておらず、本ブログでの紹介も
およそ4年ぶり位の状況である。

それと、高価に買いすぎている。これは発売後間もない時期に
中古購入したので、まあやむを得ないとは言えるが、実際の
「用途開発」が難しい為に、使用頻度が落ちているならば、
これはやはり、コスパがかなり悪いと見なせる状態だ。

「防湿庫のこやし」となってしまうのも好ましく無いので、
まあ、こういう特集記事で、たまには使ってあげるとしよう。

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では、次の超広角ズーム、
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レンズは、TOKINA AT-X124 PRO DX (12-24mm/f4)
(中古購入価格 15,000円)(以下、AT-X124)
カメラは、NIKON D2H (APS-C機)

2004年発売のAPS-C機専用AF超広角ズーム。

やや大きく重いレンズであり、旗艦機D2Hとの組み合わせ
のシステムは、トータルの重量および大きさが気になる、
これだと試写に持ち出すのも少々面倒な状況だ。
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描写力は、さほど悪く無い。超広角ズームの生命線は
「解像感」であるが、これは優秀であり、発売当時から
定評があった。まあ、当時の「高級レンズ」である。

近接域でのボケ質の汚さは、やや気になるが、これは
本レンズだけの課題では無く、本記事で取り上げている
全ての超広角ズームに共通の課題である。

まあ、設計上でも解像力や歪曲収差、周辺減光等を
優先的に補正し、ボケ質等の性能は重視しないコンセプト
であろう事は十分に理解できる。
超広角ズームは、中遠距離を撮る用法が殆どなのだ。
もし、全ての性能を良くしようとしたら、さらに大きく重く
高価になってしまい、それでは商品になり難いだろう。

本レンズは後に後継型(2型)が存在し、そちらはレンズ内
モーター仕様であり、近代のNIKON下位機種でもAFが効く。
(注:本レンズで、近代のNIKON 5000番台、3000番台
機種との組み合わせでは、MF撮影のみ可。ただしそれら
NIKON低価格機の光学ファインダー性能は壊滅的に酷く、
MFでのピント合わせは不可能に近い→仕様的差別化)
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本レンズはTOKINA初のDXレンズ(=APS-C機専用)
であり、その歴史的価値の高さを鑑みて、後年にあえて
初期型を中古購入している。


このレンズの発売の時代は、デジタル一眼レフ本体が、
一般向けとして広まりかけた状況であった。
(本ブログでは各社から普及版デジタル一眼が出揃った
2004年を「デジタル一眼レフ元年」と定義している)
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本レンズは、NIKON Fマウント品であるが、発売時点では
NIKON D2HかD70位しか、母艦の選択肢は無かった事で
あろう。(勿論、他にもNIKON初期のデジタル一眼レフは、
いくつか存在しているが、これは実用性からの視点である)

NIKON D70(2004年)への装着例は、以下になる。
_c0032138_19423072.jpg
レンズは、そのままで。
カメラを、NIKON D70(APS-C機)に交替する。

実際のところ、D2Hとの組み合わせもD70との組み合わせ
も、あまり重量バランスが良く無い。

後年のD5000番台機種の方が、むしろバランスは優れる
のだが(注:前述のように、必ずしも重量級レンズに
重量級ボディをあてがう必然性は無い)
残念ながらD5000番台機種ではAFが動作しない、この点に
ついては、正直言って失敗(機材選択ミス)であり、後継の
2型にすればよかったと思う。(だが、歴史的価値が低い)

その後の時代においては、もう少し小型軽量な、APS-C機
専用の超広角ズームが各社から色々発売されている。
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現代において、本レンズでなければならない理由は既に
殆ど無いが、まあ、歴史的価値の高いレンズである事が、
個人的な「研究用」としての購入動機であった訳だ。
(=この後の時代の変遷を見る。まあ、現状では
あまり超広角ズームを所有していないが、いずれ多数の
この手のレンズを入手するようになると、その際には
比較の基準(リファレンス)としての、重要な意味が
出てくる訳だ)

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さて、次の超広角ズームだが、こちらは変則レンズだ。
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レンズは、smc PENTAX-F FISH EYE (Zoom) 17-28mm/f3.5-4.5
(中古購入価格 38,000円)(以下、F17-28)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

1995年頃に発売の希少な「魚眼ズームレンズ」である。
銀塩時代には、恐らくだが、こうした魚眼ズームは
唯一の存在であっただろう。

まあ、バブル期の企画だったかも知れない。その時代は
イケイケドンドンで、凄いもの、目立つもの、を色々と
皆が考えていた時代である。
(参考:バブル崩壊後の、1990年代中頃以降・・
バブル期に企画された新製品が発売されたが、変化した
ユーザー側のニーズと噛み合わず、新製品が売れずに
空前の「中古カメラブーム」が発生した歴史がある。
なお、現代のカメラ市場も、なにかと不条理であり、
このままでは、中古デジカメブームが起こってしまう
かも知れない。)

で、「唯一無二の物は絶対買え」というマニア的な
発想から、思わず発売後に時間を置かない状況で買って
しまったので、かなり高値であった。
_c0032138_19424181.jpg
まあ、フルサイズ機では本来の魚眼効果が得られるのだが、
フルサイズ対応の魚眼ズームまたは単焦点魚眼レンズを
現代のAPS-C機やμ4/3機で使用すると、その歪みの効果が
良く発揮できず、面白味に欠ける場合もある。

なので、デジタル時代に入ってからは、APS-C機対応の
魚眼ズームも、数機種ほど発売されており、あるいは
円周魚眼から対角線魚眼までをズーミングできる特殊な
魚眼ズームも発売されてはいるが、いずれもあまり一般的な
機材では無い。まあ、機種数も全体に数える程しか無いので、
あくまで「特殊機材」という類のものであろう。

実用性も少なく、使用する事自体も相当に難しい。

一般ズームレンズにおいて、平面被写体を撮る場合で、
単に画角の変化だけであれば、トリミング等で十分に
代用が効くのだが、魚眼ズームの場合には、ズーミングで
その歪みの効果が変化するのだ。
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ただでさえ魚眼レンズの構図コントロールは難しい。
(匠の写真用語辞典第14回記事「魚眼構図制御」参照)
当該記事を読んでもらえばわかると思うが、撮り手および
被写体の双方において3次元空間を意識しないと、魚眼レンズ
の構図は上手く制御が出来ない。

あまりに高度な技法が要求される為、初級中級層では、まず、
手も足も出ないだろうし、上級層ですら難儀すると思われる。

その証拠に、「魚眼レンズ」で画像検索を行ってみれば、
魚眼レンズでの厳密な構図コントロールが出来ている作品は
全体の1割にも満たず、その大半は「単に歪んで写っている」
だけの状態である事がわかるだろう。
つまり一般層では、困難極まりない技法であり、その事が良く
わかっていない状態で、魚眼で撮っているのに過ぎない。

それと、魚眼効果は、現代ではカメラ内のエフェクト機能や、
PC等での画像編集(アフター・レタッチ)でも得られる為、
それら魚眼風の作品が全て実際に魚眼レンズを用いて撮られて
いるものだ、という保証は無い。

実際に魚眼レンズで撮ってみようとすると、その構図厳密性は
前述のように超高難易度となるので、そうであれば、普通に
風景写真を撮ってから、レタッチで魚眼風に加工する方が
むしろ簡単であるとも言える。

で、魚眼ズームの場合には、歪み(デフォルメ)効果が
画角に応じて変動するので、さらに使いこなしが難しい。

なお、本F17-28は、ズーミングで変化するのは、画角や
魚眼効果のみならず、焦点位置まで変化してしまう模様だ。
最短撮影距離は、一応全域で45cmの記載がレンズ上にあるが、
あまりあてにならない(汗) ピーキング機能等と併用して
慎重にピント合わせを行わないとならないだろう。

まあ、相当に無理をした設計であると言えるのだが、
バブル期ならではの個性的商品であり、よくもまあ、
この状態で商品化にたどり着けたと、むしろ感心する。

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さて、ここからは、さらに高度な利用法として、本レンズを
μ4/3(マイクロフォーサーズ)機で使用してみる。
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レンズは、そのままで。
カメラを、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)に交替する。

この場合、画角が2倍に狭くなる為、魚眼のデフォルメ効果は
殆ど発生せず、「少し歪んだ広角レンズ」としてしか使えない。
また、既に「広角」とも言い難く、換算画角は34~56mmと、
むしろ「標準ズーム」の範疇だ。

で、この用法の場合の着目点であるが、「画面内で少しだけ
歪む部分を、いかにして作画に応用するか?」という
視点となる。
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まあ、つまり、普通に標準レンズで撮った場合と微妙に
異なる部分を、目立たせたり、目立たたせずに、制御して
使うという意味である。

こういう視点で練習を行うと、魚眼(ズーム)レンズの
真の難しさが見えて来る。まず一般レンズとの描写の差異を
理解してないとならず、さらに、その差異をさりげなく入れる
為の技法が高難易度であるし、加えて、では何故そうした差異
を入れたいのか?という表現意図まで含めると、とてつもなく
超高難易度の撮影システムとなる。

簡単に使いこなせる状態では無いが、こういうシステムで
練習を積む事自体に意味があると思っている。

魚眼レンズに限らず、全てのレンズにおいては「レンズの
言うがままに(性能のままに)、ただ何となく撮っている」
という状態は絶対にNGであり、レンズの特性、あるいはその
長所短所の多くを理解した上で、それを作画に活かす工夫を
しなければならない、それは簡単な話では無いが、絶対に
必要な事だ。それが「レンズを使いこなす」という事であり
それを目標とするのが良いであろう。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、TAMRON SP AF10-24mm/f3.5-4.5 Di Ⅱ
LD Aspherical [IF] (Model B001)
(中古購入価格 29,000円)(以下、B001)
カメラは、SONY α700 (APS-C機)

2008年~2009年に、各社一眼レフ用マウント品が
順次発売された、APS-C機専用AF超広角ズームレンズ。

APS-C機での換算画角は15mmまたは16mm位の画角から
始まるが、これまでの時代の他の一般的な超広角ズーム
においては、ズーム比が2(倍)程度であったのを、
本B001型で初めて、2.4のズーム比が実現された。
そういう意味で、歴史的価値の高いレンズである。
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なお、2010年以前のTAMRON製レンズは、本レンズも
含め、型番が異様に長い。これは、あれもこれもと
レンズの特徴(搭載した技術や機能)を挙げているから
そうなってしまうのだが、もう、このあたりの時代では、
LD(異常低分散ガラス)や、Aspherica(非球面レンズ)
の使用は、各社、当たり前の措置となっている。


なので、2010年に、TAMRON 60周年記念モデルの、
SP 70-300mm/f4.5-5.6 Di VC USD(Model A030)
(レンズマニアックス第6回記事)の発売を機に、レンズ
型番を簡略化したのだが、まあ、それでも依然長いと思う
ので、本ブログでは、勝手に大きく省略するか、または、
TAMRONの公式簡易型番のModel名で区別する事が大半だ。

Model名は、レンズ個体の判別が出来るので確実ではあるが
数百本もあるTAMRONレンズのModel名を全て暗記している
人は皆無だと思うので、たとえマニア間の会話であっても
Model名だけで話をするのは困難だ。また、中古流通業界で
も難しいだろうし、極め付きは以前、TAMRON本社を訪問し
技術陣と対談する機会があったが、その際に、Model名で
話をしても、技術者達の担当外であった古いレンズ等では
通じない事もあった位だ(汗)
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さて、本B001だが、小型軽量で描写力も高い。
一応高画質を示すSP仕様となっている。銀塩時代のSP仕様
は、まだ定義がはっきりしておらず、あまり高描写力では
無く、単に特殊なスペック(例:17mmや500mm等)で
あるケースも色々とあったが、近年のデジタル時代では、
SP銘がついている場合は、確かに良く写る場合が多い。

ただ、本レンズも他の超広角ズーム同様に、ボケ質が
かなり汚い。でもその点は前述のように、こうした超広角
ズームで背景をボカした利用法など、最初から「想定外」
の設計であろう。最短撮影距離も24cmであり、これも
望遠端でかろうじて焦点距離の10倍側であるから、
近接撮影用途には不向きな仕様となっている。
あくまで中遠距離の平面被写体専用のレンズだ。

解像感に優れる長所がある為、業務上での設備全景撮影等に、
何度も使用した事がある(というか、業務撮影専用レンズの
位置づけとなっていて、趣味撮影では殆ど使用しない)
ただし、画角が広い為にか? 露出制御が意外に難しく、
事後の輝度補正編集は必須となる。

だが、本レンズも、もはやクラッシックと言えよう、
進化のテンポが速いデジタル時代においては、発売後10年
以上も経てば、周囲の新製品の性能やら、機材を利用する
環境が激変してしまうのだ。

例えば、現代では、一眼レフもミラーレス機もフルサイズ
機が主流となっている(注:本ブログでは、一眼レフの
フルサイズ元年は2012年。ミラーレス機でのフルサイズ
元年は2019年、と定義している)
だから、フルサイズ対応の超広角ズームも色々と出始めて
いる状況であり、新規ユーザー層は、それらに興味が
出ているかも知れない。

ただ、個人的には、フルサイズ機には長所も短所もあると
評価している為、必ずしも、全ての撮影機材をフルサイズ
に統一する気は毛頭無い。

だから、旧型のAPS-C専用レンズであっても、APS-C機を
母艦として、何ら問題なく使っている訳であるし、
(注:今回の使用機α700も、あえて時代を揃えている)
あるいは近年の初級中級層でのフルサイズ機人気により、
APS-C型機専用レンズの中古相場が下落している事もまた
こうしたレンズ群がコスパが良くなって嬉しい訳だ。

コスパは趣味撮影のみならず、業務用途ならばさらに顕著
に影響し、たとえば同じ品質の写真を納品して、同じ報酬
が得られるならば、できるだけ安価な機材(や手間)で
撮影した方が、商売上では利益率を高める事が出来る訳だ。

こうした視点からも、現代の職業写真家層は、カメラ市場
縮退の影響により高価になりすぎた新鋭機等を、あまり購入
しない。何故ならば旧機種でも同様な写真が撮れるならば
新鋭機を買う事が、商売上では赤字になってしまうからだ。

まあでも、いつまでも旧機種を使い続けていたら、物理的
な老朽化も酷いだろうし、新機種に比べて相対的に性能が
低くなる「仕様老朽化寿命」も来るから、いずれかの
タイミングで新鋭機にリプレイス(置き換える)する必要は
確かにある。

でも、それは新製品の発売後すぐのタイミングでは無い。
これは職業写真家層に限らず、趣味撮影においても上級者層
では、全く同様の観点となるだろう。
今持っているシステムで十分に写真が撮れるのに、高額な
新鋭機を買う理由が殆ど無いからだ。

だから、現代においては、新鋭機を持って撮っているのは
ビギナー層ばかり、という、極めて不自然な市場状況に
なってしまっている訳だ。
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余談が長くなった、このあたりの話は、本ブログではいつも
書いている事である、市場の不条理を責めても始まらないし
その事で個人的に得をする事も無い。むしろ、初級中級層が
高価な新鋭機に買い換えて、中古市場に適正な性能で適価な
コスパの良い旧製品が沢山出回ってくれた方が、個人的には、
大助かりなのだ。

ちなみに本B001も、現代においては、2万円を切る中古
相場となっている、こうした高性能レンズが、この価格帯
で買えるならば、何も文句は無いであろう。
フルサイズ機で使えるか否か?など、どうでも良い話だ。

前述のように、同じ品質の写真が撮れるのであれば、
撮影機材(システム)のコストは低ければ低い程望ましい。

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では、今回の「超広角ズーム編」は、このあたり迄で。
次回記事に続く。


【玄人専科】匠の写真用語辞典(30)補足編~文化・歴史編Ⅱ

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本シリーズでは、主に本ブログの範囲でのみ使われたる、
あまり一般的では無い写真撮影に用語を解説している。

今回も「補足編」として、テーマを「文化・歴史編」とするが、
既に本シリーズ第19回記事でも「文化・歴史編」を掲載して
おり、今回は、PartⅡとする。

では、早速始めよう。
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<文化・歴史編 Part2>

★傑作機・名機
 マニア用語、独自解釈。

「傑作機」とは、「名機」を超えるレベルの、特に優れた
 カメラである、と本ブログでは定義している。
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 では「名機」とは何か? と言うと、一般的には
「世間での評価の高いカメラ、有名なカメラ、高価なカメラ」
 といったイメージであろうが・・

 けど、本ブログにおいては、ちょっと定義が異なり、
「複数の評価項目が全て高得点となり、合計(平均)点が高い」
 としている。
 その評価項目は、銀塩一眼レフ系(レンジファインダー機含む)
 銀塩/デジタル・コンパクト系(固定式レンズの物)、
 デジタル一眼レフ、ミラーレス機において、それぞれ異なり、
 以下に示す。

<銀塩一眼レフ(系)評価項目>(計10項目)
 【基本・付加性能】【操作性・操作系】【ファインダー】
 【感触性能全般】【質感・高級感】【マニアック度】
 【エンジョイ度】【購入時コスパ 】【完成度(当時)】
 【歴史的価値】

<銀塩/デジタルコンパクト(系)評価項目>(計9項目)
 【基本・付加性能】【描写力・表現力】【操作性・操作系】
 【質感・高級感】【マニアック度】【エンジョイ度】
 【購入時コスパ 】【完成度(当時)】【歴史的価値】

<デジタル一眼レフ評価項目>(計8項目)
 【基本・付加性能】【描写力・表現力】【操作性・操作系】
 【マニアック度】【エンジョイ度】【購入時コスパ 】
 【完成度(当時)】【歴史的価値】

<ミラーレス機評価項目>(計10項目)
 【基本・付加性能】【描写力・表現力】【操作性・操作系】
 【アダプター適性】【マニアック度】【エンジョイ度】
 【購入時コスパ】【完成度(当時)】【仕様老朽化寿命】
 【歴史的価値】

 個々の評価項目の意味や評価基準については、それぞれ
 「銀塩一眼レフ・クラッシックス」
 「銀塩コンパクト・クラッシックス」
 「デジタル一眼レフ・クラッシックス」
 「ミラーレス・クラッシックス」
 の、各シリーズ記事の第1回目に定義してある。

 カメラの種類別において評価項目が異なるのは、種別毎に
 特性や用途が異なるので、まあ当然である、という見解だ。

 また、この評価項目の種類が妥当かどうか?は、ユーザー
 個々のカメラに求める要素(ニーズ、価値観等)で異なる。
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 だから、ユーザーが異なれば、別の評価項目になる事は
 十分に有り得る話であるし、それは個々のユーザー毎に
(本来ならば)自分自身で評価項目や評価基準を作れば良い。

 ユーザーによっては、カメラに求める価値観が全く異なり
 たとえば【格好良さ】【周囲に自慢できる度】【耐久性】
 【シャッター音の静かさ】【将来での値上がり期待度】等の
 個々のユーザーニーズや、求める要素毎に、いくらでも評価
 項目自体が変化してしまう可能性がある訳だ。

 逆に言えば、他人が、その人固有の評価基準で評価した物を
 その点数等だけを見て、良否や購入を判断する事は危険だ。
 いくら綿密に評価・分析しているように見えたとしても、
 それはあくまで、その評価者の視点(価値観)での話だ。
 よって、他人の評価は、あくまで参考程度にしかならない。

 それは本ブログでの評価も同様であり、それを他者が見ても
 その人のニーズや価値観とは異なるから、参考にすらならない
 かも知れない。では何故評価をしているか?といえば、自分
 自身のデータベースの充実の為、絶対的評価基準を養う為、
 そして、読者向けには「このような手法で機材を評価をする」
 といったメソッドやノウハウを参考にしてもらいたいからだ。

 ・・で、これらの評価項目は、私の場合は個々に5点満点で
 点数を付けており、その平均得点が3点ならば標準的だ。
 そして、平均得点が概ね、3点台の後半位であれば
「名機」と呼ぶ事が出来、4点に近づくか上回る位ともなれば
「傑作機」と評価する事としている。

