Quantcast
Channel: 【匠のデジタル工房・玄人専科】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

ミラーレス・マニアックス(26)

$
0
0

安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズでコスパの
良いアダプター遊びを楽しむシリーズ記事、第26回目。

まず、このシステムから。

c0032138_1951986.jpg

カメラは SONY NEX-3、NEXシリーズの初号機であり、
現在では1万円以下で中古が入手できる。
アダプター使用時のMF操作系等に多少の課題を持つ為、
MFレンズ使用時は、Eマウントのトイレンズ母艦として
用いる事が多い。

レンズは、SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8 である。
出自の詳細は不明であるが、銀塩AF時代の初期のものだ、
恐らくは、前記事第25回で紹介したSIGMA Macro 50/2.8
と同時代の1990年頃の製品であろう。
ⅡがあるならⅠもあるのか?と言うと、どうも見た事が無い、
推測だが、Ⅰ型は、MF時代の同スペックのレンズを指すの
ではなかろうか?

なお、MF時代のSIGMAは、TAMRONのアダプトールとは
異なり、マウントは固定式だ(当時は有償交換が効いた模様だ)
AF時代のものも、マウントは固定式、本レンズはNIKON F
マウント仕様となっている。
c0032138_195231.jpg

ニコンAFマウントだったら、ニコンのデジタル一眼で使えば
良いではないか?というのは、それはその通りである。
わざわざ AFが効かないミラーレス機+アダプターで使う
必然性は少ない。

ただ、このミラーレス・マニアックスのシリーズ記事の
コンセプトの1つには「コスパ」という概念があり、
安価なシステムで無いと意味が無いという事がある。
(さらに言えば、カメラの価格はレンズを大きく上回っては
ならないというルールを、このシリーズ記事では設けている)

まあ、ニコンのデジタル一眼でも、D70クラスであれば
1万円前後で中古購入できるのだが、NEX-3の方がやや
安価な相場であろう。そして、このレンズには絞り環があるので
アダプターで使用した場合でも、AFが使えない事以外には
操作性の上では何も問題が無い。

で、値段以外にも、MFシステムとしてこのレンズを使うには
理由がある。
c0032138_19525380.jpg

このレンズの最短撮影距離の短さである。
18cmという最短撮影距離は、24mmの焦点距離のレンズとしては
かなり短い方である。このレンズの後継機である、AF24mm/f1.8
も18cmであったのだが、両者の撮影倍率は何故か異なる模様だ。

なお、これより寄れる24mmとしては、第16回記事で紹介した
SIKKOR(サイコール) 24/3.5が 16cmと文字通り最高だ。
(ただ、このレンズは描写力に問題有りで、実用的では無い)

で、広角レンズで「寄れる」という事は、極めて重要な性能だ、
すなわち広角で寄って撮影することで、アングルや構図、
作画表現等の自由度が格段に高くなるからだ。

そうした使用方法の場合は、AFは実質的には使えず、MFが
殆どの撮影になる。なので、今回は、AFレンズであっても
MFで使う事を前提で、あえてアダプターで使用している。
c0032138_19535521.jpg

SIGMA AF24/2.8の描写力であるが、まあ並み、という感じで
あろうか。ボケ質はさほど悪くはなくボケ質の破綻も少ないが
逆光に弱く、すぐにフレアっぽくなる。
この点、同時代のSIGMAでは、28mm/f1.8(EX DGになる前の
型)の方が描写力に優れ、銀塩AF時代においては、F4などの
AF機には、もっぱら28mmの方を使っていた、またニコンマウント
で言えば、MFの Ai 24mm/f2がなかなか優秀だったので
このSIGMA AF24/2.8の出番はあまり無かった。

ちなみに、NIKON F4だが、MFレンズ,AFレンズの共通母艦と
して銀塩時代はかなり重宝したカメラであった。
大きく重く、しかも高価であったが、値段だけ見れば、デジタル
時代の今は、中古がとてつもなく安価になっている、
まあ、今更フィルムで撮る事はまず無いと思うが、もし銀塩機を使って
みようとしたらF4や、PENTAX LX,CANON New F-1あたりの各社
フラッグシップを狙うべきであろう、これらは、ノスタルジーのみならず、
基本性能や感触性能の高さが非常に魅力的だからだ。

