安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズでコスパの
良いアダプター遊びを楽しむシリーズ記事、第26回目。
まず、このシステムから。

カメラは SONY NEX-3、NEXシリーズの初号機であり、
現在では1万円以下で中古が入手できる。
アダプター使用時のMF操作系等に多少の課題を持つ為、
MFレンズ使用時は、Eマウントのトイレンズ母艦として
用いる事が多い。
レンズは、SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8 である。
出自の詳細は不明であるが、銀塩AF時代の初期のものだ、
恐らくは、前記事第25回で紹介したSIGMA Macro 50/2.8
と同時代の1990年頃の製品であろう。
ⅡがあるならⅠもあるのか?と言うと、どうも見た事が無い、
推測だが、Ⅰ型は、MF時代の同スペックのレンズを指すの
ではなかろうか?
なお、MF時代のSIGMAは、TAMRONのアダプトールとは
異なり、マウントは固定式だ(当時は有償交換が効いた模様だ)
AF時代のものも、マウントは固定式、本レンズはNIKON F
マウント仕様となっている。

ニコンAFマウントだったら、ニコンのデジタル一眼で使えば
良いではないか?というのは、それはその通りである。
わざわざ AFが効かないミラーレス機+アダプターで使う
必然性は少ない。
ただ、このミラーレス・マニアックスのシリーズ記事の
コンセプトの1つには「コスパ」という概念があり、
安価なシステムで無いと意味が無いという事がある。
(さらに言えば、カメラの価格はレンズを大きく上回っては
ならないというルールを、このシリーズ記事では設けている)
まあ、ニコンのデジタル一眼でも、D70クラスであれば
1万円前後で中古購入できるのだが、NEX-3の方がやや
安価な相場であろう。そして、このレンズには絞り環があるので
アダプターで使用した場合でも、AFが使えない事以外には
操作性の上では何も問題が無い。
で、値段以外にも、MFシステムとしてこのレンズを使うには
理由がある。

このレンズの最短撮影距離の短さである。
18cmという最短撮影距離は、24mmの焦点距離のレンズとしては
かなり短い方である。このレンズの後継機である、AF24mm/f1.8
も18cmであったのだが、両者の撮影倍率は何故か異なる模様だ。
なお、これより寄れる24mmとしては、第16回記事で紹介した
SIKKOR(サイコール) 24/3.5が 16cmと文字通り最高だ。
(ただ、このレンズは描写力に問題有りで、実用的では無い)
で、広角レンズで「寄れる」という事は、極めて重要な性能だ、
すなわち広角で寄って撮影することで、アングルや構図、
作画表現等の自由度が格段に高くなるからだ。
そうした使用方法の場合は、AFは実質的には使えず、MFが
殆どの撮影になる。なので、今回は、AFレンズであっても
MFで使う事を前提で、あえてアダプターで使用している。