 だが、上の評価項目(基準)は多岐に渡り、なかなか総合的な
 平均得点を上げる事は難しい。
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 例えば、世間一般的な名機のイメージでの「有名なカメラ」
 という評価項目は上記には無いし、「高価(価値がある)」
 という要素は、上記評価項目では、「コスパ」点がむしろ
 マイナス(低)評価となってしまう。

 私の所有する範囲でのカメラ(過去の各シリーズ記事で紹介)
 における、「傑作機」と「名機」を以下に上げておこう。

<銀塩一眼レフ系>
 平均得点=4.10 1980年(MF) PENTAX LX(傑作機)
 平均得点=4.00 2000年(AF) MINOLTA α-7(傑作機)
 平均得点=3.80 1983年(MF) NIKON FE2(名機)
 平均得点=3.75 1981年(MF) CANON NEW F-1(名機)
 平均得点=3.70 1998年(AF) MINOLTA α-9(名機)
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<銀塩コンパクト系>
 平均得点=3.83 1997年(AF) OLYMPUS μ-Ⅱ(名機or傑作機)
 平均得点=3.73 2001年(AF) CONTAX T3(名機)
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<デジタル一眼レフ>
 平均得点=3.81 2017年 PENTAX KP(名機or傑作機)

<ミラーレス機>
 平均得点=4.00 2008年 PANASONIC DMC-G1(傑作機)
 平均得点=3.90 2012年 SONY NEX-7(名機or傑作機)
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 なお、「自分が持っている有名なカメラが入っていない!」と、
 憤慨したり残念がる必要は無い、まず、これはあくまで、私が
 現在所有している百数十台の範囲のカメラでの話だ。
(注:未購入のカメラの事は絶対に評価しない。
 あるいは、かつて所有していた、というカメラも対象外だ。
 勿論実用経験を持つものであり、故障機や愛蔵版も対象外だ)

 それに「有名なカメラ」という機種も、勿論私も色々と所有は
 している。でも、それらが必ずしも平均得点が高くて、上記の
 名機のレベルにまで上がってくる事は、そう多くは無いのだ。
(特に「デジタル一眼レフ」では、有名機は全滅の状態だ)
 まあ、それら有名機は、だいたい3.0~3.5点の間に収まる。
 標準的な3点を超えれば、勿論、悪いカメラでは無いのだが、
「名機」と呼ぶからには、もっと圧倒的な高得点が必要だろう。
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 また、前述のように評価項目(ユーザーニーズ)は個人個人に
 より異なる為、例えば「このカメラは誰もが知る有名カメラだ、
 だから【有名度】は、5点満点を超えて10点だ、これが1番!」
 と言う人であれば、単に自分でそう評価しておけば良いだけだ。

 けど、上記の私の評価項目は「ものすごく客観的」である、
 できるだけ個人の感情等や、贔屓とするメーカー等による
「主観的な感情・感覚を排除している」事については強調して
 おく事にする。

 興味や異論があれば、自分の所有するカメラにおいて、上記
 の評価項目に照らし合わせ、自分で評価点を入れて見れば、
 その事は良くわかると思う。「有名なカメラだ」とか言っても、
 全然、平均評価点が高くならない事が良く理解出来ると思う。
(それに、評価点を客観的に判断する事も結構困難であろう、
 点数をつけられるくらいであれば、もう中級マニア以上だ)
 
 それから、本シリーズ第19回記事(文化・歴史編)で、
「カメラ形態15年~20年寿命説」の話を書いているが、
 概ね、ある種類のカメラが、その形態における進化・進歩が
 ピークに達する(つまり、その形態が寿命に近づく)時代に
 上記に上げたような「名機」や「傑作機」が登場しやすい。
(例:銀塩一眼の名機は、MF終焉期とAF終焉期に集中している)
 まあ、完成度が高まった最終時期だから、そうなるのだろう。

★OEMメーカー
 一般用語

 OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、他社からの
 依頼により、相手先ブランドの製品(商品)を製造する事。
 または、その工場や企業(=OEMメーカー)

 これは、カメラやレンズの世界では比較的ポピュラーな
 製造形態であり、具体的に企業名が公開されている範囲では
 COSINA、GOKO、チノン、富岡光学、日東光学、SANYOなど
 がある(あった)
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 ただ、一般的に、カメラは「ブランド製品」である。
 だから、有名メーカーの製品が、実際には他社で生産されて
 いる事を消費者層が知ってしまうと、その品質や性能に懸念を 
 持つ消費者/ユーザー層も依然として多い。
 だからOEM製品(他社製造品)であっても、発売元のメーカー
 は、その事実や生産企業名を「非公開」としている場合も多い。

 まあでも、現代のデジタル時代において、1つのメーカーが
 あらゆる種類の電子部品まで含めて、全て自社で製造する
 といった状態は、まず不可能になっている。
 なので「ではどこまで自社で作れば、自社製品と呼べるか?」
 といった定義も、現代においては、ものすごく曖昧だ。

 よって、基本的には、「生産メーカー」や「ブランド」に
 あまり拘る必要は無いし、拘り過ぎる事も良く無い。
 現代においては、基本的には各社の製品の品質は全て同等だ。

 まあ、戦前や戦後、つまり、1930年代~1960年代位で
 あれば、カメラを始め、各種機械製品や電化製品等は、
 1つのメーカーだけで作られている場合も多々あり、そうした
 ケースではメーカー間に品質や性能の差があった事も確かだ。

 でも、その後の高度成長期において、日本の製造業全般が
 大きく効率化された歴史は、誰もが知っている事であろう。
 部品調達の効率化や、複数の工場による分業体制とか、
 海外生産とか、そういった新しい製造体制が築かれた訳だ。

 高度成長期から、さらに数十年が経過した現代においては、
 製造体系はさらに複雑化していき、もはや「メーカー」という
 概念自体も、かなり希薄だ。

 そんな現代の世情において、いまだに
「カメラはどのメーカーのものが性能(品質)が良いのだ?」
 と聞いてくるビギナー層が非常に多いのは、何と言うか、
 あきれかえってしまうばかりだ。

 品質においては、各メーカーでは共通の部品を使っている
 ケースも多く、そして性能については、もしどこかのメーカー
 の製品が他社よりずっと劣っていたままだったら、もうその
 メーカーのカメラやレンズは売れず、潰れてしまうでは無いか。

 実際にはそうなっていない訳であり、つまり、各社の製品の
 性能もまた同等である。仮に一時的に何かが劣っていたと
 しても、すぐに「追いつけ、追い越せ」で、改良が進められ、
 少し時間が経てば各社製品の性能は同等になるのだ。
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「壊れ易い」とかもまた「都市伝説」の類であろう、現に私は
 何百台ものカメラやレンズを所有して実際に使っているが、
 偶然が重なって、または劣化して壊れる以外は、殆ど故障は
 発生しておらず、その故障確率は2%にも満たない。
 特定のメーカーの製品だけ壊れる事も無いし、それがある
 ならば、特定メーカーが使う特定部品が、非常に長期に渡って
 使用する際に劣化しやすい、という程度だ、でもそういう
 ケースも、概ね、40年とか50年とか言う長期のレベルであり、
 10年や20年程度の使用では、普通はビクともしない。

 ただ、震災などの非常時において、各社が一時的に品質の悪い
 代替部品等を採用したケースは何度かあったと推測している。
(それについては、本シリーズ第22回記事「持病」を参照)
 まあ、注意するべきは、それくらいであろうか・・
 
 ともかく、現代の形態においては「OEM」であるかどうかは
 まるで気にする必要は無い。

 カメラでは無いが、他の商品分野においては、世界的な
 超巨大OEMメーカーが存在し、低価格帯の商品の殆どは、
 その1社で生産されているケースも知っている。そして
 OEMメーカー生産の低価格製品の方が、発売元のメーカー
 自身による生産の高価格帯製品(ブランド品)よりも
 性能が高い、といった逆転現象ですら実例がある程だ。

 まあつまり、ブランドの価値を狙って、無理をして自社で
 高額商品を作るより、手馴れた「製造の専門家」にまかせて
 おいた方が良くなるケースもある、という典型例である。

 特に、カメラの世界では、現在では「フォクトレンダー」や
「カール・ツァイス」といった有名ブランドを保有していて、
 高級レンズメーカーとして著名な「コシナ」は、1990年代
 までは世の中に名前が全く知られていないOEMメーカーで
 あったのだ。その当時は、有名メーカーのカメラを買った
 のが、実は中身がコシナ製であった、と知ったユーザーは、
「安物をつかまされた!」と怒った事すらあったのだが・・

 現代であれば全く逆の印象となり「へ~、あの有名なコシナ
 が作っていたのか、それなら品質が高いな、ラッキー!」
 という、正反対な話となるだろう。
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 まあ、「ブランド」とか「OEM」なんて、結局のところは
 現代においては、どうでも良い訳だ、ビギナーユーザーや
 昔の時代を生きて来たシニア層においては、それを良く
 理解する必要があると思う。

★軍需製品としてのカメラ
 世界情勢、独自解釈。

 第二次世界大戦の直前の時代、1930年代のドイツ製カメラは
「高い品質とブランド力」を持つ事で非常に良く知られていて、
 それから80年以上が経過した現代においても、LEICA(ライカ)
 CONTAX(コンタックス)、ROLLEI(ローライ)、
 フォクトレンダー等の、当時のドイツメーカーは非常に著名、
 かつ、一部のカメラファン層には「神格化」される程までに
 なっている。
(注:HASSELBLAD(ハッセルブラッド)は、やや遅めの
 戦後の時代の製品から有名になった)
 
 ドイツにおいて、この時期にカメラを含む光学機器が大きく
 発展したのは、背景に軍事的な要素が関係している事が
 大きいのは間違いの無い歴史であろう。

 軍事における、カメラ(写真)は、記録や諜報活動に重要で
 あるし、レンズや光学機器も、索敵・測量等、あらゆる面で
 使われ、高性能や高品質が要求されていた事は間違いない。

 まあ、日本においても同様であり、日本光学(現:ニコン)
 の「測距儀」が戦艦大和に搭載されていた事は、マニアや
 一般層にも良く知られた事実であるが、ニコン以外でも
 大戦前から戦時中にかけ、当時の多くの光学機器メーカーは、
 軍需工場となって、様々な光学製品を開発・製造していた。
 まあつまり、当時のカメラやレンズは「光学兵器」である。

 で、戦前のLEICA(ライカ)やCONTAX(コンタックス)の
 カメラが非常に高価であった事も、マニア間では良く知られて
 いて、それらのカメラ価格は、だいたい1000円位、これは
 現代の貨幣価値では、およそ300万円程にも相当する(!)

 だが、一部のマニア層では、当時の「戦争」という世情を
 鑑みず、「昔のライカやコンタックスは、とても性能が
 良い高級品だ、だから物凄く高価であったのだ」という
 そういう論理(感覚、間違った思い込み)を持っている。

 その感覚が、その後60年も経った後の1990年代での
「中古カメラブーム」の際にも再燃してしまい、マニア層や
 投機層は、ライカやコンタックス(あるいは他のブランド)
 といった、高いブランド力を持つカメラを買い集めた訳だ。
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 だけど、よくよく考えてみれば、戦前のドイツ製カメラが
 高性能であれば、当時のナチス・ドイツ政権においては、
 そう簡単に海外に輸出させる訳にもいかない。それが敵国の
 手に渡ったりすれば、いざ戦争になった際に困るからだ。

 なので、異常とも言える高値が付いていた事については、
 あまり簡単に流通させないように、という要因も大きかった
 事だろうと推測している。あるいは、その高値でも売れて
 いたのならば、その売り上げは軍資金になったのかも知れない。
 
 そういう状況であったのならば、あまり呑気にまたは平然と
「戦前のドイツ製カメラは高級品だった」などの感覚を持つ
 事も、現代の倫理感では適切では無いかも知れない。
 これは、あくまで、戦争という暗い時代での状況なのだ。

 まあ、平和な現代において、依然、それらのドイツブランド
 の名前は強力に一般層にまで浸透している。
 それをどう思うかは個人の感覚や価値観による事であろう、
 でも、少なくとも最低限の歴史的な背景は理解しておく
 必要はあるとも思う。その上で、どう感じるかは勝手だが、
「何も知らないままで、こうである、と思い込む」という事は、
 本件に限らず、どんな分野の話であっても決して褒められる
 状態では無いであろう。
 
 そして戦後も色々と(敗戦国である)ドイツのブランド
 には紆余曲折があった、それもまた歴史的な事実だ。
 その詳細を述べるのは冗長になるので割愛するが、各ブランド
(メーカー)の歴史を調べるのは、さほど難しい事でも無い。
 そのあたりもまた、マニア層であれば、良く歴史を勉強して
 おく必要があると思っている。
 色々と、そこから感じる事もあろうからだ・・

★団塊の世代
 一般用語、マーケティング用語、独自解釈。

「団塊の世代」とは、第二次大戦後のベビーブーム、つまり
 1947年~1949年に生まれた世代である。
 現代の日本において、占める人口比率も少なくは無く、
 かつ、共通の思想的・文化的な特徴を持つ特異な世代だ。

 その共通の特徴については、必ずしも良い話ばかりでは無い
 ので、ここでは割愛するが、その共通の思想が消費(購買)
 行動に与える影響も有り、マーケティング的視点においても
「団塊の世代」をターゲットとする商品戦略はいくらでもある。
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 本記事においての独自解釈としては、この「団塊の世代」が
 育ってきた時代においてのカメラ市場での特徴的な出来事と
 団塊の世代の共通思想や、消費(購買)行動との関連性が
 とても強いと思われる点だ。

 例えば、団塊の世代が若い頃に憧れたカメラが、1990年代の
 中古カメラブームを牽引する要因になった事や、
 2010年代でのシニア層が高価格帯機を欲しがる「高付加価値化」
(=つまり、カメラやレンズの値上げ)に繋がった事などだ。

 これについては、カメラ界や、とりまく世情の歴史の詳細な
 分析と「団塊の世代」の各時代における年齢や境遇等との
 連携した解析が必要だ。まあ、だいたいそれも出来ては
 いるのだが、記事文字数を大幅に消費してしまう為、詳細は
 また別の機会としよう。
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 上写真は、1971年、団塊の世代が20歳代での青年期に
 発売された高級カメラNIKON F2(注:写真は後年のA型)
 これは当時の若者の収入では買える筈も無い高価な価格帯
(給料の3~4ヶ月分に相当)カメラであるが、後年の
 1990年代の中古カメラブームの際には大人気となった。

 補足:「団塊の世代」の命名者は、同名の書籍(1976)
 の著者である「堺屋太一」氏(1935-2019)である。

★αショック/第二次αショック
 市場用語。

 本シリーズ第19回記事で説明した「αショック」とは、
 1985年に、MINOLTAが世界初の実用的AF一眼レフ 
 α-7000を発売した事で「社会現象」にもなった事を指す。
 
 一般的なイメージでは、「そこから急速に一眼レフは
 AF化の時代に入りました。各社はαに追いつけ、追い越せ
 とばかりに追従しました。」という、呑気な昔話のような
 感覚であろうか・・

 でも、「ショック」と名前がついている以上は、そんなに
 生易しいものでは無い、オイルショックやリーマンショック、
 コロナショックと同様に、経済的なダメージがあった個人や
 企業も非常に多かったのだ。

 事実、一眼レフのAF化に追従できなかったメーカ-は
 一眼レフ市場から撤退した訳であり、残ったメーカー数
 より、やめたメーカー数の方が多いくらいである。
 カメラメーカーのみならず、部品メーカーや下請け企業
 等も含めれば、市場全体への影響は極めて大きい。
 個人のレベルにおいても、部署等が無くなって職を失った
 人も多かったであろう・・

 まあ、そういう現実の厳しさが「αショック」であった
 訳である。
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「第二次αショック」とは、2013年にSONYが、α7/Rで
 初のフルサイズ・ミラーレス機をリリースした事だ。
 だが、これは、初代αショック程の市場への大きな影響
 は無かったようにも思う。でも、これが遠因となって、
 2018年頃には、各社においてフルサイズ・ミラーレス機
 の展開が始まった。
 現時点ではまだ何とも言えないのだが、数年後には
 カメラ市場ので一眼レフ離れが相当に進んでいる予想も
 十分につく、そうなると、デジタル一眼レフは第二次
 αショックを要因として、ミラーレス機へ形態が変化した、
 とも解釈できるであろう。 

(注:より個人的な厳しい予測では、各社の新鋭ミラーレス
 機も全く売れているようには見えず、カメラ界全般が
 大きく縮退していくように思える。だが、それもまた、
 第二次αショックが遠因であるようにも思えてしまう)


 本シリーズ第19回記事での「カメラ形態20年寿命説」
 においては、デジタル一眼レフの寿命は、もう尽きて
 しまっている訳だ、過去の歴史は全て、どの形態のカメラも
 20年くらいで新しい形態に変化している。つまり、それ位の
 時間が経つと、技術的な改良の余地も無くなり、性能が
 ピークに達して頭打ちする。ユーザー層においても、
 目新しさが無くなり、新製品も過去製品の延長線上だから
 魅力を感じなくなってしまう訳だ。

 まあでも、現在の段階では、まだ何とも将来の予測は
 つきにくい、何か革新的な技術が発明・開発されて、
 それが搭載されて一眼レフの性能や機能が劇的に改善される
 可能性もあるからだ。そうなった場合銀塩AF時代から、
 およそ30年間以上も続く、AF/デジタル一眼レフにおいて、
 ユーザー層が保有している「レンズ資産」が有利に働く。
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 以下は架空の話だが、いままで使っていた一眼用レンズが
 ビュンビュンとAFが速くなり、圧倒的な高画質が得られる
 ような新技術が、もし開発されたら、ユーザー層の大半は
 新規のミラーレス機へは興味が無くなり、一斉に一眼レフに
 回帰する事であろう、まあそういう可能性も有りうるという
 事だ。

(あるいは、少し前述したように、一眼レフもミラーレスも
 共倒れ・総崩れになってしまうかもしれない。
 ただ、そういう最悪のシナリオは、市場やカメラファン層
 においては誰も望んでいない。一眼レフもミラース機も
 共に発展を続け、消費者視点においての選択肢が多ければ
 多いほど、望ましい市場な訳だ。・・ただ、現実的には、
 2010年代末頃から、もう、各社は一眼レフの新製品を
 殆ど発売していないので、厳しい状況は確かだ。
 そこに2020年のコロナ禍が追い討ちを掛け、同年の
 5月頃では、国内でカメラは一眼レフもミラーレス機も、
 各数千台しか売れていない。これは1つの店舗での販売数
 ではなく、全国で全メーカーのカメラ(一眼/ミラーレス)
 を合わせても、たったの数千台だ・・)
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 結局のところ、時代(歴史)の分析は、過去において既に
 確定している事実しか、研究分析する事は出来ない、
 未来の事など、誰にもわかる筈が無いからだ・・

 まあ、逆に言えば、楽しい未来を想像するのもありだろう、
 技術というものは、そういう事から生まれる事も多いのだ。
(例:「ドラえもん」や「鉄腕アトム」に登場する架空の未来
 技術を、必死に実用化しようとする研究者は極めて多い)

★デジタル写真編集必須論とデジタル・デバイド
 独自概念。

 2000年代前半、各社から実用的なデジタル一眼レフが
 出揃い、それまでの銀塩(AF)一眼レフユーザーも、徐々に
 デジタル化していった。
 だが、デジタル一眼レフの見かけは、銀塩一眼レフと殆ど
 同じであり、大半のケースで、銀塩一眼レフ用の交換レンズ
 を使用する事が出来た。
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 この為、多くのユーザー層は「フィルムが不要なったカメラ」
 程度の認識しか持っておらず、撮影の概念も技法も全て、
 過去のフィルム時代のままのユーザーが大多数であった。
(これは、ビギナーから職業写真家層まで、ほぼ全員だ)

 だが、デジタルの概念はフィルムの概念とまったく異なる、
 フィルム時代の知識や経験は、あまり役に立たないのだ。
 よって、市場の一部では、その危惧から「フィルムの常識は
 デジタルの非常識」といったスローガン(?)を広めていた
 節もあったが、それでは意味が曖昧すぎて、実際に何をどう
 すれば良いのかは、さっぱり誰もわからなかった事であろう。
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 2000年代前半当時に色々あった誤解で、最も酷かったのは
「デジタル写真を編集や加工するのは邪道だ」という考え方で
 あろう。
 勿論、現代のアマチュア層での常識とは真逆の話であるし、
 当時であっても業務撮影分野では、撮った写真に対して様々な
 デジタル編集を行わない事など、有り得ない話であった。