で、SIGAM AF24/2.8の逆光問題だが、後継機のAF24/1.8も
やはり逆光には弱い。けど、後者は、フレアよりもゴーストが
発生しやすい、そしてゴーストはまだ作画表現に使う事が出来る
ので、フレアが出るよりましだと思う。
まあでも、AF24/1.8はこのレンズに比べてかなり大きくなって
しまったので、本レンズのコンパクトさは1つの長所とも言える。
(いずれAF24/1.8も本シリーズで紹介するとしよう)

本レンズの購入価格は、1990年代に12000円程であった、
これはまだ発売後間もない事もあってだったが、性能から考えると
ちょっと高すぎたと思う。まあ、価値的には6000円位が妥当な
感じであろうか?そして、現代においては、どうしても必要な
レンズと言う訳では無いであろう。これを買うのであれば、
AF24mm/f1.8が後継機のA24mm/f1.4に切り替わるために、
在庫処分状態になっているので、f1.8版を購入するのがベスト
だと思う。新型f1.4版は恐ろしく高価になっているし、f1.8版は
それなりに優秀なレンズだ。市場に無くなってから大騒ぎして、
高く買うと言った無駄な事をやらない為にも、まだ入手可能な
うちに、ちゃんとモノの価値を見極めて買うのが良いと思う。

さて、次のシステム
c0032138_19571870.jpg

カメラはお馴染み、アダプター母艦のDMC-G1である。
レンズは、オリンパス OM-SYSYTEM ZUIKO 50mm/f1.8だ。

準パンケーキ型のこの標準レンズは、OMシステムのレンズ群
の中では、最もコスパが高いレンズと言えるのではなかろうか?

このレンズは銀塩時代から使っていたのだが、f1.4とf1.2の
標準レンズを買い足した為、一度、f1.8版は友人に譲渡して
しまった、けど、どうもこちらのf1.8版の方が大口径版より
優秀なような気がして、近年、ジャンクレンズとして出て
いたものを再度購入した次第である。
c0032138_1958280.jpg

あ~、しかし問題発生。

逆光状態で、通常では考えられないほどフレアが出る。
これは、すなわちレンズにカビが発生しているのだ。

明るいところへレンズをすかして見るが、良くわからない。
なので、今度はレンズをボディにつけて、上から反射で見る
すると、ありましたね・・レンズ内部の中央部にカビが繁殖
している(汗)

まあしかたない、このレンズはジャンクレンズであり、
購入価格は、わずかに1050円であった。
最初からカビが出ていたと思う。、まあ、買う時に気が
つかない訳でもなかったが、銘レンズであるOM50/1.8が
僅か1000円+税である、どんなに程度が悪くても買うべき
である事は間違いない。

カビレンズの撮影技法での対応は、本シリーズ第15回記事
でSIGMA 14/3.5 カビレンズの撮影でも述べている。
まあ、あまり酷くない場合は、ひたすら順光あるいは陽の
当たらない所で撮るわけである、これがさらに酷くなると、
逆光は勿論、順光でも、コントラストがやや怪しくなり、
陽の当たらない場所でしか撮れない日陰者(笑)のレンズ
になってしまう。
c0032138_2001042.jpg

本レンズの場合、まだ順光はセーフな模様だ。つまりさほど
カビの程度は酷く無いという事であろう。

まあ、沢山のレンズを使用していたら、いくら保管方法に
留意していても、全てが完全に良好な状況で使えるという
訳でも無い。カビているレンズも何本かあるし、絞りが
粘っていて動かないレンズもある、あるいは中古品で
前オーナーが落としたか、ぶつけたかして、光軸が曲がって
いるのではなかろうか?と疑われるレンズも何本かある。

まあそんなものだ、レンズを1本しか持ってなければちゃんと
修理して使うのが良いだろうが、多数ともなると、いちいち
気にして全部修理していたらキリが無い、故障レンズは、
それはそれで、使い道を考えて使えば良い訳だ。 