SIGMA AF24/2.8の描写力であるが、まあ並み、という感じで
あろうか。ボケ質はさほど悪くはなくボケ質の破綻も少ないが
逆光に弱く、すぐにフレアっぽくなる。
この点、同時代のSIGMAでは、28mm/f1.8(EX DGになる前の
型)の方が描写力に優れ、銀塩AF時代においては、F4などの
AF機には、もっぱら28mmの方を使っていた、またニコンマウント
で言えば、MFの Ai 24mm/f2がなかなか優秀だったので
このSIGMA AF24/2.8の出番はあまり無かった。
ちなみに、NIKON F4だが、MFレンズ,AFレンズの共通母艦と
して銀塩時代はかなり重宝したカメラであった。
大きく重く、しかも高価であったが、値段だけ見れば、デジタル
時代の今は、中古がとてつもなく安価になっている、
まあ、今更フィルムで撮る事はまず無いと思うが、もし銀塩機を使って
みようとしたらF4や、PENTAX LX,CANON New F-1あたりの各社
フラッグシップを狙うべきであろう、これらは、ノスタルジーのみならず、
基本性能や感触性能の高さが非常に魅力的だからだ。
で、SIGAM AF24/2.8の逆光問題だが、後継機のAF24/1.8も
やはり逆光には弱い。けど、後者は、フレアよりもゴーストが
発生しやすい、そしてゴーストはまだ作画表現に使う事が出来る
ので、フレアが出るよりましだと思う。
まあでも、AF24/1.8はこのレンズに比べてかなり大きくなって
しまったので、本レンズのコンパクトさは1つの長所とも言える。
(いずれAF24/1.8も本シリーズで紹介するとしよう)
本レンズの購入価格は、1990年代に12000円程であった、
これはまだ発売後間もない事もあってだったが、性能から考えると
ちょっと高すぎたと思う。まあ、価値的には6000円位が妥当な
感じであろうか?そして、現代においては、どうしても必要な
レンズと言う訳では無いであろう。これを買うのであれば、
AF24mm/f1.8が後継機のA24mm/f1.4に切り替わるために、
在庫処分状態になっているので、f1.8版を購入するのがベスト
だと思う。新型f1.4版は恐ろしく高価になっているし、f1.8版は
それなりに優秀なレンズだ。市場に無くなってから大騒ぎして、
高く買うと言った無駄な事をやらない為にも、まだ入手可能な
うちに、ちゃんとモノの価値を見極めて買うのが良いと思う。
さて、次のシステム

カメラはお馴染み、アダプター母艦のDMC-G1である。
レンズは、オリンパス OM-SYSYTEM ZUIKO 50mm/f1.8だ。
準パンケーキ型のこの標準レンズは、OMシステムのレンズ群
の中では、最もコスパが高いレンズと言えるのではなかろうか?
このレンズは銀塩時代から使っていたのだが、f1.4とf1.2の
標準レンズを買い足した為、一度、f1.8版は友人に譲渡して
しまった、けど、どうもこちらのf1.8版の方が大口径版より
優秀なような気がして、近年、ジャンクレンズとして出て
いたものを再度購入した次第である。

あ~、しかし問題発生。
逆光状態で、通常では考えられないほどフレアが出る。
これは、すなわちレンズにカビが発生しているのだ。
明るいところへレンズをすかして見るが、良くわからない。
なので、今度はレンズをボディにつけて、上から反射で見る
すると、ありましたね・・レンズ内部の中央部にカビが繁殖
している(汗)
まあしかたない、このレンズはジャンクレンズであり、
購入価格は、わずかに1050円であった。
最初からカビが出ていたと思う。、まあ、買う時に気が
つかない訳でもなかったが、銘レンズであるOM50/1.8が
僅か1000円+税である、どんなに程度が悪くても買うべき
である事は間違いない。
カビレンズの撮影技法での対応は、本シリーズ第15回記事
でSIGMA 14/3.5 カビレンズの撮影でも述べている。
まあ、あまり酷くない場合は、ひたすら順光あるいは陽の
当たらない所で撮るわけである、これがさらに酷くなると、
逆光は勿論、順光でも、コントラストがやや怪しくなり、
陽の当たらない場所でしか撮れない日陰者(笑)のレンズ
になってしまう。

本レンズの場合、まだ順光はセーフな模様だ。つまりさほど
カビの程度は酷く無いという事であろう。
まあ、沢山のレンズを使用していたら、いくら保管方法に
留意していても、全てが完全に良好な状況で使えるという
訳でも無い。カビているレンズも何本かあるし、絞りが
粘っていて動かないレンズもある、あるいは中古品で
前オーナーが落としたか、ぶつけたかして、光軸が曲がって
いるのではなかろうか?と疑われるレンズも何本かある。
まあそんなものだ、レンズを1本しか持ってなければちゃんと
修理して使うのが良いだろうが、多数ともなると、いちいち
気にして全部修理していたらキリが無い、故障レンズは、
それはそれで、使い道を考えて使えば良い訳だ。
そしてそもそも、このシリーズ記事のコンセプトは、最高の
システムを求めるものではなく、レンズやカメラの欠点を
良く理解し、それを回避して使る事に面白さを感じ、また、
レンズとカメラの適正な組み合わせにより両者の欠点を相殺
して使うという考えもある。
お金にモノを言わせて、より良いシステムを求め続けるのは
不毛な努力だ、努力と言うよりは、浪費と言っても良いと思う。
いかに、安価でコストパフォーマンスの良いシステムを探す方
がずっと面白いのではなかろうか?