 では何故、そんな誤解が広まったのか?
 恐らくだが、これは「誤解」ではなく、「妬み、ひがみ」と
 いったネガティブな感情である。

 銀塩時代のカラーフィルム現像は、どんなマニアであっても
 まず行わないであろう。(注:モノクロ現像は自身で行って
 いた人も少なく無い)よって、撮った写真は、DPE店に任せて
 いた。プリントの仕上がりが悪ければ、文句を言う人は居たが
 まさか自身でDPE店のプリンター設定を調整出来る筈も無い。
 だから、銀塩写真の仕上がりは完全に人任せであったのだ。

 ところがデジタル時代に入ると、自分でPCで編集を行わなければ
 ならない。レタッチソフトはおろか、パソコンさえも触った事
 の無い人が多かった時代だ。だから自分で撮った写真は、何も
 さわる事(編集や加工)が出来ず、せいぜいがメモリーカード
 をDPE店に持っていってプリントする位である。
 ところが、PCでの画像編集が出来る人は、様々な編集加工を
 行い、新たな表現を得たり高画質の写真に仕上げる事が出来る。

 でも、それが出来ない(PCを触れない)人から見れば、それは
「不公平だ、卑怯だ、邪道だ」とマイナス感情が爆発してしまう
 訳である。
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 そこから約20年、もうアマチュア層でも、様々な編集ソフトを
 用いて写真の加工編集を行う事が普通になった。
 だから、もう「写真を編集加工するのは邪道だ」などと言う
 人は誰も居ない。

 結局、なんともつまらない話なのだが、本件に限らず、新しい
 技術や概念が世の中に出てくると、必ずと言っていいほど、
 その恩恵を享受できる人と出来ない人が現れる「格差」と
 なって、その恩恵が得られない人からは、必ずそうした
「足をひっぱる」ようなネガティブな意見が出てくるのだ。

 ちなみに、こうした状態は「デジタル・デバイド」とか、
「情報ヒエラルキー」といった用語(まあ、広くは「情報格差」
 という意味である)で、1990年代頃から、学者等の間で予見
 されていた事だ。

 高度成長期の昔の日本では無いのだから、「皆が横並び」に
 なる事など、現代の社会では有り得ないし、そもそも個々の
 持つ価値観なども現代では大きく多様化している。
 そんな中で生きて行くには、従前よりもはるかに広い視点
 を持たなければならない、という事だ。

 カメラ界全般において、他の市場分野や世情に比較して、
 ものすごく保守的、かつ古い考え方が大きく蔓延している
 事が、なんだか非常に気になっている次第だ。

 まずはユーザーから、「昔の常識は今では通用しない」と
 考え方を変容していかなくてはならないだろう。

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さて、今回の記事はこのあたりまでだが、本カテゴリーに
ついては、まだまだ書ききれていない内容がある。
次回も引き続き「文化・歴史編」のPart3としよう。

レンズ・マニアックス(34)~ジャンクレンズ編(Ⅲ)

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新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ紹介記事では
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回は、ジャンクレンズ編の「その3」とし、未紹介の
レンズ3本と、過去記事で紹介済みの1本を取り上げる。

まず例によって、「ジャンクレンズ」の定義だが。
故障品、キズ、カビ、動作不良、付属品欠品等の理由で、
商品としての価値が殆ど無い物で、中古カメラ店やリサイクル
店等で、概ね500円~2000円程度で安価に売られている
レンズの事を指す。(注:旧来、1000円~3000円と記載
するケースもあったが、近年、銀塩時代の古いレンズ等は、
さらにジャンク相場が下がってきている)

勿論、安価に売られているのは性能が低いからだとは限らず、
単に古くて不人気であったりするからであり、中には現代の
レンズにも負けない高描写力のものも存在する。

では、まずは最初のジャンクレンズ
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レンズは、TAMRON AF 90-300mm/f4.5-5.6
(Model 62D)(ジャンク購入価格 500円)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)

1990年発売の初期AF望遠ズームレンズ、発売マウントは
TAMRONのWeb資料によると、NIKON F、α、PENTAX K
のみで、何故かEOS(EF)用が無い。


TAMRONのAFレンズは1987年から発売されていたが、
当初はMINOLTA α(AF)マウントのみの発売であった。

本レンズの時代1990年では、TAMRON製の他レンズも
同様に、EOS(EF)マウント版(AFレンズ)は無い。


まあつまり、EOSのAFプロトコルの解析に手間取って
いたのであろう。カメラとレンズの間に、どんなデータが
やりとりされるか?を解析しないとAFレンズは作れない。
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さて、「プロトコル」の概念が、わからないカメラマンが
大半だと思うので、ここで寸劇調に、カメラとレンズの
間の情報のやりとり(つまり、プロトコル)を再現する。
カ=カメラ、レ=レンズだとしよう。

カメラの電源をユーザーが入れると・・

カ「ん? レンズが装着されているな。お前、誰だ?」
レ「TAMRONのレンズ、AFですよ、焦点距離は90-300mm
  開放F値はF4.5-5.6、以後よろしく!」
カ「わかった、TAMRONのレンズデータは持っていないが、
  AFかどうか、開放F値と焦点距離がわかれば十分だ。
  カメラ側設定は今F4.5だ、それで待機しておけ」
レ「絞りF4.5開放ですね、了解。
  こちらは広角端90mmですよ。あ、その情報は
  カメラさんは必要ないかも?」
カ「いやいや、必要だぞ。EXIFに記録しないとならん」

(注:銀塩時代であれば、EXIF記録は無かったので
 焦点距離情報は、カメラ側では不要な場合も多かった
 かも知れない。ただ、MINOLTA α機では1990年代
 前半頃に「オートズーム機能」が搭載されている。
 これは中距離人物撮影で、自動的に半身像が得られる
 ズーム画角をレンズに伝える、ややおせっかいな機能だ。
 その場合には、焦点距離情報と撮影距離情報が必要と
 なっていただろう。撮影距離情報は、この時代の各社の
 大半のレンズでは出せないが、1990年代前半頃から
 レンズ側に「距離エンコーダー」機構を内蔵する事で、
 撮影距離をカメラ側に伝える事が出来るようになる)

しばらくして・・
カ「お前、本当にTAMRON AF 90-300mm/F4.5-5.6か?」
レ「しつこいなあ、そうですよ!」
カ「いや、途中でレンズを交換する、ご主人様
  (ユーザー/カメラマン)もいるからなあ・・
  あっ、ご主人様が絞り値をF6.3に変更したぞ、
  お前もF6.3にしろ!」
レ「F6.3ですね、ハイハイ、了解。
  でも、シャッターを切るまでは、絞りは動かさない
  ですからね、ファインダーが暗くなってしまう。
  ・・あっ、ちょっと待って! ご主人様がレンズを
  300mm望遠端にズーミングしましたよ、これだと
  開放F値がF5.6だから・・ まあ、F6.3設定ならば
  ギリギリセーフか! 特に問題ありませんね」
カ「問題ないのだな? じゃあ、こっちも引き続き
  F6.3と表示しておくぞ。今、300mmなのだな?
  開放F値が足りないとか、何かあったらすぐ知らせろ!」

さて、以下は、もしこのレンズがレンズ内モーター搭載
だったとして・・(実際の本レンズはカメラからのAF駆動)

カ「ご主人様がシャッターボタンを半押ししたぞ。
  おい、レンズ、無限遠方向にピントを廻せ!」
レ「了解、無限遠方向モーター駆動開始」ジジジ・・
カ「おっと、それじゃあ行きすぎだ、ちょっと戻せ!」
レ「近接方向モーター反転、よーそろ~」ジジ・・
カ「よし、そこで良い。ピントが合ったぞ、止まれ!」
レ「モーター停止、良し。停止完了信号送信」

カ「今だ! ご主人様がシャッターを切ったぞ!」
レ「絞りF6.3駆動開始、駆動終了送信、撮影完了信号受信、
  開放戻し開始・終了、連写良し送信。ああ、忙しい」
カ「連写2枚目、切るぞ!」
レ「絞りF6.3駆動開始、良し、駆動終了送信・・・」
カ「次、連写3枚目! 今!」
レ「まだ絞りが戻ってませんよ。開放戻り完了、待機良し」

カ「お前誰だっけ?」
レ「今聞く?? TAMRON AF 90-300/4.5-5.6ですよ!」
カ「いや、連写中にレンズ交換をする、ご主人様も、
  もしかして、いるかも知れんからな・・」
レ「いる訳ないでしょう?!(怒)」

カ「ほら、連写3枚目、早く切れ!ご主人様が怒っているぞ」
レ「あんたが余計な話をしてくるからですよ、ブツブツ、
  絞りF6.3駆動開始・・・」

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こういう、カメラとレンズとの情報の、やりとりの全般
(=やりとりの手順、順序、内容、応答、記号等)が
「プロトコル」(情報通信手順/情報通信規格)である。

勿論、上記のような自然な言語ではなく、かつ、上記の
ような無駄な会話(やりとり)が行われている訳でも無い。
コンピューター同士が最低限の情報のやりとりをする為の
短い記号(例:ACK,ENQ,NAK等)にて、上のような双方向
(相互)の応答が行われている。

で、実際に、どんな場合に、どんな記号(コマンド)が
送られているか?を、カメラメーカー側は多分教えて
くれないから、レンズメーカー側は、それを自力で解析
(解読)しないと「プロトコル」が構築できない訳だ。
なかなかレンズメーカーの仕事も、大変そうだ。


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さて、話は戻って・・
TAMRONにおいてMINOLTA版のAFレンズが早く出たのは、
1985年のαショック以降、最も勢いがあった「α」用
のプロトコルの解析作業を優先したのか?

あるいは、当時だと少し考え難いが、もしかすると
MINOLTAがレンズサードパーティにプロトコルの情報開示を
行ったとか?→当時はいざしらず、現代的なオープン戦略
ならば、そうやって他社を自陣営に巻き込んで「市場を全て
α一色に染めてしまう」という戦略は、あり得る話だ。

(参考:正確な時代と詳細は不明だが、この頃、MINOLTAから
COSINAへAF関係の情報開示を行ったと思われる節がある。
COSINAは、それまでMFのレンズしか作っていなかったが、
巨大なレンズOEMメーカーなので、「α陣営」に引きこむ
事は、MINOLTAにとってもメリットがあった事であろう)

定価約5万円であるが、当時のサードパーティー製レンズは
新品値引率も大きかったので、普及版の望遠レンズであろう。

なお、まだこの時代では「サードパーティ製レンズキット」
(販売店等が独自に、カメラボディ本体に、レンズメーカー
の安価なズームレンズを1本又は2本セットして、比較的安価
で販売する。割安感が大きく、ビギナー層に人気だった)
・・という販売形態は普及していなかったと思われる。

(参考:それが一般的になるのは、1990年代後半頃の話だ、
なお、それ以降はカメラメーカー側がその販売形態を嫌って、
店舗等に圧力をかけたのか?? 殆ど無くなってしまった。
ただ、その後はメーカー純正と言っても安価なキットレンズは、
場合により、サードパーティ製OEM品だったのかも知れない。
そういう手法であれば、流通市場での混乱をメーカー側が
コントロールできる事となる。
→参考、本シリーズ第30回記事での市場分析内容)


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全域で1.5mまで寄れる事で、最大撮影倍率が1/3.8倍との
事だが、性能記載の規制がまだ緩かった時代故にか、この
低い撮影倍率でも、レンズには「TELE-MACRO」
(望遠マクロ)と書かれている。

(注:上の写真は、比較的近接の撮影だ)



ここからおよそ10年が経った2000年頃からは、各社とも
だいたい1/2倍位の近接性能が無いと、マクロとは言わなく
なったのだが、それもあくまで自主規制であったのか?
依然、1/3倍程度のレンズでもマクロと称している場合が
あった。


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さて、今回は古いジャンク品の紹介が殆どなので、レンズ
の描写力や性能についてあれこれと言っても始まらない。

基本的に、これらのジャンク品は、まずちゃんと動作すれば
ラッキーであり、さらに、古い機材は勿論だが性能も低く、
まともに写そうとする事自体も、様々な弱点回避の技法が
要求されて相当に困難である。

まあだから、私の場合では、近年では、これらのジャンク
レンズを「技法練習用機材」の目的で購入する場合が多い。
特に(中古)カメラ店では無く、ハードウェア全般を扱う
リサイクル店でのジャンクレンズは、500円~1000円程度が
基本的な相場となっている。(注:従前より少し下がった。
まあ、誰も買う人もおらず、殆ど二束三文の状態だ)

まず「目利き」(匠の写真用語辞典第10回記事参照)により
「使えそうなものかどうかを見極める」事からがトレーニング
の一環であるし、いざ購入後は、その性能を評価したり、
弱点があれば(=勿論、古いレンズなので多々あるだろう)
それを回避する技法を研究および練習を行う。
回避の難易度が高いとあれば必要に応じて何千枚も撮って練習
をするので、買った金額分は十分に元を取っていると言える。

また、同時代の他の製品と比較して市場の歴史を検証したり、
前モデル、あるいは後継の機種と比較して、その時代に、
どんな技術革新が行われたか?を分析する事も行っている。

そうした一連のトレーニング・研究用の用途としてが、私が、
これらのジャンクレンズを購入する主目的となっている訳だ。
その目的で、喫茶店のコーヒー1杯分程度の金額消費であれば
十分に安価と言えるであろう。
(これを「ワンコイン・レッスン」と呼ぶ場合もある)
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この方法論は、およそ10数年前から行っているのだが・・
当初は、どちらかと言えば「テストマニア」的な観点で、様々な
ジャンク品を買って来ては撮って、性能だけを検証し、だいたい
それが分かれば、良いレンズは残し、そうでも無いレンズは
知人友人にギフト代わりに譲渡してしまう事も多かった。
その方法だと、手元に不要なレンズが多数残る事も無い訳だ。

だが近年は、そうした譲渡等の処分はできるだけせずに、
可能な限り「研究用」として手元に残す事にしている。
と言うのも、後になって別のジャンクレンズ等を購入した際、
「あ、あの以前のレンズと比較したかった」と思う事も
多々あったからだ。

しかし、「残す」と言っても、保管方法は超手抜きである。
ホームセンターの衣装ケースに、最低限のエアークッションと
最低限の除湿材を入れ、レンズはフィルターもキャップも無い
ものが殆どなので、もう単に詰め込んであるだけである(汗)
まあ、それでも、たまに「アタリ」のレンズがあって、その
時代やスペックからは想像できないほど、良く写るレンズも
存在する。そうしたレンズはちょっと格が上がって「二軍」
扱いとなり、もう少しだけまともな保管の状態とする。
なお、もっと性能が優れている一般的高性能レンズや希少な
レンズ等は「一軍」扱いであり、いくつかの電気式防湿庫に
入れて、ちゃんと保管している。

まあ、複数台のレンズやカメラを所有するマニアであれば
防湿庫設置は必須であろう、外に出しっぱなしでカビが生えて
しまったら話にならないからだ。
ただ、何百台もの機材となると、全てを防湿庫に保管する
訳にも行かない、比較的高価な大型防湿庫を何台も買うのは
金額的にも置き場所的にも大変だからだ。なので、やむなく
機材に「格付け」をして、常用する大事な高性能機材だけを
防湿庫に入れる事となる。

なお、マニアと言うからには、できれば機材はすべて実用と
するべきだろう、単に家に飾っておくだけでは勿体無い、
カメラやレンズは、あくまで写真を撮る為の道具なのだ。

本ブログでも、新規購入レンズのみならず、従前から所有を
続けているレンズ群を、たまに別シリーズ記事で紹介するのは
「保管したまま」にせず定期的に使ってあげる必要があるからだ。
だから「二軍」以上のレンズであれば、全てを少なくとも数年間
に1度くらいは、外に持ち出して写真を撮っている。場合に
よっては、それらを、また記事で複数回紹介する事もある訳だ。

そうやって定期的に機材を使っていると、以前はわからな
かった特徴等も新たに見つかる事もあって勉強(研究)になる。
・・いや、と言うか、新製品とかを、ちょっと借りて短期間
だけ使った等では、わからない事が山ほどある筈だ。
レンズならば少なくとも数千枚、カメラならばもっと多く、
様々な撮影シーンで少なくとも1万枚以上は撮影しないと、
その長所短所などは良くわかって来ない事が殆どだ。

まあだから、本ブログにおいても、新製品で発売後数ヶ月
程度のカメラやレンズの紹介(評価)記事を書く事はまず無い。
そんなに短期間で「何でもお見通し」といったような記事を
書いてしまう行為は「適切では無い」と思っているからである。

(なので、他人の書く新製品レビュー等も、まず信用しない。
もし短期間で中身を理解しようとするならば、例えば何百台もの
機材を常にローテーションしながら、様々なシチュエーションで
使い続ける事で、数々の評価項目に対する「絶対的評価感覚」を
研ぎ澄まさなければならないであろう、まあ、そんな事は
実際には非常に困難か不可能な話だ・・ そこまでの「感覚」が
経験不足等で無ければ、もうその評価は、殆どが「思い込み」と
なってしまう。Web上等での大半の情報は、そんな感じであろう。
そして借りた機材の場合は、弱点がわかったとしても、借りた
所に気を使って書かなかったり、専門的評価者の記事であれば、
メーカー側に不利になる内容は、ビジネス的視点でも書けない。
だから、ますますWebや雑誌でのレビューは信用できないのだ)
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では、やっと本レンズ(Model 62D)の話になるが、望遠側
での解像感の低下が結構出るレンズである。
が、当時のTAMRONの資料によると全く逆の事が書かれていて、
「多群移動方式の採用により、特に中間域からテレ側の
 性能を向上させた」とある。

これについては、「ウソをつけ!」と解釈してはならない。
つまり、望遠域での解像感の低下は、現代の視点での評価で
あり、数十年前の当時の望遠ズームレンズは、殆どが望遠域
(あるいは広角域)での性能低下が顕著に現れていた訳だ。

まあ単焦点レンズに比べて、焦点距離が可変構造のズームは、
全ての焦点域での全ての収差の補正を良好にするような設計は
非常に困難であろうから、やむを得ない所もある。

で、TAMRONが、わざわざ「中間域からテレ側の性能を向上
させた」と謳っているのは「従来比」の話であり、すなわち
1990年頃以前の望遠ズームレンズは、望遠域の性能低下が
甚だしく、「この時代に、それを改善するべく様々な技術革新
が行われた」と解釈するべきであり、だからわざわざ、それを
本レンズの特徴だ、と謳っている訳だ。

ここでまた研究の材料が出来る。つまり、1990年頃に望遠
ズームレンズの望遠域の性能改善が行われたのであれば、
それより以前の機種はどうか?あるいは以降の機種はどうか?
といった視点である。その仮説の元にレンズを選んで買って
確かめながら撮っているのと、ただ単に古くて安いレンズを
買って「写りが悪いなあ」と文句を言うのとでは雲泥の差だ。

まあ勿論、弱点がわかったら、その回避を行うのが良い。
フルサイズ機ではなくAPS-C機を使い周辺収差を低減するのも
それであり、できるだけ逆光を避ける、あるいは少し絞り
込んで使う(注:諸収差の多くの項目は、絞りを絞る事で
減少するが、絞っても減らない収差もある→例:歪曲収差)
また、ボケ質破綻にも注意する必要があるが、ここは結構
焦点距離の変動も含めると複雑だ、一筋縄ではいかないだろう。

色々対策しても望遠域の解像感が低下が気になるならば、
あえて望遠端ぎりぎりまでは使用せず、200mm程度迄で
留めておき、(望遠)画角の不足は今回使用機のSONY α65に

備わる画質無劣化のデジタル・テレコンバーター機能を用いて
1.4倍又は2倍のモードで使用すれば、高画質のままで望遠域の
不足を補う事が出来る(注:α65では画質無劣化の代償として
記録画素数に制限が出る→テレコン2倍モードでは最大600万
画素となる)