そしてそもそも、このシリーズ記事のコンセプトは、最高の
システムを求めるものではなく、レンズやカメラの欠点を
良く理解し、それを回避して使る事に面白さを感じ、また、
レンズとカメラの適正な組み合わせにより両者の欠点を相殺
して使うという考えもある。

お金にモノを言わせて、より良いシステムを求め続けるのは
不毛な努力だ、努力と言うよりは、浪費と言っても良いと思う。
いかに、安価でコストパフォーマンスの良いシステムを探す方
がずっと面白いのではなかろうか?
c0032138_2015790.jpg

しかし、ちょっとハイライト(光が当たっている部分)での
滲み(ハロ)が多い模様だ、これもカビが原因かも知れない。

本レンズの描写力については、このカビ状態なので、なんとも
言えない状況。まあ、本来であれば、とても良く写るレンズで
ある事は間違いない。
中古の玉数は比較的多く、相場は8000円程度だろうか。
性能からの価値的には、そのあたりの金額が妥当と思われる。

----
さて、次のシステム。
c0032138_2023271.jpg

カメラは LUMIX DMC-GF1 上のGiと同時期のカメラで、
EVFが無いバージョンだが、EVFが無いという事だけで、
アダプター母艦としての役割を与えることは、ほぼ不可能だ。
すなわちMFによるピント合わせに弱点を持つカメラという事だ。

しかし、現在の中古相場は恐ろしく安価で、6000円位から
入手できる。また、名レンズ G20/1.7とセットのGF1Cの
場合は、ほぼレンズの価格で購入する事ができ、つまり、
カメラの値段はゼロに近い、という状況だ。

仮にもミラーレス機が、数千円で買えるというのは、
ある意味驚きだ、銀塩時代の一眼レフはどんなに安価な
中古カメラであっても、2~3万円はしていたのを考えると、
何故こんなに安いの?と思ってしまうし、中古販売店も
(相場が極端に下落する為)在庫を持つのも大変であろう・・

で、使えないカメラだから安い、というのもあまりに単純
すぎる結論であろう。欠点があるのであれば、それを欠点と
しない使い方をすれば良い。
最も簡単な解決方法は、AFの小型レンズをつけることだ、
だが、それだと当たり前なのであまり面白くない、そこで、
このGF1は、マイクロフォーサーズマウントのトイレンズ母艦
としている次第だ。

という事で、レンズは、LOMO 24mm/f8 である。
トイレンズ3本セットの1本であり、他のレンズ、すなわち
魚眼と12mmは、各々第15回、第7回記事で紹介している。
詳細は重複するので割愛するが、3本で新品定価9000円
程度と、安価なトイレンズセットとなっている。

写りだが、そもそもトイレンズであるから、描写力は期待
できない、というか、トイレンズは「酷い写り」を目的として
使うものであるから、あまりちゃんと写ってもらっても
困るわけである(笑)

そして、トイレンズは,、通常は、ちょっと広角気味の方が
楽しい、何故ならば、周辺光量落ち(ヴィネッティング)の
効果が良く出るからだ。

しかし、本レンズは、24mmであり、マイクロフォーサーズ機に
装着すると、48mm相当と標準画角である。こうなると画角的に
あるいはトイレンズ的効果の少なさなど、一般的な撮影スタイル
に近くなってくるので、トイレンズ的な用途と一般レンズの
中間くらいで考えておけば良いかもしれない。
c0032138_2054491.jpg

わずかに周辺光量落ちがあるが、あまり目立たない。
そして、写りもトイレンズっぽくなく、なんとなくフツーに
写ってしまう。
やはりトイレンズもどきという感じか、これは困ったものだ、
もっと酷い写りを期待しているのに、普通に写るとは・・(笑)
c0032138_206371.jpg

周辺光量落ちの他、トイレンズの要素(特色)としては、
ピント(解像力)の甘さ、色味の不自然さ(トーンブレイク)
シェーディング(明るさの変化)、収差(画像の歪み等)が
あるのだが、いずれもこのレンズに関しては控えめである。