しかし、ちょっとハイライト(光が当たっている部分)での
滲み(ハロ)が多い模様だ、これもカビが原因かも知れない。
本レンズの描写力については、このカビ状態なので、なんとも
言えない状況。まあ、本来であれば、とても良く写るレンズで
ある事は間違いない。
中古の玉数は比較的多く、相場は8000円程度だろうか。
性能からの価値的には、そのあたりの金額が妥当と思われる。
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さて、次のシステム。

カメラは LUMIX DMC-GF1 上のGiと同時期のカメラで、
EVFが無いバージョンだが、EVFが無いという事だけで、
アダプター母艦としての役割を与えることは、ほぼ不可能だ。
すなわちMFによるピント合わせに弱点を持つカメラという事だ。
しかし、現在の中古相場は恐ろしく安価で、6000円位から
入手できる。また、名レンズ G20/1.7とセットのGF1Cの
場合は、ほぼレンズの価格で購入する事ができ、つまり、
カメラの値段はゼロに近い、という状況だ。
仮にもミラーレス機が、数千円で買えるというのは、
ある意味驚きだ、銀塩時代の一眼レフはどんなに安価な
中古カメラであっても、2~3万円はしていたのを考えると、
何故こんなに安いの?と思ってしまうし、中古販売店も
(相場が極端に下落する為)在庫を持つのも大変であろう・・
で、使えないカメラだから安い、というのもあまりに単純
すぎる結論であろう。欠点があるのであれば、それを欠点と
しない使い方をすれば良い。
最も簡単な解決方法は、AFの小型レンズをつけることだ、
だが、それだと当たり前なのであまり面白くない、そこで、
このGF1は、マイクロフォーサーズマウントのトイレンズ母艦
としている次第だ。
という事で、レンズは、LOMO 24mm/f8 である。
トイレンズ3本セットの1本であり、他のレンズ、すなわち
魚眼と12mmは、各々第15回、第7回記事で紹介している。
詳細は重複するので割愛するが、3本で新品定価9000円
程度と、安価なトイレンズセットとなっている。
写りだが、そもそもトイレンズであるから、描写力は期待
できない、というか、トイレンズは「酷い写り」を目的として
使うものであるから、あまりちゃんと写ってもらっても
困るわけである(笑)
そして、トイレンズは,、通常は、ちょっと広角気味の方が
楽しい、何故ならば、周辺光量落ち(ヴィネッティング)の
効果が良く出るからだ。
しかし、本レンズは、24mmであり、マイクロフォーサーズ機に
装着すると、48mm相当と標準画角である。こうなると画角的に
あるいはトイレンズ的効果の少なさなど、一般的な撮影スタイル
に近くなってくるので、トイレンズ的な用途と一般レンズの
中間くらいで考えておけば良いかもしれない。

わずかに周辺光量落ちがあるが、あまり目立たない。
そして、写りもトイレンズっぽくなく、なんとなくフツーに
写ってしまう。
やはりトイレンズもどきという感じか、これは困ったものだ、
もっと酷い写りを期待しているのに、普通に写るとは・・(笑)

周辺光量落ちの他、トイレンズの要素(特色)としては、
ピント(解像力)の甘さ、色味の不自然さ(トーンブレイク)
シェーディング(明るさの変化)、収差(画像の歪み等)が
あるのだが、いずれもこのレンズに関しては控えめである。
まあ、この日は曇りで、したがって、あまり極端な逆光条件では
使っていないので、フレアやゴーストに関してはあまり出てない。
逆光で使えば、もっと酷い写りになっただろうから、ちょっと
残念である(笑)
こういうレンズが一番困ると言えば困る、とても良く写ったり
とても酷く写るのであれば、まあ、それなりに考えて使いようが
あるのだが、この状況だと、極めて中途半端だ。