色々と高度な技能が必要だし、レンズのみならずカメラ側の
知識や使いこなしも必須だ。だが、それら一切合財を含めて
練習(トレーニング)であり、研究でもある訳だ。
それらを行う為には、ジャンクレンズ(またはオールドレンズ)
が最適ではなかろうか? というのが近年の持論である。

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では、次のジャンクレンズ
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レンズは、MINOTA MC ROKKOR-PF 50mm/f1.7
(中古購入価格 2,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

ハイコスパ名玉編第12回記事(第3位)等で紹介の、
優秀なコスパを誇る1970年代のMF小口径標準レンズ。

2010年前後の「大放出時代」(匠の写真用語辞典第26回)
に購入したものであり、ジャンクと言うのとは、ちょっと
違う購入形態だ。まあつまり、流通市場における「銀塩時代
の古い機材の処分品」である。
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で、本レンズはとても完成度が高く、かつ入手価格も安価で
あったので、コスパ評価が極めて高い。

ただ、本レンズだけが優秀か?というと、そういう訳でも
無く、同クラスの、一眼レフ用小口径標準レンズ(注:
実焦点距離が50mm~55mm程度で、開放F値がF1.7~F2)
は、1970年代からのマルチコート型MF版、そして1980年代
後半からのAF版においては、どれも非常に完成度が高く、
当然ながら非常に良く写り、そして元々、安価でもある。

なので、各時代の各メーカー等のファン層、初級マニア層等
においては、それぞれ(自分が贔屓とするメーカー)の
小口径標準レンズを賞賛した。
具体的には、
1970年代、PENTAX SMC TAKUMAR 55mm/f1.8、
      OLYMPUS OM ZUIKO 50mm/f1.8
1980年代、RICOH XR RIKENON 50mm/f2
1990年代、CANON EF50mm/f1.8Ⅱ

・・等があり、それぞれ初級マニア層等により「安価なのに
非常に良く写る、神レンズだ!」と「神格化」されていた。
(なんでもかんでも「神」と言うとは、なんてボキャブラリー
が少ないのであろうか・・ 残念な世情である)

だが、上記の小口径標準レンズは、全て5群6枚型の「変形
ダブルガウス型構成」であり、基本設計は全て殆ど同一だ。

まあメーカー毎に、ガラス材質(硝材:屈折率や色分散)の差
や、空間配置、曲率、有効径、コーティング材質・手法等が
微妙に異なるとは思うが、その差が描写力の差異に現れる事は
まず無く、メーカー間の性能の差異は、例えばビールのメーカー
毎の味の差よりも、さらに小さい、微々たるものである。

すなわち、1970年代以降の小口径標準レンズは、どのメーカー
のものを買っても良く写るという事だ。
初級マニア層では、特定のメーカーの機材しか使わないケース
が多く、だから自分が贔屓としているメーカーの小口径レンズ
だけが良く写ると思い込んでいたに過ぎない。
まあでも、私がその事に気づいたのは、ほぼ全部のメーカーの
小口径(大口径も)の標準レンズを買い揃えた後であった(汗)

その当時だが、(MF)一眼レフカメラを購入時には、標準レンズ
をセットとして販売する形態が殆どであった。その際に大口径版
(開放F1.4級)と、小口径版(開放F1.8級)のいずれかを選択
する事が出来、大口径版セットの方が数万円程高価であった。
(注:この50年も前の市場状況が、現代でもなお、”F1.4級
レンズの方が、F1.8級よりも高性能で、だから高価なのだ”
という、誤まった常識を広めるきっかけとなってしまった)

まあ、そんな状況であったので、もし「メーカーの顔」とも
言える標準レンズの性能が悪かったら、「XX社のカメラは
写りが悪い」という悪評判が立ってしまう。だから、各社とも
性能改善を優先させ、少し時間が経てば、各社の標準レンズは
いずれも高い性能レベルで横並びに安定する訳だ。
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だが、F1.4版大口径標準は、1960年代位に大口径化競争が
行われた背景もあるが、その当時では、まだ設計は完成度が
高いとは言い難い。大口径化の為にF1.8版よりも1枚多い
6群7枚のレンズ構成とした設計も多いのだが、口径比が
大きい事からの強い球面収差の発生などが、1960年代から
1970年代にかけても、まだ解決できておらず、描写が甘い
ものが殆どである。おまけに50mmという焦点距離も実現が
困難だった模様で、各社、52mm~58mmというやや長目の
焦点距離の標準レンズが殆どであった。

大口径標準レンズの描写力や焦点距離問題が改善されるのは
1980年代に入ってからであり、かつ、その時代でもまだ
完成度が高いとは言い切れない。さらに言えば、この時代に
カメラや(標準)レンズの小型化競争が行われた市場背景も
あって、小型化で性能を落としてしまった大口径標準もある。
(逆に言えば、小型化の必要性が少なかった、CONTAX
Planar T* 50mm/f1.4等は、その性能が高く評価された)

その後の時代では、AF化とズームレンズの発達期であり、
AF大口径標準レンズは旧来のMFタイプの焼き直し品も多く、
その完成度の向上は、2000年代に入ってもまだ行われず、
やっと2010年代中頃から全くの新設計の50mm/F1.4級が
各社から新発売された、という歴史である。
(しかし、価格は旧来の数倍程度に高価になってしまった。
ここも逆に言えば、レンズ市場縮退で高価に売りたかったから、
あえてこの時代に、高性能高価格帯レンズを市場に投入した、
と見なせる)

なので、1970年代~1980年代のMF標準レンズにおいて
大口径版と小口径版が併売されていたのは、実は小口径版は
単なる廉価版ではなく、そちらの方が完成度が高く、描写力も
優れていたからだ。(まあ、メーカーの「良心」とも言えるし、
市場戦略上、少しでも高描写力の標準レンズを販売したい)
だが、その事実(安い方が良く写る)をユーザー側に認識
されてしまうと商売的には困ってしまう(皆、安い方を買う)

だから小口径標準レンズの方には「性能制限」がかけられて
しまった。具体的には、最短撮影距離の制限であり、
大口径版は、最短45cmと、各社横並びであるのだが、
小口径版は、メーカーや時代により50cm~60cmが
最短撮影距離となってしまっている。

こうしておけば、口径比の差と最短撮影距離の差により、
被写界深度の差異が、最大で2倍強(7mm vs 15mm)も
発生する為、販売時の営業トーク等では、
営「ほら、こちらのF1.4レンズの方がF1.8よりも寄れるし
  背景も良くボケるでしょう? 手ブレもし難いですよ。
  だから、こちらが高性能だし値段も高いのですよ・・
  さて、どちらのレンズセットにしますか?」
と、ビギナー消費者層などに向けて言う事ができる。

「・・で、あれば」と、たいていのビギナー層は、大口径版
のレンズセットを買うであろう。まあ、当時の最高シャッター

速度が1/1000秒程度の銀塩MF一眼レフで、低感度フィルム
使用時に、日中の撮影では絞りをF5.6程度まで絞らないと、
シャッター速度オーバーで使えないにも係わらずだ・・(汗)

メーカーや流通市場は儲かり、ビギナー層が損をする状態
ではあるが、F1.4の「高級品」を買った所有満足感は残る。
F1.8版は不幸な「捨て駒」だったかも知れないし、
数十年後の現代に至るまで「F1.4版は高性能な高級品だ」
という市場認識を広めてしまった事への功罪は残る。
(参考:2010年代のTAMRON SP F1.8シリーズは、開放
F1.8という理由が主で、不人気レンズとなってしまった。
→初級層しか新型レンズを買わない市場状況だからだ)
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余談が長くなったが、ここは標準レンズの歴史上では重要な
ポイントである。まあつまり「銀塩時代の小口径標準レンズは
いずれも完成度が高く、とても良く写る」という事であり、
本MC50/1.7は、その中でも特に購入価格が安価であったし、
意地悪な性能制限も、殆ど掛けられていない(最短50cm)
結果的に「高コスパレンズ」となって、本ブログでの
ハイコスパ系記事でも、常に上位にノミネートされる状況な
訳だ。


全てのメーカー製の小口径標準レンズを買う必要は全く無いが
(=どれも殆ど同じ性能だからだ)、マニアであれば、必ず
どれかの小口径標準レンズは必携であろう。

なお、現代のミラーレス機で使う際は、「小口径」とは
言いつつも、ND2(減光1段)のフィルターを装着するのが
望ましいであろう。そうしておけば、たいていの光線状況で
絞りを開放から最小値まで自在に設定が可能となり、
こうしたレンズの描写表現力の幅を引き出す事ができる。

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では、3本目のジャンクレンズ
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レンズは、CANON (New) FD100-300mm/f5.6
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

1980年発売の開放F値固定型MF望遠ズームレンズ。
後年発売の同スペックのLタイプ(高画質仕様)品とは異なる。

同年発売のNew FD70-210mm/f4が、個人的に、かなり
お気に入りのMF望遠ズームであり、「ハイコスパ名玉編
第11回記事」で、見事総合第7位にランクインしている。

その前例があったのだが、本レンズはその兄貴分のレンズだ。
このジャンク品を見つけた時には、相当に期待したのだが・・
残念ながら色々と問題ありだ。
_c0032138_10502019.jpg
まず、後玉に僅かなクモリがあり、実写においては、それの
影響が強く、コントラストが低下してフレアっぽい写りだ。
このクモリは、後玉が奥まった位置にあるので、外からは
清掃できず、分解が必要だが、それは行っていない。
ブロアーを何度か噴射して、ゴミ・ホコリは飛ばしたが、
勿論、それではあまり改善され無い。 
それから全般に解像感も低く感じ、なんとも使い難い。

だた、低コントラスト・低解像力は、クモリだけが原因だとは
思えず、レンズ自体の性能(設計仕様)の影響である可能性も
高い。5年後の後継レンズ、Lタイプでは、蛍石レンズや
異常低分散ガラスを用いて、ずいぶんと本レンズとは異なる
設計として描写力の改善を図っている。つまり、まだ本レンズ
においては改善すべき余地(設計上も、性能上も)が色々と
残っていた、という事なのであろう。

ただ、Lレンズ(Lタイプ、高画質)仕様だからといって、
常に高描写力であるとも限らない。
上記の歴史と同様に(お気に入りの)New FD70-210/4も
1985年にNew FD80-200/4Lの姉妹機が発売されているが
そのL型レンズは、銀塩時代に4万円という高価で入手した
のだが、描写力が気に入らなくて手放してしまっていた。


L無しのNFD70-210/4は、2000円の購入価格であったので
コスパ視点も含めて廉価版の圧勝であった訳だ。
(注:この時代のCANON NFD望遠ズームは、沢山の異なる
仕様の物が併売されていて、単純に後継型等とは言えない。
L型では無い、NFD80-200/4も別途存在する。
現在、そのあたりを収集・研究中なので、いずれ、この
時代のNFD望遠ズームを纏めて記事で紹介する)
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それから、NFD70-210/4と本NFD100-300/5.6は、発売
タイミングが殆ど同じであり、同じ設計チームで並行設計
されていた可能性も高いが、この前後の時代のCANONからは、
非常に多種多様の(NEW) FD望遠ズームが発売されているし、
その一部は、旧FD版のマイナーチェンジ版であるので、
設計チーム(設計者)がバラバラである可能性も残る。

いずれにしても、200mm級望遠ズームと300mm級ズームは
当時の手動設計においては、設計の難易度がだいぶ異なる
可能性もある。単純な話をすれば、望遠域が長くなれば
色収差はより大きくなるし、レンズ自体の価格や重量の問題も
あるから、たとえ、諸収差を良好に補正した設計が出来たと
しても、それがそのまま製品化される訳でも無いであろう。

まあつまり、設計が、まだ時代的に未成熟であった可能性も
捨てきれないという訳だ。

後、気に入らない点は、やや高目の価格で買ってしまった事だ。
NFD70-210/4並みの性能を期待して、ジャンク品としては
高額な部類の2000円を許容したのだが、やはりコスパが悪い。
CANONというブランド品だから、リサイクル店でも高目の相場を
つけたのだろうか? まあ、そうだとしても、そのあたりは
買う側の「目利き」に依存する、高い(コスパが悪い)ものを
買ってしまう方に、100%責任があるのだ。

それに、CANONだから常に高価という訳でも無い、例えば
本シリーズ第17回記事でのCANON EF100-200mm/f4.5A
は、税込み324円という超破格の低額相場であったのだが
程度には問題は無く、AFもちゃんと動作するし、おまけに
描写力もかなり良い(ただし、MFでの操作性が劣悪だ)

そのレンズは、知人の初級者がEOS Kiss系デジタル機を
使っていて「望遠が欲しい」と言ったので、無期限貸与中の
状況だが、「とても良く写る、300円とはびっくりだ!」と、
気に入って貰ったようである。(追記:最近、回収して、
また別のレンズを渡してある)
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(注:上写真は母艦OM-D E-M1のエフェクトを付与した
もので、暗所での高感度ノイズが増強されてしまっている。
こうした場合、PC編集で、デノイズ(ノイズ低減)処理、
暗化+コントラスト増強、シャープネス処理等を加えれば
一応、見るに耐える写真にはなるのだが、本ブログでの
レンズ紹介記事では、本来のレンズの描写力を検証する為、
そうした過度なレタッチ編集は禁止するルールとしている)

結局、ジャンク買いの楽しみの一つとして、たまにそうした
「アタリ」を引く事も、要素としてあるのだろう。
「アタリ」とは、「程度が良い」という事のみならず、設計や
仕様等がたまたま上手く仕上がっていて、高い描写力等を持ち
結果としての「コスパが超絶的に良くなるケース」を指す。

ただ、その確率は(準)オールド(ズーム)レンズでは、あまり
高くは無い。数十本を購入しても、ほんの数本だけ、という感じ
ではある。でも、それに上手く当たると、何十万円もする現代
の高級(高額)レンズとの「価値の差」を、深く考えるきっかけ
にもなる事であろう。それはそれで、十分に意味のある事だ。

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では、ラストのジャンクレンズ
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レンズは、SIGMA ZOOM AF-κ 70-210mm/f4-5.6
(ジャンク購入価格 900円)
カメラは、PENTAX K-5(APS-C機)

出自が全く不明、恐らくは1990年前後のAF望遠ズーム
レンズであり、それ以前のMF時代の1980年代頃の
「SIGMA 75-210mm/f3.5-4.5 Zoom-κⅢ」
(本シリーズ第15回記事で紹介)のAF版後継レンズか?

1970年代~1980年代頃のSIGMAでは、レンズ名称において
α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)・・・
といったギリシャ文字を冠する場合があり、本レンズも
旧型レンズも「K」では無く、κ(カッパ)であろう。

まあ確かに、その時代では、カメラ機材は英字アルファベット
の型番ばかりであり、空いている型番も殆ど無く、目立たなく、
分かり難いから、ギリシャ文字を使う等の措置もわかるが、
恐らく、1985年の、MINOLTAによる「α」が出てからは、
ギリシャ文字は使い難くなったのだろうか?
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ちなみに、MINOLTAの銀塩αも海外展開の際では、名称を
「Maxxum」(マクサム)や「Dynax」(ダイナックス)と
称した事もあり、稀にそうした異名称の逆輸入品が中古市場
に流れて来ていた事もある。
デジタル時代に「α」がSONYに引き継がれた後でも海外展開
の際は異なる名前を使っていると思うが、詳しくは知らない。

近年、香港のカメラマニア氏と、ボート大会の時に英語で
カメラ談義をしていた際、
匠「以前持っていたα7(アルファ・セブン)はどうした?」
香「アルファ?? ・・ああ、A7(エーセブン)の事か。
  あれは妹に上げて、オレは新型機を買ったよ」
というやりとりがあり、海外では名称が異なる事がわかる。

さて、本SIGMA70-210であるが、可も無く不可もなくという
感じの望遠ズームだ。MF時代からの一般的望遠ズームの
仕様であり、型番の推移からも小改良が繰り返されて来たと
推察され、さほど悪い描写力では無い。やはり1990年前後に
望遠ズームの性能改良が各社において行われたのだろうか?

ただし、全般的に低描写力である事は、設計開発の
年代的にも、もうそのあたりは、やむを得ない節がある。
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上写真も解像感に劣り、コントラスト的にも低く感じる。

ただ、上写真の掲載には描写力の説明以外の意味もあり、
この「鵜(う)」は、2つ上の写真の群れからはぐれ、
単独行動をしていた。
不審に思い撮影をしてみたが、どうやら羽根に怪我を
していて飛べない模様。数時間後に同じ場所を通ると、
残念ながら、もう亡くなってしまっていた。
生前の彼(彼女?)の姿を捉えた、最後の写真となった・・

さて、本レンズの購入だが、あまり普段は行かない
地方のリサイクル店だ。
その店舗は、中古ハードウェアに特化した雰囲気では無く、
日用品等が主体の店で、新品の在庫処分品も多くあった。
そこに、ごく僅かだがカメラ関連機材や用品も置いてあった
ので、そこからサルベージ(引き上げ)したものである。

価格は、一般的なカメラ中古店や他のリサイクル店では、
500円、1000円、1500円(いずれも税抜き)という感じで
あるが、この店では、900円(+税)と、今までカメラの
世界では見た事が無い価格だ、ほんの僅かでも他店よりも
割安感を演出しているのだろうか?(例:100円ショップの
中には、90円(+税)均一という店もある)

余談続きだが、こうしたリサイクル店の中古品やジャンク品
の価格は、世の中の一般的な専門中古店(カメラもしかり)の
相場とは連動してしない。だから、安い物もあれば、高い物も
存在する。勿論、一般的相場より高いと思うものは買う必要は
無く、安いと思った物だけ買えば良い。そのあたりは「目利き」
が必要と共に、およそあらゆる商品の価格や中古相場が頭の中に
入っているという、その分野の「上級マニア」向けの購買行動
ではあるが、まあ「知っていれば得をする」という事だ。

私は、こういうリサイクル店では、「イヤホン」を探す場合も
多い。イヤホン(インナーイヤー型の高音質型のもの)は、
ユーザーが耳に入れるものだから、中古品は嫌われる事が多く、
新品価格の1/3から1/4にもなる低相場の高級イヤホンも多い。
まあ、そんな感じで、イヤホンも60本くらいも集めてしまって
いるのだが・・(汗)(過去記事:イヤホン・マニアックス)
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ちなみに、カメラ用レンズは、必ずしも値段が高いものが
高描写力とは限らないが、イヤホンはさらにその傾向が顕著で
あり、値段とか有名ブランドであるかと音質は全く比例しない。

私は、元、音響エンジニアであったので、イヤホンの音を
聞くだけで、その音響特性は、だいたい把握できる。
ただ、そういう音響的素養を持たないユーザー層の場合は、
単純に「値段が高いイヤホンが、常に高音質だ」という
思い込み(誤解)を強く持っている事であろう。

例えば私が現在主力としているイヤホンは、新品で1200円
程度の安価なものだが、1万円~2万円クラスのブランド高額
イヤホンを上回る高音質であり、予備や色違いを含め3~4本程
所有して愛用している。ただ、聞く音楽ソースによりけりでも
あり、次善の主力イヤホンは8000円程度の広帯域イヤホン、
第三位は、人声・動画視聴用の中域イヤホンで2500円位だ。

数万円もする高級イヤホンを買ったとしても、これら安価な
イヤホンより高音質である保証は全く無い。・・というか、
私はイヤホン専門店で、殆ど全ての、試聴可能なイヤホンを
チェックしていて、そうした上で、安価な価格帯、しかし
コスパが最強と言えるイヤホンをチョイスしている次第だ。

(注:値段による差別化が難しい成熟市場分野であるから
近年では、ハイレゾ対応(=しかし中身は普通のアナログ構造)
ワイヤレス(=しかし充電必須)、スマホ用マイク内蔵、
ノイズキャンセラー搭載等の「付加価値」を付けてイヤホンの
高価格化を狙っている。だが、私はそれらを付加価値とは感じ
られない為、有線の高コスパの通常イヤホンしか買っていない)

ただ、音質の評価を厳密に行うには、どのようなプレーヤーで、
どの音楽ソースを、どういう風に聞きたいか?という用途上の
条件が色々とあるのだが、結局、この分野も非常に奥が深い。
この話をしだすと記事文字数がいくらあっても足りないので、
このあたりまでにしておこう。
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さて、本レンズの話に戻りたいが、とは言え、特に特徴も無い
普通の望遠ズームだ。