まあ、この日は曇りで、したがって、あまり極端な逆光条件では
使っていないので、フレアやゴーストに関してはあまり出てない。
逆光で使えば、もっと酷い写りになっただろうから、ちょっと
残念である(笑)

こういうレンズが一番困ると言えば困る、とても良く写ったり
とても酷く写るのであれば、まあ、それなりに考えて使いようが
あるのだが、この状況だと、極めて中途半端だ。
c0032138_206369.jpg

そして、本レンズの最短撮影距離は60cm、これは24mmレンズ
としては酷い性能である。本記事冒頭の SIGMA AF24/2.8が
18cmの最短撮影距離。と言っているのと比較して貰えれば
この酷さがわかると思う。 
あまりにも低い性能だからか、本レンズの製品紹介のHPにも
本レンズの最短撮影距離については、どこにも書かれていない、
セットになっている他のレンズについては書かれているのにも
かかわらず・・である。

しががって、近接撮影はまったく出来ないし、開放f値の暗さ
ともからんで、マクロ的、あるいは背景ボカし的な撮影は
一切する事ができないので、中遠距離でパチリとやるだけで
しかもトイレンズっぽく無い写りなので、すぐ飽きが来そうだ。

なお、バルブ撮影による多重露光、固定速度シャッター、
交換式カラーフィルターなど、いくつかの面白そうな機能は
あるのだが、いずれも使い勝手が面倒なので、今回は試して
いない。(というか、あまりそれらに興味を持てない・・)

そして、開放f8はさすがに暗い(ちなみに、本レンズは
絞り値を変えることはできない)
f8という数値であるが、たとえば一般的な大口径レンズで
ある開放f1.4級レンズと比較してみよう。

ある明るさの被写体を、同じISO感度で撮ったとする、
その時にf1.4レンズでのシャッター速度が1/125秒だったと
すると、f8レンズでは、1/4秒となってしまい、手ブレまたは
被写体ブレ必至だ。

ちなみに、こういう計算はどうやってやるかといえば、
「段数」で考えるのが簡便だ。

まず絞りの段数の差を考える、f8,f5.6,f4,f2.8,f2,f1.4
という数列だから、f8に対しf1.4は、5段明るい。

次はシャッター速度だ、同じく5段シフトすると、125,60,
30,15,8,4 となって、1/4秒である事がわかる。

これらの数値は、銀塩時代であれば、レンズに絞り値が書いて
あるし、カメラ本体にもシャッター速度のダイヤルが書いて
あったので、いつもそれを見ていれば、誰でも嫌がおうでも
覚えてしまったものだ。 

だが、現代のレンズに絞り値は書いていない(絞り環が無い)
そしてカメラ本体も、ごく一部の機種にしかシャッター速度
変更用ダイヤルはついていない。
カメラ内のファインダーやEVF,背面モニターなどでは
絞りやシャッター速度が表示され、勿論それを変更できるが、
ほとんどの初級カメラユーザーは、P(プログラム)オート露出
でしか撮影しないし、仮にそれを絞り優先などで調整する事が
出来るユーザーであっても、現代のカメラでは絞りの値は、
1段づつではなく、1/2段や1/3段刻みと細かいし、絞りに追従
して変化するシャッター速度も、1/2段や1/3段刻み、あるいは、
段数が定められていないで細かく設定されるカメラも多い。

そうなれば、こうした、カメラのごくごく基本である、絞りや
シャッター速度の数列を自然に覚えたり、露出の仕組みを
自然に理解したりする事は、現代のビギナーユーザーでは、
ほぼ絶望的ではなかろうか? 