そして、本レンズの最短撮影距離は60cm、これは24mmレンズ
としては酷い性能である。本記事冒頭の SIGMA AF24/2.8が
18cmの最短撮影距離。と言っているのと比較して貰えれば
この酷さがわかると思う。
あまりにも低い性能だからか、本レンズの製品紹介のHPにも
本レンズの最短撮影距離については、どこにも書かれていない、
セットになっている他のレンズについては書かれているのにも
かかわらず・・である。
しががって、近接撮影はまったく出来ないし、開放f値の暗さ
ともからんで、マクロ的、あるいは背景ボカし的な撮影は
一切する事ができないので、中遠距離でパチリとやるだけで
しかもトイレンズっぽく無い写りなので、すぐ飽きが来そうだ。
なお、バルブ撮影による多重露光、固定速度シャッター、
交換式カラーフィルターなど、いくつかの面白そうな機能は
あるのだが、いずれも使い勝手が面倒なので、今回は試して
いない。(というか、あまりそれらに興味を持てない・・)
そして、開放f8はさすがに暗い(ちなみに、本レンズは
絞り値を変えることはできない)
f8という数値であるが、たとえば一般的な大口径レンズで
ある開放f1.4級レンズと比較してみよう。
ある明るさの被写体を、同じISO感度で撮ったとする、
その時にf1.4レンズでのシャッター速度が1/125秒だったと
すると、f8レンズでは、1/4秒となってしまい、手ブレまたは
被写体ブレ必至だ。
ちなみに、こういう計算はどうやってやるかといえば、
「段数」で考えるのが簡便だ。
まず絞りの段数の差を考える、f8,f5.6,f4,f2.8,f2,f1.4
という数列だから、f8に対しf1.4は、5段明るい。
次はシャッター速度だ、同じく5段シフトすると、125,60,
30,15,8,4 となって、1/4秒である事がわかる。
これらの数値は、銀塩時代であれば、レンズに絞り値が書いて
あるし、カメラ本体にもシャッター速度のダイヤルが書いて
あったので、いつもそれを見ていれば、誰でも嫌がおうでも
覚えてしまったものだ。
だが、現代のレンズに絞り値は書いていない(絞り環が無い)
そしてカメラ本体も、ごく一部の機種にしかシャッター速度
変更用ダイヤルはついていない。
カメラ内のファインダーやEVF,背面モニターなどでは
絞りやシャッター速度が表示され、勿論それを変更できるが、
ほとんどの初級カメラユーザーは、P(プログラム)オート露出
でしか撮影しないし、仮にそれを絞り優先などで調整する事が
出来るユーザーであっても、現代のカメラでは絞りの値は、
1段づつではなく、1/2段や1/3段刻みと細かいし、絞りに追従
して変化するシャッター速度も、1/2段や1/3段刻み、あるいは、
段数が定められていないで細かく設定されるカメラも多い。
そうなれば、こうした、カメラのごくごく基本である、絞りや
シャッター速度の数列を自然に覚えたり、露出の仕組みを
自然に理解したりする事は、現代のビギナーユーザーでは、
ほぼ絶望的ではなかろうか?
これは、ちょっと、いや、「大問題」かも知れない。
「そんな事知らないでも写真は撮れる」と言う人も居るかと
思うが、それは大きな間違いだ、基本中の基本をわからずして
どんな良い写真が撮れたとしても意味が無い、これは写真に
限らず、スポーツでも料理でも楽器でも何でも、あらゆる分野
においも、基本をおろそかにする事は、絶対にご法度だ。
だいたい、露出、すなわち、絞りとシャッター速度とISO感度
の関係なんて、さほど難しい概念ではない、理科系の人ならば
ほんの数分、非理科系でも30分もあれば理解できる事であろう。
それを、なんやかんやと理由をつけて、理解しようとしない
(学ぶのを拒否する)事は、かなり困った状態ではある。
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さて本レンズLOMO 24/8 についても、色々文句を書いているが、
まあ、3本セットでの販売なので、このレンズが気に入らない
からと言って、他のレンズだけを単品で買う訳にも行かなかった
訳だ。
まあ、この「使えない」レンズを、なんとか、使う目的(用途)
を見つけていくのも、また楽しいと思うので、いずれ何か思い
ついたら試してみるとするか・・
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次は本記事ラストのシステム。