一眼レフでの望遠端200mm級レンズは、現代の感覚だと
物足りない事が多い。つまり、小型センサーのミラーレス機や、
それに備わるデジタル拡大(ズーム、テレコン等)と組み合わせ
て、換算画角で600mm級以上が得られないと、野鳥等の被写体
も含めたフィールド(屋外)自然観察用途には適さないとも
言える。仮にMACRO域があって近接撮影が可能なのであれば
草花や昆虫等の被写体にも適するのだが、本レンズの場合は、
1.5mの最短撮影距離で、最大撮影倍率は、1/6.2倍(注:
フルサイズ換算)となっているので物足りないし、今回の母艦
のPENTAX K-5は一般的なデジタル一眼レフ故に、デジタル
拡大機能が無い。

ただまあ、本レンズは、PENTAX (K)マウント版であり、かつ、
この時代のSIGMAレンズは、まだ絞り環を備えているので
(注:2000年代頃からのSIGMA製レンズでは、PENTAX Kや
NIKON Fマウント版でも、順次、絞り環の搭載を廃止している)
いざとなれば、マウントアダプターを介してμ4/3機等の
ミラーレス機に装着すれば望遠画角の不満は解消できる。
しかし、AF時代初期のレンズ故に、「AF万能」の思想が各社の
レンズにあった時代だ、だからMFのピントリングは存在して
いないに等しい位の薄いものであり、MF操作性はかなり落ちる。
_c0032138_10510912.jpg
まあ、なかなか用途の無いレンズではあるが、SIGMAにおける
ズームレンズの発展の歴史を研究する上では、AF時代への転機
となった立場のレンズであろう。前機種のMF版とは、焦点距離
や開放F値等のスペックがまるで異なるので、それとの比較を
してみるのも面白いかも知れない。

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さて、今回のジャンクレンズ編(Ⅲ)はこのあたり迄とする、
次回記事は、補足編とする予定だ。

特殊レンズ・スーパーマニアックス(45)変則レンズⅡ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。

今回の記事では「変則(的)レンズ」を9本紹介しよう。

「変則(的)レンズとは何か?」という定義だが、あまり
はっきりとは決めておらず、大体だが「一般的では無い
描写傾向を持つ、又は一般的では無い仕様・構成のレンズ」
としている。

本記事は、本シリーズ第21回記事「変則レンズ」編の
続編となっている。
なお、紹介本数が多く、かつ何れのレンズも過去記事で
紹介済みの為、各レンズの説明は最小限の特徴のみとし、
実写掲載写真も各1枚程度とする。

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ではまず、最初の変則レンズ
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レンズは、GIZMON Wtulens 17mm/f16
(新品購入価格 6,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、PANASONIC DMC-G5 (μ4/3機)

2018年に発売された単焦点パンフォーカス型トイレンズ。
銀塩時代の富士フイルム社製「写ルンです」
(注:社名は「富士フイルム」が正しく「富士フィルム」は
誤り。同様に「キヤノン」が正しく「キャノン」は間違い)
・・の使用レンズ(単玉1群2枚非球面メニスカス)を
取り外してリサイクル(再利用)した(トイ)レンズである。

で、その「写ルンです」のレンズを1枚だけ使用したものが
GIZMON Utulens 32mm/f16 (2017年、本シリーズ第21回)
であり、2枚使用したものが本「Wtulens」となっている。
_c0032138_16244268.jpg
銀塩「写ルンです」は、固定焦点、固定露出ながら、
「良く写る」という特徴があり、1986年の発売以来
累計生産台数は、20億台近くにもなるという、世界的な
ロングセラー&大ヒット商品だ、それに、発売後30年を
軽く超えても、依然生産は継続されており、近年でも

フィルム時代を知らない若年層を中心に、再ブームの傾向
も(何度も)ある商品だ。
これを使った事が無い人を探す方が難しいかも知れない。

で、その「良い写り」をもたらしていた技術的理由であるが、
1)搭載レンズの仕様や性能の優秀さ
2)(外からは見えないが)高描写力を得る構造的工夫
3)適切に選ばれたフィルムの仕様・性能
4)暗所用には、高感度型やフラッシュ搭載型がある
・・が、あったと思われる。

この内、3)と4)の説明は長くなるので割愛する。

1)だが、1980年代にはまだ珍しい非球面レンズを使用し、
球面収差等を低減し、シャープな写りを得ている。
ただ、1枚1枚ガラスを非球面に研磨していたら非常に大変
なので、このレンズは、プラスチックスの成型品である。

2)については、上記(簡易)非球面レンズでは像面湾曲の
低減が困難であった模様で、何と「フィルムを湾曲させて
装填する」という裏技を用いている。
通常、「写ルンです」では、ユーザーがフィルム交換をする
事は無いので、この構造は現像所等でカメラを開けている
状態で無いとわからない。

で、前述の「Utulens」(1枚仕様)は、デジタルカメラ用に
用いる際、まさか撮像センサーを曲げる訳には行かないので
簡易絞り機構を用い、本来の写ルンですの口径比F10~F11
程度よりも若干絞り込んで、F16相当まで暗くしている。

像面湾曲および非点収差は、有効径に比例して大きくなる
ので、絞り込む事で多少なりとも画質の向上が期待できる。
ただ、相当に暗くなるので、近代の高感度を搭載するデジタル
機(注:ミラーレス機専用)で用いるのが良いであろう。

本「Wtulens」では「写ルンです」のレンズを2枚、対称型に
配置している。この構成は収差を低減する効能があるが、
同時に「広角化」の恩英を得る事が出来た模様だ。
よって、本「Wtulens」は、前年の「Utulens」よりも広い
画角(32mm→17mm)となっている。

ただし本レンズもF16相当と暗い為、高感度ミラーレス機で
用いるのが良い。なお、フランジバック長が、かなり短い為
デジタル一眼レフ用のマウントでは販売されていない。

一応フルサイズ機にも対応できるのだが、周辺減光が非常に
大きく、APS-C機以下またはAPS-C以下にクロップして使う
事が望ましいが、あえてフルサイズ機で派手な周辺減光を
楽しむのも良いであろう。

「Wtulens」「Utulens」共に、マウントアダプター付き
での販売である。ライカLマウント(L39/M39)互換なので
他のオールドレンズ用のアダプターにもなる。
アダプターの価値を考えるとトータルで安価だと思うので
試しに買って見るのも良いかも知れない。

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さて、次のシステム
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レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格 75,000円)
カメラは、NIKONN Df (フルサイズ機)

2016年に発売された、中国製の特殊広角レンズ。
本レンズについては、本シリーズ第17回記事「新鋭海外製
レンズ編」でも紹介しており、重複する為に簡単に説明
しよう。

特徴は以下の通りである。
1)フルサイズ機対応の、15mmという超広角画角
2)レンズ前、数mmまで寄れる「等倍マクロ」仕様
3)上下シフト機能搭載
_c0032138_16244690.jpg
長所としては、一般的な超広角レンズとして使用しながら
も、必要とあれば、近接撮影(等倍マクロ)も出来るし、
希少なシフト機能で、建築物等の被写体での遠近感の調整
を行う事も出来る事だ。(ただし、横位置撮影が主体)

また、従前の記事では、本レンズに「ZENJIX Soratama 72」
という「宙玉」(=特殊アタッチメント)を装着した例も
いくつか紹介している。本レンズが「宙玉」用のマスター
レンズとしての適正があるからだ。

まあともかく、多種多様の遊び方が出来て「エンジョイ度」
の高いレンズである。

弱点だが、高価な事、そして、シフト時はイメージサークル
が足りなくなるので、フルサイズ機では周辺がケラれる事
である。よって、デジタルズームやクロップ機能を用いるか
トリミング編集するか、または周辺減光をそのまま活かして
用いる事になる(上写真の例)

それから、ニコンFマウント用で購入した場合、非Ai型相当
である為、現代のNIKON製の殆どのデジタル一眼レフでは
使用する事が困難となる。唯一 NIKON Df(今回使用機)
ならば、ある程度は使えるのだが、シフト時の露出は大きく
狂ってしまうので、その露出調整の難易度が高い。

まあ、それでも汎用性の高いニコンFマウント用で買って
おいて、任意の他のミラーレス機等で絞り込み(実絞り)
測光で用いるのが、賢明な使い方だと思う。

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さて、3本目のシステム
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レンズは、TAMRON 70-150mm/f3.5 (Model 20A)
(中古購入価格 500円)
カメラは、Panasonic DMC-G6 (μ4/3機)

1980年発売の、開放F値固定型MF中望遠ズームレンズ。
本レンズは「変則」といった要素は殆ど無く、ごく普通の
銀塩時代のオールド望遠ズームである。

しかし、この時代(1980年前後)の、オールド望遠レンズ
の一部では、私が「ワンハンド式(ワンハンドズーム)」と
呼んでいる仕様を持ち、これはズームリングとピントリング
が共用であり、しかもその共用リングを(ズーミングの為に)
スライドさせても(=直進ズーム機構)、レンズ全長が
変化しない、という非常に使い易い特徴を備えている。

その「ワンハンドズーム」の代表として、今回は本レンズ
を紹介している。
その後の時代では、「ワンハンドズーム」に相当する機構や
操作性を持つ望遠ズームは1本も無かったと記憶している
ので、非常に希少な仕様であり、今や「変則レンズ」とも
言えるかも知れない。

実際に「ワンハンド(望遠)ズーム」を使ってみると理解が
早いと思うが、左手一本で、ズーミングとピント合わせ
が同時に出来、自然観察における小型動体被写体撮影
(例えば、飛ぶ鳥、飛ぶ昆虫等)に無類の強さを発揮する。

また、ミラーレス機の中でも特にPANASONIC DMC-G5/G6
の2機種と組み合わせると、これらの機種はμ4/3機故に
望遠画角を強調出来る他、非常に簡便なデジタルズームの
操作系を持つ為、光学ズームとデジタルズームを自在に
組み合わせた高度な撮影技法が実現できる。

具体的には、望遠画角が足りなければ、シームレスに
デジタルズームでさらに撮影倍率を上げる事のみならず、
任意の光学ズーム位置(焦点距離)で、デジタルズームを
併用すると、被写界深度、露出値(シャッター速度等)および
「ボケ質」を維持したままで(拡大側)に構図変更が出来る
事となる(注:トリミング編集と、ほぼ等価ではあるが、
撮影時に意識的にこれを行えるメリットが大きい)

さらには、MF望遠ズームは望遠端で解像感が低下する機種が
とても多いが、デジタルズームを用いて、望遠端が使えない
事による撮影倍率の低さを、見かけ上だが解消できる。

おまけに、ズーミングでレンズ全長が変化しない為、重心
バランスが崩れにくく、手持ち望遠撮影では非常に有利だ。
(注:ピント操作で全長が変わるワンハンド式は多い)
_c0032138_16245126.jpg
この「ワンハンドズーム」をDMC-G6等と組み合わせて使うと
あまりにも快適なので、他の望遠機材、例えば、高性能
デジタル一眼レフ+近代(超)望遠ズーム、とか、又は
近代ロングズーム機(超望遠ズームを搭載したレンズ交換
不可のコンパクト・デジタルカメラ)などと比較すると、
それら近代望遠機材での非効率な撮影が嫌になってしまう
程である。

惜しむらくは、1980年前後の望遠ズームしか、こうした
「ワンハンド式」にはなっていないので、これらの時代の
望遠ズームは、まだ技術的に未成熟(注:望遠ズームの
性能が向上するのは、1990年代のAF時代からだ)故に、
描写力はかなり劣ってしまう点だ(具体的には、低解像力、
色収差の発生、ボケ質の汚さ、逆光耐性の低さとフレア等
によるコントラストの低下等)

画質をあまり気にしなくても良い用途で、試しに使って
みると、「優れた操作性・操作系とは何か?」について、
考えさせられるきっかけになるとも思う。

幸いにして、これら「ワンハンドズーム」は、古い故に
現代では、とても不人気であり、500円~2000円程度の
ジャンク価格で入手する事ができる。
練習・研究用の「教材」としては最適であろう。

なお、デジタルズームを併用しないのであれば、母艦は
たいていのミラーレス機(+アダプター)で十分だと思う。
おまけに、TAMRON製のこの時代のMFレンズであれば、
「アダプト-ル2」仕様になっているので、自力でマウント
の交換も容易だ(=マニアであれば、数種類のアダプト-ル2
交換マウントを、自身の持つマウントアダプターの種類に
合わせて保有しておくのが良い、そうすれば、MF時代の
TMARON製レンズは、ほぼ全て使用する事ができる)

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では、4本目のシステム
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レンズは、VS Technology SV-1214H
(新品購入価格 18,000円)
カメラは、PENTAX Q (1/2.3型機)

2010年代後半に発売の、2/3型対応、Cマウント、
マシンビジョン(FA)用単焦点汎用レンズ。

こちらは、「変則レンズ」という分類はおかしいかも
知れない。いわゆる「産業用レンズ」であり、これは
これで巨大マーケットであるのだが(例:監視カメラとか
工場生産ラインとか、ロボットやAI機器での画像認識用途等)
残念ながら「写真用カメラ(レンズ)」の世界とは、殆ど
接点が無い、という、ただそれだけの事である。

既に、本シリーズ第1回記事「マシンビジョンレンズ編」で
その分野の詳細や、当該レンズを6本紹介しているので、
本当に興味があれば、そちらの記事を参照していただければ
良いのであるが、それらのレンズを写真用として使用するには
非常に高度な専門知識が必要となる為、あまり容易では無い。

そして、それらの産業用レンズを一般的に入手する手段も
殆ど存在しない(カメラ店などで売っている訳では無いし
個人で通販で買う事も出来ない)

運よく入手できたとしてもカメラ機材の選択や設定に
専門的知識が必要だし、それも他から学べるものでは無く
ある程度の勉強を進めたところで、「デジタル光学」の
技術分野自体が未成熟で、誰も正解を持っていない所に
まで到達してしまい、良くわからなくなってしまう。
そして、撮影そのものの難易度も非常に高い。

だからまあ、あまり積極的に紹介・推奨したいような
レンズ群では決して無いのだが・・
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今回の「SV-1214H」は、本シリーズ第1回記事の執筆後
に購入したものであるので、補足としての紹介となる。

これらマシンビジョン用レンズは、あくまで当該業務分野の
専門家向けの実用的な要素での存在だ、これを写真用途に
転用する事は、世の中には、教科書も教則本も、ノウハウも
ハウツーも何も存在しないので、システム化や撮影技法に
ついても全ての原理や方法論を自力で考察し、考え出して
実験しながら実践しないとならない。(前述のように、
デジタル光学の世界では、まだ誰にも分からない部分が多い)

これは、写真分野での上級マニア層にすらも、あまり推奨
できるものでは無い。
あくまで、特殊な志向性を持つユーザー向けのシステムだ。
(その志向性を「テクニカルマニア」と呼ぶ場合もある)

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では、5本目のシステム
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レンズは、TOKINA 60-300mm/f4.5-5.6
(中古購入価格 1,000円)(以下、TOKINA60-300)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

1980年代頃と思われる、MF望遠ズームレンズ。

本レンズも「変則」といった要素は殆ど無く、一般的な
銀塩時代のオールド望遠ズームである。
ただ、当時におけるズーム比5は高倍率(高ズーム比)の
望遠ズームだと思われ、その点だけが、やや「変則的」だ。

高ズーム比のレンズでは、設計に無理をしている場合が多く、
内部的に焦点距離に応じて変動するレンズ群が、どの焦点距離
や絞り値においても、多くの収差を良好に補正できる保証が
無い。1980年代の古いズームであれば、なおさらである。

これを簡単に言えば、「画質が悪くなっても当然だ」という
事になるのだが、幸いな事に、本TOKINA60-300の場合は、
使い物にならない程の画質の悪さは無く、そこそこ良く
写ってしまう事が最大の特徴だ。
_c0032138_16250401.jpg
まあ、たまたま設計が上手くハマったのかも知れない。
でも、もし、このレンズの設計が優秀だ、という事が業界内
に知られれば、他社もその設計を参考にする等をして、より
優れたズームレンズの開発に着手する事が普通であろう。

解析がしにくい何か特別の事情があったのか?(例、あまり
使われないガラス材質を使っているとか)あるいはまた、
本レンズがTOKINAという一般にあまり注目されないブランド
のレンズであった故に、本レンズの高描写力はユーザー側が、
あるいはメーカーや市場の誰もが見落としていたのだろうか?

まあ、そうであれば「特異」なレンズであると言える。
人知れず存在する「隠れ名玉」となれば、まあ「変則的」で
あるのかも知れない。
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ただ、当時のユーザー層や評論家層の弁護をするならば、
当時と現在では、使用カメラの環境も撮影技法も評価方法も
まるで異なっている。
すなわち、望遠端の300mm側や広角端の60mm側だけで
画質等を見ていたらわかりにくいし、フルサイズ銀塩機
ならば周辺収差も目立つであろう。加えて、開放測光の
光学ファインダーであれば、ボケ質破綻の回避もできない。

今回の母艦はNEX-7であり、APS-C型センサーで周辺収差を
カットし、高精細EVF(236万ドット)で、僅かなりとも
ボケ質のチェックをしながら、その破綻を回避している。

それから、望遠端や広角端は諸収差の増大が予想される為、
それらを使わず、中間焦点距離を主体として撮影する、
画角調整は必要とあれば、デジタルズームを併用しても良い。

絞り込むと諸収差が低減されるので、ある程度絞るのが
基本だが、低下したシャッター速度は、現代機の高感度で
相殺できる。
絞り込んでも解消されない歪曲収差等は、殆ど気にならない
ので、意識する必要も無い。
あと、勿論逆光状態には十分に注意する。

また、ここでは行っていないが、エフェクトを用いたり、
画像編集でコントラストや彩度を調整すればさらに良くなる。

いずれも銀塩時代の当時では出来ない撮影技法であった為、
当時の機材環境や状況で「レンズの言うがまま」に撮って
いたら気づかない事も、多々あったのではなかろうか・・

ともかくオールドレンズと言えども、なかなか馬鹿には
出来ない優秀な物もあるという事だ。
そしてこれだけ色々と楽しめて、入手価格が僅かに
1,000円という事なので、何も不満は無い。

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では、6本目のシステム
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レンズは、LOMO 12mm/f8
(新品購入価格 3,000円)(以下、LOMO12)
カメラは、OLYMPUS E-PL2 (μ4/3機)

2010年代の広角トイレンズ。

正式名称は「Lomography Experimental Lens Kit」と
言い、μ4/3用の、魚眼、広角、標準のトイレンズ3本
セットの中の1本である。


価格の安さはさておき、「トイレンズ」は、やはり変則的
なレンズと言えるであろう。一般的に写真用レンズは
高画質(Hi-Fi描写)を求めるものであり、わざわざ低画質
(Lo-Fi描写)を必要とするケースは少ないからだ。
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何故こうした「トイレンズ」が必要となるのか?を、
一般的なHi-Fi志向のユーザーに説明して理解を望む事は
大変に難しい。まあ、詳しくは「匠の写真用語辞典第5回」
記事等を参照してもられれば良いのだが、それを読んで
概要は理解したとしても、「トイレンズ」の必要性について
は、ユーザー毎の志向性や考え方で、まちまちであろう。

ただ、写真に限らず、どの芸術分野においても、常に
写実的であれば良いというものでも無く、写真に最も近い
「絵画」の世界でも、19世紀には、それまで主流であった
レアリスム等の忠実主義から、いっきに方向転換をした
「印象派」が生まれている。現代では「印象派」の作品は
非常に高額で取引されている状態だ。まあ、その値段(価値)
は、個人的には「過剰すぎるのでは?」とも思ってはいるが、
投機的な意味を除いたとしても、そうした作品群に芸術的
価値があるのは間違い無い。

注意する点としては、こうした「トイレンズ」等の国内に
おける流行(主に「トイカメラ」として、2000年代前半に
「女子カメラ」層や「アート志向」ユーザーの間で流行した)
は、多分に、当時は高価であったデジタルカメラや、高性能
レンズ等に対する「反発精神」から、であった状況だ。