これは、ちょっと、いや、「大問題」かも知れない。
「そんな事知らないでも写真は撮れる」と言う人も居るかと
思うが、それは大きな間違いだ、基本中の基本をわからずして
どんな良い写真が撮れたとしても意味が無い、これは写真に
限らず、スポーツでも料理でも楽器でも何でも、あらゆる分野
においも、基本をおろそかにする事は、絶対にご法度だ。

だいたい、露出、すなわち、絞りとシャッター速度とISO感度
の関係なんて、さほど難しい概念ではない、理科系の人ならば
ほんの数分、非理科系でも30分もあれば理解できる事であろう。
それを、なんやかんやと理由をつけて、理解しようとしない
(学ぶのを拒否する)事は、かなり困った状態ではある。

----
さて本レンズLOMO 24/8 についても、色々文句を書いているが、
まあ、3本セットでの販売なので、このレンズが気に入らない
からと言って、他のレンズだけを単品で買う訳にも行かなかった
訳だ。
まあ、この「使えない」レンズを、なんとか、使う目的(用途)
を見つけていくのも、また楽しいと思うので、いずれ何か思い
ついたら試してみるとするか・・

---
次は本記事ラストのシステム。
c0032138_20104417.jpg

カメラは、Eマウント最強の高度な操作系を誇る SONY NEX-7
レンズは、ロシアン・レンズの代名詞、Jupiter 9 である。

おまけにM42ヘリコイドアダプターを用いているので、
近接撮影、つまり「マクロジュピター」として利用できる。

写真はヘリコイドを伸ばした状態で、全体は200~300mm級の
MF単焦点望遠レンズ並みの長さとなるが、まあ、重量はさほど
でも無いので、持ち運びに苦労する事は無い。
c0032138_20112264.jpg

Jupiter 9とは、第二次大戦後、旧東独ツアイスの技術を
ベースに、ロシアにて改良(コピー?)されて開発された
レンズである。ベースとなったレンズは、カール・ツァイス
ゾナー85mm/f2であり、Jupiter 9も同様に85mm/f2の
スペックとなっている。

最初の製品の発売が恐らく1950年代、そこから様々なマウント
のバージョンが発売され、1970年代には、M42マウント化され
その後、長期にわたって販売されていた模様だ。

ちなみに、ジュピターというのは英語読みで、
ロシア語読みだと「ユピテル9」となる模様だ。

まあ歴史とか出自はどうでも良く、問題はその写りだ。
1990年代の銀塩時代、このレンズは、東京のロシアレンズ
専門店が輸入販売を行っていて、その定価は僅かに5000円
という破格値で新品販売されていた、当時は第一次中古カメラ
ブームであったので、多くのマニアがこの安価なレンズに
飛びついた。

そして、マニアの間では、様々な都市伝説のような、
奇妙な評価が、まことしやかに飛び交ったのであった。
A「もの凄く良く写る! ロシアレンズ、ハラショー(万歳)」
B「あたりハズレが酷い、ボクのレンズはダメだったよ」
C「逆光でゴーストが壮大に出る、舞台の照明でも出たよ・汗」
D「ゾナーと同じ写りだよ、これは凄い!」

まあ賛否両論あったが、共通しているのは「条件がハマると
凄い写りをする、しかもとても安い」という意見であった。

あまりに評価が高かったからか、このレンズの新品価格は
数年して、いっきに15000円まで値上げしてしまった。
中古相場も不規則に変動し、5~6000円の時もあれば、
12000円になった時もあり、場合により15000円を軽く
超えていた時すらあった(新品より高いではないか・怒!)

けど、今にして思う、本当にこのレンズは良く写るのだろうか?
様々な都市伝説が、このレンズを神格化してしまったのでは
なかろうか?と・・
c0032138_20133674.jpg

僅かに逆光気味になっただけで、フレアが発生しコントラストが
極端に低下する、まあ「逆光に弱い」というのは、このレンズの
正しい評価であろう。

ただ、ロシアンレンズの場合、全ての個体で同じ性能は保証
されない、工作精度がそこまで出ていないのだ。1本1本写りが
違うと言っても過言では無いし、もっと酷いことに、レンズと
カメラボディとの相性で、装着可であったり不可であったりする
場合すらあるのだ(汗)

前述の東京の専門店には数回行った事があったのだが、
その時、その店では、「手持ちのカメラボディを持ち込んで、
レンズを装着して、ちゃんと付くのを確認して購入する」
というルールがあったくらいである。