カメラは、Eマウント最強の高度な操作系を誇る SONY NEX-7
レンズは、ロシアン・レンズの代名詞、Jupiter 9 である。
おまけにM42ヘリコイドアダプターを用いているので、
近接撮影、つまり「マクロジュピター」として利用できる。
写真はヘリコイドを伸ばした状態で、全体は200~300mm級の
MF単焦点望遠レンズ並みの長さとなるが、まあ、重量はさほど
でも無いので、持ち運びに苦労する事は無い。

Jupiter 9とは、第二次大戦後、旧東独ツアイスの技術を
ベースに、ロシアにて改良(コピー?)されて開発された
レンズである。ベースとなったレンズは、カール・ツァイス
ゾナー85mm/f2であり、Jupiter 9も同様に85mm/f2の
スペックとなっている。
最初の製品の発売が恐らく1950年代、そこから様々なマウント
のバージョンが発売され、1970年代には、M42マウント化され
その後、長期にわたって販売されていた模様だ。
ちなみに、ジュピターというのは英語読みで、
ロシア語読みだと「ユピテル9」となる模様だ。
まあ歴史とか出自はどうでも良く、問題はその写りだ。
1990年代の銀塩時代、このレンズは、東京のロシアレンズ
専門店が輸入販売を行っていて、その定価は僅かに5000円
という破格値で新品販売されていた、当時は第一次中古カメラ
ブームであったので、多くのマニアがこの安価なレンズに
飛びついた。
そして、マニアの間では、様々な都市伝説のような、
奇妙な評価が、まことしやかに飛び交ったのであった。
A「もの凄く良く写る! ロシアレンズ、ハラショー(万歳)」
B「あたりハズレが酷い、ボクのレンズはダメだったよ」
C「逆光でゴーストが壮大に出る、舞台の照明でも出たよ・汗」
D「ゾナーと同じ写りだよ、これは凄い!」
まあ賛否両論あったが、共通しているのは「条件がハマると
凄い写りをする、しかもとても安い」という意見であった。
あまりに評価が高かったからか、このレンズの新品価格は
数年して、いっきに15000円まで値上げしてしまった。
中古相場も不規則に変動し、5~6000円の時もあれば、
12000円になった時もあり、場合により15000円を軽く
超えていた時すらあった(新品より高いではないか・怒!)
けど、今にして思う、本当にこのレンズは良く写るのだろうか?
様々な都市伝説が、このレンズを神格化してしまったのでは
なかろうか?と・・