その後、デジタルカメラは低価格化し、スマホ等の簡便な
撮影機材も普及・高画質化した事で、そうした「反発精神」
も沈静化されてしまった。(トイカメラブームも去った)
つまり、自分でもHi-Fi機材を持っているので、それらを
妬んだり、目の敵にしたりする必要が無くなった訳だ。

だから、現代においては「トイレンズ」等のユーザー数や
志向性は、また減ってしまっている。
けど、Hi-Fi文化が定着すれば、差別化の為にLo-Fi文化
が生まれて来る事も、世の中の理(ことわり)である。
音楽の分野等でも、そういう流れが現実に起こった訳だ。

Hi-Fi志向のユーザー層においても、あれこれと考えずに、
「トイレンズ」を使ってみるのも良いかも知れない。
何故、こういう物が必要になるのか?は、使ってみないと
わからない事もあるだろう。まあ、そこでどう感じるかも、
ユーザーによって様々であろうが、見識を広めるには
役に立つと思う。

なお、本レンズLOMO12だが、もう少しLo-Fi感が強くても
良かったかもしれない、場合により、ちゃんと写りすぎて
しまうのだ・・ できるだけ「酷い写り」となる事が、
トイレンズの真の付加価値だと思う。

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では、次のシステム
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レンズは、TAMRON AF28-300mm Ultra Zoom f3.5-6.3
Aspherical XR [IF] MACRO (A06)
(中古購入価格 10,000円)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機)

2002年発売の、AF高倍率(高ズーム比)ズームレンズ。

ズーム比10(倍)を超えるレンズで、小型軽量化し、
かつ性能や仕様面で初めて「実用的」と言え、加えて
安価な価格となった、歴史的価値の高いレンズである。

今や、あまりに一般的な「高倍率(高ズーム比)ズーム」
であるが、本レンズがその「源流」であろう。
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既に約20年前のセミオールドレンズであり、現代の視点
からは様々な描写力上の弱点も目立つ。ただ、それはまあ
技術的未成熟もあるだろうし、ともかく、この仕様のレンズ
を当時で実現させた事に敬意を払うべきであろう。

なお、仕様的未成熟というのは、超音波モーターや内蔵
手ブレ補正機能が無い事を言っているのでは無い。
それらの付加機能は、あくまで「付加」であり、それらが
無かったからと言って、実用撮影上で問題になる事はまず
無いのだ。むしろ、そうした付加機能を内蔵した事で、
それが初級中級ユーザー層に対し「それが付いている方を
欲しい」という「付加価値」になるのであれば、その事は
裏を返せばメーカーから見れば「値上げの理由」に繋がる。

コスパを意識するならば、自分には不要な機能が入っている
為に値段が上がっている事は許容しがたい。
撮影条件をある程度固定してしまえば、本レンズでも実用上
は何も不満は無いし、もし超音波モーター等が必要であれば、
そういう仕様を持つ現代レンズで価格が安価なものもある。

あまり1つのレンズに、あれもこれも、と万能である事を
期待してもならない。個人的にはむしろ全く正反対であり
できるだけ単機能で、特定の被写体条件にズバリとマッチ
したレンズの方を好む傾向もある位だ。

もし、あらゆる面で完璧と言えるレンズが存在するならば
メーカーはそれだけを売れば良いし、消費者層もそれだけを
買えば良い。だが現実はそうなっておらず、星の数程の多数の
レンズが存在するならば、それらを自身の利用目的にぴったり
と合うものを探して、それを快適に使う方が楽しいのでは
なかろうか? まあ、それは私に限らず、たいてのマニアの
習性やポリシーだとは思うが・・

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さて、8本目のシステム
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レンズは、SIGMA TELE PHOTO 400mm/f5.6
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、PANSONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)

出自不明、恐らくは1970年代のMF超望遠レンズ。

MFの400mm単焦点望遠は、かなり変則的なレンズだ。
勿論、当時から各メーカーに400mmや、それ以上の
焦点距離のレンズのラインナップは存在していた。

だが、それらは主に業務用途や特殊用途であったりし、
非常に高価、下手をすれば受注生産品で、ますます高価だ。
当然、一般ユーザーでは価格的にも用途的にも手が出せる
存在では無い。勿論、殆ど売れておらず、後年の中古市場
にも、そうしたMF超望遠レンズが流通する事は極めて稀だ。

しかし、その状況が逆に「望遠レンズへの憧れ」にも
繋がってしまう。ビギナー層における、その傾向は、その後
時代が流れても解消されず、ずっと「望遠レンズが欲しい」
という意識だけが、時代や世代を超えても続いていた。

近年、やっと2010年代になって、ミラーレス機のデジタル
ズーム機能や、超ロングズーム機(1000mmを超える画角
の望遠ズームが搭載されているレンズ固定式コンパクト機)
により実現されるようになると、50年間を過ぎてようやく
「望遠が欲しい」という、ビギナー層のニーズは沈静化
しつつある世情だ。

さて、では、1970年代頃に、「望遠レンズが欲しい」と
思った初級中級層は、どうやってそれに対応していたので
あろうか? その1つの解決策が、本レンズのような
サードパーティー製の、メーカー純正より遥かに安価な
望遠レンズである。

まあ、他にもテレコン使用だとか、レンズメーカー以外の
望遠鏡風望遠レンズを買うとか、望遠鏡そのものを流用
するとか、ミラー(レンズ)を購入するとか、いくつか
解決策はあるのだが、それぞれ勿論、短所や課題が存在
するものであった。
やはり、ちゃんとした写真用望遠レンズを購入する事が
その目的にはマッチしていた頃であろう。
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ただし、2つの重要なポイントがある、


まず1つ目だが、本レンズの時代(あるいは設計)では、
描写力は未成熟である。ぶっちゃけ言って、写りが悪く、
実用限界を下回っている。
(上写真も、解像感が殆ど無い)

当時のメーカー純正望遠レンズが、どこまで高性能で
あったかは知らない、レア品かつ高価な故に、購入して
いないからだ。でもまあ、大差があるとは思い難く、
まあ、当時のユーザーも相当に望遠レンズには苦戦したの
ではなかろうか?

もう1つの課題だが、業務用途で遠距離の特定の被写体を
撮影するのでなければ、一般アマチュア層で、これらの
望遠レンズの用途が殆ど無かった事である。

まあ、当時は当然三脚利用であろうが、全体の重量が嵩み
ハンドリング性能や機動力(撮影地点や撮影アングル等)
も大幅に制限される。
野鳥撮影が最も使えそうな用途だが、それでも三脚撮影
では有益とは言えないだろう。あらゆる場所に出現の
可能性のある野鳥撮影において、三脚でターゲット位置を
固定してしまうのは、かなり非効率的な撮影スタイルだ。

他は何かあるのだろうか? 鉄道やら屋外スポーツやらの
動き物(動体撮影)は、当時の機材環境や技能的には無理だ、
遠距離の風景というのも、中距離の風景写真と差異が少ない。

だから、せっかく望遠レンズを買ったけど、使い道が無く
処分してしまったり、死蔵してしまったりするユーザーが
かなり多かったのではなかろうか?

実は、その傾向は、先ほど「現代では望遠のニーズは減った」
と書いた2010年代でも起こっている。
SIGMAとTAMRONから比較的安価な150-600mm超望遠ズーム
が2010年代に発売されたのだが、値段が安価でも、大きく
重いレンズだ。それらを買ったビギナー層等が、使いこなせず
に処分し、それらが大量に中古市場に流通した次第だ。
まあ、私の場合は「重すぎて使用不能」と最初から、それらの
600mm級ズームを買う事は無かったが、安価になった中古品
にも手を出す事はやめている状況だ。

さて、余談が長くなった。本レンズであるが、非常に安価
(3000円)で入手できたので、コストは低い。
これは、2000年頃の購入であり、FDマウント品だったので
銀塩機以外では使用困難であった事からの低相場だったと
思われるが、まあ、安価であっても、コスパが良いとは
到底思えない程に、性能的な未成熟が目立つ。
ただ、振り回せないほどに大きく重い事はなく、まあ
100%手持ち撮影で、何も問題は無いサイズ感ではある。

実用価値が殆ど無いレンズだが、その当時のユーザーニーズ
とか、当時の世情などを推察できる「歴史を語る証人」と
して所有を続けている次第である。

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さて、今回ラストのシステム
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レンズは、MINOLTA STF 135mm/f2.8[T4.5]
(新品購入価格 118,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)

1998年発売のMF中望遠アポダイゼーション搭載レンズ。

その後の時代を含め、アポダイゼーション搭載レンズは
史上4本しか存在していない為、かなりの「変則」レンズだ。
(本シリーズ第0回、アポダイゼーション・グランドスラム
記事で全4本を紹介済み)

(注:本記事執筆後、2019年末にCANONより、史上5本目
のAPD(相当のDS)レンズが発売されている。
ただし、40万円越えの異常な迄のプレミアムレンズであり、
その金額があれば、他のSTF/APDの4本が全て揃ってしまう。
カメラ市場縮退とは言え、いくらなんでも「高付加価値戦略」
も、やりすぎではなかろうか? 消費者層が、さらなる
新製品離れを起こしても、全く不思議な状況では無い・・)

そのSTF/APDの5本の中でも、本レンズは「史上初」であり、
歴史的価値の極めて高いレンズとなっている。

その最大の特徴は、「完璧と言えるボケ質」が最大の魅力
であるが、付随的に「描写力上の欠点が殆ど無い」という
稀有な長所を持っている事もある。

ただ、このあまりに完璧な描写力は、「レンズの言うが
ままに撮らされている」という微妙な心理的不満に繋がり、
別の言い方をすれば「あれこれ工夫して使いこなす事の
楽しみが殆ど無い」事であり、さらに言えば「同じ被写体
状況であれば、誰が撮っても同じような高描写力の写真が
撮れてしまう為、技術的・技能的な差別化要因が少ない」
とも言える。
後者は、例えば、職業写真家層とかアート系写真家層等に
おいては、ビギナー層でも本レンズを持ってさえいれば
同じような高品質の写真が撮れてしまったら、困る訳だ。
つまり、それらの上級者層は、経験や技能、個性等を有効に
打ち出していかない限り(=差別化しない限り)、写真に
価値をもたらす事が出来ないからである。 
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まあでも「描写力が高すぎて困る」というのも贅沢な不満
要素であるとは思う。

本レンズは、確かに高価なレンズではあるのだが、
(KONICA)MINOLTAの2006年でのカメラ事業の撤退後、
「α」とともに、本レンズもSONYに引き継がれていて、
発売後20年を超えての現役商品である。
初期の時代の中古等は結構安価な相場になってきていて、
7万円台くらいから入手可能であろう。

本レンズの「反則だ!」とも言えるような凄い描写力を
体感したいのであれば、この金額の投資は惜しく無い。

2000年代初頭頃に、写真仲間の若い女性が本レンズを
購入した際、「清水の舞台から飛び降りるつもりで買った」
という逸話があり、本レンズの紹介記事でも良くその話を
書いているのだが、その女性のように大英断をせずとも
現代の世情であれば、本レンズの中古相場は、新鋭の
デジタルカメラを買うよりも、むしろ安価な位でもある。

10万円の予算があって、新鋭カメラに8万円、付属レンズに
2万円といったアンバランスな予算配分は決してせずに・・

8万円で本レンズを中古で買い、カメラは型遅れの中古で
2万円で買った方が、ずっと高画質な写真を撮って楽しむ
事ができるであろう。カメラとレンズの価格比については
こうした予算配分を常に意識する事が望ましい。
(=1対4の法則、匠の写真用語辞典第16回記事参照)

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では、今回の「変則レンズⅡ編」は、このあたり迄で。
次回記事に続く。

【熱い季節2020】第14回びわ湖ドラゴンボート1000m選手権大会(前編)

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2020年10月4日(日)に滋賀県大津市、滋賀県立琵琶湖
漕艇場にて開催された「第14回びわ湖ドラゴンボート
1000m選手権大会」(以下、1000m大会)の模様より、
前編。
(参考:「琵琶湖」の「琵琶」は常用漢字では無い為、
近年においては地名や施設名等の固有名詞を除いては、
「びわ湖」と記載されるケースが増えてきている。
本記事では、適宜、両者の表記を混在している)
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ご存知のように、コロナ禍の影響で、今年の各地の
各種のイベントは軒並み中止となってしまい、
ドラゴン(ボート)大会に関しても同様であった。

本1000m大会が今年2020年に「びわ湖」で行われた
ドラゴン・ペーロン系のボート競技の公式大会では
初であり、恐らくびわ湖の今年ラストの大会でもある。

しかし、旧来のように無制限でイベントが開催できる
状況でもなく、本1000m大会には、コロナ対策による
様々な(自主)制限事項が課せられている。

これについては追々詳細を述べていくし、この対策が
翌年以降、各地で行われるドラゴン・ペーロン大会の
開催における有益な参考事例となるかも知れない。
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さて、季節は既に10月である。例年、びわ湖での
ボート大会は真夏に行われる事が常であるので、
ともかく暑いし、熱中症やらゲリラ豪雨対策にも
留意しなければならないのだが、流石に10月とも
なると、ずいぶんと様相が変わって来る。

大会当日10月4日の天候は曇り、朝にチラリと雨が
降った模様だが、大会中はずっと曇り空だった。
この時期は台風災害にも見舞われやすく、過去の
本大会や、同時期の静岡ツナカップ大会等でも、
台風で中止となったケースが何度かある。
ただ、幸いにして、この週末は台風の襲来は全く
無い。

会場の滋賀県大津市の最高気温は25℃くらいで
風は弱い。数日前までは関西地区でも30℃位
まで上がる日もあったので、この日は暑くもなく、
寒くも無く快適だ。日中であれば半袖でも十分な
気候である。

今年は、例年よりやや遅めと思われる「彼岸花」
(曼珠沙華)も、盛りを少し過ぎた頃で、迫る
秋の気配を感じる。

・・まあ、選手達にとっても、スタッフにとっても、
カメラマンにとっても、この日は絶好の「ドラゴン
日和」であった事であろう。

写真撮影でも、「真夏の逆光状態」とかは、極めて
撮り難く、いつも苦戦するのだが、曇天はむしろ
コントラストが低くて撮り易く「撮影日和」とも
言えよう。

そして何より、ドラゴンの選手達は、漕ぎたくて
漕ぎたくて、うずうずしていたのだ。

「専業チーム」(=常日頃からボート系競技の練習を
していて、各大会に多く参加する専門的なチーム群)
であれば、毎月1~2回の各地の大会に参戦する事が
普通である訳だ。今年は、コロナ第1波の非常事態
宣言解除後では、チーム毎で練習をする事はあった
だろうが、公式戦(大会)が、一度も無かった次第
なので、今日の大会開催を待ち望んでいた選手
(や、関係者)ばかりである。

ただ、練習の多寡は、恐らくチームにより、まちまち
だと思われる。それに、選手達に聞くところによると
選「目標となる大会の開催が無いから、練習をするに
  しても、なかなか気持ちの維持が難しい」
との話もあった。

まあ結局、もしかすると、この休止期間であっても、
チームあるいは個人で基礎練習を続けて来たケースと
そうで無い場合では、少し実力差が出てしまっている
かも知れない。そして、そういう様相も勿論選手達には
わかるから、本大会で他者の様子を見て、来シーズンに
向けて、どの程度の練習を積んでいくべきか?を再考
する機会になるのかも知れない。
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さて、本大会自体は、2年ぶりの開催となる。
昨年2019年は、会場の滋賀県立琵琶湖漕艇場が
改装工事により、使用できなかった次第であった。

とは言え、今年もまだ工事中であるのだが、なんとか
最低限の設備は確保できる。つまり、乗艇桟橋や
チームテントの設置場所、大会本部棟や無線・放送
システム等である。
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2年ぶりの大会なので、大会パンフレットの写真
は2018年のものである。今年から(あるいは
昨年2019年の一部の大会から)は、それまでの
青黒の2色印刷ではなく、フルカラー(CMYK)印刷と
なった。ネット注文等の普及で印刷コストが下がり、
カラーも2色も大差が無くなってきたのであろうか?

---
艇に関しては、2021年開催予定の「ワールドマスターズ
ゲームズ(WMG)2021関西」のドラゴンボートの部
(びわ湖競艇場で開催予定)に備え、滋賀県協会に
おける軽量の新型艇(20人艇、10人艇)の保有数が
大幅に増えている。(注:旧来から艇の数は多いが、
日中友好で寄贈された等の、30年間以上も使って
いる旧型の重量級の艇の比率も多かった)

また、それに伴い、新たにドラゴンボート(新艇)
専用の艇庫を借り、そこを艇の保管場所としている。
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艇庫の場所は、琵琶湖(瀬田)漕艇場の約300m南側で、
JR東海道線(琵琶湖線)の鉄橋の辺りの湖畔だ。

最寄のJR/京阪石山駅からは、道なりで約1100m、
徒歩15分程度で到着できると思われ、アクセスは
さほど悪く無い。近隣には、滋賀や京都の大学や
同好会等の艇庫が多数、林立している場所である。

新艇庫については、本記事の「後編」で詳細を説明
しよう。
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こちらが、新しいチャンピオン社製20人艇である。
5号艇まであるが、今回使用は4艇のみだ。

これらの新規入手艇は、現状では「スモール選手権」
と、前述の「ワールドマスターズゲームズ関西」に
使用予定であると聞く。
本来は今年9月に行われる「スモール選手権」で
デビューする予定だったのだが、その大会も中止と
なってしまった為、新艇は今回が初お披露目だ。

今回は、1000mの(国内ドラゴン大会では最長の)
長距離戦であるので、高速だが軽量でやや不安定な
10人艇を使用せず、安定性の高い20人艇を、持ち
出したのであろう。

それに加えての理由として、コロナ対策により、
「密」を避ける為、20人艇を用いた10人漕ぎとする。
(下写真。漕手の隙間が十分に開いている)
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やや重い20人艇で、かつ少人数で長距離を漕ぐ為、
各チームでは瞬発力よりも「持久力」が課題となる。

まあでも、本大会も既に14回(14年)目である。
大会の最初期から出場しているベテランのチームも
多い為、この長距離戦の攻略法等は、どのチームに
とっても、「言わずもがな」の状況であろう。

ちなみに私も、本1000m大会は、台風や工事で
中止になった年(数回ある)を除き、他の全ての
大会の観戦撮影(およびブログ観戦記事の掲載)を
している。

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さて、コロナ対策の件だが、少しづつ詳細を説明
していく。

まず、20人艇を用いた10人漕ぎである事は、前述の
通りである。これで漕手間で距離を開ける事が出来る。

ソーシャル・ディスタンス(6フィート=1.8m以上
が推奨)とまでは行かないが、現実的に取れる、
「密」への対策としては妥当な措置であろう。

それから、監督会議、表彰式等はチームの代表者のみ
として、これも「密」を避ける対策が取られている。
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開会式は放送にて、閉会式も放送にて行い、
必要な代表人員の他の一般選手達は集合しない。

次いで、選手達(および関係者も全て)は、大会本部
より支給される「口元フェイスガード」(?と呼ぶ
のだろうか? 商品名はメーカー毎でまちまちな模様。
2つ上の写真での「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」
(滋賀県、一昨年優勝チーム)の選手達が付けている
器具だ。

最近ではTV番組の出演者等もこれを付ける事が多い
と思う。(コストは1個あたり100~200円程度。
消毒して繰り返し使用できる)を、全員装着する
決まりだ。


ただし、鼓手(ドラマー)は、この口元タイプでは
無く、顔全体をカバーする「フェイスシールド」を
できるだけ装着する事が推奨されている。(下写真)
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この「フェイスシールド」の単価は、10月現在で
200円~400円台程度だと思う。

鼓手は、チームの司令塔の立場であり、レース中
にも様々に漕手(パドラー)や舵手に指示をする
事もある(=声を出す)からだ。

しかし、鼓手は漕手よりも、やや高い位置に座る為
飛沫感染防止の観点からは、口元タイプの方が良い
かも知れず、また、レース毎での鼓手の交代があると
シールドの他者への使いまわしが厳しいかも知れない。
ここ(鼓手)については、フェイス(顔)タイプでも、
口元タイプでも、どちらでも良いかと思われる。