で、写りであるが、逆光のフレアよりも深刻な問題点がある。
それは背景ボケ質の破綻である。

上の写真を撮影する際、NEX-7の、EVFにしてはボケ質が
見分けやすい236万ドットファインダーで見ていて気になった
ので、絞りを何段階か変えて撮っている。

そして、Jupiter 9 の絞りは「プリセット方式」である、
もっとも、ミラーレス機で使う場合には、プリセット絞りは
銀塩時代での使い方はしない。
プリセット絞りは、本来は、絞り環を必要な絞り値まで絞り、
もう1つのリングで絞りを開放にし、そこでピント合わせをし、
その後、そのリングを絞り環でプリセットした絞り値まで
廻して測光(露出を合わせ)撮影するのだ。

これは、銀塩一眼(デジタル一眼でも)の光学ファインダーは、
絞り込むと、暗くなってピント合わせが困難になるからだ。

でも、ミラーレス機では、絞りを絞ってもEVFやモニターの
画像は暗くならない、これは撮像素子や画像処理エンジンが、
いつでも適正な露出値になるように、すなわち、映像を一定の
明るさになるように調整しているからだ。

ミラーレスでの適正なプリセット絞りレンズの操作は、絞り環を
最大絞り値まであらかじめ絞り込んでおき、もう1つのリングを
微調整して絞りの替わりにするのだ。この方法により、あたかも
そのリングが絞り環と同じ感覚で操作する事ができる。
ただし、そのリング(OPEN/CLOSEリング)は、クリックストップ
が無いため、連続的に絞り血は変化する、そして、その時の
絞り値の具体的数値は知るよしが無い。

この機構の為、一般にプリセット絞り型のレンズの絞り羽根の
枚数は非常に多く、数え切れない程である。
このJupiter 9も例外ではなく、沢山の絞り羽根がほぼ円形に
絞り込まれていく様子は見ていて綺麗でもある。

だが、絞り羽根が多いという事と、ボケ質が良好であると
言うことはイコールでは無い。
Jupiter 9で特に気になるのは、木漏れ日などを背景にした
際に、ボケ質破綻が目立つことだ、絞り羽根が多いので、
ボケの円形形状は確保されるのだが、そもそもボケの線が汚い。

で、もう1つ問題が出た、それはレンズ自身の問題ではないが、
ヘリコイドアダプターの精度か?、Jupiter 9との相性か?で、
無限遠が完全に出ていない気がする。

NEX-7のピーキング機能はそこまで厳密な精度は無い、
ただ、感覚的には、20mくらいのところで遠景ピントが頭打ちだ、
恐らくヘリコイドがほんのコンマ何mmか長い(繰り出している)
のであろう。まあいい、無限遠撮影はあまり無いし、その時は、
わずかに絞りを絞れば被写界深度が深くなり大丈夫そうだ。
c0032138_20192323.jpg

ボケ質の破綻と逆光の問題、私は、このレンズは1990年代に、
それこそ新品5000円の時代に購入し、もう20年以上も使って
いるレンズなので、弱点も良くわかっている、まあ、欠点が
出てヤバそうな被写体は撮らない事がベストの対応だ。

つまり、レンズのコスパは極めて良いが、巷で言われている
ほど神格化されるようなスーパーレンズではなく、使い方を
かなり限定するレンズであるという事だ、その結果、撮れる
被写体条件にも制限が出て、やもするとストレスとなる。

なのでまあ、こういった場合は、複数の異なるカメラシステム
を持ち出しているので、被写体の条件にあった方のシステムを
使うという事になる、このため、2台ないし3台のシステムは
各々のカメラ・レンズの性能や特徴を熟知して使うことになり、
レンズの焦点距離など結局どうでも良く、たとえば全て同じ
焦点距離(画角)のレンズをつけていても良いくらいなのだ、
カメラやレンズの性格(特徴・性能)により、同じ焦点距離
のレンズでも、どちらを被写体に向けるかが決まるという事だ。
c0032138_20203090.jpg

さて、もう少しJupiter 9については言いたい事があるが、
もう記事文字数が限界だ、いずれまた本レンズを持ち出して
続編を書いてみるとしようか・・

Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>