僅かに逆光気味になっただけで、フレアが発生しコントラストが
極端に低下する、まあ「逆光に弱い」というのは、このレンズの
正しい評価であろう。
ただ、ロシアンレンズの場合、全ての個体で同じ性能は保証
されない、工作精度がそこまで出ていないのだ。1本1本写りが
違うと言っても過言では無いし、もっと酷いことに、レンズと
カメラボディとの相性で、装着可であったり不可であったりする
場合すらあるのだ(汗)
前述の東京の専門店には数回行った事があったのだが、
その時、その店では、「手持ちのカメラボディを持ち込んで、
レンズを装着して、ちゃんと付くのを確認して購入する」
というルールがあったくらいである。
で、写りであるが、逆光のフレアよりも深刻な問題点がある。
それは背景ボケ質の破綻である。
上の写真を撮影する際、NEX-7の、EVFにしてはボケ質が
見分けやすい236万ドットファインダーで見ていて気になった
ので、絞りを何段階か変えて撮っている。
そして、Jupiter 9 の絞りは「プリセット方式」である、
もっとも、ミラーレス機で使う場合には、プリセット絞りは
銀塩時代での使い方はしない。
プリセット絞りは、本来は、絞り環を必要な絞り値まで絞り、
もう1つのリングで絞りを開放にし、そこでピント合わせをし、
その後、そのリングを絞り環でプリセットした絞り値まで
廻して測光(露出を合わせ)撮影するのだ。
これは、銀塩一眼(デジタル一眼でも)の光学ファインダーは、
絞り込むと、暗くなってピント合わせが困難になるからだ。
でも、ミラーレス機では、絞りを絞ってもEVFやモニターの
画像は暗くならない、これは撮像素子や画像処理エンジンが、
いつでも適正な露出値になるように、すなわち、映像を一定の
明るさになるように調整しているからだ。
ミラーレスでの適正なプリセット絞りレンズの操作は、絞り環を
最大絞り値まであらかじめ絞り込んでおき、もう1つのリングを
微調整して絞りの替わりにするのだ。この方法により、あたかも
そのリングが絞り環と同じ感覚で操作する事ができる。
ただし、そのリング(OPEN/CLOSEリング)は、クリックストップ
が無いため、連続的に絞り血は変化する、そして、その時の
絞り値の具体的数値は知るよしが無い。
この機構の為、一般にプリセット絞り型のレンズの絞り羽根の
枚数は非常に多く、数え切れない程である。
このJupiter 9も例外ではなく、沢山の絞り羽根がほぼ円形に
絞り込まれていく様子は見ていて綺麗でもある。
だが、絞り羽根が多いという事と、ボケ質が良好であると
言うことはイコールでは無い。
Jupiter 9で特に気になるのは、木漏れ日などを背景にした
際に、ボケ質破綻が目立つことだ、絞り羽根が多いので、
ボケの円形形状は確保されるのだが、そもそもボケの線が汚い。
で、もう1つ問題が出た、それはレンズ自身の問題ではないが、
ヘリコイドアダプターの精度か?、Jupiter 9との相性か?で、
無限遠が完全に出ていない気がする。
NEX-7のピーキング機能はそこまで厳密な精度は無い、
ただ、感覚的には、20mくらいのところで遠景ピントが頭打ちだ、
恐らくヘリコイドがほんのコンマ何mmか長い(繰り出している)
のであろう。まあいい、無限遠撮影はあまり無いし、その時は、
わずかに絞りを絞れば被写界深度が深くなり大丈夫そうだ。

ボケ質の破綻と逆光の問題、私は、このレンズは1990年代に、
それこそ新品5000円の時代に購入し、もう20年以上も使って
いるレンズなので、弱点も良くわかっている、まあ、欠点が
出てヤバそうな被写体は撮らない事がベストの対応だ。
つまり、レンズのコスパは極めて良いが、巷で言われている
ほど神格化されるようなスーパーレンズではなく、使い方を
かなり限定するレンズであるという事だ、その結果、撮れる
被写体条件にも制限が出て、やもするとストレスとなる。
なのでまあ、こういった場合は、複数の異なるカメラシステム
を持ち出しているので、被写体の条件にあった方のシステムを
使うという事になる、このため、2台ないし3台のシステムは
各々のカメラ・レンズの性能や特徴を熟知して使うことになり、
レンズの焦点距離など結局どうでも良く、たとえば全て同じ
焦点距離(画角)のレンズをつけていても良いくらいなのだ、
カメラやレンズの性格(特徴・性能)により、同じ焦点距離
のレンズでも、どちらを被写体に向けるかが決まるという事だ。

さて、もう少しJupiter 9については言いたい事があるが、
もう記事文字数が限界だ、いずれまた本レンズを持ち出して
続編を書いてみるとしようか・・