プラシチック製のシールドではなく、勿論、(布製等)
マスクでも良いのだが、マスクは運動をすると呼吸が
厳しくなるケースがある為、各種シールドの方が楽な
場合もある。

(布)マスクは、今年の4~5月あたりでは入手が
困難で、たまに販売していても50枚セットで3000円
以上もする等、高額であったが、9月頃から価格が
暴落している。(恐らくは在庫過多であろう)

10月初旬での関西での都市圏での安売りマスクは
50枚入りで500円以下、さらには300円台という物
迄も見かけた。ただし、それらの安売り品の多くは、
さすがに薄く作られていて、どの程度の感染/伝播
防止効果があるかは、不明(懐疑的)だ。

各チームのアップ(=準備練習、ウォーミングアップ)
時においても、マスクとシールドの装着はまちまちだ。
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上写真は、「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」の朝の
アップの模様、マスクとシールドが混在している。

アップ時、およびレース時では、大声での掛け声は
しないように指示をしているので、静かに走るのみ
である。

「大声での会話はしない」というのが飛沫感染防止
の基本であろうが、最近では世間でのコロナ対策も
だいぶ気の緩みがあるのか? おばちゃんの立ち話、
学生の登下校、観光地に稀に居る外国人等で、
マスク無しでの大声の会話が目だち、そういう人を
見かけると、距離を置くように注意せざるを得ない。

そして、実際のレースとなると、アップ時とはどうも
様相が異なる模様だ。
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上写真は、「GPO」(チーム)の第一レース(前)。
選手達は、シールドではなく、マスクの装着が大半
である。

各種シールドは、実は、組み立てるのに少し時間が
かかる。滅菌された袋から出し、自分で耳ひもを嵌め
シールド上のシールを両面で剥がしたりするのだ。
「GPO」は第一レースだったので、その準備時間が無く、
マスクのまま(恐らくは、会場への来場の際に着けて
いたもの)で出場していた。

で、「GPO」が第一レースから帰ってきた際、
G「とても疲れた・・練習不足だろうか?」
という発言があった、タイムもさほど伸びていない。

匠「いや、(漕ぎが)揃っているのは確かなので、
  原因は別でしょう。まず、重い20人艇を10人で
  長距離を漕いでいる事。それから、気になるのは
  GPOさんだけ、皆、布マスクですよね・・
  他は、皆フェイスシールドですよ。マスクだと
  呼吸が苦しいのでは?」
G「ああ、そうか! きっとマスクのせいですよ。
  漕いでいて酸欠になるかと思った・・汗」

この話は、すぐに他チームにも広まり、選手達の
(口元)シールドの装着率が格段に上がった。

下写真は、前述の「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」
の、後の時間帯でのアップ(準備運動)の模様だ。
多くの選手達が(口元)シールドを付けている。
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又、撮影の際での話であるが、布マスクは密閉性が
高く、上部の隙間から呼吸が上に向かい、カメラの
光学ファインダーやEVF(電子ファインダー)を
曇らせてしまうケースが多い。

なので、コロナ流行最初期の3月頃では、観光地
等でのアマチュアカメラマン等も、マスクをせずに
撮影をしているケースが多かった(撮り難いから
だろう) しかし、4月頃にコロナ流行が本格化
すると、マスクをせずに外出するのは無謀なので
カメラマンもマスク着用、そうこうしているうちに
全国に緊急事態宣言が発令され、「ステイホーム」で
アマチュアカメラマンを屋外で見かける事も皆無と
なっていく。
まあでも、確かにマスクとカメラの相性は良くない、

今回、口元フェイスシールドを装着しながら撮影を
してみると、ファインダー類の曇りは無く快適だし
(注:季節での、気温や湿度も影響すると思う)
カメラを構えた状態でも、口元シールドには
カメラやレンズ等が当たらないので問題は無い。

弱点は、撮影後に構えたカメラを戻す際、そのまま
カメラを下ろしてしまうと、口元シールドに当たって
外れたり壊れたりしてしまう事だ、ここは慣れて
よく注意する必要があるだろう。

余談だが、コロナ禍、またはそれ以前から、カメラ
市場は活気が無い。まあスマホの普及が主原因で
あろう、本格的カメラの必要性が減っているのだ。

カメラメーカー各社からも一眼レフの新製品は極めて
少なく、稀に出る新製品は、ほとんどがミラーレス機
である。(しかも、恐ろしく高価だ)
この世情を鑑み、ボート撮影で旧来、主力にしてきた
(デジタル)一眼レフから、「ミラーレス機に転換
した方が良いかも知れない?」とも思い、今回は
主力撮影機材をミラーレス機にしてみた。
(一応、一眼レフも持ってきてある)

ただ、やはりまだ、ミラーレス機よりも一眼レフの
方が遠距離の動体(つまりボート)撮影には有利な事
を痛感した。たとえ、一眼レフが重くても、あるいは
新製品が出なくなっても、当面はボート競技撮影では
一眼レフを主体にせざるを得ないであろう。

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さて、引き続き、コロナ対策の話である。

今回の大会は、滋賀県(びわ湖)で行われたが、
参加可能なチームの地域(本拠地)は、滋賀県および
京都府のチームに限定する措置が取られている。
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上写真は、地元大津市の「小寺製作所」チームだ。
全員がマスク着用の集合写真というのも、なんだか
楽しそうでは無い雰囲気があるのだが(汗)
口元が隠れるだけで表情も読み取れないので、
まあ、そこはやむを得ない。

チーム内は、メンバーは日常で接している為、
ここでの社会的距離確保等は黙認、ただし、
異チーム間ではソーシャル・ディスタンスを
意識してもらうようにする事が望ましいであろう。

で、実は選手達は、これでも今日は機嫌が良い
のだ、なにせ、久々に大会で漕げる訳だし、
さらに言えば、およそ1年ぶりに他チームの選手
達やスタッフ達にも会えている。
お互い、皆、元気そうな様子が見られ、会話が
直接交わせる、という当たり前の事も、こんなに
楽しい事であったのだろうか・・

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で、この参加チームの地域限定は、「県外(越境)
の移動を最小限にする措置」という訳だ。

「Go To Travel キャンペーン」も開始している為、
現状では、あまり厳しい制限を掛けずとも良いかと
は思うが、ドラゴンの選手達は、今年は公式戦が
無かったので、漕ぎたいニーズが強いと思われ、
フリー参加とすると、各地から際限なく参加チーム
数が増えてしまう恐れもあった次第だと思われる。

それと、多少の人数での、他地域チームへの越境
(飛び入り)参加等は暗黙には認められていると思う、
そこまで、うるさく言う必要は無いだろうからだ。
(もっとも、各チームとも、皆、漕ぎたいだろうから、
なかなか飛び入り参加の枠の空きも無い事であろう)

旅行関連だが、本大会の2週間前の9月の4連休では
京都嵐山等には観光客が溢れかえっていたと聞く。
客足が戻ったのは、観光業界にとっては良い事では
あろうが、新たな感染拡大を心配する声もあったのも
確かだ。

それと、ちなみに、本大会開催前1週間位での
滋賀県・京都府でのコロナ新規感染者数は、
滋賀県が、概ね0人~ヒトケタ人(1日あたり)
京都府が、ヒトケタ人~十数人、という感じだ。

そして、参加チームの選手達については、体調
(体温)記録の報告(大会当日から過去2週間)が
義務づけられている。(受付時に記録を提出)

さらに、本来、この1000m大会では、「ドラゴン
ボート・グランドシニア大会」が併設して行われる
事が通例であったのだが、高齢者が中心の同大会は
万が一の感染時での重症化が懸念される為、今年は
同グランドシニア大会は中止となっている。

ともかく、イベント実施で万が一のクラスター感染
を出さない事は、運営側にとって頭の痛い所である。
「それ(大会等)のせいでクラスターが起こった」
ともなれば、今後のイベント実施にも赤信号が
点灯してしまうからだ。イベント参加者(選手等)も
そこは十分意識する必要がある、せっかくの楽しい
イベントが出来なくなれば、選手達も困るだろう
からだ。

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それと、消毒等の状況だ。
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チームがレースから帰ってくると、(引き続きの次の
レースへの連続出場の場合を除き)一旦全員が艇から
降りて、スタッフが艇をアルコール消毒と拭き取り
作業を行う。

この措置の為、本来は今回の参加チーム規模(少数
限定である)ならば、2艇のみでの運用も可能では
あったと思うが、消毒等の準備作業の為に、4艇を
用いた交互運用としている。

消毒済みの艇に、次のチームの選手達は乗り込む
事となる。 
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それから、大会本部、受付、審判席等には、各々
アルコールが用意されていて、選手やスタッフ、
あるいは、(数は少ないが)観客や報道関係者等も
自由に手指の消毒等を行えるようにしている。
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今回の大会の開催は、あまり広くアナウンスは
していない。万が一、一般観客等が多数押し寄せて
しまうと、「密」の管理とか、感染防止ルール等の
遵守・徹底が難しくなるからだろう。

ただ、そうは言っても、一般観客はゼロでは無い、
どこかには存在する情報を頼りに、大会を見物に
来る人達は、居る事は居るのだ。
(内、一人は知人であり、連絡はしていなかった
のだが、その方の地元で行われている本大会を、
過去にも何度か見学に来ている方だった)

勿論、観客、報道関係者、その他の外部の方でも
受付等でのアルコール消毒推奨、また健康状態
等の確認を行う。(出来れば非接触体温計などが
あると、なお良いであろう)

そして、もともとの「イベントの広知性」の課題も
ある。つまり、人が集まる各種イベントには、例えば
広告宣伝とか観光振興とか、様々な商業的な意味も
あるから、観客の少ない、あるいは無観客のイベント
は、なかなか開催の意義が見出せない場合も多々ある
だろうからだ・・

このあたりは難しい話だ、コロナが早く終息し、
各分野で、従来どおり様々なイベントが実施できる
ようになるのを待つしかないかも知れない。
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さて、概ね午前中に、殆どのレースが終了している。
例年であれば、午後からは「グランドシニア大会」
が開催されるのだが、前述のように、今年はその
大会は中止となっている。

後は閉会式・表彰式と、それと選手達の有志による
新艇庫の見学を兼ねた、艇等の「後片付けである」

私も昼食を取って、その午後の部に備えるとしよう。
なお、食事におけるコロナ感染防止は、意外に色々と
あって難しい。少し前までの時期は「会食」による
感染が多発した為、自治体によっては、会食における
時間や人数に制限を掛けるケースが多かった。
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さて、本記事では、レースの模様や、チームの状況等
の話が全く出来ていないのだが・・(汗)
(上写真は、京都から参戦の「すいすい丸」)
それらの話は、まるまる後編記事に廻す事とする。

今回の大会で1つの重要な事は、コロナ禍における
大会(イベント)実施の上で、どのような点に留意し
どのような対策を施すか? という部分がある。

その為、今回の大会でのコロナ対策については、
来年以降(今年も、まだ一部大会があるとは思う)の
各地の大会開催において、一種の手本となれば良いの
ではなかろうか? 本大会のチーム成績よりも、むしろ
これは重要な事であろう。

次回、後編記事に続く。

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追記:2020年下期のドラゴンボート関連情報

○実施予定 2020年11月1日(日)
 大阪府高石市/大阪府立漕艇センター ODBA主催 
「大阪府民スポーツ大会」(旧:大阪府民体育大会)
 および「舵取りコンテスト」 →参加募集中

X中止(11/14~11/15に開催予定だった大会)
「Head Of The Seta 2020」 瀬田漕艇倶楽部主催
 →滋賀県の瀬田川で行われる、異種ボート混成・
  大規模・長距離ボート大会。
 →および、同大会のドラゴンボートの部に参戦の
  選手達による年度末懇親会。(こちらも中止)

X中止(例年11月頃開催)
「すいすい丸(主催)ドラゴンボート体験乗船会」
 →京都府宇治市の宇治川で行われる、一般客を
  対象としたドラゴン(無料)体験乗船会。
 

最強35mmレンズ選手権(2) B決勝戦(2)

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実焦点距離または換算焦点距離が35mm前後となる
レンズ群の中から、最強のレンズを決定するという
シリーズ記事。
今回は、B決勝戦(2)という事で、「惜しくも決勝戦に
進む事は出来なかったが、それに準ずるハイランカー」
となっている35mmレンズを6本紹介(対戦)しよう。

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まずは最初の35mm級(対戦)レンズ。
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レンズ名:SIGMA 30mm/f2.8 EX DN
レンズ購入価格:7,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

2012年に発売された、ミラーレス機(μ4/3および
SONY E)専用AF準広角(標準画角相当)レンズ。

フルサイズ対応35mmレンズでは無いが、便宜上、
このカテゴリー(35mm級)で対戦する事とする。

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本レンズの発売後に、SIGMAはレンズラインナップを
整備し、その際に本レンズの後継型は「Art Line」に統合
されたのであるが、外観変更のみで内部の光学系に変更は
無かった。そして、その時、こちらの旧型(EX DN型)は、
中古市場に大量に新品在庫処分品(新古品)が流通し、
それを随分と安価に買う事が出来た次第だ。

「Art Line」は、当初F1.4級の大口径レンズが主体と
なっていたのだが、本レンズのような平凡なスペック
(開放F値2.8)が何故Contemporaryでは無く、Art Line
となったのか?は、本レンズや19mm/F2.8のEX DN型は、

SIGMAの高級コンパクトDPシリーズ(メリル以降)の搭載
レンズを単体発売したものであり、これを「高性能だ」と
称しておかないと、DPシリーズのブランドイメージが
低下するからだと思われる。

しかし、その後2016年~2018年頃に、Contemporary
Lineで、30mm/F1.4、16mm/F1.4、56mm/F1.4の
ミラーレス機(APS-C以下)専用のDC DN型番の大口径
レンズが次々と発売された為、SIGMAラインナップ上での
整合性が乱れてしまっていた。その後、2019年頃からは、
本レンズの系列(つまりArt LineでのDNレンズ)は
次々に生産中止となり、SIGMAは、これでラインナップの
上下関係を整えた事になる。

だが、「Art Lineだから良く写る、故に高価だ」とかと
一般には思うかも知れないが、そこはそう単純な話では無い。
というのも、EX DN型(またはDN | Art型)の系列の3本
のレンズは、どれもよく写り、しかも極めて安価である。

結局、ユーザーから見た状態においては、「Art」とか
「Contemporary」の称号は、どうでも良い話であり、
要は、個々のレンズにおいて、コスパが良いか悪いか?
そこに尽きるのではなかろうか?


本レンズは、旧シリーズ記事「ハイコスパレンズBEST40」
で、述べ約400本の所有レンズ中、第10位にランクイン
した高コスパレンズである。

本シリーズの次回記事は「35mm決勝戦」となる予定で、
実は、そこでSIGMA Art Lineのレンズが1本ノミネート
されている状態だ。しかし、その高級レンズは本レンズの
軽く10倍以上も高価な(高価に取得した)レンズである。
まあ「10倍値段が高ければ10倍良く写る」という訳では
無い事は、誰が見ても明白な事実であろう。

それら両者の描写力の差は微々たるものである。
本レンズでも十分に良く写り、銀塩時代の35mm級の
レンズ群を軽く凌駕していると思う。

・・だとすれば、結局、レンズの価値評価を決めるのは、
値段では無く、コスパを拠り所とするしか無い状態だ。
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本レンズは前述のように2019年頃に生産終了となって
いるのだが、同時期の中古市場に、数百本という数の
大量の新古品(新品在庫処分品)が、1万円強という
相場で流通していた。EX DN型の販売終了時(2013年)
での相場7,000円よりは若干高価ではあったが、まあ
買える時に買っておくべき、高コスパレンズであろう。

細かい弱点は色々とあるレンズだが、なによりコストの
安さが、全ての弱点を帳消しにしてくれる事だろう。

---
では、次の35mmレンズ。
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レンズ名:NIKON LENS SERIES E 35mm/f2.5
レンズ購入価格:18,000円(中古)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)

1980年頃に発売された廉価版単焦点MF準広角レンズ。

SERIES E(シリーズ E)とは、「リトルニコン」こと、
普及銀塩MF一眼レフ「NIKON EM」(1979/1980)を
母艦の主軸とした、安価な交換レンズ群の事である。

当初、海外(米国)向けをメインターゲットとして開発
されたと思うが、同時期の国内市場での銀塩MF一眼レフ
の低迷と、この時代前後での低価格帯銀塩MF一眼レフの
大ヒット(例:RICOH XR500、MINOLTA X-7等)
により、国内市場にも急遽投入された製品群である。

(注:1970年代の10年間で、物価が約3倍にも高騰した
事で、カメラが高価すぎて売れず、反発して、低価格帯の
カメラがヒットした要因にもなった)
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NIKONの基本営業戦略は、高付加価値商品を売る事だ。
つまり、高性能なカメラやレンズを開発し、ブランド力
に物を言わせ、それらを高価に販売し、利益を稼ぐ。
もし、安価な商品を売って、それをユーザーが買い、
「NIKONを買ったぞ!」と満足してしまったら、本来
儲けを出すべき、高額カメラや高級レンズが売れずに
困った事となる。

しかし、この時代1980年前後は、一眼レフを見れば、
1/4000秒シャッター搭載や、多分割測光、AF化等は、
まだ少し先の時代であり、高性能を訴求する基幹技術
が整っていない。

なのでNIKONとしては、やむなく低価格帯システムの
開発を行ったのであろう。当初、海外向け専用であった
のも全く同じ理由だ。もし、NIKON EMを国内で売って
それでユーザーが満足したら、NIKON F3(1980年)
等の高級機が売れなくなってしまう・・

だけど、国内向けの展開は、結局、失敗してしまった。
NIKON EMは、絞り優先専用機であり、国内ユーザーは
NIKON機に高付加価値(高性能)を求めた為であろう。
つまり消費者側が「そんな安い(低性能)なNIKONは
いらんよ!」と、そう思ってしまったのだ。
まあ、その心理に加え、低価格機に「強い仕様的差別化」
をかけてしまった(=安い製品は、性能を大きく落とす)
事も原因の1つであろう。

ちなみにNIKONが、それまでの時代で銀塩コンパクト機
を作っていなかったのも、全く同様な理由だ。
NIKON初の銀塩コンパクト機の発売は、やはりこの時代の
1983年であった。勿論、他社より数十年という単位で遅い。
そして、その銀塩コンパクト機も不人気で、商業的に
失敗してしまっている。ここの理由も、ほぼ同様であり、
1つは、低価格機にユーザーが付加価値を感じなかった事、
もう1つは、仕様的差別化が大きかったからだ。

付加価値とは、メーカーから見れば、「利益の根幹」で
あるが、消費者側から見れば「製品を欲しいと思う魅力」
となる。両者の考えが合致すれば、高価格帯製品は売れる
のだが、そのバランスが崩れてしまうと製品は売れない。

この傾向は、そこから約40年が経った現在でも同様で
あり、NIKONは基本的に高付加価値型戦略である。
しかし、近代では安価なNIKON機(デジタル一眼)も
色々とラインナップされていた。そうしないとユーザー
ニーズが多様化した現代のマーケットにそぐわないからだ。

(注:NIKON低価格帯デジタル一眼レフが存在したのは、
一眼レフ市場が、ミラーレス機に喰われかけていた
2010年代前半迄の話であり、そこからさらにカメラ
市場が縮退した2010年代後半からは、もうNIKONは
低価格帯デジタル機(デジタル一眼レフも、ミラーレス
1シリーズ機も)の発売を辞めてしまっている。
安いカメラを売っていたら利益が得られないからだ)

でも、その製品ラインナップ上で行われていたのは、
強い「仕様的差別化」だ。NIKON低価格帯一眼レフでは、
様々な機能や性能が大きく削られていて、消費者層が
カタログスペック等を見れば、自動的に高価格帯の
カメラが欲しくなるように、シナリオが出来ている。
つまり、「上位機種には、あの機能(性能)があるから、
多少高くても、そっちを買おう」と思ってしまう訳だ。

だが例えば、ISO164万という超々高感度性能があったと
しても実際にそれを活用する場は、殆ど無い状態であるし、
仮に、その超絶性能を試そうと、完全暗所で撮影しようと
しても、AFも効かない、露出計も動かない、おまけに
ファインダーも真っ暗で見えない、ライブビュー機能も
まともに動作しない、という状況だ。

すなわち、実際の撮影シーンで必要とされないレベルの
高性能(超絶性能)があったとしても、本当にその恩恵
に預かれるのは、様々な制限条件を回避して高性能を使う
事ができる、ごく一部の上級者層以上のユーザーだけだ。
大半の初級中級ユーザーは、自身が必要としない性能や
機能に、夢を見て、せっせと大金を払っている事となる。

・・余談が長くなった、まあ、そうした話はどうでも良い、
本記事はレンズの話であった(汗)
_c0032138_16335882.jpg
本レンズ、NIKON LENS SERIES E 35mm/f2.5は、
「NIKKOR」の名前すら、つける事が許されなかった
廉価版のレンズである。(=「NIKKORは、高級レンズ
なのだ」と、ブランドイメージを保持する商品戦略だ。
→しかし、そんな事は消費者層の誰も気にしていない。
「NIKKOR」が「ブランド」だ、と当時思っていたのは、
きっと、メーカーのNIKONだけであった事だろう。
なんだか、「SERIES E」の事を研究すればする程に、
当時のメーカー側の思惑と、消費者/ユーザー側の認識
との間に、物凄く大きな「ズレ」を感じてしまう。
まあでも、ネットもまだ無い時代だ、ユーザー側からの
意見を収集する術(すべ)も殆ど無い。
まあつまり、「マーケティング/市場調査」が、まだ
未成熟な時代であったのだろう、両者の認識が「ズレ
まくっていた」としても、やむを得なかった・・)

で、だから「安かろう、悪かろう」という訳でも無い。
過去から現代に至るNIKONの「仕様的差別化」戦略は
個人的には、あまり賛同できるものでは無いのだが、
幸いにして、NIKONのレンズに関しては、低価格帯商品
でも、あまり性能に手を抜いていない事が判明している。
それは、この時代の「SERIES E」もそうだし、後年、
2010年前後の数本のエントリーレンズ(例:DX35/1.8)
も、そうである。


本E35/2.5においても、NIKONでは珍しい低価格帯レンズ
でありながら、外観のチープさ以外での大きな欠点は
見当たらず、描写力についても、若干のボケ質破綻傾向
(上写真が一例)を除き、大きな問題点は無い。

よって、NIKON製レンズの中では珍しく、コスパが
極めて良い製品となり、個人的な総合評価も高くなって、

それ故に、本「B決勝戦」に、本レンズがノミネート
されている次第である。
まあ、「B優勝」までは行かなくとも、高い最終順位が
予想される名オールドレンズである。

現代では本レンズはセミレア品となって、中古市場では
殆ど見かけない、まあ、銀塩時代でのユーザー心理は
「安いNIKON製品は、いらないよ」であったから、
あまり販売数(流通数)が多く無いのだと思われる。


でも、皆無という訳ではなく、何年かに一度程度、
ひょっこりと本レンズの中古が市場に出回るケースも
見てきている。無理をして探すべきものでは無いが、
偶然見かけて、安価であったら購入検討の余地はある。

---
次いで、3本目の35mmレンズ。
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レンズ名:中一光学 SPEEDMASTER 35mm/f0.95 Ⅱ
レンズ購入価格:63,000円(新品)
使用カメラ:SONY α6000(APS-C機)

2016年発売の、中国製の超大口径MF標準画角レンズ。
(注:APS-C機専用)

これ以前に初期型(Ⅰ型、MITAKON銘もある)があった
模様だが、国内には殆ど流通していない。その理由は
中一(ちゅういち)光学が日本市場に本格参入する
以前の時代の商品であったからだろう。

(なお、中一光学は、30年以上の老舗メーカーと聞く)

で、本Ⅱ型になって、大幅な小型軽量化を実現したとも
聞くのだが、初期型を見た事が無いので比べようも無い。
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購入価格が若干高価なのだが、これでも「超大口径」
(私の定義では、開放F値が1.0以下のレンズの事)
レンズとしては安価な方である。
「超大口径」は、ユーザー層も少なく、中古市場に
出廻る事も少ないので、欲しかったら、新品で買うか
又は、とても気長に、中古の出物を待つしか無い。

ただ、注意点としては、ビギナー層が考えるように
「F0.95といったら、どんなに凄い写りで、どんなに
 凄いボケが出るのだろう?」という点への期待は、
ほどほどにしておいた方が良いと思う。

その事の詳細は、とても長くなるので本記事では
割愛するが、それでも興味があれば、
「特殊レンズ超マニアックス第25回、超大口径編」
等の過去記事を参照してもらえれば良いであろう。

まあ、簡単に言えば、「解像感が低く、ボケボケで、
たいした写りでは無い」というのが実際の所である。
(追記:2020年発売のNOKTON 60mm/F0.95
は、相当に解像感が向上している。→後日紹介予定)

ただまあ、そういう描写力の弱点を棚に上げたとして、
超大口径レンズでしか得られない、独特の雰囲気・表現
が得られる、という点は、大きな長所である。

それ(雰囲気)を文章で説明するのはとても難しいが、
まあ、簡単に言えば、「肉眼で見ているものは背景が
ボケては見えないが、超大口径で撮ると、あらゆる
対象にボケの立体感がつき、肉眼で見るのとは、まるで
別の雰囲気(世界観)となる」という感じだろうか・・

で、この特徴が活用できるか否かで、超大口径レンズの
評価は大きく変わってくる。普通に撮ったら、球面収差
を初め、諸収差のオンパレードで、酷い低描写力だ。

でも、私のレンズ評価においては、「描写力」では無く
【描写表現力】という複合評価項目となっているので、
多くの超大口径レンズの、その項目評価点は悪く無い。
例えば国産超大口径NOKTON 42.5mm/F0.95あたりは
その特徴が最も顕著に出るレンズだから「描写表現力」
は5点満点評価だ。
しかし、もしこれを「描写力」だけで見てしまうと
標準の3点にも満たず、良くて2.5点程度の評価だろう。

本レンズSPEEDMASTER35/0.95の「描写表現力」の
評価点は4.0点だ。つまり、NOKTON42.5/0.95程の
独特の「世界観」を表現する事は難しい、という意味だ。

両者の何処に差があるか?と言えば、焦点距離の差と
最短撮影距離の差により、本レンズでは、あまり多大な
(背景)ボケ量(≒浅い被写界深度)が得られない、
という点である。
_c0032138_16340609.jpg
ただまあ、とは言え本レンズは、安価な類の超大口径
であるし、仕様上からも、一般レンズと、取り回しや
撮影技法上での差異を考慮する必要は、あまり無い。

すなわち「超大口径」の入門用としては適正なレンズ
であると言えよう。

誰にでも推奨できるレンズとは言い難いが、中級マニア層
以上で、興味と予算があれば、買ってみても悪くは無い。

---
では、4本目の35mm(級)レンズ。
_c0032138_16342229.jpg
レンズ名:CANON EF40mm/f2.8 STM
レンズ購入価格:12,000円(中古)
使用カメラ:EOS 7D(APS-C機)

2012年発売の単焦点AFパンケーキ(薄型)レンズ。
(注:フルサイズ対応)
本レンズは35mm丁度では無く、少し外れた40mmだ。

一眼レフ用としては、かなり新しい時代のパンケーキ型
レンズであり(注:パンケーキ(薄型レンズ)が各社から
発売されていたのは、銀塩MF時代の1970年代前後である)
また、CANONとしては史上初のパンケーキレンズだ。

その歴史的な価値を鑑みて本レンズを購入したのだが、
正直言って、歴史的価値以外は、あまり大きな特徴を
持つレンズでは無い。まあ、これは銀塩時代のMF
パンケーキも同様であり、外観の格好良さ以外では、
基本的には、描写力とか性能を、とやかく言う類の
製品では無い訳である。
_c0032138_16342234.jpg
外観の格好良さを強調する為には、母艦となるカメラは
出来るだけ大型のカメラが望ましい。これにより大きな
カメラに、ちょこんと薄型レンズが付いているだけの
状態となり(これを「大小効果」と本ブログでは呼ぶ)
これがマニア層には「格好良く見える」という次第だ。

だが、それが格好良く思えるかどうかは、個人差および
志向性(価値感覚)の差異がある。

個人差はさておき、「志向性の差異」の例を挙げれば、
銀塩時代のパンケーキが不人気であった最大の理由は、
当時のカメラは高額であり、そのオーナーは経済力等の
ステータスを誇示する傾向にあった。つまり高い商品を
買える事を「周囲に自慢したい」訳である。

なので、そうしたユーザー層は、大型カメラに大型の
レンズを付け、「どうだ、凄いだろう!」と周囲を威圧
する事が、1つの志向性として確実に存在していたのだ。

そういうユーザー層に、パンケーキを見せたとしても
「そんな薄っぺらな貧相なレンズはいらんよ、格好悪い!」
(すなわち、周囲に自慢できない)という心理が出てくる。
つまらない話だが、これが銀塩パンケーキが初出時に
不人気であった最大の理由だ、と分析している。

この話は、現代のユーザー層の感覚では、わかりにくい
かも知れない、すなわち、誰でもカメラなんぞは買う事が
出来るし、多少高いカメラを持っていても、それで周囲に
自慢するような事も、まず無い(出来ない)からだ。

しかし、現代のユーザー層の中でも、シニア層等では、
その1970年代くらいでの、高度成長期の感覚をそのまま
持ち続けている、つまり「お金持ちは偉い、尊敬される」
という感覚だ。

だから、多くのシニア層は、現代においても非常に高価な
機材を欲しがる。周囲からは奇異の目で見られたとしても、
本人は、いたって普通の感覚だ、と思っているし、それが
自己満足にも繋がっているのだから、外からの目と内面の
心理は大きく乖離している状態だ。


・・さて、また余談が長くなった。
現代においては、所得水準が高まり、世にモノが溢れ、
ユーザーのニーズも大きく多様化している、だから、
「パンケーキという選択」も、「一つのファッション」
として、十分ありな訳だ。


もっとも、ベテランマニア層からすれば、パンケーキの
ブームは、1990年代後半に一度経験している。


その時代、既に生産中止となって希少となった、銀塩MF
パンケーキが「格好良い」となって、多くのマニア層が
必死でそれらを買い求めた訳だ。で、希少なモノを皆が
欲しがれば、当然ながら投機的要素が加わり、中古相場は
際限なく上昇。描写力の面から言えば何の長所も無いような
パンケーキが10万円を超える高額相場で取引されるように
なれば、多くのマニア層も「馬鹿馬鹿しくて、つきあって
られないよ・・」という事態となり、ほどなくして
パンケーキブームは急速に終焉した歴史がある。

私の場合は、パンケーキブーム以前に、超レア品を除き、
ほぼ全てのパンケーキを所有していたので、幸いにして
高額相場で、それらを買うような被害には合わなかった。
しかし、多くのマニア層は、その時代に無駄な買い物を
してしまった事であろう。後年になって「不要だから」
と、売却しようとしても、購入時価格から比べれば、
まさに二束三文となっていたからだ。


だから、そういう層は、本レンズEF40/2.8のような
新製品を見たとしても「またパンケーキかい? もう
こりごりだよ・・」という感覚しか持たないかも知れない。
_c0032138_16342257.jpg
ただまあ、弁護をするならば、本EF40/2.8は、銀塩時代
のパンケーキとは全くの別物だ。フルサイズ対応は勿論、
AF搭載、ステッピングモーター内蔵、4群6枚構成、
円形絞り、最短撮影距離は30cmと高性能で銀塩パンケーキ
の約半分である。そしてCANONでは初のパンケーキだ。
さて、これでも「もうこりごりだよ」と言えるだろうか・・?

---
さて、5本目の35mmレンズ。
_c0032138_16342820.jpg
レンズ名:LENSBABY Burnside 35 (35mm/f2.8)
レンズ購入価格:34,000円(中古)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)

2018年に発売された米国製のフルサイズ対応MF単焦点
準広角「ぐるぐるボケ」レンズである。
_c0032138_16342826.jpg
これの説明をしだすと、いくら記事文字数があっても
足りない。残念だが本記事では詳細を割愛する事とし、
興味があれば、レンズ・マニアックス第37回記事
「特集・ペッツヴァール対決」(予定)あたりを参照
してもらえれば(本レンズはその記事に載っていないが)
「ぐるぐるボケ」について詳細が書いてある。

まあ、簡単に言えば「ボケがぐるぐると廻って見える」
というレンズなのだが、そのコントロールは意外にも
超高難易度である。

すなわち、本レンズや、ペッツヴァール、Twist等の
ぐるぐるボケ専用レンズを使ったとしても、常に
「ぐるぐるボケ」が出る訳でも無い。

「ぐるぐるボケ」を出すには、まず被写界深度が浅い
状態を作り、かつ、ぐるぐるボケになりやすい背景を
選択する。
ここまでの段階においても、もう初級者層ではお手上げ
であろう。中上級者層であれば、上記までは出来ると
思うが、さらに言えば、そこから「ぐるぐるボケ」を
自在に制御する事は、大変難しい。

まあ、「ボケ質破綻回避」の、まるっきり逆の措置をやる
必要があるが、「ボケ質破綻回避」ですら、初級中級層
では、まず不可能な高度な技法であるし、その上を行く
「ぐるぐるボケ」のコントールは、さらに神技級だ。

世にある「ぐるぐるボケ」の作品や作例は、そこまでの
神技を使って撮ったものだとは到底思えず、まあ膨大な
量の試行錯誤の撮影から、たまたま上手く「ぐるぐる
ボケ」が出ているものを選んでいるのだろう。
_c0032138_16342813.jpg
その原理も、撮影技法も、超難解なレンズであるので、
上級マニア層以外には、完全に非推奨なレンズである。

----
次は本記事ラストの35mmレンズだ。
_c0032138_16343462.jpg
レンズ名:OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/f3.5
Macro
レンズ購入価格:22,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

2016年発売のμ4/3専用AF単焦点標準画角マクロレンズ。
1.25倍(フルサイズ換算2.5倍)の最大撮影倍率を誇るが、
そこは、あまり要点では無い。

_c0032138_16343412.jpg
このマクロは、なかなかの高描写力であり、新品・
中古価格もさほど高価ではなく、コスパがとても良い。


だが、例えば「B決勝(第1回戦)」で登場したマクロの
HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited
と比較すると、本レンズの実用性はかなり低くなる。

具体的には、MFの操作性だ。
無限回転式ピントリングの本レンズでは、近接撮影で
必須のMF操作にまるっきり向いていない。

他には本レンズには弱点は無いので、以下の文章は全て、
本件への「苦言」としておこう(汗)


で、いったい何故、ミラーレス機用の普及レンズは各社
おしなべて無限回転式ピントリングであるのだろうか?
MFを使わせないようにする方針(意地悪!?)なのか? 
であれば、カメラのAF精度を今の技術水準の10倍以上も
高めて貰わないと、近接撮影時には使い物にならない。

まあ、「無限回転式ならばシームレスMFが実現するから」
が理由だと思うが、停止感触が無いMF操作では、中高度な
MF技法が実現できない。具体的には、最短撮影距離と
無限遠でヘリコイドが停止しないと、あるいはカメラの
電源投入前での事前ピントリング操作が不可能であると
MF技法的には、全く向かない訳だ。


こんな事は、写真教室等の初級コースでも習う事だが、
今時の開発技術者や企画エンジニアは、初級レベルの
撮影技法すら持っていないのだろうか? あるいは
自社のカメラやレンズ製品で、写真など1枚も撮らない
のではなかろうか?

・・さもなければ、こういう有り得ない仕様は、マクロ
レンズとして成り立たない事は、ちょっと実際の撮影で
試してみれば、初級者ですら簡単に気づく事である。

・・まあ良い、この課題は、購入前からわかっていて
覚悟の上での購入である。
ただ、他のミラーレス機等用の、(AF)レンズは、
例え同様な仕様であったとしても、マクロレンズでは
無い場合、同じ問題点は、さほどの致命的な欠点には
ならなかった状況だ。

しかし、本レンズをミラーレス機用のマクロとして
初めて購入した際、その、「想像を超えるレベルでの
実用性の低さ」に、驚くとともに、ある意味、あきれて
しまった訳だ。 
つまり「何もわかっていないで、レンズを作っている!」
そして「誰もその問題点を指摘しない!」という
業界や市場全体における不条理さ、にである。

繰り返すが、描写力は悪いレンズでは無い。
もし、どうしようも無いレンズであったら、わざわざ
本「B決勝」にノミネートする筈も無い。
不満な点は、ただ1つ、「MF性能」のみである。
_c0032138_16343452.jpg
「MF性能」の弱点は、本レンズで実際に屋外マクロ(近接)
撮影をしてみれば、誰にでも30分以内に簡単にわかる事だ。
AFでは精度が出ない精密ピント合わせ撮影では、MFを
使うしか無いではないか!? まあピーキングが出るので
MFが全く不可能という訳では無いのだが、撮影効率が著しく
低下してしまう。

「構えてから数秒以内に撮る」という大原則は、単に私が
せっかちなのが理由ではなく、例えば、目の前で素早く動く
昆虫等では、本当に1秒以下の早撃ちをしないと間に合わない
場合すら多々ある。そして、昆虫に限らず、あらゆる被写体
で、ピント合わせにモタモタしていれば、様々な撮影機会を
完全に逃してしまう。

・・なんだか、下手をすれば、誰も、本レンズで実際に
近接撮影をした事が無いのではなかろうか??
あるいは、写真を1枚撮るのに、何分もかかってしまい、
その遅さを容認できる超初級レベルの人しか、本レンズ
を使っていないのであろうか? ・・どうにも理解出来ない。


本レンズ以外にも、「無限回転式ピントリング、かつ
距離指標無し」という近代マクロレンズを、他社製を含め
計3本所有している。しかし当然ながら、どれもMF操作性
上の重欠点を持ち、マクロレンズとしての実用性が皆無だ。
なので、「もう二度と、無限回転式ピントリングの
マクロレンズを購入しない」と固く決めた。


余談だが、電子接点付きの新鋭MFレンズを、量販店の
お抱え評論家が、「ピントリング連動自動拡大モード」
で使用していたレビュー記事を読んだ事がある。
そんな設定では全体構図の確認も出きず、「正しいMF技法」
には全くならない事は、言うまでも無い。
なんだか専門評価者でさえも、常にAF頼みで、初級MF技法
すら使いこなせない世情に、とてもがっかりした次第だ。


参考関連記事:
匠の写真用語辞典「第11回、第12回記事」
<MF技法・MF関連>Part1~Part2



---
さて、ここまでで「35mm編B決勝(2回戦)」は終了だ。

個人用レンズ評価データベースを参照し、一応だが、この
6本のレンズに順位をつけておこう。順位決定手法は色々と
あり得るが、あくまで総合(平均)評価点のみでの、順位
(ランキング)決定だ(=今回は特別加点は無しとする)


1位:3.9点:LENSBABY Burnside 35/2.8
2位:3.8点:中一光学 SPEEDMASTER 35/0.95
3位:3.8点:NIKON E 35/2.5
4位:3.6点:OLYMPUS M.Zuiko 30/3.5
5位:3.4点:SIGMA EX 30/2.8
6位:3.1点:CANON EF40/2.8

1位と2位は、かなりの「特殊レンズ」である。
マニアック度とか、エンジョイ度の好評価により
高得点が得られた訳であり、あまり一般的なレンズだ
とは、とても言えない状況だ。

結局、3位のE35/2.5が、オールドレンズながら
通常の35mmレンズとしては最も高得点であった次第だ。


4位のMZ30/3.5は「無限回転式ピントリング」の
課題さえ無ければ、このカテゴリーで、1位にもなれた
かも知れないのに、惜しい限りである。
5位、EX30/2.8は、コスパがとても良い長所はあるが、
スペック的には平凡である。
6位のパンケーキは、まあユーザーにより好き嫌いが
あるだろう・・ という感じである。

---
さて、ここまでで「最強35mmレンズ選手権」における
「B決勝(2)」の記事は終了だ。
次回の本シリーズ記事は「35mm決勝戦」となる予定。

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